説明

包装袋の製造方法および製造装置

【課題】シール部の強度を保持しつつ、エッジ切れの発生を防止することができる穀物などの粒状物を包装する包装袋の製造方法および製造装置の提供を目的としている。
【解決手段】2以上のヒータ線と、ヒータ線に対向するように配置された受け部を備え、ヒータ線と受け部とで合成樹脂フィルムを挟持する挟持圧力をかけ、ヒータ線のうちの任意のヒータ線のみを通電し、他のヒータ線ついては通電しないことによって、通電時に任意のヒータ線にて加熱される合成樹脂フィルムが軟化した状態においても、通電していない他のヒータ線と受け部とで挟持圧力を受取めることで、通電したヒータ線が合成樹脂フィルムの厚み方向に押し込まれずに合成樹脂フィルムが融着され、シール部と融着していない合成樹脂フィルムとの境界部に応力が集中する薄肉部が形成されることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物などの粒状物を包装する合成樹脂フィルム製の包装袋の製造方法および製造装置に係り、更に詳しくは合成樹脂フィルムの融着された部分と融着されていない部分との境界部において発生するエッジ切れを防止する包装袋の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーなどで販売されている米などの穀物類は、ポリエチレンなどの合成樹脂フィルム製の包装袋に充填された状態で店頭に陳列されている。
これらの包装袋は、ヒートシールやインパルスシールなどと言われる方法によって、合成樹脂フィルムを重ね、その端部をヒータ線によって押えた状態で通電し、合成樹脂フィルムを軟化、融着することによってシール部を形成し、袋状にしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このシール方法は、合成樹脂フィルムをヒータ線とこれに対向する受け部で押えた状態で融着を行うことから、圧力がかかっているところに合成樹脂フィルムが加熱によって軟化するため、シール部分は図5(b−2)に示すように、厚み方向につぶれた状態で融着されることになる。
そして、合成樹脂フィルムを挟持する圧力が高い場合には、特に、融着した部分が薄くなり、融着していない部分との境界部において応力が集中する薄肉部ができてしまうことになる。そして、運搬時など、この境界部分に力がかかると境界部に沿って合成樹脂フィルムが簡単に切れてしまうという、いわゆるエッジ切れという現象が発生するという問題があった。
【0004】
このようなエッジ切れを防止するためには、挟持する圧力を弱くすれば良いことになるが、挟持する圧力を弱くしすぎると、ヒータ線と受け部には合成樹脂フィルムを挟持するためだけの僅かな圧力しかかからないことから、受け部や合成樹脂フィルムにごく僅かな厚さむらがあると、薄い部分には合成樹脂フィルムを融着するために必要な最小限の圧力がかからず、シール部の融着が不完全になってしまうことになる。
また、上記厚さむらが全くない場合でも、合成樹脂フィルムに薄肉部が形成されないような適当な挟持圧力を設定しようとすると、その圧力は合成樹脂フィルム毎に異なることとなることから、合成樹脂フィルム毎に挟持する圧力の設定を変更することとなり、その結果、製造速度が遅くなったり、製造装置が複雑になってしまうことになる。
従って、シール部の融着を完全なものとするためには、ヒータ線と受け部にある程度の挟持圧力を掛けざるを得ず、その結果、合成樹脂フィルムを挟持する圧力が高くなってしまい、図5(b−2)のように自ずと合成樹脂フィルムのシール部は厚み方向につぶされた状態で融着されることとなり、合成樹脂フィルムに薄肉部ができやすくなってしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、シール部の強度を保持しつつ、エッジ切れの発生を防止することができる穀物などの粒状物を包装する包装袋の製造方法および製造装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る包装袋の製造方法は、米、穀物などの粒状物の包装袋の製造方法において、通電することによって、複数枚の合成樹脂フィルムの端部を融着してシール部を作製する2以上のヒータ線と、ヒータ線に対向するように配置された受け部を備え、ヒータ線と受け部とで合成樹脂フィルムを挟持する挟持圧力をかけ、ヒータ線のうちの任意のヒータ線のみを通電し、他のヒータ線ついては通電しないことによって、通電時に任意のヒータ線にて加熱される合成樹脂フィルムが軟化した状態においても、通電していない他のヒータ線と受け部とで挟持圧力を受取めることで、通電したヒータ線が合成樹脂フィルムの厚み方向に押し込まれずに合成樹脂フィルムが融着され、シール部と融着していない合成樹脂フィルムとの境界部に応力が集中する薄肉部が形成されることを防止するように構成されているものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る包装袋の製造方法は、2以上のヒータ線のうち、通電するヒータ線は、合成樹脂フィルムに印刷されているバーコードによって選択されるように構成されているものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る包装袋の製造装置は、通電することによって、複数枚の合成樹脂フィルムの端部を融着してシール部を作製する2以上のヒータ線と、ヒータ線に対向するように配置された合成樹脂フィルムを挟持する受け部を備え、ヒータ線のうちの任意のヒータ線のみを通電し、他のヒータ線ついては通電しないように構成されているものである。
【0009】
本発明において使用される合成樹脂フィルムとしては、加熱によって軟化して融着し、冷却することによって再度フィルム状に戻るものであれば、特に材質には限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂などの熱可塑性樹脂で作製されたフィルムがあげられる。
【0010】
また、合成樹脂フィルムの構造としては、少なくとも内面が上記樹脂などで構成され、加熱によって融着が可能なものであればよく、1種類の樹脂で作製されたフィルムでもよいし、ポリアミド樹脂とポリエチレン樹脂などの2種以上の樹脂で作製された2層以上の構造を持つ複合フィルムを用いてもよい。また、複合フィルムを用いる場合は、内面材が融着可能な状態になっていればよく、外面材は紙などのような非融着性の材質を用いてもよい。
【0011】
さらに、本発明において使用される合成樹脂フィルムの形状としては、予め筒状に成形された状態となっているものを用いても良いし、複数枚の合成樹脂フィルムを重ねて三方または四方を融着するものであってもよい。
【0012】
本発明において使用されるヒータ線は、通電することによって発熱し、複数枚の合成樹脂フィルムを軟化して、フィルム同士を融着するものであれば特に限定されず、例えば、ヒートシールやインパルスシールなどに使用されるヒータ線などが挙げられる。なお、軟化した合成樹脂フィルムがヒータ線に貼りついて取れなくなることを防止するためには、ヒータ線の表面をテフロン(登録商標)シートなどで覆っておくことが好ましい。
【0013】
本発明において使用されるヒータ線は、2以上のヒータ線を必要とし、且つ、任意のヒータ線にのみ通電し、その他のヒータ線には通電しないことが必要である。
すなわち、ヒータ線が2以上あることによって、通電するヒータ線と通電しないヒータ線を作ることができ、その内の任意のヒータ線にのみ通電して他のヒータ線には通電しないことによって、任意のヒータ線に通電されて合成樹脂フィルムが軟化した際にも、通電しないヒータ線と受け部にて挟持されている合成樹脂フィルムは軟化しないことから、合成樹脂フィルムを挟持している間隔がほとんど変化しない状態を作り出すことができるのである。
本発明において挟持圧力を受取めるとは、上記した構成とすることによって合成樹脂フィルムを挟持している間隔が合成樹脂フィルムの軟化時においてもほとんど変化しない状態を作り出すことを指すものである。
そして、上記した構成とすることによって、通電されて合成樹脂フィルムが軟化した際にも任意のヒータ線が厚み方向に押し込まれることなく融着されることとなり、融着後のシール部にエッジ切れが発生するような薄肉部が形成されることを防止できるのである。
【0014】
ここで、ヒータ線が2本の場合には、通電するヒータ線と通電しないヒータ線はそれぞれ1本となるが、ヒータ線が3本以上ある場合には、所望する包装袋に応じて、通電しないヒータ線を設けておけば複数のヒータ線に通電してもよい。
【0015】
また、2以上のヒータ線の配置については、合成樹脂フィルムが挟持できるようになっていれば、特に限定されないが、シール部にシワができないように合成樹脂フィルムをピンと張った状態で融着させるためには、融着する方向に対して並行に配置することが好ましい。
【0016】
なお、インパルスシールの場合は、通電する電流、電圧および通電時間については、ヒータ線が一時的に発熱して合成樹脂フィルムを軟化して融着することができる温度であって、且つ、過剰加熱による支障を招かない範囲であれば、特に限定されない。また、ヒートシールの場合も同様であって、いずれの場合もヒータ線の加熱条件は使用する合成樹脂フィルムの種類、枚数などによって決定されることになる。
【0017】
なお、合成樹脂フィルムの情報を予め入力したバーコードを合成樹脂フィルムに印刷しておき、そのバーコードを読み取り装置などが読み取った後、製造装置内に設けられた制御手段などがその情報に基づいて選択されるヒータ線にのみ通電するようにしておくことで、装填される合成樹脂フィルムごとに通電するヒータ線の設定をオペレータがその都度変更する必要がなくなり、各種の合成樹脂フィルムごとに迅速に対応することができる。
【0018】
本発明において使用される受け部としては、上記したヒータ線に対向する位置に配置され、合成樹脂フィルムを挟持できるものであれば、材質や形状などには特に限定されず、また、対向する位置に同じヒータ線を用いることもできる。
ここで、合成樹脂フィルムや受け部の厚さむらによる不具合をより防止するためには、剥離性がよく、且つ、耐熱性を持つシリコンゴムなどの弾性体を用いることが好ましい。
【0019】
本発明において合成樹脂フィルムを挟持する圧力は、少なくとも複数の枚数の合成樹脂フィルムを加熱して融着するだけの圧力が必要である。
従って、合成樹脂フィルムを挟持する圧力は、使用する合成樹脂フィルムの種類、枚数などによって決定されることになるが、従来のヒータ線が1本の場合において設定されていた時と略同等の圧力、または僅かに強い圧力で挟持することが好ましい。
その理由は、その程度の圧力があれば、ヒータ線が増えても、シール部の融着が不十分になることがなく、シール部の強度を確保し得るからである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る包装袋の製造方法および製造装置によれば、通電することによって、複数枚の合成樹脂フィルムの端部を融着してシール部を作製する2以上のヒータ線と、ヒータ線に対向するように配置された受け部を備え、ヒータ線と受け部とで合成樹脂フィルムを挟持する挟持圧力をかけ、ヒータ線のうちの任意のヒータ線のみを通電し、他のヒータ線ついては通電しないことによって、通電時に任意のヒータ線にて加熱される合成樹脂フィルムが軟化した状態においても、通電していない他のヒータ線と受け部とで挟持圧力を受取めるように構成している。
従って、通電するヒータ線と受け部によって挟持している合成樹脂フィルムが厚み方向に押し込まれた状態で薄肉部を形成するような融着がなされることを防止することができ、その結果、作成されたシール部の強度を維持しつつ、シール部と融着していない合成樹脂フィルムとの境界部に応力が集中する薄肉部が形成されず、エッジ切れの問題を解決することができる。
【0021】
また、本発明に係る包装袋の製造方法および製造装置によれば、通電するヒータ線を選択することができることから、作製される包装袋のシール位置を適宜変更することもできる。
従って、長尺の合成樹脂フィルムに商品名などが印刷されている間隔、いわゆる印刷ピッチが若干異なる各種の包装袋用の合成樹脂フィルムにおいても、種類ごとにシール部の両端部の長さ、すなわち袋の耳の長さを変えることによって、包装袋の内部容積に応じた適正なシール位置で合成樹脂フィルムを融着して包装袋を製造することができる。
【0022】
特に、合成樹脂フィルムの切断部に最も近いヒータ線に通電して、合成樹脂フィルムを融着すれば、耳の長さを短くすることもできる。
これらの耳は従来から無駄となっていた部分であったことから、耳の長さを短くすることができる本発明は包材の無駄を減らすことにつながり、近年、重要視されている省資源などの環境面の観点からも有用な効果をもたらすものである。
また、穀物類を取り扱う業界にとっても、袋として使用できる合成樹脂フィルムをみすみす耳に使用していた状況を改善できることから、無駄なコストの発生を防止することができる。
なお、耳の長い印刷ピッチになっている従来の包材についても、ヒータ線の選択をするだけで使用できることから、かなりの量の在庫を抱えているこれら従来の包材を廃棄することなく使用でき、包材の無駄を防止することができる。
【0023】
また、本発明に係る包装袋の製造方法および製造装置によれば、合成樹脂フィルムに印刷されているバーコードを読み込むことで、通電するヒータ線を選択することができるので、装填される合成樹脂フィルムごとに通電するヒータ線の設定をオペレータがその都度変更する必要がなくなり、印刷ピッチの異なるものも含め、各種の合成樹脂フィルムごとに迅速に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明をその実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
図1は本発明の第1の実施形態に係る包装袋の製造方法(下シール工程)とフィルム切断工程を示す側面図であり、図2は本発明の第2の実施形態に係る包装袋の製造方法(上シール工程)を示す側面図である。
図1において、1は合成樹脂フィルム、2はヒータ線、3は受け部、4は切断刃、5はフィルム押さえ機構、6は絶縁テープ、7はテフロン(登録商標)シート、8は下シール、9は下の耳、10は包装袋であり、図2において、2はヒータ線、3は受け部、6は絶縁テープ、7はテフロン(登録商標)シート、10は包装袋、11は上シール、12は上の耳、13は穀物などが充填された包装体である。
【0025】
また、図3は本発明に係る包装袋の製造方法を用いた包装袋の製造装置を示す側面図であり、図4は下シール工程と上シール工程内におけるヒータ線の制御の流れを示すブロック図である。
図3において、8は下シール、9は下の耳、10は包装袋、14は製造装置、15は下シール工程、16はフィルム切断工程、17は保持工程、18は上シール工程、19はローラ、20はフィルム送り機構、21はレール、22はホッパ、23は上下に伸縮自在のホッパ出口、24は種類情報読み取り手段であり、図4において、24は種類情報読み取り手段、25は制御管理手段、26はフィルム情報出力手段、27はフィルム情報記憶手段、28はヒータ線制御手段である。
【0026】
以下、包装袋の製造工程に沿って、上記のように構成された包装袋の製造方法および製造装置の作用を説明する。
【0027】
まず、図3に示すように、製造装置14に装填されたロール状に巻いた長尺筒状の合成樹脂フィルム1はローラ19等を用いて、種類情報読み取り手段24を通り、下シール工程15に送られる。
【0028】
ここで、種類情報読み取り手段24は、図4に示すように合成樹脂フィルム1に印刷されたバーコード(図示せず)から合成樹脂フィルム1ごとの種類情報を読み取り、その種類情報を製造装置14の全ての運転を管理する制御管理手段25内のフィルム情報出力手段26に送る。
フィルム情報出力手段26では、送られた合成樹脂フィルム1の種類情報に対応する、合成樹脂フィルム1ごとに決定される通電するヒータ線の情報をフィルム情報記憶手段27から出力し、ヒータ線制御手段28に送る。
ヒータ線制御手段28では送られたフィルム情報に基づいて下シール工程15と上シール工程18内のヒータ線2内の所定のヒータ線(ここでは、2aと2e)に通電する。
【0029】
次に、下シール工程15とフィルム切断工程16では、ヒータ線制御手段28の制御に基づいて、図1に示すように、装填された合成樹脂フィルム1の下シール8となるヒータ線(ここでは、2a)にのみ通電して下シール8を作製し、下シール8の下部を合成樹脂フィルム1の長手方向に直行する方向にて切断する。
具体的には、図1(a)に示すように、下シール工程15に送られた合成樹脂フィルム1は、図1(b)において、ヒータ線2と受け部3によって挟持され、装填された合成樹脂フィルム1の下シール8となるヒータ線(ここでは、2a)にのみ通電して下シール8を作製する。そして、下シール8の作製と略同時に、下シール8の下方に位置する切断刃4によって、下シール8の下部を切断する。この下シール8から切断された合成樹脂フィルム1の端部までが下の耳9となる。なお、本実施の形態においては、切断刃4の下方には、切断刃4によって合成樹脂フィルム1を切断しやすくするために、合成樹脂フィルム1の押さえ機構5が設けられている。
【0030】
ここで、図1(b−1)は、図1(b)において通電される前の、ヒータ線2と受け部3とで合成樹脂フィルム1が挟持されている状態を示す拡大図であり、図1(b−2)は、図1(b)においてヒータ線2aに通電し、合成樹脂フィルム1が軟化し、融着している状態を示す拡大図である。
図1(b−2)に示すように、ヒータ線2a以外のヒータ線2b、2cは、通電されないことから、合成樹脂フィルム1を挟持した状態におけるヒータ線2と受け部3との距離rは、ヒータ線2aに通電して合成樹脂フィルム1が軟化した際にもほとんど変化しないこととなる。
従って、合成樹脂フィルム1はヒータ線2aによってシール部が薄くなるほど厚み方向に押し込まれることなく融着されることから、いわゆるエッジ部が形成されることを防止することができる。
ここで、製造する包装袋の形態によっては、通電するヒータ線を2a、2b、2cのうちのいずれかにしても良いし、2a、2b、2cのうちのいずれか2本について通電して、残りの1本を通電しないようにすることもできる。また、本実施例においては、ヒータ線の数を3本にしているが、使用する合成樹脂フィルムに応じてヒータ線の本数をもっと増やしたものとしてもよい。
【0031】
図5は従来の下シール工程とフィルム切断工程を示す図である。なお、106は絶縁テープであり、107テフロン(登録商品)シートである。
ここで、従来の下シール工程101では、ヒータ線102が1本しかなく、この1本のヒータ線102と受け部103のみで合成樹脂フィルム1の挟持と合成樹脂フィルム1の融着を行っている。
従って、図5(b−2)に示すように、ヒータ線102に通電し、合成樹脂フィルム1が軟化した場合には、合成樹脂フィルム1はヒータ線102によって厚み方向に押し込まれた状態で融着されることになる。その結果、合成樹脂フィルム1の下シール108は薄くなり、境界部には応力が集中するエッジ部109が形成されることになる。
【0032】
次に、下シール8の作製と切断が行われた合成樹脂フィルム1は、図3に示すようにフィルム送り機構20にて、フィルム情報出力手段26によって出力された寸法情報に基づいて所定の寸法だけ下方に送られる。
送られた合成樹脂フィルム1は、次の包装袋10の下シール工程15とフィルム切断工程16が実施される。その結果、下方部分のみに下シール8が形成されて上方部分にはシール部が形成されていない包装袋10が作製されることになる。
【0033】
次に、保持工程17では、上記工程において作成された包装袋10の上端部を短手方向の両端位置で挟んで保持し、包装袋10に内容物を充填する充填工程(図示せず)、および上シール工程18に移動させる。
図6は包装袋を充填工程および上シール工程に移動させるための保持工程を示す平面図であり、図7は保持工程を示す側面図である。
ここで、保持工程17は、図6(a)、(b)に示すような、開閉可能な一対のクランプ29となっており、図7のように包装袋10を保持する。また、保持工程17は、包装袋10の短手方向の両端を挟持した状態でレール21上を横方向に移動することができる。
なお、本実施の形態においては、包装袋10を立てた状態にて保持していることから、保持工程17には、充填工程(図示せず)や上シール工程18への移動中に保持位置よりも上方に位置する部分の包装袋10が折れ曲がってこないように、包装袋10を長手方向にガイドするリード部材30が設けられている。本リード部材30があることによって、リード部材30の上方に包装袋10が50mm程度出ている状態であっても、その部分が折れ曲がることなく工程間を移動させることができる。
【0034】
なお、充填工程では、袋に内容物を充填させるために上記包装袋10を開口させる必要がある。そこで、保持工程17には、包装袋10を開口させる際の遊びを作るために、クランプ29を包装袋10の内側方向に移動させるスライド機構31が設けられている。
【0035】
次に、包装袋10は図8に示すように充填工程(図示せず)、および上シール工程18に移動される。図8は、包装袋を充填工程および上シール工程に移動させる際の状態を示す模式図である。
充填工程では、上シール11がまだ形成されていない側の包装袋10の上端部を開口させ、ホッパ出口23をその開口端部より被充填物が飛散しないところまで下方に伸ばして、ホッパ22から内容物を充填する。包装袋10の上端部を開口させる手段については、上記の通り包装袋10を吸引して、開口させる機能を持つ吸盤(図示せず)などを設けることによって行うことができる。
【0036】
なお、充填工程および上シール工程18が実施される際においては、包装袋10は移動することがないことから、上記工程の実施の際においては、保持工程17によって使用したリード部材30付きのクランプ29から、包装袋10の上端より僅かに下方を保持するガイドがついていないクランプ(図示せず)への持ち変えを行わせることによって、さらに包装袋10の上端、すなわち切断部の際の部分をシールすることもできる。
【0037】
最後に、上シール工程18では、充填工程によって内容物の充填が終了し、ホッパ出口23が上方に縮んだ状態になった後に包装袋10の上端をシールする。
図2に示すように、上シール工程18においても下シール工程15と同様にヒータ線制御手段28の制御に基づいて、装填された包装袋10の上シール11となるヒータ線(ここでは、2e)にのみ通電し、上シール11を作製することで、上の耳12が形成された穀物などが充填された包装体13が完成する。
【0038】
ここで、図2(b−1)は、図2(b)において通電される前の、ヒータ線2と受け部3とで包装袋10が挟持されている状態を示す模式図であり、図2(b−2)は、図2(b)においてヒータ線2eに通電し、包装袋10が軟化している状態を示す模式図である。
図2(b−2)に示すように、ヒータ線2e以外のヒータ線2dは、通電されないことから、包装袋10を挟持した状態におけるヒータ線2と受け部3との距離rは、ヒータ線2eに通電して包装袋10が軟化した際にもほとんど変化しないこととなる。
従って、合成樹脂フィルム1はヒータ線2eによって厚み方向に押し込まれることなく融着されることから、いわゆるエッジ部が形成されることを防止することができる。
ここで、製造する包装袋の形態によっては、通電するヒータ線を2dとし、通電しないヒータ線を2eにすることもできる。また、本実施例においては、ヒータ線の数を2本にしているが、使用する合成樹脂フィルムに応じてヒータ線の本数をもっと増やしたものとしてもよい。
【0039】
次に、上記方法によって作製した包装袋と従来の方法によって作製した包装袋について、シール部の強度の比較を行った。
まず、厚み0.15mm、幅2mm、抵抗2Ωのニクロム製のヒータ線を用い、ヒータ線を3本にしてそのうちの1本のみに通電することによって作製した包装袋と、通電していなかった2本のヒータ線を取り外し、ヒータ線を1本のみにしてそれに通電することによって作製した包装袋を準備した。なお、合成樹脂フィルムには厚さ0.06mmのポリエチレン製フィルムを用い、通電電圧を35Vにして、通電時間を変化させて作製した。
そして、作製したそれぞれの包装袋から長手方向の中央にシール部が直行するように、幅35mm、長さ40mmの短冊状の試験サンプルを切り出して引張試験を行った。なお、試験条件としては、チャック間距離:10mm、引張速度:80mm/secの条件にて行い、シール部が破断した数値を測定した。
図9は、本発明における製造方法で製造した包装袋のシール部の引張強度試験の結果を示した図である。
図9の結果から、通電時間を変化させた場合においても、本発明における製造方法で製造した包装袋のシール部は従来のシール部に比べて高い引張強度を示していることから、本発明はエッジ切れの原因となる薄肉部の形成を防止できるものであることがわかった
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、穀物などの粒状物を包装する包装袋の製造に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る包装袋の製造方法(下シール工程)とフィルム切断工程を示す側面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る包装袋の製造方法(上シール工程)を示す側面図である。
【図3】本発明に係る包装袋の製造方法を用いた包装袋の製造装置を示す側面図である。
【図4】下シール工程と上シール工程内におけるヒータ線の制御の流れを示すブロック図である。
【図5】従来の下シール工程とフィルム切断工程を示す図である。
【図6】包装袋を充填工程および上シール工程に移動させるための保持工程を示す平面図である。
【図7】保持工程を示す側面図である。
【図8】包装袋を充填工程および上シール工程に移動させる際の状態を示す模式図である。
【図9】本発明における製造方法で製造した包装袋のシール部の引張強度試験の結果を示した図である。
【符号の説明】
【0042】
1 合成樹脂フィルム
2 ヒータ線
3 受け部
4 切断刃
5 フィルム押さえ機構
6 絶縁テープ
7 テフロン(登録商標)シート
8 下シール
9 下の耳
10 包装袋
11 上シール
12 上の耳
13 包装体
14 製造装置
15 下シール工程
16 フィルム切断工程
17 保持工程
18 上シール工程
19 ローラ
20 フィルム送り機構
21 レール
22 ホッパ
23 ホッパ出口
24 種類情報読み取り手段
25 制御管理手段
26 フィルム情報出力手段
27 フィルム情報記憶手段
28 ヒータ線制御手段
29 クランプ
30 リード部材
31 スライド機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米、穀物などの粒状物の包装袋の製造方法において、通電することによって、複数枚の合成樹脂フィルムの端部を融着してシール部を作製する2以上のヒータ線と、前記ヒータ線に対向するように配置された受け部を備え、前記ヒータ線と前記受け部とで前記合成樹脂フィルムを挟持する挟持圧力をかけ、前記ヒータ線のうちの任意のヒータ線のみを通電し、他のヒータ線ついては通電しないことによって、通電時に前記任意のヒータ線にて加熱される前記合成樹脂フィルムが軟化した状態においても、通電していない前記他のヒータ線と前記受け部とで挟持圧力を受取めることで、通電した前記ヒータ線が前記合成樹脂フィルムの厚み方向に押し込まれずに前記合成樹脂フィルムが融着され、前記シール部と融着していない前記合成樹脂フィルムとの境界部に応力が集中する薄肉部が形成されることを防止する米、穀物などの粒状物の包装袋の製造方法。
【請求項2】
前記2以上のヒータ線のうち、通電するヒータ線は、前記合成樹脂フィルムに印刷されているバーコードによって選択されることを特徴とする請求項1に記載の穀物などの粒状物の包装袋の製造方法。
【請求項3】
通電することによって、複数枚の合成樹脂フィルムの端部を融着してシール部を作製する2以上のヒータ線と、前記ヒータ線に対向するように配置された前記合成樹脂フィルムを挟持する受け部を備え、前記ヒータ線のうちの任意のヒータ線のみを通電し、他のヒータ線ついては通電しないことを特徴とする米、穀物などの粒状物の包装袋の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−111429(P2010−111429A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287548(P2008−287548)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000151863)株式会社東洋精米機製作所 (11)
【Fターム(参考)】