医薬におけるインターフェロン−τの使用
ヒト被験体におけるインターフェロン治療に応答性の状態を治療するための、医薬品の調製における使用のための組成物が、開示される。特に、本発明はインターフェロン−τを含有する薬学的組成物、およびこれの使用方法に関係する。この組成物は、インターフェロン−τが存在しない被験体の血中(2’,5’)−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベルに対して、被験体の血中OASレベルの増加を生じるのに有効な量で、腸管への経口投与に適した投薬形態のインターフェロン−τを包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明はインターフェロン−τを含有する薬学的組成物、およびこれの使用方法に関係する。より詳しくは、本発明は、2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素の血中濃度を変えるのに十分な用量でインターフェロン−τを経口投与することによってインターフェロン−τに応答性の状態を治療するための方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インターフェロン−τ(以下「IFNτ」もしくは「インターフェロン−τ」)は元々、反芻動物の受胎産物の栄養外胚葉により産生される妊娠認識ホルモンとして発見された(非特許文献1;非特許文献2)。IFNτ遺伝子の分布は、畜牛、ヒツジおよびヤギを含む反芻動物に限られている(非特許文献3)が、ヒトおよびマウスを含む他の生物種に属する細胞において、これは活性を有することが示されている(非特許文献4;非特許文献5)。例えば、IFNτは、抗ウイルス活性(非特許文献6)、抗増殖活性(非特許文献4)、および免疫調節活性(非特許文献7)を有することが立証されている。
【0003】
IFNτは、I型IFN(例えば、インターフェロン−αおよびインターフェロン−β)に代表的に関係する活性の多くを呈するが、IFNτと他のI型IFNとの間には著しい差異が存在する。最も顕著な差異は、反芻動物種における妊娠時のIFNτの役割である。他のIFNは妊娠の認識において同様の活性を有さない。また、ウイルスによる誘導も異なる。IFNτを除き、全てのI型IFNはウイルスおよびdsRNAによって容易に誘導される(非特許文献8)。誘導されたIFN−αおよびIFN−βの発現は一過性であり、およそ2、3時間続く。対して、IFNτの合成は、一旦誘導されると、数日の期間に亘って維持される(非特許文献9)。細胞当たりの基準とすると、他のI型IFNより300倍のIFNτが産生される(非特許文献10)。
【0004】
IFNτと他のI型インターフェロンのアミノ酸配列において、別の差異が存在する。インターフェロンα2b、インターフェロンβ1、インターフェロンω1およびインターフェロンγと、インターフェロンτとの間のアミノ酸配列同一性割合を、次の表にまとめる。
【0005】
【数1】
組換えヒツジIFNτ(rIFNτ)は、INFα2bに対して48.8パーセントの相同性であり、そしてINFβ1に対しは33.8パーセントの相同性である。IFNτとIFNαとの間、およびIFNτとIFNβとの間のこの限られた相同性に起因して、IFNτは、経口投与される場合に、IFNαまたはIFNβと同様の様式で作用するかどうかは、予測され得ない。IFNτはまた、低いレセプター結合親和力をヒト細胞上のI型レセプターに対して有すると報告されている(非特許文献14;非特許文献15)。さらに、IFNτが非内在性ヒトタンパク質であるという事実により、IFNτがヒト体内に導入される場合、全身性の中和抗体形成についての可能性が生じる(非特許文献14)。IFNτと他のインターフェロンとの間のこれらの差異は、IFNτがヒトに投与される場合に治療的利益をもたらすかどうかを予測することを、困難にさせる。IFNα、IFNβ、あるいは他の非τ型インターフェロンの経口投与に関係する分野の教示により、IFNτから任意の期待を導き出す根拠は提供され得ない。
【0006】
IFNτならびに全体的なタンパク質およびポリペプチドの使用における一つの制限要因は、生体内分布に関係する。なぜなら、この生体内分布は、非経口的に投与された場合に、血漿タンパク質と血液細胞とのタンパク質相互作用によって影響されるからである。胃におけるタンパク質分解に起因して、経口経路の投与はさらにより問題である。この胃において、意図する標的に到達する前に、酸性条件が分子を分解し得る。例えば、胃の酵素作用および膵臓の酵素作用によって生じたポリペプチドおよびタンパク質フラグメントは、腸管刷子縁膜内のエキソペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼによって切断されて、ジペプチドあるいはトリペプチドを生じる。膵臓酵素によるタンパク質分解が避けられた場合、ポリペプチドは刷子縁のペプチダーゼによる分解に供される。胃を通り抜けて存続し得るポリペプチドまたはタンパク質は、通過障壁が細胞内への進入を妨げる腸管粘膜において、代謝に供される。この理由から、一定期間口腔内に保持されるロゼンジまたは溶液の形態で口腔−咽頭領域へタンパク質を送達することに、多くの試みが焦点を当てている。
【非特許文献1】Imakawa,K.ら、Nature(1987)330:377−379
【非特許文献2】Bazer,F.W.およびJohnson,H.M.、Am.J.Repro.Immunol.(1991)26:19−22
【非特許文献3】Alexenko,A.P.ら、J.Interferon and Cytokine Res.(1999)19:1335−1341
【非特許文献4】Pontzer,C.H.ら、Cancer Res.(1991)51:5304−5307
【非特許文献5】Alexenko,A.P.ら、J.Interferon and Cytokine Res.(2000)20:817−822
【非特許文献6】Pontzer,C.H.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1988)152:801−807
【非特許文献7】Assal−Meliani,A.、Am.J.Repro.Immunol.(1995)33:267−275
【非特許文献8】Robertsら、Endocrine Reviews(1992)13:432
【非特許文献9】Godkinら、J.Reprod.Fert.(1982)65:141
【非特許文献10】Cross,J.C.およびRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:3817−3821
【非特許文献11】Taniguchiら、Gene(1980)10(1):11
【非特許文献12】Adolfら、Biochim.Biophys.Acta(1991)1089(2):167
【非特許文献13】Streuliら、Science(1980)209:1343
【非特許文献14】Brod,S.、J.Interferon and Cytokine Res.(1999)18:841
【非特許文献15】Alexenko,A.ら、J.Interferon and Cytokine Res.(1997)17:769
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、ヒト被験体において、インターフェロン治療に応答性である状態を処置するための方法を提供することが、本発明の目的である。
【0008】
IFNτの経口投与によってこのような状態を処置するための方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
1つの局面において、本発明は、ヒト被験体のインターフェロン治療に反応する状態を治療するための方法を含み、この方法は、IFNτ投与を欠く場合の被験体における血中2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベルに対して、その血中OASレベルの測定可能な増加を実現するのに有効な量で、被験体の腸管にIFNτを経口投与することによる。被験体の腸管へのIFNτの経口投与は、このような有効量で、1週あたり少なくとも数回という通常の基準で、少なくとも1ヶ月の期間、継続される。
【0010】
別の局面において、本発明は、ヒト被験体における、インターフェロンτ治療に応答性の状態を処置するための医薬の調製における使用のための組成物を含み、この状態は、自己免疫疾患、癌、あるいはウイルス感染から選択される。この組成物は、インターフェロン−τの投与を欠いた被験体における血中2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベルに対して、被験体の血中OASレベルの測定可能な初期増加を実現するのに有効な量で、被験体の腸管に向けた経口投与のために処方されたインターフェロン−τを含み、ここでこのインターフェロン−τは、被験体の血中OASレベルにおける変化とは関係なしに、少なくとも1ヶ月の期間、1週あたり少なくとも数回という通常の基準で、そのような有効量で被験体の腸管に対して投与される。
【0011】
一実施形態において、IFNτはヒツジIFNτである。特定の実施形態において、このヒツジIFNτは、配列番号2あるいは配列番号3として本明細書中で認識される配列を有する。より一般的には、このIFNτは、ヒツジIFNτと少なくとも約80%相同性であるアミノ酸配列を有する。このIFNτは、組換えで作製されたIFNτであり得る。
【0012】
継続投与は、毎日の基準で実施され得るか、または1週あたり数回(例えば、48時間ごと)実施することもできる。
【0013】
なお別の実施形態において、このIFNτは、の自己免疫疾患(多発性硬化症等)を患う被験体に投与される。この方法において、IFNτは被験体の症状の期間投与され、代表的には被験体の生涯にわたって投与される。
【0014】
別の実施形態では、IFNτは、ウイルス(例えば、HCV)に罹患した被験体に投与される。この方法はさらに、被験体における感染の存在を検出する工程、および感染がもはや検出されない時点を数ヶ月過ぎた期間、IFNτの投与を継続する工程、を包含する。この被験体は、IFNτを用いた処置期間の間、第二の抗ウイルス剤を用いて処置され得る。
【0015】
別の実施形態において、IFNτは、細胞増殖により特徴付けられる状態(例えば、癌)に罹患した被験体に投与される。この被験体は、IFNτを用いた処置期間の間、第二の抗癌剤を用いて処置され得る。
【0016】
好ましくは、IFNτの投薬形態は、このタンパク質を優先的に小腸へと送達する投薬形態が好ましい。例えば、この投薬形態は、小腸の環境からこのタンパク質を保護および/または安定化する、粘膜接着性ポリマーからなり得る。この粘膜付着性組成物は、小腸内壁の内表面を覆う細胞に対するインターフェロンの結合を増強する。
【0017】
この処置は、IFNτの初期投与の結果として血中OASレベルが増加するかどうかを確認するための、血中OASレベルをモニタリングする工程を、さらに包含し得る。別の実施形態において、被験体に初期に投与されるIFNτの量を調節して、経口IFNτを投与する前に観察された血中OASレベルに対して、血中OASの測定可能な増加を達成する。
【0018】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下に詳説される本発明な説明が添付の図面と組み合わせて読まれる場合、より完全に理解されよう。
【0019】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、ヒツジインターフェロン−τ(IFNτ)をコードする合成遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号2は、ヒツジ成体インターフェロン−τ(IFNτ;oTP−1;GenBank識別番号Y00287;PID g1358)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号3は、配列番号2の配列に対して、配列のうちの5位および6位のアミノ酸残基が改変されている、ヒツジ成体IFNτのアミノ酸配列に対応する。
配列番号4は、配列番号3のタンパク質をコードする合成ヌクレオチド配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
インターフェロン−タウは、IFNτまたはインターフェロン−τとして略され、以下の二つの群の特徴の各々から、少なくとも1つの特徴的形態を有するインターフェロンタンパク質ファミリーのうちのいずれか一つをいう:(i)(a)抗黄体退行特性、(b)抗ウイルス特性、(c)抗細胞増殖特性;および(ii)α−インターフェロンとの約45%〜68%のアミノ酸相同性、および既知のIFNτ配列との70%を超えるアミノ酸相同性(例えば、Ottら、J.Interferon Res.,11:357(1991);Helmerら、J.Reprod.Fert.,79:83(1987);Imakawaら、Mol.Endocrinol,3:127(1989);Whaleyら、J.Biol.Chem.,269:10846(1994);Bazerら、WO94/10313(1994))。アミノ酸相同性は、例えば、デフォルトパラメーターを用いたLALIGNプログラムを用いて判定することができる。このプログラムは、配列比較プログラムのFASTAバージョン1.7一式に見出される(PearsonおよびLipman、PNAS,85:2444(1988);Pearson、Methods in Enzymology,183:63(1990);William R.Pearson、Department of Biological Chemistry,Box 440,Jordan Hall,Charlottesville,VAより入手可能なプログラム)。IFNτの配列は様々な反芻動物種において同定されており、これには以下が挙げられるが、これらに限定されない:乳牛(Bovine sp.、Helmer S.D.、J.Reprod.Fert.,79:83(1987);Imakawa,K.、Mol.Endocrinol.,119:532(1988))、ヒツジ(Ovine sp.)、ジャコウウシ(Ovibos sp.)、キリン(Giraffa sp.,GenBank登録番号U55050)、ウマ(Equus caballus)、シマウマ(Equus burchelli、GenBank登録番号NC005027)、カバ(Hippopotamus sp.)、ゾウ(Loxodonta sp.)、ラマ(Llama glama)、ヤギ(Capra sp.、GenBank登録番号AY357336、AY357335、AY347334、AY357333、AY357332、AY357331、AY357330、AY357329、AY357328、AY357327)、およびシカ(Cervidae sp.)。これらの種のうち多くのものについてのIFNτのヌクレオチド配列は、公用データベースおよび/または文献(例えば、Roberts.R.M.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,18:805(1998)、Leaman D.W.ら、J.Interferon Res.,12:1(1993)、Ryan,A.M.ら、Anim.Genet.,34:9(1996)を参照のこと)に報告される。用語「インターフェロン−τ」は、任意の反芻動物種(上記で列挙された種により例示される)由来のインターフェロン−τタンパク質を包含するよう意図され、そして上記に列挙された特性のうち、続く2つの群の各々由来の、少なくとも1つの特徴を有するよう意図される。
【0021】
ヒツジIFNτ(IFNτ)とは、本明細書中で配列番号2として識別されるアミノ酸配列を有するタンパク質をいい、そしてそのタンパク質の活性には大して影響を与えない中性アミノ酸置換基のようなアミノ酸の置換および変更を有するタンパク質(例えば、本明細書中で配列番号3として識別されるIFNτタンパク質)をいう。より一般的には、ヒツジIFN−τタンパク質は、配列番号2として識別される配列に対して、約80%の配列相同性、より好ましくは90%の配列相同性を有するタンパク質である。
【0022】
「’X’単位を超える1日の投薬量」(ここで、’X’は5×108または1.5×109のような特定値である)とは、約5×108を超える抗ウイルス単位のタンパク質を提供するのに十分なIFNτの量をいい、ここでIFNτの抗ウイルス活性は、標準細胞壊死効果阻害アッセイ(例えば、以下にある「方法」の章にて記載されるアッセイ)を用いて測定される。’X’単位の特定された1日投薬量を提供するためのタンパク質量(すなわち、mg)は、そのタンパク質の抗ウイルス比活性によって変化することが、認識される。
【0023】
ある状態を処置することとは、その状態の症状を低減させること、および/またはその状態の重篤度を減少させることに効果的な治療物質を投与することをいう。
【0024】
経口とは、口による投与、または胃もしくは小腸への直接投与(消化器(gastric)投与を含む)を含む、任意の経路をいう。
【0025】
腸とは、胃下口から肛門まで伸びる消化管の部分をいい、小腸(十二指腸、空腸および回腸)および大腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S字結腸および直腸)からなる。
【0026】
OASレベルとは、血中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)タンパク質の濃度あるいは活性をいう。
【0027】
ALTとはアラニンアミノトランスフェラーゼをいう。
【0028】
HCVとはC型肝炎をいう。
【0029】
「血中OASレベルの測定可能な増加」とは、OASの血中レベル(血清レベルおよび/または血球レベル)の統計学上有意な増加をいい、代表的には、同一状態下で測定された処理前の濃度より少なくとも25%の増加をいう。このレベルは検出可能なOAS酵素の増加によるか、または細胞内(例えば、血中リンパ球内)のOAS mRNAレベルの増加によって、決定され得る。血中のOAS酵素レベルを測定するための方法は、放射免疫アッセイキットを使用して本明細書中、および文献中に記載される(Satoh,Y.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,19:887(1999))。細胞内でのOASのmRNA発現レベルを測定するための方法は、文献にて公知である(Takayama,S.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,19:895(1999))。
【0030】
(II.インターフェロン−τ組成物と治療方法)
(A.インターフェロン−τ)
ヒツジIFNτ(IFNτ)は、18〜19kDaのタンパク質として同定された最初のIFNτである。受胎産物(胚および周辺膜)ホモジネートにおいて、いくつかのアイソフォームが同定された(Martal,J.ら、J.Reprod.Fertil.56:63−73(1979))。続いて、受胎産物の培養培地中に放出された低分子量タンパク質が精製され、そしてこれが熱不安定性およびプロテアーゼ感受性の両方であることが示された(Godkin,J.D.ら、J.Reprod.Fertil.65:141−150(1982))。IFNτは、元々、ヒツジ栄養膜タンパク質−1(oTP−1)と呼ばれた。なぜなら、このIFNτは、ヒツジにおける母体認識の臨界期の間に、ヒツジ受胎産物の栄養外胚葉によって初期に産生される一次分泌タンパク質であったからである。その後の実験により、IFNτは、反芻動物(例えば、ヒツジおよびウシ)において、妊娠に対する生理学的応答を確立するのに必須な妊娠認識ホルモンであると決定された(Bazer,F.W.およびJohnson,H.M.、Am.J.Reprod.Immunol.26:19−22(1991))。
【0031】
N末端アミノ酸配列(Imakawaら、1987)を表す合成オリゴヌクレオチドを用いて、ヒツジ胚盤胞ライブラリーを探索することにより取得したIFNτ cDNAは、ヒト由来のIFN−α、マウス由来のIFN−α、ラット由来のIFN−αおよびブタ由来のIFN−αと45%〜55%相同性であり、そして現在IFN−ΩといわれるウシIFN−αIIと70%相同性である、予測アミノ酸配列を有する。異なるアイソフォームを表し得るcDNA配列がいくつか報告されている(Stewart,H.J.ら、Mol.Endocrinol.2:65(1989);Klemann,S.W.ら、Nuc.Acids Res.18:6724(1990);およびCharlier,M.ら、Mol.Cell Endocrinol.76:161−171(1991))。全てのものは、約1kbであり、23アミノ酸のリーダー配列および172アミノ酸の成熟タンパク質をコードする、585ベースのオープンリーディングフレームである。アミノ末端およびカルボキシル末端が同格である、4本のへリックスの1束のようなIFN−τの予測構造は、I型IFNとしての分類をさらに支持する(Jarpe,M.A.ら、Protein Engineering 7:863−867(1994))。
【0032】
【数2】
IFN−τはI型IFN(上記の表を参照のこと)に分類上関係するいくつかの活性を示すが、IFN−τと他のI型IFNとの間には著しい差異が存在する。最も顕著な差異は妊娠における役割であり、これは上記に具体的に示してある。また、ウイルス誘導性も異なる。IFNτを除く全てのI型IFNは、ウイルスおよびdsRNAによって容易に誘導される(Roberts,R.M.ら、Endocrin.Rev.13:432−452(1992))。誘導されたIFN−αおよびIFN−βの発現は一過性であり、約2、3時間続く。対照的に、IFN−τの合成は、一旦誘発されると数日に渡って維持される(Godkinら、1982)。細胞当たりの基準にすると、他のI型IFNより、300倍を超えるIFN−τが産生される(Cross,J.C.およびRoberts,R.M.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3817−3821(1991))。
【0033】
他の差異はIFNτ遺伝子の制御領域に存在し得る。例えば、ウシIFNτに対する遺伝子でのヒト栄養芽細胞株JARのトランスフェクションは、抗ウイルス活性を生じ、一方、ウシIFN−Ω遺伝子でのトランスフェクションではみられなかった。このことは、IFNτ遺伝子の発現に関係する、独特なトランス作用因子を示唆する。この示唆と、IFNτの隣接プロモーター領域(126番目から転写開始部位まで)はIFN−αおよびIFNβの隣接プロモーター領域と高い相同性であるが、−126〜−450番目の領域は相同性ではなく、IFNτの発現のみを増強する(Cross,J.C.およびRoberts,R.M.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3817−3821(1991))という所見が一致する。従って、他のI型IFNと比較して、異なる調節因子がIFNτの発現に関与しているようである。
【0034】
ヒツジIFNτの172アミノ酸配列は、例えば米国特許第5,958,402号に記載され、そしてこれに相同的なウシIFNτ配列は、例えば、Helmerら、J.Reprod.Fert.,79:83−91(1987)およびImakawa,K.ら、Mol.Endocrinol.,3:127(1989)に記載される。これらの参考文献由来のヒツジIFNτ配列およびウシIFNτ配列は、本明細書により参考として援用される。ヒツジIFNτのアミノ酸配列は、本明細書中で配列番号2として示される。
【0035】
(1.IFNτの単離)
IFNτは妊娠したヒツジから収集した受胎産物から単離され得、そしてGodkin,J.D.ら、J.Reprod.Fetil.65:141−150(1982)およびVallet,J.L.ら、Biol.Reprod.37:1307(1987)により記載される改変最小必要培地中でインビトロで培養され得る。IFNτはイオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過により、受胎産物培養物から精製され得る。単離IFNτの均一性は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(Maniatis,T.ら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1982);Ausubel,F.M.ら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,Inc.,Media,PA(1988))によって評価され得、そして精製IFNτサンプル中のタンパク質濃度の決定は、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL;Smith,P.K.ら、Anal.Biochem.150:76(1985))を使用して実施され得る。
【0036】
(2.IFNτの組換え産物)
組換えIFNτタンパク質は、適切な発現系(例えば、細菌細胞または酵母細胞)を使用して、任意に選択されたIFNτポリヌクレオチド断片から作製され得る。IFNτヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の単離は、PCT公開WO/94/10313(これは、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0037】
IFNτ発現ベクターを作製するため、IFNτをコードする配列(例えば、配列番号1または配列番号4)を、発現ベクター(例えば、細菌発現ベクター)中に配置し、そして標準的な方法に従って発現される。適切なベクターの例としては、λgt11(Promega,Madison WI)ベクター;pGEX(Smith,P.K.ら、Anal.Biochem.150:76(1985))ベクター;pGEMEX(Promega)ベクター;およびpBS(Strategene,La Jolla,CA)ベクターが挙げられる。また、適切なプロモーター(例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーターまたはtacプロモーター)を含有する他の細菌発現ベクターも使用され得る。改変pIN III omp−A発現ベクターへのIFNτ合成ポリヌクレオチドのクローニングは、「材料と方法」に記載される。
【0038】
本明細書中に記載される研究のため、配列番号4に存在するIFNτコード配列を、ベクター中にクローニングした。このベクターは酵母細胞の形質転換に適切であり、メタノール調節性アルコールオキシダーゼ(AOX)プロモーターおよびPho1シグナル配列を含有する。このベクターを使用してP.pastoris宿主細胞を形質転換し、製造業者(Invitrogen,San Diego,CA)の指示書に従い、形質転換細胞を使用してタンパク質を発現させた。
【0039】
本発明の方法での使用のための、IFNτの発現に適切な他の酵母ベクターとしては、2μプラスミドベクター(Ludwig,D.L.ら、Gene,132:33(1993))、酵母組込みプラスミド(Shaw,K.J.ら、DNA,7:117(1988))、YEPベクター(Shen,L.P.ら、Sci.Sin.,29:856(1986))、酵母セントロメアプラスミド(YCp)、および制御可能な発現を有する他のベクター(Hitzeman,R.A.ら、米国特許第4,775,622号(1988年10月4日発行);Rutter,W.J.ら、米国特許第4,769,238号(1988年9月6日発行);Oeda,K.ら、米国特許第4,766,068号(1988年8月23日発行))が挙げられる。好ましくは、これらのベクターは、有効な酵母プロモーター(例えば、MFα1プロモーター(Bayne,M.L.ら、Gene 66:235−244(1988))、GADPHプロモーター(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ;Wu,D.A.ら、DNA,10:201(1991))、またはガラクトース誘導性GAL10プロモーター(Ludwig,D.L.ら、Gene,132:33(1993);Feher,Z.ら、Curr.Genet.,16:461(1989);Shen,L.P.ら、Sci.Sin.,29:856(1986)))を含有する発現カセットを含む。酵母形質転換宿主は、代表的にはSaccharomyces cerevisiaeであるが、上記で例示されるように、形質転換に適した他の酵母(例えば、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastorisなど)も同様に使用され得る。
【0040】
さらにIFNτポリペプチドをコードするDNAを、多数の市販のベクターにクローニングし、適切な宿主系にてこのポリペプチドの発現を生じさせ得る。これらの系としては、上記の細菌発現系および酵母発現系、ならびに以下が挙げられる:バキュロウイルス(bacullrus)発現(Reilly,P.R.ら、BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS:A LABORATORY MANUAL,(1992);Beamesら、Biotechniques,11:378(1991);Clontech,Palo Alto CA);植物細胞発現、遺伝子組換え植物発現、および哺乳類細胞内での発現(Clontech,Palo Alto CA;Gibco−BRL,Gaithersburg MD)。この組換えポリペプチドは融合タンパク質あるいは天然タンパク質として発現させ得る。発現ベクター内に、多くの特性(例えば、培養培地中への発現される配列の分泌を促進するリーダー配列)が操作され得る。遺伝子組換えで作製されたポリペプチドは、代表的に、溶解した細胞あるいは培養液から単離される。精製は当分野で公知の方法によって実施され得、この方法は塩分画、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーを含む。上記のように、IFNτポリペプチドに基づいて調製された抗体を用いて、免疫アフィニティークロマトグラフィーが使用され得る。
【0041】
組換え方法に加えて、IFNτタンパク質あるいはポリペプチドは、例えば適切な抗体を使用することによる、アフィニティーに基づく方法によって、選択した細胞からを単離され得る。さらに、IFNτペプチド(例えば、配列番号2あるいは配列番号3)は、当業者に公知の方法を使用して、化学合成され得る。
【0042】
(B.IFNτの経口投与)
本発明の支持として実施された研究において、IFN−τがマウスおよびヒトに経口投与され、そして全血中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)(IFN活性を認識するマーカー(Shindo,M.ら、Hepatology 8:366−370(1988)))の誘導をモニタリングした。OASレベルをモニタリングする代替の方法が適切であり、そして精度および感度の点において利点を提供し得ることが認識される。例えば、OASの細胞内mRNA発現量が、準定量逆転写酵素PCT技術(Takayama,S.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,19:895(1999))を使用して測定され得る。
【0043】
(1.IFNτのマウスへの投与)
本発明の支持として実施された研究において、経口投与されたIFNτが、OASを誘導する能力について試験した。実施例1に記載されるように、IFNτを、マウスへ経口投与するかまたは腹腔内(i.p.)投与するかのいずれかを行った。IFNτ投与の24時間後に全血のOAS活性を決定し、そしてこれらの結果を図1に示す。
【0044】
図1は、10%マルトースを含む生理食塩水で処置したコントロール動物に関する血中OAS濃度(pmol/dL)が、わずかに1000pmol/dLを超えたことを示す。10%マルトースを含む生理食塩水溶液中の5×108単位のIFNτで腹腔内処置したマウスは、約1700pmol/dLの血中OASレベルを有した。同じIFNτ投薬量で経口的に処置したマウスは、約2000pmol/dLの血中OAS濃度を有した。
【0045】
実施例2にて詳説される別の研究において、IFNτをマウスに経口投与し、このIFNτが用量依存的にOASを誘導する能力を決定した。IFNτを、0単位(コントロール)、1×103単位、1×104単位、1×105単位で、試験マウスにおける胃上部に経口投与した。経口投与の12時間後、心臓から全血を採取し、そしてOAS濃度を測定した。図2に示すように、全血中のOAS濃度は用量依存的に増加した。
【0046】
実施例3は、マウスで行ったさらなる研究を記載する。これらの研究ではIFNτの投与前に、少なくとも6時間給餌および飲料を断ち、そして経口注入または腹腔内(i.p.)注射によってIFNτを与えた。経口投与する場合、経口摂食ニードルを使用してIFNτを胃上部に直接導入した。
【0047】
図3は、様々な系統のマウス:ICR、BALB/c、C57BL/9、NZW/N、SJL/Jにおいて、IFNτの消化器(gastric)投与が血中OAS活性の誘導に及ぼす効果を示す。全ての試験マウスにIFNτ(105U)を経口で処置した。コントロールマウスに、IFNτを含まない10%マルトース溶液を経口的に与えた。各々のバーは、2回実施した実験(同様の結果)のうちの1つの実験(マウス3〜5匹)の平均±S.E.を表す。図3に見られるように、IFNτの経口投与後、全ての系統のマウスにおいてOAS活性のレベルが増加したが、増加の程度は系統により変動した。ICRマウス、C57BL/9マウスおよびNZW/Nマウスに誘導した活性レベルは、BALB/cマウスおよびSJL/Jマウスにおけるレベルより高かった。
【0048】
別の研究において、IFNτの投与後、OAS活性を時間の関数としてモニタリングした。この研究では、IFNτ(105U)の投与前、動物(ICRマウス)を6時間絶食させた(水有り餌無し)。IFNτ投与の8時間後、16時間後、および24時間後に血液をサンプリングした。結果を図4Aに示す。
【0049】
図4Aは血中OASレベルを示し、IFNτの投与後に記載した時間の間隔を空けて採取した血液試料における、生理食塩水/10%マルトースビヒクルで処置したコントロールマウスに対する百分率として表す。図4Aにおいて、各々のバーは、2回行った実験(同様の結果)のうちの1つの実験(マウス3匹)の平均±S.E.を表す。全血中のOAS活性は、経口注入であれ腹腔内注射であれ、経路に関わらず、時間依存的様式で増加した。しかしながら、経口投与の24時間後、腹腔内注射よりも高いレベルを観察した。
【0050】
別の研究において、様々な濃度のIFNτ(0U、102U、103U、104Uおよび105U)を、6時間絶食させた後のマウスに与えた。24時間後に採血し、そしてOASレベルをアッセイした。結果を図4Bに示す。
【0051】
図4Bは血中OAS濃度を示し、0U、102U、103U、104U、および105Uの濃度でのIFNτの送達の24時間後の、コントロールマウスに対するパーセンテージとして表している。各バーは、2回行った実験(同様の結果)のうちの1つの実験(マウス3匹)の平均値±S.E.を表す。腹腔内注射後、低投与量(102U)で活性量は幾分高くなり、より高投与量のIFN−τ(104Uおよび105U)で飽和状態に達した。反対に、経口投与後の活性量は、用量に依存して増加した。
【0052】
図4A〜4Bの結果は、経口投与したIFN−τが、腹腔内注射により誘導されたレベルの血中OAS活性も、より高いレベルの血中OAS活性を誘導することを示している。特に、IFN−τの投薬量が約103Uを超え、そして投与後の時間が約8時間を超える場合に、経口的に誘導された血中OASレベルは腹腔内注射によって誘導されたOASレベルよりも高かった。
【0053】
別の研究において、マウスにおいて、IFN−τによる血中OAS誘導に対する絶食状態の効果を評価した。この研究において、マウスに6時間、規定した給餌給水摂取レジメンに供した。6時間のレジメンの後、104UのIFNτを、餌および水と共に経口胃管栄養法投与によるか、または腹腔内注射により投与した。摂取レジメンは以下の通りである:ケースI、餌も水も与えなかった;ケースII、水は与えたが餌は与えなかった;ケースIII、餌のみを与えた;ケースIV、餌と水の両方を与えた。24時間目に心臓から全血を採取し、そしてOAS活性レベルを測定した。これらの結果を図5A〜5Dに示す。
【0054】
図5A〜5Dは、それぞれ、上記段落中に規定したケースI〜ケースIVの給餌給水摂取レジメンに供されたマウスに対応する。図5A〜5Dの結果は、インターフェロンを含まない10%マルトース溶液で処置したマウスの血中OASとして得たコントロールに対する、パーセンテージとして表した血中OSAの誘導を示す。餌を与えなかったマウスを示す図5Aおよび図5Bにおいて最も理解されるように、これらの結果は絶食状態の被験体へのIFN−τの経口投与によって、より高濃度の血中OASが誘導されることを示す。
【0055】
この研究では、水の供与が有る場合も無い場合も、ほぼ同量の餌が摂取されることが観察された。しかし、餌を与えた場合の水の摂取(ケースIIIおよびケースIV)よりも餌を与えなかった場合の水の摂取(ケースIおよびケースII)が少なかった。一部の動物において、6時間の断食後、青色色素を含む0.2mLマルトース溶液を経口的に与え、胃および腸におけるこの色素の分布を調べた(データは示さず)。餌を摂取後(ケースIIIおよびケースIV)、マウスの胃は膨張し、色素は主に胃に局在していた。これは恐らく餌が色素を吸収したためである。しかし、餌を摂取しなかった場合、色素は迅速に腸へ移行する。この所見は、経口摂取されたIFNτは腸内で効果を発揮して、血液中で高いOAS活性レベルを誘導し得ることを示唆する。
【0056】
血中OASレベルに対するMuIFN−αの経口投与の効果を測定するため、比較研究を行った。この研究では、経口経路または腹腔内経路のいずれかによって、様々な濃度(0IU、102IU、103IUおよび104IU)のMuIFN−αでICRマウスを処理した。MuIFN−α投与の16時間後に得た血中のOAS活性をアッセイした。これらの結果を図6に示す。ここで、各バーは、2回行った実験(同様の結果であった)のうちの1つ(マウス3匹)の平均値±S.E.を表す。
【0057】
図6は、経口的にかまたは腹腔内注射によって与えたMuIFNα(0IU、102IU、103IUおよび104IU)投与後の、血中OAS活性の誘導を示す棒グラフであり、コントロールマウスに対するパーセンテージとして表す。いずれの投与経路によるものでも、OAS活性レベルは用量依存的に増加し、腹腔内注射は経口投与よりも血中OAS活性においてより良好な誘導性を生じた。この結果は、IFNτの腹腔内注射よりもIFNτの経口投与の方がより高い血中OASレベルを達成した、IFNτで観察された結果と相反する。さらに、MuIFNαを投与した場合、マウスの体温はわずかに上昇したが、IFNτを使用した場合は上昇しなかった(データは示さず)。
【0058】
図1〜6で提示したデータは、腸管へ投与したIFNτが生体内でOAS応答を誘導するか、または上方制御するという証拠を示す。IFNτの経口投与は以前に文献にて報告されているが(例えば、WO96/28183を参照のこと)、この非内在性インターフェロンが経口投与の際にOAS反応を誘導し得ることを示した研究はない。本研究では、IFNτを口腔粘膜に接触させずに直接腸管内へ投与し、これによって口腔咽頭(oropharengyl)領域内でのあらゆる吸収を除外した。口腔粘膜を通じて吸収されたIFNτと比較して、IFNτの胃からの直接吸収は、特にIFNτの長期にわたる投与の場合、IFNτに対する抗体の形成が減少させる。
【0059】
(2.C型肝炎を患うヒトへの投与)
研究のため、C型肝炎に感染したヒト被験体を集めた。経口的なIFNτ(配列番号4)での処置のため、患者を4つの試験グループに分けた。実施例4に記載したように、試験グループの各被験体は、調節された量のIFNτの1mg/mL溶液を毎日3回自己投薬した。試験グループI、II、IIIおよびIVの患者は、1日の投与量合計が、それぞれ1mg、3mg、9mg、および15mgのIFNτを受けた。患者は決められた間隔で臨床試験に戻り、以下についての分析用血液サンプルを提供した:(i)(a)血清中および(b)末梢血単核細胞中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベル;(ii)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル;および(iii)ウイルス力価レベル(1mL当りのC型肝炎ウイルスRNA複製物)。
【0060】
各テストグループの数人の被験体についての結果を下記の表3〜5に示し、図7〜8に図示する。表3A〜3Bは、0.33mgのIFNτを1日3回経口的に処置した投与グループIの6人の患者のデータを示す。血清中2−5OASレベル(pmol/dL)を、「2−5A(血清)」と識別した列に表示する。PAB/001およびJRJ/006という、2人の被験体は、血中OASレベルの増加を示さなかった。他の4人の被験体は、血中OASレベルが測定可能に増加され、MSM/002およびLER/004と識別される被験体は著しい増加を示した。被験体MSM/002は、11.0pmol/dLの基底OASレベルを有した。試験15日目までに、これは51.5(4倍を超える)に増加した。被験体Z−I/005は、43.4pmol/dLの基底OASレベルを有した。このOASレベルを増加させると、試験29日目までに74.8pmol/dLに達した。
【0061】
表4は、1mgのIFNτを1日3回処置した投与グループIIの3人の被験体についてのデータを示す。患者AMC/007および患者DBF/012はIFNτ処置に応答し、血中OASレベルを有意に増加させた。例えば、患者AMC/007は、11.2pmol/dLの基底OASレベルを有した。このOASレベルは29日間の最初の処置にわたって着実に増加し、試験29日目に最大120pmol/dLを測定した。OASレベルは試験の71日間を通じて、基底濃度の4倍を超えたままであった。患者DBF/012では、処理前、28.8pmol/dLの開始OASレベルを有した。このレベルは71日の処置期間にわたって増加および減少し、15日目と71日目に100pmol/dLを超える高い測定値であった。8日目から71日目の間に少なくとも1.5倍の増加が見られた。
【0062】
表5は、3mgのIFNτで1日3回処置した投与グループIIの3人の被験体についてのデータを示す。血中OASの基底レベルを研究した日に取った。被験体CLR/011は、の反応は、血中OASレベルの増加に関して、わずかな応答を有した。試験29日目に、被験体HCM/010は、血中OASレベル濃度の約1.5倍の増加を示し、そして被験体VCC/009は、血中OASレベルの4倍以上増加させた。
【0063】
表3〜5中のデータは、ウイルス性C型肝炎を患う個人の、経口的IFNτに対する様々な応答を例示する。多数の患者が血中OASレベルを増加させ、代表的には開始基底レベルに対して、血中OASの1.5倍増加させ、しばしば2倍増加させ、そして一部の場合、4倍増加させた。各々の患者における応答は多数の要因に依存しており、これらには感染の状態および処置に対する個人の生体応答が挙げられる。
【0064】
従って、本発明は、処置を必要とする被験体にIFNτを経口投与することを企図し、ここでIFNτの初期用量は、この特定の患者に対して血中OASレベルの増加を達成するよう選択される。このIFNτは、患者の腸管を標的とする形態で投与され、口腔ではない。投薬量の選択は、例えば処置前および処置開始後に、例えば血中OASレベルまたはOASのmRNAレベルをモニタリングすることによって、なされ得るかまたは確認され得る。あるいは、様々な疾患状態下での、所定の投与に対するモデル患者の応答から、有効量を前もって決定し得る。例えば、所定の年齢範囲内であり、特定の状態(例えば、HCV感染あるいはMS)を患う患者について、様々な初期IFN−τレベルに応答した血中OASにおける変化をモニタリングして、この年齢/疾患プロフィールを有する患者についての適切な用量を前もって決定し得る。そしてこのような用量指針を、処置を行う医師に提供し得る。本発明の一局面は、IFN−τの腸管への標的化に適した経口送達形態のIFN−τ(例えば、IFN−τの腸溶性コーティングされた形態物)、および様々な患者の状態の下での有効な用量、即ち、OAS血中レベルの測定可能な増加を生じるのに有効な用量についての指針を提供する製品情報文献あるいは挿入物を備える、IFN−τ治療キットが含まれる。好ましくは、この挿入物は、用量の範囲およびOAS応答における予期される初期変化を提供する。
【0065】
初回投与後、あるいは血中OASレベルの測定可能な増加を生じる用量(有効用量)に達する場合、有効用量のIFNτの投与を、長期の処置期間の間、好ましくは毎日基準または週に数回の基準で継続する。長期基準で投与される有効用量は、血中OASの初期の測定可能な増加を生じるのに有効な用量であり、この継続する有効用量が初期有効量と同じであれ、または異なる場合であれ、長期の処置期間にわたって実際の血中OASレベルの挙動とは無関係である。従って、被験体が、血中OASレベルの初期の測定可能な増加を生じさせるのに有効な量のIFNτを受け続けても、処置期間中に血中OASレベルは上昇したレベルに留まり得るか、増加を続け得るか、または(例えば、感染しているウイルスレベルの減少に応答して)減少すらし得る。この有効用量は代表的には、1日当たり105〜1010単位の間のIFNτであり、そして所望する血中OASの初期増加(例えば、通常の非処置の場合の濃度の1.5倍〜4倍)を達成するよう調整され得る。
【0066】
図7〜8は、この研究の患者の内の数人についての、ウイルス力価およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルに関するデータを表す。アラニンアミノトランスフェラーゼは、アラニンのγケト基の、ケトグルタラートのγケト基への転移を触媒して、オキザロ酢酸およびピルビン酸の形成を導く血清酵素である。ALTは本来肝臓内に見出され、そして肝臓疾患(例えば、C型肝炎)に罹患した被験体は、血中のALTレベルを上昇させる(HARRISON’S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE,Wilsonら編、第12版、第9巻、1309頁(1991))。健常人は、血清ALTレベル約1〜45U/Lを有する。図7A〜7Cは、1日当たり4.9×108ユニット(0.33mgを1日3回)のIFNτの経口投与後の、投与グループIの3人の被験体(PAB/001(図7A)、MSM/002(図7B)およびDMA/003(図7C))のC型肝炎(HCV)RNAウイルス力価(影付き棒グラフ)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル(ひし形)を示す。患者MSM/002のALT濃度および患者DMA/003のALT濃度(図7Bおよび7C)は、169日の処理期間にわたって連続的に減少した。患者PAB/001(図7A)は、ALT血中レベルは、IFNτ処置の結果、部分的に増加しながらより変動性を示したが、全般的に下降した。
【0067】
図8A〜8Bは、1日当たり1.5×109単位(1.0mgを1日3回)の経口的IFNτで処置した投与グループIIの患者AMC/007(図8A)およびVCC/009(図8B)における、C型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを示す。この2人の被験体の反応は異なり、VCC/009は処置第一週でALTの初期増加を示し、次いで約8日目から113日目までALTレベルは連続的な下降を示した。
【0068】
一部の患者および一部の状態に対して他の治療薬と併用したIFNτ投与が企図されることが理解される。例えば、他の公知の肝炎抗ウイルス剤とIFNτとを併用して、一部の患者において有益となり得る。より一般的には、IFNτと任意の公知の医薬品との併用が企図される。
【0069】
(3.研究的アレルギー性脳脊髄炎を患うマウスへのIFNτの投与)
自己免疫疾患処置のためのIFNτの経口投与を、多発性硬化症のための認知されるモデルを使用して、別の研究で例証した。この研究では、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE;Zamvil,S.S.ら、Ann.Rev.Immunol.,8:579−621(1990))を患うげっ歯類動物(抗原誘導性自己免疫の動物モデル)における応答を評価することによって、一般の自己免疫疾患を処置する際のIFNτの有効性を評価する。EAEは、臨床的兆候および病理的兆候の両方においてヒト多発性硬化症(MS)に類似しており、従って、MSのようなヒト自己免疫疾患のための処置を評価するために使用され得る。EAEは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)あるいは脳炎誘発性ペプチドフラグメントを用いて、感受性のマウス、ラットまたはモルモットを免疫することによって誘導される、T細胞媒介性の炎症性自己免疫性脱髄性疾患である。これらのモデル動物の系統における遺伝性の感受性は、脳炎誘発性ペプチドが特定のクラスII主要組織適合複合体(MHC−II)分子に結合する能力に一部基づく(Fritz,R.B.ら、J.Immunol.130(3):1024−1026(1983);Wraith,D.C.ら、Cell 59:247(1989))。特にH−2uハプロタイプを持つマウスはEAEに罹りやすい。感受性マウス系統としては、PL/Jマウス(Klein,J.ら、Immunogenetics 17:553(1983))、(PL/J×SJL)F1マウス(Zamvil.,S.S.ら、Ann.Rev.Immunol.,8:579−621(1990);Wraithら、1989)、B10.PLマウス(Figuero,F.ら、Immunogenetics 15(4):399−404(1982))、NZWマウス(Kotzin,B.L.ら、J.Exp.Med.265:1237(1987))、および(NZB×NZW)F1マウス(Kotzin,B.L.ら、J.Exp.Med.265:1237(1987))が挙げられる。
【0070】
本発明を支持しておこなわれ、そして以下に詳説される研究は、IFNτを用いた処置より利益を受ける疾患あるいは疾患状態の処置に関して、経口投与したIFNτ組成物が、注入したIFNτ組成物に匹敵する効力であることを示す。経口投与したIFNτは、IFNτ処置より利益を受ける疾患(EAE)を処置するのに有効であるだけではなく、注入したIFNτ組成物での処置と比較して、経口経路の投与は予期せぬ利点をもたらした。例えば、経口投与したIFNτは、処置された個人の血清中の抗IFNτ抗体レベルが有意により低くなった。このことは、有益である。なぜなら、経口投与したIFNτが、これにより、宿主の免疫反応によって無効にさせられる(例えば、治療および/または用量レベルに対する脱感作が有意に低下される)可能性がより低く、そして処置を受けた個人は、この免疫応答の結果としての副作用に苦しむ可能性が、より低いからである。
【0071】
これらの知見および関係する知見を実証する実験結果を以下に提示する。
【0072】
(a.経口投与したIFNτはEAEの発症を抑制する)
実施例5に記載したように、経口投与したIFNτおよび注入したIFNτが、EAEの誘発を予防する能力に関して試験した。ニュージーランドホワイト(NZW)マウスをウシミエリン塩基性タンパク質(bMBP)で免疫することによって、EAEを誘発させた。実験的なアレルギー性脳脊髄炎(EAE)を誘発するため、レシピエントNZWマウスに、ウシミエリン塩基性タンパク質(bMBP)で免疫する48時間前、免疫当日、および免疫の48時間後に、腹腔内注射または経口摂食のいずれかによってOvIFNτを与えた。
【0073】
OvIFNτの経口摂食および腹腔内注射の双方とも、EAEに対して防いだ(実施例5、表6)。腹腔内注射によりIFNτを与えた全ての動物、および経口的にIFNτを与えた動物9匹の内7匹において、EAEの症状より防いだ。さらに、抗OvIFNτモノクローナル抗体HL127は、部分的にOvIFNτのEAEをブロックする能力を中和するのに有効であった。これらの研究は、経口投与したIFNτがEAE(多発性硬化症の動物モデル)の症状を処置するのに有効であることを実証する。
【0074】
(b.OvIFNτは、経口投与後血清中に存在する)
経口投与したIFNτが循環系に入ることを確認するため、実施例6に記載したように細胞障害作用(抗ウイルス)アッセイ(Familetti,P.C.ら、Meth.Enzymol.78:387(1981))を使用して、腹腔内注射または経口投与によってIFNτを受けたマウスの血清を、IFNτの存在について試験した。
【0075】
結果を図9に示す。比活性は、MDBK細胞を使用する抗ウイルスアッセイから得たタンパク質1mg当たりの抗ウイルス単位で表す。OvIFNτは、200U/mlのレベルで、経口摂食(塗りつぶされたバー)後2時間まで検出した。これらのデータは、経口投与したIFNτは循環系に入り、そして投与された後約2時間血清中に残留することを示している。
【0076】
(c.経口投与したOvIFNτ由来の毒性の欠如)
I型IFNのIFNαおよびIFNβが、治療薬としてヒトに使用される場合、インフルエンザ様症状、発熱、嘔吐感および倦怠感として表れる毒性副作用を誘発することが以前に示されている(Degre,M.、Int.J.Cancer 14:699(1974);Fent,K.およびG.Zbinden、Trnds.Pharm.Sci.56:1−26(1987))。対照的に、OvIFNτは、インビトロおよびインビボの双方で、毒性についての注目すべき欠如を呈する。本発明の支持として行った研究により、経口摂食により与えた場合の、末梢血液中のリンパ球の減少によって測定する、毒性の誘導に関してOvIFNτとIFNαおよびIFNβとを比較した。尾から血液を得、血球計算板を使用して白血球細胞(WBC)数を計数した。ライト−ギムザ染色した血球スミアに基づいて、差示的なWBC計数を行った。
【0077】
結果を表1A、1Bおよび1Cに示す。IFNαまたはIFNβのいずれかを摂取したマウスにおいて、著しい毒性レベルを検出したが、105U、2×105Uもしくは5×105UのOvIFNτ、またはPBS単独を摂取させたマウスではリンパ球の顕著な減少は検出されなかった。これらの結果は、経口投与したOvIFNτは、他のI型IFNに対して毒性がかなり低いことを示唆している。
【0078】
【表1A】
【0079】
【表1B】
【0080】
【表1C】
(d.OvIFNτはEAEの慢性再発を抑制する)
EAEに関係する症状の発生を予防することに加えて、経口投与したOvIFNτは、実施例7で詳述するように、EAEの慢性再発モデルにおいて麻痺を予防する。OvIFNτ処置を受けない、(EAEを誘発するため)MBPで免疫したマウス5/5が慢性再発性麻痺を発症したが、OvIFNτ(腹腔内注射あるいは経口摂取のいずれかを48時間ごとに投与)で処置したマウス4/5では、疾患からが完全に抑制された(図10Bおよび10C)。これらのデータは、上記の結果をさらに支持するものであり、そしてIFNτの経口投与が、慢性再発性EAEの発症をブロックし得ることを示唆する。またこれらの研究は、長期間にわたる48時間ごとに一回の頻度でのIFNτの経口的投与が、IFNτによる処置に応答性の疾患状態を処置するのに、腹腔内注射と同程度に有効であることを示唆する。
【0081】
(e.IFNτ経口投与後の、EAEマウス由来の脊髄の組織学的分析)
脊髄白質部のリンパ球病変として中枢神経系(CNS)に現れる、EAEについての細胞性の結果に対するOvIFNτ処置の効果を分析することによって、OvIFNτがEAEを予防する能力を分析した。リンパ球のCNS内への浸潤の範囲の病変を示す。MBP免疫化マウスを、実施例8に記載したように、OvIFNτ処置をしない(コントロール)か、または経口経路もしくは腹腔内経路によるOvIFNτ処置するかのいずれかを行い、そして腰部脊髄の切片を染色してリンパ球について評価した。組織切片の顕微鏡写真を図11A〜11Cに示す。コントロール動物の脊髄白質にリンパ球病変が存在する(図11A)が、腹腔内注射(図11B)によっても経口摂取(図11C)によっても、OvIFNτで処置したマウスでは存在しなかった。これらのデータは、IFNτの保護効果が、リンパ球のCNSへの浸潤抑制に関係することを示す。さらにこれらのデータは、IFNτ処置が単に症状を覆い隠すのではなく、自己免疫疾患の細胞性発現を抑制することを実証する。
【0082】
(f.OvIFNτを用いた処置の停止は、再発性麻痺を生じる)
実施例10は、MBPを注射したマウスにおいてEAEを予防するのに効果的な処置の形態および持続期間を決定するために行った研究を記載し、そしてその結果を図13に示す。処置の継続の間(実施例10では58日間)、腹腔内注射または経口摂取を介してOvIFNτ処理すること(48時間ごと)によって、このマウスはEAEから保護された。しかし、OvIFNτ処理を停止した後に疾患症状を発症した(図13)。これらの結果は、IFNτがEAE様の自己免疫疾患(例えば、MS)を治癒することはできないが、処置を継続する限り、このIFNτがその状態の病理的発現を抑制する有効な処置であることを示す。
【0083】
(g.OvIFNを経口投与は抗OvIFN抗体を低減させる)
実施例11で詳述するように、経口投与されるIFNτ処置の1つの利点は(注射に対して)、経口治療を受けた個人における抗IFNτ抗体力価の低減である。OvIFNτ処置の解除後、各処置グループ由来のマウスから採血し、そして抗OvIFNτ抗体の存在についてELISAによって血清を調べた。腹腔内注射によりIFNτを受けたマウスは抗OvIFNτ抗体量を上昇させたが、経口摂取によりIFNτを受けた動物は、ずっと低い抗IFNτ抗体力価(代表的には3分の1〜5分の1)を呈した。予想されたとおり、OvIFNτ処置を受けなかったマウスは抗OvIFNτ抗体を示さなかった。
【0084】
また、OvIFNτが抗ウイルス活性を中和する能力について、MDBK細胞株を用いて血清を調べた。腹腔内注射したマウスの血清も、経口摂取したマウスの血清も、中和活性を持たなかった(表7)。これらの結果は、OvIFNτの経口摂取は、OvIFNτタンパク質に対する抗体応答を概ね回避することを示唆する。このように、経口処置した被験体において抗体反応が低減することによって、IFNτ治療についての免疫系関係性の有害な副作用の危険を低減させる。
【0085】
(III.使用方法)
第一の局面において、本発明は、インターフェロン治療に応答性の疾患または状態をヒト被験体において処置するための方法を提供する。「インターフェロン治療に応答性」状態とは、その状態の存在、進行または症状が、インターフェロン(特にI型インターフェロン、さらに具体的にはIFN−τ)の投与に基づき変更される状態である。IFNαまたはIFNβを用いた処置に応答する状態はまた、IFNτを用いた処置に応答し得る。より好ましくは、インターフェロン治療に応答性の状態は、その状態の存在、進行または症状が、非経口経路(例えば、注射)で投与されたIFNτによって緩和される。本明細中に記載される方法は、被験体の血中OASレベルの増加によって証明される、治療に有効な量を、胃および/または小腸への投与のため、経口投与可能な形態でIFNτを提供することを包含する。
【0086】
IFNτは、抗ウイルス剤として、抗増殖剤として、および自己免疫疾患の処置において、生物学的活性を持つ(例えば、米国特許第5,958,402号;同第5,942,223号;同第6,060,450号;同第6,372,206号を参照する。これらは本明細中で参考として援用される)。従って、本発明は、注射により投与した場合にIFN−τに応答性の任意の状態の処置のための、IFNτの経口投与を企図する。本発明の方法を使用して処置し得る状態および疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、および増殖亢進性疾患、ならびに免疫学的媒介性の疾患が挙げられる。
【0087】
(A.免疫系障害の処置)
本発明の方法は、免疫系過敏症が関係する状態の処置に有益である。免疫系過敏症には4つの型がある(Clayman,C.B.編、AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION ENCYCLOPEDIA OF MEDICINE,Random House,New York,N.Y.,(1991))。I型過敏症、すなわち即時型過敏症/アナフィラキシー過敏症は、アレルゲン(例えば、花粉等)に応答した肥満細胞の脱顆粒に起因し、そして喘息、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、蕁麻疹、アナフィラキーショック、およびアレルギー性質の他の疾病が含まれる。II型過敏症、すなわち自己免疫過敏症は、自己体内細胞上での感知された「抗原」に対する抗体に起因する。III型過敏症は、種々の組織に留まりそしてさらなる免疫応答を活性化し、そして血清疾患、アレルギー性肺胞炎、および追加ワクチン摂取後に時折形成される大腫張のような状態の原因である、抗原/抗体免疫複合体の形成に起因する。IV型過敏症は、感作したT細胞からのリンホカインの放出に起因し、この放出は炎症性反応を生じる。例としては、接触性皮膚炎、麻疹の発疹、および特定の化学物質に対する「アレルギー性」反応が含まれる。
【0088】
一部の個人において、特定の状態が過敏症を生じる機構は全体的に十分には理解されていないが、遺伝的要因と外部要因との両方が関係している可能性がある。例えば、自己免疫障害に対する遺伝的素質を既に有する個人において、細菌、ウイルスまたは薬物は自己免疫応答を引き起こす役割を果たし得る。一部の型の過敏症の発生率は他のものに関連する場合があると示唆されている。例えば、特定の一般的なアレルギーを有する個人は、自己免疫障害により感受性であると提唱されている。
【0089】
自己免疫障害は、特定の器官または組織に本質的に限定されるもの、および全身に影響を与えるものに、大まかにグループ分けされ得る。器官特異的障害(および影響を受ける臓器)の例としては、多発性硬化症(神経突起のミエリン被覆)、I型真性糖尿病(膵臓)、橋本甲状腺炎(甲状腺)、悪性貧血(胃)、アジソン病(副腎)、重症筋無力症(神経筋接合部のアセチルコリンレセプター)、リウマチ様関節炎(関節裏側)、ブドウ膜炎(眼)、乾癬(皮膚)、ギラン−バレー症候群(神経細胞)、およびグレーブス病(甲状腺)が挙げられる。全身性自己免疫疾患としては、全身性紅斑性狼瘡および皮膚筋炎が挙げられる。
【0090】
過敏性障害の他の例としては、喘息、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、その他湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、鼻炎、扁平苔癬、天疱瘡(Pemplugus)、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、ブドウ膜炎(uritcaris)、血管性浮腫、脈管炎(vasculitides)、紅斑、皮膚好酸球増加症、円形脱毛症、アテローム性動脈硬化症、原発胆汁性肝硬変、およびネフローゼ症候群が挙げられる。関係する疾患としては、炎症性腸疾患(例えば、セリアック病、直腸炎、好酸球増加胃腸炎、肥満細胞症、炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎)、および食物関連アレルギーが挙げられる。
【0091】
本発明の方法を使用した処置に特に感受性の自己免疫疾患としては、多発性硬化症、I型(インシュリン依存性)真性糖尿病、紅斑性狼瘡、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、慢性関節リウマチ、口内炎、喘息、ブドウ膜炎、アレルギー、および乾癬が挙げられる。
【0092】
本発明の方法を使用して、自己免疫障害(例えば、上記に考察されたもの)を治療的処置を行い、そしてこれによってその自己免疫障害を緩和する。自己免疫障害の処置は、多発性硬化症の動物モデルであるEAEの処置に関して本明細書中に例証される。自己免疫障害を処置するために使用する場合、IFNτは、IFNτ投与の初期の間にOASの測定可能な増加を達成するのに十分な用量で投与される。一旦、所望する有効用量が達成されると、血中OASレベルのさらなる変化に関係なく、長期にわたって有効量のIFNτで患者を処置する。処置期間は、少なくとも患者が症候性である期間にわたる。自己免疫状態に関連する症状が停止したら、投薬量を調整して下げ得るか、または処置を停止し得る。IFNτの処置期間中、患者は、他の薬剤(例えば、公知の抗炎症剤または免疫抑制剤)と共に同時処置され得る。
【0093】
(B.ウイルス感染の処置)
また本発明の方法を使用して、ウイルス感染が関係する状態を処置する。IFNτの抗ウイルス活性は、IFNαが通常関係する毒性効果を伴うことなく幅広い治療的適用を有しており、そしてIFNτは細胞に対する有害な効果を伴わずにその治療活性を発揮する。IFNτが細胞毒性を比較的持たないことは、インビボ治療薬剤としてこのIFNτを非常に高く価値付け、そして大半の他の公知の抗ウイルス剤および他の全ての公知のインターフェロンから、IFNτを区別させる。
【0094】
ウイルス複製を抑制するため、IFNτを含有する処方物を経口投与し得る。ウイルス感染を処置する使用のため、このタンパク質を、患者の血中OASにおける測定可能な増加を達成するのに十分な用量で投与する。その後、血中OASレベルのさらなる変化(例えば、ウイルス負荷の低減に起因した血中OASレベルの下降)とは無関係に、処置を有効用量で継続する。IFNτの投与を、ウイルス感染レベル(例えば、血中ウイルス力価あるいはウイルス感染に伴う症状の臨床的観察等から測定される)が低下するまで継続する。経口投与されるIFNτによって処置し得る特定のウイルス疾患の例としては、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、非A型肝炎、非B型肝炎、非C型肝炎、エプスタイン−バーウイルス感染、HIV感染、ヘルペスウイルス(EB、CML、単純ヘルペス)、乳頭腫、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、リノウイルス、HTLV I、HTLV II、およびヒトロタウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。この治療期間の間、患者は、第二の抗ウイルス剤(例えば、ヌクレオチド類似体、アンチセンス薬剤など)と共に同時処置され得る。
【0095】
(C.細胞増殖状態を処置するための方法)
別の実施形態において、本発明の方法は、過増殖によって特徴づけられる状態を治療するために企図される。IFNτは強力な抗細胞増殖活性を呈する。従って、調節されない細胞増殖を阻害、予防、あるいは遅延させるため、IFNτを経口投与することにより細胞増殖を阻害する方法が企図される。
【0096】
IFNτを経口投与することによって処置され得る、特定の細胞増殖障害の例としては、ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄白血病、多発性骨髄腫、表在性膀胱癌、皮膚癌(基底細胞癌腫および悪性黒色腫)、腎細胞癌腫、卵巣癌、軽度リンパ球性リンパ腫および皮膚性T細胞リンパ腫、ならびに神経膠腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
細胞増殖状態を処置する使用のため、IFNτは、患者の血中OASについの初期の測定可能な増加を達成するのに十分な用量で投与される。その後処置は、血中OASレベルのさらなる変化(例えば、体内の癌細胞の減少によるOAS血中レベルの下降)に関係なく、有効投与量で継続される。有効用量でのIFNτの投与は、例えば、特定の組織における腫瘍の大きさまたは癌細胞の広がりによって測定される場合、所望する緩解レベルが観察されるまで継続される。この治療期間の間、患者は、第二の抗癌剤(例えば、シスプラチン、ドキソルビシン、またはタキソール)と共に同時処置され得る。
【0098】
(D.組成物と投与量)
IFNτを含有する経口調製物は、薬学的組成物を調製するための公知の方法に従って処方され得る。一般に、IFNτ治療組成物は、この組成物の効果的な経口投与を容易にするため、有効投与量のIFNτが、適切な添加剤、担体および/または賦形剤と混ぜられるように処方される。例えば、IFNτを含む錠剤およびカプセルは、薬学的に受容可能な担体(例えば、乳糖、コーンスターチ、微結晶セルロース、シュークロース)、結合剤(例えば、澱粉アルファ体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、低度に置換されたヒドロキシプロピルセルロース)、界面活性剤(例えば、Tween80、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体)、酸化防止剤(例えば、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム)、および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)のような添加物とIFNτ(例えば、凍結乾燥IFNτ)を組み合わせることによって調製され得る。
【0099】
さらに本発明のIFNτポリペプチドは、固形、粉状あるいはその他の担体(例えば、乳糖、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、ポテトデンプンおよびコーンスターチのようなデンプン、ミロペクチン(millopectine)、セルロース誘導体、またはゼラチン)と混合され得、そしてまた、錠剤形成に対して圧縮される、滑沢剤(例えば、マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム)、またはポリエチレングリコールのワックスを包含し得る。数層の担体または稀釈剤を用いることによって、徐放性に作動する錠剤を調製し得る。
【0100】
経口投与のための液体調製物(例えば、約0.1〜約30重量%のIFNτ、糖、ならびにエタノール、水、グリセロール、プロピレン、グリコールおよび一般的な性質の他の可能性のある添加剤からなる混合物を含有する溶液)は、エリキシル、シロップ、あるいは懸濁液の形態で作製され得る。
【0101】
別の適切な処方物は、腸粘膜によって吸収されるまで胃および腸内で存続するようこのタンパク質を保護する、被包薬型投薬形態である。タンパク質のための被包薬型投薬形態は当分野で公知であり、そしてこれには、腸溶コーティングおよび/または粘膜接着性ポリマーコーティングが挙げられる。粘膜接着性ポリマー処方物の例示としては、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragit(登録商標)、カルボキシビニルポリマー、カルボマー等が挙げられる。IFNτの活性形態での腸管(特に小腸)への送達のため、経口摂取を介した胃への投与のために設計された投与形態が、企図される。あるいは、IFNτは、胃環境および/または腸環境に対する多少の保護作用を提供するために、高分子物質で安定化させるかまたは脂質もしくポリマー粒子でカプセル化したプロテアーゼインヒビターと共に同時投与され得る。
【0102】
経口活性IFNτ薬学的組成物は治療的有効量で処置を必要とする個体に投与される。投用量は著しく変動し得、障害の重篤度、患者の年齢および体重、その患者が受けている他の医学的処置などの要因に依存する。代表的には担当医がこの用量または投薬量を決定する。投薬量は代表的には約1×104単位/日〜1×1010単位/日の間となり、より好ましくは約5×108単位/日を超え、約1×109単位/日を超えることが好ましい。
【0103】
血漿中のIFNτレベルが安定して上昇することが必要とされる疾患は、約2〜4時間ごとくらいの投与が有益となり、他の疾患(例えば、多発性硬化症)は、例えば、1日1回あるいは48時間ごとに1回のより少ない頻度間隔で治療的有効用量を投与することによって効果的に処置され得る。個々の用量の投与割合は、代表的には、処置される疾患の重篤度を緩和しながら最低総投薬量の投与を可能とするよう担当医によって調整される。上記に考察されるように、この方法は、処置を必要とする患者に、第一の用量でIFNτを経口投与し、この第一の投薬レベルに対する個々の被験体の応答を決定するための生物学的マーカーをモニタリングすることを企図する。モニタリングは血液採取およびマーカー(例えば、血液中のOAS酵素)の分析(例えば、放射免疫アッセイキットを使用して)を介して容易に行われ得る。また、モニタリングは、血液採取および細胞(例えば、血中リンパ球)中のOAS mRNA発現量の分析を介して行われ得る。従って、別の局面において、本発明は、IFNτに応答性の状態を患う者を処置する際に使用するためのキットを企図する。このキットは、IFNτ経口投与のために設計された1回以上の投薬量形態単位を収容する容器からなる第一部分、および、生物性マーカーをモニタリングするのに必要とされる構成要素(例えば、IFNτの血中OAS酵素またはmRNAレベルを分析するのに必要とされる構成要素)からなる第二部分、を備える。
【0104】
一旦、患者の状態の改善が生じると、必要に応じて維持用量が投与される。続いて、投薬量もしくは投与の頻度、またはその両方を、症状の関数として、改善された状態が維持されるレベルに低減され得る。
【0105】
当然ながら、本発明に従ったIFNτの経口投与は、他の治療と併用して使用され得るが、理解される。例えば、IFNτは、、自己免疫応答が指向される抗原の投与を付随され得る。例としては、多発性硬化症を処置するためのミエリン塩基性タンパク質とIFNτとの共投与;慢性関節リウマチを処置するためのコラーゲンとIFNτとの共投与、および重症筋無力症を処置するためのアセチルコリンレセプターポリペプチドとIFNτとの共投与、が挙げられる。
【0106】
さらに、多発性硬化症のような自己免疫疾患を治療するために、公知の免疫抑制剤(例えば、ステロイド)と共に、IFNτは経口投与され得る。これら免疫抑制剤は、IFNτと共同的に作用し得、そしてIFNτ単独または免疫抑制剤単独の等価用量で得られ得る処置効果よりも、より大きな処置効果をもたらし得る。
【0107】
同様に癌あるいはウイルス疾患に対する処置において、、えば、治療的有効量の1つ以上の化学治療薬(例えば、ブスルファン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ジドブジン(AZT)、ロイコボリン、メルファラン、プレドニゾン、シクロホスファミド、ダカルバジン、シスプラチン、ジピリダモールなど)と併用して、IFNτが投与され得る。
【実施例】
【0108】
(IV.実施例)
以下の実施例は、本明細書中に記載される本発明をさらに例示するものであって、本発明の範囲を限定することは決して意図されない。
【0109】
(材料と方法)
(A.IFNτの作製)
一実施形態において、標準分子学的方法(Ausubelら、1988)を用いて、IFNτアミノ酸配列をコードするDNA配列の連続部分を含有するオリゴヌクレオチドを連結させることによって、合成IFNτ遺伝子を作製した。使用したDNA配列は配列番号1もしくは配列番号4、またはImakawaら、1987で示されている配列のいずれかであり得る。得られたIFNτポリヌクレオチドをコードする配列は、16位〜531位にまたがり得、172アミノ酸のコーディング配列である。
【0110】
一実施形態において、完全長の合成遺伝子StuI/SStlフラグメント(540bp)を改変pIN III omp−A発現ベクター中にクローニングし得、そしてE.coliのコンピテントなSB221株を形質転換し得る。IFNτタンパク質発現のため、発現ベクターを保有する細胞を、アンピシリンを含有するLブロスでOD(550nm)0.1〜1に増殖させ、IPTG(イソプロピル−1−チオ−b−D−ガラクトシド)で3時間誘導し、そして遠心分離によって収集した。超音波処理あるいは浸透分画によって、可溶性の組換えIFNτを細胞から遊離させ得る。
【0111】
酵母での発現のため、StuI制限部位およびSacI制限部位をそれぞれ5’末端および3’末端に含有するPCRプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR;Mullis,K.B.、1987年7月28日発行の米国特許第4,683,202号、Mullis,K.B.ら、1987年7月28日発行の米国特許第4,683,195号)を用いて、IFN−τ遺伝子を増幅し得る。増幅した断片をStuIおよびSacIIで消化し、そしてpBLUESCRIPT+(KS)のSacII部位およびSmaI部位にライゲーションして、pBSY−IFNτを作製した。プラスミドpBSY−IFNτをSacIIおよびEcoRVで消化し、そして合成IFN−τ遺伝子を含有するフラグメントを単離した。酵母発現ベクターpBS24Ub(Ecker,D.J.ら、J.Biol.Chem.264:7715−7719(1989))をSalIで消化した。T4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端を調製した。このベクターDNAをフェノールで抽出し、そしてエタノール沈殿した(Sambrook,J.ら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989))。回収したプラスミドをSacIIで消化し、アガロース電気泳動によって精製し、そしてpBSY−IFN−τから単離したSacII−EcoRVフラグメントにライゲーションした。得られた組換えプラスミドをpBS24Ub−IFNτと名付けた。
【0112】
組換えプラスミドpBS24Ub−IFNτをE.coliに形質転換した。IFN−τ挿入部を含有する組換えクローンを単離し、そして制限酵素分析によって同定した。IFN−τをコードする配列をpBS24Ub−IFN−τから単離し、そしてアルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターを含有するPichia pastorisベクター(Invitrogen,San Diego,CA)中にクローニングした。次にこのベクターを使用してPichia pastoris GS115 His−宿主細胞を形質転換し、そして製造者の指示書に従ってタンパク質を発現させた。タンパク質は培地中に分泌され、そして連続したDEAEセルロースカラムクロマトグラフィーおよびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによって、SDS−PAGEおよび銀染色によって決定する場合に電気泳動的に均一へと精製した。
【0113】
(B.抗ウイルス比活性を決定するための抗ウイルスアッセイ)
標準的な細胞変性効果アッセイ(Familletti,P.C.ら、Methods in Enzymology,78:387−394(1981);Rubinstein,S.ら、J.Virol.,37:755−758(1981))を用いて抗ウイルス活性を測定した。概略を述べると、IFNτ稀釈物をMadin−Darbyウシ腎(MDBK)細胞と共に37℃で16〜18時間インキュベートした。インキュベーション後、攻撃物として水疱性口内炎ウイルスを使用する細胞変性効果アッセイにて、ウイルス複製の抑制を決定した。1抗ウイルス単位(U)は、単層破壊を50%減少させた。本明細書中に記載される研究の大半で、IFNτは、1mgタンパク質あたり約4.9×108抗ウイルス単位という比活性を有していた。
【0114】
(実施例1)
(マウスに経口投与および腹腔内投与したヒツジIFNτを用いたOASの誘導)
IFNτ(1mgタンパク質あたり4.99×108単位;Pepgen Corp.,California、またはBiological Process Development Facility,Dept.of Food Science and Technology,University of NE−Lincoln,Lincoln,NE;配列番号4)を10%マルトース溶液に溶解して、IFNτ溶液を調製した。本発明ではIFNτ(配列番号2)の使用も企図する。200μlのIFNτ溶液を、20ゲージのディスポーザブル経口ゾンデ(Fuchigami,Kyoto)を使用してICRマウス(平均体重約30g、6週齢、メス)に経口投与し、胃の上部へ直接注入した(消化器投与;GA)。
【0115】
腹腔内投与(i.p.)には、100μlのIFNτ溶液を使用した。胃の上部へのサンプルの注入を、色素を投与することによって確認した。投与して24時間後に、このマウスをネンブタールで麻酔した。このマウスの心臓から血液を採取し、そして2−5A RIAキット(Eiken Chemical,Tokyo;Shindo,M.ら、Hepatology,9:715−719(1989))によって全血中のOAS活性を決定した。
【0116】
これらの結果を図1に示す。
【0117】
(実施例2)
(マウスへのIFNτ経口投与による、用量依存的OAS誘導)
実施例1と同じ手順を用いて、0単位、103単位、104単位、または105単位のIFNτをICRマウスに経口投与した。経口投与して24時間後に、このマウスの心臓から全血を採取し、全血中のOAS活性を決定した。これらの結果を図2に示す。
【0118】
(実施例3)
(マウスへのIFNτ投与)
病原体を持たない5週齢メスのICR系統マウス、BALB/c系統マウス、C57BL/9系統マウス、NZW/N系統マウス、およびSJL/J系統マウスを、Japan SLC.Inc.,Hamamatsuから購入した。これらのマウスは実験前1週間、研究室にて飼育した。
【0119】
本明細書中に配列番号3と同定される配列を有する組換えヒツジIFN−τ(IFN−」τ)を入手した(Pepgen Corporation,Alameda,CA)。この研究で使用した調製物は、VSVを用いてチャレンジしたMDBK細胞において分析し、そしてヒトIFN−αに対して標準化した場合、1mgタンパク質あたり5×108単位(U)の比活性を有した。天然のマウスIFN−α(MuIFN−α)をSumitomo Pharmaceutical Co.(Osaka,Japan)から調達し、その比活性は1mgタンパク質あたり1×108国際単位(IU)であった。
【0120】
マウスへの投与のため、IFN−τを、10%マルトースを含有する溶液に溶解した。経口(p.o.)処置または腹腔内(i.p.)注射のいずれかによって、0.2mlのサンプルをマウス(6週齢メス)に投与した。経口的に与える場合、20ゲージ経口摂取用ニードルを用いて、サンプルを直接胃の上部へ導入した。投与の前に6時間(午後1時に始めて午後7時に終了した)、マウスから食餌と飲料の両方を絶った。絶食の後、経口経路または腹腔内経路のいずれかによってIFNτを投与し、6時間目に食餌と飲料を与えた。次いで24時間目に心臓から全血を採取した。
【0121】
Eikenの2−5A RIAキットを用いて、全血中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)活性を測定した。稀釈した血液をポリI:C−アガロースゲルと混合し、ゲルを洗浄後ATPを加えた。そして産生した2−5AをRIA法(Shindo,M.ら、Hepatology,9:715−719(1989))によってアッセイした。このアッセイは各試料につき2回行った。血中OASレベル評価のため、少なくとも3匹のマウスを使用した。
【0122】
(実施例4)
(ヒト被験体におけるIFN−τの経口投与によるALTの減少、HCVウイルス力価の減少、およびOAS誘導)
(A.IFN−τの調製)
1日目に、冷蔵庫からIFNτ(配列番号4)を1ビン取り出し、被験体は表2に従って正しい量の試験物質を自己投薬した。また、IFNτ(配列番号2)を調製して同様の様式で投与し得る。
【0123】
【表2】
(B.患者の投薬指示)
試験物質のバイアルおよび注射器は全て、2℃から8℃に維持した冷蔵庫内に保管した。医薬品を自己投薬する前に、患者はバイアル1つおよび注射器1つ冷蔵庫から取り出した。注射器先端のキャップをはずし、この注射器先端を医薬品容器内に入れ、臨床第1日目に指示された適切な容量を注射器内に吸い取った。
【0124】
注射器先端を口の中へ入れ、プランジャーを押して口内へと注射器内容物を空にした。次に被験体は試験物質を飲み込んだ。所望の場合、患者はグラス1杯の水を飲むことが許可された。患者は自分の日誌カードに、1用量の試験物質を投与した日付および時間を記入した。
【0125】
上記手順を1日3回、約8時間間隔(朝に1回、昼に1回そして晩に1回)で繰り返した。
【0126】
(C.結果)
169日の試験期間に渡って、規定の間隔で血液サンプルを採取した。2−5A RIAキット(Eiken Chemical,Tokyo)を使用して、このサンプルを、血清中および末梢血液単核細胞(PBMC)中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベルについて分析した。稀釈した血液をポリI:C−アガロースゲルと共に混合し、ゲルを洗浄後ATPを加え、RIA法(Shindo,M.ら、Hepatology,9:715−719(1989))によって、産生した2−5Aを測定した。このアッセイは各試料につき2回行った。また、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を用いてC型肝炎ウイルスの力価も測定し、そしてアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中濃度も測定した。
【0127】
各被験体についての結果を以下の表3〜5に示し、図7〜8にグラフ表示する。ヒツジIFN−τの経口投与後、OASレベルの上昇と、ALTおよびウイルス力価の減少とを観察した。
【0128】
【表3A】
【0129】
【表3B】
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
。
【0132】
(実施例5)
(経口投与したOvIFNτは実験的アレルギー性脳脊髄炎の発症をブロックする)
レシピエントのニュージーランドホワイト(NZW)マウスに、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)誘発のためにウシミエリン塩基性タンパク質(bMBP)で免疫する48時間前、免疫した当日、および免疫した48時間後に、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによってOvIFNτ(105U/ml)を与えた。105UのIFNτをPBSと混合して全量を100μLとし、食道を下降して胃内部に配置した給餌チューブを使用して投与した。IFNτのリン酸緩衝化生理食塩水への稀釈は、投与の直前に行った。
【0133】
NZWマウスにおけるEAE誘発のため、300μgのウシミエリン塩基性タンパク質(bMBP)を、8mg/mLのH37Ra(Mycobacterium tuberculosis,Difco,Detroit,MI)を含有する完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化し、そして尾の根元の一方の側に注射した。また、免疫した当日および48時間後に、400ngの百日咳毒素(List Biologicals,Campbell,CA)も注射した。SJL/JマウスのEAE誘発には、初回免疫後7日目に再免疫する点を除いて、同じプロトコルを記載したように用いた。EAEの兆候についてマウスを毎日調べ、疾患の重篤度を次の尺度に基づいて程度分けした。:
【0134】
【数3】
EAEの予防がOvIFNτ処置に特異的であるかのどうかを決定するため、抗OvIFNτモノクローナル抗体(mAb)(HL127)を使用して、OvIFNτがEAEを妨げる能力を中和した(HL127抗体、配列番号2の139〜172番目のアミノ酸配列に対する抗体、MDBK細胞系を使用した抗ウイルスアッセイにおいてOvIFNτの抗ウイルス活性を中和する)。腹腔内注射または経口摂取のいずれかによる投与前に、HL127の1:10稀釈物をOvIFNτと共に2時間インキュベートした。IFNτ抗原に対する抗体を、本明細書中の情報を抗体産生のための公知技術(例えば、Harlow,E.ら、ANTIBODIES:A LABPRATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1988))と組み合わせて使用して、調製し得る。
【0135】
結果を以下の表6に示す。IFNτの経口摂取と腹腔内注射のいずれもEAEの急性誘発に対して防御した。腹腔内注射経由でIFNτを与えた動物でEAEの症状を発症するものは無かったが、OvIFNτを経口的に与えた動物に関しては、9匹中7匹(78%)を防御した。抗OvIFNτ抗体HL127は、OvIFNτがEAEをブロックする能力を部分的に中和するのに有効であった。これらのデータは、多発性硬化症の動物モデルにおいて、経口投与したIFNτが処置として有効であることを示す。
【0136】
【表6】
(実施例6)
(経口投与後の血清中のOvIFNτの検出)
OvIFNτの経口摂取または腹腔内注射の後、マウス(上記のように処置した)の血清中に検出可能なOvIFNτ量を時間経過とともに比較した。マウスに3×105UのOvIFNτを投与し、IFNτ投与の0.5時間後、2時間後、4時間後、6時間後、24時間後および48時間後に採血した。サンプル中のIFNτ量を決定するため、細胞変性効果(ウイルスプラーク)アッセイ(Familetti,P.C.ら、Meth.Enzymol.78:387(1981))において血清を試験した。
【0137】
概略を述べると、平底96ウェルプレート内でコンフルエントまで増殖させたMDBK細胞にIFNτ稀釈物を加え、37℃で18〜24時間培養した。室温で45分間、このプレートに水疱性口内炎ウイルス(VSV)を加えた。ウイルスを除去し、メチルセルロースを加え、このプレートを37℃で48時間インキュベートした。メチルセルロースを除去後、プラークの視認化のため、プレートをクリスタルバイオレットで染色した。IFNの中和作用を測定するため、500U/mL濃度のOvIFNτを血清またはHL127(OvIFNτに特異的なモノクローナル抗体)のいずれかと共に37℃で1時間インキュベートした。1抗ウイルス単位は、VSVに感染させた未処理MDBK細胞(コントロールプレート)と比較して単層の破壊が50%減少させた。アッセイ間の差異を除くため、全てのサンプルを同時にアッセイした。
【0138】
図9で示したように、経口摂取(塗りつぶされたバー)して0.5時間後および2時間後に、200U/mLのレベルでOvIFNτを検出した。比較すると、腹腔内注射(白抜きのバー)後、24時間にわたって幾分より高いレベルのOvIFNτを検出した。これらのデータは、上記用量のIFNτを、経口投与後約2時間、血清中にて検出し得ることを示す。
【0139】
(実施例7)
(OvIFNτの経口的投与による、実験的アレルギー性脳脊髄炎の慢性再発の予防)
EAEの慢性再発モデルを使用して、OvIFNτが麻痺を予防する能力を試験した。ここで、MBPで免疫したSJLマウスは、再発緩和化様式で症状の出現が起る慢性型疾患を発症する(Zamvil,S.S.ら、Ann.Rev.Immunol.8:578−621(1990))。
【0140】
上記のように、SJLマウスでは基本的にEAEが誘発された。このマウスを、免疫当日(0日目)およびその後の実験期間中48時間ごとに、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによって、105UのIFNτで処置した。結果を図10Aに示す。MBPで免疫したがIFNτ処置を受けなかったSJLマウスは、発病率5/5で慢性再発性麻痺を発症し、最大平均重篤度約2.5は、実験開始後14日目に生じた。対照的に、腹腔内注射または経口摂取のいずれか(それぞれ、図10B、図10C)によるOvIFNτでの処置は、EAEからの防御を生じた。両方のIFNτ処置グループの発症率は、1匹/5匹に減少し、平均重篤度約1.0であった。これらのデータは、IFNτの経口投与が慢性再発性EAEの発症をブロックし得ることを示し、そして延長した期間にわたって約48時間ごとにIFNτを摂取させた場合、経口投与したIFNτが腹腔内注射と同程度に有効であり得ることを示す。
【0141】
(実施例8)
(組織学的分析)
経口経路および腹腔内経路によってOvIFNτで処置したMBP免疫マウスのCNS内に、リンパ球が浸潤する程度を判定するため、組織学的分析を行った。
【0142】
4%パラホルムアルデヒドでマウスを灌流し、脊柱を取り出して2〜3日間ホルマリンで処理した。脊髄を解剖して取り出し、0.5%のシュクロースに4℃で一晩浸漬した。脊髄切片を包埋し、ミクロトームで切片をカットした。4%パラホルムアルデヒド中に切片をスライドガラスに固定し、炎症性浸潤が目視できるようにクレージルバイオレットで染色した。
【0143】
結果を最終倍率222×で図11A〜11Cに示す。コントロール脊髄の白質にリンパ性病変が存在した(図11A)。対照的に、腹腔内注射(図11B)あるいは経口摂取(図11C)によってOvIFNτで処置したマウスにおいて、リンパ球浸潤を検出しなかった。これらのデータは、IFNτの防御効果がCNSのリンパ球浸潤抑制に関係することを示す。
【0144】
(実施例9)
(OvIFNτ処置によるIL−10の誘導)
慢性再発性EAEの予防のためにSJLをOvIFNτ処置する過程の間に、マウスから採血し、そしてインターロイキン10(IL−10)の存在について血清を調べた。製造者の指示書に従ってIL−10 ELISAキット(Genzyme,Cambridge,MA)を使用する固相酵素免疫検定法(ELISA)によって、IFNτ(105U)を1回処置した(腹腔内注射または経口摂取によって)マウス、長期間IFNτ(105U)処置したマウス(腹腔内注射または経口摂取によって20日を超える間)、または未処置マウスのいずれかに由来する血清を、IL−10について試験した。全血清サンプルは2つ組で試験した。
【0145】
細胞増殖状態を処置する使用のため、患者における血中OASの測定可能な初期増加を達成するのに十分な用量で、IFNτを投与する。その後、血中OASレベルのさらなる変化(例えば、体内の癌細胞の減少に起因してOAS血中レベルの下降)に関係なく、有効用量で処置を継続する。所望のレベルの退縮が認められるまで有効用量でのIFNτの投与を継続する。この退縮は、例えば、特定の組織における腫瘍の大きさ、または癌細胞の広がりによって測定する。この治療期間中に、患者に、第二の抗癌剤(例えば、シスプラチン、ドクソルビシン、またはタキソール)と共に同時処置し得る。長期間のIFNτ(105U)処置(腹腔内注射または経口摂取によって20日を越える間)、または未処置をIL−10について、製造者の指示書に従ってIL−10 ELISAキット(Genzyme,Cambridge,MA)を使用する固相酵素免疫検定法(ELISA)によって試験した。全血清サンプルは2つ組で試験した。
【0146】
結果を図12に示す。コントロールマウスにおいても、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによるOvIFNτを1回処置を受けたマウスにおいても、IL−10を検出しなかった。対照的に、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによって、20日を超える間、48時間ごとにOvIFNτを受けたSJLマウスは、血清中に検出可能なレベルのIL−10を有した。IFNτ誘導性のIL−10産生は、OvIFNτがEAEの発症を防止する寄与機構であり得ることを、これらのデータは示唆する。
【0147】
(実施例10)
(OvIFNτでの処置の停止は再発性麻痺を生じる)
腹腔内注射または経口摂取のいずれかによるOvIFNτ処置(48時間ごと)によってEAEより防御したSJLマウスを、その後58日間続けた。この期間中疾患の発症は観察されなかった。次にOvIFNτ処置を解除し、そして疾患の症状についてさらに22日間マウスを観察した。
【0148】
結果を図13に示す。IFNτ処置をグラフ下のプラス記号として表示し、IFNτ処置の解除をマイナス記号として表示する。各々の処置グループにおける疾患率は以下の通りであった:PBSコントロール=3/4(四角);腹腔内注射=3/3(三角);経口摂取=3/4(丸)。
【0149】
それまでOvIFNτ処置によってEAEから防御されていた両グループのマウスは、OvIFNτ処置を解除後6〜12日目に麻痺の兆候を発症した。これらのデータは、EAEの慢性再発モデルにおいて継続的にEAEから防御するため、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによって、IFNτの継続的投与が望ましいことを示唆する。
【0150】
(実施例11)
(OvIFNτの経口投与は抗OvIFNτ抗体応答を低減させる)
上記の実施例10にて記載した実験においてOvIFNτ処置を解除した後、各々の処置グループのマウスから採血し、そして抗OvIFNτ抗体(Ab)の存在について血清を試験した。
【0151】
抗原OvIFNτは600ng/ウェルの濃度で一晩、プラスチックの組織培養ウェルの平底に吸着させ、続いて乾燥するまでエバポレートした。非特異的な結合を防ぐため、5%乳液(カーネーション)のPBS溶液でこのプレートを2時間処理し、次に0.05%のTween20を含有するPBSで3回洗浄した。未処理のマウス由来の血清、腹腔内注射によってOvIFNτ処置をしたマウス由来の血清、および経口摂取によってOvIFNτ処置をしたマウス由来の血清の様々な稀釈物を加え、3時間インキュベートした。西洋ワサビパーオキシダーゼ結合化ヤギ抗マウス免疫グロブリンを用いて結合を分析した。o−フェニレンジアミンおよびH2O2を添加し、2MのH2SO4で反応を終結させた後、ELISAプレートリーダー(Bio−Rad,Richmond,CA)において、492nmで発色をモニタリングした。
【0152】
例示的な結果を図14に示す。未処理由来、腹腔内注射OvIFNτ投与由来、および経口摂取OvIFNτ投与由来(1グループあたり2匹)の血清を、1:30(白抜きのバー)および1:120(塗りつぶしたバー)を含む多重稀釈法を使用して、ELISAによって試験した。経口摂取によってOvIFNτを受けたマウスは、わずかな抗体レベルを呈し、一方、腹腔内注射によってOvIFNτを受けたマウスでは、抗OvIFNτ抗体レベルの上昇を提示した。予想の通り、OvIFNτ処置を受けなかったマウスは抗OvIFNτ抗体を示さなかった。
【0153】
上記のように、MDBK細胞に対するOvIFNτの抗ウイルス活性を中和する能力についても、血清を調べた。結果を以下の表7に示す。腹腔内注射マウス由来の血清も経口摂取のマウス由来の血清も、いずれも中和活性を持たなかった。これらのデータは、IFNτでの経口処置は、腹腔内注射処置した個体において観察されたOvIFNτタンパク質に対する抗体応答が回避され、そしてどちらの処置でも、概して中和抗体を生じないことを示唆している。
【0154】
【表7】
本発明を特定の実施例に関連づけて記載したが、本発明から逸脱せずに、様々な変更および変法が可能であることは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は、健常マウスへIFN−τを腹腔内(i.p.)あるいは消化器投与した後の血中OAS濃度をpmol/dLで示す。
【図2】図2は、1×103U、1×104Uおよび1×105Uの投薬量でIFNτをマウスへ消化器投与した際の血中OAS濃度をpmol/dLで示す。
【図3】図3は、IFNτ(105U)を経口投与した後の、数種のマウス系統(ICR、BALB/c、C57BL、NZW/NおよびSJL/J)の血中OAS濃度をpmol/dLで示す棒グラフである。コントロールのマウスは、IFNτを含まない10%マルトース溶液を経口的に受けた。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3〜5匹のマウス)の平均値±S.E.を示している。
【図4A】図4A〜4Bは、6時間の絶食後にIFNτを投与した後の、マウスの血中OAS活性の誘導を示す棒グラフである。IFNτは経口投与されるかまたは腹腔内注射により投与した。図4Aは、IFNτ(105U)投与後0時間目、8時間目、16時間目、および24時間目に採取した血液サンプルにおける、血中OASレベルを示す。インターフェロンを含まない10%マルトース溶液で処置したマウスの血中OASとして得たコントロールに対する百分率として表している。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3匹のマウス)の平均値±S.E.を示している。
【図4B】図4A〜4Bは、6時間の絶食後にIFNτを投与した後の、マウスの血中OAS活性の誘導を示す棒グラフである。IFNτは経口投与されるかまたは腹腔内注射により投与した。図4Bは、0U、102U、103U、104U、および105Uの濃度でIFNτを送達した24時間後の血中OAS濃度を示し、コントロールに対するパーセンテージとして表す。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3匹のマウス)の平均値±S.E.を示している。
【図5】図5A〜5Dは、IFN−τ投与によるマウスの血中OASの誘導に対する、断食状態の効果を示す棒グラフである。血中OASの誘導は、インターフェロンを含まない10%マルトース溶液で処置したマウスの血中OASとして得たコントロールに対する百分率として示される。処置されたマウスは、記載した摂取レジメンの6時間後に104UのIFNτを(腹腔内注射または経口投与により)与えた。図5Aは食餌も飲水もなし;図5Bは飲水で食餌なし、図5Cは食餌で飲水なし、図5Dは食餌および飲水の両方。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3匹のマウス)の平均値±S.E.を表す。
【図6】図6は、経口的にかまたは腹腔内注入によりICRマウスへ与えられたマウスIFNα(0IU、102IU、103IU、および104IU)の投与によって、血中OAS活性の誘導を示す棒グラフであり、インターフェロンを含まない10%マルトース溶液で処置したマウスの血中OASとして得たコントロールに対する百分率として表される。血中のOAS活性はIFNα投与の16時間後にアッセイされた。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3匹のマウス)の平均値±S.E.を表す。
【図7A】図7A〜7Cは、1日当たり4.9×108単位のIFNτの経口投与後の、3人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図7B】図7A〜7Cは、1日当たり4.9×108単位のIFNτの経口投与後の、3人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図7C】図7A〜7Cは、1日当たり4.9×108単位のIFNτの経口投与後の、3人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図8A】図8A〜8Bは、1日当たり1.5×109単位のIFNτの経口投与後の、2人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図8B】図8A〜8Bは、1日当たり1.5×109単位のIFNτの経口投与後の、2人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図9】図9は、抗ウイルスアッセイ法を用いて測定した、経口摂取(塗りつぶしたバー)または腹腔内注射(白抜きのバー)のいずれかによる投与後のNZWマウス血清中のIFNτ量を示す。
【図10】図10A〜10Cは、処置を受けなかったマウス(図10A)と比較した、IFNτの経口投与(図10C)および腹腔内注射(図10B)による、SJLマウスにおける、慢性再発性の実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の予防を示す。
【図11】図11A〜11Cは、リンパ球の浸潤を検出するためにクレージルバイオレットで染色した、IFNτ処置をしない(図11A)か、腹腔内注射によるIFNτ処置(図11B)か、経口摂取によるIFNτ処置(図11C)かのいずれかの処置を受けた、EAE誘発動物由来のマウス脊髄の切片を示す。
【図12】図12は、腹腔内注射または経口摂取によって投与された、単回用量のIFNτ処置または長期のIFNτ処置のいずれかによるIL−10の誘導を示す。
【図13】図13は、SJLマウスにおける、IFNτ処置解除後のEAEの再発を示す。
【図14】図14は、IFNτの腹腔内注射または経口摂取の後の、IFNτ処置されたマウス血清中の抗IFNτ抗体についてのELISA検出を示す。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明はインターフェロン−τを含有する薬学的組成物、およびこれの使用方法に関係する。より詳しくは、本発明は、2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素の血中濃度を変えるのに十分な用量でインターフェロン−τを経口投与することによってインターフェロン−τに応答性の状態を治療するための方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インターフェロン−τ(以下「IFNτ」もしくは「インターフェロン−τ」)は元々、反芻動物の受胎産物の栄養外胚葉により産生される妊娠認識ホルモンとして発見された(非特許文献1;非特許文献2)。IFNτ遺伝子の分布は、畜牛、ヒツジおよびヤギを含む反芻動物に限られている(非特許文献3)が、ヒトおよびマウスを含む他の生物種に属する細胞において、これは活性を有することが示されている(非特許文献4;非特許文献5)。例えば、IFNτは、抗ウイルス活性(非特許文献6)、抗増殖活性(非特許文献4)、および免疫調節活性(非特許文献7)を有することが立証されている。
【0003】
IFNτは、I型IFN(例えば、インターフェロン−αおよびインターフェロン−β)に代表的に関係する活性の多くを呈するが、IFNτと他のI型IFNとの間には著しい差異が存在する。最も顕著な差異は、反芻動物種における妊娠時のIFNτの役割である。他のIFNは妊娠の認識において同様の活性を有さない。また、ウイルスによる誘導も異なる。IFNτを除き、全てのI型IFNはウイルスおよびdsRNAによって容易に誘導される(非特許文献8)。誘導されたIFN−αおよびIFN−βの発現は一過性であり、およそ2、3時間続く。対して、IFNτの合成は、一旦誘導されると、数日の期間に亘って維持される(非特許文献9)。細胞当たりの基準とすると、他のI型IFNより300倍のIFNτが産生される(非特許文献10)。
【0004】
IFNτと他のI型インターフェロンのアミノ酸配列において、別の差異が存在する。インターフェロンα2b、インターフェロンβ1、インターフェロンω1およびインターフェロンγと、インターフェロンτとの間のアミノ酸配列同一性割合を、次の表にまとめる。
【0005】
【数1】
組換えヒツジIFNτ(rIFNτ)は、INFα2bに対して48.8パーセントの相同性であり、そしてINFβ1に対しは33.8パーセントの相同性である。IFNτとIFNαとの間、およびIFNτとIFNβとの間のこの限られた相同性に起因して、IFNτは、経口投与される場合に、IFNαまたはIFNβと同様の様式で作用するかどうかは、予測され得ない。IFNτはまた、低いレセプター結合親和力をヒト細胞上のI型レセプターに対して有すると報告されている(非特許文献14;非特許文献15)。さらに、IFNτが非内在性ヒトタンパク質であるという事実により、IFNτがヒト体内に導入される場合、全身性の中和抗体形成についての可能性が生じる(非特許文献14)。IFNτと他のインターフェロンとの間のこれらの差異は、IFNτがヒトに投与される場合に治療的利益をもたらすかどうかを予測することを、困難にさせる。IFNα、IFNβ、あるいは他の非τ型インターフェロンの経口投与に関係する分野の教示により、IFNτから任意の期待を導き出す根拠は提供され得ない。
【0006】
IFNτならびに全体的なタンパク質およびポリペプチドの使用における一つの制限要因は、生体内分布に関係する。なぜなら、この生体内分布は、非経口的に投与された場合に、血漿タンパク質と血液細胞とのタンパク質相互作用によって影響されるからである。胃におけるタンパク質分解に起因して、経口経路の投与はさらにより問題である。この胃において、意図する標的に到達する前に、酸性条件が分子を分解し得る。例えば、胃の酵素作用および膵臓の酵素作用によって生じたポリペプチドおよびタンパク質フラグメントは、腸管刷子縁膜内のエキソペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼによって切断されて、ジペプチドあるいはトリペプチドを生じる。膵臓酵素によるタンパク質分解が避けられた場合、ポリペプチドは刷子縁のペプチダーゼによる分解に供される。胃を通り抜けて存続し得るポリペプチドまたはタンパク質は、通過障壁が細胞内への進入を妨げる腸管粘膜において、代謝に供される。この理由から、一定期間口腔内に保持されるロゼンジまたは溶液の形態で口腔−咽頭領域へタンパク質を送達することに、多くの試みが焦点を当てている。
【非特許文献1】Imakawa,K.ら、Nature(1987)330:377−379
【非特許文献2】Bazer,F.W.およびJohnson,H.M.、Am.J.Repro.Immunol.(1991)26:19−22
【非特許文献3】Alexenko,A.P.ら、J.Interferon and Cytokine Res.(1999)19:1335−1341
【非特許文献4】Pontzer,C.H.ら、Cancer Res.(1991)51:5304−5307
【非特許文献5】Alexenko,A.P.ら、J.Interferon and Cytokine Res.(2000)20:817−822
【非特許文献6】Pontzer,C.H.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1988)152:801−807
【非特許文献7】Assal−Meliani,A.、Am.J.Repro.Immunol.(1995)33:267−275
【非特許文献8】Robertsら、Endocrine Reviews(1992)13:432
【非特許文献9】Godkinら、J.Reprod.Fert.(1982)65:141
【非特許文献10】Cross,J.C.およびRoberts,R.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:3817−3821
【非特許文献11】Taniguchiら、Gene(1980)10(1):11
【非特許文献12】Adolfら、Biochim.Biophys.Acta(1991)1089(2):167
【非特許文献13】Streuliら、Science(1980)209:1343
【非特許文献14】Brod,S.、J.Interferon and Cytokine Res.(1999)18:841
【非特許文献15】Alexenko,A.ら、J.Interferon and Cytokine Res.(1997)17:769
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、ヒト被験体において、インターフェロン治療に応答性である状態を処置するための方法を提供することが、本発明の目的である。
【0008】
IFNτの経口投与によってこのような状態を処置するための方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
1つの局面において、本発明は、ヒト被験体のインターフェロン治療に反応する状態を治療するための方法を含み、この方法は、IFNτ投与を欠く場合の被験体における血中2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベルに対して、その血中OASレベルの測定可能な増加を実現するのに有効な量で、被験体の腸管にIFNτを経口投与することによる。被験体の腸管へのIFNτの経口投与は、このような有効量で、1週あたり少なくとも数回という通常の基準で、少なくとも1ヶ月の期間、継続される。
【0010】
別の局面において、本発明は、ヒト被験体における、インターフェロンτ治療に応答性の状態を処置するための医薬の調製における使用のための組成物を含み、この状態は、自己免疫疾患、癌、あるいはウイルス感染から選択される。この組成物は、インターフェロン−τの投与を欠いた被験体における血中2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベルに対して、被験体の血中OASレベルの測定可能な初期増加を実現するのに有効な量で、被験体の腸管に向けた経口投与のために処方されたインターフェロン−τを含み、ここでこのインターフェロン−τは、被験体の血中OASレベルにおける変化とは関係なしに、少なくとも1ヶ月の期間、1週あたり少なくとも数回という通常の基準で、そのような有効量で被験体の腸管に対して投与される。
【0011】
一実施形態において、IFNτはヒツジIFNτである。特定の実施形態において、このヒツジIFNτは、配列番号2あるいは配列番号3として本明細書中で認識される配列を有する。より一般的には、このIFNτは、ヒツジIFNτと少なくとも約80%相同性であるアミノ酸配列を有する。このIFNτは、組換えで作製されたIFNτであり得る。
【0012】
継続投与は、毎日の基準で実施され得るか、または1週あたり数回(例えば、48時間ごと)実施することもできる。
【0013】
なお別の実施形態において、このIFNτは、の自己免疫疾患(多発性硬化症等)を患う被験体に投与される。この方法において、IFNτは被験体の症状の期間投与され、代表的には被験体の生涯にわたって投与される。
【0014】
別の実施形態では、IFNτは、ウイルス(例えば、HCV)に罹患した被験体に投与される。この方法はさらに、被験体における感染の存在を検出する工程、および感染がもはや検出されない時点を数ヶ月過ぎた期間、IFNτの投与を継続する工程、を包含する。この被験体は、IFNτを用いた処置期間の間、第二の抗ウイルス剤を用いて処置され得る。
【0015】
別の実施形態において、IFNτは、細胞増殖により特徴付けられる状態(例えば、癌)に罹患した被験体に投与される。この被験体は、IFNτを用いた処置期間の間、第二の抗癌剤を用いて処置され得る。
【0016】
好ましくは、IFNτの投薬形態は、このタンパク質を優先的に小腸へと送達する投薬形態が好ましい。例えば、この投薬形態は、小腸の環境からこのタンパク質を保護および/または安定化する、粘膜接着性ポリマーからなり得る。この粘膜付着性組成物は、小腸内壁の内表面を覆う細胞に対するインターフェロンの結合を増強する。
【0017】
この処置は、IFNτの初期投与の結果として血中OASレベルが増加するかどうかを確認するための、血中OASレベルをモニタリングする工程を、さらに包含し得る。別の実施形態において、被験体に初期に投与されるIFNτの量を調節して、経口IFNτを投与する前に観察された血中OASレベルに対して、血中OASの測定可能な増加を達成する。
【0018】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下に詳説される本発明な説明が添付の図面と組み合わせて読まれる場合、より完全に理解されよう。
【0019】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、ヒツジインターフェロン−τ(IFNτ)をコードする合成遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号2は、ヒツジ成体インターフェロン−τ(IFNτ;oTP−1;GenBank識別番号Y00287;PID g1358)のアミノ酸配列に対応する。
配列番号3は、配列番号2の配列に対して、配列のうちの5位および6位のアミノ酸残基が改変されている、ヒツジ成体IFNτのアミノ酸配列に対応する。
配列番号4は、配列番号3のタンパク質をコードする合成ヌクレオチド配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
インターフェロン−タウは、IFNτまたはインターフェロン−τとして略され、以下の二つの群の特徴の各々から、少なくとも1つの特徴的形態を有するインターフェロンタンパク質ファミリーのうちのいずれか一つをいう:(i)(a)抗黄体退行特性、(b)抗ウイルス特性、(c)抗細胞増殖特性;および(ii)α−インターフェロンとの約45%〜68%のアミノ酸相同性、および既知のIFNτ配列との70%を超えるアミノ酸相同性(例えば、Ottら、J.Interferon Res.,11:357(1991);Helmerら、J.Reprod.Fert.,79:83(1987);Imakawaら、Mol.Endocrinol,3:127(1989);Whaleyら、J.Biol.Chem.,269:10846(1994);Bazerら、WO94/10313(1994))。アミノ酸相同性は、例えば、デフォルトパラメーターを用いたLALIGNプログラムを用いて判定することができる。このプログラムは、配列比較プログラムのFASTAバージョン1.7一式に見出される(PearsonおよびLipman、PNAS,85:2444(1988);Pearson、Methods in Enzymology,183:63(1990);William R.Pearson、Department of Biological Chemistry,Box 440,Jordan Hall,Charlottesville,VAより入手可能なプログラム)。IFNτの配列は様々な反芻動物種において同定されており、これには以下が挙げられるが、これらに限定されない:乳牛(Bovine sp.、Helmer S.D.、J.Reprod.Fert.,79:83(1987);Imakawa,K.、Mol.Endocrinol.,119:532(1988))、ヒツジ(Ovine sp.)、ジャコウウシ(Ovibos sp.)、キリン(Giraffa sp.,GenBank登録番号U55050)、ウマ(Equus caballus)、シマウマ(Equus burchelli、GenBank登録番号NC005027)、カバ(Hippopotamus sp.)、ゾウ(Loxodonta sp.)、ラマ(Llama glama)、ヤギ(Capra sp.、GenBank登録番号AY357336、AY357335、AY347334、AY357333、AY357332、AY357331、AY357330、AY357329、AY357328、AY357327)、およびシカ(Cervidae sp.)。これらの種のうち多くのものについてのIFNτのヌクレオチド配列は、公用データベースおよび/または文献(例えば、Roberts.R.M.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,18:805(1998)、Leaman D.W.ら、J.Interferon Res.,12:1(1993)、Ryan,A.M.ら、Anim.Genet.,34:9(1996)を参照のこと)に報告される。用語「インターフェロン−τ」は、任意の反芻動物種(上記で列挙された種により例示される)由来のインターフェロン−τタンパク質を包含するよう意図され、そして上記に列挙された特性のうち、続く2つの群の各々由来の、少なくとも1つの特徴を有するよう意図される。
【0021】
ヒツジIFNτ(IFNτ)とは、本明細書中で配列番号2として識別されるアミノ酸配列を有するタンパク質をいい、そしてそのタンパク質の活性には大して影響を与えない中性アミノ酸置換基のようなアミノ酸の置換および変更を有するタンパク質(例えば、本明細書中で配列番号3として識別されるIFNτタンパク質)をいう。より一般的には、ヒツジIFN−τタンパク質は、配列番号2として識別される配列に対して、約80%の配列相同性、より好ましくは90%の配列相同性を有するタンパク質である。
【0022】
「’X’単位を超える1日の投薬量」(ここで、’X’は5×108または1.5×109のような特定値である)とは、約5×108を超える抗ウイルス単位のタンパク質を提供するのに十分なIFNτの量をいい、ここでIFNτの抗ウイルス活性は、標準細胞壊死効果阻害アッセイ(例えば、以下にある「方法」の章にて記載されるアッセイ)を用いて測定される。’X’単位の特定された1日投薬量を提供するためのタンパク質量(すなわち、mg)は、そのタンパク質の抗ウイルス比活性によって変化することが、認識される。
【0023】
ある状態を処置することとは、その状態の症状を低減させること、および/またはその状態の重篤度を減少させることに効果的な治療物質を投与することをいう。
【0024】
経口とは、口による投与、または胃もしくは小腸への直接投与(消化器(gastric)投与を含む)を含む、任意の経路をいう。
【0025】
腸とは、胃下口から肛門まで伸びる消化管の部分をいい、小腸(十二指腸、空腸および回腸)および大腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S字結腸および直腸)からなる。
【0026】
OASレベルとは、血中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)タンパク質の濃度あるいは活性をいう。
【0027】
ALTとはアラニンアミノトランスフェラーゼをいう。
【0028】
HCVとはC型肝炎をいう。
【0029】
「血中OASレベルの測定可能な増加」とは、OASの血中レベル(血清レベルおよび/または血球レベル)の統計学上有意な増加をいい、代表的には、同一状態下で測定された処理前の濃度より少なくとも25%の増加をいう。このレベルは検出可能なOAS酵素の増加によるか、または細胞内(例えば、血中リンパ球内)のOAS mRNAレベルの増加によって、決定され得る。血中のOAS酵素レベルを測定するための方法は、放射免疫アッセイキットを使用して本明細書中、および文献中に記載される(Satoh,Y.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,19:887(1999))。細胞内でのOASのmRNA発現レベルを測定するための方法は、文献にて公知である(Takayama,S.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,19:895(1999))。
【0030】
(II.インターフェロン−τ組成物と治療方法)
(A.インターフェロン−τ)
ヒツジIFNτ(IFNτ)は、18〜19kDaのタンパク質として同定された最初のIFNτである。受胎産物(胚および周辺膜)ホモジネートにおいて、いくつかのアイソフォームが同定された(Martal,J.ら、J.Reprod.Fertil.56:63−73(1979))。続いて、受胎産物の培養培地中に放出された低分子量タンパク質が精製され、そしてこれが熱不安定性およびプロテアーゼ感受性の両方であることが示された(Godkin,J.D.ら、J.Reprod.Fertil.65:141−150(1982))。IFNτは、元々、ヒツジ栄養膜タンパク質−1(oTP−1)と呼ばれた。なぜなら、このIFNτは、ヒツジにおける母体認識の臨界期の間に、ヒツジ受胎産物の栄養外胚葉によって初期に産生される一次分泌タンパク質であったからである。その後の実験により、IFNτは、反芻動物(例えば、ヒツジおよびウシ)において、妊娠に対する生理学的応答を確立するのに必須な妊娠認識ホルモンであると決定された(Bazer,F.W.およびJohnson,H.M.、Am.J.Reprod.Immunol.26:19−22(1991))。
【0031】
N末端アミノ酸配列(Imakawaら、1987)を表す合成オリゴヌクレオチドを用いて、ヒツジ胚盤胞ライブラリーを探索することにより取得したIFNτ cDNAは、ヒト由来のIFN−α、マウス由来のIFN−α、ラット由来のIFN−αおよびブタ由来のIFN−αと45%〜55%相同性であり、そして現在IFN−ΩといわれるウシIFN−αIIと70%相同性である、予測アミノ酸配列を有する。異なるアイソフォームを表し得るcDNA配列がいくつか報告されている(Stewart,H.J.ら、Mol.Endocrinol.2:65(1989);Klemann,S.W.ら、Nuc.Acids Res.18:6724(1990);およびCharlier,M.ら、Mol.Cell Endocrinol.76:161−171(1991))。全てのものは、約1kbであり、23アミノ酸のリーダー配列および172アミノ酸の成熟タンパク質をコードする、585ベースのオープンリーディングフレームである。アミノ末端およびカルボキシル末端が同格である、4本のへリックスの1束のようなIFN−τの予測構造は、I型IFNとしての分類をさらに支持する(Jarpe,M.A.ら、Protein Engineering 7:863−867(1994))。
【0032】
【数2】
IFN−τはI型IFN(上記の表を参照のこと)に分類上関係するいくつかの活性を示すが、IFN−τと他のI型IFNとの間には著しい差異が存在する。最も顕著な差異は妊娠における役割であり、これは上記に具体的に示してある。また、ウイルス誘導性も異なる。IFNτを除く全てのI型IFNは、ウイルスおよびdsRNAによって容易に誘導される(Roberts,R.M.ら、Endocrin.Rev.13:432−452(1992))。誘導されたIFN−αおよびIFN−βの発現は一過性であり、約2、3時間続く。対照的に、IFN−τの合成は、一旦誘発されると数日に渡って維持される(Godkinら、1982)。細胞当たりの基準にすると、他のI型IFNより、300倍を超えるIFN−τが産生される(Cross,J.C.およびRoberts,R.M.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3817−3821(1991))。
【0033】
他の差異はIFNτ遺伝子の制御領域に存在し得る。例えば、ウシIFNτに対する遺伝子でのヒト栄養芽細胞株JARのトランスフェクションは、抗ウイルス活性を生じ、一方、ウシIFN−Ω遺伝子でのトランスフェクションではみられなかった。このことは、IFNτ遺伝子の発現に関係する、独特なトランス作用因子を示唆する。この示唆と、IFNτの隣接プロモーター領域(126番目から転写開始部位まで)はIFN−αおよびIFNβの隣接プロモーター領域と高い相同性であるが、−126〜−450番目の領域は相同性ではなく、IFNτの発現のみを増強する(Cross,J.C.およびRoberts,R.M.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3817−3821(1991))という所見が一致する。従って、他のI型IFNと比較して、異なる調節因子がIFNτの発現に関与しているようである。
【0034】
ヒツジIFNτの172アミノ酸配列は、例えば米国特許第5,958,402号に記載され、そしてこれに相同的なウシIFNτ配列は、例えば、Helmerら、J.Reprod.Fert.,79:83−91(1987)およびImakawa,K.ら、Mol.Endocrinol.,3:127(1989)に記載される。これらの参考文献由来のヒツジIFNτ配列およびウシIFNτ配列は、本明細書により参考として援用される。ヒツジIFNτのアミノ酸配列は、本明細書中で配列番号2として示される。
【0035】
(1.IFNτの単離)
IFNτは妊娠したヒツジから収集した受胎産物から単離され得、そしてGodkin,J.D.ら、J.Reprod.Fetil.65:141−150(1982)およびVallet,J.L.ら、Biol.Reprod.37:1307(1987)により記載される改変最小必要培地中でインビトロで培養され得る。IFNτはイオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過により、受胎産物培養物から精製され得る。単離IFNτの均一性は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(Maniatis,T.ら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1982);Ausubel,F.M.ら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,Inc.,Media,PA(1988))によって評価され得、そして精製IFNτサンプル中のタンパク質濃度の決定は、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL;Smith,P.K.ら、Anal.Biochem.150:76(1985))を使用して実施され得る。
【0036】
(2.IFNτの組換え産物)
組換えIFNτタンパク質は、適切な発現系(例えば、細菌細胞または酵母細胞)を使用して、任意に選択されたIFNτポリヌクレオチド断片から作製され得る。IFNτヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の単離は、PCT公開WO/94/10313(これは、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0037】
IFNτ発現ベクターを作製するため、IFNτをコードする配列(例えば、配列番号1または配列番号4)を、発現ベクター(例えば、細菌発現ベクター)中に配置し、そして標準的な方法に従って発現される。適切なベクターの例としては、λgt11(Promega,Madison WI)ベクター;pGEX(Smith,P.K.ら、Anal.Biochem.150:76(1985))ベクター;pGEMEX(Promega)ベクター;およびpBS(Strategene,La Jolla,CA)ベクターが挙げられる。また、適切なプロモーター(例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーターまたはtacプロモーター)を含有する他の細菌発現ベクターも使用され得る。改変pIN III omp−A発現ベクターへのIFNτ合成ポリヌクレオチドのクローニングは、「材料と方法」に記載される。
【0038】
本明細書中に記載される研究のため、配列番号4に存在するIFNτコード配列を、ベクター中にクローニングした。このベクターは酵母細胞の形質転換に適切であり、メタノール調節性アルコールオキシダーゼ(AOX)プロモーターおよびPho1シグナル配列を含有する。このベクターを使用してP.pastoris宿主細胞を形質転換し、製造業者(Invitrogen,San Diego,CA)の指示書に従い、形質転換細胞を使用してタンパク質を発現させた。
【0039】
本発明の方法での使用のための、IFNτの発現に適切な他の酵母ベクターとしては、2μプラスミドベクター(Ludwig,D.L.ら、Gene,132:33(1993))、酵母組込みプラスミド(Shaw,K.J.ら、DNA,7:117(1988))、YEPベクター(Shen,L.P.ら、Sci.Sin.,29:856(1986))、酵母セントロメアプラスミド(YCp)、および制御可能な発現を有する他のベクター(Hitzeman,R.A.ら、米国特許第4,775,622号(1988年10月4日発行);Rutter,W.J.ら、米国特許第4,769,238号(1988年9月6日発行);Oeda,K.ら、米国特許第4,766,068号(1988年8月23日発行))が挙げられる。好ましくは、これらのベクターは、有効な酵母プロモーター(例えば、MFα1プロモーター(Bayne,M.L.ら、Gene 66:235−244(1988))、GADPHプロモーター(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ;Wu,D.A.ら、DNA,10:201(1991))、またはガラクトース誘導性GAL10プロモーター(Ludwig,D.L.ら、Gene,132:33(1993);Feher,Z.ら、Curr.Genet.,16:461(1989);Shen,L.P.ら、Sci.Sin.,29:856(1986)))を含有する発現カセットを含む。酵母形質転換宿主は、代表的にはSaccharomyces cerevisiaeであるが、上記で例示されるように、形質転換に適した他の酵母(例えば、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastorisなど)も同様に使用され得る。
【0040】
さらにIFNτポリペプチドをコードするDNAを、多数の市販のベクターにクローニングし、適切な宿主系にてこのポリペプチドの発現を生じさせ得る。これらの系としては、上記の細菌発現系および酵母発現系、ならびに以下が挙げられる:バキュロウイルス(bacullrus)発現(Reilly,P.R.ら、BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS:A LABORATORY MANUAL,(1992);Beamesら、Biotechniques,11:378(1991);Clontech,Palo Alto CA);植物細胞発現、遺伝子組換え植物発現、および哺乳類細胞内での発現(Clontech,Palo Alto CA;Gibco−BRL,Gaithersburg MD)。この組換えポリペプチドは融合タンパク質あるいは天然タンパク質として発現させ得る。発現ベクター内に、多くの特性(例えば、培養培地中への発現される配列の分泌を促進するリーダー配列)が操作され得る。遺伝子組換えで作製されたポリペプチドは、代表的に、溶解した細胞あるいは培養液から単離される。精製は当分野で公知の方法によって実施され得、この方法は塩分画、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーを含む。上記のように、IFNτポリペプチドに基づいて調製された抗体を用いて、免疫アフィニティークロマトグラフィーが使用され得る。
【0041】
組換え方法に加えて、IFNτタンパク質あるいはポリペプチドは、例えば適切な抗体を使用することによる、アフィニティーに基づく方法によって、選択した細胞からを単離され得る。さらに、IFNτペプチド(例えば、配列番号2あるいは配列番号3)は、当業者に公知の方法を使用して、化学合成され得る。
【0042】
(B.IFNτの経口投与)
本発明の支持として実施された研究において、IFN−τがマウスおよびヒトに経口投与され、そして全血中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)(IFN活性を認識するマーカー(Shindo,M.ら、Hepatology 8:366−370(1988)))の誘導をモニタリングした。OASレベルをモニタリングする代替の方法が適切であり、そして精度および感度の点において利点を提供し得ることが認識される。例えば、OASの細胞内mRNA発現量が、準定量逆転写酵素PCT技術(Takayama,S.ら、J.Interferon and Cytokine Res.,19:895(1999))を使用して測定され得る。
【0043】
(1.IFNτのマウスへの投与)
本発明の支持として実施された研究において、経口投与されたIFNτが、OASを誘導する能力について試験した。実施例1に記載されるように、IFNτを、マウスへ経口投与するかまたは腹腔内(i.p.)投与するかのいずれかを行った。IFNτ投与の24時間後に全血のOAS活性を決定し、そしてこれらの結果を図1に示す。
【0044】
図1は、10%マルトースを含む生理食塩水で処置したコントロール動物に関する血中OAS濃度(pmol/dL)が、わずかに1000pmol/dLを超えたことを示す。10%マルトースを含む生理食塩水溶液中の5×108単位のIFNτで腹腔内処置したマウスは、約1700pmol/dLの血中OASレベルを有した。同じIFNτ投薬量で経口的に処置したマウスは、約2000pmol/dLの血中OAS濃度を有した。
【0045】
実施例2にて詳説される別の研究において、IFNτをマウスに経口投与し、このIFNτが用量依存的にOASを誘導する能力を決定した。IFNτを、0単位(コントロール)、1×103単位、1×104単位、1×105単位で、試験マウスにおける胃上部に経口投与した。経口投与の12時間後、心臓から全血を採取し、そしてOAS濃度を測定した。図2に示すように、全血中のOAS濃度は用量依存的に増加した。
【0046】
実施例3は、マウスで行ったさらなる研究を記載する。これらの研究ではIFNτの投与前に、少なくとも6時間給餌および飲料を断ち、そして経口注入または腹腔内(i.p.)注射によってIFNτを与えた。経口投与する場合、経口摂食ニードルを使用してIFNτを胃上部に直接導入した。
【0047】
図3は、様々な系統のマウス:ICR、BALB/c、C57BL/9、NZW/N、SJL/Jにおいて、IFNτの消化器(gastric)投与が血中OAS活性の誘導に及ぼす効果を示す。全ての試験マウスにIFNτ(105U)を経口で処置した。コントロールマウスに、IFNτを含まない10%マルトース溶液を経口的に与えた。各々のバーは、2回実施した実験(同様の結果)のうちの1つの実験(マウス3〜5匹)の平均±S.E.を表す。図3に見られるように、IFNτの経口投与後、全ての系統のマウスにおいてOAS活性のレベルが増加したが、増加の程度は系統により変動した。ICRマウス、C57BL/9マウスおよびNZW/Nマウスに誘導した活性レベルは、BALB/cマウスおよびSJL/Jマウスにおけるレベルより高かった。
【0048】
別の研究において、IFNτの投与後、OAS活性を時間の関数としてモニタリングした。この研究では、IFNτ(105U)の投与前、動物(ICRマウス)を6時間絶食させた(水有り餌無し)。IFNτ投与の8時間後、16時間後、および24時間後に血液をサンプリングした。結果を図4Aに示す。
【0049】
図4Aは血中OASレベルを示し、IFNτの投与後に記載した時間の間隔を空けて採取した血液試料における、生理食塩水/10%マルトースビヒクルで処置したコントロールマウスに対する百分率として表す。図4Aにおいて、各々のバーは、2回行った実験(同様の結果)のうちの1つの実験(マウス3匹)の平均±S.E.を表す。全血中のOAS活性は、経口注入であれ腹腔内注射であれ、経路に関わらず、時間依存的様式で増加した。しかしながら、経口投与の24時間後、腹腔内注射よりも高いレベルを観察した。
【0050】
別の研究において、様々な濃度のIFNτ(0U、102U、103U、104Uおよび105U)を、6時間絶食させた後のマウスに与えた。24時間後に採血し、そしてOASレベルをアッセイした。結果を図4Bに示す。
【0051】
図4Bは血中OAS濃度を示し、0U、102U、103U、104U、および105Uの濃度でのIFNτの送達の24時間後の、コントロールマウスに対するパーセンテージとして表している。各バーは、2回行った実験(同様の結果)のうちの1つの実験(マウス3匹)の平均値±S.E.を表す。腹腔内注射後、低投与量(102U)で活性量は幾分高くなり、より高投与量のIFN−τ(104Uおよび105U)で飽和状態に達した。反対に、経口投与後の活性量は、用量に依存して増加した。
【0052】
図4A〜4Bの結果は、経口投与したIFN−τが、腹腔内注射により誘導されたレベルの血中OAS活性も、より高いレベルの血中OAS活性を誘導することを示している。特に、IFN−τの投薬量が約103Uを超え、そして投与後の時間が約8時間を超える場合に、経口的に誘導された血中OASレベルは腹腔内注射によって誘導されたOASレベルよりも高かった。
【0053】
別の研究において、マウスにおいて、IFN−τによる血中OAS誘導に対する絶食状態の効果を評価した。この研究において、マウスに6時間、規定した給餌給水摂取レジメンに供した。6時間のレジメンの後、104UのIFNτを、餌および水と共に経口胃管栄養法投与によるか、または腹腔内注射により投与した。摂取レジメンは以下の通りである:ケースI、餌も水も与えなかった;ケースII、水は与えたが餌は与えなかった;ケースIII、餌のみを与えた;ケースIV、餌と水の両方を与えた。24時間目に心臓から全血を採取し、そしてOAS活性レベルを測定した。これらの結果を図5A〜5Dに示す。
【0054】
図5A〜5Dは、それぞれ、上記段落中に規定したケースI〜ケースIVの給餌給水摂取レジメンに供されたマウスに対応する。図5A〜5Dの結果は、インターフェロンを含まない10%マルトース溶液で処置したマウスの血中OASとして得たコントロールに対する、パーセンテージとして表した血中OSAの誘導を示す。餌を与えなかったマウスを示す図5Aおよび図5Bにおいて最も理解されるように、これらの結果は絶食状態の被験体へのIFN−τの経口投与によって、より高濃度の血中OASが誘導されることを示す。
【0055】
この研究では、水の供与が有る場合も無い場合も、ほぼ同量の餌が摂取されることが観察された。しかし、餌を与えた場合の水の摂取(ケースIIIおよびケースIV)よりも餌を与えなかった場合の水の摂取(ケースIおよびケースII)が少なかった。一部の動物において、6時間の断食後、青色色素を含む0.2mLマルトース溶液を経口的に与え、胃および腸におけるこの色素の分布を調べた(データは示さず)。餌を摂取後(ケースIIIおよびケースIV)、マウスの胃は膨張し、色素は主に胃に局在していた。これは恐らく餌が色素を吸収したためである。しかし、餌を摂取しなかった場合、色素は迅速に腸へ移行する。この所見は、経口摂取されたIFNτは腸内で効果を発揮して、血液中で高いOAS活性レベルを誘導し得ることを示唆する。
【0056】
血中OASレベルに対するMuIFN−αの経口投与の効果を測定するため、比較研究を行った。この研究では、経口経路または腹腔内経路のいずれかによって、様々な濃度(0IU、102IU、103IUおよび104IU)のMuIFN−αでICRマウスを処理した。MuIFN−α投与の16時間後に得た血中のOAS活性をアッセイした。これらの結果を図6に示す。ここで、各バーは、2回行った実験(同様の結果であった)のうちの1つ(マウス3匹)の平均値±S.E.を表す。
【0057】
図6は、経口的にかまたは腹腔内注射によって与えたMuIFNα(0IU、102IU、103IUおよび104IU)投与後の、血中OAS活性の誘導を示す棒グラフであり、コントロールマウスに対するパーセンテージとして表す。いずれの投与経路によるものでも、OAS活性レベルは用量依存的に増加し、腹腔内注射は経口投与よりも血中OAS活性においてより良好な誘導性を生じた。この結果は、IFNτの腹腔内注射よりもIFNτの経口投与の方がより高い血中OASレベルを達成した、IFNτで観察された結果と相反する。さらに、MuIFNαを投与した場合、マウスの体温はわずかに上昇したが、IFNτを使用した場合は上昇しなかった(データは示さず)。
【0058】
図1〜6で提示したデータは、腸管へ投与したIFNτが生体内でOAS応答を誘導するか、または上方制御するという証拠を示す。IFNτの経口投与は以前に文献にて報告されているが(例えば、WO96/28183を参照のこと)、この非内在性インターフェロンが経口投与の際にOAS反応を誘導し得ることを示した研究はない。本研究では、IFNτを口腔粘膜に接触させずに直接腸管内へ投与し、これによって口腔咽頭(oropharengyl)領域内でのあらゆる吸収を除外した。口腔粘膜を通じて吸収されたIFNτと比較して、IFNτの胃からの直接吸収は、特にIFNτの長期にわたる投与の場合、IFNτに対する抗体の形成が減少させる。
【0059】
(2.C型肝炎を患うヒトへの投与)
研究のため、C型肝炎に感染したヒト被験体を集めた。経口的なIFNτ(配列番号4)での処置のため、患者を4つの試験グループに分けた。実施例4に記載したように、試験グループの各被験体は、調節された量のIFNτの1mg/mL溶液を毎日3回自己投薬した。試験グループI、II、IIIおよびIVの患者は、1日の投与量合計が、それぞれ1mg、3mg、9mg、および15mgのIFNτを受けた。患者は決められた間隔で臨床試験に戻り、以下についての分析用血液サンプルを提供した:(i)(a)血清中および(b)末梢血単核細胞中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベル;(ii)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル;および(iii)ウイルス力価レベル(1mL当りのC型肝炎ウイルスRNA複製物)。
【0060】
各テストグループの数人の被験体についての結果を下記の表3〜5に示し、図7〜8に図示する。表3A〜3Bは、0.33mgのIFNτを1日3回経口的に処置した投与グループIの6人の患者のデータを示す。血清中2−5OASレベル(pmol/dL)を、「2−5A(血清)」と識別した列に表示する。PAB/001およびJRJ/006という、2人の被験体は、血中OASレベルの増加を示さなかった。他の4人の被験体は、血中OASレベルが測定可能に増加され、MSM/002およびLER/004と識別される被験体は著しい増加を示した。被験体MSM/002は、11.0pmol/dLの基底OASレベルを有した。試験15日目までに、これは51.5(4倍を超える)に増加した。被験体Z−I/005は、43.4pmol/dLの基底OASレベルを有した。このOASレベルを増加させると、試験29日目までに74.8pmol/dLに達した。
【0061】
表4は、1mgのIFNτを1日3回処置した投与グループIIの3人の被験体についてのデータを示す。患者AMC/007および患者DBF/012はIFNτ処置に応答し、血中OASレベルを有意に増加させた。例えば、患者AMC/007は、11.2pmol/dLの基底OASレベルを有した。このOASレベルは29日間の最初の処置にわたって着実に増加し、試験29日目に最大120pmol/dLを測定した。OASレベルは試験の71日間を通じて、基底濃度の4倍を超えたままであった。患者DBF/012では、処理前、28.8pmol/dLの開始OASレベルを有した。このレベルは71日の処置期間にわたって増加および減少し、15日目と71日目に100pmol/dLを超える高い測定値であった。8日目から71日目の間に少なくとも1.5倍の増加が見られた。
【0062】
表5は、3mgのIFNτで1日3回処置した投与グループIIの3人の被験体についてのデータを示す。血中OASの基底レベルを研究した日に取った。被験体CLR/011は、の反応は、血中OASレベルの増加に関して、わずかな応答を有した。試験29日目に、被験体HCM/010は、血中OASレベル濃度の約1.5倍の増加を示し、そして被験体VCC/009は、血中OASレベルの4倍以上増加させた。
【0063】
表3〜5中のデータは、ウイルス性C型肝炎を患う個人の、経口的IFNτに対する様々な応答を例示する。多数の患者が血中OASレベルを増加させ、代表的には開始基底レベルに対して、血中OASの1.5倍増加させ、しばしば2倍増加させ、そして一部の場合、4倍増加させた。各々の患者における応答は多数の要因に依存しており、これらには感染の状態および処置に対する個人の生体応答が挙げられる。
【0064】
従って、本発明は、処置を必要とする被験体にIFNτを経口投与することを企図し、ここでIFNτの初期用量は、この特定の患者に対して血中OASレベルの増加を達成するよう選択される。このIFNτは、患者の腸管を標的とする形態で投与され、口腔ではない。投薬量の選択は、例えば処置前および処置開始後に、例えば血中OASレベルまたはOASのmRNAレベルをモニタリングすることによって、なされ得るかまたは確認され得る。あるいは、様々な疾患状態下での、所定の投与に対するモデル患者の応答から、有効量を前もって決定し得る。例えば、所定の年齢範囲内であり、特定の状態(例えば、HCV感染あるいはMS)を患う患者について、様々な初期IFN−τレベルに応答した血中OASにおける変化をモニタリングして、この年齢/疾患プロフィールを有する患者についての適切な用量を前もって決定し得る。そしてこのような用量指針を、処置を行う医師に提供し得る。本発明の一局面は、IFN−τの腸管への標的化に適した経口送達形態のIFN−τ(例えば、IFN−τの腸溶性コーティングされた形態物)、および様々な患者の状態の下での有効な用量、即ち、OAS血中レベルの測定可能な増加を生じるのに有効な用量についての指針を提供する製品情報文献あるいは挿入物を備える、IFN−τ治療キットが含まれる。好ましくは、この挿入物は、用量の範囲およびOAS応答における予期される初期変化を提供する。
【0065】
初回投与後、あるいは血中OASレベルの測定可能な増加を生じる用量(有効用量)に達する場合、有効用量のIFNτの投与を、長期の処置期間の間、好ましくは毎日基準または週に数回の基準で継続する。長期基準で投与される有効用量は、血中OASの初期の測定可能な増加を生じるのに有効な用量であり、この継続する有効用量が初期有効量と同じであれ、または異なる場合であれ、長期の処置期間にわたって実際の血中OASレベルの挙動とは無関係である。従って、被験体が、血中OASレベルの初期の測定可能な増加を生じさせるのに有効な量のIFNτを受け続けても、処置期間中に血中OASレベルは上昇したレベルに留まり得るか、増加を続け得るか、または(例えば、感染しているウイルスレベルの減少に応答して)減少すらし得る。この有効用量は代表的には、1日当たり105〜1010単位の間のIFNτであり、そして所望する血中OASの初期増加(例えば、通常の非処置の場合の濃度の1.5倍〜4倍)を達成するよう調整され得る。
【0066】
図7〜8は、この研究の患者の内の数人についての、ウイルス力価およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルに関するデータを表す。アラニンアミノトランスフェラーゼは、アラニンのγケト基の、ケトグルタラートのγケト基への転移を触媒して、オキザロ酢酸およびピルビン酸の形成を導く血清酵素である。ALTは本来肝臓内に見出され、そして肝臓疾患(例えば、C型肝炎)に罹患した被験体は、血中のALTレベルを上昇させる(HARRISON’S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE,Wilsonら編、第12版、第9巻、1309頁(1991))。健常人は、血清ALTレベル約1〜45U/Lを有する。図7A〜7Cは、1日当たり4.9×108ユニット(0.33mgを1日3回)のIFNτの経口投与後の、投与グループIの3人の被験体(PAB/001(図7A)、MSM/002(図7B)およびDMA/003(図7C))のC型肝炎(HCV)RNAウイルス力価(影付き棒グラフ)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル(ひし形)を示す。患者MSM/002のALT濃度および患者DMA/003のALT濃度(図7Bおよび7C)は、169日の処理期間にわたって連続的に減少した。患者PAB/001(図7A)は、ALT血中レベルは、IFNτ処置の結果、部分的に増加しながらより変動性を示したが、全般的に下降した。
【0067】
図8A〜8Bは、1日当たり1.5×109単位(1.0mgを1日3回)の経口的IFNτで処置した投与グループIIの患者AMC/007(図8A)およびVCC/009(図8B)における、C型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを示す。この2人の被験体の反応は異なり、VCC/009は処置第一週でALTの初期増加を示し、次いで約8日目から113日目までALTレベルは連続的な下降を示した。
【0068】
一部の患者および一部の状態に対して他の治療薬と併用したIFNτ投与が企図されることが理解される。例えば、他の公知の肝炎抗ウイルス剤とIFNτとを併用して、一部の患者において有益となり得る。より一般的には、IFNτと任意の公知の医薬品との併用が企図される。
【0069】
(3.研究的アレルギー性脳脊髄炎を患うマウスへのIFNτの投与)
自己免疫疾患処置のためのIFNτの経口投与を、多発性硬化症のための認知されるモデルを使用して、別の研究で例証した。この研究では、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE;Zamvil,S.S.ら、Ann.Rev.Immunol.,8:579−621(1990))を患うげっ歯類動物(抗原誘導性自己免疫の動物モデル)における応答を評価することによって、一般の自己免疫疾患を処置する際のIFNτの有効性を評価する。EAEは、臨床的兆候および病理的兆候の両方においてヒト多発性硬化症(MS)に類似しており、従って、MSのようなヒト自己免疫疾患のための処置を評価するために使用され得る。EAEは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)あるいは脳炎誘発性ペプチドフラグメントを用いて、感受性のマウス、ラットまたはモルモットを免疫することによって誘導される、T細胞媒介性の炎症性自己免疫性脱髄性疾患である。これらのモデル動物の系統における遺伝性の感受性は、脳炎誘発性ペプチドが特定のクラスII主要組織適合複合体(MHC−II)分子に結合する能力に一部基づく(Fritz,R.B.ら、J.Immunol.130(3):1024−1026(1983);Wraith,D.C.ら、Cell 59:247(1989))。特にH−2uハプロタイプを持つマウスはEAEに罹りやすい。感受性マウス系統としては、PL/Jマウス(Klein,J.ら、Immunogenetics 17:553(1983))、(PL/J×SJL)F1マウス(Zamvil.,S.S.ら、Ann.Rev.Immunol.,8:579−621(1990);Wraithら、1989)、B10.PLマウス(Figuero,F.ら、Immunogenetics 15(4):399−404(1982))、NZWマウス(Kotzin,B.L.ら、J.Exp.Med.265:1237(1987))、および(NZB×NZW)F1マウス(Kotzin,B.L.ら、J.Exp.Med.265:1237(1987))が挙げられる。
【0070】
本発明を支持しておこなわれ、そして以下に詳説される研究は、IFNτを用いた処置より利益を受ける疾患あるいは疾患状態の処置に関して、経口投与したIFNτ組成物が、注入したIFNτ組成物に匹敵する効力であることを示す。経口投与したIFNτは、IFNτ処置より利益を受ける疾患(EAE)を処置するのに有効であるだけではなく、注入したIFNτ組成物での処置と比較して、経口経路の投与は予期せぬ利点をもたらした。例えば、経口投与したIFNτは、処置された個人の血清中の抗IFNτ抗体レベルが有意により低くなった。このことは、有益である。なぜなら、経口投与したIFNτが、これにより、宿主の免疫反応によって無効にさせられる(例えば、治療および/または用量レベルに対する脱感作が有意に低下される)可能性がより低く、そして処置を受けた個人は、この免疫応答の結果としての副作用に苦しむ可能性が、より低いからである。
【0071】
これらの知見および関係する知見を実証する実験結果を以下に提示する。
【0072】
(a.経口投与したIFNτはEAEの発症を抑制する)
実施例5に記載したように、経口投与したIFNτおよび注入したIFNτが、EAEの誘発を予防する能力に関して試験した。ニュージーランドホワイト(NZW)マウスをウシミエリン塩基性タンパク質(bMBP)で免疫することによって、EAEを誘発させた。実験的なアレルギー性脳脊髄炎(EAE)を誘発するため、レシピエントNZWマウスに、ウシミエリン塩基性タンパク質(bMBP)で免疫する48時間前、免疫当日、および免疫の48時間後に、腹腔内注射または経口摂食のいずれかによってOvIFNτを与えた。
【0073】
OvIFNτの経口摂食および腹腔内注射の双方とも、EAEに対して防いだ(実施例5、表6)。腹腔内注射によりIFNτを与えた全ての動物、および経口的にIFNτを与えた動物9匹の内7匹において、EAEの症状より防いだ。さらに、抗OvIFNτモノクローナル抗体HL127は、部分的にOvIFNτのEAEをブロックする能力を中和するのに有効であった。これらの研究は、経口投与したIFNτがEAE(多発性硬化症の動物モデル)の症状を処置するのに有効であることを実証する。
【0074】
(b.OvIFNτは、経口投与後血清中に存在する)
経口投与したIFNτが循環系に入ることを確認するため、実施例6に記載したように細胞障害作用(抗ウイルス)アッセイ(Familetti,P.C.ら、Meth.Enzymol.78:387(1981))を使用して、腹腔内注射または経口投与によってIFNτを受けたマウスの血清を、IFNτの存在について試験した。
【0075】
結果を図9に示す。比活性は、MDBK細胞を使用する抗ウイルスアッセイから得たタンパク質1mg当たりの抗ウイルス単位で表す。OvIFNτは、200U/mlのレベルで、経口摂食(塗りつぶされたバー)後2時間まで検出した。これらのデータは、経口投与したIFNτは循環系に入り、そして投与された後約2時間血清中に残留することを示している。
【0076】
(c.経口投与したOvIFNτ由来の毒性の欠如)
I型IFNのIFNαおよびIFNβが、治療薬としてヒトに使用される場合、インフルエンザ様症状、発熱、嘔吐感および倦怠感として表れる毒性副作用を誘発することが以前に示されている(Degre,M.、Int.J.Cancer 14:699(1974);Fent,K.およびG.Zbinden、Trnds.Pharm.Sci.56:1−26(1987))。対照的に、OvIFNτは、インビトロおよびインビボの双方で、毒性についての注目すべき欠如を呈する。本発明の支持として行った研究により、経口摂食により与えた場合の、末梢血液中のリンパ球の減少によって測定する、毒性の誘導に関してOvIFNτとIFNαおよびIFNβとを比較した。尾から血液を得、血球計算板を使用して白血球細胞(WBC)数を計数した。ライト−ギムザ染色した血球スミアに基づいて、差示的なWBC計数を行った。
【0077】
結果を表1A、1Bおよび1Cに示す。IFNαまたはIFNβのいずれかを摂取したマウスにおいて、著しい毒性レベルを検出したが、105U、2×105Uもしくは5×105UのOvIFNτ、またはPBS単独を摂取させたマウスではリンパ球の顕著な減少は検出されなかった。これらの結果は、経口投与したOvIFNτは、他のI型IFNに対して毒性がかなり低いことを示唆している。
【0078】
【表1A】
【0079】
【表1B】
【0080】
【表1C】
(d.OvIFNτはEAEの慢性再発を抑制する)
EAEに関係する症状の発生を予防することに加えて、経口投与したOvIFNτは、実施例7で詳述するように、EAEの慢性再発モデルにおいて麻痺を予防する。OvIFNτ処置を受けない、(EAEを誘発するため)MBPで免疫したマウス5/5が慢性再発性麻痺を発症したが、OvIFNτ(腹腔内注射あるいは経口摂取のいずれかを48時間ごとに投与)で処置したマウス4/5では、疾患からが完全に抑制された(図10Bおよび10C)。これらのデータは、上記の結果をさらに支持するものであり、そしてIFNτの経口投与が、慢性再発性EAEの発症をブロックし得ることを示唆する。またこれらの研究は、長期間にわたる48時間ごとに一回の頻度でのIFNτの経口的投与が、IFNτによる処置に応答性の疾患状態を処置するのに、腹腔内注射と同程度に有効であることを示唆する。
【0081】
(e.IFNτ経口投与後の、EAEマウス由来の脊髄の組織学的分析)
脊髄白質部のリンパ球病変として中枢神経系(CNS)に現れる、EAEについての細胞性の結果に対するOvIFNτ処置の効果を分析することによって、OvIFNτがEAEを予防する能力を分析した。リンパ球のCNS内への浸潤の範囲の病変を示す。MBP免疫化マウスを、実施例8に記載したように、OvIFNτ処置をしない(コントロール)か、または経口経路もしくは腹腔内経路によるOvIFNτ処置するかのいずれかを行い、そして腰部脊髄の切片を染色してリンパ球について評価した。組織切片の顕微鏡写真を図11A〜11Cに示す。コントロール動物の脊髄白質にリンパ球病変が存在する(図11A)が、腹腔内注射(図11B)によっても経口摂取(図11C)によっても、OvIFNτで処置したマウスでは存在しなかった。これらのデータは、IFNτの保護効果が、リンパ球のCNSへの浸潤抑制に関係することを示す。さらにこれらのデータは、IFNτ処置が単に症状を覆い隠すのではなく、自己免疫疾患の細胞性発現を抑制することを実証する。
【0082】
(f.OvIFNτを用いた処置の停止は、再発性麻痺を生じる)
実施例10は、MBPを注射したマウスにおいてEAEを予防するのに効果的な処置の形態および持続期間を決定するために行った研究を記載し、そしてその結果を図13に示す。処置の継続の間(実施例10では58日間)、腹腔内注射または経口摂取を介してOvIFNτ処理すること(48時間ごと)によって、このマウスはEAEから保護された。しかし、OvIFNτ処理を停止した後に疾患症状を発症した(図13)。これらの結果は、IFNτがEAE様の自己免疫疾患(例えば、MS)を治癒することはできないが、処置を継続する限り、このIFNτがその状態の病理的発現を抑制する有効な処置であることを示す。
【0083】
(g.OvIFNを経口投与は抗OvIFN抗体を低減させる)
実施例11で詳述するように、経口投与されるIFNτ処置の1つの利点は(注射に対して)、経口治療を受けた個人における抗IFNτ抗体力価の低減である。OvIFNτ処置の解除後、各処置グループ由来のマウスから採血し、そして抗OvIFNτ抗体の存在についてELISAによって血清を調べた。腹腔内注射によりIFNτを受けたマウスは抗OvIFNτ抗体量を上昇させたが、経口摂取によりIFNτを受けた動物は、ずっと低い抗IFNτ抗体力価(代表的には3分の1〜5分の1)を呈した。予想されたとおり、OvIFNτ処置を受けなかったマウスは抗OvIFNτ抗体を示さなかった。
【0084】
また、OvIFNτが抗ウイルス活性を中和する能力について、MDBK細胞株を用いて血清を調べた。腹腔内注射したマウスの血清も、経口摂取したマウスの血清も、中和活性を持たなかった(表7)。これらの結果は、OvIFNτの経口摂取は、OvIFNτタンパク質に対する抗体応答を概ね回避することを示唆する。このように、経口処置した被験体において抗体反応が低減することによって、IFNτ治療についての免疫系関係性の有害な副作用の危険を低減させる。
【0085】
(III.使用方法)
第一の局面において、本発明は、インターフェロン治療に応答性の疾患または状態をヒト被験体において処置するための方法を提供する。「インターフェロン治療に応答性」状態とは、その状態の存在、進行または症状が、インターフェロン(特にI型インターフェロン、さらに具体的にはIFN−τ)の投与に基づき変更される状態である。IFNαまたはIFNβを用いた処置に応答する状態はまた、IFNτを用いた処置に応答し得る。より好ましくは、インターフェロン治療に応答性の状態は、その状態の存在、進行または症状が、非経口経路(例えば、注射)で投与されたIFNτによって緩和される。本明細中に記載される方法は、被験体の血中OASレベルの増加によって証明される、治療に有効な量を、胃および/または小腸への投与のため、経口投与可能な形態でIFNτを提供することを包含する。
【0086】
IFNτは、抗ウイルス剤として、抗増殖剤として、および自己免疫疾患の処置において、生物学的活性を持つ(例えば、米国特許第5,958,402号;同第5,942,223号;同第6,060,450号;同第6,372,206号を参照する。これらは本明細中で参考として援用される)。従って、本発明は、注射により投与した場合にIFN−τに応答性の任意の状態の処置のための、IFNτの経口投与を企図する。本発明の方法を使用して処置し得る状態および疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、および増殖亢進性疾患、ならびに免疫学的媒介性の疾患が挙げられる。
【0087】
(A.免疫系障害の処置)
本発明の方法は、免疫系過敏症が関係する状態の処置に有益である。免疫系過敏症には4つの型がある(Clayman,C.B.編、AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION ENCYCLOPEDIA OF MEDICINE,Random House,New York,N.Y.,(1991))。I型過敏症、すなわち即時型過敏症/アナフィラキシー過敏症は、アレルゲン(例えば、花粉等)に応答した肥満細胞の脱顆粒に起因し、そして喘息、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、蕁麻疹、アナフィラキーショック、およびアレルギー性質の他の疾病が含まれる。II型過敏症、すなわち自己免疫過敏症は、自己体内細胞上での感知された「抗原」に対する抗体に起因する。III型過敏症は、種々の組織に留まりそしてさらなる免疫応答を活性化し、そして血清疾患、アレルギー性肺胞炎、および追加ワクチン摂取後に時折形成される大腫張のような状態の原因である、抗原/抗体免疫複合体の形成に起因する。IV型過敏症は、感作したT細胞からのリンホカインの放出に起因し、この放出は炎症性反応を生じる。例としては、接触性皮膚炎、麻疹の発疹、および特定の化学物質に対する「アレルギー性」反応が含まれる。
【0088】
一部の個人において、特定の状態が過敏症を生じる機構は全体的に十分には理解されていないが、遺伝的要因と外部要因との両方が関係している可能性がある。例えば、自己免疫障害に対する遺伝的素質を既に有する個人において、細菌、ウイルスまたは薬物は自己免疫応答を引き起こす役割を果たし得る。一部の型の過敏症の発生率は他のものに関連する場合があると示唆されている。例えば、特定の一般的なアレルギーを有する個人は、自己免疫障害により感受性であると提唱されている。
【0089】
自己免疫障害は、特定の器官または組織に本質的に限定されるもの、および全身に影響を与えるものに、大まかにグループ分けされ得る。器官特異的障害(および影響を受ける臓器)の例としては、多発性硬化症(神経突起のミエリン被覆)、I型真性糖尿病(膵臓)、橋本甲状腺炎(甲状腺)、悪性貧血(胃)、アジソン病(副腎)、重症筋無力症(神経筋接合部のアセチルコリンレセプター)、リウマチ様関節炎(関節裏側)、ブドウ膜炎(眼)、乾癬(皮膚)、ギラン−バレー症候群(神経細胞)、およびグレーブス病(甲状腺)が挙げられる。全身性自己免疫疾患としては、全身性紅斑性狼瘡および皮膚筋炎が挙げられる。
【0090】
過敏性障害の他の例としては、喘息、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、その他湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、鼻炎、扁平苔癬、天疱瘡(Pemplugus)、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、ブドウ膜炎(uritcaris)、血管性浮腫、脈管炎(vasculitides)、紅斑、皮膚好酸球増加症、円形脱毛症、アテローム性動脈硬化症、原発胆汁性肝硬変、およびネフローゼ症候群が挙げられる。関係する疾患としては、炎症性腸疾患(例えば、セリアック病、直腸炎、好酸球増加胃腸炎、肥満細胞症、炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎)、および食物関連アレルギーが挙げられる。
【0091】
本発明の方法を使用した処置に特に感受性の自己免疫疾患としては、多発性硬化症、I型(インシュリン依存性)真性糖尿病、紅斑性狼瘡、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、慢性関節リウマチ、口内炎、喘息、ブドウ膜炎、アレルギー、および乾癬が挙げられる。
【0092】
本発明の方法を使用して、自己免疫障害(例えば、上記に考察されたもの)を治療的処置を行い、そしてこれによってその自己免疫障害を緩和する。自己免疫障害の処置は、多発性硬化症の動物モデルであるEAEの処置に関して本明細書中に例証される。自己免疫障害を処置するために使用する場合、IFNτは、IFNτ投与の初期の間にOASの測定可能な増加を達成するのに十分な用量で投与される。一旦、所望する有効用量が達成されると、血中OASレベルのさらなる変化に関係なく、長期にわたって有効量のIFNτで患者を処置する。処置期間は、少なくとも患者が症候性である期間にわたる。自己免疫状態に関連する症状が停止したら、投薬量を調整して下げ得るか、または処置を停止し得る。IFNτの処置期間中、患者は、他の薬剤(例えば、公知の抗炎症剤または免疫抑制剤)と共に同時処置され得る。
【0093】
(B.ウイルス感染の処置)
また本発明の方法を使用して、ウイルス感染が関係する状態を処置する。IFNτの抗ウイルス活性は、IFNαが通常関係する毒性効果を伴うことなく幅広い治療的適用を有しており、そしてIFNτは細胞に対する有害な効果を伴わずにその治療活性を発揮する。IFNτが細胞毒性を比較的持たないことは、インビボ治療薬剤としてこのIFNτを非常に高く価値付け、そして大半の他の公知の抗ウイルス剤および他の全ての公知のインターフェロンから、IFNτを区別させる。
【0094】
ウイルス複製を抑制するため、IFNτを含有する処方物を経口投与し得る。ウイルス感染を処置する使用のため、このタンパク質を、患者の血中OASにおける測定可能な増加を達成するのに十分な用量で投与する。その後、血中OASレベルのさらなる変化(例えば、ウイルス負荷の低減に起因した血中OASレベルの下降)とは無関係に、処置を有効用量で継続する。IFNτの投与を、ウイルス感染レベル(例えば、血中ウイルス力価あるいはウイルス感染に伴う症状の臨床的観察等から測定される)が低下するまで継続する。経口投与されるIFNτによって処置し得る特定のウイルス疾患の例としては、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、非A型肝炎、非B型肝炎、非C型肝炎、エプスタイン−バーウイルス感染、HIV感染、ヘルペスウイルス(EB、CML、単純ヘルペス)、乳頭腫、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、リノウイルス、HTLV I、HTLV II、およびヒトロタウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。この治療期間の間、患者は、第二の抗ウイルス剤(例えば、ヌクレオチド類似体、アンチセンス薬剤など)と共に同時処置され得る。
【0095】
(C.細胞増殖状態を処置するための方法)
別の実施形態において、本発明の方法は、過増殖によって特徴づけられる状態を治療するために企図される。IFNτは強力な抗細胞増殖活性を呈する。従って、調節されない細胞増殖を阻害、予防、あるいは遅延させるため、IFNτを経口投与することにより細胞増殖を阻害する方法が企図される。
【0096】
IFNτを経口投与することによって処置され得る、特定の細胞増殖障害の例としては、ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄白血病、多発性骨髄腫、表在性膀胱癌、皮膚癌(基底細胞癌腫および悪性黒色腫)、腎細胞癌腫、卵巣癌、軽度リンパ球性リンパ腫および皮膚性T細胞リンパ腫、ならびに神経膠腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
細胞増殖状態を処置する使用のため、IFNτは、患者の血中OASについの初期の測定可能な増加を達成するのに十分な用量で投与される。その後処置は、血中OASレベルのさらなる変化(例えば、体内の癌細胞の減少によるOAS血中レベルの下降)に関係なく、有効投与量で継続される。有効用量でのIFNτの投与は、例えば、特定の組織における腫瘍の大きさまたは癌細胞の広がりによって測定される場合、所望する緩解レベルが観察されるまで継続される。この治療期間の間、患者は、第二の抗癌剤(例えば、シスプラチン、ドキソルビシン、またはタキソール)と共に同時処置され得る。
【0098】
(D.組成物と投与量)
IFNτを含有する経口調製物は、薬学的組成物を調製するための公知の方法に従って処方され得る。一般に、IFNτ治療組成物は、この組成物の効果的な経口投与を容易にするため、有効投与量のIFNτが、適切な添加剤、担体および/または賦形剤と混ぜられるように処方される。例えば、IFNτを含む錠剤およびカプセルは、薬学的に受容可能な担体(例えば、乳糖、コーンスターチ、微結晶セルロース、シュークロース)、結合剤(例えば、澱粉アルファ体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプン、低度に置換されたヒドロキシプロピルセルロース)、界面活性剤(例えば、Tween80、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体)、酸化防止剤(例えば、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム)、および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)のような添加物とIFNτ(例えば、凍結乾燥IFNτ)を組み合わせることによって調製され得る。
【0099】
さらに本発明のIFNτポリペプチドは、固形、粉状あるいはその他の担体(例えば、乳糖、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、ポテトデンプンおよびコーンスターチのようなデンプン、ミロペクチン(millopectine)、セルロース誘導体、またはゼラチン)と混合され得、そしてまた、錠剤形成に対して圧縮される、滑沢剤(例えば、マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム)、またはポリエチレングリコールのワックスを包含し得る。数層の担体または稀釈剤を用いることによって、徐放性に作動する錠剤を調製し得る。
【0100】
経口投与のための液体調製物(例えば、約0.1〜約30重量%のIFNτ、糖、ならびにエタノール、水、グリセロール、プロピレン、グリコールおよび一般的な性質の他の可能性のある添加剤からなる混合物を含有する溶液)は、エリキシル、シロップ、あるいは懸濁液の形態で作製され得る。
【0101】
別の適切な処方物は、腸粘膜によって吸収されるまで胃および腸内で存続するようこのタンパク質を保護する、被包薬型投薬形態である。タンパク質のための被包薬型投薬形態は当分野で公知であり、そしてこれには、腸溶コーティングおよび/または粘膜接着性ポリマーコーティングが挙げられる。粘膜接着性ポリマー処方物の例示としては、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragit(登録商標)、カルボキシビニルポリマー、カルボマー等が挙げられる。IFNτの活性形態での腸管(特に小腸)への送達のため、経口摂取を介した胃への投与のために設計された投与形態が、企図される。あるいは、IFNτは、胃環境および/または腸環境に対する多少の保護作用を提供するために、高分子物質で安定化させるかまたは脂質もしくポリマー粒子でカプセル化したプロテアーゼインヒビターと共に同時投与され得る。
【0102】
経口活性IFNτ薬学的組成物は治療的有効量で処置を必要とする個体に投与される。投用量は著しく変動し得、障害の重篤度、患者の年齢および体重、その患者が受けている他の医学的処置などの要因に依存する。代表的には担当医がこの用量または投薬量を決定する。投薬量は代表的には約1×104単位/日〜1×1010単位/日の間となり、より好ましくは約5×108単位/日を超え、約1×109単位/日を超えることが好ましい。
【0103】
血漿中のIFNτレベルが安定して上昇することが必要とされる疾患は、約2〜4時間ごとくらいの投与が有益となり、他の疾患(例えば、多発性硬化症)は、例えば、1日1回あるいは48時間ごとに1回のより少ない頻度間隔で治療的有効用量を投与することによって効果的に処置され得る。個々の用量の投与割合は、代表的には、処置される疾患の重篤度を緩和しながら最低総投薬量の投与を可能とするよう担当医によって調整される。上記に考察されるように、この方法は、処置を必要とする患者に、第一の用量でIFNτを経口投与し、この第一の投薬レベルに対する個々の被験体の応答を決定するための生物学的マーカーをモニタリングすることを企図する。モニタリングは血液採取およびマーカー(例えば、血液中のOAS酵素)の分析(例えば、放射免疫アッセイキットを使用して)を介して容易に行われ得る。また、モニタリングは、血液採取および細胞(例えば、血中リンパ球)中のOAS mRNA発現量の分析を介して行われ得る。従って、別の局面において、本発明は、IFNτに応答性の状態を患う者を処置する際に使用するためのキットを企図する。このキットは、IFNτ経口投与のために設計された1回以上の投薬量形態単位を収容する容器からなる第一部分、および、生物性マーカーをモニタリングするのに必要とされる構成要素(例えば、IFNτの血中OAS酵素またはmRNAレベルを分析するのに必要とされる構成要素)からなる第二部分、を備える。
【0104】
一旦、患者の状態の改善が生じると、必要に応じて維持用量が投与される。続いて、投薬量もしくは投与の頻度、またはその両方を、症状の関数として、改善された状態が維持されるレベルに低減され得る。
【0105】
当然ながら、本発明に従ったIFNτの経口投与は、他の治療と併用して使用され得るが、理解される。例えば、IFNτは、、自己免疫応答が指向される抗原の投与を付随され得る。例としては、多発性硬化症を処置するためのミエリン塩基性タンパク質とIFNτとの共投与;慢性関節リウマチを処置するためのコラーゲンとIFNτとの共投与、および重症筋無力症を処置するためのアセチルコリンレセプターポリペプチドとIFNτとの共投与、が挙げられる。
【0106】
さらに、多発性硬化症のような自己免疫疾患を治療するために、公知の免疫抑制剤(例えば、ステロイド)と共に、IFNτは経口投与され得る。これら免疫抑制剤は、IFNτと共同的に作用し得、そしてIFNτ単独または免疫抑制剤単独の等価用量で得られ得る処置効果よりも、より大きな処置効果をもたらし得る。
【0107】
同様に癌あるいはウイルス疾患に対する処置において、、えば、治療的有効量の1つ以上の化学治療薬(例えば、ブスルファン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ジドブジン(AZT)、ロイコボリン、メルファラン、プレドニゾン、シクロホスファミド、ダカルバジン、シスプラチン、ジピリダモールなど)と併用して、IFNτが投与され得る。
【実施例】
【0108】
(IV.実施例)
以下の実施例は、本明細書中に記載される本発明をさらに例示するものであって、本発明の範囲を限定することは決して意図されない。
【0109】
(材料と方法)
(A.IFNτの作製)
一実施形態において、標準分子学的方法(Ausubelら、1988)を用いて、IFNτアミノ酸配列をコードするDNA配列の連続部分を含有するオリゴヌクレオチドを連結させることによって、合成IFNτ遺伝子を作製した。使用したDNA配列は配列番号1もしくは配列番号4、またはImakawaら、1987で示されている配列のいずれかであり得る。得られたIFNτポリヌクレオチドをコードする配列は、16位〜531位にまたがり得、172アミノ酸のコーディング配列である。
【0110】
一実施形態において、完全長の合成遺伝子StuI/SStlフラグメント(540bp)を改変pIN III omp−A発現ベクター中にクローニングし得、そしてE.coliのコンピテントなSB221株を形質転換し得る。IFNτタンパク質発現のため、発現ベクターを保有する細胞を、アンピシリンを含有するLブロスでOD(550nm)0.1〜1に増殖させ、IPTG(イソプロピル−1−チオ−b−D−ガラクトシド)で3時間誘導し、そして遠心分離によって収集した。超音波処理あるいは浸透分画によって、可溶性の組換えIFNτを細胞から遊離させ得る。
【0111】
酵母での発現のため、StuI制限部位およびSacI制限部位をそれぞれ5’末端および3’末端に含有するPCRプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR;Mullis,K.B.、1987年7月28日発行の米国特許第4,683,202号、Mullis,K.B.ら、1987年7月28日発行の米国特許第4,683,195号)を用いて、IFN−τ遺伝子を増幅し得る。増幅した断片をStuIおよびSacIIで消化し、そしてpBLUESCRIPT+(KS)のSacII部位およびSmaI部位にライゲーションして、pBSY−IFNτを作製した。プラスミドpBSY−IFNτをSacIIおよびEcoRVで消化し、そして合成IFN−τ遺伝子を含有するフラグメントを単離した。酵母発現ベクターpBS24Ub(Ecker,D.J.ら、J.Biol.Chem.264:7715−7719(1989))をSalIで消化した。T4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端を調製した。このベクターDNAをフェノールで抽出し、そしてエタノール沈殿した(Sambrook,J.ら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989))。回収したプラスミドをSacIIで消化し、アガロース電気泳動によって精製し、そしてpBSY−IFN−τから単離したSacII−EcoRVフラグメントにライゲーションした。得られた組換えプラスミドをpBS24Ub−IFNτと名付けた。
【0112】
組換えプラスミドpBS24Ub−IFNτをE.coliに形質転換した。IFN−τ挿入部を含有する組換えクローンを単離し、そして制限酵素分析によって同定した。IFN−τをコードする配列をpBS24Ub−IFN−τから単離し、そしてアルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターを含有するPichia pastorisベクター(Invitrogen,San Diego,CA)中にクローニングした。次にこのベクターを使用してPichia pastoris GS115 His−宿主細胞を形質転換し、そして製造者の指示書に従ってタンパク質を発現させた。タンパク質は培地中に分泌され、そして連続したDEAEセルロースカラムクロマトグラフィーおよびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによって、SDS−PAGEおよび銀染色によって決定する場合に電気泳動的に均一へと精製した。
【0113】
(B.抗ウイルス比活性を決定するための抗ウイルスアッセイ)
標準的な細胞変性効果アッセイ(Familletti,P.C.ら、Methods in Enzymology,78:387−394(1981);Rubinstein,S.ら、J.Virol.,37:755−758(1981))を用いて抗ウイルス活性を測定した。概略を述べると、IFNτ稀釈物をMadin−Darbyウシ腎(MDBK)細胞と共に37℃で16〜18時間インキュベートした。インキュベーション後、攻撃物として水疱性口内炎ウイルスを使用する細胞変性効果アッセイにて、ウイルス複製の抑制を決定した。1抗ウイルス単位(U)は、単層破壊を50%減少させた。本明細書中に記載される研究の大半で、IFNτは、1mgタンパク質あたり約4.9×108抗ウイルス単位という比活性を有していた。
【0114】
(実施例1)
(マウスに経口投与および腹腔内投与したヒツジIFNτを用いたOASの誘導)
IFNτ(1mgタンパク質あたり4.99×108単位;Pepgen Corp.,California、またはBiological Process Development Facility,Dept.of Food Science and Technology,University of NE−Lincoln,Lincoln,NE;配列番号4)を10%マルトース溶液に溶解して、IFNτ溶液を調製した。本発明ではIFNτ(配列番号2)の使用も企図する。200μlのIFNτ溶液を、20ゲージのディスポーザブル経口ゾンデ(Fuchigami,Kyoto)を使用してICRマウス(平均体重約30g、6週齢、メス)に経口投与し、胃の上部へ直接注入した(消化器投与;GA)。
【0115】
腹腔内投与(i.p.)には、100μlのIFNτ溶液を使用した。胃の上部へのサンプルの注入を、色素を投与することによって確認した。投与して24時間後に、このマウスをネンブタールで麻酔した。このマウスの心臓から血液を採取し、そして2−5A RIAキット(Eiken Chemical,Tokyo;Shindo,M.ら、Hepatology,9:715−719(1989))によって全血中のOAS活性を決定した。
【0116】
これらの結果を図1に示す。
【0117】
(実施例2)
(マウスへのIFNτ経口投与による、用量依存的OAS誘導)
実施例1と同じ手順を用いて、0単位、103単位、104単位、または105単位のIFNτをICRマウスに経口投与した。経口投与して24時間後に、このマウスの心臓から全血を採取し、全血中のOAS活性を決定した。これらの結果を図2に示す。
【0118】
(実施例3)
(マウスへのIFNτ投与)
病原体を持たない5週齢メスのICR系統マウス、BALB/c系統マウス、C57BL/9系統マウス、NZW/N系統マウス、およびSJL/J系統マウスを、Japan SLC.Inc.,Hamamatsuから購入した。これらのマウスは実験前1週間、研究室にて飼育した。
【0119】
本明細書中に配列番号3と同定される配列を有する組換えヒツジIFN−τ(IFN−」τ)を入手した(Pepgen Corporation,Alameda,CA)。この研究で使用した調製物は、VSVを用いてチャレンジしたMDBK細胞において分析し、そしてヒトIFN−αに対して標準化した場合、1mgタンパク質あたり5×108単位(U)の比活性を有した。天然のマウスIFN−α(MuIFN−α)をSumitomo Pharmaceutical Co.(Osaka,Japan)から調達し、その比活性は1mgタンパク質あたり1×108国際単位(IU)であった。
【0120】
マウスへの投与のため、IFN−τを、10%マルトースを含有する溶液に溶解した。経口(p.o.)処置または腹腔内(i.p.)注射のいずれかによって、0.2mlのサンプルをマウス(6週齢メス)に投与した。経口的に与える場合、20ゲージ経口摂取用ニードルを用いて、サンプルを直接胃の上部へ導入した。投与の前に6時間(午後1時に始めて午後7時に終了した)、マウスから食餌と飲料の両方を絶った。絶食の後、経口経路または腹腔内経路のいずれかによってIFNτを投与し、6時間目に食餌と飲料を与えた。次いで24時間目に心臓から全血を採取した。
【0121】
Eikenの2−5A RIAキットを用いて、全血中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)活性を測定した。稀釈した血液をポリI:C−アガロースゲルと混合し、ゲルを洗浄後ATPを加えた。そして産生した2−5AをRIA法(Shindo,M.ら、Hepatology,9:715−719(1989))によってアッセイした。このアッセイは各試料につき2回行った。血中OASレベル評価のため、少なくとも3匹のマウスを使用した。
【0122】
(実施例4)
(ヒト被験体におけるIFN−τの経口投与によるALTの減少、HCVウイルス力価の減少、およびOAS誘導)
(A.IFN−τの調製)
1日目に、冷蔵庫からIFNτ(配列番号4)を1ビン取り出し、被験体は表2に従って正しい量の試験物質を自己投薬した。また、IFNτ(配列番号2)を調製して同様の様式で投与し得る。
【0123】
【表2】
(B.患者の投薬指示)
試験物質のバイアルおよび注射器は全て、2℃から8℃に維持した冷蔵庫内に保管した。医薬品を自己投薬する前に、患者はバイアル1つおよび注射器1つ冷蔵庫から取り出した。注射器先端のキャップをはずし、この注射器先端を医薬品容器内に入れ、臨床第1日目に指示された適切な容量を注射器内に吸い取った。
【0124】
注射器先端を口の中へ入れ、プランジャーを押して口内へと注射器内容物を空にした。次に被験体は試験物質を飲み込んだ。所望の場合、患者はグラス1杯の水を飲むことが許可された。患者は自分の日誌カードに、1用量の試験物質を投与した日付および時間を記入した。
【0125】
上記手順を1日3回、約8時間間隔(朝に1回、昼に1回そして晩に1回)で繰り返した。
【0126】
(C.結果)
169日の試験期間に渡って、規定の間隔で血液サンプルを採取した。2−5A RIAキット(Eiken Chemical,Tokyo)を使用して、このサンプルを、血清中および末梢血液単核細胞(PBMC)中の2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベルについて分析した。稀釈した血液をポリI:C−アガロースゲルと共に混合し、ゲルを洗浄後ATPを加え、RIA法(Shindo,M.ら、Hepatology,9:715−719(1989))によって、産生した2−5Aを測定した。このアッセイは各試料につき2回行った。また、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を用いてC型肝炎ウイルスの力価も測定し、そしてアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中濃度も測定した。
【0127】
各被験体についての結果を以下の表3〜5に示し、図7〜8にグラフ表示する。ヒツジIFN−τの経口投与後、OASレベルの上昇と、ALTおよびウイルス力価の減少とを観察した。
【0128】
【表3A】
【0129】
【表3B】
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
。
【0132】
(実施例5)
(経口投与したOvIFNτは実験的アレルギー性脳脊髄炎の発症をブロックする)
レシピエントのニュージーランドホワイト(NZW)マウスに、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)誘発のためにウシミエリン塩基性タンパク質(bMBP)で免疫する48時間前、免疫した当日、および免疫した48時間後に、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによってOvIFNτ(105U/ml)を与えた。105UのIFNτをPBSと混合して全量を100μLとし、食道を下降して胃内部に配置した給餌チューブを使用して投与した。IFNτのリン酸緩衝化生理食塩水への稀釈は、投与の直前に行った。
【0133】
NZWマウスにおけるEAE誘発のため、300μgのウシミエリン塩基性タンパク質(bMBP)を、8mg/mLのH37Ra(Mycobacterium tuberculosis,Difco,Detroit,MI)を含有する完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化し、そして尾の根元の一方の側に注射した。また、免疫した当日および48時間後に、400ngの百日咳毒素(List Biologicals,Campbell,CA)も注射した。SJL/JマウスのEAE誘発には、初回免疫後7日目に再免疫する点を除いて、同じプロトコルを記載したように用いた。EAEの兆候についてマウスを毎日調べ、疾患の重篤度を次の尺度に基づいて程度分けした。:
【0134】
【数3】
EAEの予防がOvIFNτ処置に特異的であるかのどうかを決定するため、抗OvIFNτモノクローナル抗体(mAb)(HL127)を使用して、OvIFNτがEAEを妨げる能力を中和した(HL127抗体、配列番号2の139〜172番目のアミノ酸配列に対する抗体、MDBK細胞系を使用した抗ウイルスアッセイにおいてOvIFNτの抗ウイルス活性を中和する)。腹腔内注射または経口摂取のいずれかによる投与前に、HL127の1:10稀釈物をOvIFNτと共に2時間インキュベートした。IFNτ抗原に対する抗体を、本明細書中の情報を抗体産生のための公知技術(例えば、Harlow,E.ら、ANTIBODIES:A LABPRATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1988))と組み合わせて使用して、調製し得る。
【0135】
結果を以下の表6に示す。IFNτの経口摂取と腹腔内注射のいずれもEAEの急性誘発に対して防御した。腹腔内注射経由でIFNτを与えた動物でEAEの症状を発症するものは無かったが、OvIFNτを経口的に与えた動物に関しては、9匹中7匹(78%)を防御した。抗OvIFNτ抗体HL127は、OvIFNτがEAEをブロックする能力を部分的に中和するのに有効であった。これらのデータは、多発性硬化症の動物モデルにおいて、経口投与したIFNτが処置として有効であることを示す。
【0136】
【表6】
(実施例6)
(経口投与後の血清中のOvIFNτの検出)
OvIFNτの経口摂取または腹腔内注射の後、マウス(上記のように処置した)の血清中に検出可能なOvIFNτ量を時間経過とともに比較した。マウスに3×105UのOvIFNτを投与し、IFNτ投与の0.5時間後、2時間後、4時間後、6時間後、24時間後および48時間後に採血した。サンプル中のIFNτ量を決定するため、細胞変性効果(ウイルスプラーク)アッセイ(Familetti,P.C.ら、Meth.Enzymol.78:387(1981))において血清を試験した。
【0137】
概略を述べると、平底96ウェルプレート内でコンフルエントまで増殖させたMDBK細胞にIFNτ稀釈物を加え、37℃で18〜24時間培養した。室温で45分間、このプレートに水疱性口内炎ウイルス(VSV)を加えた。ウイルスを除去し、メチルセルロースを加え、このプレートを37℃で48時間インキュベートした。メチルセルロースを除去後、プラークの視認化のため、プレートをクリスタルバイオレットで染色した。IFNの中和作用を測定するため、500U/mL濃度のOvIFNτを血清またはHL127(OvIFNτに特異的なモノクローナル抗体)のいずれかと共に37℃で1時間インキュベートした。1抗ウイルス単位は、VSVに感染させた未処理MDBK細胞(コントロールプレート)と比較して単層の破壊が50%減少させた。アッセイ間の差異を除くため、全てのサンプルを同時にアッセイした。
【0138】
図9で示したように、経口摂取(塗りつぶされたバー)して0.5時間後および2時間後に、200U/mLのレベルでOvIFNτを検出した。比較すると、腹腔内注射(白抜きのバー)後、24時間にわたって幾分より高いレベルのOvIFNτを検出した。これらのデータは、上記用量のIFNτを、経口投与後約2時間、血清中にて検出し得ることを示す。
【0139】
(実施例7)
(OvIFNτの経口的投与による、実験的アレルギー性脳脊髄炎の慢性再発の予防)
EAEの慢性再発モデルを使用して、OvIFNτが麻痺を予防する能力を試験した。ここで、MBPで免疫したSJLマウスは、再発緩和化様式で症状の出現が起る慢性型疾患を発症する(Zamvil,S.S.ら、Ann.Rev.Immunol.8:578−621(1990))。
【0140】
上記のように、SJLマウスでは基本的にEAEが誘発された。このマウスを、免疫当日(0日目)およびその後の実験期間中48時間ごとに、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによって、105UのIFNτで処置した。結果を図10Aに示す。MBPで免疫したがIFNτ処置を受けなかったSJLマウスは、発病率5/5で慢性再発性麻痺を発症し、最大平均重篤度約2.5は、実験開始後14日目に生じた。対照的に、腹腔内注射または経口摂取のいずれか(それぞれ、図10B、図10C)によるOvIFNτでの処置は、EAEからの防御を生じた。両方のIFNτ処置グループの発症率は、1匹/5匹に減少し、平均重篤度約1.0であった。これらのデータは、IFNτの経口投与が慢性再発性EAEの発症をブロックし得ることを示し、そして延長した期間にわたって約48時間ごとにIFNτを摂取させた場合、経口投与したIFNτが腹腔内注射と同程度に有効であり得ることを示す。
【0141】
(実施例8)
(組織学的分析)
経口経路および腹腔内経路によってOvIFNτで処置したMBP免疫マウスのCNS内に、リンパ球が浸潤する程度を判定するため、組織学的分析を行った。
【0142】
4%パラホルムアルデヒドでマウスを灌流し、脊柱を取り出して2〜3日間ホルマリンで処理した。脊髄を解剖して取り出し、0.5%のシュクロースに4℃で一晩浸漬した。脊髄切片を包埋し、ミクロトームで切片をカットした。4%パラホルムアルデヒド中に切片をスライドガラスに固定し、炎症性浸潤が目視できるようにクレージルバイオレットで染色した。
【0143】
結果を最終倍率222×で図11A〜11Cに示す。コントロール脊髄の白質にリンパ性病変が存在した(図11A)。対照的に、腹腔内注射(図11B)あるいは経口摂取(図11C)によってOvIFNτで処置したマウスにおいて、リンパ球浸潤を検出しなかった。これらのデータは、IFNτの防御効果がCNSのリンパ球浸潤抑制に関係することを示す。
【0144】
(実施例9)
(OvIFNτ処置によるIL−10の誘導)
慢性再発性EAEの予防のためにSJLをOvIFNτ処置する過程の間に、マウスから採血し、そしてインターロイキン10(IL−10)の存在について血清を調べた。製造者の指示書に従ってIL−10 ELISAキット(Genzyme,Cambridge,MA)を使用する固相酵素免疫検定法(ELISA)によって、IFNτ(105U)を1回処置した(腹腔内注射または経口摂取によって)マウス、長期間IFNτ(105U)処置したマウス(腹腔内注射または経口摂取によって20日を超える間)、または未処置マウスのいずれかに由来する血清を、IL−10について試験した。全血清サンプルは2つ組で試験した。
【0145】
細胞増殖状態を処置する使用のため、患者における血中OASの測定可能な初期増加を達成するのに十分な用量で、IFNτを投与する。その後、血中OASレベルのさらなる変化(例えば、体内の癌細胞の減少に起因してOAS血中レベルの下降)に関係なく、有効用量で処置を継続する。所望のレベルの退縮が認められるまで有効用量でのIFNτの投与を継続する。この退縮は、例えば、特定の組織における腫瘍の大きさ、または癌細胞の広がりによって測定する。この治療期間中に、患者に、第二の抗癌剤(例えば、シスプラチン、ドクソルビシン、またはタキソール)と共に同時処置し得る。長期間のIFNτ(105U)処置(腹腔内注射または経口摂取によって20日を越える間)、または未処置をIL−10について、製造者の指示書に従ってIL−10 ELISAキット(Genzyme,Cambridge,MA)を使用する固相酵素免疫検定法(ELISA)によって試験した。全血清サンプルは2つ組で試験した。
【0146】
結果を図12に示す。コントロールマウスにおいても、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによるOvIFNτを1回処置を受けたマウスにおいても、IL−10を検出しなかった。対照的に、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによって、20日を超える間、48時間ごとにOvIFNτを受けたSJLマウスは、血清中に検出可能なレベルのIL−10を有した。IFNτ誘導性のIL−10産生は、OvIFNτがEAEの発症を防止する寄与機構であり得ることを、これらのデータは示唆する。
【0147】
(実施例10)
(OvIFNτでの処置の停止は再発性麻痺を生じる)
腹腔内注射または経口摂取のいずれかによるOvIFNτ処置(48時間ごと)によってEAEより防御したSJLマウスを、その後58日間続けた。この期間中疾患の発症は観察されなかった。次にOvIFNτ処置を解除し、そして疾患の症状についてさらに22日間マウスを観察した。
【0148】
結果を図13に示す。IFNτ処置をグラフ下のプラス記号として表示し、IFNτ処置の解除をマイナス記号として表示する。各々の処置グループにおける疾患率は以下の通りであった:PBSコントロール=3/4(四角);腹腔内注射=3/3(三角);経口摂取=3/4(丸)。
【0149】
それまでOvIFNτ処置によってEAEから防御されていた両グループのマウスは、OvIFNτ処置を解除後6〜12日目に麻痺の兆候を発症した。これらのデータは、EAEの慢性再発モデルにおいて継続的にEAEから防御するため、腹腔内注射または経口摂取のいずれかによって、IFNτの継続的投与が望ましいことを示唆する。
【0150】
(実施例11)
(OvIFNτの経口投与は抗OvIFNτ抗体応答を低減させる)
上記の実施例10にて記載した実験においてOvIFNτ処置を解除した後、各々の処置グループのマウスから採血し、そして抗OvIFNτ抗体(Ab)の存在について血清を試験した。
【0151】
抗原OvIFNτは600ng/ウェルの濃度で一晩、プラスチックの組織培養ウェルの平底に吸着させ、続いて乾燥するまでエバポレートした。非特異的な結合を防ぐため、5%乳液(カーネーション)のPBS溶液でこのプレートを2時間処理し、次に0.05%のTween20を含有するPBSで3回洗浄した。未処理のマウス由来の血清、腹腔内注射によってOvIFNτ処置をしたマウス由来の血清、および経口摂取によってOvIFNτ処置をしたマウス由来の血清の様々な稀釈物を加え、3時間インキュベートした。西洋ワサビパーオキシダーゼ結合化ヤギ抗マウス免疫グロブリンを用いて結合を分析した。o−フェニレンジアミンおよびH2O2を添加し、2MのH2SO4で反応を終結させた後、ELISAプレートリーダー(Bio−Rad,Richmond,CA)において、492nmで発色をモニタリングした。
【0152】
例示的な結果を図14に示す。未処理由来、腹腔内注射OvIFNτ投与由来、および経口摂取OvIFNτ投与由来(1グループあたり2匹)の血清を、1:30(白抜きのバー)および1:120(塗りつぶしたバー)を含む多重稀釈法を使用して、ELISAによって試験した。経口摂取によってOvIFNτを受けたマウスは、わずかな抗体レベルを呈し、一方、腹腔内注射によってOvIFNτを受けたマウスでは、抗OvIFNτ抗体レベルの上昇を提示した。予想の通り、OvIFNτ処置を受けなかったマウスは抗OvIFNτ抗体を示さなかった。
【0153】
上記のように、MDBK細胞に対するOvIFNτの抗ウイルス活性を中和する能力についても、血清を調べた。結果を以下の表7に示す。腹腔内注射マウス由来の血清も経口摂取のマウス由来の血清も、いずれも中和活性を持たなかった。これらのデータは、IFNτでの経口処置は、腹腔内注射処置した個体において観察されたOvIFNτタンパク質に対する抗体応答が回避され、そしてどちらの処置でも、概して中和抗体を生じないことを示唆している。
【0154】
【表7】
本発明を特定の実施例に関連づけて記載したが、本発明から逸脱せずに、様々な変更および変法が可能であることは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は、健常マウスへIFN−τを腹腔内(i.p.)あるいは消化器投与した後の血中OAS濃度をpmol/dLで示す。
【図2】図2は、1×103U、1×104Uおよび1×105Uの投薬量でIFNτをマウスへ消化器投与した際の血中OAS濃度をpmol/dLで示す。
【図3】図3は、IFNτ(105U)を経口投与した後の、数種のマウス系統(ICR、BALB/c、C57BL、NZW/NおよびSJL/J)の血中OAS濃度をpmol/dLで示す棒グラフである。コントロールのマウスは、IFNτを含まない10%マルトース溶液を経口的に受けた。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3〜5匹のマウス)の平均値±S.E.を示している。
【図4A】図4A〜4Bは、6時間の絶食後にIFNτを投与した後の、マウスの血中OAS活性の誘導を示す棒グラフである。IFNτは経口投与されるかまたは腹腔内注射により投与した。図4Aは、IFNτ(105U)投与後0時間目、8時間目、16時間目、および24時間目に採取した血液サンプルにおける、血中OASレベルを示す。インターフェロンを含まない10%マルトース溶液で処置したマウスの血中OASとして得たコントロールに対する百分率として表している。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3匹のマウス)の平均値±S.E.を示している。
【図4B】図4A〜4Bは、6時間の絶食後にIFNτを投与した後の、マウスの血中OAS活性の誘導を示す棒グラフである。IFNτは経口投与されるかまたは腹腔内注射により投与した。図4Bは、0U、102U、103U、104U、および105Uの濃度でIFNτを送達した24時間後の血中OAS濃度を示し、コントロールに対するパーセンテージとして表す。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3匹のマウス)の平均値±S.E.を示している。
【図5】図5A〜5Dは、IFN−τ投与によるマウスの血中OASの誘導に対する、断食状態の効果を示す棒グラフである。血中OASの誘導は、インターフェロンを含まない10%マルトース溶液で処置したマウスの血中OASとして得たコントロールに対する百分率として示される。処置されたマウスは、記載した摂取レジメンの6時間後に104UのIFNτを(腹腔内注射または経口投与により)与えた。図5Aは食餌も飲水もなし;図5Bは飲水で食餌なし、図5Cは食餌で飲水なし、図5Dは食餌および飲水の両方。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3匹のマウス)の平均値±S.E.を表す。
【図6】図6は、経口的にかまたは腹腔内注入によりICRマウスへ与えられたマウスIFNα(0IU、102IU、103IU、および104IU)の投与によって、血中OAS活性の誘導を示す棒グラフであり、インターフェロンを含まない10%マルトース溶液で処置したマウスの血中OASとして得たコントロールに対する百分率として表される。血中のOAS活性はIFNα投与の16時間後にアッセイされた。各々のバーは、行った2回の実験(同様の結果であった)のうちの1回(3匹のマウス)の平均値±S.E.を表す。
【図7A】図7A〜7Cは、1日当たり4.9×108単位のIFNτの経口投与後の、3人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図7B】図7A〜7Cは、1日当たり4.9×108単位のIFNτの経口投与後の、3人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図7C】図7A〜7Cは、1日当たり4.9×108単位のIFNτの経口投与後の、3人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図8A】図8A〜8Bは、1日当たり1.5×109単位のIFNτの経口投与後の、2人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図8B】図8A〜8Bは、1日当たり1.5×109単位のIFNτの経口投与後の、2人のヒト患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)RNAレベルおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを示す。
【図9】図9は、抗ウイルスアッセイ法を用いて測定した、経口摂取(塗りつぶしたバー)または腹腔内注射(白抜きのバー)のいずれかによる投与後のNZWマウス血清中のIFNτ量を示す。
【図10】図10A〜10Cは、処置を受けなかったマウス(図10A)と比較した、IFNτの経口投与(図10C)および腹腔内注射(図10B)による、SJLマウスにおける、慢性再発性の実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の予防を示す。
【図11】図11A〜11Cは、リンパ球の浸潤を検出するためにクレージルバイオレットで染色した、IFNτ処置をしない(図11A)か、腹腔内注射によるIFNτ処置(図11B)か、経口摂取によるIFNτ処置(図11C)かのいずれかの処置を受けた、EAE誘発動物由来のマウス脊髄の切片を示す。
【図12】図12は、腹腔内注射または経口摂取によって投与された、単回用量のIFNτ処置または長期のIFNτ処置のいずれかによるIL−10の誘導を示す。
【図13】図13は、SJLマウスにおける、IFNτ処置解除後のEAEの再発を示す。
【図14】図14は、IFNτの腹腔内注射または経口摂取の後の、IFNτ処置されたマウス血清中の抗IFNτ抗体についてのELISA検出を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロンτ治療に応答性のヒト被験体における状態を処置する医薬の調製における使用のための組成物であって、該状態は、自己免疫性状態、癌、またはウイルス感染から選択され、該組成物は、インターフェロン−τ投与の非存在下における該被験体の血中2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベルに対して、該被験体の血中OASレベルの初期の測定可能な増加を生じるのに有効な量での、該被験体の腸管への経口投与のために処方されたインターフェロンτを含み、ここで、該インターフェロン−τは、該患者の血中OASレベルの変化とは無関係に、該患者の該腸管に、そのような有効量で、一週間当たり少なくとも2〜3回を通常の基準として、少なくとも1ヶ月の期間投与され得る、組成物。
【請求項2】
前記インターフェロン−τが、配列番号2または配列番号3として確認される配列を有するヒツジインターフェロン−τである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記インターフェロン−τが、毎日を基準として少なくとも約1ヶ月の期間投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記被験体における多発性硬化症の処置のための組成物であって、ここで、前記インターフェロン−τは、該被験体の症状の存在に応じた期間の間投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記被験体におけるC型肝炎感染の処置のための組成物であって、ここで、前記インターフェロン−τは、該被験体においてウイルス感染が検出されない時点から2〜3ヵ月後の間投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記被験体における癌の処置のための組成物であって、ここで、抗癌剤がインターフェロン−τ投与の期間の間に該被験体にさらに投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記被験体の血中OASレベルは、該OASレベルが上昇されているか否かを確認するために、インターフェロン−τの投与の間にモニタリングされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項1】
インターフェロンτ治療に応答性のヒト被験体における状態を処置する医薬の調製における使用のための組成物であって、該状態は、自己免疫性状態、癌、またはウイルス感染から選択され、該組成物は、インターフェロン−τ投与の非存在下における該被験体の血中2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素(OAS)レベルに対して、該被験体の血中OASレベルの初期の測定可能な増加を生じるのに有効な量での、該被験体の腸管への経口投与のために処方されたインターフェロンτを含み、ここで、該インターフェロン−τは、該患者の血中OASレベルの変化とは無関係に、該患者の該腸管に、そのような有効量で、一週間当たり少なくとも2〜3回を通常の基準として、少なくとも1ヶ月の期間投与され得る、組成物。
【請求項2】
前記インターフェロン−τが、配列番号2または配列番号3として確認される配列を有するヒツジインターフェロン−τである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記インターフェロン−τが、毎日を基準として少なくとも約1ヶ月の期間投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記被験体における多発性硬化症の処置のための組成物であって、ここで、前記インターフェロン−τは、該被験体の症状の存在に応じた期間の間投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記被験体におけるC型肝炎感染の処置のための組成物であって、ここで、前記インターフェロン−τは、該被験体においてウイルス感染が検出されない時点から2〜3ヵ月後の間投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記被験体における癌の処置のための組成物であって、ここで、抗癌剤がインターフェロン−τ投与の期間の間に該被験体にさらに投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記被験体の血中OASレベルは、該OASレベルが上昇されているか否かを確認するために、インターフェロン−τの投与の間にモニタリングされる、請求項1に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−509958(P2007−509958A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538244(P2006−538244)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/035804
【国際公開番号】WO2005/044297
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(504265086)ペプジェン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/035804
【国際公開番号】WO2005/044297
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(504265086)ペプジェン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
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