説明

動力伝達装置

【課題】トルクチューブの振動を抑制することが可能な構造の動力伝達装置を提供する。
【解決手段】トルクチューブ300において、チューブ表面301の二次振動最大点303および三次振動最大点304において、全長方向およびそれに直交する上下方向において剛性を不均一とすることでチューブ膜301の膜振動を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動力伝達装置に関し、より特定的には、トルクチューブを有する動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トルクチューブは、たとえば特開2005−186816号公報(特許文献1)、特開2000−280769号公報(特許文献2)、特開平3−197237号公報(特許文献3)、特開平5−85210号公報(特許文献4)および特開平2−190608号公報(特許文献5)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−186816号公報
【特許文献2】特開2000−280769号公報
【特許文献3】特開平3−197237号公報
【特許文献4】特開平5−85210号公報
【特許文献5】特開平2−190608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、トルクチューブの中心軸をプロペラシャフトの中心軸より下側に配置する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2では、プロペラシャフトとの軸線に対して直交方向でトルクチューブの断面を非対称にする構成が開示されている。
【0006】
特許文献3では、トルクチューブの駆動源側の端部内壁面と駆動源外壁面間に、トルクチューブ伝達軸の軸方向および捩じれ方向の振動に対しせん断方向に変形する弾性ブッシュを介在させる構造が開示されている。
【0007】
特許文献4では、トルクチューブと排気管を一体形成する構成が開示されている。
特許文献5では、トルクチューブを二重構造とする構造が開示されている。
【0008】
しかしながら、従来の技術では、トルクチューブの膜振動により発生する振動およびノイズを減少させることが困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、トルクチューブの膜振動に起因するノイズおよび振動を抑制することが可能な構造を有する動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った動力伝達装置は、長さがLのトルクチューブを有し、端部からの距離がL/2n(nは自然数)の少なくとも1つの位置で剛性が上下方向および前後方向で非対称とされる動力伝達装置である。
【0011】
このように構成された動力伝達装置では、端部からの距離がL/2n(nは自然数)の位置は、n次の膜振動の振動の腹となる部分である。この部分で、前後方向およびそれに直交する上下方向でトルクチューブの剛性を非対称とすることでこの部分での振動を抑制する。その結果、トルクチューブの膜振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に従ったトルクチューブを有する動力伝達装置の模式図である。
【図2】図1で示す動力伝達装置のトルクチューブに形成されたリブを詳細に示す図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿った、この発明の実施の形態に従ったトルクチューブの断面図である。
【図4】チューブ膜振動を説明するために示す、この発明の実施の形態に従ったトルクチューブの断面図である。
【図5】トルクチューブのチューブ表面における第一次の膜振動を説明するためのトルクチューブの側面図である。
【図6】トルクチューブのチューブ表面における第二次の膜振動を説明するためのトルクチューブの側面図である。
【図7】トルクチューブのチューブ表面における第三次の膜振動を説明するためのトルクチューブの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従ったトルクチューブを有する動力伝達装置の模式図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1に従った動力伝達装置は、エンジン100と、エンジン100に接続されるギヤ部200と、ギヤ部200に接続されるトルクチューブ300と、トルクチューブ300に接続されるトランスミッション部400とを有する。
【0015】
エンジン100は動力を発生させる。エンジン100として、ガソリンを燃料とするガソリンエンジンだけでなく、経由を燃料とするディーゼルエンジンであってもよい。また、エンジン100は内燃機関または外燃機関だけでなくモータであってもよい。
【0016】
さらに、エンジン100を内燃機関で構成する場合、エンジン100は1つ以上のピストンを有する。エンジン100が2つ以上のピストンを有する場合、そのピストンの配列は、直列、並列、V型、W型、水平対向型などのさまざまな形式を採用することが可能である。
【0017】
エンジン100の出力シャフト510から出力された回転力はギヤ部200で回転数およびトルクが変換される。なお、ギヤ部200は必ずしも設ける必要はない。ギヤ部200において大きな減速比を得るために遊星歯車機構を用いてもよい。
【0018】
さらに、ギヤ部200において、出力の正転および逆転の切換機構を有していてもよい。
【0019】
ギヤ部200はプロペラシャフト520と接続されている。プロペラシャフト520はトルクチューブ300を貫通している。トルクチューブ300の外表面はチューブ表面301によって構成される。トルクチューブ300の長さはLである。トルクチューブ300の一端がギヤ部200に接続され、他端がトランスミッション部400に接続されている。トランスミッション部400に入力された動力は変速されて出力シャフト530から出力される。トランスミッション部400に収納される変速機は自動変速機、手動変速機またはシーケンシャル型の手動変速機であってもよい。
【0020】
図2は、図1で示す動力伝達装置のトルクチューブに形成されたリブを詳細に示す図である。図2を参照して、トルクチューブ300では、さまざまな肉厚の部分が存在する。具体的には、斜線を入れた部分が肉厚増し部311,321,331であり、斜線が入れられていない部分が薄肉部313,323,333であり、薄肉部313,323,333にリブ312,322,332が設けられている。一次振動最大点305は、チューブ表面301の第一次膜振動において、振幅が最大となる点である。二次振動最大点302,303は、チューブ表面301の第二次膜振動において振幅が最大となる点である。
【0021】
三次振動最大点304,306は、チューブ表面301の第三次膜振動において振幅が最大となる点である。
【0022】
これらの振幅が最大の点において、トルクチューブ300の長さL方向およびそれに直交する上下方向において、チューブ表面301の剛性を不均一としている。具体的には、三次振動最大点304では、長さ方向において強度が不均一にされ、さらに上下方向において強度が不均一にされている。具体的には、図2において、三次振動最大点304よりもギヤ部200側とトランスミッション部400側で形状が異なるため、この部分で剛性が不均一となる。具体的には、この部分で剛性が不連続に変化する。
【0023】
また、上下方向においても同様に、三次振動最大点304上で剛性が不連続に変化する。
【0024】
同様に、二次振動最大点303においても、長さ方向および上下方向で剛性が不均一とされている。その他の一次および三次振動最大点306、二次振動最大点302および一次振動最大点305では、上下方向においてのみ剛性が不均一とされている。
【0025】
図3は、図2中のIII−III線に沿った、この発明の実施の形態に従ったトルクチューブの断面図である。図3を参照して、三次振動最大点304とギヤ部200との間では、下側が肉厚増し部311であり、上側が薄肉部313である。薄肉部313には3本のリブ312が長手方向に延びるように設けられている。なお、このリブ312の本数はこの図3で示した3本に限られず、さらに多く、または少ないリブ312を設けてもよい。また、リブ312を設けなくてもよい。リブ312は長手方向に延びるように設けられているだけでなく、長手方向に対して所定の角度をなすように螺旋状に設けられていてもよい。
【0026】
図4は、チューブ膜振動を説明するために示す、この発明の実施の形態に従ったトルクチューブの断面図である。図4を参照して、チューブ表面301は、図4中の実線および点線で示すように膜振動する。この膜振動は、エンジン100、ギヤ部200およびトランスミッション部400から加えられる外力によって発生する。この膜振動を防止することで、ノイズおよび振動の発生を抑制することができる。
【0027】
図5は、トルクチューブのチューブ表面における第一次の膜振動を説明するためのトルクチューブの側面図である。図6は、トルクチューブのチューブ表面における第二次の膜振動を説明するためのトルクチューブの側面図である。図7は、トルクチューブのチューブ表面における第三次の膜振動を説明するためのトルクチューブの側面図である。
【0028】
図5を参照して、第一次の膜振動では、端部からの距離がL/2の一次振動最大点305で振幅が最大となる。
【0029】
図6を参照して、二次振動では、端部からの距離がL/4の二次振動最大点302,303において振幅が最大となる。
【0030】
図7を参照して、三次振動では、端部からの距離がL/6の三次振動最大点304,306の位置で振幅が最大となる。しかしながら、図5から図7で示すような膜振動を防止するために、振幅が最大となる位置において、上下および全長方向に対して剛性を不均一とすることで、上下、左右および全長方向に対称性を持つ膜振動に対してこれを抑制することが可能となる。なお、追加したリブ312,322,332は、薄肉部313,323,333に対して上下曲げ方向の剛性低下を補うために設けられている。
【0031】
すなわち、動力伝達装置は、長さがLのトルクチューブ300を有し、端部からの距離がL/2n(nは自然数)の少なくとも1つの位置で剛性が前後方向(ギヤ部200からトランスミッション部400へ向かう方向)およびこれに直交する上下方向で非対称とされる動力伝達装置である。
【0032】
従来の技術では、トルクチューブ表面のチューブは肉厚が均一な中空円筒であるため膜振動を固有モードに持つが、これが励起されると大きなノイズとなる。トルクチューブは後方のトランスミッション部と締結されているため、歯車の噛み合いを強制力とした振動エネルギがトランスミッションケースを介してトルクチューブ300に入力される。歯車の噛み合い振動はトルクチューブ300の膜振動を励起する周波数帯と重なるので、特定のギヤ段、エンジン回転数においてトルクチューブ300の膜振動を誘発する。しかしながら、上述のような技術ではこの膜振動を抑制することができる。
【0033】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
100 エンジン、200 ギヤ部、300 トルクチューブ、301 チューブ表面、302,303 二次振動最大点、304,306 三次振動最大点、305 一次振動最大点、311,321,331 肉厚増し部、312,322,332 リブ、313,323,333 薄肉部、400 トランスミッション部、510 出力シャフト、520 プロペラシャフト、530 出力シャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さがLのトルクチューブを備え、
端部からの距離がL/2n(nは自然数)の少なくとも1つの位置で剛性が上下方向および前後方向で非対称とされる、動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−215060(P2010−215060A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62736(P2009−62736)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】