説明

化粧料

【課題】2種類以上の高分子化合物を含む干渉繊維を使用せずとも、高彩度で光輝性に優れた外観を有するとともに(外観の高彩度感、外観の光輝性)、塗布した際には塗布部位にも高い彩度を付与することができ(化粧膜の高彩度感)、また、塗布部位の質感を光学的に変化させ、透明感や立体感を付与することのできる(塗布部位の質感改良効果)優れた化粧料を提供すること。
【解決手段】結晶性ポリマーからなり、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂フィルム、及び、結晶性ポリマーからなり、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかを含有することを特徴とする化粧料である。前記空洞含有樹脂フィルム及び/又は前記空洞含有樹脂繊維は、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有し、前記空洞含有樹脂フィルム及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の表面から所定の距離においては前記空洞が形成されていないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高彩度で光輝性に優れた外観を有するとともに、塗布した際には塗布部位にも高い彩度を付与することができ、また、塗布部位の質感を光学的に変化させ、透明感や立体感を付与することのできる優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マニキュア、アイライナー等のメイクアップ化粧料や、ファンデーション、チーク等のベースメイク化粧料、また、化粧水、乳液等のスキンケア化粧料などにおいて、爪や肌に塗布した際に、塗布部位に高い彩度を付与することができ、また、塗布部位の質感を光学的に変化させ、透明感や立体感を付与することができる化粧料が望まれるようになっている。また、このような化粧料は、その商品価値を高めるため、外観も高彩度で光輝性に優れたものであることが望まれる。
【0003】
このような課題を解決する観点から、従来では、例えば、着色された、屈折率の異なる2種類以上の高分子化合物を含む干渉繊維を含有する化粧料(特許文献1参照)などが提案されている。しかしながら、該技術では、2種類以上の高分子化合物を含む特殊な干渉繊維を使用する必要があり、また、所望の程度の効果を得るためには、比較的多量の干渉繊維を化粧料に含有させる必要があるという欠点があった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−314393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、2種類以上の高分子化合物を含む干渉繊維を使用せずとも、高彩度で光輝性に優れた外観を有するとともに(外観の高彩度感、外観の光輝性)、塗布した際には塗布部位にも高い彩度を付与することができ(化粧膜の高彩度感)、また、塗布部位の質感を光学的に変化させ、透明感や立体感を付与することのできる(塗布部位の質感改良効果)優れた化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の結晶性ポリマーからなるポリマー成形体(ポリマーフィルム)を、適度な温度条件下で高速延伸すると、空洞を含有する樹脂フィルムとなり、この延伸されたフィルム(空洞含有樹脂フィルム)は、細かく裁断して化粧料に配合することにより、その化粧料に前記したような優れた効果(外観の高彩度感、外観の光輝性、化粧膜の高彩度感、塗布部位の質感改良効果)を付与することができるという知見である。また、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の結晶性ポリマーからなる樹脂組成物を溶融紡糸し、適度な温度条件下で高速延伸すると、空洞を含有する樹脂繊維となり、この延伸された繊維(空洞含有樹脂繊維)も、短く裁断して化粧料に配合することにより、その化粧料に前記したような優れた効果(外観の高彩度感、外観の光輝性、化粧膜の高彩度感、塗布部位の質感改良効果)を付与することができるという知見である。
即ち、前記空洞含有樹脂フィルム、及び、前記空洞含有樹脂繊維は、樹脂層(PBTの場合、屈折率約1.5)と空洞層(空気層、屈折率1)からなる多重層構造をとるため、これらの層間の構造的な光干渉(構造発色)作用を有し、そのため、化粧料に配合した際には、その化粧料に高彩度で光輝性に優れた外観を付与することが可能となる。また、該化粧料を爪や肌に塗布した際には、塗布部位に高い彩度を付与することができ、また、塗布部位の質感を光学的に変化させ、透明感や立体感を付与することができるという効果を奏することが可能となる。
前記空洞含有樹脂フィルム、及び、前記空洞含有樹脂繊維は、PBT等の1種類の結晶性ポリマーのみからなり得るものであり、そのため、従来のように、2種類以上の高分子化合物を含む干渉繊維を使用せずとも、前記したような効果に優れた化粧料を提供することができる。また、前記空洞含有樹脂フィルム、及び、前記空洞含有樹脂繊維は、化粧料に対して少量の配合量であっても優れた効果を付与することができ、これらのことから、本発明の化粧料は、コスト性、製造性の点でも有利であると考えられる。
【0007】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 結晶性ポリマーからなり、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂フィルム、及び、結晶性ポリマーからなり、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかを含有し、前記空洞含有樹脂フィルム及び/又は前記空洞含有樹脂繊維は、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有しており、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルム及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルム及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係
[但し、Tは、前記空洞含有樹脂フィルムの断面における厚み及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の断面における半径の算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記空洞含有樹脂フィルムの厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択されるか、及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の半径を示す任意の一の線分を円周方向に360°回転させた領域内に存在する空洞の中から選択される]を満たしていること特徴とする化粧料である。
<2> 空洞含有樹脂フィルム、及び、空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかが、着色されてなる前記<1>に記載の化粧料である。
<3> 空洞の配向方向に直交する、前記空洞含有樹脂フィルムの厚み方向及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の長さ方向と直交する方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の化粧料である。
<4> 空洞含有樹脂フィルム、及び、空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかにおける結晶性ポリマーが、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類から選択される少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の化粧料である。
<5> 空洞含有樹脂フィルム、及び、空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかの含有量が、0.1〜65質量%である前記<1>から<4>のいずれかに記載の化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、2種類以上の高分子化合物を含む干渉繊維を使用せずとも、高彩度で光輝性に優れた外観を有するとともに(外観の高彩度感、外観の光輝性)、塗布した際には塗布部位にも高い彩度を付与することができ(化粧膜の高彩度感)、また、塗布部位の質感を光学的に変化させ、透明感や立体感を付与することのできる(塗布部位の質感改良効果)優れた化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(化粧料)
本発明の化粧料は、結晶性ポリマーからなり、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂フィルム、及び、結晶性ポリマーからなり、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかを含有し、必要に応じて適宜その他の成分を含有する。
【0010】
<空洞含有樹脂フィルム/空洞含有樹脂繊維>
以下、前記空洞含有樹脂フィルム、前記空洞含有樹脂繊維について、それぞれ順に説明する。前記空洞含有樹脂フィルム、前記空洞含有樹脂繊維はいずれも、結晶性ポリマーからなり、内部に空洞を含有することを特徴とするものである。前記空洞含有樹脂フィルム、前記空洞含有樹脂繊維がこれらの特徴を有していることにより、本発明の化粧料を、外観の高彩度感、外観の光輝性、化粧膜の高彩度感、塗布部位の質感改良効果に優れたものとして提供することが可能となる。
【0011】
<<空洞含有樹脂フィルム>>
−結晶性ポリマー(空洞含有樹脂フィルム)−
一般に、ポリマーは、結晶性ポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性ポリマーといえども100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、前記結晶性ポリマーとしては、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0012】
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン類(例えば、ポリプロピレンなど)、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリエステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PES、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、フッ素樹脂、などが挙げられる。その中でも、空洞含有樹脂フィルムの力学強度や製造の観点から、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類の少なくともいずれかが好ましく、ポリエステル類がより好ましい。また、これらのうち2種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
【0013】
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記結晶性ポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形状が安定し、均一に製膜しやすくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融製膜時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり、製膜時の溶融膜がレベリングされて凹凸を低減できたりする点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0014】
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記結晶性ポリマーの極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが0.4〜1.2であると、製膜されたフィルムの強度が高くなり、効率よく延伸することができる点で好ましい。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0015】
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記結晶性ポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40〜350℃が好ましく、100〜300℃がより好ましく、100〜260℃がより好ましい。前記融点が40〜350℃であると、通常の使用で予想される温度範囲で形を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製膜ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0016】
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記結晶性ポリマーの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜800,000がより好ましく、15,000〜70,000が更に好ましい。前記重量平均分子量が、5,000未満であると、フイルムとしての力学強度不足や、製造時に破断が起こりやすいことがあり、1,000,000を超えると、溶融しにくく製造適性がない。一方、前記重量平均分子量が、前記更に好ましい範囲内であると、力学特性や製造適性の点で有利である。
ここで、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC Gel Permeation Chromatography)法により測定することができる。
【0017】
−−ポリエステル樹脂−−
ここで、前記結晶性ポリマーのうち、力学強度や製造の観点から、特に好ましく用いられるポリエステル樹脂について説明する。
前記ポリエステル類(以下、「ポリエステル樹脂」と称する。)は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記結晶性ポリマーとして好適な前記ポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタエレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリペンタメチレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサメチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0018】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられる。
【0019】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0020】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の中では、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
【0021】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられ、中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0022】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0023】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時にボイド(空洞)を発現しやすいが、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・s以上であると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0024】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記IVが0.4〜1.2であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記IVが0.4〜1.2であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが0.4〜1.2であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0025】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、150〜300℃が好ましく、180〜270℃がより好ましい。
【0026】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0027】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0028】
また、前記ポリエステル樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加しても良い。
【0029】
このように、前記空洞含有樹脂フィルムは、前記したような結晶性ポリマーからなるものである。前記空洞含有樹脂フィルムとしては、少なくとも1種類の結晶性ポリマーからなるものが好ましく、また、1種類の結晶性ポリマーのみからなるものがより好ましい。
前記空洞含有樹脂フィルムは、従来技術においてボイド(空洞)を形成するために添加されていた無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、結晶性ポリマーのみから、簡便な工程で空洞を形成させることができるものである。更に、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。
【0030】
ここで、前記空洞含有樹脂フィルムは、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じて前記結晶性ポリマー以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、フィラー、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、難燃剤、離型剤、分散剤、カップリング剤、蛍光増白剤などが挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性ポリマー以外の成分(例えば、後記する各成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0031】
−空洞(空洞含有樹脂フィルム)−
前記空洞含有樹脂フィルムは、空洞を含有し、前記空洞の空洞含有率及び前記空洞のアスペクト比に特徴を有している。
前記空洞とは、前記空洞含有樹脂フィルム内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。
【0032】
前記空洞含有率とは、空洞含有樹脂フィルムの固相部分の総体積と含有される空洞の総体積の和に対する、前記含有される空洞の総体積を意味する。
前記空洞含有率としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、3体積%以上、50体積%以下が好ましく、5〜40体積%がより好ましく、10〜30体積%が更に好ましい。
ここで、前記空洞含有率は、比重を測定し、前記比重に基づいて算出することができる。
具体的には、前記空洞含有率は、下記の(1)式により求めることができる。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の空洞含有樹脂フィルムの密度)/(延伸前のポリマー成形体の密度)} ・・・(1)
【0033】
前記空洞のアスペクト比とは、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比を意味する。
前記空洞のアスペクト比としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
【0034】
図2A〜2Cは、空洞含有樹脂フィルムの空洞のアスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aは、空洞含有樹脂フィルムの斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【0035】
前記空洞含有樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)における空洞100の平均の厚みr(図2B参照)に相当する。また、「前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、前記第一の延伸方向に平行な断面(図2AにおけるB−B’断面)における空洞100の平均の長さL(図2C参照)に相当する。
【0036】
なお、前記第一の延伸方向とは、延伸が1軸のみの場合には、その1軸の延伸方向を示す。通常は、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
また、延伸が2軸以上の場合には、空洞形成を目的とした延伸方向のうち少なくとも1方向を示す。通常は、2軸以上の延伸においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われ、かつ、この縦延伸により空洞を形成することが可能であるため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
【0037】
ここで、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。同様に、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0038】
また、前記空洞含有樹脂フィルムは、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数P、結晶性ポリマー層と空洞層との屈折率差ΔN、及び、前記ΔNと前記Pとの積に、特徴を有している。
【0039】
前記空洞含有樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の個数」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)において、膜厚方向に含まれる空洞100の個数に相当する。
前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が更に好ましい。
ここで、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0040】
結晶性ポリマー層と空洞層との屈折率差ΔNは、具体的には結晶性ポリマー層の屈折率をN1として、空洞層の屈折率をN2とした際に、N1とN2との差であるΔN(=N1−N2)の値を意味する。ここで、より具体的には、結晶性ポリマー層の屈折率N1は、別途押し出し成形した、前記空洞含有樹脂フィルムと同じ種類の結晶性ポリマーからなり、空洞を含有しない樹脂フィルムを用いるか、あるいは前記空洞含有樹脂フィルムそのものをアッベ屈折計により測定することができる。なお、前記空洞含有樹脂フィルムにおける空洞部分の屈折率は、空洞を形成したフィルムを水中で切断した際に発生する気泡を分析した結果、空気であることが認められたため、空洞層の屈折率は空気の屈折率=N2の屈折率=1とすることができる。これらの差を算出し、ΔN(=N1−N2)を求めることができる。また、前記屈折率N1、N2は、波長589nmの光について測定することが好ましい。
前記ΔNと前記Pとの積は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。
【0041】
更に、前記空洞含有樹脂フィルムは、前記空洞を含有しつつも、従来において添加されていた、空洞を発現するための無機系微粒子、相溶しない樹脂、不活性ガスなどが添加されていないため、優れた表面平滑性を有している。
前記空洞含有樹脂フィルムの表面平滑性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.3μm以下が好ましく、Ra=0.25μm以下がより好ましく、Ra=0.1μm以下が更に好ましい。
【0042】
更に、前記空洞含有樹脂フィルムは、フィルム表面だけでなく、フィルム表面から所定の距離においても空洞が形成されていないことを特徴とする。
即ち、前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たす。
但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。
【0043】
前記「空洞の中心」とは、前記断面における空洞の断面形状が、真円である場合にはその中心を意味し、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
前記「空洞含有樹脂フィルムの表面」とは、厚み方向における、空洞含有樹脂フィルムの最外面を意味する。通常、前記空洞含有樹脂フィルムを載置したときの上面を意味する。
【0044】
具体的には、空洞含有樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像する。前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出する。厚みの算術平均値Tとして、ロングレンジ接触式変位計などを用いて測定された厚さを用いてもよい。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画する。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の空洞を選択する。なお、前記「空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に空洞含有樹脂成形体の表面に接したときの円の半径とする。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(1)式により算出する。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(1)
なお、前記「各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)」は、前記空洞含有樹脂フィルムが、湾曲していたり、応力がかかっていたりすると、正確に測定することができないため、測定の際には平面状に載置した状態で測定することが好ましい。
なお、図2Dは空洞の各中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
前記空洞含有樹脂フィルムは、このように、空洞を含有しつつも、空洞含有樹脂フィルムの表面近くに空洞が形成されていないため、優れた表面平滑性を有している。
【0045】
前記h(avg)が、h(avg)>T/100の関係を満たすことにより、前記空洞含有樹脂フィルムを含有する本発明の化粧料は、優れた光輝性を示す点で、有利である。
【0046】
また、前記空洞含有樹脂フィルムの厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、20〜50μmが更に好ましい。前記厚さが、20μm未満であると、空洞の数が少なくなり光輝性が悪化することがあり、150μmを超えると、剛性(スティフネス)が大きくなり、化粧品の調合がしにくく、また、厚みと幅の比が小さくなり化粧効果が低下することがある。一方、前記厚さが、前記更に好ましい範囲内であると、調合性や化粧性の点で、有利である。
【0047】
−性質(空洞含有樹脂フィルム)−
前記空洞含有樹脂フィルムは、その内部に前記空洞を有していることにより、例えば、光沢性などにおいて、様々な優れた特性を有している。言い換えると、前記空洞含有樹脂フィルムの態様(例えば、空洞の態様や、厚さなど)を変化させることで、光沢性などの特性を調節することができる。
【0048】
前記光沢性の指標となる光沢度は、JIS規格のZ8741に記載される定義に準ずる。
前記空洞含有樹脂フィルムの光沢度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、入射角60°以下で、波長400〜800nmの光を入射して測定したときに、60以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。ただし、前記入射角は、前記空洞含有樹脂フィルムの表面に対して垂直に入射する角度を0°とする。ここで、前記光沢度は、変角光沢計により測定することができる。
【0049】
−製造方法(空洞含有樹脂フィルム)−
前記空洞含有樹脂フィルムは、例えば、前記したような結晶性ポリマーからなるポリマー成形体を延伸することにより、製造することができる。
【0050】
なお、前記ポリマー成形体とは、前記結晶性ポリマーからなり、特に空洞を含有していないものを示し、例えば、ポリマーフィルム、ポリマーシートなどが挙げられる。
前記ポリマー成形体を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマーがポリエステル樹脂である場合には、溶融製膜方法により好適に製造することができる。また、前記ポリマー成形体の製造は、前記ポリマー成形体の延伸とは独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【0051】
前記ポリマー成形体の延伸では、前記ポリマー成形体が少なくとも1軸に延伸される。そして、前記延伸により、ポリマー成形体が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向に沿って配向した空洞が形成されることで、空洞含有樹脂フィルムが得られる。
【0052】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記ポリマー成形体を構成する少なくとも1種類の結晶性ポリマーが、複数種類の結晶状態からなり、延伸時に伸張し難い結晶を含む相で、硬い結晶間の樹脂が引きちぎられるような形で剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性ポリマーが1種類の場合だけではなく、2種類以上の結晶性ポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0053】
前記延伸の方法としては、特に制限はなく、例えば、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が挙げられるが、いずれの延伸方法においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われることが好ましい。
【0054】
一般に、縦延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の段数としては、1段以上であれば特に制限はないが、より安定して高速に延伸することができる点及び製造の歩留まりや機械の制約の点から、2段以上に縦延伸することが好ましい。また、2段以上に縦延伸することは、1段目の延伸によりネッキングの発生を確認したうえで、2段目の延伸により空洞を形成させることができる点においても、有利である。
ここで、前記ネッキングとは、前記ポリマー成形体の延伸時に生じるくびれ状の変形を意味する(高分子工学講座6 プラスチック成形加工 高分子学会編集、地人書院発行、昭和41年4月25日初版発行参照)。また、前記延伸時において、前記ポリマー形成体がくびれながら変形し、くびれ部分では急激に断面が減少する現象を「ネッキングが発現した」と定義する。
【0055】
前記縦延伸の延伸速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10mm/min以上であると、充分なネッキングを発現させやすい点で好ましい。また、前記延伸速度が、36,000mm/min以下であると、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。したがって、前記延伸速度が、10〜36,000mm/minであると、充分なネッキングを発現させやすく、かつ、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。
【0056】
より具体的には、1段延伸の場合の延伸速度としては、1,000〜36,000mm/minが好ましく、1,100〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。
【0057】
2段延伸の場合には、1段目の延伸を、ネッキングを発現させることを主なる目的とした予備的な延伸とすることが好ましい。前記予備的な延伸の延伸速度としては、10〜300mm/minが好ましく、40〜220mm/minがより好ましく、70〜150mm/minが更に好ましい。
【0058】
そして、2段延伸における、前記予備的な延伸(1段目の延伸)によりネッキングを発現させた後の2段目の延伸速度は、前記予備的な延伸の延伸速度と変えることが好ましい。前記予備的延伸によりネッキングを発現させた後の、2段目の延伸速度としては、600〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜15,000mm/minが更に好ましい。
【0059】
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
延伸温度をT(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが更に好ましい。
【0060】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上、{ガラス転移温度(Tg)+50}℃以下であると、空洞含有率が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすく、かつ、充分に空洞が発現する点で好ましい。
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0061】
なお、前記延伸において、空洞の発現の妨げにならない範囲で、横延伸はしてもよく、しなくてもよい。また横延伸をする場合には、横延伸を利用してフィルムを緩和させたり、熱処理を行ったりしてもよい。
また、延伸後の空洞含有樹脂フィルムは、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加えたりする等の処理をしても良い。
【0062】
図1は、空洞含有樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
図1に示すように、原料樹脂11は、押出機12(原料形状や、製造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングロール14で冷却固化されて、製膜される。製膜されたフィルム又はシートF(「ポリマー成形体」に相当する)は、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシートFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず)へ送られながら横に延伸されて、空洞含有樹脂フィルム(空洞含有樹脂成形体)1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、空洞含有樹脂フィルム(空洞含有樹脂成形体)1として使用してもよい。
【0063】
−−着色(空洞含有樹脂フィルム)−−
以上のようにして、空洞含有樹脂フィルムを得ることができる。また、前記空洞含有樹脂フィルムは、外観の高彩度、外観の光輝性、質感改良等の点で、更に着色されていることが好ましい。前記空洞含有樹脂フィルムを着色する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記フィルムを製造した後に、以下に示すような着色剤を使用し、常法に従い前記フィルムを着色してもよいし、また、前記フィルムの製造時において、結晶性ポリマーに予め着色剤を分散させておくことで、着色されたフィルムを直接製造してもよい。
【0064】
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、青色1号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号(1)、赤色105号(1)、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色227号、赤色230号(1)、赤色230号(2)、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、かっ色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色402号、黄色402号、黄色403号(1)、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、黒色401号等の水溶性のタール系色素、赤色202号、赤色218号、赤色223号、赤色226号、赤色228号、橙色201号、黄色201号、黄色205号、青色201号、青色204号、紫色201号、赤色404号、赤色405号、橙色401号、黄色401号、黄色404号、黄色405号、青色403号、青色404号等の水不溶性のタール系色素、クチナシ色素、ベニバナ色素、ウコン色素、パプリカ色素、アナトー色素、コチニール色素等の天然色素、酸性、塩基性色素、分散顔料、分散染料等が挙げられるが、中でも水溶性のタール系色素が着色性、安定性が高いため、顕著な化粧効果を得る点で好ましい。また、これらの着色剤は、1種又は2種以上を使用することが可能であり、種々の色調を演出することができる。
【0065】
−−サイズ(空洞含有樹脂フィルム)−−
また、前記空洞含有樹脂フィルムは、適度なサイズに裁断することで、本発明の化粧料に配合されることが望ましい。前記化粧料中に配合される前記空洞含有樹脂フィルムのサイズとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、幅及び長さとも、0.01〜5mmが好ましく、0.1〜3mmがより好ましく、0.2〜2mmが更に好ましい。前記空洞含有樹脂フィルムのサイズが、0.01mm未満であると、小さすぎて化粧効果が現れにくいことがあり、5mmを超えると、高彩度な化粧膜を付与できないことがある。一方、前記空洞含有樹脂フィルムのサイズが、前記更に好ましい範囲内であると、使用部位での化粧効果や、良好な使用性と均一な化粧膜の形成の点で有利である。
【0066】
前記空洞含有樹脂フィルムを前記したような好ましいサイズに裁断する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、MS SHREDDER 120MW (株)明光商会製を用いて裁断する方法などが挙げられる。
【0067】
−−含有量(空洞含有樹脂フィルム)−−
また、前記化粧料中、前記空洞含有樹脂フィルムの含有量としては、特に制限はなく、適用する化粧料の種類や所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜65質量%が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましく、0.3〜35質量%が更に好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、少量すぎて化粧効果が現れにくいことがあり、65質量%を超えると、重なり合ったりして、高彩度な化粧膜を有効に形成できないことがある。一方、前記含有量が、前記更に好ましい範囲内であると、使用部位での化粧効果や、良好な使用性と均一な化粧膜の形成の点で有利である。
【0068】
<<空洞含有樹脂繊維>>
−結晶性ポリマー(空洞含有樹脂繊維)−
前記空洞含有樹脂繊維において、前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記空洞含有樹脂フィルムにおいて使用され得る結晶性ポリマーと同様のものを使用することができる。それらの中でも、空洞含有樹脂繊維の力学強度や製造の観点から、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類の少なくともいずれかが好ましく、ポリエステル類がより好ましい。また、これらのうち2種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
なお、前記空洞含有樹脂繊維において好ましく用いられる、ポリエステル類(ポリエステル樹脂)の詳細については、前記空洞含有樹脂フィルムのポリエステル樹脂の項目に記載した通りである。
【0069】
前記空洞含有樹脂繊維における、前記結晶性ポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000Pa・sが好ましく、70〜750Pa・sがより好ましく、80〜450Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が、50〜1,000Pa・sであると、溶融紡糸時に口金から吐出される溶融紡糸の形状が安定し、均一に製糸しやすくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が、50〜1,000Pa・sであると、溶融紡糸時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり、製糸時の径が安定する点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0070】
前記空洞含有樹脂繊維における、前記結晶性ポリマーの極限粘度(IV:Intrinsic Viscosity)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.5が好ましく、0.6〜1.2がより好ましく、0.7〜1.0が更に好ましい。前記IVが、0.4〜1.5であると、製糸された糸の引っ張り強度が高くなり、効率よく延伸することができる。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0071】
前記空洞含有樹脂繊維における、前記結晶性ポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40〜350℃が好ましく、100〜300℃がより好ましく、150〜260℃が更に好ましい。前記融点が、40〜350℃であると、通常の使用で予想される温度範囲で径を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製糸ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0072】
前記空洞含有樹脂繊維における、前記結晶性ポリマーの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜800,000がより好ましく、15,000〜700,000が更に好ましい。前記重量平均分子量が、5,000未満であると、繊維としての力学強度不足や、延伸時に破断する懸念があり、1,000,000を超えると、延伸しにくい可能性があること、延伸しても空洞が発現しにくい懸念がある。一方、前記重量平均分子量が、前記更に好ましい範囲内であると、延伸プロセスの容易性と空洞の発現容易性の両立という点で好ましい。
ここで、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC Gel Permeation Chromatography)法により測定することができる。
【0073】
このように、前記空洞含有樹脂繊維は、前記したような結晶性ポリマーからなるものである。前記空洞含有樹脂繊維としては、少なくとも1種類の結晶性ポリマーからなるものが好ましく、また、1種類の結晶性ポリマーのみからなるものがより好ましい。
前記空洞含有樹脂繊維は、従来技術においてボイド(空洞)を形成するために添加されていた無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、結晶性ポリマーのみから、簡便な工程で空洞を形成させることができるものである。更に、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。
【0074】
ここで、前記空洞含有樹脂繊維は、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、前記空洞含有樹脂フィルムの項目で例示されたその他の成分が同様に挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性ポリマー以外の成分(例えば、後記する各成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0075】
−−空洞(空洞含有樹脂繊維)−−
前記空洞含有樹脂繊維は、空洞を有し、前記空洞の空洞含有率及び前記空洞のアスペクト比に特徴を有している。
前記空洞とは、前記空洞含有樹脂繊維内部に存在する、真空状態のドメインもしくは気相のドメインを意味する。
【0076】
前記空洞含有率とは、空洞含有樹脂繊維の固相部分の総体積と含有される空洞の総体積の和に対する、前記含有される空洞の総体積を意味する。
前記空洞含有率としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、3〜50体積%が好ましく、5〜40体積%がより好ましく、10〜30体積%が更に好ましい。
ここで、前記空洞含有率は、比重を測定し、前記比重に基づいて算出することができる。
具体的には、前記空洞含有率は、下記の(1)式により求めることができる。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の空洞含有樹脂繊維の密度)/(延伸前の繊維の密度)} ・・・(1)
【0077】
また、図4A〜4Cは、前記空洞含有樹脂繊維の空洞のアスペクト比を説明するための図であって、図4Aは、空洞含有樹脂繊維の斜視図であり、図4Bは、図4Aにおける前記空洞含有樹脂繊維のA−A’断面図であり、図4Cは、図4Aにおける前記空洞含有樹脂繊維のB−B’断面図である。
【0078】
前記空洞のアスペクト比とは、前記空洞の配向方向に直交する、空洞含有樹脂繊維の長さ方向と直交する方向における空洞100の平均の長さをr(μm)(図4B参照)とし、前記空洞の配向方向における空洞100の平均の長さをL(μm)(図4C参照)とした際のL/r比を意味する。
前記空洞のアスペクト比としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上であることが好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
【0079】
なお、前記空洞の配向方向とは、延伸が一軸のみの場合には、その一軸の延伸方向(第一の延伸方向)を示す。通常は、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記空洞の配向方向(第一の延伸方向)に相当する。
【0080】
また、前記空洞含有樹脂繊維は、その長さ方向に直交する任意の断面における繊維の断面積をX(μm)とし、前記断面における空洞の断面積をY(μm)としたとき、これらの比(Y/X)の平均が0.05以上、0.4以下であることが好ましい。
なお、前記断面における各断面積は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0081】
また、前記空洞含有樹脂繊維は、繊維の長さ方向と直交する方向の空洞の平均の個数P、結晶性ポリマー部と空洞との屈折率差ΔN、及び、前記ΔNと前記Pとの積に、特徴を有している。
前記繊維の長さ方向と直交する方向の空洞の個数とは、前記空洞含有樹脂繊維10の表面10aに直交し、かつ、前記空洞の配向方向に直交する方向を含む面(図4AにおけるA−A’断面)において、繊維の長さ方向と直交する方向に含まれる空洞100の個数を意味する。
また、前記結晶性ポリマー部とは、前記繊維において空洞以外の部分(結晶性ポリマーよりなる部分)を指す。
前記繊維の長さ方向と直交する方向の空洞の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が更に好ましい。
ここで、前記繊維の長さ方向と直交する方向の空洞の個数は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0082】
前記結晶性ポリマー部と空洞との屈折率差ΔNとは、具体的には、結晶性ポリマー部の屈折率をN1として、空洞の屈折率をN2とした際に、N1とN2との差であるΔN(=N1−N2)の値を意味する。ここで、より具体的には、結晶性ポリマー部の屈折率N1は、溶融紡糸した、前記空洞含有樹脂繊維と同じ種類の結晶性ポリマーからなり、空洞を含有しない樹脂繊維をアッベ屈折計及び透過型二光束干渉顕微鏡により測定することができる。なお、前記空洞含有樹脂繊維における空洞部分の屈折率は、空洞を形成した繊維を水中で切断した際に発生する気泡を分析した結果、空気であることが認められたため、空洞部の屈折率は空気の屈折率=N2の屈折率=1とすることができる。これらの差を算出し、ΔN(=N1−N2)を求めることができる。また、前記屈折率N1、N2は、波長589nmの光について測定することが好ましい。
前記ΔNと前記Pとの積は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。
【0083】
更に、前記空洞含有樹脂繊維は、前記空洞を有しつつも、従来技術において添加されていた、空洞を発現するための無機系微粒子、相溶しない樹脂などや不活性ガスを添加されていないため、優れた表面平滑性を有している。
前記空洞含有樹脂繊維の表面平滑性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.3μm以下が好ましく、Ra=0.25μm以下が更に好ましく、Ra=0.1μm以下が特に好ましい。
【0084】
更に、前記空洞含有樹脂繊維は、繊維表面だけでなく、繊維表面から所定の距離においても空洞が形成されていないことを特徴とする。
即ち、前記空洞含有樹脂繊維における、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂繊維の表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂繊維の表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たす。
但し、Tは、前記空洞含有樹脂繊維の断面における半径の算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記空洞含有樹脂繊維の半径を示す任意の一の線分を円周方向に360°回転させた領域内に存在する空洞の中から選択される。
【0085】
前記「空洞の中心」とは、前記断面における空洞の断面形状が、真円である場合にはその中心を意味し、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
前記「空洞含有樹脂繊維の表面」とは、繊維の長さ方向と直交する方向における、空洞含有樹脂繊維の最外面を意味する。
【0086】
具体的には、空洞含有樹脂繊維における、前記空洞の配向方向に直交する断面(図4D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像する。前記断面写真内において、半径の算術平均値Tを算出する。ここで、半径の算術平均値は、後述する手法により、繊維の断面の中心を求め、その中心から円周までの距離を半径とし、その任意の10本の距離を求め平均することにより求めることができる。
なお、前記繊維の断面の中心は、前記繊維の断面形状が、真円である場合にはその中心とし、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを繊維の断面の中心とする。
次に、前記断面写真内において、半径を示す任意の一の線分を描画し、更に、前記一の線分を、前記繊維の断面の中心を中心として、前記円周方向に360°回転させた領域を描画する。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
そして、前記半径を示す任意の一の線分を円周方向に360°回転させた領域内において、空洞の中心から空洞含有樹脂繊維の表面までの距離が最も短い10個の空洞を選択する。なお、前記「空洞の中心から空洞含有樹脂繊維の表面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に空洞含有樹脂繊維の表面に接したときの円の半径とする。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂繊維の表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(1)式により算出する。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(1)
なお、前記「各中心から前記空洞含有樹脂繊維の表面までの距離h(i)」は、前記空洞含有樹脂繊維が、湾曲していたり、応力がかかっていたりすると、正確に測定することができないため、測定の際には平面に載置した状態で測定することが好ましい。
なお、図4Dは空洞の各中心から空洞含有樹脂繊維の表面までの距離h(i)を具体的に説明するための図であって、図4Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
前記空洞含有樹脂繊維は、このように、空洞を含有しつつも、空洞含有樹脂繊維の表面近くに空洞が形成されていないため、優れた表面平滑性を有している。
【0087】
前記h(avg)が、h(avg)>T/100の関係を満たすことにより、前記空洞含有樹脂繊維を含有する本発明の化粧料は、優れた光輝性を示す点で、有利である。
【0088】
また、前記空洞含有樹脂繊維の太さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜20デニ−ル(以下、単に「D」と示す)が好ましく、0.05〜15Dがより好ましく、0.1〜13Dが更に好ましい。前記太さが、0.01D未満であると、空洞の数が少なくなり光輝性が悪化することがあり、20Dを超えると、剛性(スティフネス)が大きくなり、化粧品の調合がしにくくなることがある。一方、前記太さが、前記更に好ましい範囲内であると、調合性や化粧性の点で、有利である。
【0089】
−性質(空洞含有樹脂繊維)−
前記空洞含有樹脂繊維は、その内部に前記空洞を有していることにより、例えば、光沢性などにおいて、様々な優れた特性を有している。言い換えると、前記空洞含有樹脂繊維の態様(例えば、空洞の態様や、太さなど)を変化させることで、光沢性などの特性を調節することができる。
【0090】
前記空洞含有樹脂繊維の光沢度としては、前記空洞含有樹脂フィルムと同様に、60以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。ここで、前記光沢度は、変角光沢計により測定することができる。
【0091】
−製造方法(空洞含有樹脂繊維)−
前記空洞含有樹脂繊維は、例えば、前記したような結晶性ポリマーからなる樹脂組成物を溶融紡糸し、紡糸された該樹脂組成物を延伸することにより製造することができる。
【0092】
なお、前記樹脂組成物としては、結晶性ポリマーで形成され、ポリマー成分としては、該結晶性ポリマーのみであるが、ポリマー以外の成分としては、必要に応じて適宜選択した添加成分を含んでいてもよい。また、前記樹脂組成物の構造としては、その内部に空洞が形成されていなければ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記樹脂組成物の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフィルム状や、シート状などが挙げられる。
また、前記樹脂組成物の製造は、後述する紡糸工程や延伸工程と独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【0093】
前記紡糸は、前記樹脂組成物を、小さな孔が多数形成されたノズルから押し出して繊維状にすることにより行うことができ、紡糸方法として、例えば、溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸などが挙げられるが、これらの中でも、溶融紡糸が好ましい。
【0094】
前記溶融紡糸は、ポリマーを加熱溶融させて高温の粘稠な液状にしたものを、冷たい雰囲気(通常は冷空気)中へ紡出して引き伸ばし、固化させて繊維にする工程である。湿式紡糸や乾式紡糸に比べて工程が簡素であり、紡糸速度も格段に速くすることができるが、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、PBT、PTT、ポリ乳酸など、約300℃以下で溶融するポリマーに限られる。
【0095】
前記紡糸工程では、後工程である延伸工程にて紡糸された樹脂組成物の延伸を行うため、未延伸糸(UDY:undrawn yarn)を作製する工程とする。ここで、未延伸糸とは、繊維の形をしているが、分子鎖の配向度が低く、3〜4倍まで容易に伸ばすことができて元に戻らない糸をいい、通常、2,000m/分程度以下の紡糸速度で製造される。
【0096】
図3に示すように、上記のようにして得られた溶融紡糸した原糸21は、例えば、25〜150℃に調整された加熱炉30内に挿入され、ニップロール41と42の回転速度差をつけて引張力を付与することにより延伸し、ネッキングを起こすことにより空洞を有する繊維が作製される。場合によっては、加熱炉を除き、ニップロールを加温(25〜150℃)するだけでも同様の前記空洞含有樹脂繊維10を作製できる。図3中31はアニーリング処理炉、32は巻き取り部を表す。
具体的には、紡糸された前記樹脂組成物(未延伸糸)が少なくとも一軸に延伸される。そして、前記延伸工程により、樹脂組成物が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向を長軸とした空洞が形成されることで、前記空洞含有樹脂繊維10が得られる。
【0097】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記樹脂組成物を構成する少なくとも一種類の結晶性ポリマーが、延伸時に伸張し難い結晶を含む相で、硬い結晶間の樹脂が引きちぎられるような形で剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性ポリマーが一種類の場合だけではなく、二種類以上の結晶性ポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0098】
一般に、延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の延伸速度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜2,000m/minが好ましく、15〜1,000m/minがより好ましく、20〜1,000m/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10m/min以上であると、充分なネッキングを発現させやすい点で好ましい。また、前記延伸速度が、2,000m/min以下であると、均一な延伸がしやすくなり、糸が破断しづらくなり、特に、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせず、コストを低減できる点で好ましい。
【0099】
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
延伸温度をT(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)≦T≦(Tg+50)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)≦T≦(Tg+45)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)≦T≦(Tg+40)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが更に好ましい。
【0100】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)+50}℃以下であると、空洞が形成される体積割合が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすい点で好ましい。また、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上であると、充分に空洞が発現する点で好ましい。
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0101】
なお、前記延伸工程において、延伸後の樹脂組成物(空洞含有樹脂繊維)は、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加える等の処理をしたりしてもよい。
【0102】
−−着色(空洞含有樹脂フィルム)−−
以上のようにして、空洞含有樹脂繊維を得ることができる。また、前記空洞含有樹脂繊維は、外観の高彩度、外観の光輝性、質感改良等の点で、更に着色されていることが好ましい。前記空洞含有樹脂繊維を着色する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記繊維を製造した後に、以下に示すような着色剤を使用し、常法に従い前記繊維を着色してもよいし、また、前記繊維の製造時において、結晶性ポリマーに予め着色剤を分散させておくことで、着色された繊維を直接製造してもよい。
【0103】
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記空洞含有樹脂フィルムの場合と同様の着色剤を使用することができる。
【0104】
−−長さ(空洞含有樹脂繊維)−−
また、前記空洞含有樹脂繊維は、適度な長さに裁断することで、本発明の化粧料に配合されることが望ましい。前記化粧料中に配合される前記空洞含有樹脂繊維の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜5mmが好ましく、0.1〜3mmがより好ましく、0.2〜2mmが更に好ましい。前記空洞含有樹脂繊維の長さが、0.01mm未満であると、小さすぎて化粧効果が現れにくいことがあり、5mmを超えると、高彩度な化粧膜を付与できないことがある。一方、前記空洞含有樹脂繊維の長さが、前記更に好ましい範囲内であると、使用部位での化粧効果や、良好な使用性と均一な化粧膜の形成の点で有利である。
【0105】
前記空洞含有樹脂繊維を前記したような好ましい長さに裁断する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カミソリ等の刃物を用いて裁断する方法などが挙げられる。
【0106】
−−含有量(空洞含有樹脂繊維)−−
また、前記化粧料中、前記空洞含有樹脂繊維の含有量としては、特に制限はなく、適用する化粧料の種類や所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜65質量%が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましく、0.3〜35質量%が更に好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、少量すぎて化粧効果が現れにくいことがあり、65質量%を超えると、重なり合ったりして、高彩度な化粧膜を有効に形成できないことがある。一方、前記含有量が、前記更に好ましい範囲内であると、使用部位での化粧効果や、良好な使用性と均一な化粧膜の形成の点で有利である。
【0107】
<<空洞含有樹脂フィルム+空洞含有樹脂繊維>>
また、前記空洞含有樹脂フィルム、前記空洞含有樹脂繊維は、いずれか1種のみを単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。前記空洞含有樹脂フィルムと、前記空洞含有樹脂繊維との両者を併用する場合の、前記化粧料中の、前記空洞含有樹脂フィルム及び前記空洞含有樹脂繊維の合計含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜65質量%が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましく、0.3〜35質量%が更に好ましい。前記合計含有量が、0.01質量%未満であると、少量すぎて化粧効果が現れにくいことがあり、65質量%を超えると、重なり合ったりして、高彩度な化粧膜を有効に形成できないことがある。一方、前記合計含有量が、前記更に好ましい範囲内であると、使用部位での化粧効果や、良好な使用性と均一な化粧膜の形成の点で有利である。
【0108】
また、前記空洞含有樹脂フィルムと、前記空洞含有樹脂繊維との両者を併用する場合の、前記化粧料中の、前記空洞含有樹脂フィルムと、前記空洞含有樹脂繊維との含有量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、質量比で、空洞含有樹脂フィルム:空洞含有樹脂繊維=0.1:99.9〜99.9:0.1が好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、30:70〜70:30が更に好ましい。前記空洞含有樹脂フィルムの、前記空洞含有樹脂繊維に対する含有量比が、質量比で、0.001倍未満であると、フイルムによる一方向からの発色性が劣ることがあり、9990倍を超えると、フイルムによる一方向からの発色性が強くなり、質感が劣ることがある。一方、前記含有量比が、前記更に好ましい範囲内であると、一方向からの発色性と質感のバランスの点で、有利である。
【0109】
前記空洞含有樹脂フィルムは、見る方向により外観が変化するという特徴を有しており、そのため、審美性に優れ、更に平たいことから付着性等の効果に優れる点で、有利である。
また、前記空洞含有樹脂繊維は、どこから見ても同様な高彩度、光輝性が得られるという特徴を有しており、そのため、光輝性を調整する効果に優れる点で、有利である。
これらの空洞含有樹脂フィルム、空洞含有樹脂繊維はいずれも、本発明の化粧料に配合させる目的で、好適に使用することができる。
【0110】
<その他の成分>
前記化粧料に含有され得る前記その他の成分としては、特に制限はなく、通常化粧料に含有され得る成分の中から目的に応じて適宜選択することができ、具体的な成分の例としては、エモリエント感を付与するための、炭化水素、高級脂肪酸エステル、動植物油脂、シリコーン油、フッ素系油剤等の油性成分、モイスチュア感を付与するための、水溶性高分子、アルコール類、水等の水性成分、その他各種の効果を付与するための、界面活性剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料などが挙げられ、これらを適宜配合することができる。また、化粧料粉体として、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等の、通常化粧品に使用されるものを特に制限なく使用することができる。
【0111】
また、前記化粧料は、水や、水と(アルコールなどの)親水性有機溶剤との混合物(特に、水と、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどの2〜5個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖低級モノアルコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリオールとの混合物)を含んでいてもよい。また、前記化粧料の親水性相は、親水性であるC2エーテルや、C2〜C4アルデヒドを含有していてもよい。水や、水と親水性有機溶剤との混合物は、前記化粧料の全重量に対して、0〜90重量%(特に、0.1〜90重量%)含有されていることが好ましく、0〜60重量%(特に、0.1〜60重量%)含有されていることが好ましい。
【0112】
前記化粧料は、室温(通常は25℃)で液体である脂肪物質、(ろうなどの)室温で固体である脂肪物質、室温でペースト状である脂肪物質、ゴム、及びこれらの混合物などからなる脂肪相を含んでいてもよい。さらに、この脂肪相は、親油性有機溶剤を含有していてもよい。
【0113】
前記化粧料で使用することができる、一般にオイルと称される室温で液体である脂肪物質としては、例えば、動物由来の炭化水素油としてペルヒドロスクアレンなど、液体トリグリセリドとしてヘプタン酸又はオクタン酸のトリグリセリドなどの4〜10個の炭素原子を有する脂肪酸、植物性炭化水素油としてヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、ブドウ種子油、ゴマ油、アプリコット油、マカダミア油、ヒマシ油及びアボカド油、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、ホホバ油など、植物性炭化水素油としてシアバターなど、パラフィン油及びその誘導体、鉱物油として石油ゼリー、ポリデセン、パーリーム(parleam)などの水素化ポリイソブテンなど、合成由来の脂肪酸の合成エステルとして、パーセリン油(Purcellin oil)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−オクチルドデシル、エルカ酸2−オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル、脂肪族アルコールのヘプタン酸エステル、オクタン酸エステル、デカン酸エステル、ポリオールエステルとして、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールなど、ペンタエリトリトールエステルとして、オクチルドデカノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコールなど(12〜26個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとのエステル)、部分的に炭化水素−及び/又はシリコーンベースのフッ素化オイルとしてフェニルトリメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルメチルジメチルトリシロキサン、ジフェニルジメチコン、フェニルジメチコン、ポリメチルフェニルシロキサン、フェニル基を有するシクロメチコン(cyclomethicone)、ジメチコンなど、直鎖又は環式で、室温で液体又はペースト状であるポリメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンオイル、及び、これらの混合物などを挙げることができる。
【0114】
前記化粧料は、1種又は複数の化粧品的に許容される有機溶剤を、許容しうる毒性及び感触の範囲内で、含有していてもよい。
【0115】
前記化粧料中で使用することができる有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、エチル、ブチル、アミル、2−メトキシエチル、イソプロピルなどの酢酸エステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、5〜10個の炭素原子を有するアルデヒド、少なくとも3個の炭素原子を有するエーテル、及びこれらの混合物などを挙げることができる。
【0116】
さらに、前記化粧料は、前記したように、ゴム、ろうなどの、室温で固体又はペースト状の脂肪物質を含んでいてもよい。ろうは、炭化水素ベース、フッ素化物ベース、及び/又は、シリコーンベースであってもよく、植物、鉱物、動物、又は合成由来であってもよい。
【0117】
前記化粧料で使用できる「ろう」としては、例えば、天然物の蝋として蜜蝋、カルナウバろう又はカンデリラろう、パラフィン、微結晶ろう、セレシンろう又はオゾケライト、合成ろうとしてポリエチレン又はフィッシャー−トロプシュろう、16から45個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシジメチコーンなどのシリコーンろうなどを挙げることができる。
【0118】
前記化粧料で使用されるゴムは通常、高分子量のポリジメチルシロキサン(PDMS)、又は、セルロースゴム、又は、多糖類であり、ペースト状の物質は通常、ラノリン及びその誘導体、又は、PDMSなどの炭化水素化合物である。
【0119】
前記化粧料中の、前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
【0120】
<化粧料の製造方法>
前記化粧料の製造方法としては、特に制限はなく、後述する前記化粧料の剤型、種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、前記空洞含有樹脂フィルム及び前記空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかと、前記その他の成分とを、均一に混合することにより、製造することができる。前記混合に使用する装置としても、特に制限はなく、例えば、従来公知の混合装置等を、適宜利用することができる。
【0121】
<化粧料の剤型>
前記化粧料の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系、油性系、乳化系(油中水型、水中油型等)、粉体系、溶剤系のもの等が挙げられる。
また、前記化粧料の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固形、半固形、液状等が挙げられるが、中でもゲル状が好ましく、透明、半透明、不透明、それぞれの化粧料として使用することができる。
【0122】
<化粧料の種類>
前記化粧料の種類としては、特に制限はなく、目的に応じ適宜選択することができ、例えば、メイクアップ化粧料、ベースメイク化粧料、スキンケア化粧料などが挙げられる。具体的には、例えば、マスカラ、アイライナー、アイカラー、アイブロウ、口紅、マニキュア、ボディーカラー等のメイクアップ化粧料、ファンデーション、チークカラー、フェイスカラー、化粧用下地等のベースメイク化粧料、クリーム、乳液、化粧水等のスキンケア化粧料などが挙げられ、これらの中でも、前記化粧料は、高彩度な化粧膜を付与することができ、塗布部位の質感を光学的に変化させ、透明感や立体感を付与する化粧効果を奏することができることから、特にメイクアップ化粧料に好適である。また、前記化粧料は、効率的にメイクアップ化粧料や皮脂の汚れを落とすクレンジング料や、化学反応による染毛剤を使用することなく頭髪を多く見せたり太く見せたりすることができ、髪の質感を変えるとともに、頭髪に高彩度な化粧膜を付与できる頭髪用化粧料などにも適用することができる。
【実施例】
【0123】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全ての本発明の技術的範囲に包含される。
【0124】
(製造例1:空洞含有樹脂フィルム:ポリエステル)
極限粘度(IV)=0.72であるPBT1(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて245℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、6,000mm/minの速度で、はじめと同一方向に更に1軸延伸した。
以上のようにして、厚さ20μmの空洞含有樹脂フィルムを得た。なお、得られた空洞含有樹脂フィルムの空洞含有率は22体積%であり、空洞のアスペクト比はL/r=16であった。また、得られた空洞含有樹脂フィルムのh(avg)は7.0μmであった。前記空洞含有率及び前記空洞のアスペクト比の測定方法、並びに、前記h(avg)の測定方法は下記の通りである。
得られた空洞含有樹脂フィルムを、MS SHREDDER 120MW (株)明光商会製を用い、幅2mmのサイズに裁断し、更に、カミソリを用いて1mm(長さ)×2mm(幅)のサイズに裁断し、製造例1の空洞含有樹脂フィルムとして使用した。
【0125】
<空洞含有率の測定方法(フィルム)>
比重を測定し、この比重に基づいて算出した。
具体的には、空洞含有率を下記の(1)式により算出した。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の樹脂フィルムの密度)/(延伸前のポリマーフィルムの密度)} ・・・(1)
【0126】
<空洞のアスペクト比の測定方法(フィルム)>
樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2B参照)と、前記樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、前記縦延伸方向に平行な断面(図2C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において測定枠をそれぞれ設定した。この測定枠は、その枠内に空洞が50〜100個含まれるように設定した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
次に、測定枠に含まれる空洞の数を計測し、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の1個ずつの厚み(r)を測定し、その平均の厚さをrとした。また、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(L)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(2)式及び(3)式で表すことができる。
r=(Σr)/m ・・・(2)
L=(ΣL)/n ・・・(3)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0127】
<フィルム表面に最も近くに位置する空洞からフィルム表面までの距離の測定方法>
樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像した。
撮像の際には、前記樹脂フィルムを平面状に載置した状態で走査型電子顕微鏡にセットして撮像した。
前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出した。各樹脂フィルムにおいて算出された厚みの算術平均値Tは、キーエンス社製、ロングレンジ接触式変位計AF030(測定部)、AF350(指示部)を用いて測定された厚さ(前記製造例1の場合、20μm)と同じであった。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とした。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から樹脂フィルム上面までの距離が最も近い10個の空洞を選択した。なお、前記「空洞の中心から樹脂フィルム上面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に樹脂フィルムの表面に接したときの円の半径とした。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記樹脂フィルムの上面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(4)式により算出した。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(4)
【0128】
(製造例2:空洞含有樹脂フィルム:ポリオレフィン)
アイソタクティック ポリプロピレン(ポリプロピレン100%樹脂、Aldrich社製、重量平均分子量19万、数平均分子量5万、MFI:35g/10min(ASTM D1238、230℃・2.16kg)、Tm:170〜175℃)を、溶融押出機を用いて210℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約150μmのポリマーフィルムを得た。このポリマーフィルムを1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、35℃の加温雰囲気下で、12,000mm/minの速度で、1段で1軸延伸し、50μm厚の空洞含有樹脂フイルムを得た。
なお、得られた空洞含有樹脂フィルムの空洞含有率は32体積%であり、空洞のアスペクト比はL/r=55であった。また、得られた空洞含有樹脂フィルムのh(avg)は1.3μmであった。前記空洞含有率及び前記空洞のアスペクト比の測定方法、並びに、前記h(avg)の測定方法は前記の通りである。
得られた空洞含有樹脂フィルムを、MS SHREDDER 120MW (株)明光商会製を用い、幅2mmのサイズに裁断し、更に、カミソリを用いて1mm(長さ)×2mm(幅)のサイズに裁断し、製造例2の空洞含有樹脂フィルムとして使用した。
【0129】
(製造例3:空洞含有樹脂フィルム:ポリアミド)
相対粘度2.7、MI=2であるナイロンMXD6 S6007(三菱ガス化学(株)製)(ポリアミド類)を、溶融押出機を用いて260℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、80℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、6,000mm/minの速度で、はじめと同一方向に更に1軸延伸し、35μm厚の空洞含有樹脂フイルムを得た。
なお、得られた空洞含有樹脂フィルムの空洞含有率は16体積%であり、空洞のアスペクト比はL/r=55であった。また、得られた空洞含有樹脂フィルムのh(avg)は8.7μmであった。前記空洞含有率及び前記空洞のアスペクト比の測定方法、並びに、前記h(avg)の測定方法は前記の通りである。
得られた空洞含有樹脂フィルムを、MS SHREDDER 120MW (株)明光商会製を用い、幅2mmのサイズに裁断し、更に、カミソリを用いて1mm(長さ)×2mm(幅)のサイズに裁断し、製造例3の空洞含有樹脂フィルムとして使用した。
【0130】
(製造例4:着色空洞含有樹脂フィルム)
製造例1と同様の手法で得た厚さ50μmの空洞含有樹脂フィルムに対して、0.1質量%の着色剤(青色1号)を使用し、常法に従い着色した。これを、MS SHREDDER 120MW (株)明光商会製を用い、幅2mmのサイズに裁断し、更に、カミソリを用いて1mm(長さ)×2mm(幅)のサイズに裁断し、製造例4の着色空洞含有樹脂フィルムとして使用した。
【0131】
(製造例5:空洞含有樹脂繊維)
ポリブチレンテレフタレート100%樹脂PBT2(富士フイルム株式会社内で作製)の極限粘度(IV)をウベローデ型粘度計により測定したところ、0.8であった。前記PBT2を、溶融紡糸機を用いて245℃で口金から押出し、樹脂組成物(未延伸糸)を得た。
次に、得られた(未延伸糸)を45℃の加温雰囲気下で、200m/minの速度で一軸延伸(倍率:5倍)し、ネッキングが発生したことを確認した後、200m/minの速度で、初めと同一方向に同一倍率で繊維を作製した。
以上のようにして、太さ30μm(半径)の空洞含有樹脂繊維を得た。なお、得られた空洞含有樹脂繊維の空洞含有率は22体積%であり、空洞のアスペクト比はL/r=23であった。また、得られた空洞含有樹脂繊維のh(avg)は6.4μmであった。前記空洞含有率及び前記アスペクト比の測定方法、並びに、前記h(avg)の測定方法は下記の通りである。
得られた空洞含有樹脂繊維を、カミソリを用いて2mmの長さに裁断し、製造例5の空洞含有樹脂繊維として使用した。
【0132】
<空洞含有率の測定方法(繊維)>
比重を測定し、この比重に基づいて算出した。
具体的には、空洞含有率を下記の(1)式により算出した。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の空洞含有樹脂繊維の密度)/(延伸前の繊維の密度)} ・・・(1)
【0133】
<空洞のアスペクト比の測定方法(繊維)>
繊維の表面に直交し、かつ、縦延伸方向に直交する断面(図4B参照)と、前記繊維の表面に直交し、かつ、前記縦延伸方向に平行な断面(図4C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3,000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において計測枠をそれぞれ設定した。この計測枠は、その枠内に空洞が50〜100個含まれるように設定した。
次に、計測枠に含まれる空洞の数を計測し、前記縦延伸方向に直交する断面の計測枠(図4B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記縦延伸方向に平行な断面の計測枠(図4C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記縦延伸方向に直交する断面の計測枠(図4B参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(r)を測定し、その平均の長さをrとした。また、前記縦延伸方向に平行な断面の計測枠(図4C参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(L)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(2)式及び(3)式で表すことができる。
r=(Σr)/m ・・・(2)
L=(ΣL)/n ・・・(3)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0134】
<繊維表面に最も近くに位置する空洞から繊維表面までの距離の測定方法>
前記空洞含有樹脂繊維における、前記空洞の配向方向に直交する断面(図4D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像した。撮像の際には、前記樹脂繊維を平面に載置した状態で走査型電子顕微鏡にセットして撮像した。
前記断面写真内において、半径の算術平均値Tを算出した。半径の算術平均値Tは、後述する手法により、繊維の断面の中心を求め、その中心から円周までの距離を半径とし、その任意の10本の距離を求め平均することにより求めた。すなわち前記繊維の断面の中心は、前記繊維の断面形状が、真円である場合にはその中心とし、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを繊維の断面の中心とした。
次に、前記断面写真内において、半径を示す任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線を円周方向に360°回転させた領域を描画した。
また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とした。
そして、前記半径を示す任意の一の直線を円周方向に360°回転させた領域内において、空洞の中心から樹脂繊維表面までの距離が最も近い10個の空洞を選択した。なお、前記「空洞の中心から樹脂繊維表面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に樹脂繊維の表面に接したときの円の半径とした。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記樹脂繊維の表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(4)式により算出した。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(4)
【0135】
(製造例6:着色空洞含有樹脂繊維)
製造例5と同様の手法で得た太さ30μm(半径)の空洞含有樹脂繊維に対して、0.1質量%の着色剤(青色1号)を使用し、常法に従い着色した。これを、カミソリを用いて2mmの長さに裁断し、製造例6の着色空洞含有樹脂繊維として使用した。
【0136】
(比較製造例1:ポリエチレンテレフタレート)
市販のPETフィルム(テロトンフィルム G2 厚さ25μm 帝人製)を用い、MS SHREDDER 120MW (株)明光商会製を用い、幅2mmのサイズに裁断し、更に、カミソリを用いて1mm(長さ)×2mm(幅)のサイズに裁断し、比較製造例1のポリエチレンテレフタレートとして使用した。
なお、前記ポリエチレンテレフタレートは空洞を含有しないことを、走査型電子顕微鏡(S−4800日立ハイテクノロジー社製)により確認した。
【0137】
(比較製造例2:着色ポリエチレンテレフタレート)
比較製造例1と同じポリエチレンテレフタレートに対して、0.1質量%の着色剤(青色1号)を使用し、常法に従い着色した。これを、MS SHREDDER 120MW (株)明光商会製を用い、幅2mmのサイズに裁断し、更に、カミソリを用いて1mm(長さ)×2mm(幅)のサイズに裁断し、比較製造例2の着色ポリエチレンテレフタレートとして使用した。
なお、前記着色ポリエチレンテレフタレートは空洞を含有しないことを、走査型電子顕微鏡(S−4800日立ハイテクノロジー社製)により確認した。
【0138】
(比較製造例3:着色繊維)
ポリエチレンテレフタレート、及び、ナイロンを、特開平11−1829号公報に記載の手法に従い、交互に51層積層し、これを、0.1質量%の着色剤(青色1号)で着色した繊維を準備した(6D、2mm)(青色の干渉光を呈する)。これを、比較製造例3の着色繊維として使用した。
なお、前記着色繊維は空洞を含有しないことを、走査型電子顕微鏡(S−4800日立ハイテクノロジー社製)により確認した。
【0139】
[実施例1〜7、比較例1〜4]
表1に示す処方に従い、実施例1〜7及び比較例1〜4の化粧料(マニキュア)を調製した。具体的には、アルキッド樹脂(テスラック2053−70 日立化成ポリマー社製)、酢酸エチル(和光純薬製)、酢酸ブチル(和光純薬製)を混合溶解した後、空洞含有樹脂フィルム若しくは空洞含有樹脂繊維(実施例1〜7)、又はそれらとの比較成分(比較例1〜4)を加え、均一に混合した。得られた混合物を容器(試薬用ガラス瓶10ml)に充填し、製品とした。
【0140】
得られた各化粧料について、(1)化粧料(マニキュア)の外観に高い彩度を付与する効果(外観の高彩度感)、(2)化粧料(マニキュア)の外観に光輝性を付与する効果(外観の光輝性)、(3)使用部位(マニキュアを塗布した爪)に高い彩度を付与する効果(化粧膜の高彩度感)、(4)使用部位(マニキュアを塗布した爪)に透明感、立体感を付与する効果(質感改良効果)について、下記の方法により官能評価を行った。
10名の官能検査パネルにより、各化粧料について、前記(1)〜(4)の各項目を、下記評価基準に従い7段階に評価した。更に、10名のパネルの平均点に基づき、前記(1)〜(4)の各項目を下記判定基準に従い判定した。結果を表1に示す。
【0141】
−評価基準−
6点:非常に良い。
5点:良い。
4点:やや良い。
3点:普通。
2点:やや悪い。
1点:悪い。
0点:非常に悪い。
−判定基準−
◎:10名の平均点が5点を超える。
○:10名の平均点が3点を超えて5点以下。
△:10名の平均点が2点を超えて3点以下。
×:10名の平均点が2点以下。
【0142】
【表1】

【0143】
表1の結果から、実施例1〜7の化粧料は、比較例1〜4の化粧料に比べ、外観の高彩度感、外観の光輝性、化粧膜の高彩度感、質感改良効果に優れた化粧料であることがわかった。また、実施例1〜7の化粧料は、前記したような効果に優れるのみならず、その使用性や、化粧膜の均一性にも優れたものであった。
【0144】
なお、前記空洞含有樹脂フイルム(未着色又は着色、製造例1〜4)は、着色繊維(ポリエチレンテレフタレート及びナイロンを特開平11−1829号公報に従い、交互に51層積層したもの)(比較製造例3)よりも、フィルムのアスペクト比が大きい(着色繊維の3.5に対し、空洞含有樹脂フィルムは厚みが0.02mm、幅2mmなので100)ことから、少量でも高彩度感などに優れる。なお、ここでは、前記空洞含有樹脂フィルムのアスペクト比とは、幅/厚みの比のことであり、前記着色繊維のアスペクト比とは、繊維の断面が扁平な場合、その断面の扁平率(長軸/短軸の比)のことである。
また、前記空洞含有樹脂繊維(未着色又は着色、製造例5〜6)は、繊維のアスペクト比(繊維の断面が扁平な場合、その断面の扁平率(長軸/短軸の比))が3.5未満であるため、高彩度感などは前記空洞含有樹脂フィルム(製造例1〜4)に比べるとやや不足であるが、あらゆる方向に反射するため、着色繊維(ポリエチレンテレフタレート及びナイロンを特開平11−1829号公報に従い、交互に51層積層したもの)(比較製造例3)よりも、同量以下で光輝性や質感改良効果に優れる。
【0145】
[実施例8〜9、比較例5〜6]
表2に示す処方に従い、実施例8〜9及び比較例5〜6の化粧料(アイライナー)を調製した。具体的には、アクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体エマルジョン 固形分40質量%(富士フイルム株式会社内で作製)、蒸留水(富士フイルム株式会社内で作製)、トリエタノールアミン(和光純薬製)、カーボンブラックMA100(三菱化学製)、グリセリン(和光純薬製)、フェノキシエタノール(和光純薬製)を混合溶解した後、空洞含有樹脂フィルム若しくは空洞含有樹脂繊維(実施例8〜9)、又はそれらとの比較成分(比較例5〜6)を加え、均一に混合した。得られた混合物を容器(試薬用ガラス瓶10ml)に充填し、製品とした。
【0146】
得られた各化粧料について、(1)化粧料(アイライナー)の外観に高い彩度を付与する効果(外観の高彩度感)、(2)化粧料(アイライナー)の外観に光輝性を付与する効果(外観の光輝性)、(3)使用部位(アイライナーを塗布した肌)に高い彩度を付与する効果(化粧膜の高彩度感)、(4)使用部位(アイライナーを塗布した肌)に透明感、立体感を付与する効果(質感改良効果)について、下記の方法により官能評価を行った。
10名の官能検査パネルにより、各化粧料について、前記(1)〜(4)の各項目を、下記評価基準に従い7段階に評価した。更に、10名のパネルの平均点に基づき、前記(1)〜(4)の各項目を下記判定基準に従い判定した。結果を表2に示す。
【0147】
−評価基準−
6点:非常に良い。
5点:良い。
4点:やや良い。
3点:普通。
2点:やや悪い。
1点:悪い。
0点:非常に悪い。
−判定基準−
◎:10名の平均点が5点を超える。
○:10名の平均点が3点を超えて5点以下。
△:10名の平均点が2点を超えて3点以下。
×:10名の平均点が2点以下。
【0148】
【表2】

【0149】
表2の結果から、実施例8〜9の化粧料は、比較例5〜6の化粧料に比べ、外観の高彩度感、外観の光輝性、化粧膜の高彩度感、質感改良効果に優れた化粧料であることがわかった。また、実施例8〜9の化粧料は、前記したような効果に優れるのみならず、その使用性や、化粧膜の均一性にも優れたものであった。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、空洞含有樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
【図2A】図2Aは、空洞含有樹脂フィルムのアスペクト比を具体的に説明するための図であって、空洞含有樹脂フィルムの斜視図である。
【図2B】図2Bは、空洞含有樹脂フィルムのアスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、空洞含有樹脂フィルムのアスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【図2D】図2Dは、空洞の各中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
【図3】図3は、空洞含有樹脂繊維の製造方法における延伸工程の一例を示す図である。
【図4A】図4Aは、空洞含有樹脂繊維のアスペクト比を具体的に説明するための図であって、空洞含有樹脂繊維の斜視図である。
【図4B】図4Bは、空洞含有樹脂繊維のアスペクト比を具体的に説明するための図であって、図4Aにおける空洞含有樹脂繊維のA−A’断面図である。
【図4C】図4Cは、空洞含有樹脂繊維のアスペクト比を具体的に説明するための図であって、図4Aにおける空洞含有樹脂繊維のB−B’断面図である。
【図4D】図4Dは、空洞の各中心から空洞含有樹脂繊維の表面までの距離h(i)を具体的に説明するための図であって、図4Aにおける空洞含有樹脂繊維のA−A’断面図である。
【符号の説明】
【0151】
1 空洞含有樹脂フィルム(空洞含有樹脂成形体)
1a 空洞含有樹脂フィルムの表面
10 空洞含有樹脂繊維
10a 空洞含有樹脂繊維の表面
100 空洞
L 空洞の配向方向における空洞の長さ
r 空洞の配向方向に直交する、空洞含有フィルムの厚み方向又は空洞含有樹脂繊維の長さ方向と直交する方向における空洞の長さ
h(i) 空洞の中心から空洞含有樹脂フィルム又は空洞含有樹脂繊維の表面までの距離
T 空洞含有樹脂フィルムの空洞の配向方向に直交する断面における厚みの算術平均値又は空洞含有樹脂繊維の空洞の配向方向に直交する断面における半径の算術平均値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリマーからなり、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂フィルム、及び、結晶性ポリマーからなり、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかを含有し、前記空洞含有樹脂フィルム及び/又は前記空洞含有樹脂繊維は、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有しており、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルム及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルム及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係
[但し、Tは、前記空洞含有樹脂フィルムの断面における厚み及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の断面における半径の算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記空洞含有樹脂フィルムの厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択されるか、及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の半径を示す任意の一の線分を円周方向に360°回転させた領域内に存在する空洞の中から選択される]を満たしていること特徴とする化粧料。
【請求項2】
空洞含有樹脂フィルム、及び、空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかが、着色されてなる請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
空洞の配向方向に直交する、前記空洞含有樹脂フィルムの厚み方向及び/又は前記空洞含有樹脂繊維の長さ方向と直交する方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である請求項1から2のいずれかに記載の化粧料。
【請求項4】
空洞含有樹脂フィルム、及び、空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかにおける結晶性ポリマーが、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類から選択される少なくともいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の化粧料。
【請求項5】
空洞含有樹脂フィルム、及び、空洞含有樹脂繊維の少なくともいずれかの含有量が、0.1〜65質量%である請求項1から4のいずれかに記載の化粧料。

【図3】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate


【公開番号】特開2009−190987(P2009−190987A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31051(P2008−31051)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】