説明

化学反応促進方法及びマイクロ波化学反応装置

【課題】 種々の溶媒、特に無極性溶媒のスーパーヒーティングを実現して、化学反応をさらに促進させる。
【解決手段】 被処理物にマイクロ波を照射して化学反応を促進する化学反応促進方法であって、マイクロ波発振器10が2.45GHzを超過する周波数(特に5.8GHz)のマイクロ波を出力し、マイクロ波照射器30がそのマイクロ波を被処理物に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を加熱して化学反応を促す化学反応促進方法、及び、この方法を実施可能なマイクロ波化学反応装置に関し、特に、被処理物の加熱に、2.45GHzを超過する周波数(特に5.8GHz)のマイクロ波を用いることで化学反応を促進する化学反応促進方法及びマイクロ波化学反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学反応系は、加熱することにより、化学反応が促進される。特に、マイクロ波を照射することで、加熱によらないマイクロ波効果による化学反応促進が起きることも考えられ、反応速度がより増進することが知られている。
マイクロ波加熱は、容器を加熱することなく被処理物を直接加熱するため、迅速加熱が可能である。また、原料がマイクロ波を吸収するものであれば、無溶媒の有機合成を進行させることができ、環境に配慮した合成が可能となる。
【0003】
マイクロ波を被処理物に照射する装置(マイクロ波化学反応装置)の主要構成を、図6に示す。同図に示すように、マイクロ波化学反応装置100は、マイクロ波発振器110と、導波管120と、アプリケータ130とを備えている。
マイクロ波発振器110は、一般に、2.45GHzの周波数を有するマイクロ波を出力する。ここで2.45GHzを用いるのは、電子レンジなどで使用されているマイクロ波発振器の定格周波数が2.45GHzであるため、市場に大量に出回っており、安価で入手可能だからである。
なお、この2.45GHzマイクロ波を用いた迅速化学反応装置に関しては、種々の改良が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
また、被処理物の加熱にマイクロ波を使用する理由としては、スーパーヒーティングを実現できる点が挙げられる。
スーパーヒーティングとは、溶媒が常圧下で沸点以上に温度上昇する現象をいう。
このスーパーヒーティングを起こすことで、通常では進行しづらい反応も促進される。
【特許文献1】特開2005−322582号公報
【特許文献2】特開平5−241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6に示すマイクロ波化学反応装置を用いて種々の被処理物を加熱した場合、スーパーヒーティングを起こす溶媒と起こさない溶媒とがあった。
このスーパーヒーティングに関する実験結果を図7に示す。同図は、23種類の溶媒に対し、図6に示すマイクロ波化学反応装置を用いてマイクロ波加熱を行なったときの到達温度[d]及び到達までの時間[e]を示す図表である。
ここで、図7中、「スーパーヒーティングの温度(実測値)から沸点を引いた温度[d]」の欄において、「沸点以下」が記載された溶媒が、スーパーヒーティングの起こらなかった溶媒である。
実験の結果、スーパーヒーティングの起こらなかった溶媒には、例えばn−ペンタンやジクロロメタンなど多くの溶媒が該当した。しかも、これらのほとんどが無極性溶媒(疎水性すなわち水に溶けずらい溶媒)であった。さらに、極性溶媒(親水性すなわち水に溶けやすい溶媒)の中にもスーパーヒーティングの起こらないものがあった。
【0006】
このスーパーヒーティングの起こらない溶媒の存在は、スーパーヒーティングが認知されはじめた近年において、知られるところとなっていた。
そこで、本発明者は、スーパーヒーティングの起こらなかった溶媒についてもスーパーヒーティングを起こして化学反応を促進させる手法について検討した。
まず、マイクロ波加熱を決める要因である誘電率εと誘電正接tanδに着目した。
これらの積、すなわちε×tanδが、各溶媒がマイクロ波を吸収する割合と考えられるので、この値が高い方がマイクロ波の吸収が高いことになる。
【0007】
そこで、各溶媒ごとに、2.45GHzと5.8GHzにおける誘電率をそれぞれ測定した。
この測定結果を図8に示す。同図に示すように、いずれの溶媒においても、5.8GHzにおける誘電率が、2.45GHzにおけるそれを上回ることはなかった。つまり、スーパーヒーティングを生起させる原因が誘電率の変化ではないことが判かった。
【0008】
一方、周波数について見ると、周波数は、すなわちマイクロ波発振器から出力されるマイクロ波の周波数のことであるが、化学分野においてマイクロ波は、単に熱源であるとの認識が根強くあった。例えると、炎を電熱ヒータに変えても化学反応そのものは変わらないとの認識であった。このため、マイクロ波の周波数を変化させるといった発想はなされていなかった。
【0009】
こうした背景から、化学分野のほとんどの研究者は、誘電率や周波数の変化ではなく、アプリケータの構造を工夫することによって効率的かつ均一な加熱を試みたり(特許文献1)、あるいはマイクロ波をパルス波にし、そのデューティ比を変化させて化学反応の促進を試みたり(特許文献2)することを行ってきた。
しかし、これら手法によってはじめてスーパーヒーティングが生起したという報告は、これまで皆無であった。
【0010】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、2.45GHzマイクロ波加熱によりスーパーヒーティングが起きなかった溶媒、特に無極性溶媒についてもスーパーヒーティングを生起させて、進行しづらい反応の促進を可能とする化学反応促進方法及びマイクロ波化学反応装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の化学反応促進方法は、被処理物にマイクロ波を照射して化学反応を促進する化学反応促進方法であって、マイクロ波発振器が2.45GHzを超過する周波数のマイクロ波を出力し、マイクロ波照射器がマイクロ波を被処理物に照射する方法としてある。
【0012】
また、本発明のマイクロ波化学反応装置は、被処理物にマイクロ波を照射して化学反応を促進するマイクロ波化学反応装置であって、2.45GHzを超過する周波数のマイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、マイクロ波を被処理物に照射するマイクロ波照射器とを備えた構成としてある。
【発明の効果】
【0013】
これら本発明の化学反応促進方法及びマイクロ波化学反応装置によれば、2.45GHzを超過する周波数、特に5.8GHzのマイクロ波を被処理物に照射することで、無極性溶媒を含むほとんど溶媒のスーパーヒーティングを実現して、化学反応速度を増進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る化学反応促進方法及びマイクロ波化学反応装置の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
[マイクロ波化学反応装置]
まず、本発明のマイクロ波化学反応装置の実施形態について、図1、図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態のマイクロ波化学反応装置の構成を示すブロック図、図2は、アプリケータの構成を示す正面図である。
同図に示すように、マイクロ波化学反応装置1は、マイクロ波発振器10と、導波管20と、アプリケータ(マイクロ波照射器)30とを備えている。
マイクロ波発振器10は、2.45GHzを超過する周波数、特に5.8GHzの周波数を有するマイクロ波を出力する。
【0016】
導波管20は、径方向断面が矩形の管であって、例えば、アルミニウム合金などで形成することができる。
この導波管20は、マイクロ波発振器10から出力されたマイクロ波をアプリケータ30へ伝搬させる。
なお、本実施形態においては、マイクロ波発振器10が2.45GHzを超過する周波数、特に5.8GHzのマイクロ波を出力することから、導波管20の形状を小型化できる。このため、被処理物を入れる容器(アプリケータ30)の大きさを小さくしてもマイクロ波吸収率を高いまま維持することが容易である。
【0017】
アプリケータ30は、図2に示すように、反応容器31と、金属パイプ32と、攪拌棒33と、冷却管34と、温度計35と、圧力計36と、リリースバルブ37とを有している。
反応容器31は、試験管のような形状に形成された耐圧容器であって、円筒形状の胴部と、この胴部の外周の一方の縁部に連続して形成された半球状(U字型)の底部とを有している。胴部の他方は、開放となっており、ここから試料(サンプル)が流入する。
この反応容器31は、例えば耐圧ガラスで形成することができ、2MPa以上の圧力に耐えられるようになっている。このため、被処理物を沸点以上の温度に上昇させることも可能である。
【0018】
金属パイプ32は、円筒形状に形成された容器であって、軸方向が垂直方向となるように立設しており、内部に反応容器31が収められている。
この金属パイプ32の下端は、閉塞した底部をなしている。上端には、開閉可能な蓋部が接続されている。蓋部は、反応容器31に試料を流入する際には開いた状態にし、試料を加熱する際には、閉じた状態にする。
【0019】
また、金属パイプ32の外周下方には、導波管20が接続されており、伝搬してきたマイクロ波が導入される。この導入されたマイクロ波が、反応容器31に流入された試料に照射する。
さらに、金属パイプ32は、導波管20と同様、アルミニウム合金などで形成することができる。このため、マイクロ波の漏洩を防ぐとともに、試料へのマイクロ波の照射を可能とする。
【0020】
攪拌棒(回転子)33は、金属パイプ32の底部より下方に設置されたマグネチックスターラ(図示せず)より発生した回転磁界により誘導されて自ら回転し試料を攪拌する。これにより、試料の全体にわたって均等にマイクロ波を照射させることができる。
【0021】
冷却管34は、加熱還流条件下で化学反応を行うときに、効率よく溶媒蒸気を凝縮させるガラス製の冷却器である。この冷却管34には、例えば、ジムロート冷却器などを用いることができる。
温度計35は、試料の温度を表示する。
圧力計36は、金属パイプ32の内部圧力を測定して表示する。
リリースバルブ37は、金属パイプ32の内部圧力が一定値よりも高くなった場合に、内部のガスを外部に放出して内圧を下げるための安全弁である。
なお、図2に示す構成は、開放系又は閉鎖系のいずれにも使用できるようにしたものである。
【0022】
[化学反応促進方法]
次に、本実施形態のマイクロ波化学反応装置の動作(化学反応促進方法)について、図1を参照して説明する。
アプリケータ30の反応容器31には、試料が流入されている。
マイクロ波発振器10を起動すると、2.45GHzを超過する周波数、例えば5.8GHzの周波数を有するマイクロ波が生成され出力される。このマイクロ波が、導波管20の内部を伝搬して、金属パイプ32へ送られる。金属パイプ32の内部では、反応容器31に流入された試料にマイクロ波が照射される。
これにより、2.45GHzマイクロ波加熱ではスーパーヒーティングが起こらなかった溶媒についても、スーパーヒーティングを生起させることができ、化学反応をさらに促進させることができる。
【0023】
[2.45GHzマイクロ波加熱ではスーパーヒーティングが起こらなかった溶媒が本実施形態の化学反応促進方法及びマイクロ波化学反応装置を実施することでスーパーヒーティングを生起する要因]
[発明が解決しようとする課題]でも述べたように、発明者は、誘電率ε及び誘電正接tanδについて検討したが、スーパーヒーティングの生起要因ではなかった。
そこで、発明者は、次に、マイクロ波の浸透深さについて、検討した。
各溶媒におけるマイクロ波の浸透深さを、図3に示す。
同図においては、その値が低いほどマイクロ波が溶液深くまで潜ることなく熱に変換されていることを示す。すなわち、浸透深さが短いほどマイクロ波による加熱が進行し、一方、浸透深さが長いほど溶媒深くまで加熱することなく照射されることになる。
【0024】
ここで、5.8GHzにおける浸透深さと2.45GHzにおけるそれとを比較するとともに、無極性溶媒(●印を付した溶媒)と極性溶媒(その他の溶媒)とを比較すると、無極性溶媒の方が、それら浸透深さの差が大きいことがわかった。しかも、無極性溶媒においては、5.8GHzにおける浸透深さが2.45GHzにおけるそれよりも非常に浅いことがわかった。つまり、これらのことが、5.8GHzマイクロ波の照射により無極性溶媒を急速加熱できる要因であると考えられる。
また、5.8GHzについては、無極性溶媒か極性溶媒かに関係なく、ほとんどの溶媒で浸透深さが非常に浅いことがわかった。このことから、5.8GHzは、多くの溶媒のスーパーヒーティングを進行させるものと考えられる。
【0025】
[実験]
次に、本実施形態のマイクロ波化学反応装置を用いた実験について、図4、図5を参照して説明する。
図4は、実験Iの測定結果を示す図表、図5は、実験IIの測定結果を示す図表である。
【0026】
(実験I)
本実施形態のマイクロ波化学反応装置1(装置1)を用いて5.8GHzマイクロ波を試料に照射した場合と、図6に示すマイクロ波化学反応装置100(装置2)を用いて2.45GHzマイクロ波を試料に照射した場合のそれぞれにおいて、溶媒が到達した温度と、その温度に到達するまでの時間を測定した。また、これら温度及び到達時間にもとづいて、温度上昇率及び割合を算出した。
【0027】
(I−1)条件
溶媒は、図4[a]に示すように、n−ペンタンなど23種類を用意した。
溶媒の流入量は、30mlとした。
マイクロ波の出力は、30Wとした。周波数は、装置1では5.8GHz、装置2では2.45GHzとした。
溶媒を反応容器31に入れ、攪拌を行わない開放系で、5.8GHz又は2.45GHzのマイクロ波を照射した。照射時間は、最長30分間(キシレンは、66分間)とした。
【0028】
(I−2)測定結果
測定結果を図4に示す。
(I−21)スーパーヒーティング
同図中[d],[f]は、スーパーヒーティングの温度(実測値)から沸点を引いた差(沸点からの超過温度)を示し、それらのうち[d]は、装置2を用いた場合、[f]は、装置1を用いた場合を示す。なお、「沸点以下」は、スーパーヒーティングが起こらなかったことを示す。
また、同図中[e],[g]は、スーパーヒーティングの温度(実測値)に達するまでにかかった時間を示し、それらのうち[e]は、装置2を用いた場合、[g]は、装置1を用いた場合を示す。なお、「−」は、スーパーヒーティングが起こらなかったために測定できなかったことを示す。
【0029】
(I−22)温度上昇率
(I−21)の測定結果を用いて、各溶媒ごとに、温度上昇率の割合を算出した。具体的には、次式を用いて算出した。
温度上昇率の割合=(5.8GHzによる加熱速度)÷(2.45GHzによる加熱速度) ・・・(式1)
この式1を用いて算出した温度上昇率の割合を図4[h]に示す。
【0030】
(I−3)測定結果の分析
(I−31)スーパーヒーティングの生起
図4の[d]と[f]とを比較してわかるように、2.45GHzでは、多くの溶媒でスーパーヒーティングが観測されなかったものの、5.8GHzでは、ほとんどの溶媒で観測された。換言すれば、2.45GHzの場合にスーパーヒーティングが生起しなかった溶媒についても、5.8GHzの場合にはスーパーヒーティングを生起させることができた。
特に、極性溶媒については、実験対象とした溶媒のすべてにおいてスーパーヒーティングが観測された。
さらに、無極性溶媒については、2.45GHzの場合にスーパーヒーティングが生起しなかった溶媒についても、5.8GHzではスーパーヒーティングが生起した。
【0031】
(I−32)加熱速度
同図[e]及び[g]を参照してわかるように、極性溶媒については、中には2.45GHzよりも5.8GHzの方が速く加熱されるものもあるが、全体的には大きな差はなかった。
これに対し、無極性溶媒については、5.8GHzの方が迅速に加熱されることがわかった。
【0032】
また、無極性溶媒と極性溶媒とを比較した場合、2.45GHz(同図[e])では、無極性溶媒の方が加熱が進行しづらいことがわかった。これに対し、5.8GHz(同図[g])では、無極性溶媒と極性溶媒との間で加熱速度に大きな差が観測されなかった。このことからも、5.8GHzマイクロ波で加熱した場合に、無極性溶媒か極性溶媒かに関係なく、スーパーヒーティングを生起させることが可能であるものと言える。
【0033】
(I−33)温度上昇率の割合
温度上昇率については、同図[h]に示すように、ほとんどの溶媒で、2.45GHzよりも5.8GHzの方が高いことがわかった。これは、5.8GHzの方が、高い温度まで上昇できること、及び、加熱速度が速いことを意味する。
さらに、極性溶媒と無極性溶媒とを比較すると、無極性溶媒の方が値が高くなっている。このことから、無極性溶媒を5.8GHzマイクロ波で加熱した方が効果がより顕著となることがわかった。
【0034】
(実験II)
実験IIとして、装置1及び装置2を用いた有機合成の実験を行った。ここでは、ディールス−アルダー反応(Diels−Alder反応)を利用した、3,6-diphenyl-4-n-butylpyridazineの合成をモデルとして行なった。
【0035】
(II−1)条件
溶媒は、図5に示すように、ジクロロメタン、酢酸エチル、キシレンの三種類を用意した。
マイクロ波の出力は、30Wとした。周波数は、装置1では5.8GHz、装置2では2.45GHzとした。
溶媒を反応容器31に入れ、金属パイプ32に収容して、5.8GHz又は2.45GHzのマイクロ波を照射した。
また、オイルバスを用意し、加熱したオイルで反応容器を加熱した。
【0036】
(II−2)測定結果及び検討
5.8GHzマイクロ波加熱では、キシレンや酢酸エチルで合成が進行することが確認された。
熱源を2.45GHzマイクロ波に変えると、これらの合成は進行しなかった。その理由として、2.45GHzでは、これらの溶媒が加熱されないため、反応が進行しないことが予想できる。
【0037】
一般的な加熱手段である、オイルバスでは、キシレンでの合成が進行するが、酢酸エチルを使用した合成は進行しなかった。
5.8GHzマイクロ波加熱では、酢酸エチルの沸点を超えるスーパーヒーティングが進行し、合成が進んだものと考えられる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の化学反応促進方法及びマイクロ波化学反応装置によれば、2.45GHzを超過する周波数、特に5.8GHzマイクロ波を用いて加熱することにより、ほとんどの溶媒のスーパーヒーティングが可能となる。特に、2.45GHzマイクロ波を用いた場合にスーパーヒーティングが起こらなかった無極性溶媒についてもスーパーヒーティングを生起させることができる。
【0039】
以上、本発明の化学反応促進方法及びマイクロ波化学反応装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る化学反応促進方法及びマイクロ波化学反応装置は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、マイクロ波化学反応装置について、最も基本的な構成を示したが、この構成に限定されるものではなく、例えばマイクロ波発振器に下方にラボジャッキを備えるなど種々の構成を付加することもできる。
また、上述した実施形態では、マイクロ波照射器として金属パイプや反応容器等を用いたが、これらに限るものではなく、例えば、特許文献1に示すような空胴共振器や円管をマイクロ波照射器として用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、5.8GHzマイクロ波を照射して被処理物を加熱する発明であるため、マイクロ波を照射して被処理物を加熱する装置や機器に利用可能である。
例えば、本発明のマイクロ波化学反応装置の想定する用途として、医薬品などの高価な物質合成が挙げられる。クリーンルームや滅菌室などの実験室への設置を考えた場合、室内の単位面積あたりの維持コストが高額であることから、装置は小さい方が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のマイクロ波化学反応装置の構成を示すブロック図である。
【図2】アプリケータの構成を示す正面図である。
【図3】溶媒ごとのマイクロ波の浸透深さを示す棒グラフである。
【図4】5.8GHzマイクロ波により加熱した場合と、2.45GHzマイクロ波により加熱した場合の溶媒の上昇温度等の測定結果を示す図表である。
【図5】5.8GHzの利点を利用した有機合成の実験結果を示す図表である。
【図6】従来のマイクロ波化学反応装置の構成を示すブロック図である。
【図7】2.45GHzマイクロ波により溶媒を加熱した場合の上昇温度等の測定結果を示す図表である。
【図8】溶媒ごとの誘電率を示す棒グラフである。
【符号の説明】
【0042】
1 マイクロ波化学反応装置
10 マイクロ波発振器(5.8GHz)
20 導波管
30 アプリケータ(マイクロ波照射器)
31 反応容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物にマイクロ波を照射して化学反応を促進する化学反応促進方法であって、
マイクロ波発振器が2.45GHzを超過する周波数のマイクロ波を出力し、
マイクロ波照射器が前記マイクロ波を前記被処理物に照射する
ことを特徴とする化学反応促進方法。
【請求項2】
前記マイクロ波照射器が、前記マイクロ波を照射して、前記被処理物を沸点以上の温度に上昇させる
ことを特徴とする請求項1記載の化学反応促進方法。
【請求項3】
前記被処理物が、2.45GHzのマイクロ波を照射したときの到達温度よりも、2.45GHzを超過する周波数のマイクロ波を照射したときの到達温度の方が高い溶媒を含む
ことを特徴とする請求項1又は2記載の化学反応促進方法。
【請求項4】
前記被処理物が、無極性溶媒を含む
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化学反応促進方法。
【請求項5】
前記マイクロ波の周波数が、5.8GHzである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化学反応促進方法。
【請求項6】
被処理物にマイクロ波を照射して化学反応を促進するマイクロ波化学反応装置であって、
2.45GHzを超過する周波数のマイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、
前記マイクロ波を前記被処理物に照射するマイクロ波照射器とを備えた
ことを特徴とするマイクロ波化学反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−154138(P2009−154138A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338945(P2007−338945)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)刊行物名 第1回日本電磁波エネルギー応用学会シンポジウム講演要旨集 発行者 特定非営利活動法人日本電磁波エネルギー応用学会 財団法人日本産業技術振興協会 発行日 2007年9月25日
【出願人】(500187395)
【出願人】(500036831)アリオス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】