説明

動力伝達装置

【課題】バックラッシュの除去は勿論、第1溝部および第2溝部に対する転動ボールの接触面積が大きくなって伝達荷重が増加し、すべり摩擦が低減して伝達効率が高く、スラストが低下して良好な機械効率となる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】高負荷時、転動ボールは、僅かに変位して円弧面3a、5aに面接触状態で対角方向に当接する。第1溝部3および第2溝部5の円弧面3a、5aに対する転動ボール7の接触面積が大きくなって伝達荷重が増加する。高負荷時の転動ボール7は、第1溝部3および第2溝部5の各内壁の他方の円弧面3a、5aに、僅かな隙間Gpを介して対向しているだけなので、すべり摩擦が全体的に低減して伝達効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1溝部と第2溝部とに転動ボールを配置して第1動力部から第2動力部に回転力を伝達する動力伝達装置。
【背景技術】
【0002】
動力伝達装置では、自動車部品などの生産工程でロボットなどの関節部の回動変位の伝達に用いられ、組付け部品を種々の工程に送る搬送装置に組み込まれている。
この種の動力伝達装置のなかでも、エピサイクロイド曲線に沿って案内溝を形成した第一の動板とハイポサイクロイド曲線に沿って案内溝を形成した第二の動板とを転動ボールを介して重ね合わせ、第一の動板に対する第二の動板の回転駆動によりトルクを出力として伝達する転動ボール式差動減速機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このものでは、転動ボールを介して第一の動板と第二の動板とを重ね合わせるだけで済むため、全体の厚みが小さくてコンパクトになりながらも、バックラッシュがなくて伝達効率が高く、低騒音で大きなトルク伝達容量を確保できるようになっている。
【0003】
この場合、案内溝50は、図9(a)に示すように、ゴシックアーチ形であることが一般的である(例えば、特許文献2参照)。案内溝50の内壁は、転動ボール51の曲率半径R2よりも大きな曲率半径R1のため、転動ボール51は、案内溝50の内壁に二点P1、P2で接触する内接状態となる。動力伝達運転時には、転動ボール51が案内溝50の内壁に作用するので、ヘルツ応力により、転動ボール51は、案内溝50の内壁に対して接触点Q1、Q2の間の領域で面接触となり、バックラッシュがなくなる。
【特許文献1】特開平5−231490号公報
【特許文献2】特開2007−24091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ゴシックアーチ形の案内溝50を用いた場合、バックラッシュはなくなるものの、案内溝50の内壁に対する転動ボール51の接触面積は小さいため、伝達荷重が小さくなる。
また、第一の動板52および第二の動板53に平行な軸Sの周りに転動ボール51が転動する低負荷時、転動ボール51は接触点Q1、Q2に対して、差の大きな回転半径r1、r2となるため、回転に対する進み距離が異なるようになり、差動すべりに起因する摩擦が発生する。
【0005】
高負荷時には、転動ボール51の回転中心が、図9(b)に示すように、軸Sに対して傾斜して点P1−点P1を結ぶ軸Gとなるため、差動すべりは減少する。しかし、転動ボール51が案内溝50の点P1−点P1で接触するようになり、すべり摩擦が新たに加わり伝達効率が低下する。
また、第一の動板52が点P2で転動ボール51に働く伝達力Fが軸Sと成す接触角αが大きくなるため、軸Sに沿う水平力Eが生じるとともに、第二の動板53に加わるスラストThも大きくなり、動力伝達上の機械効率が低下する。
【0006】
本発明は上記の事情を考慮してなされたもので、その目的はバックラッシュの除去は勿論、第1溝部および第2溝部に対する転動ボールの接触面積が大きくなって伝達荷重が増加し、すべり摩擦が低減して伝達効率が向上し、スラストが低下して動力伝達上の機械効率が高くなる動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1について)
入力側の第1動力部は、所定の曲線に沿って形成され、深さ方向に幅狭となる第1溝部を形成している。出力側の第2動力部は、第1動力部と近接状態に並列配置されて、第1溝部に対応する第2溝部を有する。第1溝部と第2溝部とに転動ボールを配置し、第1動力部の回転時、転動ボールが第1溝部と第2溝部とに沿って転走することにより、第1動力部の回転運動を第2動力部に伝達する。
第1溝部の内壁部および第2溝部の内壁部は、各内壁部の開口縁部で転動ボールの半径またはその近傍値による円弧面を形成するとともに、円弧面の終端部で円弧面に接する平坦面を連続形成し、低負荷時に転動ボールを円弧面と平坦面との境界部へ対角方向に当接させ、高負荷時に転動ボールを第1溝部および第2溝部の円弧面へ対角方向に当接させる。
【0008】
転動ボールが第1溝部および第2溝部に沿って転走すると、低負荷時に転動ボールが第1溝部の内壁における一方の円弧面と平坦面との境界部と第2溝部の内壁における一方の円弧面と平坦面との境界部とに2点接触で対角方向に当接するので、転動ボールにぐらつきが生じずバックラッシュが発生しない。
【0009】
高負荷時に第1溝部および第2溝部に沿う方向の動力が転動ボールに働くと、転動ボールは、僅かに変位して第1溝部および第2溝部の各内壁における一方の円弧面に面接触状態に当接する。第1溝部および第2溝部の円弧面に対する転動ボールの接触面積が大きくなって伝達荷重が増加する。
高負荷時の転動ボールは、第1溝部および第2溝部の各内壁の他方の円弧面に、僅かな隙間を介して対向しているだけなので、すべり摩擦が全体的に低減して伝達効率が向上する。
転動ボールは、第1溝部および第2溝部の開口縁部の円弧面に当接しているため、第1動力部および第2動力部に沿う方向に対して、円弧面から転動ボールへ作用する伝達力の方向と成す接触角が小さくなり、第1動力部および第2動力部へのスラストが低下して動力伝達上の機械効率が高くなる。
【0010】
(請求項2について)
第1溝部および第2溝部の各内壁部は、平坦面に代わって、円弧面の終端部で円弧面に外接する曲面部を連続形成している。
平坦面の代わりに、円弧面に外接する曲面部を設けても、請求項1と同様な効果が得られる。
【0011】
(請求項3について)
第1溝部および第2溝部は、サイクロイド系曲線に沿って形成され、第1動力部に公転成分および自転成分からなる複合運動を付与し、第2動力部が複合運動から自転成分のみを受けて回転するボール式減速機を構成する。
動力伝達装置をボール式減速機に適用しても、請求項1と同様な効果が得られる。
【0012】
(請求項4について)
第1溝部は、出力軸に取り付けられたフォロアホイールに設けられ、第2溝部は入力軸に設けられたカム突条部に存するリブカム式ボール減速機を構成する。
動力伝達装置をリブカム式ボール減速機に適用しても、請求項1と同様な効果が得られる。
【0013】
(請求項5について)
第1溝部は、出力軸に取り付けられたフォロアホイールに設けられ、第2溝部は入力軸に設けられたウォーム歯車に存する直行軸ボール減速機を構成する。
動力伝達装置を直行軸ボール減速機に適用しても、請求項1と同様な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の動力伝達装置では、第1溝部および第2溝部に対する転動ボールの接触面積が大きくなって伝達荷重が増加し、すべり摩擦が低減して伝達効率が向上し、スラストが低下して動力伝達上の機械効率を向上させることができる。
【実施例1】
【0015】
図1および図2を参照しながら本発明の実施例1を説明する。
実施例1では、特に溝部の構造を詳述するため、溝部の形状を中心にして模式的に示した図1および図2を用いる。このため、動力伝達装置1は、入力側の第1動力部2に与えられた回転力は、後述する第1溝部3、転動ボール7および第2溝部5を介して出力側の第2動力部6に伝わることを前提とする。
【0016】
第1動力部2の外表面には、図1に示すように、所定の曲線に沿って形成され、深さ方向に幅狭となる断面略V字状の第1溝部3を形成している。
第2動力部6は、図2(a)、(b)に示すように、第1動力部2と近接状態に並列配置されていて、第2動力部6の外表面には、第1溝部3に対応する第2溝部5を有する。第1溝部3および第2溝部5は、所定の曲線に沿って刻設形成されている。
【0017】
第1溝部3と第2溝部5とには、転動ボール7は、例えばスチールボールとして形成されており、第1動力部2と第2溝部5との間に挟まれ、第1溝部3と第2溝部5とにわたって配置されている。第1動力部2の回転時、転動ボール7が第1溝部3と第2溝部5とに沿って転走することにより、第1動力部2の回転運動を第2動力部6に伝達する。
【0018】
第1溝部3の内壁部は、その内壁部の開口縁部3Aで転動ボール7の半径R3またはその近傍値による円弧面3aを弧長t1にわたって形成している。円弧面3aの終端部3Bにおいて、直線Lに垂直で円弧面3aに接する平坦面3bを底部3cまで線長t2にわたって連続形成している。
第2溝部5の内壁部にも、その内壁部の開口縁部5Aで転動ボール7の半径R3またはその近傍値による円弧面5aを弧長t1にわたって形成している。円弧面5aの終端部5Bにおいて、直線Mに垂直で円弧面5aに接する平坦面5bを底部5cまで線長t2にわたって連続形成している。
【0019】
低負荷時には、図2(a)に示すように、転動ボール7が第1溝部3の両内壁における一方の円弧面3aと平坦面3bとの境界部H1と第2溝部5の両内壁における一方の円弧面5aと平坦面5bとの境界部H2とに2点接触で対角方向に当接する。
高負荷時に第1溝部3および第2溝部5に沿う方向の動力Kが転動ボール7に働くと、図2(b)に示すように、転動ボール7は僅かに変位し、第1溝部3の両内壁における一方の円弧面3aと第2溝部5の両内壁における一方の円弧面5aとへ対角方向に当接する。
【0020】
上記構成では、転動ボール7が第1溝部3および第2溝部5に沿って転走すると、低負荷時に転動ボール7を円弧面3a(5a)と平坦面3b(5b)との境界部H1(H2)に2点接触で対角方向に当接するので、転動ボール7にぐらつきが生じずバックラッシュが発生しない。
精密な位置決めを行う場合、動力伝達装置の停止時に転動ボール7への負荷を減少させる使用例が多いため、停止時にバックラッシュが発生しないことは重要視されており、大きな利点である。
【0021】
高負荷時、転動ボールは、僅かに変位して円弧面3a、5aに面接触状態で対角方向に当接する。第1溝部3および第2溝部5の円弧面3a、5aに対する転動ボール7の接触面積が大きくなって伝達荷重が増加する。
高負荷時の転動ボール7は、第1溝部3および第2溝部5の各内壁の他方の円弧面3a、5aに、僅かな隙間Gpを介して対向しているだけなので、すべり摩擦が全体的に低減して伝達効率が向上する。
【0022】
転動ボール7は、第1溝部3および第2溝部5の開口縁部3A、5Aの円弧面3a、5aに当接しているため、第1動力部2および第2動力部6に沿う方向N1に対して、円弧面3aから転動ボール7へ作用する伝達力Wの方向N2と成す接触角βが小さくなり、第1動力部2および第2動力部6へのスラストTiが低下して動力伝達上の機械効率が高くなる。
ちなみに、後述する実施例2のボール式減速機Aでは、1/20の減速比で従来の二倍のトルクを適用した場合、温度上昇は23°となり、伝達効率は98%の高さを達成したことが実験により判明している。
【0023】
図3は実施例1の変形例1、2を示す。図3(a)の変形例1では、第1溝部3の底部3cおよび第2溝部5の底部5cを平底状に形成している。図3(b)の変形例2では、第1溝部3の底部3cおよび第2溝部5の底部5cを丸底状に形成している。転動ボール7は、底部3c、5cに接触しない寸法関係になっているため、先鋭状である必要はなく、平底や丸底に加えて様々な形状が考えられる。
【0024】
図4の変形例3では、第1溝部3および第2溝部5における平坦面3b、5bに代わって、円弧面3a、5aの終端部3B、5Bで円弧面3a、5aに外接する曲面部3d、5dを円弧面として連続形成している。曲面部3d、5dは、円弧面の他に双曲面、楕円面あるいは放物面線などの双曲面の一部を採用してもよい。
【実施例2】
【0025】
図5および図6は、本発明の実施例2として動力伝達装置1をボール式減速機Aに適用した例を示す。
図5(a)に示すボール式減速機Aにおいて、偏平で矩形のケーシング11の左側壁に挿通口12、右側壁に挿通口13を対向状態に形成している。ケーシング11の左側壁内面には、挿通口12と連通する透孔15を有する円盤状の第1動力部14が固定されている。円盤状の第2動力部16は、中央部に透孔17を形成し、ケーシング11内で第1動力部14と近接・対向状態に取り付けられている。
【0026】
偏心軸18はケーシング11内に設けられており、その一端部は第1動力部14の透孔15を挿通する偏心部18aとして軸受19を介して第2動力部16の透孔17内に支持されている。偏心軸18の他端は、軸受20を介して挿通口13に支持され、挿通口13から外部に突出する入力部21を備えている。この場合、偏心軸18の偏心量を後述するサイクロイド系曲線の第1案内溝25および第2案内溝26が形成する波高長に相当する寸法に設定している。
【0027】
円盤状をなす整動板22は、ケーシング11内で第2動力部16と対向状態に配置され、中央部に軸受23を介して挿通口12に支持された出力軸24を取り付けている。
第1動力部14の表面には、図6に示すように、第1案内溝25が第1溝部として周方向に形成されている。第1案内溝25は、エピサイクロイド曲線に沿って、例えば10個の波数で所定の基礎円に沿って連続刻設したものである。エピサイクロイド曲線の波高長に相当する寸法を偏心量としている。
【0028】
第2動力部16の表面には、図6に示すように、第2案内溝26が第2溝部として第1案内溝25に対応するように形成されている。第2案内溝26は、第1案内溝25よりも若干径大に設定されており、ハイポサイクロイド曲線に沿って11個の波数で所定の基礎円に沿って連続刻設したものである。ハイポサイクロイド曲線の波高長に相当する寸法を偏心量としている。
【0029】
エピサイクロイド曲線とは、所定の径寸法の基礎円に径小な円を外接状態に滑ることなく転動させた時、径小な円の任意の一点が描く軌跡であり、ハイポサイクロイド曲線とは、同様な基礎円に径小な円を内接状態に転動させた時、径小な円の任意の一点が描く軌跡である。
【0030】
第1動力部14と第2動力部16との間には、複数の転動ボール27がスチールボールとして周方向に設けられている。転動ボール27は、図5(b)に示すように、第1案内溝25と第2案内溝26にそれぞれ当接し、第1動力部14と第2動力部16とをトルク伝達可能に連結している。図5(b)は、実施例1の図2に相当する態様を示したものである。第1動力部14を第2動力部16に対して圧接することにより、転動ボール27は第1案内溝25および第2案内溝26に強く当接するようになる。
【0031】
第2動力部16の外表面で、第2案内溝26の反対側には、図5に示すように断面半円状の径小な環状溝28が等角度間隔で複数設けられている。これら環状溝28は、第1案内溝25および第2案内溝26の偏心量に相当する径寸法に設定されている。また、整動板22において環状溝28に対向する表面には、環状溝28と外径が同一で同数の円形溝29が周方向に形成されている。第2動力部16と整動板22との間には、環状溝28および円形溝29に嵌め込まれた回動ボール22aが配置されて、いわゆるオルダム軸継手を整動手段30として構成している。
【0032】
実施例2において、ボール式減速機Aを搬送用ロボットに適用した場合、偏心軸18の入力部21には電動機(図示せず)が連結され、出力軸24には関節用のアーム(図示せず)が取り付けられている。電動機への通電により、偏心軸18が回転駆動されて偏心部18aにより第2動力部16に偏心回転力が伝達される。
偏心回転力を受けた第2動力部16は、転動ボール27を第1案内溝25および第2案内溝26に沿って転走させて、第2動力部16を第1動力部14に対して公転成分と自転成分からなる複合運動を行わせる。
【0033】
第2動力部16の複合運動に伴い、転動ボール27が第1案内溝25および第2案内溝26に沿って転走する過程で、整動手段30の回動ボール22aが環状溝28および整動板22の円形溝29の各外周案内壁部を接触状態で転動する。これにより、第2動力部16の複合運動から公転変位が吸収され、整動板22に自転変位のみを伝達して出力軸24を減速状態に回転させて関節用のアームを所定の工程に移動する。
【0034】
この場合、偏心軸18の一回転量は、転動ボール27が第2案内溝26を波数1個分の長さ寸法だけ転動する距離、あるいは転動ボール27が第1案内溝25を波数1個分の長さ寸法だけ転動する距離に相当する。このため、入力部21に対する第2動力部16の減速比は、第1案内溝25と第2案内溝26との波数差に相当する数値1と第1案内溝25の波数Z1に数値2を加えたものとの比、すなわち1/(1+Z1)となる。実施例1では、波数Z1を10個としたので、減速比は1/(1+10)=1/11となる。一般に、第2案内溝26の波数をZ2とすると、減速比は[(Z2−Z1)/{(Z2−Z1)+Z1}]={1−(Z1/Z2)}の演算式により算出される。
【0035】
図5(b)において、第1案内溝25の内壁部は、円弧面25aおよび平坦面25bを有し、第2案内溝26の内壁部は、円弧面26aおよび平坦面26bを備えているため、実施例1の動力伝達装置1と同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0036】
図7は、本発明の実施例3として動力伝達装置1をリブカム式ボール減速機Bに適用した例を示す。
リブカム式ボール減速機Bは、実施例2のボール式減速機Aと同様にDVDなどの生産工程で種々の部品などを搬送するロボット技術に応用されるもので、図7(a)に示すようにハウジング32内に段付き状の出力軸33を回転可能に設けている。出力軸33には、円盤状のフォロアホイール34が一体的に回転するように同心的に嵌め込まれている。フォロアホイール34における外周部の下面には、複数の転動ボール35がスチールボールとして滑動溝36に等角度間隔で設けられている。この滑動溝36は、実施例1の第1溝部として形成している。
【0037】
駆動源(図示せず)から駆動力を受ける入力軸37は、出力軸33に直交する状態に配置されて軸受38、39により回転可能に支持されている。入力軸37は、転動ボール35に噛合する噛合面を両内壁部に複数条に形成したカム突条部40を有しており、カム突条部40の両内壁部間を第2溝部として備えるリブカム方式を採用している。
滑動溝36は、図7(b)に示すように、円弧面36aおよび平坦面36bを有し、カム突条部40は、その両内壁部間に円弧面40aおよび平坦面40bを備えているため、実施例1の動力伝達装置1と同様な効果が得られる。
【実施例4】
【0038】
図8は、本発明の実施例4として動力伝達装置1を直行軸ボール減速機Cに適用した例を示す。実施例4が実施例3と異なるところは、カム突条部40を有する入力軸37に代わって、図8(a)に示すように、ウォーム歯車41を設けたことである。ウォーム歯車41における螺旋状の突条歯41Aの両内壁部間を第2溝部としている。
滑動溝36は、図8(b)に示すように、両内壁部に円弧面36aおよび平坦面36bを有している。ウォーム歯車41は、入力シャフト42の外表面に突条歯41Aを螺旋状に形成したもので、突条歯41Aの両内壁部には、円弧面41aおよび平坦面41bを備えている。このため、実施例1の動力伝達装置1と同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明では、第1溝部および第2溝部に対する転動ボールの接触面積が大きくなって伝達荷重が増加し、すべり摩擦が低減して伝達効率が高く、スラストが低下して動力伝達上の機械効率が向上する。これにより、小型で高性能なロボット技術への応用が可能となる有益性から工作機械の効率化を求める需要者の増加に伴い、機械産業界へ広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】動力伝達装置を模式図に示す分解縦断面図である(実施例1)。
【図2】(a)は低負荷時に転動ボールが第1溝部および第2溝部に対する当接状態を示す縦断面図、(b)は高負荷時に転動ボールが第1溝部および第2溝部に対する当接状態を示す縦断面図である(実施例1)。
【図3】(a)、(b)は第1溝部および第2溝部の縦断面図である(変形例1、2)。
【図4】第1溝部および第2溝部の縦断面図である(変形例3)。
【図5】(a)はボール式減速機の縦断面図、(b)は要部の拡大縦断面図である(実施例2)。
【図6】ボール式減速機の主要部を示す分解斜視図である(実施例2)。
【図7】(a)はリブカム式ボール減速機を一部破断して示す斜視図、(b)は要部の拡大縦断面図である(実施例3)。
【図8】(a)は直行軸ボール減速機を一部破断して示す斜視図、(b)は要部の拡大縦断面図である(実施例4)。
【図9】(a)、(b)は動力伝達装置を模式的に示す縦断面図である(従来例)。
【符号の説明】
【0041】
1 動力伝達装置
2、14 第1動力部
3 第1溝部
3a 円弧面
3b 平坦面
3d、5d 曲面部
3A 開口縁部
3B 終端部
5 第2溝部
5a 円弧面
5b 平坦面
5A 開口縁部
5B 終端部
6、16 第2動力部
7、27、35 転動ボール
25 第1案内溝(第1溝部)
25a 円弧面
25b 平坦面
26 第2案内溝(第2溝部)
26a 円弧面
26b 平坦面
36 滑動溝(第1溝部)
36a 円弧面
36b 平坦面
40 カム突条部
40a 円弧面
40b 平坦面
41 ウォーム歯車
41A ウォーム歯車の突条歯
41a 円弧面
41b 平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の曲線に沿って形成され、深さ方向に幅狭となる第1溝部を形成した入力側の第1動力部と、
前記第1動力部と近接状態に並列配置されて、前記第1溝部に対応する第2溝部を有する出力側の第2動力部とを備え、
前記第1溝部と前記第2溝部とに転動ボールを配置し、前記第1動力部の回転時、前記転動ボールが前記第1溝部と前記第2溝部とに沿って転走することにより、前記第1動力部の回転運動を前記第2動力部に伝達する動力伝達装置において、
前記第1溝部の内壁部および前記第2溝部の内壁部は、各内壁部の開口縁部で前記転動ボールの半径またはその近傍値による円弧面を形成するとともに、前記円弧面の終端部で前記円弧面に接する平坦面を連続形成し、低負荷時に前記転動ボールを前記円弧面と前記平坦面との境界部へ対角方向に当接させ、高負荷時に前記転動ボールを前記第1溝部および前記第2溝部の前記円弧面へ対角方向に当接させることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記第1溝部および前記第2溝部の各内壁部は、前記平坦面に代わって、前記円弧面の終端部で前記円弧面に外接する曲面部を連続形成していることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1溝部および前記第2溝部は、サイクロイド系曲線に沿って形成され、前記第1動力部に公転成分および自転成分からなる複合運動を付与し、前記第2動力部が前記複合運動から前記自転成分のみを受けて回転するボール式減速機を構成することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第1溝部は、出力軸に取り付けられたフォロアホイールに設けられ、前記第2溝部は入力軸に設けられたカム突条部に存するリブカム式ボール減速機を構成することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記第1溝部は、出力軸に取り付けられたフォロアホイールに設けられ、前記第2溝部は入力軸に設けられたウォーム歯車に存する直行軸ボール減速機を構成することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−185956(P2009−185956A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28323(P2008−28323)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000124188)加茂精工株式会社 (14)
【Fターム(参考)】