説明

医療用インプラント、特にステントの表面に有効成分を塗布するための装置

医療用インプラント(11)の表面に有効成分を塗布するための装置を提供する。該装置はベースステーション(22)および該ベースステーションに取り付けることができる交換式のカートリッジ(10)を備え、該カートリッジ(10)が、インプラント(11)のためのホルダと、インプラント表面へ有効成分を噴霧するためのノズルとを有している。上記ベースステーション(22)は、上記ホルダおよび上記ノズルを互いに対して動かすための駆動ユニット(75)を備えている。この目的のために、上記カートリッジ(10)は、上記ホルダを有する基本的に円筒形の第1のハウジング部(14)と、上記ノズルを有する基本的に円筒形の第2のハウジング部(15)とを備えている。第1および第2のハウジング部(14、15)は、互いに嵌合するように形成され、互いに対して移動できる、かつ好ましくは回転できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用インプラントの表面に有効成分を塗布するための装置であって、ベースステーションおよび該ベースステーションに取り付けることができる交換式のカートリッジを備え、該カートリッジが、インプラントのためのホルダと、インプラント表面へ有効成分を噴霧するためのノズルとを有し、上記ベースステーションが、上記ホルダおよび上記ノズルを互いに対して動かすための駆動ユニットを備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は、WO 2004/091684 A1により公知である。
【0003】
この公知の装置ならびにその他にUS 6,395,326およびDE 202 00 223 U1により公知の装置は、ステント、すなわち人工血管を、薬剤でコーティングすることを目的としている。このようなコーティングは、インプラントの生体適合性を向上させ、それにより、例えば血液との接触面における血栓症の進行を防止できるため望ましい。
【0004】
特にステントに関して、周囲の組織が増殖して起こる再狭窄を防止するために、ステント表面をラパマイシンなどの薬剤でコーティングしてよいことも知られている。さらには、適切にコーティングされたステントを、いわば設置場所で周囲の組織を狙った薬物送達にも使用することができる。
【0005】
従来技術には、種々の有効成分でコーティングすることができるステントについて、多くの記述がある。例えば、DE 202 00 220 U1、EP 0 875 218 A2、またはEP 0 950 386 A2を参照されたい。これらのステントは、一般に、いわゆる導入システムを用いて、体内に挿入され、使用場所に設置されて開放される。この目的のために、ステントをカテーテルに装着し、このカテーテルを、カテーテルの内腔を貫通するガイドワイヤによって、いわゆるセルディンガー法に従って、該当の血管内に挿入する。
【0006】
他の医療用インプラントも、多くの場合、生体親和性である必要があるが、自身の表面そのものがそのような生体親和性を有していないため、適切な表面コーティングを必要とする。本願において、インプラントは、恒久的に患者の体内に残る人工器官だけでなく、もっとも深刻な病気、麻痺、または意識不明の患者に対する点滴注入等に使用される留置カテーテルなど、長期にわたって体内に残る他の装置も意味するものと理解される。
【0007】
公知の装置においては、有効成分が、ノズルからステントの外表面へ噴霧され、ステントの外表面に付着して乾燥する。このために、ステントの長手方向の軸に沿った、ノズルとステント間の相対移動を必要とするほか、噴霧される有効成分がステントの外周に沿って確実に分配されるように、ステントとノズル間の相対回転、あるいはインプラントに沿って移動するリング状ノズルの使用を必要とする。
【0008】
多くの点で、US 6,395,326およびDE 202 00 223 U1により公知の装置は、インプラント全般、特にステントの使用に関して、多くの点で現在の要件を満足できず、特にコーティングに関してかつてないほど頻繁に要求または所望される適応性および個別の対応性に対処できない点で、現在の要件を満足できていない。
【0009】
一形式を定めるWO 2004/091684 A1により公知の装置は、再使用可能なベースステーションと使い捨てのカートリッジとを備える2要素構成であって、該カートリッジがカートリッジ内にすでに挿入されたコーティング対象のステントとともに供給されるような構成にすることによって、上記の問題を回避している。それぞれのカートリッジには、リング状のノズルを保持し長手方向に可動するスライド式のスプレーキャリッジが存在している。カートリッジがベースステーションへ挿入されると、ベースステーションの駆動ユニットが、スプレーキャリッジに係合し、スライド式のスプレーキャリッジを動かす。
【0010】
このスライド式のスプレーキャリッジは、有効成分を保持するシリンジのための差し込み式のコネクタを有しており、この差し込み式のコネクタが、リング状のノズルと流体接続している。一方で、ベースステーションは、シリンジのプランジャのためのストッパを有する。そうすることでスライド式のスプレーキャリッジが移動すると、有効成分がステント全体に分配されると同時に、有効成分がシリンジからノズルへ運ばれる。このスライド式のスプレーキャリッジには、リング状のノズルの上流に、乾燥ノズルが存在している。乾燥ノズルが、外部から供給される、通常は無菌空気である乾燥媒体を、すでにコーティングされたステントの部位へ噴射し、コーティングを乾燥させる。
【0011】
カートリッジの前面に、インプラントのためのホルダが存在し、スライド式のスプレーキャリッジには、インプラントを覆う保護カバーのためのさらなるホルダが存在する。スライド式のスプレーキャリッジが移動すると、後者のホルダも、インプラントに対して長手方向に移動するため、噴霧処理の際に、保護カバーがインプラントから自動的に取り除かれる。
【0012】
2つのホルダのそれぞれに、ロック解除機構が設けられている。スライド式のスプレーキャリッジが、コーティング対象のインプラントが最初に挿入されていた状態の基本位置を超えて第1の前側へ移動すると、ロック解除機構が自動的にインプラントを解放する。このようにして、インプラントが自動的に解放されるということは、すなわちコーティングが終了したときにカートリッジを開く必要がなく、コーティングが完了したときに、インプラントを速やかに取り出すことができることを意味する。
【0013】
要約すると、結果としてカートリッジは、ただ1つの可動部品、すなわちスライド式のスプレーキャリッジしか含まなくても、単一の直線運動にて、シリンジの中身をインプラント表面に塗布すること、および塗布されたコーティングを乾燥させることが可能である。必要であれば、新たな薬剤を収容しているシリンジを用いてこのプロセスを繰り返すことができる。次いで、スライド式のスプレーキャリッジをさらに動かすことで、ステントが解放され、カートリッジから取り外すことが可能になる。
【0014】
このようにして、公知の装置によれば、カテーテル検査室でも無菌コーティングを実施することが可能である。カートリッジが1回使い切りであるため、大がかりな清掃を間に挟まなくても、同じベースステーションを用いて多数のインプラントを次々にコーティングすることが可能であり、かつ交差汚染の危険もない。
【0015】
しかしながら、この公知の装置も、第1には、コーティングのプロセスに比較的長い時間が必要で、コーティングの均質性が常に最適ではない点、第2には、コーティング済みのインプラントの一時保管が不可能である点から、依然としていくつかの点で欠点を抱えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上に照らし、本発明の目的は、これらの欠点が回避されるような方法で、公知の装置をさらに発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、冒頭において述べたような装置であって、カートリッジが、ホルダを有する本質的に円筒形の第1のハウジング部と、ノズルを有する本質的に円筒形の第2のハウジング部とを備え、第1および第2のハウジング部が、互いに嵌合するように形成され、互いに対して移動できる、かつ好ましくは回転できるように構成され、さらに好ましくは第1および第2のハウジング部の間が無菌密封されている装置によって、上記の目的は達成される。
【0018】
これにより、本発明の目的が十全に達成される。
【発明の効果】
【0019】
これは、本願の発明者が、カートリッジ内に移動可能に配置されるスライド式のスプレーキャリッジという原理を放棄することで、定性的により良好なコーティングを達成できるようになるだけでなく、カートリッジ内の無菌密封状態も改善されることを認識したためである。互いに移動可能な2つのハウジング部は、一種の空気ポンプとして機能することが可能で、空気はこの特定の目的のために設けられる開口部を介してのみ内部へ到達する。これらの開口部は、カートリッジに配置された滅菌フィルタを介して外界へ接続しているため、カートリッジ全体を外部から封止して、内部の無菌状態を維持することができる。
【0020】
また、2つのハウジング部間の相対移動のための駆動部は、カートリッジの内部に係合する必要がなく、両方のハウジング部に対して外部からアクセスして作用することができるため、2つのハウジング部のうちの外側のハウジング部を貫く必要がもはやない。このことも、より良好な無菌密封状態を可能にする。
【0021】
また、この無菌密封状態は、コーティングが終わった後も維持されるため、コーティング済みのインプラントをカートリッジ内に残して、カートリッジとともに無菌状態で保管することができる。したがって、インプラントを現場で個々にコーティングし、かつコーティング済みのインプラントをある程度前もって用意することが、初めて可能になる。
【0022】
さらに、2つのハウジング部を互いに対して回転させることも可能であれば、有効成分をインプラントの外周に沿って分配するために、必ずしもリング状のノズルを使用する必要はない。本発明者の発見によれば、第2のハウジング部に接続するノズルが、第2のハウジング部の回転に伴って回転するため、インプラントの外周に沿ってより効果的かつより迅速にコーティングを一様に分配できる。
【0023】
このように、この新規な装置は、WO 2004/091684 A1により公知の装置のすべての利点を有するだけでなく、より均質なコーティングを保証するとともに、コーティング済みのインプラントの保管も可能にする。
【0024】
インプラントが、自体公知の様式でカテーテルに装着されたステントであることが好ましい。
【0025】
この場合、ステントを、コーティングおよびその後の一時保管の後で迅速に埋め込むことができる。ステントがすでにステント導入システムと一体であるため、ステントについてさらなる操作は不要である。
【0026】
カートリッジが、シールおよびフィルタによって外界から封止され、内部の無菌状態が維持されていることが好ましい。
【0027】
この方策の利点は、汚染物質のカートリッジ内への侵入がより効果的に防止されるため、コーティング済みのインプラントをより長く保管できることである。すでに上述した「空気ポンプの原理」ならびに第1および第2のハウジング部の間の無菌密封構造により、静止したカートリッジへの空気の進入はいずれにせよすでに阻止されているが、外界に対する無菌状態が、本装置に必要な他の開口部に位置するシールおよびフィルタによってさらに高まる。すべてのフィルタが必ずしも滅菌フィルタである必要はなく、「空気ポンプ」の内部からの空気をフィルタ処理することが課題である場合には、一方向弁もしくは逆止弁または標準的なフィルタも使用可能である。その場合の目的は、基本的には、いかなる残余の薬剤も環境大気へ漏出しないように保証することである。
【0028】
薄膜フィルタではなくてバルブを使用する利点は、カートリッジ内の圧力がより高くなる点にあり、すなわちインプラントへの噴霧を、単に薄膜フィルタを使用する場合よりも高い圧力で行うことができる点にある。
【0029】
これに関連して、たとえ長期にわたる保管のもとでもカートリッジの内側が封止された状態を確実に維持できるよう、使用されるすべての材料が、通常は溶媒である噴霧媒体、および刺激性または毒性を有する可能性がある薬剤に対して、耐性を有していなければならないことに触れておかねばならない。
【0030】
一般に、第2のハウジング部が、有効成分のための貯蔵部として機能する交換式のシリンジのための、ノズルと流体接続している差し込み式のコネクタを有していることが好ましく、この差し込み式のコネクタが、有効成分をカートリッジ内部へ通して流入空気をフィルタ滅菌するフィルタ機構を有することが好ましい。
【0031】
この利点は、シリンジが、有効成分のための、いわば外部の貯蔵部を提供することである。このため、例えばステントなどのインプラントが挿入されたカートリッジを使用することによって、インプラントをさまざまな種類の有効成分およびさまざまな量の有効成分でコーティングすることができる。すなわち、コーティングの直前に適切なシリンジを必要量の適切な有効成分で満たし、次いでシリンジを差し込み式のコネクタへ挿入することによって、インプラントをさまざまな種類の有効成分およびさまざまな量の有効成分でコーティングすることができる。
【0032】
この差し込み式のコネクタは、フィルタ機構を有しており、該フィルタ機構によって、シリンジの挿入前はフィルタ滅菌された空気だけがカートリッジの内部に進入できる。シリンジが差し込み式のコネクタへ挿入されると、シリンジそのものによって外部に対する無菌密封状態がもたらされる。また、このフィルタ機構は、霧化に必要とされる有効成分をフィルタ滅菌するよう働くこともできる。このようなフィルタのための素材としては、例えば、親水性のポリマー膜を使用してよく、一方、圧縮空気の滅菌のための素材としては、疎水性のポリマー膜が使用される。
【0033】
ここで、例えば、圧縮空気の滅菌のためのフィルタが薬剤の滅菌のためのフィルタの外側に位置する2層構造のフィルタ機構を、上記差し込み式のコネクタが有することは可能である。この場合、シリンジが挿入されたときに、この外側のフィルタを、カートリッジの内部への有効成分の供給を妨げないように、例えば刺して穴を開ける、または押しのけることができる。
【0034】
第2のハウジング部が、シリンジのための誘導通路を有していることが好ましい。
【0035】
この利点は、シリンジが第2のハウジング部にしっかりと支えられ、最初に述べた公知の装置のようにカートリッジの外側に取り付けられるのではないということである。このことは、インプラントをコーティングした後に、シリンジが挿入されたままのカートリッジを一時的に保管できることを意味し、不注意または誤った取り扱いの結果としてシリンジが差し込み式のコネクタから引き抜かれてしまう恐れがないことを意味する。これによって、カートリッジ内にコーティング済みのインプラントをさらに一層安全に一時保管できる。
【0036】
一般に、ベースステーションが、シリンジのプランジャのためのストッパを有していることが好ましい。
【0037】
この利点は、第2のハウジング部が、当然のことながらシリンジを伴って第1のハウジング部に向かって移動するときに、基本的には冒頭で述べた装置により既に公知の様式で、プランジャがシリンジ内へ押し込まれると同時に、有効物質がカートリッジの内部へ、そしてノズルに向かって運ばれることである。
【0038】
上記差し込み式のコネクタおよび上記ノズルが、空気通路と流体接続していることが好ましく、無菌空気のジェットは、この空気通路を通ってインプラントへ噴射される。空気通路は、シリンジに対しておおむね垂直に延びてインプラントまでおおむね垂直に続き、内側開放端にノズルを形成する部位を有していることが好ましい。さらに、空気通路は、第2のハウジング部に位置する滅菌フィルタによって外部から封止されて、内部の無菌状態が維持されていることが好ましい。
【0039】
この方策の利点は、シリンジから差し込み式のコネクタに進入する薬剤が、技術的にきわめて単純ではあるが効果的な方法で霧化されて、インプラント表面に吹き付けられる噴霧ジェットが形成されることである。第2のハウジング部を、インプラントの外周に沿って、かつインプラントの全長にわたって動かすことができるため、ノズルが、第2のハウジング部の移動によって、インプラント表面のあらゆる領域へ噴霧ジェットを吹き付けることができる。噴霧ジェットの強さは、流入する無菌空気によって決定され、すなわち第2のハウジング部そのものの動きとは無関係である。これもまた、塗布されるコーティングの良好な均質性を保証する。
【0040】
上記第2のハウジング部に位置する滅菌フィルタは、吹き込まれる圧縮空気が実際に無菌であることを保証するとともに、コーティング前の保管時またはコーティング後の一時保管の際に、汚染物質がカートリッジ内に侵入することがないように保証する。
【0041】
そのような状況において、第1のハウジング部が、カートリッジの内部から流出する空気のためのフィルタ機構を有し、このフィルタ機構が、カートリッジを外部から封止し、流出する空気のためのフィルタおよび/またはバルブを備えていることが一般に好ましい。
【0042】
この場所でフィルタ滅菌が絶対に必要というわけではないが、この方策は、カートリッジから流出する空気もフィルタ処理されるというすでに述べた利点を有している。ここでの課題は、本質的には、残余の薬剤がカートリッジから環境大気へ漏出するのを防ぐことであるため、その目的のためには、滅菌フィルタの使用は必ずしも必要ではなく、標準的な薄膜フィルタも使用可能である。また、他の場所と同様に、外向き方向についてのみ空気を通す一方向弁または逆止弁を使用することによって、外部の空気がカートリッジ内へ流入するのを防止してもよい。
【0043】
駆動ユニットが、第2のハウジング部に作用するシャフトを備え、シャフトの動きによって第2のハウジング部が第1のハウジング部に対して回転でき、かつ長手方向に移動できるように、シャフトが第2のハウジング部に作用することが一般に好ましい。シャフトは、回転運動ならびに圧力および張力の負荷の下、安定な状態を維持するために、第2のハウジング部に係合するフック部を有することが好ましい。フック部の一部が、シャフトが回転した時に、誘導通路に挿入されたシリンジに係合し、それによってシャフトがカートリッジに向かって動く時に、シリンジが差し込み式のコネクタに固定されるのが好ましい。
【0044】
この方策の利点は、何ら問題なく外部から第2のハウジング部に対して作用できるきわめて簡単な駆動ユニットが使用されていることである。すでに述べたように、このことは、カートリッジの内部を外部から封止することに貢献する。というのは、駆動ユニットが2つのハウジング部のうちの一方に対して外部から作用するだけで、このハウジング部を回転させたり、長手方向に移動させたりすることができるからである。ベースステーションに設けられたシャフトは、この駆動原理を技術的に簡潔に実現したものであり、単なるねじりまたは挿入動作によるきわめて簡単な方法で、フック部を介して第2のハウジング部へ固定することも可能である。
【0045】
本発明によれば、このフック部は、さらに他の機能を有しており、シャフトがカートリッジに対して特定の角度にあるとき、誘導通路に挿入されているシリンジをカートリッジ内にさらに押し込み、差し込み式のコネクタにしっかりと固定するようにも機能する。これは、安全対策である。コーティングの開始に先立つシャフトのこの一連の動きを自動化することができ、それによってコーティングプロセスの開始前にシリンジが常に所定の位置に固定されるように保証することができる。
【0046】
さらに、ここで、シャフト内を貫通する空気供給通路があることが好ましい。この空気供給通路によって空気を空気通路へ導くことができる。
【0047】
この方策の利点は、シャフトが、第2のハウジング部を駆動するだけでなく、同時にカートリッジの内部へ圧縮空気を供給することである。この圧縮空気は、有効成分を霧化させるためにカートリッジの内部で使用される。したがって、この場合、ベースステーションがこのシャフトを介してカートリッジに作用するだけで、シャフトが、必要とされる無菌の圧縮空気を供給するとともに、シリンジが適切に固定されるように保証し、最終的には第2のハウジング部を移動および回転させるので、特に構成上の観点から有利である。
【0048】
必要な方策のすべてを保証する一連の動きが必要なすべてであるため、このように構成的にきわめて簡潔な方法で、きわめて均質なコーティングを保証することができる。
【0049】
一般に、第1のハウジング部が、インプラントのためのホルダとして第1の把持要素を有することが好ましく、第2のハウジング部に、好ましくはインプラントを覆う保護カバーを保持するための第2の把持要素が存在し、さらには、第1および/または第2の把持要素のために、第2および/または第1のハウジング部にロック解除装置が存在することが好ましい。
【0050】
この方策の利点は、第1および第2のハウジング部間の相対移動と同時に保護カバーがインプラントから取り去られ、また、コーティング後、すなわち第2のハウジング部が第1のハウジング部へ押し戻されるときには、保護カバーも戻されてインプラントを再び覆うような状態で、インプラントがカートリッジ内に保持されることである。このように、カートリッジ内のインプラントが、保護カバーによって再度保護されるので、その後カートリッジからインプラントを取り出す際にこの保護カバーが特に効果的である。
【0051】
例えば第1および第2のハウジング部が完全に嵌合したときに、各ハウジング部の把持要素が、それぞれ他方のハウジング部に設けられたロック解除装置によって解放され、インプラントをカートリッジから長手方向後方に取り出すことが可能になることが自体公知の様式で保証される。そのような状況においては、カートリッジを開く必要がない。これの1つの利点は、カートリッジ内に存在する残余の薬剤が漏出しないことである。もう1つの利点は、カートリッジを使用後に開くという選択肢を考慮する必要がないことであり、すなわちカートリッジが、外部から封止され、内部の無菌状態が確実に維持できる構成であればよいということである。
【0052】
そのような状況において、第1の把持要素が、ステントを装着したカテーテルを保持するような形状であり、第2の把持要素が、ステントを覆う保護カバーを保持する、好ましくは、保護カバーに接続し誘導通路内へ突出する、カテーテル内のスタイレットを介して保護カバーを保持するような形状であることが好ましい。
【0053】
この利点は、スタイレットをカテーテルの内腔に通した状態でカテーテルに装着された標準的なステントを使用できることであり、このようにカートリッジの内部は、標準的なステントを保持するように構成されている。
【0054】
また、一般にそのような状況において、ベースステーションが、ストッパがプランジャに当接したことを知らせるセンサ、好ましくは近接スイッチを有することが好ましい。
【0055】
この方策の利点は、第2のハウジング部が第1のハウジング部から引き出されてシリンジがストッパに当接したことをベースステーションがセンサによって感知するまでは、コーティングプロセス、例えばカートリッジの内部への圧縮空気の導入が、開始されないことである。これは、ステントが挿入されたカートリッジが、第2のハウジング部をほぼ完全に第1のハウジング部へ挿入した状態で供給され、この状態において、ノズルがステントの少しだけ上流に位置するためである。シャフトが第2のハウジング部に係合した後、プランジャがストッパに当接する位置まで、まず第2のハウジング部が第1のハウジング部から引き出されるが、この場合でもノズルが依然としてインプラントのわずかに上流に位置するような構成になっている。このため、シリンジのプランジャなどの長さの特定の変動がコーティングの品質に影響しないようになっている。
【0056】
この方策の特段の利点は、カートリッジがベースステーションに正しく挿入されているか否か、およびシャフトが第2のハウジング部をしっかりと把持している否かのいずれの判断も上記センサが担っていることである。このように、複数のセンサを追加する必要がないことが、構成上の利点である。
【0057】
さらに、本発明は、この新規な装置のためのカートリッジに関する。このカートリッジは、使い捨てを目的としたものであり、この新規な装置に関してすでに述べた特徴を有する。
【0058】
さらに、本発明は、この新規な装置のためのベースステーションに関する。このベースステーションは、再使用可能であり、この新規な装置に関してすでに述べた特徴を有する。
【0059】
新規なカートリッジと少なくとも1つのシリンジとを含むキットも、本発明の課題である。カートリッジとともに、有効成分を供給するためのシリンジもキットに含まれる。シリンジも、使い捨てを目的としたものであってよい。このキットによって、医師に対して適切なシリンジならびにカートリッジを提供できる。
【0060】
最後に、さらに本発明は、内部にインプラントを備えた状態で無菌梱包された本発明によるカートリッジに関する。インプラントは、カテーテルに装着されたステントであることが好ましい。
【0061】
この利点は、インプラントが、すでにカートリッジに挿入された状態で無菌梱包されて供給されることであり、このことは、インプラントをカテーテル検査室に保管できることを意味する。医師は、所望のインプラントを収容しているカートリッジを選んでベースステーションに挿入し、シリンジを適切な有効成分で満たしてカートリッジ内へ押し込むだけでよく、コーティングプロセスの終了まで、インプラント自体を取り扱う工程が不要である。したがって、インプラントを製造し、同じクリーンルームでカートリッジへの「取り付け」を行った際に保証されている無菌状態が維持される。
【0062】
コーティング後に、カートリッジをベースステーションから取り出して、無菌状態のまま再び保管することができる。コーティング後、カートリッジを開く必要がなく、カートリッジ内部が外部から封止されて、無菌状態が維持されているため、コーティング済みのインプラントが汚染される恐れがない。
【0063】
このようにして、コーティング前およびコーティング済みのインプラントを、一定期間十分な無菌状態である程度保管しておくことが初めて可能になる。例えば、その後の数日の間に必要となるインプラントを週に一度だけコーティングし、該当の手術日まで保管しておくことが可能であり、時間や金銭の節約になる。しかしそれだけでなく、コーティングをいわば「平穏」に実行することができる、すなわち手術中の時間的制約および緊張がない状態で実行できるため、さらなる品質上の利点をもたらす。
【0064】
しかしながら、この新規な装置によれば、手術の進行中または直前に、適切なインプラントを、必要とされる有効成分でいつでも迅速にコーティングすることも可能である。特に、場合によっては進行中の手術に関連して、当初の計画と異なるインプラントおよび/または有効成分が必要となった場合でも、迅速にコーティングすることが可能である。
【0065】
他の利点および特徴は、以下の説明および添付の図面に提示される。
【0066】
上述の特徴および後述される特徴を、記載の組み合わせで使用できることはもちろん、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせでもあるいは単独でも使用できることは言うまでもない。
【0067】
本発明の例示的な実施形態を、以下の説明において、図面を参照してさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】新規なカートリッジの概略の斜視図を示している。
【図2】新規なカートリッジが挿入された状態の新規なベースステーションの斜視上面図を示しており、シリンジのプランジャがまだストッパに当接していない状態を示す。
【図3】図2と同様に斜視上面図を示しているが、第2のハウジング部が、プランジャがストッパに当接する位置まで第1のハウジング部から引き出されている状態を示す。
【図4】図2に示した状態にある第2のハウジング部の拡大斜視図を示している。
【図5】図4と同様に拡大斜視図を示しているが、図3に示した状態を示す。
【図6】図5に相当する状態にある新規なカートリッジの概略的な縦断面を示している。
【図7】図6の拡大図で、カートリッジ内においてインプラントのコーティングが行われる領域を示している。
【図8】ベースステーションに挿入されて図5に相当する状態にあるカートリッジの概略的な側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1の10は、概略的ではあるが、インプラント11が挿入されたカートリッジを示しており、このインプラント11は、後述される様式によって有効成分でコーティングされる。この目的のために、インプラントは、脚部12によってベースステーションに挿入され、ベースステーションにしかるべく固定される。
【0070】
カートリッジ10は、第1の円筒形のハウジング部14を有しており、ハウジング部14内に、同様に円筒形である第2のハウジング部15が存在している。第2のハウジング部15は、第1のハウジング部14内において、矢印16の方向、すなわち長手方向に移動可能であり、かつ矢印17の方向に回転可能である。
【0071】
このように、第1および第2のハウジング部14、15が、一種の空気ポンプとして機能し、第2のハウジング部15が第1のハウジング部14内へ押し込まれるとき、カートリッジ10の内側の空気が押し出される。
【0072】
第2のハウジング部15は、インプラント11のコーティングに使用される有効成分を収容するシリンジのための18で示される誘導通路を有している。さらに、第2のハウジング部15は、好ましくは無菌の圧縮空気である圧縮空気をカートリッジ10の内部へ運ぶ空気通路19を有しており、この圧縮空気は、カートリッジ10の内部において、シリンジに収容されている有効成分を霧化させるために使用される。空気通路19は、第2のハウジング部15の前壁20の中央に位置しており、後述される様式で、第2のハウジング部15を第1のハウジング部14に対して移動させる働きもする。前壁20には、さらにトラップ21が設けられている。
【0073】
図2は、ヒンジ式のカバー23を有するベースステーション22の概略図を示しており、カートリッジ10の挿入後に、カートリッジ10を保持している区画24を、ヒンジ式のカバー23で覆うことができる。さらに、区画24には、インプラント11のカートリッジ10から突出した部位、すなわち関連の導入システムを装着したカテーテル、を保持する給送リール25が示されている。
【0074】
さらに、図2において、右側に、インプラントのコーティングを制御し、コーティングプロセスを確認できる操作/監視ユニット26が存在することがわかる。
【0075】
図2において、カートリッジ10が区画24に固定されており、有効成分のためのシリンジ27が、図1に示される誘導通路18にすでに挿入されていて、シリンジ27のプランジャ29が確認できる。
【0076】
このプランジャ29のためのストッパ28がベースステーションに設けられており、第2のハウジング部15が第1のハウジング部14から引き出されると、プランジャ29がストッパ28に当接する。
【0077】
第2のハウジング部15を引き出すために、ベースステーション22は、シャフト31を有している。シャフト31は、図2においては、すでに第2のハウジング部に係合している。
【0078】
シャフト31が、図3に示されているようにベースステーション22内へ引き込まれると、第2のハウジング部15が第1のハウジング部14から引き出され、プランジャ29がストッパ28に当接する。
【0079】
図4および図5は、それぞれ前壁20の領域の斜視詳細図を表しており、シャフト31が第2のハウジング部15に係合する様を示している。
【0080】
図4は、図2のプロセス状態を示しており、シャフト31が、空気通路19に係合する位置まで前進している(図1)。シャフト31は、前端にフック部32を有しており、図4では、フック部32が反時計回りに回転して、フック部32の一部30がプランジャ29上に載っている。シャフト31がさらに前方へ進むと、フック部32によってシリンジ27が誘導通路18内へ押し込まれて適切に固定される。図4においては、シリンジ27のバレルヘッド59のみ確認できる。また、バレルヘッドについては後述する。
【0081】
図4から図3のプロセス状態を示している図5へ切り替わる際には、まず、シャフト31が時計回りに180°回転して、フック部32がトラップ21に係合する。次いで、シャフト31がベースステーション22内へ引き戻されると、第2のハウジング部15が第1のハウジング部14から引き出され、プランジャ29がストッパ28に当接する。
【0082】
この状態が、図6において新規なカートリッジ10の概略的な縦断面で示されている。
【0083】
コーティングされるインプラントは、カテーテル33に装着され、保護カバー35によって覆われているステント34である。保護カバー35は、カテーテル33の内腔に挿入されたスタイレット36に接続されている。ステントを植え込む際には、図には示されていないが、慣用のガイドワイヤがこの内腔を貫通しており、輸送およびコーティングの際には、この内腔にスタイレット36を収容する。
【0084】
カテーテル33が、図6では概略的にしか示されていないが、把持要素37によって第1のハウジング部14にしっかりと保持されている。一方で、スタイレット36は、同様に概略的にしか示されていないが、第2の把持要素38によって第2のハウジング部15にしっかりと接続されている。この第2の把持要素38は、第2のハウジング部15に位置する外向きに突出したスタイレットバー39を有している。スタイレットバー39は、第2のハウジング部15内において長手方向に移動可能であり、シールリップ40によって第2のハウジング部15の内部が外部から封止され、無菌状態が維持されている。
【0085】
また、図6において、第1のハウジング部14と第2のハウジング部15との間に、カートリッジ10の内側と外側との間の無菌密封構造を形成するシールリング41が存在することが確認できる。
【0086】
さらに、第1のハウジング部14は、第2のハウジング部15が第1のハウジング部14内へ完全に押し込まれたときにスタイレットバー39を外方へ押してスタイレット36を解放する傾斜台43の形状をしたロック解除装置42を有している。
【0087】
同様に、第2のハウジング部15は、第2のハウジング部15が第1のハウジング部14内へ完全に押し込まれたときに第1の把持要素37を開いてカテーテル33を解放する傾斜台45の形状をしたロック解除装置44を有している。
【0088】
第1および第2の把持要素37、38ならびに2つのロック解除装置42および44の配置によれば、第2のハウジング部15をほぼ完全に第1のハウジング部14内へ押し込んだ状態では、把持要素37、38によってカテーテルが解放されないようになっている。第2のハウジング部15が第1のハウジング部14内へ完全に押し込まれたときにのみ、把持要素37、38が開き、コーティング済みのステント34をカートリッジ10から取り出すことができる。
【0089】
さらに、図6において、第2のハウジング部15内で長手方向に延びて、シリンジ27またはシリンジ27のプランジャを収容している誘導通路18が確認できる。誘導通路18の内側端には、シリンジ27の先端47のための差し込み式のコネクタ46が存在しており、差し込み式のコネクタは、フィルタ機構48をさらに有している。
【0090】
第2のハウジング部15内において、空気通路19が、誘導通路18と平行に延びている。空気通路19は、前壁20の領域において曲折し、そこで空気供給通路49へ変化している。空気供給通路49は、空気通路19へ挿入されたシャフト31に設けられている。さらに、図6において、フック部32がトラップ21に係合しており、これによりシャフト31の移動および回転によって第2のハウジング部15を第1のハウジング部14に対して相応に動かすことができることが理解できる。
【0091】
空気通路19には、空気供給通路49を通って供給される空気がコーティング済みのステント34に達する前に再びフィルタ滅菌されるように保証する滅菌フィルタ51が存在している。空気供給通路49を通って供給される空気は、シリンジ27の先端47に対して垂直に延びてステント34までおおむね垂直につながる空気通路19の部位52を介してステント34に達する。
【0092】
また、図6において、第1のハウジング部14が、さらにカテーテル33のための無菌の貫通部50を有しており、カートリッジ10の内部から流出する空気のためのフィルタ機構53をさらに有していることが確認できる。
【0093】
カートリッジ10の内部は、シールおよびフィルタ40、41、48、50、51、および53によって外部から封止され、内部の無菌状態が維持されている。第2のハウジング部15が第1のハウジング部14から引き出されるとき、カートリッジ10の内部に到達する空気(空気ポンプの原理による)は、フィルタ滅菌される。カートリッジ10から流出する空気は、いかなる汚染物質もカートリッジ10の内部から漏出しない程度にまで少なくともフィルタ処理される。このような空気の流出は、圧縮された空気が空気供給通路49および空気通路19を通ってカートリッジ10の内部に達したとき、または第2のハウジング部15が第1のハウジング部14内へ押し込まれるときに、常に生じる。シール40、41、50が存在するため、空気は、フィルタ機構53を通らなければ外に出られない。フィルタ機構53は、薄膜フィルタに代わって、あるいは薄膜フィルタに加えて、一方向弁または逆止弁を含んでもよい。
【0094】
次に、ステント34をコーティングする様を図7を用いて説明する。図7は、第2のハウジング部15の内部における、差し込み式のコネクタ46の領域の拡大図である。
【0095】
図7において、まず第1に、空気通路19に対して垂直に延びる部位52が、その内側開放端54において、ノズル55へ変化していることが確認できる。このノズル55によって、シリンジ27に収容された有効成分56が霧化されて噴霧ジェット57となる。この目的のために、圧縮空気が、空気通路19を通って部位52へ進む一方で、有効成分56も、プランジャ29がシリンジ27内へ移動するにつれて、部位52へ押し出される(図6)。圧縮空気が、この有効成分56を運びながら移動し、ノズル55において有効成分56を霧化させることにより、噴霧ジェット57が形成される。この噴霧ジェットによって、ステント34の表面58が有効成分56でコーティングされる。ハウジング部15を、ステント34に沿って長手方向にも、ステント34の外周に沿っても、動かすことができるため、噴霧ジェット57が、ステント34の表面58のあらゆる領域に達することができ、したがって一様で均質なコーティングが保証される。
【0096】
次に、この第1のハウジング部14に対して第2のハウジング部15が移動する様を、図3および図5の概略的な側面図を示している図8を用いて説明する。図8は、本質的には、ベースステーション22の概略的な側面断面図を示しており、カートリッジ10そのものは、輪郭のみ示されている。
【0097】
シリンジ27のうち、唯一確認できる部分がバレルヘッド59であり、すでにストッパ28に当接しているプランジャ29が、バレルヘッド59上に突出している。また、フック32がトラップ21に係合していることが確認できる。
【0098】
ベースステーション22において、ストッパ28の領域に、近接スイッチの形状をしたセンサ61が存在している。該センサ61は、ベースステーション22のケーシングの前壁63に回転可能に配置された回転ホイール62に配置されている。
【0099】
シャフト31は、この回転ホイール62の中心を貫通し、ベースステーション22の内部のスライド式のキャリッジ65に回転可能に取り付けられており、モータ66によって駆動される、すなわち回転する。シャフト31が回転すると、第2のハウジング部15がシャフト31によって駆動され、プランジャ29が当接している回転ホイール62が、プランジャ29とともに同時に回転する。
【0100】
スライド式のキャリッジ65は、空気ダクト67を有している。矢印68によって示されている空気、好ましくは無菌の圧縮空気は、空気ダクト67を通ってシャフト31の空気供給通路49へ進入することができる。
【0101】
このスライド式のキャリッジ65は、モータ71によって駆動されるシャフト69上に保持されている。このため、該モータ71の左回転または右回転によって図8のスライド式のキャリッジ65を、左方または右方へ動かすことができる。
【0102】
この上述の組立体が、ベースステーション22のベース板72と板72との間の空間74に配置され、駆動ユニット75を形成している。
【0103】
新たなカートリッジがベースステーション22に挿入されると、駆動ユニット75によって、最初にシャフト31が、フック部32がプランジャ29に掛かるまでモータ66によって回転する。次いで、スライド式のキャリッジ65が左方へ移動すると、結果としてシャフト31が、図1に示される空気通路19に進入する。この過程において、フック部32がシリンジ27のバレルヘッド59に当接してシリンジ27を第2のハウジング部15すなわち誘導通路18内へ押し込み、シリンジ27が内部の所定の位置にしっかりと固定される。
【0104】
次に、シャフト31がモータ66によって時計回りに回転し、フック部32がトラップ21に係合する。次いで、プランジャ29がストッパ28に当接したことをセンサ61が知らせるまで、スライド式のキャリッジ65が右方へ移動する。
【0105】
次いで、圧縮空気68が空気ダクト67を通って空気供給通路49へ進入する一方で、第2のハウジング部15が、2つのモータ66および71によって、第1のハウジング部14に対する長手方向の移動および回転を行うことで、インプラントが、その外周に沿って均質かつ完全にコーティングされる。
【0106】
コーティング処理が完了するやいなや、圧縮空気68がオフに切り替えられ、図8のスライド式のキャリッジ65が、第2のハウジング部15がほぼ完全に第1のハウジング部14内へ押し込まれるまで、左方へ移動する。コーティング済みのステント34を有するカートリッジ10を、この状態で一時的に保管することができる。その後、ステント34をカートリッジ10から取り出すときには、第2のハウジング部15を第1のハウジング部14内へ完全に押し込むことで、対応する把持要素37、38が解放される。この点に関し、図8においては、傾斜台43がスタイレットバー39を外方へ引き出すことだけが確認できる。
【0107】
要約すると、上述の新規な装置によれば、このように、インプラントを有効成分で均質かつ一様にコーティングすることができ、たとえカートリッジをベースステーション22から取り外しても、コーティング済みのインプラントをそのままカートリッジ内に一時的に保管することができる。
【0108】
そして、ベースステーション22を再び使用することができる。ベースステーション22を用いて別のインプラントを別の有効成分で次々にコーティングすることができ、ベースステーション22そのものは何ら汚染が生じることがない。
【0109】
インプラントは、カートリッジ10に挿入された状態で無菌梱包されて供給される。そのため、カテーテル検査室では、シリンジ27を該当の有効成分56で満たして誘導通路18に挿入し、その後にカートリッジ10をベースステーション22に挿入するだけでよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラント(11)の表面(58)に有効成分(56)を塗布するための装置であって、ベースステーション(22)および該ベースステーションに取り付けることができる交換式のカートリッジ(10)を備え、該カートリッジ(10)が、インプラント(11)のためのホルダ(37)と、インプラント表面(58)へ有効成分(56)を噴霧するためのノズル(55)とを有し、上記ベースステーション(22)が、上記ホルダ(37)および上記ノズル(55)を互いに対して動かすための駆動ユニット(75)を備えた装置であり、
上記カートリッジ(10)が、上記ホルダ(37)を有する基本的に円筒形の第1のハウジング部(14)と、上記ノズル(55)を有する基本的に円筒形の第2のハウジング部(15)とを備え、第1および第2のハウジング部(14、15)が、互いに嵌合するように形成され、互いに対して移動できる、かつ好ましくは回転できるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
第1および第2のハウジング部(14、15)の間が無菌密封されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
カートリッジ(10)が、シールおよびフィルタ(40、41、48、50、51、53)によって外界から封止され、内部の無菌状態が維持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
医療用インプラント(11)が、カテーテル(33)に装着されたステント(34)であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
第2のハウジング部(15)が、ノズル(55)と流体接続した、交換式のシリンジ(27)のための差し込み式のコネクタ(46)を有し、シリンジ(27)が、有効成分(56)のための貯蔵部として機能することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
差し込み式のコネクタ(46)が、有効成分(56)をカートリッジ(10)の内部へ通して流入空気をフィルタ滅菌するフィルタ機構(48)を有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
第2のハウジング部(15)が、シリンジ(27)のための誘導通路(18)を有することを特徴とする請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
ベースステーション(22)が、シリンジ(27)のプランジャ(29)のためのストッパ(28)を有することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
差し込み式のコネクタ(46)およびノズル(55)が、空気通路(19)と流体接続し、無菌空気のジェット(57)が該空気通路(19)を通ってインプラント(11)へ噴射されることを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
空気通路(19)が、シリンジ(27)に対しておおむね垂直に延びる部位(52)を有し、この部位が、インプラント(11)までおおむね垂直に続いて内側開放端(54)にノズル(55)を形成することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
空気通路(19)が、第2のハウジング部(15)に位置する滅菌フィルタ(51)によって外部から封止され、内部の無菌状態が維持されていることを特徴とする請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
第1のハウジング部(14)が、カートリッジ(10)の内部から流出する空気のためのフィルタ機構(53)を有し、該フィルタ機構が、カートリッジ(10)を外部から封止し、流出する空気のためのフィルタおよび/またはバルブを備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
駆動ユニット(75)が、第2のハウジング部(15)に作用するシャフト(31)を備え、シャフト(31)の動きによって第2のハウジング部(15)が第1のハウジング部(14)に対して回転(17)でき、かつ長手方向に移動(16)できることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
シャフト(31)が、回転運動ならびに圧力および張力の負荷の下、安定な状態を維持するために、第2のハウジング部(15)に係合するフック部(32)を有することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
フック部(32)の一部(30)が、シャフト(31)が回転した時に、誘導通路(18)に挿入されたシリンジ(27)に係合し、それによってシャフト(31)がカートリッジ(10)に向かって動く時に、シリンジ(27)が差し込み式のコネクタ(46)に固定されることを特徴とする請求項14、および請求項7から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
空気供給通路(49)が、シャフト(31)内を貫通し、該空気供給通路(49)によって空気を空気通路(19)へ導くことができることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項および請求項13に記載の装置。
【請求項17】
第1のハウジング部(14)に、インプラント(11)のためのホルダとして第1の把持要素(37)が存在することを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
第2のハウジング部(15)に、インプラント(11)を覆う保護カバー(35)を保持するための第2の把持要素(38)が存在することを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
第1および/または第2の把持要素(37、38)のために、第2および/または第1のハウジング部(15、14)にロック解除装置(44、42)が存在することを特徴とする請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
第1の把持要素(37)が、ステント(34)を装着したカテーテル(33)を保持するような形状であり、第2の把持要素(38)が、ステント(34)を覆う保護カバー(35)を保持する、好ましくは、保護カバー(35)に接続し誘導通路内へ突出する、カテーテル(33)内のスタイレット(36)を介して保護カバー(35)を保持するような形状であることを特徴とする請求項17から19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
ベースステーション(22)が、ストッパ(28)がプランジャ(29)に当接したことを知らせるセンサ(61)、好ましくは近接スイッチを有することを特徴とする請求項8または請求項9、および請求項9から19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項に記載の装置のためのカートリッジ。
【請求項23】
内部にインプラント(11)を備えた状態で無菌梱包され、好ましくは該インプラントがカテーテル(33)に装着されたステント(34)であることを特徴とする請求項22に記載のカートリッジ。
【請求項24】
請求項1から21のいずれか1項に記載の装置のためのベースステーション。
【請求項25】
請求項22または23に記載のカートリッジ(10)と、少なくとも1つのシリンジ(27)とを備えるキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−505565(P2010−505565A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531744(P2009−531744)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008587
【国際公開番号】WO2008/043467
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(505385239)トランスルミナ ゲー・エム・ベー・ハー (2)
【Fターム(参考)】