説明

動力発生設備

【課題】従来の動力発生設備はプラント効率が低く、化学吸収式炭酸ガス回収装置を必要とし、温暖化効果ガスやオゾン層破壊ガスや大気汚染物質等の環境影響物質を排出する。
【解決手段】酸素燃焼蒸気発生装置と、その発生蒸気を駆動流体とする蒸気タービンと、炭化水素系燃料と酸素による加圧燃焼により発生する燃焼ガスと前記蒸気タービン排気(蒸気タービンを設置しない場合は蒸気発生装置発生蒸気、蒸気発生装置を設置しない場合は給水)との直接混合により混合流体を生成する燃焼器と、その混合流体を駆動流体とする混合流体タービンと、混合流体タービンの排気を冷却し蒸気を凝縮し炭酸ガスを主成分とする非凝縮燃焼ガスを分離する復水器と、復水器から非凝縮ガスを連続排出する回収装置と、復水の水質浄化処理装置と、燃焼により生成した余剰水の回収装置と、給水の加熱装置と、給水を昇圧する給水装置と、により動力発生設備を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化水素系燃料(以下燃料と呼称する)の酸化剤として酸素を用いる酸素燃焼動力発生設備に係り、蒸気タービンを駆動した水蒸気(排気と呼称する)または加熱器等で加熱された水(給水と呼称する)と燃焼器において酸素燃焼により生成した燃焼ガスを混合した水蒸気と燃焼ガスの混合流体(以下混合流体と呼称する)により混合流体タービンを駆動し動力を発生させ、その排気を復水器に導入し冷却し、混合流体中の水蒸気を凝縮により水(液体)にし、燃焼生成水を回収するとともに、炭酸ガスを主成分とし環境影響物質を含有する非凝縮ガス(気体)を分離回収し、化学吸収式炭酸ガス回収装置を必要としない動力発生設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に実用化された技術の中で最も高い効率が得られ、また本発明に最も類似していると思われる炭酸ガス回収機能保有ガスタービン複合発電設備(すなわち、発電機を駆動する動力発生設備)のシステム構成を示す。このシステムは、公知のガスタービン複合発電設備に、排熱回収蒸気発生装置68から排出される燃焼ガス中に含まれる炭酸ガスを分離回収するための化学薬品を吸収剤として使用する化学吸収式炭酸ガス分離回収装置70が設置された発電設備である。図1に示される従来技術による炭酸ガス分離回収発電設備の特徴及び問題点は次のとおりである。
【0003】
上記従来の動力発生設備の構成は次のとおりである。
【0004】
除塵装置61が装備された吸込み風道62を経て流入する空気は、ガスタービン66により駆動される空気圧縮機63により所定の圧力(通常3MPa以下)に加圧され、空気圧縮機出口連結管64を経て、同じく加圧されて供給される燃料(例えば、天然ガス等の炭化水素系燃料)とガスタービン燃焼器65において混合し燃焼し高温(通常1600℃以下)燃焼ガスとなりガスタービン66に導入され、大気圧近傍(おおよそ0.1MPa)まで膨張し、ガスタービンを駆動し空気圧縮機63及び発電機73の駆動動力を発生する。ガスタービン66から排出される燃焼排ガス(通常ガス温度は700℃以下)はその保有熱を回収するために排熱回収蒸気発生装置68に導入され、該排熱回収蒸気発生装置68に供給される給水を加熱し蒸気を発生し、該蒸気は蒸気管71を経て蒸気タービン72に供給され、蒸気タービンにおいて復水器75器内圧力まで膨張し蒸気タービン72を駆動し発電機73駆動動力を発生する。図1に示す従来の動力発生設備(ガスタービン複合発電設備)はガスタービン66、空気圧縮機63、蒸気タービン72及び発電機73がタービン発電機車軸74で連結されている一軸型の例を示す。一方排熱回収蒸気発生装置68からの燃焼排ガス(その温度は通常200℃以下)は蒸気発生装置出口煙道69を経て化学吸収式炭酸ガス分離装置70に導入され、排ガス中の炭酸ガスが化学吸収(アルカリ性化学薬品による吸収)により分離され回収される。回収された炭酸ガスは炭酸ガス回収管89に装備された炭酸ガス圧力制御弁90により吸込み圧力を制御し、炭酸ガス圧縮機91で加圧し、炭酸ガス送気管92を経て系外に回収し、吸収塔において吸収されなかった炭酸ガス以外の成分、すなわち窒素(N)、酸素(O)及びアルゴン(Ar)等の空気中の微量成分及び大気汚染物質である窒素酸化物(NO)やオゾン層破壊物質である亜酸化窒素(NO)等の燃焼生成物質を含有する燃焼ガスは化学吸収式炭酸ガス分離装置出口煙道93を経て煙突94から大気に放出される。
【0005】
上記従来の動力発生設備の機能及び問題点は次のとおりである。
【0006】
前記ガスタービン複合発電設備の温度―エントロピー線図(T−S線図)を図2に示す。排熱回収蒸気発生装置を設置しガスタービンの排ガス保有エネルギーを回収して蒸気を発生し、蒸気タービンによる追加的動力発生(図中「蒸気タービンサイクル」と記載)を行う複合サイクルでは、ガスタービンだけの単一サイクルより大きな出力と高いプラント効率(送電端効率)が得られるが(図2において「ガスタービンサイクル」及び「蒸気タービンサイクル」と記入し斜線を施した面積が有効仕事量を示す)、燃焼排ガス保有熱のうち排熱回収蒸気発生装置に回収されない熱損失及び蒸気タービン排気の復水器熱損失(灰色で示す)が生じる。ガスタービン複合発電方式においては、空気圧縮機の圧力比がその製作上制限され(圧力比は通常30以下)ガスタービン燃焼排ガス温度が高いので、排熱回収蒸気発生装置を設置し排熱回収により発生した蒸気により蒸気タービンを駆動し排熱を利用するが、燃焼排ガスが比較的高温(通常200〜80℃)大気圧で大気に放出されることによる熱損失が生じるとともに蒸気タービン駆動蒸気の高温高圧化が制約され蒸気タービン効率が低い欠点がある。
【0007】
また、ガスタービン燃焼排ガスは炭酸ガスの分離回収のため、排熱回収蒸気発生装置及び蒸気発生装置出口煙道を経て化学吸収式炭酸ガス分離回収装置に導入される。化学吸収式炭酸ガス分離回収装置(その詳細説明及び図等は省略する)において、燃焼排ガスは冷却水ポンプにより供給される冷却水により冷却され、昇圧送風機により昇圧され、炭酸ガス吸収塔に供給され、ここで燃焼ガス中の炭酸ガスは吸収剤と反応し炭酸ガス吸収液(以下吸収液)に固定された状態となり、吸収液循環ポンプにより昇圧され、再生吸収液ポンプにより供給される高温の再生吸収液と熱交換して加熱され、炭酸ガス脱着塔に供給される。炭酸ガス脱着塔で熱水供給ポンプにより供給される熱水により加熱され、炭酸ガスは吸収液から分離放出される。放出された炭酸ガスは炭酸ガス冷却水ポンプにより供給される冷却水により冷却され、湿分が除去され、炭酸ガス圧縮機で所定圧力に加圧され系外に回収され、炭酸ガスを放出した再生吸収液は循環ポンプにより昇圧され前記熱交換器で吸収液と熱交換して低温となり炭酸ガス吸収塔に供給され循環する。一方炭酸ガス吸収塔で吸収されなかった炭酸ガス以外の燃焼排ガス成分は化学吸収式炭酸ガス分離装置出口煙道を経て煙突から大気に放出される。このように化学吸収式炭酸ガス分離装置において、燃焼排ガス昇圧送風機、燃焼排ガス冷却水ポンプ、吸収液循環ポンプ、再生吸収液循環ポンプ、熱水供給ポンプ、炭酸ガス冷却水ポンプ及び炭酸ガス圧縮機等の多数の機器駆動に要する動力及び炭酸ガスの吸収液からの脱着に必要な大量の熱エネルギーを消費する。この動力及び熱エネルギー消費量は、次項に示すようにガスタービンの排ガス量が大きいこととあいまって通常発電設備入熱量の約12〜20%に相当し、プラント効率が炭酸ガス吸収分離装置を設置しないプラント効率に比べ通常約12〜20%低下する欠点がある。
【0008】
ガスタービンの空気比すなわちガスタービン圧縮機からガスタービンに導入される空気量の理論空気量に対する比率は、最新型の1600℃級の高温ガスタービンにおいても2以上、通常2.5〜3.5であるので理論酸素量の約10倍以上の空気量を必要とし、例えば天然ガス(以下単純化のためその成分をメタンガス100%と近似する)を燃料とする場合における発生燃焼ガス量は、次の化学反応式に示されるように理論酸素燃焼の場合の約21/3≒7倍以上(モル数基準)となる。
理論酸素量燃焼の場合の燃焼ガス量は、

CH+2O=CO+2H

空気比2の空気燃焼により生じる燃焼ガス量は、

CH+2(2(O+78.1/20.9N+0.9/20.9Ar+空気中湿分))
≒CO+2HO+2O+15N+0.7Ar+4空気中湿分

で示されるように、空気燃焼では酸素燃焼の約7倍以上の大量の燃焼ガス量が発生する。燃焼ガスには燃焼反応により生成される炭酸ガス及び水蒸気のほか、空気中の窒素、燃焼に関与しなかった余剰酸素、空気中のアルゴン及び燃焼過程で発生する窒素酸化物や亜酸化窒素等の微少成分が含まれている。ガスタービンを主機とする動力発生設備における化学吸収式炭酸ガス分離装置はこの大量の燃焼ガスを処理しなければならない欠点がある。
【0009】
このように炭酸ガス分離回収装置は、流量の大きな燃焼ガスを処理しなければならないので、構成機器が大型化し建設費が増加し、炭酸ガスの分離回収に要する動力および熱エネルギー消費量が増加し、プラント効率が大きく低下し、炭酸ガス吸収剤(たとえば、アミン、アミノ酸塩、炭酸カリ等の塩基性薬品)及びその溶液用の水を必要とし、運転経費が増加する等の問題がある。
【0010】
前記のようにガスタービンは空気比2以上の空気を使用して高温燃焼(一般に1600〜1300℃)するので、大気汚染物質である窒素酸化物(NO)のやオゾン層破壊物質である亜酸化窒素(NO)等が生成し大気に放出される問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許公開2008−255822、コンバインド発電プラント、および熱交換器
【特許文献2】特許公開2009−156033、コンバインドサイクル複合発電設備とその運転方法
【特許文献3】United States Patent、Patent Number 5,265,410、Power Generation System、p1Fig.1
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】複合発電(改訂版) p25−p49、(社)火力原子力発電技術協会、平成10年6月
【非特許文献2】コンバインドサイクル発電、電気事業連合会ウェブサイト、2009.8
【非特許文献3】GE Combined-Cycle、GEウェブサイト、2009.8
【非特許文献4】“FutureGen” Initial Conceptual Design Report Revision 2 May 2007、“FutureGen”Alliance USA(P2.1、Figure 2.1)
【非特許文献5】B208 CO2回収対応次世代型IGCCシステムの提案、日本機械学会(No08-6)第13回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集、(1頁、図1)
【非特許文献6】CO2 Separation Technique for Conventional Plants、Siemensウェブサイト、2009.8
【非特許文献7】CO2回収装置、製品情報、三菱重工ウェブサイト、2009.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来型炭酸ガス回収動力発生(または発電)設備は化学吸収式炭酸ガス分離回収装置を必要とし、プラント効率が低く、システムが複雑かつ大型のため高価で、炭酸ガスの分離回収に多量のエネルギー(動力及び熱)と化学薬品(アミノ酸塩、アミン、炭酸カリ等のアルカリ性吸収剤)と用水を必要とし、環境影響物質である窒素酸化物等やオゾン層破壊物質である亜酸化窒素等を排出し、動力発生設置に広い敷地を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記問題を解決するための手段として、特許請求の範囲に記載の動力発生設備を提供する。
【0015】
本発明は、燃料の酸素燃焼による燃焼熱を熱源とする蒸気発生装置により発生した蒸気により蒸気タービンを駆動し動力(一次動力)を発生させ、その排気、または蒸気発生装置発生蒸気、または給水と、系外から供給される燃料を系外から供給される酸素による燃焼で発生した酸素燃焼ガスと、蒸気発生装置燃焼排ガスと、を混合した混合流体により混合流体タービンを駆動し動力(二次動力)を発生させ、その排気を復水器に導入し、混合流体の主成分である水蒸気を凝縮させ復水し、大気汚染物質である窒素酸化物やオゾン層破壊物質である亜酸化窒素の発生を避けるとともに地球温暖化の主要因物質である炭酸ガスを主成分とする非凝縮ガスを分離回収することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
動力発生設備を上述の構成とし運転することにより、従来の設備に比し次のような優れた効果が得られる。
(第1の効果)駆動流体の流れを蒸気タービン次いで混合流体タービン(蒸気及び燃焼ガスの混合流体を駆動流体とする)とし高圧高温化し、混合流体タービン排気を低圧(高真空度)復水器に導入する高効率の新熱サイクルの適用によりプラント効率(発電端基準)が向上する。燃料の酸化剤を空気ではなく酸素とし昇圧を液体で行うことによる昇圧動力の低減と大量のエネルギー(動力及び熱)を消費する化学吸収式炭酸ガス分離装置の廃止とにより、液体酸素製造動力及び非凝縮ガス加圧動力増分が発生するが、所内消費動力が低減する。以上によりプラント効率(正味)が従来方式より5〜10%向上する。
(第2の効果)化学吸収式炭酸ガス分離回収装置の廃止により、大幅に簡素化されコンパクトな、信頼性の高い、経済的な動力発生設備となる。
(第3の効果)化学吸収式炭酸ガス分離回収装置の廃止により、炭酸ガス分離回収のためのエネルギー(動力及び熱)消費量が低減する。
(第4の効果)化学吸収式炭酸ガス分離回収装置の廃止により、炭酸ガス分離に必要な炭酸ガス吸収剤(アミノ酸塩、アミン等のアルカリ性化学薬品)が不要となる。
(第5の効果)化学吸収式炭酸ガス分離回収装置の廃止により炭酸ガス分離に必要な炭酸ガス吸収剤の溶液が不要となり、廃液処理の問題がない。
(第6の効果)化学吸収式炭酸ガス分離回収装置の廃止により、その設置に必要な広大な敷地が不要となり、動力発生設備の立地が容易になる。
(第7の効果)燃料の酸化剤として酸素を使用することにより大気汚染物質である窒素酸化物(NO)及びオゾン層破壊物質である亜酸化窒素(NO)が発生しない。
【0017】
前記第1の効果が得られる理由は次のように説明される。
【0018】
本発明の第一の実施例に対応する概略の温度−エントロピー線図(T−S線図)図4に示す。蒸気発生装置で発生した高圧高温蒸気は蒸気タービンに導入され高圧燃焼器圧力まで膨張し該タービンを駆動し動力を発生し(図中斜線部蒸気タービンに相当する)、高圧混合流体タービン燃焼器において系外から供給される燃料を系外から供給される酸素で燃焼した燃焼ガスとの直接混合により高圧混合流体タービンの許容する高温の駆動流体となり高圧混合流体タービンで膨張し該タービンを駆動し動力を発生し(図中斜線部高圧混合流体タービンに相当する)、高圧混合流体タービン排気は蒸気発生装置から導入される燃焼排ガス及び系外から供給される燃料を系外から供給される酸素で燃焼した燃焼ガスとの直接混合による高温の混合流体となり中圧混合流体タービンに導入され膨張し該タービンを駆動して動力を発生し(図中斜線部中圧混合流体タービンに相当する)、中圧混合流体タービン排気は低圧混合流体タービンに導入され復水器圧力まで膨張し該タービンを駆動して動力を発生する(図中斜線部低圧混合流体タービンに相当する)。復水器圧力は復水器が冷却水により冷却水温度プラスα(通常3〜8℃)に冷却され、非凝縮ガスが連続排出されることにより復水器温度に対応する飽和蒸気圧の高真空度に維持される。このように蒸気発生装置により発生した超高圧高温蒸気を、蒸気タービンで膨張して仕事をさせ(一次動力の発生)、低温になった該排気を燃料の酸素燃焼による燃焼ガスと直接混合して高温混合流体となし高圧混合流体タービンで膨張して仕事をさせ(二次動力の発生)、低温になった該混合流体タービン排気と蒸気発生装置からの燃焼排ガスと燃料の酸素燃焼による燃焼ガスを直接混合して中圧高温混合流体となし中圧混合流体タービンで膨張して仕事をさせ(三次動力の発生)、該中圧混合流体タービン排気を低圧タービンに導入し高真空度の復水器圧力まで膨張して仕事をさせる(4次動力の発生)ので高圧高温多段再燃効果(復水器損失の相対的減少)による高い発電効率が得られる。燃焼ガスと蒸気の混合した駆動流体を器内圧力の低い(高真空度)復水器に導入し膨張比を大きくすることにより低圧混合流体タービンの仕事量が増加する。因みに従来のガスタービン複合発電設備におけるガスタービン燃焼ガスは排熱回収蒸気発生装置を経てほぼ大気圧で相対的に高温(通常約200〜80℃)の状態で大気に放出される。また蒸気発生装置は高圧高温蒸気を発生させるだけでなく、加圧燃焼方式としてその燃焼排ガスは中圧燃焼器発生燃焼ガスと直接混合し高温化し中圧混合流体タービン駆動流体となし動力発生に利用される。また各混合流体タービン駆動流体の入口温度はそれぞれ許容最高温度とし高圧混合流体タービン入口圧力は低圧混合流体タービン排気が復水器圧力まで膨張し若干の湿り度を有する飽和蒸気になるように最適化される。このように蒸気タービン、高圧混合流体タービン、中圧混合流体タービン、低圧混合流体タービン及び復水器を設置し運転条件を最適化することにより、排熱回収蒸気発生装置の燃焼排ガス損失が発生せず復水器熱損失が減少し、プラント効率が向上する。液体酸素製造動力及び非凝縮ガス加圧動力増分が発生するが、化学吸収式炭酸ガス分離装置の廃止により所内消費動力が低減する。
【0019】
本発明の第二の実施例に対応する概略の温度−エントロピー線図(T−S線図)を図6に示す。第二の実施例の第一の実施例との相違点は、高圧混合流体タービンを廃止し、蒸気タービン排気を中圧燃焼器燃焼ガスと混合して中圧混合流体タービン入口駆動流体温度を該タービン許容最高温度にし、圧力を駆動流体が低圧混合流体タービンで復水器圧力まで膨張して若干の湿り度有する状態になるように設定する。このように中圧混合流体タービン入口駆動流体条件を設定することにより混合流体タービンの最高効率を得ることができる。高圧混合流体タービンの廃止により蒸気タービンの排気圧力を下げ蒸気タービンの膨張比を大きくすることにより蒸気タービンの仕事量が増え効率が向上する。このように蒸気タービン、中圧混合流体タービン及び低圧混合流体タービンを設置し運転条件を最適化することにより、排熱回収蒸気発生装置の燃焼排ガス損失が発生せず復水器熱損失が減少し、プラント効率が向上する。液体酸素製造動力及び非凝縮ガス加圧動力増分が発生するが、化学吸収式炭酸ガス分離装置の廃止により所内消費動力が低減する。
【0020】
本発明の第三の実施例に対応する概略の温度−エントロピー線図(T−S線図)を図8に示す。第三の実施例の第二の実施例との相違点は、蒸気発生装置及び蒸気タービンを廃止して、混合流体タービンの抽気により加熱した給水またはそれを減圧弁により蒸気となし中圧燃焼器燃焼ガスと混合して中圧混合流体タービン入口駆動流体温度を該タービン許容最高温度にし、圧力を駆動流体が低圧混合流体タービンで復水器圧力まで膨張して若干の湿り度有する状態になるように設定する。このように中圧混合流体タービン及び低圧混合流体タービンを設置し運転条件を最適化することにより、排熱回収蒸気発生装置の燃焼排ガス損失が発生せず復水器熱損失が減少し、プラント効率が向上する。液体酸素製造動力及び非凝縮ガス加圧動力増分が発生するが、化学吸収式炭酸ガス分離装置の廃止により所内消費動力が低減する。
【0021】
前記第2の効果が得られる理由は次のように説明される。
【0022】
本発明は蒸気または水と燃焼器において酸素燃焼により発生した燃焼ガスを混合して混合流体タービンの駆動流体としその排気を復水器に導入し冷却し、混合流体中の蒸気を凝縮させ液体にすることにより、炭酸ガスを主成分とする非凝縮ガスを分離回収する。したがって、従来方式で使用される大型化学プラントである化学吸収式炭酸ガス分離回収装置及び煙突が不要になる。本発明では酸素製造のための空気分離装置が必要であるが、動力発生設備が簡素化され、大きな建設費を必要とする化学吸収式炭酸ガス分離回収装置が不要になることにより設備がコンパクトになり経済的な信頼性の高い設備となる。
【0023】
前記第3の効果が得られる理由は次のように説明される。
【0024】
本発明は蒸気または水と酸素燃焼により発生した燃焼ガスを燃焼器において混合し混合流体タービンの駆動流体とし動力を発生させ、その排気を復水器に導入し冷却し、混合流体中の蒸気を凝縮させ液体にすることにより、炭酸ガスを主成分とする非凝縮ガスを分離回収する。したがって従来の大量の燃焼ガスを化学的処理するため多くの大型機器で構成される化学吸収式炭酸ガス回収装置が不要である。すなわち化学吸収式炭酸ガス回収装置において必要である燃焼ガスの昇圧送風機、吸収液及び再生液循環ポンプ、熱水供給ポンプ、燃焼排ガス及び炭酸ガス冷却水ポンプ等の消費動力および吸収液に吸収された炭酸ガスの加熱分離に要する大量の熱エネルギー等が不要となり、本発明では酸素製造のため空気分離装置における動力及び非凝縮ガスの圧縮動力増加が必要になるが、炭酸ガス分離回収に消費するエネルギー量が減少する。
【0025】
前記第4の効果が得られる理由は次のように説明される。
【0026】
本発明は蒸気と燃焼器において酸素燃焼により発生した燃焼ガスを混合して混合流体タービンの駆動流体としその排気を復水器に導入し冷却し、混合流体中の蒸気を凝縮させ液体にすることにより、炭酸ガスを主成分とする非凝縮ガスを分離回収する。したがって従来の化学吸収式炭酸ガス回収装置が不要であり、炭酸ガス吸収剤(アミノ酸塩、アミン、炭酸カリ等のアルカリ性薬品)が不要である。
【0027】
前記第5の効果が得られる理由は次のように説明される。
【0028】
本発明は蒸気と燃焼器において酸素燃焼により発生した燃焼ガスを混合して混合流体タービンの駆動流体としその排気を復水器に導入し冷却し、混合流体中の蒸気を凝縮させ液体にすることにより、炭酸ガスを主成分とする非凝縮ガスを分離回収する。したがって化学吸収式炭酸ガス回収装置で使用される炭酸ガス吸収剤(アミノ酸塩、アミン、炭酸カリ等のアルカリ性薬品)溶液用の水が不要となり廃水が発生しない。
【0029】
前記第6の効果が得られる理由は次のように説明される。
【0030】
本発明は蒸気または水と燃焼器において酸素燃焼により発生した燃焼ガスを混合して混合流体タービンの駆動流体としその排気を復水器に導入し冷却し、混合流体中の蒸気を凝縮させ液体にすることにより、炭酸ガスを主成分とする非凝縮ガスを分離回収する。したがって大型機器で構成され広い敷地面積(おおよそ動力発生設備と同等の敷地面積)を必要とする化学吸収式炭酸ガス回収装置および煙突が不要となり、設備建設に必要な敷地面積が大きく減少しその立地が容易になる。
【0031】
前記第7の効果が得られる理由は次のように説明される。
【0032】
従来方式では燃料の酸化剤として空気(窒素約70%酸素約21%アルゴン約0.9%で構成される)を使用し高温燃焼していたので大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)及びオゾン層破壊物質である亜酸化窒素(NO)が生成され煙突から大気に放出されていたが、燃料の酸化剤として酸素を使用し(酸素燃焼)、さらに復水器において非凝縮ガスを分離回収するので窒素酸化物及び亜酸化窒素が生成されることもなく大気に放出されることもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ガスタービン複合発電設備に炭酸ガス分離回収装置を設置した従来型炭酸ガス回収発電設備のシステム図である。
【図2】同発電設備の温度−エントロピー線図(T−S線図)である。
【図3】本発明の第一の実施例を示す動力発生設備のシステム図である。
【図4】同動力発生設備の温度−エントロピー線図(T−S線図)である。
【図5】本発明の第二の実施例を示す動力発生設備のシステム図である。
【図6】同動力発生設備の温度−エントロピー線図(T−S線図)である。
【図7】本発明の第三の実施例を示す動力発生設備のシステム図である。
【図8】同動力発生設備の温度−エントロピー線図(T−S線図)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の炭酸ガスを主成分とする非凝縮ガス回収動力発生設備実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品、寸法、配置、固定方法などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる例示に過ぎない。
【実施例1】
【0035】
以下に第一の実施例について説明する。
【0036】
図3は本発明の第一の実施例の動力発生設備の基本構成を示す。図3において1は蒸気発生装置燃焼器、2は蒸気発生装置、3は蒸気管、4は蒸気タービン、5は蒸気タービン排気管、6は高圧燃焼器、7は高圧混合流体タービン、8は高圧混合流体タービン冷却蒸気管、9は高圧混合流体タービン排気管、10は蒸気発生装置燃焼排ガス管、11は中圧燃焼器、12は中圧混合流体タービン、13は中圧混合流体タービン冷却管、14は中圧混合流体タービン排気管、15は低圧混合流体タービン、16は発電機、17は4蒸気タービン、7高圧混合流体タービン、12中圧混合流体タービン、15低圧混合流体タービン及び15発電機を連結するタービン発電機車軸、18は復水器、19は非凝縮ガス吸込み管、20は非凝縮ガス圧力制御弁、21は非凝縮ガス圧縮機、22は非凝縮ガス送気管、23は復水浄化処理装置、24は復水ポンプ、25は低圧給水管、26は回収水排出制御弁、27は回収水排出管、28は低圧給水加熱器、29は低圧給水加熱器抽気管、30は低圧給水加熱器ドレン管、31は給水ポンプ、32は高圧給水加熱器、33は高圧給水加熱器抽気管、34は高圧給水加熱器ドレン管、35は給水管、36は燃料供給母管、37は酸素供給母管、38は蒸気発生装置燃料供給管、39は同燃料制御弁、40は同酸素供給管、41は同酸素制御弁、42は同燃料酸素比率設定器、43は高圧燃焼器燃料供給管,44は同燃料制御弁、45は同酸素供給管、46は酸素制御弁、47は同燃料酸素比率設定器、48は中圧燃焼器燃料供給管,49は同燃料制御弁、50は同酸素供給管、51は酸素制御弁、52は同燃料酸素比率設定器、である。
【0037】
以下に第一の実施例における設備構成の動作を説明する。蒸気発生装置燃焼器1において系外から供給される燃料を系外から供給される酸素で燃焼して発生した燃焼ガスと高圧混合流タービン7排気の混合流体を加熱源として蒸気発生装置2で発生した高圧高温蒸気(例えば、35MPa×650℃の蒸気)は蒸気管3を経て蒸気タービン4に供給され、高圧燃焼器6の入口圧力(例えば、10MPa)まで膨張し機械エネルギーとなって該蒸気タービンを駆動し動力を発生し、蒸気タービン排気管5により高圧混合流体タービン燃焼器(以下高圧燃焼器と呼称する6)に導入される。蒸気発生装置2における蒸発量すなわち給水量はプラント負荷(必要出力)に応じて制御されるか高圧混合流体タービン入口流体温度が所定温度になるように制御される。
【0038】
高圧燃焼器6において、前記の蒸気タービン排気は系外から供給される燃料(例えば,天然ガス等の炭化水素系燃料)が系外から燃料の酸化剤として供給される酸素により燃焼して発生する燃焼ガスと混合し高温(例えば、1600℃)の蒸気燃焼ガスの混合流体となり、高圧混合流体タービン7に導入され、中圧燃焼器11圧力まで膨張し機械エネルギーとなって該タービンを駆動し動力を発生する。前記蒸気タービン4より抽気された一部の蒸気は蒸気冷却管8により供給され高圧混合流体タービン7の高温要素(たとえば、燃焼器や高温翼)を冷却した後高圧燃焼器6に投入され高圧混合流体タービン駆動流体となる。
【0039】
前記高圧燃焼器6に供給される燃料量は前記蒸気タービン4排気と混合後の蒸気燃焼ガス混合流体の温度が高圧混合流体タービン7の最高許容温度以下の所定温度(例えば、1600℃)になるように制御されるかプラント負荷に応じて制御され、酸素供給量は燃料供給量と理論当モル比近傍になるように制御される。このようにして高圧混合流体タービン駆動流体は、水蒸気及び炭酸ガスを主成分とし、ごく微少量の酸素、またはメタンまたは一酸化炭素または水素及びアルゴン等の物質を含む混合流体である。
【0040】
高圧混合流体タービン7排気は蒸気発生装置燃焼器1に導入され、系外から供給される燃料が系外から燃料酸化剤として供給される酸素により燃焼して発生する燃焼ガスと混合し高温混合流体となり、蒸気発生装置2に導入され給水の加熱源となり前記の蒸気を発生した後、蒸気発生装置排気管10により中圧燃焼器11に導入され、中圧燃焼器11において系外から供給される燃料が系外から燃料酸化剤として供給される酸素により燃焼して発生する燃焼ガスと混合し高温(混合流体が低圧混合流体タービンにおいて復水器18の入口圧力まで膨張し排気が若干の湿り度を持つ飽和温度となる温度)の混合流体となり、中圧混合流体タービン12に導入され膨張し機械エネルギーとなって該タービンを駆動し動力を発生する。前記高圧混合流体タービン7より抽気された一部の混合流体は中圧混合流体タービン冷却管13により中圧混合流体タービン12に導入されその高温要素(たとえば、燃焼器や高温翼)を冷却した後中圧燃焼器11に投入され中圧混合流体タービン12の駆動流体となる。
【0041】
中圧混合流体タービンで膨張して仕事をした混合流体は低圧(例えば、0.5MPa)となり、中圧混合流体タービン排気管14を経て低圧混合流体タービン15に供給され、復水器圧力(例えば、0.005MPa)まで膨張し機械エネルギーとなって動力を発生し、排気は復水器18に導入される。中圧混合流体タービンまたは低圧混合流体タービン入口及びその中間段より抽気した混合流体は、それぞれ高圧給水加熱器抽気管33及び低圧給水加熱器抽気管29を経て高圧給水加熱器32及び低圧給水加熱器31に供給され蒸気発生装置2に供給される給水を加熱する。本発明の実施の形態では、蒸気タービン4、高圧混合流体タービン7、中圧混合流体タービン12、低圧混合流体タービン15及び発電機16がタービン発電機車軸17により一軸で結合され、発電機を駆動し電力を発生する例を示している。中圧混合流体タービンの入口圧力が高くない(例えば、3MPa以下)場合や中圧タービン容量が大きくない(例えば300MW以下)場合は、中圧タービンと低圧タービンを一体化することもできる。
【0042】
復水器には非凝縮ガス吸込み管19、非凝縮ガス圧力制御弁20、非凝縮ガス圧縮機21及び非凝縮ガス送気管22等より構成される非凝縮ガス回収装置が装備される。低圧混合流体タービン15排気は復水器18器内圧力まで膨張し若干の湿り度を持つ飽和流体となって復水器に流入し、冷却され水蒸気は潜熱を冷却水に放出して凝縮し水になるので、非凝縮ガスが受動的に分離される。非凝縮ガスは非凝縮ガス圧縮機21により非凝縮ガス送気管22を経て系外に回収され、非凝縮ガス吸込み管19における吸込み圧力は復水器圧力と同等圧力になるように非凝縮ガス圧力制御弁20により制御される。このように非凝縮ガスの連続排出により、復水器18の器内圧は復水器冷却水温度プラスα(通常3〜8℃)の温度に対応する飽和圧力に保持される。
【0043】
復水器18で凝縮した復水は復水浄化処理装置23において必要な水質になるように処理され、復水ポンプ24で昇圧され、蒸気発生装置燃焼器1及び高圧燃焼器7及び中圧燃焼器7において燃料の燃焼により生成される蒸気量に相当する余剰水は回収水制御弁26により制御され回収水排出管27を経て系外に回収され、残りはサイクル流体として低圧給水管25を経て低圧給水加熱器28に供給される。
【0044】
低圧混合流体タービン15の比較的低温部より抽気し低圧給水加熱器抽気管29を経て低圧給水加熱器28へ供給される相対的に低温の混合流体及び高圧給水加熱器ドレン管34より流入する高圧給水加熱器ドレンを加熱源として低圧給水が加熱され、低圧給水加熱器ドレンは低圧給水加熱器ドレン管30を経て復水器18に回収される。加熱された低圧給水は給水ポンプ31により蒸気タービン4の入口蒸気が所定の圧力になるように昇圧され高圧給水加熱器32に供給され、低圧混合流体タービン入口ないしはその高温部から抽気し高圧給水加熱器抽気管33を経て供給される相対的に高温の混合流体を加熱源として所定温度に加熱され給水管35を経て蒸気発生装置2へ供給される。
【0045】
このように、本発明の第一の実施例の動力発生設備は、高圧給水が供給され、酸素燃焼による燃焼ガスを加熱源とする蒸気発生装置により発生した高圧高温蒸気で駆動される蒸気タービンと、蒸気タービン排気と高圧燃焼器で発生する酸素燃焼ガスが混合した高圧高温の混合流体で駆動される高圧混合流体タービンと、蒸気発生装置からの燃焼排ガス(混合流体)と中圧燃焼器で発生する酸素燃焼ガスが混合した混合流体で駆動される中圧混合流体タービンと、中圧混合流体タービン排気を駆動流体とする低圧混合流体タービンと、これらのタービンと同一軸で連結され駆動される発電機で構成され、炭酸ガスを主成分とする非凝縮ガスを水蒸気の凝縮により分離する復水器を設置した動力発生設備である。
【実施例2】
【0046】
以下に第二の実施例について説明する。
【0047】
図5は本発明の第二の実施例の非凝縮ガス回収動力発生設備の基本構成を示す。図5において1は蒸気発生装置燃焼器、2は蒸気発生装置、3は蒸気管、4は蒸気タービン、5は蒸気タービン排気管、10は蒸気発生装置排気管、11は中圧燃焼器、12は中圧混合流体タービン、13は中圧混合流体タービン冷却管、14は中圧混合流体タービン排気管、15は低圧混合流体タービン、16は発電機、17は4高圧蒸気タービン、12中圧混合流体タービン、15低圧混合流体タービン及び16発電機を連結する車軸、18は復水器、19は非凝縮ガス吸込み管、20は非凝縮ガス圧力制御弁、21は非凝縮ガス圧縮機、22は非凝縮ガス送気管、23は復水浄化処理装置。24は復水ポンプ、25は低圧給水管、26は回収水排出制御弁、27は回収水排出管、28は低圧給水加熱器、29は低圧給水加熱器抽気管、33は低圧給水加熱器ドレン管、31は給水ポンプ、32は高圧給水加熱器、33は高圧給水加熱器抽気管、34高圧給水加熱器ドレン管、35は給水管、36は燃料供給母管、37は酸素供給母管、38は蒸気発生装置燃料供給管、39は同燃料制御弁、40は同酸素供給管、41は同酸素制御弁、42は同燃料酸素比率設定器、48は中圧燃焼器燃料供給管、49は同燃料制御弁、50は同酸素供給管、51は酸素制御弁、52は同燃料酸素比率設定器、である。このように本発明の第二の実施形態の動力発生設備の第一の実施形態の動力発生設備との基本的違いは、高圧燃焼器及び高圧混合流体タービンを設置していないことである。
【0048】
以下に第二の実施例における設備構成の動作を説明する。蒸気発生装置燃焼器1において系外から供給される燃料を系外から供給される酸素で燃焼して発生した燃焼ガスと中圧混合流体タービン排気の混合流体を加熱源として蒸気発生装置2で発生した高圧高温蒸気(例えば、35MPa×650℃の蒸気)は蒸気管3を経て蒸気タービン4に供給され、中圧燃焼器6の入口圧力(例えば、3〜8MPa)まで膨張し機械エネルギーとなって該蒸気タービンを駆動し動力を発生し、蒸気タービン排気管5により中圧燃焼器11に導入される。
【0049】
中圧燃焼器11において、前記の高圧蒸気タービン排気は系外から供給される燃料(例えば,天然ガス等の炭化水素系燃料)が系外から燃料酸化剤として供給される酸素により燃焼して発生する燃焼ガスと混合し高温(例えば、1600℃)の蒸気燃焼ガスの混合流体となり、中圧混合流体タービン12に導入されほぼ低圧混合流体タービン15入口圧力まで膨張し機械エネルギーとなって該タービンを駆動し動力を発生する。中圧混合流体タービン入口圧力は、混合流体が低圧混合流体タービンにおいて復水器18器内圧力まで膨張し排気が若干の湿り度を持つ飽和温度となる圧力に設定される。前記蒸気タービン4より抽気された一部の蒸気は蒸気冷却管13により中圧混合流体タービン12に導入されその高温要素(たとえば、燃焼器や高温翼)を冷却した後中圧燃焼器11に投入され中圧混合流体タービン駆動流体となる。
【0050】
前記中圧燃焼器11に供給される燃料量は、プラント負荷に応じまたはその発生燃焼ガスと前記蒸気タービン4排気の混合後の温度が中圧混合流体タービン12の最高許容温度以下の所定温度になるように供給され、酸素供給量は燃料量と理論当モル比またはその近傍に制御される。このように中圧混合流体タービン駆動流体は、水蒸気及び炭酸ガスを主成分とし、ごく微少量の酸素、またはメタンまたは一酸化炭素または水素及びアルゴン等の物質を含む混合流体である。
【0051】
中圧混合流体タービン12の排気は前記のように蒸気発生装置燃焼器1に供給され、ここで系外から供給される燃料と同じく系外から供給される酸素との燃焼により発生する燃焼ガスと混合し、蒸気発生のための加熱源として蒸気発生装置2に導入される。蒸気発生装置2からの燃焼排ガスは蒸気発生装置排気管10により低圧混合流体タービン15に導入されその駆動流体となる。
【0052】
低圧混合流体タービン15に供給された混合流体は、復水器圧力(例えば、0.005MPa)まで膨張し機械エネルギーとなって動力を発生し、排気は復水器18に導入される。中圧混合流体タービンまたは低圧混合流体タービン入口及び低圧混合流体タービン中間段より抽気した混合流体は、それぞれ高圧給水加熱器抽気管33及び低圧給水加熱器抽気管29を経て高圧給水加熱器及び低圧給水加熱器に供給され蒸気発生装置2に供給される給水を加熱する。本発明の実施の形態では、蒸気タービン4、中圧混合流体タービン12、低圧混合流体タービン15及び発電機16がタービン発電機車軸17により一軸で結合され、発電機を駆動し電力を発生する例を示している。中圧タービンの入口圧力が高くない(例えば、3MPa以下)場合や中圧及び低圧混合流体タービン容量が大きくない(例えば300MW以下)場合は、中圧混合流体タービンと低圧混合流体タービンを一体化する。
【0053】
復水器には非凝縮ガス吸込み管19、非凝縮ガス圧力制御弁20、非凝縮ガス圧縮機21及び非凝縮ガス送気管22等より構成される非凝縮ガス回収装置が装備される。低圧混合流体タービン15排気は復水器18器内圧力まで膨張し若干の湿り度を持つ飽和流体となって復水器に流入し、冷却され水蒸気は潜熱を冷却水に放出して凝縮し水になり、非凝縮ガスが受動的に分離される。非凝縮ガスは非凝縮ガス圧縮機20により非凝縮ガス送気管22を経て系外に回収され、非凝縮ガス吸込み管19における吸込み圧力は復水器圧力と同等圧力になるように非凝縮ガス圧力制御弁20により制御される。このように復水器18の内圧は復水器冷却水温度プラスα(通常3〜8℃)の温度の飽和圧力に保持される。
【0054】
復水器18で凝縮した復水は復水浄化処理装置23において必要な水質になるように処理され、復水ポンプ24で昇圧され、蒸気発生装置燃焼器1及び中圧燃焼器11において燃料の燃焼により生成される蒸気量に相当する余剰水は回収水制御弁26により制御され回収水排出管27を経て系外に回収され、残りはサイクル流体として低圧給水管25を経て低圧給水加熱器28に供給される。
【0055】
低圧混合流体タービン15の比較的低温部より抽気し低圧給水加熱器抽気管29を経て低圧給水加熱器28へ供給される相対的に低温の混合流体及び高圧給水加熱器ドレン管34より流入する高圧給水加熱器ドレンを加熱源として低圧給水が加熱され、低圧給水加熱器ドレンは低圧給水加熱器ドレン管30を経て復水器18に回収される。加熱された低圧給水は給水ポンプ31により蒸気タービン4の入口蒸気が所定の圧力になるように昇圧され高圧給水加熱器32に供給され、中圧混合流体タービンまたは低圧混合流体タービン入口ないしはその高温部から抽気し高圧給水加熱器抽気管33を経て供給される相対的に高温の混合流体を加熱源として所定温度に加熱され給水管35を経て蒸気発生装置2へ供給される。
【0056】
このように、本発明の第二の実施例の動力発生設備は、酸素燃焼による燃焼ガスと中圧混合流体タービン排気の混合流体を高圧給水の加熱源とする蒸気発生装置により発生した高圧高温蒸気で駆動される蒸気タービンと、蒸気タービン排気と中圧燃焼器で発生する酸素燃焼ガスが混合した高圧高温の混合流体で駆動される中圧混合流体タービンと、中圧混合流体タービン排気と蒸気発生装置からの酸素燃焼排ガスの混合流体を加熱源とする蒸気発生装置からの排ガス(混合流体)を駆動流体とする低圧混合流体タービンと、これらのタービンと同一軸で連結され駆動される発電機と、炭酸ガスを主成分とする非凝縮ガスを水蒸気の凝縮により分離する復水器を設置した動力発生設備である。
【実施例3】
【0057】
以下に本発明の第三の実施例について説明する。
【0058】
図7は本発明の第三の実施例の動力発生設備の基本構成を示す。図7において35は給水管、53は給水減圧弁、11は中圧燃焼器、12は中圧混合流体タービン、13は中圧混合流体タービン冷却管、14は中圧混合流体タービン排気管、15は低圧混合流体タービン、16は発電機、17は中圧混合流体タービン、低圧混合流体タービン及び発電機を連結するタービン発電機車軸、18は復水器、19は非凝縮ガス吸込み管、20は非凝縮ガス圧力制御弁、21は非凝縮ガス圧縮機、22は非凝縮ガス送気管、23は復水浄化装置。24は復水ポンプ、25は低圧給水管、26は回収水排出制御弁、27は回収水排出管、28は低圧給水加熱器、29は低圧給水加熱器抽気管、33は低圧給水加熱器ドレン管、31は給水ポンプ、32は高圧給水加熱器、33は高圧給水加熱器抽気管、34高圧給水加熱器ドレン管、35は給水管、36は燃料供給母管、37は酸素供給母艦、48は中圧燃焼器燃料供給管,49は同燃料制御弁、50は同酸素供給管、51は酸素制御弁、52は同燃料酸素比率設定器、である。このように本発明の第三の実施形態の動力発生設備の前記第二の実施形態との基本的な違いは、蒸気発生装置及び蒸気タービンを設置していないことである。
【0059】
以下に第三の実施例における設備構成の動作を説明する。中圧混合流体タービン12の入口混合流体温度を制御する給水は、給水ポンプ31により昇圧され給水加熱器32で加熱され高温水または蒸気となって中圧燃焼器11に導入される。高圧高温水の場合は給水管35に装備された給水減圧弁53により中圧燃焼器11圧力まで減圧され蒸気となって中圧燃焼器11に導入される。
【0060】
中圧燃焼器11において、前記の蒸気または給水は系外から供給される燃料(例えば、天然ガス等の炭化水素系燃料)が系外から燃料酸化剤として供給される酸素により燃焼して発生する燃焼ガスと混合し高温(例えば、1600℃)の蒸気燃焼ガスの混合流体となり、中圧混合流体タービン12に導入され低圧混合流体タービン15入口圧力まで膨張し機械エネルギーとなって該タービンを駆動し動力を発生する。中圧混合流体タービン入口圧力は、混合流体が低圧混合流体タービンにおいて復水器18器内圧力まで膨張し排気が若干の湿り度を持つ飽和温度となる圧力に設定される。前記給水の減圧により発生した蒸気の一部は蒸気冷却管13により中圧混合流体タービン12に導入されその高温要素(たとえば、高温翼や燃焼器)を冷却した後中圧燃焼器11に投入され中圧混合流体タービン駆動流体となる。
【0061】
前記中圧燃焼器11に供給される給水の減圧等により発生した蒸気または給水の供給量は発電設備の負荷に応じまたは中圧混合流体タービン入口温度が所定の温度になるように制御され、燃料量は燃焼器において系外から供給される燃料(例えば、天然ガス等の炭化水素系燃料)が系外から燃料酸化剤として供給される酸素により燃焼して発生する酸素燃焼ガスと前記の蒸気または給水が混合した混合流体の中圧混合流体タービン入口温度が最高許容温度以下の所定の温度になるようにまたは発電設備の負荷に応じ制御される。また酸素供給量は燃料量と理論当モル比またはその近傍に制御される。このように中圧混合流体タービン駆動流体は、水蒸気及び炭酸ガスを主成分とし、ごく微少量の酸素、またはメタンまたは一酸化炭素または水素及びアルゴン等の物質を含む混合流体である。
【0062】
中圧混合流体タービン12の排気は中圧混合流体タービン排気管を経て低圧混合流体タービンに導入されその駆動流体となる。
【0063】
低圧混合流体タービンに供給された混合流体は、復水器圧力(例えば、0.005MPa)まで膨張し機械エネルギーとなって動力を発生し、排気は復水器に導入される。中圧混合流体タービンまたは低圧混合流体タービン入口及び低圧混合流体タービン中間段より抽気した混合流体は、それぞれ高圧給水加熱器抽気管33及び低圧給水加熱器抽気管29を経て高圧給水加熱器及び低圧給水加熱器に供給され蒸気発生装置2に供給される給水を加熱する。本発明の実施の形態では、中圧混合流体タービン12、低圧混合流体タービン15及び発電機16がタービン発電機車軸17により一軸で結合され、発電機を駆動し電力を発生する例を示している。中圧混合流体タービンの入口圧力が高くない(例えば、8MPa以下)場合や中圧及び低圧混合流体タービン容量が大きくない(例えば300MW以下)場合は、中圧混合流体タービンと低圧混合流体タービンを一体化することもできる。このように本発明の第三の実施形態は蒸気発生装置及び蒸気タービンを設置せず、高温高圧の混合流体を復水器圧力まで膨張させ高い発電効率を得ると共に復水器において非凝縮ガスを分離回収する簡潔な動力発生設備である。
【実施例4】
【0064】
(実施例1)の動力発生設備において、前記蒸気発生装置から供給される燃焼ガスを第二の混合流体タービン排気と混合して第三の混合流体タービンの駆動流体とする動力発生装置。(実施例1)の動力発生設備と比較しプラント効率が僅かに低下するが、蒸気発生装置の加熱側圧力が低下するので蒸気発生装置の設備費が低下する。
【実施例5】
【0065】
(実施例2)の動力発生設備において、第一の燃焼器において蒸気タービン排気と前記蒸気発生装置から供給される燃焼ガスと酸素を燃料酸化剤として燃焼した燃焼ガスとを混合し、第一の混合流体タービンの駆動流体とする動力発生設備。(実施例2)の動力発生設備と比較しプラント効率が上昇するが、蒸気発生装置の加熱側圧力が増加するので蒸気発生装置の設備費が増加する。
【実施例6】
【0066】
(実施例1)、(実施例2)、(実施例3)、(実施例4)及び(実施例5)において、給水量を動力発生設備の負荷(出力)に応じて制御し、蒸気発生装置出口蒸気温度が所定の温度になるように蒸気発生装置燃焼器への燃料供給量を制御し、混合流体タービン入口の混合流体温度が所定温度になるように第一及び第二燃焼器への燃料供給量を制御することを特徴とする動力発生設備。
【実施例7】
【0067】
(実施例1)、(実施例2)、(実施例3)、(実施例4)及び(実施例5)において、第一燃焼器への燃料供給量を動力発生設備の負荷(出力)に応じて制御し、蒸気発生装置への給水量を第一混合流体タービン入口混合流体温度が所定温度になるように制御し、蒸気発生装置出口蒸気温度が所定の温度になるように蒸気発生装置燃焼器への燃料供給量を制御し、第二燃焼器への燃料供給量を第二混合流体タービン入口混合流体温度が所定温度になるように制御することを特徴とした動力発生設備。
【実施例8】
【0068】
(実施例1)、(実施例2)、(実施例3)、(実施例4)及び(実施例5)において、酸素供給量を燃料供給量の理論当モル比またはその近傍の一定比率となるように制御することを特徴とした動力発生設備。
【実施例9】
【0069】
(実施例1)、(実施例2)、(実施例3)、(実施例4)及び(実施例5)において、第一の混合流体タービン入口圧力を、最終の混合流体タービンにおいて復水器圧力まで膨張した混合流体が復水器圧力に対応する若干の湿り度を持つ飽和温度になるように制御することを特徴とした動力発生設備。
【実施例10】
【0070】
(実施例1)及び(実施例4)において、第二の混合流体タービン入口温度を、最終の混合流体タービンにおいてが復水器圧力まで膨張した混合流体が復水器圧力に対応する若干の湿り度を持つ飽和温度になるように第二燃焼器への燃料供給量を制御することを特徴とした動力発生設備。
【産業上の利用可能性】
【0071】
火力発電及び工場等における固定動力発生設備
【0072】
化石燃料の燃焼により発生する炭酸ガスの分離回収設備
【符号の説明】
【0073】
本発明の実施例を示す図3、図5及び図7の符号を以下に説明する。
1 蒸気発生装置燃焼器 28 低圧給水加熱器
2 蒸気発生装置 29 低温抽気管
3 蒸気管 30 低圧給水加熱器ドレン管
4 蒸気タービン 31 給水ポンプ
5 蒸気タービン排気管 32 高圧給水加熱器
6 高圧燃焼器 33 高温抽気管
7 高圧混合流体タービン 34 高圧給水加熱器ドレン管
8 高圧混合流体タービン冷却蒸気管 35 給水管
9 高圧混合流体タービン排気管 36 燃料供給母管
10 蒸気発生装置排気管 37 酸素供給母管
11 中圧燃焼器 38 蒸気発生装置燃料管
12 中圧混合流体タービン 39 蒸気発生装置燃料制御弁
13 中圧合流体タービン冷却管 40 蒸気発生装置酸素管
14 中圧混合流体タービン排気管 41 蒸気発生装置酸素制御弁
15 低圧混合流体タービン 42 蒸気発生装置燃料酸素比率設定器
16 発電機 43 高圧混合流体タービン燃料管
17 タービン発電機車軸 44 高圧混合流体タービン燃料制御弁
18 復水器 45 高圧混合流体タービン酸素管
19 非凝縮ガス吸込み管 46 高圧混合流体タービン酸素制御弁
20 非凝縮ガス圧力制御弁 47 高圧混合流体タービン燃料酸素比率設定器
21 非凝縮ガス圧縮機 48 中圧混合流体タービン燃料管
22 非凝縮ガス送気管 49 中圧混合流体タービン燃料制御弁
23 復水浄化処理装置 50 中圧混合流体タービン酸素管
24 復水ポンプ 51 中圧混合流体タービン酸素制御弁
25 低圧給水管 52 中圧混合流体タービン燃料酸素比率設定器
26 回収水排出制御弁 53 給水減圧弁
27 回収水排出管
【0074】
本発明の背景技術を示す図1の符号を以下に説明する。
61 空気除塵装置 78 低圧給水管
62 吸込み風道 79 低圧給水加熱器
63 空気圧縮機 80 低温抽気管
64 空気圧縮機出口連結管 81 低圧給水加熱気ドレン管
65 ガスタービン燃焼器 82 給水ポンプ
66 ガスタービン 83 高圧給水加熱器
67 ガスタービン排気管 84 高温抽気管
68 排熱回収蒸気発生装置 85 高圧給水加熱気ドレン管
69 蒸気発生装置出口煙道 86 給水管
70 化学吸収式炭酸ガス回収装置 87 燃料供給管
71 蒸気管 88 燃料制御弁
72 蒸気タービン 89 化学吸収式炭酸ガス回収装置出口排出管
73 発電機 90 炭酸ガス圧力制御弁
74 タービン発電機車軸 91 炭酸ガス圧縮機
75 復水器 92 炭酸ガス送気管
76 復水ポンプ 93 化学吸収式炭酸ガス回収装置出口煙道
77 復水浄化処理装置 94 煙突

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素燃焼蒸気発生装置により発生する蒸気を駆動流体とする蒸気タービンと、該蒸気タービン排気(蒸気タービンを設置しない場合は酸素燃焼蒸気発生装置において発生する高圧高温蒸気、酸素燃焼蒸気発生装置を設置しない場合は高圧高温水またはその減圧により発生した蒸気)と酸素を燃料酸化剤として発生する燃焼ガスとを混合し蒸気燃焼ガス混合流体を生成する燃焼器と、該混合流体を駆動流体とする混合流体タービンと、該混合流体タービン排気を冷却し混合流体の含有する水蒸気を凝縮することにより非凝縮ガスを分離し回収する装置を具備した復水器と、復水の浄化処理装置と、余剰水を系外に回収する水回収装置と、前記混合流体タービンの抽気または排気を加熱源とする給水加熱器と、給水ポンプ等の給水設備と、を装備した動力発生設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−58403(P2011−58403A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207741(P2009−207741)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(309032854)
【Fターム(参考)】