説明

動画配信システム、加入者回線終端装置、動画配信方法、動画配信プログラム、及び記憶媒体

【課題】リンク速度に応じた動画データのIPマルチキャストによる配信が十分にできる動画配信システム、加入者回線終端装置、動画配信方法、動画配信プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】本発明の第1の装置は、動画配信ネットワークに接続され加入者回線の終端処理を行う加入者回線終端装置と、加入者回線終端装置に宅内終端装置を介して接続される映像再生機器とを備えた動画配信システムにおいて、加入者回線終端装置は、宅内終端装置とのリンク速度に応じたサーバを選択し、リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって各宅内終端装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画配信システム、加入者回線終端装置、動画配信方法、動画配信プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット技術の発展により動画配信を希望する加入者が増加するようになった。このため、動画配信システムの開発が急がれている。
この種の動画配信システムの一例として異なるリンク速度のインタフェースを搭載した加入者回線終端装置を用いた動画配信システムを使用して説明する。
【0003】
図8に従来の加入者回線終端装置を用いた動画配信システム構成を示す。
図8において加入者回線終端装置601は低速回線インタフェース602と高速回線インタフェース603とを共に搭載し、各回線のリンク速度に関係なく、動画配信ネットワーク604からのIP(Internet Protocol)マルチキャストによる動画データを各宅内終端装置605配下の映像再生機器606に配信することが行われている。
【0004】
また、動画配信システムに関連する発明が特許文献1〜3に記載されている。
特許文献1に記載の発明は、コンテンツ配信システム及び方法の発明であり、センターサーバからネットワークを介して複数のクライアントに要求されたコンテンツを配信するコンテンツ配信システムにおいて、ネットワークのクライアント側に複数のエッジサーバを配置する。特許文献1に記載のセンターサーバは、コンテンツを保管する保管手段と、クライアントからのコンテンツの要求を受信し、そのコンテンツの種類と宛先を予約する。
【0005】
特許文献1に記載の発明は、同じコンテンツが複数のクライアントから要求された場合にはそのコンテンツの宛先として複数のクライアントの宛先を予約する予約手段を、保管手段から予約されたコンテンツを読み出し、宛先が複数ある場合にはマルチキャストで送信する手段を備える。
また、エッジサーバは、クライアントからのコンテンツの要求をセンターサーバへ転送する手段と、センターサーバからコンテンツを受信し、受信したコンテンツを宛先のクライアントへ、そのクライアントが受信できる通信速度に変換して送信する手段とを備える。ネットワークは、センターサーバと全てのエッジサーバの間で一定のリソースを確保し、センターサーバからエッジサーバへマルチキャストでコンテンツを送信する機能を有する。
【0006】
特許文献1に記載の発明は以下のように動作する。
ネットワークのクライアント側に複数のエッジサーバ102-104を配置し、エッジサーバがクライアントからのコンテンツの要求をセンターサーバへ転送し、センターサーバが、受信した要求コンテンツの種類と宛先を予約する。同じコンテンツが複数のクライアントから要求された場合にはそのコンテンツの宛先として複数のクライアントの宛先を予約し、保管手段から予約されたコンテンツを読み出し、宛先が複数ある場合にはマルチキャストで送信する。送信されたコンテンツをエッジサーバが受信し、受信したコンテンツを宛先のクライアントへ、そのクライアントが受信できる通信速度に変換して送信する。
【0007】
特許文献2に記載の発明は、トラヒック集約システムおよび方法、ならびにそのプログラムと記録媒体の発明であり、トラヒックを要求し、受信する複数のユーザ端末と、トラヒック転送管理およびマルチキャストトラヒック集約管理を行う集約システムとを、ネットワークを介して接続したトラヒック集約システムである。ユーザ端末は、再生状態の管理および再生状態の通知を行う再生状態管理手段と、受信状態の管理および受信状態の通知を行う受信状態管理手段とを備え。
【0008】
集約システムは、ネットワーク情報、ユーザ情報、トラヒック転送情報のデータベースと、トラヒックの転送制御を行うトラヒック転送手段と、転送管理やデータベース管理および更新を行う転送管理手段と、データベースの各情報に基づきマルチキャスト集約判定を行う判定手段と、情報収集要求や判定要求の時間を管理するタイマ手段とを備えている。転送量の多いトラヒックの一部を破棄し、各トラヒックの転送量を調整することにより、同一種類の複数のマルチキャストトラヒックの集約を行う。
【0009】
特許文献2に記載の発明は、以下のように動作する。
各ユーザ端末が取得したマルチキャストトラヒックの受信量、再生/未再生情報等、ネットワーク全体に係る動的変化に追随して、最適なマルチキャスト集約契機を判定し、当該各マルチキャストトラヒック転送を集約することが可能なトラヒック集約システムを実現することができる。
【0010】
特許文献3に記載の発明は、無線通信装置、無線通信システム及び方法の発明であり、受信したマルチキャストパケットを複数の無線端末に無線配信する無線通信装置である。あるマルチキャストグループに参加する又は参加している複数の無線端末が受信可能な通信速度のうち最も遅い通信速度を、マルチキャストグループのマルチキャストパケットの通信速度として決定する通信速度決定手段と、通信速度決定手段が決定した通信速度で、受信したマルチキャストグループのマルチキャストパケットを無線送信する無線通信手段とを備える。
【0011】
特許文献3に記載の発明は、以下のように動作する。
転送状態が異なる複数のマルチキャストトラヒックの集約を行うので、ネットワークの使用帯域、トラヒック量、使用するIPアドレス数、ノードで管理するマルチキャストテーブル数を削減することが可能である。また、各種情報を収集して、適切なマルチキャストトラヒック集約変換可否の判断を行うので、集約の契機を決定し、複数のマルチキャストトラヒック転送から集約後のマルチキャストトラヒック転送に変換することが可能である。
【特許文献1】特開2002−183014号公報
【特許文献2】特開2004−260289号公報
【特許文献3】特開2006−222659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図8に示した構成では、高速回線インタフェース603に適した高画質な動画データを伝送帯域の不足から低速回線インタフェース602を介してIPマルチキャストで配信することができない問題がある。または、低速回線インタフェース602に適した低画質な動画データを、高速回線インタフェース603を介して配信することは可能であるが、伝送帯域に余裕があるにも関わらず高画質によるIPマルチキャスト配信ができない問題がある。
【0013】
また、映像再生機器606がIPマルチキャスト機能により最適な動画データを選択する場合、ネットワークに点在する多くの映像再生機器606がリンク速度に応じてマルチキャスト制御を行うか、または、動画配信ネットワーク604内の動画配信サーバまたはネットワーク管理サーバ等により映像再生機器606を遠隔的に制御する必要があり、その為、ネットワークの構築、管理が複雑になることに問題がある。
【0014】
さらに、特許文献1〜3に記載の発明では、リンク速度に応じた動画データのIPマルチキャストによる配信が十分にできないという問題がある。
そこで、本発明の目的は、リンク速度に応じた動画データのIPマルチキャストによる配信が十分にできる動画配信システム、加入者回線終端装置、動画配信方法、動画配信プログラム、及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の装置は、動画配信ネットワークに接続され加入者回線の終端処理を行う加入者回線終端装置と、該加入者回線終端装置に宅内終端装置を介して接続される映像再生機器とを備えた動画配信システムにおいて、前記加入者回線終端装置は、宅内終端装置とのリンク速度に応じたサーバを選択し、該リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって前記各宅内終端装置に送信することを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の装置は、動画配信ネットワークからの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信するための加入者回線終端装置において、宅内終端装置とのリンク速度に応じたサーバを選択し、該リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって前記各宅内終端装置に送信することを特徴とする。
【0017】
本発明の第1の方法は、動画配信ネットワークからの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信する動画配信方法において、加入者回線終端装置は、宅内終端装置とのリンク速度に応じたサーバを選択し、該リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信することを特徴とする。
【0018】
本発明の第1のプログラムは、マルチキャスト制御部に、動画配信ネットワークからの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信する処理を実行させる動画配信プログラムにおいて、前記マルチキャスト制御部に、宅内終端装置とのリンク速度に応じたサーバを選択する処理、該リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信する処理を実行させることを特徴とする。
【0019】
本発明の第1の記憶媒体は、上記いずれかに記載の動画配信プログラムを記憶したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リンク速度に応じた動画データのIPマルチキャストによる配信が十分にできる動画配信システム、動画配信方法、動画配信プログラム、及び記憶媒体の提供を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、異なるリンク速度のインタフェースを搭載できる、または、動的にリンク速度が変化するインタフェースを搭載できる、または、異なるリンク帯域の宅内終端装置を混在できるインタフェースを搭載できる加入者回線終端装置において、各インタフェースの状態に応じて最適な動画データによるIPマルチキャスト配信を実現することができる。
【0022】
図1は、本発明に係る動画配信システムの一実施の形態を示すブロック図である。
同図に示す動画配信システムは、リンク速度連動型動画配信システムの一例であり、主に動画配信ネットワーク104と、加入者回線終端装置101と、宅内終端装置102と、映像再生機器102とで構成されている。
【0023】
複数のサーバ109を有する動画配信ネットワーク104は、回線110を介して加入者回線終端装置101が接続されている。
加入者回線10には複数(図では4つであるが限定されない。)の回線105〜108が接続されている。
回線105はADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等の低速回線、回線106はギガビット・イーサネット(登録商標)等の高速回線、回線107はDSL(Digital Subscriber Line)等で使用される動的リンク速度調整機能RA(Rate Adaptation等)を保有する回線をそれぞれ示す。回線108は異なるリンク速度の宅内終端装置102を混在できるPON等のN:1接続回線である。
【0024】
加入者回線終端装置101は、各種加入者インタフェース用の回線106〜108を終端可能であり、宅内終端装置102とのリンク速度に応じたサーバ109を選択し、リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって各宅内終端装置102に送信することを特徴とする。
加入者回線終端装置101は、映像再生機器103および動画配信ネットワーク104との間でIGMP(Internet Group Management Protocol)/またはMLD(Multicast Listener Discovery)等のマルチキャストメッセージをIGMP/MLDスヌーピングまたはプロキシ等で送受信することにより、各種回線105〜108の情報に基づき、動画配信ネットワーク104からIPマルチキャストによって最適な動画データを受信し各種回線105〜108に転送する。
【0025】
各宅内終端装置102は映像再生機器103と接続されており、映像再生機器103はIGMPまたはMLD等のマルチキャストプロトコル機能を保有しており、参加または離脱するマルチキャストグループの要求を行い、受信した動画データを映像として出力する。
【0026】
図2に、図1に示したリンク速度連動型動画配信システムにおける加入者回線終端装置のブロック図を示す。
加入者回線終端装置101は、インタフェース制御部202、メッセージ送受信部203a、203bマルチキャスト制御部201、及びマルチキャストデータ転送部204で構成される。
インタフェース制御部202は、宅内終端装置101(図1参照)と接続する各種加入者インタフェースを終端する。
【0027】
メッセージ送受信部203a、203bは、IGMPまたはMLD等のマルチキャストメッセージのみを各インタフェース制御部202とマルチキャスト制御部201との間で送受信できる仕組みを提供する。
マルチキャスト制御部201は、インタフェース制御部202の情報を基にマルチキャストメッセージの送受信を行う。
マルチキャストデータ転送部204は、マルチキャスト制御部201の指示に従い、動画配信ネットワークと接続されているインタフェース用の回線209から受信した動画データを各種加入者インタフェース用の回線105〜108に配信する。
【0028】
まず、インタフェース制御部202について説明する。
インタフェース制御部202は、各宅内終端装置102(図1参照)との接続が確立した時点でマルチキャスト制御部201に対して現在のリンク速度を通知する。例として、動的リンク速度調整機能を保有していないADSL等の低速回線205、ギガビット・イーサネット等の高速回線206の場合、リンク確立時のみリンク速度をマルチキャスト制御部201に通知する。動的リンク速度調整機能を保有するDSL等の回線207の場合、動的な速度変化に追従してマルチキャスト制御部201にリンク速度を通知する。異なるリンク速度の宅内終端装置を混在できるPON等のN:1接続回線208の場合、接続している宅内終端装置102(図1参照)毎のリンク速度をマルチキャスト制御部201に通知する。
【0029】
次に、メッセージ送受信部203aについて説明する。
メッセージ送受信部203aは、各インタフェース用の回線205〜209から受信したマルチキャストメッセージをマルチキャスト制御部201へ転送する。メッセージ転送時は受信した物理インタフェースまたは論理インタフェースの情報も合わせてマルチキャスト制御部201に転送する。マルチキャスト制御部201から送信されたメッセージはメッセージ送受信部203a,203bを経由して、各インタフェース用の回線105〜108,110に転送される。マルチキャスト制御部201は送信するメッセージと共に送信するインタフェースの指定も可能であり、メッセージ送受信部203はこの指定されたインタフェースに従いメッセージを転送する。
【0030】
次に、マルチキャスト制御部201について説明する。
マルチキャスト制御部201は、IGMP/MLDスヌーピングまたはプロキシ等のマルチキャスト機能を保有しており、メッセージ送受信部203を経由してマルチキャストメッセージの送受信を行う。このメッセージにより受信するマルチキャストグループの決定は、インタフェース制御部202から通知された情報に基づき制御される。マルチキャスト制御部201は、受信するマルチキャストグループが決定した時点で、マルチキャストデータ転送部204の転送すべきマルチキャストデータおよびインタフェースを設定する。
【0031】
最後に、マルチキャストデータ転送部204について説明する。
マルチキャストデータ転送部204は、マルチキャスト制御部201の指示に従い、指定されたインタフェースに対して許可されたマルチキャストグループのデータを転送する。
【0032】
〔動作の説明〕
図3を用いて加入者回線終端装置の動作について以下に説明する。
図3は、図1に示したリンク速度連動型動画配信システムの加入者回線終端装置及び宅内終端装置のブロック図の一例である。
図3に示す加入者回線終端装置101において、Port-1のインタフェース制御部202はADSLインタフェース用の回線105に接続されており、ATM VC番号が0/35でリンク速度が5Mbpsで確立したものとする。同様に、Port-2のインタフェース制御部202はギガビット・インタフェース用の回線106に接続されており、リンク速度が1GbpsのPort-3のインタフェース制御部202はVDSLインタフェース用の回線107に接続されている。リンク速度が70MbpsのPort-4のインタフェース制御部202はGE-PONインタフェース用の回線108に接続されている。マルチキャストデータ転送のためのLLID番号が1000でリンク速度が1Gbpsの1G ONU(308)およびLLID番号が2000で10Gbpsの10G ONU(309)が各々確立したとする。各インタフェースのリンク速度の情報はマルチキャスト制御部304に通知される。
【0033】
マルチキャスト制御部201は回線速度と適用画質とを決定する適用画質選択テーブル305を保持している。適用画質選択テーブル305を表1及び表2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
適用画質選択テーブル305は、回線速度に応じて加入者に転送する画質を決定する。表1はマルチキャスト配信サーバの送信元アドレス毎に動画データの画質が異なる場合を想定したテーブルの一例を示している。表2はマルチキャストグループアドレス毎に動画データの画質が異なる場合を想定したテーブルの例を示している。
【0037】
表1の場合、マルチキャスト制御部201は、加入者インタフェース用の回線105〜108から全て同じマルチキャストグループアドレス「224.1.0.1」に参加してきた場合でも、各インタフェースのリンク速度に応じて送信元アドレスが異なるマルチキャスト転送テーブル306を構築し、上位ネットワークと接続しているインタフェース用の回線110に参加または離脱要求のマルチキャストメッセージを通知する。
マルチキャスト転送テーブル306を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
マルチキャスト制御部201は、マルチキャスト転送テーブル306に従い、マルチキャストデータ転送部204へ設定を行う。マルチキャストデータ転送部204は送信元アドレス、マルチキャストグループ、インタフェースの情報に従いマルチキャストデータを転送する。
【0040】
表2の場合、マルチキャスト制御部201は、加入者インタフェース用の回線105〜108から全て同じマルチキャストグループアドレス「224.1.0.1」に参加してきた場合でも、各インタフェースのリンク速度に応じて上位ネットワークへのマルチキャストアドレスが異なるマルチキャスト転送テーブル306を構築し、上位ネットワークと接続しているインタフェース用の回線110に参加または離脱要求のマルチキャストメッセージを通知する。マルチキャスト転送テーブル306を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
マルチキャスト制御部201は、マルチキャスト転送テーブル306に従い、マルチキャストデータ転送部204へ設定を行う。マルチキャストデータ転送部204はマルチキャストデータを上位マルチキャストアドレスから加入者マルチキャストアドレスにアドレス変更を行った後、指定されたインタフェースの情報に従いマルチキャストデータを転送する。
【0043】
これにより、加入者回線終端装置101は、各加入者インタフェース用の回線105〜108のリンク速度に適した画質の動画データを配信することが可能となる。
【0044】
〔効果の説明〕
第1の効果は、リンク速度が異なる複数のインタフェースを搭載できる加入者回線終端装置において、リンク速度に応じた動画データをIPマルチキャストにより配信することが可能である。
【0045】
第2の効果は、リンクアップ状態を継続しつつリンク速度が変化するインタフェースを搭載できる加入者回線装置において、変動するリンク速度に応じた動画データをIPマルチキャストにより配信することが可能である。
【0046】
第3の効果は、リンク速度が異なる複数の宅内終端装置を1つのインタフェースに接続できる加入者回線装置において、各宅内終端装置のリンク速度に応じた動画データをIPマルチキャストにより配信することが可能である。
【0047】
第4の効果は、加入者終端装置が各インタフェースのリンク速度に応じて動画データを配信するため、宅内終端装置および映像再生機器において、加入者回線のリンク速度を意識することなく、最適な動画データをIPマルチキャストにより入手することが可能である。
【0048】
第5の効果は、加入者終端装置が各インタフェースのリンク速度に応じて動画データを配信するため、動画配信ネットワークにおける動画配信サーバ、ネットワーク管理サーバ等において、加入者回線におけるリンク速度または状態を管理する必要がない。
【0049】
〔他の実施の形態〕
なお、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。例えば加入者回線終端装置において、リンク速度の検知が可能なインタフェースであれば、インタフェース種別、インタフェース接続形態に関係なくインタフェースの帯域に応じた動画データをIPマルチキャストにより配信することが可能である。
また、IPマルチキャストにより配信されるデータは動画データに限定するものではなく、音声データ等のIPマルチキャストで配信できるデータ全てにおいて適用することが可能である。
【0050】
図4は、本発明に係る動画配信方法の一実施の形態を示すフローチャートである。
同図に示す動画配信方法は、動画配信ネットワーク104(図1参照)からの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信する動画配信方法であって、加入者回線終端装置101(図1参照)は、宅内終端装置102とのリンク速度に応じたサーバ109を選択する(ステップS1)。
リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって動画配信ネットワーク104から各宅内終端装置102に送信する(ステップS2)。
これにより、リンク速度に応じた動画データのIPマルチキャストによる配信が十分にできる。
【0051】
図5は、本発明に係る動画配信方法の他の実施の形態を示すフローチャートである。
同図に示す動画配信方法は、動画配信ネットワーク104(図1参照)からの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信する動画配信方法であって、加入者回線終端装置101(図1参照)は、宅内終端装置102とのリンク速度に応じたサーバ109を選択する(ステップS11)。
加入者回線終端装置101は、宅内終端装置102(図3参照)に接続されるインタフェース制御部202(図2参照)からリンク速度の情報が通知されると、適用画質選択テーブル305、及びマルチキャスト転送テーブル306(図3参照)に基づいて映像再生機器103の適用画質を決定する(ステップS12)。
動画データをマルチキャストによって動画配信ネットワーク104から各宅内終端装置102に送信する(ステップS13)。
これにより、リンク速度に応じた動画データのIPマルチキャストによる配信が十分にできる。
【0052】
図6は、本発明に係る動画配信方法の他の実施の形態を示すフローチャートである。
同図に示す動画配信方法は、動画配信ネットワーク104(図1参照)からの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信する動画配信方法であって、加入者回線終端装置101(図1参照)は、宅内終端装置102とのリンク速度に応じたサーバ109を選択する(ステップS21)。
加入者回線終端装置101は、宅内終端装置102(図3参照)に接続されるインタフェース制御部202(図2参照)からリンク速度の情報が通知されると、適用画質選択テーブル305、及びマルチキャスト転送テーブル306(図3参照)に基づいて映像再生機器103の適用画質を決定する(ステップS22)。
映像再生機器103が全て同じマルチキャストグループアドレスに参加した場合、各インタフェースのリンク速度に応じて送信元アドレスが異なるマルチキャスト転送テーブルを構築する(ステップS23)。
上位ネットワークと接続しているインタフェースに参加または離脱要求のマルチキャストメッセージを通知する(ステップS24)。
マルチキャスト制御部は前記マルチキャスト転送テーブルに従い、マルチキャストデータ転送部へ設定を行う(ステップS25)。
動画データをマルチキャストによって動画配信ネットワーク104から各宅内終端装置102に送信する(ステップS26)。
これにより、リンク速度に応じた動画データのIPマルチキャストによる配信が十分にできる。
【0053】
図7は、本発明に係る動画配信方法の他の実施の形態を示すフローチャートである。
同図に示す動画配信方法は、動画配信ネットワーク104(図1参照)からの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信する動画配信方法であって、加入者回線終端装置101(図1参照)は、宅内終端装置102とのリンク速度に応じたサーバ109を選択する(ステップS31)。
加入者回線終端装置101は、宅内終端装置102(図3参照)に接続されるインタフェース制御部202(図2参照)からリンク速度の情報が通知されると、適用画質選択テーブル305、及びマルチキャスト転送テーブル306(図3参照)に基づいて映像再生機器103の適用画質を決定する(ステップS32)。
映像再生機器103が全て同じマルチキャストグループアドレスに参加した場合、各インタフェースのリンク速度に応じて上位ネットワークへのマルチキャストアドレスが異なるマルチキャスト転送テーブルを構築する(ステップS33)。
上位ネットワークと接続しているインタフェースに参加または離脱要求のマルチキャストメッセージを通知する(ステップS34)。
マルチキャスト制御部201(図1参照)はマルチキャスト転送テーブル306に従い、マルチキャストデータ転送部204へ設定を行う(ステップS35)。
マルチキャストデータ転送部204はマルチキャストデータを上位マルチキャストアドレスから加入者マルチキャストアドレスにアドレス変更を行った後、指定されたインタフェースの情報に従いマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信する(ステップS36)。
これにより、リンク速度に応じた動画データのIPマルチキャストによる配信が十分にできる。
【0054】
<プログラム及び記憶媒体>
以上で説明した本発明の動画配信システムは、コンピュータで動画配信処理を実行させる動画配信プログラムによって実現される。
動画配信プログラムは図4〜図7に示したフローチャートに対応しており、コンピュータとしては、例えばパーソナルコンピュータやワークステーションなどの汎用的なものが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
これにより、動画配信プログラムが実行可能なコンピュータ環境さえあれば、どこにおいても本発明の動画配信システムを実現することができる。
このようなプログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。
ここで、記憶媒体としては、例えば、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD−R(CD Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体、HDD(Hard Disc Driver)、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、FeRAM(強誘電体メモリ)等の半導体メモリが挙げられる。
【0056】
ここで、前述した特許文献1に記載の発明は、センターサーバが配信するコンテンツを集中管理することによる配信システムであり、センターサーバに多くの独自性の強い機能を搭載する必要がある。前述した特許文献1に記載の発明は、またエッジサーバにおいても、要求するための帯域等、何らかの機能を使用してセンターサーバに通知する必要がある。
これに対して本発明は、加入者回線終端装置(アクセスエッジノード)で帯域等の全ての制御を実施し、汎用のプロトコルだけで最適な配信サーバからマルチキャストによりコンテンツを入手することができる。よって、特許文献1に記載の発明と本発明とは配信システムの体系(仕組み)そのものが相違している。
【0057】
また、前述した特許文献2に記載の発明は、センター側に位置する集約システムにおける集中管理による配信システムであり、独自性を有する機能による集約システム及びユーザ端末との連携によって実現するものである。
これに対して本発明は、加入者回線終端装置(アクセスエッジノード)で帯域等の全ての制御を実施し、汎用のプロトコルだけで最適な配信サーバからマルチキャストによりコンテンツを入手することができる。また、ユーザ端末においても独自の機能を必要としない。よって、特許文献2に記載の発明と本発明とは配信システムの体系(仕組み)そのものが相違している。
【0058】
さらに、前述した特許文献3に記載の発明は、無線に特化しており、固定回線等、異なる複数の加入者回線を想定したシステムについては何ら記載されていない。また、前述した特許文献3に記載の発明は回線の帯域に合わせて最適な配信サーバを選択する仕組みはない。
これに対して、本発明は、加入者回線終端装置(アクセスエッジノード)は異なる複数の加入者回線を制御することを想定しており、また、各回線帯域に最適なコンテンツを配信サーバから入手できる。よって、特許文献3に記載の発明と本発明とは回線の制御方法、帯域に応じたコンテンツの転送方法のいずれにおいても想定が異なる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る動画配信システムの一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示したリンク速度連動型動画配信システムにおける加入者回線終端装置のブロック図の一例である。
【図3】図1に示したリンク速度連動型動画配信システムの加入者回線終端装置及び宅内終端装置のブロック図の一例である。
【図4】本発明に係る動画配信方法の一実施の形態を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る動画配信方法の他の実施の形態を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る動画配信方法の他の実施の形態を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る動画配信方法の他の実施の形態を示すフローチャートである。
【図8】従来の加入者回線終端装置を用いた動画配信システム構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
101 加入者回線終端装置
102 宅内終端装置
103 映像再生機器
104 動画配信ネットワーク
105〜108、110 回線
109 サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画配信ネットワークに接続され加入者回線の終端処理を行う加入者回線終端装置と、
該加入者回線終端装置に宅内終端装置を介して接続される映像再生機器とを備えた動画配信システムにおいて、
前記加入者回線終端装置は、宅内終端装置とのリンク速度に応じたサーバを選択し、該リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって前記各宅内終端装置に送信することを特徴とする動画配信システム。
【請求項2】
前記加入者回線終端装置は、
前記動画配信ネットワークに接続されシリアル形式のメッセージを送受信する第1のメッセージ送受信部と、
該第1のメッセージ送受信部に接続されマルチキャストデータを転送するマルチキャストデータ転送部と、
該マルチキャストデータ転送部に接続されパラレル形式のメッセージを送受信する第2のメッセージ送受信部と、
前記第2のメッセージ送受信部に接続され前記各宅内終端装置に接続されるインタフェース制御部と、
前記第1及び第2のメッセージ送受信部及び前記マルチキャストデータ転送部を制御するマルチキャスト制御部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の動画配信システム。
【請求項3】
前記マルチキャスト制御部は、
回線速度と画像再生機器とを決定するためのデータを格納した適用画質選択テーブルと、
インタフェースのリンク速度とマルチキャストアドレスとを決定するためのデータを格納したマルチキャスト転送テーブルとを備えたことを特徴とする請求項2記載の動画配信システム。
【請求項4】
動画配信ネットワークからの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信するための加入者回線終端装置において、
宅内終端装置とのリンク速度に応じたサーバを選択し、該リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって前記各宅内終端装置に送信することを特徴とする加入者回線終端装置。
【請求項5】
前記動画配信ネットワークに接続されシリアル形式のメッセージを送受信する第1のメッセージ送受信部と、
該第1のメッセージ送受信部に接続されマルチキャストデータを転送するマルチキャストデータ転送部と、
該マルチキャストデータ転送部に接続されパラレル形式のメッセージを送受信する第2のメッセージ送受信部と、
前記第2のメッセージ送受信部に接続され前記各宅内終端装置に接続されるインタフェース制御部と、
前記第1及び第2のメッセージ送受信部及び前記マルチキャストデータ転送部を制御するマルチキャスト制御部とを備えたことを特徴とする請求項4記載の加入者回線終端装置。
【請求項6】
前記マルチキャスト制御部は、
回線速度と画像再生機器とを決定するためのデータを格納した適用画質選択テーブルと、
インタフェースのリンク速度とマルチキャストアドレスとを決定するためのデータを格納したマルチキャスト転送テーブルとを備えたことを特徴とする請求項5記載の加入者回線終端装置。
【請求項7】
動画配信ネットワークからの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信する動画配信方法において、
加入者回線終端装置は、宅内終端装置とのリンク速度に応じたサーバを選択し、該リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信することを特徴とする動画配信方法。
【請求項8】
前記加入者回線終端装置は、前記宅内終端装置に接続されるインタフェース制御部からリンク速度の情報が通知されると、回線速度と画像再生機器とを決定するためのデータを格納した適用画質選択テーブル、及びインタフェースのリンク速度とマルチキャストアドレスとを決定するためのデータを格納したマルチキャスト転送テーブルに基づいて前記映像再生機器の適用画質を決定し、前記動画データをマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信することを特徴とする請求項7記載の動画配信方法。
【請求項9】
前記映像再生機器が全て同じマルチキャストグループアドレスに参加した場合、各インタフェースのリンク速度に応じて送信元アドレスが異なるマルチキャスト転送テーブルを構築し、上位ネットワークと接続しているインタフェースに参加または離脱要求のマルチキャストメッセージを通知し、マルチキャスト制御部は前記マルチキャスト転送テーブルに従い、マルチキャストデータ転送部へ設定を行い、マルチキャストデータ転送部は送信元アドレス、マルチキャストグループ、インタフェースの情報に従いマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信することを特徴とする請求項8記載の動画配信方法。
【請求項10】
前記映像再生機器が全て同じマルチキャストグループアドレスに参加した場合、各インタフェースのリンク速度に応じて上位ネットワークへのマルチキャストアドレスが異なるマルチキャスト転送テーブルを構築し、上位ネットワークと接続しているインタフェースに参加または離脱要求のマルチキャストメッセージを通知し、マルチキャスト制御部は前記マルチキャスト転送テーブルに従い、マルチキャストデータ転送部へ設定を行い、マルチキャストデータ転送部はマルチキャストデータを上位マルチキャストアドレスから加入者マルチキャストアドレスにアドレス変更を行った後、指定されたインタフェースの情報に従いマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信することを特徴とする請求項8記載の動画配信方法。
【請求項11】
マルチキャスト制御部に、動画配信ネットワークからの動画データを各宅内終端装置に接続された映像再生機器に配信する処理を実行させる動画配信プログラムにおいて、
前記マルチキャスト制御部に、宅内終端装置とのリンク速度に応じたサーバを選択する処理、該リンク速度で同一コンテンツの動画データをマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信する処理を実行させることを特徴とする動画配信プログラム。
【請求項12】
前記マルチキャスト制御部に、前記宅内終端装置に接続されるインタフェース制御部からリンク速度の情報が通知されると、マルチキャスト制御部に回線速度と画像再生機器とを決定するためのデータを格納した適用画質選択テーブル、及びインタフェースのリンク速度とマルチキャストアドレスとを決定するためのデータを格納したマルチキャスト転送テーブルに基づいて前記映像再生機器の適用画質を決定する処理、前記動画データをマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信する処理を実行させることを特徴とする請求項11記載の動画配信プログラム。
【請求項13】
前記マルチキャスト制御部に、前記映像再生機器が全て同じマルチキャストグループアドレスに参加した場合、マルチキャスト制御部に各インタフェースのリンク速度に応じて送信元アドレスが異なるマルチキャスト転送テーブルを構築する処理、上位ネットワークと接続しているインタフェースに参加または離脱要求のマルチキャストメッセージを通知する処理、マルチキャスト制御部に前記マルチキャスト転送テーブルに従い、マルチキャストデータ転送部へ設定を行う処理、マルチキャストデータ転送部に送信元アドレス、マルチキャストグループ、インタフェースの情報に従いマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信する処理を実行させることを特徴とする請求項11記載の動画配信プログラム。
【請求項14】
前記マルチキャスト制御部に、前記映像再生機器が全て同じマルチキャストグループアドレスに参加した場合、マルチキャスト制御部に各インタフェースのリンク速度に応じて上位ネットワークへのマルチキャストアドレスが異なるマルチキャスト転送テーブルを構築する処理、上位ネットワークと接続しているインタフェースに参加または離脱要求のマルチキャストメッセージを通知する処理、マルチキャスト制御部に前記マルチキャスト転送テーブルに従い、マルチキャストデータ転送部へ設定を行う処理、マルチキャストデータ転送部にマルチキャストデータを上位マルチキャストアドレスから加入者マルチキャストアドレスにアドレス変更を行った後、指定されたインタフェースの情報に従いマルチキャストによって前記動画配信ネットワークから前記各宅内終端装置に送信する処理を実行させることを特徴とする請求項11記載の動画配信プログラム。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか1項記載の動画配信プログラムを記憶したことを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−88970(P2009−88970A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255678(P2007−255678)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】