説明

化学修飾ペプチド類似体

本発明はIAPP−ペプチド誘導体を使用する糖尿病及びアルツハイマー病治療のための改善された薬剤及び方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膵ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド(IAPP)のペプチド類似体、IAPP又はその凝集体の検出方法、タンパク質凝集病、特に糖尿病及びアルツハイマー病の予防及び治療のための医薬組成物、タンパク質凝集病、特に糖尿病及びアルツハイマー病の検出のための診断用組成物並びに疾病の診断及び治療目的のため又は基礎研究のための上記ペプチド類似体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は現在なお十分な治療策がない疾病である。通常I型及びII型糖尿病は区別されている。糖尿病患者の90%はII型糖尿病又は老年性糖尿病を患っている。今日全世界に1億5000万人以上のII型糖尿病患者がいる。糖尿病はインスリン不足又はインスリン依存性生物学的プロセスにおける障害によって発生する。一方では炭水化物代謝でのインスリンの中心的役割を他の分子で代行することができず、他方ではインスリンの投与だけでI型糖尿病の場合は疾病の病理的結果を、又はII型糖尿病の場合は疾病自体を除去することができないため、新しい治療策が必要である。このような方策は一方ではインスリン分子の分泌、吸収及び生物学的機能の展開を促進し、他方ではインスリンの望ましくない副作用、例えば体重増加又は高血糖を防止するものでなければならない。従って特にインスリンとともに炭水化物代謝の調節に寄与する新規な分子は、生物医学的に重要である。
【0003】
この新規な分子の1つが膵ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド(IAPP又はアミリン)である。IAPPは、37個のアミノ酸残基からなり、膵臓のβ細胞で合成され、インスリン及びグルカゴンとともに糖代謝の調節に寄与するペプチドホルモンである。IAPPはインスリンのアンタゴニストである。95%を超えるII型糖尿病患者の膵臓にいわゆるアミロイド斑が認められる。アミロイド斑はポリペプチドIAPPの不溶の凝集体からなる沈着物である。従ってアルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン疾患又はハンチントン病と同様に、糖尿病もタンパク質凝集病(Ross & Poirier, Nature medicine, 2004年7月、10巻補遺、10-17頁)とみなすことができる。IAPPは可溶性モノマー形であることから、IAPPの生体活性はそのcAMP結合受容体によって仲介される。ところがIAPP−アミロイド斑、即ちIAPPの可溶性オリゴマー及び多量体は細胞毒性を有する。IAPP−アミロイド形成によって引き起こされるβ細胞の障害はII型糖尿病の病理発生の一連の相互作用におおいに寄与すると考えられる。従ってIAPP−アミロイド形成過程の治療上有効な阻害剤の開発は重要な生物医学的関心事である。しかもIAPP分子はインスリンのアンタゴニストとしての、かつインスリン分泌又は投与に関連する食後高血糖の調節剤としての生物学的機能に関して、それ自体がI型(例えばインスリンと組み合わせて)及びII型糖尿病の治療で有望な治療用途をもつと思われる重要なポリペプチドホルモンである。ところがIAPPの医学的適用はその難溶性と激しい凝集傾向のため大幅に限られている。
【0004】
可溶性IAPP類似体、プラムリンチドは周知である。プラムリンチド(Symlin(R))はヒトIAPP分子の配列中の25、28及び29位の3つのアミノ酸残基をプロリンで置換することによって合成される。このプロリン置換は、本来凝集傾向がないラットIAPP配列で現れる。構造的には、プロリンを含む配列の凝集傾向の減少は、プロリン残基がβフォールドコンホメーションをとることができないことで説明される(プロリンはβフォールドを「破る」残基である)。実際にIAPP類似体、プラムリンチドは凝集傾向が著しく減少しており、ヒトIAPPより良好な溶解度を有する。まだ完了していない臨床研究が示唆するところでは、この類似体はインスリンとともに糖尿病治療に適用できそうである。ところがプラムリンチドがpH値5以上で凝集傾向があることがインスリンと併用した製剤及び適用を妨げる。そこでこの類似体はインスリンと別個に皮下注射により投与される。このため適用が大変面倒である(B.Nyholmら、Expert Opinion, Investig. Drug(2001) 10(9) 1641-1652)。
【0005】
糖尿病を早期に認識するとともに治療対策を早期に採用すれば、病気の進行を大幅に遅らせて、肯定的な影響を及ぼすことができる。ところがII型糖尿病でのIAPPの役割はまだ解明されていない。その凝集は濃度に依存するから、可溶性IAPP又は可溶性IAPP類似体の血中濃度と疾病の発症は十分に関連があるようである。慣用のIAPP−RIA(ラジオイムノアッセイ)はIAPP抗体が認識したIAPP分子を決定することしかできない。しかし抗原抗体相互作用を担うタンパク質領域(抗原領域)は、タンパク質会合によってもはや簡単に識別できないことが知られている。それ故、IAPP分子の特異的に異なる会合形式を認識できる実験室的化学的IAPP測定方法を開発することが重要である。そのためにコンホメーション特異的抗体、即ちモノマー又はオリゴマーIAPP分子に向けて作られた抗体の開発が必要と思われる。在来のIAPP抗体はコンホメーション特異的でないからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、タンパク質凝集病、特に糖尿病及び/又はアルツハイマー病の改善された予防、治療及び診断を可能にする薬剤及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天然のIAPP(膵ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド)受容体に結合しうるIAPPペプチド類似体において、ペプチド類似体がa)最高38個のアミノ酸、好ましくは最高37個のアミノ酸を有し、そのうち37個のアミノ酸がその天然の配列中に天然のIAPPのアミノ酸配列を有し、b)その天然の配列中に天然のIAPPの少なくともアミノ酸19〜37を有し、c)少なくとも1つのアミド結合がNメチル化されており、そして、所望によりd)天然のIAPPのアミノ酸配列の1位のLys(リシン)はOrn(オルニチン)で置換されていてもよく、ならびに/あるいは、2位及び7位のCys(システイン)は2位のDap(ジアミノプロピオン酸)及び7位のAsp(アスパラギン酸)又は2位のAsp及び7位のDaPで置換されていてもよく、かつe)但しヒトIAPPの野性種アミノ酸配列を有する配列番号1〜5のNメチル化ペプチド類似体を除くペプチド類似体を提供することによって前記課題を解決する。特に本発明は、天然のIAPP(膵ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド)受容体に結合しうる、診断薬又は治療薬としてのIAPPペプチド類似体において、ペプチド類似体がa)最高38個のアミノ酸、好ましくは37個のアミノ酸を有し、そのうち37個のアミノ酸がその天然の配列中に天然のIAPPのアミノ酸配列を有し、b)その天然の配列中に天然のIAPPの少なくともアミノ酸19〜37を有し、c)少なくとも1つのアミド結合がNメチル化されており、そして、所望によりd)天然のIAPPのアミノ酸配列の1位のLys(リシン)はOrn(オルニチン)で置換されていてもよく、ならびに/あるいは、2位及び7位のCysは2位のDap及び7位のAsp又は2位のAsp及び7位のDaPで置換されていてもよいペプチド類似体を提供することによって、前記課題を解決する。
【0008】
本発明によれば、これらのペプチド類似体、即ち修飾Nメチル化IAPP誘導体は、好ましくは単離された、特に好ましくは部分的又は完全に精製された形で提供される。
【0009】
従って上記のペプチド類似体は必要不可欠な特徴a)、b)及びc)によって特徴づけられ、所望により特徴d)を有しうる。即ち本発明のこの任意選択的実施形態でペプチド類似体は天然のヒトIAPP配列の1位のリシンをアミノ酸、オルニチンで、特にヒト天然のIAPPの2及び7位の2つのシステインを2位のDap(2,3−ジアミノプロピオン酸)及び7位のAsp又は2位のAsp及び7位のDapで置換してもよいという点で、IAPP、特にヒトIAPPの天然の配列とは異なるアミノ酸配列を有することを特徴とする。以下で、特徴d)に基づき形成された、即ち天然のIAPP配列、特にヒトIAPP配列と異なり1位にオルニチン(リシンの代わりに)及び/又は2位にAsp又はDap及び7位にDap又はAsp(それぞれシステインの代わりに)を有する本発明のペプチド類似体を、本発明に係るペプチド類似体の誘導体と呼ぶ。
【0010】
2位及び7位にCysを有する本発明のペプチド類似体は、好ましくは酸化されており、即ちCys2及びCys7のチオール残基の間のジスルフィド架橋が閉じている。
【0011】
また2位及び7位にDap及びAsp又はAsp及びDapを有する本発明のペプチド類似体は好ましくは架橋を有する。即ちAspとDapの側鎖がラクタム架橋によって互いに共有結合されている。
【0012】
好ましい実施形態で本発明のすべてのペプチド類似体のC末端はアミドをなす。
【0013】
本発明に関連して「天然のIAPP」の概念は、IAPPの野性種アミノ酸配列、即ち感染生物、好ましくはヒトにおいてin vivoで天然に見られるアミノ酸配列を有するIAPPを意味する。特にヒトの様々な天然のIAPP配列がKapurniotu(Biopolymers (Peptide Science) 60 (2001) 438-459)に公表されている。この学説の配列番号18はヒトのIAPPの野性種配列を示す。従って本発明の枠内でアミノ酸又はアミド結合の位置データは、別に指示しないかぎり、常にKapurniotu(前記)の図式1又は配列番号18に示された天然のヒトIAPPのアミノ酸配列に関する位置データである。同様に天然のIAPP受容体の概念は、自然に存在する野性種IAPP受容体、特にヒト野性種受容体を意味する。
【0014】
本発明に係るペプチド類似体は、一実施形態では天然のヒトIAPPとまったく同じ一次構造を、別の実施形態では特にヒトIAPPとおおむね同じ一次構造を有するが、本発明に基づき選択的に導入される特定のアミド結合のNメチル化によりIAPPと異なるコンホメーションを有し、それとともに天然のヒトIAPPと比較して変化した生物学的、特に生化学的及び生物理学的性質を有する。特に本発明に係るペプチド類似体は、天然のIAPP、特に天然のヒトIAPPと相互作用して、アミロイド細繊維への凝集、その後のアミロイド斑の形成及びそれに関連する細胞毒性を減少又は阻止しうるのが特徴である。同時に天然の、即ち野性種受容体、好ましくはヒトIAPP受容体に特異的に結合しうるという有利な性質がある。本発明に係るペプチド類似体は細繊維形成能力がないか又は大幅に低下している。約7の生理的pHで特に細繊維形成傾向の大幅な低下を示し、従って天然のIAPP又はプラムリンチドと異なりインスリンとともに調合し、投与することができる。本発明に係るペプチド類似体は特に約pH7〜7.4の生理的pH値でIAPPの少なくとも100倍の溶解度を有し、このため前述のようにインスリンとともに調合することが可能である。IAPPと比較して溶解度が高いため、溶液(1mg/ml)として貯蔵時にその生物学的活性が減少しない(IAPPの場合は減少する)。またIAPP含有溶液の添加物として、IAPPが可溶性の、即ち生物学的に活性の形態を保つことに寄与する。本発明に係るペプチド類似体はIAPPと比較して、プロテアーゼによる分解に対して安定である。このため本発明のペプチド類似体を錠剤の形で投与することが可能になる。さらに本発明に係るペプチド類似体は、アルツハイマー病の発症で役割を演じるβアミロイドペプチドと相互作用する。本発明に係るペプチド類似体は特にβアミロイドペプチドの細胞毒性を低下させるため、アルツハイマー病の診断、治療及び予防にも適している。
【0015】
本発明に係るペプチド類似体は特にタンパク質凝集病、特に糖尿病、好ましくはI型糖尿病及び/又はII型糖尿病(Diabetes mellitus)の予防、治療及び診断に適している。所望により好ましい実施形態で本発明に係るペプチド類似体がインスリン及び/又はIAPP及び/又はプラムリンチドとともに糖尿病、特にI型及び/又はII型糖尿病の予防及び治療のために使用される。さらに体液中のIAPPのELISA(酵素結合イムノソルベント検定法)/RIA(ラジオイムノアッセイ)に基づく検出のためのコンホメーション特異性抗体を提供し、かつ使用し、こうして改善された診断及び分析方法を提供するために、本発明に基づき提供されるコンホメーション安定化ペプチド類似体を抗原として、例えば単独で又は所定の量のIAPPモノマー又はIAPPオリゴマーと混合して使用することができる。
【0016】
本発明においては、例えばELISA、RIA等のために、マーカー、例えばスピンラベル、蛍光又は発光マーカーとともに、特にN末端標識化、特に好ましくはN末端ビオチニル化形態で、又はN末端蛍光標識化、又はその他の蛍光マーカーを付した本発明のペプチド類似体を使用することができる。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明は、天然のIAPP、特に天然のヒトIAPPの完全なアミノ酸配列1〜37又は上記の誘導体のアミノ酸1〜37を有し又はこの37個のアミノ酸だけを有し、即ちこれらのアミノ酸からなるペプチド類似体を提供する。特に好ましい実施形態では、本発明は、ヒトの天然のIAPPの37個のアミノ酸又は天然のヒトIAPPの順序で配列された上記の誘導体のアミノ酸からなり、このペプチド類似体のアミノ酸のαアミノ基のアミド結合の少なくとも1つがNメチル化されているペプチド類似体を提供する。
【0018】
特に好ましい実施形態では、本発明は、天然のヒトIAPPの完全なアミノ酸配列、即ち完全長のアミノ酸配列1〜37又は上記の誘導体のアミノ酸配列を有し又はこれからなる本発明IAPPペプチド類似体が、天然のIAPP受容体の受容体アゴニストとして作用することを教示する。この実施形態では、ペプチド類似体がIAPP受容体を活性化する。この教示によれば、本発明のペプチド類似体は糖代謝及び天然のIAPP分子のその他の生物学的作用の調節のために特に適している。同時にこのペプチド類似体はアミロイド細繊維及び/又はアミロイド斑の形成の阻害剤、即ち不溶の細胞障害性IAPP凝集体の形成の阻害剤として作用するとともに、これに原因する細胞毒性を減少又は阻害する。
【0019】
別の好ましい実施形態では、本発明は、野性種配列に比して短縮され、特にN末端が短縮され、天然のIAPPの少なくともアミノ酸19〜37、好ましくは8〜37又は上記誘導体のアミノ酸を有するか、もしくは天然の順序のアミノ酸だけからなるペプチド類似体を提供する。この実施形態では短縮されたペプチド類似体が特に天然のヒト野性種IAPPの少なくともアミノ酸19〜37、好ましくは8〜37、最大でアミノ酸2〜37又は上記の誘導体のアミノ酸を有し、もしくはこれらのアミノ酸からなり、ペプチド類似体のアミド結合の少なくとも1つがNメチル化されている。
【0020】
また本発明は特に天然のヒトIAPPの完全アミノ酸配列又は上記の誘導体の完全アミノ酸配列をもたない、本発明に基づき短縮されたペプチド類似体、即ち2〜37位あるいは19〜37位のアミノ酸又は上記の誘導体のアミノ酸を有するか、又はこれらのアミノ酸からなるペプチド類似体が、同じく天然のIAPPの野性種受容体に結合するが、そこで受容体アゴニストとして作用し、かくして糖代謝の調節剤として機能するために同じく適していることを教示する。この実施形態ではペプチド類似体はIAPP受容体を阻害する。これらの特に好ましいペプチド類似体は同時にアミロイド細繊維及び/又はアミロイド斑の形成の阻害剤として作用し、従ってそれに伴う細胞毒性を減少又は阻害する。
【0021】
こうして本発明は、天然のIAPP、特に天然のヒトIAPPのアミノ酸7〜37、6〜37、5〜37、4〜37、3〜37及び2〜37又は上記の誘導体のアミノ酸を有するか、又はこれらのアミノ酸だけからなり、これらのどの実施形態でもペプチド類似体のアミド結合の少なくとも1つがNメチル化されている実施形態、即ち野性種IAPPのペプチド類似体も包含する。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明のペプチド類似体は、Nメチル化された、即ちペプチドのアミノ酸のαアミノ基の水素原子がメチル基で置換された2、3又は4個のアミド結合を有する。本発明の好ましい実施形態では本発明のペプチド類似体の22及び/又は23及び/又は24及び/又は25及び/又は26及び/又は27及び/又は28及び/又は29位のアミノ酸のαアミノ基に属するアミド結合がNメチル化されている。特に好ましい実施形態ではNメチル化アミド結合が4〜8個のアミノ酸からなるペプチド類似体の領域に、切れ目のない順序でアミノ酸配列に配置されている。別の好ましい実施形態でNメチル基は、4〜8個のアミノ酸からなるペプチド類似体の領域に、特に上記アミノ酸位置中、ペプチド類似体のアミド結合に1つおきに存在する。
【0023】
特に好ましい実施形態では、本発明はヒト野性種IAPPの天然アミノ酸配列を有するともに、配列番号1〜5に示されるNメチル化を有するペプチド類似体を除き、配列番号1〜17からなるグループから選ばれたペプチド類似体に関する。本発明の別の好ましい実施形態は配列番号1〜17からなるグループから選ばれた治療用又は診断用のペプチド類似体に関する。従って本発明は特に配列番号1〜17の本発明のペプチド類似体をヒト又は動物の身体の治療方法及びヒト又は動物の身体で行われる診断方法で初めて応用するものである。また本発明は上記の本発明のペプチド類似体、特に配列番号1〜17からなるグループから選ばれたペプチド類似体を含む医薬品及び診断薬に関する。
【0024】
特に好ましい実施形態では、本発明はヒト野性種IAPP又はその誘導体のアミノ酸1〜37を有する本発明のペプチド類似体のグループから選ばれ、位置(24及び26)、(25及び27)、(23及び25)、(26及び27)、(25及び26及び27)、(24及び25)、(25及び26)、(22及び24)、(23及び24)、(24及び26)、(23)、(24)、(25)、(26)、(27)、(28及び29)、(25及び28及び29)にアミノ酸のαアミノ基のアミド結合を有するペプチド類似体に関する。これらのペプチド類似体は、ヒト野性種IAPPのアミノ酸配列を有する限り、上記の順序でIAPP−GI、IAPP−AL、IAPP−FA、IAPP−IL、IAPP−AIL、IAPP−GA、IAPP−AI、IAPP−NG、IAPP−FG、IAPP−GAIL、IAPP−F、IAPP−G、IAPP−A、IAPP−I、IAPP−L、IAPP−SS及びIAPP−ASSとも称する。
【0025】
自明のことだが、本発明は特に医薬品又は診断薬の調製並びに研究及び試験目的のための、野性種IAPPの上記のペプチド類似体又はその誘導体と、天然非修飾IAPP及び/又はβアミロイドペプチド又はIAPPのその他の周知のペプチド類似体もしくはβアミロイドペプチド(A−β)又はIAPPのその他の誘導体もしくはA−βとの混合物、例えば1:1混合物に関する。
【0026】
別の好ましい実施形態では、本発明は、好ましくは約7.0〜8.0の生理的pH値、好ましくはpH=7.4で、特に水又は生理的食塩水に可溶の、特に天然のIAPP、特に天然のヒトIAPPの100倍の溶解度を有する本発明のペプチド類似体に関する。
【0027】
別の好ましい実施形態では、本発明のペプチド類似体は特にN末端αアミノ基が特にアセチル基、放射性マーカー、酵素マーカー、蛍光マーカー、発光マーカー又はスピンラベルで標識され、好ましくは上記マーカーがスペーサーを介してペプチド類似体と結合されるようになっており、スペーサーはアミノ酸であることが可能である。
【0028】
別の好ましい実施形態では、本発明に係るペプチド類似体はアシル基、機能性アシル基、芳香族基、アミノ酸、グリコール基及び脂質基からなるグループから選ばれた少なくとも1つの官能基により誘導されたものである。
【0029】
別の好ましい実施形態では、官能基自体がアミノ酸でないとして、官能基がスペーサー例えばアミノ酸によりペプチド類似体と結合されている。
【0030】
別の好ましい実施形態では、本発明に係るペプチド類似体は担体、例えばマトリックス、ウェルの表面、マイクロタイタープレート、膜等に固定化されている。
【0031】
本発明に係るペプチド類似体は通常化学的に合成及び/又は修飾することができる。
【0032】
また本発明は、a)IAPP又はb)ペプチド類似体/IAPP複合体に対して特異的な、もしくはc)本発明のペプチド類似体に対して特異的な抗体の調製方法において、本発明のペプチド類似体を抗原として、所望によりIAPPモノマー又はオリゴマーとともに抗体形成能力を持つ系と接触させ、例えば動物の身体に注射し、生じた抗体を得る調製方法に関する。また自明のことであるが、本発明はIAPP又はIAPP/ペプチド類似体複合体に対して特異的な、又は特異的に本発明のペプチド類似体に対して特異的な抗体の調製方法において、抗体がポリクロナール抗体のみならずモノクロナール抗体であってもよい調製方法に関する。従って本発明は上記の方法により調製されるモノクロナール又はポリクロナール抗体及びその断片にも関し、その場合抗体又はその断片は本発明のペプチド類似体対して特異的又はIAPP又はペプチド類似体/IAPP複合体に対して特異的であって、即ちこれを特異的に認識して結合することができる。抗体は常法により修飾し、例えば標識することができる。また抗体は固定化した形で担体又はペレットに固定されていてもよい。本発明に係るポリクロナール又はモノクロナール抗体は、例えば本発明に係るペプチド類似体で治療した患者の病状の分析又はその他の治療上有効なペプチドの単離と同定のために利用することができる。本発明に係るペプチドは免疫原としての使用に関連して、診断及び治療用抗体の調製について、天然由来の難溶性ペプチドに比して取り扱いやすさが大幅に改善されているため、特に有利である。こうして調製された抗体は、一実施形態では本発明のペプチドを特異的に、別の実施形態では天然に存在する、所望により凝集形態の野性種IAPPを特異的に認識することができるため、本発明の抗体を例えばアルツハイマー病又は糖尿病の診断に使用することができる。また本発明は、本発明のペプチド類似体をヒト又は動物の生体に適用して、IAPP又はその誘導体に対する免疫化を得るヒト又は動物の生体の免疫化方法に関する。
【0033】
そこで本発明は、本発明のペプチド類似体に対して特異的な抗体の調製方法において、少なくとも1つの本発明のペプチド類似体を抗原として、抗体形成能力をもつ系と接触させ、生じた抗体を得る調製方法に関する。また本発明はIAPP及び本発明のペプチド類似体に対して特異的な抗体の調製方法において、少なくとも1つの本発明のペプチド類似体を抗体形成能力をもつ系と接触させ、生じた抗体を得る調製方法に関する。また本発明はIAPPとペプチド類似体の混合物に対して特異的な抗体の調製方法において、IAPPモノマーと本発明のペプチド類似体の混合物を抗原として(所望によりオリゴマーとしてのIAPPも使用することができる)、抗体形成能力をもつ系と接触させ、生じた抗体を得る調製方法に関する。また本発明はβアミロイドペプチドと本発明のペプチド類似体の混合物に対して特異的な抗体の調製方法において、βアミロイドペプチド・モノマー又はオリゴマーと少なくとも1つの本発明のペプチド類似体との混合物を抗体形成能力をもつ系と接触させ、生じた抗体を得る調製方法に関する。
【0034】
また本発明は、疾病、特にタンパク質凝集病、特に糖尿病及び/又はアルツハイマー病の診断、予防又は治療のために、上記方法により調製された、抗原を特異的に認識して結合する特異的抗体又はその特異的断片に関する。従って本発明は、糖尿病及び/又はアルツハイマー病の診断、予防又は治療のための診断薬又は医薬品の製造のための上記抗体又はその特異的断片の使用にも関する。
【0035】
別の好ましい実施形態では、本発明は、前述のように作用物質として好ましくは予防又は治療上有効な量の少なくとも1つの本発明のペプチド類似体及び/又は抗体を、好ましくは少なくとも1つの薬学的に許容しうる担体とともに含む医薬品に関する。
【0036】
特に好ましい実施形態では、この医薬品は所望により必要ならばさらに離型剤、潤滑剤、溶剤、分散媒、被覆、抗菌又は抗真菌剤、保存剤、着色料、乳化剤、調味料又はその他の慣用の製剤助剤を含む。例えば血液脳関門を経て標的器官に至る輸送に役立つその他の物質を医薬組成物に使用することができる。
【0037】
別の好ましい実施形態では、医薬品はデポー剤の形態で提供され、作用物質即ち本ペプチド類似体のゆるやかな放出を可能にし、例えばいわゆる「徐放性」基質を含み、又は医薬品が患者の中で徐々に溶解する糖衣で被覆されている。
【0038】
特に好ましい実施形態では、上記の種類の医薬品が組合せ医薬品として提供され、即ち同じ製剤又は同じ薬品包装の中にさらにインスリン及び/又はIAPP及び/又はプラムリンチドを含むようになっている。そこで本発明はa)上記のペプチド類似体の少なくとも1つ及び/又はその抗体を含む製剤並びにb)インスリン及び/又はIAPP及び/又はプラムリンチドを含む製剤を、所望により薬学的に許容しうる担体及びその他の製剤助剤とともに含む医薬品キットにおいて、作用物質、即ちペプチド類似体及びインスリン及び/又はプラムリンチド及び/又はIAPPが予防又は治療上有効な量で存在する医薬品キットに関する。
【0039】
別の好ましい実施形態では、医薬品は錠剤形態であり、もしくはエアロゾール又は溶液、特に注射液である。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本発明は、タンパク質凝集病、特に糖尿病、好ましくはI型糖尿病又はII型糖尿病の予防又は治療のための医薬品の製造のための本発明のペプチド類似体又は上記の抗体の使用に関する。
【0041】
また本発明は、糖尿病、例えばI型又はII型糖尿病の予防又は治療用の作用物質、即ちペプチド類似体及び/又はインスリン及び/又はIAPP及び/又はプラムリンチドの2つの互いに分離された製剤を同時に又は時間的にずらせて投与するための組合せ薬剤キット、例えば共同製剤又は医薬品キットの調製のための本発明のペプチド類似体又は上記の抗体とインスリン及び/又はIAPP及び/又はプラムリンチドの使用に関する。
【0042】
特に好ましい実施形態では、本発明は、糖尿病、例えばI型又はII型糖尿病の予防又は治療用の医薬品の製造のための、所望によりインスリン及び/又はIAPP及び/又はプラムリンチドを併用した本発明のペプチド類似体の使用において、本発明のペプチド類似体、特に天然のIAPPの1〜37個のアミノ酸又はその誘導体のアミノ酸配列を有するペプチド類似体が糖尿病のIAPP受容体調節治療のため、特に天然のIAPP受容体の活性化のための受容体アゴニストの役割をする使用に関する。従って本発明に係る使用では、その範囲において、上記の種類のペプチド類似体が天然のIAPP受容体にin vivoで結合し、これを活性化し、これにより糖代謝を調節するものである。
【0043】
別の好ましい実施形態では、本発明の使用は、本発明のペプチド類似体、特に短縮された、特にN末端で短縮されたペプチド類似体、好ましくは天然のIAPPの少なくとも8〜37個又は少なくとも19〜37個、最大で2〜37個のアミノ酸を有するか、又はその誘導体であるペプチド類似体を、所望によりインスリン及び/又はIAPP及び/又はプラムリンチドとともに、糖尿病治療用の医薬品の製造のために用いるものであり、その場合ペプチド類似体は糖尿病のIAPP受容体調節治療のための受容体アンタゴニストとして使用され、即ち天然のIAPP受容体にin vivoで結合してこれを阻止し、こうして糖代謝及びIAPPのその他の生理的機能を調節することができる。
【0044】
別の好ましい実施形態では、すべての本発明のペプチド類似体又はその抗体はIAPP凝集阻害剤として、特にIAPP−アミロイド斑形成阻害剤として使用される。また別な実施形態では、本発明のペプチド類似体又はその抗体をIAPPの細胞毒性の減少又は阻害のために、特に適当な医薬品の製造のために使用する。別の好ましい実施形態では、受容体アゴニスト又は受容体アンタゴニストのいずれであれ、本発明のペプチド類似体又は本発明の抗体は、同時にa)IAPP凝集又はアミロイド斑形成の減少又は阻止と、b)糖代謝の調節のための医薬品の製造のために使用される。
【0045】
別の好ましい実施形態では、受容体アゴニスト又は受容体アンタゴニストのいずれであれ、本発明のペプチド類似体又は本発明抗体は、同時にa)IAPP又はその凝集体の細胞毒性の減少又は阻止と、b)糖代謝の調節のためにペプチド類似体又は抗体を利用する医薬品の製造のために使用される。
【0046】
別の好ましい実施形態では、本発明は、アルツハイマー病又はその他のタンパク質凝集病、例えばパーキンソン病又はハンチントン病又はプリオン病の予防又は治療のための医薬品の製造のために利用される上記の種類のペプチド類似体又はその抗体に関し、ペプチド類似体及び/又は抗体が治療又は予防上有効な量で使用され、特にペプチド類似体又はその抗体が凝集体の形成又はβアミロイドペプチドのアミロイド斑の形成を減少又は阻止し、もしくはその細胞毒性を減少又は阻止するものである。
【0047】
別の好ましい実施形態では、本発明は、a)アルツハイマー病又はその他のタンパク質凝集病例えばプリオン病、パーキンソン病又はハンチントン病及びb)糖尿病、特にI型糖尿病又はII型糖尿病の同時的予防又は治療のための医薬品の製造のための上記の種類のペプチド類似体又はその抗体に関する。
【0048】
別の好ましい実施形態では、アルツハイマー病又はその他のタンパク質凝集病、例えばパーキンソン病、プリオン病又はハンチントン病の予防又は治療、特にa)アルツハイマー病又はその他のタンパク質凝集病、例えばプリオン病、パーキンソン病又はハンチントン病とb)糖尿病の同時治療のための医薬品は、インスリン、プラムリンチド又はIAPPとの混合製剤として提供される。
【0049】
本発明の別の好ましい実施形態は、アルツハイマー病又はその他のタンパク質凝集病、例えばプリオン病、パーキンソン病及び/又はハンチントン病の診断用の診断薬の調製のための本発明のペプチド類似体又は抗体に関する。
【0050】
本発明の別の好ましい実施形態は、タンパク質凝集病、特に糖尿病の診断用の診断薬の調製のための本発明のペプチド類似体又は本発明抗体に関する。
【0051】
また本発明は研究目的のための本ペプチド類似体の使用に関する。
【0052】
別の好ましい実施形態では、本発明は、診断、治療及び研究用の抗体、特にモノクロナール又はポリクロナール抗体の調製のための取り扱いやすい免疫原としての本発明のペプチド類似体に関する。
【0053】
別の好ましい実施形態では、本発明は、検出マーカーを備えた本発明のペプチド類似体又は検出マーカーを備えた本発明抗体をプローブとして被検試料とin vivoで、即ちヒト又は動物の生体で、もしくはin vitroで接触させ、ペプチド類似体又は抗体と所望により存在するIAPP又はそのオリゴマー又は凝集体との結合を検出するIAPP又はその凝集体の定性的又は定量的検出方法に関する。
【0054】
種々のアミロイド原性ペプチド類似体又はタンパク質、例えばβアミロイドペプチド、プリオンタンパク質、ポリグルタミン(ハンチントン病)、αシヌクレイン(パーキンソン病)等の可溶性オリゴマーは同様な空間構造を有するという証拠がある(Kayedら、Scie-nce (2003) 300, 486-489)。要するにKayedら(前掲書)は、βアミロイドペプチド(アルツハイマー病)の可溶性オリゴマー構造のモデルに対して作られた抗体は、種々の他のタンパク質、例えばIAPP、αシヌクレイン、プリオンタンパク質断片を認識して、その細胞毒性をin vitroで中和する性質があることを示すことができた。従って本発明の類似体又はその抗体は凝集の変化のため、又は他のアミロイド原性ポリペプチド、例えばβアミロイドペプチド、プリオンタンパク質、ポリグルタミン又はαシヌクレインの検出のための方法に適している。
【0055】
また本発明は、アミロイド原性ペプチド、そのオリゴマー又は凝集体、特にIAPPペプチド、IAPPオリゴマー又はIAPP凝集体の凝集の追跡及び変化、特に定性的又は定量的検出もしくはIAPPペプチド、そのオリゴマー又は凝集体の細胞毒性の阻止のための方法において、本発明のペプチド類似体又はその抗体をin vivo又はin vitroでアミロイド原性ペプチド、そのオリゴマー又は凝集体と接触させ、アミロイド原性ペプチド、そのオリゴマー又は凝集体の凝集挙動を変化し、特に凝集を減少又は阻止し及び/又はそれによって追跡することができる方法(診断)に関する。
【0056】
また本発明は、アミロイド原性ペプチド、そのオリゴマー又は凝集体、特にβアミロイドペプチド、プリオンタンパク質、αシヌクレイン又はポリグルタミン、そのオリゴマー又はその凝集体の凝集の追跡及び変化、特に定性的又は定量的検出のため、もしくはβアミロイドペプチド、プリオンタンパク質、αシヌクレイン又はポリグルタミン又はそのオリゴマー又は凝集体の細胞毒性の阻止のための方法において、本発明のペプチド類似体又はその抗体をin vivo又はin vitroでアミロイド原性ペプチド、そのオリゴマー又は凝集体と接触させ、アミロイド原性ペプチド、そのオリゴマー又は凝集体の凝集挙動を変化し、特に凝集を減少又は阻止し、及び/又はそれによって追跡することができる方法(診断)に関する。
【0057】
本発明の別の好ましい実施形態は、液中にあるIAPP、ポリグルタミン、αシヌクレイン、プリオンタンパク質又はβアミロイドペプチドの凝集体形成の修飾、特に阻止のための方法において、本発明のペプチド類似体を液体と接触させ、インキュベーションし、IAPP、プリオンタンパク質、αシヌクレイン、ポリグルタミン又はβアミロイドペプチドの凝集挙動を修飾する方法に関する。
【0058】
本発明のその他の実施形態は従属請求項で明らかである。
【0059】
配列プロトコル:
配列番号は次のことを示す:
配列番号1〜17は本ペプチド類似体の好ましい実施形態を示す。個々の配列番号はそれぞれNメチル化パターンが同じで、一次構造が異なる本発明の複数の異なるペプチド類似体を示す。従って個々の配列番号はいずれも特定のNメチル化パターンを示し、このNメチル化パターンは例えば天然のヒトIAPPの野性種アミノ酸配列又は上記で定義したその誘導体、即ち1位のリシン及び/又は2位及び7位の2つのシステイン残基が1位のオルニチン(リシンの代わりに)及び/又はアスパラギン酸及びDap(2つのシステイン残基の代わりに)によって置換される誘導体の種々の一次構造、即ち種々のアミノ酸配列で現れる。従って個々の配列番号はいずれも、一方では特定のNメチル化パターンを有する天然のヒト野性種IAPPの一次構造、さらには同じNメチル化パターンを有する上記の誘導体を表す。2位及び7位にCysをもつ本発明のペプチド類似体は好ましくは酸化されており、即ちCys2及びCys7のチオール残基の間のジスルフィド架橋が閉じている。
【0060】
同様に2位及び7位にDap及びAsp又はAsp及びDapをもつ本発明のペプチド類似体は好ましくは架橋されている。即ちAspとDapの側鎖がラクタム架橋により互いに共有結合されている。発明の一実施形態で本発明のすべてのペプチド類似体のC末端が、好ましい実施形態ではアミドをなす。
【0061】
配列番号と、下記の実施例で使用する好ましいペプチド類似体の略称との対応関係が実施例8で明らかである。
【0062】
配列番号18は天然のヒトIAPPのアミノ酸配列を示す。
【0063】
下記の実施例及び後述する図面に基づいて発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
【実施例1】
【0065】
本発明のペプチド類似体の溶解度特性の特徴づけ及びIAPPとの比較
天然のIAPPと比較した本発明のペプチド類似体の溶解度特性を沈降試験、電子顕微鏡研究及びチオフラビンT結合試験により調べた。
【0066】
a)類似体の溶解度をIAPPと比較して検査するために沈降試験を使用した。沈降又は溶解ペプチドの量は経時的に測定した。代表試験として、まず10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中の所定の濃度(1、10又は100μM)のペプチド溶液を調製した。所定の時点でこの溶液のアリコートを遠心分離し(20200g、20分)、ペレットと上清の沈降タンパク質をBCAタンパク質決定アッセイ(BCAはビシンコニン酸を表す)により定量化した。図1にこの試験の幾つかの結果を示す。この図で分かるように、濃度10μMでのIAPPの凝集は溶液の調製の直後に始まる。20時間後にIAPPは完全に沈降していた。これに対してNメチル化類似体、IAPP−LA、IAPP−GI及びIAPP−AFは濃度100μMでも14日間溶解していた。IAPPは後者の条件(100μM)で僅か2時間後に完全に沈降した。
【0067】
b)様々なタンパク質種のアミロイド細繊維は色素ThTを結合し、その蛍光放出最大値の増加をもたらす。それゆえThT結合は、アミロイド細繊維の定量化のために広範な用途で使用される特異的テストである。類似体のアミロイド結合能力をIAPPと比較して測定するために、このテストを使用した。このテストのためにアッセイ緩衝液中62.5μmの濃度の類似体及びIAPPをインキュベーションした(2%HFIP、10mMトリス、pH7.4)。所定の時点でこのインキュベーション物の40mlのアリコートを160mlの5μM−ThT溶液(0.1Mグリシン−NaOH緩衝液、pH8.5中の)に添加し、かき混ぜ、450nmで励起の後に485nmで溶液の放出を測定した。
【0068】
その場合IAPPはすでに625nMの濃度で細繊維を形成することが判明した。これに対して類似体は62.5μMの濃度でもなお細繊維を形成しなかった(図2)。
【0069】
c)電子顕微鏡研究のために類似体とIAPPの5μM溶液(1%HFIPを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4中の)を室温で約20時間インキュベーションした。次に10μlの溶液を電子顕微鏡プレートに塗布し、前述のように(Kayed, J.Mol.Biol.(1999) 287, 781-796)1%酢酸ウラニルで染色した後、細繊維の有無を電子顕微鏡で調べた。主としてIAPPアミロイド細繊維からなるIAPP溶液と対照的に、IAPP類似体の溶液は細繊維を含まないことが明らかになった(図3)。
【0070】
これらのデータはThT結合アッセイ及び沈降アッセイの結果とともに、類似体はアミロイド原性がなく、IAPPの少なくとも100倍の溶解度を有することを示す。
【実施例2】
【0071】
IAPPと比較した類似体の細胞毒性の研究
IAPPアミロイド凝集体は膵臓β細胞及びその他の一連の細胞に対して細胞毒性を有する。IAPP及びその他のアミロイドポリペプチドの細胞毒性効果はアミロイドへの凝集を伴って現れることが前提となる。このことから、類似体はアミロイド原性がないので細胞毒性もないはずであるという仮定がでてくる。この仮定を検証するために、MTT細胞毒性テストを使用した。このテストは無傷のレドックス電位をもつ「健全な」細胞による色素3−[4,5−ジメチルチアゾールー2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の還元に基づいている(Shearmanら、J. Neurochem. (1995) 65, 218-227;Shearmanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91, 1470-74)。これは細胞生存性又は障害の初期指示薬である。IAPPを含むアミロイド凝集体の細胞毒性効果をこのテストにより定量化できることが判明した。IAPP及び類似体の細胞毒性を膵臓細胞株RIN5fmに基づき前述のように調べた(Kapurniotuら、J. Mol. Biol. (2002) 315, 339-350)(図4)。代表的なMTTテストで、ペプチドのインキュベーション物を調合し(1%HFIPを含む又は含まない10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中の5μM)、室温で20時間後に細胞(20時間前に5×105/mlの細胞密度で播種した)に加えた。細胞とともに約20時間インキュベーションした後、MTTをこれに加え、2時間作用させた後、細胞のMTT還元電位を分光測光法で測定した。結果は、対照細胞によるMTT還元のパーセントに相当する%細胞生存性として示され(MTTの100%還元は100%生存性に相当する)、少なくとも2つの独立のテストの平均値(±SEM[標準誤差])に相当する。
【0072】
図4で分かるように、類似体IAPP−AL、IAPP−GI及びIAPP−FAはIAPPと対照的に細胞毒性を示さなかった。
【実施例3】
【0073】
IAPPのアミロイド形成能力の阻害剤又はモジュレーターとしての類似体の効果
IAPPのアミロイド形成能力に対する類似体の効果をEM(電子顕微鏡)及びThT結合テストで調べた。
【0074】
代表的なThT結合テストの出発点としてアッセイ緩衝液(10mMトリス、pH7.4及び2%HFIP)中の6.25μM−IAPPを単独で、又は類似体との1/1混合物で含むインキュベーション物を調合した。所定の時点で溶液のアリコートを上記のようにThTと混合し、その蛍光放出を検査した。図5で明らかなように、類似体はIAPPのアミロイド形成能力に対して強い阻害効果を有する。
【0075】
電子顕微鏡で追跡した代表的な凝集テストにおいて、IAPP(5μM)を単独で、又は類似体(1/1の割合)の存在下でインキュベーションした(1%HFIPを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中で)。20時間後に10μlの溶液を電子顕微鏡プレートに塗布し、上記のように1%酢酸ウラニルで染色した後(Kayed, J. Mol. Biol. (1999) 287, 781-96)、細繊維の存在を電子顕微鏡で調べた。主としてIAPP−アミロイド細繊維からなるIAPP溶液とは対照的に、IAPP−類似体混合物では細繊維の形成が完全に抑制されていた(図6)。
【実施例4】
【0076】
IAPPの細胞毒性の阻害剤としての類似体の効果
IAPP−アミロイド凝集体のβ細胞毒性に対する類似体IAPP−GI、IAPP−AL及びIAPP−FAの効果を2つの異なるテストで調べた。まずMTT−細胞生存性テストを使用した(上記を参照)。テストが示したところでは、IAPP/ペプチド類似体混合比1/1ですべての類似体はIAPPの細胞毒性を著しく阻止することができる(図7A)。その場合IAPP−GIはIAPP細胞毒性の最も強い阻害剤であることが証明された。
【0077】
第2のテストではIAPP−アミロイドによって引き起こされるアポプトーシスβ細胞死に対するIAPP−GIの効果を調べた(IAPP仲介性細胞死は主としてアポプト−シスによって引き起こされることが知られている)。そのためにIAPPの溶液を単独で、及びIAPP−GI(1/1)(10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中5μM)の存在下で調製し、平板培養した細胞とともに500nMの最終濃度で20時間インキュベーションした。次に市販のアポプト−シスELISA(RocheのCell Death Detection Kit)によりアポプト−シスを定量化した。このELISAアッセイによって、アポプト−シス細胞死の早期の特異的な証拠である細胞質ゾルヌクレオソームが定量化された。このテストも、IAPP−GIは膵臓β細胞をIAPP誘導性アポプト−シス細胞死から守る性質があることを示した(図7B)。
【実施例5】
【0078】
IAPP受容体アゴニストとしての類似体の効果
(ヒト)IAPP受容体アゴニストとしての類似体の効果をテストするために、まずこの受容体を発現する細胞で受容体結合アフィニティーをテストした。このような細胞はヒト乳癌細胞に由来するMCF−7細胞株である(Zimmermannら、J. Endocrinology (1997), 155, 423-31)。特異的IAPP受容体がMCF−7細胞株で発現されるため、この細胞株はIAPPアゴニスト/アンタゴニストのテストに広く適用される。
【0079】
受容体結合テストをZimmermannら、J. Endocrinology (1997), 155, 423-31に記載されたのと同様に行った。今まで知られている最強の受容体リガンドである125I標識ラットIAPP(rIAPP)配列をIAPP又はペプチド類似体IAPP−GI、IAPP−AL又はIAPP−FAの存在下で定量的に測定した。種々の最終濃度(図8A)の放射性標識リガンドrIAPP(〜80pM)と当該のペプチドの混合物をMCF−7細胞とともに室温で1時間インキュベーションした。次に細胞をテスト用緩衝液(テスト用緩衝液は0.1%BSAを含むDulbecco MOD EagleとF12栄養混合物(HAM)の1/1混合物からなる)で洗浄し、NaOH(0.5M)と、続いてシンチレーション液と混合し、膜結合放射能をシンチレーションカウンターで測定した。図8Aで明らかなように、ここでテストした3つのすべての類似体は、IAPP受容体を結合することができた。そIAPP−ALは最高の受容体アフィニティーを有するアゴニストであり、IAPP−GIは最も弱いアゴニストであることが示された(図8A)。
【0080】
続いて類似体のアゴニスト能力をテストするために、アデニルシクラーゼ活性化能力(AC活性化)をテストした。IAPPの受容体仲介性生物学的効果の幾つかはアデニルシクラーゼ活性化によって仲介されることが判明している。AC活性化は、種々の濃度のIAPP又は類似体で細胞を処理した後(15分、37℃)に産生されるcAMPをcAMP Bio-trak ELISA(Amersham)で定量化することによって測定される。テストはZimmerma-nnら、J. Endocrinology (1997)(前掲個所)の記録と同様にMCF−7細胞で行う。図8Bで明らかなように、テストしたすべての類似体(IAPP−GI、IAPP−AL、IAPP−FA)は完全IAPPアゴニストであった。IAPP−ALは最も有力なアゴニストであり、IAPPより優れたAC活性化リガンドであることが示された。IAPP−AFはIAPPと同様なAC活性化能力を有し、IAPP−GIはIAPPより弱いアゴニストである。
【0081】
このようにAC活性化テストの結果は受容体結合テストの結果と一致する。
【実施例6】
【0082】
IAPPと比較した溶液(濃度1mg/ml、pH7.4)中の安定性及び生体活性(ホルモン効果)の維持の比較:治療でのIAPP代替物としての可能な使用
糖尿病及び/又はその他の疾病の治療でIAPP又はプラムリンチド代替物として類似体を使用する可能性について、その溶液の安定性及びそのホルモン作用を、凝集しやすいIAPPと比較して調べた。代表調合物ではIAPP、IAPP−AL、IAPP−GIの水溶液又は10μmリン酸ナトリウム(pH7.4)中の類似体とIAPP(250μM又は1mg/ml)の1/1混合物を室温で使用し、4日間インキュベーションする。この溶液のAC活性化能力を種々の時点で、例えば0、48及び96時間に前述のAC活性化アッセイにより測定した(細胞の最終濃度1μM、最大活性化に相当)(図9)。
【0083】
この実験は、IAPPは上記の条件で貯蔵すると、その当初のホルモン作用の半分以上が失われる(おそらくその凝集のため)ことを示した。これに対し、類似体及びIAPP/類似体混合物(1/1)のホルモン作用は完全に維持された。選んだ1mg/mlの濃度は、Amylin Pharmaceuticals社が糖尿病の治療のために臨床研究で使用するSymlin(酢酸プラムリンチド)製剤の濃度に相当する。
【実施例7】
【0084】
アルツハイマー・ペプチド、βアミロイドペプチド(A−β)の細胞毒性に対する類似体の阻害効果:アルツハイマー病(AD)の治療のための可能な使用
A−βの細胞毒性に対するIAPP−GI(1/1混合物)の効果をMTTテストで調べた。このために、A−β(100μM)を単独で、又はIAPP−GIとともに、150mM−NaCl及び2.2%HFIPを含む10mMトリス緩衝液(pH7.4)中で室温で4日間インキュベーションした。次に希釈後に溶液をPC−12及びHTB−14細胞に加えた。2つの細胞株はA−β細胞毒性阻害剤候補の阻害効果の検査のためにしばしば使用される。実際にIAPP−GIはA−βペプチドの細胞毒性を大幅に低下し得ることが、2つの細胞株で明らかになった(図10)。A−βとIAPP−GIの相互作用が別の結合テストで確認された。すなわち、IAPP−GI及びその他のNメチル化IAPP類似体はアルツハイマー病(AD)の治療に特に適している。
【実施例8】
【0085】
本発明のペプチド類似体
【表1】

【0086】
本発明に係るペプチド類似体は、Fmoc/tBu戦略を使用してRINK−アミド−MBHA樹脂による慣用の固相ペプチド合成法で簡単な化学合成により高い純度と良好な収量で調製された(Kazantzisら、Eur. J. Biochem. (2002) 269, 780-791)。代表的な合成ではNα−Fmoc−保護アミノ酸(側鎖保護は次の通り:Lys(Boc)、Cys(Tet)、Arg(Pmc)、Asn(Tet)、His(Tet)、Ser(tBu)、Tyr(tBu)、Thr(tBu))が使用された。Nメチル化Fmoc−アミノ酸はこの形(例えばFmoc-(N-Me)Ile;Fmoc-(N-Me) Gly等)でも使用された。Fmoc−アミノ酸(AS)の結合はDMF及び/又はNMP中でTBTU及びDIEA(C末端ASのモル数の4倍の過剰AS、4倍の過剰TBTU、6倍の過剰DIEA)で行われた。Nメチル化AS又はNメチル化ASへの結合には、2倍〜x倍に及ぶ大過剰の結合、結合数、溶媒の混合物及び長い結合時間が使用された。Fmoc基の開裂はDMF中で25%ピペリジンによって行われた。樹脂からのペプチドの分離は混合物TFA/水/チアニゾール/エタンジチオール/フェノール(83/4.5/2/6(v/v/v/v/w))で行われた(Kazantzisら、Eur. J. Biochem. (2002) 269, 780-791)。濾過により樹脂をペプチド溶液から分離し、溶媒を蒸発し、10%HAcに受けてエーテルで抽出し、含水相を凍結乾燥した後、還元した形で粗生成物が得られた。Cys2/Cys7のジスルフィド架橋の結合は、3MのGdnHClを含む0.1M−NH4HC3中で行われ、2−4時間かかった。粗生成物を酸化の後に再び逆相クロマトグラフィーによりC18カラムでACN含有勾配により高純度に精製した(Kazantzisら、前掲書)。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、IAPP(10及び100μM)及び類似体IAPP−GI、IAPP−AL、IAPP−FA、IAPP−ILの沈降アッセイの吸収を示す。570nmでの吸収は(ペレット又は上清の)タンパク質の量に相当する。
【図2】図2は、細繊維結合テストの結果を示す:62.5μMのIAPPと62.5μMのIAPP−GI、IAPP−AL及びIAPP−ILの細繊維結合能力をThT結合アッセイにより定量化した。
【図3】図3は、IAPP及び類似体IAPP−GI、IAPP−AL及びIAPP−FAのアミロイド原性潜在力の電子顕微鏡研究の結果を示す。電子顕微鏡に基づく凝集テストによりペプチドのインキュベーション物(5μM、20時間)を調べた。左から右へ、下記のインキュベーション物のアリコートを示す:IAPP単独、IAPP−GI、IAPP−FA及びIAPP−AL(横棒:100nm)。
【図4】図4は、IAPPと比較した類似体IAPP−GI、IAPP−AL、IAPP−FAの潜在細胞毒性効果の決定のためのMTT−還元アッセイの結果を示す。
【図5】図5は、細繊維結合テストの結果を示す:IAPP(6.25μM)の細繊維結合能力に対するIAPP−GI、IAPP−AL及びIAPP−FA(1/1混合物)の効果をThT結合アッセイによって定量化した。
【図6】図6は、凝集テストの結果を示す:IAPP(5μM)の細繊維結合能力に対するIAPP−GI、IAPP−AL及びIAPP−FA(1/1混合物)の効果を電子顕微鏡に基づく凝集アッセイにより調べた。左から右へ、下記のインキュベーション物のアリコートを示す(20時間):IAPP単独、IAPPとIAPP−GIの混合物、IAPPとIAPP−FAの混合物及びIAPPとIAPP−ALの混合物。
【図7】図7Aは、IAPPの膵臓細胞毒性(RIN5fm細胞株)に対する類似体IAPP−GI、IAPP−AL及びIAPP−FAの効果を決定するためのMTT−還元アッセイの結果を示す。図7Bは、単独及びIAPP−GI(1/1)の存在下のIAPP誘導性アドプトーシスの決定を示す。同じ条件でIAPP−GI単独もテストしたが、細胞毒性は認められなかった。少なくとも2つの独立したアッセイの平均値(±SEM)を示す。
【図8】図8Aは、MCF−7細胞でIAPP及び類似体IAPP−GI、IAPP−AL及びIAPP−FAによる(ヒト)IAPP受容体結合アッセイの結果を示す。ラジオリガンド[125I]−rIAPPの特異的結合をリガンド濃度に対してプロットする。図8Bは、MCF−7細胞でIAPP及び類似体IAPP−GI、IAPP−AL及びIAPP−FAによる受容体活性化アッセイの結果を示す。cAMP Biotrak ELISA(Amersham)でcAMPを定量化することによってアデニルシクラーゼ活性化(最大の%)を測定した。1μMのIAPPで得られた活性化を最大AC活性化とみなした。
【図9】図9は、ELISAの結果を示す:RT(室温)で4日静置した250μMのIAPP溶液(10mMリン酸ナトリウム、pH7.4中の)のMCF−7細胞での受容体活性化能力の時間依存性を類似体IAPP−GI及びIAPP−LA並びに類似体とIAPPの混合物の受容体活性化能力と比較する。cAMP Biotrak ELISA(Amersham)でcAMPを定量することによってアデニルシクラーゼ活性化(最大の%)を測定した。1μMのIAPPで得られた活性化を最大AC活性化とみなした。
【図10】図10は、A−β(PC12細胞株)の細胞毒性に対する類似体IAPP−GIの効果を決定するためのMTT−還元テストの結果を示す。結果は代表的なアッセイ(3回の決定)の平均値(±SEM)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然の膵ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド(IAPP)受容体に結合しうるIAPPペプチド類似体であって、前記ペプチド類似体がa)最高38個のアミノ酸を有し、そのうち37個のアミノ酸がその天然の配列中に天然のIAPPのアミノ酸配列を有し、b)その天然の配列中に天然のIAPPの少なくともアミノ酸19〜37を有し、c)少なくとも1つのアミド結合がNメチル化されており、そして所望によりd)天然のIAPPのアミノ酸配列の1位のLys(リシン)がOrn(オルニチン)で置換されていてもよく、ならびに/あるいは、2位及び7位のCys(システイン)が2位のDap(ジアミノプロピオン酸)及び7位のAsp(アスパラギン酸)又は2位のAsp及び7位のDaPで置換されていてもよく、かつe)但し天然のヒトIAPPのアミノ酸配列を有する配列番号1〜5のペプチド類似体を除くものであるペプチド類似体。
【請求項2】
天然の膵ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド(IAPP)受容体に結合しうる、診断薬又は治療薬としてのIAPPペプチド類似体であって、前記ペプチド類似体がa)最高38個のアミノ酸を有し、そのうち37個のアミノ酸が天然の配列中に天然のIAPPのアミノ酸配列を有し、b)その天然の配列中に天然のIAPPの少なくともアミノ酸19〜37を有し、c)少なくとも1つのアミド結合がNメチル化されており、そして所望によりd)天然のIAPPのアミノ酸配列の1位のLysがOrnで置換されていてもよく、ならびに/あるいは、2位及び7位のCysが2位のDap及び7位のAsp又は2位のAsp及び7位のDaPで置換されていてもよいペプチド類似体。
【請求項3】
天然のIAPPの完全なアミノ酸配列を有する請求項1又は2に記載のペプチド類似体。
【請求項4】
天然のIAPPのアミノ酸8〜37を有する請求項1、2又は3に記載のペプチド類似体。
【請求項5】
IAPPの天然の受容体のアゴニストとして作用する請求項3に記載のペプチド類似体。
【請求項6】
IAPPの天然の受容体のアンタゴニストとして作用する請求項4に記載のペプチド類似体。
【請求項7】
IAPPの1個、2個、3個又は4個のアミド結合がNメチル化されている上記請求項のいずれか1項に記載のペプチド類似体。
【請求項8】
少なくとも1つのアミド結合が、22位、23位、24位、25位、26位、27位、28位、及び29位のアミノ酸のαアミノ基のアミド結合からなるグループから選ばれる上記請求項のいずれか1項に記載のペプチド類似体。
【請求項9】
ペプチド類似体が配列番号1〜17からなるグループから選ばれている上記請求項のいずれか1項に記載のペプチド類似体。
【請求項10】
ペプチド類似体が可溶である上記請求項のいずれか1項に記載のペプチド類似体。
【請求項11】
ペプチド類似体の特にN末端のαアミノ基が特にアセチル基、放射性マーカー、酵素マーカー、蛍光マーカー、発光マーカー又はスピンラベルで標識されている上記請求項のいずれか1項に記載のペプチド類似体。
【請求項12】
ペプチドがアシル基、機能性アシル基、芳香族基、アミノ酸、グリコール基及び脂質基からなるグループから選ばれた少なくとも1個の官能基で誘導されている上記請求項のいずれか1項に記載のペプチド類似体。
【請求項13】
マーカー及び/又は官能基がスペーサー、特にアミノ酸によってペプチド類似体と結合されている請求項11又は12に記載のペプチド類似体。
【請求項14】
担体に固定化されている上記請求項のいずれか1項に記載のペプチド類似体。
【請求項15】
IAPPがヒトIAPPである上記請求項のいずれか1項に記載のペプチド類似体。
【請求項16】
IAPPに対して特異的、又は請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体に対して特異的な抗体の調製方法において、請求項1〜15のいずれか1項に記載の少なくとも1つのペプチド類似体を抗原として、所望によりIAPPモノマー又はそのオリゴマーとともに、抗体形成能力をもつ系と接触させ、生じた抗体を得る方法。
【請求項17】
IAPP又はβアミロイドペプチドと請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体との混合物に対して特異的な抗体の調製方法において、IAPP又はβアミロイドペプチド又はそのオリゴマーと請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド類似体との混合物を抗原として、抗体形成能力をもつ系と接触させ、生じた抗体を得る方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体の混合物に対して特異的、又は請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体とβアミロイドペプチドの混合物に対して特異的であって、これに特異的に結合する、請求項17に記載の方法により調製される抗体。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体に対して特異的、又はIAPPに対して特異的、又はIAPP/ペプチド類似体複合体に対して特異的であって、これに特異的に結合する、請求項16に記載の方法により調製される抗体。
【請求項20】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の少なくとも1つのペプチド類似体及び/又は請求項18又は19に記載の抗体を含む医薬品。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の少なくとも1つのペプチド類似体及び/又は請求項18又は19のいずれか1項に記載の抗体並びにインスリン及び/又はIAPP及び/又はプラムリンチドを含む組合せ医薬品。
【請求項22】
少なくとも1つの薬学的に許容しうる担体を含む請求項20〜21のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項23】
医薬品がデポー製剤として提供される請求項20〜22のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項24】
医薬品が錠剤形態、エーロゾル又は溶液である請求項20〜23のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項25】
タンパク質凝集病、特に糖尿病の予防又は治療のための医薬品の製造のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項26】
糖尿病の予防又は治療のための組合せ医薬品の製造のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体とインスリン及び/又はIAPP及び/又はプラムリンチドの併用。
【請求項27】
ペプチド類似体を糖尿病のIAPP受容体調節治療のための受容体アンタゴニストとして使用する請求項25又は26に記載の使用。
【請求項28】
ペプチド類似体を糖尿病のIAPP受容体調節治療のための受容体アゴニストとして使用する請求項25又は26に記載の使用。
【請求項29】
ペプチド類似体をIAPP凝集及びIAPP斑の形成の阻害剤として使用する請求項25、26、27又は28に記載の使用。
【請求項30】
a)IAPP凝集又はIAPPによるアミロイド斑の形成の減少又は阻止と、b)糖代謝の調節を同時に行なうための医薬品の製造のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項31】
a)IAPPの細胞毒性又はその凝集の減少又は阻止と、b)糖代謝の調節を同時に行なう医薬品の調整のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項32】
β−アミロイドペプチド凝集又はβ−アミロイドペプチドによるアミロイド斑の形成の減少又は阻止のための医薬品の製造のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項33】
β−アミロイドペプチドの細胞毒性又はその凝集の減少又は阻止のための医薬品の製造のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項34】
アルツハイマー病又はその他のタンパク質凝集病の予防又は治療のための医薬品の製造のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項35】
a)アルツハイマー病又はその他のタンパク質凝集病と、b)糖尿病の予防又は治療を同時に行なう医薬品の製造のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項36】
医薬品がインスリン及び/又はプラムリンチド及び/又はIAPPを含む組合せ医薬品として作製されている請求項25〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
アルツハイマー病又はその他のタンパク質凝集病の診断のための診断薬の調製のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項38】
タンパク質凝集病、特に糖尿病の診断のための診断薬の調製のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項39】
診断、治療及び研究用の抗体の製造のための、取り扱いが改善された免疫原としての請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体の使用。
【請求項40】
検出マーカーを備えた請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は検出マーカーを備えた請求項18又は19に記載の抗体をプローブとして、被検試料と接触させ、場合によって存在するIAPP、β−アミロイドタンパク質、プリオンタンパク質、α−シヌクレイン又はポリグルタミン又はその凝集体を有するペプチド類似体又は抗体の形成を検出することを特徴とする、IAPP、β−アミロイドタンパク質、プリオンタンパク質、α−シヌクレイン又はポリグルタミンもしくはその凝集体の定性的及び/又は定量的検出方法。
【請求項41】
液体に含まれるIAPP、β−アミロイドタンパク質、プリオンタンパク質、α−シヌクレイン又はポリグルタミンの凝集体形成を調節、特に阻止するための方法であって、請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体と前記液体を接触させ、インキュベーションし、凝集体形成を調節することを特徴とする方法。
【請求項42】
研究目的のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体又は請求項18又は19に記載の抗体の使用。
【請求項43】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のペプチド類似体とIAPP及び/又はβ−アミロイドタンパク質及び/又はプラムリンチドとの混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−517885(P2008−517885A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537192(P2007−537192)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011211
【国際公開番号】WO2006/042745
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507128377)
【出願人】(500242786)フラウンホファー ゲセルシャフトツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. (47)
【Fターム(参考)】