説明

包装材料用組成物

【課題】多機能を維持しつつ、多層化を抑制して、所望の容器に不要な樹脂を使用する必要がない包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器を提供すること。
【解決手段】包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器は、メタロセン系触媒を使用して得られた高密度ポリエチレン90〜60wt%と、エチレンビニルアルコール共重合体10〜40wt%との混練物からなり、高密度ポリエチレンが、950〜970kg/mの密度、3.0〜30g/10min(190℃)のMFR、1.2〜1.6のダイスウェルを有し、エチレンビニルアルコール共重合体が、35〜50モルのエチレン含有量、10〜20g/10min(210℃)のMFRを有し、混練物中のエチレンビニルアルコール共重合体の粒径が20〜100μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳、ジュース、アルコール飲料、ミネラルウォータ、緑茶、ドレッシング、スープなどを充填する包装材料のための組成物、包装材料及び包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュース、牛乳、ミネラルウォータ、緑茶など低粘性液体食品、流動食品などの包装充填容器は、例えば、基材(例えば、紙などの繊維質及びプラスチック)/必要に応じてアルミ箔などのバリア層/ヒートシール層の積層体に、外観デザインが印刷されたウェブ状包装材料などの包装材料から得られる。
例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)/印刷インキ層/紙基材層(繊維質キャリア層)/LDPE(接着用押出ラミネート層)/アルミニウム箔(ガスバリア層)/LDPE/LDPE、LDPE/印刷インキ層/紙基材層/LDPE/LDPE、印刷インキ層/LDPE/紙基材層/LDPE/LDPE、また、LDPE/印刷インキ層/紙基材層/LDPE/アルミニウム箔/ポリエステル(PET)等の積層包装材料がある。
【0003】
積層包装材料は、一般的に、紙基材層の原紙ロールを印刷機に搬入し、原紙面に印刷し印刷済み用紙を再度ロール状に巻き、次いで押出ラミネーターに送り、押出機から溶融ポリオレフィン(例えば、LDPEなど)を原紙面に押し出し、原紙の他にガスバリア層(アルミニウム箔など)がある場合、ガスバリア層との間にも溶融ポリオレフィン押し出してラミネート・コーティングを施して製造する。上述のようなガスバリア層を積層したり、更に、他の機能的層を付加する場合、一挙にすべての層をラミネートするのではなく、部分的な積層体を別途、それぞれ調製して一旦ロール状にし、これらの部分的な積層体を更に積層して最終的な積層包装材料を得ている。
【0004】
上記の積層包装材料、プラスチック材料などから得られる包装充填容器には、レンガ型包装容器、屋根型包装容器、紙製本体と本体端にインジェクション成形されたプラスチックの蓋とからなる複合容器、及び紙製本体と本体端に接合されたプラスチック頂部とからなる複合容器などがある。
【0005】
上記の包装材料及び包装容器に用いられるプラスチック(熱可塑性樹脂)は、主に、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒による線形低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、エチレンビニルアルコール、ポリアミド、メタキシレンジアミンとアジピン酸との縮合重合体、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、環状オレフィンコポリマーから選ばれた1種若しくは2種以上のポリマーなどがある。
【0006】
上記積層包装材料の各々の層は、それぞれが各々の作用・機能を持っている。包装容器の紙の繊維質の基材層には、液密のためのプラスチックコーティングが、この基材層の両側面に設けられていて、水分による浸透から液吸収性繊維質の基材層を効果的に保護する。これらの積層された外側層は、普通、優れたヒートシール性を包装材料に付与し、上述のように、低密度ポリエチレンなどの熱接着性プラスチックから成っている。
【0007】
紙基材層と上記熱可塑性外側層だけから成っている積層包装材料では、中身製品の品質を維持することが難しい。
中身製品の品質を維持するためには、中身製品の芳香、風味などが包装材料を透過して外部に飛散することを防止する、又はその芳香、風味などを、中身製品と接触する包装材料が吸収することを防止する、若しくは、包装材料から異臭物などが中身製品に染み出しその芳香、風味など阻害することを防止する保香性と、中身製品の品質を阻害する気体(酸素ガスなど)が包装容器の積層材料器壁などを透過して中身製品を保護するガスバリア性が包装材料に必要になり、保香性及びガスバリア性を十分に具える包装材料が好ましい。
【0008】
包装材料にガスバリア性を付与するガスバリア材としては、例えば、アルミニウム箔、EVOH(エチレンビニルアルコール、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体けん化物)、PVOH(ポリビニルアルコール)、ポリアミド(ナイロンMXD6など)、無機酸化物の蒸着層などの優れた酸素ガス遮断性を持つ材料が既知である。
【0009】
ガスバリア材料のうち、EVOHは、分子内で電子密度の高い部分と低い部分とがはっきり分かれて極性が強いために水と油の関係のように極性のない酸素ガスなどの気体とは親和性がなく、ポリマー中の水酸基(OH)同士が強く引きあってポリマー分子の間にほとんど隙間がなく、結晶性であるために、気体がなかなかEVOH内を通過することができない。(特許文献1参照)
【0010】
包装容器に用いられるプラスチック(熱可塑性樹脂)には、用途に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、無機および有機充填剤、塗料、顔料等の各種添加剤を適宜、添加される。白色顔料としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉などがある。しかし、食品用途では、食品添加物に限定される。
食品衛生法適合の食品添加物である白色顔料の二酸化チタンとしては、99%以上の高純度酸化チタンがある。この二酸化チタンの白色顔料は、衛生上、衛生管理上、及び食品の印象上から食品用途で意義を持つ。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63−312143号公報
【特許文献2】特開2007−090876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
包装材料は、上述のように、種々の作用・機能、すなわち、多機能性を持っていなければならない。そのために、液密のための耐水最外層、ヒートシールのためのシーラント最内層などの他に、中身製品の品質を維持するための保香性/ガスバリア性のバリア層などが積層され、多層構成がとられている。
しかしながら、多層構成とするために、その積層体を製造するためのラミネート/接合設備が必要となって複雑化すると共に、機能層と別の機能層との間にそれらを接合する接着剤層を必要とするようになり、更に多層化に拍車がかかる。
この発明は、多機能を維持しつつ、多層化を抑制して、所望の容器に不要な樹脂を使用する必要がない包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器は、メタロセン系触媒を使用して得られた高密度ポリエチレン(mHDPE)90wt%から60wt%と、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)10wt%から40wt%との混練物(ブレンド物)からなる組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器であって、
高密度ポリエチレンが、950〜970kg/mの密度、3.0〜30g/10min(190℃)のMFR、1.2〜1.6のダイスウェルを有し、
エチレンビニルアルコール共重合体が、35〜50モルのエチレン含有量、10〜20g/10min(210℃)のMFR、好ましくは7〜20g/10minのMFRを有し、混練物中のエチレンビニルアルコール共重合体の粒径が20〜100μmである、
ことを特徴とする。
【0014】
この発明の好ましい態様において、混練物からなる組成物は、添加剤を実質的に含有しない。
【0015】
この発明の好ましい態様において、混練物は、2軸押出し機により混練されたものである。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成を有する本発明によれば、以下の作用機能を発揮し、有利な効果が得られる。
この発明の包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器は、メタロセン系触媒を使用して得られた高密度ポリエチレン(mHDPE)90wt%から60wt%と、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)10wt%から40wt%との混練物(ブレンド物)からなる。
この混練物中で、主成分をなす高密度ポリエチレン(mHDPE)は、密度0.942以上のポリエチレンと定義されている。この発明において、高密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒を使用して得られたポリマーである。重合に用いられる触媒は、触媒としての活性が非常に高いメタロセン触媒であり、重合されたポリマーの分子量分布が極めて狭い特徴を持つ。また、異なる分子量を生成する活性点を持つバイモーダル型メタロセン触媒も使用することができる。
上記の高密度ポリエチレンは、包装材料において、種々の作用・機能を果たすことができ、例えば、液密のための耐水性として、ヒートシールのためのシーラント性などである。
【0017】
エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)自体は、ガスバリア性として機能し、この混練物中でメタロセン系高密度ポリエチレン(mHDPE)中に分散されることによっても、ガスバリア性の機能を発揮することができる。
メタロセン系高密度ポリエチレン90〜60wt%とエチレンビニルアルコール共重合体10〜40wt%との混練比でブレンドされる。上記の混練比の範囲内で、混練物中で、良好に、EVOHが島に相当しmHDPEが海に相当する海島構造状に分散され、上記範囲から外れると所望の海島構造を得ることが難しくなる。
【0018】
この発明の特徴においては、高密度ポリエチレンが、950〜970kg/mの密度、3.0〜30g/10min(190℃)のMFR、1.2〜1.6のダイスウェルを有する。
一般的に、ダイスウェルとは押出成形において溶融物の径がダイの径よりも大きくなる現象であり、ダイスウェルや溶融張力が大きい樹脂ほど内容積の大きい製品の成形が可能となる。
この発明において、ダイスウェル若しくは、ダイスウェル比とは、キャピラリー粘度測定器を使用し、ダイス径1.0mm、長さ10mm、温度190℃の測定条件において、ピストン速度を200mm、500mm/minに設定した時のストランド径をレーザー測定し、ダイス径1.0mmで割って得た値(比率)である。
また、エチレンビニルアルコール共重合体が、35〜50モルのエチレン含有量、10〜20g/10min(210℃)のMFR、好ましくは7〜20g/10minのMFRを有し、混練物中のエチレンビニルアルコール共重合体の粒径が20〜100μmである、
上記の条件、状態において、高密度ポリエチレンとエチレンビニルアルコール共重合体とが各々の機能を損なうことなく、混練物を使用することができる。
【0019】
この発明の好ましい態様において、混練物からなる組成物は、相溶化剤、分散剤等の添加剤を実質的に含有しない。
添加剤を加えることなく、無添加物とし包装材料や包装容器に使用することができる。
また、好ましい態様において、混練物は、2軸押出し機により混練されたものである。
高密度ポリエチレンとエチレンビニルアルコール共重合体とのブンレドは、製造プロセスの管理と生産性から、2軸押出し機により行うことができるからである。
【0020】
上述のように、多機能を維持しつつ、多層化を抑制して、所望の容器に不要な樹脂、添加剤を使用する必要がない包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
この形態の包装材料用組成物、その組成物を用いた包装材料及び包装容器は、メタロセン系触媒を使用して得られた高密度ポリエチレン(mHDPE)90〜60wt%と、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)10〜40wt%との混練物(ブレンド物)からなる。
この形態において、メタロセン系触媒を使用して得られた高密度ポリエチレンは、包装材料において、種々の機能を果し、例えば、液密のための耐水性、ヒートシールのためのシーラント性、包装材料に機械的強度を付与する支持材などとして機能する。
この発明による形態において、この組成物にEVOHがブレンドされるが、このブレンドによって、上記高密度ポリエチレンの上記機能が損なわれることが最小限に抑えられる。例えば、上記強度低下を30%以内に抑えることができ、ブレンドの最適化により更にその低下劣化を低減することができる。
【0022】
他方、ガスバリア性のエチレンビニルアルコール共重合体は、この混練物中でもメタロセン系高密度ポリエチレン(mHDPE)中に分散されることによっても、ガスバリア性の機能を、すなわち、配合比率(10〜40wt%)に見合ったガスバリア性を発揮する。
上記形態の混練比の範囲内で、混練物中で、良好に、EVOHが島に相当しmHDPEが海に相当する海島構造状に分散され、上記範囲から外れると所望の海島構造を得ることが難しくなる。
【0023】
この形態の特徴においては、高密度ポリエチレンが、950〜970kg/mの密度、3.0〜30g/10min(190℃)のMFR、1.2〜1.6のダイスウェルを有する。
ダイスウェルは、プラスチック押出成形において溶融物の径がダイの径よりも大きくなる現象を指す。この形態において、ダイスウェル若しくは、ダイスウェル比(DS)とは、ダイス径1.0mm、長さ10mmのキャピラリー粘度測定器を使用し、温度190℃、ピストン速度200mm、500mm/minの設定で、ストランド径をレーザー測定し、ダイス径1.0mmで割って得た比率である。
この形態においては、エチレンビニルアルコール共重合体が、35〜50モルのエチレン含有量、10〜20g/10min(210℃)のMFR、好ましくは7〜20g/10minのMFRを有する。
混練物中のエチレンビニルアルコール共重合体の粒径が20〜100μmである。ブレンド(一次のブレンド)時に、流動時の弾性の低いもの使用することで、得ることができる。
このような形態で、高密度ポリエチレンとエチレンビニルアルコール共重合体とが各々の機能を損なうことない。
【0024】
好ましい態様において、混練物からなる組成物は、相溶化剤、分散剤等の添加剤を実質的に含有しない。添加剤を加えることなく、無添加物とし包装材料や包装容器に使用することができる。
更に、好ましい態様において、混練物は、製造プロセスの管理と生産性の観点から、2軸押出し機により混練されたものである。
【0025】
この形態の混練物を用いた、又は、更にポリマーなどを加えて得た包装材料用組成物、その組成物を用いて積層した包装材料及び、包装材料から成形した包装容器が製造される。
製造される包装容器には、レンガ型包装容器、屋根型包装容器、紙製本体と本体端にインジェクション成形されたプラスチックの蓋とからなる複合容器、及び紙製本体と本体端に接合されたプラスチック頂部とからなる複合容器などがある。
更に、上記の組成物を用いて、容器用の蓋、ストローなどを成形することもできる。
【実施例】
【0026】
MFR12g/10min、密度966kg/mのメタロセン系触媒を使用して得られた高密度ポリエチレン(mHDPE)を準備し、他方、エチレン含有量44モル%、MFR12g/10minのエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を準備した。
mHDPEとEVOHとを、それぞれ70wt%とEVOH30wt%との割合で、異方向、噛合い型の2軸押出し機に装填し、混練した。
【0027】
得られた混練物の樹脂を、0.6mmの平板に成型し酸素透過度を測定した。
比較のために、従来型(Ziglar−Natta)触媒で製造されている高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂を、0.6mmの平板に成型し酸素透過度を測定した。
実施例の樹脂の酸素透過度は、比較例の樹脂の酸素透過度の概ね半分となり、概ね2倍の酸素バリアー性を示した。
機械的強度について、実施例の樹脂の強度は、比較例の樹脂の強度と比べて30%以下の低下に過ぎなかった。
上記に実証されるように、バリア性などの機能を維持しつつ、接着剤層などの追加による多層化を抑制して、所望の容器に不要な樹脂、添加剤を使用する必要がない包装材料用組成物を提供することができた。
【0028】
なお、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明は、液体食品の包装充填の製造に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン系触媒を使用して得られた高密度ポリエチレン90wt%から60wt%と、エチレンビニルアルコール共重合体10wt%から40wt%との混練物からなる包装材料用及び包装容器用の組成物であって、
該高密度ポリエチレンが、950〜970kg/mの密度、3.0〜30g/10min(190℃)のMFR、1.2〜1.6のダイスウェルを有し、
該エチレンビニルアルコール共重合体が、35〜50モルのエチレン含有量、10〜20g/10min(210℃)のMFRを有し、該混練物中の該エチレンビニルアルコール共重合体の粒径が20〜100μmである、
ことを特徴とする包装材料用組成物。
【請求項2】
該混練物からなる該組成物は、添加剤を実質的に含有しない、請求項1記載の包装材料用組成物。
【請求項3】
該混練物は、2軸押出し機により混練されたものである、請求項1記載の包装材料用組成物。

【公開番号】特開2012−111801(P2012−111801A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259551(P2010−259551)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】