説明

包装構造体及び包装体

【課題】段ボールトレイ箱に挿着された緩衝用発泡スチロール等が振動や荷扱いに対し外れ難く、且つ使用後の開梱作業等が省力化される、コスト削減が図れる包装構造体及び包装体を提供する。
【解決手段】主として空気調和機の室外機等に使用される包装構造体であって、段ボール製函体の上部の開口部を底面部面積に対して狭面積とするために、該底面部より立ち上がる四方向の側面部の立ち上げ角度を90度未満とし、また、この四方向の側面部の内向きの傾斜を維持固定する手段を有し、該維持固定手段が、短側面部に設けたフラップ部の延長した先端に設けた、抜け防止のための返し部を有する凸形状部と、長側面部に設けられた該凸形状部差し込み固定用の穴部との係合によるものであることを特徴とする包装構造体、及びそれを用いた包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、被包装体を保護する包装構造体及び包装体の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機の室外機等に使用される底面用段ボールトレイ箱等では、4カ所のコーナー部において、長側面部から延長したフラップを90度に折り曲げ、これと短側面部をワイヤー打ちや糊接着等により固定することで、トレイ箱形状を形成する。このトレイ箱の内部には主に両短端部へ緩衝用の発泡スチロールが配置され、この緩衝用発泡スチロールの底面及び短側面部等に凸部を設け、この凸部に嵌合するよう段ボール底面及び短側面部等に穴部を設け、接着材等を用いず、これらを嵌め込み仮固定している。
また、緩衝用発泡スチロールの上面には被包装体の据え付け用脚部を嵌めこむような切り欠き部を設け、これにより位置決めされた被包装体を載せることにより、上方向からの製品の重さによって、上述の2箇所の仮固定と合わせ、最終的な固定としている。
また、従来の段ボールトレイ箱の構造としては、色々な形式のものが実用化されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平10−194285号公報(段落番号[0002]、[0003]、図5、8、9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の被包装体(空気調和機の室外機等)を保護する包装構造体は上記のように構成されているので、段ボールトレイ箱の上面開放部が製函作業時にどうしても外側に開いてしまうものが生じ、嵌め込み仮固定している緩衝用発泡スチロールが、製品を載せる前段階での輸送時の振動や荷扱いにより、段ボールトレイ箱から外れてしまう等の問題点があった。
【0004】
また、技術文献1に示された段ボールトレイ箱の構造では、四つのコーナーの内側部に補強板や補強柱を段ボールで形成するため、緩衝用発泡スチロールの角部を補強板や補強柱を避けた形状にして設置しなければならない等の問題点があった。
これらの問題点を解決する包装構造体の出現が強く望まれている。
この発明は、上記に鑑み、輸送時の振動や荷扱いに強く、コーナー部における強度が維持される構造であり、且つ段ボールトレイ箱がワイヤー打ちや糊接着等を用いることなく組み立てられ、コスト削減になるとともに、使用後の開梱作業等が省力化されるような包装構造体及び包装体を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る包装構造体は、被包装体に配置される包装材の底面用段ボールトレイ箱等において、段ボールトレイ箱製函後の上部開口部を底面部面積に対して狭面積とし、輸送時の振動や荷扱い等により緩衝用発泡スチロールが上部方向に飛び出して外れてしまうのを防止するために、四方向の側面部の立ち上げ角度が段ボール箱の内向き90度未満になるようにする。段ボールトレイ箱のこの傾けた四側面部が、緩衝用発泡スチロールの側面部を押さえつけ、外れを防止するような構造としたものである。
【0006】
また、前記四側面部の内向きの傾斜を固定するため、短側面両端から延長したフラップ部の先端に凸部を設け、また、この凸部の差し込み固定用の穴部を長側面部に設け、これらを差し込み嵌合する。この凸部の差し込み先端部には、固定用穴から抜けないように返し部をもたせた構造としたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る包装構造体は、段ボールトレイ箱の上面開放部の外側に開いてしまうことを防止し、嵌め込み構造により仮固定していた緩衝用発泡スチロール等が、製品を載せる前段階での輸送時の振動や荷扱いにより、段ボールトレイ箱から外れてしまう等の問題点を解決する。また、段ボールトレイ箱はワイヤー打ちや糊接着等を用いることなく組み立てられ、コスト削減になるとともに、使用後の開梱作業等が省力化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による包装構造体の斜視説明図である。
図2は、本実施の形態1による段ボールトレイ箱と緩衝用発泡スチロールの嵌合説明図である。
図3は、本実施の形態1による段ボールトレイ箱の展開図である。
図において、1は段ボールトレイ箱、2は被包装体の底面を保護する緩衝用発泡スチロール、3は緩衝用発泡スチロールに設けた段ボールトレイ箱との嵌合用凸部、4は段ボールトレイ箱に設けた緩衝用発泡スチロールとの嵌合用穴、5はトレイ箱形態を固定するためのフラップ部、6は折り曲げ用の罫線、11は長側面部、12は短側面部である。
【0009】
以下、図1〜図3を参照してこの発明の実施の形態1を説明する。
これらの図において、一枚の段ボール板から、折り曲げ加工により、四方向の側面部を段ボール箱の内向きに、底面部に対して開口部が狭くなるよう立ち上げ角度θが90度未満(70〜85度程度)になるよう立ち上げて、長側面部11に設置した固定用フラップ5を用いてワイヤー打ちや糊接着により短側面部12と固定し、段ボールトレイ箱1の形態を構成する。このとき側面部11、12の立ち上げ角度θは、段ボール板の打ち抜き型によって抜かれた四方向の長及び短側面部11、12に、予めもたせておいた傾斜角によって決定されるように折り曲げ用罫線6を入れておく。
立ち上げ角度θは90度未満であり、好ましくは70度以上85度以下が望ましい。85度以上では長側面部11の外側への倒れ傾向が大きくなり、また70度未満では発泡スチロール2との嵌合の自由度が大きく減少する。 緩衝用発泡スチロール2の段ボールトレイ箱よりの外れ度合いは、両者間の嵌合度と摩擦係数により決定され、また嵌合度は発泡スチロール材の永久変形を生じない範囲で選ばれることが好ましい。四方向の側面部の立ち上げ角度θは、全て同一である必要はなく、上記の角度範囲内で別々であっても問題ない。
【0010】
この段ボールトレイ箱1の内側の短側面部12の両端に併行してそれぞれ緩衝用発泡スチロール2を配置する。段ボールトレイ箱1の上部開口部が緩衝用発泡スチロール2の底面部に対して狭くなっているが、段ボールの持つ若干のバネ性により、上部開口部を押し広げながら挿入し、配置する。また、緩衝用発泡スチロール2は、被包装体100の外観形状等により若干違う場合もあるが、段ボールトレイ箱1の底面短側面長さとほぼ同じ幅を持った直方体を基本構造とし(段ボールトレイ箱1の底面長側面部11の長さ方向は任意とし、高さ方向は段ボールトレイ箱1の側面部の長さとほぼ同程度とする)、底面に凸部3を設け、この凸部3に嵌合するよう段ボール底面に穴4を設け、これを第一の固定とし、これと、段ボールトレイ箱1の短側面部12と緩衝用発泡スチロール2のつき合わせにより押し合わさって固定される第二の固定により、長側面部11に沿った方向への移動が抑制される。さらに、第三及び第四の固定として、長側面部11も対称する2面により第二の固定と同様なつき合わせにより、お互いに押し合わさって短側面部12に沿った方向への移動が抑制される。そして、第二〜第四の側面部は内向きに90度未満になるよう立ち上げているため、緩衝用発泡スチロール2の三方向の側面側を挟み込むような形態となり、これにより上方向への外れも防止され、接着材等を用いずに段ボールトレイ箱1に緩衝用発泡スチロール2を嵌め込むだけの作業にて、これらを固定することが可能となる。
【0011】
[実施の形態2]
図4は、この発明の実施の形態2による包装構造体の斜視説明図である。
図5は、この発明の実施の形態2による段ボールトレイ箱の展開図である。
図6は、差し込み用凸部8と差し込み穴部9の組み立て拡大図説明である。
図7は、この発明の実施の形態2を用いて被包装体(空気調和機の室外機等)を梱包した包装体の全体図である。
図において、7はトレイ箱形態を固定するためのフラップ部、8はトレイ箱形態を固定するためフラップ部7の先端に設けた差し込み用凸部、81は差込み凸部の返し部、9は差し込み凸部8用の差し込み穴部、10は包装構造全体を結束する結束用バンド、100は被包装体である。
【0012】
以下、図を参照してこの発明の実施の形態2を説明する。
図4は、発明の実施の形態1による段ボールトレイ箱1において、短側面部12を伸ばしたフラップ7を更に延長し、先端に差し込み用凸部8を設け、また、この凸部8の差し込み固定用の穴9を長側面部11の相対位置に設ける。凸部8は、組み立て時に穴9に容易に差し込みができるように、先端は傾斜角を持った形状とし、また、差し込んだ際に安易に抜けるのを防ぐため返し部81を有しており、一旦差し込んだ後はこの返し部81が穴9の縁に引っかかる構造となるように返し部81の寸法は穴9の長さよりも若干長くする。また、この凸部8は、長側面部11において、緩衝用発泡スチロール2の存在しないところまでフラップ7を伸ばした位置に配置し、穴9もこれに合わせた位置に配置することにより、緩衝用発泡スチロール2の形状変更等をしなくても、段ボールトレイ箱1への嵌め込みに対し、阻害しない構造となる。
【0013】
また、このフラップ7が物流や荷扱い等による外部の作用により、差し込み部の外れやたるみが発生することが起こり得る。しかし、被包装体100及び天面部等の全ての包装を組み合わせた包装最終形態において、結束用のバンド10を周回させてこれらを固定する際に、結束用バンド10をそれぞれのフラップ7を抑える位置に掛けることにより、差し込み用凸部8の外れやたるみの発生を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
これらの発明の実施の形態は、空気調和機の室外機だけでなく、段ボールトレイ箱に段ボールトレイ箱の側面部12と同じ幅を持った発泡スチロール2等の緩衝材等を配置するようなものであれば、何にでも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1による包装構造体の斜視説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1による包装構造体の段ボールトレイ箱と緩衝用発泡スチロールの嵌合図である。
【図3】この発明の実施の形態1による包装構造体の段ボール展開図である。
【図4】この発明の実施の形態2による包装構造体の斜視説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2による包装構造体の段ボール展開図である。
【図6】この発明の実施の形態2による包装構造体の段ボール差し込み固定部の組み立て拡大説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2を用いた被包装体(空気調和機の室外機等)を梱包した包装体の全体図である。
【符号の説明】
【0016】
1 段ボールトレイ箱、2 緩衝用発泡スチロール、3 緩衝用発泡スチロールの差し込み用凸部、4 緩衝用発泡スチロールの差し込み用穴、5 トレイ箱形態を固定するためのフラップ部、6 段ボール折り曲げ用罫線、7 トレイ箱形態を固定するためのフラップ部、8 差し込み用凸部、81 凸部の返し部、9 差し込み用穴、10 結束用バンド、11 長側面部、12 短側面部、100 被包装体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装体が配置される包装材の底面用段ボールトレイ箱において、段ボールトレイ箱の上部の開口部を底面部面積に対して狭面積とするために、該底面部より立ち上がる四方向の側面部の立ち上げ角度を90度未満とし、この四方向の側面部の内向きの傾斜を維持固定するための手段を有することを特徴とする包装構造体。
【請求項2】
前記四方向の側面部の内向きの傾斜を維持固定するための手段が、段ボールトレイ箱の短側面部に設けたフラップ部の延長した先端に設けられ、抜け防止のための返し部を有する凸形状部と、長側面部に設けられ、該凸形状部が差し込まれる固定用の穴部とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装構造体。
【請求項3】
前記請求項2に記載の包装構造体2個を狭面積側を対向して配置し、その間に被包装体を設置する包装体であって、該包装体の外周部を前記包装構造体のフラップ部を含め複数の結束バンドで抑えることを特徴とする包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−234603(P2009−234603A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81302(P2008−81302)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】