動的に修飾可能なポリマーコーティング及びデバイス
動的なコーティングは、表面への取着用の1つ以上のパターン形成ポリマー層を備える。このポリマー層は1つ以上の導電性ポリマー含有層を有する。このポリマー層に対し印加される動的により、ポリマー層の接触角はポリマーの酸化又は還元の際、動的に、かつ、有意に増減する。また、酸化又は還元の際、ポリマー層は伸縮する。このコーティングは、非毒性生物付着防止システム、低電圧エレクトロウェッティングポンプの形成又は耐腐食性の金属表面を含む種々の用途において用いられ得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1つ以上の導電性ポリマーを含む、動的に変質可能な表面を有するポリマー系コーティング及び関連するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
生物付着は、海面下における海洋有機体の定着、付着及び成長により生じる。生物付着のプロセスは、溶解有機物の吸着によるコンディショニングフィルム(conditioning film)の形成によって、表面が海洋環境に沈んで数分以内に開始される。コンディショニングフィルムが堆積すると、水没の数時間以内にバクテリア(例えば、単細胞藻類)が表面にコロニーを形成する。バクテリアのコロニー形成により生じるバイオフィルムは小付着(microfouling)又はスライムと呼ばれ、500μm程の厚さに達することがある。
【0003】
生物付着は海軍艦艇の流体力学的抵抗を増大させることにより、アメリカ合衆国海軍に対してのみで年間10億ドルを超える費用を負わせると推定される。また、これにより海軍艦艇の行動範囲、速力及び機動性は減少し、燃料消費は30〜40%まで増大する。したがって、生物付着により国防が弱体化される。さらに、生物付着は商業輸送、行楽用船舶や、民間建造物、橋梁及び発電施設に対する大きな経済的負担でもある。
【0004】
定常的に水と接触している基体は付着される可能性を有する。完全な耐付着性を有する表面は発見されていない。生物付着を形成する海洋有機体は非常に多岐に渡るため、一定の表面特性を有する単一の表面コーティングの展開により、関連する全ての海洋有機体のバイオフィルム形成を防止することは、不可能ではないとしても困難な課題である。
【0005】
バイオフィルム形成に対抗するために現在用いられる2つの主な手法は、抗付着(anti−fouling)コーティング及び脱付着(foul−release)コーティングである。抗付着コーティングでは、通常、酸化銅又はトリブチルスズなどの浸出性の殺生物剤を水中に用いることにより、表面への生物付着有機体の定着を防止又は抑止する。殺生物剤はコーティングされている表面に拘束されるか、或いは、表面から周囲の環境中へ放出される。これらの種類のコーティングの使用により、特に殺生物剤が蓄積し得る浅い湾や港湾において、海洋生態系が損なわれる。このため、トリブチルスズの使用は世界の大部分において禁止されている。これらの製品は約2〜5年間しか有効でない。
【0006】
脱付着コーティングにより疎水性及び低表面エネルギーが与えられ、その結果として、生物付着有機体の付着を最少化する滑性な表面が与えられる。脱付着コーティングのうち最も一般的に用いられ、かつ、非常に成功しているものは、非毒性のシリコン系塗料である。シリコン系コーティングを有効とするには数層が必要であるため、シリコン系コーティングは相当な費用を必要とすることがある。有効性が継続するのは5年までであり、5年になると再コーティングが必要となる場合がある。これらの製品は毒素を浸出しないため、抗付着コーティングと比較して環境的により安全であると考えられる。しかしながら、脱付着コーティングは摩耗し易いため、その使用は氷又は岩による損傷を受け難い地域に限定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
動的なポリマー系コーティングは、表面への取着用の1つ以上のポリマー層を備える。このポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有し、ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減する。好適な一実施形態では、ポリマー層は非荷電
(中性)状態に対する酸化及び還元のうちの1つ以上の際、1つ以上の方向に有意に伸縮する。
【0008】
このポリマー層はパターン形成されている層であることが可能であり、マイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む。この複数のフィーチャにより2以上、好適な一実施形態では8以上の粗度(R)が与えられる。隣接するフィーチャ間の間隔は、2μm未満など、マイクロスケール又はナノスケールであり得る。
【0009】
ポリマー層は好適にはポリマーコンポジットである。このポリマーコンポジットは、導電性ポリマーと混合されている1つ以上の非導電性ポリマーを含む。非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド及びポリスルホンを含む、種々のポリマーから選択され得る。導電性ポリマーはポリピロール、ポリ(p−フェニレン)及びポリチオフェン並びにそれらの誘導体であり得る。
【0010】
電極層は一般にポリマー層の下に配置されている。この電極層はパターン形成され得る。パターンはポリマー層のパターンに適合する交互嵌合パターンなど、マイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む。
【0011】
キャッピング層はパターン形成ポリマー層上に配置され得る。このキャッピング層はシリコン、ポリウレタン及びポリイミドから選択される軟質ポリマーを含み得る。パターン形成ポリマー層の複数のフィーチャの間に、固体ポリマー電解質が配置され得る。
【0012】
本発明の別の実施形態には、ボート又は船の水面下の部分に配置されるポリマー系コーティングを含む、非毒性生物付着防止システムが含まれる。このコーティングはポリマー層を備え、このポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有する。このポリマー層は一般に導電性ポリマーと混合されている1つ以上の非導電性ポリマーを含む。
【0013】
電源装置はポリマー層に動的な電気信号を供給し、この動的な電気信号に応答して、ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減する。また、ポリマー層は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、1つ以上の方向(例えば、高さ又は幅)に有意に伸縮し得る。ボート又は船の水面下の部分は金属又は金属合金(例えば、鋼)であり得て、電源装置の1つの端子はボート又は船の水面下の部分に電気的に接続されている。
【0014】
一実施形態では、ポリマー層は、電気的に絶縁されているフィーチャからなるパターンなど、パターン形成ポリマー層である。この実施形態では、システムはポリマー層の下にパターン形成電極層を備え得て、その電極パターンは交互嵌合し、かつ、フィーチャに整合している。パターン形成ポリマー層はマイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含み得る。この複数のフィーチャにより好適には2以上、さらに好適には8以上の粗度(R)が与えられる。隣接するフィーチャ間の間隔は、2μm未満など、マイクロスケール又はナノスケールであり得る。
【0015】
エレクトロウェッティング方式の流体ポンプは、流体を含む電解質を流通させるための流体導管と、複数の電極と、流体導管の内面に取着され、複数の電極上に配置されているポリマー層とを備える。ポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有する。電源装置は複数の電極と流体との間又はこの複数の電極に対向して配置されている別の電極との間に動的な信号を印加する。この結果、動的な電気信号に応答して、ポリマー層の接触角が酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減することにより、流体導管を通じて流体をポンピングする。このポンプは標準的なマイクロエレクトロニクス製法を用いて形成され得て、集積回路基板(例えば、シリコン)が用いられる場合、ポンプは集積回路基板と一体化される。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態においては、耐腐食性コーティングされている金属は、表面を有する金属と、その表面をコーティングしている導電性ポリマーコンポジットとからなる。このポリマーコンポジットは非導電性ポリマーと混合されている1つ以上の導電性ポリマーを含む。好適な一実施形態では、このポリマーコンポジットは金属を包入し、非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン又はポリスルホンを含む。
【0017】
動的コーティングには、表面への取着用の1つ以上のポリマー層が含まれる。好適には、このポリマー層には1つ以上の導電性ポリマーが含まれる。本発明は一般に導電性ポリマーを含む単一のパターン形成されたパターン形成ポリマー層を用いて記載されるが、コーティングがパターン形成されていなくてもよく、或いは、1つ以上のパターン形成ポリマー層が非導電性ポリマー層である、2層以上のポリマー層が含まれてもよい。
【0018】
本明細書において、用語「導電性ポリマー」は、0.1S/cm以上、好適には、10S/cm、20S/cm、40S/cm、100S/cm、200S/cm又は1000S/cmなど、1S/cm以上の室温導電性を与えるポリマーを指して用いられる。ポリマー層は単一の導電性ポリマーから形成されてもよく、導電性ポリマーを非導電性ポリマーとブレンドすることにより形成される材料など、コンポジット材料であってもよい。通常、導電性ポリマーは機械的に非常に脆いため、好適には、コンポジットへ弾性を提供するために非導電性ポリマーが一般に添加される。本発明の一定の実施形態では、動的バイアス中のオーム加熱を制限するため、充分な導電性が所望される。
【0019】
コンポジットポリマーの場合、コンポジット材料は導電性ポリマーと比較して、より低い導電性を有する。ポリマーコンポジットの導電性は半導体の導電性以上であり、室温にて1×10−6S/cm以上である。好適な一実施形態では、コンポジットポリマーの与える導電性は、10−3S/cm、10−2S/cm、0.1S/cmなど、10−4S/cm以上であり、好適には、10S/cm、20S/cm、40S/cm、100S/cmなど、1S/cm以上である。
【0020】
本明細書においては一般にコーティングが完全にポリマー層であるように記載するが、コーティングには複数の導電性金属若しくはセラミック粒子、又は導電性カーボンナノチューブが含まれてよい。ポリマーを導電性金属若しくはセラミック粒子又はナノチューブと混合することにより、導電性の向上したポリマー含有層の形成が可能となる。
【0021】
導電性ポリマーは電気活性ポリマーのうちの一部類である。本発明の実施に必要ではなく、理論に拘束されるものではないが、出願人は、酸化/還元に基づく本発明によるコーティングの表面特性の修飾について、次の機構を提示する。詳細には、適切な電解質の存在下、別の電気化学的に活性な材料と比較してポリマーを酸化又は還元するために充分な電気的バイアスをポリマーコーティングに印加すると、ポリマー層は酸化又は還元されて、表面エネルギー、表面張力、応力及び接触角を含む表面特性に変化を生じる。
【0022】
測定及び定量が比較的容易であるため、本明細書においては一般に接触角を用いて、ポリマー層へ電気化学的に誘起される動的な変化を記載する。本明細書においては、接触角の有意な増大又は減少は、ポリマーの荷電状態と非荷電状態との間における接触角の変化を表すために用いられる。この接触角の変化は、8度以上、好適には12度以上、より好適には20度以上など、16度以上である。上述のように、ポリマーの荷電状態は中性状態と比較して、還元状態、酸化状態、又は還元状態及び酸化状態の両方であってよい。
【0023】
また、ポリマー層は酸化及び還元のうちの1つ以上において、有意に伸縮してもよい。接触角の変化と同様に、印加される動的な電気信号に伸張及び収縮のうちの1つ以上が従
ってよい。本明細書による規定では、好適な一実施形態では、ポリマー層に関する「有意に伸縮」の語句は、ポリマー層を含むフィーチャの高さ又は幅など1つ以上の方向における、1%以上、好適には5%以上及びさらに好適には10%以上の伸張又は拡張を指す。
【0024】
したがって、ポリマー層へ導電性ポリマーを組み込むことにより、形態学的(topographical)な変化を含み得る可変の表面特性を有する単一の動的表面コーティングの形成が可能となる。このコーティングは、非毒性生物付着防止システムを含む種々の用途や、低電圧エレクトロウェッティングポンプの形成において用いられ得る。
【0025】
ここ最近、導電性ポリマーには、その導電性に加え電気的又は化学的な刺激の下で種々の応答を生成する能力のため、有意な注意が払われている。この発明において最も注目すべきは、化学的又は電気化学的な酸化還元中に導電性ポリマーの表面エネルギーが及び一般には寸法も変化する能力である。この能力は、ポリマー骨格に沿って電荷が展開するためであると考えられている。
【0026】
導電性ポリマーは一般に拡張π結合系を備える完全共役ポリマー骨格を有する、として特徴付けられる。しかしながら、導電性(共役)セグメント及び非導電性(非共役)セグメントからなる一部のブロックコポリマーは、本明細書の規定において導電性ポリマーとして分類されるために充分な導電性を与えることが可能である。共役により、ポリマー骨格に沿った電子及び電荷の非局在化が可能となる。塩溶液及び体液などの電解質溶液における導電性ポリマーの酸化(若しくは還元又はその両方)に関連する寸法変化は、主として、展開する電荷の増大を平衡するために溶媒及び対イオンが導電性ポリマーのマトリクスへ流入することにより誘起され、材料の寸法変化を生じる。逆のプロセス中には、この材料は一般に中性(非荷電)状態へ復帰し、対イオンがポリマーマトリクスから排出されて、寸法の変化を生じる。ポリピロール(PPy)など一部の材料は酸化状態において膨張し、ポリ(p−フェニレン)(PPP)は還元状態において膨張する。ポリ(3−メチルチオフェン)(PMeT)など一部の材料は、酸化状態及び還元状態の両方において、中性状態と比較して膨張する。
【0027】
本発明とともに一般に用いられ得る代表的な導電性ポリマーには、PPy、ポリチオフェン及びPPP並びにそれらの誘導体が含まれる。それらのポリマーは全て、刺激されると体積、表面エネルギー及び関連する特性、色調並びに発光において、可逆な物理変化を生じる。PPyの場合、酸化(膨張)形態と還元(収縮)形態との間で材料を電気化学的に切り換えること(酸化還元サイクル)により、境界面において長さ方向に約1〜3%、厚さ方向に約35%の体積変化が誘起され得る。酸化還元サイクル中に誘起されるこの大きな体積変化は、一般に、PPy含有層の表面エネルギー及び関連する特性における変化を伴う。PPyは、その酸化電位が約−0.2Vであり、約−0.2V〜−0.3VというO2還元電位に近いため、酸化形態が非常に安定であるという特徴を有する。したがって、中性のPPyは空気へ暴露されるとO2により酸化され、導電性の酸化形態を形成する。PPyは種々の媒質において化学的又は電気化学的に合成され得る。FeCl3又は過硫酸アンモニウムなどのルイス酸とNaClO4などのコドーパントとの存在により、化学的に重合が実施され得る。
【0028】
ポリチオフェンは、本発明とともに用いられ得る別の導電性ポリマーである。ポリチオフェンは酸化状態に加え、還元状態においても安定性を与える。また、多くの非常に好適な電気特性、光学特性及び酸化還元特性を有する。チオフェンモノマーは複数の化学的手法を用いて容易に誘導体化され得る。チオフェン環上の置換基を変化させることにより、得られるモノマー及びポリマーの酸化電位はそれぞれ1.20V〜2.00V及び0.70〜1.45Vの間で変化され得ることが示されている。特に、ポリ(3−メチルチオフェン)(PMeT)はAg/AgClに対し約0.8Vの酸化電位を有し、約0.2Vに
て完全な還元状態に到達する。これらの値はそれぞれO2還元電位及びH2O酸化電位より充分に上及び下にあるため、両方の形態において充分な安定性が得られる。PMeTもPPyと同様の手法により重合され得る。
【0029】
ポリ(p−フェニレン)(PPy)は、本発明とともに用いられ得る別の代表的な導電性ポリマーである。PPyの欠点のうちの1つは、酸化(荷電)形態における高い安定性である。このため、PPy−PDMSe表面の元の非荷電状態への復帰は阻害され得る。
【0030】
一方、ポリ(p−フェニレン)(PPP)は中性形態が例外的な安定性を示す。PPPの酸化電位は+1.2V周辺であり、水の酸化電位と非常に近いため、水によりPPPの酸化形態は、より安定な中性形態へ還元され得る。また、PPPは結晶性が高く、加工が困難であり、かつ、不溶性であるという特徴を有し、酸化劣化、放射劣化及び熱劣化に対する高い耐性を示す。PPPは、FeCl3(〜70℃)及びAlCl3(〜37℃)などのルイス酸と追加の酸化剤との存在により、ベンゼンから合成され得る。
【0031】
本発明とともに用いられ得る他の代表的な導電性ポリマーには、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアズレン、ポリアセン及びその誘導体などのはしご型ポリマー、ポリキノン及びその誘導体並びにポリスチレンスルホン酸が含まれる。導電性ポリマーは一般にエラストマー又はゴムなど軟質のポリマーと混合される。例えば、次のエラストマー(やポリスルホン)は本発明による導電性ポリマーコンポジットを形成するために用いられる。
【0032】
【表1】
【0033】
上のテーブルに示す材料は、ポリスルホンを除いて全て、エラストマーである。ポリスルホンにより、本発明によるポリマーコンポジットにおいて従来の熱可塑性プラスチック材料が用いられ得ることが示される。一般にポリスルホンはエラストマー材料より充分に硬いコーティングを形成する。PDMSe及びサントプレン(登録商標)TPEは不溶性(膨潤し得るのみ)であるが、ポリスルホンは可溶性であるため、溶液キャスト(ディップ、スピン、スプレー又は溶液キャスト)可能である。このため、従来の塗工手法の使用が可能となる。SBS、SEBS及びポリウレタンを含む代替の材料は全て、可溶性であることが見出されているため、従来の塗工手法を用いて加工することが可能である。
【0034】
図1には、エラストマー含有組成物など、非導電性ポリマーとブレンドされている導電性ポリマーを含むポリマーコンポジット130を示す。(a)、(b)には、それぞれ還元(中性)状態、酸化状態を示す。ポリマー層130は、船の鋼のハルなど連続的な電極層120の上に配置されている。例えば、ポリマーコンポジットには、ポリマーコンポジットを軟質とするPDMSエラストマー(本明細書においては、以降、PDMSeと呼ぶ)と混合されている、ポリチオフェンなどの導電性ポリマーが含まれ得る。エラストマー組成物には、シリカなどの充填剤が含まれてよい。
【0035】
ポリマーコンポジット130の組成は、一般に、与えられる導電性ポリマーの特性に応じて異なる。導電性ポリマーの濃度は、一般に、ポリマーコンポジット130全体の約2〜50重量%の範囲、好適には5〜20重量%の範囲である。しかしながら、本発明による動的サイクルの際のクラックを防止するために充分な弾性特性を有する導電性ポリマーが利用可能となる場合、ポリマー層のほぼ全体が導電性ポリマーからなり得る。
【0036】
図1の(a),(b)に示すポリマーは還元(中性)状態と酸化状態との間で高さ(厚さ)方向に有意な形態学的変化を示しているが、本発明によるコンポジットポリマーが形態学的に有意な変化を示す必要はない。接触角における有意な変化並びに表面張力及び表面エネルギーにおける関連する変化が、生物付着防止に関する本発明の実施形態に必要な全てである。
【0037】
図1の(a),(b)に示すように、ポリマー層130は連続的な層であるため、層を通じて電気的に相互に接続されている。電解質(図示せず)の存在下、電極層120とポリマー層130との間に適切な電位差が印加されると、ポリマーコンポジット層130の全体は正に荷電され、図1の(b)に示す酸化形態へと膨張する。上述のように、図1の(a),(b)に示すポリマー層130は近傍のアニオン(図示せず)を引きつけることにより、酸化の際に膨張するが、他のポリマーは還元の際に膨張する。また、他のポリマーは還元及び酸化の両方の際に、中性状態と比較して膨張する。さらに、やはり上述のように、他の導電性ポリマーは還元又は酸化の際に形態学的に有意な変化を示さない。図1の(a),(b)に示すポリマーコンポジットの場合、酸化状態へと膨張させるアニオンは、電解質ゲルなど周囲の電解質(図示せず)や、海洋用途の場合には海水により提供され得る。
【0038】
数平方ミリメートル以下程度などの小面積ポリマー層用途には、パターンが所望される場合、従来のリソグラフィー及びエッチング、インクジェット印刷などの手法を用いて、所望のポリマーパターンを形成することが可能である。数平方センチメートル以上程度など、より大きな面積の層が必要なときには、スプレー、ディップコート、ハンドペイント又は種々の周知の「アップリケ(applique)」手法を用いて、上述のように構成される複数のより小さな領域を有効に結合させ、船の喫水線近傍及び以下など、大きな面積領域を通じるポリマーパターンを提供することが可能である。
【0039】
図2には、パターン形成電極層220上に配置されている、別個の、かつ、電気的に絶縁されている複数のフィーチャ215を有するパターン形成導電性ポリマーによりコーティングされている基板205を示す。(a)、(b)にはそれぞれ還元状態210、酸化状態260を示す。簡単のため、図2の(a),(b)には、電極層をパターン形成されていないように示す。また、図3には、代表的なパターン形成電極層220を適正に表現し得る、代表的な交互嵌合パターン形成電極層を示す。ゲル電解質225はフィーチャ215の間の領域を充填している。軟質キャップ層240は、フィーチャ215及びゲル225の上に配置されている。例えば、このキャップ層はシリコン、ポリウレタン又はポリイミドから選択されるポリマーなど、軟質のポリマーを含んでもよい。図2の(a)に示す中性状態では、示す構造の表面は平坦な表面形態学を有する。図2の(b)に示す酸化
状態260を提供するため、ポリマーを酸化するために充分に高い(+)電位(ポリマーの破壊を回避するために充分に低い)がフィーチャ215に電気的に接続している電極層220の電極に対し印加され、より低い(−)電位が電解質225に電気的に接続している電極アレイ220の電極に対し印加される。パターン形成されているポリマーのフィーチャ215が変形するとき、ゲル225が移動されるため軟質キャップ層240が変形される。例えば、パターン形成されているポリマーのフィーチャ215が、ポリマーの酸化に続いてなど、長さ方向へ拡張する場合、ゲル225は上方へ押されるため、パターン形成ポリマー層のギャップ領域(フィーチャ215が提供されていない領域)を通じて離れた領域へ、軟質キャップ領域240を膨張させる。
【0040】
ゲル225など電解質ゲルの目的は、デバイスの酸化還元サイクル中のイオン輸送のためのイオン的な導電性媒質を提供することである。このことは、粘凋性電解質溶液又は固体ゲル(架橋されている)電解質系により達成され得る。粘凋性電解質溶液は標準的な水性電解質溶液又は有機電解質溶液から調整され得る。これらの電解質溶液の両方は、塩と適切な溶媒との混合物からなる。水溶液は、通常、塩化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム又はリチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びp−トルエンスルホン酸ナトリウムなど、ナトリウム又はリチウム系の塩である、水溶性の塩から作成される。これらの溶液を濃縮して、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロースなど、幾つかの水溶性ポリマー材料を利用する粘凋性溶液を調製することが可能である。有機電解質溶液には、プロピレンカルボネート及びアクリロニトリルなどの有機溶媒中、PF6−(ヘキサフルオロリン酸)、PF4−及びClO4−のt−ブチルアンモニウム系の塩など、より有機可溶性の塩が用いられる。これらの溶液を濃縮して、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリカルボネートなど、幾つかの有機可溶性ポリマー材料を利用する粘凋性液体を調製することが可能である。
【0041】
一実施形態では、パターン形成電極層220により、導電性ポリマーに対する電気化学的堆積の使用により利用可能なものなど、導電性ポリマーフィルムフィーチャ215が形成される。例えば、パターン形成されている表面電極上に直接、導電性ポリマーフィルムが電気化学的に堆積される。
【0042】
電気化学的な酸化還元サイクル中、導電性ポリマー層含有フィーチャ215は、接触角/表面エネルギー/表面張力に動的な変化を受け、必須ではないが好適には、形態学的な変化も示す。フィーチャ215が別個であり、かつ、電気的に絶縁されていることにより、それぞれのフィーチャ215に対し印加されるバイアスを独立に制御することが可能となる。これにより、フィーチャの位置及び好適には形態学に応じて、表面エネルギーの制御されている微細にパターン形成されている表面が作成される。形態学的変化が与えられるとき、導電性ポリマーパターンや、導電性ポリマー215に対し印加される電気的刺激(例えば、電位、波形、周波数)を制御することにより、種々の表面パターンが作成され得る。
【0043】
一実施形態では、電極層220は交互嵌合パターンの形態である。図3には、バイアスを提供するための電源装置350に加え、第1の電極アレイ310及び第2の電極アレイ320を備える、代表的な交互嵌合パターン300を示す。一実施形態では、図2の(a),(b)に示す別個のフィーチャ215などのフィーチャは第1のアレイ310の上方に配置され、一方、第2のアレイ320は電解質225などの電解質に接触している。電極パターンには、複数のマイクロスケール又はナノスケールのフィーチャが含まれてよい。
【0044】
本発明によるコーティングは非毒性、かつ、エネルギー効率的な生物付着防止システムにおいて用いられ得る。バイオフィルムの付着における主な因子は表面エネルギーである
と見られている。したがって、本発明による導電性ポリマーフィルムの電気化学的な酸化還元サイクル中、ポリマー電荷における変化を利用することにより、得られるポリマー表面又はその上に配置されている表面の表面エネルギーを動的に変化させ、生物付着を防止又は少なくとも有意に減少させることが可能となる。したがって、表面エネルギーの動的な変化に加え、随意ではコーティングにおける動的な形態学的変化により、コーティングによる生物付着防止が提供される。
【0045】
非毒性生物付着防止システムには、アップリケ手法を用いるポリマーコンポジットを含む複数の区分を用いるものなど、ボート又は船の水面下の部分へ適用するためのコーティングが含まれ得る。このポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有し、連続的、かつ、本質的に一様なコーティングである。
【0046】
図3に示す第1のアレイ310及び第2のアレイ320からなる交互嵌合パターンなど、随意の電極層がコーティングの下に存在し得る。必須ではないが、ポリマー層もパターンを有してよい。パターンは別個の、かつ、電気的に絶縁されている複数のフィーチャからなることが可能である。このパターンによって、第1のアレイ310を含むものなど、それぞれのポリマーフィーチャは相互接続されている複数の導電性トレースに電気的に接続されている。
【0047】
代替の一実施形態では、船のハルにより1つの巨視的な電極層が与えられ、1つ以上の対極が船から離されて水中に配置される。しかしながら、この実施形態では、鋼のハルが含まれるときなどにハルの錆つきを回避するため、ハルは一般に空気/水界面に近接する領域において絶縁される必要がある。
【0048】
電気的なバイアスを供給するための電源装置は、それぞれの電極又は電極層を挟んで接続されており、電気的バイアスによってポリマー層の表面エネルギーが動的に変化され、また好適には、ポリマー層が動的に有意に伸縮される。表面が動的であることにより、コーティング上における有機体の成長が防止されるか少なくとも遅延される。生物付着は、ほとんど船が港にあるあいだにのみ発生することが知られている。有利なことに、船内のものであれ離れているものであれ、電源装置はボート又は船がドックに入港しているときにのみ、船内又は船内の原子炉その他の電源装置から導かれる出力などのバイアスをコーティングへ供給することが可能である。
【0049】
電気的バイアスは好適には低電圧、かつ、動的な信号である。例えば、通常、電圧範囲は2V未満の範囲であり、特定のポリマーに応じて異なるバイアスが用いられる。PPyは好適には−0.8V〜+0.6Vにてバイアスされ、ポリ(3−メチルチオフェン)は+0.2V〜+0.8V、ポリパラフェニレンは−2V〜+1.1V、及びポリアニリンは+0.1V〜+0.7Vにてバイアスされる。所望の場合、ポリチオフェン上の置換基を変化させることにより、酸化/還元電位を+1.5V超から−1.5Vの範囲で移動させることが可能である。
【0050】
動的な信号の周波数は好適には0.01〜1Hzであるが、この値より高くても低くてもよい。この信号は正弦波、方形波、鋸歯波又は別の時間変化する信号であってよい。
図4の(a)〜(d)には、本発明とともに用いられ得る幾つかの代表的なポリマーパターンを示す。図4の(a)には、シリコンウエハ上に2μm間隔で配置されているフィーチャを有する、PDMSeから製造されるリブレット(riblet)パターンを示す。このフィーチャは従来のフォトリソグラフィー加工を用いて形成される。図4の(b)にはスター/クローバーパターン、図4の(c)には勾配(gradient)パターンを示し、図4の(d)には三角形/円パターンを示す。
【0051】
図5には、図4の(a)〜(d)に示すパターンに基づき、代表的なフィーチャ深度、フィーチャ間隔、フィーチャ幅及びその結果の粗度(R)のテーブルを示す。図4の(a)に示すリブレットパターンに関して示す深度、間隔及び幅では、その結果として得られるパターン粗度(R)は5.0〜8.9の範囲であった。また図5には、スター/クローバーパターン(図4の(b))、勾配パターン(図4の(c))及び三角形/円パターン(図4の(d))に対する同様のデータも示す。三角形/円構成(図4の(d))に関して、フィーチャ深度10μm、フィーチャ間隔1μm及びフィーチャ幅1μm(円)及び5μm(三角形)では、13.9の粗度(R)が得られた。
【0052】
粗度(R)は表面粗さの尺度である。Rは、幾何学的な表面積(Rgeo)に対する実際の表面積(Ract)の比として定義される(R=Ract/Rgeo)。一例は以下に1cm2の材料片において与えられる。サンプルが完全に平坦である場合、実際の表面積と幾何学的な表面積とはいずれも1cm2となる。しかしながら、フォトリソグラフィー及び選択的エッチングを用いるなど、パターン形成により平坦な表面が粗化された場合、生成されるフィーチャの側面により追加の表面積が提供されるため、得られる実際の表面積は元の幾何学的な表面積より大きくなる。例えば、露出されている表面を粗化することにより元の平坦な表面の表面積の2倍となる場合、Rの値は2となる。
【0053】
好適には、パターンにより2以上の粗度(R)が与えられる。本発明によるパターン形成コーティングの有効性は、約2のパターン粗さ(R)の値を超えてRが増大するとともに増大し、何らかのより大きなRの値に達すると安定するであろうと考えられる。得られている予備的な結果に基づくと、充分なRの値を有するコーティングは一部の場合、電気活性ポリマー又はポリマーコンポジットにより提供される動的な表面効果の必要なく、生物付着防止剤(実施例を参照)として有効であると考えられる。しかしながら、本発明による電気活性ポリマー及び関連するコンポジットにより提供される、2以上のRの値を与えるフィーチャ形態学と動的な表面特性との組み合わせは、共同作用的な(synergistic)生物付着防止効果を提供することが期待される。
【0054】
好適な一実施形態では、粗度(R)は4以上であり、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25又は30などである。より深度が大きく、より間隔の狭いフィーチャが提供されると仮定すると、Rの値は30より大きくなる。
【0055】
フィーチャ間隔もまた重要な設計パラメータであり得る。フィーチャ間隔が有機体の大きさより小さい場合、一般に有機体の成長が遅延されることが発見されている。例えば、藻の胞子の大きさは一般に2〜5μmである。したがって、藻の胞子の付着を遅延させるために、好適には2μm未満のフィーチャ間隔を用いて藻の胞子の成長を遅延させる。
【0056】
本発明による動的な表面の効果を提供するコーティングは、マイクロ流体ポンプを含む、低電圧エレクトロウェッティング方式デバイスを形成するためにも用いられ得る。現在の機械的なマイクロポンプデバイスには、一般に、幾つかの種類の圧電性の、熱的な、形状記憶合金及び静電気的駆動機構が用いられる。直接的なマイクロポンプシステムでは、磁気流体力学、電気泳動及び熱的に誘起される表面張力などの原理が駆動に利用される。
【0057】
エレクトロウェッティングは、印加される電位による電極表面における電気二重層(EDL)の形成又は再配置により、金属電極の表面濡れ性(表面張力)を変化させるプロセスである。エレクトロウェッティング(EW)プロセスは電解質溶液を伴う純金属電極については非常に研究されている。EWデバイスは形成されるEDLの性質のため、極性媒質中の使用は制限されている。EDLは流体媒質中における電極から酸化還元活性種への電子移動により形成される。EDLの電気的な安定性のため、これらのデバイスの使用は
約1V程度の低電圧までに制限される。しかしながら、接触角(Δθ)において誘起される変化は電極表面に展開される電荷の量に比例することにより、生じ得る全Δθは限定される。この技術における2つの主要な用途は、マイクロ流体デバイスの用途及びMEMS型の用途である。
【0058】
最近の研究では、電極と流体との間に薄い誘電体層(例えば、PTFE又はSiO2)を適用することにより、この効果が増強され、事実上、任意の流体媒質のポンピング/ウェッティングが可能となることが見出されている。この構成は、誘電体上のエレクトロウェッティング(EWOD;electrowetting−on−dielectric)と呼ばれる。
【0059】
EWODでは、電場を用いて疎水性状態と親水性状態との間で誘電体フィルムの表面特性を修飾することが可能である。しかしながら、これらのシステムを駆動するには、従来のエレクトロウェッティングと比較してさらに高い電位が必要である。EWODデバイスの典型的な動作電圧は一般に100〜200Vを超える。
【0060】
EWODプロセスでは、表面状態に応じてその表面の上に、液体からなる液滴を玉(bead)とすることや、広げることが可能である。図6に示すように、エレクトロウェッティング方式の流体ポンプ600は、流体導管610を備える。流体導管610は底板620を備え、底板620の上には複数の制御電極615が配置されている。頂板630は接地電極650を備える。導電性ポリマーを含むポリマー層625は制御電極615上に配置されている。ポリマー層625を連続的、かつ、一様な層として示すが、ポリマー層625はパターン形成されている層であってよい。液滴645は流体導管610中に配置されており、一般に適切な電解質を含む。
【0061】
ポンプ600の通常動作中、電源装置(図示せず)は接地電極650と制御電極615との間に電気的な信号を印加することにより、液滴645を挟んで交互に変化するバイアス電位を印加する。バイアスはポリマー層の表面張力を液滴645に関して高いレベルと低いレベルとの間で動的に交互に変化させる。交互に変化する表面張力により液滴645がポンプされる結果、液滴645からなる流体は流体導管610を通過する。本発明によるポンプ600を用いるポンピングは、2Vなど、5V程度の低電圧により実施され得る。
【0062】
ポンプ600は、シリコンなど従来の基板材料を用いるMEMS技術を用いて形成され得る。したがって、頂板630及び底板620はシリコンジオキサイドその他、シリコン系集積回路プロセスにおいて容易に成長又は堆積される層から形成され得る。MEMSの使用により、マイクロスケール又はナノスケールのフィーチャや、ポンプ600へのバイアス用の発信器及び所望の場合には制御電子部品など、ポンプ600付近の電子部品の低コスト製造が可能となる。
【0063】
本発明の別の実施形態では、金属の腐食を減少させるために本発明によるポリマーコンポジットが用いられ得る。金属は構造部材、電極その他の用途の形態であってよい。本発明によるポリマーコンポジットの導電性により、本発明によるコーティングにより包入され、かつ、依然として電極として適正に機能することが可能となる。また、導電性ポリマーは、本発明によるポリマーコンポジットの酸化還元性能のため、コンポジットにより提供される耐腐食性を改良する(その他の点では等価な包入層と比較して)とも考えられる。ポリマーコンポジットの軟質(例えば、エラストマー、ゴム、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド又はポリスルホン)部分は、コーティングされている表面に対する付着を促進する。所望の耐腐食性効果を提供するためにバイアスのサイクルは必須ではなく、ポリマーコンポジット層におけるパターンも必須ではない。1μm程度から、数mmやそれ
以上など、広範なコーティング厚さが用いられ得る。
【0064】
ポリマーコンポジットが所望されるときの本発明の用途において、非導電性ポリマーを導電性ポリマーとブレンドするために、種々の方法が用いられ得る。バルク材料の修飾は、入れ子型ポリマーネットワーク(IPN;interpenetrating polymer network)及びポリマーブレンドの開発により実行され得る。表面修飾は、表面グラフト及びIPNのうちの1つ以上の形成によっても実行され得る。IPN形成は水溶液及び有機溶液中にて周知の手法を用い、化学的及び電気化学的に実行され得る。また、気相化学重合も用いられ得る。
【0065】
また、超臨界CO2(scCO2)も、導電性ポリマーを種々の非導電性材料へ組み込むための有効な方法であると決定されている。scCO2により、サンプル調製速度が改良され、サンプルを含浸するために必要な溶媒は有意に減少される。超臨界CO2は必要な酸化剤をPDMSeに含浸させて導電性ポリマー/PDMSブレンドを形成する改良された方法であることが見出されている。このプロセスにより、これらの材料を加工するために必要な時間及びコスト(より低い溶媒要件)は非常に減少される。二酸化炭素(CO2)の圧力、温度が7.38MPa、31℃を超えるとき、CO2は超臨界状態となる(scCO2)。この状態では、CO2は気体及び液体の両方の特性を有しており、溶質を運び、容易にポリマー材料を貫通する/膨潤させる能力が与えられる。scCO2の溶解性は超臨界点を超える温度、圧力を変化させることにより、また、メタノール及びエタノールなどの共溶媒を反応チャンバ内に組み込むことにより制御され得る。
【0066】
scCO2プロセスでは、サンプル(及び、必要ならばメタノール並びにエタノールなどの共溶媒)と、ドーパント(酸化剤)とが高圧チャンバ内に置かれ、続いてこの高圧チャンバは液体二酸化炭素(LiCO2)で満たされる。次に、チャンバ圧力、温度が7.38MPa、31℃を超えて上昇され、LiCO2を超臨界状態とする。サンプルは所望の反応時間に渡り、scCO2中に置かれる。所望の浸漬時間に達すると、チャンバ温度、圧力が、室温、室圧に復帰するまで、ゆっくりと低下される。
【0067】
これに代えて、ポリマーコンポジットを形成するために膨潤手法が用いられてもよい。例えば、熱可塑性プラスチックエラストマーは、所望の厚さへの圧縮成型と、続いて所望の形状への切断とにより調製される。次に、熱可塑性プラスチックエラストマーのサンプルは、FeCl3/THF溶液中に浸漬することにより、FeCl3でドープされる。浸漬後、サンプルは溶液から取り除かれ、残留THFは真空下で1時間、除去される。乾燥後、所望のコンポジットを形成するために、サンプルは導電性ポリマーの蒸気に浸漬され得る。次に、残留モノマーを除去するために、サンプルは再び真空下で乾燥される。
【0068】
これに代えて、溶液キャスト手法を用いて導電性ポリマーコンポジットが形成されてもよい。上述の膨潤手法には、予備成型したサンプルを溶媒/酸化剤溶液(THF/FeCl3)中に浸漬することと、次に、ドープしたサンプルをピロールモノマーの蒸気に暴露することとが含まれる。溶液キャスト手法は、材料を膨潤させる代わりに、ポリマーを溶媒溶液(例えば、THF/FeCl3)に予備溶解し、次にサンプルを溶液からキャストすること以外は、上述の膨潤手法と同様である。これにより、サンプルをスピンキャスト、スプレー(例えば、スプレー塗工)又は塗装することが可能となる。この方法は、ポリスルホン(ユーデル(登録商標)P−1700 NT11 ポリスルホン、ソルベイ アドバンスト ポリマーズ、ジョージア州アルファレッタ)を用いて実施されているが、この手法を用いて、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート及び同様の材料を含む、他のポリマーが形成され得る。このプロセスにより、使用可能な基材/マトリクス材料及び使用可能な塗工手法に、さらなる多様性が提供される。代表的な溶液キャスト手法を以下に述べる。
i)〜5重量/体積%のポリスルホンと、〜1重量/体積%のFeCl3をTHFに溶解する。
ii)溶液を基板へ塗工(スピンキャスト又はスプレー)し、乾燥させる。
iii )所定時間に渡り、サンプルをピロールモノマーの蒸気に暴露する。
iv)真空下で、残留ピロールモノマーの蒸気を除去する。
【0069】
[実施例]
ポリピロール(PPy)表面修飾したPDMSe:
4つのPDMSeフィルムを0.1M Fe(III )Cl3(酸化剤)、NaClO4(ドーパント)のエタノール溶液に約70時間に渡って浸漬することにより、表面修飾したPDMSeサンプルを調製した。エタノールは無機塩に対する良溶媒であるが、シリコンに対する貧溶媒である。このため、酸化剤及びドーパントはPDMSeサンプルの表面層にのみ組み込まれる。PDMSeフィルムを溶液から取り除き、乾燥させた(エタノールの蒸発)。次にサンプルを蒸留水(DI H2O)で洗浄し、表面上に直に存在する無機塩を除去した。次にPDMSeサンプルをピロール蒸気へ約48時間、暴露し、重合を行った。次に、PPy修飾したPDMSフィルムを乾燥させ(表面の残留モノマーを蒸発)、続いてエタノール及びDI H2Oで洗浄し、PPyの表面コーティング及び残留ピロールモノマーを除去した。
【0070】
次に、キャプティブ・バブル法により、DI H2O中、接触角測定を行った。2μLのバブルをPPy/PDMSeサンプル上に配置し、バブルの左右両側にて接触角を測定し、平均化した。図7には、蒸留H2O中、キャプティブ・バブル法を用いるPPy/PDMSeサンプルに対する接触角を示し、図8には、その画像を示す。
【0071】
中性の表面(ポテンシオスタットに接続されていない)に対する初期接触角は57度であったが、これは純粋なPDMSeより得られる接触角と同様である。+1.0Vの電圧を印加すると(酸化されているPPy、正の表面電荷)、接触角は23度まで減少した。次に、−1.0Vの電圧を印加すると(還元されているPPy、ほぼ中性の表面電荷)、接触角は44度まで増大した。
【0072】
PPy/PDMSeサンプルを中性の状態まで復帰させる(ポテンシオスタットから切断し、10分間、放置した)と、接触角は32度と、元の接触角と比較して減少したままであった。その後、このサンプルを約24時間後に確認したが、変化はほとんど無かった。これは、電荷が印加された後の表面の恒久的な再構成のためであり、表面上においてPPyが保持されている。直接的な刺激の元にないときであってもPPyの酸化状態は非常に安定であり、化学的又は電気化学的に還元状態へ駆動されて残留表面電荷を生じない限り、この酸化状態が優勢に存在する。
【0073】
ポリピロール(PPy)表面修飾したポリプロピレン:
別の実施例として、所望の厚さへの圧縮成型と、続いて所望の形状への切断とにより、ポリプロピレンマトリクスに分散されているEPDMゴム粒子(サントプレン(登録商標)、アドバンスド エラストマー システムズ、オハイオ州アクロン)を調製した。次に、サントプレン(登録商標)サンプルを、5重量/体積%のFeCl3/THF溶液中に24時間、浸漬することにより、FeCl3でドープした。浸漬後、サンプルを溶液から取り除いて、残留THFを真空下で約1時間、除去した。乾燥後、ポリピロール/サントプレン(登録商標)IPNサンプルを形成するために、サンプルをピロールモノマーの蒸気に24時間、浸漬した。次に、残留ピロールモノマーを除去するために、サンプルを再び真空下で約1時間、乾燥した。
【0074】
以下のテーブル1には、上述のように形成したポリピロール/サントプレン(登録商標
)IPNサンプルから、人工海水中において固定の印加電位+0.5V,0.0V,−0.5Vを用いて得られる接触角の値をまとめている。サンプルは人工海水中に配置し、試験に先立ってコンディションフィルムに10mV/秒で+/−1.0Vのサイクルを10サイクル、循環させた。接触角はキャプティブ・エア・バブル法を用いて測定し、角度はUTHSCSAイメージ・ツール(UTHSCSA Image Tool)ソフトウェアを用いて測定した。図9には、以下のテーブル1に示す接触角データのグラフを示す。
【0075】
【表2】
【0076】
ポリマー層の還元状態と酸化状態との間で、接触角に約12度の変化が見られる。
上述のように、充分に高い表面粗さ(R)を備える形態学を有するポリマーパターンの使用は、それ自身、一定の有機体の成長を遅延させるのに充分であり得る。図10は、コントロールサンプル「UM」、「Flat」を生体模倣パターン(「BEST」として表す)と比較した、緑藻(アオサの遊走子;直径約5μm)より取得される定着データを含むデータのテーブルである。サンプルは全て、PDMSeを使用した。
【0077】
UMサンプルはコントロールサンプルとして、スライドガラスにキャストした平坦なPDMSeサンプルである。Flatサンプルはパターン形成PDMSeスライド上の平坦領域のサンプル(パターン形成されているシリコンウエハにキャストした)である。Flatサンプル用のパターン形成シリコンウエハは、パターン形成領域のうちの一部の周辺及び間にパターン形成されていない領域を有する。BEST生体模倣パターンは自然を模倣しており、幅2μm、間隔2μm、長さ4〜16μmの菱形にパッキングされたリブからなる。この接近してパッキングされているパターンの寸法は、アオサの遊走子程度である。
【0078】
BESTサンプルの胞子濃度は、UM又はFlatのコントロールサンプルのいずれの定着より、約86%低いことが見出された。パターンの寸法が胞子の大きさよりも幾らか小さいことから、胞子がBESTパターンのギャップ領域への適合が防止されるために、BESTサンプルはコントロールサンプルよりも有効であったと考えられる。
【0079】
関連する実施例では、プラズマ処理を用いた。高周波グロー放電(RFGD)プラズマ処理は、多くの材料に種々の表面属性を与えるための一般的な手段である。多くの生体材料はプラズマ処理されると、表面濡れ性の増大に関連して生物学的な応答が向上する。プラズマプロセスは、高周波電流による、チャンバ内に存在する気体(Ar)のイオン化を伴う。PDMSeコーティングしたスライドを、RFコイルより約8.9cm(約3.5インチ)下に配置した。次に、13.56Hzにて動作するRF出力を作動させ、スライドを50ワット、約6666mPa(50mTorr)で処理した。プラズマ処理の時間は1分間及び15分間であった。コントロールスライドは処理しなかった。
【0080】
PDMSeでは、エラストマー表面に存在する官能基がプラズマにより開裂されてフリーラジカルを形成し、次に、このフリーラジカルは空気へ暴露されるときに水酸基を形成する。これによって表面は非常に親水性となり、10度未満の付着液滴(sessile
drop)の水の接触角を与える。これに従い、表面への低分子量種の拡散、表面の水酸基の濃縮、及び表面への放電中に系中で(in situ)生成される低分子量種の移行が発生し得る。したがって、プラズマ処理により、表面から全体(bulk)へ、又は、全体から表面への極性基の再配向が生じ得る。また、プラズマ処理により、表面をシリカ様の状態に変化させる、表面の進行性の酸化も生じ得る。プラズマへの暴露時間の増大に伴い、一般に、粗さの有意な減少も生じ得る。
【0081】
上述のように、本発明による電気活性ポリマー及び関連するコンポジットにより提供される、2以上のRの値を与えるフィーチャ形態学と動的な表面特性との組み合わせは、共同作用的な生物付着防止効果を提供することが期待される。本発明による電気活性ポリマーより提供される、2以上のRの値を与えるフィーチャ形態学と動的な表面特性とのうちの一方又は両方に、プラズマ処理によって追加の共同作用が提供され得る。
【0082】
導電性ポリマーコンポジットによりコーティングされている金属による耐腐食性:
1つのステンレス鋼サンプルは本発明による導電性ポリマーコンポジットによりコーティングし、第2のステンレス鋼コントロールサンプルはコーティングしないままとした。コンポジットは、PPy/SBS30(20重量%のFeCl3/SBS30 THF溶液によりディップコートした; FeCl3/SBS濃度は1:5)(SBS30=クレイトン(登録商標)SBS D1101; 〜31重量%スチレン)からなる。両サンプルを人工海水(Instant Ocean;I.O.)で満たした電気化学セルに配置した。両サンプルを作用電極及び対電極として機能させ、20秒の切換時間、±0.7Vの電位で12時間に渡りお互いに対してサイクルを循環させた。これらの実験には、Ag/AgCl(銀/塩化銀)参照電極を用いた。図11の(a),(b)には、12時間の腐食サイクル後の、本発明によりコーティングした電極と、コーティングしていない電極とをそれぞれ示す。コーティングした電極は明らかな損傷を示さなかったが、コーティングしていない電極は有意な腐食の兆候を示した。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態による、(a)還元(中性)状態及び(b)酸化状態にある、電極層上に配置されている導電性ポリマーコンポジットをそれぞれ示す図。
【図2】本発明の一実施形態による、(a)還元状態及び(b)酸化状態にある、パターン形成電極層上に配置されている複数のフィーチャを有するパターン形成導電性ポリマーによりコーティングされている基板をそれぞれ示す図。
【図3】図2の(a),(b)に示すコーティングされている基板とともに用いられ得る交互嵌合電極パターンの概略図。
【図4】幾つかの代表的なポリマーパターンを示す図。
【図5】図4の(a)〜(d)に示すパターンに基づき得られる代表的なフィーチャ深度、フィーチャ間隔、フィーチャ幅及びその結果としての粗度のテーブル。
【図6】本発明のさらに別の実施形態によるエレクトロウェッティングポンプを示す図。
【図7】蒸留H2O中、キャプティブ・バブル法を用いて、ポリピロール/ポリジメチルシロキサン(PPy/PDMSe)サンプルから取得される接触角データを与える図。
【図8】キャプティブ・バブル法を用いるPPy/PDMSeサンプルの画像。
【図9】ポリマーの還元状態と酸化状態との間で接触角が12度変化することを示す本発明によるポリマーコンポジットを用いて取得される接触角データのグラフ。
【図10】比較可能なアオサ類の胞子(緑藻)付着のデータを示すテーブル。1つの好適なパターン形成表面(BEST)を用いると、コントロールサンプルと比較してアオサ類の定着が86%減少していることが示される。
【図11】12時間の腐食サイクル後の(a)本発明によりコーティングされている電極、(b)未コーティング電極をそれぞれ示す図。未コーティング電極は有意な腐食の兆候を示すが、コーティングされている電極は明白な損傷を示さない。
【技術分野】
【0001】
本発明は1つ以上の導電性ポリマーを含む、動的に変質可能な表面を有するポリマー系コーティング及び関連するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
生物付着は、海面下における海洋有機体の定着、付着及び成長により生じる。生物付着のプロセスは、溶解有機物の吸着によるコンディショニングフィルム(conditioning film)の形成によって、表面が海洋環境に沈んで数分以内に開始される。コンディショニングフィルムが堆積すると、水没の数時間以内にバクテリア(例えば、単細胞藻類)が表面にコロニーを形成する。バクテリアのコロニー形成により生じるバイオフィルムは小付着(microfouling)又はスライムと呼ばれ、500μm程の厚さに達することがある。
【0003】
生物付着は海軍艦艇の流体力学的抵抗を増大させることにより、アメリカ合衆国海軍に対してのみで年間10億ドルを超える費用を負わせると推定される。また、これにより海軍艦艇の行動範囲、速力及び機動性は減少し、燃料消費は30〜40%まで増大する。したがって、生物付着により国防が弱体化される。さらに、生物付着は商業輸送、行楽用船舶や、民間建造物、橋梁及び発電施設に対する大きな経済的負担でもある。
【0004】
定常的に水と接触している基体は付着される可能性を有する。完全な耐付着性を有する表面は発見されていない。生物付着を形成する海洋有機体は非常に多岐に渡るため、一定の表面特性を有する単一の表面コーティングの展開により、関連する全ての海洋有機体のバイオフィルム形成を防止することは、不可能ではないとしても困難な課題である。
【0005】
バイオフィルム形成に対抗するために現在用いられる2つの主な手法は、抗付着(anti−fouling)コーティング及び脱付着(foul−release)コーティングである。抗付着コーティングでは、通常、酸化銅又はトリブチルスズなどの浸出性の殺生物剤を水中に用いることにより、表面への生物付着有機体の定着を防止又は抑止する。殺生物剤はコーティングされている表面に拘束されるか、或いは、表面から周囲の環境中へ放出される。これらの種類のコーティングの使用により、特に殺生物剤が蓄積し得る浅い湾や港湾において、海洋生態系が損なわれる。このため、トリブチルスズの使用は世界の大部分において禁止されている。これらの製品は約2〜5年間しか有効でない。
【0006】
脱付着コーティングにより疎水性及び低表面エネルギーが与えられ、その結果として、生物付着有機体の付着を最少化する滑性な表面が与えられる。脱付着コーティングのうち最も一般的に用いられ、かつ、非常に成功しているものは、非毒性のシリコン系塗料である。シリコン系コーティングを有効とするには数層が必要であるため、シリコン系コーティングは相当な費用を必要とすることがある。有効性が継続するのは5年までであり、5年になると再コーティングが必要となる場合がある。これらの製品は毒素を浸出しないため、抗付着コーティングと比較して環境的により安全であると考えられる。しかしながら、脱付着コーティングは摩耗し易いため、その使用は氷又は岩による損傷を受け難い地域に限定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
動的なポリマー系コーティングは、表面への取着用の1つ以上のポリマー層を備える。このポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有し、ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減する。好適な一実施形態では、ポリマー層は非荷電
(中性)状態に対する酸化及び還元のうちの1つ以上の際、1つ以上の方向に有意に伸縮する。
【0008】
このポリマー層はパターン形成されている層であることが可能であり、マイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む。この複数のフィーチャにより2以上、好適な一実施形態では8以上の粗度(R)が与えられる。隣接するフィーチャ間の間隔は、2μm未満など、マイクロスケール又はナノスケールであり得る。
【0009】
ポリマー層は好適にはポリマーコンポジットである。このポリマーコンポジットは、導電性ポリマーと混合されている1つ以上の非導電性ポリマーを含む。非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド及びポリスルホンを含む、種々のポリマーから選択され得る。導電性ポリマーはポリピロール、ポリ(p−フェニレン)及びポリチオフェン並びにそれらの誘導体であり得る。
【0010】
電極層は一般にポリマー層の下に配置されている。この電極層はパターン形成され得る。パターンはポリマー層のパターンに適合する交互嵌合パターンなど、マイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む。
【0011】
キャッピング層はパターン形成ポリマー層上に配置され得る。このキャッピング層はシリコン、ポリウレタン及びポリイミドから選択される軟質ポリマーを含み得る。パターン形成ポリマー層の複数のフィーチャの間に、固体ポリマー電解質が配置され得る。
【0012】
本発明の別の実施形態には、ボート又は船の水面下の部分に配置されるポリマー系コーティングを含む、非毒性生物付着防止システムが含まれる。このコーティングはポリマー層を備え、このポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有する。このポリマー層は一般に導電性ポリマーと混合されている1つ以上の非導電性ポリマーを含む。
【0013】
電源装置はポリマー層に動的な電気信号を供給し、この動的な電気信号に応答して、ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減する。また、ポリマー層は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、1つ以上の方向(例えば、高さ又は幅)に有意に伸縮し得る。ボート又は船の水面下の部分は金属又は金属合金(例えば、鋼)であり得て、電源装置の1つの端子はボート又は船の水面下の部分に電気的に接続されている。
【0014】
一実施形態では、ポリマー層は、電気的に絶縁されているフィーチャからなるパターンなど、パターン形成ポリマー層である。この実施形態では、システムはポリマー層の下にパターン形成電極層を備え得て、その電極パターンは交互嵌合し、かつ、フィーチャに整合している。パターン形成ポリマー層はマイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含み得る。この複数のフィーチャにより好適には2以上、さらに好適には8以上の粗度(R)が与えられる。隣接するフィーチャ間の間隔は、2μm未満など、マイクロスケール又はナノスケールであり得る。
【0015】
エレクトロウェッティング方式の流体ポンプは、流体を含む電解質を流通させるための流体導管と、複数の電極と、流体導管の内面に取着され、複数の電極上に配置されているポリマー層とを備える。ポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有する。電源装置は複数の電極と流体との間又はこの複数の電極に対向して配置されている別の電極との間に動的な信号を印加する。この結果、動的な電気信号に応答して、ポリマー層の接触角が酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減することにより、流体導管を通じて流体をポンピングする。このポンプは標準的なマイクロエレクトロニクス製法を用いて形成され得て、集積回路基板(例えば、シリコン)が用いられる場合、ポンプは集積回路基板と一体化される。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態においては、耐腐食性コーティングされている金属は、表面を有する金属と、その表面をコーティングしている導電性ポリマーコンポジットとからなる。このポリマーコンポジットは非導電性ポリマーと混合されている1つ以上の導電性ポリマーを含む。好適な一実施形態では、このポリマーコンポジットは金属を包入し、非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン又はポリスルホンを含む。
【0017】
動的コーティングには、表面への取着用の1つ以上のポリマー層が含まれる。好適には、このポリマー層には1つ以上の導電性ポリマーが含まれる。本発明は一般に導電性ポリマーを含む単一のパターン形成されたパターン形成ポリマー層を用いて記載されるが、コーティングがパターン形成されていなくてもよく、或いは、1つ以上のパターン形成ポリマー層が非導電性ポリマー層である、2層以上のポリマー層が含まれてもよい。
【0018】
本明細書において、用語「導電性ポリマー」は、0.1S/cm以上、好適には、10S/cm、20S/cm、40S/cm、100S/cm、200S/cm又は1000S/cmなど、1S/cm以上の室温導電性を与えるポリマーを指して用いられる。ポリマー層は単一の導電性ポリマーから形成されてもよく、導電性ポリマーを非導電性ポリマーとブレンドすることにより形成される材料など、コンポジット材料であってもよい。通常、導電性ポリマーは機械的に非常に脆いため、好適には、コンポジットへ弾性を提供するために非導電性ポリマーが一般に添加される。本発明の一定の実施形態では、動的バイアス中のオーム加熱を制限するため、充分な導電性が所望される。
【0019】
コンポジットポリマーの場合、コンポジット材料は導電性ポリマーと比較して、より低い導電性を有する。ポリマーコンポジットの導電性は半導体の導電性以上であり、室温にて1×10−6S/cm以上である。好適な一実施形態では、コンポジットポリマーの与える導電性は、10−3S/cm、10−2S/cm、0.1S/cmなど、10−4S/cm以上であり、好適には、10S/cm、20S/cm、40S/cm、100S/cmなど、1S/cm以上である。
【0020】
本明細書においては一般にコーティングが完全にポリマー層であるように記載するが、コーティングには複数の導電性金属若しくはセラミック粒子、又は導電性カーボンナノチューブが含まれてよい。ポリマーを導電性金属若しくはセラミック粒子又はナノチューブと混合することにより、導電性の向上したポリマー含有層の形成が可能となる。
【0021】
導電性ポリマーは電気活性ポリマーのうちの一部類である。本発明の実施に必要ではなく、理論に拘束されるものではないが、出願人は、酸化/還元に基づく本発明によるコーティングの表面特性の修飾について、次の機構を提示する。詳細には、適切な電解質の存在下、別の電気化学的に活性な材料と比較してポリマーを酸化又は還元するために充分な電気的バイアスをポリマーコーティングに印加すると、ポリマー層は酸化又は還元されて、表面エネルギー、表面張力、応力及び接触角を含む表面特性に変化を生じる。
【0022】
測定及び定量が比較的容易であるため、本明細書においては一般に接触角を用いて、ポリマー層へ電気化学的に誘起される動的な変化を記載する。本明細書においては、接触角の有意な増大又は減少は、ポリマーの荷電状態と非荷電状態との間における接触角の変化を表すために用いられる。この接触角の変化は、8度以上、好適には12度以上、より好適には20度以上など、16度以上である。上述のように、ポリマーの荷電状態は中性状態と比較して、還元状態、酸化状態、又は還元状態及び酸化状態の両方であってよい。
【0023】
また、ポリマー層は酸化及び還元のうちの1つ以上において、有意に伸縮してもよい。接触角の変化と同様に、印加される動的な電気信号に伸張及び収縮のうちの1つ以上が従
ってよい。本明細書による規定では、好適な一実施形態では、ポリマー層に関する「有意に伸縮」の語句は、ポリマー層を含むフィーチャの高さ又は幅など1つ以上の方向における、1%以上、好適には5%以上及びさらに好適には10%以上の伸張又は拡張を指す。
【0024】
したがって、ポリマー層へ導電性ポリマーを組み込むことにより、形態学的(topographical)な変化を含み得る可変の表面特性を有する単一の動的表面コーティングの形成が可能となる。このコーティングは、非毒性生物付着防止システムを含む種々の用途や、低電圧エレクトロウェッティングポンプの形成において用いられ得る。
【0025】
ここ最近、導電性ポリマーには、その導電性に加え電気的又は化学的な刺激の下で種々の応答を生成する能力のため、有意な注意が払われている。この発明において最も注目すべきは、化学的又は電気化学的な酸化還元中に導電性ポリマーの表面エネルギーが及び一般には寸法も変化する能力である。この能力は、ポリマー骨格に沿って電荷が展開するためであると考えられている。
【0026】
導電性ポリマーは一般に拡張π結合系を備える完全共役ポリマー骨格を有する、として特徴付けられる。しかしながら、導電性(共役)セグメント及び非導電性(非共役)セグメントからなる一部のブロックコポリマーは、本明細書の規定において導電性ポリマーとして分類されるために充分な導電性を与えることが可能である。共役により、ポリマー骨格に沿った電子及び電荷の非局在化が可能となる。塩溶液及び体液などの電解質溶液における導電性ポリマーの酸化(若しくは還元又はその両方)に関連する寸法変化は、主として、展開する電荷の増大を平衡するために溶媒及び対イオンが導電性ポリマーのマトリクスへ流入することにより誘起され、材料の寸法変化を生じる。逆のプロセス中には、この材料は一般に中性(非荷電)状態へ復帰し、対イオンがポリマーマトリクスから排出されて、寸法の変化を生じる。ポリピロール(PPy)など一部の材料は酸化状態において膨張し、ポリ(p−フェニレン)(PPP)は還元状態において膨張する。ポリ(3−メチルチオフェン)(PMeT)など一部の材料は、酸化状態及び還元状態の両方において、中性状態と比較して膨張する。
【0027】
本発明とともに一般に用いられ得る代表的な導電性ポリマーには、PPy、ポリチオフェン及びPPP並びにそれらの誘導体が含まれる。それらのポリマーは全て、刺激されると体積、表面エネルギー及び関連する特性、色調並びに発光において、可逆な物理変化を生じる。PPyの場合、酸化(膨張)形態と還元(収縮)形態との間で材料を電気化学的に切り換えること(酸化還元サイクル)により、境界面において長さ方向に約1〜3%、厚さ方向に約35%の体積変化が誘起され得る。酸化還元サイクル中に誘起されるこの大きな体積変化は、一般に、PPy含有層の表面エネルギー及び関連する特性における変化を伴う。PPyは、その酸化電位が約−0.2Vであり、約−0.2V〜−0.3VというO2還元電位に近いため、酸化形態が非常に安定であるという特徴を有する。したがって、中性のPPyは空気へ暴露されるとO2により酸化され、導電性の酸化形態を形成する。PPyは種々の媒質において化学的又は電気化学的に合成され得る。FeCl3又は過硫酸アンモニウムなどのルイス酸とNaClO4などのコドーパントとの存在により、化学的に重合が実施され得る。
【0028】
ポリチオフェンは、本発明とともに用いられ得る別の導電性ポリマーである。ポリチオフェンは酸化状態に加え、還元状態においても安定性を与える。また、多くの非常に好適な電気特性、光学特性及び酸化還元特性を有する。チオフェンモノマーは複数の化学的手法を用いて容易に誘導体化され得る。チオフェン環上の置換基を変化させることにより、得られるモノマー及びポリマーの酸化電位はそれぞれ1.20V〜2.00V及び0.70〜1.45Vの間で変化され得ることが示されている。特に、ポリ(3−メチルチオフェン)(PMeT)はAg/AgClに対し約0.8Vの酸化電位を有し、約0.2Vに
て完全な還元状態に到達する。これらの値はそれぞれO2還元電位及びH2O酸化電位より充分に上及び下にあるため、両方の形態において充分な安定性が得られる。PMeTもPPyと同様の手法により重合され得る。
【0029】
ポリ(p−フェニレン)(PPy)は、本発明とともに用いられ得る別の代表的な導電性ポリマーである。PPyの欠点のうちの1つは、酸化(荷電)形態における高い安定性である。このため、PPy−PDMSe表面の元の非荷電状態への復帰は阻害され得る。
【0030】
一方、ポリ(p−フェニレン)(PPP)は中性形態が例外的な安定性を示す。PPPの酸化電位は+1.2V周辺であり、水の酸化電位と非常に近いため、水によりPPPの酸化形態は、より安定な中性形態へ還元され得る。また、PPPは結晶性が高く、加工が困難であり、かつ、不溶性であるという特徴を有し、酸化劣化、放射劣化及び熱劣化に対する高い耐性を示す。PPPは、FeCl3(〜70℃)及びAlCl3(〜37℃)などのルイス酸と追加の酸化剤との存在により、ベンゼンから合成され得る。
【0031】
本発明とともに用いられ得る他の代表的な導電性ポリマーには、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアズレン、ポリアセン及びその誘導体などのはしご型ポリマー、ポリキノン及びその誘導体並びにポリスチレンスルホン酸が含まれる。導電性ポリマーは一般にエラストマー又はゴムなど軟質のポリマーと混合される。例えば、次のエラストマー(やポリスルホン)は本発明による導電性ポリマーコンポジットを形成するために用いられる。
【0032】
【表1】
【0033】
上のテーブルに示す材料は、ポリスルホンを除いて全て、エラストマーである。ポリスルホンにより、本発明によるポリマーコンポジットにおいて従来の熱可塑性プラスチック材料が用いられ得ることが示される。一般にポリスルホンはエラストマー材料より充分に硬いコーティングを形成する。PDMSe及びサントプレン(登録商標)TPEは不溶性(膨潤し得るのみ)であるが、ポリスルホンは可溶性であるため、溶液キャスト(ディップ、スピン、スプレー又は溶液キャスト)可能である。このため、従来の塗工手法の使用が可能となる。SBS、SEBS及びポリウレタンを含む代替の材料は全て、可溶性であることが見出されているため、従来の塗工手法を用いて加工することが可能である。
【0034】
図1には、エラストマー含有組成物など、非導電性ポリマーとブレンドされている導電性ポリマーを含むポリマーコンポジット130を示す。(a)、(b)には、それぞれ還元(中性)状態、酸化状態を示す。ポリマー層130は、船の鋼のハルなど連続的な電極層120の上に配置されている。例えば、ポリマーコンポジットには、ポリマーコンポジットを軟質とするPDMSエラストマー(本明細書においては、以降、PDMSeと呼ぶ)と混合されている、ポリチオフェンなどの導電性ポリマーが含まれ得る。エラストマー組成物には、シリカなどの充填剤が含まれてよい。
【0035】
ポリマーコンポジット130の組成は、一般に、与えられる導電性ポリマーの特性に応じて異なる。導電性ポリマーの濃度は、一般に、ポリマーコンポジット130全体の約2〜50重量%の範囲、好適には5〜20重量%の範囲である。しかしながら、本発明による動的サイクルの際のクラックを防止するために充分な弾性特性を有する導電性ポリマーが利用可能となる場合、ポリマー層のほぼ全体が導電性ポリマーからなり得る。
【0036】
図1の(a),(b)に示すポリマーは還元(中性)状態と酸化状態との間で高さ(厚さ)方向に有意な形態学的変化を示しているが、本発明によるコンポジットポリマーが形態学的に有意な変化を示す必要はない。接触角における有意な変化並びに表面張力及び表面エネルギーにおける関連する変化が、生物付着防止に関する本発明の実施形態に必要な全てである。
【0037】
図1の(a),(b)に示すように、ポリマー層130は連続的な層であるため、層を通じて電気的に相互に接続されている。電解質(図示せず)の存在下、電極層120とポリマー層130との間に適切な電位差が印加されると、ポリマーコンポジット層130の全体は正に荷電され、図1の(b)に示す酸化形態へと膨張する。上述のように、図1の(a),(b)に示すポリマー層130は近傍のアニオン(図示せず)を引きつけることにより、酸化の際に膨張するが、他のポリマーは還元の際に膨張する。また、他のポリマーは還元及び酸化の両方の際に、中性状態と比較して膨張する。さらに、やはり上述のように、他の導電性ポリマーは還元又は酸化の際に形態学的に有意な変化を示さない。図1の(a),(b)に示すポリマーコンポジットの場合、酸化状態へと膨張させるアニオンは、電解質ゲルなど周囲の電解質(図示せず)や、海洋用途の場合には海水により提供され得る。
【0038】
数平方ミリメートル以下程度などの小面積ポリマー層用途には、パターンが所望される場合、従来のリソグラフィー及びエッチング、インクジェット印刷などの手法を用いて、所望のポリマーパターンを形成することが可能である。数平方センチメートル以上程度など、より大きな面積の層が必要なときには、スプレー、ディップコート、ハンドペイント又は種々の周知の「アップリケ(applique)」手法を用いて、上述のように構成される複数のより小さな領域を有効に結合させ、船の喫水線近傍及び以下など、大きな面積領域を通じるポリマーパターンを提供することが可能である。
【0039】
図2には、パターン形成電極層220上に配置されている、別個の、かつ、電気的に絶縁されている複数のフィーチャ215を有するパターン形成導電性ポリマーによりコーティングされている基板205を示す。(a)、(b)にはそれぞれ還元状態210、酸化状態260を示す。簡単のため、図2の(a),(b)には、電極層をパターン形成されていないように示す。また、図3には、代表的なパターン形成電極層220を適正に表現し得る、代表的な交互嵌合パターン形成電極層を示す。ゲル電解質225はフィーチャ215の間の領域を充填している。軟質キャップ層240は、フィーチャ215及びゲル225の上に配置されている。例えば、このキャップ層はシリコン、ポリウレタン又はポリイミドから選択されるポリマーなど、軟質のポリマーを含んでもよい。図2の(a)に示す中性状態では、示す構造の表面は平坦な表面形態学を有する。図2の(b)に示す酸化
状態260を提供するため、ポリマーを酸化するために充分に高い(+)電位(ポリマーの破壊を回避するために充分に低い)がフィーチャ215に電気的に接続している電極層220の電極に対し印加され、より低い(−)電位が電解質225に電気的に接続している電極アレイ220の電極に対し印加される。パターン形成されているポリマーのフィーチャ215が変形するとき、ゲル225が移動されるため軟質キャップ層240が変形される。例えば、パターン形成されているポリマーのフィーチャ215が、ポリマーの酸化に続いてなど、長さ方向へ拡張する場合、ゲル225は上方へ押されるため、パターン形成ポリマー層のギャップ領域(フィーチャ215が提供されていない領域)を通じて離れた領域へ、軟質キャップ領域240を膨張させる。
【0040】
ゲル225など電解質ゲルの目的は、デバイスの酸化還元サイクル中のイオン輸送のためのイオン的な導電性媒質を提供することである。このことは、粘凋性電解質溶液又は固体ゲル(架橋されている)電解質系により達成され得る。粘凋性電解質溶液は標準的な水性電解質溶液又は有機電解質溶液から調整され得る。これらの電解質溶液の両方は、塩と適切な溶媒との混合物からなる。水溶液は、通常、塩化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム又はリチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びp−トルエンスルホン酸ナトリウムなど、ナトリウム又はリチウム系の塩である、水溶性の塩から作成される。これらの溶液を濃縮して、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロースなど、幾つかの水溶性ポリマー材料を利用する粘凋性溶液を調製することが可能である。有機電解質溶液には、プロピレンカルボネート及びアクリロニトリルなどの有機溶媒中、PF6−(ヘキサフルオロリン酸)、PF4−及びClO4−のt−ブチルアンモニウム系の塩など、より有機可溶性の塩が用いられる。これらの溶液を濃縮して、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリカルボネートなど、幾つかの有機可溶性ポリマー材料を利用する粘凋性液体を調製することが可能である。
【0041】
一実施形態では、パターン形成電極層220により、導電性ポリマーに対する電気化学的堆積の使用により利用可能なものなど、導電性ポリマーフィルムフィーチャ215が形成される。例えば、パターン形成されている表面電極上に直接、導電性ポリマーフィルムが電気化学的に堆積される。
【0042】
電気化学的な酸化還元サイクル中、導電性ポリマー層含有フィーチャ215は、接触角/表面エネルギー/表面張力に動的な変化を受け、必須ではないが好適には、形態学的な変化も示す。フィーチャ215が別個であり、かつ、電気的に絶縁されていることにより、それぞれのフィーチャ215に対し印加されるバイアスを独立に制御することが可能となる。これにより、フィーチャの位置及び好適には形態学に応じて、表面エネルギーの制御されている微細にパターン形成されている表面が作成される。形態学的変化が与えられるとき、導電性ポリマーパターンや、導電性ポリマー215に対し印加される電気的刺激(例えば、電位、波形、周波数)を制御することにより、種々の表面パターンが作成され得る。
【0043】
一実施形態では、電極層220は交互嵌合パターンの形態である。図3には、バイアスを提供するための電源装置350に加え、第1の電極アレイ310及び第2の電極アレイ320を備える、代表的な交互嵌合パターン300を示す。一実施形態では、図2の(a),(b)に示す別個のフィーチャ215などのフィーチャは第1のアレイ310の上方に配置され、一方、第2のアレイ320は電解質225などの電解質に接触している。電極パターンには、複数のマイクロスケール又はナノスケールのフィーチャが含まれてよい。
【0044】
本発明によるコーティングは非毒性、かつ、エネルギー効率的な生物付着防止システムにおいて用いられ得る。バイオフィルムの付着における主な因子は表面エネルギーである
と見られている。したがって、本発明による導電性ポリマーフィルムの電気化学的な酸化還元サイクル中、ポリマー電荷における変化を利用することにより、得られるポリマー表面又はその上に配置されている表面の表面エネルギーを動的に変化させ、生物付着を防止又は少なくとも有意に減少させることが可能となる。したがって、表面エネルギーの動的な変化に加え、随意ではコーティングにおける動的な形態学的変化により、コーティングによる生物付着防止が提供される。
【0045】
非毒性生物付着防止システムには、アップリケ手法を用いるポリマーコンポジットを含む複数の区分を用いるものなど、ボート又は船の水面下の部分へ適用するためのコーティングが含まれ得る。このポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有し、連続的、かつ、本質的に一様なコーティングである。
【0046】
図3に示す第1のアレイ310及び第2のアレイ320からなる交互嵌合パターンなど、随意の電極層がコーティングの下に存在し得る。必須ではないが、ポリマー層もパターンを有してよい。パターンは別個の、かつ、電気的に絶縁されている複数のフィーチャからなることが可能である。このパターンによって、第1のアレイ310を含むものなど、それぞれのポリマーフィーチャは相互接続されている複数の導電性トレースに電気的に接続されている。
【0047】
代替の一実施形態では、船のハルにより1つの巨視的な電極層が与えられ、1つ以上の対極が船から離されて水中に配置される。しかしながら、この実施形態では、鋼のハルが含まれるときなどにハルの錆つきを回避するため、ハルは一般に空気/水界面に近接する領域において絶縁される必要がある。
【0048】
電気的なバイアスを供給するための電源装置は、それぞれの電極又は電極層を挟んで接続されており、電気的バイアスによってポリマー層の表面エネルギーが動的に変化され、また好適には、ポリマー層が動的に有意に伸縮される。表面が動的であることにより、コーティング上における有機体の成長が防止されるか少なくとも遅延される。生物付着は、ほとんど船が港にあるあいだにのみ発生することが知られている。有利なことに、船内のものであれ離れているものであれ、電源装置はボート又は船がドックに入港しているときにのみ、船内又は船内の原子炉その他の電源装置から導かれる出力などのバイアスをコーティングへ供給することが可能である。
【0049】
電気的バイアスは好適には低電圧、かつ、動的な信号である。例えば、通常、電圧範囲は2V未満の範囲であり、特定のポリマーに応じて異なるバイアスが用いられる。PPyは好適には−0.8V〜+0.6Vにてバイアスされ、ポリ(3−メチルチオフェン)は+0.2V〜+0.8V、ポリパラフェニレンは−2V〜+1.1V、及びポリアニリンは+0.1V〜+0.7Vにてバイアスされる。所望の場合、ポリチオフェン上の置換基を変化させることにより、酸化/還元電位を+1.5V超から−1.5Vの範囲で移動させることが可能である。
【0050】
動的な信号の周波数は好適には0.01〜1Hzであるが、この値より高くても低くてもよい。この信号は正弦波、方形波、鋸歯波又は別の時間変化する信号であってよい。
図4の(a)〜(d)には、本発明とともに用いられ得る幾つかの代表的なポリマーパターンを示す。図4の(a)には、シリコンウエハ上に2μm間隔で配置されているフィーチャを有する、PDMSeから製造されるリブレット(riblet)パターンを示す。このフィーチャは従来のフォトリソグラフィー加工を用いて形成される。図4の(b)にはスター/クローバーパターン、図4の(c)には勾配(gradient)パターンを示し、図4の(d)には三角形/円パターンを示す。
【0051】
図5には、図4の(a)〜(d)に示すパターンに基づき、代表的なフィーチャ深度、フィーチャ間隔、フィーチャ幅及びその結果の粗度(R)のテーブルを示す。図4の(a)に示すリブレットパターンに関して示す深度、間隔及び幅では、その結果として得られるパターン粗度(R)は5.0〜8.9の範囲であった。また図5には、スター/クローバーパターン(図4の(b))、勾配パターン(図4の(c))及び三角形/円パターン(図4の(d))に対する同様のデータも示す。三角形/円構成(図4の(d))に関して、フィーチャ深度10μm、フィーチャ間隔1μm及びフィーチャ幅1μm(円)及び5μm(三角形)では、13.9の粗度(R)が得られた。
【0052】
粗度(R)は表面粗さの尺度である。Rは、幾何学的な表面積(Rgeo)に対する実際の表面積(Ract)の比として定義される(R=Ract/Rgeo)。一例は以下に1cm2の材料片において与えられる。サンプルが完全に平坦である場合、実際の表面積と幾何学的な表面積とはいずれも1cm2となる。しかしながら、フォトリソグラフィー及び選択的エッチングを用いるなど、パターン形成により平坦な表面が粗化された場合、生成されるフィーチャの側面により追加の表面積が提供されるため、得られる実際の表面積は元の幾何学的な表面積より大きくなる。例えば、露出されている表面を粗化することにより元の平坦な表面の表面積の2倍となる場合、Rの値は2となる。
【0053】
好適には、パターンにより2以上の粗度(R)が与えられる。本発明によるパターン形成コーティングの有効性は、約2のパターン粗さ(R)の値を超えてRが増大するとともに増大し、何らかのより大きなRの値に達すると安定するであろうと考えられる。得られている予備的な結果に基づくと、充分なRの値を有するコーティングは一部の場合、電気活性ポリマー又はポリマーコンポジットにより提供される動的な表面効果の必要なく、生物付着防止剤(実施例を参照)として有効であると考えられる。しかしながら、本発明による電気活性ポリマー及び関連するコンポジットにより提供される、2以上のRの値を与えるフィーチャ形態学と動的な表面特性との組み合わせは、共同作用的な(synergistic)生物付着防止効果を提供することが期待される。
【0054】
好適な一実施形態では、粗度(R)は4以上であり、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25又は30などである。より深度が大きく、より間隔の狭いフィーチャが提供されると仮定すると、Rの値は30より大きくなる。
【0055】
フィーチャ間隔もまた重要な設計パラメータであり得る。フィーチャ間隔が有機体の大きさより小さい場合、一般に有機体の成長が遅延されることが発見されている。例えば、藻の胞子の大きさは一般に2〜5μmである。したがって、藻の胞子の付着を遅延させるために、好適には2μm未満のフィーチャ間隔を用いて藻の胞子の成長を遅延させる。
【0056】
本発明による動的な表面の効果を提供するコーティングは、マイクロ流体ポンプを含む、低電圧エレクトロウェッティング方式デバイスを形成するためにも用いられ得る。現在の機械的なマイクロポンプデバイスには、一般に、幾つかの種類の圧電性の、熱的な、形状記憶合金及び静電気的駆動機構が用いられる。直接的なマイクロポンプシステムでは、磁気流体力学、電気泳動及び熱的に誘起される表面張力などの原理が駆動に利用される。
【0057】
エレクトロウェッティングは、印加される電位による電極表面における電気二重層(EDL)の形成又は再配置により、金属電極の表面濡れ性(表面張力)を変化させるプロセスである。エレクトロウェッティング(EW)プロセスは電解質溶液を伴う純金属電極については非常に研究されている。EWデバイスは形成されるEDLの性質のため、極性媒質中の使用は制限されている。EDLは流体媒質中における電極から酸化還元活性種への電子移動により形成される。EDLの電気的な安定性のため、これらのデバイスの使用は
約1V程度の低電圧までに制限される。しかしながら、接触角(Δθ)において誘起される変化は電極表面に展開される電荷の量に比例することにより、生じ得る全Δθは限定される。この技術における2つの主要な用途は、マイクロ流体デバイスの用途及びMEMS型の用途である。
【0058】
最近の研究では、電極と流体との間に薄い誘電体層(例えば、PTFE又はSiO2)を適用することにより、この効果が増強され、事実上、任意の流体媒質のポンピング/ウェッティングが可能となることが見出されている。この構成は、誘電体上のエレクトロウェッティング(EWOD;electrowetting−on−dielectric)と呼ばれる。
【0059】
EWODでは、電場を用いて疎水性状態と親水性状態との間で誘電体フィルムの表面特性を修飾することが可能である。しかしながら、これらのシステムを駆動するには、従来のエレクトロウェッティングと比較してさらに高い電位が必要である。EWODデバイスの典型的な動作電圧は一般に100〜200Vを超える。
【0060】
EWODプロセスでは、表面状態に応じてその表面の上に、液体からなる液滴を玉(bead)とすることや、広げることが可能である。図6に示すように、エレクトロウェッティング方式の流体ポンプ600は、流体導管610を備える。流体導管610は底板620を備え、底板620の上には複数の制御電極615が配置されている。頂板630は接地電極650を備える。導電性ポリマーを含むポリマー層625は制御電極615上に配置されている。ポリマー層625を連続的、かつ、一様な層として示すが、ポリマー層625はパターン形成されている層であってよい。液滴645は流体導管610中に配置されており、一般に適切な電解質を含む。
【0061】
ポンプ600の通常動作中、電源装置(図示せず)は接地電極650と制御電極615との間に電気的な信号を印加することにより、液滴645を挟んで交互に変化するバイアス電位を印加する。バイアスはポリマー層の表面張力を液滴645に関して高いレベルと低いレベルとの間で動的に交互に変化させる。交互に変化する表面張力により液滴645がポンプされる結果、液滴645からなる流体は流体導管610を通過する。本発明によるポンプ600を用いるポンピングは、2Vなど、5V程度の低電圧により実施され得る。
【0062】
ポンプ600は、シリコンなど従来の基板材料を用いるMEMS技術を用いて形成され得る。したがって、頂板630及び底板620はシリコンジオキサイドその他、シリコン系集積回路プロセスにおいて容易に成長又は堆積される層から形成され得る。MEMSの使用により、マイクロスケール又はナノスケールのフィーチャや、ポンプ600へのバイアス用の発信器及び所望の場合には制御電子部品など、ポンプ600付近の電子部品の低コスト製造が可能となる。
【0063】
本発明の別の実施形態では、金属の腐食を減少させるために本発明によるポリマーコンポジットが用いられ得る。金属は構造部材、電極その他の用途の形態であってよい。本発明によるポリマーコンポジットの導電性により、本発明によるコーティングにより包入され、かつ、依然として電極として適正に機能することが可能となる。また、導電性ポリマーは、本発明によるポリマーコンポジットの酸化還元性能のため、コンポジットにより提供される耐腐食性を改良する(その他の点では等価な包入層と比較して)とも考えられる。ポリマーコンポジットの軟質(例えば、エラストマー、ゴム、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド又はポリスルホン)部分は、コーティングされている表面に対する付着を促進する。所望の耐腐食性効果を提供するためにバイアスのサイクルは必須ではなく、ポリマーコンポジット層におけるパターンも必須ではない。1μm程度から、数mmやそれ
以上など、広範なコーティング厚さが用いられ得る。
【0064】
ポリマーコンポジットが所望されるときの本発明の用途において、非導電性ポリマーを導電性ポリマーとブレンドするために、種々の方法が用いられ得る。バルク材料の修飾は、入れ子型ポリマーネットワーク(IPN;interpenetrating polymer network)及びポリマーブレンドの開発により実行され得る。表面修飾は、表面グラフト及びIPNのうちの1つ以上の形成によっても実行され得る。IPN形成は水溶液及び有機溶液中にて周知の手法を用い、化学的及び電気化学的に実行され得る。また、気相化学重合も用いられ得る。
【0065】
また、超臨界CO2(scCO2)も、導電性ポリマーを種々の非導電性材料へ組み込むための有効な方法であると決定されている。scCO2により、サンプル調製速度が改良され、サンプルを含浸するために必要な溶媒は有意に減少される。超臨界CO2は必要な酸化剤をPDMSeに含浸させて導電性ポリマー/PDMSブレンドを形成する改良された方法であることが見出されている。このプロセスにより、これらの材料を加工するために必要な時間及びコスト(より低い溶媒要件)は非常に減少される。二酸化炭素(CO2)の圧力、温度が7.38MPa、31℃を超えるとき、CO2は超臨界状態となる(scCO2)。この状態では、CO2は気体及び液体の両方の特性を有しており、溶質を運び、容易にポリマー材料を貫通する/膨潤させる能力が与えられる。scCO2の溶解性は超臨界点を超える温度、圧力を変化させることにより、また、メタノール及びエタノールなどの共溶媒を反応チャンバ内に組み込むことにより制御され得る。
【0066】
scCO2プロセスでは、サンプル(及び、必要ならばメタノール並びにエタノールなどの共溶媒)と、ドーパント(酸化剤)とが高圧チャンバ内に置かれ、続いてこの高圧チャンバは液体二酸化炭素(LiCO2)で満たされる。次に、チャンバ圧力、温度が7.38MPa、31℃を超えて上昇され、LiCO2を超臨界状態とする。サンプルは所望の反応時間に渡り、scCO2中に置かれる。所望の浸漬時間に達すると、チャンバ温度、圧力が、室温、室圧に復帰するまで、ゆっくりと低下される。
【0067】
これに代えて、ポリマーコンポジットを形成するために膨潤手法が用いられてもよい。例えば、熱可塑性プラスチックエラストマーは、所望の厚さへの圧縮成型と、続いて所望の形状への切断とにより調製される。次に、熱可塑性プラスチックエラストマーのサンプルは、FeCl3/THF溶液中に浸漬することにより、FeCl3でドープされる。浸漬後、サンプルは溶液から取り除かれ、残留THFは真空下で1時間、除去される。乾燥後、所望のコンポジットを形成するために、サンプルは導電性ポリマーの蒸気に浸漬され得る。次に、残留モノマーを除去するために、サンプルは再び真空下で乾燥される。
【0068】
これに代えて、溶液キャスト手法を用いて導電性ポリマーコンポジットが形成されてもよい。上述の膨潤手法には、予備成型したサンプルを溶媒/酸化剤溶液(THF/FeCl3)中に浸漬することと、次に、ドープしたサンプルをピロールモノマーの蒸気に暴露することとが含まれる。溶液キャスト手法は、材料を膨潤させる代わりに、ポリマーを溶媒溶液(例えば、THF/FeCl3)に予備溶解し、次にサンプルを溶液からキャストすること以外は、上述の膨潤手法と同様である。これにより、サンプルをスピンキャスト、スプレー(例えば、スプレー塗工)又は塗装することが可能となる。この方法は、ポリスルホン(ユーデル(登録商標)P−1700 NT11 ポリスルホン、ソルベイ アドバンスト ポリマーズ、ジョージア州アルファレッタ)を用いて実施されているが、この手法を用いて、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート及び同様の材料を含む、他のポリマーが形成され得る。このプロセスにより、使用可能な基材/マトリクス材料及び使用可能な塗工手法に、さらなる多様性が提供される。代表的な溶液キャスト手法を以下に述べる。
i)〜5重量/体積%のポリスルホンと、〜1重量/体積%のFeCl3をTHFに溶解する。
ii)溶液を基板へ塗工(スピンキャスト又はスプレー)し、乾燥させる。
iii )所定時間に渡り、サンプルをピロールモノマーの蒸気に暴露する。
iv)真空下で、残留ピロールモノマーの蒸気を除去する。
【0069】
[実施例]
ポリピロール(PPy)表面修飾したPDMSe:
4つのPDMSeフィルムを0.1M Fe(III )Cl3(酸化剤)、NaClO4(ドーパント)のエタノール溶液に約70時間に渡って浸漬することにより、表面修飾したPDMSeサンプルを調製した。エタノールは無機塩に対する良溶媒であるが、シリコンに対する貧溶媒である。このため、酸化剤及びドーパントはPDMSeサンプルの表面層にのみ組み込まれる。PDMSeフィルムを溶液から取り除き、乾燥させた(エタノールの蒸発)。次にサンプルを蒸留水(DI H2O)で洗浄し、表面上に直に存在する無機塩を除去した。次にPDMSeサンプルをピロール蒸気へ約48時間、暴露し、重合を行った。次に、PPy修飾したPDMSフィルムを乾燥させ(表面の残留モノマーを蒸発)、続いてエタノール及びDI H2Oで洗浄し、PPyの表面コーティング及び残留ピロールモノマーを除去した。
【0070】
次に、キャプティブ・バブル法により、DI H2O中、接触角測定を行った。2μLのバブルをPPy/PDMSeサンプル上に配置し、バブルの左右両側にて接触角を測定し、平均化した。図7には、蒸留H2O中、キャプティブ・バブル法を用いるPPy/PDMSeサンプルに対する接触角を示し、図8には、その画像を示す。
【0071】
中性の表面(ポテンシオスタットに接続されていない)に対する初期接触角は57度であったが、これは純粋なPDMSeより得られる接触角と同様である。+1.0Vの電圧を印加すると(酸化されているPPy、正の表面電荷)、接触角は23度まで減少した。次に、−1.0Vの電圧を印加すると(還元されているPPy、ほぼ中性の表面電荷)、接触角は44度まで増大した。
【0072】
PPy/PDMSeサンプルを中性の状態まで復帰させる(ポテンシオスタットから切断し、10分間、放置した)と、接触角は32度と、元の接触角と比較して減少したままであった。その後、このサンプルを約24時間後に確認したが、変化はほとんど無かった。これは、電荷が印加された後の表面の恒久的な再構成のためであり、表面上においてPPyが保持されている。直接的な刺激の元にないときであってもPPyの酸化状態は非常に安定であり、化学的又は電気化学的に還元状態へ駆動されて残留表面電荷を生じない限り、この酸化状態が優勢に存在する。
【0073】
ポリピロール(PPy)表面修飾したポリプロピレン:
別の実施例として、所望の厚さへの圧縮成型と、続いて所望の形状への切断とにより、ポリプロピレンマトリクスに分散されているEPDMゴム粒子(サントプレン(登録商標)、アドバンスド エラストマー システムズ、オハイオ州アクロン)を調製した。次に、サントプレン(登録商標)サンプルを、5重量/体積%のFeCl3/THF溶液中に24時間、浸漬することにより、FeCl3でドープした。浸漬後、サンプルを溶液から取り除いて、残留THFを真空下で約1時間、除去した。乾燥後、ポリピロール/サントプレン(登録商標)IPNサンプルを形成するために、サンプルをピロールモノマーの蒸気に24時間、浸漬した。次に、残留ピロールモノマーを除去するために、サンプルを再び真空下で約1時間、乾燥した。
【0074】
以下のテーブル1には、上述のように形成したポリピロール/サントプレン(登録商標
)IPNサンプルから、人工海水中において固定の印加電位+0.5V,0.0V,−0.5Vを用いて得られる接触角の値をまとめている。サンプルは人工海水中に配置し、試験に先立ってコンディションフィルムに10mV/秒で+/−1.0Vのサイクルを10サイクル、循環させた。接触角はキャプティブ・エア・バブル法を用いて測定し、角度はUTHSCSAイメージ・ツール(UTHSCSA Image Tool)ソフトウェアを用いて測定した。図9には、以下のテーブル1に示す接触角データのグラフを示す。
【0075】
【表2】
【0076】
ポリマー層の還元状態と酸化状態との間で、接触角に約12度の変化が見られる。
上述のように、充分に高い表面粗さ(R)を備える形態学を有するポリマーパターンの使用は、それ自身、一定の有機体の成長を遅延させるのに充分であり得る。図10は、コントロールサンプル「UM」、「Flat」を生体模倣パターン(「BEST」として表す)と比較した、緑藻(アオサの遊走子;直径約5μm)より取得される定着データを含むデータのテーブルである。サンプルは全て、PDMSeを使用した。
【0077】
UMサンプルはコントロールサンプルとして、スライドガラスにキャストした平坦なPDMSeサンプルである。Flatサンプルはパターン形成PDMSeスライド上の平坦領域のサンプル(パターン形成されているシリコンウエハにキャストした)である。Flatサンプル用のパターン形成シリコンウエハは、パターン形成領域のうちの一部の周辺及び間にパターン形成されていない領域を有する。BEST生体模倣パターンは自然を模倣しており、幅2μm、間隔2μm、長さ4〜16μmの菱形にパッキングされたリブからなる。この接近してパッキングされているパターンの寸法は、アオサの遊走子程度である。
【0078】
BESTサンプルの胞子濃度は、UM又はFlatのコントロールサンプルのいずれの定着より、約86%低いことが見出された。パターンの寸法が胞子の大きさよりも幾らか小さいことから、胞子がBESTパターンのギャップ領域への適合が防止されるために、BESTサンプルはコントロールサンプルよりも有効であったと考えられる。
【0079】
関連する実施例では、プラズマ処理を用いた。高周波グロー放電(RFGD)プラズマ処理は、多くの材料に種々の表面属性を与えるための一般的な手段である。多くの生体材料はプラズマ処理されると、表面濡れ性の増大に関連して生物学的な応答が向上する。プラズマプロセスは、高周波電流による、チャンバ内に存在する気体(Ar)のイオン化を伴う。PDMSeコーティングしたスライドを、RFコイルより約8.9cm(約3.5インチ)下に配置した。次に、13.56Hzにて動作するRF出力を作動させ、スライドを50ワット、約6666mPa(50mTorr)で処理した。プラズマ処理の時間は1分間及び15分間であった。コントロールスライドは処理しなかった。
【0080】
PDMSeでは、エラストマー表面に存在する官能基がプラズマにより開裂されてフリーラジカルを形成し、次に、このフリーラジカルは空気へ暴露されるときに水酸基を形成する。これによって表面は非常に親水性となり、10度未満の付着液滴(sessile
drop)の水の接触角を与える。これに従い、表面への低分子量種の拡散、表面の水酸基の濃縮、及び表面への放電中に系中で(in situ)生成される低分子量種の移行が発生し得る。したがって、プラズマ処理により、表面から全体(bulk)へ、又は、全体から表面への極性基の再配向が生じ得る。また、プラズマ処理により、表面をシリカ様の状態に変化させる、表面の進行性の酸化も生じ得る。プラズマへの暴露時間の増大に伴い、一般に、粗さの有意な減少も生じ得る。
【0081】
上述のように、本発明による電気活性ポリマー及び関連するコンポジットにより提供される、2以上のRの値を与えるフィーチャ形態学と動的な表面特性との組み合わせは、共同作用的な生物付着防止効果を提供することが期待される。本発明による電気活性ポリマーより提供される、2以上のRの値を与えるフィーチャ形態学と動的な表面特性とのうちの一方又は両方に、プラズマ処理によって追加の共同作用が提供され得る。
【0082】
導電性ポリマーコンポジットによりコーティングされている金属による耐腐食性:
1つのステンレス鋼サンプルは本発明による導電性ポリマーコンポジットによりコーティングし、第2のステンレス鋼コントロールサンプルはコーティングしないままとした。コンポジットは、PPy/SBS30(20重量%のFeCl3/SBS30 THF溶液によりディップコートした; FeCl3/SBS濃度は1:5)(SBS30=クレイトン(登録商標)SBS D1101; 〜31重量%スチレン)からなる。両サンプルを人工海水(Instant Ocean;I.O.)で満たした電気化学セルに配置した。両サンプルを作用電極及び対電極として機能させ、20秒の切換時間、±0.7Vの電位で12時間に渡りお互いに対してサイクルを循環させた。これらの実験には、Ag/AgCl(銀/塩化銀)参照電極を用いた。図11の(a),(b)には、12時間の腐食サイクル後の、本発明によりコーティングした電極と、コーティングしていない電極とをそれぞれ示す。コーティングした電極は明らかな損傷を示さなかったが、コーティングしていない電極は有意な腐食の兆候を示した。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態による、(a)還元(中性)状態及び(b)酸化状態にある、電極層上に配置されている導電性ポリマーコンポジットをそれぞれ示す図。
【図2】本発明の一実施形態による、(a)還元状態及び(b)酸化状態にある、パターン形成電極層上に配置されている複数のフィーチャを有するパターン形成導電性ポリマーによりコーティングされている基板をそれぞれ示す図。
【図3】図2の(a),(b)に示すコーティングされている基板とともに用いられ得る交互嵌合電極パターンの概略図。
【図4】幾つかの代表的なポリマーパターンを示す図。
【図5】図4の(a)〜(d)に示すパターンに基づき得られる代表的なフィーチャ深度、フィーチャ間隔、フィーチャ幅及びその結果としての粗度のテーブル。
【図6】本発明のさらに別の実施形態によるエレクトロウェッティングポンプを示す図。
【図7】蒸留H2O中、キャプティブ・バブル法を用いて、ポリピロール/ポリジメチルシロキサン(PPy/PDMSe)サンプルから取得される接触角データを与える図。
【図8】キャプティブ・バブル法を用いるPPy/PDMSeサンプルの画像。
【図9】ポリマーの還元状態と酸化状態との間で接触角が12度変化することを示す本発明によるポリマーコンポジットを用いて取得される接触角データのグラフ。
【図10】比較可能なアオサ類の胞子(緑藻)付着のデータを示すテーブル。1つの好適なパターン形成表面(BEST)を用いると、コントロールサンプルと比較してアオサ類の定着が86%減少していることが示される。
【図11】12時間の腐食サイクル後の(a)本発明によりコーティングされている電極、(b)未コーティング電極をそれぞれ示す図。未コーティング電極は有意な腐食の兆候を示すが、コーティングされている電極は明白な損傷を示さない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面への取着用の1つ以上のパターン形成ポリマー層と、
該ポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有することと、
該ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減することと、からなる動的なポリマー系コーティング。
【請求項2】
前記ポリマー層は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、1つ以上の方向に有意に伸縮する請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項3】
前記パターンはマイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項4】
前記複数のフィーチャにより2以上の粗度が与えられる請求項3に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項5】
粗度は8以上である請求項4に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項6】
前記複数のフィーチャのうちの少なくとも一部の隣接するフィーチャ間の間隔は2μm未満である請求項4に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項7】
前記ポリマー層は前記導電性ポリマーと混合されている1つ以上の非導電性ポリマーを含むポリマーコンポジットである請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項8】
前記非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン及びポリスルホンのうちの1つ以上を含む請求項7に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項9】
前記導電性ポリマーはポリピロール、ポリ(p−フェニレン)及びポリチオフェン並びにそれらの誘導体のうちの1つ以上を含む請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項10】
前記ポリマー層の下に配置されている電極層を含む請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項11】
前記電極層はパターン形成されており、かつ、該パターンはマイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む請求項10に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項12】
前記パターンは交互嵌合されている請求項11に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項13】
前記パターン形成ポリマー層上に配置されているキャッピング層を含む請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項14】
前記キャッピング層はシリコン、ポリウレタン及びポリイミドから選択される軟質ポリマーを含む請求項13に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項15】
前記パターン形成ポリマー層の複数のフィーチャの間に配置されている固体ポリマー電解質を含む請求項13に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項16】
ボート又は船の水面下の部分に配置されており、かつ、1つ以上の導電性ポリマーを含
有するポリマー層を含む、ポリマー系コーティングと、
該ポリマー層に動的な電気信号を供給するための電源装置と、
該動的な電気信号に応答して、該ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減することと、からなる非毒性生物付着防止システム。
【請求項17】
前記ポリマー層は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、1つ以上の方向に有意に伸縮する請求項16に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項18】
前記水面下の部分は金属を含むことと、
前記電源装置の1つの端子は前記水面下の部分に電気的に接続されていることと、を含む請求項16に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項19】
前記ポリマー層はパターン形成ポリマー層である請求項16に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項20】
前記パターン形成ポリマー層はマイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む請求項19に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項21】
前記複数のフィーチャにより2以上の粗度が与えられる請求項20に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項22】
粗度は8以上である請求項21に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項23】
前記複数のフィーチャのうちの隣接するフィーチャ間の間隔は2μm未満である請求項21に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項24】
前記ポリマー層は前記導電性ポリマーと混合されている1つ以上の非導電性ポリマーを含む請求項16に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項25】
前記非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン及びポリスルホンのうちの1つ以上を含む請求項24に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項26】
前記パターン形成ポリマー層は電気的に絶縁されている複数のフィーチャを含むことと、
前記パターン形成ポリマー層の下に配置されているパターン形成電極層を含むことと、
該電極パターンは交互嵌合されていることと、を含む請求項19に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項27】
流体を含む電解質を流通させるための流体導管と、
複数の電極と、該流体導管の内面に取着され、該複数の電極上に配置されているポリマー層と、該ポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有することと、
該複数の電極と該流体との間又は該複数の電極に対向して配置されている別の電極との間に動的な信号を印加するための電源装置と、該動的な電気信号に応答して、該ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減し、該流体を該流体導管を通じてポンピングすることと、からなるエレクトロウェッティング方式の流体ポンプ。
【請求項28】
集積回路基板を備えることと、該集積回路基板と一体化されていることとを含む請求項27に記載のエレクトロウェッティング方式の流体ポンプ。
【請求項29】
表面を有する金属と、
該表面をコーティングしている導電性ポリマーコンポジットと、該ポリマーコンポジットは非導電性ポリマーと混合されている1つ以上の導電性ポリマーを含むことと、からなる耐腐食性コーティングされている金属。
【請求項30】
前記ポリマーコンポジットは前記金属を包入していることと、
前記非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン及びポリスルホンのうちの1つ以上を含むことと、を含む請求項29に記載の耐腐食性コーティングされている金属。
【請求項1】
表面への取着用の1つ以上のパターン形成ポリマー層と、
該ポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有することと、
該ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減することと、からなる動的なポリマー系コーティング。
【請求項2】
前記ポリマー層は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、1つ以上の方向に有意に伸縮する請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項3】
前記パターンはマイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項4】
前記複数のフィーチャにより2以上の粗度が与えられる請求項3に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項5】
粗度は8以上である請求項4に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項6】
前記複数のフィーチャのうちの少なくとも一部の隣接するフィーチャ間の間隔は2μm未満である請求項4に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項7】
前記ポリマー層は前記導電性ポリマーと混合されている1つ以上の非導電性ポリマーを含むポリマーコンポジットである請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項8】
前記非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン及びポリスルホンのうちの1つ以上を含む請求項7に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項9】
前記導電性ポリマーはポリピロール、ポリ(p−フェニレン)及びポリチオフェン並びにそれらの誘導体のうちの1つ以上を含む請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項10】
前記ポリマー層の下に配置されている電極層を含む請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項11】
前記電極層はパターン形成されており、かつ、該パターンはマイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む請求項10に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項12】
前記パターンは交互嵌合されている請求項11に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項13】
前記パターン形成ポリマー層上に配置されているキャッピング層を含む請求項1に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項14】
前記キャッピング層はシリコン、ポリウレタン及びポリイミドから選択される軟質ポリマーを含む請求項13に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項15】
前記パターン形成ポリマー層の複数のフィーチャの間に配置されている固体ポリマー電解質を含む請求項13に記載の動的なポリマー系コーティング。
【請求項16】
ボート又は船の水面下の部分に配置されており、かつ、1つ以上の導電性ポリマーを含
有するポリマー層を含む、ポリマー系コーティングと、
該ポリマー層に動的な電気信号を供給するための電源装置と、
該動的な電気信号に応答して、該ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減することと、からなる非毒性生物付着防止システム。
【請求項17】
前記ポリマー層は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、1つ以上の方向に有意に伸縮する請求項16に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項18】
前記水面下の部分は金属を含むことと、
前記電源装置の1つの端子は前記水面下の部分に電気的に接続されていることと、を含む請求項16に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項19】
前記ポリマー層はパターン形成ポリマー層である請求項16に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項20】
前記パターン形成ポリマー層はマイクロスケール又はナノスケールの複数のフィーチャを含む請求項19に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項21】
前記複数のフィーチャにより2以上の粗度が与えられる請求項20に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項22】
粗度は8以上である請求項21に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項23】
前記複数のフィーチャのうちの隣接するフィーチャ間の間隔は2μm未満である請求項21に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項24】
前記ポリマー層は前記導電性ポリマーと混合されている1つ以上の非導電性ポリマーを含む請求項16に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項25】
前記非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン及びポリスルホンのうちの1つ以上を含む請求項24に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項26】
前記パターン形成ポリマー層は電気的に絶縁されている複数のフィーチャを含むことと、
前記パターン形成ポリマー層の下に配置されているパターン形成電極層を含むことと、
該電極パターンは交互嵌合されていることと、を含む請求項19に記載の非毒性生物付着防止システム。
【請求項27】
流体を含む電解質を流通させるための流体導管と、
複数の電極と、該流体導管の内面に取着され、該複数の電極上に配置されているポリマー層と、該ポリマー層は1つ以上の導電性ポリマーを含有することと、
該複数の電極と該流体との間又は該複数の電極に対向して配置されている別の電極との間に動的な信号を印加するための電源装置と、該動的な電気信号に応答して、該ポリマー層の接触角は酸化及び還元のうちの1つ以上の際、有意に増減し、該流体を該流体導管を通じてポンピングすることと、からなるエレクトロウェッティング方式の流体ポンプ。
【請求項28】
集積回路基板を備えることと、該集積回路基板と一体化されていることとを含む請求項27に記載のエレクトロウェッティング方式の流体ポンプ。
【請求項29】
表面を有する金属と、
該表面をコーティングしている導電性ポリマーコンポジットと、該ポリマーコンポジットは非導電性ポリマーと混合されている1つ以上の導電性ポリマーを含むことと、からなる耐腐食性コーティングされている金属。
【請求項30】
前記ポリマーコンポジットは前記金属を包入していることと、
前記非導電性ポリマーはエラストマー、ゴム、ポリウレタン及びポリスルホンのうちの1つ以上を含むことと、を含む請求項29に記載の耐腐食性コーティングされている金属。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図8】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図8】
【公表番号】特表2007−529090(P2007−529090A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553362(P2006−553362)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/004972
【国際公開番号】WO2006/025857
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(500228159)ユニバーシティ・オブ・フロリダ・リサーチ・ファンデーション・インコーポレーテッド (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/004972
【国際公開番号】WO2006/025857
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(500228159)ユニバーシティ・オブ・フロリダ・リサーチ・ファンデーション・インコーポレーテッド (13)
【Fターム(参考)】
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