医用画像診断支援装置および方法、並びにプログラム
【課題】心臓領域の画像診断の際に、心機能が低下している部分に心筋梗塞が起きているかどうかを明確に提示できるようにする。
【解決手段】心機能解析部31が、心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出するとともに、心筋梗塞解析部32が、3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出する。重畳画像生成部34は、算出された心機能評価値および心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力するようにした。
【解決手段】心機能解析部31が、心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出するとともに、心筋梗塞解析部32が、3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出する。重畳画像生成部34は、算出された心機能評価値および心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元医用画像に基づいて心臓領域の画像診断に有用な画像を出力する医用画像診断支援技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場におけるマルチスライスCTの普及に伴い、医用画像解析技術が急速に発展している。例えば、心臓領域においては、心臓の1心拍の間に複数の3次元画像が取得できるまでになった。これに伴い、心臓領域の3次元医用画像を用いた様々な画像診断支援手法が提案されている。
【0003】
多くの心臓の疾患では、心筋に血流が供給されなくなり、心筋が動かなくなることによって心停止の状態が引き起こされる。したがって、画像診断によって心筋の異常を発見し、治療方針をいち早く決定することが求められる。心筋への血流が減少する虚血によって引き起こされる疾患の代表例が狭心症と心筋梗塞である。狭心症と心筋梗塞の違いは、その心筋が今後回復できるかどうかであり、狭心症では心筋が回復できるのに対して、心筋梗塞では既に心筋が壊死しているため回復しないところにある。狭心症の場合、その治療法として、心筋の血流不足の原因となる冠動脈の狭窄部位を拡張する手術(経皮的冠動脈インターベンション(PCI))や、冠動脈バイバス手術といった血行再建療法が実施できる。そのため、該当の患者が狭心症か心筋梗塞かの鑑別が非常に重要である。
【0004】
このような心臓の疾患の画像診断のために、CTもしくはMR画像を用いた左心室の心機能解析が行われており、これにより、心筋の動きに異常がある部位を検出することができる。本出願人も、例えば、心機能を表す機能画像と冠動脈を表す形態画像とを所定のフォーマットでフュージョン表示する手法を提案している(特許文献1)。一方、心筋の虚血領域(壊死領域)の検出のためのMR遅延造影解析が注目されつつあり、これにより、心筋のどの部分が梗塞しているかがわかる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−253753号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】石本 剛 外3名、「3.0T MRIにおける3D心臓遅延造影MRIの検討」、日本放射線技術学会雑誌、日本放射線技術学会、2008年12月、Vol.64, No.12, p.p.1554-1561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記の各解析のための検査は別々に行われており、それぞれの結果を医師が個別に確認し、総合判断を下していた。すなわち、医師が、心機能解析からの心臓機能評価結果と、MR遅延造影解析からの梗塞部位の判定結果とを総合判断する際、それぞれの位置関係は医師の頭の中で対応関係を想像し、判断していた。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、心臓領域の画像診断の際に、心機能が低下している部分に心筋梗塞が起きているかどうかを明確に提示可能な医用画像診断支援装置および方法、並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の医用画像診断支援装置は、心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出する心機能解析手段と、前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出する心筋梗塞解析手段と、前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系(重畳画像の座標系)に重畳的に表した重畳画像を出力する重畳画像出力手段とを設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の医用画像診断支援方法は、コンピュータが、心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出するステップと、前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出するステップと、前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系(重畳画像の座標系)に重畳的に表した重畳画像を出力するステップとを実行することを特徴とする。
【0011】
本発明の医用画像診断支援プログラムは、コンピュータを上記医用画像診断支援装置の各手段として機能させるものである。
【0012】
ここで、心機能評価値と心筋梗塞度の算出の際に入力となる3次元医用画像は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。具体例としては、心機能評価値の算出には、1以上の所定の心位相における心臓を表す3次元医用画像を入力とすることが考えられる。ここで、心位相とは、心臓の収縮と拡張を含む1回の心拍周期における段階を意味する。一方、心筋梗塞度の算出には、被検体に所定の造影剤を投与して所定の時間が経過した後にMRI装置による撮像で得られた心臓の遅延造影相を表す3次元医用画像を入力とすることが考えられる。
【0013】
心機能評価値と心筋梗塞度の算出の際に異なる3次元医用画像を用いる場合、必要に応じて、両3次元医用画像中の心臓の解剖学的位置の対応関係を特定するようにすることが好ましい。この場合、重畳画像は、特定された解剖学的位置の対応関係に基づいて、相対応する解剖学的位置における心機能評価値と心筋梗塞度とが、重畳画像の座標系の同じ位置に表されたものになるようにすることが好ましい。ここで、解剖学的位置の対応関係に基づく位置合わせは、心機能評価値と心筋梗塞度の算出の前に行ってもよいし、これらの算出と同じタイミングで行ってもよいし、算出後(重畳画像の作成時)に行ってもよい。
【0014】
心機能評価値の具体例としては、心筋の壁運動に関する評価値が挙げられる。
【0015】
また、心筋梗塞度としては、例えば、心臓の各部分における、心筋全体の厚さに対する梗塞が起きている心筋の厚さの割合を用いることができる。
【0016】
重畳画像は、心臓の各部分のうちの少なくとも一部における心機能評価値および心筋梗塞度が表されていればよい。例えば、心機能評価値が所定の基準を満たす程度に低い(心機能が低い)部分のみを表すようにしてもよいし、心筋梗塞度についても、所定の基準を満たす程度に高い(心筋の梗塞の程度が深刻)部分のみを表すようにしてもよい。
【0017】
また、重畳画像は、少なくとも、3次元医用画像中の心臓の心尖部と心基部とを結ぶ長軸の方向における位置を表す第1の座標成分と、長軸上の各位置における、長軸に直交する断面上で、長軸を表す点を視点とする放射状の視線の方向を表す第2の座標成分とによって規定される座標系に心機能評価値および心筋梗塞度が表されたものとしてもよい。あるいは、所与の方向から見た心臓の各部分に、心機能評価値と心筋梗塞度とが重畳的に表されたものとしてもよい。
【0018】
重畳画像の出力態様には、心機能評価値と心筋梗塞度が重畳的に視覚化されうる出力態様のすべてが含まれうる。例えば、1つの重畳画像を生成して、その画像データを記憶装置に書き込む態様や、1つの重畳画像を生成してハードコピー出力する態様、心機能評価値と心筋梗塞度の各々を表す2つの画像を重畳状態で表示手段に表示させるように表示制御する態様等が挙げられる。
【0019】
本発明において、3次元医用画像から冠動脈領域を抽出するようにし、抽出された冠動脈領域を上記座標系にさらに重畳的に表すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、心機能評価値および心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力することができる。これにより、心機能評価値と心筋梗塞度の2つの算出結果が統合的に可視化され、心機能が低下している部分に心筋の梗塞が生じているかどうかが明確に提示される。したがって、画像診断の際に、狭心症と心筋梗塞の判断を、より容易に、かつ、より正確に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態となる医用画像診断支援装置が導入された医用画像診断システムの概略構成図
【図2】本発明の実施形態における医用画像診断支援処理機能(心臓解析機能)を実現する構成および処理の流れを模式的に示したブロック図
【図3】本発明の実施形態における医用画像診断システムを用いた心臓解析処理の流れを表したフローチャート
【図4】心臓領域に設定される長軸、短軸、短軸断面を模式的に表した図
【図5】短軸断面における心機能評価値の算出処理を説明するための図
【図6】心機能を表すブルズアイ画像の一例を表した図
【図7】短軸断面における梗塞占有率の算出処理を説明するための図
【図8】梗塞占有率を表すブルズアイ画像の一例を表した図
【図9】心機能評価値と梗塞占有率を重畳したブルズアイ画像の一例を表した図
【図10】左心室の4つのセグメントを模式的に表した図
【図11】心機能評価値と梗塞占有率を重畳したトポグラフィックマップ画像の一例を表した図
【図12】心機能評価値と梗塞占有率を重畳した画像の一例を表した図
【図13】本発明の実施形態の一変形例における医用画像診断支援処理機能(心臓解析機能)を実現する構成および処理の流れを模式的に示したブロック図
【図14】本発明の実施形態の一変形例における医用画像診断システムを用いた心臓解析処理の流れを表したフローチャート
【図15】冠動脈の形態と心機能評価値と梗塞占有率を重畳したボリュームレンダリング画像の一例を表した図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、マルチスライスCTで得られた複数の心位相の3次元医用画像に基づいた心機能解析結果と、MR遅延造影で得られた3次元医用画像に基づいた心筋の梗塞領域の解析結果とを重畳表示する心臓解析処理を例にして、本発明の実施の形態となる医用画像診断支援装置が導入された医用画像診断システムについて説明する。
【0023】
図1は、この医用画像診断システムの概要を示すハードウェア構成図である。図に示すように、このシステムでは、モダリティ1と、画像保管サーバ2と、画像処理ワークステーション3とが、ネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0024】
モダリティ1は、被検体の胸部(心臓領域)を撮影することにより、その部位を表す3次元医用画像の画像データを生成し、その画像データにDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格で規定された付帯情報を付加して、画像情報として出力する装置である。本実施形態では、マルチスライスCTおよびMRIが含まれる。
【0025】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された医用画像データや画像処理ワークステーション3での画像処理によって生成された医用画像の画像データを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理用ソフトウェア(たとえば、ORDB(Object Relational Database)管理ソフトウェア)を備えている。
【0026】
画像処理ワークステーション3は、本発明の医用画像診断支援装置として機能する。読影者からの要求に応じて、モダリティ1や画像保管サーバ2から取得した医用画像データに対して画像処理(画像解析を含む)を行い、生成された画像を表示するコンピュータであり、CPU,主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置(マウス、キーボード等)、表示装置(ディスプレイモニタ)、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーティングシステム等がインストールされたものである。本発明の医用画像診断支援処理(心臓解析処理)は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたプログラム(心臓解析アプリケーション)を実行することによって実現される。また、このプログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0027】
画像データの格納形式やネットワーク9経由での各装置間の通信は、DICOM等のプロトコルに基づいている。
【0028】
図2は、画像処理ワークステーション3の機能のうち、本発明の第1の実施形態となる心臓解析処理に関連する部分を示すブロック図である。図に示すように、本実施形態における心臓解析処理は、心機能解析部31、心筋梗塞解析部32、対応関係特定部33、重畳画像生成部34、表示制御部35によって実現される。また、複数の心位相t(t=1,2,・・・,T)におけるCT画像の画像データV-CTt、MR遅延造影画像の画像データV-MR、心機能を表すブルズアイ画像の画像データI-CF、梗塞占有率を表すブルズアイ画像の画像データI-MI、重畳画像の画像データI-OLは、各々、上記各処理部によって、画像処理ワークステーション3の所定の記憶領域に対して読み書きされるデータである。
【0029】
次に、図3のフローチャートに基づいて、本発明の実施形態となる心臓解析処理の流れについて説明する。
【0030】
まず、ユーザ(例えば画像診断医)が画像処理ワークステーション3のディスプレイに表示された検査リストやシリーズリストから心臓解析の対象画像を選択すると、画像処理ワークステーション3は、選択されたCT画像データV-CTtとMR画像データV-MRを取得する(#1a, #1b)。次に、ユーザが、心臓解析アプリケーションを起動する操作を行うと、選択されたCT画像データV-CTtとMR画像データV-MRに対する画像解析が開始される。
【0031】
心機能解析部31は、複数の心位相のうち、後述の心機能評価値CFの算出に必要な1以上の位相tのCT画像データV-CTtの各々について、画像中の心臓領域、左心室内腔領域、心筋領域を抽出し(#2a)。図4に模式的に示したように、各心位相tについて、抽出された心臓領域の心尖部と心基部とを結ぶ長軸LA-CTt、および、長軸LA-CTtと直交するM本の短軸SA-CTt,m(m=1,2,・・・,M)を設定する(#3a)。
【0032】
一方、心筋梗塞解析部32も、上記と同様にして、MR画像データV-MRを入力として、画像中の心臓領域、左心室内腔領域、心筋領域を抽出し(#2b)、長軸LA-MRと短軸SA-MRmを設定する(#3b)。
【0033】
次に、対応関係特定部33は、CT画像V-CTtとMR画像V-MRの各々に表された心臓の解剖学的位置の対応関係を特定し、両画像の位置合わせを行う(#4)。
【0034】
続いて、心機能解析部31は、ステップ#3aで設定された各短軸SA-CTt,m(m=1,2,・・・,M)を通り、長軸LA-CTtと直交する複数の短軸断面P-CTt,1〜P-CTt,M(図4参照)による短軸画像(図5参照)の各々について、短軸断面P-CTt,m上での長軸LA-CTtを表す点O-CTt,mを視点とする放射状の視線の方向l1からlN毎に心機能評価値CFを算出し(#5a)、心機能を表すブルズアイ画像I-CF(図6参照)を生成する(#6a)。
【0035】
心筋梗塞解析部32は、ステップ#3bで設定された各短軸SA-MRm(m=1,2,・・・,M)を通り、長軸LA-MRと直交する複数の短軸断面P-MRm(図4参照)による短軸画像(図7参照)の各々について、短軸断面P-MRm上での長軸LA-MRを表す点を視点とする放射状の視線の方向l1からlN毎に梗塞占有率MIを算出し(#5b)、梗塞占有率を表すブルズアイ画像I-MI(図8参照)を生成する(#6b)。
【0036】
そして、重畳画像生成部34は、心機能を表すブルズアイ画像I-CFと梗塞占有率を表すブルズアイ画像I-MIを重ね合わせた重畳画像I-OL(図9参照)を生成し(#7)、表示制御部35は、生成された重畳画像I-OLを画像処理ワークステーション3のディスプレイに表示させる(#8)。
【0037】
以下、本実施形態における各処理部等の詳細について説明する。
【0038】
心機能解析の対象であるCT画像データV-CTtは、マルチスライスCTによる撮影で得られた、複数の心位相tにおける心臓領域を表したものである。ここで、心位相tは、心電図のR波から次のR波までの時間間隔を百分率で正規化したものとすることができる。本実施形態では、一般化して、t=1,2,・・・,TというT個の位相で表している。
【0039】
一方、心筋梗塞解析の対象であるMR画像データV-MRは、ガドリニウム(Gd)造影剤を静脈投与して所定の時間(15から20分程度)が経過した後に、MRI装置によるインバージョン・リカバリ法等の撮影法で得られた、遅延造影相を表すT1強調画像の画像データである。ガドリニウム(Gd)造影剤は、正常な心筋細胞には取り込まれず、血液中や細胞外液に分布する。したがって、心筋が壊死している梗塞領域では、正常な心筋細胞が減少し、心筋細胞の異常に伴って細胞外液成分が増加するため、遅延造影相において高信号領域となる。
【0040】
心機能解析部31および心筋梗塞解析部32による心臓、左心室内腔、心筋の各領域の抽出手法としては、公知の手法を実装すればよい。例えば、各心位相のCT画像V-CTtを構成する各ボクセルデータの値について、心臓の輪郭らしさを表す特徴量、左心室の輪郭らしさを表す特徴量をそれぞれ算出し、算出した特徴量を機械学習により予め取得された評価関数に基づいて評価することで、そのボクセルデータが心臓の輪郭(心臓の表層にある心外膜)を表すものであるか否か、また左心室の輪郭(左心室の内腔と心筋の境界にある心内膜)を表すものであるか否かを判断するようにしてもよい。この判断を繰り返すことにより、心臓全体の輪郭および左心室の輪郭を表すボクセルデータがそれぞれ判別され、心臓の輪郭内の領域が心臓領域、左心室の輪郭内の領域が左心室内腔領域、両輪郭に挟まれた領域が心筋領域として抽出される。なお、評価関数の取得には、例えば、アダブースト(Adaboost)アルゴリズムを用いることができる(詳細は、特開2007-307358号公報等参照)。また、各領域の抽出には、他のマシンラーニング手法や統計的モデルを用いた手法、例えば線形判別法やニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等を用いることも可能である。また、心臓、心室内腔、心筋の各領域の抽出結果を手動修正するユーザインターフェースを設けてもよい。この手動修正は、例えば、短軸画像、または、長軸を通る断面による長軸画像上に、各領域の抽出結果を表示させ、修正したい領域の境界を変更する操作を受け付けることによって行うことができる。
【0041】
心機能解析部32による長軸LA-CTtおよび短軸SA-CTt,m(m=1,2,・・・,M)の設定は、以下のようにして行うことができる。すなわち、図4に模式的に示したように、抽出された左心室領域に対し、心尖部と左心室のほぼ中心と心基部とを結ぶ長軸LA-CTtを設定するとともに、長軸LA-CTt上の各点において長軸LA-CTtと直交するM本の短軸SA-CTt,m(m=1,2,・・・,M)を設定する。ここで、長軸LA-CTtは、心臓領域の抽出結果から心尖部と左心室の中心の位置座標を算出することにより、自動的に設定することができる。また、長軸LA-CTt上での短軸SA-CTt,mの各位置は、デフォルトまたはユーザによって設定された短軸画像の枚数(上記Mの値)や短軸断面間の距離等のパラメータに基づいて設定される。心筋梗塞解析部32による長軸LA-MRおよび短軸SA-MRm(m=1,2,・・・,M)の設定の詳細についても同様である。なお、自動設定された長軸LA-CTt、LA-MRの位置や方向を手動修正するユーザインターフェースを設けてもよい。例えば、自動設定された長軸LA-CTt、LA-MRを心臓領域の画像とともに画面に表示し、ドラッグ操作によって長軸LA-CTt、LA-MRを移動させたり、回転させたりできるようにすればよい。
【0042】
対応関係特定部33によるCT画像V-CTtとMR画像V-MRの位置合わせは、MR画像V-MRと、MR画像V-MRの心位相と同一または近接する心位相T0におけるCT画像V-CTT0との相互情報量を最大化する画像変換関数を求め、MR画像V-MRをその画像変換関数によって剛体または非剛体変換することによって行うことができる。具体的には、まず、CT画像データV-CTT0から、各短軸SA-CTT0,mを通り、長軸LA-CTT0と直交する複数の短軸断面P-CTT0,1〜P-CTT0,MによるCT短軸画像を生成する。一方、MR像データV-MRから、各短軸SA-MRmを通り、長軸LA-MRと直交する複数の短軸断面P-MR1〜P-MRMによるMR短軸画像を生成する。次に、短軸の位置が対応するCT短軸画像とMR短軸画像の組合せ毎に、相互情報量を用いた位置合わせを行う。あるいは、上記組合せ毎に、ユーザのマウス操作等により手動で位置合わせを行うようにしてもよい(位置合わせ処理の詳細は、例えば、渡部 浩司、「マルチモダリティの画像位置合わせと重ね合わせ」、日本放射線技術学会雑誌、日本放射線技術学会、2003年1月、Vol.59, No.1, p.p.60-65等参照)。
【0043】
心機能評価値CFは、図5に示すように、各CT短軸断面P-CTt,mにおいて、長軸LA-CTtと短軸断面P-CTt,mとの交点O-CTt,mから短軸断面P-CTt,mに沿って放射状に延びる複数の線分ln(n=1,2,・・・,N)毎、あるいは、各線分lnによって分割される区画毎に算出する。以下に、心機能評価値CFの具体例と算出方法を挙げる。
【0044】
単一の心位相のCT画像データV-CTtから算出される心機能評価値CFの具体例としては、心室内径と壁厚が挙げられる。心室内径とは、各CT短軸画像における、交点O-CTt,mから心室内腔と心筋の境界LVinまでの上記各線分lnに沿った距離である(図5の線分l1上の距離ID参照)。一方、壁厚とは、各CT短軸画像における、交点O-CTt,mから心臓の境界LVoutまでの上記各線分lnに沿った距離と、交点O-CTt,mから心室内腔と心筋の境界LVinまでの上記各線分lnに沿った距離の差である(図5の線分l1上の距離WT参照)。これらの心機能評価値CFは、各心位相tで算出し、心位相t毎にブルズアイ画像I-CFを生成するようにすれば、心機能評価値CFの動画表示が可能になる。逆に、例えば、拡張末期や収縮末期のように、画像診断上重要な特定の心位相でのみ算出するようにしてもよい。この場合、上記のCT画像V-CTtとMR画像V-MRの位置合わせは、両画像間の心位相の同一性にかかわらず、上記特定の心位相のCT画像V-CTtとMR画像V-MRとの間で行えばよい。
【0045】
また、複数の心位相のCT画像データV-CTtから算出される心機能評価値CFの具体例としては、局所駆出率や壁厚変化量、壁運動量が挙げられる。局所駆出率とは、左心室内の区画された領域毎の駆出率である。ここで、駆出率とは、拡張末期と収縮末期での容量の差(駆出量)の拡張末期での容量に対する比率である。本実施形態では、局所駆出率は、各短軸画像の各線分lnによって分割される区画毎に下式によって得られる。
【0046】
(拡張末期の面積(容積)−収縮末期の面積(容積))×100/拡張末期の面積
壁厚変化量とは、収縮末期と拡張末期での心筋の厚さ(壁厚)の差である。壁厚増加率とは、収縮末期と拡張末期での心筋の厚さ(壁厚)の差の拡張末期での心筋の厚さ(壁厚)に対する比率である。壁運動量とは、拡張末期と収縮末期での心室の径の差である。
【0047】
なお、複数の心位相のCT画像データV-CTtから心機能評価値CFを算出する場合には、その算出で用いられる各心位相間での位置合わせを、その心機能評価値CFの算出の前に行うことが好ましい。例えば、心位相T1のCT画像V-CTT1と心位相T2のCT画像V-CTT2との位置合わせは、両画像の相関係数が最も高くなる画像変換関数を求め、一方のCT画像をその画像変換関数によって剛体または非剛体変換することによって行うことができる。具体的には、上記CT画像V-CTtとMR画像V-MRの位置合わせと同様に、短軸の位置が対応するCT短軸画像の組合せ毎に、相関係数を用いた位置合わせを行う。あるいは、上記組合せ毎に、ユーザのマウス操作等により手動で位置合わせを行うようにしてもよい。
【0048】
一方、梗塞占有率MIは、例えば、図7に示すように、MR短軸断面P-MRmにおいて、長軸LA-MRと短軸断面P-MRmとの交点O-MRmから短軸断面P-MRmに沿って放射状に延びる複数の線分ln(n=1,2,・・・,N)毎の、心筋領域全体に対する梗塞領域の比率であり、線分lnの各々について下式によって得られる。
【0049】
心筋の梗塞領域RMIの厚さ×100/心筋領域全体の厚さ(壁厚:LVinとLVoutの間の距離)
あるいは、各線分lnによって分割される区画毎に、
心筋の梗塞領域RMIの面積×100/心筋領域全体の面積
によって算出してもよい。なお、前述のとおり、心筋の梗塞領域RMIは、正常な心筋領域よりも高い信号値を示すので、梗塞領域と正常領域とを識別可能な閾値を用いて、その閾値よりも信号値が高いボクセルを梗塞領域RMIとして抽出することができる。
【0050】
心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFは、CT短軸断面P-CTt,1からP-CTt,Mの各々で得られた心機能評価値CFを、各断面の芯線部からの距離に応じて、半径が異なる同心円の円周上に配することによって生成される。具体的には、心芯部に近い断面ほど半径の小さい円周上に配されるようにする。あるいは、心基部に近い断面ほど半径の小さい円周上に配されるようにしてもよい。図6は、心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFの一例を表したものである。図に示したように、芯線部からの距離がrmであるCT短軸断面P-CTt,m(図4参照)における心機能評価値CFの分布は、ブルズアイ画像I-CF中では、芯線部からの距離rmに対応する半径rm′の円周上に示される。また、CT短軸断面P-CTt,m上での各線分lnの向き(図5参照)は、ブルズアイ画像I-CF中での線分ln′の向きと一致するように、各CT短軸断面P-CTt,m上での心機能評価値CFの分布が表される。なお、心機能評価値CFは、例えば、その値に応じて色分けして表される。また、心機能評価値CFの所定の値の範囲のみに対して色を割り当ててもよい。
【0051】
梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIも、心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFと同様にして生成される。図8は、梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIの一例を表したものである。図に示したように、芯線部からの距離がrmであるMR短軸断面P-MRm(図4参照)における梗塞占有率MIの分布は、ブルズアイ画像I-MI中では、芯線部からの距離rmに対応する半径rm′の円周上に示される。また、MR短軸断面P-MRm上での各線分lnの向き(図7参照)は、ブルズアイ画像I-MI中での線分ln′の向きと一致するように、各MR短軸断面P-MRm上での梗塞占有率MIの分布が表される。なお、本実施形態では、梗塞占有率MIが所定の値(例えば90%)以上の領域のみに対して特定の濃度値を割り当てているが、例えば、梗塞占有率MIの値に応じて、異なる濃淡で表すようにしてもよい。また、ブルズアイ画像I-MI中に表す梗塞占有率の値の範囲を、ユーザによって変更できるようにしてもよい。
【0052】
重畳画像I-OLは、心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFに、梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIを半透明化して重ね合わせることによって生成される。このとき、ブルズアイ画像I-CFとI-MIの位置の対応関係は、対応関係特定部33によって特定され、既に位置合わせされているので、重畳画像生成部34は、両画像で座標値の一致する点同士で重ね合わせを行えばよい。図9は、図6の心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFと図8の梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIとから生成された重畳画像I-OLの例である。図に示したように、心機能評価値CFと梗塞占有率MIの両方が視認できるように、心機能評価値CFと梗塞占有率MIが異なる表示態様(色、濃淡、網掛け等)で表されている。
【0053】
以上のように、本発明の実施形態によれば、重畳画像生成部34が、心機能解析部31によって算出された心機能評価値CF、および、心筋梗塞解析部32によって算出された梗塞占有率MIを、両者を識別可能な態様で、心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像I-OLを出力する。これにより、心機能評価値と梗塞占有率の2つの算出結果が統合的に可視化され、心機能が低下している部分に心筋の梗塞が生じているかどうかがユーザに明確に提示される。したがって、画像診断の際に、狭心症と心筋梗塞の判断を、より容易に、かつ、より正確に行うことが可能になる。
【0054】
また、対応関係特定部33が、心機能評価値CFの算出に用いられるCT画像V-CTtと、梗塞占有率MIの算出に用いられるMR画像V-MRにおける、心臓の解剖学的位置の対応関係を特定し、両画像の位置合わせを行っているので、重畳画像生成部34によって生成される重畳画像I-OLは、同一の解剖学的位置での心機能評価値CFと梗塞占有率MIが表される、画像上の位置の誤差が小さくなり、診断精度の向上に資する。
【0055】
また、重畳画像生成部34によって生成される重畳画像I-OLは、心臓の心尖部と心基部とを結ぶ長軸LA-CTt、LA-MRの方向における位置を表す第1の座標成分と、長軸LA-CTt、LA-MR上の各位置における、長軸LA-CTt、LA-MRに直交する短軸断面P-CTt,m、P-MRm上で、長軸LA-CTt、LA-MRを表す点を視点とする放射状の視線の方向を表す第2の座標成分とによって規定される座標系で表されたものであるから、心臓(左心室)の壁の全周にわたる心機能評価値CFと梗塞占有率MIが1つの画像として表現されるので、一覧性が向上し、診断の効率化に資する。
【0056】
さらに、梗塞占有率MIについては、所定の基準を満たす程度に高い部分のみを重畳画像I-OL上に表すようにしたので、心機能評価値CFと梗塞占有率MIとの重ね合わせによって重畳画像I-OLが複雑化して、それぞれの値の分布が見づらくなることが防止され、診断上重要な心筋の梗塞が起きている部分を容易に把握することが可能になる。
【0057】
上記実施形態では、心機能評価値CFと梗塞占有率MIとをブルズアイ表示していたが、表示態様、すなわち、重畳画像I-OLの座標系は、これに限定されない。
【0058】
例えば、図11に示したトポグラフィックマップ表示を行うようにしてもよい。これは、図10に模式的に表したように、左心室を側壁、下壁、中隔、前壁の4つのセグメントに分割し、各セグメントの境界で左心室の壁を切り開くように展開する表示態様である。
【0059】
また、図12に示したように、心臓を表す擬似3次元画像上に心機能評価値CFと梗塞占有率MIとをマッピング表示するようにしてもよい。図12の表示例は、心機能解析部31で抽出された左心室の心筋部分の内壁LVinと外壁LVoutを用いて、左心室の外壁LVoutをメッシュ表示するとともに、内壁LVinをサーフェスレンダリングで表示し、左心室の内壁LVinのサーフェス面に心機能評価値CFと梗塞占有率MIとをマッピングしたものである。心機能評価値CFと梗塞占有率MIのマッピング位置は、図5や図7に示した複数の線分ln(n=1,2,・・・,N)と左心室内壁LVinの交点となっている。この表示態様にすれば、心臓または左心室の形態をある程度視覚化しながら、心機能評価値CFと梗塞占有率MIの分布を観察することができるので、心機能の異常部分や梗塞部分の解剖学的位置の把握が容易になる。一方、この表示態様の場合、左心室の壁の全周にわたる心機能評価値CFと梗塞占有率MIは一覧できないので、ユーザによるマウス等を用いた操作に応じて、視点の位置や視線方向を変更することによって、擬似3次元画像を回転できるようにすることが好ましい。
【0060】
また、上記実施形態では心機能評価値CFと梗塞占有率MIのみを重畳表示させているが、さらに冠動脈の形態も重畳表示させるようにしてもよい。図13は、この変形例に対応するブロック図である。図に示したように、本変形例は上記実施形態に対して冠動脈抽出部36を付加した態様となっている。
【0061】
冠動脈抽出部36は、公知の手法により、CT画像の画像V-CTtから冠動脈領域I-CAを抽出する。例えば、CT画像の画像データV-CTtから心臓領域を抽出した後、心臓領域を表す画像に対して多重解像度変換を行い、各解像度の画像に対してヘッセ行列の固有値解析を行い、各解像度の画像における解析結果を統合することによって、心臓領域中の様々なサイズの線構造(血管)の集合体として、冠動脈流域I-CAを抽出し、所定の記憶領域に格納する(Y Sato, et al.、「Three-dimensional multi-scale line filter for segmentation and visualization of curvilinear structures in medical images.」、Medical Image Analysis、1998年6月、Vol.2、No.2、p.p.143-168等参照)。なお、本変形例では、心臓領域の抽出処理は、心機能解析部31と共通の処理として行われる。また、冠動脈抽出部36は、さらに、最小全域木アルゴリズム等を用いて、抽出された各線構造の中心点を連結することにより、冠動脈を表す木構造のデータを生成し、抽出された冠動脈の中心点を結ぶ芯線上の各点(木構造データの各ノード)において、芯線に直交する断面を求め、各断面において、Graph-Cuts法等の公知のセグメンテーション手法を用いて冠動脈の輪郭を認識し、その輪郭を表す情報を木構造データの各ノードに関連づけるようにしてもよい。
【0062】
図14は、本変形例における処理の流れを表すフローチャートである。図に示したように、上記実施形態と同様に、画像処理ワークステーション3がCT画像データV-CTtとMR画像データV-MRを取得した後(#11a, #11b)、対応関係特定部33は、CT画像V-CTtとMR画像V-MRの各々に表された心臓の解剖学的位置の対応関係を特定し、両画像の位置合わせを行う(#12)。ここでは、MR画像V-MRを変換して位置合わせ後のMR画像V-MR′を所定の記憶領域に格納する。次に、ユーザによって心臓解析アプリケーションが起動されると、心機能解析部31は、上記実施形態と同様に、CT画像データV-CTtから心臓領域、左心室内腔領域、心筋領域を抽出し(#13a)、長軸LA-CTtおよび短軸SA-CTt,mを設定し(#14a)、心機能評価値CFを算出する(#15a)。一方、冠動脈抽出部36は、ステップ#13aで抽出された心臓領域から冠動脈領域I-CAを抽出する(#16)。また、心筋梗塞解析部32も、上記実施形態と同様に、MR画像データV-MRを入力として、画像中の心臓領域、左心室内腔領域、心筋領域を抽出し(#13b)、長軸LA-MRと短軸SA-MRmを設定し(#14b)、梗塞占有率MIを算出する(#15b)。そして、重畳画像生成部34が、冠動脈領域I-CA、心機能評価値CF、梗塞占有率MIを重畳した、図15に例示したような擬似3次元画像I-OLを生成する(#17)。ここで、擬似3次元画像I-OLは、例えば、冠動脈領域I-CAを表すボクセルデータと、心機能評価値CFや梗塞占有率MIを表すボクセルデータとを、アルファブレンド処理やボリュームレンダリング処理等を用いて合成することによって生成することができる(詳細は特開2008-259696号公報等参照)。表示制御部35は、生成された重畳画像I-OLを画像処理ワークステーション3のディスプレイに表示させる(#18)。ここで、ユーザによるマウス等を用いた操作に応じて、ボリュームレンダリングの視点の位置や視線方向を変更することによって、擬似3次元画像を回転できるようにすることが好ましい。
【0063】
なお、上記説明では、擬似3次元画像を重畳画像として生成しているが、冠動脈を表すブルズアイ画像を生成し、冠動脈領域I-CA、心機能評価値CF、梗塞占有率MIの各々を表すブルズアイ画像を重畳した重畳画像I-OLを生成するようにしてもよい(詳細については、前述の特許文献4等参照)。
【0064】
以上のように、本変形例によれば、心機能評価値CFと梗塞占有率MIとが重畳された画像に、さらに、冠動脈I-CAの形態を重畳した重畳画像I-OLが生成されるので、心機能の異常が生じていたり、梗塞が生じていたりする心筋の領域に対して酸素等を供給する冠動脈を容易に把握することが可能になり、その冠動脈を解析するための公知のアプリケーションとの連携も容易になる。これにより、診断効率や精度のさらなる向上が見込まれる。
【0065】
上記の実施形態や変形例はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。また、上記の実施形態におけるシステム構成、ハードウェア構成、処理フロー、モジュール構成、ユーザインターフェースや具体的処理内容等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
例えば、図3や図14において並列的に示されている処理ステップにおける処理順序は上記で説明した順序には限定されず、順序が前後してもよいし、並列に行ってもよい。例えば、図3のステップ#1a,#2a,#3aは、ステップ#1b,#2b,#3bの前に行ってもよいし、後に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0067】
また、重畳画像生成部34を設ける代わりに、表示制御部35が、心機能を表すブルズアイ画像I-CFと梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIとを所定の時間間隔で連続的に切り替えながら画像処理ワークステーション3のディスプレイに表示させることによって、心機能評価値CFと梗塞占有率MIの重畳表示を実現してもよい。
【符号の説明】
【0068】
31 心機能解析部
32 心筋梗塞解析部
33 対応関係特定部
34 重畳画像生成部
35 表示制御部
36 冠動脈抽出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元医用画像に基づいて心臓領域の画像診断に有用な画像を出力する医用画像診断支援技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場におけるマルチスライスCTの普及に伴い、医用画像解析技術が急速に発展している。例えば、心臓領域においては、心臓の1心拍の間に複数の3次元画像が取得できるまでになった。これに伴い、心臓領域の3次元医用画像を用いた様々な画像診断支援手法が提案されている。
【0003】
多くの心臓の疾患では、心筋に血流が供給されなくなり、心筋が動かなくなることによって心停止の状態が引き起こされる。したがって、画像診断によって心筋の異常を発見し、治療方針をいち早く決定することが求められる。心筋への血流が減少する虚血によって引き起こされる疾患の代表例が狭心症と心筋梗塞である。狭心症と心筋梗塞の違いは、その心筋が今後回復できるかどうかであり、狭心症では心筋が回復できるのに対して、心筋梗塞では既に心筋が壊死しているため回復しないところにある。狭心症の場合、その治療法として、心筋の血流不足の原因となる冠動脈の狭窄部位を拡張する手術(経皮的冠動脈インターベンション(PCI))や、冠動脈バイバス手術といった血行再建療法が実施できる。そのため、該当の患者が狭心症か心筋梗塞かの鑑別が非常に重要である。
【0004】
このような心臓の疾患の画像診断のために、CTもしくはMR画像を用いた左心室の心機能解析が行われており、これにより、心筋の動きに異常がある部位を検出することができる。本出願人も、例えば、心機能を表す機能画像と冠動脈を表す形態画像とを所定のフォーマットでフュージョン表示する手法を提案している(特許文献1)。一方、心筋の虚血領域(壊死領域)の検出のためのMR遅延造影解析が注目されつつあり、これにより、心筋のどの部分が梗塞しているかがわかる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−253753号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】石本 剛 外3名、「3.0T MRIにおける3D心臓遅延造影MRIの検討」、日本放射線技術学会雑誌、日本放射線技術学会、2008年12月、Vol.64, No.12, p.p.1554-1561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記の各解析のための検査は別々に行われており、それぞれの結果を医師が個別に確認し、総合判断を下していた。すなわち、医師が、心機能解析からの心臓機能評価結果と、MR遅延造影解析からの梗塞部位の判定結果とを総合判断する際、それぞれの位置関係は医師の頭の中で対応関係を想像し、判断していた。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、心臓領域の画像診断の際に、心機能が低下している部分に心筋梗塞が起きているかどうかを明確に提示可能な医用画像診断支援装置および方法、並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の医用画像診断支援装置は、心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出する心機能解析手段と、前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出する心筋梗塞解析手段と、前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系(重畳画像の座標系)に重畳的に表した重畳画像を出力する重畳画像出力手段とを設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の医用画像診断支援方法は、コンピュータが、心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出するステップと、前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出するステップと、前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系(重畳画像の座標系)に重畳的に表した重畳画像を出力するステップとを実行することを特徴とする。
【0011】
本発明の医用画像診断支援プログラムは、コンピュータを上記医用画像診断支援装置の各手段として機能させるものである。
【0012】
ここで、心機能評価値と心筋梗塞度の算出の際に入力となる3次元医用画像は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。具体例としては、心機能評価値の算出には、1以上の所定の心位相における心臓を表す3次元医用画像を入力とすることが考えられる。ここで、心位相とは、心臓の収縮と拡張を含む1回の心拍周期における段階を意味する。一方、心筋梗塞度の算出には、被検体に所定の造影剤を投与して所定の時間が経過した後にMRI装置による撮像で得られた心臓の遅延造影相を表す3次元医用画像を入力とすることが考えられる。
【0013】
心機能評価値と心筋梗塞度の算出の際に異なる3次元医用画像を用いる場合、必要に応じて、両3次元医用画像中の心臓の解剖学的位置の対応関係を特定するようにすることが好ましい。この場合、重畳画像は、特定された解剖学的位置の対応関係に基づいて、相対応する解剖学的位置における心機能評価値と心筋梗塞度とが、重畳画像の座標系の同じ位置に表されたものになるようにすることが好ましい。ここで、解剖学的位置の対応関係に基づく位置合わせは、心機能評価値と心筋梗塞度の算出の前に行ってもよいし、これらの算出と同じタイミングで行ってもよいし、算出後(重畳画像の作成時)に行ってもよい。
【0014】
心機能評価値の具体例としては、心筋の壁運動に関する評価値が挙げられる。
【0015】
また、心筋梗塞度としては、例えば、心臓の各部分における、心筋全体の厚さに対する梗塞が起きている心筋の厚さの割合を用いることができる。
【0016】
重畳画像は、心臓の各部分のうちの少なくとも一部における心機能評価値および心筋梗塞度が表されていればよい。例えば、心機能評価値が所定の基準を満たす程度に低い(心機能が低い)部分のみを表すようにしてもよいし、心筋梗塞度についても、所定の基準を満たす程度に高い(心筋の梗塞の程度が深刻)部分のみを表すようにしてもよい。
【0017】
また、重畳画像は、少なくとも、3次元医用画像中の心臓の心尖部と心基部とを結ぶ長軸の方向における位置を表す第1の座標成分と、長軸上の各位置における、長軸に直交する断面上で、長軸を表す点を視点とする放射状の視線の方向を表す第2の座標成分とによって規定される座標系に心機能評価値および心筋梗塞度が表されたものとしてもよい。あるいは、所与の方向から見た心臓の各部分に、心機能評価値と心筋梗塞度とが重畳的に表されたものとしてもよい。
【0018】
重畳画像の出力態様には、心機能評価値と心筋梗塞度が重畳的に視覚化されうる出力態様のすべてが含まれうる。例えば、1つの重畳画像を生成して、その画像データを記憶装置に書き込む態様や、1つの重畳画像を生成してハードコピー出力する態様、心機能評価値と心筋梗塞度の各々を表す2つの画像を重畳状態で表示手段に表示させるように表示制御する態様等が挙げられる。
【0019】
本発明において、3次元医用画像から冠動脈領域を抽出するようにし、抽出された冠動脈領域を上記座標系にさらに重畳的に表すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、心機能評価値および心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力することができる。これにより、心機能評価値と心筋梗塞度の2つの算出結果が統合的に可視化され、心機能が低下している部分に心筋の梗塞が生じているかどうかが明確に提示される。したがって、画像診断の際に、狭心症と心筋梗塞の判断を、より容易に、かつ、より正確に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態となる医用画像診断支援装置が導入された医用画像診断システムの概略構成図
【図2】本発明の実施形態における医用画像診断支援処理機能(心臓解析機能)を実現する構成および処理の流れを模式的に示したブロック図
【図3】本発明の実施形態における医用画像診断システムを用いた心臓解析処理の流れを表したフローチャート
【図4】心臓領域に設定される長軸、短軸、短軸断面を模式的に表した図
【図5】短軸断面における心機能評価値の算出処理を説明するための図
【図6】心機能を表すブルズアイ画像の一例を表した図
【図7】短軸断面における梗塞占有率の算出処理を説明するための図
【図8】梗塞占有率を表すブルズアイ画像の一例を表した図
【図9】心機能評価値と梗塞占有率を重畳したブルズアイ画像の一例を表した図
【図10】左心室の4つのセグメントを模式的に表した図
【図11】心機能評価値と梗塞占有率を重畳したトポグラフィックマップ画像の一例を表した図
【図12】心機能評価値と梗塞占有率を重畳した画像の一例を表した図
【図13】本発明の実施形態の一変形例における医用画像診断支援処理機能(心臓解析機能)を実現する構成および処理の流れを模式的に示したブロック図
【図14】本発明の実施形態の一変形例における医用画像診断システムを用いた心臓解析処理の流れを表したフローチャート
【図15】冠動脈の形態と心機能評価値と梗塞占有率を重畳したボリュームレンダリング画像の一例を表した図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、マルチスライスCTで得られた複数の心位相の3次元医用画像に基づいた心機能解析結果と、MR遅延造影で得られた3次元医用画像に基づいた心筋の梗塞領域の解析結果とを重畳表示する心臓解析処理を例にして、本発明の実施の形態となる医用画像診断支援装置が導入された医用画像診断システムについて説明する。
【0023】
図1は、この医用画像診断システムの概要を示すハードウェア構成図である。図に示すように、このシステムでは、モダリティ1と、画像保管サーバ2と、画像処理ワークステーション3とが、ネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0024】
モダリティ1は、被検体の胸部(心臓領域)を撮影することにより、その部位を表す3次元医用画像の画像データを生成し、その画像データにDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格で規定された付帯情報を付加して、画像情報として出力する装置である。本実施形態では、マルチスライスCTおよびMRIが含まれる。
【0025】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された医用画像データや画像処理ワークステーション3での画像処理によって生成された医用画像の画像データを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理用ソフトウェア(たとえば、ORDB(Object Relational Database)管理ソフトウェア)を備えている。
【0026】
画像処理ワークステーション3は、本発明の医用画像診断支援装置として機能する。読影者からの要求に応じて、モダリティ1や画像保管サーバ2から取得した医用画像データに対して画像処理(画像解析を含む)を行い、生成された画像を表示するコンピュータであり、CPU,主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置(マウス、キーボード等)、表示装置(ディスプレイモニタ)、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーティングシステム等がインストールされたものである。本発明の医用画像診断支援処理(心臓解析処理)は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたプログラム(心臓解析アプリケーション)を実行することによって実現される。また、このプログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0027】
画像データの格納形式やネットワーク9経由での各装置間の通信は、DICOM等のプロトコルに基づいている。
【0028】
図2は、画像処理ワークステーション3の機能のうち、本発明の第1の実施形態となる心臓解析処理に関連する部分を示すブロック図である。図に示すように、本実施形態における心臓解析処理は、心機能解析部31、心筋梗塞解析部32、対応関係特定部33、重畳画像生成部34、表示制御部35によって実現される。また、複数の心位相t(t=1,2,・・・,T)におけるCT画像の画像データV-CTt、MR遅延造影画像の画像データV-MR、心機能を表すブルズアイ画像の画像データI-CF、梗塞占有率を表すブルズアイ画像の画像データI-MI、重畳画像の画像データI-OLは、各々、上記各処理部によって、画像処理ワークステーション3の所定の記憶領域に対して読み書きされるデータである。
【0029】
次に、図3のフローチャートに基づいて、本発明の実施形態となる心臓解析処理の流れについて説明する。
【0030】
まず、ユーザ(例えば画像診断医)が画像処理ワークステーション3のディスプレイに表示された検査リストやシリーズリストから心臓解析の対象画像を選択すると、画像処理ワークステーション3は、選択されたCT画像データV-CTtとMR画像データV-MRを取得する(#1a, #1b)。次に、ユーザが、心臓解析アプリケーションを起動する操作を行うと、選択されたCT画像データV-CTtとMR画像データV-MRに対する画像解析が開始される。
【0031】
心機能解析部31は、複数の心位相のうち、後述の心機能評価値CFの算出に必要な1以上の位相tのCT画像データV-CTtの各々について、画像中の心臓領域、左心室内腔領域、心筋領域を抽出し(#2a)。図4に模式的に示したように、各心位相tについて、抽出された心臓領域の心尖部と心基部とを結ぶ長軸LA-CTt、および、長軸LA-CTtと直交するM本の短軸SA-CTt,m(m=1,2,・・・,M)を設定する(#3a)。
【0032】
一方、心筋梗塞解析部32も、上記と同様にして、MR画像データV-MRを入力として、画像中の心臓領域、左心室内腔領域、心筋領域を抽出し(#2b)、長軸LA-MRと短軸SA-MRmを設定する(#3b)。
【0033】
次に、対応関係特定部33は、CT画像V-CTtとMR画像V-MRの各々に表された心臓の解剖学的位置の対応関係を特定し、両画像の位置合わせを行う(#4)。
【0034】
続いて、心機能解析部31は、ステップ#3aで設定された各短軸SA-CTt,m(m=1,2,・・・,M)を通り、長軸LA-CTtと直交する複数の短軸断面P-CTt,1〜P-CTt,M(図4参照)による短軸画像(図5参照)の各々について、短軸断面P-CTt,m上での長軸LA-CTtを表す点O-CTt,mを視点とする放射状の視線の方向l1からlN毎に心機能評価値CFを算出し(#5a)、心機能を表すブルズアイ画像I-CF(図6参照)を生成する(#6a)。
【0035】
心筋梗塞解析部32は、ステップ#3bで設定された各短軸SA-MRm(m=1,2,・・・,M)を通り、長軸LA-MRと直交する複数の短軸断面P-MRm(図4参照)による短軸画像(図7参照)の各々について、短軸断面P-MRm上での長軸LA-MRを表す点を視点とする放射状の視線の方向l1からlN毎に梗塞占有率MIを算出し(#5b)、梗塞占有率を表すブルズアイ画像I-MI(図8参照)を生成する(#6b)。
【0036】
そして、重畳画像生成部34は、心機能を表すブルズアイ画像I-CFと梗塞占有率を表すブルズアイ画像I-MIを重ね合わせた重畳画像I-OL(図9参照)を生成し(#7)、表示制御部35は、生成された重畳画像I-OLを画像処理ワークステーション3のディスプレイに表示させる(#8)。
【0037】
以下、本実施形態における各処理部等の詳細について説明する。
【0038】
心機能解析の対象であるCT画像データV-CTtは、マルチスライスCTによる撮影で得られた、複数の心位相tにおける心臓領域を表したものである。ここで、心位相tは、心電図のR波から次のR波までの時間間隔を百分率で正規化したものとすることができる。本実施形態では、一般化して、t=1,2,・・・,TというT個の位相で表している。
【0039】
一方、心筋梗塞解析の対象であるMR画像データV-MRは、ガドリニウム(Gd)造影剤を静脈投与して所定の時間(15から20分程度)が経過した後に、MRI装置によるインバージョン・リカバリ法等の撮影法で得られた、遅延造影相を表すT1強調画像の画像データである。ガドリニウム(Gd)造影剤は、正常な心筋細胞には取り込まれず、血液中や細胞外液に分布する。したがって、心筋が壊死している梗塞領域では、正常な心筋細胞が減少し、心筋細胞の異常に伴って細胞外液成分が増加するため、遅延造影相において高信号領域となる。
【0040】
心機能解析部31および心筋梗塞解析部32による心臓、左心室内腔、心筋の各領域の抽出手法としては、公知の手法を実装すればよい。例えば、各心位相のCT画像V-CTtを構成する各ボクセルデータの値について、心臓の輪郭らしさを表す特徴量、左心室の輪郭らしさを表す特徴量をそれぞれ算出し、算出した特徴量を機械学習により予め取得された評価関数に基づいて評価することで、そのボクセルデータが心臓の輪郭(心臓の表層にある心外膜)を表すものであるか否か、また左心室の輪郭(左心室の内腔と心筋の境界にある心内膜)を表すものであるか否かを判断するようにしてもよい。この判断を繰り返すことにより、心臓全体の輪郭および左心室の輪郭を表すボクセルデータがそれぞれ判別され、心臓の輪郭内の領域が心臓領域、左心室の輪郭内の領域が左心室内腔領域、両輪郭に挟まれた領域が心筋領域として抽出される。なお、評価関数の取得には、例えば、アダブースト(Adaboost)アルゴリズムを用いることができる(詳細は、特開2007-307358号公報等参照)。また、各領域の抽出には、他のマシンラーニング手法や統計的モデルを用いた手法、例えば線形判別法やニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等を用いることも可能である。また、心臓、心室内腔、心筋の各領域の抽出結果を手動修正するユーザインターフェースを設けてもよい。この手動修正は、例えば、短軸画像、または、長軸を通る断面による長軸画像上に、各領域の抽出結果を表示させ、修正したい領域の境界を変更する操作を受け付けることによって行うことができる。
【0041】
心機能解析部32による長軸LA-CTtおよび短軸SA-CTt,m(m=1,2,・・・,M)の設定は、以下のようにして行うことができる。すなわち、図4に模式的に示したように、抽出された左心室領域に対し、心尖部と左心室のほぼ中心と心基部とを結ぶ長軸LA-CTtを設定するとともに、長軸LA-CTt上の各点において長軸LA-CTtと直交するM本の短軸SA-CTt,m(m=1,2,・・・,M)を設定する。ここで、長軸LA-CTtは、心臓領域の抽出結果から心尖部と左心室の中心の位置座標を算出することにより、自動的に設定することができる。また、長軸LA-CTt上での短軸SA-CTt,mの各位置は、デフォルトまたはユーザによって設定された短軸画像の枚数(上記Mの値)や短軸断面間の距離等のパラメータに基づいて設定される。心筋梗塞解析部32による長軸LA-MRおよび短軸SA-MRm(m=1,2,・・・,M)の設定の詳細についても同様である。なお、自動設定された長軸LA-CTt、LA-MRの位置や方向を手動修正するユーザインターフェースを設けてもよい。例えば、自動設定された長軸LA-CTt、LA-MRを心臓領域の画像とともに画面に表示し、ドラッグ操作によって長軸LA-CTt、LA-MRを移動させたり、回転させたりできるようにすればよい。
【0042】
対応関係特定部33によるCT画像V-CTtとMR画像V-MRの位置合わせは、MR画像V-MRと、MR画像V-MRの心位相と同一または近接する心位相T0におけるCT画像V-CTT0との相互情報量を最大化する画像変換関数を求め、MR画像V-MRをその画像変換関数によって剛体または非剛体変換することによって行うことができる。具体的には、まず、CT画像データV-CTT0から、各短軸SA-CTT0,mを通り、長軸LA-CTT0と直交する複数の短軸断面P-CTT0,1〜P-CTT0,MによるCT短軸画像を生成する。一方、MR像データV-MRから、各短軸SA-MRmを通り、長軸LA-MRと直交する複数の短軸断面P-MR1〜P-MRMによるMR短軸画像を生成する。次に、短軸の位置が対応するCT短軸画像とMR短軸画像の組合せ毎に、相互情報量を用いた位置合わせを行う。あるいは、上記組合せ毎に、ユーザのマウス操作等により手動で位置合わせを行うようにしてもよい(位置合わせ処理の詳細は、例えば、渡部 浩司、「マルチモダリティの画像位置合わせと重ね合わせ」、日本放射線技術学会雑誌、日本放射線技術学会、2003年1月、Vol.59, No.1, p.p.60-65等参照)。
【0043】
心機能評価値CFは、図5に示すように、各CT短軸断面P-CTt,mにおいて、長軸LA-CTtと短軸断面P-CTt,mとの交点O-CTt,mから短軸断面P-CTt,mに沿って放射状に延びる複数の線分ln(n=1,2,・・・,N)毎、あるいは、各線分lnによって分割される区画毎に算出する。以下に、心機能評価値CFの具体例と算出方法を挙げる。
【0044】
単一の心位相のCT画像データV-CTtから算出される心機能評価値CFの具体例としては、心室内径と壁厚が挙げられる。心室内径とは、各CT短軸画像における、交点O-CTt,mから心室内腔と心筋の境界LVinまでの上記各線分lnに沿った距離である(図5の線分l1上の距離ID参照)。一方、壁厚とは、各CT短軸画像における、交点O-CTt,mから心臓の境界LVoutまでの上記各線分lnに沿った距離と、交点O-CTt,mから心室内腔と心筋の境界LVinまでの上記各線分lnに沿った距離の差である(図5の線分l1上の距離WT参照)。これらの心機能評価値CFは、各心位相tで算出し、心位相t毎にブルズアイ画像I-CFを生成するようにすれば、心機能評価値CFの動画表示が可能になる。逆に、例えば、拡張末期や収縮末期のように、画像診断上重要な特定の心位相でのみ算出するようにしてもよい。この場合、上記のCT画像V-CTtとMR画像V-MRの位置合わせは、両画像間の心位相の同一性にかかわらず、上記特定の心位相のCT画像V-CTtとMR画像V-MRとの間で行えばよい。
【0045】
また、複数の心位相のCT画像データV-CTtから算出される心機能評価値CFの具体例としては、局所駆出率や壁厚変化量、壁運動量が挙げられる。局所駆出率とは、左心室内の区画された領域毎の駆出率である。ここで、駆出率とは、拡張末期と収縮末期での容量の差(駆出量)の拡張末期での容量に対する比率である。本実施形態では、局所駆出率は、各短軸画像の各線分lnによって分割される区画毎に下式によって得られる。
【0046】
(拡張末期の面積(容積)−収縮末期の面積(容積))×100/拡張末期の面積
壁厚変化量とは、収縮末期と拡張末期での心筋の厚さ(壁厚)の差である。壁厚増加率とは、収縮末期と拡張末期での心筋の厚さ(壁厚)の差の拡張末期での心筋の厚さ(壁厚)に対する比率である。壁運動量とは、拡張末期と収縮末期での心室の径の差である。
【0047】
なお、複数の心位相のCT画像データV-CTtから心機能評価値CFを算出する場合には、その算出で用いられる各心位相間での位置合わせを、その心機能評価値CFの算出の前に行うことが好ましい。例えば、心位相T1のCT画像V-CTT1と心位相T2のCT画像V-CTT2との位置合わせは、両画像の相関係数が最も高くなる画像変換関数を求め、一方のCT画像をその画像変換関数によって剛体または非剛体変換することによって行うことができる。具体的には、上記CT画像V-CTtとMR画像V-MRの位置合わせと同様に、短軸の位置が対応するCT短軸画像の組合せ毎に、相関係数を用いた位置合わせを行う。あるいは、上記組合せ毎に、ユーザのマウス操作等により手動で位置合わせを行うようにしてもよい。
【0048】
一方、梗塞占有率MIは、例えば、図7に示すように、MR短軸断面P-MRmにおいて、長軸LA-MRと短軸断面P-MRmとの交点O-MRmから短軸断面P-MRmに沿って放射状に延びる複数の線分ln(n=1,2,・・・,N)毎の、心筋領域全体に対する梗塞領域の比率であり、線分lnの各々について下式によって得られる。
【0049】
心筋の梗塞領域RMIの厚さ×100/心筋領域全体の厚さ(壁厚:LVinとLVoutの間の距離)
あるいは、各線分lnによって分割される区画毎に、
心筋の梗塞領域RMIの面積×100/心筋領域全体の面積
によって算出してもよい。なお、前述のとおり、心筋の梗塞領域RMIは、正常な心筋領域よりも高い信号値を示すので、梗塞領域と正常領域とを識別可能な閾値を用いて、その閾値よりも信号値が高いボクセルを梗塞領域RMIとして抽出することができる。
【0050】
心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFは、CT短軸断面P-CTt,1からP-CTt,Mの各々で得られた心機能評価値CFを、各断面の芯線部からの距離に応じて、半径が異なる同心円の円周上に配することによって生成される。具体的には、心芯部に近い断面ほど半径の小さい円周上に配されるようにする。あるいは、心基部に近い断面ほど半径の小さい円周上に配されるようにしてもよい。図6は、心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFの一例を表したものである。図に示したように、芯線部からの距離がrmであるCT短軸断面P-CTt,m(図4参照)における心機能評価値CFの分布は、ブルズアイ画像I-CF中では、芯線部からの距離rmに対応する半径rm′の円周上に示される。また、CT短軸断面P-CTt,m上での各線分lnの向き(図5参照)は、ブルズアイ画像I-CF中での線分ln′の向きと一致するように、各CT短軸断面P-CTt,m上での心機能評価値CFの分布が表される。なお、心機能評価値CFは、例えば、その値に応じて色分けして表される。また、心機能評価値CFの所定の値の範囲のみに対して色を割り当ててもよい。
【0051】
梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIも、心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFと同様にして生成される。図8は、梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIの一例を表したものである。図に示したように、芯線部からの距離がrmであるMR短軸断面P-MRm(図4参照)における梗塞占有率MIの分布は、ブルズアイ画像I-MI中では、芯線部からの距離rmに対応する半径rm′の円周上に示される。また、MR短軸断面P-MRm上での各線分lnの向き(図7参照)は、ブルズアイ画像I-MI中での線分ln′の向きと一致するように、各MR短軸断面P-MRm上での梗塞占有率MIの分布が表される。なお、本実施形態では、梗塞占有率MIが所定の値(例えば90%)以上の領域のみに対して特定の濃度値を割り当てているが、例えば、梗塞占有率MIの値に応じて、異なる濃淡で表すようにしてもよい。また、ブルズアイ画像I-MI中に表す梗塞占有率の値の範囲を、ユーザによって変更できるようにしてもよい。
【0052】
重畳画像I-OLは、心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFに、梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIを半透明化して重ね合わせることによって生成される。このとき、ブルズアイ画像I-CFとI-MIの位置の対応関係は、対応関係特定部33によって特定され、既に位置合わせされているので、重畳画像生成部34は、両画像で座標値の一致する点同士で重ね合わせを行えばよい。図9は、図6の心機能評価値CFを表すブルズアイ画像I-CFと図8の梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIとから生成された重畳画像I-OLの例である。図に示したように、心機能評価値CFと梗塞占有率MIの両方が視認できるように、心機能評価値CFと梗塞占有率MIが異なる表示態様(色、濃淡、網掛け等)で表されている。
【0053】
以上のように、本発明の実施形態によれば、重畳画像生成部34が、心機能解析部31によって算出された心機能評価値CF、および、心筋梗塞解析部32によって算出された梗塞占有率MIを、両者を識別可能な態様で、心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像I-OLを出力する。これにより、心機能評価値と梗塞占有率の2つの算出結果が統合的に可視化され、心機能が低下している部分に心筋の梗塞が生じているかどうかがユーザに明確に提示される。したがって、画像診断の際に、狭心症と心筋梗塞の判断を、より容易に、かつ、より正確に行うことが可能になる。
【0054】
また、対応関係特定部33が、心機能評価値CFの算出に用いられるCT画像V-CTtと、梗塞占有率MIの算出に用いられるMR画像V-MRにおける、心臓の解剖学的位置の対応関係を特定し、両画像の位置合わせを行っているので、重畳画像生成部34によって生成される重畳画像I-OLは、同一の解剖学的位置での心機能評価値CFと梗塞占有率MIが表される、画像上の位置の誤差が小さくなり、診断精度の向上に資する。
【0055】
また、重畳画像生成部34によって生成される重畳画像I-OLは、心臓の心尖部と心基部とを結ぶ長軸LA-CTt、LA-MRの方向における位置を表す第1の座標成分と、長軸LA-CTt、LA-MR上の各位置における、長軸LA-CTt、LA-MRに直交する短軸断面P-CTt,m、P-MRm上で、長軸LA-CTt、LA-MRを表す点を視点とする放射状の視線の方向を表す第2の座標成分とによって規定される座標系で表されたものであるから、心臓(左心室)の壁の全周にわたる心機能評価値CFと梗塞占有率MIが1つの画像として表現されるので、一覧性が向上し、診断の効率化に資する。
【0056】
さらに、梗塞占有率MIについては、所定の基準を満たす程度に高い部分のみを重畳画像I-OL上に表すようにしたので、心機能評価値CFと梗塞占有率MIとの重ね合わせによって重畳画像I-OLが複雑化して、それぞれの値の分布が見づらくなることが防止され、診断上重要な心筋の梗塞が起きている部分を容易に把握することが可能になる。
【0057】
上記実施形態では、心機能評価値CFと梗塞占有率MIとをブルズアイ表示していたが、表示態様、すなわち、重畳画像I-OLの座標系は、これに限定されない。
【0058】
例えば、図11に示したトポグラフィックマップ表示を行うようにしてもよい。これは、図10に模式的に表したように、左心室を側壁、下壁、中隔、前壁の4つのセグメントに分割し、各セグメントの境界で左心室の壁を切り開くように展開する表示態様である。
【0059】
また、図12に示したように、心臓を表す擬似3次元画像上に心機能評価値CFと梗塞占有率MIとをマッピング表示するようにしてもよい。図12の表示例は、心機能解析部31で抽出された左心室の心筋部分の内壁LVinと外壁LVoutを用いて、左心室の外壁LVoutをメッシュ表示するとともに、内壁LVinをサーフェスレンダリングで表示し、左心室の内壁LVinのサーフェス面に心機能評価値CFと梗塞占有率MIとをマッピングしたものである。心機能評価値CFと梗塞占有率MIのマッピング位置は、図5や図7に示した複数の線分ln(n=1,2,・・・,N)と左心室内壁LVinの交点となっている。この表示態様にすれば、心臓または左心室の形態をある程度視覚化しながら、心機能評価値CFと梗塞占有率MIの分布を観察することができるので、心機能の異常部分や梗塞部分の解剖学的位置の把握が容易になる。一方、この表示態様の場合、左心室の壁の全周にわたる心機能評価値CFと梗塞占有率MIは一覧できないので、ユーザによるマウス等を用いた操作に応じて、視点の位置や視線方向を変更することによって、擬似3次元画像を回転できるようにすることが好ましい。
【0060】
また、上記実施形態では心機能評価値CFと梗塞占有率MIのみを重畳表示させているが、さらに冠動脈の形態も重畳表示させるようにしてもよい。図13は、この変形例に対応するブロック図である。図に示したように、本変形例は上記実施形態に対して冠動脈抽出部36を付加した態様となっている。
【0061】
冠動脈抽出部36は、公知の手法により、CT画像の画像V-CTtから冠動脈領域I-CAを抽出する。例えば、CT画像の画像データV-CTtから心臓領域を抽出した後、心臓領域を表す画像に対して多重解像度変換を行い、各解像度の画像に対してヘッセ行列の固有値解析を行い、各解像度の画像における解析結果を統合することによって、心臓領域中の様々なサイズの線構造(血管)の集合体として、冠動脈流域I-CAを抽出し、所定の記憶領域に格納する(Y Sato, et al.、「Three-dimensional multi-scale line filter for segmentation and visualization of curvilinear structures in medical images.」、Medical Image Analysis、1998年6月、Vol.2、No.2、p.p.143-168等参照)。なお、本変形例では、心臓領域の抽出処理は、心機能解析部31と共通の処理として行われる。また、冠動脈抽出部36は、さらに、最小全域木アルゴリズム等を用いて、抽出された各線構造の中心点を連結することにより、冠動脈を表す木構造のデータを生成し、抽出された冠動脈の中心点を結ぶ芯線上の各点(木構造データの各ノード)において、芯線に直交する断面を求め、各断面において、Graph-Cuts法等の公知のセグメンテーション手法を用いて冠動脈の輪郭を認識し、その輪郭を表す情報を木構造データの各ノードに関連づけるようにしてもよい。
【0062】
図14は、本変形例における処理の流れを表すフローチャートである。図に示したように、上記実施形態と同様に、画像処理ワークステーション3がCT画像データV-CTtとMR画像データV-MRを取得した後(#11a, #11b)、対応関係特定部33は、CT画像V-CTtとMR画像V-MRの各々に表された心臓の解剖学的位置の対応関係を特定し、両画像の位置合わせを行う(#12)。ここでは、MR画像V-MRを変換して位置合わせ後のMR画像V-MR′を所定の記憶領域に格納する。次に、ユーザによって心臓解析アプリケーションが起動されると、心機能解析部31は、上記実施形態と同様に、CT画像データV-CTtから心臓領域、左心室内腔領域、心筋領域を抽出し(#13a)、長軸LA-CTtおよび短軸SA-CTt,mを設定し(#14a)、心機能評価値CFを算出する(#15a)。一方、冠動脈抽出部36は、ステップ#13aで抽出された心臓領域から冠動脈領域I-CAを抽出する(#16)。また、心筋梗塞解析部32も、上記実施形態と同様に、MR画像データV-MRを入力として、画像中の心臓領域、左心室内腔領域、心筋領域を抽出し(#13b)、長軸LA-MRと短軸SA-MRmを設定し(#14b)、梗塞占有率MIを算出する(#15b)。そして、重畳画像生成部34が、冠動脈領域I-CA、心機能評価値CF、梗塞占有率MIを重畳した、図15に例示したような擬似3次元画像I-OLを生成する(#17)。ここで、擬似3次元画像I-OLは、例えば、冠動脈領域I-CAを表すボクセルデータと、心機能評価値CFや梗塞占有率MIを表すボクセルデータとを、アルファブレンド処理やボリュームレンダリング処理等を用いて合成することによって生成することができる(詳細は特開2008-259696号公報等参照)。表示制御部35は、生成された重畳画像I-OLを画像処理ワークステーション3のディスプレイに表示させる(#18)。ここで、ユーザによるマウス等を用いた操作に応じて、ボリュームレンダリングの視点の位置や視線方向を変更することによって、擬似3次元画像を回転できるようにすることが好ましい。
【0063】
なお、上記説明では、擬似3次元画像を重畳画像として生成しているが、冠動脈を表すブルズアイ画像を生成し、冠動脈領域I-CA、心機能評価値CF、梗塞占有率MIの各々を表すブルズアイ画像を重畳した重畳画像I-OLを生成するようにしてもよい(詳細については、前述の特許文献4等参照)。
【0064】
以上のように、本変形例によれば、心機能評価値CFと梗塞占有率MIとが重畳された画像に、さらに、冠動脈I-CAの形態を重畳した重畳画像I-OLが生成されるので、心機能の異常が生じていたり、梗塞が生じていたりする心筋の領域に対して酸素等を供給する冠動脈を容易に把握することが可能になり、その冠動脈を解析するための公知のアプリケーションとの連携も容易になる。これにより、診断効率や精度のさらなる向上が見込まれる。
【0065】
上記の実施形態や変形例はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。また、上記の実施形態におけるシステム構成、ハードウェア構成、処理フロー、モジュール構成、ユーザインターフェースや具体的処理内容等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
例えば、図3や図14において並列的に示されている処理ステップにおける処理順序は上記で説明した順序には限定されず、順序が前後してもよいし、並列に行ってもよい。例えば、図3のステップ#1a,#2a,#3aは、ステップ#1b,#2b,#3bの前に行ってもよいし、後に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0067】
また、重畳画像生成部34を設ける代わりに、表示制御部35が、心機能を表すブルズアイ画像I-CFと梗塞占有率MIを表すブルズアイ画像I-MIとを所定の時間間隔で連続的に切り替えながら画像処理ワークステーション3のディスプレイに表示させることによって、心機能評価値CFと梗塞占有率MIの重畳表示を実現してもよい。
【符号の説明】
【0068】
31 心機能解析部
32 心筋梗塞解析部
33 対応関係特定部
34 重畳画像生成部
35 表示制御部
36 冠動脈抽出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓を表す3次元医用画像を入力として、心臓の機能を表す心機能評価値を所定の複数の部分毎に算出する心機能解析手段と、
前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出する心筋梗塞解析手段と、
前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力する重畳画像出力手段とを備えたことを特徴とする医用画像診断支援装置。
【請求項2】
前記心機能解析手段は、1以上の所定の心位相における心臓を表す第1の3次元医用画像を入力として、心筋の壁運動に関する心機能評価値を算出するものであり、
前記心筋梗塞解析手段は、被検体に所定の造影剤を投与して所定の時間が経過した後にMRI装置による撮像で得られた心臓の遅延造影相を表す第2の3次元医用画像から、前記心筋梗塞度を算出するものであることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項3】
前記第1および第2の3次元医用画像中の心臓の解剖学的位置の対応関係を特定する対応関係特定手段をさらに備え、
前記重畳画像は、前記解剖学的位置の対応関係に基づいて、相対応する解剖学的位置における前記心機能評価値と前記心筋梗塞度とが前記座標系の同じ位置に表されたものであることを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項4】
前記3次元医用画像から冠動脈領域を抽出する冠動脈抽出手段をさらに備え、
前記重畳画像出力手段が、抽出された冠動脈領域を前記座標系にさらに重畳的に表した重畳画像を出力するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項5】
前記座標系は、少なくとも、前記3次元医用画像中の心臓の心尖部と心基部とを結ぶ長軸の方向における位置を表す第1の座標成分と、前記長軸上の各位置における、該長軸に直交する断面上で、該長軸を表す点を視点とする放射状の視線の方向を表す第2の座標成分とによって規定されるものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項6】
前記重畳画像出力手段は、所与の方向から見た心臓の各部分に、前記心機能評価値と前記心筋梗塞度とを重畳的に表した前記重畳画像を出力するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項7】
前記心筋梗塞解析手段は、前記各部分における、心筋全体の厚さに対する梗塞が起きている心筋の厚さの割合を前記心筋梗塞度として算出するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項8】
前記重畳画像出力手段は、前記心筋梗塞度については、該心筋梗塞度が所定の基準を満たす程度に高い部分のみを、前記座標系に重畳的に表した前記重畳画像を出力するものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項9】
コンピュータが、
心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出するステップと、
前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出するステップと、
前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力するステップとを実行することを特徴とする医用画像診断支援方法。
【請求項10】
コンピュータを、
心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出する心機能解析手段と、
前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出する心筋梗塞解析手段と、
前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力する重畳画像出力手段として機能させることを特徴とする医用画像診断支援プログラム。
【請求項1】
心臓を表す3次元医用画像を入力として、心臓の機能を表す心機能評価値を所定の複数の部分毎に算出する心機能解析手段と、
前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出する心筋梗塞解析手段と、
前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力する重畳画像出力手段とを備えたことを特徴とする医用画像診断支援装置。
【請求項2】
前記心機能解析手段は、1以上の所定の心位相における心臓を表す第1の3次元医用画像を入力として、心筋の壁運動に関する心機能評価値を算出するものであり、
前記心筋梗塞解析手段は、被検体に所定の造影剤を投与して所定の時間が経過した後にMRI装置による撮像で得られた心臓の遅延造影相を表す第2の3次元医用画像から、前記心筋梗塞度を算出するものであることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項3】
前記第1および第2の3次元医用画像中の心臓の解剖学的位置の対応関係を特定する対応関係特定手段をさらに備え、
前記重畳画像は、前記解剖学的位置の対応関係に基づいて、相対応する解剖学的位置における前記心機能評価値と前記心筋梗塞度とが前記座標系の同じ位置に表されたものであることを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項4】
前記3次元医用画像から冠動脈領域を抽出する冠動脈抽出手段をさらに備え、
前記重畳画像出力手段が、抽出された冠動脈領域を前記座標系にさらに重畳的に表した重畳画像を出力するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項5】
前記座標系は、少なくとも、前記3次元医用画像中の心臓の心尖部と心基部とを結ぶ長軸の方向における位置を表す第1の座標成分と、前記長軸上の各位置における、該長軸に直交する断面上で、該長軸を表す点を視点とする放射状の視線の方向を表す第2の座標成分とによって規定されるものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項6】
前記重畳画像出力手段は、所与の方向から見た心臓の各部分に、前記心機能評価値と前記心筋梗塞度とを重畳的に表した前記重畳画像を出力するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項7】
前記心筋梗塞解析手段は、前記各部分における、心筋全体の厚さに対する梗塞が起きている心筋の厚さの割合を前記心筋梗塞度として算出するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項8】
前記重畳画像出力手段は、前記心筋梗塞度については、該心筋梗塞度が所定の基準を満たす程度に高い部分のみを、前記座標系に重畳的に表した前記重畳画像を出力するものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の医用画像診断支援装置。
【請求項9】
コンピュータが、
心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出するステップと、
前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出するステップと、
前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力するステップとを実行することを特徴とする医用画像診断支援方法。
【請求項10】
コンピュータを、
心臓を表す3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心臓の機能を表す心機能評価値を算出する心機能解析手段と、
前記3次元医用画像を入力として、所定の複数の部分毎に心筋の梗塞の程度を表す心筋梗塞度を算出する心筋梗塞解析手段と、
前記心機能評価値および前記心筋梗塞度を、両者を識別可能な態様で、前記3次元医用画像中の心臓の各位置を表現可能な座標系に重畳的に表した重畳画像を出力する重畳画像出力手段として機能させることを特徴とする医用画像診断支援プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図13】
【図14】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図13】
【図14】
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【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図15】
【公開番号】特開2012−90669(P2012−90669A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238439(P2010−238439)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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