説明

化粧材

耐擦傷性等の表面の耐久性、及び耐陥没性、耐水性、耐油性等の内部の耐久性の両者を両立させる化粧材を得ることを課題とする。
熱硬化性樹脂含浸紙の上に電離放射線硬化性樹脂塗工紙を積層し、加熱加圧して一体化せしめてなる化粧材であって、表面層Sとその裏面に積層一体化した基材層Bとからなり、表面層Sは、表面側から、少なくとも、電離放射線硬化性樹脂の硬化物からなる表面樹脂層2、熱硬化性樹脂の未硬化物の滲出を遮断する遮断層3、紙中に熱硬化性樹脂が含浸され且つ硬化されてなる含浸紙層1を積層してなり、基材層Bは、少なくともその最表面が、紙中に熱硬化性樹脂が含浸され且つ硬化されてなる含浸紙層からなる構成とする。電離放射線硬化性樹脂塗工紙の持つ耐擦傷性等の表面の耐久性と、熱硬化性樹脂化粧板の持つ耐陥没性、耐水性、耐油性等の内部の耐久性との両者の長所を両立させ、短所を相補ったものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材、家具等の表面化粧材に用いられる化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建材、家具等の表面化粧材として種々の構成のものがある。例えば、特許文献1,2には所謂熱硬化性樹脂化粧板が開示されている。この化粧板は、チタン白顔料を混抄した米坪量80〜120g/m程度のチタン紙に絵柄を印刷した上で、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂の未硬化物(プレポリマー、単量体)を含浸し、この含浸紙を、基板となるフェノール樹脂含浸紙(コアー紙)、木板等の上に重ねて、加熱加圧して該含浸樹脂を架橋硬化せしめると共に全層を積層一体化してなるものであり、耐擦傷性は不十分ではあるものの、耐摩耗性、耐水性、耐油性等の耐久性が良好であるという利点を有している。
【0003】
また、特許文献3,4には、坪量20〜30g/m程度の薄葉紙と、印刷形成した絵柄層と、熱硬化性樹脂塗料を塗工、硬化せしめてなる表面保護層とからなる層構成をした化粧材であって、木質板等の基板上に接着して使用するものが開示されている。その表面保護層とする熱硬化樹脂としてポリオールを主剤としイソシアネートを硬化剤として用いた2液硬化型ウレタン樹脂を用いる所謂ウレタン塗工紙、表面保護層とする熱硬化性樹脂としてアミノアルキッド樹脂を用いる所謂アミノアルキッド塗工紙等がある。
【0004】
このタイプの化粧材は、耐擦傷性及び耐摩耗性、耐水性、耐油性等の耐久性全般が熱硬化性樹脂化粧板よりも劣る上に、基材層が薄膜の紙であるため、熱硬化性樹脂化粧板と比べて耐陥没性が弱い。すなわち、打撲や衝撃的荷重を加えた場合、紙或いはその下地が軟質の場合は下地までもが陥没する。また、特に床材として使用した場合、キャスターによる局部的荷重による陥没が発生する。
【0005】
また、特許文献5〜7には、紙の上に絵柄層を設け、その絵柄層の上に電離放射線硬化性樹脂塗料を塗工、硬化せしめてなる表面保護層を設けてなる構成の化粧材であって、木質板等の基板上に接着して使用するものが開示されている。いずれも、不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリレート系のプレポリマー或いは単量体等からなる電離放射線硬化性樹脂塗料を塗工し、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して架橋、硬化せしめた塗膜から表面保護層を形成したもので、所謂電離放射線硬化性樹脂塗工紙と呼ばれる。
【0006】
この化粧材は、硬質の電離放射線硬化性樹脂を表面保護層として採用したため、耐擦傷性は良好である。また、電離放射線の照射により短時間(数秒程度以下)で塗膜の硬化が完了するので生産性が高い。特に、特許文献7に記載のものは、球状α−アルミナ粒子を表面保護層中に添加したため、熱硬化性樹脂化粧板と比べて耐擦傷性が同等以上で且つ耐摩耗性は上回る。しかしながら、基材層が薄膜の紙であるため、ウレタン塗工紙と同様に、熱硬化性樹脂化粧板と比べて耐陥没性、耐キャスター性が弱い。また、塗膜自体の耐水性や耐油性は良好なるも、一旦、塗膜のピンホール或いはコート紙の端面より紙中に水又は油が侵入すると、紙自体は耐水性及び耐油性が弱いため、コート紙全体としての耐水性及び耐油性は不十分である。
【0007】
以上の化粧材を総合評価すると、耐擦傷性等の表面の耐久性では電離放射線硬化性樹脂塗工紙が最も優れる。また、耐陥没性、耐水性、耐油性等の内部の耐久性の点では熱硬化性樹脂化粧板が最も優れる。よって、両者の長所、短所を相補うものとして、特許文献8,9に記載のように、まず熱硬化性樹脂化粧板を基材とし、その上に表面層として電離放射線硬化性樹脂塗工紙を積層したものが提案された。ただし、硬化済みの熱硬化性樹脂化粧板では熱硬化性樹脂の反応が終結しているため、その上に電離放射線硬化性樹脂塗工紙を積層しても十分な接着性はでない。また、吸収性があり強度も弱い紙層のところで耐水性、耐陥没性が低下する。そこで、未硬化の熱硬化性樹脂化粧板の表面に電離放射線硬化性樹脂塗工紙を、該塗工紙の紙層側が熱硬化性樹脂化粧板側を向くようにして載置し、プレス機にて加熱加圧して、熱硬化性樹脂化粧板の硬化と同時に電離放射線硬化性樹脂塗工紙を接着し、且つ熱硬化性樹脂を紙層の繊維中に浸透させ、投錨効果で両層の接着性を強化し、しかも紙層の強度を強化し、且つ吸水性も封じる構成としている。
【特許文献1】特公昭26−4540号公報
【特許文献2】特公昭37−6143号公報
【特許文献3】特公昭49−39166号公報
【特許文献4】特公昭59−1111号公報
【特許文献5】特公昭49−31033号公報
【特許文献6】特許第2856862号公報
【特許文献7】特許第2860779号公報
【特許文献8】特公昭58−7465号公報
【特許文献9】特公平5−64104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが上記特許文献8,9に記載の化粧材について検討した結果、さらに解決すべき課題が存在することが見出された。すなわち、加熱加圧工程(熱プレス)時に、電離放射線硬化性樹脂塗膜を透過して熱硬化性樹脂が化粧板の表面に滲出してくるため、意匠外観が低下するとともに、電離放射線硬化性樹脂塗膜が本来有する表面耐久性が損なわれるということである。
【0009】
本発明者らがこの現象を究明したところ、その原因は次のようであることが判明した。まず第1の原因は、加熱加圧時に、硬くて脆い電離放射線硬化性樹脂塗膜に微小な亀裂が入り、その亀裂を通して未硬化(硬化途中)の熱硬化性樹脂の未硬化物(プレポリマー或いは単量体)が塗膜を貫通してくることである。また第2の原因は、電離放射線硬化性樹脂の塗膜自体は高架橋密度で遮蔽性は高いが、現実に紙に塗工すると、紙の表面粗さが大であること及び紙の浸透性が高く且つ不均一であるため、塗膜には微小なピンホールが穿孔され、その穿孔を通じて熱硬化性樹脂の未硬化物が塗膜を貫通してくることである。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の化粧材のさらなる改良を目指し、耐擦傷性等の表面の耐久性、及び耐陥没性、耐水性、耐油性等の内部の耐久性の両者を両立させる化粧材を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明である化粧材は、表面層とその裏面に積層一体化した基材層とからなり、表面層は、表面側から、少なくとも、電離放射線硬化性樹脂の硬化物からなる表面樹脂層、熱硬化性樹脂の未硬化物の滲出を遮断する遮断層、紙中に熱硬化性樹脂が含浸され且つ硬化されてなる含浸紙層を積層してなり、基材層は、少なくともその最表面が、紙中に熱硬化性樹脂が含浸され且つ硬化されてなる含浸紙層からなることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明である化粧材は、請求項1に記載の化粧材において、遮断層が、含浸紙層を構成する紙の表面側内部に含浸されてなる含浸遮断層の形態からなることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明である化粧材は、請求項2に記載の化粧材において、表面樹脂層と含浸遮断層との間に絵柄インキ層を有することを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明である化粧材は、請求項1に記載の化粧材において、遮断層が、含浸紙層の表面側に存在し含浸紙中には含浸されていない独立遮断層の形態からなることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明である化粧材は、請求項4に記載の化粧材において、表面樹脂層と独立遮断層との間、或いは、独立遮断層と含浸紙層との間、のいずれかに絵柄インキ層を有することを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の発明である化粧材は、請求項1に記載の化粧材において、遮断層が、含浸紙層の表面側に存在し、含浸紙中には含浸されていない独立遮断層の形態と、含浸紙層を構成する紙の表面側内部に含浸されてなる含浸遮断層の形態との両方からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【0017】
請求項7に記載の発明である化粧材は、請求項6に記載の化粧材において、表面樹脂層と独立遮断層との間、或いは独立遮断層と含浸遮断層との間、のいずれかに絵柄インキ層を有することを特徴としている。
【0018】
請求項8に記載の発明である化粧材は、請求項1〜7のいずれかに記載の化粧材において、遮断層が、2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物からなることを特徴としている。
【0019】
請求項9に記載の発明である化粧材は、請求項1〜8のいずれかに記載の化粧材において、表面樹脂層が、アルキレンオキサイド変性重合性化合物を含む電離放射線硬化性樹脂の硬化物からなることを特徴としている。
【0020】
請求項10に記載の発明である化粧板は、請求項1〜9のいずれかに記載の化粧材と、被着基材とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の化粧材は、熱硬化性樹脂含浸紙と電離放射線硬化性樹脂塗工紙とを積層一体化することにより、電離放射線硬化性樹脂塗工紙の持つ耐擦傷性等の表面の耐久性と、熱硬化性樹脂化粧板の持つ耐陥没性、耐水性、耐油性等の内部の耐久性との両者の長所を両立させ、短所を相補ったものとなる。
【0022】
また、熱硬化性樹脂含浸紙と電離放射線硬化性樹脂塗工紙とを積層し、加熱加圧して一体化する際に発生する熱硬化樹脂の未硬化物が、電離放射線硬化性樹脂塗膜を貫通して滲出することが防止されるので、意匠外観が低下することなく、電離放射線硬化性樹脂塗膜の本来有する表面耐久性を損なうことがない。
【0023】
また、遮断層が独立遮断層の形態と含浸遮断層の形態の両方からなるタイプの化粧材にあっては、熱硬化性樹脂の未硬化物が電離放射線硬化性樹脂塗膜を貫通して滲出することを防止する効果がより確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る化粧材の基本構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の化粧材の一例を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の化粧材の一例を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の化粧材の一例を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の化粧材の一例を示す拡大断面図である。
【図6】本発明に係る化粧材の代表的な製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0025】
D 化粧材
S 表面層
B 基材層
1 含浸紙層
2 表面樹脂層
3 遮断層
3a 含浸遮断層
3b 独立遮断層
4 絵柄インキ層
11 紙層
11’ 含浸紙層
12 含浸遮断層
13 絵柄インキ層
14 独立遮断層
15 表面樹脂層
16 未硬化基材層
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の化粧材は、基本的には、熱硬化性樹脂含浸紙の上に電離放射線硬化性樹脂塗工紙を積層し、加熱加圧して一体化せしめることにより作製される。ただし、その際に、電離放射線硬化性樹脂塗工紙の層構成において、紙と電離放射線硬化性樹脂塗膜との間に、熱硬化性樹脂の未硬化物(プレポリマー、或いは単量体)を遮断する性質を持った遮断層を介在させる。これにより、加熱加圧工程時に、含浸紙中の熱硬化性樹脂の未硬化物が、電離放射線硬化性樹脂塗膜を貫通することを防止する。しかして、熱硬化性樹脂化粧板と電離放射線硬化性樹脂塗工紙が各々有する長所を両立させ、表面の耐久性及び内部の耐久性の両方に優れる化粧材を得るのである。
【0027】
図1は本発明に係る化粧材の基本構成を示す概略断面図である。そして、図2〜図5はそれぞれ図1においてAで示した部分の拡大図であり、各種実施形態のうち代表的なものを示してある。ただし、本発明の化粧材はこれら図2〜5に図示した形態にのみ限定される訳ではない。
【0028】
本発明に係る化粧材Dの基本構成は、図1に示す如く、表面層Sとその裏面に積層一体化した基材層Bとからなる。このうち表面層Sは、図2に示す如く、紙に熱硬化性樹脂を含浸させて硬化してなる含浸紙層1と、その表面に形成した電離放射線硬化性樹脂の硬化物からなる表面樹脂層2と、両層の間に介在し基材層Bを構成する熱硬化性樹脂の未硬化物が硬化完了するまでの間に表面に滲出することを遮断する性能(以下、単に「熱硬化性樹脂滲出遮断性」とも呼称する)のある遮断層3とからなる。一方、基材層Bは、少なくともその最表面が、熱硬化性樹脂を含浸硬化してなる紙からなる。
【0029】
この図2に示す化粧材Dは、本発明の最も単純な形態である。表面層Sが、表面樹脂層2と含浸紙層1との間に、基材層Bを構成する熱硬化性樹脂の未硬化物が表面に滲出することを遮断する遮断層3を有する構成となっている。この化粧材における遮断層3は、熱硬化性樹脂滲出遮断性の樹脂が紙に含浸された含浸遮断層3aの形態を採っている。
【0030】
図3〜5に示す化粧材は、いずれも表面層Sが、含浸紙層1と表面樹脂層2との間に絵柄インキ層4を有する形態である。
【0031】
図3に示す化粧材Dは、表面樹脂層2と絵柄インキ層4との間に遮断層3を有する構成となっている。この化粧材における遮断層3は、熱硬化性樹脂滲出遮断性の樹脂のみからなる独立遮断層3bの形態を採っている。また、表面樹脂層2と独立遮断層3bとの間に絵柄インキ層4を有する形態を採ることもできる。
【0032】
図4に示す化粧材Dは、含浸紙層1と絵柄インキ層4との間に遮断層3を有する構成となっている。この化粧材における遮断層3は、熱硬化性樹脂滲出遮断性の樹脂が紙に含浸された含浸遮断層3aの形態を採っている。
【0033】
図5に示す化粧材Dは、表面樹脂層2と絵柄インキ層4との間、及び含浸紙層1と絵柄インキ層4との間の両方に、それぞれ遮断層3を有する形態である。この化粧材における表面樹脂層2と絵柄インキ層4との間の遮断層3は、熱硬化性樹脂滲出遮断性の樹脂のみからなる独立遮断層3bの形態を採っており、含浸紙層1と絵柄インキ層4との間の遮断層3は、熱硬化性樹脂滲出遮断性の樹脂が紙に含浸された含浸遮断層3aの形態を採っている。
【0034】
なお、絵柄インキ層については、図3〜5に示したものに限るものではなく、各々の形態の化粧材における絵柄インキ層形成可能な各層間、すなわち、表面樹脂層と独立遮断層との間、表面樹脂層と含浸遮断層との間、独立遮断層と含浸紙層との間、或いは独立遮断層と含浸遮断層との間、のいずれに設けてもよいものである。
【0035】
図6は本発明に係る化粧材の代表的な製造方法を示す工程図である。これは図2〜5に示した化粧材のうち、最も層構成数が多い図5の形態の化粧材を製造する場合を示している。他の形態の化粧材の製造方法については、図6に示す製造方法から各種の化粧材で欠落する層及びその製法を省略して考えればよい。
【0036】
まず、図6(a)に示す如く、熱硬化性樹脂を含浸しておらず且つ他の層も形成していない紙を用意し、これを紙層11とする。
【0037】
次に、図6(b)に示す如く、ロールコート、グラビアロールコート等の公知の塗工法もしくは含浸法により、紙層11の表面側から熱硬化性樹脂滲出遮断性の樹脂を含浸して含浸遮断層12を形成する。含浸遮断層12は紙層11内において紙の繊維間に空隙に含浸樹脂が充填された状態になっている。なお、図からも明らかなように、含浸遮断層12は紙層11の裏面にまでは到達しないように留める。これは、含浸遮断層12が紙層11の表面から裏面まで及ぶと、後述の加熱加圧工程の時に、基材層B中の熱硬化性樹脂が紙層11内に浸透してきて紙の繊維と投錨効果で強固に接着することを妨げることになり、好ましくないためである。なお、本明細書において「表面」とは、化粧材として使用する際に露出して観察される側(各図では上方)を意味する。
【0038】
次いで、図6(c)に示す如く、紙層11の含浸遮断層12側の表面に、公知の印刷もしくは塗工法により、絵柄インキ層13、独立遮断層14、及び表面樹脂層15をこの順に積層形成する。なお、独立遮断層14は、熱硬化性樹脂滲出遮断性の樹脂を塗工してなるが、紙層11の繊維間に存在するのではなく、独立の層として存在するため、このように称呼する。
【0039】
続いて、図6(d)に示す如く、図6(c)に示す構成の積層体を、未硬化基材層16の上に、その紙層11側が未硬化基材層16側と対向するようにして載置する。未硬化基材層16は、少なくとも表面側が、紙層中に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸したもの1層以上からなる(図では4層の場合を示している)。しかる後に、公知の熱プレス機を用いて加熱加圧成形を行い、未硬化基材層16中の熱硬化性樹脂を紙層11中に浸透させるとともに、未硬化基材層16中及び紙層11中の熱硬化性樹脂を硬化させる。
【0040】
これにより、図6(e)に示す如く、未含浸の紙層11が未硬化基材層16から浸透してきた熱硬化性樹脂によって含浸、硬化されて含浸紙層11’となるとともに、表面樹脂層15からその含浸紙層11’までが表面層Sとなる。また、未硬化基材層16は、その中の未硬化の熱硬化性樹脂が硬化されて基材層Bとなる。そして、表面層Sと基材層Bは、両層に渡って存在する熱硬化性樹脂の硬化物によって強固に接着一体化する。なお、遮断層(含浸遮断層12及び独立遮断層14)によって、加熱加圧時に、未硬化基材層16中の未硬化段階の熱硬化性樹脂が、表面樹脂層15を貫通して表面に滲出してくることを防止する。斯くして図5の構成の化粧材Dが得られる。
【0041】
以下に、本発明の化粧材を構成する表面樹脂層、遮断層、含浸紙層、絵柄インキ層及び基材層のそれぞれについて説明する。
【0042】
表面樹脂層2は、化粧材の最表面となる層であり、電離放射線硬化性樹脂の硬化塗膜によって形成する。この硬化は架橋硬化が好ましい。この表面樹脂層により、その高い架橋性から、耐摩耗性、耐汚染性等の表面物性に優れた化粧材が得られる。そして、表面樹脂層は通常、無着色透明な層として形成する。表面樹脂層は、液状とした電離放射線硬化性樹脂(組成物)をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法によって塗工し、塗膜を電離放射線の照射により架橋硬化させて形成することができる。なお、表面樹脂層は、グラビア印刷等による全ベタ印刷で形成することもできる。表面樹脂層の厚みは、塗工量で言えば通常1〜30g/m(固形分基準)程度である。
【0043】
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマー(以下、これらを総称して「化合物」とも言う)を適宜混合した電離放射線により架橋硬化が可能な組成物が好ましくは用いられる。なお、ここで、電離放射線とは、分子を重合させて架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、通常は電子線(EB)又は紫外線(UV)が一般的である。
【0044】
上記プレポリマー又はモノマーは、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からなる。これらプレポリマー、モノマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。なお、ここで、例えば、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。また、電離放射線硬化性樹脂としては、ポリエンとポリチオールとの組合せによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましくは用いられる。
【0045】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜100,000程度のものが用いられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0046】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するモノマーの例としては、単官能モノマーでは、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等がある。また、多官能モノマーでは、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等もある。
【0047】
分子中にカチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーがある。チオールとしては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタアリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールがある。また、ポリエンとしては、ジオールとジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したもの等がある。
【0048】
なお、本発明では、加熱加圧成形時に基材層、或いは含浸紙層から滲出してくる硬化途中の熱硬化性樹脂未硬化物を遮断することが課題となるが、この課題を解決するための好ましい手段の一つとして、遮断層形成に加えて、さらに、この表面樹脂層の電離放射線硬化性樹脂に、アルキレンオキサイド変性重合性化合物を含有する樹脂を使用する。表面樹脂層にアルキレンオキサイド変性重合性化合物を含有した電離放射線硬化性樹脂を採用することにより、そうでない場合に比べて、当該化合物のアルキレンオキサイド部分が親水性であるために、表面樹脂層自体の熱硬化性樹脂未硬化物との親和性を低下させることができる。その結果、表面樹脂層に到達したメラミン樹脂プレポリマー等の熱硬化性樹脂未硬化物が表面樹脂層を貫通するのを抑制し、表面樹脂層自身によって化粧材表面に熱硬化性樹脂の滲出を遮断することができる。そして、表面樹脂層をアルキレンオキサイド変性重合性化合物を含有する電離放射線硬化性樹脂から構成することにより、表面樹脂層と含浸紙層との間に存在する遮断層の機能をさらに補強して、より一層、熱硬化性樹脂の滲出遮断効果は良好となる。
【0049】
上記アルキレンオキサイド変性重合性化合物は、前記の各種電離放射線で重合反応し得る化合物の分子中にさらにアルキレンオキサイド変性部分を有する化合物であり、このようなアルキレンオキサイド変性重合性化合物の具体例としては、用途に応じたものを適宜使用すればよい。アルキレンオキサイドとしては、メチレンオキサイド、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が適用できるが、後述の理由から特にエチレンオキサイドが本発明においては最適である。以下特にエチレンオキサイドを主体に述べる。
【0050】
このエチレンオキサイド変性重合性化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。そして、エチレンオキサイド変性部分におけるエチレンオキサイド繰返し単位の連鎖数n(1分子当たりの数)が増すほど親水性が増加し、そのために熱硬化性樹脂未硬化物の遮断性が向上するが、その反面、親水性増加により、表面樹脂層の耐水性、及び水性インキ等水性汚染物に対する耐汚染性が低下する。そのため、n数は適宜調整すればよい。例えば、nは2〜20、より好ましくは4〜15とする。なお、エチレンオキサイド変性重合性化合物としては、2官能、3官能、或いはその他の官能数、例えば4官能以上の化合物であってもよい。これらは、表面樹脂層として要求される物性を適宜勘案して決めればよい。
【0051】
表面樹脂層2に用いる電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線で重合反応し得る樹脂分全量を、エチレンオキサイド変性重合性化合物で構成してもよいが、熱硬化性樹脂未硬化物の遮断性以外のその他の物性、例えば、表面の水性インキ等に対する耐汚染性との兼ね合いで、適宜その他の電離放射線で重合反応し得る重合性化合物を併用してもよい。具体的には、エチレンオキサイド変性重合性化合物のみでは、表面樹脂層の親水性が増すがゆえに熱硬化性樹脂未硬化物の遮断性は良くなるが、その反面、水性物質に対する親和性が増し、水性インキ等の水性汚染物質に対する耐汚染性が低下することがある。このような場合には、親水性ではない重合性化合物、例えば、エチレンオキサイド非変性アクリレートモノマー(通常のアクリレートモノマー)を配合するとよい。熱硬化性樹脂未硬化物の遮断性と水性汚染物質に対する耐汚染性とを両立させる場合には、該配合比は、(エチレンオキサイド変性重合性化合物)/(エチレンオキサイド非変性アクリレートモノマー)=3/7〜5/5(質量比)の範囲が好ましい。
【0052】
なお、プロピレンオキサイドも、エチレンオキサイドと同類のアルキレンオキサイド化合物であるが、エチレンオキサイド変性化合物の代わりにプロピレンオキサイド変性化合物を使用すると、エーテル結合の相対的比率が少なくなる分、親水性の増加傾向は少なく、熱硬化性樹脂未硬化物の遮断性の点ではエチレンオキサイド変性化合物の場合には及ばない。なお、エチレンオキサイド変性化合物以外に使用し得る電離放射線硬化性樹脂としては前記の化合物が挙げられ、これらを適宜使用すればよい。
【0053】
電離放射線硬化性樹脂を紫外線にて架橋させる場合には、電離放射線硬化性樹脂に光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部である。
【0054】
なお、上記電離放射線硬化性樹脂には、必要に応じてさらに各種の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、後述の如き減摩剤、等の微粉末からなる体質顔料(充填剤)、シリコーン樹脂、ワックス等の滑剤、染料、顔料等の着色剤等である。
【0055】
なお、減摩剤は、耐摩耗性を更に向上させる場合に必要に応じ添加する。減摩剤としては、(電離放射線硬化性樹脂の架橋塗膜よりも)硬質の無機質粒子が使用される。無機質粒子の材質としては、カオリナイト、アルミナ(α−アルミナ等)、アルミノシリケート、シリカ、硝子、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド、酸化セリウム等が挙げられる。無機質粒子の形状は、球、回転楕円体、多面体(立方体、正八面体、その他の多面体等)、鱗片状、不定形等である。無機質粒子の平均粒径は3〜30μm程度が好ましい。平均粒径が小さすぎると耐摩耗性向上効果が低下し、大きすぎると表面の平滑性が低下する。無機質粒子の添加量は樹脂分全量に対して5〜30質量部である。
【0056】
なお、電離放射線の電子線源としては、コッククロフトワルトン型、ハンデクラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、70〜1000keV、好ましくは80〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用される。また、紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用される。紫外線の波長としては通常190〜380nmの波長域が主として用いられる。
【0057】
遮断層3は、図2及び図4に示す如く、含浸紙層1を構成する紙の表面側内部に含浸されてなる含浸遮断層3aの形態、図3に示す如く、含浸紙層1の表面側に存在し、含浸紙層中には含浸されていない独立遮断層3bの形態、図5に示す如く、含浸遮断層3aと独立遮断層3bの両方を有する形態とがある(なお、含浸遮断層と独立遮断層の両方を総称して単に「遮断層」ともいう)。
【0058】
遮断層3は、表面樹脂層2と含浸紙層1との間に存在し、熱硬化性樹脂未硬化物(プレポリマー、単量体等)の浸透を遮断する性能を持った樹脂により構成する。遮断層3の機能発現機構は、以下の二つの機構の複合効果と考えられる。すなわち、一つは遮断層自体が、加熱加圧時に、熱硬化性樹脂未硬化物が含浸紙層内から表面樹脂層に向かって透過することを防止することである。もう一つは、遮断層の介在により、表面樹脂層を塗工してからこれを硬化せしめる迄の間に、表面樹脂層が紙内に不均一に浸透して、ピンホールの穿孔、多孔質化を防止し、表面樹脂層を緻密にする。その結果、表面樹脂層の欠陥部を熱硬化性樹脂未硬化物が透過することを防止することである。
【0059】
このような機構により、熱硬化性樹脂未硬化物の表面樹脂層表面への滲出を防止するためには、遮断層の塗工量(乾燥時)は1〜20g/m程度が好ましい。これ以下だと遮断効果が不十分であり、これ以上は塗布してもその効果が飽和するため不必要である。
【0060】
遮断層3を構成する樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が用いられるが、中でもウレタン樹脂が好ましい。ウレタン樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、1液硬化型(湿気硬化型)ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等が使用される。
【0061】
2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤としイソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂であるが、ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートが用いられる。或いはまた、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることもできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。なお、上記イソシアネートにおいて、脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性も良好にできる点で好ましく、具体的には例えばヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0062】
一方、1液硬化型ウレタン樹脂は、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを必須成分とする組成物である。前記プレポリマーは、通常は分子両末端に各々イソシアネート基を1個以上有するプレポリマーであり、具体的には、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、ポリブタジエン骨格、ポリエステル骨格等を骨格とする、ポリイソシアネートプレポリマーである。イソシアネート基同士が空気中の水分により反応して鎖延長反応を起こして、その結果、分子鎖中に尿素結合を有する反応物を生じて、この尿素結合にさらに分子末端のイソシアネート基が反応して、ビウレット結合を起こして分岐し、架橋反応を起こす。
【0063】
これらのウレタン樹脂の中でも、2液硬化型ウレタン樹脂が遮断性の点で好ましい。中でも、特に、飽和アクリルポリオール(分子中に不飽和結合を含まない)と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとから構成されるものが好ましい。そして、遮断性を高めるためには、架橋密度は高い方がよい。
【0064】
また、前記アクリル樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体等のアクリル樹脂〔ここで(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味で用いる。〕が挙げられる。
【0065】
含浸紙層1は、紙に熱硬化性樹脂が含浸して硬化したものである。紙としては、薄葉紙、チタン紙、リンター紙、上質紙、クラフト紙、和紙等が挙げられ、米坪量が20〜100g/m程度の紙が用いられる。
【0066】
紙への熱硬化性樹脂未硬化物の含浸の時期としては、(1)まず、紙に熱硬化性樹脂未硬化物の液を含浸し、しかる後に、遮断層、絵柄インキ層、表面樹脂層を形成し、そしてその状態で表面層Sを基材層Bの表面に載置し、加熱加圧する形態、(2)まず、未含浸の紙の表面に遮断層、絵柄インキ層、表面樹脂層を形成し、しかる後に、紙の裏面側に熱硬化性樹脂未硬化物の液を含浸、そしてその状態で表面層Sを基材層Bの表面に載置し、加熱加圧する形態、(3)まず、未含浸の紙の表面に遮断層、絵柄インキ層、表面樹脂層を形成し、しかる後に、紙が未含浸の状態のままで、表面層Sを基材層Bの表面に載置し、加熱加圧する。加熱加圧中に基材中から未含浸の紙中へ熱硬化性樹脂未硬化物が浸透してきて含浸される形態、とがある。いずれにおいても紙に含浸された熱硬化性樹脂未硬化物が硬化する時期は、加熱加圧成形の段階である。
【0067】
含浸樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。基材層B中の熱硬化性樹脂とは、同じものでも別のものでもよいが、同じものを用いた方が、基材層Bと表面層Sとの密着性の点で好ましい。そして、含浸樹脂は、未硬化状態のプレポリマー(乃至オリゴマー)、単量体、或いはこれらの混合物からなる液状組成物を必要に応じて溶剤で稀
釈して紙に含浸させる。
【0068】
絵柄インキ層4は、絵柄等を表現するための層であり、通常は設けるが、必要のない場合は省略してもよい。また、絵柄インキ層を設ける場合、その絵柄インキ層の形成方法、材料、絵柄等の、絵柄インキ層の内容は特に制限はない。絵柄インキ層は、通常、インキを用いて、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等の従来公知の印刷法等で形成する。絵柄は、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮紋模様、文字、記号、幾何学模様、或いはこれらの2種以上の組合せ等である。
【0069】
なお、絵柄インキ層4の形成に用いるインキは、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これらに適宜加える体質顔料、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等の各種添加剤からなるが、バインダーの樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の中から、要求される物性、印刷適性等に応じて適宜選択すればよい。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の単体又はこれらを含む混合物をバインダーの樹脂に用いる。また、着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、二酸化チタン被覆雲母、アルミニウム等の箔粉等の光輝性顔料、或いはその他の染料等を使用する。
【0070】
基材層Bは、少なくとも、最表面層が熱硬化性樹脂を含浸、硬化した紙からなる。裏面側には、必要に応じて、木材、金属、無機窯業系材料等の各種材料の層を積層してもよい。紙としては、米坪量50〜200g/m程度のクラフト紙、チタン紙等の通常の熱硬化性樹脂化粧板の基材として用いられているものと同様のものを1〜10枚程度重ねて用いる。隠蔽性を確保するため、及び表面層の色調に基材層の色調が反映されることを防止するためには、少なくとも最表面の紙はチタン白顔料を混抄したチタン紙を用いることが好ましい。
【0071】
本発明の化粧材は、各種被着基材に貼着して化粧板として使用することができる。具体的には、被着基板に接着剤層を介して化粧材を貼着するものである。この被着基材としては、特に制限はなく、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等である。
【0072】
具体的には、無機非金属系では、例えば,抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化セメント)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、石器、硝子、琺瑯、陶磁器、焼成タイル、火山灰を主原料とした板等のセラミックス等の無機質材料等がある。
【0073】
また、金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。
【0074】
また、木質系では、例えば、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等が挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
【0075】
また、プラスチック系では、化粧材との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。このようなプラスチック系の基材としては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ABS樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。被着基材の形状としては、平板、曲面板、多角柱等任意である。
【0076】
また、これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基材として使用できる。
【0077】
また、該基板はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。被着体となる基板としては各種素材の平板、曲面板等の板材、或いは上記素材が単体か或いは複合された立体形状物品(成形品)が対象となる。
【0078】
化粧材に、和紙、洋紙、合成紙、不織布、織布、寒冷紗、含浸紙、合成樹脂シート等の裏打ち材を貼着して用いてもよい。裏打ち材を貼着することにより、化粧材自体の補強、化粧材の割れや破け防止、接着剤の化粧材表面への染み出し防止等の作用がなされ、不良品の発生が防止されると共に、取り扱いが容易となることとなり、生産性を向上することができる。
【0079】
このようにして接着剤を介して毎葉ごとにあるいは連続して化粧材が載置された基板を、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレス等の貼着装置を用いて圧締して、化粧材を基板表面に接着し、化粧板とする。
【0080】
接着剤はスプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布する。この接着剤には、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤を、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/mの範囲で基板表面に塗布される。
【0081】
化粧材の基板上への貼着は、通常、本発明の化粧材の裏面に接着剤層を形成し、基板を貼着するか基板の上に接着剤を塗布し、化粧材を貼着する等の方法による。
【0082】
以上のようにして製造される化粧板は、また、該化粧板を任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装または外装材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、回縁、幅木等の造作部材の表面材、キッチン、箪笥、キャビネット等の家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。
【実施例】
【0083】
[実施例1]
この実施例1では図3に示す如き化粧材作製した。まず、坪量30g/mの建材用一般紙からなる紙層上に絵柄インキ層4を形成した。すなわち、硝化綿とアクリル樹脂をバインダー樹脂とし、これにチタン白、弁柄、黄鉛を含む顔料を添加したインキを用い、グラビア印刷にて全面ベタ層を形成し、その上に、アクリル樹脂をバインダー樹脂とし、これに弁柄、黄鉛、墨を含む顔料を添加したインキを用い、グラビア印刷にて木目柄の絵柄インキ層4を形成した。
【0084】
次いで、その絵柄インキ層4の上に、飽和アクリルポリオール100質量部と1,6ヘキサメチレンジイソシアネート8質量部とからなる2液硬化型ウレタン樹脂による厚さ3g/mの独立遮断層を3bグラビア印刷にて形成した。さらにその上に表面樹脂層2を形成した。すなわち、エチレンオキサイド変性重合性化合物としてアクリレート系3官能モノマーであるトリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリアクリレート(エチレンオキサイドの連鎖数n=9)を含む、下記組成の電子線硬化性樹脂塗液をグラビアオフセット法にて厚さ4g/m(固形基準分)で施した後、加速電圧175kVの電子線を5Mrad照射して表面樹脂層の塗膜を架橋硬化させた。その後、養生して独立遮断層3bも架橋硬化させることで、表面層S(ただし、紙層はこの段階では未含浸)を得た。
【0085】
電子線硬化性樹脂塗液の組成:(エチレンオキサイド変性モノマー:エチレンオキサイド非変性モノマー=40:60)
トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9) 40質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 55質量部
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート 5質量部
焼成カオリン粒子(平均粒径:1.5μm) 10質量部
シリカ粒子(平均粒径:0.005μm) 0.5質量部
シリコーンメタクリレート 1.5質量部
次いで、基材層Bの原材料として、フェノール樹脂未硬化物を含浸したクラフト紙5枚の表面に、メラミン樹脂未硬化物を含浸したチタン紙(チタン白を30質量部含有)を載置したものを用意した。そして、その載置物の上に、表面層Sを紙層がチタン紙側を向くようにして載せ、プレス機により、130℃、100kg/cm、10分間の条件にて加熱加圧した。それにより、含浸したフェノール樹脂及びメラミン樹脂を硬化せしめ、基材層Bを形成するとともに、チタン紙中のメラミン樹脂を紙層中に含浸硬化せしめて含浸紙層1とし、表面層Sと基材層Bとを一体化して化粧材を得た。
【0086】
[実施例2]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、n数4のトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=4)を用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0087】
[実施例3]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、n数2のトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=2)を用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0088】
[実施例4]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、n数23のトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=23)を用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0089】
[実施例5]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、プロピレンオキサイド変性モノマー(トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート)を用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0090】
[実施例6]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、エポキシアクリレート系プレポリマーを用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0091】
[実施例7]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、ポリエステルアクリレート系プレポリマーを用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0092】
[実施例8]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、ウレタンアクリレート系プレポリマーを用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0093】
[実施例9]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、ポリエステル系モノマーを用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0094】
[実施例10]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、HPPAモノマー(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート)を用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0095】
[実施例11]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)の代わりに、変性アルキルアクリレートモノマーを用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0096】
[実施例12]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)からなるエチレンオキサイド変性モノマーと、4官能アクリレートモノマーとの配合比(質量比)40:60を、30:70に変えた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0097】
[実施例13]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)からなるエチレンオキサイド変性モノマーと、トリメチロールプロパントリアクリレート及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレートとからなるエチレンオキサイド非変性モノマーとの配合比(質量比)40:60を、50:50に変えた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0098】
[実施例14]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、エチレンオキサイド変性モノマーと、エチレンオキサイド非変性モノマーとの配合比(質量比)40:60を、20:80に変えた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0099】
[実施例15]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、エチレンオキサイド変性モノマーと、エチレンオキサイド非変性モノマーとの配合比(質量比)40:60を、60:40に変えた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0100】
[実施例16]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、エチレンオキサイド変性モノマーと、エチレンオキサイド非変性モノマーとの配合比(質量比)40:60を、70:30に変えた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0101】
[実施例17]
実施例1において、表面樹脂層2の形成に用いた電子線硬化性樹脂塗液にて、エチレンオキサイド変性モノマーと、エチレンオキサイド非変性モノマーとの配合比(質量比)40:60を、80:20に変えた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0102】
[実施例18]
実施例1において、絵柄インキ層の形成に先立ち、まず実施例1の独立遮断層と同じ樹脂組成物を紙層の表面に塗工(3g/m)し、紙層の表面近傍に含浸せしめて含浸遮断層を形成し、しかる後に絵柄インキ層として、アクリルポリオールとイソシアネートからなる2液硬化型ウレタン樹脂に着色剤として酸化チタンを添加したインキによる全面ベタ層をグラビア印刷で形成した他は、実施例1と同様にして、図4に示す如き化粧材を作製した。
【0103】
[実施例19]
実施例1〜18により作製した化粧材の裏面と、被着基板として厚さ18mmのパーティクルボードとを株式会社オーシカ製ユリア系接着剤(LS−12A)で木材パーティクルボードに60g/m(wet)の条件で塗工して形成した接着剤を介して接着せしめることにより木質の化粧板を製作した。その結果、いずれの化粧材を用いた場合であっても良好な接着性を示すことが確認された。
【0104】
実施例1〜18で得た化粧材を評価するため、実施例1において、独立遮断層の形成を省略した他は、実施例1と同様にして比較例となる化粧材を得た。実施例1〜18とこの比較例の評価結果は表1及び表2に示すとおりである。
【0105】
熱硬化性樹脂の化粧材表面への滲出遮断は目視観察で評価した。滲出があると表面の光沢、外観が変化することに基づき、斯かる外観変化に基づいて滲出が見られないものは良好(○)、滲出が若干だが見られるものはやや良好(△)、明らかに滲出が見られるものは不良(×)とした。
【0106】
耐汚染性は、耐水性、耐油性の指標として評価した。滲出遮断が良好となったものについて、その反面、耐水性が低下して水性汚染物質に対する耐汚染性が低下していないかを確認した。具体的には、水性青インキをコート紙表面に滴下し、24時間放置した後、アルコールを染み込ませたガーゼで拭き取り、水性青インキによる汚れを目視観察で評価した。また、耐油性については、サラダ油をコート紙表面に滴下し、24時間放置した後、アルコールを染み込ませたガーゼで拭き取り、油浸透によって濡れ色を目視評価した。耐水性、耐油性いずれについても、汚れが見られないものは良好(○)、汚れが若干だが見られるものはやや良好(△)、明らかに汚れが見られるものは不良(×)とした。
【0107】
【表1】

【0108】
表1に示す如く、実施例1及び2では、遮断層形成に加えて、表面樹脂層の電離放射線硬化性樹脂にエチレンオキサイド変性重合性化合物を含有させてあるので、熱硬化性樹脂の化粧材表面滲出に対する遮断が良好である上に、水性汚染物質に対する耐汚染性(耐水性)及び耐油性も良好な結果が得られた。ただし、エチレンオキサイド変性重合性化合物でも、エチレンオキサイドの連鎖数が、n=2と小さすぎたり(実施例3)、逆にn=23と大きすぎたり(実施例4)すると、遮断層の全くない比較例1に比べて改良効果は見られるものの、完璧なレベルの遮断性が得られず、特にn数が大きいと親水性が増加しすぎて耐水性が低下し、遮断性と耐汚染性を共に良好にすることはできなかった。
【0109】
また、エチレンオキサイド変性重合性化合物に代えて、他の重合性化合物を用いた実施例5〜11では、比較例1に比べて改良効果は有るものの、完璧なレベルの遮断性が得られなかった。例えば、アルキレンオキサイド変性という点では同じプロピレンオキサイド変性重合性化合物を用いた実施例5では、親水性の度合いが低いために、遮断性は比較例1に比べて幾分向上するものの、やや良好止まりであった。この他の重合性化合物を用いた実施例6〜11も、遮断性がやや良好止まりで、良好な性能は得られなかった。
【0110】
【表2】

【0111】
また、表2に示す如く、エチレンオキサイド変性重合性化合物の配合比でも、遮断性は変化し、エチレンオキサイド変性モノマー〔トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n=9)〕:4官能モノマーの配合比(質量比)が、30:70〜50:50の範囲で、遮断性及び耐汚染性が共に良好となる結果が得られた。エチレンオキサイド変性重合性化合物の比率が少なくなり上記配合比が20:80では、遮断性がやや良好に止まり、逆にエチレンオキサイド変性重合性化合物の比率が多くなり上記配合比が60:40では、遮断性及び耐油性は良好だが耐水性が不良となった。
【0112】
また、実施例1に対して、遮断層と絵柄インキ層の順番を入れ替えた実施例18では、実施例1と同様に、遮断性と耐汚染性(耐水性、耐油性)が共に良好となる結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層とその裏面に積層一体化した基材層とからなり、表面層は、表面側から、少なくとも、電離放射線硬化性樹脂の硬化物からなる表面樹脂層、熱硬化性樹脂の未硬化物の滲出を遮断する遮断層、紙中に熱硬化性樹脂が含浸され且つ硬化されてなる含浸紙層を積層してなり、基材層は、少なくともその最表面が、紙中に熱硬化性樹脂が含浸され且つ硬化されてなる含浸紙層からなることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
遮断層が、含浸紙層を構成する紙の表面側内部に含浸されてなる含浸遮断層の形態からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項3】
表面樹脂層と含浸遮断層との間に絵柄インキ層を有することを特徴とする請求項2に記載の化粧材。
【請求項4】
遮断層が、含浸紙層の表面側に存在し含浸紙中には含浸されていない独立遮断層の形態からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項5】
表面樹脂層と独立遮断層との間、或いは、独立遮断層と含浸紙層との間、のいずれかに絵柄インキ層を有することを特徴とする請求項4に記載の化粧材。
【請求項6】
遮断層が、含浸紙層の表面側に存在し、含浸紙中には含浸されていない独立遮断層の形態と、含浸紙層を構成する紙の表面側内部に含浸されてなる含浸遮断層の形態との両方からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧材。
【請求項7】
表面樹脂層と独立遮断層との間、或いは独立遮断層と含浸遮断層との間、のいずれかに絵柄インキ層を有することを特徴とする請求項6に記載の化粧材。
【請求項8】
遮断層が、2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化粧材。
【請求項9】
表面樹脂層が、アルキレンオキサイド変性重合性化合物を含む電離放射線硬化性樹脂の硬化物からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の化粧材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の化粧材と、被着基材とを有することを特徴とする化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【国際公開番号】WO2005/058597
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516363(P2005−516363)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018917
【国際出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】