医用画像処理装置および方法並びにプログラム
【課題】医用画像から胸膜プラーク候補を検出する。
【解決手段】被写体を表す医用画像を取得し、取得された医用画像から肺野領域を抽出し、抽出された肺野の輪郭と、肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的輪郭が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって肺野の凹領域を検出し、検出された凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする。
【解決手段】被写体を表す医用画像を取得し、取得された医用画像から肺野領域を抽出し、抽出された肺野の輪郭と、肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的輪郭が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって肺野の凹領域を検出し、検出された凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置、特に胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)の検出を行う装置および方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において、壁側胸膜に石灰化した肥厚を生ずる胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)を画像診断で検出したいという要望がある。
【0003】
一般的な病変部の診断にも共通するように、胸膜プラークの発見には、読影者が被写体の医用画像を読影して病変部を発見し、またその病変部の状態を観察して、異常な腫瘤陰影や微小石灰化陰影などを検出していた。しかし、放射線画像を観察読影する読影者間の画像読影能力の差などにより、そのような異常陰影の見落としや、主観的判断による思い違いを生ずる可能性があった。
【0004】
そこで、この胸膜プラークの画像診断において、計算機支援によって胸膜プラークの候補を的確に検出する技術が求められている。
【0005】
例えば、肺野領域の異常陰影候補領域の確認のため、候補となる結節領域を特定し、その結節領域の凹凸部分、低輝度部分、高輝度部分を抽出して、悪性を示す部位を描出する医用画像を生成する方法が開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、造影剤を投与してCT撮影を行い、肺野領域の異常部位(塞栓)を自動的に検出する方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2009−89847号公報
【特許文献2】特開平2006−81906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に示す方法は、まず読影が異常陰影を発見し、それから異常部位の確認をする方法であるため、異常陰影そのものの検出をすることはできない。
【0009】
また、特許文献2に示す方法では画像診断で異常陰影の検出を行えるのは造影される血管付近の領域に限られ、造影されない領域に異常陰影があっても検出できないという問題があった。また、造影剤を投与してCT撮影する必要があるため、患者への負担が問題となっていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、患者への造影剤投与の負担を軽減して、画像診断可能な範囲を拡大して胸膜プラークの候補を検出することにより、胸膜プラーク候補の検出を精度よく行う医用画像処理装置および方法並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による医用画像処理装置は、被写体を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、前記取得された医用画像から肺野領域を抽出する解剖学的情報抽出手段と、抽出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出する凹領域検出手段と、検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明による医用画像処理方法は、被写体を表す医用画像を取得し、前記取得された医用画像から肺野領域を抽出し、前記肺野領域から検出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出し、検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とすることを特徴とするものである。
【0013】
本発明によるプログラムは、コンピュータを、被写体を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、前記取得された医用画像から肺野領域を抽出する解剖学的情報抽出手段と、抽出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出する凹領域検出手段と、検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段として機能させるものである。
【0014】
ここで、「医用画像」には、CT、MRI、PET、超音波断層装置で得られた画像等を用いることができ、CTやMRIで得られた画像の場合、体軸に垂直な断面(軸位断;axial)を表す軸位断画像が一般的に用いられる。
【0015】
また、「解剖学的情報抽出手段」は、被写体の画像情報の中から例えば肺などの部位の解剖学的構造を抽出する画像処理手段で、これは医用画像から必要な情報をさらに適宜抽出する機能を有してもよい。例えば、肺を含む周辺の領域について、肋骨または胸骨の輪郭、肺野周辺領域の厚み、肋間静脈の輪郭、肺野周辺領域の医用画像の濃度を抽出してもよい。
【0016】
また、正常な肺野領域を表す肺野関連画像を含む画像データを学習することにより得られた学習画像を記録する学習画像記憶手段と、前記検出された肺野領域と前記学習画像とを比較することによって、両者間の解剖学的情報相違点を検出する解剖学的相違点検出手段とを備え、前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記検出された解剖学的情報相違点をさらに第二の胸膜プラークの候補とするものであることが望ましい。
【0017】
「解剖学的情報」には、例えば、医用画像から認識される、肺などの部位である特定領域の長さ、面積、形状、医用画像中の濃度を含むことができる。
【0018】
ここで、「両者間の解剖学的情報相違点」は、認識された所定の肺野もしくは肺野周辺領域の特定部分の長さ、面積、濃度の少なくとも1つを表す所定の解剖学的計測値との比較によって得られる。なお、解剖学的計測値には、認識された所定の構造物の画像上での計測によって得られた値そのものだけでなく、得られた値を用いた比率等の二次的な計算値も含まれる。
【0019】
さらに、前記取得された医用画像が肋骨および胸骨の少なくとも一方と肺野との間の肺野周辺領域を含むものであり、前記解剖学的相違点検出手段は、前記肺野領域に替えて、前記医用画像の前記肺野周辺領域の信号値および前記肺野周辺領域の厚みの少なくとも一方を前記学習画像と比較するものであることが好ましい。
【0020】
ここで、「前記肺野周辺領域の信号値」は、医用画像の濃度を表す値をいい、例えば、CT画像のCT値を用いることができる。「前記部分の厚み」は、2次元医用画像を用いた場合には2次元画像上での肺野の輪郭と骨の間の最短距離を指標とすることができる。これらの医用画像の前記肺野周辺領域の信号値および前記肺野周辺領域の厚みは、解剖学的特徴抽出手段によって抽出することができる。
【0021】
また、本発明による医用画像処理装置は、前記検出された肺野領域から前記肺野領域の周壁の粗さを算出し、算出された前記粗さと予め定められた所定値とを比較することで、前記肺野領域の周壁の凹凸領域を検出する凹凸領域検出手段とを備え、前記胸膜プラーク候補検出手段は、検出された前記凹凸領域をさらに第三の胸膜プラークの候補とするものとすることが好ましい。
【0022】
また、前記取得された医用画像は2次元画像を含むものであり、前記凹凸領域検出手段は、前記2次元画像の前記取得された肺野の輪郭を分割した分割曲線を作成し、作成された分割曲線の長さと分割曲線の両端の2点間の距離の長さが予め定められた所定値より大きい特定区間を凹凸領域として検出することが望ましい。
【0023】
「分割曲線の長さ」を算出するためには、2点間の曲線の長さを求める一般的な方法を、適宜用いることができ、例えば、分割された肺野の輪郭を近似式で近似して、その近似式に基づいて長さを算出できる。
【0024】
また、前記医用画像は2次元画像を含むものであり、前記凹凸領域検出手段は、前記2次元画像の前記肺野領域の周壁を所定区間ごとに分割した分割曲線を作成し、作成された分割曲線それぞれに複数の点を配置し、該複数の点のうち隣接する点どうしを繋ぐことにより複数のベクトルを作成し、作成した該複数のベクトルのうち隣接するベクトルどうしのなす角を積算した値を求め、該積算した値が予め定められた所定値より大きいものとなる前記所定区間を凹凸領域として検出してもよい。
【0025】
また、前記凹凸領域検出手段は、前記分割曲線は予め設定された長さ、前記肺野の輪郭の経路長に対する分割曲線の長さの割合、および、肺野領域内の中心点から、予め定めた所定の角度のいずれかに基づいて決定してもよい。
【0026】
「中心点」は、肺野領域の中心位置を示す点で、肺野領域の重心を求め、その重心を中心点としてもよいし、一般的な肺野領域の輪郭に基づいて予め設定した点を中心点としてもよい。「中心点から、予め定めた所定の角度」に基づいてとは、中心点を通り所定角度ずつ傾けた複数の直線を放射状に描き、その複数の直線が肺野の輪郭を横切る交点において、肺野の輪郭を分割することを指す。
【0027】
また、「予め設定された長さ」に基づいてとは、分割曲線の経路の長さが予め設定された長さとなる点で分割してもよく、分割曲線の端点間の距離の長さが予め設定された長さとなる点で分割してもよい。
【0028】
また、前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像からなり、前記凹領域検出手段は、前記複数の2次元画像または前記3次元画像から前記凹領域を検出するものであることが好ましい。
【0029】
また、前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像を含むものであり、前記凹領域検出手段は、前記2次元画像から前記凹領域を検出し、該凹領域の検出に応じて、前記解剖学的情報抽出手段から前記凹領域付近の領域を含む前記2次元画像または前記3次元医用画像と異なる2次元画像を用いて求めた他の比較輪郭を得て、該他の比較輪郭を用いて得た前記凹領域付近の他の凹領域をさらに検出するものであり、前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記凹領域と前記他の凹領域を前記第一の胸膜プラーク候補とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明による医用画像装置および方法ならびにプログラムによれば、被写体を表す医用画像を取得し、前記取得された医用画像から肺野領域を抽出し、前記肺野領域から検出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出し、検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とすることにより、肺野の輪郭から凹領域を検出し、胸膜プラークの候補をすることができるため、造影剤を投与することなく肺野全体の輪郭に対して胸膜プラークの候補を検出することができ、被験者の負担が少なく、より精度よく診断を行うことができる。
【0031】
ここで、正常な肺野領域を表す肺野関連画像を含む画像データを学習することにより得られた学習画像を記録する学習画像記憶手段と、前記検出された肺野領域と前記学習画像とを比較することによって、両者間の解剖学的情報相違点を検出する解剖学的相違点検出手段とを備え、前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記検出された解剖学的情報相違点をさらに第二の胸膜プラークの候補とする場合は、凹領域だけでなく正常な学習画像との比較からも胸膜プラークの候補を検出できるため、さらに精度よく診断を行うことができる。
【0032】
さらに、前記取得された医用画像が肋骨および胸骨の少なくとも一方と肺野との間の肺野周辺領域を含むものであり、前記解剖学的相違点検出手段は、前記肺野領域に替えて、前記医用画像の前記肺野周辺領域の信号値および前記肺野周辺領域の厚みの少なくとも一方を前記学習画像と比較するものであれば、凹領域だけでなく正常な学習画像の前記肺野周辺領域の比較からも胸膜プラークの候補を検出できるため、精度よく検出することができる。
【0033】
また、前記検出された肺野領域から前記肺野領域の周壁の粗さを算出し、算出された前記粗さと予め定められた所定値とを比較することで、前記肺野領域の周壁の凹凸領域を検出する凹凸領域検出手段とを備え、前記胸膜プラーク候補検出手段は、検出された前記凹凸領域をさらに第三の胸膜プラークの候補とするものとする場合は、凹領域だけでなく凹凸情報からも胸膜プラーク候補を検出するため、精度よく検出することができる。
【0034】
また、前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像からなり、前記凹領域検出手段は、前記複数の2次元画像または前記3次元画像から前記凹領域を検出するものである場合は、複数の情報から胸膜プラークの候補が検出するため、精度よく検出することができる。
【0035】
また、前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像を含むものであり、前記凹領域検出手段は、前記2次元画像から前記凹領域を検出し、該凹領域の検出に応じて、前記解剖学的情報抽出手段から前記凹領域付近の領域を含む前記2次元画像または前記3次元医用画像と異なる2次元画像を用いて求めた他の比較輪郭を得て、該他の比較輪郭を用いて得た前記凹領域付近の他の凹領域をさらに検出するものであり、前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記凹領域と前記他の凹領域を前記第一の胸膜プラーク候補を抽出する場合には、2次元画像で凹領域を発見すると、それに応じてその凹領域の情報を3次元画像または他の2次元画像から算出できるため、毎回全ての2次元画像または3次元画像について凹領域を検出することを省くことができ、計算負荷または時間的負荷を極端に増やすことなく、精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態となる3次元医用画像処理システムの概略構成図
【図2】第一の実施形態の画像処理機能を示すブロック図
【図3】動的輪郭技術による比較輪郭の生成と胸膜プラーク候補検出の概念図
【図4】第一の実施形態の画像処理の流れを説明するためのフロー図
【図5】第二の実施形態の画像処理機能を示すブロック図
【図6】第二の実施形態の画像処理の流れを説明するためのフロー図
【図7】第三の実施形態の画像処理機能を示すブロック図
【図8】第三の実施形態の画像処理の流れを説明するためのフロー図
【図9】分割曲線の求め方を説明する図
【図10】荒さの評価方法を説明する図
【図11】第三の実施形態の変形例の荒さの評価方法を説明する図
【図12】第三の実施形態の変形例の画像処理の流れを説明するためのフロー図
【図13】第三の実施形態の変形例の画像処理機能を示すブロック図
【図14】肺野領域と胸膜プラークを説明するための概念図
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0038】
図1は、医用画像処理装置の概要を示すハードウェア構成図である。図に示すように、このシステムでは、モダリティ1と、画像保管サーバ2と、画像処理ワークステーション3とが、ネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0039】
モダリティ1は、被検体を表す医用画像Vを取得するものであり、具体的には、CT装置、MRI装置、PET、超音波診断装置等である。
【0040】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された医用画像Vや画像処理ワークステーション3での画像処理によって生成された医用画像Vを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記録装置やデータベース管理ソフトウェア(たとえば、ORDB(Object Relational Database)管理ソフトウェア)を備えている。
【0041】
本実施形態では、さらに、モダリティ1から送信されてきた画像に表された被検体中の所定の構造物を認識する画像認識機能および認識結果を用いて胸膜プラーク候補を検出する機能(後に詳述)を提供するソフトウェアプログラムも組み込まれている。なお、全ての実施例において、本発明の機能は、外部からインストールされるプログラムによって、コンピュータにより遂行されてもよい。そして、その場合、CD−ROMやフラッシュメモリやFD等の記憶媒体により、あるいはネットワークを介して外部の記憶媒体から、プログラムを含む情報群を供給されてインストールされたものであってもよい。
【0042】
画像処理ワークステーション3は、読影者からの要求に応じて、モダリティ1や画像保管サーバ2から取得した医用画像Vに対して画像処理を行い、生成された画像を表示するコンピュータであり、特に、読影者からの要求を入力するキーボードやマウス等の入力装置と、取得した医用画像Vを格納可能な容量の主記録装置と、生成された画像を表示するディスプレイとを備えている。
【0043】
画像データの格納形式やネットワーク9経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)等のプロトコルに基づいている。
【0044】
次いで、第一の実施形態の医用画像処理機能に関連する構成を説明する。
【0045】
図2は、本発明の第1の実施形態における医用画像処理機能に関連する部分を示すブロック図である。図2に示すように、画像処理ワークステーション3は、モダリティ1または画像保管サーバ2からの要求に応じて、ネットワーク9を介して医用画像Vを取得する医用画像取得手段10と、取得した医用画像Vの肺野領域を検出する解剖学的情報抽出手段20と検出された肺野領域の肺野の輪郭Soと、動的輪郭抽出方法によって算出した肺野の比較輪郭Snと比較して凹領域を検出する凹領域検出手段30と抽出された凹領域を胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段40とから構成されている。
【0046】
図14に胸膜プラークの症例の一例を示す。一般的に、胸膜プラークは、壁側胸膜に生じる不規則な白板状の肥厚であり、診断画像中で、形態、大きさ、解剖学的な位置、領域内の濃度に特徴が表れる。第一の実施形態では、胸膜プラークの形態の特徴に着目する。具体的には、壁側胸膜が肥厚する症状を、CTの画像で肺野の輪郭Soのくぼみ(凹部)として観察できる(図14のP1参照)。そこで、本発明では、肺野の輪郭Soの凹部を、動的輪郭抽出方法を利用して検出することにより、凹部を胸膜プラークの候補P1として検出し、診断支援を行う。
【0047】
本第一の実施形態の特徴部分の動作を図4のフローチャートに従って説明する。
【0048】
まず、医用画像取得手段10は、モダリティ1または画像保管サーバ2からの要求に応じて、ネットワーク9を介して医用画像Vを取得する(S101)。医用画像Vは、肺野領域を含むものであり、一枚以上の2次元画像V2、または複数の断層像である2次元画像を積み重ねて構成される3次元画像V3からなる。
【0049】
次に、解剖学的情報抽出手段20は取得した医用画像の肺野領域、つまり肺野の輪郭Soを検出する(S102)。
【0050】
肺野認識は、周知の認識手法を用いることができ、例えば、特許3433928号公報に記載されているような、平滑化した胸部X線画像において、中心から外側に向かって、濃度値が所定の閾値を超える位置あるいは1次導関数の変化が最大の位置を探索し、肺野輪郭を検出する手法や、特許2987633号公報に記載されているような、胸部X線画像において、その画像濃度のヒストグラム上の所定の山形状および面積に基づいて決定される所定の濃度範囲の部分を肺野部として検出する手法、あるいは、特開2003−006661号公報に記載されているような、平均的な心胸郭の輪郭と略相似形のテンプレートを用いてテンプレートマッチング処理を行うことにより心胸郭の粗輪郭を検出し、さらに、粗く検出された粗部分輪郭に基づいて部分輪郭を精密に検出し、精密に検出された精部分輪郭を部分輪郭として検出する手法を適用することができる。
【0051】
次に、凹領域検出手段30は、医用画像Vに肺野領域を含むような閉曲線を初期形状として設定し(S103)、動的輪郭抽出技術によって算出した肺野の比較輪郭Snを生成する(S104)。
【0052】
動的輪郭抽出方法とは、抽出する輪郭のモデルとし、所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す曲線(以下、これを「動的曲線」という)を仮定して、その輪郭のモデルが対象の輪郭に近づくように、すなわち動的曲線が変形を繰り返して最終的にその対象の輪郭に収束するように変形の傾向を定めることにより、対象の輪郭を抽出するものである。この動的輪郭抽出方法としてよく知られているもののとしてSNAKES(スネークス)法やレベルセット法がある。
【0053】
本第一の実施形態では、SNAKES法を用いて比較輪郭を検出する。SNAKES法は動的曲線のエネルギーを定義することにより、その曲線の状態を定量的に評価して変形の傾向を定めようとするものであり、このエネルギーは、動的曲線が対象の輪郭に一致した場合に最小となるように定義され、これにより、動的曲線の持つエネルギーが最小となる安定状態を見つけることによって対象の輪郭を抽出することが可能となる。この際、輪郭抽出処理の速度および正確さは、変形の傾向の定め方に依存する(M.Kass, A.Witkin, D.Terzopoulos; "SNAKES: ACTIVE CONTOUR MODELS" International Journal of Computer Vision, Vol.1, No.4, pp.321-331, 1988)。
【0054】
肺野領域を囲む閉曲線の設定は、例えば、平均的な肺の輪郭と略相似形の閉曲線のテンプレートを用意しておいて、検出した肺野の輪郭Soを内部に含むために十分な大きさとなるように閉曲線のテンプレートを拡大して、初期形状として使用してもよいし、その他検出した肺野の輪郭Soを内部に含むように閉曲線を設定できるような周知の方法を適宜使用することができる。
【0055】
次に、徐々に設定した閉曲線を縮小し、肺野の境界にフィットする肺野の比較輪郭Snを求める(S104)。なお、検出された肺野の輪郭Soと比較輪郭Snとを検出する順番は、図4、6、8、12に示す実施例に限定されるものでなく、比較輪郭Snを検出してから、肺野の輪郭Soを検出してもよく、並行して肺野の輪郭Soと比較輪郭Snとを検出してもよい。
【0056】
次いで、検出された肺野の輪郭Soと比較輪郭Snを比較する。
図3は動的輪郭抽出技術によって求めた比較輪郭Snと検出された肺野の輪郭Soを表す概念部である。動的輪郭によって得られる輪郭を破線で、検出された肺野の輪郭Soを実線で示す。動的輪郭抽出技術では、設定した閉曲線をなめらかな閉曲線を描きつつ縮小するため、検出された肺野の輪郭の鋭い屈曲部に完全にフィットする輪郭を描くことができない。このことから、図3に示すように、胸膜プラークの候補となる肺野の凹部に、比較輪郭Snをフィットさせることができない。よって、比較輪郭Snと検出された肺野の輪郭Soを比較すると、その一致しなかった箇所を凹領域として検出できる。よって、SoとSnの比較により凹領域を抽出できる(S105)。肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの一致の判断には、周知の方法を用いることができ、例えば、検出された肺野の輪郭So上に適宜サンプル点を設け、サンプル点が比較輪郭Sn上にあるかどうかで判断してもよい。
【0057】
また、動的輪郭検出技術による比較曲線の算出の際、動的輪郭の動作を決定する係数を適切に設定することが好ましい。このことにより、動的輪郭検出技術による比較曲線が、肺野領域の凹部へ必要以上に侵入してフィットすることを防ぎつつ凹領域を検出することができ、凹領域をより精度よく検出できる。本実施形態では、凹領域をより精度よく検出するために、以下に述べるようにSnakesモデルの係数を設定する。
【0058】
Snakesの動作を決定するSnakes上の画像エネルギーの総和Eは一般に以下の式(1)で与えられる。
【数1】
ただし、Snakes:v(s)=(x(s),y(s)) s:0-1
【0059】
sは閉曲線上のパラメータで、s=0の位置が始点でs=1の位置は終点をあらわす(閉曲線の場合には、s=0の位置とs=1の位置は一致する)。
【0060】
ここで、この内部エネルギーEintは、閉曲線の連続性や滑らかさを表す内部エネルギーで、v(s)の伸縮を調整する項である。Eimageは画像のエッジの強度に基づく画像濃淡エネルギーである。Econは閉曲線を縮ませるための外部エネルギーである。
【0061】
内部エネルギーEintは、Snakes自身の長さvsと、曲率vssの自乗の重みつき線形和で定義され式(2)で与えられる。
【数2】
【0062】
ただし、式(2)において、α、βはそれぞれのエネルギーの重みを表す定数である。本実施形態において、Eintの係数をα<βとなるように設定することでSnakesの各頂点は滑らかな曲線を保つことができ、動的輪郭検出技術による比較曲線が、肺野領域の凹部へ必要以上に侵入してフィットすることを防ぎつつ凹領域を検出することができる。一例として、αとβの比が0.5:1となる係数を選択することが好ましい。
【0063】
さらに、肺野の輪郭Soの全部でなく肺野の輪郭Soの一部について凹領域を検出することが望ましい。具体的には、肺野の輪郭Soから心臓を含むほうの輪郭を除外した残りの肺野の輪郭から凹領域の検出を行うことが望ましい。図14に示すように、肺野の輪郭Soには心臓や血管の輪郭も含まれる場合があり、そのような他の臓器等の輪郭が凹部として誤って検出されることを防ぎ、より精度の高い凹領域の検出を行うためである。
【0064】
肺野の領域Soから心臓の輪郭を除く方法の例を説明する。解剖学的情報抽出手段20により肺野の認識に用いたような周知の技術により心臓の輪郭を検出し、凹領域検出手段30は肺野の輪郭Soから心臓の輪郭を除外した部分の輪郭についてのみ肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの比較を行い、凹領域の検出を行うことができる。
【0065】
または、検出された医用画像Vにおいて、解剖学的情報抽出手段20により胸骨と脊椎の領域を認識し、胸骨の領域内と脊椎の領域内にそれぞれ特定点B1,B2を設け、B1と肺野輪郭上の特定点C1間の距離が最も近くなるようにC1を決定し、B2と肺野輪郭上の特定点C2間の距離が最も近くなるようにC2を決定する。決定したC1とC2において肺野の輪郭Soを分割し、心臓を含むほうの輪郭を除外した残りの肺野の輪郭のみ肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの比較を行い、凹領域の検出を行うことができる。
【0066】
なお、このように、肺野の輪郭の一部について凹領域を検出した場合でも、造影剤を用いて血管付近だけ異常陰影の検出を行う場合よりも、肺野の外壁について十分広い範囲で凹領域の検出を行うことができる。
【0067】
胸膜プラーク候補検出手段40は、検出された凹領域を第一の胸膜プラークの候補P1とする(S106)。
【0068】
以上のようにして、第一の胸膜プラークの候補P1を検出することができる。このように、肺野の輪郭Soの情報のみを用いているので、診断のために患者に造影剤を使用することがなく、患者への身体的負担および診察コストの負担が軽減される。また、肺野の輪郭Soに沿って肺野の胸膜全体について、広い範囲で胸膜プラークの候補を検出することが可能となり、より検出の精度を向上させることができる。
【0069】
以下に変形例を示す。以下の変形例は、その本質を変容させることなく、他の実施形態にも適用できる。
【0070】
医用画像Vは、2次元画像V2を複数枚または3次元画像V3を含むものであって、凹領域検出手段は、複数の2次元画像V2または3次元画像V3から前記凹領域を検出することができる。
【0071】
凹領域を検出するために複数の医用画像V2を用いた場合は、複数の情報から胸膜プラークの候補を検出するため、一枚の2次元画像V2を用いる場合より精度よく検出することができる。複数の2次元画像V2は互いに異なる位置または異なる角度からの断面であることが好ましく、互いに異なる位置または異なる角度からの断面画像を用いた場合は、より広い範囲の凹領域を検出することができ、一方向からの2次元画像を用いる場合よりも、精度よく検出できる。
【0072】
本実施形態の変形例として、凹領域を検出するために3次元画像V3を用いる場合は、3次元の動的輪郭モデルを適用して凹領域を検出する。3次元の動的輪郭モデルとして、アクティブバルーンモデルを用いて3次元医用画像の輪郭を取得することができる。アクティブバルーンモデルは、Snakesを3次元のシェル構造に拡張したモデルであり、Snakesが2次元の濃淡画像から徐々にエネルギーの極小化を行って物体のエッジ抽出を行うところ、アクティブバルーンモデルは離散的な3次元空間のサンプル点から徐々にエネルギーの極小化を行って3次元物体の面の再構成を行う(土屋健一,松尾啓志,岩田彰:アクティブバルーンモデルと対称性仮説を用いた3次元再構成;信学論(D-II) J76-D-II No.9, pp.1967-1976, Sep. 1993)。3次元画像V3を用いる場合においては、凹領域算出手段30は、S103において、肺野を内包するように、正20面体の各面を64分割した1280面体である初期形状を設定し、2次元における動的輪郭技術と同様、内部エネルギーの最小化を繰り返すことにより、モデル全体のエネルギーを最小化すると肺野領域の3次元形状を比較輪郭Sn’として取得できる。
【0073】
具体的には、S103において、肺野領域を囲む初期形状の設定は、例えば、平均的な肺の輪郭と略相似形の3次元形状のテンプレートを用意しておいて、検出した肺野の輪郭Soを内部に含むために十分な大きさとなるように3次元形状のテンプレートを拡大して、初期形状として使用してもよいし、その他検出した肺野の輪郭So’を内部に含むように3次元形状を設定できるような周知の方法を適宜使用することができる。また、平均的な解剖学的位置情報から予め決定した位置に、初期形状である3次元形状を設定することができる。
【0074】
次に、S104において、徐々に設定した初期形状を縮小し、肺野の境界にフィットする肺野の比較輪郭Sn’を求める。なお、検出された肺野の輪郭Soと比較輪郭Snとを検出する順番は、本実施例に限定されるものでなく、比較輪郭Snを検出してから、肺野の輪郭Soを検出してもよく、並行して肺野の輪郭Soと比較輪郭Snとを検出してもよい。
【0075】
そして、S105において、この3次元動的輪郭技術によって得た比較輪郭Sn’と、先述の方法で2次元の断層画像から検出された肺野の輪郭Soを3次元形状に再構成した肺野の3次元形状So’と比較し、両形状の相違点を検出することで凹領域を算出することが出来る。2次元の場合と同様に、3次元動的輪郭抽出技術においても、初期形状である1280面体をなめらかな形状を描くように縮小するため、検出された肺野の3次元形状の鋭い屈曲部に完全にフィットする3次元形状を描くことができない。よって、比較輪郭Sn’と検出された肺野の輪郭So’を比較し、その一致しなかった箇所を凹領域として検出できる。
【0076】
3次元形状Sn’とSo’の比較方法としては、周知の3次元形状の類似性を判断する判別方法を適宜用いることが出来る。本実施形態では、So’の3次元形状上に適宜サンプル点を設け、サンプル点が比較輪郭Sn’上にあるか、またはサンプル点と比較輪郭Sn’を構成する多面体の面との距離がしきい値より小さいかを判断して、サンプル点が比較輪郭Sn’上になく、かつ、またはサンプル点と比較輪郭Sn’を構成する多面体の面との距離がしきい値以上の場合、サンプル点付近が凹領域であると検出できる。
【0077】
このように、凹領域を3次元画像V3から検出した場合は、凹領域の全体の形状や位置が3次元的に把握できるため、胸膜プラークの候補について2次元画像V2から検出した場合より多くの情報を得ることができ、胸膜プラークをより精度よく検出する支援ができる。
【0078】
また、別の変形例として、2次元医用画像V2により、胸膜プラークの候補の検出を行い、もし、胸膜プラークの候補が検出された場合には、検出された胸膜プラークの候補の付近の情報を含む他の2次元医用画像V2’または3次元画像V3を用いて、別途凹領域を検出し、その凹領域を第一の胸膜プラークの候補P1としてもよい。このことにより、2次元医用画像V2により最初に検出された胸膜プラーク候補の周辺の情報を得ることができ、より精度よく検出することができる。
【0079】
さらに、他の2次元医用画像V2’を用いて、別途凹領域を検出し、その凹領域を第一の胸膜プラークの候補P1とした場合に、他の2次元医用画像V2’は互いに異なる位置または異なる角度からの断面であることが好ましく、互いに異なる位置または異なる角度からの断面画像を用いた場合は、最初に2次元医用画像V2で検出された凹領域を、別位置または異なる角度から再度検出することができ、一つの2次元医用画像V2からの2次元画像を用いる場合よりも、検出された凹領域の位置や大きさについてさらに情報を得られるため、精度よく検出できる。
【0080】
3次元医用画像V3を用いて、別途凹領域を検出し、その凹領域を第一の胸膜プラークの候補P1とした場合は、検出された胸膜プラーク候補の位置や大きさを3次元的に把握できるため、胸膜プラークの候補についてより多くの情報を得ることができ、胸膜プラークをより精度よく検出する支援ができる。
【0081】
最初に一つの2次元画像V2を用いて凹領域を求め、もし胸膜プラークの候補の候補があった場合にのみ、他の2次元画像V2’または3次元画像V3によって凹領域を検出することで、最初から複数の2次元画像または3次元画像V3を用いて凹領域を求めた場合よりも、計算スピード、計算負荷および記憶すべき情報量の負担を軽くすることができ、毎回全ての2次元画像または3次元画像について凹領域を検出することを省くことができ、計算負荷または時間的負荷を極端に増やすことなく、精度よく検出することができる。
【0082】
また、片方の肺野に胸膜プラーク候補が検出された場合、両方の肺野についてさらに他の凹領域の検出を行うことが望ましい。胸膜プラークは両側性の病気のため、片方の肺野に胸膜プラークが検出された場合、他方の肺野にも胸膜プラークが生ずる可能性があるため、一方の肺野で凹領域が検出された場合、両方の肺について他の2次元画像V2’または3次元画像V3の凹領域を検出することにより、検出精度を高めることができる。
【0083】
また、凹領域が検出された場合に、その凹領域付近を含む別の2次元医用画像V2’を用いて凹領域を別途計算することで、該胸膜プラークの候補の追加情報をさらに取得することができる。このような追加情報には、例えば、胸膜プラークの大きさや位置、厚みが考えられる。このような追加情報を取得することにより、胸膜プラークの候補が検出された場合には、その詳細な情報が取得できるため、より精度よく胸膜プラークの候補についての情報を得られる。
【0084】
次に、第二の実施形態について以下に説明する。
【0085】
先述の通り、胸膜プラークは、壁側胸膜に生じる不規則な白板状の肥厚であり、診断画像中で、形態、大きさ、辺縁や領域内の濃度に特徴が表れる。第二の実施形態では、第一の実施形態で示した凹領域に基づいた第一の胸膜プラーク候補検出に加え、胸膜プラークの形態と濃度に着目し、正常医用画像を用いて胸膜プラーク候補の判定を行う。なお、ハードウェア構成は第一の実施形態と同じである。
【0086】
第二の実施形態の医用画像処理機能に関連する構成を説明する。
【0087】
図5は、本発明の第二の実施形態における医用画像処理機能に関連する部分を示すブロック図である。図2に加え、正常な肺野領域および肺野周辺領域Rを含む医用画像を学習し記憶した学習画像記憶手段50と、学習画像記憶手段50から検出された医用画像Vと類似する学習画像を抽出し、抽出された学習画像と医用画像Vの解剖学的特長とを比較して解剖学的情報相違点を検出する解剖学的相違点検出手段60を備えている。その他の図2との共通項目ついては、図2と同じ作用をするものとする。学習画像記憶手段50は、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記録媒体が適宜用いられる。
【0088】
先述のとおり、一般的に、胸膜プラークは、壁側胸膜に生じる不規則な白板状の肥厚である。このような肥厚が石灰化している場合、その石灰化領域は正常な状態の同領域とは異なった濃度を示す。また、本発明者によると、壁側胸膜が肥厚する症状を、断層画像で肺野と肋骨または胸骨との間の領域の厚みが厚くなる症状として検出できる(図14P1を参照)。よって、第二の実施形態では、医用画像における肺野の濃度、および肺野と肋骨および胸骨との間の領域R(以下、肺野周辺領域Rと呼ぶ。)を正常な肺野周辺領域R’と比較し、解剖学的な相違点を検出することにより、その相違点を胸膜プラークの候補として検出し、診断支援を行う。つまり、胸膜プラークの濃度に着目する際、濃度が正常画像に比較して所定の比率または濃度の差が所定の閾値より高い領域を石灰化した胸膜プラークが存在するものと判定できる。また、形態面では、胸膜プラークが壁側胸膜に生ずる肥厚であることから、胸膜プラークを肺野の輪郭Soと肋骨または胸骨の間の肺野周辺領域Rの厚みが正常医用画像と比して厚い部分を胸膜プラーク候補と判定する。
【0089】
本第二の実施形態の特徴部分の動作を図6のフローチャートに従って説明する。
【0090】
S101は第一の実施例と同じである。S102において、第二の実施例では、解剖学的情報抽出手段20は、周知の方法を用いて、肺野領域だけでなく肺野周辺領域Rについても解剖学的情報を抽出する。肺野周辺領域Rについての解剖学的情報として、周知の認識方法を適宜用いて、肋骨および胸骨の輪郭を少なくとも抽出する。さらに好ましくは、肺野周辺領域Rについて肋間静脈の輪郭も抽出することが望ましい。
【0091】
肋骨認識は、例えば、「間接撮影胸部X 線写真における肋骨像の識別」(社団法人電子通信学会1972年10月26日画像工学研究会資料 資料番号IT72−24(1972−10))に記載されているような、線に敏感なフィルタを用いて胸部X線画像が走査されて線図形が抽出され、その線図形のX線画像上の位置、線図の延びる方向等から肋骨影に対応する線が抽出され、さらに肋骨境界線を二次関数近似することにより肋骨影が抽出される手法や、特願2003−182093号にて提案されているような、エッジ検出(放物線近似形状検出)により検出された肋骨の初期形状を、肋骨形状モデル(教師データから得られた平均形状と、教師データの主成分分析により得られた複数の主成分形状との線形和として任意の肋骨形状を生成する)に投影して肋骨のモデル投影形状を求める手法を適用することができる。また、特開2007−135858号に示すような、CT値の骨領域を認識する技術を利用して、肺野の骨領域を認識する方法を適用できる。
【0092】
次に、S102で抽出した肺野と特開2005−108195号広報に記載されているような方法を用いて、AdaBoost、サポートベクターマシン(SVM),人工ニューラルネットワーク(ANN)等を用いた機械学習によって得られる学習画像記憶手段50から解剖学的位置が類似する正常な学習画像を抽出する(S201)。
【0093】
本第二の実施例において、学習画像記憶手段50は、特開2005−108195号広報に記載されているような方法を用いて、学習用サンプルとなるその肺野領域とその周辺領域が表されていることがわかっている複数の画像とその肺野領域とその周辺領域が表されていないことがわかっている複数の画像の各々について多数の種類の特徴量を用いてAdaBoost手法に基づく学習を行うことによって得られたものである。多数の種類の特徴量については、例えば、肺野領域の所定の解剖学的構造物(臓器または骨)の長さ、面積、形状、向き、位置関係などを用いることができる。
【0094】
この学習画像記憶手段50から比較に用いる学習画像として、医用画像Vの特徴量を解剖学的情報抽出手段20によって抽出し、その特徴量に基づいて類似性を表す相関値の高い画像を学習画像から選択する。具体的な特徴量としては、例えば、断層像での肋骨および胸骨および脊柱等の骨の位置関係や臓器および骨のそれぞれの大きさの割合を用いることができる。また、学習画像の濃淡やサイズなどを適宜調整してから、被写体の医用画像と特徴量を比較することが好ましい。
【0095】
次に、抽出された学習画像と医用画像Vとの両者間で、肺野に関する解剖学的特徴と、肋骨および胸骨のいずれか一方との間の肺野周辺領域Rとに関する解剖学的特徴について比較し解剖学的情報相違点を検出する(S202)。
【0096】
具体的には、肺野領域の画像の濃度について、正常な学習画像と被写体の医用画像の検出した肺野領域の濃度比を算出する。また、肺野周辺領域Rについても、画像の濃度について、正常な学習画像と被写体の医用画像の検出した肺野周辺領域Rの濃度比を算出する。濃度は、医用画像の信号値を指し、例えば、CT画像のCT値をいう。
【0097】
石灰化した部位が存在する場合、石灰化した部位は正常な部位より高濃度を示すため、特定の場所を示す領域について学習画像の濃度に対する被写体の濃度の比が所定のしきい値と比較して、しきい値より大きい場合、その領域を解剖学的特徴相違点として検出する。
【0098】
さらに、解剖学的情報の形態について正常な学習画像と検出された肺野周辺領域Rを対比する。具体的には、胸膜プラークが存在する部分は、前記肺野周辺領域Rが肥厚しているため、正常な学習画像の肺野周辺領域R’の厚みに対して検出した肺野周辺領域Rの厚みが大きい場合、解剖学的情報相違点とする。肺野周辺領域Rの厚みは、2次元医用画像を用いた場合には2次元画像上での肺野の輪郭Soと骨の間の最短距離を指標とすることができる。正常な学習画像の肺野周辺領域R’の厚みに対する検出した肺野周辺領域Rの厚みの比が所定のしきい値以上となる場合、その肺野の輪郭Soと骨の間の最短距離を得た肺野の輪郭So上の点の位置を、解剖学的特徴相違点として検出できる。
【0099】
ここで、医用画像Vの中に肋骨または胸骨の画像がなければ、上記肺野周辺領域Rの厚みの判定を行わない。また、2次元医用画像V2を用いる場合、骨の輪郭上の点D1と距離が最も近い肺野輪郭上の点E1を周知の方法を用いて検出し、この2点の座標間の距離を用いる。さらに、2次元医用画像V2を積み上げた3次元医用画像V3を用いる場合、該2次元医用画像V2に解剖学的に隣接する断層像を示す他の2次元医用画像V2上の骨の輪郭上の点D2についても、最も近い距離になる肺野輪郭上の点E1を検出し、2画素間の距離を算出して用いることが好ましい。骨の輪郭上の点D1、D2は、任意に設定でき、例えば肺野の濃度から肺野の重心を求め、重心に最も近い骨の輪郭上の点をD1、D2として選ぶことが好ましい。
【0100】
さらに、解剖学的情報抽出手段20により、検出した医用画像の肋間静脈を認識して、正常な医用画像と比較することが好ましい。肋間静脈は上下2本の肋骨の間に位置し、2次元の断層画像上では胸膜プラークに位置・形態が似ている。これを正常肺野における肋間静脈の学習データと比較して肋間静脈であると認識すれば、その領域は胸膜プラークの候補から除外でき、胸膜プラーク候補の誤認を防ぐことが出来るため、より精度の高い凹領域の検出が可能となる。
【0101】
次いで、胸膜プラーク候補検出手段40は、以上の検出された解剖学的特徴相違点を第二の胸膜プラークの候補P2として検出する(S203)。
【0102】
以上のようにして、胸膜プラーク候補検出手段40は、第二の胸膜プラークの候補P2を検出することができる。
【0103】
このように第二の実施形態では、凹領域と併用して解剖学的情報相違点による胸膜プラークの候補を検出することで、より検出の精度を向上させることができる。また、肺野だけでなく、肺野周辺の情報を用いることで、より検出の精度を向上させることができる。また、以下の変形例は、その本質を変容させることなく、他の実施形態にも適用できる。
【0104】
変形例として、正常画像と医用画像の濃度の比に加えて、胸膜プラークの濃度に着目する際、医用画像の濃度の最大値が一定のしきい値(例えば、目安CT値500)以上の場合は、石灰化した胸膜プラークが存在するものと判定する手法を併用してもよい。濃度について複数の判断を併用することで、精度よく胸膜プラーク候補の検出が可能となる。
【0105】
別の変形例として、上記第二の実施形態では、解剖学的相違点検出手段60は肺野領域および肺野周辺領域Rの濃度、肺野周辺領域Rの厚みのすべてについて解剖学的特徴の比較を行っているが、解剖学的相違点検出手段60は、肺野領域および肺野周辺領域Rの濃度、肺野周辺領域Rの厚みの少なくともいずれか一つについて解剖学的特徴の比較を行ってもよい。解剖学的相違点検出手段60が、肺野領域および肺野周辺領域Rの濃度、肺野周辺領域Rの厚みの少なくともいずれか一つについて解剖学的特徴の比較を行う場合には、凹領域の検出による胸膜プラーク候補の検出に加え、比較した解剖学的特徴の解剖学的情報相違点に基づいて、胸膜プラーク候補が検出でき、より精度よく胸膜プラーク候補の検出を行うことができる。
【0106】
次に、第三の実施形態について以下に説明する。
【0107】
先述のとおり、一般的に、胸膜プラークは、壁側胸膜に生じる不規則な白板状の肥厚である。本出願人によると、このような肺の外側にできる肥厚が斑状に生ずる症例の場合もあり、このような場合は、胸膜プラークを壁側胸膜の凹凸部分として検出できる。
【0108】
よって、第三の実施形態では、検出された肺野の輪郭Soの凹凸がしきい値より大きい部分を凹凸領域として検出することにより、その凹凸領域を第三の胸膜プラークの候補として検出し、診断支援を行う。
【0109】
第一の実施形態では、凹領域に基づいて第一の胸膜プラークの候補P1を検出している。これに対し、第三の実施形態では、前記凹領域に加え、肺野領域の輪郭の凹凸領域を考慮した上で、胸膜プラークの候補を検出するようにしている。なお、ハードウェア構成は第一の実施形態と同じである。なお、本第三の実施形態の胸膜プラークの候補検出機能に、さらに図13に示すように、第二の実施形態の相違点を考慮した胸膜プラーク候補検出機能を適用することも可能である。
【0110】
第三の実施形態の医用画像処理機能に関連する構成を説明する。
【0111】
図7は、本発明の第3の実施形態における医用画像処理機能に関連する部分を示すブロック図である。図2に加え、肺野の粗さ情報を算出し、所定のしきい値以上の粗さの領域である凹凸領域を検出する凹凸領域検出手段70を備えている。その他の図2との共通項目ついては、図2と同じ作用をするものとする。
【0112】
本第三の実施形態の特徴部分の動作を図8のフローチャートに従って説明する。
【0113】
まず、S102のステップで検出された肺野の輪郭Soをn個の分割曲線Qk(0≦k≦n)に分割する(S301)。それぞれの分割曲線Qkは、例えば、分割曲線Qkの長さがあらかじめ設定された長さとなるよう分割してもよく、肺野の輪郭Soの経路長に対して分割曲線Qkの長さの割合が、予め設定された割合となるように分割してもよく、図9に示すように肺野の空洞領域に中心点を設定し、中心点を通り所定角度ずつ傾けた複数の直線を放射状に描き、その複数の直線が肺野の輪郭Soを横切る交点において、肺野の輪郭Soを分割してもよい。本第三の実施例では、中心点として、画素の座標重心を用いる。画素の座標重心は画素座標の平均として算出できる。予め設定された長さに基づいてとは、分割曲線の経路の長さが予め設定された長さとなる点で分割してもよく、分割曲線の端点間の距離の長さが予め設定された長さとなる点で分割してもよい。例えば、各分割曲線Qkの長さが15mm程度となるように分割してもよいし、輪郭全体の長さを30分割する程度の長さの割合となるよう分割してもよい。
【0114】
次に、凹凸形状を有する分割曲線Qkの粗さを算出するため、分割曲線の経路に沿った長さLk(以後、分割曲線Qkの長さLkと記載する。)および分割曲線の両端間の長さLk’を算出する(S302)。分割曲線Qkが粗い場合は、凹凸が存在するため分割曲線Qkの長さLkは分割曲線の両端2点間の長さLk’よりも長くなっている。そこで、分割曲線の両端間の長さLk’と分割曲線の長さLkとを比較し、両者の差または両端間の長さLk’に対する分割曲線の長さLkの比が予め設定されたしきい値以上の場合は、その分割曲線Qkを凹凸領域として検出する(S303)。
【0115】
そして、胸膜プラーク候補検出手段40は、その凹凸領域を第三の胸膜プラーク候補P3とする(S304)。
【0116】
なお、分割曲線の両端2点間の距離Lk’は、医用画像の2点の画素の座標値から、一般的な2点間の直線距離を求める方法を用いて求められる。
【0117】
また、輪郭Soおよび分割曲線の長さLkは、一般的な2点間を結ぶ曲線の長さの算出方法を適用でき、本第三の実施形態では輪郭Soおよび分割曲線Qkを、医用画像上において2次関数または3次関数のいずれかの関数、またはこれらの組み合わせで近似し、長さを求めたい範囲の画素の座標値を求め、その座標値の範囲について、関数を積分することで求められる。
【0118】
以下に変形例を示す。以下の変形例は、その本質を変容させることなく、互いに組み合わせ可能であり、他の実施形態にも適用できる。
【0119】
図12を用いて、粗さ情報の算出および凹凸領域の検出の変形例を説明する。図8と異なるのはS302とS303に代えてS312とS313を行う点のみである。同じステップ番号の部分は、図8と同じ処理を行う。
【0120】
先述の通り、正常な肺野がなめらかな輪郭を有していることに対し、胸膜プラーク付近の肺野の輪郭Soは、胸膜プラークの肥厚によってジグザグの凹凸形状となる場合がある。このような場合、図11に示すように分割曲線Qk上に粗さを評価する粗さ評価点qkiを複数設定し、その隣り合う粗さ評価点qkiからqki+1に向かうベクトルを作成し、隣り合う該ベクトルのなす角度θkiの総和θSkを求める。正常な医用画像ではなめらかな肺野の輪郭Soを有するため、隣り合うベクトルの角度は大きく変化しないのに対し、ジグザグの凹凸形状の場合は、隣り合うベクトルの角度は大きく変化する。よって、肺野の輪郭が凹凸形状の場合はこの角度の総和θSkがなめらかな肺野の輪郭の場合より大きくなるため、この隣り合う直線の角度の総和θSkを粗さの指標として用いることができる。つまり、隣り合うベクトルの角度の総和θSkを予め定めたしきい値と比較し、しきい値より大きい場合は、分割曲線Qkを凹凸領域として検出できる。
【0121】
ステップ312について、図11を用いて、具体的に分割曲線Qkの粗さを求める方法を説明する。図11においては、実線がQkを表し、qk0、qk1、qk2、qk3、qk4、qk+10、qk+11が粗さ評価点を表し、qk0とqk+10が分割曲線Qkの端点に相当する。まず、図11に示すようにそれぞれの分割曲線Qk上にm個の複数の粗さ評価点qki(0≦i≦m-1)を設定し、隣り合う粗さ評価点qkiからqki+1に向かうベクトルを順次作成する。次に、図11に示すように隣り合う2つのベクトルのなす角θki(0≦i≦m-1)を求め、この角度の総和θSkを以下のように求める(S312)。
【数3】
【0122】
例えば、図11の例においては、角度の総和はθSk=θk0+θk1+θk2+θk3+θk4となる。
【0123】
ここでは、説明のため、一つの分割曲線Qkについての粗さ評価点qkiの個数mを5と設定しているが、この粗さ評価点qkiの個数mは、適宜設定することができ、好ましくは10個程度が望ましい。また、その分割曲線の長さに応じて、個数mを適宜増減してもよい。
【0124】
また、粗さ評価点qkiの間隔も適宜設定できる。例えば、医用画像上にX、Y、Z軸をとり、いずれかの軸方向に画素の座標値が等間隔になるように設定してもよいし、隣接する粗さ評価点どうしの距離が等しくなるように設定してもよい。
【0125】
次に、胸膜プラーク候補検出手段40は、角度の総和θSkが、所定のしきい値より大きい場合は、その分割曲線Qkを凹凸領域とする(S313)。
【0126】
さらに、肺野の輪郭Soの全部でなく肺野の輪郭Soの一部について凹凸領域を検出することが望ましい。具体的には、肺野の輪郭Soから心臓を含むほうの輪郭を除外した残りの肺野の輪郭から凹凸領域の検出を行うことが望ましい。図14に示すように、肺野の輪郭Soには心臓や血管の輪郭も含まれる場合があり、そのような他の臓器等の輪郭が凹部として誤って検出されることを防ぎ、より精度の高い凹凸領域の検出を行うためである。
【0127】
肺野の領域Soから心臓の輪郭を除く方法の例を説明する。解剖学的情報抽出手段20により肺野の認識に用いたような周知の技術により心臓の輪郭を検出し、凹凸領域検出手段30は肺野の輪郭Soから心臓の輪郭を除外した部分の輪郭についてのみ肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの比較を行い、凹凸領域の検出を行うことができる。
【0128】
または、検出された医用画像Vにおいて、解剖学的情報抽出手段20により周知の技術により胸骨と脊椎の領域を認識し、胸骨の領域内と脊椎の領域内にそれぞれ特定点B1,B2を設け、B1と肺野輪郭上の特定点C1間の距離が最も近くなるようにC1を決定し、B2と肺野輪郭上の特定点C2間の距離が最も近くなるようにC2を決定する。決定したC1とC2において肺野の輪郭Soを分割し、心臓を含むほうの輪郭を除外した残りの肺野の輪郭のみ肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの比較を行い、凹凸領域の検出を行うことができる。
【0129】
以上のようにして、第三の胸膜プラークの候補P3を検出することができる。粗さによる凹凸領域により胸膜プラークの候補を求めることにより、造影剤を使用することなく、患者への身体的負担および診察コストの負担が軽減される。また、肺野の輪郭Soに沿って、肺野の胸膜全体について、広い範囲で胸膜プラークの候補を検出することが可能となり、より検出の精度を向上させることができる。また、凹領域と併用して相違点による胸膜プラークの候補を検出することで、より検出の精度を向上させることができる。
【0130】
また、図13に示すように、第二の実施形態に第三の実施形態を組み合わせた場合、胸膜プラーク検出手段40は、第一の胸膜プラーク候補P1と第二の胸膜プラーク候補P2と第三の胸膜プラーク候補P3のいずれか2つ以上を検出した場合、これらの胸膜プラーク候補の複数がほぼ重複する位置を表している場合は、その胸膜プラーク候補を特に胸膜プラークの可能性が高い胸膜プラーク候補として重み付けし、重み付けした情報をその付加情報としてその胸膜プラーク候補に付してもよい。
【0131】
このように、複数の方法により胸膜プラーク候補として検出されたことを重み付けする重み情報を付した場合は、その候補が胸膜プラークである確率の高さの指標とできるため、その胸膜プラーク候補を検出できるだけでなく、その候補の胸膜プラークの可能性の高さも取得でき、胸膜プラーク候補についてより詳しい情報を提供できる診断支援を行うことができる。
【0132】
以上のように、本発明の全ての実施形態において、1つの画像管理サーバ2で画像データの処理を行うものとして説明を行ったが、ネットワークを介して接続された複数サーバを連携動作させて実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 モダリティ
2 画像保管サーバ
3 画像処理ワークステーション
9 ネットワーク
10 医用画像取得手段
20 解剖学的情報抽出手段
30 凹領域検出手段
40 胸膜プラーク候補検出手段
50 学習画像記憶手段
60 解剖学的相違点検出手段
70 凹凸領域検出手段
P1 第一の胸膜プラークの候補
P2 第二の胸膜プラークの候補
P3 第三の胸膜プラークの候補
So 対象医用画像の肺野の輪郭
Sn 動的輪郭によって算出した肺野の比較輪郭
Qk 分割された肺野の輪郭の分割曲線
V 医用画像
V2 2次元画像
V3 3次元画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置、特に胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)の検出を行う装置および方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において、壁側胸膜に石灰化した肥厚を生ずる胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)を画像診断で検出したいという要望がある。
【0003】
一般的な病変部の診断にも共通するように、胸膜プラークの発見には、読影者が被写体の医用画像を読影して病変部を発見し、またその病変部の状態を観察して、異常な腫瘤陰影や微小石灰化陰影などを検出していた。しかし、放射線画像を観察読影する読影者間の画像読影能力の差などにより、そのような異常陰影の見落としや、主観的判断による思い違いを生ずる可能性があった。
【0004】
そこで、この胸膜プラークの画像診断において、計算機支援によって胸膜プラークの候補を的確に検出する技術が求められている。
【0005】
例えば、肺野領域の異常陰影候補領域の確認のため、候補となる結節領域を特定し、その結節領域の凹凸部分、低輝度部分、高輝度部分を抽出して、悪性を示す部位を描出する医用画像を生成する方法が開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、造影剤を投与してCT撮影を行い、肺野領域の異常部位(塞栓)を自動的に検出する方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2009−89847号公報
【特許文献2】特開平2006−81906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に示す方法は、まず読影が異常陰影を発見し、それから異常部位の確認をする方法であるため、異常陰影そのものの検出をすることはできない。
【0009】
また、特許文献2に示す方法では画像診断で異常陰影の検出を行えるのは造影される血管付近の領域に限られ、造影されない領域に異常陰影があっても検出できないという問題があった。また、造影剤を投与してCT撮影する必要があるため、患者への負担が問題となっていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、患者への造影剤投与の負担を軽減して、画像診断可能な範囲を拡大して胸膜プラークの候補を検出することにより、胸膜プラーク候補の検出を精度よく行う医用画像処理装置および方法並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による医用画像処理装置は、被写体を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、前記取得された医用画像から肺野領域を抽出する解剖学的情報抽出手段と、抽出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出する凹領域検出手段と、検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明による医用画像処理方法は、被写体を表す医用画像を取得し、前記取得された医用画像から肺野領域を抽出し、前記肺野領域から検出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出し、検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とすることを特徴とするものである。
【0013】
本発明によるプログラムは、コンピュータを、被写体を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、前記取得された医用画像から肺野領域を抽出する解剖学的情報抽出手段と、抽出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出する凹領域検出手段と、検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段として機能させるものである。
【0014】
ここで、「医用画像」には、CT、MRI、PET、超音波断層装置で得られた画像等を用いることができ、CTやMRIで得られた画像の場合、体軸に垂直な断面(軸位断;axial)を表す軸位断画像が一般的に用いられる。
【0015】
また、「解剖学的情報抽出手段」は、被写体の画像情報の中から例えば肺などの部位の解剖学的構造を抽出する画像処理手段で、これは医用画像から必要な情報をさらに適宜抽出する機能を有してもよい。例えば、肺を含む周辺の領域について、肋骨または胸骨の輪郭、肺野周辺領域の厚み、肋間静脈の輪郭、肺野周辺領域の医用画像の濃度を抽出してもよい。
【0016】
また、正常な肺野領域を表す肺野関連画像を含む画像データを学習することにより得られた学習画像を記録する学習画像記憶手段と、前記検出された肺野領域と前記学習画像とを比較することによって、両者間の解剖学的情報相違点を検出する解剖学的相違点検出手段とを備え、前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記検出された解剖学的情報相違点をさらに第二の胸膜プラークの候補とするものであることが望ましい。
【0017】
「解剖学的情報」には、例えば、医用画像から認識される、肺などの部位である特定領域の長さ、面積、形状、医用画像中の濃度を含むことができる。
【0018】
ここで、「両者間の解剖学的情報相違点」は、認識された所定の肺野もしくは肺野周辺領域の特定部分の長さ、面積、濃度の少なくとも1つを表す所定の解剖学的計測値との比較によって得られる。なお、解剖学的計測値には、認識された所定の構造物の画像上での計測によって得られた値そのものだけでなく、得られた値を用いた比率等の二次的な計算値も含まれる。
【0019】
さらに、前記取得された医用画像が肋骨および胸骨の少なくとも一方と肺野との間の肺野周辺領域を含むものであり、前記解剖学的相違点検出手段は、前記肺野領域に替えて、前記医用画像の前記肺野周辺領域の信号値および前記肺野周辺領域の厚みの少なくとも一方を前記学習画像と比較するものであることが好ましい。
【0020】
ここで、「前記肺野周辺領域の信号値」は、医用画像の濃度を表す値をいい、例えば、CT画像のCT値を用いることができる。「前記部分の厚み」は、2次元医用画像を用いた場合には2次元画像上での肺野の輪郭と骨の間の最短距離を指標とすることができる。これらの医用画像の前記肺野周辺領域の信号値および前記肺野周辺領域の厚みは、解剖学的特徴抽出手段によって抽出することができる。
【0021】
また、本発明による医用画像処理装置は、前記検出された肺野領域から前記肺野領域の周壁の粗さを算出し、算出された前記粗さと予め定められた所定値とを比較することで、前記肺野領域の周壁の凹凸領域を検出する凹凸領域検出手段とを備え、前記胸膜プラーク候補検出手段は、検出された前記凹凸領域をさらに第三の胸膜プラークの候補とするものとすることが好ましい。
【0022】
また、前記取得された医用画像は2次元画像を含むものであり、前記凹凸領域検出手段は、前記2次元画像の前記取得された肺野の輪郭を分割した分割曲線を作成し、作成された分割曲線の長さと分割曲線の両端の2点間の距離の長さが予め定められた所定値より大きい特定区間を凹凸領域として検出することが望ましい。
【0023】
「分割曲線の長さ」を算出するためには、2点間の曲線の長さを求める一般的な方法を、適宜用いることができ、例えば、分割された肺野の輪郭を近似式で近似して、その近似式に基づいて長さを算出できる。
【0024】
また、前記医用画像は2次元画像を含むものであり、前記凹凸領域検出手段は、前記2次元画像の前記肺野領域の周壁を所定区間ごとに分割した分割曲線を作成し、作成された分割曲線それぞれに複数の点を配置し、該複数の点のうち隣接する点どうしを繋ぐことにより複数のベクトルを作成し、作成した該複数のベクトルのうち隣接するベクトルどうしのなす角を積算した値を求め、該積算した値が予め定められた所定値より大きいものとなる前記所定区間を凹凸領域として検出してもよい。
【0025】
また、前記凹凸領域検出手段は、前記分割曲線は予め設定された長さ、前記肺野の輪郭の経路長に対する分割曲線の長さの割合、および、肺野領域内の中心点から、予め定めた所定の角度のいずれかに基づいて決定してもよい。
【0026】
「中心点」は、肺野領域の中心位置を示す点で、肺野領域の重心を求め、その重心を中心点としてもよいし、一般的な肺野領域の輪郭に基づいて予め設定した点を中心点としてもよい。「中心点から、予め定めた所定の角度」に基づいてとは、中心点を通り所定角度ずつ傾けた複数の直線を放射状に描き、その複数の直線が肺野の輪郭を横切る交点において、肺野の輪郭を分割することを指す。
【0027】
また、「予め設定された長さ」に基づいてとは、分割曲線の経路の長さが予め設定された長さとなる点で分割してもよく、分割曲線の端点間の距離の長さが予め設定された長さとなる点で分割してもよい。
【0028】
また、前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像からなり、前記凹領域検出手段は、前記複数の2次元画像または前記3次元画像から前記凹領域を検出するものであることが好ましい。
【0029】
また、前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像を含むものであり、前記凹領域検出手段は、前記2次元画像から前記凹領域を検出し、該凹領域の検出に応じて、前記解剖学的情報抽出手段から前記凹領域付近の領域を含む前記2次元画像または前記3次元医用画像と異なる2次元画像を用いて求めた他の比較輪郭を得て、該他の比較輪郭を用いて得た前記凹領域付近の他の凹領域をさらに検出するものであり、前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記凹領域と前記他の凹領域を前記第一の胸膜プラーク候補とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明による医用画像装置および方法ならびにプログラムによれば、被写体を表す医用画像を取得し、前記取得された医用画像から肺野領域を抽出し、前記肺野領域から検出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出し、検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とすることにより、肺野の輪郭から凹領域を検出し、胸膜プラークの候補をすることができるため、造影剤を投与することなく肺野全体の輪郭に対して胸膜プラークの候補を検出することができ、被験者の負担が少なく、より精度よく診断を行うことができる。
【0031】
ここで、正常な肺野領域を表す肺野関連画像を含む画像データを学習することにより得られた学習画像を記録する学習画像記憶手段と、前記検出された肺野領域と前記学習画像とを比較することによって、両者間の解剖学的情報相違点を検出する解剖学的相違点検出手段とを備え、前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記検出された解剖学的情報相違点をさらに第二の胸膜プラークの候補とする場合は、凹領域だけでなく正常な学習画像との比較からも胸膜プラークの候補を検出できるため、さらに精度よく診断を行うことができる。
【0032】
さらに、前記取得された医用画像が肋骨および胸骨の少なくとも一方と肺野との間の肺野周辺領域を含むものであり、前記解剖学的相違点検出手段は、前記肺野領域に替えて、前記医用画像の前記肺野周辺領域の信号値および前記肺野周辺領域の厚みの少なくとも一方を前記学習画像と比較するものであれば、凹領域だけでなく正常な学習画像の前記肺野周辺領域の比較からも胸膜プラークの候補を検出できるため、精度よく検出することができる。
【0033】
また、前記検出された肺野領域から前記肺野領域の周壁の粗さを算出し、算出された前記粗さと予め定められた所定値とを比較することで、前記肺野領域の周壁の凹凸領域を検出する凹凸領域検出手段とを備え、前記胸膜プラーク候補検出手段は、検出された前記凹凸領域をさらに第三の胸膜プラークの候補とするものとする場合は、凹領域だけでなく凹凸情報からも胸膜プラーク候補を検出するため、精度よく検出することができる。
【0034】
また、前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像からなり、前記凹領域検出手段は、前記複数の2次元画像または前記3次元画像から前記凹領域を検出するものである場合は、複数の情報から胸膜プラークの候補が検出するため、精度よく検出することができる。
【0035】
また、前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像を含むものであり、前記凹領域検出手段は、前記2次元画像から前記凹領域を検出し、該凹領域の検出に応じて、前記解剖学的情報抽出手段から前記凹領域付近の領域を含む前記2次元画像または前記3次元医用画像と異なる2次元画像を用いて求めた他の比較輪郭を得て、該他の比較輪郭を用いて得た前記凹領域付近の他の凹領域をさらに検出するものであり、前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記凹領域と前記他の凹領域を前記第一の胸膜プラーク候補を抽出する場合には、2次元画像で凹領域を発見すると、それに応じてその凹領域の情報を3次元画像または他の2次元画像から算出できるため、毎回全ての2次元画像または3次元画像について凹領域を検出することを省くことができ、計算負荷または時間的負荷を極端に増やすことなく、精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態となる3次元医用画像処理システムの概略構成図
【図2】第一の実施形態の画像処理機能を示すブロック図
【図3】動的輪郭技術による比較輪郭の生成と胸膜プラーク候補検出の概念図
【図4】第一の実施形態の画像処理の流れを説明するためのフロー図
【図5】第二の実施形態の画像処理機能を示すブロック図
【図6】第二の実施形態の画像処理の流れを説明するためのフロー図
【図7】第三の実施形態の画像処理機能を示すブロック図
【図8】第三の実施形態の画像処理の流れを説明するためのフロー図
【図9】分割曲線の求め方を説明する図
【図10】荒さの評価方法を説明する図
【図11】第三の実施形態の変形例の荒さの評価方法を説明する図
【図12】第三の実施形態の変形例の画像処理の流れを説明するためのフロー図
【図13】第三の実施形態の変形例の画像処理機能を示すブロック図
【図14】肺野領域と胸膜プラークを説明するための概念図
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0038】
図1は、医用画像処理装置の概要を示すハードウェア構成図である。図に示すように、このシステムでは、モダリティ1と、画像保管サーバ2と、画像処理ワークステーション3とが、ネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0039】
モダリティ1は、被検体を表す医用画像Vを取得するものであり、具体的には、CT装置、MRI装置、PET、超音波診断装置等である。
【0040】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された医用画像Vや画像処理ワークステーション3での画像処理によって生成された医用画像Vを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記録装置やデータベース管理ソフトウェア(たとえば、ORDB(Object Relational Database)管理ソフトウェア)を備えている。
【0041】
本実施形態では、さらに、モダリティ1から送信されてきた画像に表された被検体中の所定の構造物を認識する画像認識機能および認識結果を用いて胸膜プラーク候補を検出する機能(後に詳述)を提供するソフトウェアプログラムも組み込まれている。なお、全ての実施例において、本発明の機能は、外部からインストールされるプログラムによって、コンピュータにより遂行されてもよい。そして、その場合、CD−ROMやフラッシュメモリやFD等の記憶媒体により、あるいはネットワークを介して外部の記憶媒体から、プログラムを含む情報群を供給されてインストールされたものであってもよい。
【0042】
画像処理ワークステーション3は、読影者からの要求に応じて、モダリティ1や画像保管サーバ2から取得した医用画像Vに対して画像処理を行い、生成された画像を表示するコンピュータであり、特に、読影者からの要求を入力するキーボードやマウス等の入力装置と、取得した医用画像Vを格納可能な容量の主記録装置と、生成された画像を表示するディスプレイとを備えている。
【0043】
画像データの格納形式やネットワーク9経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)等のプロトコルに基づいている。
【0044】
次いで、第一の実施形態の医用画像処理機能に関連する構成を説明する。
【0045】
図2は、本発明の第1の実施形態における医用画像処理機能に関連する部分を示すブロック図である。図2に示すように、画像処理ワークステーション3は、モダリティ1または画像保管サーバ2からの要求に応じて、ネットワーク9を介して医用画像Vを取得する医用画像取得手段10と、取得した医用画像Vの肺野領域を検出する解剖学的情報抽出手段20と検出された肺野領域の肺野の輪郭Soと、動的輪郭抽出方法によって算出した肺野の比較輪郭Snと比較して凹領域を検出する凹領域検出手段30と抽出された凹領域を胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段40とから構成されている。
【0046】
図14に胸膜プラークの症例の一例を示す。一般的に、胸膜プラークは、壁側胸膜に生じる不規則な白板状の肥厚であり、診断画像中で、形態、大きさ、解剖学的な位置、領域内の濃度に特徴が表れる。第一の実施形態では、胸膜プラークの形態の特徴に着目する。具体的には、壁側胸膜が肥厚する症状を、CTの画像で肺野の輪郭Soのくぼみ(凹部)として観察できる(図14のP1参照)。そこで、本発明では、肺野の輪郭Soの凹部を、動的輪郭抽出方法を利用して検出することにより、凹部を胸膜プラークの候補P1として検出し、診断支援を行う。
【0047】
本第一の実施形態の特徴部分の動作を図4のフローチャートに従って説明する。
【0048】
まず、医用画像取得手段10は、モダリティ1または画像保管サーバ2からの要求に応じて、ネットワーク9を介して医用画像Vを取得する(S101)。医用画像Vは、肺野領域を含むものであり、一枚以上の2次元画像V2、または複数の断層像である2次元画像を積み重ねて構成される3次元画像V3からなる。
【0049】
次に、解剖学的情報抽出手段20は取得した医用画像の肺野領域、つまり肺野の輪郭Soを検出する(S102)。
【0050】
肺野認識は、周知の認識手法を用いることができ、例えば、特許3433928号公報に記載されているような、平滑化した胸部X線画像において、中心から外側に向かって、濃度値が所定の閾値を超える位置あるいは1次導関数の変化が最大の位置を探索し、肺野輪郭を検出する手法や、特許2987633号公報に記載されているような、胸部X線画像において、その画像濃度のヒストグラム上の所定の山形状および面積に基づいて決定される所定の濃度範囲の部分を肺野部として検出する手法、あるいは、特開2003−006661号公報に記載されているような、平均的な心胸郭の輪郭と略相似形のテンプレートを用いてテンプレートマッチング処理を行うことにより心胸郭の粗輪郭を検出し、さらに、粗く検出された粗部分輪郭に基づいて部分輪郭を精密に検出し、精密に検出された精部分輪郭を部分輪郭として検出する手法を適用することができる。
【0051】
次に、凹領域検出手段30は、医用画像Vに肺野領域を含むような閉曲線を初期形状として設定し(S103)、動的輪郭抽出技術によって算出した肺野の比較輪郭Snを生成する(S104)。
【0052】
動的輪郭抽出方法とは、抽出する輪郭のモデルとし、所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す曲線(以下、これを「動的曲線」という)を仮定して、その輪郭のモデルが対象の輪郭に近づくように、すなわち動的曲線が変形を繰り返して最終的にその対象の輪郭に収束するように変形の傾向を定めることにより、対象の輪郭を抽出するものである。この動的輪郭抽出方法としてよく知られているもののとしてSNAKES(スネークス)法やレベルセット法がある。
【0053】
本第一の実施形態では、SNAKES法を用いて比較輪郭を検出する。SNAKES法は動的曲線のエネルギーを定義することにより、その曲線の状態を定量的に評価して変形の傾向を定めようとするものであり、このエネルギーは、動的曲線が対象の輪郭に一致した場合に最小となるように定義され、これにより、動的曲線の持つエネルギーが最小となる安定状態を見つけることによって対象の輪郭を抽出することが可能となる。この際、輪郭抽出処理の速度および正確さは、変形の傾向の定め方に依存する(M.Kass, A.Witkin, D.Terzopoulos; "SNAKES: ACTIVE CONTOUR MODELS" International Journal of Computer Vision, Vol.1, No.4, pp.321-331, 1988)。
【0054】
肺野領域を囲む閉曲線の設定は、例えば、平均的な肺の輪郭と略相似形の閉曲線のテンプレートを用意しておいて、検出した肺野の輪郭Soを内部に含むために十分な大きさとなるように閉曲線のテンプレートを拡大して、初期形状として使用してもよいし、その他検出した肺野の輪郭Soを内部に含むように閉曲線を設定できるような周知の方法を適宜使用することができる。
【0055】
次に、徐々に設定した閉曲線を縮小し、肺野の境界にフィットする肺野の比較輪郭Snを求める(S104)。なお、検出された肺野の輪郭Soと比較輪郭Snとを検出する順番は、図4、6、8、12に示す実施例に限定されるものでなく、比較輪郭Snを検出してから、肺野の輪郭Soを検出してもよく、並行して肺野の輪郭Soと比較輪郭Snとを検出してもよい。
【0056】
次いで、検出された肺野の輪郭Soと比較輪郭Snを比較する。
図3は動的輪郭抽出技術によって求めた比較輪郭Snと検出された肺野の輪郭Soを表す概念部である。動的輪郭によって得られる輪郭を破線で、検出された肺野の輪郭Soを実線で示す。動的輪郭抽出技術では、設定した閉曲線をなめらかな閉曲線を描きつつ縮小するため、検出された肺野の輪郭の鋭い屈曲部に完全にフィットする輪郭を描くことができない。このことから、図3に示すように、胸膜プラークの候補となる肺野の凹部に、比較輪郭Snをフィットさせることができない。よって、比較輪郭Snと検出された肺野の輪郭Soを比較すると、その一致しなかった箇所を凹領域として検出できる。よって、SoとSnの比較により凹領域を抽出できる(S105)。肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの一致の判断には、周知の方法を用いることができ、例えば、検出された肺野の輪郭So上に適宜サンプル点を設け、サンプル点が比較輪郭Sn上にあるかどうかで判断してもよい。
【0057】
また、動的輪郭検出技術による比較曲線の算出の際、動的輪郭の動作を決定する係数を適切に設定することが好ましい。このことにより、動的輪郭検出技術による比較曲線が、肺野領域の凹部へ必要以上に侵入してフィットすることを防ぎつつ凹領域を検出することができ、凹領域をより精度よく検出できる。本実施形態では、凹領域をより精度よく検出するために、以下に述べるようにSnakesモデルの係数を設定する。
【0058】
Snakesの動作を決定するSnakes上の画像エネルギーの総和Eは一般に以下の式(1)で与えられる。
【数1】
ただし、Snakes:v(s)=(x(s),y(s)) s:0-1
【0059】
sは閉曲線上のパラメータで、s=0の位置が始点でs=1の位置は終点をあらわす(閉曲線の場合には、s=0の位置とs=1の位置は一致する)。
【0060】
ここで、この内部エネルギーEintは、閉曲線の連続性や滑らかさを表す内部エネルギーで、v(s)の伸縮を調整する項である。Eimageは画像のエッジの強度に基づく画像濃淡エネルギーである。Econは閉曲線を縮ませるための外部エネルギーである。
【0061】
内部エネルギーEintは、Snakes自身の長さvsと、曲率vssの自乗の重みつき線形和で定義され式(2)で与えられる。
【数2】
【0062】
ただし、式(2)において、α、βはそれぞれのエネルギーの重みを表す定数である。本実施形態において、Eintの係数をα<βとなるように設定することでSnakesの各頂点は滑らかな曲線を保つことができ、動的輪郭検出技術による比較曲線が、肺野領域の凹部へ必要以上に侵入してフィットすることを防ぎつつ凹領域を検出することができる。一例として、αとβの比が0.5:1となる係数を選択することが好ましい。
【0063】
さらに、肺野の輪郭Soの全部でなく肺野の輪郭Soの一部について凹領域を検出することが望ましい。具体的には、肺野の輪郭Soから心臓を含むほうの輪郭を除外した残りの肺野の輪郭から凹領域の検出を行うことが望ましい。図14に示すように、肺野の輪郭Soには心臓や血管の輪郭も含まれる場合があり、そのような他の臓器等の輪郭が凹部として誤って検出されることを防ぎ、より精度の高い凹領域の検出を行うためである。
【0064】
肺野の領域Soから心臓の輪郭を除く方法の例を説明する。解剖学的情報抽出手段20により肺野の認識に用いたような周知の技術により心臓の輪郭を検出し、凹領域検出手段30は肺野の輪郭Soから心臓の輪郭を除外した部分の輪郭についてのみ肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの比較を行い、凹領域の検出を行うことができる。
【0065】
または、検出された医用画像Vにおいて、解剖学的情報抽出手段20により胸骨と脊椎の領域を認識し、胸骨の領域内と脊椎の領域内にそれぞれ特定点B1,B2を設け、B1と肺野輪郭上の特定点C1間の距離が最も近くなるようにC1を決定し、B2と肺野輪郭上の特定点C2間の距離が最も近くなるようにC2を決定する。決定したC1とC2において肺野の輪郭Soを分割し、心臓を含むほうの輪郭を除外した残りの肺野の輪郭のみ肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの比較を行い、凹領域の検出を行うことができる。
【0066】
なお、このように、肺野の輪郭の一部について凹領域を検出した場合でも、造影剤を用いて血管付近だけ異常陰影の検出を行う場合よりも、肺野の外壁について十分広い範囲で凹領域の検出を行うことができる。
【0067】
胸膜プラーク候補検出手段40は、検出された凹領域を第一の胸膜プラークの候補P1とする(S106)。
【0068】
以上のようにして、第一の胸膜プラークの候補P1を検出することができる。このように、肺野の輪郭Soの情報のみを用いているので、診断のために患者に造影剤を使用することがなく、患者への身体的負担および診察コストの負担が軽減される。また、肺野の輪郭Soに沿って肺野の胸膜全体について、広い範囲で胸膜プラークの候補を検出することが可能となり、より検出の精度を向上させることができる。
【0069】
以下に変形例を示す。以下の変形例は、その本質を変容させることなく、他の実施形態にも適用できる。
【0070】
医用画像Vは、2次元画像V2を複数枚または3次元画像V3を含むものであって、凹領域検出手段は、複数の2次元画像V2または3次元画像V3から前記凹領域を検出することができる。
【0071】
凹領域を検出するために複数の医用画像V2を用いた場合は、複数の情報から胸膜プラークの候補を検出するため、一枚の2次元画像V2を用いる場合より精度よく検出することができる。複数の2次元画像V2は互いに異なる位置または異なる角度からの断面であることが好ましく、互いに異なる位置または異なる角度からの断面画像を用いた場合は、より広い範囲の凹領域を検出することができ、一方向からの2次元画像を用いる場合よりも、精度よく検出できる。
【0072】
本実施形態の変形例として、凹領域を検出するために3次元画像V3を用いる場合は、3次元の動的輪郭モデルを適用して凹領域を検出する。3次元の動的輪郭モデルとして、アクティブバルーンモデルを用いて3次元医用画像の輪郭を取得することができる。アクティブバルーンモデルは、Snakesを3次元のシェル構造に拡張したモデルであり、Snakesが2次元の濃淡画像から徐々にエネルギーの極小化を行って物体のエッジ抽出を行うところ、アクティブバルーンモデルは離散的な3次元空間のサンプル点から徐々にエネルギーの極小化を行って3次元物体の面の再構成を行う(土屋健一,松尾啓志,岩田彰:アクティブバルーンモデルと対称性仮説を用いた3次元再構成;信学論(D-II) J76-D-II No.9, pp.1967-1976, Sep. 1993)。3次元画像V3を用いる場合においては、凹領域算出手段30は、S103において、肺野を内包するように、正20面体の各面を64分割した1280面体である初期形状を設定し、2次元における動的輪郭技術と同様、内部エネルギーの最小化を繰り返すことにより、モデル全体のエネルギーを最小化すると肺野領域の3次元形状を比較輪郭Sn’として取得できる。
【0073】
具体的には、S103において、肺野領域を囲む初期形状の設定は、例えば、平均的な肺の輪郭と略相似形の3次元形状のテンプレートを用意しておいて、検出した肺野の輪郭Soを内部に含むために十分な大きさとなるように3次元形状のテンプレートを拡大して、初期形状として使用してもよいし、その他検出した肺野の輪郭So’を内部に含むように3次元形状を設定できるような周知の方法を適宜使用することができる。また、平均的な解剖学的位置情報から予め決定した位置に、初期形状である3次元形状を設定することができる。
【0074】
次に、S104において、徐々に設定した初期形状を縮小し、肺野の境界にフィットする肺野の比較輪郭Sn’を求める。なお、検出された肺野の輪郭Soと比較輪郭Snとを検出する順番は、本実施例に限定されるものでなく、比較輪郭Snを検出してから、肺野の輪郭Soを検出してもよく、並行して肺野の輪郭Soと比較輪郭Snとを検出してもよい。
【0075】
そして、S105において、この3次元動的輪郭技術によって得た比較輪郭Sn’と、先述の方法で2次元の断層画像から検出された肺野の輪郭Soを3次元形状に再構成した肺野の3次元形状So’と比較し、両形状の相違点を検出することで凹領域を算出することが出来る。2次元の場合と同様に、3次元動的輪郭抽出技術においても、初期形状である1280面体をなめらかな形状を描くように縮小するため、検出された肺野の3次元形状の鋭い屈曲部に完全にフィットする3次元形状を描くことができない。よって、比較輪郭Sn’と検出された肺野の輪郭So’を比較し、その一致しなかった箇所を凹領域として検出できる。
【0076】
3次元形状Sn’とSo’の比較方法としては、周知の3次元形状の類似性を判断する判別方法を適宜用いることが出来る。本実施形態では、So’の3次元形状上に適宜サンプル点を設け、サンプル点が比較輪郭Sn’上にあるか、またはサンプル点と比較輪郭Sn’を構成する多面体の面との距離がしきい値より小さいかを判断して、サンプル点が比較輪郭Sn’上になく、かつ、またはサンプル点と比較輪郭Sn’を構成する多面体の面との距離がしきい値以上の場合、サンプル点付近が凹領域であると検出できる。
【0077】
このように、凹領域を3次元画像V3から検出した場合は、凹領域の全体の形状や位置が3次元的に把握できるため、胸膜プラークの候補について2次元画像V2から検出した場合より多くの情報を得ることができ、胸膜プラークをより精度よく検出する支援ができる。
【0078】
また、別の変形例として、2次元医用画像V2により、胸膜プラークの候補の検出を行い、もし、胸膜プラークの候補が検出された場合には、検出された胸膜プラークの候補の付近の情報を含む他の2次元医用画像V2’または3次元画像V3を用いて、別途凹領域を検出し、その凹領域を第一の胸膜プラークの候補P1としてもよい。このことにより、2次元医用画像V2により最初に検出された胸膜プラーク候補の周辺の情報を得ることができ、より精度よく検出することができる。
【0079】
さらに、他の2次元医用画像V2’を用いて、別途凹領域を検出し、その凹領域を第一の胸膜プラークの候補P1とした場合に、他の2次元医用画像V2’は互いに異なる位置または異なる角度からの断面であることが好ましく、互いに異なる位置または異なる角度からの断面画像を用いた場合は、最初に2次元医用画像V2で検出された凹領域を、別位置または異なる角度から再度検出することができ、一つの2次元医用画像V2からの2次元画像を用いる場合よりも、検出された凹領域の位置や大きさについてさらに情報を得られるため、精度よく検出できる。
【0080】
3次元医用画像V3を用いて、別途凹領域を検出し、その凹領域を第一の胸膜プラークの候補P1とした場合は、検出された胸膜プラーク候補の位置や大きさを3次元的に把握できるため、胸膜プラークの候補についてより多くの情報を得ることができ、胸膜プラークをより精度よく検出する支援ができる。
【0081】
最初に一つの2次元画像V2を用いて凹領域を求め、もし胸膜プラークの候補の候補があった場合にのみ、他の2次元画像V2’または3次元画像V3によって凹領域を検出することで、最初から複数の2次元画像または3次元画像V3を用いて凹領域を求めた場合よりも、計算スピード、計算負荷および記憶すべき情報量の負担を軽くすることができ、毎回全ての2次元画像または3次元画像について凹領域を検出することを省くことができ、計算負荷または時間的負荷を極端に増やすことなく、精度よく検出することができる。
【0082】
また、片方の肺野に胸膜プラーク候補が検出された場合、両方の肺野についてさらに他の凹領域の検出を行うことが望ましい。胸膜プラークは両側性の病気のため、片方の肺野に胸膜プラークが検出された場合、他方の肺野にも胸膜プラークが生ずる可能性があるため、一方の肺野で凹領域が検出された場合、両方の肺について他の2次元画像V2’または3次元画像V3の凹領域を検出することにより、検出精度を高めることができる。
【0083】
また、凹領域が検出された場合に、その凹領域付近を含む別の2次元医用画像V2’を用いて凹領域を別途計算することで、該胸膜プラークの候補の追加情報をさらに取得することができる。このような追加情報には、例えば、胸膜プラークの大きさや位置、厚みが考えられる。このような追加情報を取得することにより、胸膜プラークの候補が検出された場合には、その詳細な情報が取得できるため、より精度よく胸膜プラークの候補についての情報を得られる。
【0084】
次に、第二の実施形態について以下に説明する。
【0085】
先述の通り、胸膜プラークは、壁側胸膜に生じる不規則な白板状の肥厚であり、診断画像中で、形態、大きさ、辺縁や領域内の濃度に特徴が表れる。第二の実施形態では、第一の実施形態で示した凹領域に基づいた第一の胸膜プラーク候補検出に加え、胸膜プラークの形態と濃度に着目し、正常医用画像を用いて胸膜プラーク候補の判定を行う。なお、ハードウェア構成は第一の実施形態と同じである。
【0086】
第二の実施形態の医用画像処理機能に関連する構成を説明する。
【0087】
図5は、本発明の第二の実施形態における医用画像処理機能に関連する部分を示すブロック図である。図2に加え、正常な肺野領域および肺野周辺領域Rを含む医用画像を学習し記憶した学習画像記憶手段50と、学習画像記憶手段50から検出された医用画像Vと類似する学習画像を抽出し、抽出された学習画像と医用画像Vの解剖学的特長とを比較して解剖学的情報相違点を検出する解剖学的相違点検出手段60を備えている。その他の図2との共通項目ついては、図2と同じ作用をするものとする。学習画像記憶手段50は、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記録媒体が適宜用いられる。
【0088】
先述のとおり、一般的に、胸膜プラークは、壁側胸膜に生じる不規則な白板状の肥厚である。このような肥厚が石灰化している場合、その石灰化領域は正常な状態の同領域とは異なった濃度を示す。また、本発明者によると、壁側胸膜が肥厚する症状を、断層画像で肺野と肋骨または胸骨との間の領域の厚みが厚くなる症状として検出できる(図14P1を参照)。よって、第二の実施形態では、医用画像における肺野の濃度、および肺野と肋骨および胸骨との間の領域R(以下、肺野周辺領域Rと呼ぶ。)を正常な肺野周辺領域R’と比較し、解剖学的な相違点を検出することにより、その相違点を胸膜プラークの候補として検出し、診断支援を行う。つまり、胸膜プラークの濃度に着目する際、濃度が正常画像に比較して所定の比率または濃度の差が所定の閾値より高い領域を石灰化した胸膜プラークが存在するものと判定できる。また、形態面では、胸膜プラークが壁側胸膜に生ずる肥厚であることから、胸膜プラークを肺野の輪郭Soと肋骨または胸骨の間の肺野周辺領域Rの厚みが正常医用画像と比して厚い部分を胸膜プラーク候補と判定する。
【0089】
本第二の実施形態の特徴部分の動作を図6のフローチャートに従って説明する。
【0090】
S101は第一の実施例と同じである。S102において、第二の実施例では、解剖学的情報抽出手段20は、周知の方法を用いて、肺野領域だけでなく肺野周辺領域Rについても解剖学的情報を抽出する。肺野周辺領域Rについての解剖学的情報として、周知の認識方法を適宜用いて、肋骨および胸骨の輪郭を少なくとも抽出する。さらに好ましくは、肺野周辺領域Rについて肋間静脈の輪郭も抽出することが望ましい。
【0091】
肋骨認識は、例えば、「間接撮影胸部X 線写真における肋骨像の識別」(社団法人電子通信学会1972年10月26日画像工学研究会資料 資料番号IT72−24(1972−10))に記載されているような、線に敏感なフィルタを用いて胸部X線画像が走査されて線図形が抽出され、その線図形のX線画像上の位置、線図の延びる方向等から肋骨影に対応する線が抽出され、さらに肋骨境界線を二次関数近似することにより肋骨影が抽出される手法や、特願2003−182093号にて提案されているような、エッジ検出(放物線近似形状検出)により検出された肋骨の初期形状を、肋骨形状モデル(教師データから得られた平均形状と、教師データの主成分分析により得られた複数の主成分形状との線形和として任意の肋骨形状を生成する)に投影して肋骨のモデル投影形状を求める手法を適用することができる。また、特開2007−135858号に示すような、CT値の骨領域を認識する技術を利用して、肺野の骨領域を認識する方法を適用できる。
【0092】
次に、S102で抽出した肺野と特開2005−108195号広報に記載されているような方法を用いて、AdaBoost、サポートベクターマシン(SVM),人工ニューラルネットワーク(ANN)等を用いた機械学習によって得られる学習画像記憶手段50から解剖学的位置が類似する正常な学習画像を抽出する(S201)。
【0093】
本第二の実施例において、学習画像記憶手段50は、特開2005−108195号広報に記載されているような方法を用いて、学習用サンプルとなるその肺野領域とその周辺領域が表されていることがわかっている複数の画像とその肺野領域とその周辺領域が表されていないことがわかっている複数の画像の各々について多数の種類の特徴量を用いてAdaBoost手法に基づく学習を行うことによって得られたものである。多数の種類の特徴量については、例えば、肺野領域の所定の解剖学的構造物(臓器または骨)の長さ、面積、形状、向き、位置関係などを用いることができる。
【0094】
この学習画像記憶手段50から比較に用いる学習画像として、医用画像Vの特徴量を解剖学的情報抽出手段20によって抽出し、その特徴量に基づいて類似性を表す相関値の高い画像を学習画像から選択する。具体的な特徴量としては、例えば、断層像での肋骨および胸骨および脊柱等の骨の位置関係や臓器および骨のそれぞれの大きさの割合を用いることができる。また、学習画像の濃淡やサイズなどを適宜調整してから、被写体の医用画像と特徴量を比較することが好ましい。
【0095】
次に、抽出された学習画像と医用画像Vとの両者間で、肺野に関する解剖学的特徴と、肋骨および胸骨のいずれか一方との間の肺野周辺領域Rとに関する解剖学的特徴について比較し解剖学的情報相違点を検出する(S202)。
【0096】
具体的には、肺野領域の画像の濃度について、正常な学習画像と被写体の医用画像の検出した肺野領域の濃度比を算出する。また、肺野周辺領域Rについても、画像の濃度について、正常な学習画像と被写体の医用画像の検出した肺野周辺領域Rの濃度比を算出する。濃度は、医用画像の信号値を指し、例えば、CT画像のCT値をいう。
【0097】
石灰化した部位が存在する場合、石灰化した部位は正常な部位より高濃度を示すため、特定の場所を示す領域について学習画像の濃度に対する被写体の濃度の比が所定のしきい値と比較して、しきい値より大きい場合、その領域を解剖学的特徴相違点として検出する。
【0098】
さらに、解剖学的情報の形態について正常な学習画像と検出された肺野周辺領域Rを対比する。具体的には、胸膜プラークが存在する部分は、前記肺野周辺領域Rが肥厚しているため、正常な学習画像の肺野周辺領域R’の厚みに対して検出した肺野周辺領域Rの厚みが大きい場合、解剖学的情報相違点とする。肺野周辺領域Rの厚みは、2次元医用画像を用いた場合には2次元画像上での肺野の輪郭Soと骨の間の最短距離を指標とすることができる。正常な学習画像の肺野周辺領域R’の厚みに対する検出した肺野周辺領域Rの厚みの比が所定のしきい値以上となる場合、その肺野の輪郭Soと骨の間の最短距離を得た肺野の輪郭So上の点の位置を、解剖学的特徴相違点として検出できる。
【0099】
ここで、医用画像Vの中に肋骨または胸骨の画像がなければ、上記肺野周辺領域Rの厚みの判定を行わない。また、2次元医用画像V2を用いる場合、骨の輪郭上の点D1と距離が最も近い肺野輪郭上の点E1を周知の方法を用いて検出し、この2点の座標間の距離を用いる。さらに、2次元医用画像V2を積み上げた3次元医用画像V3を用いる場合、該2次元医用画像V2に解剖学的に隣接する断層像を示す他の2次元医用画像V2上の骨の輪郭上の点D2についても、最も近い距離になる肺野輪郭上の点E1を検出し、2画素間の距離を算出して用いることが好ましい。骨の輪郭上の点D1、D2は、任意に設定でき、例えば肺野の濃度から肺野の重心を求め、重心に最も近い骨の輪郭上の点をD1、D2として選ぶことが好ましい。
【0100】
さらに、解剖学的情報抽出手段20により、検出した医用画像の肋間静脈を認識して、正常な医用画像と比較することが好ましい。肋間静脈は上下2本の肋骨の間に位置し、2次元の断層画像上では胸膜プラークに位置・形態が似ている。これを正常肺野における肋間静脈の学習データと比較して肋間静脈であると認識すれば、その領域は胸膜プラークの候補から除外でき、胸膜プラーク候補の誤認を防ぐことが出来るため、より精度の高い凹領域の検出が可能となる。
【0101】
次いで、胸膜プラーク候補検出手段40は、以上の検出された解剖学的特徴相違点を第二の胸膜プラークの候補P2として検出する(S203)。
【0102】
以上のようにして、胸膜プラーク候補検出手段40は、第二の胸膜プラークの候補P2を検出することができる。
【0103】
このように第二の実施形態では、凹領域と併用して解剖学的情報相違点による胸膜プラークの候補を検出することで、より検出の精度を向上させることができる。また、肺野だけでなく、肺野周辺の情報を用いることで、より検出の精度を向上させることができる。また、以下の変形例は、その本質を変容させることなく、他の実施形態にも適用できる。
【0104】
変形例として、正常画像と医用画像の濃度の比に加えて、胸膜プラークの濃度に着目する際、医用画像の濃度の最大値が一定のしきい値(例えば、目安CT値500)以上の場合は、石灰化した胸膜プラークが存在するものと判定する手法を併用してもよい。濃度について複数の判断を併用することで、精度よく胸膜プラーク候補の検出が可能となる。
【0105】
別の変形例として、上記第二の実施形態では、解剖学的相違点検出手段60は肺野領域および肺野周辺領域Rの濃度、肺野周辺領域Rの厚みのすべてについて解剖学的特徴の比較を行っているが、解剖学的相違点検出手段60は、肺野領域および肺野周辺領域Rの濃度、肺野周辺領域Rの厚みの少なくともいずれか一つについて解剖学的特徴の比較を行ってもよい。解剖学的相違点検出手段60が、肺野領域および肺野周辺領域Rの濃度、肺野周辺領域Rの厚みの少なくともいずれか一つについて解剖学的特徴の比較を行う場合には、凹領域の検出による胸膜プラーク候補の検出に加え、比較した解剖学的特徴の解剖学的情報相違点に基づいて、胸膜プラーク候補が検出でき、より精度よく胸膜プラーク候補の検出を行うことができる。
【0106】
次に、第三の実施形態について以下に説明する。
【0107】
先述のとおり、一般的に、胸膜プラークは、壁側胸膜に生じる不規則な白板状の肥厚である。本出願人によると、このような肺の外側にできる肥厚が斑状に生ずる症例の場合もあり、このような場合は、胸膜プラークを壁側胸膜の凹凸部分として検出できる。
【0108】
よって、第三の実施形態では、検出された肺野の輪郭Soの凹凸がしきい値より大きい部分を凹凸領域として検出することにより、その凹凸領域を第三の胸膜プラークの候補として検出し、診断支援を行う。
【0109】
第一の実施形態では、凹領域に基づいて第一の胸膜プラークの候補P1を検出している。これに対し、第三の実施形態では、前記凹領域に加え、肺野領域の輪郭の凹凸領域を考慮した上で、胸膜プラークの候補を検出するようにしている。なお、ハードウェア構成は第一の実施形態と同じである。なお、本第三の実施形態の胸膜プラークの候補検出機能に、さらに図13に示すように、第二の実施形態の相違点を考慮した胸膜プラーク候補検出機能を適用することも可能である。
【0110】
第三の実施形態の医用画像処理機能に関連する構成を説明する。
【0111】
図7は、本発明の第3の実施形態における医用画像処理機能に関連する部分を示すブロック図である。図2に加え、肺野の粗さ情報を算出し、所定のしきい値以上の粗さの領域である凹凸領域を検出する凹凸領域検出手段70を備えている。その他の図2との共通項目ついては、図2と同じ作用をするものとする。
【0112】
本第三の実施形態の特徴部分の動作を図8のフローチャートに従って説明する。
【0113】
まず、S102のステップで検出された肺野の輪郭Soをn個の分割曲線Qk(0≦k≦n)に分割する(S301)。それぞれの分割曲線Qkは、例えば、分割曲線Qkの長さがあらかじめ設定された長さとなるよう分割してもよく、肺野の輪郭Soの経路長に対して分割曲線Qkの長さの割合が、予め設定された割合となるように分割してもよく、図9に示すように肺野の空洞領域に中心点を設定し、中心点を通り所定角度ずつ傾けた複数の直線を放射状に描き、その複数の直線が肺野の輪郭Soを横切る交点において、肺野の輪郭Soを分割してもよい。本第三の実施例では、中心点として、画素の座標重心を用いる。画素の座標重心は画素座標の平均として算出できる。予め設定された長さに基づいてとは、分割曲線の経路の長さが予め設定された長さとなる点で分割してもよく、分割曲線の端点間の距離の長さが予め設定された長さとなる点で分割してもよい。例えば、各分割曲線Qkの長さが15mm程度となるように分割してもよいし、輪郭全体の長さを30分割する程度の長さの割合となるよう分割してもよい。
【0114】
次に、凹凸形状を有する分割曲線Qkの粗さを算出するため、分割曲線の経路に沿った長さLk(以後、分割曲線Qkの長さLkと記載する。)および分割曲線の両端間の長さLk’を算出する(S302)。分割曲線Qkが粗い場合は、凹凸が存在するため分割曲線Qkの長さLkは分割曲線の両端2点間の長さLk’よりも長くなっている。そこで、分割曲線の両端間の長さLk’と分割曲線の長さLkとを比較し、両者の差または両端間の長さLk’に対する分割曲線の長さLkの比が予め設定されたしきい値以上の場合は、その分割曲線Qkを凹凸領域として検出する(S303)。
【0115】
そして、胸膜プラーク候補検出手段40は、その凹凸領域を第三の胸膜プラーク候補P3とする(S304)。
【0116】
なお、分割曲線の両端2点間の距離Lk’は、医用画像の2点の画素の座標値から、一般的な2点間の直線距離を求める方法を用いて求められる。
【0117】
また、輪郭Soおよび分割曲線の長さLkは、一般的な2点間を結ぶ曲線の長さの算出方法を適用でき、本第三の実施形態では輪郭Soおよび分割曲線Qkを、医用画像上において2次関数または3次関数のいずれかの関数、またはこれらの組み合わせで近似し、長さを求めたい範囲の画素の座標値を求め、その座標値の範囲について、関数を積分することで求められる。
【0118】
以下に変形例を示す。以下の変形例は、その本質を変容させることなく、互いに組み合わせ可能であり、他の実施形態にも適用できる。
【0119】
図12を用いて、粗さ情報の算出および凹凸領域の検出の変形例を説明する。図8と異なるのはS302とS303に代えてS312とS313を行う点のみである。同じステップ番号の部分は、図8と同じ処理を行う。
【0120】
先述の通り、正常な肺野がなめらかな輪郭を有していることに対し、胸膜プラーク付近の肺野の輪郭Soは、胸膜プラークの肥厚によってジグザグの凹凸形状となる場合がある。このような場合、図11に示すように分割曲線Qk上に粗さを評価する粗さ評価点qkiを複数設定し、その隣り合う粗さ評価点qkiからqki+1に向かうベクトルを作成し、隣り合う該ベクトルのなす角度θkiの総和θSkを求める。正常な医用画像ではなめらかな肺野の輪郭Soを有するため、隣り合うベクトルの角度は大きく変化しないのに対し、ジグザグの凹凸形状の場合は、隣り合うベクトルの角度は大きく変化する。よって、肺野の輪郭が凹凸形状の場合はこの角度の総和θSkがなめらかな肺野の輪郭の場合より大きくなるため、この隣り合う直線の角度の総和θSkを粗さの指標として用いることができる。つまり、隣り合うベクトルの角度の総和θSkを予め定めたしきい値と比較し、しきい値より大きい場合は、分割曲線Qkを凹凸領域として検出できる。
【0121】
ステップ312について、図11を用いて、具体的に分割曲線Qkの粗さを求める方法を説明する。図11においては、実線がQkを表し、qk0、qk1、qk2、qk3、qk4、qk+10、qk+11が粗さ評価点を表し、qk0とqk+10が分割曲線Qkの端点に相当する。まず、図11に示すようにそれぞれの分割曲線Qk上にm個の複数の粗さ評価点qki(0≦i≦m-1)を設定し、隣り合う粗さ評価点qkiからqki+1に向かうベクトルを順次作成する。次に、図11に示すように隣り合う2つのベクトルのなす角θki(0≦i≦m-1)を求め、この角度の総和θSkを以下のように求める(S312)。
【数3】
【0122】
例えば、図11の例においては、角度の総和はθSk=θk0+θk1+θk2+θk3+θk4となる。
【0123】
ここでは、説明のため、一つの分割曲線Qkについての粗さ評価点qkiの個数mを5と設定しているが、この粗さ評価点qkiの個数mは、適宜設定することができ、好ましくは10個程度が望ましい。また、その分割曲線の長さに応じて、個数mを適宜増減してもよい。
【0124】
また、粗さ評価点qkiの間隔も適宜設定できる。例えば、医用画像上にX、Y、Z軸をとり、いずれかの軸方向に画素の座標値が等間隔になるように設定してもよいし、隣接する粗さ評価点どうしの距離が等しくなるように設定してもよい。
【0125】
次に、胸膜プラーク候補検出手段40は、角度の総和θSkが、所定のしきい値より大きい場合は、その分割曲線Qkを凹凸領域とする(S313)。
【0126】
さらに、肺野の輪郭Soの全部でなく肺野の輪郭Soの一部について凹凸領域を検出することが望ましい。具体的には、肺野の輪郭Soから心臓を含むほうの輪郭を除外した残りの肺野の輪郭から凹凸領域の検出を行うことが望ましい。図14に示すように、肺野の輪郭Soには心臓や血管の輪郭も含まれる場合があり、そのような他の臓器等の輪郭が凹部として誤って検出されることを防ぎ、より精度の高い凹凸領域の検出を行うためである。
【0127】
肺野の領域Soから心臓の輪郭を除く方法の例を説明する。解剖学的情報抽出手段20により肺野の認識に用いたような周知の技術により心臓の輪郭を検出し、凹凸領域検出手段30は肺野の輪郭Soから心臓の輪郭を除外した部分の輪郭についてのみ肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの比較を行い、凹凸領域の検出を行うことができる。
【0128】
または、検出された医用画像Vにおいて、解剖学的情報抽出手段20により周知の技術により胸骨と脊椎の領域を認識し、胸骨の領域内と脊椎の領域内にそれぞれ特定点B1,B2を設け、B1と肺野輪郭上の特定点C1間の距離が最も近くなるようにC1を決定し、B2と肺野輪郭上の特定点C2間の距離が最も近くなるようにC2を決定する。決定したC1とC2において肺野の輪郭Soを分割し、心臓を含むほうの輪郭を除外した残りの肺野の輪郭のみ肺野の輪郭Soと比較輪郭Snの比較を行い、凹凸領域の検出を行うことができる。
【0129】
以上のようにして、第三の胸膜プラークの候補P3を検出することができる。粗さによる凹凸領域により胸膜プラークの候補を求めることにより、造影剤を使用することなく、患者への身体的負担および診察コストの負担が軽減される。また、肺野の輪郭Soに沿って、肺野の胸膜全体について、広い範囲で胸膜プラークの候補を検出することが可能となり、より検出の精度を向上させることができる。また、凹領域と併用して相違点による胸膜プラークの候補を検出することで、より検出の精度を向上させることができる。
【0130】
また、図13に示すように、第二の実施形態に第三の実施形態を組み合わせた場合、胸膜プラーク検出手段40は、第一の胸膜プラーク候補P1と第二の胸膜プラーク候補P2と第三の胸膜プラーク候補P3のいずれか2つ以上を検出した場合、これらの胸膜プラーク候補の複数がほぼ重複する位置を表している場合は、その胸膜プラーク候補を特に胸膜プラークの可能性が高い胸膜プラーク候補として重み付けし、重み付けした情報をその付加情報としてその胸膜プラーク候補に付してもよい。
【0131】
このように、複数の方法により胸膜プラーク候補として検出されたことを重み付けする重み情報を付した場合は、その候補が胸膜プラークである確率の高さの指標とできるため、その胸膜プラーク候補を検出できるだけでなく、その候補の胸膜プラークの可能性の高さも取得でき、胸膜プラーク候補についてより詳しい情報を提供できる診断支援を行うことができる。
【0132】
以上のように、本発明の全ての実施形態において、1つの画像管理サーバ2で画像データの処理を行うものとして説明を行ったが、ネットワークを介して接続された複数サーバを連携動作させて実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 モダリティ
2 画像保管サーバ
3 画像処理ワークステーション
9 ネットワーク
10 医用画像取得手段
20 解剖学的情報抽出手段
30 凹領域検出手段
40 胸膜プラーク候補検出手段
50 学習画像記憶手段
60 解剖学的相違点検出手段
70 凹凸領域検出手段
P1 第一の胸膜プラークの候補
P2 第二の胸膜プラークの候補
P3 第三の胸膜プラークの候補
So 対象医用画像の肺野の輪郭
Sn 動的輪郭によって算出した肺野の比較輪郭
Qk 分割された肺野の輪郭の分割曲線
V 医用画像
V2 2次元画像
V3 3次元画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、
前記取得された医用画像から肺野領域を抽出する解剖学的情報抽出手段と、
抽出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出する凹領域検出手段と、
検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段
を備えたことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
正常な肺野領域を表す肺野関連画像を含む画像データを学習することにより得られた学習画像を記録する学習画像記憶手段と、
前記検出された肺野領域と前記学習画像とを比較することによって、両者間の解剖学的情報相違点を検出する解剖学的相違点検出手段とを備え、
前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記検出された解剖学的情報相違点をさらに第二の胸膜プラークの候補とするものであることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記取得された医用画像が肋骨および胸骨の少なくとも一方と肺野との間の肺野周辺領域を含むものであり、
前記解剖学的相違点検出手段は、前記肺野領域に替えて、前記医用画像の前記肺野周辺領域の信号値および前記肺野周辺領域の厚みの少なくとも一方を前記学習画像と比較するものであることを特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記検出された肺野領域から前記肺野領域の周壁の粗さを算出し、算出された前記粗さと予め定められた所定値とを比較することで、前記肺野領域の周壁の凹凸領域を検出する凹凸領域検出手段とを備え、
前記胸膜プラーク候補検出手段は、検出された前記凹凸領域をさらに第三の胸膜プラークの候補とするものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記取得された医用画像は2次元画像を含むものであり、
前記凹凸領域検出手段は、前記2次元画像の前記取得された肺野の輪郭を分割した分割曲線を作成し、作成された分割曲線の長さと分割曲線の両端の2点間の距離の長さが予め定められた所定値より大きい特定区間を凹凸領域として検出することを特徴とする請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記医用画像は2次元画像を含むものであり、
前記凹凸領域検出手段は、前記2次元画像の前記肺野領域の周壁を所定区間ごとに分割した分割曲線を作成し、作成された分割曲線それぞれに複数の点を配置し、該複数の点のうち隣接する点どうしを繋ぐことにより複数のベクトルを作成し、作成した該複数のベクトルのうち隣接するベクトルどうしのなす角を積算した値を求め、該積算した値が予め定められた所定値より大きいものとなる前記所定区間を凹凸領域として検出することを特徴とする請求項4または5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記凹凸領域検出手段は、前記分割曲線は予め設定された長さ、前記肺野の輪郭の経路長に対する分割曲線の長さの割合、および、肺野領域内の中心点から、予め定めた所定の角度のいずれかに基づいて決定することを特徴とする請求項4から6いずれか1項記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像からなり、
前記凹領域検出手段は、前記複数の2次元画像または前記3次元画像から前記凹領域を検出するものであることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記医用画像は、複数の2次元画像および3次元画像を含むものであり、
前記凹領域検出手段は、前記2次元画像から前記凹領域を検出し、該凹領域の検出に応じて、前記解剖学的情報抽出手段から前記凹領域付近の領域を含む前記3次元医用画像または前記2次元画像と異なる2次元画像を用いて求めた他の比較輪郭を得て、該他の比較輪郭を用いて得た前記凹領域付近の他の凹領域をさらに検出するものであり、
前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記凹領域と前記他の凹領域を前記第一の胸膜プラーク候補とすることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
被写体を表す医用画像を取得し、
前記取得された医用画像から肺野領域を抽出し、
前記肺野領域から検出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出し、
検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とすることを特徴とする医用画像処理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
被写体を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、
前記取得された医用画像から肺野領域を抽出する解剖学的情報抽出手段と、
抽出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出する凹領域検出手段と、
検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段
として機能させるプログラム。
【請求項1】
被写体を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、
前記取得された医用画像から肺野領域を抽出する解剖学的情報抽出手段と、
抽出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出する凹領域検出手段と、
検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段
を備えたことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
正常な肺野領域を表す肺野関連画像を含む画像データを学習することにより得られた学習画像を記録する学習画像記憶手段と、
前記検出された肺野領域と前記学習画像とを比較することによって、両者間の解剖学的情報相違点を検出する解剖学的相違点検出手段とを備え、
前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記検出された解剖学的情報相違点をさらに第二の胸膜プラークの候補とするものであることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記取得された医用画像が肋骨および胸骨の少なくとも一方と肺野との間の肺野周辺領域を含むものであり、
前記解剖学的相違点検出手段は、前記肺野領域に替えて、前記医用画像の前記肺野周辺領域の信号値および前記肺野周辺領域の厚みの少なくとも一方を前記学習画像と比較するものであることを特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記検出された肺野領域から前記肺野領域の周壁の粗さを算出し、算出された前記粗さと予め定められた所定値とを比較することで、前記肺野領域の周壁の凹凸領域を検出する凹凸領域検出手段とを備え、
前記胸膜プラーク候補検出手段は、検出された前記凹凸領域をさらに第三の胸膜プラークの候補とするものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記取得された医用画像は2次元画像を含むものであり、
前記凹凸領域検出手段は、前記2次元画像の前記取得された肺野の輪郭を分割した分割曲線を作成し、作成された分割曲線の長さと分割曲線の両端の2点間の距離の長さが予め定められた所定値より大きい特定区間を凹凸領域として検出することを特徴とする請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記医用画像は2次元画像を含むものであり、
前記凹凸領域検出手段は、前記2次元画像の前記肺野領域の周壁を所定区間ごとに分割した分割曲線を作成し、作成された分割曲線それぞれに複数の点を配置し、該複数の点のうち隣接する点どうしを繋ぐことにより複数のベクトルを作成し、作成した該複数のベクトルのうち隣接するベクトルどうしのなす角を積算した値を求め、該積算した値が予め定められた所定値より大きいものとなる前記所定区間を凹凸領域として検出することを特徴とする請求項4または5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記凹凸領域検出手段は、前記分割曲線は予め設定された長さ、前記肺野の輪郭の経路長に対する分割曲線の長さの割合、および、肺野領域内の中心点から、予め定めた所定の角度のいずれかに基づいて決定することを特徴とする請求項4から6いずれか1項記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記医用画像は、複数の2次元画像または3次元画像からなり、
前記凹領域検出手段は、前記複数の2次元画像または前記3次元画像から前記凹領域を検出するものであることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記医用画像は、複数の2次元画像および3次元画像を含むものであり、
前記凹領域検出手段は、前記2次元画像から前記凹領域を検出し、該凹領域の検出に応じて、前記解剖学的情報抽出手段から前記凹領域付近の領域を含む前記3次元医用画像または前記2次元画像と異なる2次元画像を用いて求めた他の比較輪郭を得て、該他の比較輪郭を用いて得た前記凹領域付近の他の凹領域をさらに検出するものであり、
前記胸膜プラーク候補検出手段は、前記凹領域と前記他の凹領域を前記第一の胸膜プラーク候補とすることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
被写体を表す医用画像を取得し、
前記取得された医用画像から肺野領域を抽出し、
前記肺野領域から検出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出し、
検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とすることを特徴とする医用画像処理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
被写体を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、
前記取得された医用画像から肺野領域を抽出する解剖学的情報抽出手段と、
抽出された肺野の輪郭と、前記肺野領域において初期形状を有し所定の変形の傾向にしたがって変形を繰り返す動的曲線が該変形を繰り返して収束することにより得た比較輪郭とを比較することによって前記肺野の凹領域を検出する凹領域検出手段と、
検出された前記凹領域を第一の胸膜プラークの候補とする胸膜プラーク候補検出手段
として機能させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−24799(P2011−24799A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174080(P2009−174080)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100160679
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 弘子
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100160679
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 弘子
【Fターム(参考)】
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