説明

医療器具用コイル

体内器具は、コイル長(L)を形成する複数の巻線を有するらせん状に巻回されたコイル(110)と、コイル長の一部の外周上に配置された熱可塑性ポリマースリーブ(101)とを備える。離間した複数の装着ポイント(120)はコイル長に沿って配置される。各離間した装着ポイントは、熱可塑性ポリマースリーブを2個以上の巻線(105)に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルやガイドワイヤ等の様々な用途に有用な医療器具用コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルやガイドワイヤ等の様々な医療器具が開発されてきた。ガイドワイヤ等の医療器具は、カテーテル等の器具に連結して使用され、患者の生体構造内での進行を容易にするものである。患者の生体構造は、極めて蛇行しているため、長尺状の医療器具が特定の性能を有していることが望ましい。ガイドワイヤ等の長尺状の医療器具に使用される多数の異なる構造やアセンブリは、特定の長所や短所をそれぞれ備えていることはよく知られている。しかしながら、それらに代わる構造やアセンブリに対する要望が依然としてある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、医療器具構造およびアセンブリの代替の設計、材料、および製造方法を提供する。
【0005】
したがって、本発明の一実施例は、コイル長を形成する複数の巻線を有するらせん状に巻回されたコイルと、コイル長の一部の外周上に配置された熱可塑性ポリマーからなるスリーブとを備える体内器具に関する。コイル長に沿って配置される離間した複数の装着ポイントの各々は、熱可塑性ポリマースリーブを2個以上のコイルの巻線に固定する。
【0006】
本発明の他の実施例は、外周を有しかつコイル長を形成する複数の巻線を有するらせん状に巻回されたコイルと、コイル長の一部の外周上に配置された熱可塑性ポリマーからなるスリーブとを備える体内器具に関する。離間した複数の装着ポイントは、外周の一部上およびコイル長に沿ってのみ配置される。各離間した装着ポイントは、熱可塑性ポリマースリーブを2個以上のコイルの巻線に固定する。
【0007】
本発明の別の実施例は、長尺状シャフトと、長尺状シャフトの一部の周囲に配置されたコイル長を形成する複数の巻線を有するらせん状に巻回されたコイルと、コイル長の一部の外周上に配置された熱可塑性ポリマーからなるスリーブとを備える医療器具に関する。離間した複数の装着ポイントは、コイル長に沿って配置される。離間した複数の装着ポイントの各々は、熱可塑性ポリマースリーブを2個以上のコイルの巻線に固定する。
【0008】
本発明のさらに別の実施例は、基端部とその反対側に先端部とを有する長尺状シャフトと、先端部の一部の周囲に配置されるコイル長を形成する複数の巻線を有するらせん状に巻回されたコイルと、コイル長の一部の外周上に配置された熱可塑性ポリマーからなるスリーブとを備えるガイドワイヤに関する。離間した複数の装着ポイントは、コイル長に沿って配置される。離間した複数の装着ポイントの各々は、熱可塑性ポリマースリーブを2個以上のコイルの巻線に固定する。
【0009】
本発明のさらに別の実施例は、体内器具を形成する方法に関し、この方法には、コイル長を形成する複数の巻線を有するらせん状に巻回されたコイルの一部の外周上に熱可塑性ポリマースリーブを配置する工程と、コイル長に沿って離間した複数の装着ポイントを形成する工程とを含む。離間した複数の装着ポイントの各々は、熱可塑性ポリマースリーブを2個以上のコイルの巻線に固定する。
【0010】
幾つかの実施例に関する上記の要約は、本発明の開示された各実施態様や各実施例を記載することを意図するものではない。以下に記載する図面の説明や詳細な説明において、これらの実施例についてより具体的に説明を行うものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に定義する用語については、請求項または本明細書のいずれかの個所に異なる定義がある場合を除き、以下の定義が適用されるものとする。
【0012】
「ポリマー」という語は、ポリマー、コポリマー(例えば、2種類以上の異なるモノマーを使用して形成されたポリマー)、オリゴマー、これらの組合せ、ならびに、例えば、共押出成形やエステル交換を含む反応による混和性ブレンドにおいて形成されるポリマーやオリゴマーやコポリマーが含まれると理解される。ブロックコポリマーやランダムコポリマーも、特に明記しない限りは含まれるものとする。
【0013】
全ての数値は、本明細書における記載の有無に関わらず、「約」という語により調整されていると見なされる。「約」という語は、一般的に、当業者が記載された値(すなわち、同じ機能や結果を有する)と同等と見なす範囲の数字を指す。多くの場合は、「約」という語は、最も近い有効数字に四捨五入された数字を含む。
【0014】
指標となる数値による範囲指定を行う場合、当該範囲のすべての数値を含むものとする。(例えば、1〜5の場合、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4,5を含む。)
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかにそうではないものを示さない限りは、複数形の対象を含むことに留意すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合において、「または」という語は、内容が明らかにそうではないものを示さない限りは、および/またはという意味で用いられる。
【0016】
以下の記載は、図面を参照して読まれるべきであり、複数の図面における同様の符号は同様の要素を示している。詳細な説明および図面は、特許請求の範囲に記載された発明の実施例を説明するものである。
【0017】
例えば、本明細書に記載された特定の実施例におけるガイドワイヤに関して説明するが、本発明は、開口部すなわちルーメンを介して患者の生体構造内へ進められるようになされた様々な医療器具に使用可能である。また、本発明は、固定されたワイヤ器具、カテーテル(例えば、バルーンカテーテル、ステント搬送カテーテル等)、アテローム切除術カテーテルやIVUSカテーテル等の回転式器具に使用されるドライブシャフト、内視鏡、腹腔鏡、塞栓予防装置、脊椎内や頭蓋内を進行するための装置、他の同様の装置に使用することも可能である。さらに、実施例によっては、患者の血管系において使用するように形成されてもよいが、他の実施例においては、他の生体構造において使用されるように形成されてもよい。様々な材料や寸法や構造を使用して、所望の特徴に応じて適切な実施例が構成されることは理解されるべきである。以下に説明する実施例は、例示を目的とするものであり、これらに限定するものではない。
【0018】
図1は、コイル110を備えるガイドワイヤ100の断面を示しており、コイル110は、コイル長Lに沿って配置される離間した複数の装着ポイントにより同コイルに固定された熱可塑性ポリマーからなるスリーブ101を備える。ガイドワイヤ100はコア130を備える。コアは基端部分131およびその反対側に先端部分132を有する。先端部分132は、図1に示すように連続する複数のテーパ部分および一定の径を有する部分を備えてもよい。コイル110は、コアの一部、例えばコアの先端部分132の周囲に配置されてもよい。熱可塑性ポリマーからなるスリーブ101は、コイル長Lの少なくとも一部の外周上に配置されてもよい。離間した複数の装着ポイント120は、コイル長Lに沿って配置されてもよい。各装着ポイント120は、熱可塑性ポリマースリーブ101の一部を2個以上のコイルの巻線105に固定する。
【0019】
コイル110は、金属、合金、ポリマー等を含む様々な材料から形成されてもよい。コイル110に使用される材料の例には、304V,304L,316Lステンレス鋼等のステンレス鋼を含む金属や合金;線形弾性(linear elastic)または超弾性(すなわち、擬弾性)ニチノール等のニッケル−チタン合金を含む合金;ニッケル−クロム合金;ニッケル−クロム−鉄合金;コバルト合金;タングステンまたはタングステン合金;MP35−N(Ni:約35%、Co:35%、Cr:20%、Mo:9.75%、Fe:1%以下、Ti:1%以下、C:0.25%以下、Mn:0.15%以下、Si:0.15%以下の組成を有する);ハステロイ;モネル400;インコネル625等や、その他好適な材料、またはこれらの組み合わせもしくは合金が含まれる。好適な材料には、他に高性能ポリマー等のポリマー材料が含まれる。
【0020】
幾つかの実施例において、コイル110またはその一部は、放射線不透過性材料により形成されたり、コーティングされたり、めっきされていてもよく、あるいは、他の方法により放射線不透過性材料を含んでいてもよい。放射線不透過材料とは、医療処置中に、透視スクリーン上或いはその他の画像化技術において、比較的明るい像を得ることができる材料のことである。この比較的明るい像により、医療器具100の使用者はその位置を確認することができる。放射線不透過材料の例としては、金、プラチナ、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過充填剤を含んだポリマー材料等や、これらの組み合わせまたは合金が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
また、コイル110やガイドワイヤ100の他の部分は、一定の磁気共鳴映像法(MRI)に対する適合性を付与する材料や構造を有してもよい。例えば、MRI装置に対する適合性を強化するために、一定のMRIに対する適合性を付与するような方法でコイル110やガイドワイヤ100の他の部分を形成することが望ましい。例えば、長尺状のシャフト、すなわちコア130、コイル110、またはそれらの一部、ガイドワイヤ100の他の部分は、画像をゆがめず、アーチファクト(画像における間隙のこと)を生じさせない材料から形成されてもよい。例えば、特定の強磁性材料は、MRIにおける画像にアーチファクトを生じさせるため適していない。長尺状のシャフト、すなわちコア130、コイル110、またはそれらの一部は、MRI装置が撮像できる材料で形成されていてもよい。これらの特性を示す材料には、例えば、タングステン、エルジロイ、MP35N、ニチノール等や、その他の材料、またはこれらの組み合わせもしくは合金が含まれる。
【0022】
幾つかの実施例においては、コイル110は、コアワイヤ130や先端チップ140と適合性を有する材料から形成されてもよい。使用される特定の材料は、所望される可撓性に求められる要件や他の所望される特徴に基づいて選択されてもよい。幾つかの特定の実施例においては、コイル110は、線形弾性すなわち超弾性ニチノール等の、超弾性や線形弾性を有するニッケルチタン合金から形成されてもよい。
【0023】
ニチノールという語は、米国国防省海軍武器研究所(NOL)において、この材料が持つ形状記憶性を初めて観察した研究者のグループにより名付けられた。ニチノールという語は、ニッケル(Ni)およびチタン(Ti)の元素記号を含む頭字語と、国防省海軍武器研究所(NOL)を示す頭字語とからなる。販売されているニチノール合金のファミリーには、超弾性(すなわち、擬弾性)と呼ばれるカテゴリと、線形弾性と呼ばれるカテゴリがある。これら2種類の材料は、化学的に類似しているが、各々異なる有用な力学的性質を示す。超弾性ニチノール、線形弾性ニチノールのどちらか、或いは、その両方が使用されてもよい。
【0024】
線形弾性を示す好適なニッケル−チタン合金の例としては、株式会社古河テクノマテリアル(日本国神奈川県に所在)より販売されるFHP−NT合金が挙げられる。線形弾性を示す好適なニッケル−チタン合金の例には、米国特許第5238004号明細書および同特許第6508803号明細書に開示されたものが含まれるが、これら特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0025】
コイル110は、所望の可撓性を得られるように、寸法の異なるラウンドワイヤまたは平らなリボン状ワイヤで形成することができる。なお、本発明の趣旨から逸脱することなく、他の断面形状や形状の組み合わせを用いることができる。例えば、コイルを形成するワイヤまたはフィラメントの断面形状は、楕円形、矩形、正方形、三角形、多角形等や、任意の好適な形状とすることができる。幾つかの実施例において、コイル110は、約0.001〜0.015インチ(約0.00254〜0.0381cm)の径、約0.1〜20インチ(約0.254〜50.8cm)の長さからなる円形のリボン状であってもよいが、他の寸法も意図されている。
【0026】
コイル110は、従来の巻回技術を用いて、らせん状に巻き付けられてもよい。コイル46の近接するターンのピッチは、各ターンが後続のターンに接触するように詰めて巻かれていてもよく、コイル110が各ターンの間隔が空いた状態で巻かれるように設定されてもよい。
【0027】
熱可塑性ポリマースリーブ101は、コイル110の少なくとも一部の外周上に配置されてもよい。熱可塑性ポリマースリーブ101は、任意の熱可塑性ポリマーから形成されてもよい。熱可塑性ポリマーには、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロカーボン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、アクリル樹脂が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの材料を加熱すると、軟化あるいは溶解し、さらに冷却すると硬化する。
【0028】
熱可塑性ポリマースリーブ101は、コイル長Lに沿って離間して配置された複数の装着ポイント120に固定される。各離間した装着ポイント120は、熱可塑性ポリマースリーブ101を2個以上の巻線105に固定する。
【0029】
各離間した装着ポイント120は、2,3,4,5,6,7,8,9,10あるいはそれ以上のコイル巻線105を熱可塑性ポリマースリーブ101に固定すなわち接合する。2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,25,30,35,40あるいはそれ以上の離間した装着ポイント120が、コイル長Lに沿って均一または不均一に配置されてもよい。幾つかの実施例においては、各離間した装着ポイント120は、コイル巻線105を熱可塑性ポリマースリーブ101に接合するためだけに機能してもよい。装着ポイントの長さおよび幅は、器具の所望な特徴に応じて変更することも可能である。例えば、幾つかの実施例においては、各離間した装着ポイント120は、約0.1〜0.3mmの長さ、約0.1〜0.5mmの幅を有してもよい。離間した装着ポイント120は、図2に示すようにコイル巻線105に対して直交するように並べられた離間する要素であってもよい。離間した装着ポイント120は、熱可塑性ポリマースリーブ101から形成される。
【0030】
コイル巻線105は、外周150を画定する。離間した装着ポイント120は、外周150に沿って配置されることにより、外周150の一部のみが離間した装着ポイント120により覆われる。各離間した装着ポイント120は、各巻線105の全外周150の一部のみに配置されてもよく、幾つかの実施例においては、各巻線105の全外周150の10分の1未満であってもよい。換言すれば、少なくとも幾つかの実施例においては、各離間した装着ポイント120は、コイル110の外周150に沿って延びないが、コイル110の外周150の一部のみに沿って2個以上のコイル巻線に固定すなわち接合される。したがって、各離間した装着ポイント120は、熱可塑性ポリマースリーブと、同スリーブが装着されるコイルの巻線との間を接合し、同スリーブが装着されるコイルの巻線の間を接合する。
【0031】
離間した装着ポイント120は、任意の好適な方法により形成されてもよく、例えば、各装着ポイント120に対して所望の位置において熱可塑性ポリマースリーブ101を選択的に加熱してもよい。熱可塑性ポリマースリーブの分離した部分や一部は、溶解すなわちリフロー(reflow)するまで加熱されて、熱可塑性ポリマースリーブの一部が隣接するコイル面および/または隣接するコイル面の周囲へ流れる。次に、熱可塑性ポリマースリーブのこれらの部分は、隣接するコイル面上および/または隣接するコイル面の周囲に固定されるように冷却され硬化される。
【0032】
本発明の趣旨や範囲を逸脱することなく、様々な加熱方法を用いることが可能である。様々な熱源を利用して熱可塑性ポリマーを溶解することが可能である。好適な加熱方法や熱源の例には、レーザ溶接や同熱源、TIG溶接や同熱源、マイクロプラズマ溶接や同熱源、電子ビーム加工や同熱源、摩擦すなわち慣性溶接や同熱源、ハンダ付けや同熱源等の溶接法や熱源が含まれる。そのような方法を使用する場合に、熱可塑性ポリマーは所望のパターンにおいて加熱されて、離間した装着ポイントを形成する。
【0033】
レーザ溶接やレーザダイオード加工やこれらの熱源においては、光線を使用して必要な熱が供給される。レーザ熱源が幾つかの実施例において有利であるのは、レーザ光線の熱源を使用することにより精度が極めて高くなるからである。
【0034】
熱可塑性ポリマースリーブ101の離間した装着ポイント120は、コイル長Lに沿って強化されたトルク伝達性、および強化された押圧性を提供でき、また、コイル110が付与する可撓性も提供することができる。これは、少なくとも部分的には、複数のコイル巻線を各離間した装着ポイントにおいて互いに接合することによるものである。トルク伝達性および/または押圧性の程度は、少なくとも部分的に、コイルの長さに沿った離間した装着ポイント120の数および各装着ポイント120の寸法(すなわち、各装着ポイント120に接合されたコイル巻線の数)によって決定される。当業者には、普遍命題として、コイルの長さに沿ってより多くの離間した装着ポイント120を使用することにより、および/または、各装着ポイント120により接合されたコイル巻線105の数を増やすことにより、トルク伝達性および/または押圧性がより強化されることが理解されよう。離間した装着ポイント120の数および寸法は、所望の特徴を得るために変更されてもよい。
【0035】
離間した装着ポイント120を備える熱可塑性ポリマースリーブ101は、コイル110をガイドワイヤ等の器具の他の構造に装着する前に、形成すなわちコイル110上に配置されてもよく、実施例によっては、コイル110をガイドワイヤ100のコア、すなわちシャフト130や先端チップ140等の器具の他の構造に装着した後で、形成すなわちコイル110上に配置されてもよい。
【0036】
上記したような、離間した装着ポイント120を有するポリマーシース101を備えるコイル110は、様々な医療器具に組み込まれてもよい。例えば、図1に示すように、コイル110は、長尺状のシャフト、すなわちコア130を備えるガイドワイヤ100に組み込まれてもよい。コイル110は、長尺状のシャフト130の一部、例えば、先端部132に配置されてもよい。しかしながら、離間した装着ポイント120を有するポリマーシース101を備えるコイル110が、様々な医療器具に組み込まれてもよいことは理解されるべきである。
【0037】
図1に示される実施例に関して、長尺状のシャフト、すなわちコア130は、中実断面あるいは中空断面を有してもよい。他の実施例においては、長尺状のシャフト、すなわちコア130は、中実断面を有する領域と中空断面を有する領域の組み合わせを含んでいてもよい。さらには、長尺状のシャフト、すなわちコア130は、ラウンドワイヤ、平板状をなすリボン、または様々な断面形状を有する他の同様な構造により形成することができる。長尺状のシャフト、すなわちコア130の長さに沿った断面形状は、一定の形状であってもよく、形状が変化していてもよい。例えば、図1は、断面がほぼ円形の長尺状のシャフト、すなわちコア130を示す。本発明の趣旨から逸脱することなく、他の断面形状や形状の組み合わせを用いることができることは理解されるであろう。例えば、長尺状のシャフト、すなわちコア130の断面形状は、楕円形、矩形、正方形、多角形等や、任意の好適な形状であってもよい。
【0038】
幾つかの実施例においては、長尺状のシャフト、すなわちコア130は、任意の好適な金属、ポリマー、複合材料から形成されることも可能である。幾つかの実施例において、長尺状のシャフト、すなわちコア130の一部または全体は、304V,304L,316Lステンレス鋼等のステンレス鋼を含む金属や合金;線形弾性または超弾性(すなわち、擬弾性)ニチノール等のニッケル−チタン合金を含む合金;ニッケル−クロム合金;ニッケル−クロム−鉄合金;コバルト合金;タングステンまたはタングステン合金;MP35−N(Ni:約35%、Co:35%、Cr:20%、Mo:9.75%、Fe:1%以下、Ti:1%以下、C:0.25%以下、Mn:0.15%以下、Si:0.15%以下の組成を有する);ハステロイ;モネル400;インコネル625等や、その他好適な材料、またはこれらの組み合わせもしくは合金から形成されてもよい。使用される特定の材料は、所望の可撓性に求められる要件、他の所望される特徴、あるいは長尺状のシャフト、すなわちコア130に基づいて部分的に選択されてもよい。幾つかの特定の実施例においては、長尺状のシャフト、すなわちコア130は、コイル110に関して上述したような材料である線形弾性や超弾性ニチノール等の、超弾性や線形弾性を有するニッケルチタン合金から形成されてもよい。
【0039】
長尺状のシャフト、すなわちコア130は、全体が同一材料で形成されていてもよく、実施例によっては、異なる材料で形成された部分を含んでいてもよい。実施例によっては、コアワイヤ130の異なる部分を形成する材料は、ワイヤの異なる部分に様々な可撓性や剛性を付与するように選択することができる。例えば、基端部分131および先端部分132は、異なる材料(すなわち、異なる弾性率を有する材料)から形成されることにより、異なる可撓性を備えることができる。実施例によっては、基端部131を形成する材料には、押圧性およびトルク伝達性を得るために比較的剛性の高い材料が使用され、先端部132を形成する材料には、横方向におけるより優れた追従性および操作性を得るために比較的可撓性の高い材料が使用されている。例えば、基端部分131は直線状の304vステンレス鋼ワイヤで、先端部分132は直線記憶処理された(straightened)超弾性合金又は線形弾性合金(linear elestic alloy)(例えば、ニッケル−チタン合金)ワイヤで形成されていてもよい。
【0040】
長尺状のシャフト、すなわちコア130の複数の部分が異なる材料で形成されている実施例においては、これらの複数の部分は、任意の好適な連結技術を用いて互いに連結できる。例えば、長尺状のシャフト、すなわちコア130の複数の部分は、溶接、ハンダ付け、ロウ付け、接着剤等、或いはこれらの組み合わせを用いて連結することができる。また、幾つかの実施例においては、1個以上の機械的なコネクタ又はコネクタアセンブリを備え、異なる材料で形成される長尺状のシャフト、すなわちコア130の複数の部分を連結してもよい。コネクタは、長尺状のシャフト、すなわちコア130の一部を連結するための任意の好適な構造を備えることができる。好適な構造の一例には、長尺状のシャフト、すなわちコア130の異なる部分を適切に受承かつ連結するように寸法が設定された内径を有するハイポチューブまたはコイル状ワイヤ等の構造が含まれる。異なるシャフト部分を相互に連結するために使用される好適な方法および構造の例には、米国特許出願第09/972276号および同特許出願第10/086992号に開示されており、これら特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0041】
少なくとも幾つかの実施例においては、長尺状のシャフト、すなわちコア130の一部もしくは全体、コイル110、医療器具100に含まれる他の構造は、放射線不透過性材料でドープ、コーティング、もしくはめっきしたり、放射線不透過性材料で形成したり、またはその他の方法で放射線不透過性材料を備えるようにしてもよい。さらに、幾つかの実施例において、上述したように、一定のMRI適合性を医療器具100に付与することが可能である。
【0042】
長尺状のシャフト、すなわちコア130は、1つまたは複数のテーパ形状すなわちテーパ領域を備えることも可能である。テーパ領域は、線状、曲線状、均一、不均一、あるいは階段状にテーパされてもよい。このようなテーパ形状の角度は、所望される可撓性に応じて変更することができる。テーパ領域の長さは、剛性が徐々に変化する部分がより多く(より長く)なるように、あるいはより少なく(より短く)なるように選択されてもよい。長尺状のシャフト、すなわちコア130のほぼ任意の部分においてテーパ状をなしていてもよいこと、また、同テーパ状をなす部分において径が基端側へ向かって小さくなっていても、あるいは先端側へ向かって小さくなっていてもよいことは、理解されるであろう。径が小さくなる部分および径が一定の部分の数、構成、寸法、長さは、可撓性やトルク伝達性といった所望の特性を得るために変更することができる。幾つかの実施例においては、ガイドワイヤのコアワイヤ130は、コアワイヤが多数のテーパ状部分により離間された多数の一定の径部分を有するような形状を備えることも可能である。幾つかの実施例においては、ガイドワイヤコアワイヤ130は、ほとんど、または全くテーパ形状を有していなくてもよい。テーパ形状は、図1に示されるようであってもよく、あるいは、より長く(より緩やかに)なっても、より短く(より急に)なってもよい。
【0043】
また、図1に示すガイドワイヤ100は、ワイヤ、すなわちリボン180、および先端チップ140を備える。ワイヤ、すなわちリボン180は、先端チップ140とコア130との間に配置されてもよい。ワイヤ、すなわちリボン180は、コア130の先端部132に近接して装着され、先端方向へ延びて先端チップ140に達してもよい。幾つかの実施例においては、ワイヤ、すなわちリボン180は、コイル状のワイヤ、すなわち巻回されたワイヤやリボン等の組み立てられた、すなわち形成されたワイヤ構造であってもよい。図示された実施例においては、リボン180は、連結ポイント134において一定の径を有する領域133に重なり合い、かつ、連結されるほぼ直線状のリボンである。実施例によっては、リボン180は、約0.05〜1.0インチ(約0.127〜2.54cm)の長さにおいて、一定の径を有する領域133に重なり合ってもよく、他の実施例においては、重なり合う長さはより長くてもより短くてもよい。
【0044】
リボン180は、強度や可撓性等の所望の特性を付与すべく、任意の好適な材料で、適切な寸法を有するように形成することができる。好適な材料の例としては、金属、合金、ポリマー等が含まれる。実施例によっては、リボン180は、金属や、ステンレス鋼、ニッケル−クロム合金、ニッケル−クロム−鉄合金、コバルト合金、直線記憶処理された超弾性合金又は線形弾性合金(例えば、ニッケル−チタン)ワイヤ等のニッケル−チタン合金といった合金で形成することができる。リボン180は、任意の好適な連結技術を用いて連結することができる。連結技術の例には、ハンダ付け、ロウ付け、溶接、接着剤による接合、圧着等が含まれる。実施例によっては、リボンまたはワイヤ180は、賦形構造または安全構造として機能してもよい。
【0045】
先端チップ140は、所望の動作特性に応じて異なる材料から形成されてもよい。幾つかの実施例において、先端チップは、器具100の先端部の非外傷性部分を形成することも可能である。幾つかの実施例において、先端チップ140は、溶接、ハンダ付け、あるいは他の方法で、長尺状のシャフト、すなわちコア130の先端部132に連結できる金属材料等の材料から形成されてもよい。例えば、幾つかの実施例において、先端チップ140は、器具の先端部においてハンダ付けにより配置され、非外傷性の円形部分を形成するハンダチップであってもよい。他の実施例においては、先端チップは、予め組み立てられていても、部分的に組み立てられていてもよく、あるいは、溶接、ハンダ付け、ロウ付け、圧着、摩擦係合、接着剤による接合、機械的連結等の好適な連結技術を用いて器具の先端部に連結される構造であってもよい。ハンダ付け、深絞り、ロール成形、メタルスタンピング、メタル射出成形、鋳造等の異なる方法を使用して、先端チップ140を形成することも可能である。
【0046】
幾つかの実施例において、先端チップ140を他の構造に連結するために使用される特定の接合技術と適合する材料から形成することは有効であるが、必ずしも必要ではない。例えば、幾つかの特定の実施例において、先端チップ140を長尺状のシャフト、すなわちコア130の先端部132と同様の金属や合金から形成することは、有効であるが必要なことではない。例えば、長尺状のシャフト、すなわちコア130がステンレス鋼から形成される場合、先端チップ140がステンレス鋼から形成されることは有効である。他の実施例においては、先端チップ140および長尺状のシャフト、すなわちコア130の先端部132が、ニチノール等の同じ合金から形成されてもよい。
【0047】
幾つかの実施例において、ガイドワイヤ100は、コーティング層160等の1つまたは複数のコーティング層を任意で備えることも可能である。そのようなコーティング層は、ポリマースリーブ101を形成するために使用する材料と同様あるいは異なる材料であってもよく、ガイドワイヤアセンブリ100の全体または一部上に配置される。図示された実施例において、コーティング層160はコアワイヤ130の基端部分上に延びる。幾つかの実施例においては、コーティング層160は、所望の目的を行うために、親水性、保護性、潤滑性、または他のタイプのコーティングであってもよい。フッ素ポリマー等の疎水性コーティングにより乾性の潤滑性が備わるので、ガイドワイヤの取り扱いや器具の交換が容易になる。潤滑性コーティングは、操作性を向上させ、病変部を通過する能力を高める。好適な潤滑性ポリマーは当技術分野において周知であり、ポリアリーレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ハイドロキシアルキルセルロース誘導体、アルギン、糖類、カプロラクトン等の親水性ポリマーや、これらの混合物や組み合わせを含む。親水性ポリマーは、他の親水性ポリマーとブレンドするか、調合量の水不溶性化合物(ポリマーを含む)とブレンドして、好適な潤滑性、結合性、溶解性を備えたコーティングを生成してもよい。幾つかの実施例においては、ガイドワイヤのより先端側の部分は、親水性ポリマーがコーティングされ、より基端側の部分131は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素ポリマーがコーティングされる。
【0048】
図1に示すガイドワイヤ100を形成するために、リボンが図示されるように長尺状のシャフト、すなわちコア130の基端側に位置決めされ装着される。リボン180は、溶接、ハンダ付け、ロウ付け、圧着、摩擦係合、接着剤による接合、機械的連結等を含む好適な方法により長尺状のシャフト、すなわちコア130に固定されてもよい。さらに、コイル110は、図示されるように長尺状のシャフト、すなわちコア130の基端側に位置決めされる。コイル110は、溶接、ハンダ付け、ロウ付け、圧着、摩擦係合、接着剤による接合、機械的連結等を含む好適な方法により長尺状のシャフト、すなわちコア130に固定されてもよい。図示される実施例において、コイル110は、その基端部が基端側の装着ポイント135において長尺状のシャフト、すなわちコア130に固定されてもよく、その先端部が先端チップ140を介してリボン180に固定されてもよい。幾つかの実施例において、先端チップ140は、リボン180およびコイル110にハンダ付けまたは溶接されたハンダチップや溶接チップであり、非外傷性チップを形成する。他の実施例においては、先端チップ140は、予め組み立てられていても、部分的に組み立てられていてもよく、好適な連結技術を用いてリボン180およびコイル110に連結される。
【0049】
幾つかの実施例においては、コイル110および/またはリボン180は、長尺状のシャフト、すなわちコア130に溶接され、先端チップ140は、コイル110および/またはリボン180に溶接されてもよい。本発明の趣旨や範囲を逸脱することなく、様々な溶接法が使用されてもよいことは明白である。一般的に、溶接とは、金属や合金等の二つの材料を十分に熱して各材料の隣接する表面の少なくとも一部を溶けた状態にすることにより、二つの材料を結合させる処理をいう。隣接する材料を溶かすのに使用される熱源は、様々なものを使用することができる。幾つかの実施例において好適な溶接法には、レーザ溶接、抵抗溶接、TIG溶接、マイクロプラズマ溶接、電子ビーム溶接、及び摩擦またはイナーシャ溶接が含まれる。
【0050】
実施例において好適なレーザ溶接機は、カリフォルニア州モンロビアのユニテック ミヤチ社およびミシガン州プリモスのロフィン−サイナー社から入手可能である。実施例において好適な抵抗溶接機は、カリフォルニア州カールスバッドのパロマ プロダクト社およびカンザス州オラスのポラリス エレクトロニクス社から入手可能である。実施例において好適なTIG溶接機は、カリフォルニア州ニューベリーパークのウェルドロジック社から入手可能である。実施例において好適なマイクロプラズマ溶接機は、テネシー州スミルナのプロセス ウェルディング システムズ社から入手可能である。
【0051】
幾つかの実施例においては、レーザまたはプラズマ溶接は、先端チップ140、コイル110、リボン180、および/または長尺状のシャフト、すなわちコア130の1つまたは複数を固定して結合させるために使用することができる。しかしながら、他の連結技術を代替的あるいは組み合わせて使用してもよい。レーザ溶接において、必要な熱を供給するために光線が使用される。レーザ溶接は、レーザ光熱源の使用により非常に優れた精度を得られるため、本発明により想定される方法において好都合である。幾つかの実施例においては、レーザダイオードによるハンダ付けが有用である。
【0052】
上記したように、離間した装着ポイント120を備える熱可塑性ポリマースリーブ101は、コイル110をガイドワイヤ100等の器具の他の構造に装着する前に、形成すなわちコイル110上に配置されてもよく、実施例によっては、コイル110をガイドワイヤ100のコアすなわちシャフト130や先端チップ140等の器具の他の構造に装着した後で、形成すなわちコイル110上に配置されてもよい。
【0053】
ガイドワイヤ100は、他の賦形ワイヤまたは安全ワイヤやリボン、マーカバンドおよび/またはコイル、他の内コイルまたは外コイル、内シースまたは外シースやコーティング等の他の構造を備えていてもよい。周知のように、当業者にはそのような他の構造を器具に組み込む方法が認識されよう。
【0054】
図2は、コイル200、およびコイル200の一部上に配置され離間した複数の装着ポイント220を備える熱可塑性ポリマースリーブ201を示す側面図である。離間した複数の装着ポイント220は、コイル長Lに沿った均一または不均一のパターンを形成する。これら離間した複数の装着ポイント220は、コイル長Lに沿って減少または増加する単位長ごとの接合要素220の密度を有する。コイル長Lに沿った単位ごとの離間した装着ポイント220の密度を減少または増加することにより、コイル長Lに沿った位置に相関して可撓性、トルク伝達性、押圧性を変更する能力を提供する。例えば、コイルの長さ方向の一部において離間した装着ポイント220の密度がより高くなると、コイル200のその部分において、離間した装着ポイント220の密度がより低いコイルの他の部分と比較して、より高いトルク伝達性と押圧性が付与される。例えば、コイルの基端部において離間した装着ポイント220の密度がより高くなると、コイル200にはその基端部においてより高いトルク伝達性と、先端部においてより高い可撓性が付与される。これは一例に過ぎないことと、コイル長Lに沿った単位ごとの離間した装着ポイント220の密度は、先端部付近においてより高く、コイルの中間部付近においてより高く、あるいは、コイルの長さに沿って変更できること等が理解されるべきである。
【0055】
図3は、コイル310と、同コイルの一部上に配置され離間した複数の装着ポイント320を有する熱可塑性ポリマースリーブ301とを備える他のガイドワイヤ300を示す断面図である。コイル310は、コア330の一部上に配置され、熱可塑性ポリマースリーブ301はコイル310の一部上に配置される。ポリマーシース370は、コア330、コイル310、およびスリーブ301上に配置される。
【0056】
この実施例においては、ポリマーチップガイドワイヤ300は、コイル310上に円形のチップを形成するポリマーシース370を備えることにより形成される。ポリマーシース370は、所望の強度や可撓性、または他の所望の特徴を付与できる任意の材料から形成されてもよい。
【0057】
幾つかの実施例においてポリマーシース370を使用することにより、所望の可撓性や潤滑性をガイドワイヤアセンブリに付与できる等の幾つかの機能を提供できる。シース370に使用されるポリマーの選択は、所望の特徴に応じて変更される。例えば、低いデュロメータすなわち硬度を有するポリマーは極めて可撓性の高い、すなわち柔軟なチップを形成する。反対に、高いデュロメータを有するポリマーはより高い剛性を備えるチップを形成する。スリーブにポリマーを使用することにより、ガイドワイヤに非外傷性のチップを提供することも可能である。非外傷性のチップは、損傷を受けやすい体内の通路を通過するのにより適している。したがって、ポリマーは、以下に詳細に説明する放射線不透過性材料を結合する部材としての役割を果たすことができる。
【0058】
好適なポリマー材料の例には、ガイドワイヤポリマーシースとして使用される周知の様々なポリマーが含まれる。幾つかの実施例においては、使用されるポリマー材料は熱可塑性ポリマー材料である。好適な材料の例には、ポリウレタン、弾性ポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル(ペバックス(登録商標Pebax)等)、シリコーン、およびコポリマーが含まれる。シースは、単一のポリマー、多層構造体、あるいは複数のポリマーのブレンドからなってもよい。 材料及び加工技術を入念に選択することにより、これらの材料の熱可塑性、溶剤可溶性、熱硬化性の変種を用いて、所望の結果を得ることができる。
【0059】
また、好適なポリマー材料の例としては、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L−乳酸)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(L−乳酸−コ−D,L−乳酸)(PLLA/PLA)、ポリ(L−乳酸−コ−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−乳酸−コ−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシルブチレート(PHBT)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(D,L−乳酸−コ−カプロラクトン)(PLA/PCL)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)(PGA/PCL)、ポリ無水物(PAN)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(リン酸エステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタン、ポリシロキサン、およびこれらのコポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
幾つかの実施例においては、シース370またはその一部は、放射線不透過材料を含むか、放射線不透過材料でドープすることにより、例えば透過技術等の特定のイメージング技術を用いたときに、シース370またはその一部の視認性がより高められるようにしてもよい。従来技術において公知の任意の好適な放射線不透過性材料を使用することができる。例としては、貴金属、タングステン、次炭酸バリウム(barium subcarbonate)粉末等や、これらの混合物を含む。実施例によっては、ポリマーは、異なる量の放射線不透過性材料が含まれる複数の部分を備えていてもよい。例えば、シース370は、高いレベルの放射線不透過性材料を含む先端部分と、低いレベルの放射線不透過性材料を含む基端部分とを備えることもできる。
【0061】
幾つかの実施例においては、単独(separate)の放射線不透過性部材、または、一連の放射線不透過性部材(例えば、放射線不透過性コイル、バンド、管材、又は他の同様の構造)をガイドワイヤのコアワイヤ330に連結することができ、あるいは、めっき、絞り、鍛造、イオン注入技術によりコアワイヤ内に組み込むことができる。
【0062】
シース370は、使用される特定の材料に対して好適な技術を使用して、ガイドワイヤアセンブリ300の周囲に配置かつ装着されてもよい。幾つかの実施例において、シース370は、ガイドワイヤアセンブリ300の周囲に形成され直すまで、ポリマー材料からなるスリーブを加熱することにより装着されてもよい。他の実施例において、シース370は、熱収縮技術を使用して装着されてもよい。他の実施例においては、シース370は、コアワイヤ330や他の構造と共押出成形されてもよい。シース370は、センタレス研削法や他の方法により形成されて、所望の径や滑らかな外面を構成することができる。
【0063】
ガイドワイヤコアワイヤが図1や3に示された形状とは異なる形状を有していてもよいことは、当業者には認識されよう。例えば、コアワイヤ130,330は、連続的なテーパ状をなしていてもよく、1個のテーパ部を有していてもよく、異なる径を備えた複数の或いは一連のテーパ部を有していてもよく、一定の径を有していてもよい。実施例によっては、コアワイヤ130,330は、断面積が先端に向かって小さくなるように、テーパ状をなすかその他の形状に賦形されている。テーパ状をなしている場合には、コアワイヤは、所望される移行特性に応じて、均一または非均一の移行部を備えることができる。例えば、コアワイヤは、直線的にテーパ状をなしていてもよく、曲線的にテーパ状をなしていてもよく、階段状にテーパ状をなしていてもよい。このようなテーパ形状の角度は、所望される可撓性に応じて変更することができる。テーパ領域の長さは、剛性が徐々に変化する部分がより多く(より長く)なるように、あるいはより少なく(より短く)なるように選択されてもよい。
【0064】
上記した実施例と類似して、コアワイヤ130,330を構成するために使用される構造は、基端部131,331が押圧性やトルク伝達性を得るために比較的高い剛性を有し、先端部132,332がより良好な横方向への追跡性や操作性を得るために比較的高い可撓性を有するように設計されてもよい。例えば、幾つかの実施例においては、基端部131,331は剛性を強化するために、その長さに沿って一定の、すなわちほぼ均一な径を有する。しかしながら、基端部131,331が1個のテーパ部や一連のテーパ部を有する実施例も意図されている。基端部131,331の径は、使用される材料に応じて所望される剛性に見合った寸法が設定されてもよい。例えば、実施例によっては、基端部131,331が、約0.010〜0.025インチ(約0.0254〜0.0635cm)やそれ以上の径を有してもよく、実施例によっては、約0.010〜0.018インチ(約0.0254〜0.0457cm)やそれ以上の径を有してもよい。
【0065】
先端部132,332も同様に一定の径を有してもよく、連続してテーパ状をなしてもよく、あるいは異なる径からなる一連のテーパ部を有してもよい。コアワイヤ130,330の構造が、先端部132,332が基端部131,331よりも可撓性を有するように設計されている実施例においては、より良好な可撓性を得るために、少なくとも1個のテーパ部すなわち減少した径部分を含むことが可能である。
【0066】
基端部131,331と先端部132,332の長さは、通常、完成した医療器具において所望される長さや可撓性に基づくものであるが、必ずしもそうではない。実施例によっては、基端部131,331は約50〜300cmの長さを、先端部132,332は約3〜50cmの長さをそれぞれ有することができる。
【0067】
コアワイヤ130,330は、図示されているように中実断面を有していてもよく、実施例によっては中空断面を有していてもよい。別の実施例においては、コアワイヤ130,330は、中実断面を有する領域と中空断面を有する領域の組み合わせを含んでいてもよい。
【0068】
テーパ領域の径が小さくなる部分および径が一定の部分は、例えばセンタレス研削法、スタンピング法等、複数の異なる技術のいずれかを用いて形成することができる。センタレス研削技術においては、センサ(例:光学/反射型センサ、磁気センサ)を用いたインデックスシステム(indexing system)を利用して、過度に研削されないようにしてもよい。また、センタレス研削技術において、適切に成形及び仕上げを施されたCBN研削ホイール又はダイヤモンド研削ホイールを用い、研削工程においてコアワイヤ130,330を把持しないようにしてもよい。
【0069】
本発明は、上述した特定の実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲において適正に述べるように、本発明の全ての態様を含むものであると理解されるべきである。本明細書を検討することにより、本発明が、その適用され得る様々な変更物や同等のプロセスや多数の構造に対しても向けられていることが、当業者には明白であろう。本願に開示されている事項は、多くの点において、単に例示的なものであることは理解されるべきである。構成の詳細に変更を加えることは可能であり、特に、形状、大きさ、工程の順序については、本発明の範囲を逸脱することなく、変更可能である。本発明の範囲は、当然ながら、請求項に記載された文言において定義される。
【0070】
本発明は、添付の図面に関して以下の様々な実施例についての詳細な説明を鑑みてより深く理解されるであろう。
本発明は、様々な変更物や代替物へ変更可能であるが、その詳細は図面において実施例として示されており、以下に詳述される。しかしながら、本発明は、記載された特定の実施例に限定されるものではない。本発明は、その趣旨および範囲内に含まれる全ての変更物や均等物や代替物を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】複数の結合要素を備えるガイドワイヤコイルと、コイルの長さに沿って配置された離間する複数の装着ポイントによりコイルに固定された熱可塑性ポリマースリーブとを示す断面図。
【図2】本発明によるコイルと、コイルの長さに沿って配置された離間する複数の装着ポイントによりコイルに固定された熱可塑性ポリマースリーブとを示す側面図。
【図3】本発明によるコイルと、コイルの長さに沿って配置された離間する複数の装着ポイントによりコイルに固定された熱可塑性ポリマースリーブとを備える他のガイドワイヤ示す断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)コイル長を形成する複数の巻線を有するらせん状に巻回されたコイルと、
b)該コイル長の一部の周囲に配置された熱可塑性ポリマーからなるスリーブと、
c)該コイル長に沿って配置された離間した複数の装着ポイントとを備え、該離間する装着ポイントの各々は、該熱可塑性ポリマースリーブを2個以上のコイル巻線に固定することを特徴とする体内用医療器具。
【請求項2】
前記らせん状に巻回されたコイルは外周を有することと、前記熱可塑性ポリマースリーブは前記コイル長の一部の外周上に配置されることと、前記離間した複数の装着ポイントは該コイルの外周の一部のみに配置されることとを特徴とする請求項1に記載の体内用医療器具。
【請求項3】
長尺状のシャフトをさらに備えることと、前記コイルは該長尺状シャフトの一部の周囲に配置されることと、前記熱可塑性ポリマースリーブは前記コイル長の一部の外周上に配置されることとを特徴とする請求項1または2に記載の体内用医療器具。
【請求項4】
前記長尺状のシャフトは基端部とその反対側に先端部とを有し、前記コイルは該先端部の一部の周囲に配置されることとを特徴とする請求項1、2または3のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項5】
前記離間した複数の装着ポイントは、前記コイル長に沿って配置された10個以上の離間する装着ポイントを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項6】
前記離間した複数の装着ポイントは、前記コイル長に沿って不均一なパターンを形成する請求項1〜5のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項7】
前記離間した複数の装着ポイントは、前記コイル長に沿って減少するコイルの単位長ごとの装着ポイントの密度を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項8】
前記コイルは基端部と先端部とを有することと、前記単位長ごとの装着ポイントの密度は該基端部から該先端部へ向かって減少することとを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項9】
前記離間した複数の装着ポイントは、前記コイル長に沿って均一なパターンを形成する請求項1〜8のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項10】
各離間した複数の装着ポイントは、3〜10個のコイル巻線、あるいは、任意で10〜20個のコイル巻線を前記熱可塑性スリーブに固定する請求項1〜9のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項11】
各離間した複数の装着ポイントは、前記巻線に対して直交するように並べられた離間する要素である請求項1〜10のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項12】
各離間する装着ポイントは、約0.1〜0.5mmの幅と約0.1〜0.3mmの長さとを有する要素である請求項1〜11のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項13】
前記コイルの巻線はラウンドワイヤからなる請求項1〜12のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項14】
前記コイルの巻線は近接する巻線と任意で接触するように巻回されることと、あるいは、前記コイルの巻線は近接する巻線と接触しないように任意で巻回されることと、あるいは、前記コイルは、前記巻線が近接する巻線と接触する部分と近接する巻線と接触しない部分とを任意で備えることとを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項15】
前記らせん状に巻回されたコイルは外周を有することと、前記離間した複数の装着ポイントは該コイルの外周の一部のみに配置されることとを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項16】
非外傷性の先端チップをさらに備える請求項1〜15のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項17】
前記長尺状シャフトの少なくとも一部は任意で中空状をなすことと、あるいは、前記長尺状シャフトの少なくとも一部は任意で中実状をなすこととを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項18】
前記長尺状シャフトはその長さの少なくとも一部に沿って円形断面を有する請求項1〜17のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項19】
前記長尺状シャフトはその基端部から先端部へ向かってテーパ形状をなし、該テーパ形状は平板状または階段状をなす請求項1〜18のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項20】
前記コイルは内面を有し、前記長尺状シャフトは外面を有し、該コイルの内面の少なくとも一部と該長尺状シャフトの外面との間には空間をなす請求項1〜19のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項21】
前記離間する装着ポイントは、前記熱可塑性ポリマースリーブの離間するポイントを好適に加熱することにより形成されて、それら離間するポイントにおいて前記ポリマーの少なくとも一部が流れて前記コイルの2個以上の巻線に固定される請求項1〜20のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項22】
体内用ガイドワイヤである請求項1〜21のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項23】
前記らせん状に巻回されたコイルは長手方向の軸線を有することと、前記離間した複数の装着ポイントは該コイルの長手方向軸線の周囲に離間して延びることとを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載の体内用医療器具。
【請求項24】
a)コイル長を形成する複数の巻線を有するらせん状に巻回されたコイルの一部の外周上に熱可塑性ポリマースリーブを配置する工程と、
b)該コイル長に沿って離間した複数の装着ポイントを形成する工程とを含み、該離間した複数の装着ポイントの各々は、該熱可塑性ポリマースリーブを2個以上のコイルの巻線に固定することを特徴とする体内用医療器具を形成するための方法。
【請求項25】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、前記離間する装着ポイントを形成するために熱エネルギーを使用する工程からなる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、前記離間する装着ポイントを形成するために、前記熱可塑性ポリマースリーブを2個以上のコイルの巻線にレーザ溶接する工程からなる請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、前記離間する装着ポイントを形成するために、前記熱可塑性ポリマースリーブを2個以上のコイルの巻線にレーザダイオード溶接する工程からなる請求項24〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、前記コイル長に沿って配置された10個以上の離間する装着ポイントを形成する工程を含む請求項24〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、前記コイル長に沿って離間する装着ポイントの不均一なパターンを形成する工程を含む請求項24〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、前記コイル長に沿って減少するコイル長単位ごとの離間する装着ポイントの密度を有する離間した複数の装着ポイントを形成する工程を含む請求項24〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、前記コイル長に沿って離間する装着ポイントの均一なパターンを形成する工程を含む請求項24〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記離間した複数の装着ポイントの少なくとも幾つかは、前記熱可塑性スリーブを3〜10個、または、任意で10〜20個のコイル巻線に固定する請求項24〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、前記巻線に対して直交するように並べられた離間する装着ポイントを形成する工程を含む請求項24〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、約0.1〜0.5mmの幅と約0.1〜0.3mmの長さとを有する離間する装着要素を形成する工程を含む請求項24〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、前記熱可塑性スリーブの少なくとも一部を流すために、前記熱可塑性ポリマースリーブを離間する箇所において好適に加熱することにより離間した装着要素を形成し、各離間する装着ポイントにおいて前記熱可塑性ポリマーを2個以上の巻線に固定する工程を含む請求項24〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
ガイドワイヤからなる請求項24〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記らせん状に巻回されたコイルは長手方向の軸線を有することと、前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程は、該コイルの長手方向軸線の周囲に離間して延びるように前記離間した複数の装着ポイントを形成する工程からなる請求項24〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項24〜37のいずれか一項に記載の方法により製造された体内用医療器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−503957(P2007−503957A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526202(P2006−526202)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/028791
【国際公開番号】WO2005/023357
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】