説明

勾配の影響を補償し方位角を演算する地磁気センサー、およびその演算方法

【課題】斜め状態であっても正確な方位角が演算できる地磁気センサーを提供する。
【解決手段】本発明に係る地磁気センサーは、地磁気に応じる所定の電圧値を出力する地磁気測定部と、水平状態を基準にして斜め程度を示すピッチ角およびロール角を測定する加速度センサーと、加速度センサーで測定されたピッチ角およびロール角を用いて地磁気測定部から出力される電圧値を補償したあと所定範囲の値で正規化し、方位角の演算を行なう制御部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地磁気センサーに関し、詳細には加速度センサーを含んで現在の斜め程度を測定した後、その斜め程度を方位角測定に反映することでより正確な方位角が抽出できる地磁気センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
地磁気センサーとは、人が感じられない地球磁気の強さおよび方向を測定する装置のことを意味する。特に、フラックスゲートを用いた地磁気センサーのことをフラックスゲートセンサーと呼ぶ。
フラックスゲート型地磁気センサーとは、パーマロイのような材料を磁心として使用し駆動コイルにより励起磁場を加え、その磁心の磁気飽和および非線形磁気特性を用いて外部磁場に比例する2次高調波成分を測定することにより、外部磁場のサイズおよび方向が測定する装置のことを指す。
【0003】
係るフラックスゲート型地磁気センサーは1930年代の末に開発されたもので、他の形態の地磁気センサーと比較すると、感度がよく、経済的であり、相対的に小型で製造できる長所を持つ。また、電力消耗が少なく、出力信号の安定度も優れているため、微弱磁界の検出、地球の絶対方向計測と共に鉱脈探査、標的探知、そして人工衛星の姿勢制御および宇宙探査用に至る民需用および軍事用まで幅広く使用されており、現在も性能効能のための研究がなされている。
【0004】
最近になって、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術が発展するにつれ、これを用いて低消費電力型の超小型フラックスゲートセンサーの開発も試みている。
図1は、従来のフラックスゲート型地磁気センサー10の一般的な構成を示したブロック図である。同図を参照すると、従来の地磁気センサーは、駆動信号生成部11、地磁気測定部12、信号処理部13、および制御部14を含む。
【0005】
駆動信号生成部11は、地磁気測定部12を駆動させることのできる電気的な信号を印加する。係る電気的な信号は一般的にパルス波およびその状態が反転されたパルス波を用いる。
地磁気測定部12は、3軸フラックスゲートを使用することはできるが、携帯電話のような小型装置に装着されるためには地磁気センサー10そのものが小型でなければならないので、2軸フラックスゲートを用いることが好ましい。2軸フラックスゲートを使用する場合、地磁気測定部12は相互直交している2つのフラックスゲートを含む。さらに、各フラックスゲートは四角リング、またはバー状の磁性体コア、磁性体コアに捲線された駆動コイルおよび検出コイルを含む。駆動コイルは駆動信号生成部11から出力された電気的な信号を受信し磁性体コアを励磁させる役割を果す一方、検出コイルは駆動コイルの駆動により生じた磁気から誘導された起電力を検出する役割を果す。
【0006】
一方、信号処理部13は、検出コイルで外部磁界の強さに比例する電圧成分が誘導されれば、これを増幅、チョッピングする一連の処理を行なった後、X軸およびY軸フラックスゲートそれぞれの電圧値を出力する。
加速度センサー15は地磁気測定部12の如き相互直交している2つのX軸(ロール軸)およびY軸(ピッチ軸)フラックスゲートで具現され、ピッチ角およびロール角を演算する。ピッチ角とは、地磁気センサー10が置かれた平面上で相互直交するX軸およびY軸の中でY軸を中心に回転させた場合、X−Y平面との差異角を意味する。ピッチ角とは、X軸を中心に回転させた場合、X−Y平面との差異角を意味する。
【0007】
制御部14は、このようなX軸およびY軸フラックスゲート電圧値を所定の正規化因子を使用し所定の範囲値で正規化した後、所定の数式に代入して方位角を演算する。正規化因子とは、センサーの出力値を+1と-1との間の値でマッピングする正規化過程において必要な因子であって、バイアス因子およびスケール因子などがこれに該当する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
係る正規化因子は、地磁気センサを一回転させるたびに測定される地磁気センサー値を記録した後その最大値および最小値を決め、所定の数式で代入し演算する。地磁気センサーを回転させながら最大値および最小値を求めることで正規化因子が決定される過程のことを補正作業という。
しかし、補正作業を行なっている間に地磁気センサーが斜めになると、その斜め程度によって地磁気センサーの出力値が異なってくるため、誤った最大値および最小値が測定される恐れがある。即ち、方位角演算に必要な正規化因子は補正作業中に生じる斜め程度にその影響を受ける。
【0009】
従って、正規化因子を算出し正しい方位角を演算するためには、水平状態で地磁気センサーを回転させながら最大値、最小値、および平均値を測定しなければならない。しかし、回転する間に揺れる恐れもあり、また携帯電話などに内蔵されている場合に装着位置が斜めになる恐れもあることで、誤った最大値および最小値が測定されてしまう。これにより、誤った正規化因子が演算され、方位角に誤差が発生してしまう。
【0010】
このように、補正時に斜め角度で測定されることにより補正後に生じる方位角の測定誤差は、表1の通りである。
【0011】
【表1】

【0012】
表1のように斜め角度が大きければ、補正後に発生する測定誤差も大きくなる。よって、一定の角度以上に傾斜していると、地磁気センサーは正しい方位を表示できなくなる問題点を抱えている。
本発明は前述した問題点を解決するために案出されたもので、本発明の目的は、現の斜め程度を測定・反映して正規化因子への補正を行なうことにより、勾配が考慮された正規化が行なわれる。これによって正確な方位角が演算できる地磁気センサー、正規化方法、および方位角測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る地磁気センサーは、前記地磁気センサーがなしている平面上で相互直交しているX軸及びY軸方向に形成された2軸フラックスゲートを備え、地磁気に対応する前記2軸フラックスゲートそれぞれの電圧値を出力する地磁気測定部と、
水平状態を基準にして斜め程度を示すピッチ角及びロール角を測定する加速度センサーと、
前記地磁気センサーが所定の回数で回転しながら測定された前記X軸及びY軸フラックスゲートの測定値にそれぞれ前記ピッチ角及びロール角を反映して補償し、補償された値の中で最大値及び最小値を用いて正規化因子を演算した状態で、方位角のセンシングが試みられると、前記地磁気測定部で出力される電圧値を前記演算された正規化因子を用いて所定範囲の値に正規化し、正規化された値を用いて方位角を演算する制御部とを含む。
【0014】
ユーザが地磁気センサーの正規化のために回転する間に水平状態を保てず揺れる場合、または携帯電話に内蔵した際その装着位置の限界にぶつかった場合に、その揺れによる影響を補償することで正確な正規化因子を抽出することができる。また、これを用いて実際に測定された地磁気電圧値を正規化すると、その斜めによる影響が補償されるため正確な方位角が演算できる。制御部は、地磁気センサーが所定回数で回転しながら測定したX軸およびY軸フラックスゲートの測定値にそれぞれ前記ピッチ角およびロール角を反映して補償したあと、補償された値の中で最大値および最小値を用いて正規化に使用される正規化因子(normalizing factor)の演算を行なうことにより、斜めによる影響が補償された正規化因子を得ることができる。
【0015】
好ましくは、前記制御部は次式に基づいてX軸およびY軸の電圧値をそれぞれ補償する。
Xc = Xs / cos (θ+λ)
Yc = Ys / cos (φ+λ)
ここで、XcおよびYcはそれぞれ補償されたX軸およびY軸の電圧値、
XsおよびYsはそれぞれX軸およびY軸の実際電圧値、
θは前記ピッチ角、
φは前記ロール角、
λは伏角。
【0016】
好ましくは、前記正規化因子は次式で表されるバイアス因子およびスケール因子である。
【0017】
【数1】

【0018】
ここで、XbiasおよびYbiasはそれぞれX軸およびY軸電圧値のバイアス因子、
XscalおよびYscalはそれぞれX軸およびY軸電圧値のスケール因子、
XmaxおよびXminはそれぞれX軸電圧値の最大値および最小値、
YmaxおよびYminはそれぞれY軸電圧値の最大値および最小値。
好ましくは、前記制御部は、前記正規化因子を次式に代入し、前記X軸およびY軸フラックスゲート電圧値を正規化する。
【0019】
【数2】

【0020】
ここで、XおよびYはX軸およびY軸フラックスゲートの電圧値、
XnormおよびYnormはそれぞれX軸およびY軸フラックスゲートの正規化された電圧値、
λは伏角。
一方、地磁気センサーの実際出力値を所定範囲でマッピングするための正規化方法は、(a)前記地磁気センサーを所定回数で回転させながら地磁気に応じる所定の電圧値を測定するステップと、(b)前記(a)ステップを行なっている間に前記地磁気センサーのピッチ角およびロール角を測定するステップと、(c)前記ピッチ角およびロール角を反映して前記電圧値を補償するステップと、(d)前記補償された電圧値の中から最大値および最小値を用いて、所定の正規化因子を演算するステップと、(e)前記正規化因子を用いて前記地磁気電圧値を正規化するステップと、を含む。
【0021】
好ましくは、前記(a)ステップは、前記地磁気センサーがなしている平面上で相互直交しているX軸及びY軸方向に形成された2軸フラックスゲートを用いて前記地磁気に対応する電圧値を得ることができる。
この場合、前記(a)ステップは、前記2軸フラックスゲートに駆動パルス信号を印加するステップと、前記駆動パルス信号により発生された地磁気に対応する前記2軸フラックスゲートそれぞれの電圧値を出力するステップと、を更に含むことができる。
【0022】
前記(c)ステップは、次式を用いて前記X軸およびY軸フラックスゲート電圧値を補償することが好ましい。
Xc = Xs / cos (θ+λ)
Yc = Ys / cos (φ+λ)
ここで、XSおよびYSはそれぞれX軸およびY軸の実際電圧値、
XcおよびYcはそれぞれ補償されたX軸およびY軸の電圧値、
θは前記ピッチ角、
φは前記ロール角、
λは伏角。
【0023】
好ましくは、前記(d)ステップで演算される前記正規化因子は、次式で表されるバイアス因子およびスケール因子である。
【0024】
【数3】

【0025】
ここで、XbiasおよびYbiasはそれぞれX軸およびY軸電圧値のバイアス因子、
XscalおよびYscalはそれぞれX軸およびY軸電圧値のスケール因子、
XmaxおよびXminはそれぞれX軸電圧値の最大値および最小値、
YmaxおよびYminはそれぞれY軸電圧値の最大値および最小値。
好ましくは、前記(e)ステップは、前記正規化因子を次式に代入して前記X軸およびY軸フラックスゲート電圧値を正規化する。
【0026】
【数4】

【0027】
ここで、XおよびYはX軸およびY軸フラックスゲートの電圧値、
XnormおよびYnormはそれぞれX軸およびY軸フラックスゲートの正規化された電圧値、
λは伏角。
斜めによる影響が補償された正規化因子を用いて正規化を行なうことにより、方位角を演算する際斜めによる誤差を抑えることができる。 本発明は、地磁気センサーを用いて方位角を測定する方法を提供する。この方法は以下のステップを含む。
【0028】
(a)前記地磁気センサーを所定の回数で回転させながら地磁気に応じる所定の電圧値を測定するステップ、
(b)前記(a)ステップを行なっている間に前記地磁気センサーのピッチ角およびロール角を測定するステップ、
(c)前記ピッチ角およびロール角を反映して前記電圧値を補償するステップ、
(d)前記補償された電圧値の中で最大値および最小値を用いて、所定の正規化因子を演算するステップ、
(e)前記正規化因子を用いて前記地磁気電圧値を正規化するステップ、
(f)正規化された前記地磁気電圧値を用いて方位角を演算するステップ。
【0029】
このようにして正規化因子を算出すれば斜めによる影響が補償されるので、斜め環境においても正確な方位角が演算できるようになる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、ユーザが地磁気センサーの正規化のために回転する間に水平状態を保てず揺れる場合、または携帯電話に内蔵した際その装着位置の限界にぶつかった場合に、その揺れによる影響を補償することで正確な正規化因子を抽出することができる。また、これを用いて実際に測定された地磁気電圧値を正規化すると、その斜めによる影響が補償されるため正確な方位角が演算できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照して本発明の好適な実施例を詳述する。
図2は本発明の一実施の形態に係る地磁気センサー100の構成を示したブロック図である。同図によると、本地磁気センサー100は、駆動信号生成部110、地磁気測定部120、信号処理部130、制御部140、加速度センサー150、およびメモリ160を含む。
【0032】
駆動信号生成部110は、地磁気測定部120を駆動させる駆動信号を生成して出力する。駆動信号として、一般にパルス波型および反転パルス波型が使用される。即ち、駆動信号生成部110はパルス発生部111およびパルス増幅部112を含むことによって、パルス発生部111で生成され出力されたパルスをパルス増幅部112が増幅および反転増幅して出力する。
【0033】
パルス増幅部112は数個の増幅器および反転器を使用することによりパルス発生部111を介して出力されたパルスを増幅および反転増幅することで、反対の位相を有する2つのパルス信号を出力する。
地磁気測定部120は、相互直交しているX軸およびY軸上に形成される2つのX軸およびY軸フラックスゲートを含んでいる。地磁気測定部120は、X軸およびY軸フラックスゲートにそれぞれ伝達されたパルス信号および反転パルス信号により駆動され、その駆動によって生じた起電力に対応される検出信号を出力する。図2において、X軸およびY軸フラックスゲートは四角リング状の2つの磁性体コアがそれぞれX軸およびY軸方向について長手方向に設けられており、磁性体コアそれぞれには駆動コイルおよび検出コイルが捲線されている。駆動コイルに駆動パルスが印加されれば、X軸およびY軸フラックスゲートに磁気が発生し、これによる誘導気電力を、検出コイルを介して検出できるようになる。
【0034】
一方、信号処理部130は、係る誘導起電力を一定の処理過程を経てX軸およびY軸フラックスゲートそれぞれの電圧値に変化し出力を行なう。詳細に、信号処理部130はチョッピング回路部131、第1増幅部132、フィルタ133、第2増幅部134、およびA/Dコンバーター135を含む。
地磁気測定部120から出力されたX軸およびY軸フラックスゲートに誘導された電気的信号は、チョッピング回路部131が内蔵された数個のスイッチを制御しチョッピングされる。
【0035】
チョッピングされた電気的な信号は、第1増幅部132で差動増幅された後、フィルタ133を介して一定範囲の信号のみをフィルタリングし、第2増幅部134で最終的に増幅される。増幅された信号はA/Dコンバーター135でデジタル電圧値に変換して出力される。
一方、加速度センサー150は、相互直交しているX軸およびY軸方向に設けられたX軸加速度センサーおよびY軸加速度センサーを含み、各軸の加速度センサーで測定された電圧値からピッチ角およびロール角を演算する。
【0036】
図3において、係る地磁気測定部120および加速度センサー160が内蔵された地磁気センサー100上で相互直交するX軸およびY軸を示している。X軸を基準として回転させた場合、X−Y平面との角度が次第に大きくなるが、係る角度をロール角(φ)とし、X軸はロール軸と言い換える。一方、Y軸を基準として回転させた場合、X−Y平面との角度が次第に大きくなるが、係る角度をピッチ角(θ)とし、Y軸はピッチ軸と言い換える。
【0037】
なお、メモリ160には加速度センサー150で測定されたピッチ角およびロール角、現位置での伏角、地磁気測定部120が所定の回数回転しながら測定する電圧値などに対する情報が保存されている。
制御部140はメモリ160に保存された情報を所定数式に代入し方位角を演算する。一方、地磁気測定部120で測定された地磁気電圧値はそれぞれsin関数およびcos関数で表れるが、制御部140は方位角を演算するために測定された実際の地磁気電圧値を所定範囲の値でマッピングさせる正規化過程を行なう必要がある。この際、正規化するためには、所定の正規化因子が用いられる。正規化因子としは一般にバイアス因子およびスケール因子が用いられる。係る正規化因子は一般に次式に基づいて演算される。
【0038】
【数5】

【0039】
なお、XbiasおよびYbiasはそれぞれX軸およびY軸電圧値のバイアス因子、 XscalおよびYscalはそれぞれX軸およびY軸電圧値のスケール因子、XmaxおよびXminはそれぞれX軸電圧値の最大値および最小値、そして、YmaxおよびYminはそれぞれY軸電圧値の最大値および最小値である
一方、前記数5の式で用いられる各軸の電圧値の最大値および最小値は、地磁気センサー100を水平状態で所定の回数回転させながら測定された電圧値をメモリ160に記録した後、そのうちから最大電圧値および最小電圧値を決める。
【0040】
図4には本発明に係る地磁気センサー100が内蔵された携帯電話上で方位角を測定するために携帯電話を回転させた場合、基準となる回転軸が示されている。即ち、同図においてX−Y平面に垂直しているZ軸を基準に携帯電話を回転させながら、測定されたX軸およびY軸の電圧値のなかでそれぞれに対する最大値および最小値が決められる。この際、ピッチ角およびロール角はそれぞれ0°である状態、即ち、水平状態でなければならない。しかし、前述のように回転過程で揺れることにより水平状態を保つことは難しい。
【0041】
図5では、回転過程において水平状態を保つ場合の最大地磁気電圧値、および斜め誤差が生じた場合の最大地磁気電圧値の差異が示されている。即ち、図4にては、Z軸を基準にして所定角度ずつ回転させた場合、水平状態が保たれた状態での実際測定値がYmであれは、伏角(λ)の影響を考慮してY軸の最大地磁気電圧はYmax=Ym/cosλのように表れる。しかし、所定のピッチ角(θ)分の斜め誤差が生じた場合、実際のY軸地磁気電圧値はYmで測定される。これに応じて最大の地磁気電圧値は Ymax=Ya/cosλのように演算される。従って、斜めによってほぼ(Ym - Ya)/ cosλ程度の誤差が発生されるようになる。同様、最小値についても実際の測定電圧値と水平状態にける測定電圧値との差異により所定範囲の誤差が生じてしまう。結果的には、誤った最大値および最小値を使用しオフセット因子およびスケール因子のような正規化因子が演算され、正規化結果にもその影響を及ぼす。
【0042】
従って、制御部140は加速度センサー150においてピッチ角およびロール角が0°でない状態、即ち斜め状態であると感知すれば、斜めによる影響を補償すべきである。このため、図5で示したよう、 YaをYm にマッピングすることによって最大の地磁気値が Ymaxに近づけるよう補償できる。
即ち、地磁気センサー100をZ軸を基準にして所定角度ずつ回転させながら、測定される各Ya値を斜め影響を反映して補償した後、メモリ160に記録する。制御部140は地磁気センサー100の回転が完了されれば記録されたY軸の電圧値の中で最大値および最小値を決めて正規化因子を演算する。
【0043】
一方、図5はピッチ角が変化する方向に向って斜めになっている状態が示されているが、これはロール軸が変化する方向へ傾斜された場合にも同じく適用され、X軸フラックス
ゲート電圧値の最大値および最小値が決められる。
以上のように、勾配、即ちピッチ角およびロール角を反映して地磁気測定部120の出力値を補償する方法は次の通りである。
【0044】
【数6】

【0045】
なお、XcおよびYc はそれぞれ補償されたX軸およびY軸の電圧値、XsおよびYsはそれぞれX軸およびY軸の実際電圧値、θはピッチ角、φはロール角、そしてλは伏角を示す。
前記数6の式に基づいて補償されたX軸およびY軸の電圧値が演算されれば、その値をメモリ160にすべて記録した後、地磁気センサー100の回転が終了されれば記録された値の中で最大値および最小値を決める。
【0046】
決められた最大値および最小値を数5の式に代入することで、X軸およびY軸フラックスゲート電圧値の正規化因子を演算する。
前述のように、正規化因子とは、X軸およびY軸フラックスゲートの実際出力値を所定範囲の値でマッピングさせる正規化を行なうため求められる因子のことを意味する。数15の式によって求められた正規化因子であるバイアス因子とスケール因子とを用いて正規化が行なわれる。その数式は次の通りである。
【0047】
【数7】

【0048】
なお、XおよびYはX軸およびY軸はフラックスゲートの電圧値、XnormおよびYnormはそれぞれX軸およびY軸フラックスゲートの正規化された電圧値、そしてλは伏角を示す。
前記数7の式に基づいて正規化が行なわれると、地磁気測定部120の出力値は所定範囲の値でマッピングされる。
【0049】
一方、係る正規化方式は、加速度センサー150においても活用できる。即ち、ピッチ角およびロール角を測定するために、加速度センサー150はまずX軸およびY軸加速度センサーの出力値を所定範囲の出力値でマッピングさせる正規化処理を行なう。このため、X軸およびY軸加速度センサー出力値に対する最大値および最小値を決めて正規化因子を求め、これに基づいて正規化処理を行なう。
【0050】
結果的に求められるピッチ角およびロール角を数式で表すと次の通りである。
【0051】
【数8】

【0052】
なお、Xtnormは正規化されたX軸加速度センサーの出力値、Ytnormは正規化されたY軸加速度センサーの出力値、θはピッチ角、そしてφはロール角を示す。係る演算過程を介してピッチ角およびロール角が測定されれば、制御部140はこれを方位角演算過程で利用する。一方、斜め程度を測定する時にこのような演算過程を行なわず、手動で最大90°、最小0°のように設定することもできる。
【0053】
このように、補償された正規化因子を用いて正規化がなされることで方位角が演算できる。2軸フラックスゲートを用いる場合、制御部140はX軸およびY軸がなしている平面に垂直な仮想のZ軸の出力の演算を行なって方位角を演算する。
即ち、方位角は3つの軸で表れる3次元空間値であって、制御部140が測定された結果に基づいて方位角を求める際には3軸の出力値が必要である。係る仮想の正規化されたZ軸の出力値は次式に基づいて演算できる。
【0054】
【数9】

【0055】
なお、Zは仮想のZ軸電圧値、ZnormはZ軸電圧値を正規化した値を示す。
係る方法で仮想のZ軸電圧値の正規化値を演算すると、制御部140では最終的に次式に基づいて方位角(a)を演算する。
【0056】
【数10】

【0057】
最終に演算された方位角(a)は、地磁気センサー100が斜め状態に置かれているとしても、その斜め程度が反映され正規化された出力値を演算するため、斜めによる誤差を抑えることができる。
図6は本発明に係る地磁気センサー100で方位角を測定する方法を説明するための流れ図である。同図によると、本地磁気センサー100を用いて方位角を測定するためにはまず、地磁気センサー100を水平状態で所定の回数回転させる(S610)。
【0058】
一方、地磁気センサー100が回転する間に駆動信号生成部110は地磁気測定部120を駆動させるための駆動パルス信号を生成して地磁気測定部120に印加する。地磁気測定部120は地磁気センサー100が所定の角度回転するたびに駆動パルス信号に応じるX軸およびY軸フラックスゲート電圧値を出力し、制御部140はこのような電圧値をメモリ160に格納する(S620)。
【0059】
次に、加速度センサー150において勾配、即ち、ピッチ角およびロール角を測定する(S630)。ユーザが水平状態に合わせて回転させようとしても、回転過程で斜め誤差が生じる場合があり得るため、ピッチ角およびロール角を測定し水平状態が保たれているのかを判断することができる(S640)。
斜め誤差が発生すれば、制御部140は測定されたピッチ角およびロール角を用いて地磁気センサー値を補償する(S650)。この場合、前述した数6によって補償される。
【0060】
方位角を測定するための回転が終了されるときまで、地磁気電圧値の測定および補償過程を行なってメモリ160に格納し、1回転が完了されたと判断されれば(S660)、メモリ160に記録された電圧値の中で最大値および最小値を決める(S670)。図6では、1回転させる場合につき図示したが、より精密な測定のために2回転以上回転させながら補償過程を行なうことも可能である。
【0061】
次に、決定された最大値および最小値を用いて正規化過程が行なわれる(S680)。まず、正規化因子であるバイアス因子およびスケール因子を算出する(S681)。正規化因子は前述の数5の式で示した通りである。
正規化因子が得られると、制御部140はこれを数7の式に代入して実際の地磁気センサー値を正規化する(S683)。これによって、斜めの影響を補償し正規化がなされる。係る正規化方法は加速度センサー150を用いてピッチ角およびロール角を測定する過程にも使用され得る。
【0062】
最終的に、正規化された電圧値を用いて方位角を演算する過程が行なわれる(S690)。制御部140はメモリ160に記録されたピッチ角、ロール角、および伏角に対する情報を用いて前述した数9の式に基づいて仮想のZ軸の正規化された出力値を演算する。それから、制御部140は仮想のZ軸の正規化された出力値および他の情報を用いて数10の式に基づいて方位角を演算する。
【0063】
係る方法で、正規化因子を算出すれば斜めによる影響が補償されるので、斜め環境においても正確な方位角が演算できるようになる。
以上、図面を参照して本発明の好適な実施形態を図示および説明してきたが本発明の保護範囲は、前述の実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物にまで及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る地磁気センサーは斜め状態に置かれても正確な方位角が測定できるため、車、携帯装備などで用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】地磁気センサーの一般的な構成を示したブロック図である。
【図2】本発明に係る地磁気センサーの構成を示したブロック図である。
【図3】本発明に係る地磁気センサー上でピッチ角およびロール角測定の基準となる2つの軸を示した模式図である。
【図4】本発明に係る地磁気センサーが内蔵された携帯電話状のピッチ角およびヨー角測定の基準となる2つの軸を示した模式図である。
【図5】地磁気センサーを用いて方位角を測定する間に生じる斜め誤差を説明するための模式図である。
【図6】本発明に係る地磁気センサーで斜め誤差を反映し正確な方位角を演算する方法を説明するための流れ図である。
【符号の説明】
【0066】
11,110 駆動信号生成部
12,120 地磁気測定部
13,130 信号処理部
14,140 制御部
150 加速度センサー
160 メモリ
111 パルス発生部
112 パルス増幅器
131 チョッピング回路部
132 第1増幅部
133 フィルタ
134 第2増幅部
135 A/Dコンバーター
100 地磁気センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地磁気センサーであって、
前記地磁気センサーがなしている平面上で相互直交しているX軸及びY軸方向に形成された2軸フラックスゲートを備え、地磁気に対応する前記2軸フラックスゲートそれぞれの電圧値を出力する地磁気測定部と、
水平状態を基準にして斜め程度を示すピッチ角及びロール角を測定する加速度センサーと、
前記地磁気センサーが所定の回数で回転しながら測定された前記X軸及びY軸フラックスゲートの測定値にそれぞれ前記ピッチ角及びロール角を反映して補償し、補償された値の中で最大値及び最小値を用いて正規化因子を演算した状態で、方位角のセンシングが試みられると、前記地磁気測定部で出力される電圧値を前記演算された正規化因子を用いて所定範囲の値に正規化し、正規化された値を用いて方位角を演算する制御部と、を含むことを特徴とする地磁気センサー。
【請求項2】
前記制御部は次式に基づいてX軸およびY軸の電圧値をそれぞれ補償することを特徴とする請求項1に記載の地磁気センサー;
Xc = Xs / cos (θ+λ)
Yc = Ys / cos (φ+λ)
ここで、XcおよびYcはそれぞれ補償されたX軸およびY軸の電圧値、
XsおよびYsはそれぞれX軸およびY軸の実際電圧値、
θは前記ピッチ角、
φは前記ロール角、
λは伏角。
【請求項3】
前記正規化因子は次式で表されるバイアス因子およびスケール因子であることを特徴とする請求項2に記載の地磁気センサー;
【数1】


ここで、XbiasおよびYbiasはそれぞれX軸およびY軸電圧値のバイアス因子、
XscalおよびYscalはそれぞれX軸およびY軸電圧値のスケール因子、
XmaxおよびXminはそれぞれX軸電圧値の最大値および最小値、
YmaxおよびYminはそれぞれY軸電圧値の最大値および最小値。
【請求項4】
前記制御部は、前記正規化因子を次式に代入し、前記X軸およびY軸フラックスゲート電圧値を正規化することを特徴とする、請求項3に記載の地磁気センサー;
【数2】


ここで、XおよびYはX軸およびY軸フラックスゲートの電圧値、
XnormおよびYnormはそれぞれX軸およびY軸フラックスゲートの正規化された電圧値、
λは伏角。
【請求項5】
地磁気センサーの出力値を所定範囲でマッピングするための正規化方法であって、
(a)前記地磁気センサーを所定回数で回転させながら地磁気に応じる所定の電圧値を測定するステップと、
(b)前記(a)ステップを行なっている間に前記地磁気センサーのピッチ角およびロール角を測定するステップと、
(c)前記ピッチ角およびロール角を反映して前記電圧値を補償するステップと、
(d)前記補償された電圧値の中から最大値および最小値を用いて、所定の正規化因子を演算するステップと、
(e)前記正規化因子を用いて前記地磁気電圧値を正規化するステップと、
を含むことを特徴とする地磁気センサーの正規化方法。
【請求項6】
前記(a)ステップは、前記地磁気センサーがなしている平面上で相互直交しているX軸及びY軸方向に形成された2軸フラックスゲートを用いて前記地磁気に対応する電圧値を出力することを特徴とする、請求項5に記載の地磁気センサーの正規化方法。
【請求項7】
前記(a)ステップは、
前記2軸フラックスゲートに駆動パルス信号を印加するステップと、
前記駆動パルス信号により発生された地磁気に対応する前記2軸フラックスゲートそれぞれの電圧値を出力するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の地磁気センサーの正規化方法。
【請求項8】
前記(c)ステップは、次式を用いて前記X軸およびY軸フラックスゲート電圧値を補償することを特徴とする、請求項6に記載の地磁気センサーの正規化方法。
Xc = Xs / cos (θ+λ)
Yc = Ys / cos (φ+λ)
ここで、XSおよびYSはそれぞれX軸およびY軸の実際電圧値、
XcおよびYcはそれぞれ補償されたX軸およびY軸の電圧値、
θは前記ピッチ角、
φは前記ロール角、
λは伏角。
【請求項9】
前記(d)ステップで演算される前記正規化因子は、次式で表されるバイアス因子およびスケール因子であることを特徴とする、請求項8に記載の地磁気センサーの正規化方法。
【数3】


ここで、XbiasおよびYbiasはそれぞれX軸およびY軸電圧値のバイアス因子、
XscalおよびYscalはそれぞれX軸およびY軸電圧値のスケール因子、
XmaxおよびXminはそれぞれX軸電圧値の最大値および最小値、
YmaxおよびYminはそれぞれY軸電圧値の最大値および最小値。
【請求項10】
前記(e)ステップは、前記正規化因子を次式に代入して前記X軸およびY軸フラックスゲート電圧値を正規化することを特徴とする請求項9に記載の地磁気センサーの正規化方法;
【数4】


ここで、XおよびYはX軸およびY軸フラックスゲートの電圧値、
XnormおよびYnormはそれぞれX軸およびY軸フラックスゲートの正規化された電圧値、
λは伏角。
【請求項11】
地磁気センサーを用いて方位角を測定する方法であって、
(a)前記地磁気センサーを所定の回数で回転させながら地磁気に応じる所定の電圧値を測定するステップと、
(b)前記(a)ステップを行なっている間に前記地磁気センサーのピッチ角およびロール角を測定するステップと、
(c)前記ピッチ角およびロール角を反映して前記電圧値を補償するステップと、
(d)前記補償された電圧値の中で最大値および最小値を用いて、所定の正規化因子を演算するステップと、
(e)前記正規化因子を用いて前記地磁気電圧値を正規化するステップと、
(f)正規化された前記地磁気電圧値を用いて方位角を演算するステップと、
を含むことを特徴とする方位角測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−248477(P2007−248477A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163154(P2007−163154)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【分割の表示】特願2004−380172(P2004−380172)の分割
【原出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】