説明

医療情報提供装置、医療情報提供方法、並びに医療情報提供プログラム

【課題】医師に提供する診断名候補の妥当性、信憑性を高める。
【解決手段】DBサーバの格納処理部63は、所見文作成用のテンプレート式操作ツールである用語選択入力領域の選択入力状態と診断名入力領域の入力ボックスに入力された診断名を関連付けて診断名DB22の診断名テーブルに格納する。診断名テーブルに既に当該診断名が登録されていた場合、格納処理部63はその診断名の入力回数をインクリメントする。診断名が登録されていない場合、診断名テーブルの行を新規追加して登録する。検索処理部64は、用語選択入力領域の選択入力状態を検索キーとするレポート作成端末からの検索要求に応じた診断名候補を診断名テーブルから検索・抽出し、レポート作成端末に送信する。レポート作成端末のコンソール制御部は、受信した診断名候補を入力回数に応じてディスプレイに表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師に診断名候補を提供する医療情報提供装置、医療情報提供方法、並びに医療情報提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の医療現場には、カルテや医用レポート等の医用文書を電子データとして扱い、医用文書の作成や管理を容易ならしめ、医用レポートを作成する読影医等の医師の負担を減らすための様々なコンピュータシステムが導入されつつある(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、医用レポートの所見文中のキーワードと、診断名、確信度を関連付けて記憶しておき、所見文入力状態に応じた診断名候補を抽出、提示する診療支援システムが開示されている。手書き入力された所見文から、文字認識技術を用いて語句または用語を切り出し、類義語を一意の語句に変換している。そして、変換した語句と診断名に関連付けられたキーワードを照合し、手書き入力された所見文に対応する診断名を抽出、提示している。
【0004】
特許文献2には、カルテに記入する主訴(症状)と病名(診断名)の組み合わせ毎に、過去に医師がその病名と診断した頻度を記憶しておき、症状の入力状態に応じた病名候補を抽出、提示する診断支援システムが開示されている。病名の診断頻度を更新し、頻度に応じて病名候補を表示している。症状の入力形態として手書きおよびテンプレート入力が例示され、手書き入力の場合は症状を単語に分割して意味付けしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−018460号公報
【特許文献2】特開2008−027099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明は、文字認識技術を用いて所見文の語句または用語を切り出し、類義語を一意の語句に変換して、変換した語句と診断名に関連付けられたキーワードを照合しているため、提供する診断名候補の妥当性、信憑性が文字認識の精度によって左右されてしまう。診断名候補の妥当性、信憑性が担保できない場合は、誤診に繋がるおそれがある。
【0007】
特許文献2は、カルテに記入する主訴に対する診断名候補を提示するものであり、医用レポートを対象としていない。また、特許文献2で例示される症状入力用のテンプレートは、症状を表す文を選択させる単純なものであり、大きさや部位等の修飾語が多く比較的複雑な文章構造である医用レポートの所見文には対応することができない。
【0008】
従って、特許文献1、2に記載の技術、およびこれらを組み合わせた技術では、医用レポートを作成する際に提示する診断名候補の妥当性、信憑性を高め、誤診等の医療事故の発生確率を低めるという要望に十分に応えることができない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、医師に提供する診断名候補の妥当性、信憑性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の医療情報提供装置は、医用レポートを構成する所見文を分解した複数の語句の一部を入力語句として選択入力させるテンプレート入力領域の選択入力状態と診断名入力領域を介して入力される診断名とを関連付けて第一データベースに格納する格納手段と、選択入力状態を検索キーとする検索要求に応じて第一データベースを検索し、検索キーと一致、または類似する選択入力状態と関連付けられた診断名を第一データベースから抽出する検索・抽出手段と、前記検索・抽出手段で抽出された診断名をディスプレイに表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
診断名入力領域には診断名の確信度を選択入力させるGUIが設けられている。前記格納手段は確信度毎に診断名を格納する。前記検索・抽出手段は診断名とともに確信度も抽出する。前記表示制御手段は確信度毎に診断名を表示させる。
【0012】
前記格納手段は、医用レポートが確定保存される毎に、第一データベースに該当する診断名がある場合は入力回数をインクリメントし、ない場合はその診断名を登録するための領域を第一データベースに新設して、入力回数、または全入力回数に対する当該診断名の入力回数の比率のうち少なくともいずれかを診断名に関連付けて格納する。前記検索・抽出手段は診断名とともに入力回数、または比率も抽出する。前記表示制御手段は、入力回数、または比率に応じて診断名を表示させる。例えば入力回数、または比率がある閾値以上の診断名を表示させる。入力回数、または比率が多い順に診断名を表示させてもよい。あるいは、入力回数、または比率が最大の診断名を他と区別して表示させる。
【0013】
ある選択入力状態に対してその診断名となり得る程度を示す尤度を診断名毎に格納した第二データベースを備えることが好ましい。前記検索・抽出手段は診断名とともに尤度も抽出する。前記表示制御手段は尤度に応じて診断名を表示させる。例えば尤度がある閾値以上の診断名を表示させる。尤度が多い順に診断名を表示させてもよい。あるいは、尤度が最大の診断名を他と区別して表示させる。
【0014】
各診断名の悪化、良化の関係を表す第三データベースをさらに備えることが好ましい。前記検索・抽出手段は、コピー利用した過去の医用レポートに記述された診断名に対する、抽出された診断名の悪化、良化の関係を第三データベースから抽出し、前記表示制御手段は診断名とともに悪化、良化の情報を表示させる。
【0015】
前記格納手段と前記検索・抽出手段は、データベースを有するサーバに構築され、前記表示制御手段は、前記サーバとネットワーク接続されたクライアント端末に構築される。前記サーバと前記クライアント端末は、前記検索・抽出手段への検索要求、および前記検索・抽出手段で抽出された診断名をネットワーク経由で相互に遣り取りする。
【0016】
本発明の医療情報提供方法は、格納手段により、医用レポートを構成する所見文を分解した複数の語句の一部を入力語句として選択入力させるテンプレート入力領域の選択入力状態と診断名入力領域を介して入力される診断名とを関連付けてデータベースに格納する格納ステップと、検索・抽出手段により、選択入力状態を検索キーとする検索要求に応じてデータベースを検索し、検索キーと一致、または類似する選択入力状態と関連付けられた診断名をデータベースから抽出する検索・抽出ステップと、前記検索・抽出ステップで抽出された診断名を表示制御手段によりディスプレイに表示させる表示ステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の医療情報提供プログラムは、医用レポートを構成する所見文を分解した複数の語句の一部を入力語句として選択入力させるテンプレート入力領域の選択入力状態と診断名入力領域を介して入力される診断名とを関連付けてデータベースに格納する格納機能と、選択入力状態を検索キーとする検索要求に応じてデータベースを検索し、検索キーと一致、または類似する選択入力状態と関連付けられた診断名をデータベースから抽出する検索・抽出機能と、前記検索・抽出機能で抽出された診断名をディスプレイに表示させる表示制御機能とを、コンピュータに実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、テンプレート入力領域の選択入力状態と診断名を関連付けてデータベースに格納し、検索要求に応じた診断名候補をデータベースから検索・抽出して、これをディスプレイに表示させるので、医師に提供する診断名候補の妥当性、信憑性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】医療情報システムの構成図である。
【図2】各端末およびサーバを構成するコンピュータの概略を示す構成図である。
【図3】レポート作成端末とDBサーバの概略構成、およびレポート編集画面を示す図である。
【図4】レポートのデータ構造を示す説明図である。
【図5】診断名テーブルの更新、および診断名候補の検索・抽出処理の概略を示す説明図である。
【図6】診断名テーブルを示す図である。
【図7】診断名候補表示ウィンドウを示す図である。
【図8】レポート作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】診断名テーブルの更新処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】診断名候補の検索・抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】尤度テーブルを示す図である。
【図12】診断名候補表示ウィンドウの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1において、医療情報システム2は、病院等の医療施設に構築され、診療科10に設置される診療科端末11、放射線検査科(以下、単に検査科という)12に設置されるレポート作成端末13、データベース(以下、DBと略す)サーバ14、およびこれらを通信可能に接続するネットワーク15を備える。ネットワーク15は、例えば、院内に敷設されたLAN(Local Area Network)である。
【0021】
診療科端末11は、検査や読影を依頼する診療科10の医師(以下、依頼医という)によって操作される。診療科端末11は、カルテ16の閲覧や入力の他、検査科12に対して検査を依頼するためのオーダを発行する際に利用される。診療科端末11は、検査科12から提供される検査画像17やレポート18を表示して、依頼医の閲覧に供する。
【0022】
レポート作成端末13は、読影を専門とする検査科12の医師(以下、読影医という)によって操作される。レポート作成端末13は、読影医がオーダを確認したり、レポート18を作成したりするときに利用される。レポート作成端末13は、画像表示画面やレポート編集画面44(図3参照)を表示して、レポート18の作成を支援する。
【0023】
DBサーバ14には、カルテDB19、画像DB20、レポートDB21、診断名DB22等の複数のDBが構築されている。カルテDB19は、患者毎のカルテ16のデータ等を格納する。画像DB20は、CR装置、CT装置、MRI装置といった検査科12のモダリティ23によって撮影された検査画像17のデータを格納する。レポートDB21は、レポート作成端末13によって作成されたレポート18のデータを格納する。診断名DB22は、レポート18のデータから抜き出された診断名のデータを診断名テーブル24(図6参照)に格納する。
【0024】
DBサーバ14は、ネットワーク15を通じて、モダリティ23から検査画像17のデータを受信して、受信した検査画像17のデータを画像DB20に格納する。つまり、DBサーバ14は、いわゆるPACS(Picture Archiving and Communication Systems)サーバとして機能し、モダリティ23とともにPACSを構成する。
【0025】
検査画像17のデータは、個々の検査画像17を識別するための画像IDを有する。検査画像17のデータは、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)に準拠したファイル形式で、画像DB20に格納される。検査画像17のファイルには、患者ID、検査ID、検査日、検査種等の項目を含む付帯情報を記録したDICOMタグが付与される。画像DB20に格納された検査画像17のデータは、DICOMタグの各種項目を検索キーとして、検索が可能である。
【0026】
DBサーバ14は、診療科端末11およびカルテDB19とともにカルテシステムを構成する。また、DBサーバ14は、レポート作成端末13、画像DB20、並びにレポートDB21とともにレポート作成支援システムを構成する。レポート18のデータは、検査画像17のデータと同様、個々のレポート18を識別するためのレポートIDを有し、レポートID、検査ID、患者ID、患者名等の検索キーによって検索が可能である。なお、本例では、各DB19〜22を一つのDBサーバ14に構築した例で説明しているが、各DB19〜22を別々のDBサーバに構築してもよい。
【0027】
診療科端末11が発行するオーダは、患者ID、患者名、依頼日、依頼元、検査種(CTやMRI等)、検査目的、読影の要否等の情報を記録する各種項目を有する。依頼元の項目には、内科、脳外科等の依頼医の所属、氏名、医師IDといった情報が記録される。検査目的の項目には、治療中の病巣に対する治療効果を判定する治療効果判定、転移巣の有無を調べる転移検索等の情報が記録される。
【0028】
診療科端末11が発行したオーダは、検査科12に設置されたオーダ受付端末(図示せず)に送信されて、検査科12に受け付けられる。オーダ受付端末は、受信したオーダに検査IDを付与して、オーダのデータを管理する。検査IDは、受付完了通知とともにオーダ受付端末から診療科端末11に送信される。検査科12のスタッフ(検査技師)は、オーダ受付端末で受信したオーダに基づいて、モダリティ23による撮影を行う。
【0029】
読影が必要な場合(オーダの読影の要否の項目が要の場合)には、検査IDが付与されたオーダが、オーダ受付端末からレポート作成端末13に送信される。読影医は、レポート作成端末13を介してオーダを確認し、画像DB20から読影の対象となる検査画像17のデータを読み出す。そして、読み出した検査画像17の読影結果をレポート18にまとめる。治療効果判定といった病変の経過観察を検査目的とする場合は、当該患者の前回のレポート18をコピー利用し、前回と異なる部分を修正する等してレポート18を作成する。
【0030】
レポート18の作成が完了すると、読影医は、オーダ発行元の診療科端末11に対して、レポート作成端末13を通じて作成完了通知を送信する。作成完了通知には、検査画像17やレポート18が格納される各DB20、21内のアドレスが含まれている。依頼医は、診療科端末11を通じて作成完了通知に含まれるアドレスにアクセスして、検査画像17やレポート18を閲覧する。
【0031】
各端末11、13およびDBサーバ14は、それぞれ、パーソナルコンピュータ、サーバ用コンピュータ、ワークステーションといったコンピュータをベースに、オペレーティングシステム等の制御プログラムや、クライアントプログラム又はサーバプログラムといったアプリケーションプログラムをインストールして構成される。
【0032】
図2において、各端末11、13およびDBサーバ14を構成するコンピュータは、基本的な構成は略同じであり、それぞれ、CPU30、メモリ31、ストレージデバイス32、LANポート33、およびコンソール34を備えている。これらはデータバス35を介して相互接続されている。
【0033】
ストレージデバイス32は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)である。ストレージデバイス32には、制御プログラムやアプリケーションプログラム(以下、APという)36が格納される。また、レポート作成端末13のストレージデバイス32には、各パネル51、52、用語選択ボタン53の選択状態や入力ボックス54(ともに図3参照)の入力状態(以下、まとめて選択入力状態という)に応じて所見文を作成するための所見文作成用定義(図示せず)や描画データが格納される。描画データは、ディスプレイ37に表示する各種操作画面のGUI(Graphical User Interface)の種類、配置、大きさ、色等を規定したものである。
【0034】
さらに、DBサーバ14には、プログラムを格納するHDDとは別に、DB用のストレージデバイス32として、例えば、HDDを複数台連装したディスクアレイが設けられる。ディスクアレイは、DBサーバ14の本体に内蔵されるものでもよいし、本体とは別に設けられ、本体にケーブルやネットワークを通じて接続されるものでもよい。
【0035】
メモリ31は、CPU30が処理を実行するためのワークメモリである。CPU30は、ストレージデバイス32に格納された制御プログラムをメモリ31へロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。メモリ31には、選択入力状態を表す一時記憶データが一時記憶される。
【0036】
LANポート33は、ネットワーク15との間の伝送制御を行うネットワークインタフェースである。コンソール34は、ディスプレイ37と、キーボードやマウス等の入力デバイス38とからなる。
【0037】
診療科端末11には、AP36として、カルテ16の閲覧や編集を行うカルテ用ソフトウエア、検査画像17やレポート18の閲覧を行うビューアソフトウエアといったクライアントプログラムがインストールされる。クライアントプログラムが起動されると、診療科端末11のディスプレイ37には、GUIによる操作画面が表示される。操作画面には、カルテDB19、画像DB20、レポートDB21から、それぞれ読み出されたカルテ16、検査画像17、レポート18を表示する表示画面が含まれる。
【0038】
診療科端末11には、入力デバイス38を通じて、カルテ16の入力・編集の指示や、オーダの入力・発行の指示といった操作指示が入力される。入力されたカルテ16やオーダのデータは、カルテDB19に格納される。
【0039】
レポート作成端末13には、AP36として、レポート作成支援を行うレポート編集用のクライアントプログラムがインストールされている。レポート作成端末13は、レポート編集用のクライアントプログラムによって、検査画像17の表示処理と、レポート18の編集処理とを行う。DBサーバ14には、AP36として、クライアントである各端末11、13からの要求に応じて処理を実行し、処理結果を応答するサーバプログラムがインストールされている。
【0040】
図3において、レポート作成端末13のCPU30は、レポート編集用のクライアントプログラムを起動すると、コンソール制御部(表示制御手段に相当)40、DBアクセス部41、編集処理部42、およびオーダ取得部43として機能する。オーダ取得部43は、オーダ受付端末からネットワーク15を介してオーダを取得する。取得したオーダは、例えば、レポート作成端末13のストレージデバイス32に設けられたオーダテーブル(図示せず)に登録される。
【0041】
レポート作成端末13は、CPU30が設けられた端末本体に、二台のディスプレイ37a、37bを接続した構成である。一台のディスプレイ37aには、検査画像17の観察用に使用される画像表示画面が出力される。もう一台のディスプレイ37bには、レポート18の作成に使用されるレポート編集画面44が出力される。
【0042】
画像表示画面およびレポート編集画面44は、GUIによる操作画面を構成する。コンソール制御部40は、入力デバイス38の操作に応じた描画データをストレージデバイス32から読み出し、読み出した描画データに基づいてこれらの操作画面を各ディスプレイ37a、37bに出力する。コンソール制御部40は、操作画面を通じて、入力デバイス38からの操作指示の入力を受け付ける。
【0043】
画像表示画面およびレポート編集画面44は、連動して起動する。レポート編集画面44から、読影対象の検査画像17が含まれる検査IDが入力されると、コンソール制御部40は、DBアクセス部41を通じて、検査IDに対応する検査画像17のデータを画像DB20から取得する。コンソール制御部40は、取得した検査画像17をディスプレイ37aに出力する際に、画像表示画面を起動する。
【0044】
画像表示画面には、超音波診断装置で撮影された超音波画像、あるいはCR装置で撮影された放射線による透視画像や、CT装置やMRI装置で撮影された断層画像、断層画像に基づいて生成される三次元画像といった各種の検査画像17が表示される。画像表示画面は、一画面に六コマの断層画像を配列して表示するというように、複数の検査画像17を同時に表示することが可能である。画像表示画面には、操作ボタン、リストボックス、アイコンといった、GUIを構成する各種の操作ツールが設けられている。こうした操作ツールを通じて、入力デバイス38からの各種の操作指示が入力される。
【0045】
レポート編集画面44には、基本情報表示領域45、所見文入力領域46、診断名表示領域47、用語選択入力領域48、診断名入力領域49、および操作ボタン領域50が設けられている。これら各領域は、GUIを構成する各種の操作ツールである。こうした操作ツールを通じて、入力デバイス38からの各種の操作指示が入力される。操作指示には、レポートDB21からレポート18のデータを読み出す指示、レポートDB21へレポート18のデータを保存する指示、所見文入力領域46を選択してアクティブ(入力が可能な状態)にする指示等が含まれる。
【0046】
基本情報表示領域45には、患者名(「富永士郎」)、検査ID(「CT0803」)、検査画像17の撮影日(「10/7/30(2010年7月30日)」)といった基本情報が表示される。これらの基本情報は、オーダから読み出される。
【0047】
所見文入力領域46には、読影医が検査画像17を観察して認識した、病変の状態等の観察記録、すなわち所見を表す文(以下、所見文という)が入力される。図においては、所見文入力領域46は一つだけ表示されているが、所見文入力領域46は追加することも可能である。所見文入力領域46を追加する際には、検査目的が複数ある場合(例えば、治療効果判定と転移検索等)に、検査目的毎に所見を分けて入力するといった使い方がされる。また、研修医と指導医、一次読影を行う読影医と二次読影を行う読影医等、複数の読影医が所見をそれぞれ入力するという使い方も可能である。
【0048】
用語選択入力領域48は、マウスのクリック操作によって、所見文入力領域46へ所見文を入力するための操作ツールであり、テンプレート式操作ツールとも呼ばれる。用語選択入力領域48は、「肝臓」、「胆管」といった臓器別の大分類パネル51と、小分類パネル52とを有する。小分類パネル52は、「肝臓の形態」、「腫瘤性病変」といった、臓器毎に所見として記入されるべき項目を類型化した所見項目を有する。各パネル51、52は、タブによって切り替え選択が可能である。大分類パネル51として選択された臓器名は、所見文入力領域46の横に表示される。図3では、大分類パネル51として「肝臓」が、小分類パネル52として「腫瘤性病変」がそれぞれ選択されている。
【0049】
小分類パネル52には、さらに、複数の用語選択ボタン53が設けられている。用語選択ボタン53は、所見項目をさらに細分化した、「個数」、「境界」、「辺縁」等々の観察項目毎に、横並びに配列されている。例えば、「境界」の観察項目には、「明瞭」、「不明瞭」、「辺縁」の観察項目には、「整」、「不整」といった入力語句がある。用語選択ボタン53の用語には、各観察項目で使用される頻度が高い医療用語が使用されている。また、用語選択ボタン53の用語は全て、所見項目、観察項目の程度や形状を表し、所見項目、観察項目を修飾する語句である。
【0050】
用語選択ボタン53は、各観察項目について一つだけ選択することが可能である。このため、例えば「辺縁−整」が選択されていて、「辺縁−不整」を選択し直した場合は、「辺縁−整」の選択が自動的に解除される。
【0051】
観察項目「部位」、「大きさ」には用語選択ボタン53は配されておらず、代わりにキーボード入力を受け付ける入力ボックス54が設けられている。入力ボックス54は、観察項目「個数」の右端にも設けられている。入力ボックス54には、「右葉」、「左葉」、「S1」〜「S8」等の腫瘤性病変の場所を示す語句、「15」、「10」、「3」等の大きさ、箇所を表す数値がキーボード操作により入力可能である。観察項目「個数」の右端の入力ボックス54は、検査画像17に写る病変が多数あり、各病変の部位、大きさ、様態が全く同じ場合に使用される。
【0052】
所見文入力領域46をアクティブにした状態で、所望の用語選択ボタン53にポインタ55を合わせて、マウスでクリック操作を行うと、選択された用語に基づいた所見文が所見文入力領域46に表示される。所見文入力領域46に入力された所見文には、キーボードを操作することで、修正加筆することも可能である。
【0053】
所見文は、一個以上の用語選択ボタン53を選択したときに表示される。所見文は、用語選択ボタン53が追加選択される毎に表示が更新される。また、選択入力状態を表すメモリ31の一時記憶データも、用語選択ボタン53が追加選択される毎に更新される。追加選択は、例えば、二つの観察項目の用語選択ボタン53が選択されていて、三つ目の観察項目の用語選択ボタン53を選択する場合と、同一の観察項目で用語選択ボタン53の選択をし直す場合とを含む。
【0054】
図3では、用語選択ボタン53として、斜線で示すように「個数−単発」、「境界−不明瞭」、「辺縁−不整」、「吸収値−低吸収」がそれぞれ選択されている。入力ボックス54には、「部位−左葉」、「大きさ−33mm×25mm」がキーボード入力されている。また、所見文として、「肝左葉に大きさ33×25mmの、境界不明瞭、辺縁不整、低吸収の腫瘤性病変を認めます。」が所見文入力領域46に表示された状態を図示している。
【0055】
診断名入力領域49には、確信度入力用のプルダウンメニュー56、診断名入力用の入力ボックス57、および診断名候補を表示させるための診断名候補ボタン58が設けられている。プルダウンメニュー56の横の逆三角の印をクリックすると、「確定」、「疑い」、「除外」の確信度の度合いを示す選択肢がプルダウン表示される。「確定」は確信度が比較的高い場合、「疑い」は「確定」よりも確信度が低く、「確定」とは言い切れない場合、「除外」は、確信度は低いが念のため留意する必要がある場合にそれぞれ選択される。入力ボックス57には、読影の結果導かれる診断名が読影医により入力される。入力ボックス57に入力された診断名は、適当な単文の形で診断名表示領域47に転載される。本例では確信度「疑い」が選択され、入力ボックス57には診断名「肝血管筋脂肪腫」が入力され、診断名表示領域47に「肝血管筋脂肪腫を疑います。」が表示された状態を示している。
【0056】
操作ボタン領域50には、各種操作ボタン59〜62が設けられている。所見追加ボタン59は、所見文入力領域46を追加するためのものである。所見追加ボタン59にポインタ55を合わせてマウスをクリック操作すると、レポート編集画面44に所見文入力領域46が追加表示される。
【0057】
所見文入力領域46に入力された所見文のデータ(以下、所見データという)は、個々を識別する所見IDを有する。所見IDは、検査画像17やレポート18と所見文との対応をとるためのものであり、所見文入力領域46の追加された順に付された番号を含む。N個目(Nは1以上の自然数)の所見文入力領域46に入力される所見文には、「F−N」の所見IDが割り当てられる。図3では、一個目の所見文入力領域46に所見文を入力する際を示しており、所見文入力領域46の上部に所見IDの「F−1」が表示されている。
【0058】
終了ボタン60は、レポート18の編集を終了するためのものである。終了ボタン60が選択されると、レポート18のデータが確定保存される。確定保存されたレポート18は、不正な改ざんを防止するために、編集が禁止される。中断ボタン61は、レポート18の作成を一時中断するためのものである。中断ボタン61が選択されると、作成途中のレポート18のデータが一時保存される。キャンセルボタン62は、レポート編集画面44を閉じる際に選択される。
【0059】
DBアクセス部41は、コンソール制御部40や編集処理部42からの指令に基づいて、DBサーバ14に対する処理要求の送信と処理結果の受信とを行う。画像DB20に対する処理要求には、検査IDや画像IDといった情報を検索キーとして、検査画像17を検索するための検索要求がある。レポートDB21に対する処理要求には、作成したレポート18のデータを格納するための格納要求と、作成したレポート18のデータや、作成途中のレポート18のデータの検索要求とがある。また、診断名DB22に対する処理要求には、診断名のデータの格納要求と、診断名候補ボタン58のクリック選択に応じた診断名候補の検索要求とがある。
【0060】
DBアクセス部41は、格納要求の対象となるデータを、編集処理部42から受け取り、DBサーバ14へ送信する。また、検索要求の対象となるデータを、DBサーバ14から受信して、コンソール制御部40に引き渡す。
【0061】
DBサーバ14のCPU30は、サーバプログラムを実行することにより、検査画像17、およびレポート18のデータの格納処理部63および検索処理部64として機能する。格納処理部63は、レポート作成端末13やモダリティ23といったクライアントからの各データの格納要求に応じて、各DB19〜22へのデータの格納処理を実行する。検索処理部64は、診療科端末11、レポート作成端末13からの各データの配信要求に応答して、要求されたデータを各DB19〜22から検索・抽出して、抽出したデータを要求元へ配信する。
【0062】
編集処理部42は、レポート編集画面44の所見文入力領域46に入力された所見データ、および各パネル51、52、用語選択ボタン53等の選択入力状態を、コンソール制御部40を通じて受け付ける。編集処理部42は、受け付けた所見データを、所見文入力領域46毎に区別してブロック化する。
【0063】
編集処理部42は、ブロック化した所見データのそれぞれに「F−1」、「F−2」等の所見IDを付加して、これらをレポート18のデータに記録する。編集処理部42は、所見データの他に、オーダから読み出された検査ID、患者ID、患者名、選択入力状態といった情報を、レポート18のデータに付加する。選択入力状態のデータは、レポート18の確定保存時にメモリ31に記憶されていた一時記憶データである。
【0064】
編集処理部42は、所見IDに加えて、各所見データに対して、その所見文を入力した読影医を識別するための医師IDを付加する。医師IDは、レポート作成端末13の起動時のユーザ認証の際等に読影医によって入力される。所見データは、所見IDや医師IDによって検索することが可能である。
【0065】
編集処理部42は、ストレージデバイス32に格納された所見文作成用定義に基づいて、各パネル51、52、用語選択ボタン53等の選択入力状態に応じた所見文を作成する。所見文作成用定義は、臓器の項目を頂点として、所見項目、観察項目、観察項目毎の語句の順にデータを階層構造でもち、各観察項目の節の所見文中の位置、および各観察項目の節内の語句の並び順を規定する。所見文作成用定義は、例えば、所見項目、観察項目毎に所見文を主部および述部に分類し、主部および述部を本体部および本体部を修飾する修飾部に分類して、所見文を構成する語句をそれぞれの部に振り分けたものである。
【0066】
図3の例では、主部の修飾部「大きさ○○×○○mmの」、「境界○○、」等と、主部の本体部「腫瘤性病変を」、述部の修飾語「肝○○に」と、述部の本体部「認めます。」がそれぞれ登録されている。
【0067】
用語選択ボタン53のいずれかが選択された場合、編集処理部42は、まず、各パネル51、52の選択状態に対応する、所見文作成用定義の臓器の項目、所見項目の階層を辿る。そして、選択された用語選択ボタン53に対応する観察項目(以下、アクティブな観察項目という)の語句を、所見文作成用定義から読み出す。編集処理部42は、所見文作成用定義から読み出した各部の語句を、主部の修飾部、本体部、述部の修飾部、本体部の順(所見文作成用定義の並び(登録)順)に従って連結し、所見文を作成する。
【0068】
図3の各パネル51、52、用語選択ボタン53の選択状態を例に挙げて、編集処理部42の所見文の作成処理を説明する。各パネル51、52として「肝臓」、「腫瘤性病変」が選択されているので、編集処理部42は、所見文作成用定義の「肝臓」、その下層の「腫瘤性病変」を辿る。そして、アクティブな観察項目の主部の本体部、および主部と述部の修飾部等を所見文作成用定義から読み出す。このようにして読み出した各種語句を、予め定められた順序に従って連結すると、図3および段落[0054]に記載した所見文となる。
【0069】
レポート18のデータ構造を示す図4において、レポート18は、患者ID、患者名といった患者情報、検査ID、検査日、検査目的といった検査情報、および所見情報等をデータとしてもつ。所見情報は、所見ID、所見データ、読影医の医師ID、選択入力状態、診断名、確信度等で構成される。レポート18にはこの他にも、レポート18の作成時に参照した検査画像(キー画像)の画像IDやオーダの情報等が記憶されている。
【0070】
図5に示すように、格納処理部63は、レポート作成端末13のDBアクセス部41から格納要求とともに送信されるレポート18のデータのうち、所見情報の選択入力状態、診断名、確信度を抜き出し、抜き出したデータに基づいて診断名DB22に格納された図6に示す診断名テーブル24の内容を更新する。診断名テーブル24は、選択入力状態、確信度、診断名、入力回数、全入力回数に対する当該診断名の入力回数の比率等の項目を有する。これらの項目は、選択入力状態毎に大きく分類され、選択入力状態で分類された項目はさらに確信度毎に小さく分類されている。この診断名テーブル24によれば、ある選択入力状態でどういった診断名がどれだけ過去に入力されたかが確信度毎に分かる。なお、診断名テーブル24に記憶する選択入力状態のデータとしては、レポート編集画面44上の全ての選択入力状態ではなく、例えば観察項目「部位」の選択入力状態を除外する等、診断に寄与するものだけに限定してもよい。
【0071】
図3の例を含む、「個数−単発」、「境界−不明瞭」、「辺縁−不整」、「吸収値−低吸収」、「大きさ−長径30mm以上短径20mm以上」の選択入力状態では、確信度「確定」で診断名「肝細胞癌」が過去に20回(比率40%)、「肝血管筋脂肪腫」が過去に10回(比率20%)入力されている。診断名「肝細胞癌」の入力回数が20回で比率が40%ということは、上記選択入力状態、および確信度「確定」の全入力回数は50回であり、上記選択入力状態で所見文を作成したことが過去に50回あったことを示している。
【0072】
確信度「疑い」では、診断名「肝細胞癌」の入力回数が14回(比率25%)、「肝血管筋脂肪腫」が12回(21%)、確信度「除外」では「肝細胞癌」が7回(10%)、「肝血管腫」が16回(23%)である。診断名テーブル24には、上記の選択入力状態に限らず、例えば「境界−明瞭」、「辺縁−整」、「大きさ−長径30mm未満短径20mm未満」の場合等、他の臓器や所見項目の用語選択入力領域48の様々な組み合わせの選択入力状態に対する診断名、入力回数、比率等が登録されている。なお、観察項目「大きさ」といった数値を、上記のように以上、未満で場合分けするのではなく、最小単位(上記の例では1mm)刻みで場合分けしてもよい。
【0073】
格納処理部63は、ある選択入力状態に対する診断名が診断名テーブル24に登録されていない場合、診断名テーブル24の当該選択入力状態、確信度の行にその診断名を登録するための行を新設し、入力回数を1回としてその診断名を登録する。ある選択入力状態に対する診断名が既に診断名テーブル24に登録されていた場合、格納処理部63は、診断名テーブル24の当該選択入力状態、確信度の行の当該診断名の入力回数をインクリメントする。格納処理部63は、新たに診断名を登録する毎、および既存の診断名の入力回数をインクリメントする毎に、各診断名の比率を計算して比率の項目を更新する。このようにして、レポート18が確定保存される度に、格納処理部63により診断名テーブル24の内容が更新される。
【0074】
診断名候補ボタン58は、選択入力状態に相応しい診断名の候補を表示させる際に選択される。診断名候補ボタン58がクリックされると、コンソール制御部40は、診断名候補を検索するための検索キーをDBアクセス部41に送信する。検索キーは、具体的には診断名候補ボタン58がクリックされたときの選択入力状態のデータ、すなわちメモリ31にそのとき記憶されていた一時記憶データである。
【0075】
図5において、DBアクセス部41は、受信した検索キーによる診断名候補の検索要求をDBサーバ14の検索処理部64に送信する。検索処理部64は、検索キーの選択入力状態と一致する選択入力状態を診断名テーブル24から検索し、検索した選択入力状態の行の診断名、入力回数、比率のデータを抽出する。検索処理部64は、抽出した各項目のデータを検索結果としてDBアクセス部41に送信する。
【0076】
DBアクセス部41は、検索処理部64から受けた検索結果をコンソール制御部40に引き渡す。コンソール制御部40は、検索結果を元に図7に示す診断名候補表示ウィンドウ70を生成し、これをディスプレイ37bにポップアップ表示させる。
【0077】
図7において、診断名候補表示ウィンドウ70には、確信度毎に診断名候補が羅列されている。診断名候補は、入力回数の多い順または比率の大きい順に並べられる。各診断名候補の横には、チェックボックス71が設けられている。入力したい確信度、および診断名候補のチェックボックス71を選択してOKボタン72をクリックすると、チェックボックス71で選択した確信度、および診断名候補がプルダウンメニュー56、および入力ボックス57に自動的に入力される。診断名候補の選択をやめる場合は、キャンセルボタン73をクリックする。
【0078】
なお、この例では、確信度毎に三つ宛診断名候補が提示されているが、診断名候補の個数は三つ以下でも以上でもよく、検索処理部64で抽出する際に入力回数や比率が予め設定された閾値以上の診断名のみに絞り込んでもよい。入力回数、比率を診断名候補とともに表示したり、入力回数、比率が高い診断名候補を太字等で他と区別して表示してもよい(図12参照)。
【0079】
以下、上記構成による作用について、図8〜図10に示すフローチャートを参照して説明する。依頼医は、診療科端末11を使用してオーダを発行する。レポート作成端末13は、診療科端末11から発行されたオーダを、検査科12のオーダ受付端末を経由して受信する。
【0080】
読影医は、レポート作成端末13にアクセスしてオーダを確認し、レポート18の作成を開始する。レポート編集画面44がディスプレイ37bに表示されると、これと連動して画像表示画面がディスプレイ37aに表示される。読影医は、画像表示画面で検査画像17を観察しながら、レポート編集画面44の所見文入力領域46に、それぞれ臓器別の所見文を入力する。
【0081】
所見文の入力は、用語選択ボタン53を選択することにより行われる。図8において、用語選択ボタン53が選択されると(ステップ(以下、Sと略す)10でyes)、コンソール制御部40から編集処理部42に、各パネル51、52、用語選択ボタン53等の選択入力状態が通知される。また、選択入力状態は、コンソール制御部40を通じてメモリ31に送られ、メモリ31に一時記憶データが記憶される(S11)。
【0082】
次いで、各パネル51、52、用語選択ボタン53等の選択入力状態を元にした所見文作成用定義の検索が編集処理部42で実行され、各観察項目の語句が所見文作成用定義から読み出される(S12)。
【0083】
そして、読み出された各種語句が所見文作成用定義の並び順に連結され、所見文が作成される(S13)。作成された所見文は、編集処理部42からコンソール制御部40に引き渡され、コンソール制御部40の制御の下、所見文入力領域46に表示される(S14)。このように、読影医は、用語選択ボタン53を選択したり入力ボックス54に語句を入力したりしながら、所見文の入力を行う。これら一連の処理は、用語選択ボタン53が追加選択等される度に繰り返し実行される。また、読影医は、プルダウンメニュー56で確信度を選択し、入力ボックス57に所見から導かれる診断名を入力する。
【0084】
読影医は、所見文の入力を終えると、終了ボタン60を選択する(S15でyes)。終了ボタン60が選択されると、レポート18のデータの格納要求がDBアクセス部41からDBサーバ14に送信される。レポート作成端末13から格納要求を受信すると、DBサーバ14では、格納処理部63によって、レポート18のデータの格納処理が実行される。レポート18のデータは、レポートDB21に格納される。以上をもって、一回のレポート18の作成処理を終了する。
【0085】
図9において、レポート18のデータの格納処理に際して、格納処理部63によりレポート18のデータから選択入力状態、確信度、診断名のデータが抜き出される(S20)。診断名が新規であった場合(S21でyes)、格納処理部63により診断名テーブル24の当該選択入力状態、確信度の部分に行が新設され、入力回数を1回として新規の診断名が登録される(S22)。一方、既存の診断名であった場合(S21でno)は、当該選択入力状態、確信度、診断名の入力回数がインクリメントされる(S23)。
【0086】
レポート18の作成が完了すると、レポート作成端末13から、依頼医の診療科端末11に対して、作成完了通知が送信される。依頼医は、診療科端末11を通じてレポートDB21にアクセスして、作成完了通知に含まれるレポート18のアドレスに基づいて、レポート18を読み出す。診療科端末11のディスプレイ37には、レポート表示画面と、レポート18に関連する検査画像17を表示する画像表示画面が出力される。依頼医は、これらの画面を閲覧して、レポート18の内容を確認する。
【0087】
図10において、レポート18の作成中に診断名候補ボタン58が選択された場合(S30でyes)、コンソール制御部40からDBアクセス部41に検索キーが送信され、DBアクセス部41からDBサーバ14の検索処理部64に検索キーによる診断名候補の検索要求が送信される(S31)。
【0088】
そして、検索処理部64により、検索キーの選択入力状態と一致する選択入力状態の診断名、入力回数、比率が診断名テーブル24から検索・抽出され(S32)、抽出した情報が検索結果としてDBアクセス部41に送信される(S33)。
【0089】
DBアクセス部41で受信された検索結果はコンソール制御部40に引き渡される。そして、コンソール制御部40により、検索結果を元にした診断名候補表示ウィンドウ70のディスプレイ37bへの表示がなされる(S34)。
【0090】
以上説明したように、本発明は、用語選択ボタン53等の選択入力状態と診断名を関連付けて格納・管理し、検索要求に応じて診断名候補を検索・抽出して表示するので、所見文を文字認識して語句や用語を切り出す従来技術と比べて診断名候補の抽出精度を高めることができる。
【0091】
選択入力状態を検索キーとしているので、抽出される診断名候補は必ず指定した選択入力状態のものとなり、検索ミスは起こりようがない。従って、診断名候補の妥当性、信憑性に疑いを差し挟む余地はなく、読影医は安心してレポート18を作成する際の参考として診断名候補を用いることができる。
【0092】
上記実施形態では、選択入力状態を検索キーとして診断名候補を検索・抽出し、その検索結果を表示しているが、選択入力状態に加えて確信度の選択状態を検索キーとして利用してもよい。例えば、プルダウンメニュー56で確信度を選択したうえで診断名候補ボタン58をクリックした場合、プルダウンメニュー56の確信度を検索キーに含める。あるいは、プルダウンメニュー56とは別に、全ての確信度、「疑い」と「除外」の確信度等、検索する診断名の確信度を指定するGUIを設けてもよい。この場合、検索処理部64は、検索キーとして指定された選択入力状態、確信度の行の診断名候補を抽出する。診断名候補表示ウィンドウ70には指定された確信度の診断名候補が表示される。
【0093】
上記実施形態では、診断名候補ボタン58をクリックしたときに診断名候補の検索・抽出、表示を行っているが、診断名候補ボタン58を設ける代わりに、例えば用語選択ボタン53や入力ボックス54が全て選択入力されたときや、全観察項目のうちの半数以上の用語選択ボタン53や入力ボックス54が選択入力されたときに、コンソール制御部40からDBアクセス部41に診断名候補の検索を自動的に指示してもよい。但し、この場合は読影医が必要としないときにも診断名候補が表示されてしまうため、煩わしく感じるおそれがある。従って、上記実施形態のように診断名候補ボタン58を設けるか、検索の指示を手動で行うか自動とするかを選択可能に構成することが好ましい。
【0094】
なお、医療情報システム2の使用当初は、レポートDB21に格納されるレポート18のデータは数少なく、診断名テーブル24に登録される診断名の事例数も少ない。そこで、診断名テーブル24にある事例数が溜まるまで、予め用意したデフォルトの診断名を診断名候補として表示してもよい。あるいは、診断名テーブル24にある事例数が溜まったときに診断名候補ボタン58の操作を有効化してもよい。
【0095】
レポート作成端末13の起動時のユーザ認証の際等に読影医によって入力される医師IDを用いて、診断名テーブル24を読影医毎に管理してもよい。各読影医に特化した診断名候補を提示することができる。
【0096】
上記実施形態では、入力回数および比率を診断名とともに登録し、これらに応じた診断名候補の表示を行っているが、本発明はこれに限定されず、これらの代わり、またはこれらに加えて尤度を採用してもよい。
【0097】
尤度とは、選択入力状態Aの場合の診断Xの尤もらしさを表す指標である。一般にはベイズの定理より、診断Xの事後確率P(X|A)は、尤度P(A|X)、診断Xの事前確率P(X)と以下の比例関係にある。
P(X|A)∝P(A|X)*P(X)
尤度P(A|X)は、診断Xであったときに選択入力状態Aであった確率であり、診断Xであった回数Nxと、診断Xであったとき選択入力状態Aであった回数Nxaとから、
P(A|X)=Nxa/Nx
と表せる。上記式を用いて尤度を算出し、図11に示す尤度テーブル75のように、診断名、選択入力状態と関連付けて診断名DB22に格納しておく。
【0098】
肝癌のうち、肝細胞癌は約90%程度を占めるが、肝芽腫は僅かである。過去の検査で肝細胞癌の患者数が200人で、肝芽腫の患者数が5人おり、選択入力状態Aで肝細胞癌と診断された患者数が20人、肝芽腫が2人であった場合、その選択入力状態Aにおける肝細胞癌と肝芽腫の事後確率の比は2/20であり、肝芽腫は肝細胞癌の確率の1/10しかなく、診断の回数でいえば肝芽腫は極稀な診断例となってしまう。しかし、選択入力状態Aにおける肝細胞癌の診断名の尤度は(20/200)=0.1、肝芽腫では2/5=0.4であるから、選択入力状態Aの場合の尤度は肝芽腫のほうが肝細胞癌よりも上回っている。
【0099】
全体としてみれば稀であるが、選択入力状態により診断の確率が高くなる診断名の尤度は高くなる。逆に一般的な診断名で患者数も多く、特定の選択入力状態によらず入力される可能性が高い診断名の尤度は低くなる。こうした特性をもつ尤度に応じて診断名候補を抽出して提示すれば、入力回数や比率で診断名候補を提示する場合と比べて、より選択入力状態に即した診断名候補の提示を行うことができる。また、ポピュラーな診断名に比べて見落としがちな稀な診断名を読影医に意識させることができ、誤診の防止にも役立つ。
【0100】
検索処理部64は、上記実施形態と同様に診断名テーブル24から診断名を抽出した後、抽出した診断名の尤度を尤度テーブル75から抽出する。そして、診断名の検索結果とともに尤度をDBアクセス部41に送信する。
【0101】
診断名候補の表示の仕方としては、上記実施形態の入力回数や比率の場合と同様に、尤度が高い順に診断名候補を並べればよい。入力回数や比率に加えて尤度を採用する場合は、いずれを重視して検索・抽出を行うかを指定するGUIを設けたり、図12に示す診断名候補表示ウィンドウ80のように、診断名候補の横に入力回数と尤度を表示し、これらが最大の診断名候補を他と区別して表示してもよい。
【0102】
また、診断名「良性腫瘍」に対して診断名「悪性腫瘍」は悪化、その逆は良化等、各診断名の悪化、良化の関係を診断名DB22にテーブル形式で登録しておき、過去のレポート18をコピー利用した場合に、診断名候補を表示する際に悪化、良化の情報も併せて表示してもよい。この場合、検索処理部64で抽出した診断名と、過去のレポート18の診断名との悪化、良化の関係を上記のテーブルで調べ、調べた悪化、良化の情報を検索結果に盛り込んでDBアクセス部41に送信する。診断名候補とともに悪化、良化の情報を表示することで、治療効果判定といった経過観察の検査時に過去の検査との比較判断をすることができる。
【0103】
なお、診断名入力領域に追加ボタン等のGUIを設け、追加ボタンをクリックして確信度、診断名を複数選択入力可能に構成してもよい。診断名候補表示ウィンドウのチェックボックスを複数選択可能とし、複数選択した場合は診断名入力領域を自動的に追加してもよい。同様に、用語選択入力領域の「部位」、「大きさ」といった観察項目を追加して、複数の病変の様態を1つの用語選択入力領域で入力可能に構成してもよい。あるいは、用語選択入力領域自体を新規追加したり、選択入力状態をコピーして用語選択入力領域を追加することを可能としてもよい。
【0104】
上記実施形態では、レポート作成端末13にて読影医に診断名候補を提供する例を挙げたが、診療科端末11で依頼医がレポート18を閲覧中に診断名候補を提供してもよい。この場合、診療科端末11のディスプレイ画面に検索キーの入力ボックスを設け、該入力ボックスに入力された選択入力状態に対応する診断名候補を上記実施形態と同様にDBサーバ14に検索・抽出させ、検索結果を診療科端末11に送信させる。あるいは、レポート18の作成完了通知と併せて診断名候補を自動送信してもよい。診断名候補を依頼医の閲覧に供することで、レポート18に記入された診断名の根拠や妥当性を依頼医が判断することができる。また、依頼医が診断名を変更したい場合のアシストにもなる。
【0105】
上記実施形態では、入力デバイスとして、キーボードやマウスを例に説明したが、入力デバイスとしてマイクを用いて、用語選択ボタン53の選択を音声によって受け付けてもよい。
【0106】
上記実施形態では、検査科12で実施される検査を例示して説明したが、検査種はこれらに限定されるものではなく、PET(Positron Emission Tomography)検査、内視鏡検査等でもよい。また、レポート18として、検査画像17の読影結果をまとめたレポートを例示したが、検査画像以外の検査データに対する所見をまとめたレポートでもよい。検査画像以外の検査データとしては、例えば、病理検査といった検体検査や生理検査等で得られる数値データ、あるいは心電図等の波形図がある。また、異なる検査種の検査データ等、種々のデータに関する所見が記入されるレポートでもよい。
【0107】
上記実施形態では、レポート作成端末が一台の例で説明したが、レポート作成端末は複数台でもよい。また、DBサーバに診断名DBを構築し、本発明の医療情報提供装置をレポート作成端末とDBサーバで構成する例を説明したが、レポート作成端末(コンソール制御部)とDBサーバ(格納処理部、検索処理部)の機能を一体化し、診断名候補を提供する専用の装置を設けてもよい。
【0108】
また、上記実施形態のように、クライアント(レポート作成端末)と、サーバ(DBサーバ)とからなるクライアントサーバ型の情報システムの場合には、レポート編集用のクライアントプログラムは、専用のプログラムを使用してもよいし、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)といった、WWW(World Wide Web)のプロトコルに対応した汎用的なブラウザを使用してもよい。
【0109】
専用のプログラムを使用する場合には、レポート編集画面は、専用のプログラムで定義された画面データに基づいて生成される。汎用的なブラウザを使用する場合には、例えば、Webサーバにレポート編集画面のデータを格納しておき、クライアントはWebサーバにアクセスして、Webページの形式に加工されたレポート編集画面のデータをダウンロードする。クライアントのブラウザは、受信したWebページのソースコードを解釈してレポート編集画面を生成する。Webサーバは、DBサーバが兼用してもよいし、DBサーバとは別のサーバでもよい。汎用的なブラウザを使用する場合には、WebサーバのCPUが、クライアントのCPUと協働して、または単独で、編集処理部、コンソール制御部等を構成する。
【0110】
また、DBが構築されるデータ格納装置としては、DBサーバ以外でもよく、例えば、NAS(Network Attached Storage)、SAN(Storage Area Network)といったネットワークを介して接続するストレージデバイスを使用してもよい。このように、コンピュータシステムの物理構成は適宜変更が可能である。
【0111】
上記実施形態では、ネットワークとしてLANを例に説明しているが、診療科と検査科が複数の拠点に分散しているような場合には、ネットワークとしてLANとWAN(Wide Area Network)を組み合わせて使用してもよい。
【0112】
なお、上記実施形態で示したとおり、本発明は、プログラムの形態、さらにはプログラムを記憶する記憶媒体にもおよぶことはもちろんである。
【符号の説明】
【0113】
2 医療情報システム
13 レポート作成端末
14 データベース(DB)サーバ
22 診断名DB
24 診断名テーブル
30 CPU
31 メモリ
32 ストレージデバイス
34 コンソール
36 アプリケーションプログラム(AP)
37 ディスプレイ
38 入力デバイス
40 コンソール制御部
44 レポート編集画面
48 用語選択入力領域
49 診断名入力領域
53 用語選択ボタン
54 入力ボックス
56 プルダウンメニュー
57 入力ボックス
58 診断名候補ボタン
63 格納処理部
64 検索処理部
70、80 診断名候補表示ウィンドウ
75 尤度テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用レポートを構成する所見文を分解した複数の語句の一部を入力語句として選択入力させるテンプレート入力領域の選択入力状態と診断名入力領域を介して入力される診断名とを関連付けて第一データベースに格納する格納手段と、
選択入力状態を検索キーとする検索要求に応じて第一データベースを検索し、検索キーと一致、または類似する選択入力状態と関連付けられた診断名を第一データベースから抽出する検索・抽出手段と、
前記検索・抽出手段で抽出された診断名をディスプレイに表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とする医療情報提供装置。
【請求項2】
診断名入力領域には診断名の確信度を選択入力させるGUIが設けられており、
前記格納手段は確信度毎に診断名を格納し、
前記検索・抽出手段は診断名とともに確信度も抽出し、
前記表示制御手段は確信度毎に診断名を表示させることを特徴とする請求項1に記載の医療情報提供装置。
【請求項3】
前記格納手段は、医用レポートが確定保存される毎に、第一データベースに該当する診断名がある場合は入力回数をインクリメントし、ない場合はその診断名を登録するための領域を第一データベースに新設して、入力回数、または全入力回数に対する当該診断名の入力回数の比率のうち少なくともいずれかを診断名に関連付けて格納し、
前記検索・抽出手段は診断名とともに入力回数、または比率も抽出し、
前記表示制御手段は、入力回数、または比率に応じて診断名を表示させることを特徴とする請求項1または2に記載の医療情報提供装置。
【請求項4】
ある選択入力状態に対してその診断名となり得る程度を示す尤度を診断名毎に格納した第二データベースを備え、
前記検索・抽出手段は診断名とともに尤度も抽出し、
前記表示制御手段は尤度に応じて診断名を表示させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の医療情報提供装置。
【請求項5】
各診断名の悪化、良化の関係を表す第三データベースをさらに備え、
前記検索・抽出手段は、コピー利用した過去の医用レポートに記述された診断名に対する、抽出された診断名の悪化、良化の関係を第三データベースから抽出し、
前記表示制御手段は診断名とともに悪化、良化の情報を表示させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の医療情報提供装置。
【請求項6】
前記格納手段と前記検索・抽出手段は、データベースを有するサーバに構築され、
前記表示制御手段は、前記サーバとネットワーク接続されたクライアント端末に構築され、
前記サーバと前記クライアント端末は、前記検索・抽出手段への検索要求、および前記検索・抽出手段で抽出された診断名をネットワーク経由で相互に遣り取りすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の医療情報提供装置。
【請求項7】
格納手段により、医用レポートを構成する所見文を分解した複数の語句の一部を入力語句として選択入力させるテンプレート入力領域の選択入力状態と診断名入力領域を介して入力される診断名とを関連付けてデータベースに格納する格納ステップと、
検索・抽出手段により、選択入力状態を検索キーとする検索要求に応じてデータベースを検索し、検索キーと一致、または類似する選択入力状態と関連付けられた診断名をデータベースから抽出する検索・抽出ステップと、
前記検索・抽出ステップで抽出された診断名を表示制御手段によりディスプレイに表示させる表示ステップとを備えることを特徴とする医療情報提供方法。
【請求項8】
医用レポートを構成する所見文を分解した複数の語句の一部を入力語句として選択入力させるテンプレート入力領域の選択入力状態と診断名入力領域を介して入力される診断名とを関連付けてデータベースに格納する格納機能と、
選択入力状態を検索キーとする検索要求に応じてデータベースを検索し、検索キーと一致、または類似する選択入力状態と関連付けられた診断名をデータベースから抽出する検索・抽出機能と、
前記検索・抽出機能で抽出された診断名をディスプレイに表示させる表示制御機能とを、コンピュータに実現させることを特徴とする医療情報提供プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−53633(P2012−53633A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195104(P2010−195104)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】