説明

化粧料

【課題】肌へのなじみの早さ、製剤安定性に優れる透明乃至半透明な化粧料を提供する。
【解決手段】(a)式(I)に示すシリコーン系界面活性剤(シリコーンポリエーテルコポリマー)と、(b)エチレンオキシド基の平均付加モル数が40〜80モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する、透明乃至半透明な化粧料。(a)成分は0.01〜3.0質量%、(b)成分は0.01〜5.0質量%配合するのが好ましい。


〔式(I)中、R1はC1-6のアルキル基、H;kは4〜20の数を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料に関する。さらに詳しくは、製剤安定性、肌へのなじみの早さに優れる透明乃至半透明な化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水をはじめとする皮膚化粧料は、皮膚に適度な潤いを与え、皮膚を健康に保つ目的で使用される。潤いを与える成分として保湿剤が広く用いられているが、保湿剤に加えて比較的水を多く含有する化粧料では、塗布時の皮膚への親和性が低く、肌の上ではじかれる傾向にあり、浸透感が悪く感じられる問題があった。このような問題に対し従来は、エタノールを添加するといった方法のほか、デキストラン若しくはデキストラン誘導体を配合する(特許文献1)、油中水型化粧料の剤型を選択する(特許文献2)、ラフィノースと寒天を組み合わせて一定量配合する(特許文献3)等の方法が採られてきた。しかしこれら従来の方法では、安全性への懸念(肌にしみる等)やアルコール臭、効果が十分でない、剤型の選択肢が限られるといった課題があった。
【0003】
ところで、特に水系皮膚化粧料においては、外観が半透明〜透明を呈するものが好まれる傾向がある。半透明〜透明な化粧料とするために乳化剤や可溶化剤(例えば、非イオン界面活性剤等)などを用いる方法などが挙げられるが、乳化剤、可溶化剤等の併用は、使用性等への悪影響が懸念される場合がある。
【0004】
したがって、半透明〜透明な外観とともに、使用性(肌へのなじみの早さ)を満足し、かつ、製剤安定性にも優れる化粧料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−059473号公報
【特許文献2】特開2004−161698号公報
【特許文献3】特開2007−269747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたもので、肌へのなじみの早さ、製剤安定性に優れる透明乃至半透明な化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、(a)下記式(I)で示されるシリコーン系界面活性剤と、(b)エチレンオキシド基の平均付加モル数が40〜80モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する、透明乃至半透明な化粧料を提供する。
【0008】

【0009】
〔式(I)中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基または水素原子を示し;kはエチレンオキシド基の平均付加モル数で4〜20の数を示す。〕
また本発明は、(a)成分の配合量が0.01〜3.0質量%である、上記化粧料を提供する。
【0010】
また本発明は、(b)成分の配合量が0.01〜5.0質量%である、上記化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、肌へのなじみの早さ、製剤安定性に優れる透明乃至半透明な化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
【0013】
本発明では(a)成分として下記式(I)で示されるシリコーン系界面活性剤を用いる。
【0014】

【0015】
式(I)中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基または水素原子を示す。好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、中でもメチル基が好ましい。
【0016】
kはエチレンオキシド基の平均付加モル数で、4〜20の数を示し、好ましくは8〜12の数を示す。kが4未満では製剤安定性が不十分となり、一方20を超えると肌へのなじみが悪くなる。
【0017】
(a)成分は公知の技術を用いて常法により製造することができる。例えば、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒中で、アルキルトリシロキサン、ポリオキシアルキレンなどを反応(ヒドロシリル化反応)させる。反応は窒素雰囲気下、還流条件下で行い、触媒は塩化白金酸などを用いる。この反応液から分液漏斗などで溶媒を除くことにより目的化合物を得ることができる。
【0018】
(a)成分はおもに肌へのなじみの早さに寄与し、その配合量は、本発明の化粧料全量中に0.01〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.02〜2.0質量%である。0.01質量%未満では、肌へのなじみの早さを十分満足し得る程度にまで得ることが難しい場合があり、一方、3.0質量%を超えて配合しても配合量増大に見合った効果が得られ難く、安定性に影響が出ることも考えられる。
【0019】
(b)成分はエチレンオキシド基の平均付加モル数が40〜80、好ましくは50〜70のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。付加モル数が40未満、あるいは80を超えると製剤安定性において満足のいく結果が得られなくなる。
【0020】
(b)成分はおもに半透明〜透明な外観や安定性等に寄与し、その配合量は、本発明の化粧料全量中に0.01〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜4.0質量%である。0.01質量%未満では製剤安定性が不十分であり、5.0重量%を越えると肌へのなじみが悪くなる傾向がある。
【0021】
従来技術の欄で記載したように、従来、水を比較的多く含む化粧料では、塗布時の皮膚への親和性が低く、肌の上ではじかれる傾向にあり、浸透感が悪く感じられる問題があった。本発明では(a)成分、(b)成分を組み合せることによって初めて、上記のような水系の化粧料であっても肌へのなじみの早さに優れるとともに、製剤安定性にも優れ、透明乃至半透明な外観も得ることができるという優れた効果を奏することができる。
【0022】
なお、本発明において「透明乃至半透明」とは、精製水の透明度を100とし、全く光の透過がない場合を0としたときの透明度20〜100の範囲のものをいう。牛乳様に白濁したエマルジョンは透明度15以下である。透明度の測定は常法によることができ、例えばデジタル測色色差計算機(スガ試験器(株)製)等を用いて行うことができる。
【0023】
本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分のほかに、通常化粧料に基剤として配合される保湿剤、界面活性剤(アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤等)、油分(炭化水素油、合成エステル油、シリコーン油、液体油脂、個体油脂、ロウ類等)、高級脂肪酸、高級アルコール、粉末成分、水溶性高分子(天然、半合成、合成)、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、糖類(単糖、オリゴ糖、多糖)、有機アミン、pH調整剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、その他の配合可能成分(例えば、防腐剤、消炎剤、美白剤、各種植物抽出物、賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、抗炎症剤など)を、必要に応じて適宜配合することができる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0024】
本発明の化粧料の剤型は、皮膚に適用可能であれば特に限定されるものでないが、化粧水、ローション、シート状基剤に含浸させる含浸液等が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。
【0026】
[透明性]
デジタル測色色差計算機(スガ試験器(株)製)を用いて測定した。コントロールとして蒸留水の透明度を100として、20〜98未満の範囲のものを半透明、98〜99.5未満の範囲のものを透明、99.5〜100の範囲のものを極めて透明と判定した。
【0027】
[製剤安定性]
0℃、室温、37℃、50℃での温度試験(1ヵ月間)を行い、次の基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:各試験温度で分離、透明度の変化等異常は全く認められなかった
○:50℃、1ヶ月でわずかに分離、透明度の変化等異常が認められたが、実用上問題ない程度であった
△:37℃、1ヶ月で分離、透明度の変化等異常が認められたが、室温、0℃温度下のものでは分離、透明度の変化等の異常は認められなかった
×:室温、0℃、1ヶ月で分離、透明度の変化等異常が認められた
【0028】
[肌へのなじみの早さ]
専門パネル(10名)により、実使用試験を実施し、肌へのなじみの早さについて官能評価を行った。下記採点基準による点数判定を行った。ここで、点数判定は、試料1(=おもに肌へのなじみの早さに寄与する(a)成分を配合せず、(b)成分のみを配合した試料1)をコントロールの試料として、評価の基準とした。なお、各パネルによる点数の総和をパネル人数で割った平均値を算出し、下記評価基準に従い、評価結果とした。
(採点基準)
+3:コントロールの試料に比べて、肌へのなじみが非常に早い
+2:コントロールの試料に比べて、肌へのなじみが早い
+1:コントロールの試料に比べて、肌へのなじみがやや早い
0:どちらともいえない
−1:コントロールの試料に比べて、肌へのなじみがやや遅い
−2:コントロールの試料に比べて、肌へのなじみが遅い
−3:コントロールの試料に比べて、肌へのなじみが非常に遅い
(評価基準)
◎:パネル10名の平均値が、+2.0点以上
○:パネル10名の平均値が、0.5以上2.0点未満
△:パネル10名の平均値が、−1.5点以上0.5点未満
×:パネル10名の平均値が、−1.5点未満
【0029】
(実施例1)
下記表1に示す試料1〜13を調製した。各試料は(1)〜(7)に該当する成分を混合し、これを別途(8)と(9)を混合したものに添加して調製した。
【0030】
得られた試料を用いて、上記評価方法に従い、透明性、製剤安定性、肌へのなじみの早さについて評価した。結果を表1に示す。なお、上述したように、肌へのなじみの早さについての評価は、試料1を基準にして行ったことから、表1中の試料1の「肌へのなじみの早さ」の評価を「−」として表した。
【0031】
表1中、「(a)成分(*1)」は上記式(I)で示すシリコーン系界面活性剤(式中、R1がメチル基、k=10を示す)を用いた。「(b)成分(*2)」はエチレンオキシド基の平均付加モル数が60モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いた。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の結果から明らかなように、(a)成分、(b)成分を組み合せることにより、半透明性〜透明性、製剤安定性、肌へのなじみの早さのすべてにおいて本発明効果が得られ、特に(a)成分、(b)成分を好適配合量範囲内で配合することにより、より一層優れた本発明効果を得ることができた。
【0034】
以下、さらに本発明化粧料の処方例を示す。以下において(a)成分、(b)成分は実施例1で用いたものと同様のものを用いた。
【0035】
[処方例1:化粧水]
(配 合 成 分) (質量%)
(1)グリセリン 2.0
(2)1,3−ブチレングリコール 4.0
(3)エタノール 1.0
(4)(a)成分 0.1
(5)(b)成分 0.2
(6)マリンコラーゲン 0.01
(7)フェノキシエタノール 0.3
(8)香料 0.3
(9)エデト酸三ナトリウム 0.03
(10)精製水 残余
〈製法〉
(1)〜(8)を混合し、これを別途(9)と(10)を混合したものに添加して、標題の化粧水を調製する。
【0036】
[処方例2:化粧水]
(配 合 成 分) (質量%)
(1)グリセリン 5.0
(2)1,3−ブチレングリコール 4.0
(3)(a)成分 0.2
(4)(b)成分 0.3
(5)L−アスコルビン酸2−グルコシド 0.01
(6)フェノキシエタノール 0.3
(7)香料 0.1
(8)エデト酸二ナトリウム 0.02
(9)精製水 残余
〈製法〉
(1)〜(7)を混合し、これを別途(8)と(9)を混合したものに添加して、標題の化粧水を調製する。
【0037】
[処方例3:化粧水]
(配 合 成 分) (質量%)
(1)グリセリン 3.0
(2)ソルビトール 4.0
(3)エタノール 2.0
(4)(a)成分 0.3
(5)(b)成分 0.3
(6)フェノキシエタノール 0.4
(7)香料 0.2
(8)トラネキサム酸 2.3
(9)エデト酸三ナトリウム 0.03
(10)精製水 残余
〈製法〉
(1)〜(7)を混合し、これを別途(8)〜(10)を混合したものに添加して、標題の化粧水を調製する。
【0038】
[処方例4:美容液]
(配 合 成 分) (質量%)
(1)グリセリン 3.0
(2)ソルビトール 4.0
(3)エタノール 2.0
(4)(a)成分 0.3
(5)(b)成分 0.3
(6)カルボキシビニルポリマー 0.1
(7)フェノキシエタノール 0.4
(8)香料 0.2
(9)水酸化カリウム 0.05
(10)エデト酸三ナトリウム 0.03
(11)精製水 残余
〈製法〉
(1)〜(8)を混合し、これを別途(9)〜(11)を混合したものに添加して、標題の美容液を調製する。
【0039】
[処方例5:美容液]
(配 合 成 分) (質量%)
(1)ジプロピレングリコール 4.0
(2)1,3−ブチレングリコール 4.0
(3)エタノール 1.0
(4)(a)成分 0.3
(5)(b)成分 0.5
(6)キサンタンガム 0.05
(7)フェノキシエタノール 0.3
(8)香料 0.1
(9)エデト酸二ナトリウム 0.03
(10)精製水 残余
〈製法〉
(1)〜(8)を混合し、これを別途(9)と(10)を混合したものに添加して、標題の美容液を調製する。
【0040】
[処方例6:化粧水]
(配 合 成 分) (質量%)
(1)グリセリン 3.0
(2)1,3−ブチレングリコール 2.0
(3)エタノール 1.0
(4)(a)成分 0.5
(5)(b)成分 0.2
(6)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
(7)フェノキシエタノール 0.3
(8)トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 1.0
(9)エデト酸三ナトリウム 0.03
(10)精製水 残余
〈製法〉
(1)〜(7)を混合し、これを別途(8)〜(10)を混合したものに添加して、標題の化粧水を調製する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、肌へのなじみの早さ、製剤安定性に優れる透明乃至半透明な化粧料が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(I)で示されるシリコーン系界面活性剤と、(b)エチレンオキシド基の平均付加モル数が40〜80モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する、透明乃至半透明な化粧料。

〔式(I)中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基または水素原子を示し;kはエチレンオキシド基の平均付加モル数で4〜20の数を示す。〕
【請求項2】
(a)成分の配合量が0.01〜3.0質量%である、請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
(b)成分の配合量が0.01〜5.0質量%である、請求項1または2記載の化粧料。

【公開番号】特開2011−116664(P2011−116664A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272658(P2009−272658)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】