説明

化学反応を実施しモニターするための一体型装置

化学反応を実施しモニターする装置は、基部および当該基部上に取り付けられたサーマルサイクラーを具備する。複数の熱伝導性受け口部分が、サーマルサイクラー上に取り付けられており、サーマルサイクラーと熱的に連通している。各受け口部分は、開放端、第一の窓、および第二の窓を有する穴を画成する不透明な本体を具備する。カートリッジは、脱着自在に受け口部分に取り付けられる。カートリッジは、複数の光透過性反応容器を具備しており、反応容器には、流体を処理し移送するために導管が接続されている。反応容器は、受け口部分の穴の開放端を通って該穴に受け入れられる。反応容器の第一の窓を通して反応容器を照らすために、発光素子が基部に取り付けられている。受け口部分の第二の窓を通して反応容器から放出された光を選択的に受光し検出するために、光検出器が基部に取り付けられている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、
(1)2007年12月6日出願された米国仮出願第60/996,817号、
(2)2008年3月31日に出願された米国仮出願第61/064,871号、並びに
(3)2008年6月23日に出願された国際出願第PCT/SG2008/000222号
の恩典を主張するものである。参照によりそれらの内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、化学反応、特に核酸増幅反応を実施しモニターする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のための一体型システムは、商品名GeneXpert(商標)としてCepheid社から入手可能である。このシステムは、試料調製を自動で行い、システムに連結された特別なカートリッジにおいてDNA抽出のための工程を実施することができる。当該カートリッジは、薄い菱形の反応容器を備えている。反応容器の側壁には、反応容器内に収容されている内容物を光学的に調べるための光学的窓が備えられている。当該システムは、光励起アセンブリおよび検出アセンブリ、並びに反応容器を間に受け入れた際に当該反応容器を加熱するための相対する2つの加熱プレートを含む。システムには加熱プレートを冷却するためのファンが備えられている。当該システムは、リアルタイムPCRに必要な加熱および冷却サイクルを実行し、同一カートリッジにおいて複数の標的核酸の存在を検出することができる。
【発明の概要】
【0004】
化学反応を実施しモニターするための従来のシステムは、改良し簡素化することが可能であることが明らかにされている。例えば、基本システムの構成を簡素化することができる。さらに、試料調製、前処理、反応、および検出をすべてインサイチューで実行することができる一体型装置を提供できることが明らかにされている。改良された性能、比較的簡素な構造、比較的安価なコスト、またはこれらの特徴の組み合わせを備えた、化学反応を実施しモニターするための装置が提供されることも望まれている。本発明の局面により、化学反応を実施しモニターするための装置が提供される。当該装置は、基部と;基部に取り付けられたサーマルサイクラーと;サーマルサイクラー上に取り付けられ、サーマルサイクラーと熱的に連通している複数の熱伝導性受け口部分であって、それぞれが、開放端、第一の窓、および第二の窓を有する穴を画成する不透明な本体を具備する受け口部分と;受け口部分上に脱着可能に取り付けられるカートリッジであって、複数の光透過性反応容器と、流体を処理し移送するために反応容器に接続された導管とを具備し、各反応容器が受け口部分の穴の開放端を通って当該穴に受け入れられるカートリッジと;反応容器の第一の窓を通して反応容器を照らすために基部に取り付けられた発光素子と;並びに受け口部分の第二の窓を通して反応容器から放出された光を選択的に受光し検出するために基部に取り付けられた光検出器とを備える。光検出器は、単一の光電子増倍管(PMT)を具備し得る。当該装置は、反応容器から放出された光をPMT上に集めるために基部に取り付けられたレンズを具備し得る。当該装置は、放出された光が第一の窓のそれぞれ1つへと誘導されるようにそれぞれ配置された複数の発光素子を具備し得る。複数の発光素子は、反応容器のそれぞれ1つを照らすようにそれぞれが配置されて備えられ得る。各反応容器は、概して円筒形を有し得る。受け口部分の穴は、概して円筒形であり得る。各受け口部分の第一の窓と第二の窓は、第二の窓から受光された光が、第一の窓を通って光検出器へ伝送されることを減じるように構成され得る。当該受け口部分は、3個の受け口部分から成り得る。当該発光素子は、発光ダイオードを具備し得る。当該サーマルサイクラーは、冷却器および加熱器を具備し得る。冷却器は熱電クーラーであってもよい。加熱器は電気ヒーターであってもよい。冷却器および加熱器は一体化されていてもよい。当該装置は、基部上に取り付けられたヒートシンクを具備していてもよく、並びにサーマルサイクラーは、当該ヒートシンク上に取り付けられてもよい。当該装置は、サーマルサイクラーを制御するために、サーマルサイクラーと通信する制御器を具備し得る。当該制御器は、光検出器による光の検出に応じて信号を受信するために、当該光検出器と通信し得る。当該制御器は、信号の受信に応じて反応容器を選択的に加熱または冷却するためにサーマルサイクラーを制御し得る。当該装置は、発光素子と受け口部分のそれぞれ1つとの間にそれぞれ配置された複数の光フィルターを具備し得る。当該装置は、受け口部分と光検出器との間に配置された光フィルターを具備し得る。当該受け口部分は、銅または真鍮で作製され得る。カートリッジの導管は、反応させるまたは検出する試料を調製し処理するため、並びに当該試料を1つ以上の反応容器に移送するために構成された導管を具備し得る。カートリッジの反応容器の少なくとも1つは、反応混合物を収容し得る。当該反応混合物は、核酸増幅反応混合物であり得る。当該反応混合物は、ポリメラーゼ連鎖反応混合物であり得る。
【0005】
本発明の別の局面により、前述の段落に記載された装置と、当該装置と通信するユーザーインタフェースとを具備するシステムが提供される。当該装置は、出力を発生させることができ、ユーザーインタフェースは、当該出力を受信し、出力に基づいた情報を表示することができる。当該出力は、検出器によって検出された光信号の出力反射を含み得る。
【0006】
本発明の別の局面により、本明細書に記載された装置を操作する方法が提供される。この方法において、複数の反応混合物が、カートリッジ内において調製され、各反応混合物は、選択された反応容器内に収容される。サーマルサイクラーは、選択された反応容器を選択的に加熱または冷却することによって選択された反応容器内の反応混合物が選択的に加熱または冷却されるように制御される。異なる反応容器内の反応混合物が、発光素子によって順次照らされる。反応混合物から放出された光は、光検出器で検出される。サーマルサイクラーは、反応混合物から放出された光の検出に応じて制御され得る。ユーザーに対しては、検出結果に応じた出力が表示され得る。
【0007】
本発明の他の局面および特徴は、当業者が、本発明の以下の特定の態様の説明を、添付の図面と併せて検討すれば明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
例示のみを目的として、図面を用いて、本発明の態様を説明する。
【0009】
【図1】本発明の例示的な態様による、化学反応を実施しモニターするための装置の斜視図を示す。
【図2】図1の装置の上平面図を示す。
【図3】図1の装置の側面図を示す。
【図4】図1に示された受け口部分の断面図を示す。
【図5】図1の装置の光学的コンポーネントと光路の概略図を示す。
【図6】本発明の例示的な態様である、図1の装置を含む化学反応を実施しモニターするためのシステムを説明するブロック図を示す。
【図7】図1の装置を使用して検出された蛍光強度の折れ線グラフを示す。
【図8】図1に示されたカートリッジの後部透視斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
化学反応を実施しモニターするための一体型装置またはシステムを提供する。当該化学反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば基本的なPCRまたは逆転写酵素PCR(RT-PCR)などを含む核酸増幅反応、あるいは制御された加熱/冷却とリアルタイムの光学的検出を必要とする他の反応であり得る。例えば、リアルタイムPCRは、そのような装置またはシステムを使用して簡便に実施しモニターすることができる。
【0011】
図1は、本発明の例示的な態様である、カートリッジ200において化学反応を実施しモニターするための装置100の斜視分解図である。図2および3に装置100の上面図および側面図を示すが、カートリッジ200は図示されていない。
【0012】
装置100は、基部102を備える。ヒートシンク104は、基部102上に取り付けられている。サーマルサイクラー106は、ヒートシンク104上に取り付けられている。ヒートシンク104は、サーマルサイクラー106による効率的な熱交換のために熱を伝導する。ヒートシンク104は、好適な材料で作製され得、効率的に放熱するために好適に構成され得る。例えば、ヒートシンク104は、空冷機能を備え得る。3つの熱伝導性受け口部分108が、サーマルサイクラー106上に取り付けられている。3つの発光素子110が、受け口部分108に隣接してヒートシンク104上に取り付けられている。支持体112が、光検出器114を支持するために基部102上に取り付けられている。
【0013】
検出器114は、使用の際に、試薬または反応生成物から放出されることが予想される光信号を検出し分析するために好適な、任意の光検出器またはセンサーであり得る。例えば、検出器114は、単一の光電子増倍管(PMT)を備え得る。検出器114は、以下においてさらに説明されるように、異なる受け口部分108から放出された光を受光できるように配置され整列されている。理解され得るように、単一の検出器により、装置のコストと複雑さが低減され得る。
【0014】
光フィルタ116および光学レンズ118は、受け口部分108からの光を集めてフィルターにかけるために、受け口部分108と検出器114との間の光路に配置され得る。レンズ118が使用される場合、レンズ118は、性能改善のために、異なる受け口部分108からの光を同じ検出器114へと簡便に集めることができる。
【0015】
図4に、より詳細に示されているように、各受け口部分108は、不透明な本体120を有する。本体120は、十分に熱を伝導する任意の好適な材料から形成され得る。例えば、銅、真鍮、アルミニウムなどの材料が、本体120を形成するために使用され得る。本体120は、カートリッジ202の反応容器202(図4には示されていないが、図1には示されている)を受け入れるための開放端124を有する穴122を画成する。穴122は、概して円筒形であり得る。穴122はさらに、概して円形の断面を有し得る。穴122の底端部は閉じていてもよく、かつ丸形もしくは平坦形または他の形状であってもよい。
【0016】
第一の窓126は、発光素子110から放出された光が穴122に入るように、したがって、穴112に受け入れられた反応容器202に入るように、受け口部分108の、対応する発光素子110に面している側面に備えられている。検出器114が、穴122に受け入れられた反応容器202から放出された光を受光し検出し得るように、第二の窓128は、受け口部分108の、検出器114(または、レンズ118を備えている場合はレンズ118)に面している側面に備えられている。窓126および128は、任意の形状であり得る。例えば、それらは、概して円形または矩形であり得る。
【0017】
図示されているように、本体120は、別個に形成され、それぞれが概して管形を有し得る。他の態様において、異なる受け口部分108の本体120が、単一ユニットに一体化されていてもよい。例えば、2つ以上の受け口部分が、複数の穴を有する単一ブロックに形成されていてもよい。
【0018】
いくつかの態様において、窓126を通って受光される(発光素子110からの)入射励起光が、窓128を通って検出器114へ伝送されることを低減または防止することが所望され得る。例えば、図4に示されているように、発光素子110、窓126、窓128、および検出器114は、励起光が、窓126中へと下向きの角度、例えば約45度の方向を向き、一方、窓128から検出器114によって受光される放出光は、概して水平方向に進むように構成され得る。そのような整列は、光の干渉および検出光における信号−ノイズ比を減少させ得る。
【0019】
図1〜3および図8に図示されているように、図示された態様において、3つの細長い受け口部分108が、お互いに隣接して配置され、概して並行関係に整列されている。各受け口部分108は、その開放端を上に向けて上方に伸びている。この整列は、いくつかの用途において好都合であり得る。例えば、複数の反応容器202が受け口部分108の穴122に都合よく同時に挿入され得るように、2つ以上の概して並行な反応容器202が、対応するカートリッジ、例えば、図1に示されているカートリッジ200などに備えられ得る。複数の反応容器202における反応を、実質的に同じ条件下において、簡便に実施し同時にモニターすることができる。
【0020】
使用の際、カートリッジ200は、受け口部分108に脱着可能に取り付けられる(図8を参照のこと)。図1および図8に図示されているように、カートリッジ200は、数個、例えば3つの光透過性反応容器202を備え得(図1には2つだけが見えている)、反応流体を処理し、反応容器202へおよび反応容器から流体を移送するために、導管204が反応容器202に接続され得る。
【0021】
図示されているように、本態様において、カートリッジ200は、3つの反応容器202を有しており、それぞれが開放端124を通って受け口部分108の3つの穴122に受け入れられる。他の態様において、より多いまたはより少ない反応容器が、カートリッジに具備されていてもよく、かつ必ずしもすべての反応容器が受け口部分108に受け入れられる必要はない。さらに、カートリッジを取り付けたとき、各受け口部分108は、必ずしも1つの反応容器を受け入れる必要もない。
【0022】
いくつかの態様において、カートリッジ200は、インサイチューでの統合された試料処理を提供するように構成され得る。このために、カートリッジ200は、特定の用途において所望される処理作業を実施するために、様々な流体チャンバー、接続チャンネル、および内蔵型流体素子を備え得る。
【0023】
一態様において、カートリッジ200は、様々な処理チャンバー間でのカートリッジ導管204における流体の移送に空気圧を利用するように構成され得る。
【0024】
例えば、ある態様では、カートリッジの導管(図示されず)は、複数の空気圧ポートを備え得る。各ポートは、シールにより密封され、当該シールにより空気圧導管と連結されるように形成され得る。導管はさらに、複数のチャンバーを備えていてもよく、それぞれが液体を収容し、第一の頂部開口部および第一の底部開口部を有する。それぞれの頂部開口部は、空気圧ポートのそれぞれ1つと流体連通している。底部開口部は、チャンバーの底部開口部の上に備えられた結合導管を通ってお互いに流体連通している。したがって、空気圧導管によるチャンバーへの空気圧の選択的適用により、結合された導管を通って1つのチャンバーから別のチャンバーへと液体を移送することができる。カートリッジの導管は、国際出願第PCT/SG2008/000222号の開示に従い、本明細書の説明を考慮し変更を伴って構成され得る。
【0025】
カートリッジ200は、任意の他の所望の流体移送およびフロー制御機能を備え得る。
【0026】
好都合なことに、カートリッジ200は、組織試料の調製のための組織解離装置を備えるなど、組織試料を処理するために構成され得る。したがって、カートリッジが装置100に取り付けられている間、同じカートリッジにおいて、組織の調製、処理、およびPCRを実行することができる。カートリッジはさらに、凍結乾燥された薬剤などの様々な薬剤を事前充填されていてもよい。カートリッジは、特定の化学反応の実施するために、並びに処理工程を実施するために、所望される広い温度範囲、例えば約4℃〜約100℃またはそれより高い温度などに耐えるように設計され得る。
【0027】
反応容器202の周囲の反応容器202の壁およびカートリッジ200の本体は、光が、そこに収容されている反応溶液へ、および当該反応溶液から、壁を通って伝送し得るように、光透過性材料で作製され得る。光透過性材料は、透明または半透明であり得る。
【0028】
光透過性反応容器202は、部分的に透明であるかまたは半透明であり得る。例えば、光がそこを通って伝送するために、窓が備えられ得る。理解され得るように、反応容器202に窓が備わっている場合、当該窓は、カートリッジ200が受け口部分108に取り付けられたときに、それぞれが受け口部分108の窓126および128の位置に一致するように配置されるべきである。
【0029】
反応容器202の周りにカートリッジ200の光透過性の本体を備える代わりに、カートリッジ200は、所望の光透過を可能にするために、反応容器202の周りの空間に光を遮断する壁がないように構成されていてもよい。
【0030】
反応容器中に収容されている反応混合物の温度が、受け口部分108の温度変化に十分に敏感であるように、反応容器202の壁も十分に熱を伝導すべきである。
【0031】
好都合なことに、3つの受け口部分108は、試料溶液を収容する受け口部分、陽性対照溶液を収容する受け口部分、および陰性対照溶液を収容する受け口部分において、同時に反応を測定するのに足り得る。しかしながら、様々な態様において、受け口部分108の数は、特定の用途に応じて、並びにコストまたは融通性などを考慮して、増加または減少させてもよい。
【0032】
サーマルサイクラー106は、受け口部分108を交互に加熱または冷却するために使用され、そして、受け口部分108の穴122に受け入れられた反応容器およびそれらに収容された反応混合物または反応溶液が加熱または冷却される。いくつかの態様において、サーマルサイクラー106は、別個の加熱器(別個に図示されず)および別個の冷却器(別個に図示されず)を備え得る。当該加熱器は、任意の好適な加熱器であり得る。例えば、電気ヒーターが使用され得る。当該冷却器は任意の好適な冷却器であり得る。例えば、冷却器としてファンが使用され得る。いくつかの態様において、加熱器および冷却器は、サーマルサイクラー106と一体化されていてもよい。例えば、熱電クーラー/ヒーター、またはペルチェヒートポンプが、サーマルサイクラー106に使用され得る。
【0033】
様々な態様において、ヒートシンク104、サーマルサイクラー106、および受け口部分108の間の空間的関係は、必ずしも図に示されている通りである必要のないことは理解されるべきである。受け口部分108の温度がサーマルサイクラー106によって制御可能であるように、それらが、お互いに熱交換関係にあるかまたは良好な熱接触状態にあれば十分である。いくつかの態様において、ヒートシンク104、サーマルサイクラー106、および受け口部分108が、受け口部分108の温度を、選択された温度範囲において所望のサイクル速度で効果的かつ効率的にサイクルさせるように整列されることが有利であり得る。これに関して、図1(および図3)に図示された整列は、例えば、熱電クーラー/ヒーターが使用された場合、受け口部分108とサーマルサイクラー106との間の効果的かつ効率的な熱交換を提供し得る。
【0034】
各発光素子110は、光源と光導体(別個には図示されず)を備えていてもよく、受け口部分108の1つに向かって放出された励振光を伝送し導くように構成され配置され得る。
【0035】
光源は、別個に備えられていてもよいし、または発光素子110と一体化されていてもよい。1つ以上の光源が、特定の用途に応じて、発光素子110に使用されていてもよい。例えば、異なるスペクトルの光を放出するために、異なる光源が使用されていてもよい。各発光素子110は、光源として発光ダイオード(LED)を備え得る。様々な用途では、様々な光強度または様々なスペクトルまたはその両方が提供されるように、光源を調整または交換され得る。いくつかの態様において、各発光素子110は、例えば、発光素子から放出された光をフィルターにかけて、所望でない周波数の光を遮断するかまたは吸収することによって所望の光スペクトルを達成するために、対応する光源と受け口部分108との間に配置された光フィルター(図1〜3では別個には図示されていないが、図5には図示されている)を備え得る。例えば、検出器114によって検出されるべき放出光との干渉を抑えるために、ある特定の周波数の光がフィルターによって除去され得る。
【0036】
図5は、本発明の例示的な態様における光学コンポーネントの相互関係を図式的に示している。この態様では、発光素子としてLEDが使用されている。発光素子から放出された励起光は、励起フィルターを通って試料に伝送される。試料によって放出された光は、集束レンズ118および検出フィルター116を通ってPMTに伝送される。
【0037】
図6に示されているように、装置100の操作を制御するために制御器130(図1〜3には示されず)が備えられ得る。制御器130は、例えば基部102に取り付けられるなどして装置100に一体化されていてもよいし、または別個に備えられていてもよい。一態様において、制御器130は、受け口部分108を選択的に加熱または冷却するために、サーマルサイクラー106と通信している。制御器130はさらに、穴122の反応容器によって受光される光を調整するために、発光素子110またはそれらの対応する発光素子の操作を制御し得る。制御器130はさらに、検出された光に応じた信号を受信するために検出器114と通信し得、かつ受信された信号に応じて、サーマルサイクラー106を制御して受け口部分108を選択的に加熱または冷却し得る。
【0038】
制御器130はさらに、ユーザーからの入力をユーザーインタフェース装置132から受信するために、並びに当該装置に出力を転送するために、当該装置と通信し得る。例えば、ユーザーからの入力には、操作コマンドまたは操作パラメータが含まれ得る。出力には、化学反応の間に得られたデータまたは結果が含まれ得る。例えば、検出された光強度が、ユーザーインタフェース132上に表示され得る。ユーザーインタフェース132は、コンピュータなどの任意の好適なコンピューティングインタフェイシング装置を含み得る。ユーザーインタフェースのためのコンピュータは、携帯情報端末(PDA)などのような携帯用のコンピュータデバイスであってもよい。制御器130は、任意の好適な構造あるいはハードウェアおよびソフトウェア構成を有し得る。リアルタイムPCRなどの化学反応を制御するのに通常使用される制御器が使用され得る。制御器130はさらに、汎用または特別仕様のマイクロコントローラを備え得る。いくつかの制御機能は、制御器130または別のコンポーネントのいずれかに備えられ得る。例えば、ある特定の温度調節機能は、制御器130において提供され得るか、またはサーマルサイクラー106において提供され得るか、あるいは、例えば、制御器130およびサーマルサイクラー106の両方と通信するスタンドアロンの熱制御器などのさらなる別個の制御ユニットによって提供され得る。いくつかの制御機能は、回路などのハードウェアか、または特別仕様または汎用の制御プログラムなどのソフトウェアのいずれかによって提供され得る。
【0039】
いくつかの態様において、制御器130は、中央演算処理装置(CPU)またはCPUを有するコンピュータを備え得る。制御器130は、サーマルサイクラー106および検出器114などの様々なコンポーネント、および他の外部装置(図示されず)と通信するために有線または無線のいずれかにより接続され得る。
【0040】
当業者によって理解され得るように、制御器またはコンピュータのための他の周辺機器、例えば、入力/出力、通信、ネットワーキング、データ/信号変換/転送、信号増幅/フィルタリングなどのための周辺機器も備えられ得る。
【0041】
簡略化のため、装置100のいくつかのコンポーネントおよび機能は、図1〜6に図示されていない。ある特定の機能を実行するために、さらなるコンポーネントおよび機能を追加してもよいことは、当業者であれば認識し理解できる。例えば、内蔵型または外部電源供給が、使用の間、適切な操作のために必要な電力を供給するように備えられ接続されるべきである。様々なコンポーネントは、ねじ、ボルトおよびナット、接着剤、または他の止め具によって一緒に固定されていてもよい。電線を使用して、様々な電気部品を電気的に接続してもよい。温度を測定するために、センサーを備えていてもよい。装置の一部または全体を覆うために筐体を備えていてもよい。
【0042】
使用において、反応容器202を受け口部分108のそれぞれの穴122に挿入することにより、カートリッジ200が受け口部分108に取り付けられる。理解され得るように、いくつかの態様および用途において、必ずしも各穴122が反応容器202を受け入れる必要はない。別個の試験管などの1つ以上の別個の反応容器(示されず)が、1つ以上の穴122に挿入されていてもよい。さらに、穴122は、特定の用途において、反応容器を受け入れない場合もある。
【0043】
各反応容器202は、選択された反応混合物を収容し得る。例えば、3つの受け口部分108と共に、試料溶液を収容し得る3つの反応容器202を使用してもよく、それぞれが試料溶液、陽性対照溶液、および陰性対照溶液を収容し得る。反応混合物は、PCRなどの核酸増幅反応のための反応混合物を含み得る。核酸は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)であり得る。例えば、試料混合物は、鳥類インフルエンザウイルスRNA含み得る。
【0044】
反応容器202とそこに収容された溶液は、事前に選択されたプロトコルに従って、所望の化学反応、例えばPCRなどを実施するために、受け口部分108を選択的に加熱または冷却するようにサーマルサイクラー106の操作を制御することにより、加熱/冷却される。次に、受け口部分108は、反応容器202とそこに収容された反応混合物を、任意の時点におけるそれらの間の温度差に応じて加熱または冷却する。サーマルサイクラー106の制御は、制御器130によって提供され得る。サーマルサイクラー106の熱サイクルは、受け口部分108の温度を変え、それによって、それらの良好な熱伝導特性により、それらの間の温度差に応じて、効果的に熱を反応容器へ、または反応容器から伝導し得る。所望の温度サイクルプロファイルは、当業者であれば容易に特定することができる。
【0045】
より正確な温度調節のために、1つ以上の温度センサー、例えば熱電対など(図示されず)を、例えば受け口部分108の実際の温度を測定するために受け口部分108に内蔵するなどして備え得る。温度センサーはさらに、例えばカートリッジ200中など、他の場所にも設置され得る。当該温度センサーは、温度調節のためのフィードバックを提供するために、サーマルサイクラー106または制御器130と接続され得る。
【0046】
反応容器202が、制御温度にあるとき、選択されたスペクトルおよび強度を有する励起光が、対応する発光素子110から、対応する窓126を通って、各反応容器202へと順次送られ得る。例えば、励起光のための光源を提供するために、青色LEDを使用してもよい。LEDの周波数は、特定の用途および所望の励起光周波数に応じて選択され得る。異なる反応容器のための励起光のスペクトルは、用途に応じて異なっていてもよいし同一でもよい。LEDは、パルス光を放つために、順次作動し得る。例えば、光の各パルスは、約0.3秒のパルス長を有し得る。
【0047】
理解され得るように、発光素子110は、異なる発光素子100との間の干渉を減少させるように、またはバックグラウンド光からの干渉を減少させるように、それぞれの励起光が対応する窓126を向くように構成され得る。後者の目的のために、発光素子110は、対応する窓126の近くまで到り得る。さらに、所望の場合、光フィルターが、性能改良のために発光素子110に都合良く設置され得る。
【0048】
ある特定の化学反応が反応溶液中で生じるとき、当該反応生成物は蛍光性であってよく、発光素子110から受光された励起光によってそれらを励起するとある特定の周波数の光を放出し得る。溶液によって放出された光は、入射光のスペクトルとは異なるスペクトルの光であり得る。溶液によって放出された光は、窓128を通って伝送され、検出器114によって検出される。選択された周波数の光の強度を検出することによって、ある特定の標的物質が反応容器に存在しているかどうかを特定することができる。この点に関して、レンズ118は、検出感度を高めるために、窓128から放出された光を検出器114の方向に導き集めるために役立ち、並びにフィルター116はバックグラウンドまたはノイズの強度を減少させることができ、その結果、信号−ノイズ/バックグラウンド比が改善される。
【0049】
異なる反応容器202からの信号を区別するために、異なる反応容器202に対し、一度に1つずつ順次照射してもよい。各反応容器202の照射期間は、より速いサイクルタイムを可能にするために比較的短く、例えば約0.3秒であり得る。しかしながら、当該照射期間は、検出可能な信号を得るためには十分長くなければならない。制御器130は、個々の発光素子110の起動を制御し、検出された光信号とそれぞれの反応容器202(したがってその中の反応混合物)とを関連付けるために使用され得る。
【0050】
理解され得るように、いくつかの用途において、ある特定の反応が生じているかどうかを、蛍光試薬からの蛍光放出が減少しているかどうかを検出しモニターすることによって特定することもできる。そのような減少は、混合物の中の試薬の量が、ある特定の化学反応のため減少したことを示し得る。
【0051】
検出された信号は、制御器130によって分析されるか、または分析用の他のデータ解析装置(図示されず)へ出力され得る。検出された信号および結果は、ユーザーインタフェース132上にも表示され得る。検出器114からの検出された信号も、当業者に公知の他の信号処理技術によって増幅または事前処理され得る。
【0052】
理解され得るように、反応容器中の化学反応のリアルタイム制御およびリアルタイムモニタリングは、簡便に達成することができる。
【0053】
特定の用途のために、制御器130は、例えば、システム起動の制御、任意の特定のハードウェアが正常に機能しているかどうかの確認、PCR操作のための熱サイクルの制御、またはインサイチューにおけるマルチプレックス蛍光信号の光学的検出などのためのコマンドを実行し機能する特殊なソフトウェアコンポーネントを備え得る。
【0054】
例えば、当該装置は、PCRプロセスの熱サイクルの際、各アニール処理サイクルの終了時に光信号を検出するようにプログラムしてもよい。
【0055】
好都合なことに、異なる発光素子110(または、LED)からの励起光を受光する異なる反応容器202からの放出光を検出するために単一の検出器が使用され得る。
【0056】
検出器114からの検出された信号は、Labview(商標)プログラムなどの従来の信号処理用コンピュータプログラムを使用して増幅および処理され得る。コンピュータプログラムは、収集されたデータの平均を算出する機能を備え得る。例えば、検出された光信号を、時間によって変化する電圧信号に変換してもよい。反応容器に対する各検出期間中(例えば0.3秒間以内)、サンプリング速度に応じて、数千もの多くのデータポイントを収集することができる。コンピュータプログラムは、各検出期間(0.3秒)内での平均信号強度を計算する平均化機能を実施する時限トリガーを提供し得る。トリガーポイントは、対応するLEDの点灯開始と同期することができる。各特定の検出期間の平均を、当該特定の期間のデータ値として使用してもよい。したがって、信号強度を、各試料のサイクル数に対してプロットすることができる。次いで、平均化したデータが、PDA(携帯情報端末)などのユーザーインタフェースを通じて表示され、連続して更新され得る。
【0057】
RT−PCRなどのPCRを実施するために、反応容器またはチャンバーにRT−PCR混合物などのPCR混合物を事前充填してもよい。PCR混合物は、凍結乾燥形態におけるプライマーおよびプローブを含み得る。標的生成物からの蛍光放出を促進する励起光を照射するために、発光素子110が使用され得、かつインサイチューにおいて反応溶液によって放出されるマルチプレックス蛍光シグナルを検出するために検出器114が使用され得る。蛍光シグナルは、例えばコンピュータまたは制御器230を使用して、RNAまたはDNA試料の元の量と定量的に関連付けられ得る。データは、自動的に取得され、処理され、かつユーザーインタフェース232上に表示され得る。
【0058】
好都合なことに、受け口部分は、単純な構造を有しており、組み立てが比較的安価であり、特別に設計された反応カートリッジおよび標準的反応容器、例えば標準試験管などを含む様々な反応容器を受け入れるために使用することができる。いくつかの態様において、装置100は、当該装置を使用する際に可動もしくは回転する部品が無いように、特定の用途のために構成されていてもよい。これは、信頼性の向上と比較的単純な操作を提供し得る。
【0059】
本発明の別の態様は、化学反応を実施しモニターするためのシステムであって、図6に図示されているように、装置100と、例えばカートリッジ200などの装置100に連結されたカートリッジとを備えたシステムに関する。カートリッジは、それぞれ少なくとも2つの受け口部分108の穴122に同時に受け入れられる、反応容器202などの反応容器を有する。反応容器の少なくとも1つは、反応混合物を収容する。当該反応容器は、光が透過する透明な壁または窓を有する。当該システムはさらに、例えばディスプレイユニットなどの、装置100からの出力を受信し、受信した出力に基づく情報を表示するために、装置100と通信するユーザーインタフェースを備え得る。装置100の出力は、検出器114によって検出された光信号を反映し得る。当該システムは、その操作を制御し、その内部通信および外部装置との通信を管理するためのコンピュータまたはマイクロプロセッサ(図示されず)を備え得る。
【0060】
装置100は、改変することができる。例えば、受け口部分108は、必ずしも、サーマルサイクラー106の頂部に直接取り付けられてサーマルサイクラー106に直接接続されている必要は無い。いくつかの態様において、受け口部分108は、例えば熱伝導中間体を介するなど、サーマルサイクラー106との間での熱的連通を可能にするようにしてサーマルサイクラー106上に取り付けられていれば十分であり得る。
【0061】
受け口部分108の形状および相対的サイズは、特定の用途、およびカートリッジ200の構造に応じて変わり得る。
【0062】
窓126および128は、反対側ではなく、隣接側、すなわち同じ側に備えられていてもよい。各窓126または128は、完全に開放されていてもよいし、またはガラススクリーンなどの透明なパネルを備えていてもよい。
【0063】
基部102も、変更することができる。例えば、装置100の様々なコンポーネントは、基部として機能するフレームに取り付けられていてもよい。別の態様において、基部は、コンポーネント、例えば、レンズ、フィルター、または検出器などをサポートするために調節可能な支持体(図示されず)を備えていてもよい。
【0064】
隣接する受け口部分108の間の距離は、様々なカートリッジによる使用を可能にするように調節可能であり得る。穴108への挿入部(図示されず)は、様々な断面のサイズまたは形状を有する様々な反応容器の使用を可能にするように提供され得る。
【0065】
受け口部分108の本体120は、様々な壁厚を有し得る。受け口部分108の外形は変更することができる。上記において説明したように、いくつかの態様において、複数の穴122は、複数の反応容器を受け入れるために、熱伝導性材料の単位ブロック(図示されず)に備えられ得る。当該ブロックは、任意の一般的な形状を有する。例えば、それは、概して矩形を有し得る。
【0066】
いくつかの態様において、受け口部分108は、例えば、環境条件の所望されない変化または変動を減らすため、または汚染のリスクの低減を減らすために、密閉環境に封入されていてもよい。
【0067】
いくつかの態様において、カートリッジ200は、3つの部分である頂部、中間部、および底部から形成され得る。当該3つの部分は、別個の部分であってもよいし、中間部が頂部と底部の間に挟まれていてもよい。頂部は、ボルト穴を有する平板のような形状であってもよい。あるいは、頂部は、薄膜またはシート、例えば接着面を有するプラスチックのテープなどから形成されていてもよい。例えば、当該テープの接着面は、その表面に接着剤層を有していてもよい。底部は、一般的にプレート形状であってもよいが、ただし、ボルト穴、破りやすいシールで密封された空気圧ポート、および流体導管またはチャンネルを備え得る。シールは粘着テープにより形成され得る。空気圧ポートは、粘着テープを使用して密封され得る。あるいは、底部も、例えば中間部に面する接着面を有するプラスチックシートなどの平板により形成され得る。各ポートは、シールを介して空気圧導管に結合されるような形状、例えば針などであってもよい。中間部分は、多くのチャンバーを形成し得る。各チャンバーは、頂部開口部および底部開口部を有し得る。各頂部開口部は、空気圧導管またはチャンネルと接続され得、これらは、対応するチャンバーがそれぞれのポートと連通するように、最初は横に、次いで下方へと、底部のそれぞれの空気圧ポートまで伸びている。
【0068】
各底部開口部は、液体導管またはチャンネルと接続され得、これらは、最初は横に、次いで上方へと、中間部の上面に沿って伸びる頂部接続導管へ伸びている。底部開口部は、底部の導管またはチャンネルを介してウェルに接続され得る。ウェルは、接続導管まで、上方に伸びている導管またはチャンネルと接続され得る。したがって、チャンバーはそれぞれ、その頂部開口部を介してそれぞれのポートと流体連通しており、並びに、それらの底部開口部を介してもう一方のポートおよび接続導管と互いに流体連通している。
【0069】
3つの部分が、例えば、ボルトおよびナットあるいは粘着テープまたは熱拡散接着などによって一緒に取り付けられている場合、チャンバー間並びに空気圧ポートとチャンバーによる対応する対の間での流体連通を可能にするために、チャンネルは、しっかりシールされ、閉じた流体導管を形成する。チャンバーの1つは、遺伝子抽出チャンバーとして使用される場合があり、これは、必ずしも直接空圧式ポートに接続される必要はない。
【0070】
カートリッジ200におけるチャンバーは、一般的に、細長い円柱形と傾斜した底部を有し得、頂部と底部の間で垂直に伸び得る。様々な態様において、チャンバー418は、様々な断面形状を有していてもよく、かつ、より長くてもまたはより短くてもよい。
【0071】
カートリッジ200は、任意の好適な材料を使用して形成され得る。例えば、各部分は、ポリマー性材料、例えば、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などから形成され得る。当業者によって理解され得るように、カートリッジの本体は、従来の機械加工技術、例えば、マイクロインジェクション成形およびコンピュータ数値制御(CNC)機械加工を使用して、あるいはプラスチック射出成形使用して形成され得る。
【0072】
反応容器202および導管204の内部表面は、所望または必要な場合、清掃または滅菌され得る。場合によって、内部表面は、表面特性を変更するために他の材料でコーティングされていてもよい。
【0073】
カートリッジ200のサイズおよび寸法並びに反応容器202および導管204は、用途に応じて変わり得る。生物学的用途では、試料の量は、通常、少量であり、したがって、反応容器202および導管204は、マイクロメーターのオーダーの寸法を有し得る。寸法が大き過ぎる場合、少量の流体を輸送するために空気圧を使用することが困難な場合がある。他方において、空気圧下での流体の十分な移送速度を可能にするために、並びに検出のために十分な光信号が生成されるように、寸法は十分大きくなければならない。いくつかの態様において、流体導管204は、約0.2mm〜約1mmの範囲の寸法を有し得る。反応容器および流体チャンバーは、特定の所望の反応、過程、または処理を実施するために十分な容積を有するべきである。導管またはチャンバーは、1マイクロリットル〜100ミリリットルのオーダーの容積を有し得る。
【0074】
試料、溶菌緩衝液、調整剤、洗浄緩衝液、および溶離緩衝液をそれぞれ充填するために、カートリッジ200は、様々な導管またはチャンバーを備え得る。遺伝子抽出器を、導管の1つに配置してもよい。当該遺伝子抽出器は、磁気ベースの抽出器、シリカ膜、シリカビーズ、または高鉄濃度を有する流体中において遺伝子に付着することができる別の材料を含み得る。遺伝子は、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)、またはmRNA(メッセンジャーRNA)を含み得る。遺伝子抽出器は、抽出されるべき特定の遺伝子に基づいて選択され得る。いくつかの導管またはチャンバーは、それぞれ、反応生成物、抽出遺伝子、および反応によって生成された廃棄物を貯蔵するために使用され得る。DNAまたはRNA分解試薬も、1つ以上のチャンバーに事前充填されていてもよい。
【0075】
場合によって、遺伝子結合条件の調節が必要な場合がある。チャンバーに充填された緩衝液は、標的遺伝子結合条件に基づいて、遺伝子を結合するための緩衝液(例えば、純エタノールまたは70%エタノール)を含み得る。
【0076】
遺伝子抽出は、カートリッジの別のチャンバーから移送された事前処理済みの試料流体により、カートリッジ200において実施され得る。遺伝子精製は、カートリッジに貯蔵された洗浄緩衝液を使用して実施され得る。1種類の洗浄緩衝液または様々なタイプの洗浄緩衝液を使用して、複数の工程において遺伝子を洗浄してもよい。複数の洗浄緩衝液が使用される場合、洗浄緩衝液を貯蔵するために、2つ以上のチャンバーが割り当てられ得る。廃棄物は、カートリッジが再生される場合には後で放出してもよく、またはカートリッジと一緒に破棄してもよい。遺伝子溶離も、カートリッジにおいて実施され得る。溶離緩衝液は、遺伝子抽出器に付着した遺伝子を解放し、当該遺伝子を別の導管またはチャンバーへと運ぶために使用され得る。標的遺伝子は、カートリッジ200内においてさらなる反応を実施するために収集され得る。抽出された遺伝子または他の反応生成物は、増幅または検出のために、反応容器202へと移送され得る。
【0077】
上記において説明した変更は、説明目的のためであり、限定するためのものではない。他の改変も可能である。
【実施例】
【0078】
PCR混合物は、0.2mlのPCRチューブにおいて、15μlのTaqman(商標) Fast Universal PCR Master Mix(#4352042、Applied Biosystems社)、1.5μlの、グリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードするプライマーおよびプローブを含有するTaqman Assays−by−Design(Applied Biosystems社)、10.5μlの脱イオン(DI)水、並びに3μlの、Taqmanの逆転写(RT)試薬(#N808−0234、Applied Biosystems社)を使用してランダムヘキサマープライマー法による遺伝子変異GFAP−GFPマウスの脳組織の全RNAから変換されたcDNAを混合することにより調製した。アンプリコンの長さは82bpであった。
【0079】
次いで、25μlのPCR混合物を、ポリカーボネートPCRチャンバーへ移送し、続いて蒸発を防ぐために15μlのPCRオイルを添加した。
【0080】
PCRチャンバーは、図1〜3に図示されているように、装置のプロトタイプの受け口部分に取り付けた。3つのPCRチャンバーを3つの並列の受け口部分に同時に取り付け、それぞれ、試料、陽性対照、および陰性対照を収容した。
【0081】
PCRは、次のようなPCRチャンバーにおける温度プロファイルを得るためにサーマルサイクラーを制御することによって実施した:95℃で20秒間(ポリメラーゼの活性化)、40サイクルの増幅(95℃で3秒間の変性、60℃で30秒間のアニール処理および伸長)。
【0082】
DNA複製から生じる蛍光を、装置上の検出器を使用してリアルタイムに検出し、サイクル数の関数として記録した。検出された蛍光の強度を時間の関数として図7に示す。同じ試料の様々な試料容量(15、20、または25μl)から、図7に示された3つのデータセットを得た。得られた結果は、検出された信号が、試料容量の違いによってはあまり変化しなかったことを示している。いくつかのPCR生成物を分離し、エチジウムブロミド染色により2%のアガロースゲル中で視覚化した。82bpの別個のバンドの存在が確認され、これにより、リアルタイムの検出結果を検証した。
【0083】
試験結果は、装置100を使用して、PCRベースのDNA試験を自動化することができ、PCRを実施しモニターするために必要なすべての工程を実施するために適合させることができることを支持していた。装置100により、陽性対照と陰性対照を伴う試料の試験を同時に実施することが可能である。したがって、より正確な試験結果が得られ得る。
【0084】
本発明の態様は、試料調製ユニット、例えば、内部流体チャンバー間において流体を移送するために空気圧を使用するカートリッジなどと連結させて、簡便に一体化させるかまたは適合させることができる。例えば、当該カートリッジは、2008年6月23日に出願された「Fluid Processing and Transfer Using Inter−Connected Multi−Chamber Device」なる名称の国際出願第PCT/SG2008/000222号に従って構築され得る。なお、当該刊行物は、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0085】
本発明の例示的な態様は、さまざまな分野および用途において使用され得る。例えば、それらは、臨床およびポイントオブケア疾病診断システムにおける用途であり得る。それらはさらに、伝染病の感染拡大を防ぐために迅速な検出または検査が望まれる、空港、郵便局、または他の場所において救急隊によって使用され得る。
【0086】
上記において明確には言及されていない、本明細書に記載の態様の他の特徴、恩恵、利点は、本明細書および図面から、当業者によって理解され得る。
【0087】
当然ながら、上記に記載された態様は、単に説明のみを目的としており、いかなる意味においても限定するものではない。記載された態様は、形態、部品の配置、操作の詳細および順序の様々な改変が可能である。本発明は、むしろ、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の範囲内でのそのような改変のすべてを包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
該基部上に取り付けられたサーマルサイクラーと、
該サーマルサイクラー上に取り付けられ、該サーマルサイクラーと熱的に連通している複数の熱伝導性受け口部分であって、それぞれが、開放端、第一の窓、および第二の窓を有する穴を画成する不透明な本体を具備する受け口部分と、
該受け口部分上に脱着可能に取り付けられたカートリッジであって、複数の光透過性反応容器と、流体を処理し移送するために該反応容器に接続された導管とを具備し、該反応容器がそれぞれ該受け口部分の穴の開放端を通って該穴に受け入れられるカートリッジと、
該反応容器の第一の窓を通して該反応容器を照らすために該基部に取り付けられた発光素子と、
該受け口部分の第二の窓を通って該反応容器から放出された光を選択的に受光し検出するために該基部に取り付けられた光検出器と
を具備する、化学反応を実施しモニターするための装置。
【請求項2】
光検出器が、単一の光電子増倍管(PMT)を具備する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
反応容器から放出された光をPMT上に集めるために基部に取り付けられたレンズを具備する、請求項2記載の装置。
【請求項4】
発光素子から放出された光が第一の窓のそれぞれ1つへと誘導されるように各々配置された複数の発光素子を具備する、請求項1〜3のいずれか一項記載の装置。
【請求項5】
発光素子が、反応容器のそれぞれ1つを照らすように各々配置された複数の発光素子を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の装置。
【請求項6】
反応容器が各々、概して円筒形を有する、請求項1〜5のいずれか一項記載の装置。
【請求項7】
受け口部分の穴が、概して円筒形である、請求項1〜6のいずれか一項記載の装置。
【請求項8】
各受け口部分の第一および第二の窓が、第二の窓から受光した光が第一の窓を介して光検出器へ伝送されるのを減じるように構成されている、請求項1〜7のいずれか一項記載の装置。
【請求項9】
前記複数の受け口部分が3つの受け口部分から成る、請求項1〜8のいずれか一項記載の装置。
【請求項10】
発光素子が発光ダイオードを含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の装置。
【請求項11】
サーマルサイクラーが冷却器および加熱器を具備する、請求項1〜10のいずれか一項記載の装置。
【請求項12】
冷却器が熱電クーラーである、請求項11記載の装置。
【請求項13】
加熱器が電気ヒーターである、請求項11または請求項12記載の装置。
【請求項14】
冷却器および加熱器が一体化されている、請求項11〜13のいずれか一項記載の装置。
【請求項15】
基部上に取り付けられたヒートシンクを具備し、かつサーマルサイクラーが該ヒートシンク上に取り付けられている、請求項1〜14のいずれか一項記載の装置。
【請求項16】
サーマルサイクラーを制御するために該サーマルサイクラーと通信する制御器を具備する、請求項1〜15のいずれか一項記載の装置。
【請求項17】
制御器が、光検出器による光の検出に応じて信号を受信するために、該光検出器と通信する、請求項16記載の装置。
【請求項18】
制御器が、信号の受信に応じて反応容器を選択的に加熱または冷却するようにサーマルサイクラーを制御する、請求項17記載の装置。
【請求項19】
発光素子と受け口部分のそれぞれ1つとの間に各々配置された複数の光フィルターを具備する、請求項1〜18のいずれか一項記載の装置。
【請求項20】
受け口部分と光検出器との間に配置された光フィルターを具備する、請求項1〜19のいずれか一項記載の装置。
【請求項21】
受け口部分が銅または真鍮で作製されている、請求項1〜20のいずれか一項記載の装置。
【請求項22】
カートリッジの導管が、反応させるまたは検出する試料を調製し処理するためおよび該試料を1つ以上の反応容器に移送するために構成された導管を含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の装置。
【請求項23】
カートリッジの反応容器の少なくとも1つが反応混合物を収容する、請求項1〜22のいずれか一項記載の装置。
【請求項24】
前記反応混合物が核酸増幅反応混合物である、請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記反応混合物がポリメラーゼ連鎖反応混合物である、請求項23記載の装置。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項記載の装置と、該装置と通信するユーザーインタフェースとを具備するシステムであって、
該装置が出力を発生させ、該ユーザーインタフェースが、該出力を受信して該出力に基づいた情報を表示する、システム。
【請求項27】
前記出力が、検出器によって検出された光信号の出力反射を含む、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
カートリッジにおいて複数の反応混合物を調製する工程と、
該反応混合物の各々を反応容器の選択されたもののうちの1つに収容する工程と、
選択された反応容器、したがって該選択された反応容器中の反応混合物を、選択的に加熱または冷却するように、サーマルサイクラーを制御する工程と、
発光素子により、異なる反応容器中の反応混合物を順次照らす工程と、
反応混合物から放出された光を光検出器で検出する工程と
を含む、請求項1〜25のいずれか一項記載の装置を操作する方法。
【請求項29】
制御工程が、反応混合物から放出された光の検出に応じたサーマルサイクラーの制御を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
検出の結果に応じてユーザーに対して出力を表示する工程を含む、請求項28または請求項29記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2011−506926(P2011−506926A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536893(P2010−536893)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000425
【国際公開番号】WO2009/072987
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】