説明

医薬エアロゾル組成物

少なくとも1のヒドロフルオロアルカン噴霧剤;少なくとも1の、補助剤との活性剤複合体;及び任意に、少なくとも1の医薬として許容し得る賦形剤;を含む、医薬エアロゾル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬エアロゾル組成物に関する。特に、本発明は、安定な医薬エアロゾル組成物、その製造方法、及び呼吸器疾患の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景及び先行技術)
定量噴霧式吸入器(MDI)は、現在のところ、ヒトの気道に小用量の薬剤を正確に送達するための、最も有効かつ最も容認された手法である。吸入経路により通常送達される治療薬には、気管支拡張薬(β-2刺激薬及び抗コリン薬)、副腎皮質ステロイド薬、及び抗アレルギー薬がある。また、吸入は、抗感染症薬、ワクチン接種、全身作用薬、及び診断薬、並びに抗ロイコトリエン及び抗プロテアーゼに適用可能な経路でもあり得る。
【0003】
MDIは、典型的に、液化噴霧剤に溶解した薬剤、又は液化噴霧剤に懸濁した微粉化粒子などの生成物が充填された、定量バルブを装着した耐圧性容器を含む。定量バルブの作動は、少量の噴霧生成物を放出させ、それにより、液化噴霧剤の圧力が、溶解した又は微粉化した薬剤粒子を容器から出して、患者へ運ぶ。該バルブアクチュエータは、エアロゾル噴霧を患者の中咽頭に方向付けるのに使用される。
【0004】
クロロフルオロカーボン(CFC)は、定量噴霧式吸入器(MDI)により患者に送達される製剤の噴霧剤として広く使用されている。しかし、近年、CFCが地球のオゾン層に損害を与えることを、科学的証拠は示唆している。オゾンは、有害な紫外線をブロックするとされており、オゾン層の喪失は、皮膚癌の増加をもたらすと考えられている。結果として、CFCは、現在では徐々に、好ましいMDI噴霧剤として、ヒドロフルオロカーボン又はHFA(該名称は、本明細書中において互換的に使用される。)(例えば、HFA134a及びHFA227)に代替されつつある。
【0005】
噴霧剤、HFA134a又は1,1,1,2-テトラフルオロエタン(該名称は、本明細書中において互換的に使用される。)は、不燃性であり、低毒性であり、かつエアロゾルでの使用に適した蒸気圧を有する。しかし、HFA134aは貧溶媒であり、共溶媒の助力なしに、有用濃度の、トリオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、レシチン、及びオレイン酸などの通常使用される界面活性剤を、溶解しないか又は十分には分散しない。
【0006】
同様に、噴霧剤、HFA227又は1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(該名称は、本明細書中において互換的に使用される。)は、不燃性であり、低毒性であり、かつエアロゾルでの使用に適した蒸気圧を有する。しかし、HFA227の極性及び溶解性は、通常使用されるCFC噴霧剤のそれと異なり、多くの一般に使用される界面活性剤は、HFA227に、溶解しないか又は分散しにくい。
【0007】
US5182097は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、薬剤、及び薬剤を噴霧剤に分散するための界面活性剤であるオレイン酸からなるエアロゾル製剤に関する。
US5612053は、薬剤、及び充填剤として添加された天然の多糖類ガムである担体の接着性複合材料の粒子の制御放出を含む、吸入用乾燥粉末製剤に関する。
【0008】
EP0384371は、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、又はそのプロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、若しくは1,1,ジフルオロエタンとの混合物が、噴霧剤として作用するエアロゾルを開示している。しかし、該出願は、懸濁エアロゾル又は医薬エアロゾル製剤は開示していない。
【0009】
WO93/11747は、基本的に、医薬として有効量の薬剤、並びにHFA134a、HFA227、及びそれらの混合物からなる群から選択される噴霧剤からなる、エアロゾル投与に適した医薬懸濁液製剤を開示している。特に、該出願は、HFA134a、HFA227、及びHFA134aとHFA227との1:1混合物中の、フマル酸ホルモテロールの製剤を開示している。該製剤は、界面活性剤又はエタノールを含まない。HFA134aとHFA227との混合物は、薬剤と適合する密度で調整され得ることが記載されている。
【0010】
WO93/11745は、フルオロカーボン又は含水素クロロフルオロカーボン噴霧剤、及び最大5%の極性共溶媒を含む、実質的に界面活性剤を含まない医薬エアロゾル製剤を開示している。好ましい噴霧剤は、HFA134a及びHFA227であり、これらは、好ましくは、単独で使用される。好ましい極性共溶媒は、エタノールであり、概して、例えば、0.05〜3.0% w/wだけの少量の極性共溶媒が、分散を改善するのに必要とされ、5% w/wを超える量の使用は、医薬を溶解するのに不利となり得る。
【0011】
HFA噴霧剤システムを使用する多数の医薬エアロゾル製剤が、例えば、EP0372777、WO91/11173、及びWO91/14422に開示されている。これらの出願は、全て、医薬の投与のための加圧エアロゾルの製造と関連している。全ての出願は、例えば、アルコール類、アルカン類、ジメチルエーテル、界面活性剤(フッ素化及び非フッ素化界面活性剤、カルボン酸、ポリエトキシラートなどを含む。)、及び見込まれるオゾンの破壊を最小化することを目的とした少量の従来のクロロフルオロカーボン噴霧剤などの、補助剤の1以上の添加を提案しているが、いずれの予想外の利点も確立することはできていない。
【0012】
US6303103は、粒子状サルブタモール、及び抗コリン医薬、又はその生理的に許容される塩及び溶媒和物、フルオロカーボン又は含水素クロロフルオロカーボン噴霧剤を含み、界面活性剤を実質的に含まないか、又は該医薬の0.0001重量%未満の界面活性剤を含む、医薬エアロゾル製剤を開示している。しかし、請求された発明を支持するための、実施例又はいずれの安定性試験データによる明確な実証が存在しない。
【0013】
また、薬剤を、むしろ界面活性剤のみで被覆する試みもなされているが、結果は、あまり満足のいくものではない。
WO91/04011には、エアロゾル噴霧剤に懸濁された、実質的に不溶性である単一の非パーフルオロ化表面活性分散剤で被覆された、微粉化した、前微粉化した固形薬剤を含む、自己推進性粉末エアロゾル組成物が記載されている。
【0014】
PCT/GB2008/002029には、ポリビニルピロリドンで被覆された臭化チオトロピウムを含む製剤が記載されている。この被覆方法は、多数の処理工程を必要とし、オーバースプレー及び均一性の欠如のために、規模拡大における困難の原因となり得るという不都合に悩まされる。
全てのこれらの特許及び特許出願の開示は、参照により本明細書中に組み込まれている。
【0015】
上記先行技術のほとんどが、界面活性剤の使用を提示している。しかし、界面活性剤の使用は、ヒドロフルオロアルカンに溶解性であり、かつ医薬懸濁液を安定化することができる、適当な懸濁化剤又は界面活性剤の探索において、多数の問題点に遭遇するために、全ての薬剤に適するというわけではない。また、界面活性剤とともに賦形剤を追加的に取り込むと、製剤が不安定化し得る。
【0016】
HFAは、CFCより、より極性で、かつより吸湿性であるので、HFA MDIにおいて、水浸透が、より顕著に見られ、これはまた、極性、水混和性共溶媒、例えば、アルコールなどの使用により悪化する。上記現象はまた、製剤中に存在する薬剤物質又は他の賦形剤の性質によって影響を受け得る。環境中の水分は、バルブガスケットを通過してMDI内に拡散し、薬剤粒子成長及び凝集の促進により、MDI製剤の物理的安定性に悪影響を及ぼす。薬剤粒子の凝集は、エアロゾル容器のバルブ口部を詰まらせ、調剤装置を動作不能にさせ得るか、又は定量バルブが用いられる場合に、それは、投与を不正確にさせ、極めて強力な薬剤の場合には、望ましくない結果をもたらし得る。粒子サイズの増大及び口部の目詰まりに加えて、凝集は、懸濁液を物理的に不安定にさせ、特に、エアロゾル化製剤の場合には、明らかに望ましくない結果を与え得る。
【0017】
したがって、微細な薬剤粒子の凝集の問題を解決するための方法を提供し、かつヒドロフルオロカーボン噴霧剤を利用する安定なエアロゾル組成物を提供する必要性が、いまだ残されている。
【0018】
(目的)
本発明の目的は、安定な医薬エアロゾル組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、微細薬剤粒子が貯蔵の間に凝集しない、医薬エアロゾル組成物を提供することである。
本発明の更に別の目的は、本発明の医薬エアロゾル組成物を製造するための容易な方法を提供することである。
【0019】
本発明の更に別の目的は、缶の寿命を通して、用量均一で医薬エアロゾル組成物を提供することである。
本発明の更なる目的は、軽度、中等度、又は重篤度の、急性又は慢性症状の治療、又は呼吸器疾患の予防的治療に使用するための医薬エアロゾル組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0020】
(概要)
本発明の第1の態様により、1以上のHFA噴霧剤、及び少なくとも1の、補助剤との活性複合体、並びに任意に、1以上の医薬として許容し得る賦形剤を含む、安定な医薬エアロゾル組成物を提供する。
【0021】
本発明の第2の態様により、少なくとも1の、補助剤との活性複合体、1以上のHFA噴霧剤、及び少なくとも1の他の医薬として許容し得る賦形剤、例えば、少なくとも1の充填剤及び/又は共溶媒を含む、安定な医薬エアロゾル組成物を提供する。
【0022】
本発明の第3の態様により、前記安定な医薬エアロゾル組成物の製造方法を提供する。
本発明の第4の態様により、軽度、中等度、又は重篤度の、急性又は慢性症状の治療、又は喘息などの呼吸器疾患の予防的治療に使用するための医薬エアロゾル組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(詳細な説明)
先に記載したように、エアロゾル組成物の微細薬剤粒子の凝集の問題を解決し、貯蔵を通して安定性が保たれる、新規方法を提供する必要性がある。
驚くべきことに、本発明者らは、薬剤-補助剤複合体をエアロゾル組成物の製造に使用する場合に、微細薬剤粒子の凝集が、顕著に低減され、該組成物を、貯蔵期間を通して安定させることを見出した。
【0024】
更に、本発明者らは、他の医薬として許容し得る賦形剤を有する医薬エアロゾル組成物における、界面活性剤の分散が、貯蔵の間、該組成物を不安定にさせることを認めた。特に、微細粒子の質量は、貯蔵の間、同一のままではないか、又は時宜に即して減少することが見出された。しかし、驚くべきことに、薬剤が、噴霧剤の添加とともに、又は任意に1以上の充填剤及び/又は共溶媒とともに、PVP K25、PVP K17、又はPVP K30などの補助剤と複合体を形成する場合に、微細薬剤粒子の凝集が、顕著に低減され、したがって、貯蔵期間の間、該組成物を安定に保つことが見出された。また、該組成物は、MDIの寿命を通して、均一な送達用量特性を示し続けることも見出された。
【0025】
本発明は、医薬エアロゾル組成物を提供する。より具体的には、該医薬エアロゾル組成物は、少なくとも1の、医薬活性剤と補助剤との複合体、少なくとも1のヒドロフルオロアルカン(HFA)噴霧剤、及び任意に、1以上の充填剤及び/又は共溶媒などの他の適当な賦形剤を含む。
【0026】
特定の有利な実施態様において、補助剤は、ポリマー、好ましくは、ポリビニルピロリドン(PVP、及びPVP K12、PVP K15、PVP K17、PVP K25、PVP K30、PVP K60、PVP K90などの他の市販の等級)であり、好ましくは、PVP 2500〜PVP 1,200,000、好ましくは、PVP 2500〜PVP 1,000,000の範囲の分子量を有する。そのようなポリマーが、薬剤と複合体を形成する場合に、それらは、良質の医薬エアロゾル懸濁剤を与えることが見出されている。
【0027】
用語「補助剤」は、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びPVP K12、PVP K15、PVP K17、PVP K25、PVP K30、PVP K60、PVP K90などのその他の市販の等級のみならず、適当な水溶性及び不水溶性ポリマー、又はそれらの混合物、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG4000及びPEG6000)、並びに界面活性剤、例えば、トリオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、tween、例えば、tween 20、40、60、80、120、脂質、レシチン、オレイン酸、クエン酸、及びポリオキシエチレン-ラウリルエーテル(例えば、Brij 30)を含む広義の意味で本明細書を通して使用される。
【0028】
本発明により、補助剤として使用することができる水溶性ポリマーは、N-ビニルラクタムのホモポリマー及びコポリマー、特に、N-ビニルピロリドンのホモポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP及び酢酸ビニルのコポリマー、N-ビニルピロリドン及び酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルのコポリマー、例えば、マルトデキストリン、セルロースエステル、及びセルロースエーテルの等級などのデキストリン、例えば、ポリエチレンオキシド、及びポリプロピレンオキシドなどの高分子ポリアルキレンオキシド、並びにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマーなどを含む。
【0029】
本発明により、補助剤として使用することができる不水溶性ポリマーは、アクリルコポリマー、例えば、Eudragit E100又はEudragit EPO;Eudragit L30D-55、Eudragit FS30D、Eudragit RL30D、Eudragit RS30D、Eudragit NE30D、Acryl-Eze;ポリ酢酸ビニル、例えば、Kollicoat SR 3OD;エチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体などを含む。
【0030】
本発明により、薬剤-補助剤複合体中の補助剤の量は、薬剤の0.5重量%〜500重量%、好ましくは、薬剤の0.5重量%〜100重量%の範囲である。適当な量の補助剤は、薬剤の0.5重量%、1重量%、2重量%、10重量%、50重量%、及び100重量%である。
【0031】
薬剤-補助剤は、粒子状(微粉化形態)である。好ましくは、粒径は、実質的に粒子の全てが、エアロゾル組成物の投与の際に、肺への吸入に利用できる可能性があるようにさせるようなものである。したがって、例えば、粒子の少なくとも90重量%、より好ましくは、少なくとも95重量%が、15μm未満、好ましくは、0.5〜15μm、より好ましくは、0.5〜10μm、及び最も好ましくは、0.5〜5μmの直径を有することが好ましい。最も好ましくは、粒子の少なくとも95重量%が、0.5〜5μmの直径を有する。
【0032】
本発明により、エアロゾル組成物中で複合体を形成し得る薬剤を挙げると、例えば、1以上の下記のものを含む、当業者に公知の吸入療法に有用な任意の薬剤がある:鎮痛薬、例えば、コデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニル、又はモルヒネ;狭心症製剤、例えば、ジルチアゼム;抗アレルギー薬、例えば、クロモグリケート、ケトチフェン、又はネドクロミル;抗感染症薬、例えば、セファロスポリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリン、及びペンタミジン;抗ヒスタミン薬、例えば、メタピリレン;抗炎症薬、例えば、ベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、チプレダン、トリアムシノロンアセトニド、又はフルチカゾン;副腎皮質ステロイド薬、例えば、ブデソニド、シクレソニド、フルチカゾン、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、チキソコルトール、ホルモコータル、リメキソロン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デフラザコート、プレドニゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン;鎮咳薬、例えば、ノスカピン;気管支拡張薬、例えば、エフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、ホルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピルブテロール、レプロテロール、リミテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、イソエタリン、ツロブテロール、オルシプレナリン、又は(-)4-アミノ-3,5-ジクロロ-α-[[[6-[2-(2-ピリジニル)エトキシ]ヘキシル]アミノ]メチル]ベンゼンメタノール;利尿薬、例えば、アミロライド;抗コリン薬、例えば、チオトロピウム、イプラトロピウム、アクリジニウム(aclidinium)、アトロピン、又はオキシトロピウム;ホルモン、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、又はプレドニゾロン;キサンチン、例えば、アミノフィリン、コリンテオフィリナート、リジンテオフィリナート、又はテオフィリン;並びに治療用タンパク質及びペプチド、例えば、インスリン又はグルカゴン、又はそれらの医薬として許容し得る塩。
【0033】
薬剤は、それらの医薬として許容し得る塩、医薬として許容し得る溶媒和物、医薬として許容し得る水和物、医薬として許容し得る鏡像異性体、医薬として許容し得る誘導体、医薬として許容し得る鏡像異性体、医薬として許容し得る多形、組成物の活性及び/又は安定性を最適化した、その医薬として許容し得るプロドラッグの形態で使用され得ることが、当業者には明らかとなるであろう。
【0034】
本発明により、エアロゾル組成物における複合体形成に、特に好ましい薬剤を挙げると、抗アレルギー薬、抗コリン薬、気管支拡張薬、及び副腎皮質ステロイド薬があり、例えば、サルブタモール、ベクロメタゾン、イプラトロピウム、ホルモテロール、チオトロピウム、アクリジニウム、サルメテロール、フルチカゾン、ブデソニド、フェノテロール、シクレソニド、モメタゾン、又はそれらの医薬として許容し得る塩が、特に好ましい。
【0035】
用語「気管支拡張薬」又は「副腎皮質ステロイド薬」などは、β刺激薬、又は抗コリン薬、又は副腎皮質ステロイド薬それ自身のみならず、それらの医薬として許容し得る塩、医薬として許容し得る溶媒和物、医薬として許容し得る水和物、医薬として許容し得る鏡像異性体、医薬として許容し得る誘導体、医薬として許容し得る鏡像異性体、医薬として許容し得る多形、及び医薬として許容し得るプロドラッグをも含む、広義の意味で使用される。
【0036】
適切である場合には、上記薬剤の下記の塩を使用してもよい;酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸、フマル酸塩、フルセプタート(fluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パントテン酸塩、リン酸二リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、及びトリエトヨウ化物。
【0037】
本発明の組成物に有用なβ模倣薬を挙げると、サルブタモール、ホルモテロール、レバルブテロール、カルモテロール、ピルブテロール、及びサルメテロールがあるが、これらに限定されない。β模倣薬の適当な医薬として許容し得る塩を挙げると、塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、及びクエン酸塩があるが、これらに限定されない。好ましくは、β模倣薬は、サルブタモール、硫酸サルブタモール、レボサルブタモール、硫酸レボサルブタモール、又は酒石酸レボサルブタモールから選択される。
【0038】
本発明の組成物に有用な抗コリン薬を挙げると、オキシトロピウム、イプラトロピウム、アクリジニウム、及びチオトロピウムがあるが、これらに限定されない。抗コリン薬の適当な医薬として許容し得る塩を挙げると、臭化物、塩化物、又はヨウ化物などのハロゲン塩があるが、こられらに限定されない。好ましくは、抗コリン薬は、チオトロピウム、又は臭化チオトロピウム、又は臭化チオトロピウム一水和物である。
【0039】
本発明の好ましい医薬エアロゾル組成物は、以下を含む:(a) 有効量の、少なくとも1の、薬剤と補助剤との複合体;(b) 少なくとも1のヒドロフルオロカーボン噴霧剤;及び(c) 任意に、1以上の充填剤及び/又は共溶媒を含む、少なくとも1の医薬として許容し得る賦形剤。
【0040】
本発明の特に好ましい実施態様において、以下を含む安定な医薬エアロゾル組成物を提供する:(a) 有効量の、チオトロピウム、アクリジニウム、イプラトロピウム、レボサルブタモール、又はそれらの医薬として許容し得る塩から選択される、少なくとも1の医薬活性剤とPVP K17又はPVP K30との複合体;(b) 少なくとも1のヒドロフルオロカーボン噴霧剤;及び(c) 任意に、少なくとも1の、ラクトースなどの充填剤、及び/又は他の医薬として許容し得る賦形剤を有するポリエチレングリコール400(PEG400)などの共溶媒。
【0041】
本発明のエアロゾル組成物は、所望であれば、2以上の薬剤の組み合わせを含むことが、当業者には理解されるであろう。したがって、本発明は、2以上の薬剤を含むエアロゾル組成物を更に提供し、少なくとも1つの薬剤が、1以上の任意の医薬として許容し得る賦形剤とともに、補助剤と複合体を形成する。
【0042】
好ましくは、医薬エアロゾル組成物は、気管支拡張薬、例えば、チオトロピウム(例えば、臭化物塩)、サルブタモール(例えば、遊離塩、又は硫酸塩)、レボサルブタモール(例えば、硫酸塩)、サルメテロール(例えば、キシナホ酸塩)、アクリジニウム、イソプレナリン、若しくはそれらの医薬として許容し得る塩、又は気管支拡張薬と、1以上の副腎皮質ステロイド薬、例えば、ベクロメタゾンエステル(例えば、ジプロプリオナート)、ブデソニド、若しくはフルチカゾンエステル(例えば、プロピオナート)若しくはそれらの他の医薬として許容し得る塩との組み合わせを含み、ここで、少なくとも1の薬剤が、補助剤と複合体を形成している。
【0043】
あるいは、エアロゾル組成物は、気管支拡張薬と、抗アレルギー薬、例えば、クロモグリケート(例えば、ナトリウム塩)との組み合わせを含むことができる。そのような組み合わせの例を挙げると、イソプレナリン及びクロモグリク酸ナトリウム;サルメテロール及びプロピオン酸フルチカゾン;又はサルブタモール及びジプロピオン酸ベクロメタゾンなどがある。
【0044】
本発明の別の態様により、本発明の医薬エアロゾル組成物を含むチャンバーを有するキャニスター;医薬エアロゾル組成物を、それを必要とする患者に送達するための出口;及び該チャンバーから該出口までの医薬エアロゾル組成物の流れを制御するためのバルブを含む、医薬エアロゾルディスペンサーを提供する。好ましくは、該キャニスターは、金属、ガラス、又はポリスルホンプラスチック、例えば、ポリスルホン(PSU)及びポリエーテルスルホン(PES)などのプラスチック材料から製造される。好ましくは、該医薬エアロゾル装置は、MDIである。
【0045】
本発明は、エアロゾル医薬製剤を、それを必要とする患者に送達するための、医薬エアロゾルディスペンサーの製造方法を更に提供し、これは以下を含む:
(a) 適当な金属のキャニスター中の複合体薬剤粒子を秤量すること;
(b) 任意に、該複合体薬剤粒子を、共溶媒、充填剤、抗酸化剤、潤滑剤から選択される1以上の適当な賦形剤と、及び任意に1以上の界面活性剤、又は他の同様の複合体若しくは非複合体薬剤とともに、混合すること;
(c) 該キャニスターを適当なバルブと圧着し、HFA噴霧剤を充填すること。
【0046】
別の態様において、本発明は、活性剤と補助剤との複合体の製造方法を提供し、これは以下を含む:
(a) 活性剤を有機溶媒(例えば、アセトン)中で混合すること;
(b) 工程(a)から得た混合物を、適当な温度に加熱し、水を加えて、透明溶液を形成すること;
(c) 補助剤を、工程(b)から得た上記溶液に添加すること;
(d) 該透明溶液を、減圧下、好ましくは、真空下で濃縮して、残渣を形成すること;
(e) 該残渣を、工程(a)での使用と同じ溶媒で洗浄すること;及び
(f) 工程(e)から得た洗浄残渣を乾燥(例えば、適当な温度、又は好ましくは、50℃)して、薬剤-補助剤複合体を形成すること。
【0047】
上記方法に使用される溶媒は、アセトニトリル、メタノール、水、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドから選択することができる。最も好ましい溶媒は、アセトンである。
【0048】
あるいは、活性剤と補助剤との複合体は、凍結乾燥により、又は噴霧乾燥などの当該分野で公知の適当な技術を使用して溶媒をフラッシュ蒸発することにより、単離することができる。本発明について、フラッシュ蒸発技術は、熱及び真空を加えることによる溶媒の除去を意味する。
【0049】
本発明の補助剤との複合体の製造方法に使用される活性剤は、非晶質、結晶質、一水和物若しくは無水物形態、又は誘導体、又は多形、又はそれらのプロドラッグであってよい。
【0050】
本発明の医薬エアロゾル組成物は、任意に、医薬エアロゾル製剤の技術分野で従来使用される、1以上の賦形剤又は担体を含むことができる。そのような任意の賦形剤を挙げると、矯味剤、緩衝剤、抗酸化剤、水、及び化学安定剤があるが、これらに限定されない。
【0051】
適当な充填剤の例を挙げると、1以上の糖類、例えば、単糖、二糖、多糖、及び糖アルコール類、例えば、アラビノース、グルコース、フルクトース、リボース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、デンプン、デキストラン、又はマンニトールがあるが、それらに限定されない。充填剤は、複合体の0.005〜500重量%、より好ましくは、0.005〜300重量%の範囲の濃度で存在し得る。好ましい充填剤は、ラクトースである。
【0052】
共溶媒の例を挙げると、1以上の、ポリエチレングリコール(「PEG」)、プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、又はグリセロールがあるが、これらに限定されない。好適には、共溶媒は、PEG200又はPEG400などのPEGである。共溶媒は、組成物の約0.05重量%〜約15重量%の範囲で存在し得る。好適には、共溶媒は、組成物の約0.05重量%〜約1重量%、又は約0.05重量%〜約0.3重量%の範囲で存在する。
本発明は、任意に、クエン酸、塩化ベンザルコニウムなどの抗酸化剤を含むことができる。
【0053】
先に記載したように、エアロゾル組成物は、従来、CFC噴霧剤を含有した。環境問題のために、現在では、HFA噴霧剤が、CFC噴霧剤よりも好ましい。当業者に理解されるように、本発明の使用に適したHFA噴霧剤を挙げると、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)及び1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227)があるが、これらに限定されない。任意に、2以上のそのようなハロゲン置換炭化水素の混合物も、使用することができる。
【0054】
本発明は、HFA噴霧剤をエアロゾル噴霧剤として使用して、医薬として許容し得る安定な分散を達成させるという点で、特に有益である。本発明のエアロゾル組成物は、HFA噴霧剤単独か、又はHFA噴霧剤と、HFA噴霧剤の極性と同等若しくはそれより低い極性を有する別の混和性補助剤との混合物を用いて製造することができる。
【0055】
更なる態様において、本発明は、軽度、中等度、又は重篤度の、急性又は慢性症状の治療、又は喘息などの呼吸器疾患の予防的治療に使用するための、本発明の医薬エアロゾル組成物を提供する。
【0056】
好ましい実施態様において、本発明は、軽度、中等度、又は重篤度の、急性又は慢性症状の治療、又は喘息などの呼吸器疾患の予防的治療のための医薬の製造における、本発明の医薬エアロゾル組成物の使用を提供する。
【0057】
別の好ましい実施態様において、軽度、中等度、又は重篤度の、急性又は慢性症状の治療、又は喘息などの呼吸器疾患の予防的治療の方法を提供し、該方法は、医薬として有効な量の本発明の医薬エアロゾル組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む。
下記の実施例は、本発明の例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0058】
(臭化チオトロピウム-PVP複合体の製造方法)
1) 5gの臭化チオトロピウムを反応容器に導入した。アセトンを加えた。反応混合物を50〜55℃の温度に加熱した。更なる水(15ml)を該反応混合物に加えて、透明溶液を得た。この溶液に、2.5gのPVP-K-17を加えた。該溶液を、真空下で濃縮して、残渣を得た。該残渣をアセトン(15ml)で洗浄し、真空下50℃で乾燥して、表題化合物(6g)を得た。
2) 5gの臭化チオトロピウムを反応容器に導入した。水(15ml)を該反応混合物に加えて、透明溶液を得た。この溶液に、2.5gのPVP-K-17を加えた。溶液を真空下で濃縮して、残渣を得た。該残渣をアセトン(15ml)で洗浄し、真空下50℃で乾燥して、表題複合体(6g)を得た。
3) 凍結乾燥による臭化チオトロピウム-PVP複合体の形成
5gの臭化チオトロピウム、及び2.5gのポリビニルピロリドン(PVP)を、50mlの水中、25〜30℃で、溶解するまで撹拌した。該溶液をドライアイス槽で、急速凍結した。該溶液を、高真空下、およそ0℃の凝縮器温度で凍結乾燥した。生じた表題複合体を、固体(5.8g)の形態で得た。
【0059】
4) 蒸発による臭化チオトロピウム-PVP複合体の形成
2.5gの臭化チオトロピウム、及び1.25gのポリビニルピロリドン(PVP)を、10mlのエタノール中、25〜30℃で、溶解するまで撹拌した。該溶液をポリエチレンのトレーに注ぎ、真空オーブンにおいて、窒素流の存在下、エタノールを蒸発させた。得られた乾燥固体の表題生成物を単離した(2.5g)。
5) 噴霧乾燥による臭化チオトロピウム-PVP複合体の形成
2.5gの臭化チオトロピウムを、25mlのメタノールに溶解した。1.25gのPVPをメタノール(15ml)に溶解した。両方の溶液を混合し、噴霧乾燥した。薬剤-補助剤複合体の製造に使用したパラメータは、以下のとおりである:
装置- Labultima社LU-222 ADVANCE SPRAY DRYER
温度- 50〜55℃
真空- 40mmWC
N2圧- 1〜2kg
供給速度- 3ml/分
固体生成物を回収器中に回収した(2.0g)。
【0060】
(医薬エアロゾル組成物の実施例)
組成物1:チオトロピウム-PVP複合体(0.5%)、共溶媒、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表1】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着し、噴霧剤及びPEGの溶液を加えた。
【0061】
組成物2:チオトロピウム-PVP複合体(100%)、共溶媒、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表2】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着し、噴霧剤及びPEGの溶液を加えた。
【0062】
組成物3:チオトロピウム-PVP複合体(0.5%)、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表3】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着した。
(c) キャニスターにHFA227を加えた。
【0063】
組成物4:臭化イプラトロピウム-PVP複合体(0.5%)、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表4】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着した。
(c) キャニスターにHFA227を加えた。
【0064】
組成物5:チオトロピウム-PVP複合体(100%)、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表5】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着した
(c) キャニスターにHFA227を加えた。
【0065】
組成物6:チオトロピウム-PVP複合体(0.5%)、充填剤、共溶媒、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表6】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) ラクトースを(a)に加えた。
(c) キャニスターを定量バルブと圧着し、噴霧剤を加えた。
【0066】
組成物7:硫酸レボサルブタモール-PVP複合体(0.5%)、充填剤、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表7】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) ラクトースを(a)に加えた。
(c) キャニスターを定量バルブと圧着し、噴霧剤を加えた。
【0067】
組成物8:酒石酸レボサルブタモール-PVP複合体(0.5%)、充填剤、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表8】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) ラクトースを(a)に加えた。
(c) キャニスターを定量バルブと圧着し、噴霧剤を加えた。
【0068】
組成物9:チオトロピウム-PVP複合体(0.5%)、充填剤、共溶媒、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表9】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) ラクトースを(a)に加えた。
(c) キャニスターを定量バルブと圧着し、噴霧剤及びPEGの溶液を加えた。
【0069】
組成物10:チオトロピウム-PVP複合体(0.5%)、充填剤、共溶媒、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表10】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) ラクトースを(a)に加えた。
(c) キャニスターを定量バルブと圧着し、噴霧剤及びPEGの溶液を加えた。
【0070】
組成物11:チオトロピウム-PVP複合体(0.5%)、充填剤、共溶媒、及びHFA噴霧剤を含有する医薬エアロゾル組成物。
【表11】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) ラクトースを(a)に加えた。
(c) キャニスターを定量バルブと圧着し、噴霧剤及びPEGの溶液を加えた。
【0071】
組成物12:
【表12】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着した。
(c) キャニスターにHFA227を加えた。
【0072】
組成物13:
【表13】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着した。
(c) キャニスターにHFA227を加えた。
【0073】
組成物14:
【表14】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着した。
(c) キャニスターにHFA227を加えた。
【0074】
組成物15:
【表15】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着した。
(c) キャニスターにHFA227を加えた。
【0075】
組成物16:
【表16】

方法:
(a) 活性成分をキャニスターに加えた。
(b) キャニスターを定量バルブと圧着し、キャニスターに噴霧剤及びPEGの溶液を加えた。
【0076】
(薬剤-補助剤複合体及びHFAを含有する医薬エアロゾル組成物の安定性試験データ)
下記の3つの異なる組成物の組み合わせを比較する、加速安定性試験を行った:
(1) 薬剤及びHFA噴霧剤;(2) 薬剤-補助剤複合体、及びHFA噴霧剤;並びに(3) 薬剤、共溶媒、界面活性剤、充填剤、及びHFA噴霧剤。
【表17】

薬剤-補助剤複合体を含有するエアロゾル組成物は、加速安定性条件で貯蔵した場合に、該試験の間、一貫して微細粒径を示すことが見出された。
【0077】
様々な代用及び修正が、本発明の精神を逸脱することなく、本明細書中に開示された発明になされ得ることは、当業者には容易に理解されるであろう。したがって、本発明は、好ましい実施態様及び任意の特徴によって、具体的に開示されているが、開示される本明細書中の概念の修正及び変更が、当業者によって用いられ、そのような修正及び変更は、本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0078】
本明細書中で使用される表現及び専門用語は、説明を目的とするものであり、限定すると見なされるべきものではないことが、理解されよう。「含むこと(including)」、「含むこと(comprising)」、又は「有すること」、及び本明細書中のそれらの変化の使用は、その後に記載される事項、及びそれらの等価物、並びに追加的事項を包含することを意味する。
本明細書及び添付の請求項に使用される単数形「ひとつの(a)」「ひとつの(an)」及び「該(the)」は、本文で明らかに別の指示がない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ひとつの噴霧剤(a propellant)」とは、単一の噴霧剤、並びに2以上の異なる噴霧剤を含み、「共溶媒」への言及は、単一の共溶媒、又は2以上の共溶媒の組み合わせなどを指す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のヒドロフルオロアルカン(HFA)噴霧剤;少なくとも1の、活性剤と補助剤との複合体;及び任意に、1以上の医薬として許容し得る賦形剤を含む、医薬エアロゾル組成物。
【請求項2】
前記補助剤が、ポリマー;シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、脂質、クエン酸、及び界面活性剤、例えば、トリオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、tween、レシチン、オレイン酸、ポリオキシエチレン-ラウリルエーテル、又はそれらの混合物から選択される、請求項1記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項3】
前記補助剤が、ポリマーである、請求項2記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、水溶性ポリマー、不水溶性ポリマー、又はそれらの混合物である、請求項3記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項5】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、例えば、N-ビニルピロリドンのホモポリマー及びコポリマーなどのN-ビニルラクタムのホモポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー、N-ビニルピロリドン及び酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルのコポリマー、例えば、マルトデキストリン、セルロースエステル、及びセルロースエーテルの等級などのデキストリン、例えば、ポリエチレンオキシド、及びポリプロピレンオキシドなどの高分子ポリアルキレンオキシド、並びにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマーを含む、請求項4記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項6】
前記不水溶性ポリマーが、アクリルコポリマー;ポリ酢酸ビニル;例えば、エチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体を含む、請求項4記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項7】
前記補助剤が、ポリビニルピロリドンである、請求項1〜5記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項8】
前記ポリビニルピロリドンが、2500〜1,200,000の範囲の分子量を有するポリビニルピロリドンである、請求項7記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項9】
前記活性剤と補助剤との複合体における補助剤の量が、活性剤の0.5重量%〜500重量%の範囲である、請求項1〜8のいずれか一項記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項10】
前記活性剤と補助剤との複合体が、粒子状であり、少なくとも90%の粒子が、15μm以下の直径を有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項11】
前記活性剤が、抗アレルギー薬、抗コリン薬、又は気管支拡張薬である、請求項1〜10のいずれか一項記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項12】
前記活性剤が、チオトロピウム、サルブタモール、ベクロメタゾン、イプラトロピウム、ホルモテロール、アクリジニウム、サルメテロール、フルチカゾン、ブデソニド、フェノテロール、シクレソニド、モメタゾン、又はそれらの医薬として許容し得る塩から選択される、請求項11記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項13】
前記活性剤が、サルブタモール、硫酸サルブタモール、レボサルブタモール、硫酸レボサルブタモール、酒石酸レボサルブタモール、イプラトロピウム、臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、臭化チオトロピウム、又は臭化チオトロピウム一水和物である、請求項12記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項14】
前記医薬として許容し得る賦形剤が、充填剤、共溶媒、又はその両方を含む、請求項1〜13のいずれか一項記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項15】
前記医薬として許容し得る賦形剤が、矯味剤、緩衝剤、抗酸化剤、水、及び化学安定剤を更に含む、請求項14記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項16】
前記充填剤が、1以上の糖類、及び/又は1以上の糖アルコールを含む、請求項14又は15記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項17】
前記共溶媒が、1以上のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、及びグリセロールを含む、請求項14、15又は16記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項18】
前記HFA噴霧剤が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227)、又はそれらの混合物である、請求項1〜17のいずれか一項記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項19】
軽度、中等度、又は重篤度の、急性又は慢性症状の治療、又は喘息などの呼吸器疾患の予防的治療における使用のための、請求項1〜18のいずれか一項記載の医薬エアロゾル組成物。
【請求項20】
軽度、中等度、又は重篤度の、急性又は慢性症状の治療、又は喘息などの呼吸器疾患の予防的治療のための医薬の製造における、請求項1〜18のいずれか一項記載の医薬エアロゾル組成物の使用。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれか一項記載の医薬エアロゾル組成物の治療上有効な量を、それを必要とする患者に投与することを含む、軽度、中等度、又は重篤度の、急性又は慢性症状の治療、又は喘息などの呼吸器疾患の予防的治療の方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項記載の医薬エアロゾル組成物を含むチャンバーを有するキャニスター;医薬エアロゾル組成物を、それを必要とする患者に送達するための出口;及び該チャンバーから該出口までの医薬エアロゾル組成物の流れを制御するためのバルブを含む、医薬エアロゾルディスペンサー。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれか一項記載の医薬組成物を送達するための医薬エアロゾルディスペンサーの製造方法であって:
(a) 所定量の、活性剤と補助剤との複合体を、適当なキャニスターに入れること;
(b) 任意に、該複合体を、1以上の医薬として許容し得る賦形剤と混合すること;
(c) 該キャニスターを、適当なバルブと圧着し、HFA噴霧剤を充填すること;を含む、前記製造方法。
【請求項24】
活性剤と補助剤との複合体の製造方法であって:
(a) 活性剤を有機溶媒中で混合すること;
(b) 工程(a)から得た混合物を、適当な温度に加熱し、水を加えて、透明溶液を形成すること;
(c) 補助剤を、工程(c)から得た上記溶液に加えること;
(d) 工程(d)から得た溶液を、減圧下で濃縮して、残渣を形成すること;
(e) 工程(d)から得た残渣を、工程(a)での使用と同じ溶媒で洗浄すること;及び
(f) 工程(e)から得た洗浄残渣を乾燥して、薬剤-補助剤複合体を形成すること;を含む、前記製造方法。
【請求項25】
実施例を参照して、実質的に本明細書中に記載されている、医薬エアロゾル組成物。

【公表番号】特表2012−507574(P2012−507574A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535158(P2011−535158)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002617
【国際公開番号】WO2010/052466
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511109180)シプラ・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】