説明

加飾方法及び加飾部材

【課題】暗所での絵柄や容器の地肌を視認することを可能とする加飾方法及び加飾部材を提供する。
【解決手段】基材シート11上に積層された蓄光シート12と、蓄光シート12上に積層された透光性の絵柄フィルム13と、絵柄フィルム13上に積層された透光性のトップコートフィルム14とを備える。明るい場所において、蓄光シート12が光エネルギーを吸収する。このため、蓄光シート12が高い残光輝度で発光し、暗所においては、光が絵柄13aによって遮られることがなく視認できる。これにより、明暗場所、明暗時間を問わず絵柄を視認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、コンコース等の施設における壁や床に対して絵柄により加飾を行う加飾方法及び加飾部材に関し、特に、明るいときは加飾した絵柄を視認でき、夜間や暗闇等の暗所においては、加飾した絵柄に遮られることなく高い輝度を保った視認が可能な加飾方法及び加飾部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材シート上に絵柄フィルムを積層した加飾部材が開示されている。絵柄フィルムには、所定の絵柄が印刷されていると共に絵柄の内部や外部には、透明部分が形成されている。基材シートにも透明部分が形成されており、基材シートの透明部分と絵柄フィルムの透明部分とが重なるように基材シートと絵柄フィルムとを積層する。この加飾部材を容器等の表面に貼り付けることにより、絵柄によって容器の加飾を行うと同時に透明部分から容器の地肌の視認を可能とすることにより興趣性のあるものとしている。
【特許文献1】特開2004−18104公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の加飾部材においては、明るい場所で興趣性があるとしても、暗所では、絵柄や容器の地肌を視認することができず、適用場所や適用時間が限定される不便さを有している。
【0004】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたものであり、暗所においても絵柄に遮られることなく高い残光輝度での視認が可能で、これにより加飾の興趣性を楽しむことが可能な加飾方法及び加飾部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明の加飾方法は、基体の表面に蓄光層を積層し、蓄光層の表面に絵柄を施し、前記絵柄及び蓄光層を透光性のトップコート層で覆うことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の加飾方法であって、前記絵柄は、前記蓄光層上への印刷又は蓄光層上への転写によって施されることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の加飾方法であって、前記蓄光層は、アルミン酸ストロンチウム粒子の表面を高分子樹脂の皮膜によってコーティングした蓄光顔料を用いることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明の加飾部材は、基材シート上に積層された蓄光シートと、蓄光シート上に積層された透光性の絵柄フィルムと、絵柄フィルム上に積層された透光性のトップコートフィルムとを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明の加飾部材は、基材シート上に積層された蓄光シートと、蓄光シート上に施された絵柄と、前記絵柄及び蓄光シートを覆う透光性のトップコートフィルムとを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の加飾部材であって、前記絵柄は、前記蓄光層上への印刷又は蓄光層上への転写によって施されることを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項4〜6のいずれか1項記載の加飾部材であって、前記蓄光シートは、アルミン酸ストロンチウム粒子の表面を高分子樹脂の皮膜によってコーティングした蓄光顔料を含有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄光層や蓄光シートが高い残光輝度で光を発するため、暗所においても絵柄に遮られることなく絵柄を視認することができる。従って、明暗場所、明暗時間を問わず絵柄を視認できるため、加飾の興趣性を楽しむことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
【0014】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1実施形態であり、基体1の表面上に蓄光層2を積層し、蓄光層2の表面上に絵柄3を施し、絵柄3及び蓄光層2をトップコート層4で覆うことにより基体1への加飾を行うようになっている。基体1は建造物等の施設における壁や床であり、コンクリート、アスファルト、人造石、タイル等により形成されている。
【0015】
蓄光層2は基体1上に100〜500μm、好ましくは200〜300μmの厚さで積層されている。蓄光層2は蓄光顔料をビヒクルに分散させたインキが用いられ、基体1に対して印刷、塗布等の手段によって積層される。蓄光顔料としては、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸バリウム等のアルカリ土類金属のアルミン酸塩の粒子を用いることができる。この内、アルミン酸ストロンチウムは高い残光輝度及び長い残光時間を有している点で最も良好である。
【0016】
蓄光顔料としてアルミン酸ストロンチウム粒子を用いる場合には、高分子樹脂の皮膜によってコーティングした材料を用いることが良好である。高分子樹脂の被膜によってアルミン酸ストロンチウム粒子をコーティングすることにより、アルミン酸ストロンチウムが水や炭酸ガスと反応することを防止することができるため、水や炭酸ガスとの反応に基づいた発光の低下を防止することができる。これにより、長時間発光することが可能となる。コーティングに用いる高分子樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂等の内の一種又は複数を用いることができる。
【0017】
蓄光層2に用いるビヒクルとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、PVC樹脂等の樹脂の内の一種又は複数種、水、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル等の溶媒の内の一種又は複数種と、消泡剤、はじき防止剤、顔料分散剤、艶消し剤等の補助剤の内の一種又は複数種を混合することにより形成することができる。ビヒクル100重量部に対する蓄光顔料の配合比は、1〜100重量部、好ましくは、20〜100重量部が良好である。蓄光顔料の配合比が、1重量部未満では、十分な輝度を有した残光を発光することができず、100重量部を越える場合には、流動性が小さくなって基体1への積層が難しくなる。
【0018】
蓄光層2のビヒクルにおいては、紫外線硬化樹脂を混合することが可能である。紫外線硬化樹脂を配合することにより、基体1がコンクリート、アスファルト等の粗面であっても短時間で均一に硬化すると共に、基体1に強固に被着することができる。
【0019】
絵柄3は基体1上で硬化した蓄光層2上に対して印刷や転写を行うことにより形成される。絵柄3としては0.5〜10μm、好ましくは0.5〜5μmの厚さにより形成される。0.5μm未満では絵柄3の明確な表示ができず、10μmを越える場合には蓄光層2上からの光の多くが絵柄3によって遮断されるため好ましくない。絵柄3としては、木目模様、石目模様、布目模様や文字や装飾文字、幾何模様等の適宜のデザインを選択することができる。絵柄3は単色もしくは複数色のカラーであっても良く、モノクロであっても良い。この実施形態においては、図2に示すように、木目模様の絵柄3が施されている。
【0020】
絵柄3を印刷で形成する場合は、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の適宜の手段を用いることができる。絵柄3を転写で形成する場合は、熱転写、圧力転写、溶剤転写等の適宜の手段を用いることができる。絵柄3は蓄光層2から発する光を必要以上、遮ることなく残光輝度を確保する観点からその総面積が決定される。この観点からは、蓄光層2の面積に対し、絵柄3の総面積は95%以下、好ましくは60%以下であることが良好である。
【0021】
トップコート層4は絵柄3及び蓄光層2を覆うように設けられ、これにより絵柄3及び蓄光層2の保護が行われる。トップコート層4としては蓄光層2からの残光を透過することが必要であり、このため透光性を有した樹脂、インキが用いられる。透光性としては透明であっても良く、半透明であっても良い。又、透光性を有していればトップコート層4が着色されていても良い。トップコート層4は、2〜10μm、好ましくは3〜5μmの厚さとなるように形成される。トップコート層4の材料としては、透光性に加えて硬質性や耐摩耗性を有していることが好ましく、良好なトップコート層4の材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を選択することができる。
【0022】
図2は、以上のようにして基体1に加飾を行った状態を示し、明るい場所においては、木目模様からなる絵柄3を視認することができる。明るい場所においては、蓄光層2が光エネルギーを吸収する。従って、蓄光層2が高い残光輝度で発光し、暗所においては、光が絵柄3に遮られることなく絵柄の視認が可能となる。特に、絵柄3が下からの光によって浮き出されるため、神秘的な感じを醸し出すことができる。このような実施形態では、明暗場所、明暗時間を問わず絵柄を視認できるため、加飾の興趣性を楽しむことができる。
【0023】
(第2実施形態)
図3及び図4は、本発明の第2実施形態を示す。この実施形態の加飾部材10は、基材シート11と、蓄光シート12と、絵柄フィルム13と、トップコートフィルム14とを下から上に順に積層することにより構成されている。これに加えて、基材シート11の下側には、粘着剤層15及び剥離シート16が積層されている。
【0024】
基材シート11は加飾部材10のベースとなるものであり、透光性、非透光性を問わず、種々の樹脂、金属や布、その他の材料を用いることができ、その厚さも適宜、設定することができる。
【0025】
蓄光シート12は、基材シート11上に積層されている。蓄光シート12は、第1実施形態の蓄光層2と同様に100〜500μmの厚さとなるように基材シート11上に塗布又は印刷されることにより形成される。又、蓄光シート12は第1実施形態と同様に、高分子樹脂の皮膜によってコーティングされたアルミン酸ストロンチウム粒子を蓄光顔料として使用しており、この蓄光顔料が100重量部のビヒクルに対して1〜100重量部、好ましくは20〜100重量部の配合比で混合されている。ビヒクルとしては第1実施形態と同様に、紫外線硬化樹脂を混合することができる。
【0026】
絵柄フィルム13は、透光性フィルムに絵柄13aが印刷されたものである。透光性フィルムとしては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂の内、一種又は複数種を用いることができる、絵柄フィルム13の厚さは、15〜100μm、好ましくは25〜100μmとすることができる。絵柄13aの印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の適宜の手段を用いることができる。絵柄13aとしては第1実施形態と同様に、木目模様、石目模様、文字、装飾文字等の適宜のデザインを選択でき、カラー、モノクロを問わない。なお、絵柄13aは熱転写、圧力転写、溶剤転写等の転写によって形成しても良い。
【0027】
トップコートフィルム14は、絵柄フィルム13を覆うように設けられることにより絵柄フィルム13の保護を行う。トップコートフィルム14は蓄光シート12からの残光を透過する透光性を有している。透光性に関しては透明、半透明を問わないと共に着色されていても良い。トップコートフィルム14は1.5〜100μm、好ましくは5〜10μmの厚さとなるように形成される。トップコートフィルム14の材料としては、第1実施形態のトップコート層4と同様に、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等を選択することができる。
【0028】
粘着剤層15は、基材シート11下面に積層されている。粘着剤層15を有することにより、加飾部材10を建造物の壁やドア、階段、家具、その他の適宜の外部々材に貼り付けることが可能となる。粘着剤層15としては、アクリル樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂等の内から適宜選択して用いることができる。又、粘着剤層15の厚さも適宜選択することができる。剥離シート16は粘着剤層15の不用意な貼り付きを防止するものであり、加飾部材10の使用時には図4に示すように剥がされる。なお、粘着剤層15に代えて接着剤層を基材シート11の下面に積層しても良い。
【0029】
以上の加飾部材10においては、剥離シート16を剥がして粘着剤層15を所望の外部々材に貼り付けて用いる。外部々材への貼り付けにより外部々材への加飾が行われる。すなわち、明るい場所においては、木目模様からなる絵柄13を視認することができる。明るい場所においては、蓄光シート12が光エネルギーを吸収する。このため、蓄光シート12が高い残光輝度で発光し、暗所においては、光が絵柄13aに遮られることなく絵柄13aを視認することができる。このような実施形態では、明暗場所、明暗時間を問わず絵柄を視認できるため、加飾の興趣性を楽しむことができる。
【0030】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態を示す。この実施形態の加飾部材10Aにおいては、基材シート11と、蓄光シート12と、絵柄23と、トップコートフィルム14とが下から上に順に積層され、基材シート11の下側には、粘着剤層15及び剥離シート16が積層されている。基材シート11、蓄光シート12、トップコートフィルム14、粘着剤層15及び剥離シート16は第2実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0031】
この実施形態において、絵柄23は蓄光シート12の表面に施されており、トップコートフィルム14は絵柄23及び蓄光シート12を覆っている。絵柄23は、蓄光シート12が硬化した後、蓄光シート12の表面に対して印刷や転写を行うことにより形成される。印刷で形成する場合は、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の適宜の手段を用いることができる。転写で形成する場合は、熱転写、圧力転写、溶剤転写等の適宜の手段を用いることができる。
【0032】
絵柄23は0.5〜10μm、好ましくは0.5〜5μmの厚さにより形成される。0.5μm未満では絵柄23の明確な表示ができず、10μmを越える場合には蓄光シート12上からの光の多くが遮断されるため好ましくない。絵柄23は蓄光シート12から発する光を必要以上遮ることなく残光の輝度を確保する観点からその総面積が決定される。この観点からは、蓄光シート12の面積に対し、絵柄23の総面積は95%以下、好ましくは60%以下であることが良好である。
【0033】
この実施形態の加飾部材10Aにおいても、剥離シート16を剥がして粘着剤層15を所望の外部々材に貼り付けて用いる。外部々材への貼り付けにより外部々材への加飾が行われる。すなわち、明るい場所においては、木目模様からなる絵柄13aを視認することができる。明るい場所においては、蓄光シート12が光エネルギーを吸収する。このため、蓄光シート12が高い残光輝度で発光し、暗所においても、絵柄13aを視認することができる。これにより明暗場所、明暗時間を問わず絵柄を視認でき、加飾の興趣性を楽しむことができる。
【0034】
(その他の実施形態)
以上の実施形態において、蓄光層2及び蓄光シート12としては、アルミン酸ストロンチウム粒子の表面を高分子樹脂の皮膜によってコーティングした蓄光顔料と、ポリグルタミン酸や長鎖型アミノ酸等のハニカム構造の有機高分子と、多孔質の無機粉体とをビヒクルに混合した材料を用いることができる。多孔質の無機粉体としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化亜鉛と銅との混合物、白艶華、石炭灰のいずれかを用いる。蓄光層2及び蓄光シート12をこのような形態とすることにより、蓄光顔料が沈殿することなくビヒクル内で浮遊した状態となるため蓄光顔料の分散性が良好となり、良好な残光輝度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の構造を示す部分破断斜視図である、
【図3】本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【図4】第2実施形態の構造を示す部分破断斜視図である。
【図5】本発明の第33実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1;基体 2;蓄光層 3、13a;絵柄 4;トップコート層
10、10A;加飾部材 11;基材シート 12;蓄光シート
13;絵柄フィルム 13a;絵柄 14;トップコートフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面に蓄光層を積層し、蓄光層の表面に絵柄を施し、前記絵柄及び蓄光層を透光性のトップコート層で覆うことを特徴とする加飾方法。
【請求項2】
前記絵柄は、前記蓄光層上への印刷又は蓄光層上への転写によって施されることを特徴とする請求項1記載の加飾方法。
【請求項3】
前記蓄光層は、アルミン酸ストロンチウム粒子の表面を高分子樹脂の皮膜によってコーティングした蓄光顔料を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の加飾方法。
【請求項4】
基材シート上に積層された蓄光シートと、蓄光シート上に積層された透光性の絵柄フィルムと、絵柄フィルム上に積層された透光性のトップコートフィルムとを備えていることを特徴とする加飾部材。
【請求項5】
基材シート上に積層された蓄光シートと、蓄光シート上に施された絵柄と、前記絵柄及び蓄光シートを覆う透光性のトップコートフィルムとを備えていることを特徴とする加飾部材。
【請求項6】
前記絵柄は、前記蓄光層上への印刷又は蓄光層上への転写によって施されることを特徴とする請求項5記載の加飾部材。
【請求項7】
前記蓄光シートは、アルミン酸ストロンチウム粒子の表面を高分子樹脂の皮膜によってコーティングした蓄光顔料を含有していることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の加飾部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−214427(P2009−214427A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60756(P2008−60756)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(505416843)エム・アイ・エイ企画株式会社 (3)
【出願人】(593043967)
【Fターム(参考)】