説明

動体認識カメラおよび動体監視システム

【課題】 通信費用が軽減されると共に、監視カメラ自体も簡便で廉価な動体認識カメラおよび動体監視システムを実現する。
【解決手段】 動体認識カメラ10の撮影領域に、設定手段24を用いて注目領域を設定し、この注目領域に動体を認識する際に、撮影条件を動体認識時モードに切り替えて画像情報の取得および転送を行うこととしているので、注目領域の画質を維持しつつ、画像情報の転送に伴う通信費用を従来と同等あるいは低く抑えつつ、高価なハードウェアが付属されることのない簡便で廉価な動体認識カメラ10を実現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被写体の画像情報からこの被写体中で動く動体を検出する動体認識カメラおよび動体監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犯罪防止のため、監視カメラを設置する施設が増加している。この様な施設では、監視カメラを24時間駆動させ、常時監視を行う必要がある。一方、常時監視を行うためには、監視カメラを常時駆動させ、さらに監視カメラからの画像情報を通信回線を介して接続される画像データベースにすべて保存する必要がある。
【0003】
ここで、監視カメラを常時駆動させること、あるいは、監視カメラからの画像情報をすべて保存することは、監視カメラの運営費用の上昇を招く。すなわち、監視カメラの常時駆動は消費電力を増加させ、監視カメラからの画像情報をすべて保存することは監視カメラの通信費用を増加させる等のことが生じる。
【0004】
そこで、監視カメラの消費電力を低減するために、別途被写体中に存在する動体を検出する赤外線センサを設け、この赤外線センサが動体を検出した場合にのみ監視カメラをオンすることが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、監視カメラおよび周辺機器の消費電力を低減するために、監視カメラに低消費電力の動体検出回路を設け、常時駆動されるこの動体検出回路が動体を検出した場合にのみ、主電源をオンとし、監視カメラによる画像の撮影および画像データベースへの保存を行う(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、監視カメラのオンオフの中間的な例として、監視カメラで被写体を繰り返し撮影するフレームレートを変化させ、主として監視カメラと画像データベース間の通信費用等の運営費用を低減することも行われる(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5―281033号公報、(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2000―207650号公報、(第1頁、図1)
【特許文献3】特開2003―87630号公報、(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記背景技術によれば、通信費用は軽減されるものの、全体として監視カメラは高価なものとなる。すなわち、監視カメラに赤外線センサあるいは動体検出回路等のハードウェアを別途付加する必要が生じ、監視カメラ自体が高価なものとなる。
【0008】
特に、監視カメラが急速に普及する中で、通信費用の軽減と共に、監視カメラ自体も簡便で廉価なものであることが求められる。
これらのことから、通信費用が軽減されると共に、監視カメラ自体も簡便で廉価な動体認識カメラをいかに実現するかが重要となる。
【0009】
この発明は、上述した背景技術による課題を解決するためになされたものであり、通信費用が軽減されると共に、監視カメラ自体も簡便で廉価な動体認識カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の発明にかかる動体認識カメラは、被写体を固体撮像素子により繰り返し撮影し、画像情報を取得する撮影部と、前記画像情報の撮影領域内に設定される注目領域の注目領域情報を入力するインターフェースと、前記注目領域に存在する動く被写体を検出する注目領域動体検出手段と、前記検出が行われた際に、前記撮影の撮影条件を切り替える撮影条件切換手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この請求項1に記載の発明では、画像情報の撮影領域内に注目領域を設定し、この注目領域に存在する動体を検出し、この検出が行われた際に撮影条件を切り替える。
また、請求項2に記載の発明にかかる動体認識カメラは、請求項1に記載の発明において、前記動体認識カメラが、さらに前記被写体に含まれる動く被写体を検出する動体センサを有する際に、前記動体センサが発する動く被写体の検出情報に基づいて、前記注目領域動体検出手段を起動することを特徴とする。
【0012】
この請求項2に記載の発明では、動体を注目領域に入る前に検出し、予め注目領域の撮影条件を切り替える。
また、請求項3に記載の発明にかかる動体認識カメラは、請求項2に記載の発明において、前記動体センサが、赤外線センサであることを特徴とする。
【0013】
この請求項3に記載の発明では、動物を検出する。
また、請求項4に記載の発明にかかる動体認識カメラは、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の発明において、前記撮影部が、前記撮影の繰り返し時間であるフレームレートを変更するフレームレート変更手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明にかかる動体認識カメラは、請求項4に記載の発明において、前記撮影条件切換手段が、前記フレームレートを高くすることを特徴とする。
この請求項5に記載の発明では、高いフレームレートで動体の動きを連続して撮影する。
【0015】
また、請求項6に記載の発明にかかる動体認識カメラは、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の発明において、前記撮影部が、前記固体撮像素子がCMOS型の撮像素子である際に、前記固定撮像素子の受光面の限定された画像領域から、前記画像情報を取得する画像取得領域変更手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に記載の発明にかかる動体認識カメラは、請求項6に記載の発明において、前記撮影条件切換手段が、前記画像領域を前記注目領域と一致させることを特徴とする。
【0017】
この請求項7に記載の発明では、画像情報の量を減少させる。
また、請求項8に記載の発明にかかる動体認識カメラは、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の発明において、前記撮影部が、取得される前記画像情報の画像分解能を変更する画像分解能変更手段を備えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項9に記載の発明にかかる動体認識カメラは、請求項8に記載の発明において、前記撮影条件切換手段が、前記注目領域を省く前記撮影領域の画像分解能を低くすることを特徴とする。
【0019】
この請求項9に記載の発明では、画像情報の量を減少させる。
また、請求項10に記載の発明にかかる動体監視システムは、被写体を固体撮像素子により繰り返し撮影し、画像情報を取得する動体認識カメラと、前記画像情報を保存し、前記保存された画像情報を表示する画像表示手段と、前記動体認識カメラおよび前記表示手段間の通信を行う通信手段と、を備える動体監視システムであって、前記画像表示手段は、前記表示された画像に注目領域を設定する設定手段を有し、前記動体認識カメラは、前記注目領域の注目領域情報を取得し、前記注目領域に存在する動く被写体を検出する注目領域動体検出手段および、前記検出が行われた際に、前記撮影の撮影条件を切り替える撮影条件切換手段を有することを特徴とする。
【0020】
この請求項10に記載の発明では、画像情報の撮影領域内に注目領域を設定し、この注目領域に存在する動体を検出し、この検出が行われた際に撮影条件を切り替える。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、画像情報の撮影領域内に注目領域を設定し、この注目領域に存在する動体を検出し、この検出が行われた際に撮影条件を切り替えることとしているので、注目領域に存在する動体の画像を、簡便に適切な撮影条件、すなわち画質を落とすことなく低コストな撮影条件で撮影することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、動体を注目領域に入る前に検出し、予め注目領域の撮影条件を適切な撮影条件に切り替えることができる。
請求項3に記載の発明によれば、動物を検出し、ひいては人間を検出することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、フレームレート変更手段により、撮影の繰り返し時間であるフレームレートを変更することとしているので、状況に応じて適切なフレームレートにすることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、高いフレームレートで動体の動きを連続して撮影することとしているので、動体の重要な動作部分を漏れなく撮影することができる。
請求項6に記載の発明によれば、画像取得領域変更手段により、CMOS型の固定撮像素子の受光面の限定された画像領域から、画像情報を取得することとしているので、画像情報の量を状況に応じて適切なものとすることができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、画像情報の量を減少させることとしているので、通信費用を低減あるいはフレームレートを高くすることができる。
請求項8に記載の発明によれば、画像分解能変更手段により、取得される画像情報の画像分解能を変更することとしているので、状況に応じて適切な画像分解能にすることができる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、画像情報の量を減少させることとしているので、通信費用を低減あるいはフレームレートを高くすることができる。
請求項10に記載の発明によれば、画像情報の撮影領域内に注目領域を設定し、この注目領域に存在する動体を検出し、この検出が行われた際に撮影条件を切り替えることとしているので、注目領域に存在する動体の画像を、簡便に適切な撮影条件、すなわち画質を落とすことなく低コストな撮影条件で撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる動体認識カメラおよび動体監視システムを実施するための最良の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0028】
まず、本実施の形態にかかる動体監視システムの全体構成について説明する。図1は、本実施の形態にかかる動体監視システム1の全体構成を示す機能ブロック図である。本実施の形態にかかる動体監視システム1は、動体認識カメラ10、画像表示手段20および通信手段50を含む。また、動体認識カメラ10は、撮像部11、演算部12およびインターフェース13を含み、画像表示手段20は、記憶部21、表示部23、設定手段24およびインターフェース22を含む。ここで、動体認識カメラ10は、被写体の撮影を行い、画像表示手段20は、通信手段50を介して動体認識カメラ10から提供される画像情報を表示する。なお、通信手段50は、無線あるいは有線の通信手段であり、CSMA/CD方式等を用いた無線あるいは有線の通信手段も含む。以下、各部の構成を詳細に説明する。
【0029】
撮像部11は、カメラ部111、画像記憶部112、フレームレート変更手段115、画像分解能変更手段116および画像取得領域変更手段117を含み、被写体のデジタル画像情報を取得する。
【0030】
図2は、カメラ部111の詳細を示すブロック図である。カメラ部111は、レンズ200、CMOS型の固体撮像素子210、A/D変換部220、DSP部230およびタイミングジェネレータ240を含む。レンズ200は、被写体からの光を固体撮像素子210の受光面に結像する。固体撮像素子210は、CMOS型の撮像素子で、受光された光の輝度信号を、電気的なアナログ信号に変換する。
【0031】
A/D変換部220は、アナログ信号に変換された輝度信号を、電気的なデジタル信号に変換する。ここで、A/D変換部220は、その入力部分に雑音を低減する相関2重サンプリング回路(CDS回路)およびA/D変換器の入力電圧を調整する自動利得調整器(AGC)等を含む。
【0032】
DSP部230は、A/D変換部220でデジタル信号に変換された輝度信号に信号処理を行う。この信号処理は、例えばオートホワイトバランス(AWB)等の処理を含み、出力される画像情報が、被写体映像を忠実に反映するものとされる。
【0033】
タイミングジェネレータ240は、固体撮像素子210、A/D変換部220およびDSP部230を制御する制御信号を生成する。特に、タイミングジェネレータ240は、後述するフレームレート変更手段115、画像分解能変更手段116および画像取得領域変更手段117からのフレームレート情報、分解能情報および画像取得領域情報に基づいた制御信号を生成する。
【0034】
図1に戻り、画像記憶部112は、カメラ部111で取得された画像情報を保存するメモリである。フレームレート変更手段115は、演算部12からの指示により、固体撮像素子210から画像情報を繰り返し読み出すフレームレートを変更する。この変更は、例えば、タイミングジェネレータ240に供給されるクロック周波数を変更することにより行われる。
【0035】
画像分解能変更手段116は、演算部12からの指示により、固体撮像素子210から読み出される画像情報の分解能を変更する。この変更は、例えば、読み出しを行う単位固体撮像素子の素子数の変更あるいは画素ずらし等の手法により行われる。
【0036】
画像取得領域変更手段117は、固体撮像素子210から読み出される画像情報の読み出し領域を変更する。ここで、固体撮像素子210は、CMOS型の撮像素子であるとしているので、受光面にマトリクス状に配設された単位固体撮像素子の輝度信号を選択出力する垂直および水平走査回路を有する。そして、この垂直および水平走査回路の走査領域を限定することにより、読み出し領域の変更が行われる。なお、これら垂直および水平走査回路の制御信号は、タイミングジェネレータ240により生成される。
【0037】
演算部12は、注目領域動体検出手段120および撮影条件切換手段121等を含む。注目領域動体検出手段120は、カメラ部111で逐次取得される画像情報に、動体が含まれるかどうかの検出を行う。ここで、注目領域動体検出手段120は、後述する画像表示手段20から設定される注目領域情報に基づいて、カメラ部111で撮影される撮影領域の中の注目領域に、動く被写体、すなわち動体が存在するかどうかを検出する。
【0038】
この動体検出は、例えばフレーム間比較により行われる。注目領域動体検出手段120は、画像記憶部112から直近の時間に取得された2枚の連続する画像情報を読み込み、これら画像情報に含まれる注目領域の画素値の差分を行う。そして、この差分の総和が、予め設定される閾値を越える場合に、動体が注目領域に存在すると判定し、この差分が閾値を越えない場合には、動体が注目領域に存在しないと判定する。
【0039】
撮影条件切換手段121は、注目領域動体検出手段120からの動体検出情報に基づいて、フレームレート変更手段115、画像分解能変更手段116および画像取得領域変更手段117のフレームレート情報、分解能情報あるいは画像取得領域情報を設定する。ここで、動体検出情報が動体の検出を示す場合には、初期設定モードから予め設定される動体検出時モードに切り替え、また、動体検出情報が動体の不検出を示す場合には、初期設定モードを設定する。なお、初期設定モードおよび動体認識時モードの詳細については、後述する動体監視システム1の動作で説明する。
【0040】
画像表示手段20に移り、記憶部21は、動体認識カメラ10で取得された画像情報を履歴情報として一定期間保存する大容量メモリである。表示部23は、記憶部21に保存された画像情報を表示するLCD(Liquid Crysral Display)あるいはCRT(Cathode Ray Tube)等の画像表示機器である。また、設定手段24は、キーボードあるいはマウス等のポインティングデバイスからなり、表示部23の画面上に動体を検出する注目領域を設定する。なお、設定手段24は、初期設定モードあるいは動体検出時モード等の撮影条件の設定に用いることもでき、これら撮影条件は、動体認識カメラ10の撮影条件切換手段121に格納される。
【0041】
インターフェース13および22は、通信手段50を介して画像情報および設定情報を送受信するインターフェースである。
つづいて、動体監視システム1の動作について、図3を用いて説明する。図3は、動体監視システム1の動作を示すフローチャートである。まず、オペレータは、動体認識カメラ10を、監視を行う場所に設置する(ステップS301)。図4(A)は、通路45を挟んで存在する複数の部屋を俯瞰した図である。そして、通路45沿いの部屋41および43には、通路45に出入りする扉42および44が存在する。ここで、動体認識カメラ10は、この通路45を通る人間を監視する図4(A)に示す位置に配設される。
【0042】
その後、オペレータは、表示部23に表示された通路45の画像を見ながら、ポインティングデバイス等を用いて注目領域の設定を行う(ステップS302)。図4(B)は、表示部23に表示された通路45を含む撮影領域48の画面である。ここで、オペレータは、部屋41に特に重要な書類あるいは物が存在し、この部屋41に出入りする人間を監視したいとする。そこで、オペレータは、ポインティングデバイス等により、撮影領域48の扉42が存在する位置に注目領域46を設定する。なお、注目領域46の撮影領域48内での位置情報は、動体認識カメラ10の注目領域動体検出手段120に送信される。
【0043】
その後、動体認識カメラ10は、注目領域46の設定終了とともに、撮影条件の初期設定を行う(ステップS303)。この初期設定では、例えば、画像分解能、画像情報の取得を行うフレームレートおよび動体認識を表示部23に表示される注目領域46で行うこと等の初期設定モードの設定が行われる。なお、この初期設定モードでは、全画面に渡り高分解能にされかつ低コストで運営することを考慮し、フレームレートは低く設定され、動体認識カメラ10の消費電力および通信費用の軽減が計られる。
【0044】
その後、動体認識カメラ10は、初期設定に基づいて、被写体、すなわち図4に示した例では通路45の撮影を行う(ステップS304)。そして、動体認識カメラ10は、撮影ごとにこ注目領域46に出入りする人間を動体認識する(ステップS305)。ここで、動体認識カメラ10は、注目領域46に動体を認識しない場合には(ステップS304否定)、ステップS304に移行し、初期設定に基づいた撮影を繰り返す。また、動体認識カメラ10は、注目領域46に動体を認識した場合には(ステップS304肯定)、予め設定される動体認識時モードへ撮影条件の切り替えを行う(ステップS306)。ここで、予め設定される動体認識時モードは、認識された動体を詳細に観察することに主眼をおいて設定され、画像分解能あるいはフレームレートを高く設定することで、動体を鮮明にかつ滑らかな動きでもって撮影する。
【0045】
ここで、動体認識時モードの撮影条件の例を示す。動体認識時モードAは、ステップS302で設定された注目領域46のみの画像情報を、画像分解能を変えずに高いフレームレートで取得および転送する。このモードでは、動体の動きを確実に画像化することができ、画像情報の量が減少した分高いフレームレートでの画像情報の取得および転送を行えば、通信費用は初期設定モードと概ね同等のものにすることができる。
【0046】
動体認識モードBは、ステップS302で設定された注目領域46のみを、高い画像分解能に維持し、注目領域46以外の撮影領域48を低分解能とし、注目領域のみの鮮明な画像を取得および転送する。このモードでは、注目領域46に存在する動体の精細な画像を取得することができ、注目領域46以外の撮影領域48を低分解能として画像情報の量を減少させ、単位時間当たりのデータ転送量を維持したままフレームレートを高くすることができる。
【0047】
動体認識モードCは、動体認識モードBと同様にステップS302で設定された注目領域46のみを、高い画像分解能に維持し、注目領域46以外の撮影領域48を低分解能とし、注目領域46のみの鮮明な画像を取得および転送する。このモードでは、フレームレートは初期設定モードと同一とされる一方で、注目領域46以外の撮影領域48を低分解能として画像情報の量が減少した分、単位時間当たりのデータ転送量を減少させることができ、通信費用を軽減することができる。
【0048】
その後、動体認識カメラ10は、動体認識時モードに基づいて、被写体、すなわち図4に示した例では撮影領域48の撮影を行う(ステップS307)。そして、動体認識カメラ10は、撮影ごとに注目領域46に存在する人間を動体認識する(ステップS308)。ここで、動体認識カメラ10は、注目領域46に動体を認識する場合には(ステップS308肯定)、ステップS307に移行し、動体認識時モードに基づいた撮影を継続する。また、動体が注目領域46の外に出た等の理由により、注目領域46に動体を認識しない場合には(ステップS308否定)、撮影を継続するかどうかの判定を行い(ステップS309)、撮影を継続する場合には(ステップS309肯定)、ステップS303に移行し、初期設定モードの設定を行い撮影を継続する。また、動体認識カメラ10は、撮影を継続しない場合には(ステップS309否定)、本処理を終了する。
【0049】
ここで、動体認識カメラ10が動体認識時モードに基づいて、被写体、すなわち図4に示した撮影領域48の撮影を行う場合に、通信手段50を介して画像表示手段20に転送される画像情報の様子を図5を用いて説明する。図5は、通信手段50により画像情報が転送される際の、フレームごとの画像情報の切り替えタイミングを、横軸を時間、縦軸を切り替えタイミング時の変化として、模式的に表した切り替えタイミングチャートである。なお、フレームレートは、fps(frame per second)単位で表している。
【0050】
図5(A)は、ステップS306で設定される動体認識時モードとして、動体認識時モードAが選択された場合の例である。ここで、初期設定モードでは、動体認識カメラ10で取得された画像情報が3fpsで画像表示手段20に転送されるとする。一方、注目領域46に動体を認識し、ステップS306で動体認識時モードAに切り替えられた場合には、例えば30fpsにフレームレートが高速化され、動体の動きが確実に画像化される。そして、注目領域46に動体を認識しなくなった後には、ステップS303に移行し初期設定モードに戻るので、3fpsのフレームレートに戻る。
【0051】
図5(B)は、ステップS306で設定される動体認識時モードとして、動体認識時モードBが選択された場合の例である。ここで、初期設定モードでは、動体認識カメラ10で取得された画像情報が3fpsで画像表示手段20に転送されるとする。当初の初期設定モードでは、3fpsで画像情報が転送され、また、表示部23の画像に動体を認識しステップS306で動体認識時モードBに切り替えられた場合には、注目領域46以外の撮影領域48が低分解能化されるので、1フレーム当たりのデータ転送量を維持したまま、フレームレートを例えば30fpsに高くすることができる。そして、注目領域46に動体を認識しなくなった後には、ステップS303に移行し初期設定モードに戻るので、3fpsのフレームレートに戻る。なお、このモードでは、データ転送量は初期設定モードと概ね同等であるので通信費用も同様のものとなる。
【0052】
図5(C)は、ステップS306で設定される動体認識時モードとして、動体認識時モードCが選択された場合の例である。ここで、初期設定モードでは、動体認識カメラ10で取得された画像情報が3fpsで画像表示手段20に転送されるとする。また、切り換えタイミングチャートに併記された1フレーム当たりのデータ転送量は、切り換えタイミングチャートと同一の時間軸を有し、転送される画像情報の量の大小を表す。当初の初期設定モードでは3fpsで画像情報が転送され、また、表示部23の画像に動体を認識しステップS306で動体認識時モードCに切り替えられた場合にも、同様に3fpsのフレームレートで画像情報の転送が行われる。一方、画像情報の1フレーム当たりのデータ転送量は切り替え時に減少する。そして、注目領域46に動体を認識しなくなった後には、ステップS303に移行し初期設定モードに戻るので、データ転送量も元の大きさとなる。このモードでは、動体認識時にデータ転送量が減少するので、通信費用を軽減することができる。
【0053】
上述してきたように、本実施の形態では、動体認識カメラ10の撮影領域48に注目領域46を設定し、注目領域46に動体を認識する際に、撮影条件を動体認識時モードに切り替えて画像情報の取得および転送を行うこととしているので、注目領域の画質を維持しつつ、画像情報の転送に伴う通信費用を従来と同等あるいは低く抑えつつ、高価なハードウェアが付属されることのない簡便で廉価な動体認識カメラ10とすることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、動体認識カメラ10は、注目領域46に動体が侵入した際に、撮影条件を切り替えることとしたが、別途赤外線センサ等の動体センサを設け、この動体センサの動体検出信号に基づいて、撮影条件を切り替えてステップS306〜308の動体認識時モードでの撮影を行う様にすることもできる。
【0055】
また、本実施の形態では、固体撮像素子210はCMOS型であるとしたが、CCD型の固体撮像素子を用いることもできる。なお、CCD型の固体撮像素子を用いた場合には、画像分解能変更手段116および画像取得領域変更手段117は、制限を受けるかあるいは用いることができない場合が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】動体監視システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】動体認識カメラのカメラ部の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態の動体認識カメラの動作を示すフローチャートである。
【図4】動体認識カメラの設置例を示す説明図である。
【図5】動体認識カメラおよび画像表示手段間での画像情報の通信を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 動体監視システム
10 動体認識カメラ
11 撮像部
12 演算部
13、22 インターフェース
20 画像表示手段
21 記憶部
23 表示部
24 設定手段
41、43 部屋
42、44 扉
45 通路
46 注目領域
48 撮影領域
50 通信手段
111 カメラ部
112 画像記憶部
115 フレームレート変更手段
116 画像分解能変更手段
117 画像取得領域変更手段
120 注目領域動体検出手段
121 撮影条件切換手段
200 レンズ
210 固体撮像素子
220 A/D変換部
230 DSP部
240 タイミングジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を固体撮像素子により繰り返し撮影し、画像情報を取得する撮影部と、
前記画像情報の撮影領域内に設定される注目領域の注目領域情報を入力するインターフェースと、
前記注目領域に存在する動く被写体を検出する注目領域動体検出手段と、
前記検出が行われた際に、前記撮影の撮影条件を切り替える撮影条件切換手段と、
を備えることを特徴とする動体認識カメラ。
【請求項2】
前記動体認識カメラは、さらに前記被写体に含まれる動く被写体を検出する動体センサを有する際に、前記動体センサが発する動く被写体の検出情報に基づいて、前記注目領域動体検出手段を起動することを特徴とする請求項1に記載の動体認識カメラ。
【請求項3】
前記動体センサは、赤外線センサであることを特徴とする請求項2に記載の動体認識カメラ。
【請求項4】
前記撮影部は、前記撮影の繰り返し時間であるフレームレートを変更するフレームレート変更手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の動体認識カメラ。
【請求項5】
前記撮影条件切換手段は、前記フレームレートを高くすることを特徴とする請求項4に記載の動体認識カメラ。
【請求項6】
前記撮影部は、前記固体撮像素子がCMOS型の撮像素子である際に、前記固定撮像素子の受光面の限定された画像領域から、前記画像情報を取得する画像取得領域変更手段を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の動体認識カメラ。
【請求項7】
前記撮影条件切換手段は、前記画像領域を前記注目領域と一致させることを特徴とする請求項6に記載の動体認識カメラ。
【請求項8】
前記撮影部は、取得される前記画像情報の画像分解能を変更する画像分解能変更手段を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の動体認識カメラ。
【請求項9】
前記撮影条件切換手段は、前記注目領域を省く前記撮影領域の画像分解能を低くすることを特徴とする請求項8に記載の動体認識カメラ。
【請求項10】
被写体を固体撮像素子により繰り返し撮影し、画像情報を取得する動体認識カメラと、
前記画像情報を保存し、前記保存された画像情報を表示する画像表示手段と、
前記動体認識カメラおよび前記表示手段間の通信を行う通信手段と、
を備える動体監視システムであって、
前記画像表示手段は、前記表示された画像に注目領域を設定する設定手段を有し、
前記動体認識カメラは、前記注目領域の注目領域情報を取得し、前記注目領域に存在する動く被写体を検出する注目領域動体検出手段および、前記検出が行われた際に、前記撮影の撮影条件を切り替える撮影条件切換手段を有することを特徴とする動体監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−203395(P2006−203395A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11121(P2005−11121)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】