説明

動力伝達用チェーンの弛み検知具及び該検知具を用いた動力伝達用チェーンのテンション調整方法

【課題】 チェーンの弛みの検知を個人差なく簡単に行い、チェーンの弛みを解消するテンション調整を効率的に行う。
【解決手段】 シャッター装置1におけるチェーン70の弛みを検知するための弛み検知具であって、従動スプロケット50と駆動スプロケット60の間におけるチェーン70の下側部分70aに掛けられるように形成された掛合部81と、該掛合部81をチェーン70に掛合させた状態で軸受ブラケット30に沿って下方へ滑らせるように形成された摺接部82とから一体に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置における動力伝達用チェーンの弛みの検知及び調整に好適な動力伝達用チェーンの弛み検知具及び該検知具を用いた動力伝達用チェーンのテンション調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャッター装置における動力伝達用チェーンの弛み(緩み)は、歯飛びの原因となる上、放置すると、チェーン切断やスプロケットの損傷、シャッターカーテンの落下等に至るおそれがある。そこで、例えば、特許文献1に示される従来技術では、チェーンが切断した際に移動する係合部材を従動スプロケットに係合して、従動スプロケットの回転を制動するようにしている。また、特許文献2に示される従来技術では、チェーンを交差方向へ付勢するテンショナーによってチェーンの緩みを検知し、駆動源を停止するようにしている。
【0003】
ところで、チェーンの弛みや切断に起因して、シャッター装置が停止してしまうような機会は少ない方がよく、そのためには、定期的なメンテナンスによりチェーンの弛みを確認し、調整するのが好ましい。この場合、従来は、作業者が点検口に挿入した手をチェーンに掛けて、該チェーンを交差方向に引っ張り、その触感により該チェーンの弛みを確認するようにしていた。
しかしながら、点検口の開口面積が小さく、作業がし難い上、感覚的な作業なので、チェーンの弛み具合の判断に個人差が生じるおそれがある。
また、前記の方法でチェーンの弛みを検知した場合には、駆動源である開閉機の支持箇所にスペーサを挟んで、駆動スプロケットと従動スプロケットの間の距離を広げるようにするが、従来は、開閉機を支持する複数のボルトに対し、そのボルト毎に独立したスペーサ(図7参照)を係合させていたため、その作業に時間がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−188236号公報
【特許文献2】特開平3−68299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、チェーンの弛みの検知を個人差なく簡単に行えること、チェーンの弛みを解消するテンション調整を効率的に行えること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための技術的手段は、上下方向へ開閉動作する開閉体と、該開閉体をその上方側で巻き取ったり繰り出したりする巻取軸と、前記巻取軸を回転可能に支持する軸受ブラケットと、前記巻取軸に対しその開閉体厚さ方向側に略平行に設けられた開閉機と、前記巻取軸の端部側に設けられた従動スプロケットと、前記開閉機の出力軸に設けられた駆動スプロケットと、前記従動スプロケット及び前記駆動スプロケットに巻かれたチェーンとを備えたシャッター装置における前記チェーンの弛みを検知するための弛み検知具であって、前記従動スプロケットと前記駆動スプロケットの間における前記チェーンの下側部分に掛けられるように形成された掛合部と、該掛合部を前記チェーンに掛合させた状態で前記軸受ブラケットに沿って下方へ滑らせるように形成された摺接部とから一体に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
掛合部をチェーンに掛合し、摺接部を軸受ブラケットに沿って下方へ滑らせれば、摺接部と軸受ブラケットの所定部位との間の位置関係により、チェーンの弛み具合を認識することができる。
よって、チェーンの弛みの検知を個人差なく簡単に行うことができ、ひいては、チェーンの弛みを解消するテンション調整を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る動力伝達用チェーンの弛み検知具の一例をシャッター装置のチェーンにセットした状態を示す斜視図である。
【図2】同弛み検知具の拡大斜視図である。
【図3】本発明に係る動力伝達用チェーンの弛み検知具の他例を示す拡大斜視図である。
【図4】(a)と(b)の各々にスペーサの一例を示す図である。
【図5】本発明に係るテンション調整方法の一例を示す要部平面図であり、(a)はテンション調整前の状態、(b)はテンション調整のために開閉機を動かしスペーサを挿入している状態を示す。
【図6】本発明に係るテンション調整方法の一例を示す要部平面図であり、(c)は開閉機を押し戻した状態、(d)はテンション調整を完了した状態を示す。
【図7】従来のスペーサの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の一形態である動力伝達用チェーンの弛み検知具では、上下方向へ開閉動作する開閉体と、該開閉体をその上方側で巻き取ったり繰り出したりする巻取軸と、前記巻取軸を回転可能に支持する軸受ブラケットと、前記巻取軸に対しその開閉体厚さ方向側に略平行に設けられた開閉機と、前記巻取軸の端部側に設けられた従動スプロケットと、前記開閉機の出力軸に設けられた駆動スプロケットと、前記従動スプロケット及び前記駆動スプロケットに巻かれたチェーンとを備えたシャッター装置における前記チェーンの弛みを検知するための弛み検知具であって、前記従動スプロケットと前記駆動スプロケットの間における前記チェーンの下側部分に掛けられるように形成された掛合部と、該掛合部を前記チェーンに掛合させた状態で前記軸受ブラケットに沿って下方へ滑らせるように形成された摺接部とから一体に構成されている。
【0010】
さらに、チェーンの緩みの検知を容易にするためには、前記掛合部を前記チェーンに掛合させた状態で前記摺接部を前記軸受ブラケットに沿って下方へ滑らせ、前記摺接部の基準部位が前記軸受ブラケットの所定部位に達した場合に、前記チェーンの弛みが所定量に達したと認識されるように形成される。
【0011】
さらに、チェーンの緩みの検知を容易にするためには、前記摺接部には、前記軸受ブラケットの縦縁部に嵌り合って上下方向へ案内されるように、上下方向へわたるガイド段部が設けられている。
【0012】
さらに、チェーンの弛みの検知を容易にする具体的手段としては、前記摺接部は、前記掛合部を前記チェーンに掛合した状態で、前記軸受ブラケットの側面に当接する当接片と、該当接片に段状に重ね合わせられた基準片とを具備してなり、前記当接片と前記基準片との間の段部を、前記軸受ブラケットの縦縁部に嵌り合って上下方向へ案内されるガイド段部とするとともに、前記基準片の下端を前記基準部位とする。
【0013】
さらに、チェーンの弛みの大小を認識したり、軸受ブラケットの大きや形状等に応じて適切な弛み検知を行えるようにするためには、前記基準片を前記当接片に対し上下方向へ移動可能に設ける。
【0014】
また、チェーンの弛みの大小を認識したり、軸受ブラケットの大きさや形状等に応じて適切な弛み検知を行えるようにする他の手段としては、前記基準片の下端側を階段状に形成することで、上下位置の異なる複数の前記基準部位を備える。
【0015】
また、動力伝達用チェーンのテンション調整方法としては、前記シャッター装置が前記開閉機を巻取軸側から支持する支持部材を備えたシャッター装置であって、該シャッター装置の前記チェーンの弛みを検知し調整する方法において、前記弛み検知具を用いて前記チェーンの弛みを検知する工程と、該工程により検知された前記チェーンの弛みに応じて前記開閉機と前記支持部材との間にスペーサを挿入する工程と、を含む。
【0016】
さらに、チェーンの弛みを精度よく解消するためには、前記弛み検知具により認識される前記チェーンの弛みに応じて、前記スペーサの厚み又は枚数を変更する。
【0017】
さらに、チェーンの弛みをより効率的な作業により解消するには、前記開閉機の反スプロケット側を前記支持部材から引き離す工程と、該工程によって形成された隙間に前記スペーサを挿入する工程と、前記開閉機の反スプロケット側を前記支持部材側へ押し戻す工程と、を含む。
【0018】
また、スペーサを挿入する作業を容易にするためには、前記開閉機が複数本の軸状部材によって前記支持部材に固定され、前記スペーサが、前記複数本の軸状部材を挿通可能な単数又は複数の切欠部を有する一体の部材である。
【0019】
なお、本明細書中において「開閉体厚さ方向」とは、閉鎖状態における上記開閉体の厚みの方向を意味する。
また、本明細書中において「開閉体幅方向」とは、上記開閉体の開閉方向と略直交する方向であって、上記開閉体の厚さ方向ではない方向を意味する。
また、本明細書中において「開閉体開閉方向」とは、上記開閉体が空間を仕切ったり開放したりするためにスライドする方向を意味する。
【0020】
以下、上記形態の好ましい具体例について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の弛み検知具80がセットされたシャッター装置の一例を示す斜視図である。
【0021】
先ず、弛み検知具80の検知対象であるチェーンを備えたシャッター装置1について詳細に説明すれば、このシャッター装置1は、上下方向へ開閉動作する開閉体10と、該開閉体10の幅方向端部を囲んで上下方向へ案内するガイドレール(図示せず)と、該開閉体10をその上方側で巻き取ったり繰り出したりする巻取軸20と、前記巻取軸20を回転可能に支持する軸受ブラケット30と、前記巻取軸20に対しその開閉体厚さ方向側に略平行に設けられた開閉機40と、前記巻取軸20の端部側に設けられた従動スプロケット50と、前記開閉機40の出力軸40aの端部側に設けられた駆動スプロケット60と、前記従動スプロケット50及び前記駆動スプロケット60に巻かれたチェーン70とを備え、前記開閉体10を前記巻取軸20の反開閉機側に吊持するようにしている。
そして、このシャッター装置1において、従動スプロケット50と駆動スプロケット60の間における前記チェーン70の下側部分70aには、該下側部分70aが所定量弛んだことを検知するように、弛み検知具80が掛合される。
【0022】
開閉体10は、横長略矩形状の金属板を曲げ加工してなる所謂スラットを、開閉体開閉方向へ複数接続することで開閉体本体を構成し、該開閉体本体の閉鎖方向端部側(図示例によれば下端側)に、床面や地面、枠部材等の着座対象部位に当接させるための座板を接続している。
この開閉体10の開放方向側の端部は、巻取軸20の巻取体21外周面に止着され、開閉体10の幅方向側の端部は、巻取体21の軸方向の端部から所定量突出している。
【0023】
巻取軸20は、略円筒状の巻取体21と、該巻取体21の径方向の中心側に固定されるとともに軸方向の両端側をそれぞれ軸受ブラケット30によって回転自在に支持された軸本体22とからなる。
【0024】
軸受ブラケット30は、端部側に補強のための曲げ部分を有する金属製の平板状部材であり、その中央側の貫通孔に巻取軸20の軸本体22を挿通するとともに、前記貫通孔の周囲に装着したベアリング31(図5参照)によって軸本体22を回転自在に支持する。
【0025】
開閉機40は、出力軸40aを駆動回転するモータと、該モータの回転を制動するブレーキ装置とを具備する略長尺円筒状に構成され、その出力軸40a側における巻取軸20側の部分に基台40bを有し、該基台40bを、支持部材41に止着固定している。
【0026】
前記支持部材41は、軸受ブラケット30に略直立する取付面41aを有する部材であり、前記取付面41aに複数本の軸状部材42(図5参照)を挿通している。前記軸状部材42は、図示例によればボルトであり、そのネジ部分を開閉機40の基台40bに螺合するとともに、その頭部を前記取付面41aに係止して締め付けられている。
【0027】
また、開閉機40の基台40bと前記支持部材41の間には、チェーン70のテンション調整のために必要に応じて、スペーサ200又は200’が設けられる。
図4(a)に示すスペーサ200は、開閉機40と支持部材41との隙間に対し上方又は下方から挿入するようにしたタイプであり、軸状部材42(ボルト)を挿通可能な開口を上方又は下方(図示例によれば下方)へ向けた切欠部210を有する。
【0028】
また、図4(b)に示すスペーサ200’は、開閉機40と支持部材41との隙間に対し横方向から挿入するようにしたタイプであり、軸状部材42(ボルト)を挿通可能な開口を横方へ向けた切欠部210’を有する。後述するチェーンテンション調整方法では、このスペーサ200’を用いる。
【0029】
前記構成のスペーサ200(又は200’)によれば、ボルト141毎に分割された従来のスペーサ299(図7参照)と比較し、スペーサ挿入の際の作業効率を、顕著に向上することができる。
【0030】
また、従動スプロケット50は、軸受ブラケット30の外側(図5によれば右側)において、軸本体22の外周に固定される。
駆動スプロケット60は、開閉機40の出力軸40aに固定される。
【0031】
チェーン70は、金属製のローラーチェーンであり、駆動スプロケット60の回転力を従動スプロケット50に伝達するように、これら両スプロケットに巻かれている。
【0032】
上記構成のシャッター装置1は、開閉体10の重量が巻取軸20における反開閉機側(図5によれば上側)に加わるのに起因して、従動スプロケット50と駆動スプロケット60の間におけるチェーン70の上側部分70bのテンションが高く、それに比較し、同チェーン70の下側部分70aのテンションは低くなる。
【0033】
このため、後述する弛み検知具80を前記下側部分70aに掛けることで、チェーン70の弛みの検知を効果的に行うことができる。
【0034】
弛み検知具80は、従動スプロケット50と駆動スプロケット60の間におけるチェーン70の下側部分70aに掛けられるように形成された掛合部81と、該掛合部81をチェーン70に掛合させた状態で軸受ブラケット30に沿って下方へ滑らせるように形成された摺接部82とから一体に構成されている(図2参照)。
そして、この弛み検知具80は、前記掛合部81をチェーン70に掛合させた状態で前記摺接部82を軸受ブラケット30に沿って下方へ滑らせ、前記摺接部82の基準部位80cが軸受ブラケット30の所定部位(図示例によれば下端)に達した場合に、チェーン70の弛みが所定量に達したと認識されるように形成される。
【0035】
掛合部81は、横方向に開口部80aを有する側面視略凹状に形成される。
この掛合部81は、図示例について詳細に説明すれば、上側片部81aと、該81の一端側に交差して接続された縦片部81bと、該縦片部81bの下端に接続されるとともに前記上側片部81aと同方向へ略同長さに延設された下側片部81cとからなる側面視略コ字状に形成される。
そして、上側片部81aと下側片部81cの間の寸法は、チェーン70を側方から挿入可能な高さに設定される。また、上側片部81aと下側片部81cの間の奥行き寸法は、チェーン70を完全に内在する深さに設定される。
【0036】
また、摺接部82には、軸受ブラケット30の縦縁部30aに嵌り合って上下方向へ案内されるように、上下方向へわたるガイド段部80bが設けられている。
より詳細に説明すれば、摺接部82は、掛合部81をチェーン70の下側部分70aに掛合した状態で、軸受ブラケット30の外側面に当接する当接片82aと、該当接片82aに段状に重ね合わせられた基準片82bとを具備してなり、これら当接片82aと基準片82bとの間の段部を、軸受ブラケット30の縦縁部30aに嵌り合って上下方向へ案内されるガイド段部80bとするとともに、基準片82bの下端を前記基準部位80cとしている。
【0037】
当接片82aは、掛合部81に下側片部81cに接続され下方へ延設された平板状の部位である。この当接片82aの当接面82a1は、掛合部81における上側片部81aの先端面81a1と面一に設けられている。
この構成によれば、掛合部81をチェーン70の下側部分70aに掛けて、当接片82aを軸受ブラケット30の外側面に当接させれば、先端面81a1も軸受ブラケット30の外側面に当接するために、チェーン70が掛合部81と軸受ブラケット30によって囲まれた状態になる。よって、掛合部81とチェーン70との掛合状態が外れてしまうのを防ぐことができる。
【0038】
また、基準片82bは、前記当接片82aよりも横幅が狭く、且つ上下方向に長い平板状の部材であり、掛合部81側へは突出せずに、当接片82aよりも下方へ突出するように配置されて、当接片82aに止着されている。この基準片82bを当接片82aに止着する手段は、図示例では止着具83(例えばネジやボルト等)による接続としているが、溶接や嵌合、接着等の他の手段とすることも可能である。この基準片82bは、当接片82aに止着されて、当接片82aとの間にガイド段部80bを形成するとともに、最下端部を基準部位80cとしている。
【0039】
上記構成によれば、基準片82bを当接面82a1の図2(又は図3)における右側(図1では左側)に設けているので、掛合部81をチェーン70の下側部分70aに掛け、ガイド段部80bを軸受ブラケット30の駆動スプロケット60側の縦縁部30aに当接し且つ摺接させて、当該弛み検知具80を下方へ移動すれば、弛み検知具80下端の基準部位80cと軸受ブラケット30の下端部との位置関係によって、チェーン70の弛みが所定量に達したか否かを判断することができる。
例えば、前記基準部位80cが軸受ブラケット30の下端部よりも上側に位置する場合には、チェーン70のテンションが適切であり、テンション調整が不要な状態であると判断することができる。
また、基準部位80cが軸受ブラケット30の下端部よりも下側に位置する場合には、チェーン70の弛みが大きくテンション調整が必要な状態であると判断することができる。
なお、チェーン70に掛けられた弛み検知具80を下方へ引っ張る力は、一般の男性が片手でチェーンaを直交方向へ引っ張る程度の力であればよい。
【0040】
次に、本発明に係わる弛み検知具の他の形態について説明する。
なお、以下に示す弛み検知具は、上述した弛み検知具80に対し、一部の構成を変更したものであるため、その変更部分についてのみ異なる符号を付けて説明し、略同様の箇所については重複する詳細説明を省略する。
【0041】
図3に示す弛み検知具80’は、上記弛み検知具80に対し、当接片82aを当接片82a’に置換するとともに、基準片82bを基準片82b’に置換したものである。
【0042】
当接片82a’には、基準片82b’を止着するための止着孔82a2が、止着具83による止着箇所の数よりも多く上下方向に設けられる。したがって、この複数の止着孔82a2が選択的に用いられることで、当接片82a’に対する基準片82b’の上下方向位置を調整することができる。
【0043】
また、基準片82b’は、その下端側を階段状に形成することで、上下位置の異なる複数の基準部位80c1,80c2,80c3を有する。なお、他例としては、基準片82b’に代えて、下端側部分の長さが異なる複数の基準片を設けることで、前記複数の基準部位を構成するようにしてもよい。
【0044】
よって、図3に示す弛み検知具80’を用いれば、該弛み検知具80’をチェーン70に掛けて下方へ引っ張った際に、複数の基準部位80c1,80c2,80c3のうちの何れが、軸受ブラケット30の所定部位(図示例によれば下端)に達したかによって、チェーン70の弛み具合を段階的に把握することができ、ひいては、その弛み具合に応じて、後述するテンション調整方法において、スペーサの数又は厚みを調整し、チェーン70のテンションを適切に調整することができる。
また、軸受ブラケット30の大きさや形状等が異なる場合にも、基準片82b’を着脱して上下方向へずらすことで対応することができる。
【0045】
次に、上記構成の弛み検知具を用いた動力伝達用チェーンのテンション調整方法について説明する。
【0046】
先ず、弛み検知具80(又は80’)の掛合部81をチェーン70の下側部分70aに掛けて、当該弛み検知具80(又は80’)を下方へ引っ張る。そして、弛み検知具80(又は80’)下端の基準部位が軸受ブラケット30下端に達した場合には、テンション調整が必要と判断し、そうでなければテンション調整は不要と判断する。
【0047】
上記工程によってテンション調整が必要と判断された場合、巻取軸20に開閉体10を吊持する前であれば、軸受ブラケット30に対する支持部材41の位置調整等により、チェーン70の弛みを解消する。具体的には、支持部材41を軸受ブラケット30に止着するボルトの孔が水平方向へ長い長孔となっており、該長孔内で前記ボルトを移動することにより調整が行われる。そして、調整後は、支持部材41が容易に移動したりがたついたり等しないように、前記ボルトが軸受ブラケット30に溶接固定される。
【0048】
上記工程によってテンション調整が必要と判断された場合であって、巻取軸20に開閉体10を吊持した後である場合には、開閉体10の重量によりチェーン70が張り、前記のようにして支持部材41を移動することが困難になる。このため、開閉機40の基台40bを支持部材41に止着している複数の軸状部材42(例えばボルト等)を緩めて、基台40bと支持部材41の間にスペーサ200’を挿入して、チェーン70の弛みを解消する。
【0049】
後者の場合について詳細に説明すれば、先ず、開閉機40の基台40bを支持部材41に止着している複数の軸状部材42(ボルト)を緩める。
【0050】
次の工程では、開閉機40における反スプロケット側(図5によれば左側)の部分を支持部材41から引き離す。この際、基台40bのスプロケット側(図5によれば右端側)を支点とした梃子の原理により、開閉機40を容易に動かすことができる(図5(b)参照)。
【0051】
そして、次の工程では、前記工程で検知されたチェーン70の弛みに応じて、開閉機40の基台40bと支持部材41との間に、その側方側からスペーサ200’が挿入される(図5(b)参照)。
【0052】
この際、前記工程で図3に示す弛み検知具80’を用いた場合には、複数の基準部位80c1,80c2,80c3により認識されるチェーン70の弛み具合(大、中、小)に応じて、スペーサ200’の厚み又は枚数を変更する。
すなわち、弛み検知具80’による弛み検知工程において、一番下の基準部位80c1が軸受ブラケット30下端に略一致した場合には、チェーン70の弛み具合が比較的小さいものと判断し、比較的薄いスペーサ200’を用いるか、スペーサ200’の枚数を比較的少なくする。
また、弛み検知具80’による弛み検知工程において、真ん中の基準部位80c2が軸受ブラケット30下端に略一致した場合には、チェーン70の弛み具合が略中位であると判断し、中位の厚みのスペーサ200’を用いるか、スペーサ200’の枚数を中位の量とする。
弛み検知具80’による弛み検知工程において、一番上の基準部位80c3が軸受ブラケット30下端に略一致した場合には、チェーン70の弛み具合が比較的大きいものと判断し、比較的厚いスペーサ200’を用いるか、スペーサ200’の枚数を比較的多くする。
【0053】
次の工程では、開閉機40の反スプロケット側を支持部材41側へ押し戻す(図6(c)参照)。この際、上記した梃子の原理により、開閉機40を容易に動かすことができる。
【0054】
そして、前記のようにして開閉機40の反スプロケット側を支持部材41側へ押し戻しながら、あるいは押し戻した後に、スペーサ200’を、その左右端部が基台40bの左右端部と略一致する定位置まで押し込む(図6(d)参照)。
【0055】
そして、次の工程として、緩めていた複数の軸状部材42(ボルト)を全て締め付ける。
【0056】
よって、このテンション調整方法によれば、チェーン70の弛みの検知を個人差なく簡単に行える上、チェーン70の弛みを解消するテンション調整を精度良くスピーディに行うことができる。
【0057】
なお、上記実施の形態において、弛み検知具80(又は80’)の掛合部81は、チェーン70に掛けられて、チェーン70を下方へ引っ張ることが可能な形状であればよく、他例としては、フック状や、逆L字状、横向きU字状等とすることも可能である。
【0058】
また、上記実施の形態によれば、弛み検知具80(又は80’)の下端の基準部位が、軸受ブラケット30の下端に達したか否かにより、軸受ブラケット30の弛み具合を判断するようにしたが、他例としては、弛み検知具80(又は80’)の上端や、弛み検知具80(又は80’)の当接片82a(又は82a’)の下端等、弛み検知具80(又は80’)の他の部分が、軸受ブラケット30の所定部位に達したか否かにより軸受ブラケット30の弛み具合を判断するようにしてもよい。また、前記所定部位も、軸受ブラケット30の下端としてもよいし、軸受ブラケット30における他の不動部位とすることも可能である。
【0059】
また、上記実施の形態に付加する構成として、上記構成の弛み検知具80(又は80’)を磁化するようにしてもよい。
この構成について、具体的に説明すれば、例えば、弛み検知具80(80’)を磁性体から形成するとともに、該弛み検知具80(80’)における反軸受ブラケット30側となる位置に、永久磁石を固定すればよい。他例としては、弛み検知具80(又は80’)自体を磁化して磁石にした構成としてもよい。
この構成によれば、弛み検知具80(又は80’)によってチェーン70の弛みを検知する作業の際、軸受ブラケット30が磁性体(例えば亜鉛鋼板やその他の磁性鋼板等)であれば、弛み検知具80(又は80’)を磁力によって軸受ブラケット30に吸着させることができる。したがって、作業中に弛み検知具80(又は30’)を手から滑り落としてしまうようなことを防ぐことができる。
【0060】
また、上記実施の形態の弛み検知具80’のように、基準片82b’を当接片82a’に対し上下方向へ移動可能にする構成の他例としては、当接片82a’に対し基準片82b’を上下方向へスライドするように嵌合するとともに、基準片82b’を所定量スライドする毎に当接片82a’に係脱可能に係止させる構成としてもよい。また、より簡素な構造の他例としては、止着具83が挿入される基準片側の貫通孔を、上下方向へ長いスロット孔にしてもよい。
【0061】
また、上記弛み検知具80’では、基準片82b’の下端側を階段状に形成することで、上下位置の異なる複数の基準部位80c1,80c2,80c3を備えたが、この構成に代えて、上記基準片82bに上下方向に並ぶ目盛りを設け、該目盛りの何れが軸受ブラケット30の下端に一致するかによってチェーン70の弛み具合が判断されるようにしてもよい。
【0062】
また、上記弛み検知具の検知対象であるチェーン70は、図示例によれば、金属製のローラーチェーンとしているが、ゴム製チェーンやその他の材質のチェーン、あるいはベルト等とすることも可能である。
【0063】
また、弛み検知具80における摺接部82は、図2及び図3の例示によれば、当接片82a(又は82a’)と基準片82b(又は82b’)の二部材から構成したが、他例としては、前記当接片と前記基準片を一体の部材としてもよい。さらに、摺接部82の他例としては、三以上の部材からなる構成とすることも可能である。
【0064】
さらに、弛み検知具80における摺接部82の他例としては、図2又は図3に示す構成から、基準片82b(82b’)を省いた構成とすることも可能である。この構成では、掛合部81をチェーン70の下側部分70aに掛けた後、当接片82a(摺接部82)の当接面82a1を軸受ブラケット(図示例以外の形状のものを含む)に沿って下方へ滑らせるようにして用いればよい。
【0065】
また、図面には示されていないが、軸受ブラケット30には、チェーン70の弛みを検知するための感知部を、必要に応じて設けるようにしてもよい。この感知部は、接触式又は非接触式のセンサ(例えば、リミットスイッチや、マイクロスイッチ、近接スイッチ、光電センサ等)であり、チェーン70の下側部分70aの下方における駆動スプロケット60よりに配置される。このような構成とした場合には、前記感知部を、弛み検知具80の下方移動を妨げないように、弛み検知具80との干渉を避けた位置に配置する。あるいは、弛み検知具80を、前記感知部との干渉を避けることができる形状(具体的には、幅寸法や大きさ等を調整した形状)とする。
【符号の説明】
【0066】
1:シャッター装置 10:開閉体
20:巻取軸 30:軸受ブラケット
30a:縦縁部 40:開閉機
50:従動スプロケット 60:駆動スプロケット
70:チェーン 70a:下側部分
80,80’:弛み検知具 80a:開口部
80b:ガイド段部 80c,80c1,80c2,80c3:基準部位
81:掛合部 82:摺接部
82a,82a’:当接片 82b,82b’:基準片
82a2:止着孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向へ開閉動作する開閉体と、該開閉体をその上方側で巻き取ったり繰り出したりする巻取軸と、前記巻取軸を回転可能に支持する軸受ブラケットと、前記巻取軸に対しその開閉体厚さ方向側に略平行に設けられた開閉機と、前記巻取軸の端部側に設けられた従動スプロケットと、前記開閉機の出力軸に設けられた駆動スプロケットと、前記従動スプロケット及び前記駆動スプロケットに巻かれたチェーンとを備えたシャッター装置における前記チェーンの弛みを検知するための弛み検知具であって、
前記従動スプロケットと前記駆動スプロケットの間における前記チェーンの下側部分に掛けられるように形成された掛合部と、該掛合部を前記チェーンに掛合させた状態で前記軸受ブラケットに沿って下方へ滑らせるように形成された摺接部とから一体に構成されていることを特徴とする動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項2】
前記掛合部を前記チェーンに掛合させた状態で前記摺接部を前記軸受ブラケットに沿って下方へ滑らせ、前記摺接部の基準部位が前記軸受ブラケットの所定部位に達した場合に、前記チェーンの弛みが所定量に達したと認識されるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項3】
前記摺接部には、前記軸受ブラケットの縦縁部に嵌り合って上下方向へ案内されるように、上下方向へわたるガイド段部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項4】
前記摺接部は、前記掛合部を前記チェーンに掛合した状態で、前記軸受ブラケットの側面に当接する当接片と、該当接片に段状に重ね合わせられた基準片とを具備してなり、
前記当接片と前記基準片との間の段部を、前記軸受ブラケットの縦縁部に嵌り合って上下方向へ案内されるガイド段部とするとともに、前記基準片の下端を前記基準部位としていることを特徴とする請求項2記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項5】
前記基準片を前記当接片に対し上下方向へ移動可能に設けたことを特徴とする請求項4記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項6】
前記基準片の下端側を階段状に形成することで、上下位置の異なる複数の前記基準部位を備えたことを特徴とする請求項4又は5記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具。
【請求項7】
前記シャッター装置が前記開閉機を巻取軸側から支持する支持部材を備えたシャッター装置であって、該シャッター装置の前記チェーンの弛みを、請求項1乃至6何れか1項記載の動力伝達用チェーンの弛み検知具を用いて検知し調整する方法において、
前記弛み検知具を用いて前記チェーンの弛みを検知する工程と、該工程により検知された前記チェーンの弛みに応じて前記開閉機と前記支持部材との間にスペーサを挿入する工程と、を含むことを特徴とする動力伝達用チェーンのテンション調整方法。
【請求項8】
前記弛み検知具により認識される前記チェーンの弛みに応じて、前記スペーサの厚み又は枚数を変更するようにしたことを特徴とする請求項7記載の動力伝達用チェーンのテンション調整方法。
【請求項9】
前記開閉機の反スプロケット側を前記支持部材から引き離す工程と、該工程によって形成された隙間に前記スペーサを挿入する工程と、前記開閉機の反スプロケット側を前記支持部材側へ押し戻す工程と、を含むことを特徴とする請求項7又は8記載の動力伝達用チェーンのテンション調整方法。
【請求項10】
前記開閉機が複数本の軸状部材によって前記支持部材に固定され、前記スペーサが、前記複数本の軸状部材を挿通可能な単数又は複数の切欠部を有する一体の部材であることを特徴とする請求項7乃至9何れか1項記載の動力伝達用チェーンのテンション調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−215018(P2012−215018A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80807(P2011−80807)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【出願人】(398057396)文化シヤッターサービス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】