説明

動物の一部としての生物学的組織の時間分解光学撮像用の方法および装置

パルス光が自由空間光学系(24、26、28、29)内を指向的に伝搬して、小動物に含まれるような生物学的組織(14)の表面における複数の照明位置に衝突するように構成された、時間分解光学撮像用の光学データを収集するための方法およびシステムを提供する。組織から再放出された光は捕集され、自由空間光学系(34、36,38)内を指向的に検出器(18)に向かって伝搬し、光学画像再構成に有用な時間分解光学信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2003年9月22日に出願した「METHOD AND APPARATUS FOR TIME RESOLVED OPTICAL IMAGING OF BIOLOGICAL TISSUE AS PART OF ANIMALS」と称する米国特許出願第10/665,297号の継続出願であり、米国特許法第119条(e)項に基づき、2002年11月11日に出願した「METHOD AND APPARATUS FOR TIME RESOLVED OPTICAL IMAGING OF BIOLOGICAL TISSUE」と称するPCT出願第PCT/IB02/04698号の優先権を主張し、かつさらに2003年9月22日に出願した「METHOD AND APPARATUS FOR TIME RESOLVED OPTICAL IMAGING OF BIOLOGICAL TISSUE AS PART OF ANIMALS」と称する米国特許出願第10/665,297号、および2002年12月12日に出願した「METHOD AND APPARATUS FOR TIME RESOLVED OPTICAL IMAGING OF BIOLOGICAL TISSUE」と称する米国特許出願第60/505,352号の優先権を主張する。
【0002】
本願は、同一人に譲渡された代理人整理番号15186−41USを持つ同時係属する米国特許出願第10/624,902号に関連し、その明細書をここに参照によって組み込む。
【技術分野】
【0003】
本発明は、動物の一部としての生物学的組織のような混濁した媒体の光学撮像の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、光学撮像用の時間分解光学データ取得に関する。
【背景技術】
【0004】
ポジトロン放射断層撮影(PET)、磁気共鳴撮像(MRI)、および超音波撮像のような様々な型の撮像技術が利用可能であり、それらは画像再構成のための基礎として生物学的組織内から非侵襲的に情報を収集することができる。近年、別の撮像技術、すなわち光学撮像が熱心な研究および商業的開発の対象となっている。
【0005】
光学撮像は、光が物体内を伝搬するときに物質との光の干渉から結果的に生じる信号の分析から導出することのできる情報に基づく。混濁媒体の光学撮像は、三通りの異なる方法、すなわち連続波(CW)、時間領域(TD)、および周波数領域(FD)を使用して実行することができる。CWは、三つの技術のうち最も単純かつ最も安価であるが、撮像される物体の内部光学減衰の空間的分布に関し、限定された情報しか提供しない。TDおよびFDは、光子が物体内を進むのに要する時間に関する情報を(FDはフーリエ変換を通して)伝達することによって、「時間分解」されるとみなされ、周知の光子拡散方程式を介して、吸収および散乱係数のような物体の光学特性の空間分布を計算するために使用することができる(この主題に関する研究論文については、ハウリッツ(Hawrysz)およびセヴィック−ムラカ(Sevick-Muraca)の下記非特許文献1を参照されたい)。
【0006】
光学撮像は、生物学的組織を破壊することなく生体内情報の取得を可能にする、その非侵襲性の点から特に魅力的である。さらに、該技術は、薬剤分布を監視し、器官内の以上の存在を検出し、あるいは哺乳動物内の生理学的活性をマッピングするのに役立てることができる。
【0007】
しかし、光学撮像システムの幅広い利用は、既存のシステムの幾つかの望ましくない特性によって妨げられてきた。例えば、光学撮像装置はしばしば、光を物体との間で移送するために使用される光ファイバの煩雑な構成を必要とする。そのようなシステムは、例えばノッツィアクリストス(Ntziachristos)およびヴァイスレダー(Weissleder)によって下記特許文献1や、ヒルマン(Hillmann)らの下記非特許文献2に記載されている。これらの参考文献に記載された型の光学部品の構成は、物体を照明しかつ光学信号を検出するために使用される光ファイバと関心領域の時間のかかる位置合わせを必要とする。この型の構成は、撮像が哺乳動物の生きた組織で実行される場合には特に問題がある。
【0008】
データ取得の基礎、および特に光学部品に対する物体の配置の容易さは、臨床設定またはマウスのような小型哺乳動物を利用する研究のように高スループットを必要とする用途では、特に重要である。これに関して、小型哺乳動物を撮像するための光学撮像システムが開発されている。例えば、ゼノゲン コーポレイション(Xenogen Corp.)によって開発された生物発光撮像システム(下記非特許文献3)は、小型哺乳動物から発散される光を捕集するように設計されている。しかし、この撮像装置は特定の欠点を免れない。例えばそれは、空間的に制限された生体内分布プロファイルを有する生物発光分子の存在を必要とし、したがって希望する関心領域(ROI)の撮像における柔軟性を大幅に低減する。さらに、該技術は、現在利用可能な発行分子の数によって制限される。さらに、該システムは時間分解データを取得することができない。
【特許文献1】国際公開第WO02/41769号パンフレット
【非特許文献1】「ネオプラシア(Neoplasia)」第2巻、第5号、388〜417頁、2000年
【非特許文献2】「フィジカル メディカル バイオル(Phys. Med. Biol)」46巻、2001年、1117〜1130頁
【非特許文献3】「バイオフォトニックス(Biophotonics)」第9巻、第7号、48〜51頁、2002年
【0009】
以上に照らして、柔軟性および効率を高めながら時間分解光学データを取得することを可能にする、生物学的組織のような混濁媒体を撮像するための光学撮像システムを提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一つの幅広い態様では、動物の一部としての生物学的組織を時間分解光学撮像するためのシステムおよび方法を提供する。本システムの光学部品の設計は、光のビームが空気中を、すなわち自由空間光学系内を指向的に伝搬し、組織の関心領域(ROI)内の所望の照明点に衝突することを可能にする。組織から再放出された光は集光点で捕集され、空気中(つまり自由空間光学系内)を検出器に向かって指向的に伝搬される。光が空気中を伝搬するという事実は、煩雑な光ファイバの構成の必要性を排除することによって、様々なROIの走査における柔軟性をより大きくすることを可能にする。したがって、動物に光学部品を直接接触させる必要性が無く、よって動物を操作するためまたは動物にアクセスするための十分な空間が残る。
【0011】
システムの光学的設計は、照明ビームまたは皮膚/空気界面で反射する光と捕集された光との間の干渉を最小限にして、ROI内の隣接点における空気を介しての照明および集光を可能にする。
【0012】
一実施形態では、一つまたはそれ以上の波長で動物の関心領域の複数の予め定められた照明点を、パルス光ビームを用いて照明することを含む、時間分解光学撮像法を提供する。このビームは空気中を伝搬し、適切な光学部品を使用することによって照明点に向けられる。複数の予め定められた集光点は、ROIのよく定義された表面積からの選択的集光を可能にする構成を有する光学部品によって集光される。次いで捕集された光は検出器に向けられ、再構成アルゴリズムを使用して光学画像を生成するために使用できる、光学信号を生成する。
【0013】
本発明のさらなる態様では、一つまたはそれ以上の波長の光ビームを提供するための一つまたはそれ以上の光源と、動物内の生物学的組織の関心領域が複数の照明点で照明され、よって光が組織内に注入されるように、ビームを空気中に指向的に伝搬させるための照明光学部品と、関心領域内の複数の予め定められた集光点で再放出された光を捕集するし、かつ捕集された光を空気中に指向的に伝搬させるための集光光学系と、捕集された光を検出するための時間相関検出器とを備えた、時間分解光学撮像用の光学データを収集するためのシステムを提供する。
【0014】
本発明のシステムは、トポグラフィック撮像または断層撮像のためのデータを取得するように有利に構成することができる。トポグラフィック撮像は、集光点と照明点との間の距離を一定に維持することによって達成される。照明点と検出点との間の一定の距離を達成するために、照明および集光光学系には同期反照検流計が設けられる。トポグラフィックデータ取得構成は、二次元(2D)または三次元(3D)画像を得るために使用することができる。
【0015】
断層撮像は、動物から再放出された光を幾つかの異なる集光点/検出点構成でサンプリングすることが必要である。本発明のシステムは、独立に制御可能であり、よって複数の照明点/集光点構成を達成するための手段を提供する、可動鏡を照明および集光光学系に設けることが有利である。
【0016】
別の態様では、蛍光分子を含む生物学的組織の光学撮像用の方法およびシステムを提供する。組織は励起波長で照明することができ、再放出された光は放射波長で捕集しかつ検出することができる。システムはまた、放射波長および励起波長の両方を検出することも可能である。
【0017】
本発明のさらなる特長および利点は、添付の図面と一緒に取り上げる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0018】
添付の図面全体を通して、同様の特長は同様の参照番号で識別されることに留意されたい。
【好適実施形態の説明】
【0019】
本発明は、動物の一部としての生物学的組織のような混濁媒体の光学撮像の分野に関する。好適な実施形態の以下の説明は、マウスのような小型哺乳類の撮像に関する実施例を提供するが、該方法は、より大型の動物に、特にイヌ、ブタ、および霊長類のような実験動物にも適用することができることを理解されたい。
【0020】
図1に関連して、時間分解光学撮像用の光学データを収集するための本発明の方法の一実施形態を概略的に記載する。2で、選択された強度の光源からのパルス光が空気中(つまり自由空間光学系内)を指向的に伝搬して、動物内の構成生物学的組織のROIにおける複数の予め定められた照明点を照明する。組織内を拡散した後複数の集光点から発散する光は、4で自由空間光学系を通して選択的に捕集され、6で検出器に向かって自由空間内を指向的に伝搬される。捕集された光は最終的に8で検出器を使用して測定され、時間分解光学し後を生成する。サンプリングされるもの以外の点から発散する光は工学的に検出から除外される。
【0021】
光学データを収集するために使用されるシステムの実施形態を、撮像される物体として小型哺乳動物に関連して今から記載するが、多種多様な生物学的組織が本書に記載する技術を使用する光学撮像に適していることは、理解されるであろう。これらは乳房組織、脳、腫瘍および類似物とすることができるが、それらに限定されない。
【0022】
小型哺乳動物を撮像するために使用される本発明のシステムの概略的模式的表現を図2に示す。システムは、一つまたはそれ以上の波長の光ビーム12を生成することのできる光源10と、哺乳動物14の表面の所望の照明点まで空気中つまり自由空間光学系内で光ビームを指向的に伝搬させるための照明光学系と、捕集された光を検出器18へ指向的に伝搬させるために哺乳動物から再放射された光16を捕集するための集光光学系と、併進ステージ22上に装着された可動式哺乳動物支持トレイ20と、光源、光学系、検出器、およびトレイを制御するためのコンピュータ19とを備える。
【0023】
照明光学系は可動反射鏡24を備え、それは反照検流計であることが好ましい。ビームは角度θで反照検流計によって反射して、薄型傾斜鏡26の方向に指向させ、それは走査される哺乳動物の表面に対し略直角の方向にビームを反射する。反照検流計の部分回転は角度θを変化させ、ビームを薄型傾斜鏡上の異なる点に指向させ、その結果として哺乳動物の表面上の異なる照明点に指向させる。したがって反照検流計24の連続部分回転は、薄型傾斜鏡に略平行な線走査を生じる。レンズ28が任意選択的に設けられ、反照検流計がレンズの焦点距離位置にきてテレセントリック撮像が達成されるように、反照検流計と薄型傾斜鏡との間に配置される。光ビームの強度を調整するために、中性フィルタ29のようなフィルタも、光源と反照検流計24との間に配置することができる。
【0024】
本発明の態様では、光源は、特定の波長の光を放出する可変強度レーザであることが好ましい。多波長照射を達成するために、各々異なる波長の光を放出するダイオードレーザのようなレーザ31の集合を使用することができる(図3)。波長の選択のため、または光の強度を調整するために、フィルタ33および35のような適切なフィルタを、光源と哺乳動物との間、および再放出される光と検出器との間に配置することができる。異なる波長における哺乳動物の順次または同時照明のいずれかのために、切替またはダイクロイック鏡システムを使用することができる。代替的に、独自の多波長光源を使用することもできる。後者の場合、波長の範囲または特定波長は、当業熟練者には周知の通り、フィルタ、格子、または類似物を使用することによって選択することができる。
【0025】
光源の好適な強度は、規制機関によって確立された生物学的組織の最大許容露光(MPE)によって決定される。安全な露光のための標準は例えば、レーザの安全な使用のための米国標準規格(ANSI Z136.1-2000)に記載されている。例えば、近赤外(NIR)で放射するレーザは、ヒトおよび小型哺乳動物を構成するような生物学的組織の非侵襲性撮像のためには、好ましくは約200mW以下の出力に調整すべきである。
【0026】
トレイ20は、哺乳動物が撮像される間、それを支持する。哺乳動物は、データ収集の期間中、動きを最小限に低減するために、麻酔することが好ましい。代替実施形態では、動きを低減するために、動物の部分または全身を機械的に抑制することができる。任意選択的に、哺乳動物の体温を維持するために、トレイを加温することができる。さらに、相互に平行な複数の線走査を発生させることができるように哺乳動物を配置するために、トレイは併進ステージ22上で長手方向に変位させることができる。この歩進的プロセスは、関心領域(ROI)のラスタ走査を発生させるために、選択された回数繰り返される。ラスタ走査は代替的に、薄型傾斜鏡26を長手方向に変位させることによって達成することができる。図3は、哺乳動物の表面のラスタ走査パターンの一例を示す。ユーザ定義ROI40は、予め定められた照明点42を構成する走査対象領域を区切る。光学部品の構成は、他の走査パターンを実行することも可能である。ROIは動物の全身から構成することができることは理解されるであろう。
【0027】
哺乳動物から再放出された光は、集光レンズ34と、好ましくは反照検流計である反射鏡36と、レンズ38とを備えた集光光学系によって捕集される。集光レンズ34はROIの上および薄型傾斜鏡の上に配置される。鏡に衝突する光の一部(所定の集光点に対応する)だけが適切な角度で反射して検出器に到達するので、入射光および検出器に対する鏡36の角位置は、どの集光点がサンプリングされるかを決定する。反照検流計をレンズおよび/またはピンホールと光学的に結合することによって、所定の集光点からの光の選択的検出をさらに増強することができる。
【0028】
空気中の光の伝搬を可能にする光学系の全体的構成は、動物の容易な配置および操作を可能にする。さらに、システムは光ファイバに依存しないので、新しいROIが光学系の焦点にもたらされるようにトレイを単純に移動することによって、動物を操作することなく、複数のROIを走査することができる。トレイの移動は、コンピュータを使用して外部から制御することができる。
【0029】
哺乳動物の表面に衝突した後、光の一部は皮膚を貫通し、一部は空気/皮膚境界で反射する。哺乳動物内を伝搬した光子は吸収される、または散乱し、よって多数の光子経路を生成する。生物学的組織では、自然(内因性)または外因性発色団の存在の結果、吸収が発生することがある一方、散乱は、屈折率の不均質性を形成するタンパク質、脂質、および類似物のようなマクロ分子構造の存在によって引き起こされる。吸収されない光の部分は、照明点から様々な距離の皮膚障壁を通して拡散することによって、最終的に哺乳動物から出射する。組織内により深く進んだ光子は、哺乳動物の表面から出射するのにより長い時間がかかる。これは、光学信号の時間分解検出のための基礎になり、そこから関心領域の光学的特性に関する有用な情報を抽出して、画像再構成アルゴリズムに組み込むことができる。光学的に均質な媒体では、照明点と所定の光子が出射する点との間の距離は、光子の平均的経路の実効深さに関連付けられる。したがって、点間の距離が大きくなればなるほど、深さは大きくなる。生物学的組織は光学的に均質ではないが、照明点と光子が出射する点との間の距離も、光子の平均的経路の深さに関連すると考えることができる。
【0030】
好適な実施形態では、本発明のシステムで使用される時間分解法は時間領域(TD)である。TD測定では、光源は短くパルス化され、光学信号は時間の関数として検出され、時間点広がり関数(TPSF)を生成する。光源は、ピコ秒範囲の幅によって特徴付けられるパルスを生成することのできるレーザ源であることが好ましい。時間ゲート化インテンシファイドCCD(ICCD)、時間相関単一光子計数装置(TCSPC)、超高速半導体検出器(アバランシェおよびPINフォトダイオード)、光電子増倍管、およびストリークカメラのような時間領域検出器を使用することができる。好適な実施形態では、TCSPC装置を本発明のシステムで使用する。TCSPC装置は、光子が照明光学系、組織、および集光光学系を通過して移動するときに、検出器に到達するのにかかる時間を測定することができる。時間測定は、光源および検出器を電子的に結合する「クロック」回路機構によって提供される。この回路は既知の技術である。TCSPCは非常に高感度であり、低電力電源を使用して走査される組織の損傷を最小限に止めることを可能にし、有利である。
【0031】
本発明の実施形態では、TPSFを組み込むことによって、本発明のシステムおよび方法を使用して、連続波を使用して得られる測定値と同様の減衰測定値を生成することができる。
【0032】
統計的に、検出の効率、すなわち光源によって生成されかつ特定の照明点で検出される光子の個数と、所定の集光点から検出される光子の個数との比は、とりわけ、光源の電力および光が捕集される照明点からの距離の関数である。検出器に到達する光子束が検出器の特性に対して最適化されるように、光源の強度を調整することができる。TCSPC検出システムを使用して小型哺乳動物のTD撮像を実行する好適な実施形態では、当業熟練者によって周知の通り測定される時間的プロファイルに電子不感時間損失によって生じる歪みを回避するために、各照明光パルスに対し光子を検出する確率が約1%であることが一般的に要求される。適切な信号を生成するのに十分な個数の検出光子を提供し、しかも取得時間を短縮するために期間をできるだけ短く維持するために、哺乳動物の所定の点に指向される照明期間(光パルス数によって提供される)を変動可能である。80MHzの周波数でパルスを放出する光源を使用する小型動物撮像の実施例では、毎秒約8×105個の光子が検出されるように、ビームのパワーを調整する必要がある。適切な周波数の選択が、数ある因子の中でも特に、光学部品、検出器、撮像される組織、および所望する光学データの型の特性に基づくことは、理解されるであろう。
【0033】
TPSFはまた、時間ゲートインテンシファイド電荷結合装置(ICCD)を使用することによって生成することもできる。この型の検出器は、様々な集光点から発散される光学信号の同時検出を可能にする、空間分解能を提供することができる。さらに、二つ以上の波長を発生する光源を使用する場合、所定の集光点で捕集された光を構成波長に分割して、二つ以上のビームを生成することができ、それらはICCDの異なる検出位置に指向させることができる。しかし、ICCDの感度はTCSPC装置のそれより低いので、光源の強度は、組織の損傷を引き起こすおそれのあるレベルより下に維持しながら、適宜調整する必要がある。
【0034】
特にTCSPC装置を使用する場合における光源の低強度レベル、および検出器の高感度を考慮して、システムおよび哺乳動物は、ボックス50のようなエンクロージャ内に配置される。ボックスは、迷光が測定を妨害するのを防止するために光密であることが好ましい。ボックスの内部にはドア56を通してアクセスすることができる。
【0035】
哺乳動物内の関心領域(ROI)の画像を構成するために、ROI内の複数の照明/検出点から光学信号が得られる。照明/検出点の構成は、再構成される画像の型によって変化することがある。以下で説明するように、トポグラフィ画像および断層撮影画像は、本発明のシステムおよび方法により生成することができ、両方とも異なる照明/検出構成を必要とする。
【0036】
照明点に対する集光点の位置は取得の開始前に決定され、それは関心領域の撮像の所望の深さの関数である。光子が深く進めば進むほど、光子が照明点付近から再放出される確率は低くなり、その逆も然りであるので、撮像面が皮膚の表面に近い場合、集光点は照明点の近くに配置される。
【0037】
したがってトポグラフィ画像を取得するために、ROI全体にわたって実質的に同一深さから情報を収集するように、集光点は照明点から固定距離に維持される。照明および集光光学系に含まれる反照検流計は、一定照明/検出点距離で高速走査を達成するために、同期化することができる。
【0038】
複数の照明対集光点間距離が生成され、よって異なる深さから情報が得られるように、照明点および集光点が並べ換えられたときに、断層撮影データは得られる。データを適切に処理することによって、断層撮影画像を生成することができる。断層撮影光学データ取得の場合、マルチパースペクティブデータ(multi-perspective data)を得るために、二つの反照検流計24および26を独立に制御することが好ましい。したがって、照明光学系の反照検流計は光を所望の照明点に指向させるが、集光光学系の反照検流計は、複数の異なる集光点で光をサンプリングするようにプログラムすることができる。
【0039】
一実施形態では、照明および収集光学系は、動物を中心に回転する可動ガントリシステム52上に装着される(図5)。この特定の実施形態では、トレイは「I」字形を呈することが好ましい。この特定の形状は、照明および集光光学系が関心領域(例えば胴部位)を中心に回転する間、動物を心地よく支持することを可能にするので、データ取得を促進する。この構成では、実質的に360度に等しい振幅の角変位が可能である。さらなる実施形態では、ガントリの代わりに哺乳動物を回転させることができる。哺乳動物は、その脚をトレイに取り付けることによって、トレイ上に維持することができる。身体の頭尾軸を中心に360°回転することが可能である。この設計構成は、可動ガントリシステムに比較して、重量、容積、および複雑さを低減することができる。
【0040】
さらに別の実施形態では、哺乳動物を着座させた状態で頭尾軸に沿って回転させることができる。動物は、その頭部を優しく支持することによって、関心領域がまっすぐに維持されるようにステージ上に配置する。これらの設計は、動物をほぼ360°にわたって走査することを可能にする。光学系は、様々な断層撮影構成に適合するように変形することができることは理解されるであろう。例えば「着座」構成における鏡54は、光を指向的に伝搬させる簡便な方法を提供する。
【0041】
動物を中心にして複数の角度で光学データを取得することにより、動物の不規則な外形のため、ROIの表面と集光光学系との間の距離にかなりの変化をもたらすことができる。したがって、画像再構成は、自動焦点システムの使用によって、かつ走査領域のプロファイルを得ることによって、改善することができる。これに関して、システムは、動物の体積プロファイルを決定する手段を含むこともできる。一実施形態では、体積プロファイルは、動物に対して略直角に指向されたレーザビームで動物を走査することによって決定することができる。同時に、レーザ光路に対して斜めに配置されたビデオカメラで、動物の表面のレーザビームの画像を取得することによって、体積プロファイルを決定することができる。動物は、トレイを移動させることによって走査することができる。こうして得られた体積プロファイルが、画像構成および表示に有用な空間情報を提供することは理解されるであろう。
【0042】
生物学的組織の撮像は、光学的コントラストを提供するために内因性分子の自然光学特性に依存することができるが、外因性分子を組織に導入して、追加的コントラストを提供することができる。これに関し、外因性発色団のみならずフルオロフォアも使用することができる。さらに、本発明の方法およびシステムを使用して、そのような造影剤の生体内分布を追跡することができる。一つの有利な実施形態では、生体内分布を経時的に追跡し、よって薬物動態学データを生成することができる。
【0043】
上記の通り、光学系のみならず光源も、一つまたはそれ以上の波長の光を照明しかつ検出するように構成することができる。この特性を利用して、二つ以上のフルオロフォアおよび/または発色団の薬物動態学を追跡することができる。特に、光源および関連光学系はフルオロフォアの励起波長で照明するように構成することができる一方、検出器および関連光学系はフルオロフォアの放射波長の光を検出するように構成することができる。
【0044】
上記の本発明の実施形態は単なる例証として意図されたものである。したがって、本発明の範囲は、添付する請求の範囲の記載によってのみ限定するつもりである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の方法の一実施形態のフローチャートの図である。
【図2】本発明のシステムの一実施形態の斜視図である。
【図3】光源が複数のレーザを含むシステムの一実施形態の略図である。
【図4】哺乳動物の表面の関心領域における照明のラスタ操作パターンを示す略図である。
【図5】哺乳動物を中心に回転するガントリ上に光学部品を装着して断層撮像用のデータを取得するように構成した、本発明のシステムの一実施形態の略図である。
【図6】光学部品を固定し、哺乳動物を回転させて断層撮像用のデータを取得するように構成した、本発明のシステムの一実施形態の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の時間分解光学撮像用の光学データを収集するための方法において、
i)自由空間光学系を通してデータ取得するように前記動物を配置するステップと、
ii)選択された強度のパルス光ビームを自由空間光学系内を指向的に伝搬させて、一つまたはそれ以上の波長で、動物の関心領域内の複数の予め定められた照明点を照明させるステップと、
iii)複数の予め定められた集光点から発散される光を自由空間光学系を通して選択的に集光するステップと、
iv)捕集された光を自由空間光学系内で検出器に向けて指向的に伝搬させるステップと、
v)一つまたはそれ以上の波長の集光を検出器で測定して、一つまたはそれ以上の照明点/集光点構成用の時間分解光学信号を生成するステップと、を含み、
前記予め定められた集光点以外の点から発散する光が光学的に検出を除外されるように構成された方法。
【請求項2】
前記時間分解光学撮像が時間領域(TD)撮像であり、時間点広がり関数(TPSF)に関連する情報を生成するために前記時間分解光学信号が検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定ステップが、時間相関単一光子計数法を使用して、捕集された光を検出することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各照明点が複数のパルスによって照明される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記照明ステップが、電気的デッドタイム損失によって生じる歪みを回避するために、光ビームの強度を調整することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記強度が光源の強度を変化させることによって調整される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記強度がフィルタにより調整される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光学信号が二つまたはそれ以上の波長で同時に検出される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記光学信号が二つまたはそれ以上の波長で順次検出される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記照明点がラスタスキャン方式で照明される、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記集光点が照明点から一定の距離に位置し、トポグラフィック撮像のための光学信号を提供する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記距離が約3mmである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各照明点に対し二つまたはそれ以上の集光点を捕集して断層撮像用の光学データを得る、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
二つまたはそれ以上の集光点の少なくとも二つを同時に捕集する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
検出を照明とは異なる波長で実行する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
生物学的組織が一つまたはそれ以上のフルオロフォアを含み、検出波長が前記一つまたはそれ以上の放射波長に対応し、照明波長が一つまたはそれ以上のフルオロフォアの励起波長に対応する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
励起および放射波長の両方を検出する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
TPSFを組み込んで減衰測定を達成する、請求項2〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
複数の関心領域からの光学データを単一セッション中に収集する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の関心領域が動物の全身を構成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記動物を制御可能に加温する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
動物の時間分解光学撮像用の光学データを収集するためのシステムにおいて、
i)一つまたはそれ以上の波長の光ビームを提供するための選択された強度の一つまたはそれ以上のパルス光源と、
ii)生物学的組織の関心領域を複数の照明点で照明し、よって動物に光が注入されるように、自由空間光学系内にビームを指向的に伝搬させるための照明光学部品と、
iii)予め定められた集光点以外の点から発散される光検出から除外するように、関心領域の複数の予め定められた集光点で再放射された光を自由空間光学系を通して捕集し、かつ捕集された光を自由空間光学系内に指向的に伝搬させるための集光光学部品と、
iv)捕集された光を検出するための時間領域検出器と、
を備えたシステム。
【請求項23】
前記一つまたはそれ以上の光源が可変強度光源である、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記可変強度光源がレーザである、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記照明光学部品が、ビームを複数の照明点に指向させるための少なくとも一つの可動鏡を備える、請求項22〜24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記可動鏡が反照検流計である、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記反照検流計の光学的に下流に配置された薄型傾斜鏡をさらに備えた、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記反照検流計と前記薄型傾斜鏡との間にレンズが配置され、光学的にそれらと連結されて、テレセントリック撮像構成を提供する、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記集光部品が、前記関心領域の上に配置されかつ前記集光点と一致する焦点を有するレンズを備える、請求項22〜28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記集光部品が、捕集された光を検出器に指向させるための反照検流計をさらに備える、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
照明光学系および集光光学系の反照検流計が同期して、照明点とそれぞれの検出点との間に一定距離をもたらす、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
照明光学系および集光光学系の反照検流計が、照明点とそれぞれの検出点との間に可変距離をもたらすように、独立して調整可能である、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記照明光学系、検出光学系、および光源が、動物の周りを回転することのできるガントリの一部である、請求項22〜32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
照明ビームに対して直角な平面内でトレイを移動させるための併進ステージをさらに備え、前記トレイが動物を支持するためのものである、請求項22ないし33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記トレイが、前記動物に適した所望の温度に制御可能に加温される、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記検出器が時間相関単一光子計数検出器である、請求項22〜35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記検出器が時間ゲートICCDである、請求項22〜35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記動物、光学部品および検出器がエンクロージャ内に収容される、請求項22〜37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記エンクロージャが光密である、請求項39に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−505804(P2006−505804A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506631(P2005−506631)
【出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001705
【国際公開番号】WO2004/044562
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(501291167)アート アドヴァンスド リサーチ テクノロジーズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】