説明

化粧材

【課題】非塩化ビニル樹脂系の化粧材であって、低分子の化学物質の表面からの浸透による層間剥離の低下を大きく抑制しつつ、印刷シワの発生を抑制した化粧材を提供すること。
【解決手段】アクリレート系共重合体樹脂を主成分とするバッカー層の上に、絵柄層及び/又はプライマー層、ポリオレフィン系樹脂層、アイオノマー樹脂層、を少なくともこの順に設けてなる化粧材において、前記中間樹脂層が厚み50〜90μmのポリプロピレン樹脂からなること、前記アイオノマー樹脂層の厚みが45〜85μmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内装用の床タイルなどに用いられる化粧材に関するものであり、特に化粧材全体として非塩化ビニル系樹脂からなり、表面に凹凸模様を付与した透明樹脂層を設けるなどの後工程においても安定的に製造可能となる化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
内装用として用いる化粧材には、燃焼時に塩化水素やダイオキシン等の毒性物質を発生し、火災時の問題や使用後の焼却処分による環境汚染問題があるポリ塩化ビニル系樹脂の使用は避けられるようになった。
【0003】
そこで、アクリレート系共重合体樹脂を主成分とするバッカー層の上に、絵柄層及び/又はプライマー層、アイオノマー樹脂層、を少なくともこの順に設けてなる化粧材が提案された。
【0004】
この化粧材は、アイオノマー樹脂がポリ塩化ビニル樹脂と非常に近い機械的・熱的特性を有することを利用したもので、ポリ塩化ビニル樹脂製化粧材と同等の性能が得られることは勿論、同一の製造設備を使用して従来通りの工程で製造可能であり、また燃焼時の有害物質発生の問題もないという優れた利点を有するものである。
【0005】
ところが、上記化粧材は、絵柄層等を保護するための上層を構成するアイオノマー樹脂が、そのポリ塩化ビニル樹脂に近似した機械的・熱的特性の要因でもある、金属イオンを介したイオン結合による比較的緩い分子間の結合(架橋)構造のために、低分子量の化学物質(特に極性化学物質)に対する遮断性(バリアー性)に乏しいので、表面に付着した汚染物等に含有される低分子量の化学物質が、アイオノマー樹脂からなる上層内を浸透して、絵柄層やプライマー層に至り、これらを劣化ないし変質させる場合があることが判明した。
【0006】
例えば、内装用の床タイルは、その表面の保護や艶の保持のために、その表面にワックスを塗布したり、使用中に表面に付着した汚染物の除去等の目的で、洗浄剤を使用して表面を洗浄したりされる場合が多い。ところが、こうしたワックスや洗浄剤には、例えば有機溶剤や可塑剤、界面活性剤等、各種の低分子量の化学物質が含まれている場合が多く、こうした低分子量の化学物質が、アイオノマー樹脂からなる上層内を浸透して、絵柄層やプライマー層に至り、これらのバインダー樹脂を劣化させて微細な剥離を生じて、表面から変色として観察されたり、層間剥離強度が著しく低下して、アクリレート系共重合体樹脂を主成分とするバッカー層からその上の層が剥離する場合があった。特に絵柄層は、着色のために顔料等の着色剤を含有し、相対的にバインダー樹脂分が少ないので、バインダー樹脂の劣化の影響を強く受けて、絵柄層内での凝集破壊により破断して内部に空隙を発生し、化粧材の表面から見た時の変色や、層間剥離強度の低下などの問題を発生し易い傾向にあった。
【0007】
そこで本発明者らは、絵柄層及び/又はプライマー層とアイオノマー樹脂層との間にポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂からなる中間樹脂層を設けることで、安定した高い層間密着性を有し、表面から浸透した化学物質による変色や剥離の問題をなくした。(特開2003−053920号公報、特開2004−017510号公報)
【0008】
ところでポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂からなる中間樹脂層は20〜40μm程度の厚みがあれば十分にその効果を発現するものであり、化粧材の意匠性やコストからしてこれらのものが好適に用いられる。しかしながら、化粧材の製造時に、中間樹脂層とアイオノマー樹脂層との層間の接着安定性が問題となって、これらを貼り合せてから中間樹脂層側に絵柄層及び/またはプライマー層を設ける場合、シワが発生しやすいという問題点が発生した。
【特許文献1】特開2003−053920号公報
【特許文献2】特開2004−017510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、非塩化ビニル樹脂系の化粧材であって、低分子の化学物質の表面からの浸透による層間剥離の低下を大きく抑制しつつ、印刷シワの発生を抑制した化粧材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこの課題を解決するものであり、すなわちその請求項1記載の発明はアクリレート系共重合体樹脂を主成分とするバッカー層の上に、絵柄層及び/又はプライマー層、ポリオレフィン系樹脂層、アイオノマー樹脂層、を少なくともこの順に設けてなる化粧材において、前記中間樹脂層が厚み50〜90μmのポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする化粧材である。
【0011】
またその請求項2記載の発明は、前記アイオノマー樹脂層の厚みが45〜85μmであることを特徴とする化粧材である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明により、中間樹脂層にポリプロピレン樹脂を用い、厚みを50〜90μmとすることで、非塩化ビニル樹脂系の化粧材であって、低分子の化学物質の表面からの浸透による層間剥離の低下を大きく抑制しつつ、ラミネートの安定性が向上し、絵柄層及び/またはプライマー層の印刷時におけるシワの発生を抑制することが可能となるという作用効果を奏する。
【0013】
またその請求項2記載の発明により、アイオノマー樹脂層の厚み45〜85μmとすることで、さらに製造工程上での安定性、層間接着性が向上し、絵柄層及び/またはプライマー層の印刷時におけるシワの発生を抑制することが可能となるという作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。
図1に本発明の化粧材の一実施例の断面の構造を示す。バッカー層1の上に、絵柄層3及び/又はプライマー層2と、中間樹脂層4と、アイオノマー樹脂層5とを有してなり、さらに必要に応じて表面に凹凸を有する第2アイオノマー樹脂層6を設けてなる。
【0015】
本発明におけるバッカー層1としては、アクリレート系共重合体樹脂を主成分とする樹脂シートが用いられる。バッカー層1は本発明の化粧材の支持体となるものであり、表面側に積層したアイオノマー樹脂からなる層との、硬度や熱伸縮性等のバランスから、エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂(EAA)、アイオノマー樹脂、またはそれらの混合物等のアクリレート系共重合体樹脂を主成分とするものを使用する。係る共重合体樹脂は、共重合組成によりシートの硬さが任意に変えられる利点があるので、本発明の化粧材に使用するのに適当である。特に、シートの硬さと柔軟性とのバランスを考慮すると、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(EMAA)を使用することが最も好ましい。また、必要に応じて例えば充填材や着色剤等の適宜の添加剤を含有させることは任意である。バッカー層1の厚みは特に限定されず任意であるが、化粧材全体の厚み等を考慮すると、通常500〜3000μm程度の厚さが適当である。
【0016】
本発明における絵柄層3及び/又はプライマー層2としては、一般的には、印刷等による所望の絵柄の意匠を付与するために、少なくとも絵柄層3が設けられる場合が多い。
絵柄層3のなす絵柄の種類は特に限定されず、例えば木目柄、石目柄、布目柄、砂目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等、所望により任意である。絵柄層3に使用する印刷インキの種類は特に限定されず、従来より係る化粧材に使用されている任意の印刷インキを使用することができる。具体的には、例えばポリ塩化ビニル樹脂系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂系、ブチラール系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系、ポリアミド系等のバインダー樹脂に、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加し、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整してなる、従来公知の任意の印刷インキが使用可能である。
【0017】
プライマー層2は、中間樹脂層4と絵柄層3、絵柄層3とバッカー層1、若しくは中間樹脂層4とバッカー層1を、相互に強固に接着させるために設けられるものである。従って、絵柄層3自体に中間樹脂層4とバッカー層1とを強固に接着させる機能があれば、プライマー層2は設けなくても良い。しかし、中間樹脂層4とバッカー層1とは相異なる材質からなる場合が多く、その際には、絵柄層3を両者に良好に接着させて、目的の化粧材に必要な層間密着性を得るためには、印刷インキの選択の幅が狭くなり、意匠的にも制約されてしまう。これに対し、中間樹脂層4と絵柄層3との間及び/又は絵柄層3とバッカー層1との間に、各種の樹脂に対する接着性に優れた樹脂からなるプライマー層2を設ければ、絵柄層3に任意の一般の印刷インキを使用しつつ、中間樹脂層4とバッカー層1との間に良好な層間密着性を確保することができる。また、絵柄層3を設けない場合にも、中間樹脂層4とバッカー層1とを良好に接着させるために、1層以上のプライマー層2を設けることが望ましい。
【0018】
プライマー層2の材質は中間樹脂層4、絵柄層3、バッカー層1の構成材料との接着性を勘案して適宜選定すれば良い。本発明において中間樹脂層4はポリプロピレン樹脂からなっているので、中間樹脂層4と絵柄層3との間に設けるプライマー層2としては、1液反応型ウレタン系樹脂などが適している。
【0019】
プライマー層2や絵柄層3の形成方法は特に限定されず、従来公知の任意の塗工方法や印刷方法を適宜適用して形成することができる。具体的には、塗工方法としては例えばグラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、バーコート法、ディップコート法、キスコート法、スプレーコート法、ダイコート法等、印刷方法としては例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、静電印刷法、無版印刷法等が適用可能であるが、化粧材の分野ではグラビア印刷法が最も一般的である。なお、プライマー層2としてホットメルト型の材質を使用する場合には、プライマー層2の形成はホットメルトコーティング法によるのが最も適当である。すなわち、樹脂の固形分比NVを5〜30%程度に調整した塗液を加温させながら塗工する。塗工方法は、上掲した従来公知の任意の手段を任意に適用して行うことができる。
【0020】
また、上記絵柄層3やプライマー層2の形成に先立ち、その印刷面又は塗工面に、例えばコロナ放電処理やグロー放電処理、電子線照射処理、イオンビーム照射処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、酸処理又はアルカリ処理等の表面処理を施すと、これによって樹脂表面に形成された水酸基やカルボキシル基等の活性水素基の作用により、絵柄層3やプライマー層2との間により強固な密着性が得られるので、非常に好適である。各プライマー層2の塗布量(乾燥後)は、0.1〜10g/m程度が適当であるが、勿論この範囲に限定されるものではない。
【0021】
本発明における中間樹脂層4としては、ポリプロピレン樹脂からなるものが用いられる。中間樹脂層4は、表面側のアイオノマー樹脂層5中を浸透してきた低分子量の化学物質が、絵柄層3やプライマー層2に到達して劣化、破壊させるのを防止するために、これら化学物質に対する遮断として設けられるものである。アイオノマー樹脂は、そのイオン架橋構造に起因して、石油系等の非極性化学物質に対する抵抗性は比較的に強いが、例えばアルコール類やグリコール類、エステル類、ケトン類、有機酸類、アミド類等の極性化学物質に対する抵抗性が比較的に弱いので、中間樹脂層4は、これら極性化学物質に対する抵抗性の強い樹脂から構成する必要がある。そこで、本発明においては、中間樹脂層4として、ポリプロピレンのフィルムを用いる。ポリプロピレンについては特に限定するものではなく、汎用性からいえばランダムポリプロピレンが使用可能であるが、耐熱性を考慮すればホモポリプロピレンが好適である。
【0022】
本発明における中間樹脂層4の厚さとしては、50〜90μmとする。好ましくは60〜80μmであり最適には70μm程度である。各種化学物質に対する遮蔽性は20〜40μm程度であれば十分であるが、後述するアイオノマー樹脂層5と貼り合せて前記絵柄層3及び/またはプライマー層2を設けるにあたり、印刷時にシワが発生するのを抑制するためには50μm以上が必要である。しかし90μmを超えるようであると化粧材としての柔軟性や弾力性を減殺してしまい特性を損なうものとなる。
【0023】
本発明におけるアイオノマー樹脂層5に用いられるアイオノマー樹脂としては、一般に有機及び無機の成分が共有結合とイオン結合によって結合されている樹脂のことである。本発明に特に好ましく使用されるアイオノマー樹脂としては、共重合体の分子間を金属イオンで架橋した樹脂が挙げられる。この場合の共重合体としてはアクリレート系共重合体、例えばエチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。金属イオンとしては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛等のイオンが挙げられる。アイオノマー樹脂を得るには、例えば、カルボキシル基を側鎖に有する単量体(例えばアクリル酸)を共重合させたエチレン系のポリマーに、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又は亜鉛等の金属の水酸化物、アルコキシド又は低級脂肪酸塩等を適当量添加して酸基を中和する方法が挙げられる。これにより、分子鎖に沿って分布するカルボキシル陰イオンが分子鎖間に存在する金属陽イオンと静電的に結合して一種の架橋を形成し、共重合体の分子間を金属イオンで完全に又は部分的に架橋した構造のアイオノマー樹脂が得られる。
【0024】
本発明に好ましく使用されるアイオノマー樹脂は、上述の共重合体樹脂であるため、その共重合組成によってシートの硬さが任意に選択でき、また金属イオンによる架橋結合は加熱により結合力が弱められ、冷却すると結合力が回復するというポリ塩化ビニル樹脂と非常に良く似た性質を有している。従って、上記アイオノマー樹脂を使用した本発明の化粧材は、例えば熱ラミネーション及びエンボス加工により製造されていた従来の塩化ビニル製の化粧材の製造設備を使用して、従来通りの工程で製造可能であるという利点がある。
【0025】
本発明におけるアイオノマー樹脂層5の厚さとしては、45〜85μmとするのが好適である。これによりさらに製造工程上での安定性、層間接着性が向上し、絵柄層及び/またはプライマー層の印刷時におけるシワの発生を抑制することが可能となる。前記の中間樹脂層と貼り合わせるのに同等あるいはやや薄い層厚であるのが好ましく、中間樹脂層が70μmとすると50μm程度が最適である。薄いと製造工程上での安定性、層間接着性に欠けるものとなり、85μmを超えるようであると化粧材としての柔軟性や弾力性を減殺してしまい特性を損なうものとなる。
【0026】
本発明の化粧材は、前記アイオノマー樹脂層5の表面にさらに必要に応じて表面に凹凸を有する第2アイオノマー樹脂層6などを適宜もうけることができる。
本発明の化粧材は、表面側の樹脂層が中間樹脂層4、アイオノマー樹脂層5、適宜設ける第2アイオノマー樹脂層6となるが、これらは必要に応じて紫外線吸収剤や光安定剤、熱安定剤等の適宜の添加剤を添加したものを、例えば押出し法、カレンダー法又はインフレーション法等の適宜の方法で、シート状に成形することにより得られる。中間樹脂層4とアイオノマー樹脂層5と第2アイオノマー樹脂層6の総厚は、本発明において特に限定されるものではないが、通常は100〜1000μm程度の厚さが適当である。
【0027】
次に、本発明の化粧材の製造方法について説明すると、基本的には従来のポリ塩化ビニル樹脂製の化粧材の場合と同様、熱ラミネーション法によって製造することができる。
具体的には、まず、中間樹脂層4に、アイオノマー樹脂層5、第2アイオノマー樹脂層6をラミネートにより貼り合わせる。その後、この中間樹脂層4側に絵柄層3及び/又はプライマー層2を形成する。最後にこれらをバッカー層1と重ね合わせ、これら全層を熱ラミネーション法により同時に貼り合わせて一体化する。
【0028】
熱ラミネーションの方法としては一般に、枚葉による多段プレス方式か、又は熱ロールを使用した連続熱ラミネーション方式が採用され、本発明の化粧材の製造にはいずれの方式も適用可能であるが、連続熱ラミネーション方式の方が生産性に優れ好適である。但し、アイオノマー樹脂層5と中間樹脂層4との層間にはウレタン型接着剤等を介在させることとなる。
【0029】
この接着剤を予めアイオノマー樹脂層5の下面に形成しておき、中間樹脂層4となるポリプロピレン樹脂クリアフィルムと熱ラミネートすると、十分な層間密着強度を得ることが困難であるので、接着剤は予め中間樹脂層4の上面に形成しておくのが好適である。ところが、係る如くして中間樹脂層4の上面に接着剤、下面にはバッカー層1との熱接着性に優れた絵柄層3及び/又はプライマー層2を形成すると、中間樹脂層4はその両面に接着性に富む樹脂層が形成されることになり、ブロッキングが発生し易いために巻取りでの取り扱いが困難になるという問題が発生する。この問題を回避するためには、表面側のアイオノマー樹脂層5をアイオノマー樹脂層5と第2アイオノマー樹脂層6の2層に分割し、予め中間樹脂層4とアイオノマー樹脂層5とを積層した中間積層体としておき、これをバッカー層1と第2アイオノマー樹脂層6との間に挟持して、熱ラミネーション法により積層する手法を採用するとよい。こうすれば、アイオノマー樹脂層5と第2アイオノマー樹脂層6とは同じアイオノマー樹脂であるから、これらの層間にホットメルト型接着剤等を介する必要なく、熱ラミネーション法で良好に接着可能であり、中間積層体の巻取り保存時にブロッキングが発生する心配もないので、作業性良く安定的に本発明の化粧材を製造することができる。
【0030】
以上の様にして得た化粧材の表面には、意匠性の向上又は滑り止め等の目的で、エンボスを施して凹部を形成してもよい。エンボスを施す方法としては、凹凸面を有するエンボス版又はエンボスロールを使用して加熱しつつ加圧する、従来公知のエンボス方法を用いることができる。なお、エンボスは上述の熱ラミネーションとは別工程で行うこともできるが、熱ラミネーションと同時に行うと、製造工程が短縮でき、熱エネルギーの無駄も低減できて、生産性が向上し製造原価が低減できるので有利である。
【0031】
本発明の化粧材は上述の様に、熱ラミネーション法により容易に製造することが出来るが、その製造設備としては、例えば熱ラミネーション及びエンボス加工により製造される従来のポリ塩化ビニル樹脂製の化粧材の製造設備等をそのまま適用することも可能であり、製造工程にも大きな変更はないから、新規設備投資の必要もなく容易且つ安価に製造可能である。
【実施例1】
【0032】
アイオノマー樹脂層5として厚さ50μmのアイオノマー樹脂フィルム(三井デュポンポリケミカル(株)製「ハイミラン」)を用い、中間樹脂層4として厚さ70μmのランダムポリプロピレン樹脂フィルム(リケンテクノス(株)製「OWCLEAR」)を用い、これらをドライラミネーション法により積層した。
次に、この中間樹脂層4側の面に、イソシアネート系硬化剤を3%添加した2液反応型ウレタン系プライマー(東洋インキ製造(株)製「ラミスターメジウム」)を使用してグラビアコート法により乾燥後の塗布量1g/mにプライマー層2を塗工し、ウレタン系印刷インキ(東洋インキ製造(株)製「ラミスター」)を使用してグラビア印刷法により絵柄層3を印刷した。
その後、このアイオノマー樹脂層5側の面に、厚さ700μmの第2アイオノマー樹脂層6としてアイオノマー樹脂シート(三井デュポンポリケミカル(株)製「ハイミラン」)を、この絵柄層3側の面に厚さ3mmのバッカー層1としてエチレン−酢酸レート系共重合体樹脂を主成分とするバッカーシートを、それぞれ重ね合わせ、ラミネート温度120℃の条件で連続ラミネーション方式により積層して貼り合わせると同時に、第2アイオノマー樹脂シート側の表面にエンボスロールをラミネート温度と同じ120℃で加圧してエンボスを施し、凹凸模様を付与し、本発明の化粧材を得た。
【0033】
<比較例1>
上記実施例1において、中間樹脂層4として厚み40μmのものを使用し、アイオノマー樹脂層4として厚み40μmのものを使用した以外は実施例1と同様にして、化粧材を得た。しかしながら、絵柄層3の形成により印刷シワが発生し、絵柄の意匠性を大きく欠くものとなった。また、ラミネート時にもシワが発生し、層間剥離強度も弱いものとなった。
【0034】
<比較例2>
上記実施例1において、中間樹脂層4として厚み100μmのものを使用し、アイオノマー樹脂層5として厚み100μmのものを使用した以外は実施例1と同様にして化粧材を得た。しかしながら化粧材として柔軟性、弾力性に欠けるものとなり、その後のVカット加工、ラッピング加工の困難なものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の化粧材は、屋内用の化粧材として、特に建築物の内装用の床タイルなどに好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の化粧材の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1…バッカー層
2…プライマー層
3…絵柄層
4…中間樹脂層
5…アイオノマー層
6…第2アイオノマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレート系共重合体樹脂を主成分とするバッカー層の上に、絵柄層及び/又はプライマー層、中間樹脂層、アイオノマー樹脂層、を少なくともこの順に設けてなる化粧材において、前記中間樹脂層が厚み50〜90μmのポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
前記アイオノマー樹脂層の厚みが45〜85μmであることを特徴とする請求項1記載の化粧材。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−307746(P2008−307746A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156442(P2007−156442)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】