説明

包装袋

【課題】例えば食パンなどのようにソフトさを維持することが重要な物品の包装において、余分な水蒸気を逃がしつつも、過剰な乾燥を抑えることができるようにする。
【解決手段】シート材で構成され、開口部12と通気穴13を有する包装袋11において、前記通気穴13を複数個、隙間を隔てて直線状に配設するとともに、該通気穴13の列を、前記開口部12を有する辺と直交する方向に沿って、開口部12から底シール部15にかけての全体にわたって表裏両面に形成する。これによって、包装した物品に対して全体的な通気を可能としつつ、流通する空気に物品がさらされるのを抑える。また通気穴13の列は幅方向の中間部に形成して、物品を包装したときに必ず通気穴13が通気作用を行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば食パンなどのように所定の水分を含んだ物品を包装するのに好適な包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の包装の仕方は、包装される物品の種類に応じて変えられるのが通常である。
【0003】
前述の例の食パンにおいては、ソフトな状態を維持するためビニール袋に収納されている。
【0004】
しかし、冷却が不十分な熱い食パンを包装すると、包装袋の内部に水蒸気が溜まって包装袋の内面が曇ってしまうことが多々ある。特に夏季においては冷房がかかっているので包装袋の内外での温度差が大きく、包装袋内の結露が顕著となる。この場合、パンが水滴を吸ってベチャベチャになって、商品価値を損なうことになる。
【0005】
このため、パンから出る余分な水蒸気を逃がすために通気穴をあけることが行われている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3010770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の包装袋は、左右両側がシールされた偏平な袋の片方のシート材における上下方向の中間部からやや下側部分の範囲に多数の通気穴を備えている。この通気穴は直径200μmの大きさで、1平方cmあたりに1〜10個形成される。
【0008】
このような構成により、焼きたてパンの水蒸気を通気穴から外部へ放散して結露を防止できるとともに、清潔性を保持できると記載されている。
【0009】
しかし、通気穴は片面の一部分に集中的に形成され、しかも前述のように水蒸気の大きさ0.0004μmよりも遥かに大きさが大きいので、通気穴がある部分では乾燥しやすく、反対側では結露が生じるという難点がある。特に、店内では通常、空気調和機が駆動しているので、通気孔に対応する部分を中心として容易に乾燥し、特にパンが食パンの場合には商品価値を損なうほどに固くなってしまうおそれがある。
【0010】
また、直径200μmの通気穴は、大きさが1μm〜100μmであるほこりよりも大きいため、衛生的な面でも難点がある。
【0011】
そこで、この発明は、包装される物品の余分な水蒸気を逃がしつつも、過剰な乾燥を抑えることができるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、シート材で構成され、開口部と通気穴を有する包装袋であって、前記通気穴が複数個、隙間を隔てて直線状に配設されるとともに、該通気穴の列が前記開口部を有する辺と直交する方向に沿って、少なくとも包装される物品を覆う範囲の表裏両面に形成された包装袋である。
【0013】
別の手段は、前記包装袋の開口部を開く開放工程と、該開放工程で開放された開口部から食パンを収納する収納工程と、該収納工程で収納された食パンと包装袋との間の空気を排出する空気抜き工程と、該空気抜き工程で空気を抜いた状態のまま開口部を閉じる閉鎖工程を有する食パン包装方法である。
【0014】
前記の包装袋では、複数個の通気穴が開口部を有する辺と直交する方向に沿って直線状に配設されるので、通気穴は包装袋の表裏両面において底から開口部まで全体的に存在することになり、包装された物品に対して全体的な通気を確保しつつ、流通する空気に物品が直接さらされるのを抑える。また通気穴の大きさによっては、通気穴が外部からほこりや水が入るのを防止する。
【0015】
前述の食パン包装方法では、開放工程、収納工程の後、空気抜き工程において食パンと包装袋との間の熱い空気を排出させてから閉鎖工程で開口部を閉じるので、空気抜き工程において、収納した直後の結露を生じやすい空気を積極的に排出することができる。閉鎖工程のあとは、特異な態様で設けられた通気穴を通しての空気の流通により内部の結露を防止するとともに、流通する空気に食パンが直接さらされる範囲を小さく抑える。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、包装される物品の余分な水蒸気を逃がしつつも、過剰な乾燥を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】食パンを包装した包装袋の斜視図。
【図2】包装袋の平面図。
【図3】包装袋の製造工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、包装袋11の使用状態を示す斜視図であり、この例では、包装される物品の一例としての食パンXを包装している。また、図2は包装袋11の平面図である。
【0019】
これらの図に示すように、包装袋11は透明又は半透明の合成樹脂製のシート材で構成され、物品を出し入れする開口部12と、内外での通気を行う複数個の通気穴13を有している。
【0020】
包装袋11は、図3(a)に示したように、内側に折り込まれる折り込み部14aを左右両側に有したチューブ状の基材14を用いて製造される。基材14の長手方向の一端(底部)は底シール部15で、他端(上端)に前記開口部12が形成されている。
【0021】
前記通気穴13は、隙間を隔てて直線状に配設され、包装袋11の長手方向全体の表裏両面に形成される。この通気穴13の列は、前記開口部12を有する辺と直交する方向に沿って形成される。具体的には、包装袋11の幅方向の中間部に形成されている。
【0022】
これは、前記基材14が前記折り込み部14aを有するため、表裏両面のみに通気穴13を形成できるようにし、通気穴13が所望の通気作用を発揮できるようにするためである。収容する物品が食パンXの場合には、食パンXの外皮(いわゆるミミ)Xaを包装袋11の前記折り込み部14aに向けて収納するので、包装袋11の表裏両面は、食パンXの内相(外皮Xa以外の通常白い部分)Xbが露出する面に対応する面となる。
【0023】
前記通気穴13の大きさや配置は、包装される物品の性状に応じて適宜設定される。
【0024】
包装される物品が一斤の食パンXである場合、前記通気穴13は、水蒸気を通す大きさであって、直径1μmより小さい大きさdに設定される。具体的には、直径約0.3μm以上で1μmより小さい大きさ、より好ましくは0.5μm〜0.7μmであるとよい。水蒸気は0.0004μmであるため十分な通気が可能である上に、ほこりは1μm以上であるので、ほこりの侵入を阻止できるからである。通気穴13の列における通気穴13同士の間の間隔aは、例えば5mm〜10mm程度に設定するとよい。
【0025】
また、このような大きさdと間隔aの通気穴13の場合、図示例では前記通気穴13の列を2列備えており、この2列の通気穴13の位置は、列における通気穴13同士の間の間隔aの半分ずつ、列の長手方向に沿って互いにずらせてある。各列の幅方向の間隔bは、前記通気穴13同士の間の間隔aと同様に、例えば5mm〜10mm程度に設定するとよい。
【0026】
なお、同じように一斤の食パンXを包装する包装袋11であっても、通気穴13の大きさや配置によっては、通気穴13の列は1列でも、3列以上であってもよい。
【0027】
包装される物品が例えば腐葉土などように、ほこりの侵入を考慮する必要がない場合には、通気穴13の大きさは1μm以上の大きさであってもよい。
【0028】
このような構成の包装袋は、図3(a)に示したような前記基材14を基材14の長手方向に搬送しながら、図3(b)に示すように適宜の穿孔装置21で所望の通気穴13を基材14の長手方向の全体にあけて、続いてシールとカットを行う溶着カット装置22で所定長さに裁断して、製造される(図3(c)参照)。
【0029】
前記穿孔装置21としては、通気穴13が微細であるのでレーザ加工装置が好適に用いられる。レーザ加工装置であれば、ゴミも出ないので作業環境の悪化防止の点や衛生面の点でも良好である。
【0030】
また、通気穴13の列は、開口部12を有する辺と直交する方向に沿って表裏両面に形成されるので、前述のような底シール型の包装袋11では、基材14を搬送しながら通気穴13の加工ができ、この加工と一連の作業によってシールとカットができるので、作業性が良好である。
【0031】
しかも、通気穴13の列は、幅方向の中間部に形成されるので、折り込み部14aを避けて、表裏両面のみに形成することが可能で、通気穴13の数が多くなることを抑制し、通気穴13の大きさが加工しやすく、ある程度の通気を確保できて微細すぎない大きさとなるようにすることができる。
【0032】
このようにして製造された包装袋11で、一例として食パンXを包装する場合には、次のようにするとよい。
【0033】
まず、包装袋11の開口部12を開く(開放工程)。次に、開放工程で開放された開口部12からスライスした食パンXを収納する(収納工程)。このとき、食パンXの外皮Xaが折り込み部14aに、内相Xbが表裏両面に対応するように収納する。これによって、通気穴13の列が食パンXの内相Xbに対向することになる。
【0034】
続いて、収納工程で収納された食パンXと包装袋11との間の空気を排出し(空気抜き工程)、空気抜き工程で空気を抜いた状態のままビニタイ31等で開口部12を閉じる(閉鎖工程)。これにより、収納した直後の食パンXを取り巻く熱い水蒸気が一気に排出されるため、結露を生じやすい空気を積極的に排除することができることになる。この状態で、表両面に形成された通気穴13が自然な通気を実現し、余分な水蒸気を逃がしつつ、特異な態様で設けられた通気穴13によって過剰な乾燥を防ぐ。
【0035】
前述のように通気穴13の列が食パンXの内相Xbに対向することになるので、より多くの水蒸気を含んでいる内相Xbからの余分な水蒸気を逃がせる。
【0036】
この結果、夏季において、たとえ包装袋11の内外に温度差があっても、包装袋11の内面に大きな水滴ができてこれが食パンXに吸収されてしまうような事態をなくすことができる。同時に、食パンXの内相Xbが乾燥してしまうことを抑えることができる。
【0037】
また、通気穴13の列は、開口部12を有する辺と直交する方向に沿って長手方向全体にわたって表裏両面に形成されているので、包装される物品の端から端までに対して空気の通り道を確保して、全体的な通気を行うことが可能である。
【0038】
さらに、通気穴13の列は包装袋11の幅方向の中間部に形成されていることから、通気穴13は物品を包装すると物品によって必ず離間されるので、通気作用は確実に得られる。
【0039】
加えて、通気穴13を有するので、包装袋11に物品を収納するときに通気穴13が空気抜きの役割を果たすので、包装作業がし易く、包装状態も安定するという利点も有する。
【0040】
これらのような効果を有するので、前述の食パンXのほか、その他のパンやピザ、ホットドッグ、寿司飯、米飯などの食品の包装にも効果的である。
【0041】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、前述の構成以外の構成を採用することもできる。
【0042】
たとえば、包装袋は底シール型ではなく、左右両側をシールした構造のものや、左右両側と底とをシールした構造のものでもよい。
【0043】
また、包装される物品は、前述の食パンや寿司飯、腐葉土等のほか、例えば肥料などの様々な物品であってもよい。
【0044】
さらに、通気穴の列を、包装袋を開けるときに使用できるミシン目として機能するように、通気穴の大きさや間隔を設定してもよい。
【0045】
通気穴の列は、包装袋の端から端まで全体にわたって形成するのではなく、一部分に形成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
11…包装袋
12…開口部
13…通気穴
14a…折り込み部
X…食パン
Xa…外皮
Xb…内相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材で構成され、開口部と通気穴を有する包装袋であって、
前記通気穴が複数個、隙間を隔てて直線状に配設されるとともに、
該通気穴の列が前記開口部を有する辺と直交する方向に沿って、少なくとも包装される物品を覆う範囲の表裏両面に形成された
包装袋。
【請求項2】
前記通気穴の列が幅方向の中間部に形成された
請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記通気穴が、収容する食パンの内相が露出する面に対応する面に形成された
請求項1または請求項2に記載の包装袋。
【請求項4】
左右両側に内側に折り込まれる折り込み部を有する
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記通気穴が水蒸気を通す直径1μmより小さい大きさに設定された
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の包装袋の開口部を開く開放工程と、
該開放工程で開放された開口部から食パンを収納する収納工程と、
該収納工程で収納された食パンと包装袋との間の空気を排出する空気抜き工程と、
該空気抜き工程で空気を抜いた状態のまま開口部を閉じる閉鎖工程を有する
食パン包装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−49463(P2013−49463A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188532(P2011−188532)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(592121686)株式会社丸萬 (4)
【Fターム(参考)】