説明

動翼

【課題】高圧側から低圧側への空気の漏出を防止しながらも組み立てや保守点検等の作業性を高めることができる動翼を提供する。
【解決手段】円板状をなして外周に軸方向へ沿って形成された取付溝部111aを周方向に複数有するディスク111と、翼部112bの基端側に設けられた翼根部111aをディスク111の取付溝部111aにディスク111の軸方向に沿ってそれぞれ差し込まれた複数のブレード112とを備えている動翼100において、ディスク111の一方の端面側でディスク111の取付溝部111aとブレード112の翼根部112aとの間の隙間を覆うカバープレート113を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの空気圧縮機等に用いられる動翼に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの空気圧縮機等に用いられる動翼は、従来、例えば、図4に示すように、円板状をなすディスク11の外周に軸方向へ沿って形成されて周方向へ所定の間隔で複数設けられている取付溝部11aにブレード12の翼根部12aが当該ディスク11の軸方向に沿ってそれぞれ差し込まれることより、当該ディスク11の外周に対して周方向にわたって所定の間隔でブレード12の翼部12bが複数立設されており、上記ディスク11の上記取付溝部11aと上記ブレード12の上記翼根部12aとの間にシール材19が充填されることにより、上記ディスク11を境にした高圧PH側(例えば、図4B中、左側)から低圧PL側(例えば、図4B中、右側)への空気の漏出を防ぐようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−014501号公報
【特許文献2】特表2003−501580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したような従来の動翼10においては、以下のような問題があった。
【0005】
(1)ディスク11の取付溝部11aとブレード12の翼根部12aとの間にシール材19を確実に充填して空気の漏出を防ぐ必要があるため、組み立て作業に非常に手間がかかってしまっていた。
【0006】
(2)保守点検等でディスク11からブレード12を取り外すと、ディスク11の取付溝部11aやブレード12の翼根部12aにシール材19が接着してしまっているため、保守点検等の作業に余計な手間がかかってしまっていた。
【0007】
このようなことから、本発明は、高圧側から低圧側への空気の漏出を防止しながらも組み立てや保守点検等の作業性を高めることができる動翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係る動翼は、円板状をなして外周に軸方向へ沿って形成された取付溝部を周方向に複数有するディスクと、翼部の基端側に設けられた翼根部を前記ディスクの前記取付溝部に当該ディスクの軸方向に沿ってそれぞれ差し込まれた複数のブレードとを備えている動翼において、前記ディスクの一方の端面側で当該ディスクの前記取付溝部と前記ブレードの前記翼根部との間の隙間を覆うカバー手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
第二番目の発明に係る動翼は、第一番目の発明において、前記カバー手段が、前記ディスクの一方の端面側で当該ディスクの前記取付溝部と前記ブレードの前記翼根部との間の隙間を覆うように当該ディスクの一方の端面側に配設されるカバープレートを備えていることを特徴とする。
【0010】
第三番目の発明に係る動翼は、第二番目の発明において、前記カバー手段の前記カバープレートを前記ディスクの一方の端面と同一平面上に位置させるように当該カバープレートを収める収納溝部が当該ディスクの一方の端面に形成されていることを特徴とする。
【0011】
第四番目の発明に係る動翼は、第二番目又は第三番目の発明において、前記カバー手段が、さらに、前記カバープレートに基端を連結されて先端側を当該ディスクの他方の端面側の前記ブレードの前記翼根部に係合させるように当該ディスクの前記取付溝部と当該ブレードの当該翼根部との間の隙間を貫通する係合プレートを備えていることを特徴とする。
【0012】
第五番目の発明に係る動翼は、第二番目又は第三番目の発明において、前記カバー手段の前記カバープレートが、前記ブレードの前記翼根部に一体的に形成されていることを特徴とする。
【0013】
第六番目の発明に係る動翼は、第一番目から第五番目の発明のいずれかにおいて、前記ディスクの前記取付溝部と前記ブレードの前記翼根部との間の前記隙間に配設されて当該ブレードの当該翼根部を当該ディスクの当該取付溝部に押し付けるように付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる動翼によれば、ディスクの一方の端面側でディスクの取付溝部とブレードの翼根部との間の隙間をカバー手段により覆うようにしたので、ディスクを境にした高圧側から低圧側への空気の漏出を防止しながらも組み立てや保守点検等の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る動翼の主な実施形態の要部の概略構成図である。
【図2】図1の動翼の組み立て説明図である。
【図3】本発明に係る動翼の他の実施形態の要部の概略構成図である。
【図4】従来の動翼の一例の要部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る動翼の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
[主な実施形態]
本発明に係る動翼の主な実施形態を図1,2に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、円板状をなすディスク111の外周には、軸方向へ沿って形成された取付溝部111aが周方向へ所定の間隔で複数設けられている。前記ディスク111の前記取付溝部111aには、翼部112bの基端側に翼根部112aを設けられたブレード112の当該翼根部112aが当該ディスク111の軸方向に沿ってそれぞれ差し込まれることにより、当該ディスク111の外周に対して周方向にわたって所定の間隔で当該ブレード112の上記翼部112bが複数立設されている。
【0019】
前記ディスク111の一方の端面(図1A側、図1C中、左側(高圧PH側))の前記取付溝部111aの周囲には、当該取付溝部111aを内側に位置させる範囲で当該ディスク111の内側に窪んだ収納溝部111bがそれぞれ形成されている。前記ブレード112の前記翼根部112aの他方側(図1B側、図1C中、右側(低圧LH側))の端面の底寄りには、係合溝部112cが形成されている。
【0020】
前記ディスク111の前記収納溝部111bには、当該ディスク111の前記取付溝部111aと前記ブレード112の前記翼根部112aとの間の隙間を覆う平板状をなすカバープレート113が当該ディスク111の一方の端面と同一平面上(面一)に位置するように入り込んでいる。
【0021】
前記カバープレート113の背面側には、前記ブレード112の前記翼根部112aの底面と前記ディスク111の前記取付溝部111aとの間を貫通して先端側を当該ブレード112の前記係合溝部112c側へ位置させた係合プレート114の基端側が連結されている。前記係合プレート114の先端側は、前記ブレード112の前記翼根部112aの他方の端面と同一平面上(面一)に位置するように前記係合溝部112c内に曲折して入り込んで当該翼根部112aに係合している。
【0022】
前記ディスク111の前記取付溝部111aと前記係合プレート114との間には、付勢手段である板ばね115が介在しており、当該板ばね115は、前記ブレード112の前記翼根部112aを当該ディスク111の径方向で当該取付溝部111aに押し付けるように当該係合プレート114を介して当該ブレード112の当該翼根部112aを付勢している。
【0023】
なお、本実施形態においては、前記カバープレート113、前記係合プレート114等によりカバー手段を構成するようにしている。
【0024】
このような構造をなす本実施形態に係る動翼100は、図2に示すように、前記ディスク111の前記取付溝部111aに前記ブレード112の前記翼根部112aを当該ディスク111の軸方向に沿って差し込んだ後、前記係合プレート114及び前記板ばね115を当該ディスク111の当該取付溝部111aと当該ブレード112の当該翼根部112aの底面との間に差し込んで(図2A参照)、上記板ばね115を当該係合プレート114と当該ディスク111の当該取付溝部111aとの間に位置させると共に、当該係合プレート114の先端側を当該ディスク111の当該取付溝部111aと当該ブレード112の当該翼根部112aの底面との間から外側へ突出させ(図2B参照)、前記カバープレート113を当該ディスク111及び当該ブレード112の当該翼根部112aの一方の端面に密接させるように当該係合プレート114の先端側を当該ブレード112の前記係合溝部112c内に折り込んで当該カバープレート113を当該ディスク111の前記収納溝部111b内に収めることにより(図2C参照)、容易に組み立てることができる。
【0025】
このようにして組み立てられる動翼100においては、ディスク111を回転させることにより、当該ディスク111の一方の端面側(図1A側、図1C中、左側)へ他方の端面側(図1B側、図1C中、右側)の空気を圧縮して送り出すことができる。
【0026】
このとき、前記ディスク111の一方の端面(図1A側、図1C中、左側(高圧PH側))の前記収納溝部111b内に当該ディスク111の前記取付溝部111aと前記ブレード112の前記翼根部112aとの間の隙間を覆うように前記カバープレート113が密接しているので、当該ディスク111を境にした高圧PH側(図1A側、図1C中、左側)から低圧PL側(図1B側、図1C中、右側)への空気の漏出が防止される。
【0027】
また、前記カバープレート113が前記ディスク111の一方の端面と同一平面上(面一)に位置するように前記収納溝部111b内に入り込むと共に、前記係合プレート114の先端側が前記ブレード112の前記翼根部112aの他方の端面と同一平面上(面一)に位置するように前記係合溝部112c内に曲折して入り込んでいることから、回転時に当該カバープレート113及び当該係合プレート114が抵抗となってしまうことはない。
【0028】
さらに、動翼100が高速度で回転しているとき、前記ブレード112は、当該回転に伴う遠心力によって、前記翼根部112aが前記ディスク111の径方向で前記取付溝部111aに押し付けられ、動翼100が低速度で回転しているとき、前記ブレード112は、前記板ばね115の付勢力によって、前記翼根部112aが前記ディスク111の径方向で前記取付溝部111aに押し付けられることにより、回転中における振動(ガタつき)が防止される。
【0029】
そして、保守点検等を行う場合には、上述した組み立て手順と逆の手順を行うことにより、前記ディスク111の前記取付溝部111aから前記ブレード112、前記カバープレート113、前記係合プレート114、前記板ばね115を取り外すことが容易にできる。
【0030】
したがって、本実施形態に係る動翼100によれば、高圧PH側から低圧PL側への空気の漏出を防止しながらも組み立てや保守点検等の作業性を高めることができる。
【0031】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、前記カバープレート113を前記係合プレート114によって前記ブレード112の前記翼根部112aに取り付けるようにしたが、他の実施形態として、例えば、図3に示すように、前記ディスク111の一方の端面側(図3B側、図3C中、左側(高圧PH側))の上記翼根部112aに、前記取付溝部111aと前当該翼根部112aとの間の前記隙間を覆うカバー手段であるカバープレート212dを一体的に形成したブレード212とすることにより、前述したような係合プレート114や係合溝部112c等を省略できるようにすることも可能である。
【0032】
また、前述した実施形態においては、前記ディスク111の一方の端面側(図1A側、図3B側、図1C及び図3C中、左側(高圧PH側))に前記カバープレート113,213を配設するようにしたが、他の実施形態として、例えば、ディスクの他方の端面側(低圧PL側)にカバープレートを配設するようにすることも可能である。
【0033】
しかしながら、前述した実施形態のように、前記ディスク111の一方の端面側(図1A側、図3B側、図1C及び図3C中、左側(高圧PH側))に前記カバープレート113,213を配設する方が、高圧PH側から低圧PL側への空気の漏出防止効果がより高いので好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかる動翼は、高圧側から低圧側への空気の漏出を防止しながらも組み立てや保守点検等の作業性を高めることができるので、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
100 動翼
111 ディスク
111a 取付溝部
111b 収納溝部
212 ブレード
112a 翼根部
112b 翼部
112c 係合溝部
113,213 カバープレート
114 係合プレート
115 板ばね
200 動翼
212 ブレード
212d カバープレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状をなして外周に軸方向へ沿って形成された取付溝部を周方向に複数有するディスクと、
翼部の基端側に設けられた翼根部を前記ディスクの前記取付溝部に当該ディスクの軸方向に沿ってそれぞれ差し込まれた複数のブレードと
を備えている動翼において、
前記ディスクの一方の端面側で当該ディスクの前記取付溝部と前記ブレードの前記翼根部との間の隙間を覆うカバー手段を備えている
ことを特徴とする動翼。
【請求項2】
請求項1に記載の動翼において、
前記カバー手段が、前記ディスクの一方の端面側で当該ディスクの前記取付溝部と前記ブレードの前記翼根部との間の隙間を覆うように当該ディスクの一方の端面側に配設されるカバープレートを備えている
ことを特徴とする動翼。
【請求項3】
請求項2に記載の動翼において、
前記カバー手段の前記カバープレートを前記ディスクの一方の端面と同一平面上に位置させるように当該カバープレートを収める収納溝部が当該ディスクの一方の端面に形成されている
ことを特徴とする動翼。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、
前記カバー手段が、さらに、前記カバープレートに基端を連結されて先端側を当該ディスクの他方の端面側の前記ブレードの前記翼根部に係合させるように当該ディスクの前記取付溝部と当該ブレードの当該翼根部との間の隙間を貫通する係合プレートを備えている
ことを特徴とする動翼。
【請求項5】
請求項2又は請求項3において、
前記カバー手段の前記カバープレートが、前記ブレードの前記翼根部に一体的に形成されている
ことを特徴とする動翼。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の動翼において、
前記ディスクの前記取付溝部と前記ブレードの前記翼根部との間の前記隙間に配設されて当該ブレードの当該翼根部を当該ディスクの当該取付溝部に押し付けるように付勢する付勢手段を備えている
ことを特徴とする動翼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−193682(P2012−193682A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58782(P2011−58782)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】