説明

動吸振器および光ディスク装置

【課題】 厚さ方向の設計上の制限を解消できる、動吸振器およびそれを用いた光ディスク装置を提供する。
【解決手段】 動吸振器は、偏重心ディスク(図示せず)を回転駆動するスピンドルモータ13を保持するベースシャシ11と、ベースシャシ11に対して、第1弾性体15a、15bを介して接続された動吸振子14aと、第1弾性体15c〜15eを介して接続された動吸振子14bとを含み、ベースシャシ11と動吸振子14a、14bとは、略同一平面上に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は動吸振器およびそれを用いた光ディスク装置に関し、特に、フラットな動吸振器およびそれを用いた光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ディスク用の動吸振器が、たとえば下記の特許文献1や特許文献2に開示されている。図5は特許文献1および2に開示された光ディスク装置の要部の構成を単純化した模式図である。
【0003】
図5を参照して、従来の光ディスク装置においては、ディスクを回転駆動させるスピンドルモータやディスクの情報を読取るピックアップ等はベースシャシ52に取付けられ、ベースシャシ52は弾性体53a、53bを介して筐体51に取付けられている。
【0004】
最近ディスクの回転数が上昇し、それに伴う振動を回避するために、動吸振器が設けられるようになってきた。この場合、スピンドルモータによって回転駆動する偏重心ディスク(図示せず)による振動を減衰するための動吸振子55は弾性体54a、54bを介してベースシャシ52に取付けられている。
【特許文献1】特開2001−256762号公報(段落番号0008、図1および図2)
【特許文献2】特開2001−355670号公報(段落番号0016、0017および図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の動吸振器およびそれを用いた光ディスク装置は上記のように構成されていた。図5に示すように、動吸振子55は、弾性体54a、54bを介してベースシャシ52の上面または下面に取付けられるため、その構造上ディスクとのクリアランスや、筐体とのクリアランスを確保するために、ユニット設計上の制限が課されていた。また、所定の厚みが必要であるため、これまで、薄型タイプの機種や、ノートパソコン用の薄型ドライブには動吸振器を使用することができなかった。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、厚さ方向の設計上の制限を解消できる、動吸振器およびそれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる動吸振器は、回転体を保持するベースシャシと、ベースシャシに、第1弾性体を介して接続された動吸振子とを含み、ベースシャシと動吸振子とは、略同一平面上に設けられる。
【0008】
ベースシャシと動吸振子とは、略同一平面上に設けられるため、従来のように、動吸振子がベースシャシから突出しない。
【0009】
その結果、厚さ方向の設計上の制限を解消できる、動吸振器を提供できる。
【0010】
上記動吸振器は、光ディスク装置に搭載するのが好ましい。そうすれば、厚さ方向の設計上の制限を解消できる、光ディスク装置が提供できる。
【0011】
好ましくは、ベースシャシは、第2弾性体を介して、筐体に支持される。
【0012】
さらに好ましくは、動吸振子は、ピックアップの移動する第1の方向に配列された第1動吸振子と、第1動吸振子に対して直交する方向に配列された第2動吸振子とを含む。
【0013】
この発明の他の構成においては、動吸振器は、回転体を保持する平面状のベースシャシを含み、ベースシャシは、開口部を有し、開口部に、第1弾性体を介して設けられた平面上の動吸振子とを含む。
【0014】
平面状のベースシャシの開口部に、第1弾性体を介して平面上の動吸振子が設けられるため、ベースシャシと動吸振子とは、略同一平面上に設けられる。
【0015】
その結果、厚さ方向の設計上の制限を解消できる、動吸振器を提供できる。
【0016】
なお、ベースシャシは多角形状であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1はこの発明の一実施の形態にかかる、動吸振器およびそれを用いた光ディスク装置を示す平面図であり、図2は、図1において、II-IIで示す部分の断面図である。なお、図2においては、動吸振子については、ハッチングを入れていない。また、この実施の形態は、ハーフハイトの光ディスク装置にこの発明による動吸振器を適用している。なお、ここでいう光ディスク装置とは、CD、CD-ROM、DVD、DVD-ROM等の光ディスク、光磁気ディスク、大容量FD等の光メディアディスクを駆動する装置をいう。
【0018】
図1および2を参照して、光ディスク装置10は、矩形の平面状のベースシャシ11と、べースシャシ11の4隅に設けられた第2弾性体12a〜12dとを含み、この第2弾性体12a〜12dを介して、ベースシャシ11が筐体30に取付けられている。ピックアップ10aは、図中X方向(第1の方向)に移動しながら、データの読み書きを行なう。
【0019】
偏重心ディスク(図示せず)はベースシャシ11に取付けたスピンドルモータ13に載置されて、スピンドルモータ13により回転駆動される。ここで、偏重心ディスクとは、ディスクの製造時に発生するそり、およびエンドユーザの使用(ディスクへのシールの貼付やディスク面への印刷等)により、重心が偏ったディスクをいう。
【0020】
ベースシャシ11には、第2弾性体12bと12cとの間、および第2弾性体12cと12dとの間に、開口部17および18が設けられている。開口部17には、その両端を第1弾性体15aおよび15bに支持された状態で動吸振子14aが設けられ、開口部18には、その両端および側面を第1弾性体15c〜15eに支持された状態で動吸振子14bが設けられている。動吸振子14aおよび第1弾性体15a、15bは図中Y方向に配置され、動吸振子14bおよび第1弾性体15c〜15eは図中X方向に配置され、それによって、図中X方向およびY方向の振動が吸収される。
【0021】
図に示すように、動吸振子14a、14b、第1弾性体15a〜15eは、ベースシャシ11とほぼ同一平面状に配置されているため、薄型の動吸振器が実現できる。
【0022】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。図3は光ディスク装置10の他の実施の形態を示す模式図である。この実施の形態は、ノートパソコン用の薄型の光ディスク装置にこの発明による動吸振器を適用したものである。
【0023】
図3を参照して、この実施の形態にかかる動吸振器を用いた光ディスク装置20においては、ベースシャシ21は8角形状であり、3箇所に設けられた第2弾性体22a〜22cを介して図示のない筐体に支持されている。ピックアップ20aは、図中X方向(第1の方向)に移動しながらデータの読み書きを行なう。
【0024】
ベースシャシ21にはスピンドルモータ23が取付けられ、このスピンドルモータ23に偏重心ディスク(図示せず)が載置されて、スピンドルモータ23により回転駆動される。ベースシャシ21には、2箇所の開口部27、28が設けられる。開口部27には、図中X方向に、第1弾性体25a、25bを介して動吸振子24aが設けられ、開口部28には、図中X方向に直交するY方向に、第1弾性体25c、25dを介して動吸振子24bが設けられる。
【0025】
この実施の形態においても、ベースシャシ21、動吸振子24a、24bおよび第1弾性体25a〜25dは、ほぼ同一平面上に配置されるため、薄型の光ディスク構造が実現される。
【0026】
上記実施の形態においては、開口部17、18、27、28をベースシャシ11、21の内部に切り欠きとして形成した場合について説明したが、これに限らず、ベースシャシを構成する各辺の外部に突出部を設け、これを用いて開口部を設けてもよい。
【0027】
この場合の実施の形態を図4(A)に示す。図4(A)は、ベースシャシ31の2辺に突出部32a〜32dを設け、突出部32aと32bとの間に、第1弾性体35a、35bを介して動吸振子34aを設け、突出部32cと32dとの間に、第1弾性体35c、35dを介して動吸振子34bを設けた状態を示す図である。この場合も、先の実施の形態と同様の構成であるので、同様の効果を奏する。
【0028】
次に、この発明のさらに他の実施の形態を説明する。図4(B)は、この発明のさらに他の実施の形態における、矩形の平面状のベースシャシ41の1つの辺の近傍を示す図であり、図4(C)は、図4(B)において、C−Cで示す部分の断面図である。
【0029】
図4(B)および(C)を参照して、この実施の形態においては、ベースシャシ41は所定の厚さを有し、その一部に凹部42が設けられ、その凹部42に第1弾性体45a、45bを介して動吸振子44aが平面状に設けられている。
【0030】
図4(D)は、図4(B)において同じくC−Cで示す部分の断面図の他の例である。ここでは、ベースシャシ41にプレスによって段差部43が設けられ、この段差部43に、第1弾性体45a、45bを介して動吸振子44aが平面状に設けられている。
【0031】
図4(B)〜(D)に示す実施の形態においても、先の実施の形態と同様の構成であるので、同様の効果を奏する。
【0032】
なお、図4(B)〜(D)においては、ベースシャシ41の1つの辺しか示していないが、この動吸振子の配置される方向も、先の実施の形態において説明したように、ピックアップの移動するX方向、または、それに直交するY方向であるのが好ましい。
【0033】
また、上記実施の形態においては、対を構成する動吸振子のそれぞれが、切り欠き部、突出部、または、凹部に設けられる例について説明したが、これに限らず、各形態を組み合わせてもよい。
【0034】
上記実施の形態においては、それぞれ直交するように設けられた一対の動吸振子をベースシャシ上に設ける例について説明したが、これに限らず、動吸振子を1つだけ設けてもよいし、任意の数設けてもよい。なお、複数対設ける場合は、それぞれの対は、ピックアップの移動方向およびそれに直交する方向に設けられるのが好ましい。
【0035】
なお、第1弾性体15a〜15e、25a〜25d等としては、「熱硬化性弾性体(ゴム)」を用いてもよいし「熱可塑性弾性体(熱可塑性エラストマー)」を用いてもよい。具体的には、「熱硬化性弾性体(ゴム)」としては、天然ゴム、ブタジェンゴム、スチレンブタジェンゴム、アクリロニトリルブタジェンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等がある。
【0036】
「熱可塑性弾性体(熱可塑性エラストマー)」としては、スチレン系熱可塑性エラストマーを始め、オレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、塩化ビニル系、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマーが使用できる。
【0037】
第1弾性体としては、他に、コイルバネ(圧縮コイルバネ、引張コイルバネ等)、あるいは、ゴムとバネの複合体であってもよい。バネ材料としては、ピアノ線、硬鋼線、バネ用ステンレス鋼線、バネ用炭素鋼オイルテンパー線、弁バネ用炭素鋼オイルテンパー線、弁バネ用Cr-V鋼オイルテンパー線、弁バネ用Ci-Cr鋼オイルテンパー線がある。
【0038】
上記実施の形態では、筐体の上にベースシャシが設けられた例について説明したが、これに限らず、筐体と動吸振子が設けられるベースシャシとは任意の位置関係にあってもよい。
【0039】
上記実施の形態の形態においては、ベースシャシ、動吸振子および第1弾性体はほぼ同一平面上に配置されると説明したが、これは、4mm程度ずれていてもよい。
【0040】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。その一例を以下に示す。
【産業上の利用可能性】
【0041】
動吸振子をベースシャシとほぼ同一平面状に設けたため、厚みによる設計上の制限を排除できる動吸振器として光ディスク装置等において、有利に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の第1実施の形態にかかる動吸振器を用いた光ディスク装置の要部を示す平面図である。
【図2】図1においてII-IIで示す部分の断面図である。
【図3】この発明の第2実施の形態にかかる動吸振器を用いた光ディスク装置の要部を示す平面図である。
【図4】この発明の他の実施の形態にかかる動吸振器を用いた光ディスク装置の要部を示す図である。
【図5】従来の動吸振器を有する光ディスク装置の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10、20 光ディスク装置、11、21、31、41 ベースシャシ、12、22 第2弾性体、13、23 スピンドルモータ、14、24、34、44 動吸振子、15、25、35、45 第1弾性体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を保持するベースシャシと、
前記ベースシャシに、第1弾性体を介して接続された動吸振子とを含み、
前記ベースシャシと前記動吸振子とは、略同一平面上に設けられる、動吸振器。
【請求項2】
請求項1に記載の動吸振器を搭載した光ディスク装置。
【請求項3】
前記ベースシャシは、第2弾性体を介して、筐体に支持される、請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記動吸振子は、ピックアップの移動する第1の方向に配列された第1動吸振子と、前記第1動吸振子に対して直交する方向に配列された第2動吸振子とを含む、請求項2または3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
回転体を保持する平面状のベースシャシを含み、
前記ベースシャシは、開口部を有し、
前記開口部に、第1弾性体を介して設けられた平面上の動吸振子とを含む、光ディスク装置。
【請求項6】
前記ベースシャシは多角形状である、請求項2から5のいずれかに記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−46593(P2006−46593A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231256(P2004−231256)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】