説明

医療キット

【課題】医療器具及び薬液をともに収納可能であり、製造容易な医療キットを提供する。
【解決手段】医療器具を収納し、蓋材7にて密封してなる医療器具収納部2と、薬液を収納し、蓋材9にて密封してなる薬液収納部4とを備えた医療キット1において、医療器具収納部2と薬液収納部4とを着脱可能に係合してなる構成を備えた医療キット1とし、好ましくは、医療器具収納部2の鍔部5に薬液収納部4を着脱可能に係合できる装着部3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器、ガーゼ、綿球、ピンセット等の医療器具と消毒用薬液などの薬液とを収納した医療キットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、透析室や処置室・オペ室等において、治療前後の患部消毒や処置用としてガーゼ、ピンセット、綿棒、綿球、粘着テープ等の衛生材料や医療用雑品、医療器具などを、トレーや袋に詰め合わせてキット化した医療キットが使用されている。このような医療キットは、使い捨て可能で使い易いばかりか、院内感染の防止、人件費を含めた経費削減、作業の省力化・効率化などにも貢献するため、今後も需要は益々伸びることが期待される。
【0003】
従来のこの種の医療キットとして、例えば注射器、ガーゼ、綿球、ピンセット等の医療器具を収納する収納部の一部を折り戻し可能に形成し、そこに消毒用薬液等を溜めるように構成されたもの(下記、特許文献1参照)や、医療用品を収納するための区画域の少なくとも一つに取り外し可能なトレーを被嵌するように構成されたもの(下記、特許文献2参照)、或いは、医療用具を収納する医療用具収納部と医療用液体を充填する液体収納部とを備えたもの(下記、特許文献3参照)などが開示されている。
【特許文献1】特開2000−225126号公報
【特許文献2】特開2002−102252号公報
【特許文献3】特開2000−271150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、治療前後の患部消毒や処置用として、実際に医療現場で医療キットを使用する場合、必ず消毒用薬液が必要となる。ところが、特許文献1等で提案されている医療キットなどは、消毒用薬液を入れるスペース(貯液部)を備えているものの、使用する際にいちいち消毒用薬液を貯液部に充填しなければならず、不便であった。しかも、この種の医療キットは一般に廃棄処理を考えてコンパクトに設計されたものが多く、幅や奥行き及び深さに余裕が無いため、消毒用薬液を慎重に充填する必要があり、より一層煩雑で面倒なものとなっていた。また、必要量以上の消毒用薬液を貯液部に充填する傾向があるため、無駄が多いとの指摘もあった。特に同時に多数の患者を治療する大規模な透析室等においては、このような課題は深刻であり、早期の解決が強く求めれていた。
【0005】
そこで、予め医療キット内に適量の消毒用薬液が収容されていれば、とても便利であると考えられるが、例えば特許文献3に提案されたものは、医療用液体を液体収納部に充填した後、医療用具を医療用具収納部に収納し、EOG滅菌、電子線滅菌、γ線滅菌、オートクレーブ滅菌などの滅菌処理を施すように構成されているため、滅菌処理によって、消毒用薬液を封入した収容部分が破損して液漏れを起したり、場合によっては破裂したり、消毒用薬液を変質させたりする可能性があった。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、注射器、ガーゼ、綿球、ピンセット等の医療器具(衛生材料、医療用具及び医療用雑品として許可されたものを含む)と共に予め消毒用薬液(薬事法で許可された消毒薬液を含む)などの薬液を収納した医療キットであって、医療器具に対する滅菌処理の影響が薬液に及ばないように構成することができる医療キットを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、薬液収納室を備えた薬液収納容器の該薬液収納室に薬液を収納し、蓋材にて該薬液収納室を被閉(被せて封止)してなる薬液収納部と、
前記薬液収納容器とは別体で、医療器具収納室を備えた医療器具収納容器の該医療器具収納室内に医療器具を収納し、前記蓋材とは異なる蓋材にて該医療器具収納室を被閉してなる医療器具収納部とを備え、
薬液収納部と医療器具収納部とを係合して一体化してなる構成を備えた医療キットを提供するものである。
【0008】
本発明の医療キットは、薬液収納容器の薬液収納室に薬液を収納し、蓋材にて薬液収納室を被閉する一方、医療器具収納容器の医療器具収納室内に医療器具を収納し、蓋材にて医療器具収納室を被閉して滅菌処理を施し、前記薬液収納容器を前記医療器具収納容器に係合して一体化してなる医療キットとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医療キットは、医療器具収納部(薬液収納容器)と薬液収納部(薬液収納容器)とを別体とし、薬液収納部を医療器具収納部に係合一体化する構成としてあるので、実際の製造に関しても技術的に大きな問題がなく、製造設備も低コストで簡便に製造することができる。
使用者の立場からみても、医療キット内に消毒用薬液等の薬液が収納されているので、いちいち消毒用薬液を貯液部に充填する必要がなく、消毒作業や透析などの医療作業を簡便に行うことができる。また、必要十分な量の薬液が予め収納されているので、薬液を使い過ぎることがなく、薬液の無駄を省くことができ、省力化と経費節減に貢献することができる。このように使用者にとっても、利便性、経済性、機能性などの点で多くのメリットを享受できる。
【0010】
また、仮に医療器具収納部と薬液収納部とを一つの蓋材で被閉する構成とすれば、医療器具収納部を滅菌処理する際、同時に薬液収納部も滅菌処理を受けることになり、この滅菌処理によって薬液の変質や、薬液の蒸発による薬液収納部の爆発などの可能性があるため、多大な設備投資の費用が予想されるばかりか、滅菌処理の方法や蓋材の材質などを限定せざるを得ない。
これに対し、本発明の医療キットは、医療器具と薬液を別々に収納し、別々に被覆する構成としてあるから、医療器具収納部のみ滅菌処理を施すことができ、滅菌処理後に医療器具収納部に薬液収納部を係合一体化(係着)させることができるから、医療器具に対する滅菌処理の影響を薬液収納部内の薬液に与えないようにすることができる。このため、電子線滅菌、放射線滅菌、EOG滅菌などの滅菌処理方法、薬液の種類・濃度及び蓋材の材質などについて用途に応じて自由に選択することができるから、安全性、製造コスト、利便性、機能性などの点において優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。但し、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0012】
図1(A)は、本発明の一実施例としての医療キット1の分解斜視図、図1(B)は、(A)に示した医療キット1の装着部3の側断面図、図2(A)は、装着部3の他の一例を示した分解斜視図、図2(B)は、(A)の装着部3の側断面図である。
【0013】
図1(A)に示すように、医療キット1は、医療器具を収納した医療器具収納部2と、薬液を収納した薬液収納部4とを備え、医療器具収納部2に設けた装着部3に薬液収納部4を着脱可能に係着して一体化し得るように構成されている。
【0014】
(医療器具収納部2)
医療器具収納部2は、注射器、ガーゼ、包帯、止血テープ、ピンセット、綿球などのいずれか或いはこれらのうちの二種類以上の組合せからなる医療器具(医療用補助品含む)を収納するトレー状の医療器具収納容器2Aを備え、医療器具収納容器2A内に前記医療器具を収納し、蓋材7で被覆することにより形成することができる。
【0015】
医療器具収納容器2Aの材質は、特に限定するものではないが、保形性を有する樹脂から形成するのが好ましい。例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アモルファス−ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかの樹脂、或いはこれら二種類以上のポリマーブレンド或いはコポリマー、或いはPP/EVOH/PPなど積層構成のラミネート樹脂等を採用することができる。また、医療器具収納容器2Aの材質は、滅菌方法を考慮して選択することも好ましいことである。EOG等のガス滅菌の場合には特に材質を選ばないが、放射線もしくは電子線滅菌の場合には、耐放射線性材料を使用するの好ましく、オートクレーブ滅菌の場合には耐熱性材料を用いるのが好ましい。
このような樹脂からシート体を形成し、このシート体を、真空成形、圧空成形、圧空真空成形など適宜成形手段で成形することで医療器具収納容器2Aを形成することができる。但し、原料樹脂が前記樹脂に限定されるものではない。
【0016】
医療器具収納容器2Aは、医療器具を収納する凹陥状の収納室2aと、薬液収納部4を係着し得る装着部3とを設けて形成してある。収納室2aと装着部3を備えていれば、他の構造を形成することは任意である。
【0017】
医療器具を収納する収納室2aは、上面視略長方形状のシート体のシート面内に、装着部3を形成する部分を除いて、シート体を凹陥して医療器具を収納し得る凹部を形成する共に、該凹部内に、底面2bを隆起させてなる仕切壁2c、2dを設け、該仕切壁2c、2dによって該凹部内に区画室6a、6b、6cを設けるように形成してある。
この際、収納室2a内に設ける区画室の数、形状、大きさなどは適宜形成可能である。本実施例の場合には、3つの区画室6a、6b、6cを設け、それぞれ区画室6aはピンセットなどの長尺状の物を収納し易い区画に、区画室6bはガーゼなどの平板状の物を収納し易い区画に、区画室6cは綿球などの立体物を収納し易い区画に形成してある。なかでも、区画室6aの底面は、一部の底面2bを若干隆起させて載置部2eとして形成してあり、ここにピンセットなどの後端を載置してピンセットなどを取り出し易いように形成してある。
なお、収納室2a内の構成は任意に形成可能である。一例として、底面2bを傾斜面とし、医療器具を取り出し易く形成することも可能である。
【0018】
なお、本実施例では、収納室2aは、上面から見た形状において、略長方形状のシート体のシート面内の一隅を長方形状に切り欠いた形状、言い換えれば略長方形状の一部に略長方形状の突出部を設けたような形状に形成してあるが、略長方形状のシート体の代わりに、他の矩形状、略円形状、略楕円形状、その他の形状のシート体を用いて形成することも可能である。又、収納室2aの形状も、上記形状に限定されず任意形状に形成可能である。
【0019】
上記収納室2aを形成したシート体のシート面内で、上記収納室2aを形成した周縁は鍔部5として残し、この鍔部5には収納室2aの全周を囲むように、適宜幅で適宜高さに隆起してなるシール部5bを周設し、このシール部5bに蓋材7を貼着し易いようにしてある。
【0020】
装着部3は、薬液収納部4を係着する部分、言い換えれば薬液収納部4の被係着部であり、収納室2aを形成したシート体の残りのシート面5a内に形成してある。すなわち、当該シート体のシート面5a内に、薬液収納部4の底部を差し込むことが可能な開口部3aを設けると共に、この開口部3aの内周縁部を、薬液収納部4の底部を該開口部3a内に差し込んだ際に薬液収納部4の側面に沿うように、シート裏面方向に折曲して係合内縁部3bを形成し、さらにこの係合内縁部3bの先端部分を内側に折り曲げて係合片3cとして形成してある。
【0021】
蓋材7は、医療器具を収納する収納室2aを被覆し、シール部5bに貼着して収納室2aを封止するものである。
蓋材7の材質は、特に限定するものではないが、例えば滅菌紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、不織布などからなるフィルム乃至シート材を採用することができ、滅菌方法に適した材質を選択することが重要である。例えば、γ線等の放射線滅菌や電子線滅菌の場合はあらゆる材質を選択可能であるが、なかでもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好ましい。EOG等のガス滅菌の場合には、滅菌紙、不織布等が好ましく、また、滅菌紙部分を一部に備えた複合材料を用いることもできる。
この蓋材7は、ヒートシール等の接着手段により上記シール部5bに貼着するのが好ましい。但し、その他任意の手段を採用することも可能である。
【0022】
(薬液収納部4)
薬液収納部4は、医療器具収納容器2Aとは別体の薬液収納容器4Aを備え、この薬液収納容器4A内に薬液を収納し、蓋材9で被覆することにより形成することができる。
【0023】
薬液収納容器4Aは、ポピドンヨード、アルコールなどの消毒用薬液、その他液状の薬液、治療薬、蒸留水、滅菌水或いはこれらに浸した綿球又はガーゼ類を収納し得るカップ状の容器として形成してある。但し、薬液収納容器4Aの形状はカップ状に限定されるものではなく、適宜形状に形成可能である。
【0024】
薬液収納容器4Aの材質は、特に限定するものではないが、保形性、耐薬品性、薬液の浸透及び揮発を抑えるバリア性などを備えた樹脂からなるシート乃至フィルムを採用するのが好ましい。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどを好ましく用いることができる。
【0025】
薬液収納容器4Aは、上面視略長方形状のシート体のシート面内に、上面視略長方形状に凹陥した収納室4bを形成し、この収納室4bを形成しないシート面を鍔部8として残して形成してある。
ここで、上面視略長方形状のシート体の代わりに、他の矩形状、略円形状、略楕円形状、その他の形状のシートを用いことも可能であるし、収納室4aの形状も任意形状に形成可能である。
また、収納室4bの深さは医療器具収納部2の収納室2aの深さと略同一とするのが好ましい。
【0026】
収納室4bは、その側面4cに段部を設け、この段部を介して下側が若干窄んで低容量になるように2段に形成してあり、その側面下段部の上部寄り部位に(本実施例では、略矩形状に凹陥した収納室4bの側面角稜部の上部寄り部位に)、外方に突起した係合突起4aを形成してあり、図1(B)に示すように、上記装着部3の開口部3a内に薬液収納容器4Aの底部を差し込むと、薬液収納容器4Aの側面上段部は装着部3の係合内縁部3bに嵌合し、収納室4bの側面4cの段部と係合片3cとが係合して薬液収納容器4Aは下方に抜けないように係合され、かつ係合片3cの先端部と係合突起4aとが係合し、薬液収納容器4Aは上方にも抜けないように係合されるようにしてある。
【0027】
また、鍔部8には、収納室4bの全周を囲むように、適宜幅で適宜高さに隆起してなるシール部8aを形成してあり、このシール部8aに蓋材9を貼着し易いようにしてある。
【0028】
蓋材9は、薬液を収容する収納室4bを被覆するものであり、収納室4bの上縁部4d(すなわちシール部8a)に沿った形状に形成されており、ヒートシール等の方法でシール部8bに貼着して収納室4bを密封するようにすればよい。
【0029】
蓋材9は、上記蓋材7とは別材質のものを用いるのが好ましい。その材質を特に限定するものではないが、防水性、耐薬品性を備えている必要はある。例えば、樹脂基材シートのシート面に金属薄膜層を積層してなる複合シートを好ましい一例として挙げることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂基材シートに、アルミ等の金属を蒸着乃至ラミネートして金属薄膜層を積層してなる複合シートなどを好ましく用いることができる。
【0030】
(医療キット1の製造)
上記医療器具収納容器2A及び薬液収納容器4Aを用いて医療キット1を製造するには、次のようにすればよい。但し、以下の方法に限定するものではない。
【0031】
医療器具収納容器2Aの収納室2a内に、例えばピンセット、ガーゼ、綿球などの医療器具(衛生材料、医療用具及び医療用雑品として許可されたものを含む)を収納した後、ヒートシール等の貼着方法によって蓋材7を収納室2aに被着させて封止し、次いで、収納室2a内の医療器具を滅菌処理する。
この際、滅菌処理の方法としては、薬液の変質や滅菌処理による爆発などを考慮する必要がないため、あらゆる滅菌処理方法を採用することができる。例えば、γ線等の放射線を照射する放射線・電子線滅菌、EOG滅菌などのガス滅菌、オートクレーブ等による加熱・加圧殺菌など、その他現在或いは将来開示される任意の滅菌処理を施すことができる。
【0032】
他方、薬液収納部4は、上記医療器具収納部2とは別に、薬液収納容器4Aの収納室4b内に薬液(薬事法で許可された消毒薬液を含む)を充填し、ヒートシール等の貼着方法によって蓋材9を収納室4bに被着させて密封する。
なお、薬液の充填については、オペや術後などの患部消毒としての使用目的からすると、無菌室において充填するのが望ましいが、現在使用されている病院や透析室などの利用環境や消毒レベルからすると、予め薬液収納容器4A及び蓋材9を消毒しておき、クリーンルーム内で充填してもよい。最終的にどのような充填方法を採用するかの決定は、製品の薬事法に係る基準に従うことになる。
【0033】
そして、医療器具収納容器2Aの装着部3における開口部3a内に薬液収納部4を挿入し、薬液収納容器4Aの係合突起4aを、装着部3における係合片3cに係合させて薬液収納部4を着脱可能に係着すれば医療キット1を完成されることができる。
【0034】
上記医療キット1においては、係合片3cと係合突起4aとが係合するように形成してあるが、医療器具収納容器2Aと薬液収納容器4Aとの係合手段は、このような係合手段に限定されるものではなく、任意の係合構造を採用可能である。但し、医療器具収納部2と薬液収納部4とが着脱可能、すなわち薬液収納部4を後から取り外すことができる係合手段を採用するのが好ましい。このように薬液収納部4を後から取り外すことができれば、医療キット1の使用に際し、必要に応じて薬液収納部4を医療器具収納部2から取り外して使用することができ、とても便利である。
【0035】
ここで、上記とは異なる係合手段の一例を紹介すると、図2に示すように、装着部3を、医療器具収納容器2Aの鍔部5の一端辺を略矩形に切り欠き、その両側辺を並列に垂下させ、下端を対向するように折曲した嵌合片3dを有する構成とし、薬液収納容器4Aを、側面4cの上方を外方に膨出させ、嵌合片3dに嵌合できる嵌合部4eを形成した構成とすることもできる。これにより、側方から薬液収納容器4Aをスライドさせて係合することができる。
【0036】
また、本実施例では、装着部3を医療器具収納容器2Aの一隅に設けてあるが、これに限定するものではなく、適宜箇所に設けることができる。
さらにまた、一つの医療器具収納部2に対して、複数の薬液収納部4を取り付ける構成としてもよく、この場合、装着部3はそれに合わせて複数形成すればよい。
【0037】
次に、本発明と比較するために、上記とは異なる他の構成例(参考例)について説明する。
【0038】
図3は、参考例としての医療キット10を示した斜視図、図4は図3の蓋材の変形例を示した斜視図である。
【0039】
医療キット10は、薬液収納部12内に薬液を充填して蓋材14で密封し、これを医療器具収納部11に着脱可能に係合した後、医療器具収納部11及び薬液収納部12を一つの蓋材13で被覆してなる構成のものである。
【0040】
図3に示すように、この医療キット10においては、医療器具収納部11に薬液収納部12を係合した際、医療器具収納部11の上縁部11a及び薬液収納部12の上縁部12aを同一高さ、つまり、面一になるように形成される。
【0041】
蓋材13は、医療器具収納部11の開口部11b及び薬液収納部12の開口部12bを共に被覆できる大きさを備えている。
蓋材14は、上記蓋材13とは別材質のものであり、その素材は特に限定するものではない。但し、防水性、耐薬品性がある素材を用いるのが好ましい。例えば、樹脂基材シートのシート面に金属薄膜層を積層してなる複合シートを好ましく用いることができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂基材シートに、アルミ等の金属を蒸着乃至ラミネートして金属薄膜層を積層してなる複合シートを好ましく用いることができる。
なお、滅菌方法によっては、放射線や電子線を反射する材質のものが好ましい場合もあり得る。
【0042】
上記構成からなる医療キット10は、次のようにして製造(組立て)することが可能である。但し、医療器具収納部11及び薬液収納部12は、以下に説明する以外の構成については上記医療器具収納部2及び薬液収納部3と同じ構成からなるものとする。
【0043】
薬液収納部12の収納室内に薬液を充填し、ヒートシール等の貼着方法によって蓋材14で密封する。
次に、医療器具収納部11の収納室内に、例えばピンセット、ガーゼ、綿球などの医療器具を収納し、前記の薬液収納部12を医療器具収納部11に着脱可能に係着する。そして、ヒートシール等の貼着方法によって蓋材13を医療器具収納部11及び薬液収納部12に被着させて密封し、次いで滅菌処理を施して医療キット10を完成する。
【0044】
この際、滅菌処理の方法としては、薬液収納部12内に収容された薬液の変質や、滅菌処理によって内部の薬液が蒸発して爆発等を生じる可能性のない滅菌処理方法を採用する必要がある。現在公知の滅菌処理方法の中で採用可能な方法は、γ線等の放射線を照射する方法のみであるが、今後開発される新たな滅菌処理を採用することは可能である。
【0045】
図4に示すように、蓋材13に、医療器具収納部11の収納室2aと薬液収納部12の収納室4bとを隔てる位置にミシン目などの切り取り線13aを設けてもよい。これにより、開封する際、切り取り線13aで切り取りながら開封することにより、医療器具収納部11又は薬液収納部12のみを開封することができる医療キット10とすることができる。
【0046】
(医療キット1と医療キット10との対比)
本発明の実施例としての医療キット1と、参考例としての医療キット10とを比較すると、安全性、製造コスト、利便性、機能性などの点から、医療キット1の方が優れている。
すなわち、医療キット10の場合には、医療器具収納部11を滅菌処理する際、薬液収納部12も同時に滅菌処理を受けることになるため、滅菌処理によって薬液の変質や薬液の蒸発による薬液収納部12の爆発などの可能性がある。そのために、滅菌処理の方法及び蓋材14等の材質がこれらの問題を生じないものに限定されることになる。これに対し、医療キット1の場合は、薬液収納部2のみを滅菌処理することができるから、薬液収納部4或いは収容された薬液に対する滅菌処理の影響を考慮する必要がなく、滅菌処理の方法及び蓋材9を自由に選択することができる。そのため、安全性、製造コスト、利便性、機能性などの点でより優れた製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】(A)は本発明の医療キットの一実施例の斜視図、(B)は(A)のX−X断面図である。
【図2】(A)は装着部3の他の一例を示した分解斜視図、(B)は(A)の装着部3の断面図である。
【図3】参考例としての医療キットを示した斜視図である。
【図4】図3の蓋材の変形例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1…医療キット 2…医療器具収納部 2A…医療器具収納容器 2a…収納室 2b…底面 2c、2d…仕切壁 2e…載置部 2f…上縁部 3…薬液収納部 3a…開口部 3b…係合内縁部 3c…係合片 3d…嵌合片 4…薬液収納部 4A…薬液収納容器 4a…係合突起 4b…収納室 4c…側面 4d…上縁部 4e…嵌合部 5…鍔部 5a…シート面 5b…シール部 6a、6b、6c…区画室 7…蓋材 8…鍔部 8a…上面 8b…シール部 9…蓋材 10…医療キット用容器 11…医療器具収納部 11a…上縁部 11b…開口部 12…薬液収納部 12a…上縁部 12b…開口部 13…蓋材 13a…切り取り線 14…蓋材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液収納室を備えた薬液収納容器の該薬液収納室に薬液を収納し、蓋材にて該薬液収納室を被閉してなる薬液収納部と、
前記薬液収納容器とは別体で、医療器具収納室を備えた医療器具収納容器の該医療器具収納室内に医療器具を収納し、前記蓋材とは異なる蓋材にて該医療器具収納室を被閉してなる医療器具収納部とを備え、
薬液収納部と医療器具収納部とを係合して一体化してなる構成を備えた医療キット。
【請求項2】
医療器具収納容器の鍔部に、薬液収納容器を着脱可能に係合し得る装着部を備えた請求項1に記載の医療キット。
【請求項3】
薬液収納容器の薬液収納室に薬液を収納し、蓋材にて薬液収納室を被閉する一方、医療器具収納容器の医療器具収納室内に医療器具を収納し、蓋材にて医療器具収納室を被閉して滅菌処理を施し、前記薬液収納容器を前記医療器具収納容器に係合して一体化してなる請求項1又は2に記載の医療キット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−89599(P2007−89599A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284242(P2004−284242)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【特許番号】特許第3635647号(P3635647)
【特許公報発行日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(391057889)株式会社アグリス (7)
【Fターム(参考)】