説明

医療用具接続具および薬剤投与具

【課題】、薬剤容器への接続作業が容易であり、内部が減圧された薬剤容器に接続しても、外気中の菌の薬剤容器内への吸引および薬剤容器内の薬剤に起因する不溶性成分の投与を防止できる医療用具接続具を提供する。
【解決手段】医療用具接続具1は、アダプター2とアダプターを収納する収納部材8とを備える。アダプターは、薬剤容器装着部31と、薬剤容器80のシール部材87を貫通可能な中空針状部33と、注入器具接続部43と、通液性フィルター12とを備え、医療用具接続具1は、菌不透過性フィルター11を有しアダプターの注入器具接続部内をフィルター11を介してのみ収納体内と連通するフィルター部9を有し、アダプターを収納した状態にて、薬剤容器への装着が可能であり、中空針状部のシール部材の刺通により、薬剤容器の内部と収納体の内部とが、菌不透過性フィルターを介してのみ連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用液体注入器具(例えば、プレフィルドシリンジ)と薬剤容器とを接続するための医療用具接続具およびプレフィルドシリンジ、薬剤容器および医療用具接続具を用いた薬剤投与具に関する。
【背景技術】
【0002】
プレフィルドシリンジとしては、薬液、薬剤溶解液などの医療用液体が充填された状態にて提供される。薬剤溶解液充填プレフィルドシリンジは、凍結乾燥製剤などの用時溶解が必要な粉末製剤を投与する際に用いられる。粉末製剤が収納された薬剤容器(バイアル)に、薬剤溶解液充填プレフィルドシリンジを接続し、シリンジ内の溶解液を薬剤容器に注入し、容器内の粉末製剤を溶解液に溶解させた後、シリンジ内に吸引することにより、投与可能となる。薬剤溶解液充填プレフィルドシリンジの粉末製剤収納薬剤容器への接続は、金属針を用いるのが一般的であるが、最近では、専用のコネクターを用いる製品も提案されている。また、投与準備作業は、医療従事者だけでなく自己注射を必要とする患者自身によって行われる場合がある。特に患者による投与準備は、汚染が危惧される環境、不安定な場所で行われる可能性が少なくない。
【0003】
特開平7−213585号公報(特許文献1)には、以下のものが開示されている。
特許文献1の混注用アダプターは、円板状のハブ11の同軸上反対側にそれぞれ中空の穿刺針12と管状のチップ装着部13が設けられており、ハブ11の外縁にはそれぞれ、穿刺針12の先端を超えてこれと同心状に延びる筒状のバイアル装着部14と、チップ装着部13の先端を超えてこれと同心状に延びる筒状のシリンジ装着部15が設けられている。そして、穿刺針12は、チップ装着部13と連通しかつ刃先121に開口する薬液通路122と、ハブ11に隣接してバイアル装着部14に設けられた除菌フィルター17付き通気口16に開口しかつ穿刺針12の刃先121に開口する気体通路123を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−213585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のものでは、混注用アダプターを内部が減圧された薬剤容器(バイアル)に接続すると、外気が、薬液通路および気体通路の両者より薬剤容器内に流入する。気体通路より流入する気体は、フィルターを通過するため、外気中の菌を含有する可能性はないが、薬液通路には、そのようなフィルターが設けられていないので、外気中の菌を薬剤容器内に吸引する可能性が高い。また、薬剤容器内には粉末状薬剤が収納されている場合が多く、収納されている薬剤の一部は、溶解性が良好でないものとなっている場合がある。しかし、特許文献1のものでは、混注用アダプターに接続されるシリンジには、そのような溶解性不良物に起因する不溶性成分も吸引され、投与されることになる。
本発明の目的は、薬剤容器への接続作業が容易であり、減圧状態となっている薬剤容器に接続しても、外気中の菌が薬剤容器内に吸引されることがなく、また、薬剤容器に収納されている薬剤に起因する不溶性成分をアダプターに接続される医療用液体注入器具内に吸引することがなく、安全な薬剤投与を可能とする医療用具接続具およびそれを備えた薬剤投与具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 開口部を有する容器本体と該容器本体の前記開口部を封止するシール部材と前記容器本体内に収納された薬剤とからなる薬剤容器の前記シール部材にてシールされた前記開口部に一端部が接続可能であり、他端部が医療用液体注入器具に接続可能であるアダプターと、前記アダプターを収納するとともに前記アダプターの前記一端側を収納する部分が開口した収納部材とを備える医療用具接続具であって、
前記アダプターは、該アダプターの一端側に設けられ、前記シール部材にてシールされた前記開口部に接続可能な薬剤容器装着部と、前記一端側に設けられ、前記薬剤容器の前記シール部材を貫通可能な刃先部を有する中空針状部と、前記アダプターの他端側に設けられ、前記中空針状部の内部流路と連通する内部流路を有し、かつ、前記医療用液体注入器具を接続可能な注入器具接続部と、前記注入器具接続部の内部流路と前記中空針状部の内部流路間または前記注入器具接続部の内部流路内もしくは前記中空針状部の内部流路内に配置された異物除去用の通液性フィルターとを備え、
前記医療用具接続具は、前記収納部材内に位置し、かつ、前記アダプターの前記注入器具接続部が設けられている他端側を少なくとも被包し、かつ菌不透過性フィルターを備え、前記アダプターの前記注入器具接続部の前記内部流路を前記菌不透過性フィルターを介してのみ、前記収納部材内と連通するフィルター部を備え、前記収納部材は、前記アダプターを収納するとともに保持し、前記医療用具接続具は、前記アダプターが前記収納部材に収納された状態にて、前記薬剤容器への装着および前記中空針状部による前記シール部材の刺通が可能であり、該中空針状部による前記シール部材の刺通により、前記薬剤容器の内部と前記収納部材の内部とが、前記アダプターの前記中空針状部および前記注入器具接続部の前記内部流路ならびに前記フィルター部の前記菌不透過性フィルターを介してのみ連通するものとなっている医療用具接続具。
【0007】
(2) 前記フィルター部は、前記アダプターから前記収納部材を離脱させたとき、前記収納部材とともに前記アダプター側から離脱するものである上記(1)に記載の医療用具接続具。
(3) 前記アダプターは、前記注入器具接続部を有する注入器具用コネクターと、前記薬剤容器装着部と、前記中空針状部と、前記注入器具用コネクターを装着させるための注入器具用コネクター装着部とを有する薬剤容器用コネクターと、前記注入器具用コネクターの前記注入器具接続部の先端部と前記薬剤容器用コネクターの前記中空針状部の後端部とを液密に接続するとともに、内部に前記通液性フィルターを備えた接続部材とを備えている上記(1)または(2)に記載の医療用具接続具。
(4) 前記医療用具接続具は、前記収納部材内に収納され、かつ、前記アダプターを保持するとともに、前記アダプターを被包する筒状保護部材を備え、前記フィルター部は、前記保護部材の開口部に装着されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療用具接続具。
(5) 前記医療用具接続具は、前記収納部材の前記開口部を封止するシール部材を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用具接続具。
(6) 前記薬剤容器は、内部が減圧されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用具接続具。
【0008】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかの医療用具接続具と、開口部を有する容器本体と該容器本体の前記開口部を封止するシール部材と前記容器本体内に収納された薬剤とからなり、前記医療用具接続具の前記アダプターの前記薬剤容器装着部に接続可能な薬剤容器と、外筒本体部と、該外筒本体部の先端部に設けられ先端が開口し、かつ、前記医療用具接続具の前記アダプターの前記注入器具接続部に接続可能なノズル部を備える外筒と、前記ノズル部を封止する封止部材と、前記外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、該ガスケットの後端に取り付けられたもしくは取付可能な押子と、前記外筒内に充填された医療用液体とを備えるプレフィルドシリンジとからなる薬剤投与具。
(8) 前記プレフィルドシリンジは、前記ガスケットに装着した前記押子を押し込み、前記外筒の先端部内に前記ガスケットが到達した時に係合し、前記押子の後退を規制する係合手段を備えている上記(7)に記載の薬剤投与具。
(9) 前記押子は、前記係合手段の係合を解除するための解除機構を備えている上記(8)に記載の薬剤投与具。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医療用具接続具は、薬剤容器のシール部材にてシールされた開口部に一端部が接続可能であり、他端部が医療用液体注入器具に接続可能であるアダプターと、アダプターを収納するとともにアダプターの一端側を収納する部分が開口した収納部材とを備える。医療用液体注入器具は、アダプターの一端側に設けられ、薬剤容器に接続可能な薬剤容器装着部と、一端側に設けられ、薬剤容器のシール部材を貫通可能な刃先部を有する中空針状部と、アダプターの他端側に設けられ、中空針状部の内部と連通し、かつ、医療用液体注入器具を接続可能な注入器具接続部と、注入器具接続部および中空針状部を通って流通する液体の通過を許容する異物除去用の通液性フィルターとを備える。さらに、医療用具接続具は、収納部材内に位置し、アダプターの注入器具接続部が設けられている他端側を少なくとも被包し、かつ菌不透過性フィルターを備え、アダプターの注入器具接続部の内部流路を菌不透過性フィルターを介してのみ、収納部材内と連通するフィルター部を備え、さらに、収納部材は、前記アダプターを収納するとともに保持する。そして、医療用具接続具は、アダプターが収納部材に収納された状態にて、薬剤容器への装着および中空針状部によるシール部材の刺通が可能であり、中空針状部によるシール部材の刺通により、薬剤容器の内部と収納部材の内部とが、アダプターの中空針状部および注入器具接続部の内部流路ならびにフィルター部の前記菌不透過性フィルターを介してのみ連通するものとなっている。
このため、アダプターを内部が減圧状態となっている薬剤容器に接続したとき、菌不透過性フィルターを通過した外気のみが薬剤容器内に吸引されるため、薬剤容器内に菌が流入することがない。そして、医療用液体注入器具(例えば、プレフィルドシリンジ)をアダプターに装着し、薬剤容器内に医療用液体(例えば、薬剤溶解液)を注入した後、再度、医療用液体注入器具内に薬剤溶解液を収納した場合に、医療用液体注入器具内には、異物除去用の通液性フィルターを通過した薬剤溶解液が収納されるため、薬剤容器に収納されている薬剤中に不溶性成分が存在していたとしても、それを医療用液体注入器具内に吸引することがなく、異物を含まない薬剤の投与を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の医療用具接続具の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線断面図である。
【図3】図3は、図2のB−B線断面図である。
【図4】図4は、図1に示した本発明の医療用具接続具を構成する部材を説明するための説明図である。
【図5】図5は、図1に示した本発明の医療用具接続具に用いられている構成部材を説明するための説明図である。
【図6】図6は、図1に示した本発明の医療用具接続具のアダプターを構成する部材を説明するための説明図である。
【図7】図7は、図1に示した本発明の医療用具接続具に用いられている薬剤容器用コネクターの正面図である。
【図8】図8は、図7に示した薬剤容器用コネクターの平面図である。
【図9】図9は、図7のC−C線断面図である。
【図10】図10は、図9のD−D線断面図である。
【図11】図11は、図7に示した薬剤容器用コネクターの斜視図である。
【図12】図12は、図1に示した本発明の医療用具接続具に用いられている注入器具用コネクターの正面図である。
【図13】図13は、図12に示した注入器具用コネクターの平面図である。
【図14】図14は、図13のE−E線断面図である。
【図15】図15は、図1に示した本発明の医療用具接続具に用いられている保護部材の筒状保護体の正面図である。
【図16】図16は、図15に示した筒状保護体の縦断面図である。
【図17】図17は、図15に示した筒状保護体の平面図である。
【図18】図18は、図1に示した本発明の医療用具接続具に用いられている保護部材のフィルター部の正面図である。
【図19】図19は、図18に示したフィルター部の平面図である。
【図20】図20は、本発明の医療用具接続具の他の実施例に用いられる収納部材の縦断面図である。
【図21】図21は、本発明の医療用具接続具の他の実施例を説明するための縦断面図である。
【図22】図22は、本発明の薬剤投与具に用いられるプレフィルドシリンジの一例の正面図である。
【図23】図23は、図22に示したプレフィルドシリンジの縦断面図である。
【図24】図24は、図22に示したプレフィルドシリンジに用いられている押子の斜視図である。
【図25】図25は、図22に示したプレフィルドシリンジの作用を説明するための説明図である。
【図26】図22は、本発明の薬剤投与具に用いられるプレフィルドシリンジの他の例の正面図である。
【図27】図27は、図26に示したプレフィルドシリンジの平面図である。
【図28】図28は、図26に示したプレフィルドシリンジの縦断面図である。
【図29】図29は、図26に示したプレフィルドシリンジに用いられている押子の斜視図である。
【図30】図30は、図26に示したプレフィルドシリンジの作用を説明するための説明図である。
【図31】図31は、本発明の医療用具接続具および薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図32】図32は、本発明の医療用具接続具および薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の医療用具接続具および薬剤投与具を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の医療用具接続具1は、開口部を有する容器本体86と容器本体86の開口部を封止するシール部材87と容器本体86内に収納された薬剤88とからなる薬剤容器80のシール部材87にてシールされた開口部に一端部が接続可能であり、他端部が医療用液体注入器具20に接続可能であるアダプター2と、アダプター2を収納するとともにアダプター2の一端側を収納する部分が開口した収納部材8とを備える。
そして、アダプター2は、アダプター2の一端側に設けられ、シール部材87にてシールされた開口部に接続可能な薬剤容器装着部31と、一端側に設けられ、薬剤容器80のシール部材87を貫通可能な刃先部を有する中空針状部33と、アダプター2の他端側に設けられ、中空針状部33の内部流路33aと連通する内部流路42aを有し、かつ、医療用液体注入器具20を接続可能な注入器具接続部43と、注入器具接続部43の内部流路42aと中空針状部33の内部流路33a間または注入器具接続部43の内部流路42a内もしくは中空針状部33の内部流路33a内に配置された異物除去用の通液性フィルター12とを備える。
また、医療用具接続具1は、収納部材8内に位置し、かつ、アダプター2の注入器具接続部43が設けられている他端側を少なくとも被包し、かつ菌不透過性フィルター11を備え、アダプター2の注入器具接続部43の内部流路42aを菌不透過性フィルター11を介してのみ、収納部材8内と連通するフィルター部9を備えている。
そして、収納部材8は、アダプター2を収納するとともに保持し、医療用具接続具1は、アダプター2が収納部材8に収納された状態にて、薬剤容器80への装着および中空針状部33によるシール部材87の刺通が可能であり、中空針状部33によるシール部材87の刺通により、薬剤容器80の内部と収納部材8の内部とが、アダプター2の中空針状部33および注入器具接続部43の内部流路33a、42aならびにフィルター部9の菌不透過性フィルター11を介してのみ連通するものとなっている。
【0012】
本発明の医療用具接続具1は、図1ないし図4に示すように、アダプター2と、アダプター2を収納する収納体6とを備える。この実施例の医療用具接続具1では、収納体6は、アダプター2を収納する収納部材8と、その開口部をシールするシール部材15とを備える。そして、収納体6内(具体的には、収納部材8内)には、フィルター部(フィルター部材)9が配置されている。また、アダプター2は、筒状保護体7を備えている。このため、フィルター部9と筒状保護体7とにより保護部が形成されているということができる。
この実施例の医療用具接続具1では、アダプター2は、図1ないし図5に示すように、薬剤容器用コネクター3と、注入器具接続部43を有する注入器具用コネクター4と、内部に通液性フィルター12を備えた接続部材5とを備えている。
薬剤容器用コネクター3は、図6ないし図11に示すように、薬剤容器装着部31と、中空針状部33と、注入器具用コネクター4を装着させるための注入器具用コネクター装着部32とを有する。
薬剤容器装着部31は、比較的大径の短い筒状部となっており、内部に、シール部材87にてシールされた薬剤容器80の開口部を収納可能となっている。また、薬剤容器装着部31の端部には、内方に突出し、薬剤容器80の開口部の下部(薬剤容器の首部の下部)と係合する爪部34a,34bを備えている。また、薬剤容器装着部31の爪部34a,34bの側部には、装着部31(爪部形成部)に易変形性を付与するためのスリット38が設けられている。そして、この実施例では、爪部34aと爪部34bは、向かい合うように設けられている。また、スリット38も向かい合うように2組設けられている。具体的には、スリット38は、4本設けられており、スリット38は、薬剤容器装着部31の上面に到達し、さらに、向かい合うスリット方向に所定長延びるものとなっている。
【0013】
そして、薬剤容器装着部31の上面は仕切面となっており、その中央部より、中空針状部33が、装着部31の開口端方向に延びるように設けられている。中空針状部33は、先端に鋭角の刃先部を有し、薬剤容器80のシール部材87を刺通可能となっている。また、刃先部の先端は、薬剤容器装着部31の開口端より突出しないものとなっている。そして、中空針状部の先端部、具体的には、刃先部の側面に側孔33bが設けられており、中空針状部33内の流路33aと外部とが連通するものとなっている。
そして、薬剤容器装着部31の上部には、注入器具用コネクター装着部32が設けられている。注入器具用コネクター装着部32は、薬剤容器装着部31の上面の閉塞面より、上方に延びる短い筒状部であり、薬剤容器装着部31より小径となっている。そして、薬剤容器装着部31の上面の閉塞面には、中空針状部33内の流路33aの端部により形成された開口を備えている。注入器具用コネクター装着部32は、後述する注入器具用コネクター4の一端側部分を収納可能となっている。また、注入器具用コネクター装着部32は、注入器具用コネクター4の側部突出部44a、44bの下部を収納する窓部36a,36bを備えている。そして、窓部36a,36bの上端部には、注入器具用コネクター4の側部突出部44a、44bに設けられた凹部45a,45bに進入し、係合する係合部35a,35bを備えている。また、窓部36a,36bを有する部分は、注入器具用コネクター4の側部突出部44a、44bを収納するための側部膨出部37a,37bとなっている。
【0014】
注入器具用コネクター4は、図6,図12ないし図14に示すように、医療用液体注入器具(具体的には、プレフィルドシリンジ)20のノズル部23が接続可能な筒状の注入器具接続部43と、この注入器具接続部43と、注入器具接続部43より下方に延びる接続部材装着用筒状部42と、注入器具接続部43を被包する外筒部41と、外筒部41の側面に向かい合うように設けられた2つの側部突出部44a、44bを備えている。そして、注入器具用コネクター4は、内部に内部流路42aを備えており。内部流路42aは、注入器具接続部43内より接続部材装着用筒状部42まで延びている。また、注入器具接続部43は、内部に医療用液体注入器具20のノズル部23を収納する収納部43aを有し、注入器具接続部43の外面には、医療用液体注入器具20のカラー部24の内面に形成された注入器具側螺合部と螺合するコネクター側螺合部を備えている。また、注入器具接続部43と外筒部41間により形成された医療用液体注入器具20のカラー部24を収納するカラー部収納部48を備えている。
そして、注入器具用コネクター4の側部突出部44a、44bの下部は、上述したように窓部36a,36bに進入し、注入器具用コネクター装着部32に設けられた係合部35a,35bは、注入器具用コネクター4の凹部45a,45bに進入しており、これにより、注入器具用コネクター装着部32からの注入器具用コネクター装着部4の離脱を規制している。さらに、注入器具用コネクター4の側部突出部44a、44bの上端部には、膨出部46a,46bが設けられており、注入器具用コネクター装着部32内での注入器具用コネクター4の回動を規制している。
【0015】
そして、注入器具用コネクター4の接続部材装着用筒状部42には、内部に異物除去用の通液性フィルター12を備えた接続部材5が装着されている。接続部材5は、図2および図3に示すように、下端部に内方に突出する環状リブを有する筒状部材であり、環状リブの上部に通液性フィルター12が配置されており、通液性フィルター12は、接続部材5の環状リブと注入器具用コネクター4の接続部材装着用筒状部42の先端とにより狭圧された状態となっている。接続部材5としては、弾性材料により形成することが好ましい。また、接続部材5の下端部は、下端部の開口が、薬剤容器用コネクター3の仕切面に形成された開口上となるように配置されている。また、接続部材5の開口を有する下端部は、注入器具用コネクター4の接続部材装着用筒状部42の先端面と薬剤容器用コネクター3の仕切面間により押圧され、注入器具用コネクター4の接続部材装着用筒状部42の先端部と薬剤容器用コネクター3の中空針状部33の後端部とを液密に接続している。なお、接続部材5の開口を有する下端部の注入器具用コネクター4の接続部材装着用筒状部42の先端面と薬剤容器用コネクター3の仕切面間による押圧は、注入器具用コネクター装着部32に設けられた係合部35a,35bと注入器具用コネクター4に設けられた側部突出部44a、44bの下部との当接により維持されている。
また、異物除去用の通液性フィルター12としては、薬剤容器内において溶解または分散しきれなかった薬剤固形物などの異物を除去可能なものが使用される。具体的には、50μm程度以上の固形物を除去可能なものが好ましい。フィルターとしては、メンブランフィルイター、メッシュ、織布、不織布等であり親水性のものが好適である。
アダプター2(薬剤容器用コネクター3、注入器具用コネクター4)の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタージエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフターレート等のポリエステルなどが好適に使用できる。
【0016】
そして、本発明の医療用具接続具1は、図1ないし図5に示すように、収納体6、具体的には、収納部材8の内部の上部に、フィルター部(フィルター部材)9が収納されており、かつ、フィルター部9は、収納部材8の内部に保持されている。
さらに、この実施例の医療用具接続具1では、アダプター2には、アダプター2の注入器具接続部43が設けられている他端側を少なくとも被包する筒状保護体7が装着されている。この実施例では、フィルター部9は、アダプターの外側面を被包する筒状保護体7の先端開口部に気密に取り付けられている。なお、筒状保護体7を設けず、フィルター部9が、アダプター2の注入器具接続部43が設けられている他端側を被包するものとしてもよく、さらに、フィルター部9が、アダプター2を保持するものであってもよい。
筒状保護体7の上端は、開口75となっており、筒状保護体7は、上端より下端まで連通したアダプター収納用の内腔部を備えている。筒状保護体7は、アダプター2の注入器具接続部が設けられている他端側を被包しかつ保持する部分を備えている。特に、この実施例では、筒状保護体7は、アダプター2の全体を被包するものとなっている。さらに、図2、図3、図15および図16に示すように、上端部に、筒状保護体7は、注入器具用コネクター4の上端部を被包するとともに保持する注入器具用コネクター保持部74を備える。そして、注入器具用コネクター保持部74の下部に、薬剤容器用コネクター3の注入器具用コネクター装着部32を収納する収納部72を有し、この収納部72の側部より突出し、薬剤容器用コネクター3の側部膨出部37a,37bを収納する収納部73a,73bを備えている。さらに、収納部72の下部に、薬剤容器用コネクター3の薬剤容器装着部31を収納する収納部71を有している。なお、収納部72および収納部73は、アダプター2(具体的には、薬剤容器用コネクター3)に密着しないものとなっている。
【0017】
そして、筒状保護体7の上端開口75には、着脱可能かつ気密にフィルター部9が取り付けられている。この実施例では、フィルター部9は、図2,図3、図18および図19に示すように、筒状部材67と、蓋部材61と、菌不透過性フィルター11とにより構成されている。そして、筒状部材67は、図2および図3に示すように、上端より若干下端側となる位置に設けられた環状リブ69を備え、菌不透過性フィルター11は、その環状リブ69上に周縁部が位置するのうに配置されている。また、蓋部材61は、下面に環状突出部64を備えている。蓋部材61と筒状部材67は、固着されるとともに、筒状部材67の環状リブ69と蓋部材61の環状突出部64とにより挟持された状態となっている。また、蓋部材61には、図2,図3および図19に示すように、開口62が設けられており、さらに、この実施例では、図19に示すように、周縁部に開口62への空気流通を確実なものとするための複数の切欠部63が設けられている。そして、フィルター部9は、上述した開口62およびフィルター11を備えることにより、フィルター部9の上方と筒状部材67間の気体の流通を可能としている。そして、本発明の医療用具接続具1では、収納部材8内に収納されたアダプター2は、フィルター部6の菌不透過性フィルター11を介してのみ、収納体内の上部空間と連通するものとなっている。
そして、このフィルター部9は、筒状保護体7の上端開口部を被包し、両者間の側部を気密に接続するものとなっているものの固着はされておらず、筒状保護体7より離脱可能となっている。このため、アダプター2より、収納部材8を離脱させたとき、フィルター部9は、収納部材8とともにアダプター(筒状保護体)より離脱し、アダプター2は、筒状保護体7のみにより被包された状態となる。
フィルター部の筒状部材67は、弾性材料にて形成されていることが好ましい。また、菌不透過性フィルター11としては、通気性を有し菌の透過を阻止でできるものであればどのようなものでもよく、例えば、メンブランフィルター、メッシュ、織布、不織布等が使用できる。
【0018】
そして、本発明の医療用具接続具1は、図1ないし図5(特に、図5)に示すように、収納体6は、筒状保護体7により被包されたアダプター2を収納する収納部材8と、その開口部をシールするシール部材15と、収納部材8内に収納された上述したフィルター部9とからなる。
収納部材8は、図1ないし図5に示すような、下端が開口した容器体であり、内部に、アダプター2を被包した筒状保護体7を収納する収納部を備えている。収納部材8は、上端が閉塞端となっており、下端が開口しており、アダプター2を、薬剤容器用コネクター3の薬剤容器装着部31側が、開口する下端側となるように収納している。このため、医療用具接続具1は、アダプター2が収納部材8に収納された状態にて、薬剤容器用コネクター3の薬剤容器装着部31を薬剤容器80に装着することが可能となっている。言い換えれば、医療用具接続具1は、アダプター2が収納部材8に収納された状態にて、薬剤容器用コネクター3の薬剤容器装着部31の中空針状部33による薬剤容器80のシール部材87への刺通が可能となっている。
【0019】
そして、この実施例では、収納部材8は、フィルター部9の収納部材8からの離脱を規制する離脱規制部を有している。このため、後述するシール部材15を収納部材より剥離させても、アダプター2は、収納部材8内に収納保持された状態を維持するものとなっている。具体的には、収納部材8は、上端より若干下端側となる部分の内面に形成された環状リブ83を備えており、この環状リブ83より上方となる部分に、フィルター部9の蓋部材61が収納されており、蓋部材61の周縁部は、収納部材8の環状リブ83と当接することにより、離脱が規制されている。なお、収納部材8のリブとしては、環状リブに限定されるものではなく、図20に示す収納部材8aのような、非連続の複数のリブ83aであってもよい。この実施例では、収納部材8は、図1ないし図5に示すように、収納部材本体部81と、その下端に設けられたフランジ部82を備え、収納部材本体部81の上部には、側部膨出部84a,84bを備えている。そして、収納部材8は、図1ないし図3に示すように、筒状保護体7の下端が露出しないように収納している。なお、この実施例の医療用具接続具1では、アダプターは、フィルター部9を介して、収納部材8に保持されているが、収納部材8は、離脱可能にアダプターを保持するものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、収納部材の内面にアダプターの側部を保持する突出部を設け、その突出部により、アダプターを離脱可能に保持してもよい。 そして、この医療用具接続具1では、収納部材8の下端開口には、シール部材15が剥離可能に固着されている。具体的には、シール部材15は、収納部材8のフランジの下端面に剥離可能にシールされている。また、シール部材15は、延出する剥離開始部15aを備えている。
収納部材8の材質としては、ある程度の強度と硬度を有することが好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン樹脂などが好適に使用できる。
シール部材15としては、基材層と基材層の表面(上面)に収納体形成材料(具体的には、収納部材8のフランジ部82の下面の形成材料)との接着性(熱融着性もしくは接着剤による接着性)を有する接着性樹脂層とを有するものが好ましい。さらに、シール部材15は、基材層の表面(下面)に、表面保護層を有してもよい。
【0020】
また、上述した医療用具接続具1では、アダプター2は、薬剤容器用コネクター3と注入器具用コネクター4と接続部材5とが別部材により構成されているが、このようなものに限定されるものではない。例えば、図21に示す実施例の医療用具接続具10のようなものであってもよい。
この実施例の医療用具接続具10と上述した医療用具接続具1との相違は、アダプターの構成およびフィルター部の構成である。この実施例では、アダプター2aは、薬剤容器用コネクターと注入器具用コネクターが一体化したものとなっている。このため、アダプター2aは、下部側に比較的大径の短い筒状部となっている薬剤容器装着部31を備えており、薬剤容器装着部31は、内部に、シール部材87にてシールされた薬剤容器80の開口部を収納可能となっている。また、薬剤容器装着部31の端部には、内方に突出し、薬剤容器80の開口部の下部(薬剤容器の首部の下部)と係合する爪部34a,34bを備えている。また、薬剤容器装着部31の爪部34a,34bの側部には、装着部31(爪部形成部)に易変形性を付与するためのスリット38が設けられている。そして、この実施例では、爪部34aと爪部34bは、向かい合うように設けられている。また、スリット38も向かい合うように2組設けられている。具体的には、スリット38は、4本設けられており、スリット38は、薬剤容器装着部31の上面に到達し、さらに、向かい合うスリット方向に所定長延びるものとなっている。
そして、薬剤容器装着部31の上面は仕切面となっており、その中央部より、中空針状部33が、装着部31の開口端方向に延びるように設けられている。中空針状部33は、先端に鋭角の刃先部を有し、薬剤容器80のシール部材87を刺通可能となっている。また、刃先部の先端は、薬剤容器装着部31の開口端より突出しないものとなっている。そして、中空針状部の先端部、具体的には、刃先部の側面に側孔33bが設けられており、中空針状部33内の流路33aと外部とが連通するものとなっている。
【0021】
そして、薬剤容器装着部31の上部には、医療用液体注入器具(具体的には、プレフィルドシリンジ)20のノズル部23が接続可能かつ中空針状部33の内部空間(流路)33aと連通する筒状の注入器具接続部43と、注入器具接続部43を被包する外筒部41とを備えている。注入器具接続部43は、内部に医療用液体注入器具20のノズル部23を収納する収納部43aを有し、注入器具接続部43の外面には、医療用液体注入器具20のカラー部24の内面に形成された注入器具側螺合部と螺合するコネクター側螺合部を備えている。また、注入器具接続部43と外筒部41間により形成された医療用液体注入器具20のカラー部24を収納するカラー部収納部48を備えている。さらに、注入器具接続部43の底面には、異物除去用の通液性フィルター12が配置されており、このフィルター12は、リング状固定部材16によりアダプター2aに固定されている。よって、フィルター12は、中空針状部33の内部空間(流路)33aの上端と注入器具接続部43の下端を区分するものとなっており、両者間を流通する液体中より固形物(異物)を除去する。異物除去用の通液性フィルター12としては、薬剤容器内において溶解または分散しきれなかった薬剤固形物などの異物を除去可能なものが使用される。よって、この実施例では、通液性フィルター12は、注入器具接続部内に配置されたもとなっている。なお、通液性フィルター12は、中空針状部内に収納されていてもよい。通液性フィルター12としては、上述したものが使用される。
【0022】
フィルター部9aは、図21に示すように、アダプター2aを保持するとともにアダプター2aの注入器具接続部43が形成されている部分(アダプター2aの上部側部分)を被包するものとなっている。このため、上述した実施例のような、アダプターの全体を被包する筒状保護体を持たないものとなっている。フィルター部9aは、アダプター2aの上部側部分外側面を被包する筒状部材17と、その上端部に気密に取り付けられた蓋部材61と、両者間に配置された菌不透過性フィルター11とを備える。筒状部材17の上端は、開口を有する天板部18を備えており、天板部18の上面に通気性フィルタ12が載置されている。筒状保護部材17は、アダプター2aの注入器具接続部が設けられている上部側を被包しかつ保持する。特に、筒状部材17は、内面に設けられた複数の環状リブ19を持ち、この環状リブ19が、アダプター2aの外周面に気密に接触するととともにアダプター2aを保持している。そして、蓋部材61は、下面に、環状突出部を備えている。蓋部材61と筒状部材17は、固着されるとともに、フィルター11は、筒状部材17の天板部18の周縁部と蓋部材61の環状突出部とにより挟持された状態となっている。また、蓋部材61には、図21に示すように、開口62が設けられており、さらに、この実施例では、周縁部に上記開口62への空気流通を確実なものとするための複数の切欠部63が設けられている。そして、蓋部材61は、上述した開口62およびフィルター11を備えることにより、蓋部材61の上方と筒状部材17の内部間の気体の流通を可能としている。そして、この実施例の医療用具接続具10においても、収納部材8b内に収納されたアダプター2aは、フィルター部9aの菌不透過性フィルター11を介してのみ、収納体内の上部空間と連通するものとなっている。
【0023】
次に、本発明の薬剤投与具について説明する。
本発明の薬剤投与具は、医療用具接続具1と、開口部を有する容器本体86と容器本体86の開口部を封止するシール部材87と容器本体86内に収納された薬剤88とからなり、かつ、医療用具接続具1のアダプター2の薬剤容器装着部31に接続可能な薬剤容器80と、外筒本体部22と、外筒本体部22の先端部に設けられ先端が開口し、かつ、医療用具接続具1のアダプター2の注入器具接続部43に接続可能なノズル部23を備える外筒21と、ノズル部23を封止する封止部材28と、外筒21内に摺動可能に収納されたガスケット90と、ガスケット90の後端に取り付けられたもしくは取付可能な押子50と、外筒21内に充填された医療用液体29とを備えるプレフィルドシリンジ20とにより構成されている。
【0024】
医療用具接続具としては、上述したすべての実施例のものが好適に使用できる。
薬剤容器80としては、開口部を有し、内部に薬剤88を収納可能なものであり、用いられている医療用具接続具1のアダプター2の薬剤容器装着部31に接続可能なものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、硬質もしくは半硬質合成樹脂製容器、ガラス容器などが使用される。開口部をシールするシール部材87としては、中空針状部33による穿刺(刺通)が可能なものであればどのようなものでもよい。シール部材としては、例えば、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴム、スチレンブタージエンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
薬剤としては、プレフィルドシリンジ内に充填される医療用液体(具体的には、溶解液)に溶解するものであれば、粉末状薬剤、凍結乾燥薬剤、固形状薬剤、液状薬剤などどのようなものであってもよいが、特に、本発明では、液剤化が難しい薬剤を用いる場合に有効である。薬剤としては、例えば、タンパク製剤、抗腫瘍剤、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリンのような抗血栓剤、インシュリン、抗生物質、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤等が挙げられる。
【0025】
また、薬剤容器80としては、内部が減圧されていることが好ましい。
プレフィルドシリンジ20は、図22ないし図25に示すように、外筒本体部22と、外筒本体部22の先端部に設けられ先端が開口し、かつ医療用具接続具1のアダプター2の注入器具接続部43への接続が可能なノズル部23を備える外筒21と、ノズル部23を封止する封止部材28と、外筒21内に摺動可能に収納されたガスケット90と、ガスケット90の後端に取り付けられたもしくは取付可能な押子50と、外筒21内に充填された医療用液体29とからなる。
外筒21は、透明もしくは半透明材料により、必要に応じて、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成された筒状体である。外筒21は、外筒本体部22と、外筒本体部22の先端部に設けられたノズル部23と、外筒本体部22の後端部に設けられたフランジ26を備える。
【0026】
外筒本体部22は、ガスケット90を液密かつ摺動可能に収納するほぼ筒状の部分であり、ノズル部23は、外筒本体部22より小径の筒状部となっている。フランジ26は、外筒本体部22の後端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジは、向かい合う幅広となった2つの把持部を備え、さらに、把持部の先端面側には、複数のリブが形成されている。ノズル部23は、ISO規格に適合したノズル部への接続部を有する医療用具への接続が可能な形態となっている。また、このシリンジでは、ノズル部23を被包するカラー部24を備えている。そして、カラー部24には、内面に、上述した注入器具接続部43の外面に形成されたコネクター側螺合部と螺合可能なカラー部側螺合部25を備えている。
外筒21の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタージエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフターレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0027】
ガスケット90は、ほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブ(この実施例では2つ、2つ以上であれば、液密性と摺動性を満足できれば適宜数としてもよい)を備え、これらリブが、外筒21の内面に液密に接触する。また、ガスケット90の先端面は、外筒21の先端内面に当接した時に、両者間に極力隙間を形成しないように、外筒21の先端内面形状に対応した形状となっている。
ガスケット90の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴム、スチレンブタージエンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
また、この実施例のプレフィルドシリンジ20では、ガスケット90内に押子装着用部材92が収納されている。
押子50は、先端部にガスケット90内に収納された押子装着用部材92に装着可能な先端部52を有し、先端部52の先端には、押子装着用部材92と係合する係合部56が設けられている。また、押子50は、断面十字状の軸方向に延びる本体部51と、後端部に設けられた押圧用の円盤部53と、本体部の途中に設けられたリブを備えている。
プレフィルドシリンジ20内に充填される医療用液体29としては、注射用蒸留水、生理食塩水などの薬剤溶解液、さらには、薬剤(例えば、ビタミン剤、ミネラル類)を含有するとともに、薬剤容器内の粉末製剤の溶解が可能な薬液でもあってもよい。
【0028】
そして、この実施例におけるプレフィルドシリンジ20は、ガスケット90に装着した押子50を押し込み、外筒21の先端部内にガスケット90が到達した時に係合し、押子の後退を規制する係合手段を備えている。
具体的には、押子50は、本体部51の後端より所定長先端側となる位置に設けられた外方に突出する突起54を備えている。突起54は、少なくとも向かい合うように2つ設けられている。なお、突起54は、2つ以上(例えば、4つ)設けてもよい。そして、外筒21は、基端開口より若干先端側となる部位の内面に設けられたリブ27を備えている。このリブ27と上記突起54により、上記の押子の後退を規制する係合手段が構成されている。外筒21のリブ27は、環状リブであることが好ましく、環状リブの後端面は、突起を誘導するための傾斜面となっていることが好ましい。同様に、押子50の突起54の先端面は、傾斜面となっていることが好ましい。なお、リブ27と突起54の係合は、押子50を引くことにより解除するものとなっている。つまり、押子の後退を規制する係合手段は、規制解除可能なものとなっている。
【0029】
なお、プレフィルドシリンジとしては、図26ないし図30に示すようなものであってもよい。このプレフィルドシリンジ20aと上述したプレフィルドシリンジ20との相違は、押子50aに設けられた押子の後退を規制する係合手段の解除手段の有無のみである。この実施例では、解除機構は、押子51の突起部54付近を押し下げる機能を備えた操作部により形成されている。具体的には、押子50aは、押圧部53より若干先端側となる部位に設けられた係合解除手段を備えている。係合解除手段は、本体部51の基端部より、突起54の形成部を越えて延びるスリット57と、突起部54より基端側に延びる棒状部56と、棒状部56の端部に設けられた操作部55とを備えている。このため、図30のように、外筒21のリブ27と押子50の突起54とが係合した状態において、操作部55を押すことにより、押子51の突起部54付近が押し下げられ、両者の係合が解除するものとなっている。
【0030】
次に、本発明の医療用具接続具および薬剤投与具の作用を図1ないし図3、図31および図32を用いて説明する。
最初に医療用具接続具1より、シール部材15を剥離する。この状態では、収納部材8内に、アダプター5が収納され保持された状態となっている。そして、その状態のまま、アダプター2の薬剤容器装着部31に、薬剤容器80を接続する。これにより、アダプター2の中空針状部33は、薬剤容器80の開口部をシールするシール部材87を穿刺する。そして、薬剤容器80内が減圧されている場合には、外気が、収納部材8の内部周縁を通り、収納部材8の内部上部より、フィルター部9の開口および菌不透過性フィルター11、アダプター2の中空針状部33の内部流路33aおよび注入器具接続部43の内部流路42aを通り、薬剤容器80内に流入する。よって、薬剤容器80へのアダプター2の装着作業時に、薬剤容器内への菌の流入を防止する。そして、薬剤容器80が装着されたアダプター2より、収納部材8を離脱させる。この収納部材8の離脱により、アダプター2を被包する筒状保護体7より、フィルター部9が離脱し、アダプター2は、筒状保護体7のみにより外側面が被包され、注入器具接続部43が露出した状態となる。そして、図32に示すように、アダプター2の注入器具接続部43にプレフィルドシリンジ20を接続し、押し込み、シリンジ内の医療用液体29を薬剤容器80内に注入する。そして、このとき、図32に示すように、外筒21のリブ27と押子50の突起54とが係合することにより、押子の後退は規制された状態となり、その状態にて、薬剤容器80を振ることにより、薬剤88と医療用液体29とを混合し、薬液を調製する。そして、押子50を引くことにより、薬剤容器80内にて調製された薬液をシリンジ内に吸引することにより、投与準備が終了する。なお、吸引時には、調製された薬液は、異物除去用の通液性フィルタ12を通過した後、シリンジ内に吸引されるので、シリンジ内に薬剤不溶物等の異物を吸引することがない。
【符号の説明】
【0031】
1 医療用具接続具
2 アダプター
3 薬剤容器用コネクター
4 注入器具用コネクター
5 接続部材
6 収納体
7 筒状保護体
8 収納部材
9 フィルター部
10 医療用具接続具
11 菌不透過性フィルター
12 通液性フィルター
20 プレフィルドシリンジ
21 外筒
50 押子
80 薬剤容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器本体と該容器本体の前記開口部を封止するシール部材と前記容器本体内に収納された薬剤とからなる薬剤容器の前記シール部材にてシールされた前記開口部に一端部が接続可能であり、他端部が医療用液体注入器具に接続可能であるアダプターと、前記アダプターを収納するとともに前記アダプターの前記一端側を収納する部分が開口した収納部材とを備える医療用具接続具であって、
前記アダプターは、該アダプターの一端側に設けられ、前記シール部材にてシールされた前記開口部に接続可能な薬剤容器装着部と、前記一端側に設けられ、前記薬剤容器の前記シール部材を貫通可能な刃先部を有する中空針状部と、前記アダプターの他端側に設けられ、前記中空針状部の内部流路と連通する内部流路を有し、かつ、前記医療用液体注入器具を接続可能な注入器具接続部と、前記注入器具接続部の内部流路と前記中空針状部の内部流路間または前記注入器具接続部の内部流路内もしくは前記中空針状部の内部流路内に配置された異物除去用の通液性フィルターとを備え、
前記医療用具接続具は、前記収納部材内に位置し、かつ、前記アダプターの前記注入器具接続部が設けられている他端側を少なくとも被包し、かつ菌不透過性フィルターを備え、前記アダプターの前記注入器具接続部の前記内部流路を前記菌不透過性フィルターを介してのみ、前記収納部材内と連通するフィルター部を備え、前記収納部材は、前記アダプターを収納するとともに保持し、前記医療用具接続具は、前記アダプターが前記収納部材に収納された状態にて、前記薬剤容器への装着および前記中空針状部による前記シール部材の刺通が可能であり、該中空針状部による前記シール部材の刺通により、前記薬剤容器の内部と前記収納部材の内部とが、前記アダプターの前記中空針状部および前記注入器具接続部の前記内部流路ならびに前記フィルター部の前記菌不透過性フィルターを介してのみ連通するものとなっていることを特徴とする医療用具接続具。
【請求項2】
前記フィルター部は、前記アダプターから前記収納部材を離脱させたとき、前記収納部材とともに前記アダプター側から離脱するものである請求項1に記載の医療用具接続具。
【請求項3】
前記アダプターは、前記注入器具接続部を有する注入器具用コネクターと、前記薬剤容器装着部と、前記中空針状部と、前記注入器具用コネクターを装着させるための注入器具用コネクター装着部とを有する薬剤容器用コネクターと、前記注入器具用コネクターの前記注入器具接続部の先端部と前記薬剤容器用コネクターの前記中空針状部の後端部とを液密に接続するとともに、内部に前記通液性フィルターを備えた接続部材とを備えている請求項1または2に記載の医療用具接続具。
【請求項4】
前記医療用具接続具は、前記収納部材内に収納され、かつ、前記アダプターを保持するとともに、前記アダプターを被包する筒状保護部材を備え、前記フィルター部は、前記保護部材の開口部に装着されている請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用具接続具。
【請求項5】
前記医療用具接続具は、前記収納部材の前記開口部を封止するシール部材を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用具接続具。
【請求項6】
前記薬剤容器は、内部が減圧されている請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用具接続具。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかの医療用具接続具と、開口部を有する容器本体と該容器本体の前記開口部を封止するシール部材と前記容器本体内に収納された薬剤とからなり、前記医療用具接続具の前記アダプターの前記薬剤容器装着部に接続可能な薬剤容器と、外筒本体部と、該外筒本体部の先端部に設けられ先端が開口し、かつ、前記医療用具接続具の前記アダプターの前記注入器具接続部に接続可能なノズル部を備える外筒と、前記ノズル部を封止する封止部材と、前記外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、該ガスケットの後端に取り付けられたもしくは取付可能な押子と、前記外筒内に充填された医療用液体とを備えるプレフィルドシリンジとからなることを特徴とする薬剤投与具。
【請求項8】
前記プレフィルドシリンジは、前記ガスケットに装着した前記押子を押し込み、前記外筒の先端部内に前記ガスケットが到達した時に係合し、前記押子の後退を規制する係合手段を備えている請求項7に記載の薬剤投与具。
【請求項9】
前記押子は、前記係合手段の係合を解除するための解除機構を備えている請求項8に記載の薬剤投与具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−224223(P2011−224223A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98327(P2010−98327)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】