説明

動物用飼料または食品を製造する方法およびその方法により得られた製品

本発明は、動物用飼料または食品を製造する方法において、(i)肉および/または魚エマルションを含むことが好ましい、少なくとも第1の材料流を提供する工程、(ii)少なくとも1種類のゲル形成成分および液体、特に水を含む粘性ゲルを、このゲル形成成分および液体を混合槽中に導入することによって、調製する工程であって、混合槽中に配置されたゲル形成成分への液体の導入が、高圧下で第1のノズルユニットにより行われる工程、(iii)工程(ii)で得られた粘性ゲルを少なくとも1種類の第2の材料流として、または材料流中に提供する工程、(iv)第1と第2の材料流を少なくとも部分的に不完全に混合するための装置内で第1の材料流中の第2の材料流の層流分散を製造し、よって、第2の材料流が、少なくとも0.3mm、好ましくは0.3mmから8mmのサイズを有する液滴の形態で第1の材料流中に分布している工程、(v)第2のノズルユニットを通じて、液滴の形態で、第2の材料流を含有する第1の材料流を引き出す工程、および(vi)液滴の形態で第2の材料流を含有する第1の材料流を固化させる工程を有してなる方法;およびその方法により調製できる動物用飼料または食品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用飼料または食品を製造する方法およびその方法により得られた製品に関する。
【背景技術】
【0002】
動物用飼料および食品業界において、様々な態様で生じる問題は、特に天然のすなわち元々の肉片や魚片の外観を有するが、より小さな肉や魚の切れ端もしくは肉状または魚状成分、特に、肉含有量は少ないが、脂肪や他の成分の含有量が多い成分から調製される製品を単純かつ効率的にどのように調製するかである。
【0003】
この点に関して、肉または魚エマルションを使用して調製される製品がよく知られている。
【0004】
肉エマルションは、長年、動物用飼料および食品業界において、特に、ペットフードの分野において、大規模に使用されてきた。これに関連して、必要に応じて植物性タンパク質と組み合わせて、できるだけ大きい比率の肉原材料を使用する必要がある。何故ならば、これらは、タンパク質、ミネラル類、微量元素、脂肪およびビタミン類の重要な栄養源であり、また、十分に許容されかつ消化性が高いと同時に、非常に味が良く、よって、適切な栄養素の供給にとって理想的な基本要素を提供するからである。
【0005】
この点に関して、製造すべき動物用飼料または食品は、より小さな肉や魚の切れ端、すなわち、屑、および他にはヒトの栄養摂取に使用できない動物の他の成分のみからなるにもかかわらず、特に、天然のすなわち元々の肉片や魚片のテキスチャーおよび外観を模倣することが望ましい。
【0006】
例えば、特許文献1には、動物用飼料または食品を製造する方法であって、第1と第2の材料流が層流様式で互いに分散され、次いで、ノズルを通じて吐出され、固化される方法が開示されている。層流分散はここでは、本発明におけるように、少なくとも1種類の第1の材料流および少なくとも1種類の第2の材料流を混合し、その過程で、第1の材料流が、その相が裸眼でまだ検出できるような様式で相として第2の材料流中に分布していることを意味すると理解される。0.1mm未満の直径を有する対応する相液滴はもはや、裸眼では検出できないと考えられる。液滴の直径が0.1mm以上であれば、複数の材料流の完全な配合(blending)となる、すなわち、それは層流分散ではないとみなされる。
【0007】
特許文献1によれば、肉または魚エマルションは、第1の材料流として使用できるのに対し、粘性ゲルは、第2の材料流として使用できる。このプロセスにおいて、粘性ゲルは、カッター内でゲル形成成分を水と緊密に混合することによって調製される。
【0008】
しかしながら、この場合、このようにして調製された粘性ゲルを使用すると、対応する材料流中と最終製品中、すなわち、動物用飼料または食品中の両方に気泡が導入されてしまうことが知られてきた。しかしながら、気泡が肉片や魚片中に見える場合、気泡は、得られた筋状肉模様(繊維)を乱すので、気泡を含有するこの種の粘性ゲルは、それらにより調製された肉または魚類似物の自然度(authenticity)を損なう。
【0009】
特許文献2には、食品に意図された成分および液体、特に水から生地を調製するための装置が開示されている。この装置において、液体は、ノズルユニットを通じて、高圧下で、生地の調製に必要とされる成分中に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2037754A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1358802A2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術の欠点を克服した動物用飼料または食品を製造する方法を提供する課題に基づく。特に、本発明は、肉または魚類似物の製造における気泡の導入を防ぐかまたは少なくとも減少させ、よってそのような肉または魚類似物の自然度が保存される方法を提供する。その上、その方法にしたがって調製された動物用飼料または食品を提供することも意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、動物用飼料または食品を製造する方法において、
(i) 肉および/または魚エマルションを含むことが好ましい、少なくとも第1の材料流を提供する工程、
(ii) 少なくとも1種類のゲル形成成分および液体、特に水を含む粘性ゲルを、このゲル形成成分および液体を混合槽中に導入することによって、調製する工程であって、混合槽中に配置されたゲル形成成分への液体の導入が、高圧下で第1のノズルユニットにより行われる工程、
(iii) 工程(ii)で得られた粘性ゲルを少なくとも1種類の第2の材料流として、または材料流中に提供する工程、
(iv) 第1と第2の材料流を少なくとも部分的に不完全に混合するための装置内で第1の材料流中の第2の材料流の層流分散を製造し、よって、第2の材料流が、少なくとも0.3mm、好ましくは0.3mmから8mmのサイズを有する液滴の形態で第1の材料流中に分布している工程、
(v) 第2のノズルユニットを通じて、液滴の形態で第2の材料流を含有する第1の材料流を引き出す工程、および
(vi) 液滴の形態で第2の材料流を含有する第1の材料流を固化させる工程、
を有してなる方法にしたがって解決される。
【0013】
ゲル形成成分は、浸水コロイド、アスピック、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、穀物、ブイヨンおよびその混合物から選択され、浸水コロイドが好ましく、カルボキシメチルセルロース、グアーガムおよびガラクトマンナンが特に好ましい。言及できる特に好ましいゲル形成成分は、カルボキシメチルセルロースである。
【0014】
粘性ゲルの粘度は、Brookfield粘度計、RVDVIII、スピンドル7、20rpm、温度20℃で測定して、5,000mPa・sと500,000mPa・s(10,000mPa・s=10,000cP(センチポアズ))の間にあることが特に好ましい。
【0015】
それに加え、液体の導入は、30から150バール、好ましくは30から50バール、より好ましくは30から40バールの圧力下で第1のノズルユニットによって行われることが好ましいと考えられる。
【0016】
第1のノズルユニットが、ノズルを通過する液体の噴出が、混合槽の幅に渡る、および/または混合槽の筐体の内壁に向けられるような様式で配列されていることが好ましい丸ノズルまたはスロットノズルを備えることも提案される。
【0017】
その上、固化の前、最中または後に、第2の材料流を含有する第1の材料流が、好ましくは第2のノズルユニットからの引き出し方向に対して垂直に、適切なサイズの小片に切断されることが提案されることが好ましい。
【0018】
さらに別の実施の形態において、少なくとも部分的に不完全に混合するための前記装置がスタティックミキサであることも考えられる。
【0019】
第1と第2の材料流が、50:50から95:5、好ましくは70:30から90:10、より好ましくは80:20から85:15の質量比で使用されることが好ましい。
【0020】
第1の材料流が、追加に、繊維質材料、繊維含有材料、デンプンおよび/または穀粉を含むことが特に好ましいと考えられる。この添加物の目的は、粘度を増加させることにある。
【0021】
本発明のさらに都合の良い実施の形態は、工程(iv)における層流分散後に、中空軸を備えた装置内で、工程(iv)において得られた第1の材料流中に、追加の第2の材料流が導入され、この追加の第2の材料流が中空軸の入口端でその中に導入され、出口端に送達され、中空軸が、少なくとも出口端で、管により実質的に同心に取り囲まれており、その管を通じて、工程(iv)において得られた第1の材料流が、中空軸の出口端に輸送され、中空管の出口端で、その管の内部で、追加の第2の材料流が、分配手段によって、工程(iv)において得られた第1の材料流中に導入される追加の工程(iva)を含む。
【0022】
この点に関して、追加の第2の材料流が、動翼輪(impeller wheel)を通じて、工程(iv)において得られた第1の材料流中に導入されることが好ましい。
【0023】
第2のノズルユニットがスロットノズルであることが特に好ましいと考えられる。
【0024】
繊維、好ましくは植物繊維が粘性ゲルに、工程(ii)におけるその調製の前、最中または後に加えられることも特に好ましい。
【0025】
好ましい繊維は、例えば、小麦および/またはオート麦繊維、セルロース繊維などであってよい。これらの繊維は、セルロース粉末、砂糖大根片粉末またはチコリ片粉末などの粉末の形態で、またはそのような繊維および/または粉末の混合物で使用してよいと考えられる。
【0026】
繊維および/または粉末の添加は、粘性ゲルの製造にマイナスの影響を与えない。これに対して、ゲルの適切な粘度が確実に維持される。
【0027】
本発明は、上述した方法により製造できる動物用飼料または食品にも関する。
【0028】
意外なことに、本発明の方法により、気泡を実質的に含まない粘性ゲルを調製できることが分かった。粘性ゲルを第2の材料流としてまたはその中に使用した場合、その自然度が実質的に損なわれない動物用飼料または食品を製造できる。特に、肉および魚の繊維構造による縞模様が損なわれない。粘性ゲルを製造する特別な方法のお陰で、気泡の内包がおおむね避けられる。理論により拘束することを望むものではないが、ゲル形成成分に液体を導入すると、低粘度段階でその成分が水和され(限られた期間)、よって、まだ存在するかもしれない気泡がゲルから難なく逃れられると考えられる。
【0029】
このことは、テキスチャーおよび外観が天然のまたは元々の肉片や魚片に対応する製品が、本発明にしたがって製造できることを意味する。
【0030】
第2の材料流として、またはその中に粘性ゲルを気泡なく調製することに加え、第2の材料流の液滴が、0.3mmから8mmのサイズで第1の材料流中に分布し、これが、スタティックミキサを使用した層流分散によって好ましく達成できることも本発明にとっての要である。第2に、その中に液滴が分散したこのように得られた材料流が、第1の材料流中に含まれる第2の材料流の液滴が長手方向に引き出されるように、ノズル、好ましくはスロットノズルを通じて取り出されることが要である。次いで、ノズルから取り出された混合物が硬化し、その際に、元々の肉片や魚片に非常によく似た製品のテキスチャーを提供するために、材料を、好ましくはノズルユニットからの取り出し方向に対して垂直に、スライスすることができる。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態において、魚の切り身の典型的なきめの粗い構造を示す魚系動物用飼料または食品を製造することが同様に可能である。この目的のために、工程(iv)における第1の材料流中の第2の材料流の層流分散後、きめの粗い形態にある追加の第2の材料流を、工程(iv)において得られた第1の材料流中に導入するさらに別の装置が使用される。
【0032】
この装置と一般方法についての詳細が、ここに引用されている特許文献1に見つけられる。
【0033】
「親水コロイド」という用語は、本発明の脈絡において、コロイドとして水溶液を形成し、ゲル形成の高い可能性を示す、多糖類およびタンパク質の群を意味するものと理解すべきである。親水コロイドの例としては、デンプン粉末、セルロース、ペクチン、アラビアゴム、ガラクトマンナン、寒天、カラギーナン、アルギン酸塩、ゼラチン、カゼイン塩、キサン、デキストランおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびメチルセルロース(MC)などのセルロース誘導体が挙げられる。
【0034】
本発明のさらに別の特徴および利点が、本発明のある実施の形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【実施例】
【0035】
第1の材料流
第1の材料流を、11質量%のブタの胃、43質量%の鶏の肝臓、36質量%の七面鳥(機械的に回収した肉)、6質量%の動物または植物タンパク質抽出物および4質量%のビタミン類、塩類、ミネラル類および繊維を混合することによって、調製した。これらの成分は、20℃以下の最終温度でみじん切りし、切り刻むことによって調製した。
【0036】
第2の材料流
第2の材料流は、2質量%のカルボキシメチルセルロース、必要に応じて繊維、2質量%の塩類、ミネラル類、顔料、染料、スパイス類、ブイヨンおよび95質量%の水からなる。
【0037】
ゲル形成成分としてカルボキシメチルセルロースのみを使用する代わりに、カルボキシメチルセルロースに加え、またはその代わりに、他のゲル形成成分を使用しても差し支えない。例えば、4質量%までのカルボキシメチルセルロース、20質量%までのセルロース繊維粉末および/または20質量%までの植物繊維粉末を含有するゲル形成成分を使用することが考えられる。
【0038】
第2の材料流、すなわち、粘性ゲルを、特許文献2に記載された方法にしたがって調製した。特に、水を、混合槽中にすでに存在したゲル形成成分中に、70バールの高圧下で導入した。混合槽から引き出された粘性ゲルは、気泡を含有しなかったが、非常に粘性であった。
【0039】
次いで、第1と第2の材料流を、特許文献1に記載されたような装置により、詳しくは、80質量%の第1の材料流および20質量%の第2の材料流の比率で、層流様式で分散させた。
【0040】
固化後、完成した動物用飼料または食品は、全ての切断表面で、鶏肉に典型的に肉の粒を示す。この製品中に気泡が実質的に取り込まれていないので、テキスチャーは、天然の鶏肉に極めて似ている。
【0041】
先の説明および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個々と、任意の組合せの両方で、様々な実施の形態において本発明を実施するのに必須であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物用飼料または食品を製造する方法において、
(i) 少なくとも第1の材料流を提供する工程、
(ii) 少なくとも1種類のゲル形成成分および液体を含む粘性ゲルを、該ゲル形成成分および該液体を混合槽中に導入することによって、調製する工程であって、前記混合槽中に配置された前記ゲル形成成分への前記液体の導入が、高圧下で第1のノズルユニットにより行われる工程、
(iii) 工程(ii)で得られた前記粘性ゲルを少なくとも1種類の第2の材料流として、またはこの材料流中に提供する工程、
(iv) 前記第1と第2の材料流を少なくとも部分的に不完全に混合するための装置内で該第1の材料流中の該第2の材料流の層流分散を製造し、よって、前記第2の材料流が、少なくとも0.3mmのサイズを有する液滴の形態で前記第1の材料流中に分布している工程、
(v) 第2のノズルユニットを通じて、液滴の形態で前記第2の材料流を含有する前記第1の材料流を引き出す工程、および
(vi) 液滴の形態で前記第2の材料流を含有する前記第1の材料流を固化させる工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記ゲル形成成分が、浸水コロイド、アスピック、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、穀物、ブイヨンおよびその混合物から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記粘性ゲルの粘度が、Brookfield粘度計、RVDVIII、スピンドル7、20rpm、温度20℃で測定して、5,000mPa・sと500,000mPa・sの間にあることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記液体が、30から150バールの圧力下で前記第1のノズルユニットによって導入されることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第1のノズルユニットが丸ノズルまたはスロットノズルを備えることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第1と第2の材料流が、50:50から95:5の質量比で使用されることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1の材料流が、追加の繊維質材料、繊維含有材料、デンプンおよび/または穀粉を含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程(iv)における層流分散後に、中空軸を備えた装置内で、工程(iv)において得られた前記第1の材料流中に、追加の第2の材料流が導入され、該追加の第2の材料流が前記中空軸の入口端でその中に導入され、出口端に送達され、該中空軸が、少なくとも前記出口端で、管により実質的に同心に取り囲まれており、該管を通じて、工程(iv)において得られた前記第1の材料流が、前記中空軸の出口端に輸送され、該中空管の出口端で、前記管の内部において、前記追加の第2の材料流が、分配手段によって、工程(iv)において得られた前記第1の材料流中に導入される追加の工程(iva)を含むことを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
繊維が前記粘性ゲルに、工程(ii)におけるその調製の前、最中または後に加えられることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9いずれか1項記載の方法により調製できる動物用飼料または食品。

【公表番号】特表2013−514790(P2013−514790A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545129(P2012−545129)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007431
【国際公開番号】WO2011/076341
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】