説明

医療用多層チューブ

【課題】 医療用多層チューブを構成する各層に応じた好ましい特性を備えた材料を用いて、複数の層を容易に成形できる医療用多層チューブを提供すること。
【解決手段】 スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料と、ポリウレタンからなる成形材料とを押出成形により同時に成形して一体の医療用多層チューブ10を成形した。ポリウレタンからなる成形材料で外層12を形成し、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料で内層11を形成した。鉱物油として、パラフィン系オイルを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体に薬液や血液等の液体を供給したり、患者の体から排液を排出したりする際に用いられる医療用多層チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療用チューブを成形するための材料としては、ポリウレタン樹脂やシリコーン樹脂が一般的に用いられている。ポリウレタン樹脂からなる医療用チューブは、挿入性に優れるとともに裂け難く、シリコーン樹脂からなる医療用チューブは、柔軟性があるなど、それぞれに特性があり、状況に応じてそれぞれどちらかが選択される。しかしながら、ともにすべての点で優れたものではないため、異なる性質を備えた複数の材料で複数の層を形成することにより互いの欠点を補うようにした医療用多層チューブが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この医療用多層チューブ(カテーテル)は、長軸方向に配向された熱可塑性高分子からなる外層と、配向されてない熱可塑性高分子からなる内層との2層で構成されている。そして、外層を構成する熱可塑性高分子としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、ナイロン系、フッ素系エラストマーなどの材料が利用され、内層を構成する熱可塑性高分子としては、前述した外層を構成する各材料や、SEBS等のスチレン系エラストマー、ポリ酢酸ビニル、水添スチレンブタジエンラバーなどが利用されている。また、外層を構成する材料と内層を構成する材料との相溶性が良くない場合には、外層と内層との間に、接着中間層を設けて外層と内層とを接着することも行われている。
【特許文献1】特開2004−33354号公報
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、前述した医療用多層チューブでは、外層を構成する材料を、内層を構成する材料よりも融点の高いものにして、共押出し成形し、延伸したのちに、さらに双方の融点の間の温度で加熱処理することによって、外層を構成する熱可塑性高分子を延伸配向状態にしている。このため、融点に適度な差がある二つの材料を選ぶ必要が生じ、適正な材料を組み合わせることが難しいという問題や、製造が面倒になるという問題がある。また、二層以上の層を備えた医療用多層チューブの成形は、さらに困難になる。さらに、相溶性が良くない材料を選んで層間に接着中間層を設ける場合にも、製造が面倒になるという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものでその目的は、医療用多層チューブを構成する各層に応じた好ましい特性を備えた材料を用いて、複数の層を容易に成形できる医療用多層チューブを提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る医療用多層チューブの構成上の特徴は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料と、ポリウレタンからなる成形材料とを含む複数の成形材料を押出成形により同時に成形して、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料で構成される層と、ポリウレタンからなる成形材料で構成される層とを接面させた状態で多層からなる一体のチューブにしたことにある。
【0007】
このように構成した医療用多層チューブは、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料(以下、請求項の記載に関連する部分以外では、SEBSブレンド材料と記す。)からなる層と、ポリウレタンからなる層とを備えている。そして、SEBSブレンド材料は柔軟性を備えるとともに成形性がよく、ポリウレタンは体温軟化性等の生体適合性に優れるとともに裂け難いという特性を備えている。
【0008】
また、SEBSブレンド材料とポリウレタンとは、押出成形可能な温度、例えば、200℃程度で良好な相溶性を備えている。したがって、SEBSブレンド材料とポリウレタンとで医療用多層チューブを成形する場合には、接着中間層が不要になるとともに、単に二つの成形材料を同時に押出成形するだけで済むため成形が容易になる。また、SEBSブレンド材料からなる層と、ポリウレタンからなる層とをその特性に応じて外層または内層に配置することにより、使用目的に適合した医療用多層チューブを得ることができる。
【0009】
また、本発明に係る医療用多層チューブの他の構成上の特徴は、ポリウレタンからなる成形材料で外層を形成し、外層の内周側に、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料からなる層を形成したことにある。これによると、裂け難く生体適合性に優れる外層を備えた医療用多層チューブを得ることができる。
【0010】
また、本発明に係る医療用多層チューブのさらに他の構成上の特徴は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料からなる層の内周側に、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる層を形成したことにある。このポリエチレンまたはポリプロピレンとSEBSブレンド材料とは、押出成形可能な温度で良好な相溶性を備えているため、三層からなる医療用多層チューブを容易に成形できる。また、ポリエチレンまたはポリプロピレンは、耐薬品性を備えているため、内部に薬液等を流す医療用多層チューブの内層を構成する材料として適している。
【0011】
また、本発明に係る医療用多層チューブのさらに他の構成上の特徴は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料を、重量比が20〜40%のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体と、重量比が30〜45%の鉱物油と、合計重量比が15〜50%のポリプロピレンとポリウレタンとで構成したことにある。これによると、より好ましい特性を備えたSEBSブレンド材料からなる層を形成することができる。特に、鉱物油の重量比を30〜45%にすることにより、柔軟性に優れた医療用多層チューブを得ることができる。
【0012】
また、本発明に係る医療用多層チューブのさらに他の構成上の特徴は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料に含まれるポリプロピレンとポリウレタンとの重量比を、それぞれ1%以上にしたことにある。この場合のポリプロピレンとポリウレタンとの比率は、SEBSブレンド材料からなる層をどの部分に配置するかによって適宜変更する。これによって、SEBSブレンド材料からなる層を配置される層に応じた特性を備えたものにすることができる。
【0013】
また、本発明に係る医療用多層チューブのさらに他の構成上の特徴は、鉱物油が、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルまたは高級脂肪酸のいずれかであることにある。これによると、鉱物油が軟化剤としての優れた効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る医療用多層チューブ10の断面を示している。この医療用多層チューブ10は、SEBSブレンド材料(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料)からなる内層11と、内層11の外周に形成されたポリウレタン樹脂からなる外層12とで構成されている。内層11を構成するSEBSブレンド材料としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体の重量比が20〜40%、鉱物油の重量比が30〜45%、ポリプロピレンとポリウレタンとの合計重量比が15〜50%のものが用いられ、ポリプロピレンとポリウレタンとの重量比は、それぞれ1%以上に設定される。
【0015】
この場合の医療用多層チューブ10の内層11は、重量比が30%のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、重量比が38%の鉱物油、重量比がそれぞれ16%のポリプロピレンとポリウレタンとで構成されている。また、SEBSブレンド材料の鉱物油としては、パラフィン系オイルが用いられている。医療用多層チューブ10は、外径が2mm〜5mm、内径が0.5mm〜3mmのチューブで構成され、内層11の厚みは、0.5mm〜1mm、外層12の厚みは、1mm〜4mmに設定されている。また、内層11を構成するSEBSブレンド材料としてはショア硬度が30A〜70Aのものが用いられ、外層12を構成するポリウレタン樹脂としてはショア硬度が70A〜70Dのものが用いられている。すなわち、内層11よりも外層12の方がやや硬質の材料で構成されている。
【0016】
このように構成された医療用多層チューブ10は、SEBSブレンド材料と、ポリウレタンからなる軟質の熱可塑性樹脂材料とを、図2に示した押出成形機Aを用いて成形することによって得られる。この押出成形機Aは、金型20と、一対の押出機20a,20bとを備えている。金型20は、後部(図2の左側)に配置された後部ピンホルダ21と、中央側に配置された円錐筒状の前部ピンホルダ22と、前部ピンホルダ22の外周側に配置された円錐筒状のブッシング23と、ブッシング23の外周側および前方(図2の右側)にかけて配置されたブロック状のブッシングホルダ部24とを備えている。前部ピンホルダ22およびブッシング23は、それぞれ後部が大径で前部が細径に形成されている。
【0017】
また、ブッシングホルダ部24の前部側中央には凹部が形成されており、この凹部に環状のブッシング25が配置されている。そして、後部ピンホルダ21、前部ピンホルダ22、ブッシング23、ブッシングホルダ部24およびブッシング25の内部にピン26が設置されている。後部ピンホルダ21は、円筒状のピン保持部21aの後端外周に、外周側に向って突出するフランジ状の固定板21bを設けて構成されている。ピン保持部21aの内部にピン26が設置されており、ピン26の後部は、ピン保持部21aに支持されている。
【0018】
前部ピンホルダ22は、円錐筒状のピン保持部22aの後端外周に、外周側に向って突出するフランジ状の固定板22bを設けて構成されている。この前部ピンホルダ22は、固定板22bを固定板21bの前面に重ねてボルト27aで固定することにより、後部ピンホルダ21の前部に設置されている。ピン保持部22aは、略一定の厚みで前後に延びているが、先端部は、前方に行くほど徐々に薄肉に形成されている。すなわち、ピン保持部22aの先端内周面は直径が略一定になって前後方向に延びており、この先端内周面でピン26の前部が支持されている。
【0019】
ブッシング23は、円錐筒状の材料通路形成部23aの後端外周に、外周側に向って突出するフランジ状の固定板23bを設けて構成されている。このブッシング23は、固定板23bを固定板22bの前面に重ねてボルト27bで固定することにより、材料通路形成部23aの外周に設置されている。材料通路形成部23aは、後部が肉厚に形成され、後部から前方に行くほど徐々に薄肉になっている。また、材料通路形成部23aの一方(図2の上方)には、ブッシングホルダ部24に形成された材料通路24aに連通する材料通路23cが外周面から内周面に貫通して形成されており、この材料通路23cの先端は、ピン保持部22aの外周面に達している。
【0020】
ピン保持部22aの前部側部分の外周面と、材料通路形成部23aの前部側部分の内周面との間には、円錐筒状の材料通路28aが形成されており、材料通路23cの先端は、材料通路28aに連通している。また、材料通路形成部23aの他方(図2の下方)の外周面には、ブッシングホルダ部24に形成された材料通路24bの先端が達している。ブッシングホルダ部24の後面中央には、材料通路形成部23aの外周面に対応する円錐状の凹部が形成されており、ブッシング23は、材料通路形成部23aを円錐状の凹部内に入れ、固定板23bをブッシングホルダ部24の後面に重ねてボルト27cで固定することにより、ブッシングホルダ部24に固定されている。
【0021】
また、ブッシングホルダ部24の一方には、押出機20aから供給される材料を受ける材料入口24cが形成され、ブッシングホルダ部24の他方には、押出機20bから供給される材料を受ける材料入口24dが形成されている。材料入口24cは、材料通路24aに連通し、材料入口24dは、材料通路24bに連通している。材料通路形成部23aの前部側部分の外周面と、ブッシングホルダ部24の前部側部分の内周面との間には、円錐筒状の材料通路28bが形成されており、材料通路24bの先端は、材料通路28bに連通している。
【0022】
そして、押出機20aから材料入口24c、材料通路24a、材料通路23cおよび材料通路28aを介して供給される材料は、内層11の成形に用いられ、押出機20bから材料入口24d、材料通路24bおよび材料通路28bを介して供給される材料は、外層12の成形に用いられる。また、ブッシングホルダ部24の前面中央には、円形の凹部が形成され、この凹部に、ブッシング25が設置されている。ブッシング25は、ブッシングホルダ部24の凹部内に配置される大径環状の固定部25aと、固定部25aの前面中央から前方に突出する小径環状の突出部25bとで構成されている。
【0023】
そして、固定部25aの前面外周側とブッシングホルダ部24の前面とに環状の固定板29を重ね、この固定板29をボルト27dでブッシングホルダ部24に固定することにより、固定部25aがブッシングホルダ部24と固定板29とで挟まれた状態で、ブッシング25は固定されている。また、ブッシング25の中央部には、前後に貫通する穴部が形成されており、この穴部の内周面と、ピン26の先端部の外周面との間には、材料通路28aと材料通路28bとが合流する合流材料通路28が形成されている。すなわち、材料通路28aから供給されてくる材料は合流材料通路28の内周側を流れ、材料通路28bから供給されてくる材料は合流材料通路28の外周側を流れる。
【0024】
材料通路28aと材料通路28bとは、ブッシング25の後面よりもやや後方で合流しており、合流材料通路28におけるブッシング25の後面よりも後方の部分は前後方向に略同一の直径をした円筒状に形成されている。また、合流材料通路28における固定部25aの内部に位置する部分は、後部(上流)から前部(下流)に向って徐々に直径が小さくなる円錐筒状に形成され、合流材料通路28における突出部25bの内部に位置する部分は、略同一の小さな直径をした円筒状に形成されている。
【0025】
ピン26は、後部から前部に向ってそれぞれ位置する被固定部26a、ストレート部26b、テーパ部26cおよび細径部26dで構成されている。被固定部26aは、後部ピンホルダ21のピン保持部21aと、前部ピンホルダ22のピン保持部22aの先端部とに固定されている。このピン保持部22aの先端内周に対向する部分は他の部分よりも細径にされて、その部分にピン保持部22aの一部が嵌合している。ストレート部26bは、被固定部26aの前端から前方に向かって延びる軸方向の長さが短い円柱状に形成され、テーパ部26cは、ストレート部26bの前端から前方に向かって延び前端側が徐々に細くなった円錐台状に形成されている。
【0026】
また、細径部26dは、テーパ部26cの前端から前方に向って延びる細径の棒状に形成され、その先端面はブッシング25の前面と前後方向で同じ位置に位置している。材料通路28aと材料通路28bとは、ストレート部26bの外周後部側で合流しており、ストレート部26b、テーパ部26cおよび細径部26dの外周面と、ブッシングホルダ部24およびブッシング25の内周面との間に、合流材料通路28が形成されている。
【0027】
このように構成された押出成形機Aを用いて、医療用多層チューブ10を成形する場合には、まず、押出機20aにSEBSブレンド材料からなる成形材料を投入するとともに、押出機20bにポリウレタン樹脂からなる成形材料を投入する。つぎに、金型20を適正温度(200℃程度)に加熱にしたのちに、押出機20a,20bに投入した成形用材料をそれぞれ押出機20a,20bの加熱シリンダーで200℃程度に加熱しながらスクリューで送り出して、材料入口24c,24d内に充填する。
【0028】
さらに、押出機20a,20bからそれぞれ成形用材料を送り出して、SEBSブレンド材料からなる成形用材料を材料通路24aおよび材料通路28aを介して合流材料通路28に移動させ、ポリウレタン樹脂からなる成形材料を材料通路24bおよび材料通路28bを介して合流材料通路28に移動させていく。合流材料通路28に入ったSEBSブレンド材料からなる成形用材料は、合流材料通路28内の内周側を通過しながら直径が略同一の円筒状に形成されたのちに徐々に直径が小さくなり合流材料通路28の下流端に向って移動する。
【0029】
ポリウレタン樹脂からなる成形材料は、合流材料通路28内の外周側を通過しながら直径が略同一の円筒状に形成されたのちに徐々に直径が小さくなり合流材料通路28の下流端に向って移動する。その間に、両成形用材料は、接合されて二層からなる細径のチューブに形成され、合流材料通路28の下流端で外部に押し出される。外部に押し出されたチューブは、冷却され略相似形のまま40〜70%程度に収縮したのちに医療用多層チューブ10として使用される。この押出成形の際、両成形用材料は、適度な温度に加熱されて材料通路28a,28bから合流材料通路28に移動するまでに徐々に変形していくため、無理なく成形されていく。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る医療用多層チューブ10は、SEBSブレンド材料からなる内層11と、ポリウレタン樹脂からなる外層12との二層で構成されている。このため、医療用多層チューブ10は、内層11が柔軟性を備え、外層12が体温軟化性等の生体適合性に優れるとともに、裂け難いという特性を備えたものになる。また、SEBSブレンド材料とポリウレタンとは、押出成形可能な温度で相溶性を備えているため、容易に一体成形ができる。
【0031】
図3は、本発明の他の実施形態に係る医療用多層チューブ30を示している。この医療用多層チューブ30は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂からなる内層31と、内層31の外周に形成されたSEBSブレンド材料からなる中間層32と、中間層32の外周に形成されたポリウレタン樹脂からなる外層33とで構成されている。中間層32を構成するSEBSブレンド材料としては、前述した医療用多層チューブ30の内層11を構成するSEBSブレンド材料と同じものを用いた。内層31の厚みは、0.1mm〜1mmに設定され、内層31を構成するポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂としては、ショア硬度が70A〜70Dのものを用いた。この医療用多層チューブ30のそれ以外の部分の構成については、前述した医療用多層チューブ10と同一である。
【0032】
この医療用多層チューブ30を成形する押出成形機には、前述した押出成形機Aにおける前部ピンホルダ22とブッシング23との間にさらに他のブッシングを設置し、このブッシングの内周面と前部ピンホルダ22の外周面との間に、内層31を形成するためのポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂からなる成形材料を流すための材料通路を設ける。また、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂からなる成形材料を金型に供給するための押出機も追加する。成形の際には、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂とSEBSブレンド材料とは、押出成形可能な200℃の温度で良好な相溶性を備えているため、医療用多層チューブ30を容易に成形できる。また、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレンは、耐薬品性を備えているため、医療用多層チューブ30の内層31を構成する材料として適している。
【0033】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限るものでなく適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、医療用多層チューブ10の内層11および医療用多層チューブ30の中間層32を、重量比が30%のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、重量比が38%の鉱物油および重量比がそれぞれ16%のポリプロピレンとポリウレタンとで構成しているが、この重量比は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体の重量比が20〜40%、鉱物油の重量比が30〜45%、ポリプロピレンとポリウレタンとの合計重量比が15〜50%の範囲で適宜変更することができる。
【0034】
また、前述した実施形態では、鉱物油として、パラフィン系オイルを用いているが、この鉱物油としては、ナフテン系オイルや高級脂肪酸を用いることもできる。さらに、医療用多層チューブの各層を構成する材料は適宜変更することができる。なお、本発明に係る医療用多層チューブは、消化管用チューブ、経腸栄養チューブ、腸管減圧用チューブ、排液用チューブ等として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療用多層チューブを示した断面図である。
【図2】押出成形機の概略を示した一部断面構成図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る医療用多層チューブを示した断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10,30…医療用多層チューブ、11,31…内層、12,33…外層、32…中間層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料と、ポリウレタンからなる成形材料とを含む複数の成形材料を押出成形により同時に成形して、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料で構成される層と、前記ポリウレタンからなる成形材料で構成される層とを接面させた状態で多層からなる一体のチューブにしたことを特徴とする医療用多層チューブ。
【請求項2】
前記ポリウレタンからなる成形材料で外層を形成し、前記外層の内周側に、前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料からなる層を形成した請求項1に記載の医療用多層チューブ。
【請求項3】
前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料からなる層の内周側に、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる層を形成した請求項2に記載の医療用多層チューブ。
【請求項4】
前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料を、重量比が20〜40%のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体と、重量比が30〜45%の鉱物油と、合計重量比が15〜50%のポリプロピレンとポリウレタンとで構成した請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載の医療用多層チューブ。
【請求項5】
前記スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料に含まれる前記ポリプロピレンと前記ポリウレタンとの重量比を、それぞれ1%以上にした請求項4に記載の医療用多層チューブ。
【請求項6】
前記鉱物油が、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルまたは高級脂肪酸のいずれかである請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載の医療用多層チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−51631(P2010−51631A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220954(P2008−220954)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】