説明

医用画像生成装置

【課題】 医療画像撮影装置で得られるボリュームデータから骨領域に相当するデータを正確に削除して血管領域を良好に表す医用画像を生成可能とする。
【解決手段】 骨領域推定部5bは、血管領域に造影剤が注入された状態の被検体に関する造影ボリュームデータに基づいて、被検体の骨領域の3次元位置を推定する。骨領域推定部5aは、血管領域に造影剤が注入されない状態の被検体に関する非造影ボリュームデータに基づいて、被検体の骨領域の3次元位置を推定する。骨領域特定部5cは、推定された2つの骨領域の3次元位置どうしのパターンマッチングによって前記骨領域の3次元位置を特定する。骨領域分離部5dは、特定された3次元位置の骨領域を消去するように造影ボリュームデータを更新する。画像レンダリングユニット6は、更新された造影ボリュームデータに基づいて血管領域の形態を表す医用画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線コンピュータ断層撮影装置(CTスキャナ)や磁気共鳴映像装置(MRI)などの医療画像撮影装置で収集されるボリュームデータから血管領域の形態画像を生成する医用画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データからの優位構造の除去を行うことにより、血管の視覚化を可能にする技術は知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平10−232928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら特許文献1の技術によると、物体表面の形状や濃淡値に差が発生するため、加工されていない骨領域以外の臓器の形状にも影響が出てしまう。また、特許文献1の技術によると、閾値処理によって骨を消去したとしても、造影血管上に同様のCT値がないということは不確定要素が多くあり、骨領域のみを正しく消去することは困難である。
【0004】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、医療画像撮影装置で得られるボリュームデータから骨領域に相当するデータを正確に削除して血管領域を良好に表す医用画像を生成可能な医用画像生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するために第1の本発明は、血管領域に造影剤が注入された状態の被検体に関する造影ボリュームデータに基づいて、被検体の骨領域の3次元位置を推定する第1の推定手段と、前記血管領域に前記造影剤が注入されない状態の被検体に関する非造影ボリュームデータに基づいて、前記被検体の骨領域の3次元位置を推定する第2の推定手段と、前記第1および前記第2の推定手段によりそれぞれ推定された3次元位置どうしのパターンマッチングによって前記骨領域の3次元位置を特定する特定手段と、
前記特定された3次元位置の骨領域を消去するように前記造影ボリュームデータを更新する手段と、前記更新された造影ボリュームデータに基づいて前記血管領域の形態を表す医用画像を生成する手段とを備えて医用画像生成装置を構成した。
【0006】
また前記の目的を達成するために第2の本発明は、血管領域に造影剤が注入された状態の被検体に関する造影ボリュームデータのうちの第1のボリュームデータに基づいて、被検体の骨領域の3次元位置を推定する第1の推定手段と、前記造影ボリュームデータのうちの第2のボリュームデータに基づいて、被検体の骨領域の3次元位置を推定する第2の推定手段と、前記血管領域に前記造影剤が注入されない状態の被検体に関する非造影ボリュームデータに基づいて、前記被検体の骨領域の3次元位置を推定する第3の推定手段と、前記第1および前記第3の推定手段によりそれぞれ推定された3次元位置どうしのパターンマッチングによって前記骨領域の3次元位置を特定する第1の特定手段と、前記第1の特定手段により特定された3次元位置の骨領域を消去するように前記第1のボリュームデータを更新する手段と、前記更新された第1のボリュームデータファイルから前記血管領域に関する形態画像を生成する手段と、前記第2および前記第3の推定手段によりそれぞれ推定された3次元位置どうしのパターンマッチングによって前記骨領域の3次元位置を特定する第2の特定手段と、前記第2の特定手段により特定された3次元位置の骨領域を消去するように前記第2のボリュームデータを更新する手段と、前記更新された第2のボリュームデータファイルから前記血管領域に関する機能画像を生成する手段と、前記機能情報に応じて前記形態画像に色情報を付与する手段とを備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、医療画像撮影装置で得られるボリュームデータから骨領域に相当するデータを正確に削除して血管領域を良好に表す医用画像を生成可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明の実施形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は本発明の医用画像生成装置を適用してなる医用画像表示装置の第1の実施形態における構成を示す図である。この医用画像表示装置は、ボリュームデータ保管部1、造影前データ検索入力部2、4Dデータ検索入力部3、画像データロードユニット4、骨領域特定消去ユニット5、画像レンダリングユニット6、画像表示制御ユニット7および表示部8を備える。
【0010】
この医用画像表示装置は、例えば汎用のサーバ装置やコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用いることができる。そして造影前データ検索入力部2、4Dデータ検索入力部3、画像データロードユニット4、骨領域特定消去ユニット5、画像レンダリングユニット6および画像表示制御ユニット7は、上記のサーバ装置やコンピュータ装置に搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することができる。このときに医用画像表示装置は、上記のプログラムが上記のサーバ装置やコンピュータ装置に予めインストールされて実現されても良いし、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどのようなリムーバブルな記録媒体に記録して、あるいはネットワークを介して上記のプログラムを配布し、このプログラムを上記のサーバ装置やコンピュータ装置に適宜インストールして実現されても良い。なお、上記の各部は、その一部または全てをロジック回路などのハードウェアにより実現することも可能である。また上記の各部のそれぞれは、ハードウェアとソフトウェア制御とを組み合わせて実現することも可能である。ボリュームデータ保管部1は、上記のサーバ装置やコンピュータ装置に内蔵されたメモリやハードディスク装置などの記憶デバイス、上記のサーバ装置やコンピュータ装置に外付けされたメモリやハードディスク装置などの記憶デバイス、さらには磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスクなどのようなリムーバブルな記録媒体などを適宜利用して実現することができる。表示部8は、上記のサーバ装置やコンピュータ装置に内蔵された液晶表示デバイスなどの表示デバイス、上記のサーバ装置やコンピュータ装置に外付けされた液晶表示器やCRT(cathode-ray tube)表示器などの表示装置などである。
【0011】
ボリュームデータ保管部1は、医療画像撮影装置で収集された複数のボリュームデータを保管する。なお、ここでは、CTスキャナで収集されたボリュームデータをボリュームデータ保管部1が保管していることとする。ボリュームデータは、典型的には、複数のスライスデータの集合体である。CTスキャナでは、コーンビーム形のX線管と2次元配列型大視野X線検出器とを高速で被検体周囲を回転することで、時間的に連続した複数のボリュームデータが発生される。ボリュームデータのおのおのには、付帯情報が関連付けられている。付帯情報には、被検体氏名、被検体ID、撮影部位、撮影装置種別、撮影条件、再構成条件(再構成関数、解像度、再構成スライス厚等)等の項目が含まれる。ボリュームデータ保管部1が保管する複数のボリュームデータには、造影剤を注入する前のナチュラルなCT値で血管や骨を表しているボリュームデータ(以下、非造影ボリュームデータと称する)と、被検体に造影剤を注入して血管を強調したボリュームデータ(以下、造影ボリュームデータと称する)とを含む。
【0012】
さてこの医用画像表示装置は、例えば操作者が図示しないマウス等の入力デバイスを用いて表示要求を行ったことに応じて、時間的に連続した造影ボリュームデータに基づいて4D画像を表示する。4D画像は、3D画像を時間的な動きを伴って表示するものである。
【0013】
上記の表示要求が行われたことに応じて造影前データ検索入力部2は、表示対象となる造影ボリュームデータに時間的に連続する非造影ボリュームデータをボリュームデータ保管部1から検索する。造影前データ検索入力部2は、見つけた非造影ボリュームデータのうちの1つを、造影前データとしてボリュームデータ保管部1から読み出す。また4Dデータ検索入力部3は、表示対象となる造影ボリュームデータ(時間的に連続した複数の造影ボリュームデータ)をボリュームデータ保管部1から検索する。4Dデータ検索入力部3は、見つけた複数の造影ボリュームデータを、4Dデータとしてボリュームデータ保管部1から読み出す。
【0014】
画像データロードユニット4は、造影前データ検索入力部2および4Dデータ検索入力部3により読み出された造影前データおよび4Dデータを、図示しないワークメモリにロードする。ワークメモリには、造影前データおよび4Dデータをそれぞれ記憶するための領域が事前に割り当てられている。画像データロードユニット4は、各データをそれぞれのために割り当てられた領域にロードする。これにより画像データロードユニット4は、造影前データおよび4Dデータを、個別に骨領域特定消去ユニット5へ供給する。
【0015】
骨領域特定消去ユニット5は図1に示すように、骨領域推定部5a,5b、骨領域特定部5cおよび骨領域分離部5dを含む。
【0016】
骨領域推定部5aは、造影前データが表す3D画像における骨領域を推定する。骨領域推定部5bは、4Dデータに含まれる複数の造影ボリュームデータのそれぞれが示す3D画像における骨領域をそれぞれ推定する。骨領域推定部5bが推定する骨領域に基づき、4Dデータに基づいて表示される4D画像に含まれる骨の位置が分かる。しかし、4Dデータでは血管領域が造影されていることから、骨領域と血管領域とを正確に分離することが困難である。このため、骨領域推定部5bにより推定される骨領域は、本来の骨領域に対する誤差を多く含む。一方、骨領域推定部5aでは、造影前データに基づくために、骨領域を高精度に抽出することができる。このため、骨領域推定部5aにより推定される骨領域は、骨の形状を正確に現す。
【0017】
骨領域特定部5cは、骨領域推定部5a,5bでそれぞれ推定された骨領域を三次元的に位置合わせする。この位置合わせには、既知のパターンマッチング手法を利用できる。このパターンマッチング手法としては、例えば特開平10−137190号公報に開示されたものがある。そして骨領域特定部5cは、骨領域推定部5bにより推定される骨領域の位置と、位置合わせした後の2つの骨領域のずれとに基づいて、4Dデータに含まれる複数の造影ボリュームデータのそれぞれについての骨領域の位置を特定する。
【0018】
骨領域分離部5dは、4Dデータに含まれる複数の造影ボリュームデータのそれぞれから、骨領域特定部5cで特定された骨領域のデータを抽出して抽出骨領域データを生成するとともに、4Dデータに含まれる複数の造影ボリュームデータのそれぞれを上記骨領域の抜けたデータに更新する。
【0019】
そして骨領域特定消去ユニット5は、骨領域分離部5dによって更新された後の4Dデータと、骨領域分離部5dによって新たに作成された抽出骨領域データとを、画像レンダリングユニット6へ出力する。
【0020】
画像レンダリングユニット6は、色情報作成部6a、形状情報処理部6bおよび画像作成レンダリング部6cを含む。
【0021】
色情報作成部6aは、4Dデータに含まれる複数の造影ボリュームデータが示す3D画像のそれぞれを色づけする。色情報作成部6aは、画素値と色情報とを関連付けたカラーテーブルを有し、このカラーテーブルを上記の色づけを行うに際して参照する。形状情報処理部6bは、4Dデータから血管領域の形態情報を抽出して三次元の形態画像(以下、血管形態画像と称する)を生成する。また形状情報処理部6bは、抽出骨領域データから骨領域の形態情報を抽出して三次元の形態画像(以下、骨形態画像と称する)を生成する。画像作成レンダリング部6cは、上記の色づけされた3D画像と上記の形態画像とを使ってボリュームレンダリング処理により、表示に供するためのMPR画像および3D画像を作成する。画像作成レンダリング部6cは、この作成する画像に血管形態画像および骨形態画像の双方を反映させることものできるし、血管形態画像および骨形態画像の一方のみを反映させることもでき、操作者により任意に選択される。画像作成レンダリング部6cのボリュームレンダリング処理には、影付けボリュームレンダリング、影なしボリュームレンダリング、最大値投影ボリュームレンダリング、最小値投影ボリュームレンダリング、平均値投影ボリュームレンダリング、あるいは閾値指定による表面表示レンダリングなどが含まれ、操作者により任意に選択される。
【0022】
そして画像レンダリングユニット6は、画像作成レンダリング部6cにより作成されたMPR画像を現す画像データおよび3D画像を現す画像データを画像表示制御ユニット7へ出力する。
【0023】
画像表示制御ユニット7は、画像レンダリングユニット6から出力された画像データに基づいて、MPR画像および3D画像(静止画像または動画像)を表示部8に表示させる。画像表示制御ユニット7は、表示レイアウト、表示条件、あるいは画像情報等をコントロールする。
【0024】
かくして、骨領域特定消去ユニット5では、4Dデータに含まれる複数の造影ボリュームデータのそれぞれについて、骨領域の位置を正確に特定し、この骨領域の抜けたデータに上記の4Dデータが更新される。従って、この4Dデータに基づいて表示部8に表示される画像からは骨が除去されており、この画像は血管領域の形態や機能(血流量など)を観察するのに有用なものとなる。つまり、この血管領域のみを現した画像に基づけば、脳梗塞を始めとする多くの血管系疾患の診断能を向上することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
図2は本発明の医用画像生成装置を適用してなる医用画像表示装置の第2の実施形態における構成を示す図である。なお、図1に示す医用画像表示装置が備える要素と同一の要素は同一の符号を付して示し、その詳細な説明は省略する。
【0026】
この医用画像表示装置は、ボリュームデータ保管部1、造影前データ検索入力部2、画像表示制御ユニット7、表示部8、コントラスト画像自動検索部9、ダイナミックデータ自動検索部10、画像データロードユニット11、骨領域特定消去ユニット12、画像同一位置参照部13、機能情報数値化ユニット14および画像レンダリングユニット15を備える。
【0027】
すなわち第2の実施形態に係る医用画像表示装置は、第1の実施形態に係る医用画像表示装置における4Dデータ検索入力部3に代えてダイナミックデータ自動検索部10および画像データロードユニット11を、画像データロードユニット4に代えて画像データロードユニット11を、骨領域特定消去ユニット5に代えて骨領域特定消去ユニット12を、さらに画像レンダリングユニット6に代えて画像レンダリングユニット15をそれぞれ備えるとともに、画像同一位置参照部13および機能情報数値化ユニット14を追加している。
【0028】
このような第2の実施形態に係る医用画像表示装置は、特願2004−263472の実施形態に記載された医用画像表示装置に、前記第1の実施形態で特徴的な骨領域を消去する機能を加えたものである。
【0029】
コントラスト画像自動検索部9は、操作者が図示しないマウス等の入力デバイスを介して指定した所望のコントラストデータに相当するボリュームデータを、ボリュームデータ保管部1から検索する。コントラスト画像自動検索部9は、見つけたボリュームデータを、コントラストデータとしてボリュームデータ保管部1から読み出す。ダイナミックデータ自動検索部10は、付帯情報に基づいて、操作者が指定した所望のボリュームデータと、被検体が同じであって、撮影部位も同一のダイナミックデータ(時間的に連続して撮影された複数の造影ボリュームデータ)を、ボリュームデータ保管部1から検索する。ダイナミックデータ自動検索部10は、見つけた複数のボリュームデータを、ダイナミックデータとしてボリュームデータ保管部1から読み出す。
【0030】
画像データロードユニット11は、造影前データ検索入力部2、コントラスト画像自動検索部9およびダイナミックデータ自動検索部10により読み出された造影前データ、コントラストデータおよびダイナミックデータを、図示しないワークメモリにロードする。ワークメモリには、造影前データ、コントラストデータおよびダイナミックデータをそれぞれ記憶するための領域が事前に割り当てられている。画像データロードユニット11は、各データをそれぞれのために割り当てられた領域にロードする。これにより画像データロードユニット11は、造影前データ、コントラストデータおよびダイナミックデータを、個別に骨領域特定消去ユニット12へ供給する。
【0031】
骨領域特定消去ユニット12は図2に示すように、骨領域推定部5a,12a,12b、骨領域特定部12c,12dおよび骨領域分離部12e,12fを含む。すなわち骨領域特定消去ユニット12は、骨領域特定消去ユニット5における骨領域推定部5bに代えて骨領域推定部12a,12bを、骨領域特定部5cに代えて骨領域特定部12c,12dを、さらに骨領域分離部5dに代えて骨領域分離部12e,12fを備えている。
【0032】
骨領域推定部12aは、コントラストデータが表す3D画像における骨領域を推定する。骨領域推定部12bは、ダイナミックデータに含まれる複数の造影ボリュームデータのそれぞれが示す3D画像における骨領域をそれぞれ推定する。
【0033】
骨領域特定部12cは、骨領域推定部5a,12aでそれぞれ推定された骨領域を三次元的に位置合わせする。この位置合わせは、骨領域特定部5cと同様にして行われる。そして骨領域特定部12cは、骨領域推定部12aにより推定される骨領域の位置と、位置合わせした後の2つの骨領域のずれとに基づいて、コントラストデータについての骨領域の位置を特定する。骨領域分離部12eは、コントラストデータから、骨領域特定部12cで特定された骨領域のデータを抽出して抽出骨領域データを生成するとともに、コントラストデータを上記骨領域の抜けたデータに更新する。
【0034】
骨領域特定部12dは、骨領域推定部5a,12bでそれぞれ推定された骨領域を三次元的に位置合わせする。この位置合わせは、骨領域特定部5cと同様にして行われる。そして骨領域特定部12dは、骨領域推定部12bにより推定される骨領域の位置と、位置合わせした後の2つの骨領域のずれとに基づいて、ダイナミックデータに含まれる複数の造影ボリュームデータのそれぞれについての骨領域の位置を特定する。骨領域分離部12fは、ダイナミックデータに含まれる複数の造影ボリュームデータのそれぞれから、骨領域特定部12dで特定された骨領域のデータを抽出して抽出骨領域データを生成するとともに、ダイナミックデータに含まれる複数の造影ボリュームデータのそれぞれを上記骨領域の抜けたデータに更新する。
【0035】
そして骨領域特定消去ユニット12は、骨領域分離部12eによって更新された後のコントラストデータと、骨領域分離部12fによって更新された後のダイナミックデータとを、画像同一位置参照部13へ出力する。また骨領域特定消去ユニット12は、骨領域分離部12eによって新たに作成された抽出骨領域データと、骨領域分離部12fによって新たに作成された抽出骨領域データとを、画像レンダリングユニット6へ出力する。
【0036】
画像同一位置参照部13は、骨領域の3次元的な形態情報に基づいて造影前データ、コントラストデータおよびダイナミックデータの間の位置合わせを行った情報を使用することで、ボリュームデータ間の解剖学的に同じ位置を参照する。つまり画像同一位置参照部13は、2つもしくは3つのボリュームデータの間で、骨の形状を使用して3次元的に位置合わせを行うことにより、ボリュームデータ上に存在する他の組織の位置をも同時に合わせることができるので、このような位置合わせを行った情報を使用してボリュームデータ間の解剖学的に同じ位置を参照する。
【0037】
機能情報数値化ユニット14は、ダイナミックデータに含まれる複数のボリュームデータから、機能情報として、例えばCBP、CBV、MTTの脳血流インデックスを画素ごと(局所領域ごと)に計算するとともに、これらインデックスの空間マップ(脳血流を表すファンクショナルマップ)を生成する。なお、実際的には、これらインデックスは、CT値から特定され得る血管強調領域に限定して計算される。CBPは、脳組織の毛細血管内の単位体積及び単位時間あたりの血流量[ml/100ml/min]を表し、CBVは、脳組織内の単位体積あたりの血液量[ml/100ml]、MTTは毛細血管の血液平均通過時間[秒]を表している。このCBPスタディでは、トレーサーとして脳血管透過性を持たない造影剤、例えばヨード造影剤が使用される。ヨード造影剤は例えばインジェクターにより肘静脈から注入される。インジェクターにより静注されたヨード造影剤は、心臓、肺を経由して、脳動脈へ流れ込む。そして、造影剤は、脳動脈から、脳組織内の毛細血管を経て、脳静脈へと流れ出ていく。このとき、ヨード造影剤は正常な脳組織内の毛細血管では血管外へ漏れ出ることなく通過する。造影剤の通過の様子をダイナミックCTで撮影して、得られた複数のボリュームデータファイルから、脳動脈上の画素の時間濃度曲線Ca(t)、脳組織(毛細血管)上の画素の時間濃度曲線Ci(t)、脳静脈上の画素の時間濃度曲線Csss(t)をそれぞれ測定する。CBPスタディでは、脳動脈の濃度時間曲線Ca(t)と脳組織の濃度時間曲線Ci(t)との間で成り立つ理想的な関係を解析モデルとしている。脳組織に入る直前の血管から造影剤を注入した場合、脳組織の単位体積(1画素)内の時間濃度曲線は立ち上がりが垂直で、しばらくは一定の値を維持し、その後、急勾配で立ち下がる形になる。これを矩形関数で近似する(box−MTF法:box-Modulation Transfer Function method)。つまり、脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を入力関数、脳組織の時間濃度曲線Ci(t)を出力関数として、入力関数と出力関数との間の伝達関数を矩形関数で近似する。伝達関数は、トレーサーが毛細血管を通過する過程を表している。矩形近似した伝達関数MTFを、脳組織領域内の全画素を対象として画素ごとに計算する。計算された伝達関数MTFから脳組織の血流動態を表すインデックス(CBP、CBV、MTT)を、脳組織領域内の全画素を対象として画素ごと計算する。
【0038】
画像レンダリングユニット15は、3次元のファンクショナルマップの各機能値をカラーテーブルに基づいて色情報に変換する色情報作成部と、ボリュームデータファイルに対して画素ごとに画素値に応じた透明度等を与えることで血管等の関心部位を実質的に抽出して3次元の形態画像データを生成する形態情報処理部と、3次元の形態画像とともに色情報とを使ってボリュームレンダリング処理によりMPR画像又は3D画像(投影画像)を生成する画像作成レンダリング部とを有する。色情報作成部は、機能情報と色情報とを対応付けるカラーテーブルを操作者の指示に従って任意に編集する機能を有している。なお、MPR処理では、ボリュームデータファイルから形態画像として任意断面のMPR画像が生成され、MPR画像に機能情報に関する任意断面のカラーマップが半透明に重ね合わされる。画像作成レンダリング部のボリュームレンダリング処理には、影付けボリュームレンダリング法、影なしボリュームレンダリング法、最大値投影ボリュームレンダリング法、最小値投影ボリュームレンダリング法、平均値投影ボリュームレンダリング法、閾値指定による表面表示レンダリング法が含まれ、操作者により任意に選択される。
【0039】
以上のように本実施形態によれば、ボリュームデータを指定してそのデータから形態画像を生成し表示させるに際して、同じ被検体であって同じ部位のダイナミックデータが自動検索され、存在するのであればダイナミックデータから血流量等の機能情報が計算され、その機能情報に応じて自動的に色付けして形態画像が表示される。従って操作者は、所望のボリュームデータファイルを指定するだけで、余計な操作を不要にして、機能情報の提供を受けることができる。そして、上記の形態画像は、骨を除去したものとすることができるので、操作者が血管に係わる機能情報をより的確に認識することが可能となる。
【0040】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
画像表示制御ユニット7,15および表示部8などを備えずに、別の表示装置で表示するための画像を生成するための医用画像生成装置として実現することも可能である。
【0041】
造影ボリュームデータは、水溶性造影剤をボーラス静注して同一の部位で撮影することで血流動態の解析ができるDynamicCTにより収集されるものや、水溶性ヨード造影剤を投与して撮影することで、血管部分の陰影を強調した画像を得る静注CTにより収集されるものとすることができる。
【0042】
ボリュームデータは、磁気共鳴映像装置などのCTスキャナ以外の医療画像撮影装置により収集されたものであっても良い。
【0043】
ボリュームデータは、事前に全てが収集されてボリュームデータ保管部1に保管されていても良いし、医療画像撮影装置が出力するものをリアルタイムに入力するようにしても良い。
【0044】
データの入力に関して、処理に必要な画像データを、画像を管理する手段の中から事前に決められた画面プロトコルの内容に沿って自動的に選択し、所定のボリュームデータを所定の記憶領域にロードする手段をさらに備えても良い。
【0045】
表示部8に表示されている動画データをAVIやMPEGなどの標準動画フォーマットに変換して各種記憶装置に保存することで、画像データをボリュームデータとしてそのまま保存した場合に発生する記憶領域の不足(記憶領域の容量によっては全てのデータを記憶できない)による問題に対応できるようにしても良い。
【0046】
頭部などの形状変化しない骨領域に対する骨領域特定手段と、足や腕などの関節の動作によって形状が変化するような骨領域に対する骨領域特定手段との両方の手段を備え、用途によりこれらの手段を選択的に使用できるようにしても良い。
【0047】
複数のボリュームデータから抽出した血管部分だけの3D動画データ、血管部分以外の組織(脳実質、表面、脳室、骨、等)の3D動画データ、を合成しながら動画表示できるようにしても良い。
【0048】
3D画像の表示方法として、上記の様々なボリュームレンダリング法の他に、平行投影法および臓器の内部に視点を置いてパースペクティブな3D画像を表示するパースペクティブ投影法を備えても良い。
【0049】
最大値投影画像および最小値投影画像に対し、投影される画素の値に、ある任意のカラー情報(どのような色でも良い)を割り付ける事で、例えば血管部分だけを他の部分と異なった特定の色にして表示するようにしてもよい。
【0050】
各臓器によってカスタマイズされた表示画面を持ち、画像収集情報や撮影した臓器の種類によって使用する結果表示画面の種類を自動的に切り替えて表示する、臨床プロトコルサポートなどの機能を備えても良い。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の医用画像生成装置を適用してなる医用画像表示装置の第1の実施形態における構成を示す図。
【図2】本発明の医用画像生成装置を適用してなる医用画像表示装置の第2の実施形態における構成を示す図。
【符号の説明】
【0053】
1…ボリュームデータ保管部、2…造影前データ検索入力部、3…データ検索入力部、4…画像データロードユニット、5…骨領域特定消去ユニット、5a,5b,12a,12b…骨領域推定部、5c,12c,12d…骨領域特定部、5d,12e,12f…骨領域分離部、6…画像レンダリングユニット、6a…色情報作成部、6b…形状情報処理部、6c…画像作成レンダリング部、7…画像表示制御ユニット、8…表示部、9…コントラスト画像自動検索部、10…ダイナミックデータ自動検索部、11…画像データロードユニット、12…骨領域特定消去ユニット、13…画像同一位置参照部、14…機能情報数値化ユニット、15…画像レンダリングユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管領域に造影剤が注入された状態の被検体に関する造影ボリュームデータに基づいて、被検体の骨領域の3次元位置を推定する第1の推定手段と、
前記血管領域に前記造影剤が注入されない状態の被検体に関する非造影ボリュームデータに基づいて、前記被検体の骨領域の3次元位置を推定する第2の推定手段と、
前記第1および前記第2の推定手段によりそれぞれ推定された3次元位置どうしのパターンマッチングによって前記骨領域の3次元位置を特定する特定手段と、
前記特定された3次元位置の骨領域を消去するように前記造影ボリュームデータを更新する手段と、
前記更新された造影ボリュームデータに基づいて前記血管領域の形態を表す医用画像を生成する手段とを具備したことを特徴とする医用画像生成装置。
【請求項2】
前記複数の非造影ボリュームデータおよび前記造影ボリュームデータを管理する管理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の医用画像生成装置。
【請求項3】
前記管理手段は、
複数のボリュームデータを記憶する手段と、
前記複数のボリュームデータのうちから前記造影ボリュームデータおよび前記非造影ボリュームデータを抽出する手段とを具備することを特徴とする請求項1に記載の医用画像生成装置。
【請求項4】
前記医用画像を表示する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の医用画像生成装置。
【請求項5】
前記第1の推定手段は、医療画像撮影装置によって収集される時間的に連続した複数の造影ボリュームデータを処理対象とすることを特徴とする請求項1に記載の医用画像生成装置。
【請求項6】
前記特定された3次元位置の骨領域に相当するデータを前記造影ボリュームデータから抽出して骨領域データを生成する手段をさらに具備することを特徴とする請求項5に記載の医用画像生成装置。
【請求項7】
前記特定手段は、人為的な指示に応じて前記パターンマッチングの結果を修正した上で、この修正されたパターンマッチングの結果に基づいて前記骨領域の3次元位置を特定することを特徴とする請求項1に記載の医用画像生成装置。
【請求項8】
血管領域に造影剤が注入された状態の被検体に関する造影ボリュームデータのうちの第1のボリュームデータに基づいて、被検体の骨領域の3次元位置を推定する第1の推定手段と、
前記造影ボリュームデータのうちの第2のボリュームデータに基づいて、被検体の骨領域の3次元位置を推定する第2の推定手段と、
前記血管領域に前記造影剤が注入されない状態の被検体に関する非造影ボリュームデータに基づいて、前記被検体の骨領域の3次元位置を推定する第3の推定手段と、
前記第1および前記第3の推定手段によりそれぞれ推定された3次元位置どうしのパターンマッチングによって前記骨領域の3次元位置を特定する第1の特定手段と、
前記第1の特定手段により特定された3次元位置の骨領域を消去するように前記第1のボリュームデータを更新する手段と、
前記更新された第1のボリュームデータファイルから前記血管領域に関する形態画像を生成する手段と、
前記第2および前記第3の推定手段によりそれぞれ推定された3次元位置どうしのパターンマッチングによって前記骨領域の3次元位置を特定する第2の特定手段と、
前記第2の特定手段により特定された3次元位置の骨領域を消去するように前記第2のボリュームデータを更新する手段と、
前記更新された第2のボリュームデータファイルから前記血管領域に関する機能画像を生成する手段と、
前記機能情報に応じて前記形態画像に色情報を付与する手段とを具備したことを特徴とする医用画像生成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−271527(P2006−271527A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92090(P2005−92090)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】