説明

化合物の合成方法および合成反応触媒

【課題】 パラジウムの活性を効果的に発現させ、経済的に化合物を合成できる合成反応触媒、および、その合成反応触媒が用いられる化合物の合成方法を提供すること。
【解決手段】 下記式(8)により与えられるヘックカップリング反応において、合成反応触媒として、下記一般式(1)で示され、比表面積が0.5m/gを超えて30m/g以下であるパラジウム含有ペロブスカイト型複合酸化物を用いる。
LnCu1−x−yPd4±δ (1)
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物の合成方法および合成反応触媒、詳しくは、ヘックカップリング反応による化合物の合成方法、および、その合成方法に用いられる合成反応触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘックカップリング反応(Heck Cross Couplings)の触媒として、高活性であり、さらに、反応終了後に回収して再使用可能な、パラジウム含有ペロブスカイト型複合酸化物からなる触媒が注目されている。
例えば、一般式AB1−xPdで示されるパラジウム含有ペロブスカイト型複合酸化物からなる触媒が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−314355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘックカップリング反応において、触媒活性を示すパラジウムは、高価であり、製造コストを低減するために、工業的には、パラジウム1モル当りの反応生成物のモル数(ターンオーバ数)を向上させることにより、なるべく少量で、その効果を有効に発現させることが強く望まれている。
本発明の目的は、パラジウムの活性を効果的に発現させ、経済的に化合物を合成することができる合成反応触媒、および、その合成反応触媒が用いられる化合物の合成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の化合物の合成方法は、下記一般式(1)で示され、比表面積が0.5m/gを超えて30m/g以下であるパラジウム含有ペロブスカイト型複合酸化物の存在下に、下記一般式(2)に示す化合物と、下記一般式(3)に示す化合物とを反応させることを特徴としている。
LnCu1−x−yPd4±δ (1)
(式中、Lnは、La、Pr、Nd、Sm、EuおよびGdから選択される少なくとも1種の必須成分と、Y、Ce、Yb、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種の任意成分とからなる元素を示し、Mは、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびAlから選択される少なくとも1種の元素を示し、xは、0.001≦x≦0.4の原子割合を示し、yは、0≦y≦0.5の原子割合を示し、δは、酸素過剰分または酸素不足分を示す。)
−X (2)
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Xは、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基またはメタンスルホニルオキシ基を示す。)
HC=CR (3)
(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、カルボン酸誘導体、酸アミド誘導体またはシアノ基を示す。)
また、本発明の化合物の合成方法では、上記一般式(1)において、Lnが、La、NdおよびGdから選択される少なくとも1種の元素であることが好適である。
【0006】
また、本発明の化合物の合成方法では、上記一般式(1)において、xが、0.005≦x≦0.05の原子割合を示すことが好適である。
また、本発明の化合物の合成方法では、上記一般式(2)に示す化合物と、上記一般式(3)に示す化合物とを、グリコールエーテルを含有する反応溶媒を用いて反応させることが好適である。
【0007】
また、本発明の合成反応触媒は、下記一般式(1)で示され、下記一般式(2)に示す化合物と、下記一般式(3)に示す化合物とを反応させるために用いられる、比表面積が0.5m/gを超えて30m/g以下であるパラジウム含有ペロブスカイト型複合酸化物からなることを特徴としている。
LnCu1−x−yPd4±δ (1)
(式中、Lnは、La、Pr、Nd、Sm、EuおよびGdから選択される少なくとも1種の必須成分と、Y、Ce、Yb、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種の任意成分とからなる元素を示し、Mは、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびAlから選択される少なくとも1種の元素を示し、xは、0.001≦x≦0.4の原子割合を示し、yは、0≦y≦0.5の原子割合を示し、δは、酸素過剰分または酸素不足分を示す。)
−X (2)
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Xは、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基またはメタンスルホニルオキシ基を示す。)
HC=CR (3)
(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、カルボン酸誘導体、酸アミド誘導体またはシアノ基を示す。)
また、本発明の合成反応触媒では、上記一般式(1)において、Lnが、La、NdおよびGdから選択される少なくとも1種の元素であることが好適である。
【0008】
さらに、本発明の合成反応触媒では、上記一般式(1)において、xが、0.005≦x≦0.05の原子割合を示すことが好適である。
【発明の効果】
【0009】
また、本発明の化合物の合成方法では、一般式LnCu1−x−yPd4±δで示され、比表面積が0.5m/gを超えて30m/g以下であるパラジウム含有ペロブスカイト型複合酸化物からなる合成反応触媒が用いられているので、触媒のターンオーバー数の向上により、パラジウムの使用量が少量であっても、パラジウムの活性を効果的に発現させることができる。そのため、経済的に化合物を合成することができる。
【0010】
さらに、本発明の合成反応触媒は、ヘックカップリング反応において、ターンオーバー数の向上により、パラジウムの使用量が少量であっても、パラジウムの活性を効果的に発現させることができる。そのため、経済的に化合物を合成することができる。したがって、ヘックカップリング反応における合成反応触媒として、有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】製造例1の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図2】製造例2の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図3】製造例3の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図4】製造例4の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図5】製造例5の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図6】製造例6の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図7】製造例7の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図8】製造例8の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図9】製造例9の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図10】製造例10の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図11】製造例11の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図12】製造例12の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図13】製造例13の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【図14】製造例14の粉末のX線回折のスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の化合物の合成方法は、一般式ABOで示される層状ペロブスカイト型複合酸化物の存在下において実施される。
本発明において、層状ペロブスカイト型複合酸化物は、パラジウムを含有しており、下記一般式(1)で示される。
LnCu1−x−yPd4±δ (1)
(式中、Lnは、La、Pr、Nd、Sm、EuおよびGdから選択される少なくとも1種の必須成分と、Y、Ce、Yb、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種の任意成分とからなる元素を示し、Mは、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびAlから選択される少なくとも1種の元素を示し、xは、0.001≦x≦0.4の原子割合を示し、yは、0≦y≦0.5の原子割合を示し、δは、酸素過剰分または酸素不足分を示す。)
一般式(1)において、Lnは、La、Pr、Nd、Sm、EuおよびGdから選択される少なくとも1種の必須成分を必ず含んでおり、好ましくは、La、NdおよびGdから選択される少なくとも1種を含んでいる。これらの元素は、単独でもよく、また、2種類以上併用もできる。
【0013】
また、一般式(1)において、Lnは、Y、Ce、Yb、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
たとえば、上記任意成分が含まれる場合、本発明の層状ペロブスカイト型複合酸化物は、上記必須成分をLn、任意成分をLn´として、例えば、下記一般式(1´)で示すことができる。
【0014】
(Ln1−zLn´Cu1−x−yPd4±δ (1´)
一般式(1´)において、zは、任意成分Ln´の原子割合を示しており、例えば、0.01≦z≦0.5であり、好ましくは、0.1≦z≦0.5である。すなわち、任意成分Ln´は、含有される場合には、好ましくは、0.5以下の原子割合である。
【0015】
また、一般式(1)において、Mの原子割合yは、0≦y≦0.5、すなわち、Mは、任意成分であり、含まれていてもよいし、含まれていなくてもよく、含まれる場合には、0.5以下の原子割合である。
また、一般式(1)において、Pdの原子割合xは、0.001≦x≦0.4、すなわち、0.4以下の原子割合であり、好ましくは、0.005≦x≦0.05である。Pdの原子割合が0.4を超えると、Pdが固溶しにくくなる場合があり、さらに、コストの上昇が不可避となる。また、Pdの原子割合xが、0.005≦x≦0.05であれば、触媒のターンオーバー数を一層向上させることができる。
【0016】
また、一般式(1)において、Cuは、MおよびPdの残余(1−x−y)の原子割合で、層状ペロブスカイト型複合酸化物に含まれている。
また、一般式(1)において、±δは、酸素過剰分または酸素不足分を示し、具体的には、層状ペロブスカイト型複合酸化物の理論構成比、A:B:O=2:1:4に対して、Aサイトに配位される元素を過不足にしたことにより生じる、酸素原子の過剰原子割合または不足原子割合を示している。
【0017】
また、一般式(1)において、Bサイトに配位される元素に対するAサイトに配位される元素の比(A/B=Lnの原子割合/(Mの原子割合+Cuの原子割合+Pdの原子割合)は、理論構成比ではA/B=2であるが、Aサイト配位元素の過不足により変動し、好ましくは、1.80≦A/B≦2.20である。A/Bがこの範囲であれば、層状ペロブスカイト型複合酸化物の結晶崩れを抑制でき、良好な層状結晶状態を維持することができる。
【0018】
そして、本発明において、パラジウムを含有する層状ペロブスカイト型複合酸化物の比表面積は、0.5m/gを超えて30m/g以下であり、好ましくは、1.0〜25m/gであり、さらに好ましくは、5.0〜20m/gである。なお、比表面積は、BET法により算出することができる。
このような、パラジウムを含有する層状ペロブスカイト型複合酸化物は、特に制限されることなく、例えば、Pdを含むPd原料を、Ln、Cuおよび必要により加えられるMの各元素を含む原料と混合することにより酸化物の前駆体を調製し、その前駆体を熱処理することによって製造することができる。
【0019】
具体的には、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、アルコキシド法、共沈法、クエン酸錯体法などによって、製造することができる。
アルコキシド法では、例えば、Pdを除く各元素を上記した化学量論比で含む混合アルコキシド溶液を調製し、この混合アルコキシド溶液に、Pdの塩を含む水溶液を加えて加水分解により沈殿させた後、得られた沈殿物を乾燥後、熱処理する。
【0020】
各元素のアルコキシドとしては、例えば、各元素と、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ基とから形成されるアルコラートや、下記一般式(4)で示される各元素のアルコキシアルコラートなどが挙げられる。
E[OCH(R)−(CH−OR]j (4)
(式中、Eは、各元素を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示し、iは、1〜3の整数、jは、2〜3の整数を示す。)
アルコキシアルコラートは、より具体的には、例えば、メトキシエチレート、メトキシプロピレート、メトキシブチレート、エトキシエチレート、エトキシプロピレート、プロポキシエチレート、ブトキシエチレートなどが挙げられる。
【0021】
そして、混合アルコキシド溶液は、例えば、各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比となるように有機溶媒に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
有機溶媒としては、各元素のアルコキシドを溶解できれば、特に制限されないが、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類などが用いられる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0022】
その後、この混合アルコキシド溶液に、所定の化学量論比でPdの塩を含む水溶液を加えて沈殿させる。Pdの塩を含む水溶液としては、例えば、硝酸塩水溶液、塩化物水溶液、ヘキサアンミン塩化物水溶液、ジニトロジアンミン硝酸水溶液、ヘキサクロロ酸水和物、シアン化カリウム塩などが挙げられる。
そして、得られた沈殿物を、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、900℃未満、好ましくは、600℃で熱処理(第1次熱処理)し、さらに必要に応じて、原則として1000℃未満、好ましくは、700〜800℃で第2次熱処理することにより、層状ペロブスカイト型複合酸化物を得ることができる。ただし、層状ペロブスカイト型複合酸化物の比表面積は、層状ペロブスカイト型複合酸化物の組成によっては1000℃以上の第2次熱処理でも上記した範囲内になる場合がある。その場合には、第2次熱処理の温度は、1000℃以上、1200℃以下であってもよい。
【0023】
また、このようなアルコキシド法においては、例えば、上記した混合アルコキシド溶液に、Pdの有機金属塩を含む溶液を混合して、均一混合溶液を調製し、これに水を加えて沈殿させた後、得られた沈殿物を乾燥後、熱処理することにより調製することもできる。
Pdの有機金属塩としては、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩などから形成されるPdのカルボン酸塩、例えば、下記一般式(5)または下記一般式(6)に示されるジケトン化合物から形成されるPdのジケトン錯体などの、Pdの金属キレート錯体などが挙げられる。
【0024】
COCHRCOR (5)
(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基またはアリール基、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、アリール基または炭素数1〜4のアルキルオキシ基、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
CHCH(COR10 (6)
(式中、R10は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
上記一般式(5)および上記一般式(6)中、R、R、RおよびR10の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられる。また、RおよびRの炭素数1〜4のフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチルなどが挙げられる。また、RおよびRのアリール基としては、例えば、フェニルが挙げられる。また、Rの炭素数1〜4のアルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。
【0025】
ジケトン化合物は、より具体的には、例えば、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1−トリフルオロメチル−1,3−ブタンジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、ジピバロイルメタン、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、tert−ブチルアセトアセテートなどが挙げられる。
【0026】
また、Pdの有機金属塩を含む溶液は、例えば、Pdの有機金属塩を、上記した化学量論比となるように有機溶媒に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。有機溶媒としては、上記した有機溶媒が挙げられる。
その後、このようにして調製されたPdの有機金属塩を含む溶液を、上記した混合アルコキシド溶液に混合して、均一混合溶液を調製した後、これに水を加えて沈殿させる。そして、得られた沈殿物を、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、900℃未満、好ましくは、600℃で熱処理(第1次熱処理)し、さらに必要に応じて、原則として1000℃未満、好ましくは、700〜800℃で第2次熱処理することにより、層状ペロブスカイト型複合酸化物を得ることができる。ただし、第2次熱処理の温度は、層状ペロブスカイト型複合酸化物の比表面積が1000℃以上の第2次熱処理でも上記した範囲内になる場合には、1000℃以上、1200℃以下であってもよい。
【0027】
また、共沈法では、例えば、上記した各元素の塩を所定の化学量論比で含む混合塩水溶液を調製し、この混合塩水溶液に中和剤を加え、および/または、中和剤にこの混合塩水溶液を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理する。
各元素の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。また、混合塩水溶液は、例えば、各元素の塩を、所定の化学量論比となるような割合で水に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【0028】
その後、この混合塩水溶液に、中和剤を加えて共沈させる。あるいは余剰の中和剤を含む水溶液に混合塩水溶液を徐々に滴下することにより、同様に共沈物を得ることができる。中和剤としては、例えば、アンモニア、例えば、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類などの有機塩基、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、炭酸カリ、炭酸アンモンなどの無機塩基が挙げられる。なお、中和剤は、その中和剤を加えた後の溶液のpHが、6〜14、より好ましくは、8〜12程度となるように加える。
【0029】
そして、得られた共沈物を、必要により水洗し、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、900℃未満、好ましくは、600℃で熱処理(第1次熱処理)し、さらに必要に応じて、原則として1000℃未満、好ましくは、700〜800℃で第2次熱処理することにより、層状ペロブスカイト型複合酸化物を得ることができる。ただし、第2次熱処理の温度は、層状ペロブスカイト型複合酸化物の比表面積が1000℃以上の第2次熱処理でも上記した範囲内になる場合には、1000℃以上、1200℃以下であってもよい。
【0030】
また、クエン酸錯体法では、例えば、クエン酸と上記した各元素の塩とを、上記した各元素の塩が所定の化学量論比となるように含まれるクエン酸混合塩水溶液を調製し、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させた後、得られたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。
各元素の塩としては、上記と同様の塩が挙げられ、また、クエン酸混合塩水溶液は、例えば、上記と同様に混合塩水溶液を調製して、その混合塩水溶液に、クエン酸の水溶液を加えることにより、調製することができる。
【0031】
その後、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させる。乾固は、形成されるクエン酸錯体が分解しない温度、例えば、室温〜150℃程度で、速やかに水分を除去する。これによって、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させることができる。
そして、形成されたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。仮焼成は、例えば、真空または不活性雰囲気下において250℃以上で加熱すればよい。その後、例えば、900℃未満、好ましくは、600℃で熱処理(第1次熱処理)し、さらに必要に応じて、原則として1000℃未満、好ましくは、700〜800℃で第2次熱処理することにより、層状ペロブスカイト型複合酸化物を得ることができる。ただし、第2次熱処理の温度は、層状ペロブスカイト型複合酸化物の比表面積が1000℃以上の第2次熱処理でも上記した範囲内になる場合には、1000℃以上、1200℃以下であってもよい。
【0032】
また、上記したパラジウムを含有する層状ペロブスカイト型複合酸化物には、さらにパラジウムが担持されていてもよい。パラジウムを含有する層状ペロブスカイト型複合酸化物に、さらにパラジウムを担持させるには、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、パラジウムを含む塩の溶液を調製し、この含塩溶液をパラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物に含浸させた後、焼成すればよい。この場合、パラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物に対するパラジウムの担持量は、例えば、パラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0033】
このような、パラジウムを含有する層状ペロブスカイト型複合酸化物としては、より具体的には、例えば、LaCu0.95Pd0.05、PrCu0.95Pd0.05、NdCu0.6Pd0.4、NdCu0.8Pd0.2、NdCu0.95Pd0.05、NdCu0.99Pd0.01、NdCu0.995Pd0.005、NdCu0.999Pd0.001、GdCu0.95Pd0.05、(La0.6Sr0.4Cu0.95Pd0.053.60、(La0.6Sr0.4Cu0.995Pd0.0053.55、(Gd0.6Sr0.4Cu0.94Pd0.013.95、(La0.50.5Cu0.95Pd0.05などが挙げられる。
【0034】
そして、本発明の化合物の合成方法は、下記一般式(2)に示す化合物と、下記一般式(3)に示す化合物とを、上記したパラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物の存在下、反応させる。
−X (2)
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Xは、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基またはメタンスルホニルオキシ基を示す。)
HC=CR (3)
(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、カルボン酸誘導体、酸アミド誘導体またはシアノ基を示す。)
一般式(2)のR、および一般式(3)のR、RおよびRで示される置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、アズレニルなどの炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0035】
また、アリール基の置換基としては、特に制限されず、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基など、その目的および用途に対応する置換基が、適宜挙げられる。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基、例えば、ビニル、1−メチルビニル、1−プロペニル、アリルなどの炭素数2〜4のアレニル基、例えば、エチニル、1−プロピニル、1−プロパルギル基などの炭素数2〜4のアルキニル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基などの炭素数3〜6のシクロアルキル基、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などの炭素数5〜7のシクロアルケニル基、例えば、ベンジル、α−メチルベンジル、フェネチル基などの炭素数7〜11のアラルキル基、フェニル基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基、フェノキシ基、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、n−ブチリル、iso−ブチリル基などの炭素数1〜6のアルカノイル基、ベンゾイル基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n−ブチリルオキシ、iso−ブチリルオキシ基などの炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、カルボキシル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、iso−プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル基などの炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、例えば、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−イソプロピルカルバモイル、N−ブチルカルバモイルなどのN−モノ−C1−4アルキルカルバモイル基など、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N,N−ジプロピルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイルなどのN,N−ジ−C1−4アルキルカルバモイル基、例えば、1−アチリジニルカルボニル、1−アゼチジニルカルボニル、1−ピロリジニルカルボニル、1−ピペリジニルカルボニル、N−メチルピペラジニルカルボニル、モルホリノカルボニル基などの環状アミノカルボニル、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチルなどのモノ−、ジ−、またはトリ−ハロゲノ−C1−4アルキル基、オキソ基、アミジノ基、イミノ基、アミノ基、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノなどのモノ−C1−4アルキルアミノ基、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノなどのジ−C1−4アルキルアミノ基、例えば、アチリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イミダゾリジニル、ピペリジノ、モルホリノ、ジヒドロピリジル、ピリジル、N−メチルピペラジニル、N−エチルピペラジニル基などの炭素原子と1個の窒素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子などから選ばれたヘテロ原子を1〜3個含んでいてもよい、3〜6員の環状アミノ基、例えば、ホルムアミド、アセタミド、トリフルオロアセタミド、プロピオニルアミド、ブチリルアミド、イソブチリルアミドなどの炭素数1〜6のアルカノイルアミド基など、ベンズアミド基、カルバモイルアミノ基、例えば、N−メチルカルバモイルアミノ、N−エチルカルバモイルアミノ、N−プロピルカルバモイルアミノ、N−イソプロピルカルバモイルアミノ、N−ブチルカルバモイルアミノなどのN−C1−4アルキルカルバモイルアミノ基など、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルアミノ、N,N−ジエチルカルバモイルアミノ、N,N−ジプロピルカルバモイルアミノ、N,N−ジブチルカルバモイルアミノなどのN,N−ジ−C1−4アルキルカルバモイルアミノ基、例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ基などの炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基(−O−)、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホノ基、スルファモイル基、例えば、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N−プロピルスルファモイル、N−イソプロピルスルファモイル、N−ブチルスルファモイルなどの炭素数1〜6のモノアルキルスルファモイル基など、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジブチルスルファモイルなどのジ−C1−4アルキルスルファモイル基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ基などの炭素数1〜6のアルキルチオ基、フェニルチオ基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル基などの炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル基などの炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、およびフェニルスルホニル基などが挙げられる。上記の基は、これらの置換基で、1〜5個置換されていてもよい。
【0036】
一般式(2)のRで示される置換基を有していてもよい複素環基の複素環基としては、例えば、2−または3−チエニル、2−または3−フリル、2−または3−ピロニル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−または5−オキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−、または5−ピラゾリル、2−、4−または、5−イミダゾリル、3−、4−または5−イソオキサゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、3−または5−(1,2,4−オキサジアゾリル)、1,3,4−オキサジアゾリル、3−または5−(1,2,4−チアジアゾリル)、1,3,4−チアジアゾリル、4−または5−(1,2,3−チアジアゾリル)、1,2,5−チアジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1H−または2H−テトラゾリルなどの炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子などから選ばれたヘテロ原子を1〜4個含む5員環基、例えば、N−オキシド−2−、3−または4−ピリジル、2−、4−または5−ピリミジニル、N−オキシド−2−、4−または5−ピリミジニル、チオモルホリニル、モルホリニル、オキソイミダジニル、ジオキソトリアジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピラニル、チオピラニル、1,4−オキサジニル、1,4−チアジニル、1,3−チアジニル、ピペラジニル、トリアジニル、オキソトリアジニル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、N−オキシド−3−または4−ピリダジニルなどの炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子などから選ばれたヘテロ原子を1〜4個含む6員環基、例えば、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、テトラゾロ[1,5−b]ピリダジニル、トリアゾロ[4,5−b]ピリダジニル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、インドリジニル、キノリジニル、1,8−ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナントリジニル、クロマニル、ベンゾオキサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどの炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子などから選ばれたヘテロ原子を1〜4個含む2環性または3環性縮合環基などの炭素原子以外に、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1〜4個含む5〜8員環またはその縮合環などが挙げられる。
【0037】
また、複素環基の置換基としては、特に制限されず、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基など、その目的および用途に対応する置換基が、適宜挙げられる。例えば、上記と同様の置換基が挙げられる。上記の基は、これら置換基で、複素環基に1〜5個置換されていてもよい。
一般式(2)のRで示される置換基を有していてもよいアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、メタリル、イソプロペニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプチニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニルなどの炭素数2〜18のアルケニル基が挙げられる。
【0038】
また、アルケニル基の置換基としては、特に制限されず、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基など、その目的および用途に対応する置換基が、適宜挙げられる。例えば、上記と同様の置換基が挙げられる。これら置換基は、アルケニル基に1〜5個置換されていてもよい。
一般式(2)のXで示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0039】
一般式(3)のR、RおよびRで示される置換基を有していてもよいアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
【0040】
また、アルキル基の置換基としては、特に制限されず、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基など、その目的および用途に対応する置換基が、適宜挙げられる。例えば、上記と同様の置換基が挙げられる。これら置換基は、複素環基に1〜5個置換されていてもよい。
一般式(3)のR、RおよびRで示されるカルボン酸誘導体としては、例えば、メトキシカルボニル(−COOMe)、エトキシカルボニル(−COOEt)、tert−ブトキシカルボニル(−COOtBu)などのアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0041】
一般式(3)において、このようなカルボン酸誘導体の、より具体的な化合物としては、例えば、表1に示すものが挙げられる。
【0042】
【表1】

【0043】
一般式(3)のR、RおよびRで示される酸アミド誘導体としては、例えば、カルバモイル(−CONH)基、例えば、N−メチルカルバモイル(−CONHMe)、N,N−ジメチルカルバモイル(−CONH(Me))などのN−モノまたはN,N−ジアルキルカルバモイル基が挙げられる。
一般式(3)において、このような酸アミド誘導体の、より具体的な化合物としては、例えば、表2に示すものが挙げられる。
【0044】
【表2】

【0045】
また、一般式(3)において、R、RおよびRがシアノ基である、より具体的な化合物としては、例えば、表3に示すものが挙げられる。
【0046】
【表3】

【0047】
そして、上記一般式(2)に示す化合物と、上記一般式(3)に示す化合物との反応では、下記一般式(7)に示す化合物が生成する。
C=CR(7)
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、カルボン酸誘導体、酸アミド誘導体またはシアノ基を示す。)
なお、一般式(7)において、Rで示される、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよいアルケニル基、および、R、RおよびRで示される、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、カルボン酸誘導体、酸アミド誘導体またはシアノ基は、上記と同意義を示す。
【0048】
上記一般式(2)に示す化合物と、上記一般式(3)に示す化合物との反応において、本発明の化合物の合成方法は、ヘックカップリング反応(Heck Cross−Couplings)として、下記反応式(8)により与えられる。
【0049】
【化1】

【0050】
そして、本発明の化合物の合成方法では、上記反応式(8)において、上記一般式(2)に示す化合物と、上記一般式(3)に示す化合物とを、上記したパラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物、および、塩基の存在下、反応溶媒を用いて反応させる。
この反応において、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、例えば、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸セシウム(CsCO)などの炭酸塩、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩、例えば、リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸カリウム(KPO)などのリン酸塩などの無機塩、例えば、トリエチルアミン類、ピリジン、モルホリン、キノリン、ピペリジン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、アニリン類、テトラnブチルアンモニウムアセテートなどのアンモニウム塩などの有機塩などが挙げられる。このような塩基は、単独で用いてもよく、また、2種類以上併用して用いることもできる。これらのうち、好ましくは、酢酸塩が挙げられる。
【0051】
また、この反応において、反応溶媒としては、例えば、脱イオン水、蒸留水などの水、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、例えば、2−メトキシ−1−プロパノール、2−エトキシ−1−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(イソプロピルセロソルブ)などのアルコキシアルコール類などの水性溶媒が挙げられる。これら反応溶媒は、単独で用いてもよく、また、2種類以上併用して用いることもできる。
【0052】
また、これらのうち、好ましくは、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(イソプロピルセロソルブ)などのグリコールエーテルを含有する反応溶媒が挙げられる。
また、この反応において、上記一般式(2)に示す化合物と、上記一般式(3)に示す化合物との配合割合は、特に制限されないが、例えば、上記一般式(3)に示す化合物を、上記一般式(2)に示す化合物に対して、0.1〜10当量、好ましくは、0.5〜2当量、具体的に好ましくは、1.5当量配合する。
【0053】
また、この反応において、パラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物は、特に制限されないが、パラジウム含量として、例えば、0.1〜0.0001モル%、好ましくは、0.01〜0.001モル%添加する。
また、この反応において、塩基は、特に制限されないが、例えば、1〜30当量、好ましくは、1〜10当量、具体的に好ましくは、3当量添加する。
【0054】
また、この反応において、反応溶媒は、特に制限されないが、例えば、上記一般式(2)に示す化合物と、上記一般式(3)に示す化合物との配合量100重量部に対して、200〜5000重量部、好ましくは、300〜1000重量部配合する。
また、反応溶媒として、グリコールエーテルとその他の溶媒との混合溶媒を用いる場合には、グリコールエーテルとその他の溶媒との体積比は、グリコールエーテル/その他の溶媒として、1/5〜5/1、好ましくは、1/1である。
【0055】
そして、この反応は、例えば、反応圧力0〜5000KPa、好ましくは、0〜3000KPa、反応温度0〜250℃、好ましくは、100〜150℃、反応時間0.1〜72時間、好ましくは、1〜8時間の条件で、反応させる。
また、この反応では、反応を促進するための添加剤を添加することができる。そのような添加剤として、例えば、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)などの有機アンモニウムハライドが挙げられる。なお、添加剤は、例えば、1〜200モル%添加する。
【0056】
そして、この反応は、より具体的には、例えば、上記一般式(2)に示す化合物と、上記一般式(3)に示す化合物とを、パラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物および塩基とともに、上記割合にて、反応溶媒に加え、上記反応条件にて反応させれば、上記一般式(7)に示す化合物を得ることができる。
本発明の化合物の合成方法では、パラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物の存在下において、ヘックカップリング反応(Heck Cross−Couplings)により、上記一般式(7)に示す化合物を収率よく合成することができる。
【0057】
また、本発明の化合物の合成方法では、このような反応において、酸化物の前駆体を原則として1000℃未満で熱処理(第1次熱処理または第2次熱処理)することによって得られ(2次熱処理温度が1000℃以上の場合あり)、比表面積が0.5m/gを超えて30m/g以下である一般式LnCu1−x−yPd4±δで示されるパラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物からなる本発明の合成反応触媒が用いられているので、触媒のターンオーバー数の向上により、パラジウムの使用量が少量であっても、パラジウムの活性を効果的に発現させることができる。そのため、触媒のコストを低減することができ、その結果、経済的に化合物を合成することができる。
【0058】
そのため、本発明の化合物の合成方法および合成反応触媒は、例えば、ヘックカップリング反応を工業的に用いる用途に有効に用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
1 合成反応触媒(層状ペロブスカイト型複合酸化物)の製造例
(1)製造例1(LaCu0.95Pd0.05の製造)
ランタンエトキシエチレート 8.12g(0.020モル)
銅エトキシエチレート 2.29g(0.0095モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0060】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.1525g(0.00050モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、LaCuPdを含む均一混合溶液を調製した。この均一混合溶液に、脱イオン水50mLを約15分かけて滴下して加水分解した。そうすると、加水分解により褐色の粘稠沈殿物が生成した。
その粘稠沈殿物を室温下で2時間攪拌した後、減圧条件でトルエンおよび水分を留去して、LaCuPd複合酸化物の前駆体を得た。
【0061】
次いで、この前駆体をシャーレに移し、60℃、24時間通風乾燥した後、大気中、電気炉を用いて、600℃、1時間熱処理(第1次熱処理)することによって、黒褐色の粉体を得た。
その比表面積は9.7m/gであった。この粉末をさらに800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)すると比表面積は4.5m/gとなった。この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、LaCu0.95Pd0.05の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、1.31質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図1に示す。
(2)製造例2(PrCu0.95Pd0.05の製造)
プラセオジムメトキシプロピレート 8.16g(0.020モル)
銅エトキシエチレート 2.29g(0.0095モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0062】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.1525g(0.00050モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、PrCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は5.0m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は2.0m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、PrCu0.95Pd0.05の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、1.29質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図2に示す。
(3)製造例3(NdCu0.6Pd0.4の製造)
ネオジムnブトキシド 7.27g(0.020モル)
銅エトキシエチレート 1.45g(0.0060モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0063】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート1.22g(0.0040モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、NdCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は25.0m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は6.3m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、NdCu0.6Pd0.4の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、9.83質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図3に示す。
(4)製造例4(NdCu0.8Pd0.2の製造)
ネオジムnブトキシド 7.27g(0.020モル)
銅エトキシエチレート 1.93g(0.0080モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0064】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.61g(0.0020モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、NdCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は19.0m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は3.6m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、NdCu0.8Pd0.2の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、5.01質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図4に示す。
(5)製造例5(NdCu0.95Pd0.05の製造)
ネオジムnブトキシド 7.27g(0.020モル)
銅エトキシエチレート 2.29g(0.0095モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0065】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.1525g(0.00050モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、NdCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は12.0m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は4.9m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、NdCu0.95Pd0.05の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、1.26質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図5に示す。
(6)製造例6(NdCu0.99Pd0.01の製造)
ネオジムnブトキシド 7.27g(0.020モル)
銅エトキシエチレート 2.39g(0.0099モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0066】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.0305g(0.00010モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、NdCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は12.0m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は1.9m/gであった。
そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、NdCu0.99Pd0.01の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、0.26質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図6に示す。
(7)製造例7(NdCu0.995Pd0.005の製造)
ネオジムnブトキシド 7.27g(0.020モル)
銅エトキシエチレート 2.40g(0.00995モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0067】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.01525g(0.000050モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、NdCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は9.4m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は3.3m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、NdCu0.995Pd0.005の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、0.13質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図7に示す。
(8)製造例8(NdCu0.999Pd0.001の製造)
ネオジムnブトキシド 7.27g(0.020モル)
銅エトキシエチレート 2.41g(0.00999モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0068】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.00305g(0.000010モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、NdCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は4.6m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、NdCu0.999Pd0.001の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、0.026質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図8に示す。
(9)製造例9(GdCu0.95Pd0.05の製造)
ガドリニウムnブトキシド 7.53g(0.020モル)
銅エトキシエチレート 2.29g(0.0095モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0069】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.1525g(0.00050モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、GdCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は11.0m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は2.9m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、GdCu0.95Pd0.05の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、1.20質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図9に示す。
(10)製造例10((La0.6Sr0.4Cu0.95Pd0.053.60の製造)
ランタンエトキシエチレート 4.87g(0.012モル)
ストロンチウムメトキシプロピレート 2.13g(0.0080モル)
銅エトキシエチレート 2.29g(0.0095モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0070】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.1525g(0.00050モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、LaSrCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は6.0m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は3.7m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、(La0.6Sr0.4Cu0.95Pd0.053.60の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、1.45質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図10に示す。
(11)製造例11((La0.6Sr0.4Cu0.995Pd0.0053.55の製造)
ランタンエトキシエチレート 4.87g(0.012モル)
ストロンチウムメトキシプロピレート 2.16g(0.0080モル)
銅エトキシエチレート 2.40g(0.00995モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0071】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.01525g(0.000050モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、LaSrCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は6.6m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は2.6m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、(La0.6Sr0.4Cu0.995Pd0.0053.55の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、0.15質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図11に示す。
(12)製造例12((Gd0.6Sr0.4Cu0.94Pd0.013.95の製造)
ガドリニウムnブトキシド 4.52g(0.012モル)
ストロンチウムメトキシプロピレート 2.13g(0.0080モル)
銅エトキシエチレート 2.27g(0.0094モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0072】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.0305g(0.00010モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、GdSrCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は9.2m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は5.5m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、(Gd0.6Sr0.4Cu0.94Pd0.013.95の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、0.28質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図12に示す。
(13)製造例13((La0.50.5Cu0.95Pd0.05の製造)
ランタンエトキシエチレート 4.06g(0.010モル)
イットリウムエトキシエチレート 3.56g(0.010モル)
銅エトキシエチレート 2.29g(0.0095モル)
を300mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン50mL加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0073】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.1525g(0.00050モル)をトルエン20mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、LaYCuPdを含む均一混合溶液を調製した。
以下、製造例1と同様の操作により、黒褐色の粉体を得た。
600℃で1時間熱処理(第1次熱処理)した後の粉末の比表面積は18.0m/gであった。また、800℃で1時間熱処理(第2次熱処理)した後の粉末の比表面積は6.0m/gであった。そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、(La0.50.5Cu0.95Pd0.05の層状ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。複合酸化物中におけるPd含有量は、1.49質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図13に示す。
(14)製造例14(LaFe0.95Pd0.05の製造)
ランタンイソプロポキシエチレート 4.48g(0.010モル)
鉄イソプロポキシエチレート 3.47g(0.0095モル)
を、500mL容量の丸底フラスコに入れ、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0074】
次いで、パラジウムアセチルアセトナート0.1525g(0.00050モル)をトルエン100mLに溶解して、混合アルコキシド溶液に加えて、LaFePdを含む均一混合溶液を調製した。この均一混合溶液に、脱イオン水200mLを約15分かけて滴下して加水分解した。そうすると、加水分解により褐色の粘稠沈殿物が生成した。
その粘稠沈殿物を室温下で2時間攪拌した後、減圧条件でトルエンおよび水分を留去して、LaFePd複合酸化物の前躯体を得た。
【0075】
次いで、この前駆体をシャーレに移し、60℃、24時間通風乾燥した後、大気中、電気炉を用いて、800℃、1時間熱処理することによって、黒褐色の粉体を得た。
そして、この粉体の粉末X線回折を測定した。その結果、LaFe0.95Pd0.05のペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる結晶相であると同定された。また、その比表面積は、17.0m/gであり、複合酸化物中におけるPd含有量は、2.17質量%であった。このX線回折のスペクトル図を、図14に示す。
2 比表面積の測定
製造例1〜14において、第1次熱処理(600℃)後の粉体を、さらに、表4に示す条件で第2次熱処理し、得られた各粉体の比表面積をBET法により算出した。その結果を、製造例1〜14で得られた粉体の比表面積およびPd含有量とともに、表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
3 ヘックカップリング反応による4−ニトロフェニルアクリル酸−tert−ブチルの合成例
上記した製造例で製造し、さらに上記のように、第2次熱処理して、表4に示す比表面積となったパラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物(Pd触媒)の存在下、下記一般式(9)に示されるように、4−ブロモニトロベンゼンとアクリル酸−tert−ブチルとを反応させた。
【0078】
【化2】

【0079】
4−ブロモニトロベンゼン 2.42g(0.012モル)
アクリル酸−tert−ブチル 2.30g(0.018モル)
酢酸ナトリウム 2.88g(0.036モル)
を、100mL容量の丸底フラスコに入れ、反応溶媒として、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル 以下、MC)を30mL加え、撹拌溶解した。この溶液に、上記製造例および第2次熱処理後のパラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物を、表5に示す添加量で投入した。その後、マントルヒータで加温し、還流温度(124℃)において、6時間攪拌して反応を終了した。なお、表5では、パラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物の添加量は、4−ブロモニトロベンゼンに対するモル%で表わしており、例えば、0.005mol%とは、パラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物をPdとして6.0×10−7mol添加したことを表わしている。
【0080】
反応終了後、反応液にトルエン50mLおよび脱イオン水100mLを加えて、生成物と副生する塩を溶解した後、上層の有機層をガスクロマトグラフ(GC)により分析し、以下の式より変換率を求めた。その結果を、表5に示す。
変換率(%)=(4−ニトロフェニルアクリル酸−tert−ブチル)/{(4−ニトロフェニルアクリル酸−tert−ブチル)+(4−ブロモニトロベンゼン)}×100(4−ニトロフェニルアクリル酸−tert−ブチルおよび4−ブロモニトロベンゼンについては、予め、これらのトルエン溶液を個別に測定して相対感度を求め補正した。)
また、上記のようにガスクロマトグラフを用いて、パラジウム1モル当りの得られた4−ニトロフェニルアクリル酸−tert−ブチルのモル数として、以下の式によりターンオーバー数(turnover number(TON))を求めた。その結果を、表5に示す。
【0081】
ターンオーバー数(Pd−1)=4−ニトロフェニルアクリル酸−tert−ブチル(モル)/パラジウム(モル)×変換率(%)
【0082】
【表5】

【0083】
4 ヘックカップリング反応による4−アセチルフェニルアクリル酸−tert−ブチルの合成例
上記した製造例で製造し、さらに上記のように、第2次熱処理して、表4に示す比表面積となったパラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物(Pd触媒)の存在下、下記一般式(10)に示されるように、4−ブロモアセトフェノンとアクリル酸−tert−ブチルとを反応させた。
【0084】
【化3】

【0085】
4−ブロモアセトフェノン 2.39g(0.012モル)
アクリル酸−tert−ブチル 2.30g(0.018モル)
酢酸ナトリウム 2.88g(0.036モル)
を、100mL容量の丸底フラスコに入れ、反応溶媒として、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル 以下、MC)を30mL加え、撹拌溶解した。この溶液に、上記製造例および第2次熱処理後のパラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物を、表6に示す添加量で投入した。その後、マントルヒータで加温し、還流温度(124℃)において、6時間攪拌して反応を終了した。なお、表6では、パラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物の添加量は、4−ブロモアセトフェノンに対するモル%で表わしており、例えば、0.005mol%とは、パラジウム含有層状ペロブスカイト型複合酸化物をPdとして6.0×10−7mol添加したことを表わしている。
【0086】
反応終了後、反応液にトルエン50mLおよび脱イオン水100mLを加えて、生成物と副生する塩を溶解した後、上層の有機層をガスクロマトグラフ(GC)により分析し、以下の式より変換率を求めた。その結果を、表6に示す。
変換率(%)=(4−アセチルフェニルアクリル酸−tert−ブチル)/{(4−アセチルフェニルアクリル酸−tert−ブチル)+(4−ブロモアセトフェノン)}×100(4−アセチルフェニルアクリル酸−tert−ブチルおよび4−ブロモアセトフェノンについては、予め、これらのトルエン溶液を個別に測定して相対感度を求め補正した。)
また、上記のようにガスクロマトグラフを用いて、パラジウム1モル当りの得られた4−アセチルフェニルアクリル酸−tert−ブチルのモル数として、以下の式によりターンオーバー数(turnover number(TON))を求めた。その結果を、表6に示す。
【0087】
ターンオーバー数(Pd−1)=4−アセチルフェニルアクリル酸−tert−ブチル(モル)/パラジウム(モル)×変換率(%)
【0088】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示され、比表面積が0.5m/gを超えて30m/g以下であるパラジウム含有ペロブスカイト型複合酸化物の存在下に、下記一般式(2)に示す化合物と、下記一般式(3)に示す化合物とを反応させることを特徴とする、化合物の合成方法。
LnCu1−x−yPd4±δ (1)
(式中、Lnは、La、Pr、Nd、Sm、EuおよびGdから選択される少なくとも1種の必須成分と、Y、Ce、Yb、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種の任意成分とからなる元素を示し、Mは、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびAlから選択される少なくとも1種の元素を示し、xは、0.001≦x≦0.4の原子割合を示し、yは、0≦y≦0.5の原子割合を示し、δは、酸素過剰分または酸素不足分を示す。)
−X (2)
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Xは、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基またはメタンスルホニルオキシ基を示す。)
HC=CR (3)
(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、カルボン酸誘導体、酸アミド誘導体またはシアノ基を示す。)
【請求項2】
上記一般式(1)において、Lnが、La、NdおよびGdから選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物の合成方法。
【請求項3】
上記一般式(1)において、xが、0.005≦x≦0.05の原子割合を示すことを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物の合成方法。
【請求項4】
上記一般式(2)に示す化合物と、上記一般式(3)に示す化合物とを、グリコールエーテルを含有する反応溶媒を用いて反応させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物の合成方法。
【請求項5】
下記一般式(1)で示され、下記一般式(2)に示す化合物と、下記一般式(3)に示す化合物とを反応させるために用いられる、比表面積が0.5m/gを超えて30m/g以下であるパラジウム含有ペロブスカイト型複合酸化物からなることを特徴とする、合成反応触媒。
LnCu1−x−yPd4±δ (1)
(式中、Lnは、La、Pr、Nd、Sm、EuおよびGdから選択される少なくとも1種の必須成分と、Y、Ce、Yb、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種の任意成分とからなる元素を示し、Mは、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびAlから選択される少なくとも1種の元素を示し、xは、0.001≦x≦0.4の原子割合を示し、yは、0≦y≦0.5の原子割合を示し、δは、酸素過剰分または酸素不足分を示す。)
−X (2)
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Xは、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基またはメタンスルホニルオキシ基を示す。)
HC=CR (3)
(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、カルボン酸誘導体、酸アミド誘導体またはシアノ基を示す。)
【請求項6】
上記一般式(1)において、Lnが、La、NdおよびGdから選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする、請求項5に記載の合成反応触媒。
【請求項7】
上記一般式(1)において、xが、0.005≦x≦0.05の原子割合を示すことを特徴とする、請求項5または6に記載の合成反応触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−46638(P2011−46638A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195760(P2009−195760)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省科学技術振興費元素戦略プロジェクト『脱貴金属を目指すナノ粒子自己形成触媒の新規発掘』研究による成果、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】