説明

動物の所定の群れに対して投与するためのワクチンのその場(insitu)構成

本発明は、一組の複数の別個の非生抗原を用意し、各非生抗原は凍結乾燥形態で存在しおよびコンテイナ中に詰められており;動物にとって医薬的に許容され得る液体担体を用意し;動物の所定の群れに対する微生物感染に関連する健康リスクを調べ;前記組中の1つ以上の非生抗原のどれがこれらの健康リスクに相当するかを確定し;前記した1つ以上の非生抗原に対応する1つ以上のコンテイナを選抜し;前記した1つ以上のコンテイナの凍結乾燥されている内容物を担体と混合して、ワクチンを構成することを含む動物の所定の群れに対して投与するためのワクチンの構成方法に関する。本発明は、ワクチンを構成するのに適した複数の別個の非生抗原の製造方法、キット・オブ・パーツ及び前記ワクチンをその場で構成できる方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の群れに対して投与するための専用ワクチンの構成方法、前記専用ワクチンを構成することができる製造方法、及び前記方法において使用するための生じたキット・オブ・パーツに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患(または、少なくともこれらの疾患の負の肉体的影響)は、特に前記疾患が微生物感染、すなわち微生物(例えば、細菌またはウイルス)での感染の結果であるときにはワクチンを投与することにより予防的または治癒的に治療される。前記ワクチンは、対象動物の免疫系を十分にトリガーすることができるが、同時に前記疾患の一連の症状を誘発することができない損なわれた病原性を有する生弱毒微生物を含有し得る。しかしながら、「生」ワクチンはしばしば、なお疾患の症状を誘発する恐れがあるので対象動物(用語「動物」はヒトを含む)にとって100%安全であるとみなされず、また理論上その遺伝情報がその自然対応物の遺伝情報と混同して、多分未知の特性を有する新しい微生物が生じ得るので環境にとっても100%安全であるとみなされない。従って、微生物由来の非生抗原を含有するワクチンが時には好ましい。非生抗原は、例えば死滅(全)微生物、これらの微生物のサブユニット(抽出または組換え発現されている)、不活化毒素(トキソイド)または他の代謝物(抽出または組換え発現されている)であり得る。非生抗原は本来安全である(非生抗原は例えばそれ自身で対象動物を感染させることができない)という事実とは別に、別の重要な利点がある。非生抗原は比較的安定であり、生微生物よりも劣化しにくい。一般的に知られているように、生微生物をストックするためには急速冷凍(少なくとも−70℃以下で、好ましくは−196℃で)または凍結乾燥のような高価な技術を適用しなければならない。後者の技術は(例えば、高価な装置及び長い処理時間を要するので)非常に高価であるが、1〜2年の保存中生存率を全くまたは殆ど低下させることなく微生物を例えば4℃で保存できる。非生抗原の明らかな利点は、比較的長期間安定させるために高価な保存方法を受ける必要がないことである。多くの非生抗原は投与目的でも使用される液体担体(この担体の例は滅菌水、リン酸緩衝食塩液、水酸化アルミニウム懸濁液等であり得る)中に保存されている。こうすると、非生抗原は、標的動物において十分な免疫応答を誘発させるための力価に対して有害な影響をもたらすことなく最長数年保存することができる。
【0003】
ワクチンに関して、特に獣医プラクティスでは使用の容易さが重要な因子である。これに関して、一般的な望みは複数の特有の健康リスクを1つのワクチンを用いて、好ましくは疾患を引き起こす微生物での自然感染が通常起こる前のしばらくの間に治療するために専用ワクチンを使用することである。これに次いで、獣医プラクティスでは、例えば予防接種スキームが動物の管理プラクティスと適合しなければならない。特に、動物を限られた所定時点でのみ(例えば、x日齢で、離乳時または輸送時)取り扱う大型農場では、予防接種(少なくとも「ルーチンの」予防接種)はしばしば計画した取り扱いと同時にのみ実施する。
【0004】
従来技術は、上記した望みを満たすための幾つかの解決法を提供している。例えば、多くのワクチン供給業者はポートフォリオに混合ワクチンを有している。このワクチンでは、ワクチンを異なるタイプの微生物(異なる属または同一属内の異なる種の微生物)での感染を治療するために使用し得るように前記した異なるタイプの微生物に対応する抗原が存在している。混合ワクチンの場合生抗原は好ましくないと一般的に認識されている。生抗原(例えば、弱毒化細菌またはウイルス)の場合、比較的大きい干渉リスクがあり、また生抗原はしばしば自然感染を真似る特定の投与ルートを必要とする。このことから、混合ワクチンが好ましくは非生抗原を含有するという状況に至った。混合ワクチンは例えば最高10個の異なるタイプの微生物に対応する抗原を含み得る(例えば、オランダ国プロイケレンに所在のIntervet/Schering−Plough Animal Healthから入手可能なBravoxin(登録商標)10)。前記した混合ワクチンの特別の利点は使用が容易であること、抗原の特定の組合せの(規制当局により)認可されている安定性、有効性及び安全性があることである。混合ワクチンの欠点は、該ワクチンの開発にたった1つのワクチンの使用で幾つかの健康リスクを解決するために特定の組合せを有することが所望されてから数年を要することがあり得ることである。余り厳密ではないが、別の欠点は、ワクチン中の抗原の組合せは対象動物のために必要より多くの健康リスクを解決することである。余分の抗原は対象動物に対して(小さい)リスクを与え得、これらの抗原がワクチンのトータルコストの一部に相当する。従って、余分な抗原を持たない混合ワクチンが好ましい。
【0005】
今日利用されている別の解決法は、1つのタイプ微生物に対応する抗原のみを含有するワクチン(いわゆる「単一」ワクチン)の同時投与である。この解決法を適用するとき、しばしば2つ以上のワクチンを同時に投与する。投与回数を減らすために投与直前に単一ワクチンを混合することが好ましい。勿論、利点は混合ワクチンの系統立てられた開発が必要でないことである。ただ、同時または混合投与が安全及び効力の合理的な要求を満たすことが確立されなければならない。そうならば、この解決法はほぼ要求時に利用可能な専用混合ワクチンを得る機会を与える。ワクチンは具体的望みに従って構成され得るので、防御のための緊急の望みと実際の予防接種スキーム間のミスマッチが存在しなくてすむ。また、混合ワクチンの固有の高い製造リスクも減らすことができる。特に投与前にワクチンを混合するときの欠点は投与容量が増えることである。典型的には、適切な用量の抗原を1〜2mlのワクチン中に存在させる。動物に応じて、1箇所での投与のための全容量に対する物理的制限は2ml(小型ペットのような動物)〜10ml(ウシのような大型動物)の範囲である。これにより、混合され得るワクチンの総数が制限される。
【0006】
提供されている別の解決法は、必要なときに単一ワクチンを単に使用することである。すなわち、健康リスクがあると認められたときのみ予防接種をする。こうすると、勿論、専用の予防接種プログラムを操作し、運用するために非常に高い自由度が与えられる。ワクチンの干渉は完全に排除され得る。しかしながら、この戦略は本質的に、混合ワクチンの使用と比較して予防接種回数が増えることを意味する。こうすると、予防接種する人の仕事量が増え、対象動物のストレスも高まる。これに次いで、典型的には異なる抗原を用いる各予防接種の間に数週間待機しなければならないので、防御はしばしばかなり遅れて付与される。従って、ライン中の最後の抗原は、典型的には自然感染がすでに生じたときにのみしばしば投与され得る。このような場合、予防接種は余分であったり、または無駄でさえあり得る。従って、この戦略は多くの場合健康担当医の毎日のプラクティスで実行できない。
【発明の概要】
【0007】
複数の疾患を治療するための専用ワクチンを時間通りに投与するために従来技術の解決法に関連する1つ以上の上記した問題を解消もしくは、少なくとも改善する改良された解決法が要望されている。この点で、動物の所定の群れに対して投与するためのワクチンの構成方法を考案し、この方法は、各非生抗原が凍結乾燥形態で存在しおよびコンテイナ中に詰められている複数の別個の非生抗原の組を用意し、動物にとって医薬的に許容され得る液体担体を用意し、前記群れに対する微生物感染に関連する健康リスクを調べ、前記組中の1つ以上の非生抗原のどれがこれらの健康リスクに相当するかを確定し、前記した1つ以上の非生抗原に対応する1つ以上のコンテイナを選抜し、前記した1つ以上のコンテイナの凍結乾燥されている内容物を前記担体と混合してワクチンを構成することを含む。
【0008】
本発明を用いると、投与容量を増加させることなく、実際投与する直前に(よって、典型的には、動物の群れがいる場所で)(複数の健康リスク、すなわち異なるタイプの微生物による複数の感染を解決する)専用ワクチンを構成することができる。すなわち、容量を著しく(または、全く)増加させることなく、凍結乾燥した非生抗原を液体担体中に溶解または懸濁させることができる。これに次いで、各非生抗原を別々に製造し、詰めるので、製造リスクは最小である。また、1つの単一容量の液体担体中での抗原の併用を実際に商業化するためライセンスを得るという余り厳しくない要求にも応じなければならない。従って、製品開発時間を短縮し得る。本発明の非常に重要な作用効果は、余りに多くの投与容量という不利な面なしで専用ワクチンを時間通りに、余分な抗原を含まずに得ることができることである。このことは次のように理解され得る:本発明により、動物の所定の群れ(1に等しい最小量の対象動物を有する群れ)に対する健康リスクを具体的に評価した後、組中に存在する1つ以上の抗原から構成されるいずれの種類の混合ワクチンが具体的にこれらの健康リスクに対応するかを決定する(勿論、予想される健康リスクのすべてが混合ワクチンで解決されないことを排除しない)。その後初めて、凍結乾燥した抗原と液体担体を混合することによりワクチンを実際に構成する。こうして、各々の場合、余分な抗原を含まず、許容され得る投与容量を有する専用ワクチンを時間通りに得ることができる。
【0009】
必要な技術、すなわち凍結乾燥は数十年間にわたり一般的に知られており、よって更なる紹介も説明さえも必要としないことに注目されたい。しかしながら、ワクチン製造の業界では、この高価な技術は生ワクチンを保存するためにのみ使用されてきた。その理由は明白である。非生ワクチンは十分な安定性を得るために凍結乾燥する必要がなく、凍結乾燥が比較的高価な処理ステップであるからである。それ故に、事実、誰も非生抗原に対する凍結乾燥を商業的に使用していない。本出願人は、非生抗原を組み合わせるために凍結乾燥が従来の混合ワクチンに対して典型的な製造及び調節上の不利を減らしながら、ワクチンの使用の容易さ、専用性及び時間通りの処方の点で典型的な作用効果をもたらすことを認識した。これに関して、EP 0 799 613は別々の抗原を凍結乾燥し、凍結乾燥した抗原を混合することを使用して混合ワクチンを構成することを開示している。しかしながら、この特許は完全な混合ワクチンを実際に製造するための解決法を提供しているが、動物の所定の群れに対する特有の健康リスクを解決するために専用ワクチンをその場で構成することができる解決法に関係していない。
【0010】
本発明を適用するとき、考えられる動物の群れに対応するすべての健康リスクを解決するために必要な原則はないことにも注目されたい。実際の健康リスクのいずれが解決されるかは、例えば抗原の具体的組合せが規制当局により商業/公共的使用について認可されるか否か、具体的組合せの安全性及び有効性について科学的裏付けがあるか否か、組合せに関与するリスクが殆どないか否か、異なる抗原の数が許容され得る数(典型的には、必須ではないが10未満)を超えるか否か、緊急の状況(医学的観点で許容される以上のより多くの組合せであり得る)であるか否か等に依存し得る。また、本発明の各種ステップを特許請求の範囲に記載されている順序で実施したり、また各種ステップ間に待機時間を設けずに実施する必要がない。例えば、まず動物の特定の群れに対する健康リスクを評価し、その後凍結乾燥形態で入手可能な非生抗原の(完全)組を得、次いで認識された健康リスク(その少なくとも一部)に相当する組を選抜することができる。まず、入手可能なすべての抗原を用意し、評価することもできる。このことは、いずれの方法が該方法を使用する医師により好都合であると判明していることに強く依存している。また、この医師が好都合であると知見したことに基づいて、ワクチンをその場で(すなわち、投与を行う場所で、例えば動物の群れがいる農場で)処方したり、または予防接種を実施したりしなければならない数時間前にある程度より管理されている環境(例えば、医師または獣医師の手術室タイプの部屋)で処方することができる。別のオプションでは、実際に予防接種をする数時間前に、または更に数日前に凍結乾燥抗原を混合し(干渉のリスクが全くまたは殆どないので)、予防接種する直前にこの混合物に液体担体を添加する。本発明及び特許請求の範囲に入るすべての各種スキームが考えられ得る。
【0011】
定義
本発明の意味で以下の定義が使用されている。
【0012】
ワクチン:免疫学的有効量(すなわち、予防接種前またはその後の野生型微生物での攻撃の負の影響を少なくとも低減させるのに十分に標的動物の免疫系を刺激することができる)の1つ以上の抗原、例えば死滅全微生物及び/またはそのサブユニット、或いは他の物質(例えば、生物の代謝産物)を典型的には医薬的に許容され得る担体(例えば、水を含有する液体)と組み合わせて、場合により免疫賦活剤(アジュバント)を含む動物に適用するのに適した構成であり、動物に投与したとき疾患または障害を治療するために、すなわち疾患または障害を予防、回復、治癒するのを助けるために免疫応答が引き出される。通常、ワクチンは、基本的に抗原(または、抗原を含有する組成物)を医薬的に許容され得る担体、例えば(場合により緩衝されている)水のような液体担体と混合することを含む当業界で公知の方法を用いて製造され得る。場合により、他の物質、例えばアジュバント、安定化剤、粘度調整剤または他の成分をワクチンの所期用途または所要特性に基づいて添加する。経口または非経口予防接種のために多くの形態、特に(抗原が溶解または懸濁している)液体製剤が適切であり、固体製剤(例えば、インプラント)または中間形態(例えば、抗原に対する固体担体が液体中に懸濁されている)も適切である。動物に対して投与するためのワクチンの適切な(物理的)形態は200年以上の間公知である。
【0013】
医薬的に許容され得る担体:溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延剤、または例えば無菌とすることにより標的動物と生理学的に適合しおよび標的動物にとって許容され得る他の物質。前記担体(または、輸送媒体)の幾つかの例は、水、食塩液、リン酸緩衝食塩液、細菌培養液、デキストロース、グリセロール、エタノール等、及びその組合せである。担体の製剤化は当業界で公知の方法により、例えば純粋な流体(例えば、水)を入れ、十分な緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)及び安定化剤(例えば、BHTまたはビタミンC)を添加し、生じた生成物を無菌とすることにより実施され得る。一般的に知られているように、担体の存在は通常ワクチンの効力に必須ではないが、抗原の用量及び投与を著しく簡素化し得る。
【0014】
抗原:微生物に由来する抗原性物質の全体。抗原は対応する免疫体の形成を開始し、媒介する。細菌、ウイルス、原生動物及び他の微生物が抗原の重要なソースである。これらは、例えば細胞の外表面から(夾膜抗原)、細胞内部から(菌体、すなわちO抗原)、または鞭毛から(鞭毛、すなわちH抗原)誘導されるタンパク質または多糖であり得る。他の抗原は、例えば細胞微生物により排出され、または微生物の死滅及び破壊中に培地に放出される。後者の抗原は多くの酵素及び毒素を含む。
【0015】
コンテイナ:容器中の別の封じ込めスペース、例えばフラスコ、シリンジ、バッグ、ブリスター、ボックス等中の封じ込めスペース。本発明の意味で単一の容器が複数のコンテイナを含んでいてもよい。例えば、ブリスター包装は典型的には複数の別々のブリスターを含み、各ブリスターは本発明の意味のコンテイナである。同じことが複数の別の封じ込めスペースを含むボックスまたは他の単位にも当てはまり得る。
【0016】
微生物:微生物に関係するまたは微生物に起因する。
【0017】
アジュバント:一連の免疫学的事象中の特定プロセスを助けるまたは増幅させることができ、最終的により良い免疫学的応答、すなわち抗原に対して統合された身体応答、特にリンパ球により媒介される応答、典型的には特定の抗体または以前感作されたリンパ球による抗原の認識を含む応答をもたらす物質。アジュバントは通常前記した特定プロセスを起こすのに必要でないが、このプロセスを助けるまたは増幅させる。
【0018】
リオスフィア:凍結乾燥した自己支持体、特に球形(例えば、粒)を有するもの。
【0019】
キット・オブ・パーツ:特定の目的を果たすために一緒に使用される一組の物品(パーツ)。キットは有形パッケージ(例えば、幾つかの品目を収容しているボックス)であっても、非有形パッケージ(例えば、インターネットまたは他の公表手段を介して併用するためのオファー)であってもよい。
【0020】
製造する事:大規模で製造すること、各組の仕様書毎に1つの単一品目を(一度に)製造するのとは対照的に、典型的には同一の仕様書に従って複数の品目を得るための反復プロセスを含む。これらのプロセス自体は簡単であり、必ずしも複雑な工業機械を必要としない。
【0021】
輸送する事:例えば通常郵便または速達便を用いて、道路運送、航空輸送、水上輸送、または特殊な包装に適した手段を用いて目的地に運ぶこと。
【0022】
:自然人または法人。例えば、医師または獣医師、或いはそれぞれの事業体。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】凍結乾燥機を概略的に示す。
【図2】コンテイナを概略的に示す。
【図3】インターネット広告を示す。
【図4】輸送のためのパッケージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
動物の所定の群れに対して投与するためのワクチンを構成するための本発明の方法の好ましい実施形態とは別に、本発明の概念は、ワクチンを構成するために適した複数の別個の非生抗原の製造方法;ワクチンを構成するためのキット・オブ・パーツ;及び抗原及び担体を用意し、前記抗原をコンテイナ中に、前記液体を容器中に詰め、実際に予防接種をする予定の直前に前記した1つ以上のコンテイナの内容物をある容量の前記液体担体と混合することによりワクチンのその場での構成を助ける人に対して前記したコンテイナ及び容器を輸送することを含むワクチンをその場で構成できる方法においても具体化される。
【0025】
動物の所定の群れに対して投与するためのワクチンを構成するための方法の実施形態において、各コンテイナは1つのタイプの微生物に由来する抗原を収容している。こうすると、製造リスクが更に低減し、エンドユーザーは専用ワクチンを構成する自由が増す。
【0026】
別の実施形態では、凍結乾燥されている内容物と混合する前に、担体は非生抗原を含んでいる。この実施形態は、例えば動物のタイプに対して幾つかの抗原がともかく予防接種のために必要であるときに有利であり得る。例えば欧州及び米国では、実質的にすべてのブタにマイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)抗原が予防接種されている。従って、この微生物由来の抗原が既に液体担体中に存在しているときに有利であり得る。こうすると、ブタの他の疾患由来の抗原を追加的に含む混合ワクチンを構成するときの取り扱い時間が節約される。同じことが他の動物、例えばヒト、魚及び他の水生動物、反芻動物、鳥類、ネコ、イヌ、ウマ等にもあてはまる。
【0027】
更に別の実施形態では、担体はアジュバントを含んでいる。特に、非生抗原の場合には、ワクチン中にアジュバントを存在させると標的動物における免疫応答を著しく改善させ得る。
【0028】
別の実施形態では、抗原が存在している凍結乾燥形態は1つ以上のリオスフィアからなる。前記スフィアは例えばEP0 799 613から公知であり、バイアル中に入っており、バイアルにより支持されている従来の凍結乾燥ケーキと比較して取り扱いが容易であるという利点がある。更に、前記スフィアは比較的効率的に製造することができ、製造コストを著しく低下させる(Intervet International BVに譲渡されている2009年1月20日に出願の国際特許出願PCT/EP2009/050584を参照されたい)。
【0029】
1つの実施形態では、ワクチンを群れがいる場所で構成する。こうすると、抗原間の干渉のリスクが最小に低下し、この実施形態では抗原の混合物の安定性も典型的には問題でないであろう。
【0030】
なお別の実施形態では、ワクチンを皮内投与用デバイスに充填する。出願人は、本発明の方法がワクチンの皮内投与用デバイスと組み合わせたとき更に追加の利点を与えることを認識した。典型的には、皮内投与の場合、より高い効力がより少ない抗原質量及びより少ない副作用で得られ得る。しかしながら、投与容量は典型的には1ml未満である。本発明は対応するワクチンの用量を低く保ちながら幾つかの抗原を専用に組み合わせるというオプションを与えるので、皮内投与との併用は重要な作用効果を与える。皮内投与デバイスは一般的に知られている(例えば、Proceedings of the 2008 AASV conference,p.201−204;Needle−free injection technology in swine,by Chris Chaseを参照されたい)。特にEP 928 209またはEP 1 515 763から公知のような無針デバイスがこの投与方法に非常に適しているようである。
【0031】
実施例
以下の特定実施例を用いて本発明を更に説明する。
【0032】
実施例1は、1つ以上の薬を含有する凍結乾燥粒子を得るための各種方法を記載している。
実施例2は、図1(凍結乾燥機、概略的に描かれている)及び図2(コンテイナ、概略的に描かれている)と共に本発明において使用するための凍結乾燥装置を記載している。
実施例3は、本発明において使用され得る液体担体のリストを示す。
実施例4は、本発明を使用し得る動物及び前記動物の疾患を引き起こす対応する微生物のリストを示す。
実施例5は、本発明に従って製造され得る典型的な混合ワクチンの幾つかの例を挙げている。
実施例6は、図3(インターネット広告)及び図4(輸送のためのパッケージ)と共に本発明のキット・オプ・パーツの実施形態を与える。
【実施例1】
【0033】
微生物抗原内容物を含有する凍結乾燥粒子の製造方法は一般的に知られている。このことは例えばEP 799613(AKZO Nobel NVに譲渡)、JP 09248177(Snow Brand Milk Corpに譲渡)及びWO 2006/008006(Bayer Technology Services GmbHに譲渡)に記載されている。これらの文献から粒子を凍結乾燥して「乾燥した」安定なリオスフィアを得る方法は公知である。後者の文献には、これらの粒子を製造するための多数の代替方法が挙げられている。これらの方法はp.4,l.23(“There are many methods known to those skilled in the art …”)〜p.8,l.13(…“The process is suitable for frozen granules or pellets.”)に要約されている。これらの公知方法の他に、球形または球形様粒子を得るべく医薬化合物を含有している凍結ペレットを得るための多数の他の方法が公知である。本例では、我々は、JP 09248177から公知の技術を用いて平均直径が約6mmの凍結球形ペレットを得た。最も一般的には1〜15mmのサイズ、特に2〜10mmのサイズを使用する。
【実施例2】
【0034】
図1に凍結乾燥機(凍結乾燥装置)を概略的に示す。凍結乾燥機は、例えばオランダ国ブロイケレンに所在のSaIm en Kippから入手可能なChrist Epsilon 2−12Dであり得る。この凍結乾燥機1はハウジング2及び複数の棚3を含む。Epsilon 2−12Dは4+1つの棚を含む。便宜上、これらのうち3つの棚(すなわち、棚3a、3b及び3c)が図1に示されている。これらの棚の各々には棚3を均一に加熱するために加熱素子5(それぞれ、図番5a、5b及び5cとする)が設けられている。加熱はプロセッシングユニット10を使用することによりコントロールされている。ハウジングは、ハウジング2内の圧力を十分低くするためにポンプユニット11に連結されている。ハウジングの内部は冷却ユニット12、特にコンデンサーを含む冷却ユニットを用いることにより−60℃くらいの低温まで冷却され得る。棚3a及び3bにはその底部に固定されている黒色PTFEプレート8及び8’が設けられている。これらのプレートの輻射率係数は0.78である。黒色プレートと棚を均密に接触させることにより、これらのプレートは棚それ自体と同じ温度まで徐々に加温され得る。こうして、プレート8は棚3そのものに加えて熱源として見なされ得る。
【0035】
棚の上にコンテイナ15及び15’が置かれている。これらのコンテイナは熱伝導性材料から作られており、この場合にはカーボンブラックを充填したポリエチレンテレフタレートから作られている。コンテイナは該コンテイナが載っている棚と熱伝導的に接触している。コンテイナには凍結粒子30が充填されており、よって凍結粒子30は各コンテイナにおいて充填粒子のベッド29を形成している。棚を加熱することにより、粒子はコンテイナの加熱されている底部及び側壁を介して、それぞれ加熱されているプレート8及び8’からの放射により熱を受ける。図2はコンテイナ15それ自体の図を示す。各コンテイナは底部21及び側壁20を含む。典型的には、コンテイナは約20〜30cmの幅及び長さ、約4cmの高さを有している。コンテイナに充填した後のパックした床の高さは典型的には1.5〜3cmである。
【0036】
凍結乾燥方法により、各々が抗原を含有している凍結乾燥スフィアが複数提供される。次いで、スフィアを1つのコンテイナ中に個別に、または複数の均等な対応物と一緒に充填する。この方法を適用すると、最終的に複数の別個の非生抗原が生じ、各抗原は対応するコンテイナ中に凍結乾燥形態で存在している。これらのコンテイナは液体担体と組み合わせてパッケージとして販売され得る。代替実施形態では、液体担体が抗原を含むコンテイナとは別に販売、輸送される。このことは、一組の非生凍結乾燥抗原が多数の別個の抗原を含んでいるときに特に有利である。この場合、多くのエンドユーザーは新しい抗原を注文する都度にある容量の液体担体を受け取ることを好まないであろう。
【実施例3】
【0037】
先に挙げたものとは別に、本発明において使用され得る液体担体は典型的にはアジュバント、例えばISCOM(免疫賦活複合体)、サポニン(または、Quil Aのようなその画分及び誘導体)、水酸化アルミニウム、リポソーム、コキレート、ポリ乳酸/グリコール酸、油エマルション、ゲル、高分子ミクロスフィア、非イオン性ブロックポリマー、水酸化アルミニウム、CpGリッチなモチーフ、モノホスホリルリピドA、マイコバクテリア(ムラミールジペブチド)、酵母抽出物、コレラ毒素、表面活性剤、低酸素剤等を含有している。これらの担体及び他の液体担体は従来技術から一般的に知られている。本発明において使用され得る多数の担体が市販されている。後者のカテゴリーには、例えばDiluvac(登録商標)、Diluvac forte(登録商標)、X−solve(登録商標)、Emunade(登録商標)、Havlogen(登録商標)、Immugen(登録商標)、Spur(登録商標)(いずれも米国のIntervet−Schering−Plough Animal Health)、MetaStim(登録商標)及びSuvaxyn(登録商標)Diluent(米国のFort Dodge Animal Health)、Montanide(登録商標)ISA 50V、206及びIMS 1312(いずれもフランス国のSeppic)、Impran(登録商標)及びImpranFlex(登録商標)、DD−2(登録商標)及びPolysynlane(いずれも独国のBoehringer Ingelheim製)、IGF−1及びTandem M(登録商標)(いずれもフランス国のMerial製)、Emulsigen(登録商標)、Carbigen(登録商標)及びPolygen(登録商標)(いずれも米国のMVP laboratories製)、Immacel−R(登録商標)(オランダ国のPick Cell laboratories)、TiterMax(登録商標)(米国のTitermax)、Ribiアジュバント(米国のSigma;“MPL+TDMアジュバント”として入手可能)、PreZent−A(登録商標)、Drakeol(登録商標)及びAmphigen(登録商標)(米国のPfizer Animal health製)が含まれる。
【実施例4】
【0038】
本実施例では、本発明を使用し得る動物及び前記動物の疾患を引き起こす対応する微生物がリストされている。死滅全生物、サブユニット、毒素または他の代謝産物等のような非生抗原がこれらの微生物から公知方法により、例えば化学的または物理的不活化、精製、組換え発現技術等により誘導され得る。
【0039】
第1例はイノシシ科である。(ブタを含めた)イノシシ科に属する動物において疾患を引き起こし得る微生物の例は、サーコウイルス、ブタ繁殖・呼吸症候群ウイルス、マイコプラズマ属(Mycoplasma spp)(例えば、ヒオシノヴィエ(hyosynoviae)及びヒオニューモニエ(hyopneumoniae))、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、ブタ熱ウイルス、レプトスピラ属(Leptospira spp)(例えば、ポモナ(pomona)、オーストラリス(australis)、タラッソビ(tarassovi)、イヌ(canicola)、黄疸出血性(icterohaemorrhagicae)、ハージョ(hardjo)及びグリッポティホーサ(gryppothyphosa))、ブタ流産菌(Brucella suis)、クロストリジウム属(Clostridium spp)(例えば、ディフィシル(difficile)、ペルフリンゲンス(perfringens)、ノービ(novyi)、セプチカム(septicum)及び破傷風菌(tetani))、サルモネラ属(Salmonella spp)(例えば、ブタコレラ菌(cholerasuis)及びネズミチフス菌(typhimurium))、大腸菌(Escherichia coli)、豚痘、エペリスロゾーノシス・スイス(Eperythrozoonosis suis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcus suis)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ブタ狂犬病ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、ブラキスピラ属(Brachyspira spp)(例えば、ピロシコリ(pilosicoli)及びヒオディセンテリア(hyodysenteriae)、パルボウイルス、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、スタフィロコッカス・ヒイカス(Staphylococcus hyicus)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ヘルペスウイルス、日本脳炎B型ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、ミコバクテリウム属(Mycobacterium spp)(例えば、トリ結核菌(avium))、ブタの小水疱性発疹ウイルス、アデノウイルス及び赤血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、各種蠕虫属、例えば回虫属(Ascaris spp)、ブタ鞭虫(Trichuris suis)、ストロンギロイデス(Strongyloides)、ステファヌルス(Stephanurus)、メタストロンギルス(Metastrongylus)及び他の寄生虫(例えば、イソスポラ・スイス(lsospora suis)及びエイメリア属(Eimeria species))である。
【0040】
第2例はウシ科である。(ウシ、ヒツジ、ヤギを含めた)ウシ科に属する動物において疾患を引き起こし得る微生物の例は、各種クロストリジウム属(Clostridium species)、ウシモラクセラ(Moraxella bovis)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureaus)、アルカノバクテリウム・ピオゲネス(Arcanobacterium pyogenes)、各種タイプの蠕虫(例えば、ヘモンカス(Haemonchus)、オステルタジア(Ostertagia)、クーペリア(Cooperia)、ネマトディルス(Nematodirus)及びディクチオカウルス(Dictyocaulus))、フソバクテリウム・ネクロフォールム(Fusobacterium necrophorum)、IBR及びBVDウイルス、パラインフルエンザウイルス、BRSV、大腸菌(Escherichia coli)、各種レプトスピラ(Leptospira)タイプ(特に、ハージョ(hardjo)、ポモナ(pomona)、イヌ(canicola)、グリポティフォーサ(gryppotyphosa)及び黄疸出血性(icterohaemorrhagiae))、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、ヒストフィルス・ソムニ(Histophilus somni)、バクテロイデス・メラニノジェニクス(Bacteroides melaninogenicus)、ブラキスピラ・ヒオディセンテリア(Brachyspira hyodysenteriae)及び呼吸器合胞体ウイルスである。
【0041】
第3例はウマ科である。(ウマを含めた)ウマ科に属する動物において疾患を引き起こし得る微生物の例は、ロドコックス・エクイ(Rhodococcus equi)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、ウマ脳脊髄炎ウイルス、ウマインフルエンザウイルス、各種クロストリジウム属(Clostridum species)(特に、破傷風菌(tetani))、各種蠕虫及びウマヘルペスウイルスである。
【0042】
第4例は(イヌを含めた)イヌ科である。イヌ科に属する動物において疾患を引き起こし得る微生物の例は、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、石膏状小胞子菌(Microsporum gypseum)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trychophyton mentagrophytes)、コロナウイルス、ジステンパーウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、パラインフルエンザウイルス、各種レプトスピラ属(Leptospira species)(例えば、イヌ(canicola)、黄疸出血性(icterohaemorrhagiae)、ポモナ(pomona)、オーストラリス(australis)、タラッソビ(tarassovi)、グリッポティフォーサ(gryppotyphosa)及びセイロエ(sejroe))、ボレリア・バーグドルフェリ(B.burgdorferi)、狂犬病ウイルス、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、マラセチア・パチデルマティス(Malasezzia pachydermatis)、シュードモナス属(Pseudomonas species)、ブドウ球菌(Staphylococci)、エンテロコッカス・フェカ−リス(Enterococcus faecalis)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及び各種蠕虫(例えば、イヌ回虫(Toxocara canis)、ウンシナリア・ステノセファラ(Uncinaria stenocephala)、イヌ鞭虫(Trichuris vulpis)、扁平条虫(Taenia pisiformis))である。
【0043】
第5例は(ネコを含めた)ネコ科である。ネコ科に属する動物において疾患を引き起こし得る微生物の例は、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、石膏状小胞子菌(Microsporum gypseum)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trychophyton mentagrophytes)、鼻気管炎ウイルス、カリシウイルス、気管支敗血症菌(Bordetella bronchispetica)、汎白血球減少症ウイルス、オウム病クラミジア(Chlamydia psitacci)、狂犬病ウイルス、各種バルトネラ属(Bartonella species)及び各種蠕虫である。
【0044】
第6例は(ニワトリ、ガチョウ、アヒル及びシチメンチョウのようなキジ目を含めた)鳥類科である。鳥類科に属する動物において疾患を引き起こし得る微生物の例は、ニワトリ脳脊髄炎、鶏痘ウイルス、各種血清型のヘモフィルス・パラガリナルム(Haemophilus paragallinarum)(特に、血清型A、B及びC)、エイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・テネラ(Eimeria tenella)及びエイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)、ニューカッスル病ウイルス、ガンボローウイルス、産卵低下症候群ウイルス、伝染性気管支炎(IB)ウイルス、各種マイコプラズマ属(Mycoplasma species)(例えば、ガリセプティクム(gallisepticum)及びシノヴィエ(synoviae))、各種サルモネルラ属(Salmonella species)(例えば、腸炎菌(enteritidis)、ネズミチフス菌(typhymurium)、家禽チフス菌(gallinarum))、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobactor jejuni)、大腸菌(Escherichia coli)、レオウイルス、伝染性嚢症ウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリニューモウイルス、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)及びブタ丹毒菌(Erysipelas insidiosa)、ニワトリ貧血ウイルス、アスペメギルス・オーガニズム(Aspergillius organisms)、ウェルシュ菌(Clostridum perfringens)、各種エイメリア属(Eimeria species)(例えば、アセルブリナ(acervulina)、ミバチ(mivati)、マキシマ(maxima)、テネラ(tenella)、ネカトリクス(necatrix)、プレコックス(praecox)、ブルネッテイ(brunetti)及びハガニ(hagani))、緑のう菌(Pseudomonas aeruginosa)、マレック病ウイルス及びこう頭気管支炎ウイルスである。
【0045】
第7例は魚類科(魚)である。サケ及びマスの場合、関連疾患を引き起こす微生物は、エルシニア・ルッケリィ(Yersinia ruckerii)、アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)、ビブリオ・アンギラールム(Vibrio anguillarum)、ビブリオ・オルダリィ(Vibrio ordalii)、ビブリオ・サルモニシダ(Vibrio salmonicida)、モリティエラ・ビスコース(Moritella viscose)、ピスシリケッチア・サルモニス(Piscirickettsia salmonis)、伝染性すい臓壊死症ウイルス、伝染性サケ貧血ウイルス、心臓・骨格筋炎症ウイルス、心筋障害症候群ウイルス、フラボバクテリウム・サイクロフィルム(Flavobacterium psychrophilum)、フラボバクテリウム・コルムナラエ(Flavobacterium columnarae)、ビブリオ・ウォダニス(Vibrio wodanis)、フランシセラ属(Francisella spp)、イクチオフチリウス・ムルチフィリス(lchthyopthyrium multifillius)、ストレプトコッカス・フォカエ(Streptococcus phocae)、ミズカビ病菌(Saprolegnia parasitica)、伝染性造血性壊死症ウイルス、ウイルス性出血性敗血症ウイルスである。タラの場合、関連疾患を引き起こす微生物は、フランシセラ属(Francisella spp)、ビブリオ・ロゲイ(Vibrio logei)及びビブリオ・アンギラールム(Vibrio anguillarum)である。ブリーム及びバスの場合、関連疾患を引き起こす微生物は、ビブリオ・アンギラールム(Vibrio anguillarum)、ビブリオ・オルダリィ(Vibrio ordalii)、テナチバキュラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)、エドワードシエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、ウイルス性神経壊死症ウイルス、パスツレラ・ピッシシダ(Pasteurella piscicida)、ストレプトコッカス・イニアエ(Streptococcus iniae)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、イリドウイルス(Iridovirus)、テナチバキュラム・マリティマム(Tenacibaculum maritimum)、クリプトカリオン・イリタンス(Cryptocaryon irritans)、ビブリオ・アンギラールム(Vibrio anguillarum)及びノカルジア・セリオラエ(Nocardia seriolae)である。ブリ及びアジの場合、関連疾患を引き起こす微生物は、ビブリオ・アンギラールム(Vibrio anguillarum)、ラクトコッカス・ガルビエアエ(Lactococcus garvieae)、パスツレラ・ピッシシダ(Pasteurella piscicida)、イリドウイルス(Iridovirus)、黄疸(Jaundice)及びノカルジア・セリオラエ(Nocardia seriolae)である。ヒラメの場合、関連疾患を引き起こす微生物は、エドワードシェラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、ストレプトコッカス・イニアエ(Streptococcus iniae)及びストレプトコッカス・パラユベリス(Streptococcus parauberis)である。ナマズの場合、関連疾患を引き起こす微生物は、エドワードシェラ・イクタルリ(Edwardsiella ictaluri)及びフラボバクテリウム・コルムナラエ(Flavobacterium columnarae)である。ティラピアの場合、関連疾患を引き起こす微生物は、ストレプトコッカス・イニアエ(Streptococcus iniae)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、イリドウイルス(Iridovirus)、フラボバクテリウム・コルムナラエ(Flavobacterium columnarae)、ミズカビ病菌(Saprolegnia parasitica)、ノカルジア・セリオラエ(Nocardia seriolae)及びフランシセラ属(Francisella spp)である。コイの場合、関連疾患を引き起こす微生物は、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、コイヘルペスウイルス及びミズカビ病菌(Saprolegnia parasitica)である。
【実施例5】
【0046】
1個以上のタイプの微生物、最高10個すらの異なるタイプの微生物に由来する抗原を含有するワクチンは何年にもわたり公知である。ワクチン技術業界では、抗原、特に非生抗原を単一担体内で混合し、1つの組成物として投与し得ることは一般的に知られている。実際、特定組合せ毎に各種抗原の効力に注意しなければならないが、これは当業界で公知の方法に従って実施され得る。同じことが異なる抗原間の干渉に当てはまるが、これはその場での混合の場合には殆ど問題でない。実際、投与前の抗原の混合はヒト及び獣医プラクティスにおいて医薬業界での一般的に適用されている作業方法である。本発明は、この公知の作業方法を支持するための便利な方法を提供する。この実施例では、混合ワクチンの具体的実施形態が挙げられている。これらのワクチンは、例えば文献から公知であり、望ましいまたは市販されているとさえ認識されている。
【0047】
ブタの場合、抗原の以下の組合せに到達し得る:マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、豚サーコウスルス、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)及び場合によりブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)に対応する抗原の組合せ。例えば、工場から離れた所で液体担体中に最初の2つの微生物の抗原(ブタのほぼ100%がこれらの微生物に対する予防接種を必要としているので)を加え、後者の2つの微生物の抗原は例えば各々がコンテイナ中に別々に詰められている凍結乾燥体形態で用意する。こうすると、ブタの所定の群れに対する微生物感染に関連する特有の健康リスクを考えるときに、所要によりエンドユーザーがローソニア(Lawsonia)及び/またはブタ丹毒菌(Erysipelothrix)抗原を添加するオプションが得られる。代替スキームでは、マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)抗原またはブタサーコウイルス抗原のみを担体中に存在させ、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、豚連鎖球菌(Streptococcus suis)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、ブタサーコウイルス、マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)等のような他の抗原は液体担体中に溶解(分散)させるための非生凍結乾燥抗原として入手可能である。他の組合せは、例えば口蹄疫ウイルスタイプO、A、C、Asia 1並びにSAT1、SAT2及びSAT3に対応する抗原のミックス;パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)及び気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)に由来する抗原のミックス;ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)及びブタパルボウイルスに対応する抗原のミックス;マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ブタサーコウイルス及びPRRSウイルスに対応する抗原のミックス;及びマイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)及び気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)に対応する抗原のミックスであり得る。
【0048】
ウシの場合、抗原の以下の組合せに到達し得る:各種クロストリジウム属(Clostridium species)(例えば、ショウベイ(chauvoei)、ノービ(novyi)、ペリフリンゲンス(perfringens)、破傷風菌(tetani)、セプチカム(spticum)、ソルデリー(sordellii)等)に対応する抗原の組合せ;BRSウイルス、パラインフルエンザ−3−ウイルス及びマンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)に対応する抗原の組合せ;IBRウイルス及びパラインフルエンザウイルスに対応する抗原の組合せ;コロナウイルス、ロタウイルス及び大腸菌(Escherichia coli)に対応する抗原の組合せ;IBRウイルス、パラインフルエンザウイルス及びBVDウイルスに対応する抗原の組合せ;各種サルモネラ属(Salmonella spp)(例えば、ダブリン(dublin)、ネズミチフス菌(typhimurium)等)に対応する抗原の組合せ;口蹄疫ウイルスタイプO、A、C、Asia1並びにSAT1、SAT2及びSAT3に対応する抗原の組合せ。
【0049】
イヌの場合、抗原の以下の組合せに到達し得る:ジステンパーウイルス及びアデノウイルスに対応する抗原の組合せ;ジステンパーウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス及び場合によりパラインフルエンザウイルスに対応する抗原の組合せ;パラインフルエンザウイルス及び気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)に対応する抗原の組合せ;場合によりコロナウイルス及び/または狂犬病ウイルスと組み合わせた各種レプトスピラ属(Leptospira species)(例えば、イヌ(canicola)、黄疸出血性(icterohaemorrhagiae)、ポモナ(pomona)、オーストラリス(australis)、タラッソビ(tarassovi)、グリッポティホーサ(gryppotyphosa)、セイロエ(sejroe)等)に対応する抗原の組合せ。
【0050】
ネコの場合、抗原の以下の組合せに到達し得る:場合によりネコ汎白血球減少症及びオウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)と組み合わせたヘルペスウイルス及びカリシウイルスに対応する抗原の組合せ。
【0051】
ニワトリの場合、抗原の以下の組合せに到達し得る:ニワトリ脳脊髄炎及び鶏痘ウイルスに対応する抗原の組合せ;各種血清型のヘモフィルス・パラガリナルム(Haemophilus paragallinarum)(特に、血清型A、B及びC)に対応する抗原の組合せ;エイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、エイメリア・テネラ(Eimeria tenella)及びエイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)に対応する抗原の組合せ;ニューカッスル病ウイルス、ガンボローウイルス及び場合により産卵低下症候群ウイルス及び/または伝染性気管支炎(IB)ウイルスに対応する抗原の組合せ;各種マイコプラズマ属(Mycoplasma species)(例えば、ガリセプチクム(gallisepticum)及びシノヴィエ(synoviae))に対応する抗原の組合せ;各種サルモネラ属(Salmonella species)(例えば、腸炎菌(enteritidis)、ネズミチフス菌(typhymurium)、家禽チフス菌(gallinarum))及び場合によりカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)及び/または大腸菌(Escherichia coli)に対応する抗原の組合せ;レオウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、伝染性嚢症ウイルス及びニューカッスル病ウイルスに対応する抗原の組合せ;トリ鼻気管支炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス及び/またはトリニューモウイルスに対応する抗原の組合せ;パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)及びブタ丹毒菌(Erysipelas insidiosa)に対応する抗原の組合せ。
【0052】
魚の場合、魚の具体的タイプ(例えば、「サケ及びマス」、「タラ」、「バス」、「ブリーム」、「ブリ及びアジ」、「ヒラメ」、「ナマズ」、「ティラピア」及び「コイ」)毎の疾患を引き起こす微生物の抗原の組合せが有利である。前記組合せは魚の各タイプにおいて複数の健康リスクをたった一度で治療するために使用され得る。
【0053】
ヒトの場合、抗原の以下の組合せに到達し得る:ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、百日咳菌(Bordatella pertussis)、破傷風菌(Clostridium tetani)及びポリオウイルスに対応する抗原の組合せ;(各種タイプの)パラミクソウイルス及び(各種タイプの)ロゼオロウイルスに対応する抗原の組合せ。
【0054】
いずれの場合も、特定の動物の群れに対する特有の健康リスクを治療するためにどの抗原が必要であるかまたは所望するかを確定する。これは、考えられる群れに対して1つの特定リスクから特に適切なくらい多くであり得る。次いで、これらの抗原のいずれがワクチンを(その場で)構成するために入手可能であるかを定める。この群の中で、1つ以上の抗原(例えば、必須ではないが、各健康リスクに対応する入手可能な抗原のすべて)を選抜する。抗原の各々は凍結乾燥形態で入手可能であるので、抗原は単に適切な担体液体と混合し、すぐに使用できるワクチンを得るために抗原を媒体の容量を大きく増加させることなく媒体中に溶解及び/または分散させる。十分にホモジナイズした後、すぐ使用できるワクチンを対象動物(例えば、ブタには非経口投与を介して、または魚には経口投与を介して)に投与し得る。非経口の予防接種は当業界で公知の手段により(例えば、注射器を用いて筋肉内に、粘膜下、または皮内投与)なされ得る。オランダ国ブロイケレンに所在のIntervet/Schering−Plough Animal Health製のIDAL(登録商標)予防接種器として入手可能な皮内投与用無針注射デバイスが特に適切である。
【実施例6】
【0055】
本実施例は本発明のキット・オブ・パーツの実施形態を与える。図3には、インターネットページ40がラップトップコンピューター35上に表示されている。このページ40は動物(43、この場合「ブタ」)にとって医薬的に許容され得る液体担体45及び一組の複数の別個の凍結乾燥されている非生抗原46(「Aaaa」、「Bbbb」等として表示されている)の組合せをPRしており、前記非生抗原は(一般的に)このタイプの動物に対する健康リスクに相当し、ワクチンを構成するために担体と混合するのに適している。この具体的な例では、インターネットページ40は液体担体及び抗原を入手し得る会社の名前(41)及びこのインターネットページを介して特定情報をアクセス可能にするインタラクティブボタン42を示している。
【0056】
図4は、本発明のキット・オブ・パーツの別の例を示す。この場合、ボックス400(図4には明瞭とするために蓋が示されていない)は液体担体を含有しているボトル45及び複数の小バイアル46を収容しており、各バイアルは非生凍結乾燥抗原を含有している。例えば、インターネットページ40のエリア46中に示されている抗原の各々がこのボックス400中に存在している。代替実施形態では、ボックスは、特にエリア46に示す抗原の1つ以上を用いてワクチンを構成しようとしている人が動物の所定の群れを治療するための適切なワクチンを構成するために異なる抗原すべてを必要としないときには、前記抗原の一部のみに相当するバイアルを収容している。これは、例えばある微生物感染が特定の領域で起こらず、よってこの領域では動物の所定の群れに対して健康リスクを与えないことが予め明らかな場合であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−一組の複数の別個の非生抗原を用意し、各非生抗原は凍結乾燥形態で存在しおよびコンテイナ中に詰められており、
−動物にとって医薬的に許容され得る液体担体を用意し、
−動物の所定の群れに対する微生物感染に関連する健康リスクを調べ、
−前記組中の1つ以上の非生抗原のどれがこれらの健康リスクに相当するかを確定し、
−前記した1つ以上の非生抗原に対応する1つ以上のコンテイナを選抜し、
−前記した1つ以上のコンテイナの凍結乾燥されている内容物を担体と混合して、ワクチンを構成する
ことを含む前記の群れに対して投与するためのワクチンの構成方法。
【請求項2】
各コンテイナは1つのタイプの微生物に由来する抗原を収容している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
凍結乾燥されている内容物と混合する前に、担体は非生抗原を含んでいる請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
担体はアジュバントを含んでいる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
凍結乾燥形態は1つ以上のリオスフィアからなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ワクチンを群れがいる場所で構成する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ワクチンを皮内投与用デバイスに充填する請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
−各別個の非生抗原を別々に凍結乾燥し、
−各別個の非生抗原をコンテイナ中に詰めて、一組の複数の凍結乾燥されている非生抗原を形成し、
−動物にとって医薬的に許容され得、凍結乾燥されている非生抗原の各々を再構成するのに適した液体担体を処方し、
−前記液体担体及び前記した一組の複数の非生抗原を含むキット・オブ・パーツを構成する
ことを含む動物の所定の群れに対する特有の健康リスクに相当するようにワクチンを構成することができる前記の群れに対して投与するためのワクチンを構成するのに適した複数の別個の非生抗原の製造方法。
【請求項9】
キット・オブ・パーツはワクチンの皮内投与用デバイスをも含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
キット・オブ・パーツは液体担体及び複数の別々のコンテイナを保有している容器を収容しているボックスを含み、各コンテイナは凍結乾燥されている非生抗原を含んでいる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
動物にとって医薬的に許容され得る液体担体及びワクチンを構成すべく前記担体と混合するのに適した一組の別個の凍結乾燥されている非生抗原を含み、場合により前記ワクチンの皮内投与用デバイスを含む動物の群れに対して投与するためのワクチンを構成するためのキット・オブ・パーツ。
【請求項12】
液体担体及び複数の別々のコンテイナを保有している容器を収容しているボックスを含み、各コンテイナは凍結乾燥されている非生抗原を含んでいる請求項11に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項13】
−一組の複数の別個の非生抗原を用意し、
−各非生抗原を凍結乾燥し、
−各凍結乾燥されている非生抗原を別々のコンテイナに詰め、
−動物にとって医薬的に許容され得る液体担体を用意し、
−容器に前記液体担体を充填し、
−1つ以上のコンテイナの内容物をある容量の液体担体と混合することによるワクチンのその場での構成を助ける人に対して前記コンテイナ及び前記容器を輸送する
ことを含む動物の所定の群れに対する特有の健康リスクに相当するように構成される前記の群れに対して投与するためのワクチンをその場で構成できる方法。
【請求項14】
コンテイナを容器とは別に輸送する請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−520849(P2012−520849A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500235(P2012−500235)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053446
【国際公開番号】WO2010/106095
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】