説明

動物監視システム、監視方法及びプログラム

【課題】試験動物の死亡を検出し、オペレータに知らせる。
【解決手段】ビデオカメラ11により動物を撮影して動画像を取得する。不動状態判定部13により、ビデオカメラ11からの動画データに基づき動物31の不動状態が一定時間経過したか否かを判定する。異常判定部14で、不動状態時間の開始時刻が動物の活動時間帯に属しているか否かを判定する。活動時間帯に属しているときに異常と判定する。異常判定部14で異常と判定したときに、報知部15により、ディスプレイ23に動物死亡のポップアップメニューを表示し、スピーカ24から警報を発する。報知部15は、異常と判定したときにオペレータの携帯電話端末41に動物死亡メールを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物監視システム、監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質の毒性や安全性の試験では、ラットやマウス、モルモット、うさぎ等の各種動物を使用して、医薬品、農薬、化粧品・食品・食品添加物・工業化学物質、環境汚染物質等の各種化学物質について、人や生物に好ましくない作用(毒性)の有無またはその強さの程度を調べる。
【0003】
上記試験は、薬品を実際に動物に投与し、体重,餌,水,尿等の量の測定、生化学検査,血液学的検査,臨床症状の観察,各種の病理所見等を行い、採取したこれらの症状変化データを分析する。したがって、試験期間中に死亡した動物の状態を観察することは、被験物質の性質を正確に把握する上で重要な作業である。しかし、死亡から発見までの期間が長くなると、死後変化により死亡直後の体重や臓器の状態を把握することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−296651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、実験動物をビデオ撮影し、その動画像を画像解析アルゴリズムを用いて解析することにより、運動種別を判別する方法が記載されている。しかし、運動種別として不動を検出することはできるものの、死亡しているのか否かなどは検出することはできない。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、試験動物の死亡などの異常を早期に検出してオペレータに連絡することができる動物監視システム、監視方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、動物を撮影して動画像を取得する撮像装置と、前記撮像装置から得られた動画データに基づき動物の不動状態が一定時間経過したか否かを判定する不動状態判定部と、前記不動状態判定部で不動状態が判定されたときの判定時刻に基づき、この判定時刻が動物の活動時間帯に属しているか否かを判定し、活動時間帯に属しているときに異常と判定する異常判定部と、前記異常判定部で異常と判定したときに異常を報知する報知部とを有する。
【0008】
前記異常判定部は、異常判定に用いる前記活動時間帯を、動物の成長段階毎及び/または環境変化単位毎に応じて記憶してあり、動物の成長段階、環境変化単位に応じて、異常判定に用いる前記活動時間帯を切り替えて使用することが好ましい。また、前記異常判定部は、前記撮像装置からの動画データに基づき、動物の活動時間帯と不活動時間帯とを検出し、検出した時間帯と予め記憶している時間帯との間にずれが発生したときに補正する時間帯補正部を有することが好ましい。前記報知部は、異常と判定したときにオペレータの携帯端末に異常発生の送信を行う送信部を有することが好ましい。また、前記報知部は、異常と判定した時の動物の画像データ及び判定した時刻データを添付することが好ましい。
【0009】
本発明の動物監視方法では、動物を撮影して動画像を取得する第1ステップと、第1ステップの動画像から動物が不動か否かを判定する第2ステップと、第2ステップで不動と判定され、不動状態時間が一定値を超えたときに、該不動状態時間の開始時刻が前記動物の日常行動パターンにおける活動時間帯に属しているか否かを判定し、前記不動状態開始時刻が前記活動時間帯に属しているときに異常と判定する第3ステップと、第3ステップで異常と判定したときに、異常発生を報知する第4ステップとからなる。
【0010】
なお、前記第1ステップでは、動物に色素または蛍光物質を含むマーカを付け、前記第2ステップでは、前記色素または蛍光物質の動画における移動軌跡を求め、この移動軌跡が一定位置に止まって一定時間が経過したときに不動状態と判定することが好ましい。また、前記第3ステップでは、異常判定に用いる前記活動時間帯を、動物の成長段階毎及び/または環境変化単位毎に応じて記憶してあり、動物の成長段階、環境変化単位に応じて、異常判定に用いる前記活動時間帯を切り替えて使用することが好ましい。また、前記第1ステップの動画像データに基づき、前記第3ステップで用いる動物の活動時間帯と不活動時間帯とを検出し、検出した時間帯と予め記憶している時間帯との間にずれが発生したときに補正する第5ステップを含むことが好ましい。前記第4ステップでは、異常と判定したときにオペレータの携帯端末に異常発生の送信を行うことが好ましい。また、前記第4ステップでは、異常と判定した時の動物の画像データと判定した時刻データとを添付することが好ましい。
【0011】
本発明の動物監視プログラムでは、動物を撮影した動画像から動物が不動か否かを判定する第1機能と、動物が不動と判定され、不動状態時間が一定値を超えたときに、該不動状態時間の開始時刻が前記動物の日常行動パターンにおける活動時間帯に属しているか否かを判定し、前記不動状態開始時刻が前記活動時間帯に属しているときに異常と判定する第2機能と、異常と判定したときに異常発生を報知する第3機能とをコンピュータに実現させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安全性試験における試験動物の異常、例えば死亡を自動的に検出し、オペレータに報知される。したがって、死亡から発見までの時間が長くなることがなく、死亡直後の体重や臓器の状態の把握が容易になり、正確なデータの取得が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の動物監視システムを示すブロック図である。
【図2】動物の日常行動パターンと、活動時間帯TA,不活動時間帯TNAの一例を示すグラフである。
【図3】日常行動パターン管理部による活動時間帯の修正方法を示すフローチャートである。
【図4】死亡検知メールの表示画面の一例を示す正面図である。
【図5】本発明の動物監視方法を示すフローチャートである。
【図6】死亡判定時の動物の運動量推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、動物監視システム10は、ビデオカメラ11、画像保存部12、不動状態判定部13、異常判定部14、報知部15を有する。この動物監視システム10は、化学物質安全性試験が行われる例えば医薬品研究所などの研究施設に設けられる。画像保存部12、不動状態判定部13、異常判定部14、報知部15は、パーソナルコンピュータ(パソコン)20の機能を用いてソフト的に構成される。パソコン20は、周知のように本体部の他に、キーボード21やマウス22などの入力部と、ディスプレイ23やスピーカ24などの出力部を有する。
【0015】
ビデオカメラ11は、動物実験ケージ30内の全体が撮影可能な位置に設けられ、連続して撮影される。この撮影データは、画像保存部12に送られて、撮影時刻データとともに記録される。また、撮影時刻データは、撮影画面内に現在時刻を表示して記録することで、各動画像の1フレーム分内に、動物とともに撮影時刻を記録してもよい。勿論、動画像と別に動画像の各フレームに対応させて撮影時刻データを記録してもよい。
【0016】
画像保存部12は、ビデオカメラ11からの画像データを一定時間単位毎に保存する。なお、複数台のビデオカメラ11を用いて、複数のケージ30内の動物31を監視する場合で、内蔵のハードディスクドライブなどの容量の関係で、充分な画像データ保存領域を確保することができない場合には、外部の記憶手段、例えば外付けのハードディスクドライブを接続する。さらには、複数飼育室の複数ケージ30内の動物31を対象とする場合には、画像サーバを別途用意し、これに各ケージ30の連続動画データを保存してもよい。
【0017】
不動状態判定部13は、ビデオカメラ11から得られた動画データに基づき動物(例えばマウス)31の不動状態が一定時間経過したか否かを判定する。動物31の不動状態の判定は、画像処理により、動物の輪郭を抽出し、この輪郭内の重心位置を例えば5秒間隔で求め、これら5秒間隔毎の重心位置をつなげることにより、移動軌跡を作成する。移動軌跡が一定時間例えば20分移動することなく停止したときに、不動状態と判定する。不動状態と判定したときには、不動状態判定時刻(不動状態時間NA1の開始時刻)を含む不動状態判定信号を異常判定部14に送る。
【0018】
異常判定部14では、不動状態判定部13からの不動状態判定信号中の判定時刻に基づき、この判定時刻が動物の活動時間帯TAに属しているか否かを判定する。活動時間帯TAに属しているときには異常、例えば死亡と判定し、異常判定信号を報知部15に送る。また、活動時間帯以外の睡眠時間などの不活動時間帯TNAに属するときには睡眠中と判定し、この場合には異常判定信号を発することはない。
【0019】
異常判定部14は日常行動パターン管理部16を有する。この日常行動パターン管理部16は、図2に示すような日常行動パターンP1を記録し管理する。日常行動パターンP1は、例えば、1年を52週単位ととらえ、52週単位で各単位に属するパターンP1がそれぞれ記録される。なお、日常行動パターンP1の切り換えは週単位に限らず、1日単位、10日単位、20日単位、1カ月単位、3カ月毎の季節単位などで切り換えてもよい。
【0020】
このように切り換え単位を適宜変更することにより、環境変化に応じた最適な日常行動パターンP1を用いることができる。また、1年を各単位で区切って、その各単位内で同一の日常行動パターンP1を利用することにより、季節や施設管理状態などの環境変化に対応可能になり、異常判定の精度が向上する。例えば、季節変化による日照時間や温度変化の違い、施設管理における照明やエアコンの温度設定の違いなどを考慮した最適な日常行動パターンP1を使用することが可能になる。
【0021】
また、日常行動パターンP1は、動物の週齢や月齢、年齢などを基準にして成長段階毎に異なるものを用いてよい。この場合には、予め月齢や年齢に応じて、日常行動パターンP1を求めておき、これを記憶しておく。このように動物の種類やその成長に合せた最適な日常行動パターンを用いることにより、死亡判定の精度が向上する。
【0022】
図2は、日常行動パターンP1の一例を示すもので、横軸に1日の時刻を、縦軸に運動量を示している。運動量は、例えば1分間隔毎の移動軌跡長さに基づき数値化される。例えば、1分間、動き回っていた場合の移動規制長さを1として、その長さに対して半分の時は0.5、10%の時は0.1のようにポイント化する。なお、運動量の数値化は、後述するように、上記以外の他の各種方法により行ってもよい。そして、日常行動パターンP1から、例えばしきい値を決めて、活動時間帯TAと不活動時間帯TNAとを求める。なお、しきい値で自動的に決めた時間帯に対し、オペレータがその他の各種要因に基づき補正してもよい。図2では、19時から9時までを活動時間帯TAとし、それ以外の9時から19時までを不活動時間帯TNAとした日常行動パターンP1を示している。なお、図2の日常行動パターンP1は、活動時間帯TAと不活動時間帯TNAとが各1回の例であるが、これら時間帯TA,TNAは1日に複数回あってもよい。
【0023】
図3に示すように、日常行動パターンP1は、毎日撮影される動画データに基づき自動的に修正を加えてもよい。例えば、毎日の動画データに基づき、上記のようにして現状行動パターンを作成する。次ぎに、周知のパターン認識手法により、現在用いている日常行動パターンP1と対比させて、ずれているか否か、ずれ量が一定値を超えているか否かを判定する。そして一定値を超えたずれが生じている場合に、ずれている時間の例えば半分をずれている方向に加えて、活動時間帯TAの修正を行う。なお、修正は、一定期間例えば2日続けて同じ方向に同じ程度のずれが生じている場合にのみ、修正を加えてもよい。
【0024】
報知部15は、異常判定部14で異常と判定したときにオペレータに異常を報知する。報知方法としては、パソコン20のディスプレイ23にポップアップメニューとして異常報告表示部を表示する他に、スピーカ24から所定パターンの警報音を出力する。これにより、動物が死亡したことを知らせる。したがって、パソコン20でデータ入力作業を行っている場合や、その周辺でその他の解剖などの別作業を行っている場合に、動物の死亡を迅速に知ることができる。
【0025】
また、パソコン20における報知と共に、各種携帯電話会社の商用通信サーバ40等の通信ネットワークを介して、予め登録してある携帯電話端末41に死亡検知メールを送信する。
【0026】
図4に示すように、携帯電話端末41のディスプレイには、死亡検知メールの表示画面42が表示される。このメール表示画面42には、送信先、メールタイトル、本文、添付ファイルと、添付ファイル中の静止画などが表示される。なお、本文中には、表示画面のような「飼育室Aケージ3」のようなカメラ位置を示す番号の他に、カメラ番号、またはカメラが設置されているケージ番号、またはケージが入っている飼育室棚番号、またはケージが設置されている飼育室番号などのいずれか、またはこれらの番号の組み合わせたものが送られて、どの動物なのかを特定することができる。また、本文中には、死亡判定時刻データが含まれる。
【0027】
添付データとしては、予め設定されている時間、例えば10秒の報知直前の動画データが用いられる。この動画データは携帯電話端末で表示可能な画像サイズに変換されて送られる。また、動画データの他に、解像度が高い静止画像も添付される。この静止画像は、別のカメラで撮影したものでもよく、または動画像を利用して高解像度処理したものでもよい。このような高解像度な静止画を送ることで、死亡した動物を携帯電話端末上で、ズーミングして、死亡した動物を拡大表示することが可能になる。
【0028】
携帯電話端末41を所持するオペレータは、この死亡検知メール表示画面42を見て、必要があればその添付の動画データにより動画を携帯電話端末41で再生し死亡を確認することができる。また、静止画をズーミングして動物を拡大表示することにより、より詳しく確認することができる。そして、すぐに解剖が必要な場合には、飼育室に行って必要な解剖処理を行ったり、また、飼育室に行くことができない場合には、他のオペレータに同様の作業を依頼するメールを送ったり、携帯電話端末41により連絡したりすることにより、迅速な対応を図ることができる。
【0029】
図5に示すように、本発明の動物監視方法では、先ず、初期設定ステップS1にて、動物の日常行動の解析と初期設定とが行われる。解析では、24時間中のどの時間が、動物が活動する時間帯なのか、また睡眠などの不活動時間帯なのかを把握し、活動時間帯TA,不活動時間帯TNAとして登録する。この解析は、動画データに基づく上記のような自動解析と、オペレータの観察による解析とに基づき行われる。動画データはビデオカメラ11により毎日撮影されているため、これを画像保存部12から読み出して、前記の移動軌跡に基づき活動ポイントを例えば1分間隔で求め、この1分間隔の時間帯の中で、累積活動ポイントに基づき、図2に示すように、日常行動パターンP1のグラフを作成する。そして、このグラフから一定のしきい値を用いて活動時間帯TAと不活動時間帯TNAとに区分けする。
【0030】
撮影・画像データの保存ステップS2では、図1に示すように、ビデオカメラ11を用いてケージ30内を撮影する。この動画データはパソコン20の画像保存部12に一定時間単位で保存される。
【0031】
不動状態判定ステップS3では、不動状態判定部13により、画像保存部12からの動画データに基づき動物の移動軌跡を作成する。動画データの画面中には、ケージ30内の動物31が写っており、この動物31の輪郭を先ず抽出する。次ぎに、抽出した輪郭により前述したように移動軌跡を作成する。この移動軌跡において、移動がなく一定時間停止している時に、不動と判定する。この不動信号は、不動と判定した時刻とともに、異常判定部14に送られる。
【0032】
異常判定ステップS4では、異常判定部14により、不動となった開始時刻(不動状態時間NA1の開始時刻)が活動時間帯TAに属しているのか、不活動時間帯TNAに属しているのかを判定する。そして、図6に示すように、不動状態時間NA1の開始時刻が活動時間帯TAに属しているときに、死亡と判定する。また、不動状態であっても開始時刻が不活動時間帯TNAに属している場合には、睡眠中と判定して死亡判定を行わない。
【0033】
報知ステップS5では、異常判定が出た場合には、報知部15により異常報知がなされる。まず、パソコン20のディスプレイ23にポップアップメニューで異常発生表示がなされる。また、スピーカ24から動物死亡の異常判定を示す警報が出力される。したがって、パソコン20を用いてデータを入力している最中や、パソコン20の近くで解剖をしているときに、この警報にて動物の死亡の報知がなされる。また、サーバ40を介して、予め登録されているオペレータの携帯電話端末41に死亡検知メールが送られる。死亡検知メールには、メール送信前の例えば10秒程度の動画データ及び高解像度の静止画像が添付メールとして送られるため、オペレータは動画データに基づき携帯電話端末上で動画を再生することにより、または静止画像から動物をズーミングして拡大表示し、死亡しているかどうかの確認を行うことができる。
【0034】
日常行動パターン管理部16では、毎日撮影される動画データに基づき当日の行動パターンを記録しておき、現在用いている日常行動パターンと比較してずれが発生しているかどうかを自動検出する。そして、一定量のずれが発生しているときに、例えばそのずれ量の半分の時間をずれる方向に加算して日常行動パターンをずらすことにより更新が行われる。このように、現状の行動パターンに基づき補正を加えることで、より死亡判定精度を上げることができる。
【0035】
また、死亡検知報告がなされた後に動物が動き始めたときや、オペレータが実際に死亡しているか否かを確認して死亡に至っていないことを確認したときには、誤検知の入力がディスプレイ23やキーボード21、マウス22を用いて行われる。この判定エラーは累積して記憶され、そのエラー回数がカウントされる。そして、判定エラー回数が所定期間内に一定回数を超える場合に、判定条件の修正を促す条件変更処理がなされる。この条件変更処理では判定処理エラーの原因となっている例えば活動時間帯条件を表示して、その補正方向と補正量がオペレータに示される。不動状態の判定に誤りがある場合には、不動状態の判定に用いた時間を表示して、その補正方向と補正量がオペレータに示される。オペレータはこれらの補正方向と補正量が適正か否かを判断し、適正と思われる場合には変更処理を行って各種条件を補正する。これにより、エラーの発生回数を減らすことができ、死亡判定精度を向上させることができる。なお、死亡検知報告がなされた後の一定時間内に動物が動き始めたときには、自動的に死亡判定取り消しメールを携帯電話端末41に送ってもよい。
【0036】
上記実施形態では、動物の異常として死亡を検知する例について説明したが、この他に、動物の異常として瀕死状態を検知してもよい。この場合には、死亡判定用よりも少し短い時間を用いて、動物の瀕死状態を判定する。瀕死状態での動物を検知することにより、死亡直後に迅速に解剖などを行うことができ、精度の良い病理データが得られる。
【0037】
上記実施形態では、移動軌跡を用いて行動しているか否かを決定したが、行動しているか否かは移動軌跡以外の各種方法で検出してもよい。また、移動軌跡を用いる場合には、検出精度を上げるために、動物の頭や手足、背、腹、尻などの複数部位に蛍光塗料や色素が入った塗料やマークを付し、これら塗料やマークに基づき動画データから画像処理により、姿勢や動きを特定し、移動軌跡と組み合わせて使用することで死亡の判定精度を向上させてもよい。
【0038】
また、ビデオカメラ11を一つのケージ30につき視点を変えた位置で複数配置し、これら複数のビデオカメラ11による動画像に基づき、不動を判定することにより、不動の判定精度を向上させることができる。
【0039】
通常のビデオカメラ11に代えて、対象動物の温度状態が検出可能な赤外線サーモグラフィを用いて撮像した動画データを利用してもよい。この場合には、動物体温を示す色エリアを抽出し、この色エリアの輪郭から重心位置を特定し、上記のように移動軌跡を作成し、その移動軌跡と動物の体温変化(死亡による体温低下)とに基づき死亡を特定する。さらには、移動軌跡を作成することなく、単に動物の体温表示エリアが消滅したときに、死亡と判定する。また、通常のビデオカメラ方式と、サーモグラフィ方式とを併用して死亡判定してもよい。例えば、一定の不動時間を超えたときに、動物の温度をサーモグラフィから求めて、これが動物の生存を示す体温以下になったときに死亡と判定する。
【0040】
上記実形態では、説明を簡単にするために、一つのケージ30内の一つの動物31を監視する場合について説明しているが、一つのケージ30内で複数の動物31を監視してもよい。この場合には、各個体毎に異なるマーカ(例えば色の異なるマーカや形の異なるマーカ)を付して、マーカの色や形を識別することにより、各個体毎に移動軌跡を求めて、不動か否かをそれぞれ特定する。また、複数のケージを一つまたは複数のビデオカメラを用いて動画撮影し、これに基づき、各ケージ内の動物の不動を判定してもよい。不動判定のビデオカメラは、平面視する位置や正面視する位置、底面視する位置、背面視する位置、側面視する位置などのいずれか、またはこれらの組み合わせた位置に配置してもよい。また、これらのビデオカメラは有線で画像保存部に画像データを送る他に、無線方式で送ってもよい。
【0041】
上記実施形態では、スタンドアローン型のコンピュータ内に各種データを格納した場合を例にとって説明したが、LANで画像データサーバとを接続したシステムにおいて、死亡判定を行ってもよい。
【0042】
上記実施形態で示したように、本発明は、プログラムの形態、さらにはプログラムを記憶する記憶媒体にもおよぶことはもちろんである。
【符号の説明】
【0043】
10 動物監視システム
11 ビデオカメラ
12 画像保存部
13 不動状態判定部
14 異常判定部
15 報知部
16 日常行動パターン管理部
20 パソコン
30 ケージ
31 動物
40 サーバ
41 携帯電話端末
42 死亡検知メール表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物を撮影して動画像を取得する撮像装置と、
前記撮像装置から得られた動画データに基づき動物の不動状態が一定時間経過したか否かを判定する不動状態判定部と、
前記不動状態判定部で不動状態が判定されたときの判定時刻に基づき、この判定時刻が動物の活動時間帯に属しているか否かを判定し、活動時間帯に属しているときに異常と判定する異常判定部と、
前記異常判定部で異常と判定したときに異常を報知する報知部とを有することを特徴とする動物監視システム。
【請求項2】
前記異常判定部は、異常判定に用いる前記活動時間帯を、動物の成長段階毎及び/または環境変化単位毎に応じて記憶してあり、動物の成長段階、環境変化単位に応じて、異常判定に用いる前記活動時間帯を切り替えて使用することを特徴とする請求項1記載の動物監視システム。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記撮像装置からの動画データに基づき、動物の活動時間帯と不活動時間帯とを検出し、検出した時間帯と予め記憶している時間帯との間にずれが発生したときに補正する時間帯補正部を有することを特徴とする請求項1または2記載の動物監視システム。
【請求項4】
前記報知部は、異常と判定したときにオペレータの携帯端末に異常発生の送信を行う送信部を有することを特徴とする請求項3記載の動物監視システム。
【請求項5】
前記報知部は、異常と判定した時の動物の画像データ及び判定した時刻データを添付することを特徴とする請求項4記載の動物監視システム。
【請求項6】
動物を撮影して動画像を取得する第1ステップと、
第1ステップの動画像から動物が不動か否かを判定する第2ステップと、
第2ステップで不動と判定され、不動状態時間が一定値を超えたときに、該不動状態時間の開始時刻が前記動物の日常行動パターンにおける活動時間帯に属しているか否かを判定し、前記不動状態開始時刻が前記活動時間帯に属しているときに異常と判定する第3ステップと、
第3ステップで異常と判定したときに、異常発生を報知する第4ステップとからなることを特徴とする動物監視方法。
【請求項7】
前記第1ステップでは、動物に色素または蛍光物質を含むマーカを付け、
前記第2ステップでは、前記色素または蛍光物質の動画における移動軌跡を求め、この移動軌跡が一定位置に止まって一定時間が経過したときに不動状態と判定することを特徴とする請求項6記載の動物監視方法。
【請求項8】
前記第3ステップでは、異常判定に用いる前記活動時間帯を、動物の成長段階毎及び/または環境変化単位毎に応じて記憶してあり、動物の成長段階、環境変化単位に応じて、異常判定に用いる前記活動時間帯を切り替えて使用することを特徴とする請求項6または7記載の動物監視方法。
【請求項9】
前記第1ステップの動画像データに基づき、前記第3ステップで用いる動物の活動時間帯と不活動時間帯とを検出し、検出した時間帯と予め記憶している時間帯との間にずれが発生したときに補正する第5ステップを含むことを特徴とする請求項8記載の動物監視方法。
【請求項10】
前記第4ステップでは、異常と判定したときにオペレータの携帯端末に異常発生の送信を行うことを特徴とする請求項9記載の動物監視方法。
【請求項11】
前記第4ステップでは、異常と判定した時の動物の画像データと判定した時刻データとを添付することを特徴とする請求項10記載の動物監視方法。
【請求項12】
動物を撮影した動画像から動物が不動か否かを判定する第1機能と、
動物が不動と判定され、不動状態時間が一定値を超えたときに、該不動状態時間の開始時刻が前記動物の日常行動パターンにおける活動時間帯に属しているか否かを判定し、前記不動状態開始時刻が前記活動時間帯に属しているときに異常と判定する第2機能と、
異常と判定したときに異常発生を報知する第3機能とをコンピュータに実現させるための動物監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−209792(P2012−209792A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74282(P2011−74282)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】