説明

動体追跡放射線治療システム

【課題】演算された標的又は代替マーカの通過領域を用いて撮影範囲の設定を的確に行うことができ、X線被ばく量の低減を図ることができる動体追跡放射線治療システムを提供する。
【解決手段】X線撮影装置5A,5Bの撮影画像により標的3の二次元位置を演算し、標的3の三次元位置を演算する標的位置認識装置6と、標的3の三次元位置に基づき治療放射線照射装置4を制御して、標的3への迎撃照射又は追尾照射を行う照射制御装置7とを備える。標的3の二次元位置の履歴に基づいて標的3の通過領域Tを演算し、この標的3の通過領域T又はこれを内包して外接する最小撮影範囲Pminと最大撮影範囲Pmaxを示すとともに、最小撮影範囲Pminから最大撮影範囲Pmaxまでの間に制限されながら設定入力する撮影範囲Pを示す撮影範囲設定画面24を表示し、この撮影範囲設定画面24を用いて撮影範囲を手動設定する撮影範囲設定装置16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内の標的に治療放射線を照射する放射線治療システムに係わり、特に、標的の位置をリアルタイムに認識して治療放射線を照射する動体追跡放射線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
治療放射線を標的に集中して照射し、標的周辺の臓器への照射を低減するため、標的の位置をリアルタイムに認識して治療放射線を照射する動体追跡放射線治療システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
標的位置を認識する手段としては、複数の方向からX線透視画像を撮影し、それらの撮影画像から標的位置を認識する手段が用いられる。標的位置を認識する方法には、標的を直接認識する方法と、標的付近の代替マーカから間接的に標的を認識する方法がある。前者の方法においては、標的の投影像をテンプレート画像として予め用意し、撮影画像に対しマッチングさせることで標的の二次元位置を演算する。そして、各方向の撮影画像から得られた標的の二次元位置に基づき、標的の三次元位置を演算する。後者の方法においては、代替マーカの投影像をテンプレート画像として予め用意し、撮影画像に対しマッチングさせることで代替マーカの二次元位置を演算する。そして、各方向の撮影画像から得られた代替マーカの二次元位置に基づき、代替マーカの三次元位置を演算する。このとき、代替マーカの三次元位置と標的の三次元位置との関係は予め取得されており、標的位置を間接的に認識する。
【0004】
上述した標的位置の認識により、標的位置と治療計画による放射線照射位置とが一致するタイミングで照射を行う迎撃照射を行うか、若しくは、標的位置に合わせて放射線照射位置を変更する追尾照射を行う。このような動体追跡により、呼吸性移動臓器など、治療中に移動する臓器に対して正確な照射が可能となる。なお、標的の動きに応じて治療放射線の照射を制御するため、X線撮影は標的(又は代替マーカ)の動きを捉えることが可能な頻度で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−167072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。すなわち、上記従来技術では、動体追跡により、治療放射線の照射の高精度化が期待できる一方、X線撮影によってX線の被ばくが生じる。そして、X線被ばく量は少ないほうがよいため、標的又は代替マーカの動きを捉えることが可能なかぎり、撮影範囲を小さくすることが好ましい。しかし、従来は、標的又は代替マーカが動く範囲(言い換えれば、通過領域)を日々の状態変化による誤差も含めて大まかに推測して、撮影範囲を必要以上に大きめに設定していた。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、演算された標的又は代替マーカの通過領域を用いて撮影範囲の設定を的確に行うことができ、X線被ばく量の低減を図ることができる動体追跡放射線治療システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、被検体内の標的に治療放射線を照射する治療放射線照射装置と、前記標的若しくは前記標的付近の代替マーカをX線撮影する少なくとも2つのX線撮影装置と、一方の前記X線撮影装置で撮影された画像により一方向から見た前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置を演算し、他方の前記X線撮影装置で撮影された画像により他方向から見た前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置を演算し、それらに基づいて前記標的若しくは前記代替マーカの三次元位置を演算する標的位置認識手段と、前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの三次元位置に基づき前記治療放射線照射装置を制御して、前記標的への迎撃照射又は追尾照射を行う照射制御手段とを備え、前記X線撮影装置は、前記被検体にX線を照射するX線管、前記被検体を透過したX線の二次元線量分布を検出するX線検出器、及び前記X線管の照射範囲を制限して撮影範囲を可変可能なX線可変絞りを有する動体追跡放射線治療システムであって、前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置の履歴に基づいて前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域を演算する通過領域演算手段と、前記通過領域演算手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域又は前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域を内包してX線可変絞りが形成可能な形状で外接する最小撮影範囲と前記X線撮影装置の固有の最大撮影範囲を示すとともに、前記最小撮影範囲から前記最大撮影範囲までの間に制限されながら設定入力する撮影範囲を示す撮影範囲設定画面を表示し、この撮影範囲設定画面を用いて撮影範囲を手動設定する撮影範囲設定手段と、前記撮影範囲設定手段で設定された撮影範囲に応じて前記X線撮影装置の前記X線可変絞りを制御する絞り制御手段とを備える。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記撮影範囲設定手段は、前記撮影範囲設定画面上、前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域の外周側に所定の補償領域を付加して示す。
【0010】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記撮影範囲設定手段は、前記撮影範囲設定画面上にて設定入力する撮影範囲を、前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域及び前記補償領域を内包して外接する最小撮影範囲から前記最大撮影範囲までの間に制限する。
【0011】
(4)上記目的を達成するために、本発明は、被検体内の標的に治療放射線を照射する治療放射線照射装置と、前記標的若しくは前記標的付近の代替マーカをX線撮影する少なくとも2つのX線撮影装置と、一方の前記X線撮影装置で撮影された画像により一方向から見た前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置を演算し、他方の前記X線撮影装置で撮影された画像により他方向から見た前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置を演算し、それらに基づいて前記標的若しくは前記代替マーカの三次元位置を演算する標的位置認識手段と、前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの三次元位置に基づき前記治療放射線照射装置を制御して、前記標的への迎撃照射又は追尾照射を行う照射制御手段とを備え、前記X線撮影装置は、前記被検体にX線を照射するX線管、前記被検体を透過したX線の二次元線量分布を検出するX線検出器、及び前記X線管の照射範囲を制限して撮影範囲を可変可能なX線可変絞りを有する動体追跡放射線治療システムであって、前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置の履歴に基づいて前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域を演算する通過領域演算手段と、前記通過領域演算手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域の外周側に所定の補償領域を付加し、前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域及び前記補償領域を内包して外接する撮影範囲を自動的に設定する撮影範囲設定手段と、前記撮影範囲設定手段で設定された撮影範囲に応じて前記X線撮影装置の前記X線可変絞りを制御する絞り制御手段とを備える。
【0012】
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記通過領域演算手段は、前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置の履歴に沿って予め記憶された前記標的若しくは前記代替マーカの投影像を移動させたときの通過領域により、前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域を演算する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、演算された標的又は代替マーカの通過領域を用いて撮影範囲の設定を的確に行うことができ、X線被ばく量の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態における動体追跡放射線治療システムの構成を表す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における標的位置認識装置及び撮影範囲設定装置の機能的構成を、関連装置とともに表すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるX線撮影装置のX線可変絞りの概略構造を表すとともに、X線撮影装置の撮影範囲を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における撮影範囲設定装置の制御処理内容を表すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態における撮影範囲設定画面を表す図である。
【図6】本発明の一変形例における撮影範囲設定画面を表す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における標的位置認識装置及び撮影範囲設定装置の機能的構成を、関連装置とともに表すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における撮影範囲設定装置の制御処理内容を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態を、図1〜図5により説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における動体追跡放射線治療システムの構成を表す概略図である。図2は、本実施形態における標的位置認識装置及び撮影範囲設定装置の機能的構成を、関連装置とともに表すブロック図である。
【0017】
動体追跡放射線治療システムは、ベッド1上の被検体2内の標的3に治療放射線(例えば陽子線)を照射する治療放射線照射装置4と、複数の方向から標的3をX線撮影するX線撮影装置5A,5Bと、これらX線撮影装置5A,5Bで撮影された画像から標的3の位置をリアルタイムに認識する標的位置認識装置6と、この標的位置認識装置6で認識された標的3の位置に基づき治療放射線照射装置4を制御する照射制御装置7とを備えている。
【0018】
X線撮影装置5Aは、第1方向から被検体2にX線を照射するX線管8Aと、このX線管8Aから照射されて被検体2を透過したX線の二次元線量分布を検出するX線検出器9Aと、図示しない信号処理回路とを備えている。X線検出器9Aは、二次元的に配置された複数の検出素子(詳細には、例えば放射線を電荷に変換する半導体素子等)を有し、それら検出素子からのアナログ信号を出力する。信号処理回路は、X線検出器9Aからのアナログ信号を処理してX線透視画像のデータを生成し、標的位置認識装置6へ送信するようになっている。なお、X線撮影装置5Aの撮影は、標的3の動きを捉えるのに十分な頻度(例えば30Hz程度)で行われている。
【0019】
同様に、X線撮影装置5Bは、第2方向(本実施形態では、第1方向に対して直交する方向)から被検体2にX線を照射するX線管8Bと、このX線管8Bから照射されて被検体2を透過したX線の二次元線量分布を検出するX線検出器9Bと、図示しない信号処理回路とを備えている。X線検出器9Bは、二次元的に配置された複数の検出素子を有し、それら検出素子からのアナログ信号を出力する。信号処理回路は、X線検出器9Bからのアナログ信号を処理してX線透視画像のデータを生成し、標的位置認識装置6へ送信するようになっている。なお、X線撮影装置5Bの撮影は、X線撮影装置5Aの撮影と同期して行われている。
【0020】
標的位置認識装置6は、X線撮影装置5A,5Bや照射制御装置7等との間で通信を行う通信部10と、X線撮影装置5A,5Bより受信した撮影画像や後述する演算結果等を保存する記憶部(メモリ)11と、X線撮影装置5A,5Bの撮影画像や後述する演算結果等を表示する表示部(モニタ)12と、X線撮影装置5Aの撮影画像によりX線撮影装置5Aの撮影方向(第1方向)から見た標的3の二次元位置を演算し、X線撮影装置5Bの撮影画像によりX線撮影装置5Bの撮影方向(第2方向)から見た標的3の二次元位置を演算する二次元位置演算部13と、それら標的3の二次元位置に基づき、標的3の三次元位置を演算する三次元位置演算部14とを有している。
【0021】
標的位置認識装置6の記憶部11には、第1テンプレート画像として、X線撮影装置5Aの撮影方向における標的3の投影像が予め用意されて記憶されており、第2テンプレート画像として、X線撮影装置5Bの撮影方向における標的3の投影像が予め用意されて記憶されている。二次元位置演算部13は、X線撮影装置5Aの撮影画像と第1テンプレート画像とをマッチングさせることにより、X線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の二次元位置を演算する。また、X線撮影装置5Bの撮影画像と第2テンプレート画像とをマッチングさせることにより、X線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置を演算する。具体的には、撮影画像とテンプレート画像を動かしながら比較して類似度(例えば正規化相関係数)を演算し、その類似度が最も高い位置(マッチング位置)を標的3の二次元位置とする。演算された標的3の二次元位置は、対応する撮影画像と関連付けられて、記憶部11に保存されるようになっている。
【0022】
標的位置認識装置6の三次元位置演算部14は、X線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置(投影位置)を逆投影して、標的3の三次元位置(投影位置)を演算する。演算された標的3の三次元位置は、対応するX線撮影装置5A,5Bの撮影画像とともに、表示部12に表示されるようになっている。これにより、オペレータは標的3の位置をリアルタイムに確認可能としている。なお、表示部12に表示された撮影画像において標的探索領域を指定することにより、マッチング処理の時間短縮を図ることも可能である。
【0023】
また、演算された標的3の三次元位置は、記憶部11に記憶されるとともに、照射制御装置7に送信される。照射制御装置7は、標的位置認識装置6から受信した標的3の三次元位置に基づき治療放射線照射装置4を制御して、標的3への迎撃照射(詳細には、標的3の位置と治療計画による放射線照射位置とが所定の許容範囲内で一致するタイミングで照射を行うもの)又は追尾照射(詳細には、標的3の位置に合わせて放射線照射位置を変更するもの)を行うようになっている。
【0024】
ここで、本実施形態の大きな特徴として、X線撮影装置5Aは、X線管8Aの照射範囲を制限して撮影範囲を可変可能なX線可変絞り15Aを有し、X線撮影装置5Bは、X線管8Bの照射範囲を制限して撮影範囲を可変可能なX線可変絞り15Bを有している。そして、動体追跡放射線治療システムは、X線撮影装置5A,5Bの撮影範囲を手動設定する撮影範囲設定装置16と、この撮影範囲設定装置16で設定された撮影範囲に応じてX線可変絞り15A,15Bを駆動制御する絞り制御装置17とを備えている。
【0025】
X線可変絞り15Aは、例えば図3で示すように、X線管8AからのX線が通過する四角形状のスリット(開口)を形成する4つの絞り羽根18A〜18Dと、X線照射方向に対してほぼ直交する方向(図2中白抜き矢印方向)に絞り羽根18A〜18Dを移動させるステッピングモータ(図示せず)とを有している。そして、例えば図2で示す絞り羽根18A〜18Dの配置にて照射範囲(撮影範囲)が最大となり、絞り羽根18A〜18Dの内側への移動にて照射範囲(撮影範囲)が縮小するようになっている。なお、X線可変絞り15Bの構造も、X線可変絞り15Aの構造と同様であるため、その説明を省略する。
【0026】
撮影範囲設定装置16は、標的位置認識装置6や絞り制御装置17との間で通信を行う通信部19と、標的位置認識装置6より受信したX線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴や後述する演算結果等を保存する記憶部20(メモリ)と、X線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴に基づいてX線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算し、X線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴に基づいてX線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算する標的通過領域演算部21と、標的3の通過領域等を示すとともに、設定入力する撮影範囲を示すX線撮影装置5A又は5B用の撮影範囲設定画面(詳細は後述)を表示部(モニタ)22に表示させ、それらの撮影範囲設定画面を用いてX線撮影装置5A,5Bの撮影範囲の手動設定を行う撮影範囲手動設定部23とを有している。
【0027】
次に、本実施形態の要部である撮影範囲設定装置16の制御手順を、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態における撮影範囲設定装置16の制御処理内容を表すフローチャートである。
【0028】
まず、ステップ100において、例えばオペレータの操作入力による撮影範囲設定変更の指令に応じて、標的位置認識装置6の記憶部11に保存されたX線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴が送信され、撮影範囲設定装置16は、これを受信して記憶部20に保存する。
【0029】
その後、ステップ110に進み、撮影範囲設定装置16の通過領域演算部21は、X線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴に基づいてX線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算し、X線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴に基づいてX線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算する。詳しく説明すると、撮影範囲設定装置16の記憶部20には、上述した第1テンプレート画像及び第2テンプレート画像が記憶されている。通過領域演算部21は、X線撮影装置5A(又は5B。以降、かっこ内対応同じ)の撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴に沿って第1テンプレート画像(又は第2テンプレート画像)を移動させたときの通過領域を、X線撮影装置5A(又は5B)の撮影方向から見た標的3の通過領域として演算する。そして、演算した標的3の通過領域を記憶部20に保存する。
【0030】
その後、ステップ120に進み、撮影範囲設定装置16の撮影範囲手動設定部23は、例えば図4で示すようなX線撮影装置5A(又は5B)用の撮影範囲設定画面24を作成し、表示部22に表示する。
【0031】
撮影範囲設定画面24は、対応する標的3の通過領域Tを示すとともに、標的3の通過領域Tを内包し外接する最小撮影範囲Pminを示している。Pminは、X線可変絞りの各羽を最大開口位置から開口部を狭めるように移動させ、撮影領域の辺が通過領域Tと接触する位置として撮影範囲手動設定部23が計算する。また、X線撮影装置5A(又は5B)の固有の最大撮影範囲Pmax、すなわちX線可変絞り15A(又は15B)の絞りが最大であるときの撮影範囲を示している。そして、最小撮影範囲Pminから最大撮影範囲Pmaxまでの間に制限されながら設定入力する撮影範囲Pを示している。なお、最小撮影範囲Pmin、最大撮影範囲Pmax、及び撮影範囲Pは、X線可変絞りに対応した形状(本実施形態では、四角形状)である。また、標的3の通過領域T及び最小撮影範囲Pminは撮影範囲Pの制限を示すものであるから、標的3の通過領域T及び最小撮影範囲Pminのうちのいずれか一方を示さなくともよい。
【0032】
そして、ステップ130に進み、撮影範囲設定画面24上の撮影範囲Pを、オペレータの操作入力に応じて変更する。詳しく説明すると、例えば撮影範囲Pの初期表示状態は最小撮影範囲Pminであり、撮影範囲Pを構成する4辺のうちのいずれか一辺を選択すると、その一辺を最小撮影範囲Pminから最大撮影範囲Pmaxまでの間で移動可能としている。なお、その移動ピッチは、可変絞り15A(又は15B)の絞り羽根の移動ピッチとの対応関係で予め設定されている。また、可変絞りの複数の羽が連動して動く場合には、撮影範囲の選択された一辺の操作に応じて、連動する辺が移動する。連動する辺がPminまたはPmaxに達した場合には、辺の移動は停止する。そして、撮影範囲設定画面24上の撮影範囲確定ボタン25を操作すると、撮影範囲手動設定部23は、表示中の撮影範囲Pを記憶部20に設定記憶する。
【0033】
その後、ステップ140に進み、記憶部20に設定記憶された撮影範囲P(若しくは、これに対応するパラメータ)を絞り制御装置17へ送信する。これに応じて、絞り制御装置17がX線可変絞り15A(又は15B)を駆動制御する。
【0034】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
【0035】
例えば治療開始前(すなわち、治療放射線の照射前)に所定時間(例えば標的3の移動が周期的である場合は、1周期以上の時間)のX線撮影を行うことを意図して、X線撮影の指令をオペレータが操作入力すると、X線撮影装置5A,5Bが標的3のX線撮影を行う。このとき、X線撮影装置5A,5Bの撮影範囲は、撮影設定装置16の記憶部20に予め設定記憶された初期値(詳細には、標的3の動きを確実に捉えるため、必要以上に大きめに設定された撮影範囲)に制御されている。
【0036】
そして、例えばX線撮影の終了後、撮影範囲設定変更の指令をオペレータが操作入力すると、撮影範囲設定装置16は、X線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴を受信して保存し、これに基づいて、X線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算する。そして、X線撮影装置5A又は5B用の撮影範囲設定画面24を表示し、この撮影範囲設定画面24を用いてX線撮影装置5A又は5Bの撮影範囲を手動設定する。この撮影範囲設定画面24は、設定入力する撮影範囲Pとともに、標的3の通過領域T(及び最小撮影範囲Pmin)と最大撮影範囲Pmaxを示している。そのため、X線撮影装置5A又は5Bの撮影範囲をオペレータが容易かつ的確に設定することができる。したがって、その後の治療におけるX線被ばく量の低減を図ることができる。
【0037】
なお、上記第1の実施形態においては、撮影範囲設定変更の指令に応じて、標的位置認識装置6の記憶部11に保存された標的3の二次元位置の履歴が送信され、撮影範囲設定装置16は、これを受信して記憶部20に保存する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、X線撮影中、標的位置認識装置6の二次元演算部13で演算された標的3の二次元位置がリアルタイムに送信され、撮影範囲設定装置16は、これを受信して記憶部20に保存してもよい。
【0038】
また、上記第1の実施形態においては、治療開始前(すなわち、治療放射線の照射開始前)にX線撮影を行い、そのX線撮影の際に得られた標的3の二次元位置に基づき標的3の通過領域を演算し、その標的3の通過領域等を示す撮影範囲設定画面24を表示し、この撮影範囲設定画面24を用いて撮影範囲を手動設定する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば治療中に若しくは治療を一時中断し、治療中(すなわち、治療放射線の照射中)のX線撮影によって得られた標的3の二次元位置に基づき標的3の通過領域を演算し。その標的3の通過領域等を示す撮影範囲設定画面を表示してもよい。このとき、撮影範囲設定画面24上の撮影範囲は、以前の設定状態を表示することにより、治療中における標的3の通過領域と撮影範囲との関係を確認することが可能である。そして、場合によっては、撮影範囲を設定変更することも可能である。
【0039】
また、上記第1の実施形態においては、特に説明しなかったが、例えば図6で示す変形例のように、撮影範囲設定画面24Aは、標的通過領域25の外周側に補償領域Cを付加して示してもよい。この補償領域Cは、被検体2の状態変化等に伴う標的3の通過領域Tの変化分を推測したものであり、例えば撮影範囲Pの可変方向(図中左方向、右方向、上方向、及び下方向)に対応して予め設定された補償幅d1〜d4に基づき作成されたものである。このような変形例では、撮影範囲Pの初期表示状態は、上記第1の実施形態と同様、標的3の通過領域Tを内包して外接する撮影範囲としてもよいが、これに代えて、標的3の通過領域T及び補償領域Cを内包して外接する撮影範囲としてもよい(図6参照)。また、最小撮影範囲Pminは、上記第1の実施形態と同様、標的3の通過領域Tを内包して外接する撮影範囲としてもよいが、これに代えて、標的3の通過領域T及び補償領域Cを内包して外接する撮影範囲とし、設定入力する撮影範囲Pをこの最小撮影範囲Pminに制限してもよい。このような変形例では、上記第1の実施形態(すなわち、補償領域Cを示さない場合)と比べ、オペレータの能力や経験に依ることなく、撮影範囲を的確に設定することが可能である。特に、最小撮影範囲Pminを、標的3の通過領域T及び補償領域Cを内包して外接する撮影範囲とした場合には、標的3が撮影範囲から逸脱する可能性を低減し、ひいては治療放射線の照射が中断する可能性を低減する。
【0040】
また、上記第1の実施形態においては、X線撮影装置5A,5Bの撮影範囲を個別に設定するような場合を例にとって説明したが、これに限られず、X線撮影装置5A,5Bの撮影範囲を連携させながら同時に設定してもよい。詳しく説明すると、X線撮影装置5Aの撮影方向(第1の方向)及びX線撮影装置5Bの撮影方向(第2方向)に対して直交する方向は、X線撮影装置5Aの撮影範囲及びX線撮影装置5Bの撮影範囲において共通方向となる。そのため、撮影範囲設定画面は、その共通方向におけるX線撮影装置5Aの撮影範囲の長さ及びX線撮影装置5Bの撮影範囲の長さが同調するように表示してもよい。これにより、さらに容易かつ的確に撮影範囲を設定することが可能である。
【0041】
また、上記第1の実施形態においては、X線可変絞り15A,15Bは、四角形状のスリットを形成する4つの絞り羽根18A〜18Dと、X線照射方向に対してほぼ直交する方向に絞り羽根18A〜18Dを移動させるステッピングモータとを有する構成を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、絞り羽根の数は、4つに限られず、3つ以下でも5つ以上であってもよい。また、絞り羽根で形成するスリットは、四角形状に限られず、他の多角形状や円形状であってもよい。また、例えば絞り羽根をX線照射方向に移動させるような構成としてもよい。そして、撮影範囲設定装置16は、X線可変絞りに対応する撮影範囲の形状や可変方法にて撮影範囲を設定するような撮影範囲設定画面を表示すればよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0042】
本発明の第2の実施形態を、図7及び図8により説明する。本実施形態は、X線撮影装置5A,5Bの撮影範囲を自動設定する実施形態である。なお、本実施形態において、上記第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0043】
図7は、本実施形態における標的位置認識装置及び撮影範囲設定装置の機能的構成を、関連装置とともに表すブロック図である。
【0044】
本実施形態では、撮影範囲設定装置16Aは、標的位置認識装置6や絞り制御装置17等との間で通信を行う通信部19と、標的位置認識装置6より受信したX線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴や後述する演算結果等を記憶する記憶部20(メモリ)と、X線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴に基づいてX線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算し、X線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴に基づいてX線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算する標的通過領域演算部21と、標的3の通過領域に基づいて撮影範囲を自動的に設定する撮影範囲自動設定部26とを有している。
【0045】
次に、本実施形態の要部である撮影範囲設定装置16Aの制御手順を、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態における撮影範囲設定装置16Aの制御処理内容を表すフローチャートである。
【0046】
まず、ステップ200において、例えばオペレータの操作入力による撮影範囲設定変更の指令に応じて、標的位置認識装置6の記憶部11に保存されたX線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴が送信され、撮影範囲設定装置16Aは、これを受信して記憶部20に保存する。
【0047】
その後、ステップ210に進み、撮影範囲設定装置16Aの通過領域演算部21は、X線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴に基づいてX線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算し、X線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴に基づいてX線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算し、それらを記憶部20に保存する。
【0048】
その後、ステップ220に進み、撮影範囲設定装置16Aの撮影範囲自動設定部26は、X線撮影装置5Aの撮影方向から見た標的3の通過領域の外周側に所定の補償領域を付加し、これら標的3の通過領域及び補償領域を内包して外接するX線撮影装置5Aの撮影範囲(前述の図6中の撮影範囲P参照)を自動的に設定し、記憶部20に記憶する。また、X線撮影装置5Bの撮影方向から見た標的3の通過領域の外周側に所定の補償領域を付加し、これら標的3の通過領域及び補償領域を内包して外接するX線撮影装置5Bの撮影範囲(前述の図6中の撮影範囲P参照)を自動的に設定し、記憶部20に記憶する。
【0049】
その後、ステップ230に進み、記憶部20に設定記憶された撮影範囲P(若しくは、これに対応するパラメータ)を絞り制御装置17へ送信する。これに応じて、絞り制御装置17がX線可変絞り15A(又は15B)を駆動制御する。
【0050】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
【0051】
例えば治療開始前(すなわち、治療放射線の照射前)に所定時間(例えば標的3の移動が周期的である場合は、1周期以上の時間)のX線撮影を行うことを意図して、X線撮影の指令をオペレータが操作入力すると、X線撮影装置5A,5Bが標的3のX線撮影を行う。このとき、X線撮影装置5A,5Bの撮影範囲は、撮影設定装置16Aの記憶部20に予め設定記憶された初期値(詳細には、標的3の動きを確実に捉えるため、必要以上に大きめに設定された撮影範囲)に制御されている。
【0052】
そして、例えばX線撮影の終了後、撮影範囲設定変更の指令をオペレータが操作入力すると、撮影範囲設定装置16Aが、X線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の二次元位置の履歴を受信して保存し、これに基づき、X線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の通過領域を演算する。そして、X線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た標的3の通過領域の外周側に所定の補償領域を付加し、これら標的3の通過領域及び補償領域を内包して外接するX線撮影装置5Aの,5B撮影範囲を自動的に設定する。そのため、X線撮影装置5A,5Bの撮影範囲を容易かつ的確に設定することができる。したがって、その後の治療におけるX線被ばく量の低減を図ることができる。
【0053】
なお、上記第2の実施形態においては、撮影範囲設定変更の指令に応じて、標的位置認識装置6の記憶部11に保存された標的3の二次元位置の履歴が送信され、撮影範囲設定装置16Aは、これを受信して記憶部20に保存する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、X線撮影中、標的位置認識装置6の二次元演算部13で演算された標的3の二次元位置がリアルタイムに送信され、撮影範囲設定装置16Aは、これを受信して記憶部20に保存してもよい。
【0054】
また、上記第2の実施形態においては、治療開始前(すなわち、治療放射線の照射開始前)にX線撮影を行い、そのX線撮影の際に得られた標的3の二次元位置に基づき標的3の通過領域を演算し、その標的3の通過領域を用いて撮影範囲を自動設定する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば治療中に若しくは治療を一時中断し、その治療中(すなわち、治療放射線の照射中)のX線撮影によって得られた標的3の二次元位置に基づき標的3の通過領域を演算し、その標的3の通過領域に基づいて撮影範囲を自動設定してもよい。
【0055】
また、上記第2の実施形態においては、撮影範囲設定装置16Aは、表示部(モニタ)を有しない場合を例にとって説明したが、これに限られず、表示部を有していてもよい。そして、例えば標的3の通過領域(及び補償領域)を示すとともに、自動設定された撮影範囲を示す撮影範囲確認画面を表示してもよい。
【0056】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、標的位置認識装置6、照射制御装置7、撮影範囲設定装置16又は16A、及び絞り制御装置17は、別体として構成とした場合を例にとって説明したが、これに限られず、それらのうちのいずれかを一体構成としてもよいことは言うまでもない。また、上記第1及び第2の実施形態においては、2つのX線撮影装置5A,5Bを備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、3つ以上のX線撮影装置を備えてもよいことは言うまでもない。
【0057】
なお、以上においては、本発明の適用対象として、X線撮影装置5A,5Bが被検体2内の標的3を撮影し、標的位置認識装置6が標的3を直接認識する動体追跡放射線治療システムを例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、X線撮影装置5A,5Bが標的3付近の代替マーカを撮影し、標的位置認識装置6が代替マーカから間接的に標的3を認識する動体追跡放射線治療システムであってもよい。以下、詳述する。
【0058】
この動体追跡放射線治療システムでは、標的位置認識装置6の記憶部11には、第1テンプレート画像として、X線撮影装置5Aの撮影方向における代替マーカの投影像が予め用意されて記憶されており、第2テンプレート画像として、X線撮影装置5Bの撮影方向における代替マーカの投影像が予め用意されて記憶されている。二次元位置演算部13は、X線撮影装置5Aの撮影画像と第1テンプレート画像とをマッチングさせることにより、X線撮影装置5Aの撮影方向から見た代替マーカの二次元位置を演算する。また、X線撮影装置5Bの撮影画像と第2テンプレート画像とをマッチングさせることにより、X線撮影装置5Bの撮影方向から見た代替マーカの二次元位置を演算する。演算された代替マーカの二次元位置は、記憶部11に保存される。標的位置認識装置6の三次元位置演算部14は、X線撮影装置5A,5Bの撮影方向から見た代替マーカの二次元位置(投影位置)を逆投影して、代替マーカの三次元位置(投影位置)を演算する。演算された代替マーカの三次元位置は、対応するX線撮影装置5A,5Bの撮影画像とともに、表示部12に表示される。また、演算された代替マーカの三次元位置は、記憶部11に記憶されるとともに、照射制御装置7に送信される。このとき、代替マーカの三次元位置と標的3の三次元位置との関係は予め取得されており、照射制御装置7は、標的位置認識装置6から受信した代替マーカの三次元位置に基づき治療放射線照射装置4を制御して、標的への迎撃照射又は追尾照射を行うようになっている。
【0059】
このような動体追跡放射線治療システムに本発明を適用した場合、撮影範囲設定装置は、代替マーカの二次元位置の履歴に基づいて代替マーカの通過領域を演算する。そして、例えば、上記第1の実施形態(及び変形例)と同様、代替マーカの通過領域、最小撮影範囲、及び最大撮影範囲等を示すとともに、設定入力する撮影範囲を示す撮影範囲設定画面を表示し、この撮影範囲設定画面を用いて撮影範囲を手動設定する。あるいは、例えば、上記第2の実施形態と同様、代替マーカの通過領域に基づいて撮影範囲を自動的設定する。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
2 被検体
3 標的
4 治療放射線照射装置
5A,5B X線撮影装置
6 標的位置認識装置(標的位置認識手段)
7 照射制御装置(照射制御手段)
8A,8B X線管
9A,9B X線検出器
15A,15B X線可変絞り
16,16A 撮影範囲設定装置(通過領域演算手段、撮影範囲設定手段)
17 絞り制御装置(絞り制御手段)
24,24A 撮影範囲設定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内の標的に治療放射線を照射する治療放射線照射装置と、
前記標的若しくは前記標的付近の代替マーカをX線撮影する少なくとも2つのX線撮影装置と、
一方の前記X線撮影装置で撮影された画像により一方向から見た前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置を演算し、他方の前記X線撮影装置で撮影された画像により他方向から見た前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置を演算し、それらに基づいて前記標的若しくは前記代替マーカの三次元位置を演算する標的位置認識手段と、
前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの三次元位置に基づき前記治療放射線照射装置を制御して、前記標的への迎撃照射又は追尾照射を行う治療放射線照射制御手段とを備え、
前記X線撮影装置は、前記被検体にX線を照射するX線管、前記被検体を透過したX線の二次元線量分布を検出するX線検出器、及び前記X線管の照射範囲を制限して撮影範囲を可変可能なX線可変絞りを有する動体追跡放射線治療システムであって、
前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置の履歴に基づいて前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域を演算する通過領域演算手段と、
前記通過領域演算手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域又は前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域を内包して外接する最小撮影範囲と前記X線撮影装置の固有の最大撮影範囲を示すとともに、前記最小撮影範囲から前記最大撮影範囲までの間に制限されながら設定入力する撮影範囲を示す撮影範囲設定画面を表示し、この撮影範囲設定画面を用いて撮影範囲を手動設定する撮影範囲設定手段と、
前記撮影範囲設定手段で設定された撮影範囲に応じて前記X線撮影装置の前記X線可変絞りを制御する絞り制御手段とを備えたことを特徴とする動体追跡放射線治療システム。
【請求項2】
請求項1記載の動体追跡放射線治療システムにおいて
前記撮影範囲設定手段は、前記撮影範囲設定画面上、前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域の外周側に所定の補償領域を付加して示すことを特徴とする動体追跡放射線治療システム。
【請求項3】
請求項2記載の動体追跡放射線治療システムにおいて
前記撮影範囲設定手段は、前記撮影範囲設定画面上にて設定入力する撮影範囲を、前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域及び前記補償領域を内包して外接する最小撮影範囲から前記最大撮影範囲までの間に制限することを特徴とする動体追跡放射線治療システム。
【請求項4】
被検体内の標的に治療放射線を照射する治療放射線照射装置と、
前記標的若しくは前記標的付近の代替マーカをX線撮影する少なくとも2つのX線撮影装置と、
一方の前記X線撮影装置で撮影された画像により一方向から見た前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置を演算し、他方の前記X線撮影装置で撮影された画像により他方向から見た前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置を演算し、それらに基づいて前記標的若しくは前記代替マーカの三次元位置を演算する標的位置認識手段と、
前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの三次元位置に基づき前記治療放射線照射装置を制御して、前記標的への迎撃照射又は追尾照射を行う治療放射線照射制御手段とを備え、
前記X線撮影装置は、前記被検体にX線を照射するX線管、前記被検体を透過したX線の二次元線量分布を検出するX線検出器、及び前記X線管の照射範囲を制限して撮影範囲を可変可能なX線可変絞りを有する動体追跡放射線治療システムであって、
前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置の履歴に基づいて前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域を演算する通過領域演算手段と、
前記通過領域演算手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域の外周側に所定の補償領域を付加し、前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域及び前記補償領域を内包して外接する撮影範囲を自動的に設定する撮影範囲設定手段と、
前記撮影範囲設定手段で設定された撮影範囲に応じて前記X線撮影装置の前記X線可変絞りを制御する絞り制御手段とを備えたことを特徴とする動体追跡放射線治療システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の動体追跡放射線治療システムにおいて、
前記通過領域演算手段は、前記標的位置認識手段で演算された前記標的若しくは前記代替マーカの二次元位置の履歴に沿って予め記憶された前記標的若しくは前記代替マーカの投影像を移動させたときの通過領域により、前記標的若しくは前記代替マーカの通過領域を演算することを特徴とする動体追跡放射線治療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−78479(P2013−78479A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220122(P2011−220122)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】