説明

包装材

【課題】 印刷を施すこと以外の方法により、美観性が付与された包装材を提供することを課題とする。また、容易に袋状に加工することが可能な包装材を提供することを課題とする。
【解決手段】 芯部と鞘部が熱可塑性重合体より形成される芯鞘型複合繊維よりなる不織布に、熱可塑性重合体からなるマルチフィラメント糸がランダムな方向に堆積してなり、不織布とマルチフィラメント糸とは、熱接着により一体化しているシートからなる包装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、不織布は、プレゼント、瓶やグラス等の割れ物、花、各種の商品等の物を包む、いわゆるラッピングのための包装材として、また、発熱体や乾燥剤を収納するために袋状の形態に加工して用いる包装材として使用されている。包装材を袋状の形態にする際には、包装材自体に熱接着性を有している場合は、ヒートシールにより袋状とし、包装材自体に熱接着性を有していない場合は、貼り合わせ部分に接着剤を介して袋状としている。
【0003】
包装材は、内容物を安全に収納・包装するという役割に加えて、視覚的に美観性を有していることが好ましい。特許文献1には、不織布からなる包装材において、不織布表面に印刷を施すことが記載されている。
【特許文献1】特許第3050868号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、印刷を施すこと以外の方法により、美観性が付与された包装材を提供することを課題とする。また、容易に袋状に加工することが可能な包装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、印刷を施すこと以外の方法により、美観性を付与する方法を検討した結果、本出願人が提案している特開2003−231196号に記載の差別化シートを利用することにより、従来にない表面外観を呈し、かつ、容易に袋状に加工することが可能な包装材を提供できると考え、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、芯部と鞘部が熱可塑性重合体より形成される芯鞘型複合繊維よりなる不織布に、熱可塑性重合体により形成されるマルチフィラメント糸がランダムな方向に堆積してなり、不織布とマルチフィラメント糸とは、熱接着により一体化しているシートからなることを特徴とする包装材を要旨とするものである。
【0007】
本発明における芯鞘型複合繊維よりなる不織布について説明する。不織布は、包装材を構成するシートの基材となるものであり、芯鞘型複合繊維によって構成されることにより、不織布に堆積されるマルチフィラメントとの接着性、袋状に加工する際のヒートシール性、本発明の包装材をフィルム等の他の基材と熱接着する際の接着性が良好となる。
【0008】
芯鞘型複合繊維は、芯部と鞘部が熱可塑性重合体により形成される。熱可塑性重合体としては、一般に工業的に用いられている熱可塑性重合体を用いればよく、芳香族ポリエステル系重合体、脂肪族ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体等が挙げられ、また、共重合体であってもよく、例えば、芳香族ポリエステル系重合体を使用する場合、アルキレンテレフタレートを主成分として、イソフタル酸、アジピン酸等の酸成分や、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール成分を共重合したものが挙げられる。
また、これらの重合体には、必要に応じて、艶消し剤、顔料、防炎剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0009】
芯部と鞘部とに配する熱可塑性重合体の組み合わせとしては、ポリエステル系重合体/ポリアミド系重合体、ポリエステル系重合体/ポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体同士であって異なる重合体同士の組み合わせが挙げられる。熱接着性を考慮すると、芯部の熱可塑性重合体の融点が鞘部の熱可塑性重合体の融点より高いものを配し、鞘部は熱接着剤として機能させ、芯部は熱により影響を受けることなく骨格として機能させることが好ましい。このとき、両者の融点差は20℃以上設けることが好ましく、さらには30℃以上が設けることが好ましい。
【0010】
芯鞘型複合繊維の芯部と鞘部の複合比は、用途に応じて適宜選択すればよいが、質量比で、20/80〜80/20の範囲にすることが好ましい。前記範囲よりも鞘部の比率が少なくなると、熱接着性やヒートシール性が劣る傾向となり、一方、鞘部の比率が多くなると、繊維強度、不織布の強力が劣る傾向となる。
【0011】
芯鞘型複合繊維は、繊維長が数mmのショートカットファイバーや10〜60mm程度の短繊維の形態であっても、また、長繊維の形態であってもよい。本発明においては、強度が高いことから、芯鞘型複合繊維が長繊維であるスパンボンド不織布を好ましく用いることができる。
【0012】
本発明における不織布は、芯鞘型複合繊維が堆積して一体化している。一体化のための不織布化の方法としては、一般に知られる不織布化手段を採用すればよく、例えば、熱エンボス処理や熱風処理等の熱処理によって、繊維の一部が溶融または軟化することにより繊維同士が熱接着して一体化したもの、ニードルパンチや水流交絡等の機械的な交絡手段によって、繊維同士が交絡により一体化したもの等が挙げられる。
【0013】
本発明の包装材を構成するシートは、前記芯鞘型複合繊維よりなる不織布に、熱可塑性重合体により形成されるマルチフィラメント糸がランダムな方向に堆積している。
【0014】
マルチフィラメント糸を形成する熱可塑性重合体は、上記した芯鞘型複合繊維に用いられる重合体が挙げられ、これらの重合体には、必要に応じて、艶消し剤、顔料、防炎剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤等の各種添加剤を添加してもよい。特に、マルチフィラメント糸を構成する重合体に顔料や蛍光剤を適宜選択して添加することにより、マルチフィラメント糸が基材である不織布上から、より浮き出た形態の模様を呈するものとなり、美観、意匠性により優れた包装材を得ることができる。
【0015】
マルチフィラメント糸を構成する重合体と不織布を構成する重合体とは、同一のものであっても、異なる重合体でもよいが、両者の熱接着による一体性を考慮すると、同一の重合体または同種の重合体であることが好ましい。
【0016】
マルチフィラメント糸は、マルチフィラメント糸を構成する複数の単繊維がばらばらにならないように収束しているものであるが、マルチフィラメント糸が撚りを有することによって収束していてもよく、また、マルチフィラメント糸を構成する単繊維同士が、単繊維を構成する熱可塑性重合体の一部が溶融または軟化することにより融着していることによって、マルチフィラメント糸を構成する単繊維が収束していてもよい。さらには、マルチフィラメント糸に撚りがかかった状態で、単繊維同士が、単繊維を構成する熱可塑性重合体の一部が溶融または軟化することにより融着しているものであってもよい。
【0017】
マルチフィラメント糸が撚りを有する場合、その撚り数は、1T/10cm以上、好ましくは5T/10cm以上であればよい。撚り数が1T/10cm未満であると、複数の単繊維が収束せずに分散しやすくなる。なお、撚り数の上限は、特に限定しない。
【0018】
また、マルチフィラメント糸が、単繊維同士が融着しているものの場合、その融着の程度であるが、容易にばらばらに分散しない程度に融着し、個々の単繊維は繊維形態を十分に維持しているものであっても、また、単繊維表面のみでなく、内部まで溶融または軟化し、単繊維同士の境界面が明確でない程、強固に融着しているものであってもよい。
【0019】
マルチフィラメント糸を構成する単繊維の形態は、1種の重合体からなる単相形態であっても、2種以上の重合体からなる複合形態であってもよい。マルチフィラメント糸が、単繊維同士が融着しているものである場合や、不織布とマルチフィラメント糸との熱接着性を考慮して、単繊維の形態は、芯部に高融点重合体を配し、鞘部に低融点重合体を配してなる芯鞘型の複合形態であることが好ましい。単繊維の形態が、芯鞘型であると、単繊維同士が融着しているマルチフィラメント糸を効率的に製造することができる。また、芯部においては、分子が十分に配向しているため繊維の強度が高く、一方、鞘部は、単繊維同士を融着させる熱接着剤としての機能をさせること、また、不織布とマルチフィラメント糸との接着を担う熱接着剤としての機能をさせることができるため好ましい。
【0020】
マルチフィラメント糸を構成する単繊維の断面形状については、特に限定されず、一般的な円形断面はもとより、偏平断面、多角形断面、中空部を有する中空断面等、適宜選択することができる。
【0021】
マルチフィラメント糸の総繊度については、特に限定しないが、美観性を考慮すると30デシテックス以上であることが好ましく、さらには、50デシテックス以上であることが好ましい。マルチフィラメント糸の総繊度を30デシテックス以上にすることによって、より視覚的に美観を感じることができ、意匠性に優れ、また、剛性、引裂強力等の機械的強力に優れたものとなる。マルチフィラメント糸の総繊度の上限は特に限定されず、外観に応じて適宜選択すればよい。また、マルチフィラメント糸を構成する単繊維の単糸繊度およびマルチフィラメント糸を構成する単繊維数は、マルチフィラメント糸の総繊度に応じて適宜選択すればよく、特に限定しないが、単繊維数は2本以上であればよく、好ましくは5本以上である。
【0022】
芯鞘型複合繊維よりなる不織布に、前記マルチフィラメント糸はランダムな方向に堆積されて、堆積されたマルチフィラメント糸相互間の交点は、マルチフィラメント糸を構成する単繊維の一部が溶融または軟化することによって、接着固定される。
【0023】
堆積してなるマルチフィラメント糸からなる層の目付は、美観性を考慮して、20g/m2以上であるのが好ましい。マルチフィラメント糸の総繊度やマルチフィラメント糸からなる層の目付は、適宜選択することによって、外観に変化をつけることができる。
【0024】
本発明のシートからなる包装材は、芯鞘型複合繊維よりなる不織布と、不織布上にランダムな方向に堆積したマルチフィラメント糸とが、熱接着により一体化している。
【0025】
ここで熱接着とは、不織布を構成する芯鞘型複合繊維の一部が熱により溶融または軟化することによって、および/または、マルチフィラメント糸を構成する熱可塑性重合体の一部が熱により溶融または軟化することによって、不織布とマルチフィラメント糸とが接着していることをいう。具体的には、一対のエンボスロールからなるエンボス装置、あるいはエンボスロールとフラットロールからなるエンボス装置を用いた熱エンボス加工によって部分的に熱圧着されることにより熱接着しているもの、また、一対のフラットロールからなるカレンダー装置を用いた熱カレンダー加工による熱処理により熱接着しているもの、熱乾燥機等に通すことによる熱処理により熱接着しているものが挙げられる。本発明においては、芯鞘型複合繊維よりなる不織布と、マルチフィラメント糸との一体性およびマルチフィラメント糸からなる層の形態安定性を考慮すると、熱と圧力とを付加することにより熱接着しているもの、すなわち、熱エンボス加工または熱カレンダー加工により熱接着しているものであることが好ましい。
【0026】
本発明の包装材は、芯鞘型複合繊維よりなる不織布と、マルチフィラメント糸とが熱接着により一体化してなるシートにより構成されるが、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに、他の素材と積層してもよい。例えば、他の不織布や紙、織編物、フィルム等をマルチフィラメント糸側、あるいは不織布側に貼り合わせたり、また、重合体コーティング等を施すことにより複合化したものであってもよい。
【0027】
本発明の包装材を構成するシートは、以下の方法により製造することができる。
【0028】
マルチフィラメント糸を形成する熱可塑性重合体を溶融紡出し、紡出糸条(複数の単繊維群)をエアーサッカーに導入して牽引・延伸し、複数の単繊維が収束してなる状態のマルチフィラメント糸をエアーサッカーより排出し、該マルチフィラメント糸を移動式捕集面上に堆積させ、その上に芯鞘型複合繊維よりなる不織布を積層して、熱接着することにより得る。もしくは、マルチフィラメント糸をエアーサッカーより排出する際、該マルチフィラメント糸を芯鞘型複合繊維よりなる不織布上に堆積し、熱接着することにより得る。
【0029】
紡出した複数の単繊維が収束してなる状態のマルチフィラメント糸をエアーサッカーより排出させるには、エアーサッカー内で撚りを掛けることが好ましい。エアーサッカー内で撚りを掛ける方法としては、エアーサッカー内の牽引エアーの流れを渦巻き流とすることが好ましい。具体的には、エアーサッカーの入口もしくは内部に羽根を取り付けることにより、また、その羽根を動かすことにより渦巻き流とする方法、エアーサッカーの入口もしくは内部にエアーを吹付けて渦巻き流とする方法が挙げられる。
【0030】
また、エアーサッカーに導入前またはエアーサッカー内で複数の単繊維同士を融着させてマルチフィラメント糸とすることが好ましい。具体的には、紡糸口金から溶融紡出された紡出糸条において、個々の単繊維が完全に冷えきっていない状態(単繊維同士が融着可能な状態)のときにガイド等により複数の単繊維同士を密着させることにより融着させて、その後、エアーサッカーに導入する方法が挙げられる。また、エアーサッカーの導入口を小さく設計し、個々の単繊維が完全に冷えきっていない状態(単繊維同士が融着可能な状態)でエアーサッカーに導入し、エアーサッカーの導入口が小さいために、単繊維同士が密着して融着させる方法もよい。単繊維同士が融着してなるマルチフィラメント糸をエアーサッカーより排出するためには、単繊維同士を密着させる際に、融着可能な状態であることが必要であるため、口金と密着させる位置(ガイドの位置あるいはエアーサッカーの導入口)までの距離や牽引速度等は、用いる熱可塑性重合体、単孔突出量等によって適宜設定する。
【0031】
マルチフィラメント糸を堆積させる際、エアーサッカーより排出直後のマルチフィラメント糸にエアー等を吹付けることによりマルチフィラメント糸を幅方向に振って堆積させることが好ましい。エアーの吹付けとしては、左右より交互に吹付けることにより、マルチフィラメント糸はゆるやかな螺旋を描いてシート上あるいは移動式捕集面上にループ状に堆積させることができるため、ランダムなループ状に堆積させることができる。
【0032】
また、芯鞘型複合繊維よりなる不織布として、スパンボンド法による不織布を採用した場合、マルチフィラメント糸を堆積・積層・一体化する工程を、スパンボンド法による2段堆積によって連続工程で製造することができるため、生産性が良好となり好ましい。
【0033】
スパンボンド法による2段堆積により連続工程で製造する方法とは、スパンボンド法によって芯鞘型複合繊維を紡出するための第1の溶融紡糸口金より溶融紡出し、紡出糸条をエアーサッカーにて牽引・延伸した後、単繊維同士がばらばらになるように開繊させた芯鞘型複合繊維を移動式捕集面上に堆積させてスパンボンド不織ウエブを形成し、前記第1の溶融紡糸口金より川下に存在するマルチフィラメント糸を紡出するための第2の溶融紡糸口金よりスパンボンド法によって溶融紡出し、紡出糸条をエアーサッカーにて牽引・延伸し、複数の単繊維が収束してなる状態のマルチフィラメント糸をエアーサッカーより排出し、スパンボンド不織ウエブ上に堆積させて、積層体とする。得られた積層体に熱処理を施して、スパンボンド不織ウェブを構成する繊維同士を一体化させて不織布とすると共に、不織布とマルチフィラメント糸とを熱接着により全体として一体化してシートとし、本発明の包装材を得る。
【0034】
なお、上記2段堆積において、マルチフィラメント糸を堆積させた上に、芯鞘型複合繊維を堆積させてもよい。
【0035】
本発明の包装材を袋状にして加工する際は、公知の方法によりヒートシール加工を施して袋状とすればよい。例えば、適宜の大きさに裁断した包装材2枚を不織布側が向き合うように積層し、端部3辺をヒートシールにより熱接着して開口部を形成し、袋状とすることができる。また、発熱体や乾燥剤を収納する場合は、前記袋に収納物を収納した後、開口部をヒートシールにより封じればよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明の包装材は、芯部と鞘部が熱可塑性重合体より形成される芯鞘型複合繊維よりなる不織布に、熱可塑性重合体からなるマルチフィラメント糸がランダムな方向に堆積し、該不織布と該マルチフィラメント糸とは、熱接着により一体化しているシートによって構成されている。
【0037】
不織布上に堆積したマルチフィラメント糸が平坦な不織布上より浮き出たように見え、従来にない表面外観を呈し、美観および意匠性に優れた包装材を得ることができる。
【0038】
また、芯部と鞘部が熱可塑性重合体より形成される芯鞘型複合繊維よりなる不織布を用いているため、本発明の包装材を袋状に加工する際、良好にヒートシール加工を施すことができる。
【0039】
したがって、本発明の包装材は、上記したように美観に優れ、また、袋状とする際のヒートシール加工性にも優れているため、各種ラッピング材として、また、発熱体や乾燥剤等を収納する袋状物として良好に用いられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各特性値は、以下のようにして求めた。
(1)ポリエステルの極限粘度[η];フェノールと四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒にて、20℃で測定した。
(2)融点(℃);パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)ポリエチレンのメルトフローレート(g/10分);JIS K 6922に記載の方法により、温度190℃で荷重21.18Nの条件で測定した。
【0041】
実施例1
マルチフィラメント糸と芯鞘型複合繊維とを、スパンボンド法による2段堆積により積層した。
【0042】
すなわち、蛍光剤を0.1質量%含有させたポリエチレンテレフタレート(融点260℃、極限粘度0.70)からなるチップを原料とし、公知の溶融紡糸装置を用い、繊維断面が丸断面となる孔数28ホールの紡糸口金より、紡糸温度280℃で溶融紡出した。紡糸口金とエアーサッカーまでの距離は100cmに設定し、紡出糸条は、エアーサッカーの導入口が小さくなっている(直径5mm)エアーサッカーに導入した。このとき、ひとつのエアーサッカーに14本の単繊維を導入した。そして、エアーサッカーにて、単繊維の繊度が12デシテックスとなるように牽引速度4000m/分で牽引すると同時に、エアーサッカー内で単繊維同士を密着させて融着し、14本の単繊維が融着により収束した総繊度が168デシテックスのマルチフィラメント糸をエアーサッカーより排出させた。
【0043】
エアーサッカーより排出したマルチフィラメント糸は、左右よりエアーを吹付ける横振り装置にて、螺旋状に回転させながら、移動式の捕集面上にランダムな方向に堆積させた(目付15g/m2)。
【0044】
次いで、マルチフィラメント糸上に芯鞘型複合繊維を堆積させた。
すなわち、芯部にポリエチレンテレフタレート(融点260℃、極限粘度0.70)からなるチップを、鞘部にメタロセン系重合触媒を用いて重合された低密度ポリエチレン(メルトフローレート20g/10分、Q値2.2、密度0.904g/cm3、融点102℃)からなるチップを原料とし、公知の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度280℃にて芯鞘型複合断面となる紡糸口金より、芯部/鞘部の質量比率が50/50となるよう溶融紡糸し、吸引装置により繊度3.3デシテックスとなるように引き取り細化させ、吸引装置から排出された糸条群を開繊させた後、移動する捕集面上のマルチフィラメント糸からなる層上に、芯鞘型複合繊維を堆積させてスパンボンド不織ウエブ(目付25g/m2)とし、マルチフィラメント糸とスパンボンド不織ウエブとが積層した積層体を得た。
【0045】
次いで、積層体を、エンボスロール(エンボス凸部の面積0.9mm、圧接面積率21%)とフラットロールとからなる熱エンボス装置に導き、両ロールの表面温度950℃、線圧294N/cmの条件下で、マルチフィラメント糸側がフラットロールに接するように通布して部分的に熱圧接処理を施し、目付60g/mの包装材を得た。
【0046】
得られた包装材は、マルチフィラメント糸が浮き出し模様を呈したものであり、美観的に優れたものであった。
【0047】
得られた包装材を適宜の大きさに2枚裁断して、不織布側が向き合うように積層し、端部3辺をヒートシールにより熱接着して開口部を形成し袋を得た。得られた袋は、物を投入しても内容物により底抜けなどがなく、袋として十分に使用し得るものであり、取扱いも良好であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部と鞘部が熱可塑性重合体により形成される芯鞘型複合繊維よりなる不織布に、熱可塑性重合体により形成されるマルチフィラメント糸がランダムな方向に堆積してなり、不織布とマルチフィラメント糸とは、熱接着により一体化しているシートからなることを特徴とする包装材
【請求項2】
芯鞘型複合繊維が、芯部の熱可塑性重合体の融点が鞘部の熱可塑性重合体の融点より高いことを特徴とする請求項1記載の包装材。
【請求項3】
芯鞘型複合繊維が長繊維であり、不織布がスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装材
【請求項4】
マルチフィラメント糸が撚りを有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装材
【請求項5】
マルチフィラメント糸は、マルチフィラメント糸を構成する単繊維同士が、単繊維を構成している熱可塑性重合体の一部が溶融または軟化することにより融着していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装材
【請求項6】
マルチフィラメント糸の総繊度が30デシテックス以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装材


【公開番号】特開2007−118229(P2007−118229A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309941(P2005−309941)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】