説明

医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラム

【課題】MRI装置によって撮影された心臓の形態を表す画像データから、心筋梗塞部位を自動的に検出することが可能な医用画像処理装置を提供する。
【解決手段】内膜抽出部10は、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、その勾配に基づいて心筋の内膜を検出する。外膜抽出部20は、遅延造影法によって取得された第2MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、その勾配に基づいて心筋の外膜を検出する。梗塞部位抽出部30は、内膜と外膜との間を検出領域として、第2MR画像の輝度値に基づいて心筋梗塞部位を検出する。表示制御部43は、検出した心筋梗塞部位をMR画像上で識別可能にして表示部44に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)によって撮影された心臓の画像データに基づいて、心筋梗塞部位を抽出する医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞部位の位置や大きさを特定するために、超音波診断装置、核医学診断装置、X線CT装置、及びMRI装置などの医用画像診断装置が用いられている。例えば、心筋SPECT検査、FDG−PET検査による心筋虚血解析、CAG検査(冠動脈造影検査(coronary angiography:CAG)などにより、心筋梗塞部位を特定することが行われている。また、超音波診断装置によって取得された超音波画像に基づいて心筋の挙動を解析し、その解析結果をカラー表示することで心筋梗塞部位を特定することが行われている(特許文献1)。この特許文献1に記載の方法では、心筋梗塞などの虚血性心疾患の検出に血流イメージングに係る技術を応用している。具体的には、血流検出用のフィルタの特性を変更することで、血流の動きではなく、心筋の動きを検出するようにし、検出した心筋の動きをカラー表示することで、心筋梗塞部位を色の変化で表現している。また、超音波診断装置において、心筋梗塞時の梗塞部位を映像化する方法がある(特許文献2)。この特許文献2に記載の方法では、超音波画像内のある点を中心にした関心領域(ROI)を設定し、その関心領域の相互相関係数をフレーム間で計算し、相互相関係数の最大値をその点での映像情報とする。これにより、変形しやすい正常の心筋と、変形しにくい梗塞部位とを分離している。また、X線CT装置で取得されたCT画像やMRI装置で取得されたMR画像を用いて、部位の大きさなどを手動で計測し、その計測結果に基づいて心筋梗塞部位を特定することが行われている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−84246号公報
【特許文献2】特開平8−164139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、SPECT検査やPET検査によって心筋梗塞部位を特定することは可能であるが、核医学診断装置によって取得される画像は分解能が低い。そのため、心筋梗塞部位の正確な位置や大きさを特定することが困難であり、心筋梗塞部位と冠動脈との相対的な位置関係を把握することが困難である。また、CAG検査は、心筋梗塞の診断において重要な梗塞部位の広がりを3次元的に観察することが困難である。
【0005】
一方、CT画像やMRI画像を利用することで、高分解能の3次元画像上で心筋梗塞部位の観察が可能となる。しかしながら、CT画像においては、心筋梗塞部位と他の部位とでコントラストに差がないため、心筋梗塞部位を自動で検出することは困難である。また、MR画像においては、心筋梗塞部位が比較的に高信号で検出されるが、CT画像とは異なり、同じ撮影方法であっても、同じ部位が同じ信号値で検出されない。つまり、同じ撮影方法で同じ部位を撮影した場合であっても、撮影条件によって、その部位の信号値が変化してしまうため、信号値を用いて心筋梗塞部位を自動的に検出することは困難である。
【0006】
この発明は上記の問題点を解決するものであり、MRI装置によって撮影された心臓の形態を表す画像データから、心筋梗塞部位を自動的に検出することが可能な医用画像処理装置、及び、医用画像処理装置の機能を実行するための医用画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、MRI装置を用いてブラックブラッド法によって被検体の心臓を撮影することで取得された心筋の輝度値が内腔よりも高い第1MR画像を受け付け、さらに、造影剤が注入された前記被検体の心臓をMRI装置を用いて遅延造影法によって撮影することで取得された前記内腔の輝度値が前記心筋よりも高い第2MR画像を受け付ける受付手段と、前記第1MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配に基づいて前記心筋の内膜を検出する内膜抽出手段と、前記第2MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配に基づいて前記心筋の外膜を検出する外膜抽出手段と、前記検出された内膜と外膜との間を検出領域として、前記第2MR画像の輝度値に基づいて前記検出領域内から心筋梗塞部位を検出する梗塞部位抽出手段と、MRI装置によって前記被検体の心臓を撮影することで取得されたMR画像を受け付けて、前記受け付けたMR画像において前記検出された心筋梗塞部位を識別可能にして表示手段に表示させる表示制御手段と、を有することを特徴とする医用画像処理装置である。
また、請求項10に記載の発明は、コンピュータに、MRI装置を用いてブラックブラッド法によって被検体の心臓を撮影することで取得された心筋の輝度値が内腔よりも高い第1MR画像を受け付け、さらに、造影剤が注入された前記被検体の心臓をMRI装置を用いて遅延造影法によって撮影することで取得された前記内腔の輝度値が前記心筋よりも高い第2MR画像を受け付ける受付機能と、前記第1MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配に基づいて前記心筋の内膜を検出する内膜抽出機能と、
前記第2MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配に基づいて前記心筋の外膜を検出する外膜抽出機能と、前記検出された内膜と外膜との間を検出領域として、前記第2MR画像の輝度値に基づいて前記検出領域内から心筋梗塞部位を検出する梗塞部位抽出機能と、MRI装置によって前記被検体の心臓を撮影することで取得されたMR画像を受け付けて、前記受け付けたMR画像において前記検出された心筋梗塞部位を識別可能にして表示装置に表示させる表示制御機能と、を実行させることを特徴とする医用画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によると、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像に基づいて内膜を検出し、遅延造影法によって取得された第2MR画像に基づいて外膜を検出し、内膜と外膜との間を検出領域とすることで、第2MR画像の輝度値に基づいて心筋梗塞部位をより正確に検出することが可能となる。すなわち、第2MR画像において内腔の輝度値と心筋梗塞部位の輝度値との差が僅かであっても、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像に基づいて内膜を検出し、その内膜の外側を心筋梗塞部位の検出領域とすることで、第2MR画像において内腔と心筋梗塞部位とを区別して心筋梗塞部位を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
この発明の第1実施形態に係る医用画像処理装置について図1を参照して説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【0010】
第1実施形態に係る医用画像処理装置は、内膜抽出部10と、外膜抽出部20と、梗塞部位抽出部30と、画像出力部40とを備えている。この医用画像処理装置は、MRI装置によって取得されたMR画像を受け付けて、そのMR画像に基づいて心筋の内膜と外膜とを検出し、さらに、心筋梗塞部位を検出する。
【0011】
(内膜抽出部10)
内膜抽出部10は、第1画像入力部11、第1基準点設定部12、第1ライン設定部13、第1輝度値カーブ生成部14、第1勾配算出部15、及び内膜検出部16を備えている。内膜抽出部10は、MRI装置を用いてブラックブラッド法(Black Blood法)によって被検体の心臓を撮影することで取得された第1MR画像データを受け付けて、その第1MR画像データに基づいて心筋の内膜を検出する。以下、内膜抽出部10の各部について説明する。
【0012】
(第1画像入力部11)
第1画像入力部11は、MRI装置を用いてブラックブラッド法によって被検体の心臓を撮影することで取得された第1MR画像データ(MRシネ画像データ)を受け付けて、第1MR画像データを第1基準点設定部12に出力する。例えば、医用画像処理装置の外部に設置されたMRI装置を用いて、ブラックブラッド法によって心臓の任意の断面を撮影することで、その断面における心臓の形態を表す第1MR画像データを取得する。第1画像入力部11は、医用画像処理装置の外部に設置されたMRI装置から出力された第1MR画像データを受け付けて、第1基準点設定部12に出力する。ここで、MRI装置とブラックブラッド法とについて簡単に説明する。
【0013】
MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)は、磁石架台と、磁石架台に被検体を挿入する寝台ユニットと、磁石架台及び寝台ユニットの駆動を制御し、画像データを再構成する制御ユニットとを備えている。寝台ユニットの天板に被検体を載置し、天板を磁石架台内に移動させて、被検体を磁石架台に挿入する。磁石架台は、静磁場中に置かれた被検体組織の原子核スピンを、ラーモア周波数をもつ高周波信号(RFパルス)で励起し、この励起に伴って発生する磁気共鳴信号(MR信号)を取得する。制御ユニットは、磁石架台が取得したMR信号に基づいて被検体内の画像を再構成する。
【0014】
磁石架台は、静磁場磁石と傾斜磁場コイルと送信RF(Radio Frequency)コイルと受信RFコイルとを備えている。静磁場磁石は、中空の円筒形状に形成されており、その内部空間に一様な静磁場を発生するように作用する。傾斜磁場コイルは、中空の円筒形状を有し、静磁場磁石が形成する内部空間に配置されている。この傾斜磁場コイルは、予め設定された3次元直交座標系(XYZ座標系)の各座標軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されている。これら3つのコイルは、個別に電源供給を受けて、X、Y、Zの各座標軸に沿って磁場強度が傾斜する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸は被検体の体軸方向(天板の長手方向)に沿って配置され、静磁場磁石は、このZ方向の静磁場を発生する。送信RFコイルは、傾斜磁場コイルの内部空間に配置される。送信RFコイルは、ラーモア周波数に対応する高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。受信RFコイルは、傾斜磁場コイルの内部空間に配置され、複数のRFコイルを含んで構成される。この複数のRFコイルは、発生された高周波磁場の影響により被検体から放出される磁気共鳴信号をそれぞれ受信し、その受信結果を表す信号を制御ユニットに出力する。制御ユニットは、磁気共鳴信号データに対してフーリエ変換などの画像再構成処理を実行することで、被検体の体内の組織を表す画像データを生成する。これにより、被検体の断層像の画像データが生成される。
【0015】
次に、ブラックブラッド法(Black Blood法)について説明する。ブラックブラッド法は、血液のMR信号の収集を抑制するためのパルスを、通常のRF励起とエコー収集とのパルス列の前に付加する方法である。例えば、撮像断面とほぼ同じ領域を反転励起する選択インバージョンパルスと撮像対象全体を反転励起する非選択インバージョンパルスとを連続的に印加し、この印加の後に、撮像のためのRF励起とエコー収集とを行うダブルインバージョンリカバリー法(double inversion recovery法)が用いられる。このブラックブラッド法によって被検体の心臓を撮影することで、血液の信号を抑制して、心筋の輝度値が内腔よりも高い第1MR画像データ(ブラックブラッド画像データ)を生成することができる。例えば、特開2002−143125号公報に記載の撮影方法を実行することで、第1MR画像データを生成することができる。内膜抽出部10は、この第1MR画像データに基づいて心筋の内膜を検出する。
【0016】
ここで、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像を図2に示す。図2は、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像を示す図である。第1MR画像100はブラックブラッド法によって取得された2次元画像であり、心臓の任意の断面における形態を表している。この第1MR画像100には、心臓の内腔101と心筋102とが表されている。ブラックブラッド法によって撮影されているため、内腔101の信号が抑制され、心筋102が高信号(高輝度)で表わされている。
【0017】
(第1基準点設定部12)
第1基準点設定部12は、第1画像入力部11から第1MR画像データを受けて、第1MR画像に第1基準点を設定する。この実施形態では、第1基準点設定部12は、第1MR画像100に表わされている内腔101の内部に第1基準点を設定する。1例として、心臓の内腔が画像の中心付近に表わされるように撮影を行い、第1基準点設定部12は、その撮影で得られた第1MR画像100の中心点を検出し、その中心点を第1基準点に設定する。例えば図2に示すように、第1基準点設定部12は、第1MR画像100の中心点103を第1基準点に設定する。第1基準点設定部12は、第1基準点の位置を示す情報(座標情報)を第1ライン設定部13に出力する。
【0018】
また、第1基準点設定部12は、第1MR画像100上で操作者が指定した点を第1基準点としても良い。この場合、表示制御部43は、第1MR画像データを受け付けて、その第1MR画像データに基づく第1MR画像100を表示部44に表示させる。操作者は、ポインティングデバイスなどの図示しない操作部を用いて、第1MR画像100上で第1基準点を指定する。例えば、操作者は操作部を用いて、第1MR画像100に表わされている内腔101の内部に第1基準点を指定する。図示しない操作部によって第1基準点が指定されると、表示制御部43は、第1MR画像100上における第1基準点の座標情報を第1ライン設定部13に出力する。
【0019】
(第1ライン設定部13)
第1ライン設定部13は、第1MR画像100上における第1基準点の座標情報を第1基準点設定部12から受けて、その第1基準点から放射状に延びる複数の第1ラインを設定する。このとき、第1ライン設定部13は、所定の角度間隔ごとに第1ラインを設定する。例えば図2に示すように、第1ライン設定部13は、中心点103(第1基準点)から放射状に延びる第1ライン110、111、112、・・・を設定する。以下、第1ライン110、111、112、・・・を「第1ライン110等」と省略する場合がある。第1ライン110等は、それぞれ所定の角度間隔をおいて設定されている。第1ライン設定部13は、第1MR画像100上における第1ライン110等のそれぞれの座標情報を第1輝度値カーブ生成部14に出力する。
【0020】
(第1輝度値カーブ生成部14)
第1輝度値カーブ生成部14は、第1ラインの座標情報を第1ライン設定部13から受けて、第1MR画像データにおいて、第1ライン上の各位置の輝度値を表す第1輝度値カーブを生成する。この実施形態では、第1輝度値カーブ生成部14は、第1ライン110等のそれぞれの座標情報を第1ライン設定部13から受けて、各第1ライン上の各位置の輝度値を表す第1輝度値カーブを生成する。例えば図2に示すように、第1輝度値カーブ生成部14は、第1MR画像100において、第1ライン110上の各位置における輝度値を表す第1輝度値カーブ120を生成する。第1輝度値カーブ生成部14は、第1ライン110、111、112、・・・のそれぞれについて、ライン上の各位置における輝度値を表す第1輝度値カーブを生成する。そして、第1輝度値カーブ生成部14は、各第1ラインにおける第1輝度値カーブを第1勾配算出部15に出力する。
【0021】
(第1勾配算出部15)
第1勾配算出部15は、第1輝度値カーブを第1輝度値カーブ生成部14から受けて、第1輝度値カーブに基づいて位置に対する輝度値の勾配を求める。例えば、第1勾配算出部15は、第1ライン110上の輝度値を表す第1輝度値カーブ120に基づいて、第1ライン110上の各位置における輝度値の勾配を求める。
【0022】
さらに、第1勾配算出部15は、勾配が正の値であって、予め設定された閾値以上になる点(以下、「内膜点」と称する)を検出する。このとき、第1勾配算出部15は、正の勾配が閾値以上となる点であって、中心点103(第1基準点)から最も近い位置にある点(最も内側にある点)を、内膜点として検出する。この内膜点は、心筋の内膜を構成する点として検出される。1例として、第1勾配算出部15は、内腔101内に設定された第1基準点(中心点103)から外側に向けて順番に輝度値の勾配を求めていき、正の勾配が初めて閾値以上になる点を、内膜点として検出する。
【0023】
ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像100は、内腔101が低信号(低輝度)になり、心筋102が高信号(高輝度)になるため、内腔101と心筋102との境界で輝度値の正の勾配が大きくなる。そのため、第1MR画像100を用いて輝度値の勾配を求め、その勾配が閾値以上になる点を検出することで、内腔101と心筋102との境界を特定して、内膜を検出することが可能となる。このように、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像の特徴を利用して、心筋の内膜を検出することができる。例えば図2に示すように、第1勾配算出部15は、第1輝度値カーブ120に基づいて各位置に対する輝度値の勾配を求め、正の勾配が閾値以上となる内膜点130を検出する。そして、第1勾配算出部15は、第1輝度値カーブ120以外の第1輝度値カーブについても、輝度値の勾配を求め、その勾配が閾値以上となる内膜点を求める。第1勾配算出部15は、各内膜点の座標情報を内膜検出部16に出力する。
【0024】
(内膜検出部16)
内膜検出部16は、各内膜点の座標情報を第1勾配算出部15から受けて、各内膜点を繋げることで、心筋の内膜の位置を特定する。例えば図2に示すように、内膜検出部16は、第1勾配算出部15によって検出された内膜点130等を繋げることで、心筋の内膜140の位置を特定する。そして、内膜検出部16は、内膜140の座標情報を梗塞部位抽出部30の検出領域設定部31に出力する。また、内膜検出部16は、内膜140の座標情報を画像出力部40のマーカ生成部42に出力する。
【0025】
(外膜抽出部20)
次に、外膜抽出部20について説明する。外膜抽出部20は、第2画像入力部21、第2基準点設定部22、第2ライン設定部23、第2輝度値カーブ生成部24、第2勾配算出部25、及び外膜検出部26を備えている。外膜抽出部20は、造影剤が注入された被検体の心臓を、MRI装置を用いて遅延造影法によって撮影することで取得された第2MR画像データ(遅延造影画像データ)を受け付けて、その第2MR画像データに基づいて心筋の外膜を検出する。以下、外膜抽出部20の各部について説明する。
【0026】
(第2画像入力部21)
第2画像入力部21は、MRI装置を用いて遅延造影法によって被検体の心臓を撮影することで取得された第2MR画像データを受け付けて、第2MR画像データを第2基準点設定部22に出力する。さらに、第2画像入力部21は、第2MR画像データを梗塞部位抽出部30の検出領域設定部31に出力する。例えば、医用画像処理装置の外部に設置されたMRI装置を用いて、遅延造影法によって心臓の任意の断面を撮影することで、その断面における心臓の形態を表す第2MR画像データを取得する。第2画像入力部21は、医用画像処理装置の外部に設置されたMRI装置から出力された第2MR画像データを受け付けて、第2基準点設定部22と検出領域設定部31とに出力する。なお、第1画像入力部11と第2画像入力部21とによって、この発明の「受付手段」の1例を構成する。ここで、遅延造影法について簡単に説明する。
【0027】
例えば造影剤にガドリニウム造影剤を用いた場合、ガドリニウム造影剤は正常な心筋細胞内には流入せず、細胞外液に分布する。ところが、梗塞による壊死心筋に流入した造影剤、又は心筋症に生じた繊維組織に流入した造影剤は、周囲の細胞外液と比較して排出が遅れる。この造影剤の濃度差をコントラスト良く描出する方法が遅延造影法であり、その方法で取得された画像が遅延造影画像である。例えば、インバージョンリカバリー法(inversion recovery法:IR法)を用いて撮影する。また、正常部位と病変部位との差を明瞭にするために、造影剤を被検体に注入してから所定の時間が経過した後、撮像することが好ましい。1例として、造影剤を被検体に注入してから20分程度経過した後に、撮像する。また、撮像時に心筋から信号が生じないようにするために、インバージョンタイム(inversion time)(TI)を細かく調整して撮像する。外膜抽出部20は、この第2MR画像データ(遅延造影画像データ)に基づいて心筋の外膜を検出する。
【0028】
ここで、遅延造影法によって取得された第2MR画像を図3に示す。図3は、遅延造影法によって取得された第2MR画像を示す図である。第2MR画像200は遅延造影法によって取得された2次元画像であり、心臓の任意の断面における形態を表している。この第2MR画像200には、心臓の内腔201と心筋202とが表されている。遅延造影法によって撮影されているため、心筋202の信号が抑制され、内腔201が高信号(高輝度)で表わされている。
【0029】
(第2基準点設定部22)
第2基準点設定部22は、第2画像入力部21から第2MR画像データを受けて、第2MR画像に第2基準点を設定する。この実施形態では、第2基準点設定部22は、第2MR画像200に表わされている内腔201の内部に第2基準点を設定する。1例として、心臓の内腔が画像の中心付近に表わされるように撮影を行い、第2基準点設定部22は、その撮影で得られた第2MR画像200の中心点を検出し、その中心点を第2基準点に設定する。例えば図3に示すように、第2基準点設定部22は、第2MR画像200の中心点203を第2基準点に設定する。第2基準点設定部22は、第2基準点の位置を示す情報(座標情報)を第2ライン設定部23に出力する。
【0030】
また、第2基準点設定部22は、第2MR画像200上で操作者が指定した点を第2基準点としても良い。この場合、表示制御部43は、第2MR画像データを受け付けて、その第2MR画像データに基づく第2MR画像200を表示部44に表示させる。操作者は、操作部を用いて第2MR画像200上で第2基準点を指定する。例えば、操作者は操作部を用いて、第2MR画像200に表わされている内腔201の内部に第2基準点を指定する。第2基準点が指定されると、表示制御部43は、第2MR画像200上における第2基準点の座標情報を第2ライン設定部23に出力する。
【0031】
(第2ライン設定部23)
第2ライン設定部23は、第2MR画像200上における第2基準点の座標情報を第2基準点設定部22から受けて、その第2基準点から放射状に延びる複数の第2ラインを設定する。このとき、第2ライン設定部23は、所定の角度間隔ごとに第2ラインを設定する。例えば図3に示すように、第2ライン設定部23は、中心点203(第2基準点)から放射状に延びる第2ライン210、211、212、・・・を設定する。以下、第2ライン210、211、212、・・・を「第2ライン210等」と省略する場合がある。第2ライン210等は、それぞれ所定の角度間隔において設定されている。第2ライン設定部23は、第2MR画像200上における第2ライン210等のそれぞれの座標情報を第2輝度値カーブ生成部24に出力する。
【0032】
(第2輝度値カーブ生成部24)
第2輝度値カーブ生成部24は、第2ラインの座標情報を第2ライン設定部23から受けて、第2MR画像データにおいて、第2ライン上の各位置の輝度値を表す第2輝度値カーブを生成する。この実施形態では、第2輝度値カーブ生成部24は、第2ライン210等のそれぞれの座標情報を第2ライン設定部23から受けて、各第2ライン上の各位置の輝度値を表す第2輝度値カーブを生成する。例えば図3に示すように、第2輝度値カーブ生成部24は、第2ライン210上の各位置における輝度値を表す第2輝度値カーブ220を生成する。第2輝度値カーブ生成部24は、第2ライン210、211、212、・・・のそれぞれについて、ライン上の各位置における輝度値を表す第2輝度値カーブを生成する。そして、第2輝度値カーブ生成部24は、各第2ラインにおける第2輝度値カーブを第2勾配算出部25に出力する。
【0033】
(第2勾配算出部25)
第2勾配算出部25は、第2輝度値カーブを第2輝度値カーブ生成部24から受けて、第2輝度値カーブに基づいて位置に対する輝度値の勾配を求める。例えば、第2勾配算出部25は、第2ライン210上の輝度値を表す第2輝度値カーブ220に基づいて、第2ライン210上の各位置における輝度値の勾配を求める。
【0034】
さらに、第2勾配算出部25は、輝度値の勾配に基づいて外膜を構成する点(以下、「外膜点」と称する)を検出する。外膜点を検出する処理について説明する。まず、第2勾配算出部25は、内腔201内に設定された第2基準点(中心点203)から外側に向けて順番に輝度値の勾配を求めていき、勾配が負の値であって、予め設定した閾値以下になる点を検出する。次に、第2勾配算出部25は、その点の外側の領域であって、輝度値の勾配が予め設定された所定範囲内になる領域を検出する。さらに、第2勾配算出部25は、その領域の外側に向けて順番に輝度値の勾配を求めていき、勾配が正の値であって、予め設定された閾値以上になる点を、外膜点として検出する。
【0035】
遅延造影法によって取得された第2MR画像200は、内腔201が高信号(高輝度)になり、心筋202が低信号(低輝度)になるため、内腔201と心筋202との境界で輝度値の勾配が負になる。さらに、心筋202においては輝度値が低くなり、輝度値の変化が少ないため、輝度値の勾配が所定範囲内に含まれることになる。さらに、心筋202においては輝度値が低くなり、心筋202の外側の組織で輝度値が高くなるため、心筋202と心筋202の外側の組織との境界で、輝度値の正の勾配が大きくなる。このように、遅延造影法によって取得された第2MR画像の特徴を利用することで、心筋と外膜との境界を特定して、外膜を検出することが可能となる。例えば図3に示すように、第2勾配算出部25は、第2輝度値カーブ220に基づいて各位置に対する輝度値の勾配を求める。さらに、第2勾配算出部25は、勾配が負になって、その負の勾配が閾値以下になる点を検出し、その点の外側の領域であって、輝度値の勾配が所定範囲内となる領域を検出する。そして、第2勾配算出部25は、その領域の外側にある点であって、正の勾配が閾値以上になる外膜点230を検出する。第2勾配算出部25は、第2輝度値カーブ220以外の第2輝度値カーブについても、輝度値の勾配を求め、その勾配に基づいて外膜点を求める。そして、第2勾配算出部25は、各外膜点の座標情報を外膜検出部26に出力する。
【0036】
(外膜検出部26)
外膜検出部26は、各外膜点の座標情報を第2勾配算出部25から受けて、各外膜点を繋げることで、心筋の外膜の位置を特定する。例えば図3に示すように、外膜検出部26は、第2勾配算出部25によって検出された外膜点230等を繋げることで、心筋の外膜240の位置を特定する。そして、外膜検出部26は、外膜240の座標情報を梗塞部位抽出部30の検出領域設定部31に出力する。また、外膜検出部26は、外膜240の座法情報を画像出力部40のマーカ生成部42に出力する。
【0037】
(梗塞部位抽出部30)
次に、梗塞部位抽出部30について説明する。梗塞部位抽出部30は、検出領域設定部31と、高信号領域検出部32と、梗塞部位検出部33とを備えている。梗塞部位抽出部30は、第2MR画像データ(遅延造影画像データ)に基づいて、内膜と外膜との間の範囲を対象として心筋梗塞部位を検出する。以下、梗塞部位抽出部30の各部について説明する。
【0038】
(検出領域設定部31)
検出領域設定部31は、第2MR画像データ(遅延造影画像データ)を第2画像入力部21から受け付け、内膜の座標情報を内膜検出部16から受け付け、さらに、外膜の座標情報を外膜検出部26から受け付ける。そして、検出領域設定部31は、第2MR画像(遅延造影画像)において、内膜の座標情報と外膜の座標情報とに基づいて、内膜と外膜との間の領域を特定し、その領域を検出領域として定義する。この検出領域内を対象として心筋梗塞部位を検出する。すなわち、内膜の外側の領域であり、かつ、外膜の内側の領域を対象として心筋梗塞部位を検出する。これにより、内腔と心筋梗塞部位とを区別して、心筋梗塞部位を検出することが可能となる。検出領域の1例について図4を参照して説明する。図4は、遅延造影法によって取得された第2MR画像を示す図である。検出領域設定部31は、第2MR画像200において、内膜140と外膜240とを特定し、内膜140と外膜240との間の領域を検出領域250として定義する。そして、検出領域設定部31は、検出領域250の座標情報を高信号領域検出部32に出力する。
【0039】
(高信号領域検出部32)
高信号領域検出部32は、検出領域250の座標情報を検出領域設定部31から受け付けて、その検出領域250を対象として、第2MR画像200において輝度値が予め設定された閾値以上となる領域(高信号領域)を検出する。すなわち、高信号領域検出部32は、内膜140と外膜240との間の領域で、輝度値が閾値以上となる領域を検出する。このとき、閾値には相対的な値を用いることが好ましい。例えば、高信号領域検出部32は、輝度値のレンジ(0%〜100%)のうち、予め設定されたパーセンテージ以上の輝度値を有する領域を検出する。MRI装置においては、同一部位であっても撮影条件によって輝度値が変化するため、輝度値の絶対的な値を用いずに、輝度値のレンジを基準にした相対的な値を用いることが好ましい。そして、高信号領域検出部32は、輝度値が閾値以上となる領域(高信号領域)の座標情報を梗塞部位検出部33に出力する。
【0040】
(梗塞部位検出部33)
梗塞部位検出部33は、高信号領域の座標情報を高信号領域検出部32から受け付けて、第2MR画像において輝度値が閾値以上となる領域(高信号領域)のうち、大きさが予め設定された所定の大きさ以上の領域を心筋梗塞部位として検出する。すなわち、梗塞部位検出部33は、第2MR画像において輝度値が閾値以上となる領域が連続している領域を、心筋梗塞部位として検出する。例えば図4に示すように、梗塞部位検出部33は、第2MR画像200において輝度値が閾値以上となる領域のうち、大きさが予め設定された所定の大きさ以上の心筋梗塞部位260を検出する。そして、梗塞部位検出部33は、心筋梗塞部位260の座標情報を画像出力部40のマーカ生成部42に出力する。
【0041】
(画像出力部40)
次に、画像出力部40について説明する。画像出力部40は、表示画像入力部41、マーカ生成部42、表示制御部43、及び表示部44を備えている。画像出力部40は、MR画像を表示部44に表示させるとともに、そのMR画像上において、梗塞部位抽出部30にて検出された心筋梗塞部位を識別可能にして表示部44に表示させる。以下、画像出力部40について説明する。
【0042】
(表示画像入力部41)
表示画像入力部41は、MRI装置を用いて被検体の心臓を撮影することで取得されたMR画像データを受け付けて、MR画像データを表示制御部43に出力する。例えば、表示画像入力部41は、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像データを受け付けて、第1MR画像データを表示制御部43に出力する。または、表示画像入力部41は、遅延造影法によって取得された第2MR画像データ(遅延造影画像データ)を受け付けて、第2MR画像データを表示制御部43に出力する。
【0043】
(マーカ生成部42)
マーカ生成部42は、心筋梗塞部位の座標情報を梗塞部位検出部33から受けて、検出された心筋梗塞部位の形状を表す梗塞部位マーカを生成する。例えば、マーカ生成部42は、心筋梗塞部位の輪郭を表す梗塞部位マーカを生成しても良いし、心筋梗塞部位を塗りつぶした2次元のマーカを生成しても良い。また、マーカ生成部42は、内膜の座標情報を内膜抽出部10から受けて、検出された内膜の形状を表す内膜マーカを生成しても良い。同様に、マーカ生成部42は、外膜の座標情報を外膜抽出部20から受けて、検出された外膜の形状を表す外膜マーカを生成しても良い。例えば、マーカ生成部42は、内膜の輪郭を表す内膜マーカを生成し、また、外膜の輪郭を表す外膜マーカを生成する。マーカ生成部42は、梗塞部位マーカの位置を示す座標情報と、内膜マーカの位置を示す座標情報と、外膜マーカの位置を示す座標情報とを表示制御部43に出力する。
【0044】
(表示制御部43)
表示制御部43は、MR画像データを表示画像入力部41から受け付けて、そのMR画像データに基づくMR画像を表示部44に表示させる。例えば、表示制御部43は、第1MR画像データに基づく第1MR画像を表示部44に表示させる。または、表示制御部43は、第2MR画像データ(遅延造影画像データ)に基づく第2MR画像(遅延造影画像)を表示部44に表示させる。さらに、表示制御部43は、梗塞部位マーカをマーカ生成部42から受け付けて、MR画像に表わされた心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカを重ねて表示部44に表示させる。ここで、MR画像の表示例について図5を参照して説明する。図5は、表示部に表示されるMR画像の1例を示す図である。1例として、表示制御部43は、第1MR画像100を表示部44に表示させる。さらに、表示制御部43は、第1MR画像100に表わされた心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカ290を重ねて表示させる。また、図5に示すように、表示制御部43は、第1MR画像100に表わされた内膜の位置に内膜マーカ270を重ね、外膜の位置に外膜マーカ280を重ねて表示部44に表示させても良い。このように心筋梗塞部位を強調して表示することで、操作者は、心筋における梗塞部位を認識することが可能となる。また、表示制御部43は、第2MR画像200(遅延造影画像)を表示部44に表示させ、その第2MR画像200に梗塞部位マーカ290を重ねて表示させても良い。
【0045】
なお、表示部44は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成され、画面上にMR画像が表示される。また、医用画像処理装置には図示しない操作部が設けられている。この操作部は、ジョイスティックやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチ、各種ボタン、又はキーボードなどで構成されている。
【0046】
また、内膜抽出部10は、図示しないCPUと、ROM、RAMなどの図示しない記憶装置とによって構成されている。記憶装置には、内膜抽出部10の機能を実行するための内膜抽出プログラムが記憶されている。また、内膜抽出プログラムには、第1画像入力部11の機能を実行するための第1画像入力プログラム、第1基準点設定部12の機能を実行するための第1基準点設定プログラム、第1ライン設定部13の機能を実行するための第1ライン設定プログラム、第1輝度値カーブ生成部14の機能を実行するための第1輝度値カーブ生成プログラム、第1勾配算出部15の機能を実行するための第1勾配算出プログラム、及び、内膜検出部16の機能を実行するための内膜検出プログラムが含まれている。そして、CPUが第1画像入力プログラムを実行することで、第1MR画像データを読み込む。また、CPUが第1基準点設定プログラムを実行することで、第1MR画像に第1基準点を設定する。また、CPUが第1ライン設定プログラムを実行することで、第1基準点から放射状に延びる第1ラインを設定し、第1輝度値カーブ生成プログラムを実行することで、第1ライン上の各位置の輝度値を表す第1輝度値カーブを生成する。また、CPUが第1勾配算出プログラムを実行することで、第1輝度値カーブに基づいて位置に対する輝度値の勾配を求め、さらに、その勾配に基づいて内膜点を検出する。そして、CPUが内膜検出プログラムを実行することで、各第1ラインにおける内膜点を繋げて、心筋の内膜を特定する。
【0047】
また、外膜抽出部20は、図示しないCPUと、ROM、RAMなどの図示しない記憶装置とによって構成されている。記憶装置には、外膜抽出部20の機能を実行するための外膜抽出プログラムが記憶されている。また、外膜抽出プログラムには、第2画像入力部21の機能を実行するための第2画像入力プログラム、第2基準点設定部22の機能を実行するための第2基準点設定プログラム、第2ライン設定部23の機能を実行するための第2ライン設定プログラム、第2輝度値カーブ生成部24の機能を実行するための第2輝度値カーブ生成プログラム、第2勾配算出部25の機能を実行するための第2勾配算出プログラム、及び、外膜検出部26の機能を実行するための外膜検出プログラムが含まれている。そして、CPUが第2画像入力プログラムを実行することで、第2MR画像データを読み込む。また、CPUが第2基準点設定プログラムを実行することで、第2MR画像に第2基準点を設定する、また、CPUが第2ライン設定プログラムを実行することで、第2基準点から放射状に延びる第2ラインを設定し、第2輝度値カーブ生成プログラムを実行することで、第2ライン上の各位置の輝度値を表す第2輝度値カーブを生成する。また、CPUが第2勾配算出プログラムを実行することで、第2輝度値カーブに基づいて位置に対する輝度値の勾配を求め、さらに、その勾配に基づいて外膜点を検出する。そして、CPUが外膜検出プログラムを実行することで、各第2ラインにおける外膜点を繋げて、心筋の外膜を特定する。
【0048】
また、梗塞部位抽出部30は、図示しないCPUと、ROM、RAMなどの図示しない記憶装置とによって構成されている。記憶装置には、梗塞部位抽出部30の機能を実行するために、梗塞部位抽出プログラムが記憶されている。また、梗塞部位抽出プログラムには、検出領域設定部31の機能を実行するための検出領域設定プログラム、高信号領域検出部32の機能を実行するための高信号領域検出プログラム、及び、梗塞部位検出部33の機能を実行するための梗塞部位検出プログラムが含まれている。そして、CPUが検出領域設定プログラムを実行することで、第2MR画像上において、内膜と外膜との間の領域を検出領域として定義する。そして、CPUが高信号領域検出プログラムを実行することで、その検出領域内において輝度値が閾値以上の領域を検出し、さらに、梗塞部位検出プログラムを実行することで、検出した領域のうち、大きさが所定の大きさ以上となる領域を心筋梗塞部位として検出する。
【0049】
また、表示画像入力部41と、マーカ生成部42と、表示制御部43とは、それぞれ図示しないCPUと、ROM、RAMなどの図示しない記憶装置とによって構成されている。記憶装置には、表示画像入力部41の機能を実行する表示画像入力プログラム、マーカ生成部42の機能を実行するためのマーカ生成プログラム、及び、表示制御部43の機能を実行するための表示制御プログラムが記憶されている。そして、CPUが表示画像入力プログラムを実行することで、MR画像データを読み込む。また、CPUがマーカ生成プログラムを実行することで、心筋梗塞部位を表すマーカを生成する。そして、CPUが表示制御プログラムを実行することで、MR画像に心筋梗塞部位を表すマーカを重ねて表示部44に表示させる。
【0050】
なお、内膜抽出プログラム、外膜抽出プログラム、梗塞部位抽出プログラム、表示画像入力プログラム、マーカ生成プログラム、及び表示制御プログラムによって、この発明の「医用画像処理プログラム」の1例を構成する。
【0051】
なお、第1実施形態においては、医用画像処理装置の外部にMRI装置を設けているが、第1実施形態に係る医用画像処理装置とMRI装置とによって医用画像診断装置を構成しても、第1実施形態に係る医用画像処理装置と同じ作用及び効果を奏することが可能である。
【0052】
(動作)
次に、第1実施形態に係る医用画像処理装置の動作について、図6から図9を参照して説明する。図6から図9は、この発明の第1実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【0053】
(ステップS01)
まず、第1画像入力部11は、MRI装置を用いてブラックブラッド法によって被検体の心臓を撮影することで取得された第1MR画像データを受け付けて、第1基準点設定部12に出力する。
【0054】
(ステップS02)
そして、内膜抽出部10は、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像データに基づいて、心筋の内膜を検出する。ここで、ステップS02における詳細な処理について図7を参照して説明する。
【0055】
(ステップS11)
第1基準点設定部12は、第1MR画像に表わされている内腔の内部に第1基準点を設定する。例えば図2に示すように、第1MR画像100の中心点103を検出し、その中心点103を第1基準点に設定する。そして、第1基準点設定部12は、第1基準点(中心点103)の座標情報を第1ライン設定部13に出力する。
【0056】
(ステップS12)
第1ライン設定部13は、第1MR画像100上に設定された中心点103(第1基準点)から放射状に延びる第1ライン110等を設定する。第1ライン110等は、それぞれ所定の角度間隔をおいて設定されている。そして、第1ライン設定部13は、第1MR画像100上における第1ライン110等のそれぞれの座標情報を第1輝度値カーブ生成部14に出力する。
【0057】
(ステップS13)
第1輝度値カーブ生成部14は、第1MR画像100において、それぞれの第1ライン上の各位置の輝度値を表す第1輝度値カーブを生成する。例えば図2に示すように、第1輝度値カーブ生成部14は、第1MR画像100において、第1ライン110上の各位置における輝度値を表す第1輝度値カーブ120を生成する。そして、第1輝度値カーブ生成部14は、各第1ラインにおける第1輝度値カーブを第1勾配算出部15に出力する。
【0058】
(ステップS14)
第1勾配算出部15は、第1輝度値カーブに基づいて位置に対する輝度値の勾配を求める。さらに、第1勾配算出部15は、勾配が正の値であって、所定の閾値以上になる内膜点を検出する。このとき、第1勾配算出部15は、正の勾配が閾値以上となる点であって、中心点103(第1基準点)から最も近い位置にある点を、内膜点として検出する。すなわち、第1勾配算出部15は、正の勾配が閾値以上となる内膜点を中心点103から検索して特定する。第1勾配算出部15は、各第1輝度値カーブのそれぞれに基づいて各内膜点を検出し、各内膜点の座標情報を内膜検出部16に出力する。
【0059】
(ステップS15)
内膜検出部16は、第1勾配算出部15によって検出された各内膜点を繋げることで、心筋の内膜の位置を特定する。例えば図2に示すように、内膜検出部16は、第1勾配算出部15によって検出された内膜点130等を繋げることで、心筋の内膜140の位置を特定する。
【0060】
(ステップS03)
一方、第2画像入力部21は、MRI装置を用いて遅延造影法によって被検体の心臓を撮影することで取得された第2MR画像データ(遅延造影画像データ)を受け付けて、第2基準点設定部22に出力する。
【0061】
(ステップS04)
そして、外膜抽出部20は、遅延造影法によって取得された第2MR画像データに基づいて、心筋の外膜を検出する。ここで、ステップS04における詳細な処理について図8を参照して説明する。
【0062】
(ステップS21)
第2基準点設定部22は、第2MR画像に表わされている内腔の内部に第2基準点を設定する。例えば図3に示すように、第2MR画像200の中心点203を検出し、その中心点203を第2基準点に設定する。そして、第2基準点設定部22は、第2基準点(中心点203)の座標情報を第2ライン設定部23に出力する。
【0063】
(ステップS22)
第2ライン設定部23は、第2MR画像200上に設定された中心点203(第2基準点)から放射状に延びる第2ライン210等を設定する。第2ライン210等は、それぞれ所定の角度間隔をおいて設定されている。そして、第2ライン設定部23は、第2MR画像200上における第2ライン210等のそれぞれの座標情報を第2輝度値カーブ生成部24に出力する。
【0064】
(ステップS23)
第2輝度値カーブ生成部24は、第2MR画像200において、それぞれの第2ライン上の各位置の輝度値を表す第2輝度値カーブを生成する。例えば図3に示すように、第2輝度値カーブ生成部24は、第2MR画像200において、第2ライン210上の各位置における輝度値を表す第2輝度値カーブ220を生成する。そして、第2輝度値カーブ生成部24は、各第2ラインにおける第2輝度値カーブを第2勾配算出部25に出力する。
【0065】
(ステップS24)
第2勾配算出部25は、第2輝度値カーブに基づいて位置に対する輝度値の勾配を求める。さらに、第2勾配算出部25は、内腔201内に設定された中心点203から外側に向けて順番に輝度値の勾配を求めていき、勾配が負の値であって、所定の閾値以下になる点を検出する。次に、第2勾配算出部25は、その点の外側の領域であって、輝度値の勾配が所定範囲内になる領域を検出する。そして、第2勾配算出部25は、その領域の外側に向けて順番に輝度値の勾配を求めていき、勾配が正の値であって、所定の閾値以上になる点を、外膜点として検出する。すなわち、第2勾配算出部25は、正の勾配が閾値以上となる外膜点を中心点203から検索して特定する。第2勾配算出部25は、各第2輝度値カーブのそれぞれに基づいて各外膜点を検出し、各外膜点の座標情報を外膜検出部26に出力する。
【0066】
(ステップS25)
外膜検出部26は、第2勾配算出部25によって検出された各外膜点を繋げることで、心筋の外膜の位置を特定する。例えば図3に示すように、外膜検出部26は、第2勾配算出部25によって検出された外膜点230等を繋げることで、心筋の外膜240の位置を特定する。
【0067】
(ステップS05)
そして、梗塞部位抽出部30は、第2MR画像データを用いて、内膜と外膜との間の領域から心筋梗塞部位を検出する。ここで、ステップS05における詳細な処理について図9を参照して説明する。
【0068】
(ステップS31)
まず、検出領域設定部31は、第2MR画像(遅延造影画像)において、内膜の座標情報と外膜の座標情報とに基づいて、内膜と外膜との間の領域を特定し、その領域を検出領域として定義する。例えば図3に示すように、検出領域設定部31は、第2MR画像200において、内膜140と外膜240との間の領域を検出領域250として定義する。そして、検出領域設定部31は、検出領域250の座標情報を高信号領域検出部32に出力する。
【0069】
(ステップS32)
高信号領域検出部32は、検出領域250を対象として、第2MR画像200において輝度値が所定の閾値以上となる高信号領域を検出する。
【0070】
(ステップS33、ステップS34)
そして、梗塞部位検出部33は、第2MR画像において輝度値が閾値以上となる領域(高信号領域)のうち、大きさが所定の大きさ以上の領域を心筋梗塞部位として検出する。すなわち、梗塞部位検出部33は、輝度値が閾値以上となる領域が連続している領域を、心筋梗塞部位として検出する。
【0071】
(ステップS06)
そして、マーカ生成部42は、心筋梗塞部位の座標情報を梗塞部位検出部33から受け付けて、心筋梗塞部位の形状を表す梗塞部位マーカを生成する。また、マーカ生成部42は、内膜の形状を表す内膜マーカや、外膜の形状を表す外膜マーカを生成しても良い。
【0072】
(ステップS07)
一方、表示画像入力部41は、MR画像データを受け付けて表示制御部43に出力する。例えば、表示画像入力部41は、第1MR画像データ又は第2MR画像データを受け付けて表示制御部43に出力する。表示制御部43は、第1MR画像又は第2MR画像を表示部44に表示させ、さらに、第1MR画像又は第2MR画像に表わされた心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカを重ねて表示部44に表示させる。例えば図5に示すように、表示制御部43は第1MR画像100に表わされた心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカ290を重ねて表示部44に表示させる。さらに、表示制御部43は、第1MR画像100に表わされた内膜の位置に内膜マーカ270を重ね、外膜の位置に外膜マーカ280を重ねて表示部44に表示させても良い。
【0073】
以上のように、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像に基づいて内膜を検出し、遅延造影法によって取得された第2MR画像に基づいて外膜を検出し、内膜と外膜との間を検出領域とすることで、第2MR画像の輝度値に基づいて心筋梗塞部位をより正確に検出することが可能となる。すなわち、第2MR画像において内腔の輝度値と心筋梗塞部位の輝度値との差が僅かであっても、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像に基づいて内膜を検出し、その内膜の外側を検出領域とすることで、第2MR画像において内腔と心筋梗塞部位とを区別して心筋梗塞部位を検出することが可能となる。そして、心筋梗塞部位を表すマーカを生成してMR画像に重ねて表示することで、心筋梗塞部位の位置や広がりの程度を観察することが可能となる。このように、高分解能のMR画像上に心筋梗塞部位を強調して表示することが可能となるため、従来技術に係るCAG検査、SPECT検査、及びPET検査などの検査方法と比較して、心筋梗塞の診断に対して有効な情報を提供することが可能となる。
【0074】
なお、第1実施形態では、1つの断面におけるMR画像を対象として内膜と外膜と心筋梗塞部位とを検出しているが、複数の断面におけるMR画像を対象として検出を行っても良い。この場合、MRI装置を用いて複数の断面における第1MR画像データを含む第1MR画像データ群を取得し、複数の断面における第2MR画像データを含む第2MR画像データ群を取得する。内膜抽出部10は、第1MR画像データ群に含まれる各断面の第1MR画像からそれぞれ内膜を検出する。外膜抽出部20は、第2MR画像データ群に含まれる各断面の第2MR画像からそれぞれ外膜を検出する。そして、梗塞部位抽出部30は、各断面における第2MR画像からそれぞれ心筋梗塞部位を検出する。そして、梗塞部位抽出部30は、各断面における心筋梗塞部位を繋ぎ合せることで、3次元空間における心筋梗塞部位を特定する。これにより、3次元空間における心筋梗塞部位の位置や広がりの程度を把握することが可能となる。
【0075】
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2実施形態に係る医用画像処理装置について図10を参照して説明する。図10は、この発明の第2実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【0076】
第2実施形態に係る医用画像処理装置は、第1実施形態に係る外膜抽出部20に代えて外膜抽出部20Aを備えている。第2実施形態に係る外膜抽出部20Aは、第1実施形態に係る外膜抽出部20に加えて、内膜拡張部27を備えている。外膜抽出部20A以外の構成は、第1実施形態に係る医用画像処理装置の構成と同じであるため、外膜抽出部20Aについて詳しく説明する。
【0077】
(内膜抽出部10)
内膜抽出部10は、上述した第1実施形態と同様に、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像データに基づいて心筋の内膜を検出する。内膜検出部16は、検出した内膜の座標情報を、検出領域設定部31とマーカ生成部42とに出力し、さらに、外膜抽出部20Aの内膜拡張部27に出力する。
【0078】
(外膜抽出部20A)
第2実施形態に係る外膜抽出部20Aは、内膜抽出部10によって検出された内膜の位置を、モルフォロジカル・フィルタを用いて拡張し、第2MR画像データ(遅延造影画像データ)に基づいて、内膜とその拡張した位置との間から外膜を検出する。
【0079】
(内膜拡張部27)
内膜拡張部27は、内膜の座標情報を内膜検出部16から受け付けて、モルフォロジカル・フィルタを用いて内膜を拡張することで、拡張内膜の位置を求める。例えば、内膜拡張部27は、内膜の形状を保ったまま、内膜の大きさを大きくすることで、拡張内膜を求める。このとき、内膜拡張部27は、心臓の部位に応じて内膜を拡張する範囲の大きさを変えることが好ましい。つまり、心臓の部位ごとに心筋の厚さが異なるため、その厚さに応じるために、心臓の部位ごとに内膜を拡張する範囲の大きさを変えることが好ましい。1例として、心房壁の場合は2〜3mm、内膜を拡張し、心右室壁の場合は2〜4mm、内膜を拡張し、心左室壁の場合は8〜11mm、内膜を拡張する。そして、内膜拡張部27は、内膜の座標情報と、拡張した拡張内膜の座標情報とを第2勾配算出部25に出力する。
【0080】
ここで、モルフォロジカル・フィルタによって拡張された内膜を図11に示す。図11は、遅延造影法によって取得された第2MR画像を示す図である。第2MR画像200は遅延造影法によって取得された2次元画像である。上述した第1実施形態と同様に、第2基準点設定部22は、第2MR画像200の中心点203を第2基準点に設定する。内膜140は、内膜抽出部10によって検出された膜である。拡張内膜150は、内膜拡張部27によって拡張された膜である。
【0081】
なお、上述した第1実施形態と同様に、第2ライン設定部23は、第2基準点から放射状に延びる複数の第2ライン210等を設定する。第2輝度値カーブ生成部24は、それぞれの第2ライン上の各位置の輝度値を表す第2輝度値カーブを生成する。
【0082】
(第2勾配算出部25)
そして、第2勾配算出部25は、第2輝度値カーブに基づいて位置に対する輝度値の勾配を求める。例えば図11に示すように、第2勾配算出部25は、第2ライン210上の輝度値を表す第2輝度値カーブ220に基づいて、第2ライン上の各位置における輝度値の勾配を求める。そして、第2勾配算出部25は、輝度値の勾配に基づいて外膜点を検出する。第2実施形態においては、第2勾配算出部25は、内膜140と拡張内膜150との間を検出領域として、その検出領域内で外膜点を検出する。すなわち、第2勾配算出部25は、内膜140の位置から外側に向けて順番に輝度値の勾配を求めていき、勾配が正の値であって、予め設定された閾値以上になる点を外膜点として検出する。このとき、第2勾配算出部25は、内膜140と拡張内膜150との間の検出領域内において、内膜140の位置から外側に向けて順番に輝度値の勾配を求めていき、正の勾配が初めて閾値以上となる点(最も内側にある点)を、外膜点として検出する。例えば図11に示すように、第2勾配算出部25は、第2輝度値カーブ220に基づいて、内膜140と拡張内膜150との間の範囲を対象として輝度値の勾配を求め、正勾配が初めて閾値以上となる外膜点230を検出する。そして、第2勾配算出部25は、第2輝度値カーブ220以外の第2輝度値カーブについても、内膜140と拡張内膜150との間で輝度値の勾配を求め、その勾配に基づいて外膜点を求める。第2勾配算出部25は、各外膜点の座標情報を外膜検出部26に出力する。
【0083】
なお、第2勾配算出部25は、ノイズの影響を考慮して内膜の位置についてマージンを取るために、内膜より所定距離内側から拡張内膜までの間の範囲を検出領域として、その検出領域内で外膜を検出しても良い。例えば、第2勾配算出部25は、内膜140よりも所定距離内側の位置から拡張内膜150までの間の範囲を検出領域とし、その検出領域内で外膜を検出しても良い。
【0084】
(外膜検出部26)
外膜検出部26は、上述した第1実施形態と同様に、各外膜点を繋げることで、心筋の外膜の位置を特定する。例えば図11に示すように、外膜検出部26は、第2勾配算出部25によって検出された外膜点230等を繋げることで、心筋の外膜240の位置を特定する。そして、外膜検出部26は、外膜240の座標情報を検出領域設定部31とマーカ生成部42とに出力する。
【0085】
梗塞部位検出部33は、第1実施形態と同様に、内膜と外膜との間の領域を検出領域として、第2MR画像データ(遅延造影画像データ)に基づいて、輝度値に基づいて心筋梗塞部位を特定する。また、画像出力部40は、第1実施形態と同様に、心筋梗塞部位を表す梗塞部位マーカを生成し、第1MR画像や第2MR画像などのMR画像に、その梗塞部位マーカを重ねて表示部44に表示させる。
【0086】
なお、外膜抽出部20Aは、CPUと記憶装置とによって構成されている。記憶装置には、外膜抽出部20Aの機能を実行するための外膜抽出プログラムが記憶されている。第2実施形態に係る外膜抽出プログラムには、第1実施形態に係るプログラムに加えて、内膜拡張部27の機能を実行するための内膜拡張プログラムが含まれている。
【0087】
また、第1実施形態と同様に、第2実施形態に係る医用画像処理装置とMRI装置とによって医用画像診断装置を構成しても、第2実施形態に係る医用画像処理装置と同じ作用及び効果を奏することが可能である。
【0088】
(動作)
次に、第2実施形態に係る医用画像処理装置の動作について、図12と図13とを参照して説明する。図12と図13とは、この発明の第2実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【0089】
(ステップS41、ステップS42)
内膜抽出部10は、第1実施形態と同様に、ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像データを読み込み、その第1MR画像データに基づいて心筋の内膜を検出する。ステップS42における内膜の検出処理は、第1実施形態に係る処理と同じであるため説明を省略する。内膜抽出部10は、内膜の座標情報を、検出領域設定部31とマーカ生成部42と内膜拡張部27とに出力する。
【0090】
(ステップS43、ステップS44)
一方、外膜抽出部20Aの第2画像入力部21は、遅延造影法によって取得された第2MR画像データ(遅延造影画像データ)を読み込み(ステップS43)、第2基準点設定部22に第2MR画像データを出力する。そして、外膜抽出部20Aは、第2MR画像データに基づいて、内膜と拡張内膜との間で外膜を検出する(ステップS44)。ここで、ステップS44における詳細な処理について図13を参照して説明する。
【0091】
(ステップS51)
まず、第2基準点設定部22は、第1実施形態と同様に、第2MR画像に表わされている内腔の内部に第2基準点を設定する。例えば図11に示すように、第2MR画像200の中心点203を検出し、中心点203を第2基準点に設定する。
【0092】
(ステップS52)
内膜拡張部27は、内膜の座標情報を内膜検出部16から受け付けて、モルフォロジカル・フィルタを用いて内膜を拡張することで、拡張内膜の位置を求める。例えば、内膜拡張部27は、内膜の形状を保ったまま、内膜の大きさを大きくすることで、拡張内膜を求める。そして、内膜拡張部27は、内膜の座標情報と、拡張した拡張内膜の座標情報とを第2勾配算出部25に出力する。例えば図11に示すように、内膜拡張部27は、内膜140を拡張して拡張内膜150の位置を求め、内膜140の座標情報と拡張内膜150の座標情報とを第2勾配算出部25に出力する。
【0093】
(ステップS53)
一方、第2ライン設定部23は、第2MR画像200上に設定された中心点203(第2基準点)から放射状に延びる複数の第2ライン210等を設定し、第2ライン210等のそれぞれの座標情報を第2輝度値カーブ生成部24に出力する。
【0094】
(ステップS54)
第2輝度値カーブ生成部24は、第2MR画像200において、それぞれの第2ライン上の各位置の輝度値を表す第2輝度値カーブを生成し、各第2ラインにおける第2輝度値カーブを第2勾配算出部25に出力する。
【0095】
(ステップS55)
第2勾配算出部25は、内膜と拡張内膜との間を検出領域として、その検出領域内で外膜点を検出する。例えば図11に示すように、第2勾配算出部25は、内膜140の位置から外側に向けて順番に輝度値の勾配を求めていき、勾配が正の値であって、初めて閾値以上になる点を外膜点として検出する。このとき、第2勾配算出部25は、内膜140と拡張内膜150との間で輝度値の勾配を求め、その勾配に基づいて外膜点を検出する。例えば図11に示すように、第2勾配算出部25は、第2輝度値カーブ220に基づいて、内膜140と拡張内膜150との間の範囲を対象として輝度値の勾配を求め、正勾配が初めて閾値以上となる外膜点230を検出する。第2勾配算出部25は、各第2輝度値カーブのそれぞれに基づいて各外膜点を検出し、各外膜点の座標情報を外膜検出部26に出力する。
【0096】
(ステップS56)
外膜検出部26は、第2勾配算出部25によって検出された各外膜点を繋げることで、心筋の外膜の位置を特定する。例えば図11に示すように、外膜検出部26は、第2勾配算出部25によって検出された外膜点230等を繋げることで、心筋の外膜240の位置を特定する。
【0097】
(ステップS45)
そして、梗塞部位抽出部30は、第2MR画像データを用いて、内膜と外膜との間の領域を検出領域として、第2MR画像データの輝度値に基づいて心筋梗塞部位を検出する。
【0098】
(ステップS46、ステップS47)
マーカ生成部42は、心筋梗塞部位の形状を表す梗塞部位マーカを生成する(ステップS47)。そして、表示制御部43は、第1MR画像又は第2MR画像などのMR画像に表わされた心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカを重ねて表示部44に表示させる。
【0099】
以上のように、第2実施形態に係る医用画像処理装置においても、内膜と外膜との間を検出領域とすることで、輝度値に基づいて心筋梗塞部位をより正確に検出することが可能となる。
【0100】
また、第1実施形態と同様に、複数の断面におけるMR画像を対象として、それぞれの断面で内膜と外膜と心筋梗塞部位とを検出しても良い。これにより、3次元空間における心筋梗塞部位の位置と広がりの程度を把握することができる。
【0101】
[第3の実施の形態]
次に、この発明の第3実施形態に係る医用画像処理装置について図14を参照して説明する。図14は、この発明の第3実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【0102】
第3実施形態に係る医用画像処理装置は、第1実施形態に係る画像出力部40に代えて画像解析部50を備えている。内膜抽出部10、外膜抽出部20、及び梗塞部位抽出部30は、第1実施形態に係る医用画像処理装置と同じ処理を行うため、画像解析部50について詳しく説明する。なお、外膜抽出部20の代わりに、第2実施形態に係る外膜抽出部20Aを備えていても良い。
【0103】
(画像解析部50)
画像解析部50は、解析部51と表示制御部52と表示部53とを備えている。解析部51は、内膜の座標情報を内膜検出部16から受け付け、外膜の座標情報を外膜検出部26から受け付け、心筋梗塞部位の座標情報を梗塞部位検出部33から受け付ける。例えば、内膜抽出部10が、複数の断面における第1MR画像を対象として各断面における内膜を検出する。同様に、外膜抽出部20が、複数の断面における第2MR画像を対象として各断面における外膜を検出する。そして、梗塞部位抽出部30が、各断面における第2MR画像からそれぞれ心筋梗塞部位を検出する。そして、内膜検出部16は、各断面における内膜の座標情報を解析部51に出力し、外膜検出部26は、各断面における外膜の座標情報を解析部51に出力し、梗塞部位検出部33は、各断面における心筋梗塞部位の座標情報を解析部51に出力する。
【0104】
解析部51は、複数の断面における内膜と外膜と心筋梗塞部位とを同一の空間内に配置することで、輝度値の時間変化がカラーマップとして表わされるいわゆるBull’s eyeデータを作成する。表示制御部52は、そのデータに基づく画像を表示部53に表示させる。
【0105】
また、各時相の各断面におけるMR画像から内膜、外膜、及び心筋梗塞部位を検出した場合、それらの動きを動画で表示することができる。例えば、内膜抽出部10は、各時相の各断面における第1MR画像から内膜を検出し、外膜抽出部20は、各時相の各断面における第2MR画像から外膜を検出し、梗塞部位抽出部30は、各時相の各断面における第2MR画像から心筋梗塞部位を検出する。解析部51は、それらの情報を受け付けて、各時相における各断面の内膜と外膜と心筋梗塞部位とによって、各時相における3次元画像データを生成する。表示制御部52は、各時相における3次元画像を時相の順番に表示部53に表示させる。
【0106】
ここで、解析部51によって得られた画像を図15に示す。図15は、心筋梗塞部位などの検出結果から得られた画像を示す図である。例えば、カラーマップ画像310によって、外膜と心筋梗塞部位との相対的な位置関係をBull’s eye表示することができる。このカラーマップ画像310においては、輝度値の時間変化に応じて表示色を変えることで、心筋梗塞部位を表すことができる。また、各時相における3次元画像300を時相の順番に表示することで、心臓の挙動を動画で表示することができる。
【0107】
なお、解析部51は、CPUと記憶装置とによって構成されている。記憶装置には、解析部51の機能を実行するための解析プログラムが記憶されている。CPUが解析プログラムを実行することで、カラーマップ画像などの画像データを生成する。
【0108】
また、第1実施形態と同様に、第3実施形態に係る医用画像処理装置とMRI装置とによって医用画像診断装置を構成しても、第3実施形態に係る医用画像処理装置と同じ作用及び効果を奏することが可能である。
【0109】
[第4の実施の形態]
次に、この発明の第4実施形態に係る医用画像処理装置について図16を参照して説明する。図16は、この発明の第4実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【0110】
第4実施形態に係る医用画像処理装置は、第1実施形態に係る画像出力部40に代えて画像出力部40Aを備えている。第4実施形態に係る画像出力部40Aは、第1実施形態に係る画像出力部40に加えて、責任血管検出部45を備えている。画像出力部40A以外の構成は、第1実施形態に係る医用画像処理装置の構成と同じであるため、画像出力部40Aについて詳しく説明する。なお、外膜抽出部20の代わりに、第2実施形態に係る外膜抽出部20Aを備えていても良い。
【0111】
第4実施形態においては、MRI装置によるWhole Heart Imaging技術を用いて、心臓の全領域の3次元画像データを収集する。例えば、3D Balanced TFE法などの撮影方法を用いることで、心臓の3次元画像データを収集することができる。呼吸同期やk空間における処理を行うことで、心臓特有のアーチファクトを低減することができる。
【0112】
表示画像入力部41は、心臓の3次元画像データを受け付けて表示制御部43と責任血管検出部45とに出力する。また、梗塞部位検出部33は、第3実施形態と同様に、複数の断面における第2MR画像のそれぞれから、各断面における心筋梗塞部位を検出し、各断面における心筋梗塞部位の座標情報を責任血管検出部45に出力する。
【0113】
責任血管検出部45は、心筋梗塞部位の位置を利用することで、3次元画像から治療対象の血管(責任血管)の候補を特定する。責任血管検出部45は、3次元画像から冠動脈の枝(血管)を検出し、その冠動脈の枝と壁運動異常部位(心筋梗塞部位)との相対的な位置関係を利用することで、責任血管の候補を検出する。公知技術として、冠動脈枝がそれぞれ解剖学的にどの部位(枝)であるのか特定する方法が提案されている。責任血管検出部45はその方法を利用することで、撮影時における撮影対象の部位情報に基づいて、3次元画像から特定の枝(血管)を責任血管の候補として特定する。
【0114】
または、責任血管検出部45は、公知技術の心筋梗塞シミュレーション(電子情報通信学会論文誌 D−II Vol.J88−D−II No.5 pp.943−953)を行って、3次元画像から責任血管の候補を特定しても良い。または、責任血管検出部45は、3次元画像における壁運動異常部位(例えば、心筋梗塞の部位)をモルフォロジカル・フィルタで拡張して、最初に接した冠動脈を責任血管の候補として特定しても良い。または、責任血管検出部45は、検出した冠動脈枝から壁運動異常部位(心筋梗塞部位)までの距離をそれぞれ算出し、距離が閾値以内となる近傍の枝を責任血管の候補として特定しても良い。
【0115】
責任血管検出部45は、検出した責任血管の座標情報をマーカ生成部42に出力する。マーカ生成部42は、心筋梗塞部位の形状を表す梗塞部位マーカを生成し、さらに、責任血管の形状を表す責任血管マーカを生成する。
【0116】
表示制御部43は、心臓の3次元画像データを表示画像入力部41から受け付けて、その3次元画像データに基づく3次元画像を表示部44に表示させる。さらに、表示制御部43は、3次元画像に表わされた心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカを重ね、責任血管の位置に責任血管マーカを重ねて表示部44に表示させる。
【0117】
ここで、心臓の3次元画像を図17に示す。図17は、心臓の3次元画像を示す図である。表示制御部43は、心臓の3次元画像400に表わされている心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカ420を重ね、責任血管の位置に責任血管マーカ410を重ねて表示部44に表示させる。このように、責任血管と心筋梗塞部位とを特定してそれぞれを強調して表示することで、治療対象の血管を把握することが可能となる。さらに、高分解能な3次元のMR画像上に心筋梗塞部位を強調して表示することで、臨床上重要な情報となる心筋梗塞部位の位置や広がりの程度を3次元的に観察することが可能となる。
【0118】
また、心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカを重ねる変わりに、表示制御部43は、心臓の3次元画像400に表わされている心筋梗塞部位を、色付きのポリゴンで表わして3次元画像400に重ねて表示させても良い。また、梗塞部位マーカの代わりに、表示制御部43は、心臓の3次元画像400において、心筋梗塞部位とその他の部位とをそれぞれ異なる表示条件で表わして表示部44に表示させても良い。このように、心筋梗塞部位を、色付きのポリゴンで表示したり、表示条件を変えて表示したりすることで、心筋梗塞部位を強調して表示することが可能となる。
【0119】
なお、責任血管検出部45は、CPUと記憶装置とによって構成されている。記憶装置には、責任血管検出部45の機能を実行するための責任血管検出プログラムが記憶されている。そして、CPUが責任血管検出プログラムを実行することで、責任血管を検出する。
【0120】
また、第1実施形態と同様に、第4実施形態に係る医用画像処理装置とMRI装置とによって医用画像診断装置を構成しても、第4実施形態に係る医用画像処理装置と同じ作用及び効果を奏することができる。
【0121】
[第5の実施の形態]
次に、この発明の第5実施形態に係る医用画像処理装置について図18を参照して説明する。図18は、この発明の第5実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【0122】
第5実施形態に係る医用画像処理装置は、第1実施形態に係る医用画像処理装置に加えて、評価部60を備えている。評価部60以外の構成は、第1実施形態に係る医用画像処理装置の構成と同じであるため、評価部60について詳しく説明する。なお、外膜抽出部20の代わりに、第2実施形態に係る外膜抽出部20Aを備えていても良い。
【0123】
第5実施形態においては、MRI装置を用いて複数の断面における第1MR画像データを含む第1MR画像データ群を取得し、複数の断面における第2MR画像データを含む第2MR画像データ群を取得する。内膜抽出部10は、各断面の第1MR画像からそれぞれの内膜を検出し、外膜抽出部20は、各断面の第2MR画像からそれぞれの外膜を検出する。そして、梗塞部位抽出部30は、各断面における第2MR画像からそれぞれ心筋梗塞部位を検出する。外膜検出部26は、各断面における外膜の座標情報を、検出領域設定部31と、マーカ生成部42と、評価部60の判定部61とに出力する。また、梗塞部位検出部33は、各断面における心筋梗塞部位の座標情報を、マーカ生成部42と判定部61とに出力する。
【0124】
(評価部60)
評価部60は、判定部61と評価値算出部62とを備えている。評価部60は、梗塞部位抽出部30によって検出された各断面の心筋梗塞部位と、外膜抽出部20によって検出された各断面の外膜とに基づいて、検出された心筋梗塞部位が貫壁性梗塞か非貫壁性梗塞かを判定し、貫壁性梗塞と判定した場合は、心筋梗塞部位の広がりの程度を表す評価値を求める。以下、評価部60の各部について説明する。
【0125】
(判定部61)
判定部61は、各断面における心筋梗塞部位の座標情報を梗塞部位検出部33から受け付け、各断面における外膜の座標情報を外膜検出部26から受け付ける。そして、判定部61は、各断面における心筋梗塞部位と外膜とを同一空間上に配置することで、3次元空間における心筋梗塞部位の位置と外膜の位置とを特定する。例えば、判定部61は、各断面における心筋梗塞部位を繋ぎ合せることで、3次元空間における心筋梗塞部位の位置を特定し、各断面における外膜を繋ぎ合せることで、3次元空間における外膜の位置を特定する。そして、判定部61は、3次元空間における心筋梗塞部位の位置と外膜の位置とに基づいて、心筋梗塞部位と外膜とが接しているか否かを判定する。判定部61は、心筋梗塞部位と外膜とが接していない場合は、その心筋梗塞部位を非貫壁性梗塞と判定する。一方、判定部61は、心筋梗塞部位と外膜とが接している場合は、接している部分の心筋梗塞部位を貫壁性梗塞と判定する。判定部61は、この判定によって、非貫壁性梗塞の位置と貫壁性梗塞の位置とを特定する。
【0126】
貫壁性梗塞の判定方法について図19を参照して説明する。図19は、貫壁性の判定を行う処理を説明するための画像を示す図である。例えば、ある断面におけるMR画像510において、外膜512と心筋梗塞部位513とは接していないため、判定部61は、この断面における心筋梗塞部位513を非貫壁性梗塞と判定する。一方、ある断面におけるMR画像520において、外膜522と心筋梗塞部位523とは接しているため、判定部61は、この断面における心筋梗塞部位523を貫壁性梗塞と判定する。このように、判定部61は、3次元空間の各部において心筋梗塞部位と外膜とが接しているか否かを判定することで、心筋梗塞部位を非貫壁性梗塞と貫壁性梗塞とに分類する。そして、判定部61は、非貫壁性梗塞の座標情報と貫壁性梗塞の座標情報とを表示制御部43に出力する。
【0127】
(評価値算出部62)
評価値算出部62は、3次元空間における心筋梗塞部位の位置と外膜の位置とに基づいて、心筋梗塞部位と外膜とが接している部分の面積を求める。この面積は、Transmural Extent(内膜から外膜方向への心筋梗塞の広がりの指標)として、心筋梗塞の評価に用いられる。そして、評価値算出部62は、上記接していている部分の面積の値を表示制御部43に出力する。
【0128】
表示制御部43は、表示画像入力部41からMR画像データを受けて、そのMR画像を表示部44に表示させる。さらに、表示制御部43は、心筋梗塞部位を表す梗塞部位マーカをマーカ生成部42から受けて、MR画像に表わされた心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカを重ねて表示部44に表示させる。さらに、表示制御部43は、心筋梗塞部位と外膜とが接している部分の面積の値を評価値算出部62から受けて、その面積の値を表示部44に表示させる。また、表示制御部43は、非貫壁性梗塞の座標情報と貫壁性梗塞の座標情報とを判定部61から受けて、非貫壁性梗塞を表す梗塞部位マーカと、貫壁性梗塞を表す梗塞部位マーカとを区別して表示部44に表示させる。例えば、表示制御部43は、非貫壁性梗塞の梗塞部位マーカの色と貫壁性梗塞の梗塞部位マーカの色とを変えて表示部44に表示させる。
【0129】
表示部44に表示される画像の1例を図19に示す。例えば、表示制御部43は、2次元のMR画像データを表示画像入力部41から受けて、2次元画像のMR画像510に表わされた心筋梗塞部位513の位置に梗塞部位マーカを重ねて表示部44に表示させる。また、表示制御部43は、別の断面における2次元のMR画像データを表示画像入力部41から受けて、2次元画像のMR画像520に表わされた心筋梗塞部位523の位置に梗塞部位マーカを重ねて表示部44に表示させる。また、表示制御部43は、判定部61による貫壁性の判定結果に基づいて、非貫壁性梗塞の梗塞部位マーカと貫壁性梗塞の梗塞部位マーカとを区別して表示部44に表示させる。具体的には、表示制御部43は、非貫壁性梗塞の座標情報と、貫壁性梗塞の座標情報とを判定部61から受けて、非貫壁性梗塞の位置と貫壁性梗塞の位置とを特定して、それぞれの梗塞部位を表す梗塞部位マーカを区別して表示部44に表示させる。例えば、判定部61によってMR画像510に表わされている心筋梗塞部位513が非貫壁性梗塞であると判定された場合、表示制御部43は、梗塞部位マーカの色を予め設定された非貫壁性梗塞の色に変えて、MR画像510に重ねて表示部44に表示させる。また、判定部61によってMR画像520に表わされている心筋梗塞部位523が貫壁性梗塞であると判定された場合、表示制御部43は、梗塞部位マーカの色を予め設定された貫壁性梗塞の色に変えて、MR画像520に重ねて表示部44に表示させる。このように、貫壁性梗塞と非貫壁性梗塞とを区別して表示部44に表示させる。また、表示制御部43は、内膜511を示すマーカと外膜512を示すマーカ512とをMR画像510に重ねて表示部44に表示させ、内膜521を示すマーカと外膜522を示すマーカとをMR画像520に重ねて表示部44に表示させても良い。
【0130】
また、図19に示すように、表示制御部43は、3次元のMR画像データを表示画像入力部41から受けて、心臓の3次元画像500を表示部44に表示させても良い。さらに、表示制御部43は、3次元画像500に表わされた心筋梗塞部位の位置に梗塞部位マーカ501と梗塞部位マーカ502とを重ねて表示部44に表示させる。このとき、表示制御部43は、判定部61による貫壁性の判定結果に基づいて、非貫壁性梗塞の梗塞部位マーカと貫壁性梗塞の梗塞部位マーカとを区別して表示部44に表示させる。図19に示す例では、表示制御部43は、梗塞部位マーカ501によって貫壁性梗塞部位を表し、梗塞部位マーカ502によって非貫壁性梗塞部位を表している。そして、表示制御部43は、梗塞部位マーカ501の色と、梗塞部位マーカ502の色とを変えて表示部44に表示させる。
【0131】
なお、評価部60は、CPUと記憶装置とによって構成されている。記憶装置には、評価部60の機能を実行するための評価プログラムが記憶されている。評価プログラムには、判定部61の機能を実行するための判定プログラムと、評価値算出部62の機能を実行するための評価値算出プログラムとが含まれている。そして、CPUが判定プログラムを実行することで、外膜と心筋梗塞部位との位置関係に基づいて貫壁性を判定する。また、CPUが評価値算出プログラムを実行することで、外膜と心筋梗塞部位とが接触している部分の面積を求める。
【0132】
また、第1実施形態と同様に、第5実施形態に係る医用画像処理装置とMRI装置とによって医用画像診断装置を構成しても、第5実施形態に係る医用画像処理装置と同じ作用及び効果を奏することが可能である。
【0133】
(動作)
次に、第5実施形態に係る医用画像処理装置の動作について図20を参照して説明する。図20は、この発明の第5実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【0134】
(ステップS61)
判定部61は、各断面における外膜の座標情報を外膜検出部26から受け付け、各断面における心筋梗塞部位の座標情報を梗塞部位検出部33から受け付ける。そして、判定部61は、各断面における外膜と心筋梗塞部位とを同一の3次元空間に配置することで、3次元空間における外膜の位置と心筋梗塞部位の位置とを特定する。
【0135】
(ステップS62)
そして、判定部61は、3次元空間における外膜の位置と心筋梗塞部位の位置とに基づいて、心筋梗塞部位が外膜と接しているか否かを判定する。
【0136】
(ステップS63)
心筋梗塞部位が外膜と接していない場合(ステップS62、No)、判定部61は、その心筋梗塞部位を非貫壁性と判断し(ステップS63)、その判断結果を表示制御部43に出力する。例えば、判定部61は、非貫壁性梗塞の座標情報を表示制御部43に出力する。
【0137】
(ステップS64)
表示制御部43は、判定部61から判定結果を受けると、MR画像を表示部44に表示させ、さらに、心筋梗塞部位を表す梗塞部位マーカを、非貫壁性梗塞を表すマーカに加工して、MR画像に表わされた心筋梗塞部位の位置に重ねて表示させる。例えば、表示制御部43は、梗塞部位マーカの色を予め設定された非貫壁性梗塞の色に変えて表示部44に表示させる。例えば図19に示すように、表示制御部43は、2次元のMR画像510に表わされた心筋梗塞部位の位置に、非貫壁性梗塞を表す梗塞部位マーカ513を重ねて表示部44に表示させる。また、表示制御部43は、3次元画像500に表わされた心筋梗塞部位の位置に、非貫壁性梗塞を表す梗塞部位マーカ502を重ねて表示部44に表示させる。
【0138】
(ステップS65)
一方、心筋梗塞部位が外膜と接している場合(ステップS62、Yes)、判定部61は、その心筋梗塞部位を貫壁性と判断し(ステップS65)、その判断結果を表示制御部43に出力する。例えば、判定部61は、貫壁性梗塞の座標情報を表示制御部43に出力する。
【0139】
(ステップS66)
評価値算出部62は、3次元空間における心筋梗塞部位の位置と外膜の位置とに基づいて、心筋梗塞部位と外膜とが接している部分の面積を求め、その面積の値を表示制御部43に出力する。
【0140】
(ステップS67)
表示制御部43は、MR画像を表示部44に表示させ、さらに、評価値算出部62から面積の値を受けると、心筋梗塞部位の広がりの程度を表す評価値として、その面積の値を表示部44に表示させる。また、表示制御部43は、心筋梗塞部位を表す梗塞部位マーカを、貫壁性梗塞を表すマーカに加工して、MR画像に表わされた心筋梗塞部位の位置に重ねて表示させる。例えば、表示制御部43は、梗塞部位マーカの色を予め設定された貫壁性梗塞の色に変えて表示部44に表示させる。例えば図19に示すように、表示制御部43は、2次元のMR画像520に表わされた心筋梗塞部位523の位置に、貫壁性梗塞を表す梗塞部位マーカを重ねて表示部44に表示させる。また、表示制御部43は、3次元画像500に表わされた心筋梗塞部位の位置に、貫壁性梗塞を表す梗塞部位マーカ501を重ねて表示部44に表示させる。
【0141】
心筋梗塞部位が貫壁性であると判定された場合は、早急に治療を行う必要があるため、貫壁性と非貫壁性とを区別することは、治療の緊急性を判定する場合に有用である。この第5実施形態では、外膜と心筋梗塞部位との位置関係に基づいて心筋梗塞部位が貫壁性か否かを判定し、その判定結果を表示部44に表示する。そのことにより、表示部44に表示されたMR画像を観察することで、心筋梗塞部位が貫壁性か非貫壁性かを判断することができ、治療の緊急性を判断することができる。さらに、心筋梗塞部位と外膜とが接している部分の面積の値を表示することで、内膜から外膜にかけての心筋梗塞部位の広がり(transmural extent)を評価することができる。
【0142】
なお、MRI装置を用いたいわゆるワン・ストップ・ショップ検査によって、心臓領域の診断を行いたいという要求がある。上述した第1実施形態から第5実施形態に係る医用画像処理装置によると、そのワン・ストップ・ショップ検査において有用な情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】この発明の第1実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【図2】ブラックブラッド法によって取得された第1MR画像を示す図である。
【図3】遅延造影法によって取得された第2MR画像を示す図である。
【図4】遅延造影法によって取得された第2MR画像を示す図である。
【図5】表示部に表示されるMR画像の1例を示す図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の第1実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の第1実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図9】この発明の第1実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の第2実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【図11】遅延造影法によって取得された第2MR画像を示す図である。
【図12】この発明の第2実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図13】この発明の第2実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図14】この発明の第3実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【図15】心筋梗塞部位などの検出結果から得られた画像を示す図である。
【図16】この発明の第4実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【図17】心臓の3次元画像を示す図である。
【図18】この発明の第5実施形態に係る医用画像処理装置を示すブロック図である。
【図19】貫壁性の判定を行う処理を説明するための画像を示す図である。
【図20】この発明の第5実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0144】
10 内膜抽出部
11 第1画像入力部
12 第1基準点設定部
13 第1ライン設定部
14 第1輝度値カーブ生成部
15 第1勾配算出部
16 内膜検出部
20、20A 外膜抽出部
21 第2画像入力部
22 第2基準点設定部
23 第2ライン設定部
24 第2輝度値カーブ生成部
25 第2勾配算出部
26 外膜検出部
27 内膜拡張部
30 梗塞部位抽出部
31 検出領域設定部
32 高信号領域検出部
33 梗塞部位検出部
40、40A 画像出力部
41 表示画像入力部
42 マーカ生成部
43、52 表示制御部
44、53 表示部
45 責任血管検出部
50 画像解析部
51 解析部
60 評価部
61 判定部
62 評価値算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI装置を用いてブラックブラッド法によって被検体の心臓を撮影することで取得された心筋の輝度値が内腔よりも高い第1MR画像を受け付け、さらに、造影剤が注入された前記被検体の心臓をMRI装置を用いて遅延造影法によって撮影することで取得された前記内腔の輝度値が前記心筋よりも高い第2MR画像を受け付ける受付手段と、
前記第1MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配に基づいて前記心筋の内膜を検出する内膜抽出手段と、
前記第2MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配に基づいて前記心筋の外膜を検出する外膜抽出手段と、
前記検出された内膜と外膜との間を検出領域として、前記第2MR画像の輝度値に基づいて前記検出領域内から心筋梗塞部位を検出する梗塞部位抽出手段と、
MRI装置によって前記被検体の心臓を撮影することで取得されたMR画像を受け付けて、前記受け付けたMR画像において前記検出された心筋梗塞部位を識別可能にして表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記内膜抽出手段は、前記内腔内に第1基準点を設定し、前記第1MR画像を対象として前記第1基準点から放射状に延びる複数の第1ラインを設定し、前記複数の第1ライン上のそれぞれにおいて位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配の値が所定の閾値以上となる内膜点をそれぞれの第1ラインごとに求め、各内膜点を繋げることで前記内膜を特定し、
前記外膜抽出手段は、前記内腔内に第2基準点を設定し、前記第2MR画像を対象として前記第2基準点から放射状に延びる複数の第2ラインを設定し、前記複数の第2ライン上のそれぞれにおいて位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配の値が所定の負の値以下になる点を検出し、その点の外側にある点であって、前記勾配の値が所定の閾値以上になる外膜点をそれぞれの第2ラインごとに求め、各外膜点を繋げることで前記外膜を特定することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記外膜抽出手段は、前記内膜抽出手段によって検出された内膜の位置をモルフォロジカル・フィルタによって外側に拡張し、前記第2MR画像における前記内膜と前記拡張した位置との間で、前記外膜を検出することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記外膜抽出手段は、前記心臓の部位に応じて前記モルフォロジカル・フィルタによって拡張する範囲の大きさを変えて、前記内膜と前記拡張した位置との間で前記外膜を検出することを特徴とする請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記梗塞部位抽出手段は、前記検出領域内において、輝度値が所定の閾値以上となる領域であって、領域の大きさが所定の大きさ以上となる領域を前記心筋梗塞部位として検出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記検出された心筋梗塞部位を表すマーカを生成するマーカ生成手段を更に有し、前記受け付けたMR画像に前記マーカを重ねて前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記検出された外膜と前記検出された心筋梗塞部位との位置関係に基づいて、前記検出された心筋梗塞部位が貫壁性梗塞であるか非貫壁性梗塞であるかを判定する判定手段と、
前記判定手段によって貫壁性梗塞であると判定された場合に、前記外膜と前記心筋梗塞部位とが接触している部分の面積を求める評価値算出手段と、
を更に有し、
前記表示制御手段は、前記判定手段による判定結果を前記表示手段に表示させ、さらに、前記貫壁性梗塞であると判定された場合には、前記面積の値を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記表示手段に表示させる前記MR画像において、前記貫壁性梗塞と前記非貫壁性梗塞とを区別して前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
MRI装置によって前記被検体の心臓を撮影することで取得されたMR画像を受け付けて、前記受け付けたMR画像から冠動脈を検出する血管検出手段を更に有し、
前記表示制御手段は、前記検出された冠動脈と前記検出された心筋梗塞部位とを識別可能にして前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
コンピュータに、
MRI装置を用いてブラックブラッド法によって被検体の心臓を撮影することで取得された心筋の輝度値が内腔よりも高い第1MR画像を受け付け、さらに、造影剤が注入された前記被検体の心臓をMRI装置を用いて遅延造影法によって撮影することで取得された前記内腔の輝度値が前記心筋よりも高い第2MR画像を受け付ける受付機能と、
前記第1MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配に基づいて前記心筋の内膜を検出する内膜抽出機能と、
前記第2MR画像を対象として位置に対する輝度値の勾配を求め、前記勾配に基づいて前記心筋の外膜を検出する外膜抽出機能と、
前記検出された内膜と外膜との間を検出領域として、前記第2MR画像の輝度値に基づいて前記検出領域内から心筋梗塞部位を検出する梗塞部位抽出機能と、
MRI装置によって前記被検体の心臓を撮影することで取得されたMR画像を受け付けて、前記受け付けたMR画像において前記検出された心筋梗塞部位を識別可能にして表示装置に表示させる表示制御機能と、
を実行させることを特徴とする医用画像処理プログラム。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図20】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図15】
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【図17】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−273815(P2009−273815A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130294(P2008−130294)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】