説明

化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の検定方法

【課題】化学物質が有する四塩化炭素様の毒性のより正確かつ簡便な検定方法等を提供すること。
【解決手段】化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の検定方法であって、(1)化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体における、特定の塩基配列を有する遺伝子の発現レベルを測定する第一工程、及び(2)第一工程で得られた前記検体における遺伝子の発現レベルの測定値を当該遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体における化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無或いはその発生程度を評価する第二工程を有することを特徴とする方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四塩化炭素反応性遺伝子の発現変動を指標とした化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の検定方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質曝露により発現する毒性を把握するために実験動物を用いた安全性試験が実施される。そのなかで、肝臓が標的となる場合が多いことが経験的に知られている(例えば、非特許文献1参照)。肝臓への毒性影響は、通常、肝臓の重量や病理組織学的検査、血液性化学的検査等によって評価されるのが古典的な手法である。それらに加えて、細胞増殖能、アポトーシス、細胞間結合、活性酸素等が詳細に検討された結果、肝臓毒性の発現作用様式は化学物質により異なることも明らかとなりつつある(例えば、非特許文献2参照)。
実験動物における化学物質曝露による肝毒性の作用様式を明らかにすることは、ヒトにおける危険度予測において重要である。例えば、フェノバルビタールは、げっ歯類において、薬物代謝酵素誘導を伴う細胞増殖亢進作用を介して肝臓発癌を誘発するが、一方、ヒトにおいては、薬物代謝酵素誘導を生じるものの細胞増殖亢進作用はなく、発癌性はないと考えられ、疫学的調査もその考えを支持している。一方、クロロフォルムの様に細胞障害性作用を有する場合、代償性に細胞増殖が亢進し結果として発癌する。当該作用様式は、げっ歯類もヒトにおいても起こりうると考えられている。このように、肝臓毒性の作用様式を見極めることは、実験動物で得た結果のヒトへの外挿性有無の判断において重要となる(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Toxicological Pathology 29, 639-652 (2001)
【非特許文献2】Toxicological Sciences 89, 51-56 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実験動物における化学物質曝露による肝毒性の作用様式を調べる場合、フェノバルビタールでも実験動物に対して高用量を投与すれば細胞障害性が現れ、病理組織学的検査のみでは判断が困難となり、その正確な区別のために、薬物代謝酵素誘導能、細胞増殖能、アポトーシスへの影響等の観察項目を追加した上で、投与期間を複数設定して経時的変化を観察したり、用量反応性を検討することで、その精度を高める必要がある。これらの多種でかつ詳細な実験の実施には多くの動物と費用とを要することから、より正確かつ簡便な検定方法の開発が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況の下、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の遺伝子(具体的には、登録番号群1又は2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子)の発現レベルに関して、四塩化炭素に予め接触させられた哺乳動物由来の検体における当該遺伝子の発現レベルの測定値と、四塩化炭素に予め接触していない哺乳動物由来の検体における当該遺伝子の発現レベルの測定値とを比較した結果、明らかな差異を生じたことを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
1.化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の検定方法であって、
(1)化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体における、以下の登録番号群1又は2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログから選ばれる1以上の遺伝子の発現レベルを測定する第一工程、及び
(2)第一工程で得られた前記検体における遺伝子の発現レベルの測定値を当該遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体における化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無或いはその発生程度を評価する第二工程
を有することを特徴とする方法(以下、本発明検定方法と記すこともある。)
<登録番号群1>
(a) NM_138910(配列番号1で示される塩基配列)
(b) NM_022402(配列番号2で示される塩基配列)
(c) NM_001011995(配列番号3で示される塩基配列)
(d) NM_031103(配列番号4で示される塩基配列)
(e) NM_134334(配列番号5で示される塩基配列)
(f) NM_017199(配列番号6で示される塩基配列)
(g) NM_031643(配列番号7で示される塩基配列)
(h) NM_031833(配列番号8で示される塩基配列)
(i) NM_130416(配列番号9で示される塩基配列)
(j) NM_022226(配列番号10で示される塩基配列)
(k) NM_012523(配列番号11で示される塩基配列)
(l) NM_053516(配列番号12で示される塩基配列)
(m) NM_133596(配列番号13で示される塩基配列)
(n) NM_019341(配列番号14で示される塩基配列)
(o) NM_022542(配列番号15で示される塩基配列)
(p) NM_017147(配列番号16で示される塩基配列)
(q) NM_031104(配列番号17で示される塩基配列)
(r) NM_012623(配列番号18で示される塩基配列)
(s) NM_144755(配列番号19で示される塩基配列)
(t) NM_147138(配列番号20で示される塩基配列)
(u) NM_153628(配列番号21で示される塩基配列)
(v) NM_171983(配列番号22で示される塩基配列)
(w) NM_032085(配列番号23で示される塩基配列)
(x) XM_001054915(配列番号24で示される塩基配列)
(y) NM_001037346(配列番号25で示される塩基配列)
(z) NM_019288(配列番号26で示される塩基配列)
(aa) BM986220(配列番号27で示される塩基配列)
(bb) AA800689(配列番号28で示される塩基配列)
(cc) AI105202(配列番号29で示される塩基配列)
(dd) NM_001013115(配列番号30で示される塩基配列)
(ee) NM_00110538(配列番号31で示される塩基配列)
(ff) NM_181086(配列番号32で示される塩基配列)
(gg) NM_001013880(配列番号33で示される塩基配列)
(hh) NM_001031655(配列番号34で示される塩基配列)
(ii) BI283728(配列番号35で示される塩基配列)
(jj) NM_001047858(配列番号36で示される塩基配列)
(kk) NM_001013105(配列番号37で示される塩基配列)
(ll) BG380323(配列番号38で示される塩基配列)
(mm) NM_001108566(配列番号39で示される塩基配列)
(nn) AI407797(配列番号40で示される塩基配列)
(oo) NM_001127555(配列番号41で示される塩基配列)
(pp) NR_002704(配列番号42で示される塩基配列)
(qq) BE098739(配列番号43で示される塩基配列)
(rr) AI599365(配列番号44で示される塩基配列)
(ss) NM_001013085(配列番号45で示される塩基配列)
(tt) NM_001015012(配列番号46で示される塩基配列)
(uu) AI408064(配列番号47で示される塩基配列)
(vv) NM_001109468(配列番号48で示される塩基配列)
(ww) BE110753(配列番号49で示される塩基配列)
(xx) NM_001039344(配列番号50で示される塩基配列)
(yy) XM_001074464(配列番号51で示される塩基配列)
(zz) NM_138907(配列番号52で示される塩基配列)
(aaa) H31287(配列番号53で示される塩基配列)
(bbb) NM_012946(配列番号54で示される塩基配列)
(ccc) NM_017333(配列番号55で示される塩基配列)
(ddd) NM_017208(配列番号56で示される塩基配列)
(eee) NM_012924(配列番号57で示される塩基配列)
(fff) NM_017343(配列番号58で示される塩基配列)
(ggg) NM_031315(配列番号59で示される塩基配列)
(hhh) NM_001033898(配列番号60で示される塩基配列)
(iii) NM_199386(配列番号61で示される塩基配列)
(jjj) NM_183332(配列番号62で示される塩基配列)
(kkk) NM_022183(配列番号63で示される塩基配列)
(lll) XM_001076548(配列番号64で示される塩基配列)
(mmm) NM_001014135(配列番号65で示される塩基配列)
(nnn) NM_013155(配列番号66で示される塩基配列)
(ooo) NM_172045(配列番号67で示される塩基配列)
(ppp) NM_001107789(配列番号68で示される塩基配列)
(qqq) NM_001024984(配列番号69で示される塩基配列)
(rrr) BI303073(配列番号70で示される塩基配列)
(sss) NM_001134417(配列番号71で示される塩基配列)
(ttt) AA899721(配列番号72で示される塩基配列)
(uuu) BM390248(配列番号73で示される塩基配列)
(vvv) NM_001025697(配列番号74で示される塩基配列)
(www) NM_022300(配列番号75で示される塩基配列)
(xxx) NM_001007616(配列番号76で示される塩基配列)
(yyy) NM_031986(配列番号77で示される塩基配列)
(zzz) NM_001105722(配列番号78で示される塩基配列)
<登録番号群2>
(aaaa) NM_012504(配列番号79で示される塩基配列)
(bbbb) NM_012941(配列番号80で示される塩基配列)
(cccc) NM_022547(配列番号81で示される塩基配列)
(dddd) NM_022251(配列番号82で示される塩基配列)
(eeee) NM_012803(配列番号83で示される塩基配列)
(ffff) NM_020538(配列番号84で示される塩基配列)
(gggg) NM_012895(配列番号85で示される塩基配列)
(hhhh) NM_031003(配列番号86で示される塩基配列)
(iiii) NM_031648(配列番号87で示される塩基配列)
(jjjj) NM_017154(配列番号88で示される塩基配列)
(kkkk) XM_001059375(配列番号89で示される塩基配列)
(llll) NM_001012345(配列番号90で示される塩基配列)
(mmmm) NM_001013233(配列番号91で示される塩基配列)
(nnnn) XM_001058756(配列番号92で示される塩基配列)
(oooo) NM_001106355(配列番号93で示される塩基配列)
(pppp) NM_199084(配列番号94で示される塩基配列)
(qqqq) NM_001108742(配列番号95で示される塩基配列)
(rrrr) NM_175582(配列番号96で示される塩基配列)
(ssss) NM_057137(配列番号97で示される塩基配列)
(tttt) NM_031154(配列番号98で示される塩基配列)
(uuuu) XM_001076104(配列番号99で示される塩基配列)
(vvvv) BI279570(配列番号100で示される塩基配列)
(wwww) NM_001109445(配列番号101で示される塩基配列)
(xxxx) NM_001033882(配列番号102で示される塩基配列)
(yyyy) NM_013048(配列番号103で示される塩基配列)
(zzzz) NM_022629(配列番号104で示される塩基配列)
(aaaaa) M_001014006(配列番号105で示される塩基配列)
(bbbbb) NM_001106555(配列番号106で示される塩基配列)
(ccccc) NM_001009385(配列番号107で示される塩基配列);
2.検体が、四塩化炭素様の毒性が反映される生体試料であることを特徴とする前項1記載の方法;
3.検体が、肝臓組織或いはその組織から分離された細胞又はその培養細胞であることを特徴とする請求項1記載の方法;
4.遺伝子の発現レベルの測定が、当該遺伝子の転写物量又は翻訳産物量の測定によりなされることを特徴とする請求項1、2又は3記載の方法;
5.遺伝子の発現レベルの対照値が、化学物質に予め接触していない哺乳動物由来の検体における当該遺伝子の発現レベルの値であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の方法;
6.第一工程が、登録番号群1に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログから選ばれる1以上の遺伝子の発現レベルを測定する工程であり、かつ、第二工程が、当該第一工程で得られた発現レベルの測定値が対照値と有意に異なることを指標とし、当該指標に基づいて検体における化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無或いはその発生程度を評価する工程であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の方法;
7.第一工程が、登録番号群2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログから選ばれる1以上の遺伝子の発現レベルを測定する工程であり、かつ、第二工程が、当該第一工程で得られた発現レベルの測定値が対照値有意に異なることを指標とし、当該指標に基づいて検体における化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無或いはその発生程度を評価する工程であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の方法;
8.請求項1〜7のいずれかに記載される方法により評価された、化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無又はその量に基づき四塩化炭素様の毒性を有する化学物質を除去する工程を有することを特徴とする化学物質の探索方法
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、特定の遺伝子の発現レベルを指標とした、化学物質が有する四塩化炭素様の毒性のより正確かつ簡便な検定方法等が提供可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における「四塩化炭素様の毒性」としては、具体的には例えば、慢性的な暴露により肝臓や腎臓等の組織に対して悪影響を与え、時としてがんになるような「発がん性」や「細胞壊死」等の毒性を挙げることができる。
本発明において検体とは、例えば、被験哺乳動物から採取された肝臓の組織或いはその組織から分離された細胞又はその培養細胞等を挙げることができる。これらの試料はそのまま検体として用いてもよく、また、かかる試料から分離、分画、固定化等の種々の操作により調製された試料を検体として用いてもよい。検体を提供する哺乳動物としては、例えば、ラット、マウス等のげっ歯類動物等を挙げることができる。
【0009】
本発明において発現レベルが測定される遺伝子は、以下の登録番号群1又は2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオ−ソログ(以下、一括して本遺伝子と記すこともある。)から選ばれる1以上の遺伝子である。
【0010】
<登録番号群1>
(a) NM_138910(配列番号1で示される塩基配列)
(b) NM_022402(配列番号2で示される塩基配列)
(c) NM_001011995(配列番号3で示される塩基配列)
(d) NM_031103(配列番号4で示される塩基配列)
(e) NM_134334(配列番号5で示される塩基配列)
(f) NM_017199(配列番号6で示される塩基配列)
(g) NM_031643(配列番号7で示される塩基配列)
(h) NM_031833(配列番号8で示される塩基配列)
(i) NM_130416(配列番号9で示される塩基配列)
(j) NM_022226(配列番号10で示される塩基配列)
(k) NM_012523(配列番号11で示される塩基配列)
(l) NM_053516(配列番号12で示される塩基配列)
(m) NM_133596(配列番号13で示される塩基配列)
(n) NM_019341(配列番号14で示される塩基配列)
(o) NM_022542(配列番号15で示される塩基配列)
(p) NM_017147(配列番号16で示される塩基配列)
(q) NM_031104(配列番号17で示される塩基配列)
(r) NM_012623(配列番号18で示される塩基配列)
(s) NM_144755(配列番号19で示される塩基配列)
(t) NM_147138(配列番号20で示される塩基配列)
(u) NM_153628(配列番号21で示される塩基配列)
(v) NM_171983(配列番号22で示される塩基配列)
(w) NM_032085(配列番号23で示される塩基配列)
(x) XM_001054915(配列番号24で示される塩基配列)
(y) NM_001037346(配列番号25で示される塩基配列)
(z) NM_019288(配列番号26で示される塩基配列)
(aa) BM986220(配列番号27で示される塩基配列)
(bb) AA800689(配列番号28で示される塩基配列)
(cc) AI105202(配列番号29で示される塩基配列)
(dd) NM_001013115(配列番号30で示される塩基配列)
(ee) NM_00110538(配列番号31で示される塩基配列)
(ff) NM_181086(配列番号32で示される塩基配列)
(gg) NM_001013880(配列番号33で示される塩基配列)
(hh) NM_001031655(配列番号34で示される塩基配列)
(ii) BI283728(配列番号35で示される塩基配列)
(jj) NM_001047858(配列番号36で示される塩基配列)
(kk) NM_001013105(配列番号37で示される塩基配列)
(ll) BG380323(配列番号38で示される塩基配列)
(mm) NM_001108566(配列番号39で示される塩基配列)
(nn) AI407797(配列番号40で示される塩基配列)
(oo) NM_001127555(配列番号41で示される塩基配列)
(pp) NR_002704(配列番号42で示される塩基配列)
(qq) BE098739(配列番号43で示される塩基配列)
(rr) AI599365(配列番号44で示される塩基配列)
(ss) NM_001013085(配列番号45で示される塩基配列)
(tt) NM_001015012(配列番号46で示される塩基配列)
(uu) AI408064(配列番号47で示される塩基配列)
(vv) NM_001109468(配列番号48で示される塩基配列)
(ww) BE110753(配列番号49で示される塩基配列)
(xx) NM_001039344(配列番号50で示される塩基配列)
(yy) XM_001074464(配列番号51で示される塩基配列)
(zz) NM_138907(配列番号52で示される塩基配列)
(aaa) H31287(配列番号53で示される塩基配列)
(bbb) NM_012946(配列番号54で示される塩基配列)
(ccc) NM_017333(配列番号55で示される塩基配列)
(ddd) NM_017208(配列番号56で示される塩基配列)
(eee) NM_012924(配列番号57で示される塩基配列)
(fff) NM_017343(配列番号58で示される塩基配列)
(ggg) NM_031315(配列番号59で示される塩基配列)
(hhh) NM_001033898(配列番号60で示される塩基配列)
(iii) NM_199386(配列番号61で示される塩基配列)
(jjj) NM_183332(配列番号62で示される塩基配列)
(kkk) NM_022183(配列番号63で示される塩基配列)
(lll) XM_001076548(配列番号64で示される塩基配列)
(mmm) NM_001014135(配列番号65で示される塩基配列)
(nnn) NM_013155(配列番号66で示される塩基配列)
(ooo) NM_172045(配列番号67で示される塩基配列)
(ppp) NM_001107789(配列番号68で示される塩基配列)
(qqq) NM_001024984(配列番号69で示される塩基配列)
(rrr) BI303073(配列番号70で示される塩基配列)
(sss) NM_001134417(配列番号71で示される塩基配列)
(ttt) AA899721(配列番号72で示される塩基配列)
(uuu) BM390248(配列番号73で示される塩基配列)
(vvv) NM_001025697(配列番号74で示される塩基配列)
(www) NM_022300(配列番号75で示される塩基配列)
(xxx) NM_001007616(配列番号76で示される塩基配列)
(yyy) NM_031986(配列番号77で示される塩基配列)
(zzz) NM_001105722(配列番号78で示される塩基配列)
【0011】
<登録番号群2>
(aaaa) NM_012504(配列番号79で示される塩基配列)
(bbbb) NM_012941(配列番号80で示される塩基配列)
(cccc) NM_022547(配列番号81で示される塩基配列)
(dddd) NM_022251(配列番号82で示される塩基配列)
(eeee) NM_012803(配列番号83で示される塩基配列)
(ffff) NM_020538(配列番号84で示される塩基配列)
(gggg) NM_012895(配列番号85で示される塩基配列)
(hhhh) NM_031003(配列番号86で示される塩基配列)
(iiii) NM_031648(配列番号87で示される塩基配列)
(jjjj) NM_017154(配列番号88で示される塩基配列)
(kkkk) XM_001059375(配列番号89で示される塩基配列)
(llll) NM_001012345(配列番号90で示される塩基配列)
(mmmm) NM_001013233(配列番号91で示される塩基配列)
(nnnn) XM_001058756(配列番号92で示される塩基配列)
(oooo) NM_001106355(配列番号93で示される塩基配列)
(pppp) NM_199084(配列番号94で示される塩基配列)
(qqqq) NM_001108742(配列番号95で示される塩基配列)
(rrrr) NM_175582(配列番号96で示される塩基配列)
(ssss) NM_057137(配列番号97で示される塩基配列)
(tttt) NM_031154(配列番号98で示される塩基配列)
(uuuu) XM_001076104(配列番号99で示される塩基配列)
(vvvv) BI279570(配列番号100で示される塩基配列)
(wwww) NM_001109445(配列番号101で示される塩基配列)
(xxxx) NM_001033882(配列番号102で示される塩基配列)
(yyyy) NM_013048(配列番号103で示される塩基配列)
(zzzz) NM_022629(配列番号104で示される塩基配列)
(aaaaa) M_001014006(配列番号105で示される塩基配列)
(bbbbb) NM_001106555(配列番号106で示される塩基配列)
(ccccc) NM_001009385(配列番号107で示される塩基配列)
【0012】
Genbankに登録されている塩基配列に関する情報は、例えば、National Center for Biotechnology Information のWEBペ−ジ(URL;http://www.ncbi.nlm.nih.gov)から、Genbankによって各遺伝子に付与されている上記の登録番号 (Accession No.)をもとに検索を行うことによって入手することができる。因みに、GenBnak、DDBL及びEMBLの各デ−タバンクが公開しているデ−タ全てを誰でも制限なしで利用でき、INSDに登録されたデ−タは科学資料として永久に保存され公開されることは、上記3デ−タバンクで構成される国際塩基配列デ−タベ−ス(international Nucleotide Sequence Databases, INSD)の諮問機関である国際諮問委員会により作成された「DDBL/EMBL/GenBnakの登録デ−タの取り扱い」(2002年5月23−24日)で明文化されており、如何なる当業者であっても登録番号 (Accession No.)に基づきデ−タの照合、検索、入手等は可能である。
本発明において利用される本遺伝子には、上記の公知の塩基配列と全く同一の塩基配列を有する遺伝子のほか、前記の遺伝子の塩基配列に、生物の種差、個体差若しくは器官、組織間の差異等により天然に生じる変異による塩基の欠失、置換若しくは付加が生じた塩基配列を有する遺伝子も含まれる。
【0013】
本遺伝子の発現レベルの測定は、例えば、単位量の検体当たりの本遺伝子の転写物量を測定する方法、単位量の検体当たりの本遺伝子の翻訳産物量を測定する方法等により行うことができる。
本遺伝子の転写物量を測定するには、例えば、当該遺伝子の転写物であるmRNA量を測定する。特定の遺伝子のmRNA量の測定は、具体的には、例えば、定量的リアルタイム−ポリメラ−ゼチェイン反応(以下、定量的RT−PCRと記す。)、ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法[J.Sambrook, E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラ−・クロ−ニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コ−ルドスプリング・ハ−バ−・ラボラトリ−(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年]、DNAアレイ法、インサイチュ−ハイブリダイゼ−ション法等により実施することができる。
また、本遺伝子の翻訳産物量を測定するには、例えば、本遺伝子の塩基配列にコ−ドされるアミノ酸配列を有する蛋白質の量を測定する。特定の蛋白質の量の測定は、具体的には、例えば、当該蛋白質に対する特異抗体を用いた免疫学的測定法(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、免疫組織化学的検査等)、二次元電気泳動法、高速液体クロマトグラフィ−等により実施することができる。本遺伝子の塩基配列にコ−ドされるアミノ酸配列を有する蛋白質に対する特異抗体は、常法に準じて、本遺伝子の塩基配列にコ−ドされるアミノ酸配列を有する蛋白質を免疫抗原として調製することができる。
【0014】
本遺伝子の転写物量の測定方法についてさらに説明する。
本遺伝子の転写物であるmRNA量は、例えば、本遺伝子の塩基配列に基づいて設計、調製されたプロ−ブ又はプライマ−を使用して、通常の遺伝子工学的方法、例えば、ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法、定量的RT−PCR、DNAアレイ法、インサイチュ−ハイブリダイゼ−ション法等を用いることによって測定することができる。具体的には、例えば、J.Sambrook, E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラ−・クロ−ニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コ−ルドスプリング・ハ−バ−・ラボラトリ−(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年等に記載された方法に準じて行うことができる。この際、組織における発現レベルが恒常的に一定であることが知られている遺伝子(以下、対照遺伝子と記す。)、例えば、β−actin遺伝子(Nucl.Acids.Res., vol.12,No.3, p.1687,1984)や36B4(Acidic Ribosomal Phosphoprotein)(Nucl.Acids.Res., vol.19,No.14, p.3998,1991)遺伝子等のmRNA量を同時に測定しても良い。そして、対照遺伝子のmRNA量若しくはその指標値当たりの本遺伝子のmRNA量又はその指標値を算出することにより、本遺伝子の発現レベルを求めてもよい。
【0015】
(1.ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)
まず、mRNA量を測定しようとする遺伝子のDNAを調製し、次いで、その全部又は一部からなるDNAを標識してプロ−ブを調製する。
上記遺伝子は、市販のcDNA(例えば宝酒造から入手)又は以下に示した方法により調製したcDNAを鋳型にしてPCR等によって調製することができる。例えば、まず当該遺伝子を発現する組織から、塩酸グアニジン/フェノ−ル法、SDS−フェノ−ル法、グアニジンチオシアネ−ト/CsCl法等の通常の方法によって全RNAを抽出する。例えばISOGEN(ニッポンジ−ン製)等の市販のキットを利用して全RNAを抽出してもよい。
抽出された全RNAから、例えば、以下のようにしてmRNAを調製する。まず、オリゴdTをリガンドとして有するポリAカラムを5倍カラム容量以上のLoading buffer[20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、0.5M NaCl、1mM EDTA、0.1%(w/v)SDS]を用いて、平衡化し、続いて前述の方法で調製された全RNAをカラムにかけ、10倍カラム容量のloading bufferで洗浄する。さらに5倍カラム容量のWashing buffer[20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、0.1M NaCl、1mM EDTA、0.1%(w/v)SDS]で洗浄する。続いて、3倍カラム容量のelution buffer[10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、1mM EDTA、0.05%(w/v)SDS)でmRNAを溶出させることによってmRNAを得る。
次いで、オリゴdTプライマ−を前記全RNA又はmRNAのポリA鎖にアニ−ルさせ、例えばcDNA合成キット(宝酒造)のプロトコ−ルに従って、一本鎖cDNAを合成する。この時、鋳型とするRNAは、全RNA又はmRNAのどちらでも良いが、mRNAを用いる方がより好ましい。
前記一本鎖cDNAを鋳型にして、TaKaRa taq(宝酒造)等のDNA polymeraseを用いてPCRすることにより、DNAを増幅する。PCRの条件は、測定対象とする動物の種類、使用するプライマ−の配列等により異なるが、例えば、反応緩衝液[10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM KCl,1.5mM MgCl2]中、2.5mM NTP存在下で、94℃,30秒間次いで40℃〜60℃,2分間さらに72℃,2分間の保温を1サイクルとしてこれを30〜55サイクル行う条件等を挙げることができる。
【0016】
このようにして増幅された本遺伝子のDNAはpUC118等のベクタ−に挿入してクロ−ニングしておいてもよい。当該DNAの塩基配列は、Maxam Gilbert法 (例えば、Maxam,A.M&W.Gilbert, Proc.Natl.Acad.Sci.,74,560,1977 等に記載される)やSanger法(例えばSanger,F.&A.R.Coulson,J.Mol.Biol.,94,441,1975 、Sanger,F,& Nicklen and A.R.Coulson., Proc.Natl.Acad.Sci.,74,5463,1977等に記載される)等により確認することができる。
【0017】
このようにして調製された本遺伝子のDNAの全部又はその一部を、次のようにして放射性同位元素や蛍光色素等で標識することによりプロ−ブを調製することができる。例えば、上記のようにして調製されたDNAを鋳型とし、当該DNAの塩基配列の部分配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマ−に用いて、[α−32P]dCTP又は[α−32P]dATPを含むdNTPを反応液に添加してPCRを行うことにより32Pで標識されたプロ−ブが得られる。また、上記のようにして調製されたDNAを、例えば、Random prime labeling Kit(ベ−リンガ−マンハイム社)、MEGALABEL(宝酒造)等の市販の標識キットを用いて標識してもよい。
【0018】
次に、上記プロ−ブを使用して、ノ−ザンハイブリダイゼ−ション分析を行う。具体的には、本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から全RNA又はmRNAを調製する。調製された全RNA 20μg又はmRNA 2μgをアガロ−スゲルで分離し、10×SSC(1.5M NaCl、0.35Mクエン酸ナトリウム)で洗浄した後、ナイロンメンブラン[例えば、Hybond−N(アマシャム製)等]に移す。ポリエチレン袋にメンブランを入れ、ハイブリダイゼ−ションバッファ−〔6×SSC(0.9M NaCl、0.21Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液[0.1%(w/v)フィコ−ル400、0.1%(w/v)ポリビニルピロリドン、0.1%BSA]、0.1%(w/v)SDS,100μg/ml変性サケ精子DNA、50%ホルムアミド〕25mlを加えて、50℃、2時間インキュベ−トした後、ハイブリダイゼ−ションバッファ−を捨て、新たに2ml〜6mlのハイブリダイゼ−ションバッファ−を加える。更に上記方法で得られたプロ−ブを加え、50℃、一晩インキュベ−トする。ハイブリダイゼ−ションバッファ−としては、上記のほかに、市販のDIG EASY Hyb(ベ−リンガ−マンハイム社)等を用いることができる。メンブランを取り出して、50〜100mlの2×SSC、0.1% SDS中で室温、15分間インキュベ−トし、さらに同じ操作を1回繰り返し行い、最後に50〜100mlの0.1×SSC、0.1% SDS中で68℃、30分間インキュベ−トする。メンブラン上の標識量を測定することにより、本遺伝子の転写産物であるmRNAの量を測定することができる。
【0019】
(2.定量的RT−PCR)
本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から上記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載された方法と同様の方法でmRNAを調製する。調製されたmRNAに例えばMMLV(東洋紡)等の逆転写酵素を添加し、反応緩衝液[50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、3mM MgCl2、75mM KCl、10mM DTT]中、0.5mM dNTP及び25μg/mlオリゴdT存在下で42℃、15分間〜1時間反応させ、対応するcDNAを調製する。cDNA合成キット(宝酒造)を用いて対応するcDNAを調製しても良い。調製されたcDNAを鋳型にして、本遺伝子の塩基配列の一部分を有するDNAをプライマ−としてPCRを行う。プライマ−としては、例えば、Genbankに登録番号M33648で登録されている塩基配列を有する本遺伝子の部分塩基配列を有するプライマ−を挙げることができる。PCRの条件としては、例えば、例えば、TAKARA taq(宝酒造)を使用し、反応緩衝液[10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM KCl,1.5mM MgCl2]中、2.5mM dNTP及び[α32P]−dCTP存在下で、例えば、94℃,30秒間次いで40℃〜60℃,2分間さらに72℃,2分間の保温を1サイクルとしてこれを30〜55サイクル行う条件を挙げることができる。増幅されたDNAをポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、分離されたDNAの放射活性量を測定することにより、本遺伝子のmRNAの量を測定することができる。或いはまた、例えば、TAKARA taq(宝酒造)を使用し、反応緩衝液[10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM KCl,1.5mM MgCl2]中、SYBR Green PCR ReagentsPCR(ABI社) 25μlを含む50μlの反応液を調製し、ABI7700(ABI社)を用いて、50℃,2分間次いで95℃,10分間の保温の後、95℃,15秒間次いで60℃,1分間の保温を1サイクルとしてこれを40サイクル実施する条件でPCRを行う。増幅されたDNAの蛍光を測定することにより、本遺伝子のmRNAの量を測定することができる。
【0020】
(3.DNAアレイ解析)
本発明の転写物量の測定には、ナイロンメンブラン等のメンブランフィルタ−等に本遺伝子のcDNAをスポットして作製されるマクロアレイ、スライドガラス等に本遺伝子のcDNAをスポットして作製されるマイクロアレイ、スライドガラス上に本遺伝子の塩基配列の部分配列を有するオリゴヌクレオチド(通常18〜25merの鎖長)を光化学反応を利用して固定して作製されるプロ−ブアレイ等、公知の技術に基づいたDNAアレイを利用することができる。これらのアレイの作製は、例えばゲノム機能研究プロトコ−ル 実験医学別冊(羊土社刊)等に記載された方法に準じて行うことができる。またAffymetrix社等から市販されているGenechip等を利用することもできる。
【0021】
以下、DNAアレイを用いて本遺伝子の転写物量を測定する方法の一例を示す。
(3−1.マクロアレイによる定量)
本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から上記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載された方法と同様の方法でmRNAを調製する。調製されたmRNAに、例えばMMLV(東洋紡社)等の逆転写酵素を添加し、反応緩衝液[例えば50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、3mM MgCl2、75mM KCl、及び10mM DTTを含む液]中、0.5mMdNTP、[α32P]−dCTP、及び25μg/mlオリゴdT存在下で42℃、15分間〜1時間反応させて、標識DNAを調製し、これをプロ−ブとする。このとき、cDNA合成キット(宝酒造)等を用いても良い。メンブランフィルタ−に本遺伝子のcDNAをスポットして作製されたマクロアレイをポリエチレン袋に入れ、ハイブリダイゼ−ションバッファ−〔6×SSC(0.9M NaCl、0.21Mクエン酸ナトリウム)、5×デンハルト溶液[0.1%(w/v)フィコ−ル400、0.1%(w/v)ポリビニルピロリドン、0.1% BSA]、0.1%(w/v) SDS,100μg/ml変性サケ精子DNA、50%ホルムアミド〕25mlを加えて、50℃、2時間インキュベ−トした後、ハイブリダイゼ−ションバッファ−を除去し、新たに2ml〜6mlのハイブリダイゼ−ションバッファ−を添加する。更に上記プロ−ブを加え、50℃、一晩インキュベ−トする。ハイブリダイゼ−ションバッファ−としては、上記のほかに、市販のDIG EASY Hyb(ベ−リンガ−マンハイム社)等を用いることもできる。マクロアレイを取り出して、50ml〜100mlの2×SSC、0.1% SDSに浸し室温にて15分間程度インキュベ−トした後、さらに同じ操作を1回繰り返し行い、最後に50ml〜100mlの0.1×SSC、0.1% SDS中で68℃、30分間インキュベ−トする。マクロアレイ上の標識量を測定することにより、本遺伝子の転写物であるmRNAの量、即ち、本遺伝子の発現量を測定することができる。
【0022】
(3−2.マイクロアレイによる定量)
本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から上記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載された方法と同様の方法でmRNAを調製する。調製されたmRNAに、例えばMMLV(東洋紡社)等の逆転写酵素を添加し、反応緩衝液[例えば、50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、3mM MgCl2、75mM KCl、及び10mM DTTを含む液]中、0.5mM dNTP、Cy3−dUTP、(又はCy5−dUTP)及び25μg/mlオリゴdT存在下で42℃、15分間〜1時間反応させる。アルカリバッファ−(例えば、1N NaOH、20mM EDTAを含む液)を加え、65℃10分間保温した後、MicroconYM−30等を用いて遊離のCy3又はCy5を除くことにより蛍光標識DNAを調製し、これをプロ−ブとする。得られたプロ−ブを用いてマイクロアレイに対して(3−1 DNAマクロアレイによる定量)に記載された方法と同様にしてハイブリダイゼ−ションを行う。アレイ上のシグナル量をスキャナ−により測定することによって、本遺伝子の転写物であるmRNAの量、即ち、本遺伝子の発現量を測定することができる。
【0023】
(3−3.プロ−ブアレイによる定量)
本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞から上記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載された方法と同様の方法でmRNAを調製する。調製されたmRNAに、例えば、cDNA合成キット(GENSET社)等を用いてcDNAを調製する。調製されたcDNAを、例えば、ビオチンラベル化cRNA合成キット(In Vitro Transcription社)(Enzo社)等によりビオチン標識し、cRNA cleanup and quantitation キット(In Vitro Transcription社)により精製する。生成されたビオチン標識DNAをFragmentation バッファ−(200mMトリス酢酸(pH8.1)、500mM KOAc、150mM MgOAc)により断片化する。これに内部標準物質Contol Oligo B2 (Amersham社製)、100×Control cRNA Cocktail、Herring sperm DNA (Promega社製)、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)、2×MES Hybridization Buffer〔200mM MES、2M [Na], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7〕及びDEPC処理滅菌蒸留水を加え、ハイブリカクテルを作製する。
1×MESハイブリダイゼ−ションバッファ−で満たしたプロ−ブアレイ[例えば、Genechip(Affymetrix社製)等]を、ハイブリオ−ブン内で、45℃、60rpm、10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼ−ションバッファ−を除去する。その後、該プロ−ブアレイに上記のハイブリカクテル200μlを添加し、ハイブリオ−ブン内で45℃、60rpm、16時間回転させる(ハイブリダイゼ−ション)。続いてハイブリカクテルを除去し、Non−Stringent Wash Buffer〔6×SSPE[20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈]、0.01% Tween20、及び0.005% Antifoam0−30(Sigma社)を含む〕で満たした後、GeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置に上記プロ−ブアレイを装着し、プロトコ−ルに従って洗浄する。次いで、MicroArray Suite(Affymetrix社)の染色プロトコ−ルEuKGE−WS2に従って該プロ−ブアレイを染色する。HP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)により570nmの蛍光輝度を測定することにより、本遺伝子の転写物であるmRNAの量、即ち、本遺伝子の発現量を測定することができる。
【0024】
(4.インサイチュ−ハイブリダイゼ−ション法)
基本的には1)組織の固定、包埋、及び切片の作製、2)プロ−ブの調製、3)ハイブリダイゼ−ションによる検出からなり、あらかじめ放射性若しくは非放射性物質で標識されたRNA又はDNAをプロ−ブとすること以外は、例えば、Heiles,H.et al., Biotechniques,6,978,1988、遺伝子工学ハンドブック 羊土社 278 1991、細胞工学ハンドブック,羊土社,214,1992、細胞工学ハンドブック,羊土社,222,1992等に記載される方法に準じて行うことができる。
RNAプロ−ブを調製する場合には、まず、例えば前記(1 ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法)に記載した方法と同様にして本遺伝子のDNAを取得し、当該DNAをSP6、T7、T3RNAポリメラ−ゼプロモ−タ−をもったベクタ−(例えばStratagene社のBluescript、Promega社のpGEM等)に組み込んで大腸菌に導入し、プラスミドDNAを調製する。次いで、センス(ネガティブコントロ−ル用)、アンチセンス(ハイブリダイゼ−ション用)RNAができるようにプラスミドDNAを制限酵素で切断する。これらDNAを鋳型とし、放射性標識の場合はα−35S−UTP等、非放射性標識の場合にはディゴキシゲニンUTP又はフルオレセイン修飾UTP等を基質として、SP6、T7、T3RNAポリメラ−ゼを用いてRNAを合成しながら標識し、アルカリ加水分解によりハイブリダイゼ−ションに適したサイズに切断することによって、あらかじめ放射性若しくは非放射性物質で標識されたRNAを調製する。尚、、これらの方法に基づいたキットとしては、例えば、放射性標識用にはRNAラベリングキット(アマシャム社)が、非放射性標識用にはDIG RNAラベリングキット(ベ−リンガ−・マンハイム社)やRNAカラ−キット(アマシャム社)が市販されている。
また、DNAプロ−ブを調製する場合には、例えば、32P等で標識した放射性ヌクレオチド又はビオチン、ディゴキシゲニン若しくはフルオレセインで標識したヌクレオチドを、ニックトランスレ−ション法(J.Mol.Biol.,113,237,Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,10,6−10,12,Cold Spring Harbor Lab.)又はランダムプライム法(Anal.Biochem., 132,6,Anal.Biochem.,137,266)によって取り込ませることによって、あらかじめ放射性若しくは非放射性物質で標識されたDNAを調製する。これらの方法に基づいたキットとしては、例えば、放射性標識用にはニックトランスレ−ションキット(アマシャム社)やRandom Prime Labeling Kit(ベ−リンガ−マンハイム社)が、非放射性標識用にはDIG DNA標識キット(ベ−リンガ−マンハイム社)、DNAカラ−キット(アマシャム社)等が市販されている。
具体的には、本遺伝子の発現レベルを測定しようとする組織又は細胞をパラホルムアルデヒド等で固定し、パラフィン等に包埋した後、薄切切片を作製しスライドグラスに張り付ける。又は、上記の組織又は細胞をOCTコンパウンドに包埋後、液体窒素又は液体窒素で冷却したイソペンタン中にて凍結させ、その薄切切片を作製し、スライドグラスに張り付ける。このようにしてスライド標本を得る。
次に、上記の組織又は細胞中にあって使用されるプロ−ブと非特異的に反応する物質を除去するために、上記のようにして作製されたスライドグラス切片をプロテイナ−ゼK処理し、アセチル化する。次いで、該スライドグラス切片と上記のようにして調製されたプロ−ブとのハイブリダイゼ−ションを行う。例えば、上記のプロ−ブを90℃で3分間加熱した後ハイブリダイゼ−ション溶液で希釈し、該溶液を前処理の終了したスライドグラス切片上に滴下してフィルムでおおい、モイスチャ−チャンバ−中で45℃、16時間保温することにより、ハイブリッドを形成させる。ハイブリダイゼ−ションの後、非特異的吸着又は未反応プロ−ブを洗浄等(RNAプロ−ブを用いた場合はRNase処理も加える)により除去する。転写物量は、例えば、スライドグラス切片上の標識量を測定すること、或いは薄切切片中のラジオアイソト−プ若しくは蛍光活性を示す部分の面積若しくは細胞数をカウントすることにより、本遺伝子の転写物であるmRNAの量又はそれに相当する値を測定することができる。
【0025】
本発明検出方法においては、本遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子の検体における発現レベルを、上述のようにして測定する。発現レベルを測定する遺伝子を複数選ぶ場合には、登録番号群1又は2に示される登録番号で登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオ−ソログを複数選んでもよい。
【0026】
本遺伝子の発現レベルの測定は、上述のようにして、単位量の検体当たりの本遺伝子の転写物量を測定する方法、単位量の検体当たりの本遺伝子の翻訳産物量を測定する方法等により行うことができ、本遺伝子の転写物量又は翻訳産物量を測定する方法を好ましく挙げることができる。
【0027】
上記のようにして得られた前記検体における本遺伝子の発現レベルの測定値を、当該遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体における化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無或いはその発生程度を評価する。
【0028】
本遺伝子の発現レベルの対照値としては、例えば、化学物質に予め接触していない哺乳動物由来の検体における当該遺伝子の発現レベルの値を挙げることができる。かかる対照値は、化学物質に予め接触していない哺乳動物由来の検体における本遺伝子の発現レベルを、化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体における当該遺伝子の発現レベルと併行して測定して求めてもよいし、別途測定して求めてもよい。
例えば、化学物質に予め接触していない哺乳動物由来の検体における本遺伝子の発現レベルの値を対照値として、化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体における、登録番号群1又は2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオ−ソログの発現レベルの測定値が対照値よりも異なれば、当該化学物質は四塩化炭素様の毒性を有すると評価することができる。
【0029】
より具体的には例えば、化学物質が四塩化炭素様の毒性を有する場合には、対照哺乳動物由来の肝臓組織における本遺伝子又はそのオ−ソログ(但し、下記の被験哺乳動物由来の肝臓組織におけるは発現レベルの値を測定する際に選択された本遺伝子又はそのオ−ソログに対応したもの)の発現レベルの値を対照値として、被験哺乳動物由来の肝臓組織における登録番号群1に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログの発現レベルの測定値が対照値よりも有意に高ければ、化学物質が四塩化炭素様の毒性を有すると検定することができる。また、被験哺乳動物由来の肝臓組織における登録番号群2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログの発現レベルの測定値が対照値よりも有意に低ければ、化学物質が四塩化炭素様の毒性を有すると検定することができる。
【0030】
本発明検定方法においては、化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体が用いられるが、このような検体は、本発明検定方法の第一工程の前工程として、
(A)哺乳動物を飼育し、化学物質を投与する第A工程、及び
(B)第A工程後、化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体を得るために、化学物質が投与された哺乳動物から、当該哺乳動物由来の検体を単離する第B工程、
を追加的に有する方法により調製すればよい。
【0031】
前工程(A)に関して、哺乳動物に対して化学物質を投与する方法としては、例えば、経口(強制又は飲料水や餌に混じる)、筋肉内、静脈内、皮下、腹腔内、経気道等により行うことができる。投与量、投与回数及び投与期間は、例えば、全身状態、全身諸器官組織等に重篤な影響を及ぼさない範囲内(例えば投与量は、最大耐量)とすればよい。
このようにして、被験哺乳動物から採取された肝臓組織或いは組織から分離された細胞又はその培養細胞と、化学物質とを間接的な手段によって接触させることができる。
【0032】
より具体的には例えば、第A工程により飼育された哺乳動物に対して化学物質を投与するには、以下のように行えばよい。
前記被験哺乳動物に対して化学物質を、14日間以上、少なくとも1日1回以上、例えば、強制経口投与又は混餌投与する。
【0033】
当該工程における化学物質の経口投与は、例えば、以下の手順で行えばよい。
まず、投与液の作製に関して、化学物質を必要量秤量し、これをそのまま投与液とする。必要に応じて適当な溶媒(コーンオイルや約0.25〜0.5%のメチルセルロース溶液等)を用いて溶液又は均一な懸濁液を作製する。経口投与は注射筒及び弾性カテーテル等を用いて1匹当たり望ましくは5mL/kg/day以下の液量で少なくとも1日1回以上経口投与する。これを14日間以上継続して行う。
【0034】
当該工程における化学物質の混餌投与は、例えば、以下の手順で行えばよい。まず、所定濃度の化学物質を含有する飼料の作製に関して、化学物質を必要量秤量し、これをそのまま、若しくは必要に応じて適当な溶媒(コーンオイル等)を用いて溶液又は均一な懸濁液を作製する。作製された溶液又は均一な懸濁液と基礎飼料とを混合することにより、調製飼料を作製する。この調製飼料を給餌器に入れて、当該調製飼料を動物が自由摂食できるよう供与する。通常、1週間に1回の頻度で新しい調製飼料と交換する。これを14日間以上継続して行う。
【0035】
工程(B)に関して、第A工程後、化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体を得るために、化学物質が投与された哺乳動物から、当該哺乳動物由来の検体を単離するには、当該分野における通常の方法により行えばよい。
【0036】
より具体的には例えば、まず、最終投与(前工程(A))の翌日、被験哺乳動物をエーテル等の適切な麻酔薬により麻酔する。次に、麻酔された被験哺乳動物の腹大動脈から採血し致死させた後、当該哺乳動物から肝臓を摘出する。摘出された肝臓について、紙ウエス等により水分を吸収させた後、定法に準じて天秤用いて子宮の湿重量を測定するとよい。通常、子宮内容物込み、並びに内容物除去後の測定を行うのが望ましい。
尚、次の工程に即座に着手できない場合には、重量測定後、肝臓をRNA later中にて保存するか、又は、例えば、液体窒素等を用いて肝臓を即座に凍結し、−80℃で保存すればよい。
【0037】
次に、上記のようにして化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体における本遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子の発現レベルを、上述のようにして測定する。発現レベルを測定する遺伝子を複数選ぶ場合には、同一の登録番号群に示される登録番号で登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオ−ソログを複数選んでもよい。
本遺伝子の発現レベルの測定は、上述のようにして、単位量の検体当たりの本遺伝子の転写物量を測定する方法、単位量の検体当たりの本遺伝子の翻訳産物量を測定する方法等により行うことができ、本遺伝子の転写物量を測定する方法を好ましく挙げることができる。
【0038】
上記のようにして化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体における本遺伝子の発現レベルの測定値を、当該遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体における化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無或いはその発生程度を評価する。
【0039】
さらに、上記のような本発明検定方法は、本発明検定方法により評価された四塩化炭素様の毒性の有無又はその量に基づき四塩化炭素様の毒性を有する化学物質を除去することによって、有用な化学物質を探索することができる。
【0040】
薬剤の投与は、通常の投与経路、例えば経口、筋肉内、静脈内、皮下、腹腔内、鼻孔内等により行うことができる。投与量及び投与回数は投与経路、症状の程度、年齢、上記の基づき四塩化炭素様の毒性を有する化学物質は、当該化学物質の薬学的に許容される塩(例えば、酸付加塩又は塩基付加塩)の形で利用してもよい。酸付加塩としては、例えば、無機酸付加塩又は有機酸付加塩が挙げられ、無機酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、燐酸塩等が挙げられ、有機酸付加塩としては、例えば、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩等が挙げられる。塩基付加塩としては、例えば、無機塩基付加塩又は有機塩基付加塩が挙げられ、無機塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、有機塩基付加塩としては、例えば、アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸付加塩等が挙げられる。かかる塩は公知の手段によって製造することができる。
また、上記の基づき四塩化炭素様の毒性を有する化学物質は、当該化学物質の薬学的に許容される塩の水和物等の溶媒和物の形で利用してもよい。
【0041】
投与剤形としては、例えば散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、座剤、注射剤、経鼻剤等が挙げられる。製剤化の際は、通常の製剤担体を用い、常法により製造することができる。即ち、経口用製剤を調製する場合には、必要に応じて結合剤、崩壊剤、潤滑剤、着色剤等を加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等とする。注射剤を調製する場合には、必要に応じてpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤等を添加し、常法により注射剤とすることもできる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
実施例1 (被験哺乳動物の準備)
4週齢(出生日を0日とする)のF344雌ラット(日本チャールス・リバーから購入)を、1週間の検疫期間の後、5週齢で試験に供した。
【0044】
実施例2 (被験化学物質の投与)
実施例1により準備した雌ラット4匹に、被験化学物質として、四塩化炭素を50〜75mg/kg/dayの投与量で、かつ5mL/mg/dayの液量で、1日1回14日間反復強制経口投与した。尚、対照哺乳動物として、化学物質を含む投与液の代わりに、被験化学物質を含まない投与液(コーンオイルのみ)を、被験哺乳動物と同様にして投与した。
【0045】
実施例3 (肝臓の摘出)
最終投与の翌日、被験哺乳動物及び対照哺乳動物をエーテル麻酔下で腹大動脈から採血して安楽死させた。致死させた哺乳動物から肝臓を摘出した。肝臓組織をRNA later中に入れ、その後24時間(室温)浸漬させたのち、-20℃で保存した。
【0046】
実施例4 (本遺伝子の発現レベルの測定)
(1)total RNAの調製
実施例3で保存した被験哺乳動物及び対照哺乳動物の肝臓組織について、それぞれ湿重量1gに対して10mlのTRIZOL Reagent(Gibco-BRL社製)を加え、氷冷しながらポリトロンホモジナイザーにてホモジナイズし、5分間室温で放置した。次いで、4℃、9,000rpm、10分間遠心分離した後、水層を50ml遠心チューブ(IWAKI社製)に回収した。TRIZOL Reagentの1/5容量のクロロホルム(関東化学社製)を添加し、15秒間上下に激しく撹拌した後、5分間室温で放置した。次いで、4℃、9,000rpm、10分間遠心分離した後、水層を新しい50ml遠心チューブに回収した。更に、TRIZOL Reagentの1/2容量の2-プロパノール(関東化学社製)を添加して、転倒混和後、室温で10分間静置した。4℃、9,000rpm、10分間遠心分離後、上清を除去しペレットを得た。得られたペレットを、TRIZOL Reagentの1/10容量のDEPC処理滅菌蒸留水(和光純薬工業社製)で溶解した。得られるRNA溶液0.1mlにRNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)添付のRLT buffer (10μL β−メルカプトエタノール/mL RLT buffer)350μLを添加し、混和した。更に、250μL エタノール(関東化学社製)を添加し、混和した。当該混和液をRNeasy Mini Kit添付のRNeasy Spin Columnにアプライし、室温、10,000rpm、15秒間遠心分離した。遠心分離後、溶出液を再度同じRNeasy Spin Columnにアプライし、室温、10,000rpm、15秒間遠心分離した。遠心分離後、溶出液を捨て、エタノールで4倍希釈したRNeasy Mini Kit添付のRPE bufferを500μLアプライし、室温、10,000rpm、15秒間遠心分離した。遠心分離後、溶出液を捨て、エタノールで希釈したRPE bufferを500μLアプライし、室温、14,000rpm、2分間遠心分離した。その後、カラムを新しいエッペンドルフチューブに移してRNeasy Mini Kit添付の蒸留水を50μL添加し、1分間室温で静置した。静置後、室温、10,000rpm、1分間遠心分離によって溶出し、total RNAを得た。
【0047】
(2)cDNAの調製
上記(1)で肝臓組織から調製されたtotal RNA 10μg、T7-(dT)24プライマー(Amersham社製) 100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco-BRL社製)に含まれる5×First Strand cDNA Buffer 4μL、当該キットに含まれる0.1M DTT 2μL及び当該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃、2分間加熱した。更に、当該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400U)を添加し、42℃、1時間加熱後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理滅菌蒸留水91μL、当該キットに含まれる5×Second Strand Reaction Buffer 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、当該キットに含まれるE. coli DNA Ligase 1μL(10U)、当該キットに含まれるE. coli DNA Polymerase I 4μL(40U)及び当該キットに含まれるE. coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃、2時間反応させた。次いで、当該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃、5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。当該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、室温、14,000rpm、2分間遠心分離後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移す。これに、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加え混合した後、4℃、14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、DNAペレットを得た。その後、DNAペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃、14,000rpm、5分間遠心分離後、上清を捨てた。DNAペレットに再度80%エタノール0.5mLを添加し、4℃、14,000rpm、5分間遠心分離後、上清を捨てた後、当該ペレットを乾燥させ、DEPC処理滅菌蒸留水12μLに溶解し、cDNA溶液を得た。一方、正常組織から調製した total RNAについても、上記と同様の操作を行うことによりcDNA溶液を調製した。
【0048】
(3)ラベル化cRNAの調製
被験哺乳動物及び対照哺乳動物の肝臓組織由来のcDNAを用いて、それぞれラベル化cRNAを調製した。即ち、上記(2)で得られたcDNA溶液5μL、DEPC処理滅菌蒸留水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10×HY Reaction Buffer 4μL、当該キットに含まれる10×Biotin Labeled Ribonucleotides 4μL、当該キットに含まれる10×DTT 4μL、当該キットに含まれる10×RNase Inhibitor Mix 4μL及び当該キットに含まれる20×T7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃、5時間反応させた。当該反応液にDEPC処理滅菌蒸留水60μLを加えたのち、上記(1)に記載された RNeasy Mini Kitを用いてラベル化cRNAの精製を行った。
【0049】
(4)ラベル化cRNAのフラグメント化
精製されたラベル化cRNA 20μg、5×Fragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、 500mM酢酸カリウム(Sigma社製)及び150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを含む反応液40μLを、94℃、35分間加熱後、氷冷し、フラグメント化cRNA溶液を得た。
【0050】
(5)フラグメント化cRNAとプロ−ブアレイとのハイブリダイズ
被験哺乳動物及び対照哺乳動物の肝臓組織由来のフラグメント化cRNAを、以下のようにしてそれぞれプローブアレイとハイブリダイズさせた。即ち、上記(4)で得られたフラグメント化cRNA溶液 40μL、5nM Contol Oligo B2 (Amersham社製)4μL、100×Control cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA (Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco-BRL社製)200μg、2×MES Hybridization Buffer(200mM MES、2M [Na+], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7) 200μL及びDEPC処理滅菌蒸留水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られたハイブリカクテルを99℃、5分間加熱、更に45℃、5分間加熱した。加熱後、室温、14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
1×MESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたヒトゲノムU95プローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン内で、45℃、60rpm、10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼーションバッファーを除去した。その後、当該プローブアレイに当該ハイブリカクテル上清200μLを添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpm、16時間回転させ、ハイブリダイズ済みプローブアレイを得た。
【0051】
(6)プロ−ブアレイの染色
上記(5)で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイからハイブリカクテルを除去し、Non-Stringent Wash Buffer[6×SSPE(20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20を含む]で満たした。GeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置に前記プローブアレイを装着し、プロトコールに従って前記プローブアレイを洗浄した後、MicroArray Suite(Affymetrix社)の染色プロトコールEuKGE-WS2に従って以下の方法により前記プローブアレイを染色した。まず1次染色液[10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin (SAPE)(Molecular Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20を含む]に45分間浸漬した。次いで、2次染色液[100μg/mL Goat IgG (Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti-Streptavidinantibody (Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20及び0.005%Antifoam0-30を含む]に10分間浸漬し、最後に1次染色液に45分間浸漬した。
【0052】
(7)プロ−ブアレイのスキャン、解析
上記(6)で染色された被験哺乳動物の肝臓組織由来のプローブアレイ及び対照哺乳動物の肝臓組織由来のプローブアレイをそれぞれHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、シグナルを570nmの蛍光輝度を測定することによって読み取た。得られた結果をGeneChip Microarray Suite(Affymetrix社製)によって比較解析し、対照哺乳動物と被験哺乳動物とで発現レベルが異なる遺伝子を抽出した。登録番号群1に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子の場合には、肝毒性を有する四塩化炭素投与哺乳動物の肝臓組織由来のプローブアレイにおいて検出されたシグナルが、対照哺乳動物の肝臓組織由来のプローブアレイにおいて検出されたシグナルを上回った。この結果は異なる3実験で再現性が認められた(表1参照)。尚、、実験1及び実験2では、50mg/kg/dayの投与量で、実験3では75mg/kg/dayの投与量で実施した。
<登録番号群1>
NM_138910、NM_022402、NM_001011995、NM_031103、NM_134334、NM_017199、NM_031643、NM_031833、NM_130416、NM_022226、NM_012523、NM_053516、NM_133596、NM_019341、NM_022542、NM_017147、NM_031104、NM_012623、NM_144755、NM_147138、NM_153628、NM_171983、NM_032085、XM_001054915、NM_001037346、NM_019288、BM986220、AA800689、AI105202、NM_001013115、NM_00110538、NM_181086、NM_001013880、NM_001031655、BI283728、NM_001047858、NM_001013105、BG380323、NM_001108566、AI407797、NM_001127555、NR_002704、BE098739、AI599365、NM_001013085、NM_001015012、AI408064、NM_001109468、BE110753、NM_001039344、XM_001074464、NM_138907、H31287、NM_012946、NM_017333、NM_017208、NM_012924、NM_017343、NM_031315、NM_001033898、NM_199386、NM_183332、NM_022183、XM_001076548、NM_001014135、NM_013155、NM_172045、NM_001107789、NM_001024984、BI303073、NM_001134417、AA899721、BM390248、NM_001025697、NM_022300、NM_001007616、NM_031986、NM_001105722
【0053】
【表1】

【0054】
* 表中の数値は、被験哺乳動物の肝臓組織における当該遺伝子の発現量を、対照哺乳動物の肝臓組織における当該遺伝子の発現量を0としてLog2Ratio値で示した。
【0055】
一方、登録番号群2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子の場合には、肝毒性を有する四塩化炭素投与哺乳動物の肝臓組織由来のプローブアレイにおいて検出されたシグナルが、対照哺乳動物の肝臓組織由来のプローブアレイにおいて検出されたシグナルを下回った。この結果は異なる3実験で再現性が認められた(表2参照)。尚、、実験1及び実験2では、50mg/kg/dayの投与量で、実験3では75mg/kg/dayの投与量で実施した。
<登録番号群2>
NM_012504、NM_012941、NM_022547、NM_022251、NM_012803、NM_020538、NM_012895、NM_031003、NM_031648、NM_017154、XM_001059375、NM_001012345、NM_001013233、XM_001058756、NM_001106355、NM_199084、NM_001108742、NM_175582、NM_057137、NM_031154、XM_001076104、BI279570、NM_001109445、NM_001033882、NM_013048、NM_022629
NM_001014006、NM_001106555、NM_001009385
【0056】
【表2】

【0057】
* 表中の数値は、被験哺乳動物の肝臓組織における当該遺伝子の発現量を、対照哺乳動物の肝臓組織における当該遺伝子の発現量を0としてLog2Ratio値で示した。
【0058】
参考例1 (定量的RT−PCRを用いた四塩化炭素様の毒性検定方法)
(1)哺乳動物への化学物質の投与
実施例1から実施例4と同様の操作にて肝臓組織を採取する。
【0059】
(2)遺伝子の発現解析
次に、調製されたcDNAを鋳型として、以下のようにしてPCRを行って増幅されたDNAを定量する。即ち、当該cDNA 1μl、Forwardプライマ−20pmol、Reverseプライマー20pmol及びSYBR Green PCR ReagentsPCR(ABI社) 25μlを含む50μlの反応液を調製し、ABI7700(ABI社)を用いて、50℃ 2分間次いで95℃ 10分間保温した後、95℃ 15秒次いで60℃ 1分間の保温を1サイクルとしてこれを40サイクル実施する条件でPCRを行う。増幅されたDNAの量から、被験化学物質投与群の肝臓組織における本遺伝子の発現レベル及び対照哺乳動物由来の肝臓組織における本遺伝子の発現レベルそれぞれを求める。被験化学物質投与群の肝臓組織における発現レベルが、登録番号群1に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログの発現レベルの測定値が、対照哺乳動物由来の肝臓組織の発現レベルより有意な増加を示した場合であれば、当該化学物質は四塩化炭素様の毒性を有すると評価する。被験化学物質投与群の肝臓組織における発現レベルが、登録番号群2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログの発現レベルの測定値が、対照哺乳動物由来の肝臓組織の発現レベルより有意な減少を示した場合、当該化学物質は四塩化炭素様の毒性を有すると評価する。
【0060】
即ち、被験化学物質投与群の肝臓組織及び対照哺乳動物由来の肝臓組織それぞれから、実施例4(1)と同様の操作によってtotal RNAを調製した後、実施例4(2)と同様の操作によって肝臓組織由来のcDNAを調製する。cDNAを鋳型として、以下のようにしてPCRを行って増幅されたDNAを定量する。例えば、登録番号NM_022402遺伝子の場合、当該cDNA 2μl、Forwardプライマ−(5’ -TTC CCA CTG GCT GAA AAG GT- 3’)22.5pmol、Reverseプライマー(5’ -CGC AGC CGC AAA TGC- 3’)22.5pmol、プローブ(5’ -AAG GCC TTC CTG GCC GAT CCA TC- 3’)6.25pmol及びTaqMan Universal Master Mix(ABI社) 12.5μlを含む25μlの反応液を調製する。この調整液に関し、GeneAmp5700 Sequence detection System(ABI社)を用いて、50℃ 5分間、次いで95℃ 10分間保温した後、95℃ 15秒、次いで60℃ 1分間の保温を1サイクルとしてこれを40サイクル実施する条件でPCRを行う。増幅されたDNAの量から、登録番号NM_022402遺伝子のmRNA量を測定する。また、対照遺伝子としてGlyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)遺伝子のmRNA量も同様の操作で測定する(Forwardプライマー 配列番号5:5’ -GCT GCC TTC TCT TGT GAC AAA GT- 3’、及び、Reverseプライマー 配列番号6:5’ -CTC AGC CTT GAC TGT GCC ATT- 3’、並びに、プローブ 配列番号7:5’ -TGT TCC AGT ATG ATT CTA CCC ACG GCA AG- 3’)。当該遺伝子のmRNA量とGAPDH遺伝子のmRNA量の比を算出し、登録当該遺伝子の発現レベルとし、被験化学物質投与哺乳動物の肝臓組織における当該遺伝子の発現レベル及び対照哺乳動物の肝臓組織における当該遺伝子の発現レベルをそれぞれ求める。
【0061】
参考例2 (インサイチュ−ハイブリダイゼ−ションを用いた四塩化炭素様の毒性検定方法)
(1)哺乳動物への化学物質の投与
実施例1から実施例3と同様の操作にて肝臓組織を採取する。
【0062】
(2)肝臓組織の固定、包埋及び薄切切片の作製
採取した肝臓は固定液(4%パラホルムアルデヒド+0.5%グルタ−ルアルデヒド/0.075Mリン酸緩衝液、pH7.2〜7.4)で4℃、一晩固定する。固定後、被験化学物質投与群の肝臓組織及び対照哺乳動物由来の肝臓組織それぞれをアルコ−ル脱水し、パラフィンに包埋した後、ミクロスライサ−を用いて2〜10μmの厚さで薄切し、これをスライドグラスに載せる。
【0063】
(3)cDNAの調製
被験哺乳動物及び対照哺乳動物の肝臓組織それぞれから、実施例4(1)と同様の操作にてtotal RNAを1μg/μlになるように調製する。次に目的遺伝子の約1kbpを選定し、当該塩基配列を有するDNAをPCRで増やすためのプライマ−の合成を行う。プライマ−は、そのsense primerの5'末端にT3プロモ−タ−配列(aat taa ccc tca cta aag gga ac)を、antisense primerの5'末端にT7プロモ−タ−配列(gta ata cga ctc act ata ggg ag)を付加したものとし、合成は遺伝子工学的手法にて用いられる通常の方法により合成する。RT−PCRには、ThermoScript RT−PCR System (Gibco社)及びPLATIUM taq DNA Polymerase High fidelity (Gibco社)の各キットを用いる。まず、Antisenseのプライマ−20pmol、total RNA 1μl、当該キット内のH20を混じ、65℃、5分間保温し、その後、氷上で冷却する。次いで、5×DNA Synthesis Buffer 4μl、0.1M DTT 1μl、RNase OUT 1μl、滅菌水1μl、10mM dNTP Mix 2μl、ThermoScript RT 1μlを加え、65℃で1時間保温した後、85℃で5分間加温し、ThermoScript RTを失活させる。これを氷上で冷却した後、1μlのRNase H (Gibco社)を加え、37℃で20分間反応させることでcDNAを作製する。作製したcDNA 5μlに、sense primer 20pmol、×10 High Fidelity PCR Buffer 5μl、50mM MgSO 2μl、10mM dNTPmix 1μl、PLATINUM taq DNA Polymerase Hight Fidelity 0.2μl、滅菌水34.8μlを加え、94℃で2分間加温した後、94℃ 15秒、60℃ 30秒、68℃ 1分間を1サイクルとして40サイクル実施し、最後に68℃で5分間反応を行う。このPCR反応液を1%アガロ−スゲル電気泳動に供し、目的PCR産物をゲルから切り出した後、等量のイソプロパノ−ルと混じ、当該キット内のカラムに供して、2分間遠心分離する。遠心後、カラムに新しいチュ−ブを繋ぎ、当該キット内のEB buffer 50μlをカラムに供して遠心分離し、目的DNA産物を得る。
【0064】
(4)ラベル化cRNAの調製
参考例2(3)で合成されたcDNAを鋳型とし、T3 polymerase又はT7 polymeraseを用いてcRNAプロ−ブ(FITC標識)を合成する。具体的には、cDNA 0.2〜1μlに×10 transcription buffer(DTT+)(宝酒造)2μl、×10 FITC−laveling mix (ベ−リンガマンハイム) 2μl、RNase inhibitor(ニッポンジ−ン)1μlを加え、さらにH2Oを加えて総量を18μlにする。そこにsense probeを合成する場合には2μlのT3 polymerase(宝酒造) 、anti-sense probeを合成する場合には2μlのT7 polymerase(宝酒造)をそれぞれ加え、37℃で3〜5時間保温する。次いで、1μlのRNase freeのDNase I(ベ−リンガマンハイム社)を加え、さらに20分間保温する。合成されたcRNAはエタノ−ル沈澱させ、得られたペレットを60℃に加温した100μLの 40mM NaHCO3, 60mM Na2CO3 (pH10.2)に溶解する。その後、アルカリ分解により約150bの断片になるように、次の計算式から得られた時間、60℃で保温する。加温時間(分) = (cDNA長(kb)−加水分解後の平均断片長(kb))/(0.11×cDNA長(kb)×加水分解後の平均断片長(kb))。反応後、氷上で冷却し、1μlの酢酸を加える。更に、10分の1量の4M LiClを添加し、15000rpmで10分間遠心分離し、上清を棄てる。500μlのエタノ−ルを加えてペレットを洗浄した後、TE buffer 20μl、0.1M DTT 2μl、RNase inhibitor 1μlを加え溶解する。
【0065】
(5)ハイブリダイゼ−ション
参考例2(2)で作製したスライド標本を室温で脱パラフィンし、再水和する。次に、前処理として1×Target Retrieve Solution (DAKO)を加え、オ−トクレ−ブにより121℃で20分間加温する。60℃まで温度が下がった後にこれを取り出し、室温に20分間放置することで更に冷却する。冷却後、室温でDEPC処理滅菌水に2分×2回、3%過酸化水素水/DEPC処理滅菌水に30分間、DEPC処理滅菌水に2分×3回、90%エタノ−ル/DEPC処理滅菌水に3分間、100%エタノ−ルに3分間浸漬した後、風乾する。参考例2(4)で調製したcRNAプロ−ブをhybridization buffer(組成:40%ホルムアミド(ニッポンジ−ン), 4×SCC (pH5.0)(Gibco), 1 mM EDTA, 1×Denhardet's(Nippon gene),250μg/ml yeast tRNA (Gibco),125μg/ml サケ精子DNA (Gibco), 10%dextran sulfateで0.1〜0.3μg/ml/kbとなるように希釈し、切片上で滴下し、EasiSeal(HYBAID社)を用いて封入する。封入したスライドグラスを湿潤箱に並べ、60℃で5時間以上保温する。その後、スライドグラスを65℃に保温した5×SSC (pH5.0)中に浸し、65℃に加温した洗浄液A(組成:2×SSC[pH5.0], 1%SDS)に30分間×2回浸漬し、室温の洗浄液B(組成:10 mM Tris−HCl (pH7.5), 0.5M NaCl, 0.1% Tween 20)に5分間×3回浸漬した後、37℃に加温した洗浄液Bに20μg/ml RNase A (SIGMA)を加えたものに20分間浸漬する。その後、65℃に加温した洗浄液C(組成:2×SSC[pH5.0], 50% ホルムアミド[和光])で30分間×2回、室温のTBS buffer(組成:50 mM Tris−HCl [pH7.5], 150mM NaCl)で3分間×3回洗浄を行う。洗浄後、切片周囲の過剰な溶液を拭き取り、組織周囲をPAP PEN(大道産業株式会社)で囲んだ後、FITC標識プロ−ブ検出キット(DAKO)に含まれるアルカリフォスファタ−ゼ標識抗FITC抗体を1%Bovine serum albumin/TBSで希釈したものを、切片上に滴下し、湿潤箱中に37℃で60分間放置する。反応後、室温のTBST(組成:TBS + 0.1% Tween 20)に5分間×3回、室温のTBSに2〜3分浸漬する。切片周囲の過剰な溶液を拭き取り、AP基質溶液(DAKO、BCIP/NBT発色基質溶液)を滴下し、湿潤箱中に37℃で60分〜2日間放置する。その後、流水中で発色液を洗い流し、透徹、封入する。
【0066】
(6)遺伝子の発現解析
本遺伝子の転写物量は、被験哺乳動物及び対照哺乳動物の肝臓組織薄切切片それぞれの各蛍光活性を示す部分の面積又は細胞数をカウントすることにより、本遺伝子の転写物であるmRNAの量又はそれに相当する値を測定することができる。登録番号群1に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログについて、被験化学物質投与群の肝臓組織における当該値が、対照哺乳動物の肝臓組織の当該値より有意な増加を示した場合、当該化学物質は四塩化炭素様の毒性を有すると評価する。登録番号群2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログについて、被験化学物質投与群の肝臓組織における発現レベルが、対照哺乳動物の肝臓組織の発現レベルより有意な減少を示した場合、当該化学物質は四塩化炭素様の毒性を有すると評価する。
【0067】
参考例3 (免疫組織化学的検査を用いた四塩化炭素様の毒性検定方法)
(1)哺乳動物への化学物質の投与
実施例1から実施例3と同様の操作にて肝臓組織を採取する。
【0068】
(2)組織の固定、包埋、及び切片の作製
採取した肝臓から組織を適度な大きさに切り出した後、OCTコンパウンドにこれを包埋し、液体窒素にて冷却したイソペンタン中で凍結させる。これを−20℃に冷却したクリオスタット中で約5μmの厚さに薄切し、スライドグラスに載せ、乾燥させる。
【0069】
(3)薄切切片の免疫組織化学的染色
上記(2)で作製した薄切切片を70%エタノ−ルで1分間固定した後、PBS buffer(組成:10 mM リン酸ナトリウム [pH7.4], 100mM NaCl)で洗浄してOCTコンパウンドを落とし、0.3%過酸化水素水で5分間処理する。PBS bufferで5分間×3回洗浄し、正常血清で室温20分間処理する。次いで、PBS bufferで適度に希釈した登録番号群1に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子の翻訳産物に対する抗体(以下、一次抗体)で室温60分間処理する。反応後、PBS bufferで5分間×3回洗浄し、PBS bufferで適度に希釈した一次抗体と同じ免疫哺乳動物のVECTASTAIN/ABC試薬(フナコシ)で室温30分間処理する。更に、PBS bufferで5分間×3回洗浄した後、3,3''−ジアミノベンジジン四塩酸塩(ナカライ)を用いて発色させる。その後、蒸留水で洗浄し、脱水、透徹、封入を行う。
【0070】
(4)遺伝子翻訳産物の発現解析
画像解析装置IPAP(住化テクノサ−ビス(株))を用いて染色性の確認された肝臓細胞巣の面積又は細胞数を測定することにより、本遺伝子の翻訳産物に相当する値を測定することができる。登録番号群1に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログについて、被験化学物質投与群の肝臓腺組織における当該値が、対照哺乳動物由来の肝臓組織の当該値より有意な増加を示した場合、当該化学物質は四塩化炭素様の毒性を有すると評価する。登録番号群2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログについて、被験化学物質投与群の肝臓組織における当該値が、対照哺乳動物由来の肝臓組織の当該値より有意な減少を示した場合、当該化学物質は四塩化炭素様の毒性を有すると評価する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によって、特定の遺伝子の発現レベルを指標とした、化学物質が有する四塩化炭素様の毒性のより正確かつ簡便な検定方法等が提供可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の検定方法であって、
(1)化学物質に予め接触させられた哺乳動物由来の検体における、以下の登録番号群1又は2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログから選ばれる1以上の遺伝子の発現レベルを測定する第一工程、及び
(2)第一工程で得られた前記検体における遺伝子の発現レベルの測定値を当該遺伝子の発現レベルの対照値と比較し、その差異に基づいて前記検体における化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無或いはその発生程度を評価する第二工程を有することを特徴とする方法。
<登録番号群1>
(a) NM_138910(配列番号1で示される塩基配列)
(b) NM_022402(配列番号2で示される塩基配列)
(c) NM_001011995(配列番号3で示される塩基配列)
(d) NM_031103(配列番号4で示される塩基配列)
(e) NM_134334(配列番号5で示される塩基配列)
(f) NM_017199(配列番号6で示される塩基配列)
(g) NM_031643(配列番号7で示される塩基配列)
(h) NM_031833(配列番号8で示される塩基配列)
(i) NM_130416(配列番号9で示される塩基配列)
(j) NM_022226(配列番号10で示される塩基配列)
(k) NM_012523(配列番号11で示される塩基配列)
(l) NM_053516(配列番号12で示される塩基配列)
(m) NM_133596(配列番号13で示される塩基配列)
(n) NM_019341(配列番号14で示される塩基配列)
(o) NM_022542(配列番号15で示される塩基配列)
(p) NM_017147(配列番号16で示される塩基配列)
(q) NM_031104(配列番号17で示される塩基配列)
(r) NM_012623(配列番号18で示される塩基配列)
(s) NM_144755(配列番号19で示される塩基配列)
(t) NM_147138(配列番号20で示される塩基配列)
(u) NM_153628(配列番号21で示される塩基配列)
(v) NM_171983(配列番号22で示される塩基配列)
(w) NM_032085(配列番号23で示される塩基配列)
(x) XM_001054915(配列番号24で示される塩基配列)
(y) NM_001037346(配列番号25で示される塩基配列)
(z) NM_019288(配列番号26で示される塩基配列)
(aa) BM986220(配列番号27で示される塩基配列)
(bb) AA800689(配列番号28で示される塩基配列)
(cc) AI105202(配列番号29で示される塩基配列)
(dd) NM_001013115(配列番号30で示される塩基配列)
(ee) NM_00110538(配列番号31で示される塩基配列)
(ff) NM_181086(配列番号32で示される塩基配列)
(gg) NM_001013880(配列番号33で示される塩基配列)
(hh) NM_001031655(配列番号34で示される塩基配列)
(ii) BI283728(配列番号35で示される塩基配列)
(jj) NM_001047858(配列番号36で示される塩基配列)
(kk) NM_001013105(配列番号37で示される塩基配列)
(ll) BG380323(配列番号38で示される塩基配列)
(mm) NM_001108566(配列番号39で示される塩基配列)
(nn) AI407797(配列番号40で示される塩基配列)
(oo) NM_001127555(配列番号41で示される塩基配列)
(pp) NR_002704(配列番号42で示される塩基配列)
(qq) BE098739(配列番号43で示される塩基配列)
(rr) AI599365(配列番号44で示される塩基配列)
(ss) NM_001013085(配列番号45で示される塩基配列)
(tt) NM_001015012(配列番号46で示される塩基配列)
(uu) AI408064(配列番号47で示される塩基配列)
(vv) NM_001109468(配列番号48で示される塩基配列)
(ww) BE110753(配列番号49で示される塩基配列)
(xx) NM_001039344(配列番号50で示される塩基配列)
(yy) XM_001074464(配列番号51で示される塩基配列)
(zz) NM_138907(配列番号52で示される塩基配列)
(aaa) H31287(配列番号53で示される塩基配列)
(bbb) NM_012946(配列番号54で示される塩基配列)
(ccc) NM_017333(配列番号55で示される塩基配列)
(ddd) NM_017208(配列番号56で示される塩基配列)
(eee) NM_012924(配列番号57で示される塩基配列)
(fff) NM_017343(配列番号58で示される塩基配列)
(ggg) NM_031315(配列番号59で示される塩基配列)
(hhh) NM_001033898(配列番号60で示される塩基配列)
(iii) NM_199386(配列番号61で示される塩基配列)
(jjj) NM_183332(配列番号62で示される塩基配列)
(kkk) NM_022183(配列番号63で示される塩基配列)
(lll) XM_001076548(配列番号64で示される塩基配列)
(mmm) NM_001014135(配列番号65で示される塩基配列)
(nnn) NM_013155(配列番号66で示される塩基配列)
(ooo) NM_172045(配列番号67で示される塩基配列)
(ppp) NM_001107789(配列番号68で示される塩基配列)
(qqq) NM_001024984(配列番号69で示される塩基配列)
(rrr) BI303073(配列番号70で示される塩基配列)
(sss) NM_001134417(配列番号71で示される塩基配列)
(ttt) AA899721(配列番号72で示される塩基配列)
(uuu) BM390248(配列番号73で示される塩基配列)
(vvv) NM_001025697(配列番号74で示される塩基配列)
(www) NM_022300(配列番号75で示される塩基配列)
(xxx) NM_001007616(配列番号76で示される塩基配列)
(yyy) NM_031986(配列番号77で示される塩基配列)
(zzz) NM_001105722(配列番号78で示される塩基配列)
<登録番号群2>
(aaaa) NM_012504(配列番号79で示される塩基配列)
(bbbb) NM_012941(配列番号80で示される塩基配列)
(cccc) NM_022547(配列番号81で示される塩基配列)
(dddd) NM_022251(配列番号82で示される塩基配列)
(eeee) NM_012803(配列番号83で示される塩基配列)
(ffff) NM_020538(配列番号84で示される塩基配列)
(gggg) NM_012895(配列番号85で示される塩基配列)
(hhhh) NM_031003(配列番号86で示される塩基配列)
(iiii) NM_031648(配列番号87で示される塩基配列)
(jjjj) NM_017154(配列番号88で示される塩基配列)
(kkkk) XM_001059375(配列番号89で示される塩基配列)
(llll) NM_001012345(配列番号90で示される塩基配列)
(mmmm) NM_001013233(配列番号91で示される塩基配列)
(nnnn) XM_001058756(配列番号92で示される塩基配列)
(oooo) NM_001106355(配列番号93で示される塩基配列)
(pppp) NM_199084(配列番号94で示される塩基配列)
(qqqq) NM_001108742(配列番号95で示される塩基配列)
(rrrr) NM_175582(配列番号96で示される塩基配列)
(ssss) NM_057137(配列番号97で示される塩基配列)
(tttt) NM_031154(配列番号98で示される塩基配列)
(uuuu) XM_001076104(配列番号99で示される塩基配列)
(vvvv) BI279570(配列番号100で示される塩基配列)
(wwww) NM_001109445(配列番号101で示される塩基配列)
(xxxx) NM_001033882(配列番号102で示される塩基配列)
(yyyy) NM_013048(配列番号103で示される塩基配列)
(zzzz) NM_022629(配列番号104で示される塩基配列)
(aaaaa) M_001014006(配列番号105で示される塩基配列)
(bbbbb) NM_001106555(配列番号106で示される塩基配列)
(ccccc) NM_001009385(配列番号107で示される塩基配列)
【請求項2】
検体が、四塩化炭素様の毒性が反映される生体試料であることを特徴とする前項1記載の方法。
【請求項3】
検体が、肝臓組織或いはその組織から分離された細胞又はその培養細胞であることを特徴とする前項1記載の方法。
【請求項4】
遺伝子の発現レベルの測定が、当該遺伝子の転写物量又は翻訳産物量の測定によりなされることを特徴とする請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項5】
遺伝子の発現レベルの対照値が、化学物質に予め接触していない哺乳動物由来の検体における当該遺伝子の発現レベルの値であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の方法。
【請求項6】
第一工程が、登録番号群1に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログから選ばれる1以上の遺伝子の発現レベルを測定する工程であり、かつ、第二工程が、当該第一工程で得られた発現レベルの測定値が対照値と有意に異なることを指標とし、当該指標に基づいて検体における化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無或いはその発生程度を評価する工程であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の方法。
【請求項7】
第一工程が、登録番号群2に示される登録番号のいずれかでGenbankに登録されている塩基配列を有する遺伝子又はそのオーソログから選ばれる1以上の遺伝子の発現レベルを測定する工程であり、かつ、第二工程が、当該第一工程で得られた発現レベルの測定値が対照値有意に異なることを指標とし、当該指標に基づいて検体における化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無或いはその発生程度を評価する工程であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載される方法により評価された、化学物質が有する四塩化炭素様の毒性の有無又はその量に基づき四塩化炭素様の毒性を有する化学物質を除去する工程を有することを特徴とする化学物質の探索方法。

【公開番号】特開2010−252684(P2010−252684A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106170(P2009−106170)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】