医薬品の動的濾過方法及び装置
医薬品の動的濾過装置が提供される。この装置は、医薬品を有する混合物の1種以上の成分を選択的に保持するように構成された樹脂を含んでおり、この樹脂は混合物の媒質によって活性化されるように構成されている。本発明の装置はさらに、樹脂に隣接して配置された少なくとも1つの位置決め材を含んでおり、この位置決め材は樹脂に対して機械的な支持を提供して樹脂を所定の位置に少なくとも部分的に保持するように構成されている。ある実施形態では、本装置は濾過直前のコンディショニングを要しない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医薬品の濾過方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製剤プロセスでは、安全性又は有効性のため最終製品から1種以上の化学成分を除去する必要がある。本明細書で用いる「化学成分」という用語は、医薬品の調製に用いられる初期混合物に存在する1種以上の化学物質をいう。化学成分には、意図的に添加されたもの、材料の不純物に由来するもの、又は非精製医薬品の汚染により存在する、最終医薬品には望ましくないものなど、あらゆる形態の化合物が包含される。混合物から化学成分を除去して、対象に投与するのに適した医薬品を得るための各種の濾過及び分離方法が当技術分野で公知である。従来の除去方法では、通例、最終医薬品に望ましくない別の物質を混合物に意図せず添加することになる溶媒又は物質を使用する必要がある。この所望でない物質は、濾過過程を実施する前に装置から除去する必要がある。この所望でない物質としては、濾過又は分離を実行するための装置の調製に用いられる溶媒又は混合物に添加される溶媒若しくは物質が包含され得る。或いはまた、この所望でない物質には、コンディショニング系又は溶媒内に含まれており、後に濾過装置に導入される内毒素、タンパク質、核酸、細菌又はウィルスのような生物学的に関連する物質も包含され得る。溶媒及びその他の物質の添加及びその後の装置又は混合物からの除去を含む追加の工程により、濾過過程の複雑さが増し、プロセス設備の複雑さが増す。さらに、これらの追加の工程の結果、濾過過程全体の所要時間が長くなる。その上、所望でない物質が医薬品に持ち込まれないよう保証するために品質管理機構が必要になる。加えて、投与する工程、及び所望でない物質を装置から除去する工程を実施する間に濾過装置に侵入する異物による混合物の汚染の危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/110495号明細書
【特許文献2】米国特許第5091080号明細書
【特許文献3】特開2000−351799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、溶媒その他の物質を濾過装置又は製薬混合物に添加する必要がなく、かつ実施するのが比較的容易である医薬品の濾過のための新しい方法と装置を探求するというニーズがある。さらに、予めコンディショニングして保存することができ、そのため濾過の直前に装置をコンディショニングする別の工程を実施することなくすぐに濾過に使用できる新しい装置及び方法に対するニーズがある。さらにまた、濾過の前若しくは濾過中、又は装置を調製し濾過のために保存する間、その装置に異物が入るのを防ぐために密閉される装置に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、医薬品の動的濾過装置が提供される。この装置は、医薬品を含有する混合物の1種以上の成分を選択的に保持するようになっている樹脂を含んでおり、この樹脂は混合物の媒質によって活性化されるようになっている。この装置はさらに、樹脂に隣接して配置された少なくとも1つの位置決め材を含んでおり、この位置決め材は少なくとも部分的に樹脂を所定の位置に保持するために機械的な支持を樹脂に提供するようになっている。
【0006】
別の実施形態では、患者に投与すべき医薬品の濾過システムが提供される。このシステムは濾過装置、濾過体、及び濾過体内に配置され医薬品の混合物を濾過するように構成された樹脂を含んでおり、この混合物はその場で樹脂を活性化するように構成されている媒質を含んでいる。濾過装置はさらに樹脂を濾過体に支持するように構成された位置決め材を含んでおり、また医薬品の混合物から可溶性と不溶性の両方の化学種を濾過するように構成されている。
【0007】
さらに別の実施形態では、未精製医薬品の濾過方法が提供される。この方法は、緩衝剤と、キレート剤と、酸性媒質又は塩基性媒質又は中性媒質の1種を未精製医薬品と混合して濾過混合物を形成し、その濾過混合物を濾過装置に通過させることを含んでいる。
【0008】
さらに別の実施形態では、医薬品の動的濾過装置が提供される。この装置は、医薬品を有する混合物から1種以上の成分を選択的に保持するように構成された樹脂、及びこの樹脂に隣接して配置された少なくとも1つの位置決め材を含んでおり、この位置決め材は少なくとも部分的に樹脂を所定の位置に保持するために機械的な支持を樹脂に提供するようになっている。この装置は医薬品を含む混合物から可溶性と不溶性の両方の成分を除去するように構成されている。
【0009】
本発明の上記及びその他の特徴、態様、及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めばよりよく理解できるであろう。全図面を通して類似の参照番号は類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本技術の様々な態様に従う樹脂と位置決め材の選択的な配列を図解する断面側面図である。
【図2】図2は、本技術の様々な態様に従う樹脂と位置決め材の選択的な配列を図解する断面側面図である。
【図3】図3は、図2のフィルター構成で使用したディフューザーの透視図である。
【図4】図4は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図5】図5は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図6】図6は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図7】図7は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図8】図8は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図9A】図9Aは、本技術の態様に従う医薬品の濾過のための半径方向濾過装置を説明する断面側面図である。
【図9B】図9Bは、図9Aの半径方向濾過装置の平面図である。
【図10】図10は、出口位置において円錐形状を有する濾過装置の断面側面図である。
【図11】図11は、本技術の態様に従う代表的なMRIシステム及び濾過装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本技術の実施形態は、医薬品の混合物から1種以上の成分を選択的に保持するための医薬品の動的濾過装置及び方法に関する。本明細書で用いる「動的濾過」という用語は、医薬品を含む混合物の媒質中で溶解度が経時的に変化する混合物の1種以上の成分を除去又は濾過する濾過装置の能力をいう。以下で詳しく説明するように、これらの成分の溶解度は、例えば、媒質の変化する圧力、温度、体積、pHと共に変化し得る。本明細書で用いる「医薬品」には、薬学的に関連する1種の化合物又は複数の化合物の混合物が含まれる。医薬品は使用されるばかりの最終製品であってもよい。或いは、医薬品は医薬化合物を作成する際の中間生成物であってもよい。濾過装置によって選択的に保持される1種以上の成分は一般に、医薬品中に存在し、最終製品中に所望でない不純物又は望まれていない化合物である。これら1種以上の成分は、例えば、医薬品の形成に用いられる2種以上の反応物質が関与する反応で形成される副生成物であり得る。
【0012】
容易に理解されるように、通例、医薬品の濾過方法では、医薬品を有する混合物を濾過装置に通過させる直前にこの装置をコンディショニングする追加の工程が必要である。医薬混合物を濾過するために使用される従来の濾過装置では、濾過する前に装置をコンディショニングするには、コンディショニング剤又は溶媒の形態で追加の化学物質を使用することが多い。本明細書で用いる「コンディショニング」という用語は、濾過装置の1以上の部分を改変することで、改変を受けた後その1以上の部分が混合物から不純物又は化学成分を保持するようになることをいう。改変の非限定例としては、樹脂の表面を湿潤させること、濾過すべき化学物質が樹脂の表面と相互作用することができる状態を樹脂内に作り出すこと、又は固体/気体界面から液体/固体界面を作り出すことを挙げることができる。例えば、幾つかの伝統的な装置はアルコールを用いてコンディショニングされる。コンディショニング工程のために添加されるアルコールは、医薬品を濾過するために、その後除去する必要がある。加えて、コンディショニングに使用される溶媒その他の物質は通例最終製品中に望まれるものではなく、従ってこの所望でない物質は濾過装置をコンディショニングした後濾過過程を始める前に装置から除去する必要がある。かかる化学物質の除去は余分な工程段階を必要とし、従ってより長い工程所要時間を要する。
【0013】
さらに、ポイント・オブ・ユースにおけるコンディショニングは、現場でのコンディショニング過程から(すなわち溶媒及び水を介して)生物学的に関連する物質が系内に導入されるという潜在的な問題を生じ得る。また、ポイント・オブ・ユースでフィルターをコンディショニングする必要がある系では、フィルターから溶媒を除去するという追加の工程が濾過工程の一体部分であり、濾過過程を長引かせる一因ともなる。この追加の工程により、医薬品の製造プロセスが長引くことによると共に、時には時間、若しくは工程段階数の制限、又はプロセスの複雑さのため、医薬品からコンディショニング剤を完全に分離することができないこともあり、汚染された医薬品が得られることもある。従って、濾過の直前のコンディショニング工程を排除することによって、これらの不必要なコンディショニング剤の投与が防がれ、他の場合には濾過の前の装置のコンディショニングを促進するように添加されるコンディショニング剤その他の化学物質を分離するために必要とされる追加の工程を使用することが回避され、さらに不必要な生物学的に関連する物質の導入の危険性が大幅に低減する。以下で詳しく説明するように、本技術の濾過装置は、濾過の間又はその直前に所望でない物質を添加する必要がない。従って、本技術の濾過装置は、他の場合には混合物の濾過を実施する前に先に加えられた所望でない物質を除去するために従来の濾過装置で使用されていた追加の工程を必要としない。一実施形態では、本濾過装置は、濾過中にコンディショニングされるように構成されている。別の実施形態では、本濾過装置は、濾過に先立って予めコンディショニングされ、管理された状態で保存される。
【0014】
幾つかの実施形態では、濾過装置は、医薬混合物の媒質によってコンディショニングされるように構成されている。以下で詳しく説明するように、これらの実施形態では、濾過装置は、濾過過程中混合物の媒質によって活性化される樹脂を含んでいる。この活性化された樹脂は、医薬品を含む混合物から1種以上の成分を選択的に保持するようになっている。従って、本技術の装置を使用することにより、濾過前に装置をコンディショニングするという追加の工程が不必要になる。樹脂と媒質の組合せはこれらの相互の適合性に応じて選択することができる。さらに、媒質は、この媒質が医薬品から容易に分離できるように選択することができる。或いは、媒質は、この媒質が、医薬品に有害な影響を及ぼすことなく最終医薬品中に保持され得るように選択することもできる。
【0015】
医薬品の混合物は、樹脂が媒質又は濾過混合物によりその場でコンディショニングされるようになるような媒質を含んでいることができる。言い換えると、この装置は、濾過に先立ってコンディショニングすることなく混合物から1種以上の成分を濾過するように構成されている。樹脂は、その活性化された状態において、1種以上の所望でない成分を保持すると共に医薬品の混合物の残余は樹脂を通過できるようにすることにより、それらの所望でない成分をその混合物から濾別するようになっている。樹脂は、医薬混合物の1種以上の成分の化学的保持、機械的保持、又はこれらの両方が可能なようにすることができる。ある実施形態では、樹脂材料は多孔質の材料である。これらの実施形態では、樹脂材料は比較的大きい表面積、従って比較的高い化学物質濾過効率を有している。樹脂材料の粒子の大きさ、粒子の形状、及び充填効率のような特性は樹脂床の微粒子を除去する能力に影響し得る。機械的濾過において、濾別する必要がある微粒子の粒径は樹脂材料の細孔径よりずっと大きいであろう。一実施形態では、樹脂の細孔径は約60〜約4000Åの範囲である。
【0016】
幾つかの実施形態では、樹脂は表面改質に適している。樹脂材料の選択は、その樹脂が混合物の媒質によって活性化されるようになっているか、又はその樹脂が予備活性化され装置内に保存されるかによって変化し得る。樹脂が媒質によって活性化されるようになっている実施形態では、適切な極性/親水性の官能基を含有する樹脂が必要である。例えば、混合物と接触する微粒子の表面、すなわち樹脂の大半(又は基材)を、改質された表面が媒質によって活性化されることができるように、1以上の非極性官能基、又は非極性と極性の官能基の組合せで改質することができる。通例、この基材はポリマーを主体とし得る。極性の官能基は、媒質が樹脂を活性化することができるが、樹脂の疎水性の官能性により1種以上の成分の保持に負の影響を与えることがないように選択される。樹脂が混合物の媒質によって活性化されるようになっている濾過装置の場合、混合物の媒質は水性主体とすることができる。水性主体の媒質は事実上中性、塩基性又は酸性であることができる。ある実施形態では、水性主体の媒質は酸性から塩基性に、又は塩基性から酸性に、又は中性のpHから塩基性若しくは酸性の状態に、又は酸性若しくは塩基性の状態から中性のpHに動的に変化し得る。医薬混合物が装置を通過するとき、樹脂内の疎水性及び/又は極性の官能基により1種以上の成分が捕捉され、従って選択的に保持される。混合物の残余部分は装置を通過ことが可能である。
【0017】
幾つかの実施形態では、樹脂は形態学に基づいて活性化することができる。樹脂は、例えば水性媒質により湿潤させることができるように適した形態学を有し得る。容易に理解されるように、樹脂は、不純物を保持するように疎水性の特性を有しており、かつ濾過される混合物と適合性であるのが望ましい。ある実施形態では、樹脂は、圧力をかけた際に医薬混合物の媒質が樹脂の表面を濡らして医薬混合物から濾過される化学成分と樹脂の官能基との相互作用を可能にするような大きさの細孔を含み得る。これらの実施形態では、樹脂の細孔は、樹脂上に親水性の部分がないときでも媒質により湿潤し得る。一実施形態では、大きい細孔径の樹脂に加えて圧力を使用して湿潤を達成する。この場合の圧力は、装置内に導入される医薬混合物の流体圧力である。1つの代表的な実施形態では、濾過装置における混合物の流速は約3〜約12mL/sの範囲である。別の実施形態では、樹脂を活性化するには追加の圧力を必要とすることがある。
【0018】
濾過装置が予めコンディショニングされ後の使用のために保存される実施形態では、濾過装置は、アルコールのような溶媒で予めコンディショニングして樹脂を活性化し、その後フィルターを水でフラッシングして溶媒を除去する。一実施形態では、フィルターをコンディショニングするための溶媒としてエタノールを使用することができる。エタノールを使用することの利点は、通常医薬品はエタノールに対して許容範囲を有することである。予めコンディショニングされた濾過装置は、コンディショニングに関するさらに別の工程を実施する必要なく濾過に直接使用することにより濾過に要する時間全体を短縮することができる。これらの実施形態では、樹脂は濾過に先立って活性化され装置内に保存される。樹脂は溶媒その他のコンディショニング物質を使用して活性化することができる。溶媒その他のコンディショニング物質が最終製品中に望まれない場合、濾過装置を加工処理又は洗浄して溶媒その他のコンディショニング物質を装置から除去することができる。ある実施形態では、予めコンディショニングされた装置は、装置の温度を、装置内に残っている溶媒の凝固点より低くすることによって保存される。例えば、疎水性樹脂の場合、水が経時的に細孔から追い出される脱湿潤過程が起こり、従って樹脂がその効率を失い得るので、溶媒の凍結によりフィルターをその中に溶媒を含んだまま保存するのが容易になる。予めコンディショニングされたフィルターの場合、濾過に先立ってコンディショニング用の化学物質/溶媒をフィルターから分離するのに必要とされる追加の工程を、装置を保存する前に実施する。従って、これらの追加の工程は濾過過程を長引かせる一因とならない。
【0019】
幾つかの実施形態では、樹脂は濾過装置の製造中に活性化することができる。装置がコンディショニングされたら、幾つかの場合には溶媒を除去し、その後装置を密閉して、生物学的に関連する物質のような汚染物質が系に侵入するのを防止することができる。水が溶媒として機能する実施形態では、装置を密閉する前に溶媒を除去する必要はないであろう。一旦コンディショニングされ保存されたら、この予めコンディショニングされた装置は、濾過に先立ってコンディショニングする工程を実施することなく直接濾過に使用できるすぐ使用できる装置となる。一実施形態では、濾過装置は、例えば生物学的に関連する物質を除去するために滅菌することができる。一実施形態では、予めコンディショニングされた装置を密封して濾過の前及び濾過中の無菌性を保つ。予めコンディショニングされた装置と同様に、樹脂が媒質又は濾過混合物によりその場でコンディショニングされるようになっている濾過装置を密封して、濾過の前又は濾過中に異物が装置に侵入するのを防ぐことができることに留意されたい。予めコンディショニングされたフィルターは疎水性を有する多くの異なる樹脂と共に使える。樹脂は1種以上の成分を保持し、濾過される媒質/混合物と適合性である。かかる樹脂の例としては、固相抽出で使用されるSilicaベースの18C、又はフラッシュクロマトグラフィー用途で用いられる樹脂がある。
【0020】
さらに、本装置は、樹脂に隣接して配置された少なくとも1つの位置決め材を含んでおり、この位置決め材は少なくとも部分的に樹脂を所定の位置に保持するためにその樹脂に機械的な支持を提供するように構成されている。さらに加えて、位置決め材は、医薬混合物から1種以上の成分を少なくとも部分的に保持するように構成されていてもよい。位置決め材は混合物中のあらゆる溶媒、媒質、又は医薬成分に対して不活性な材料で作成され得る。さらに、ヘルスケア用途の場合、位置決め材はこれが医薬品と接触することになる医療用装置に使用するのに適していなければならない。ある実施形態では、位置決め材としては、フリット、膜、スクリーン、繊維床、その他あらゆる機械的な支持体を挙げることができる。位置決め材は連続的な構造体であってもよいし、又はパターン化された構造体であってもよい。例えば、位置決め材は連続的な多孔質板であってもよいし、又は格子の形態であってもよい。幾つかの実施形態では、位置決め材自体が、医薬混合物から1種以上の成分を選択的に保持するようになっていてもよい。一実施形態では、位置決め材は1種以上の成分を機械的に保持することができる。例えば、位置決め材は保持されるべき成分の粒子より小さい細孔を有する多孔質物質であってもよい。例えば、位置決め材の細孔径は約5〜約30μmの範囲である。別の実施形態では、位置決め材は医薬混合物から1種以上の成分を化学的に保持するようになっていてもよい。位置決め材は、限定されることはないが、媒質又は医薬品と反応することなく医療用途に使用し得るポリエチレン及びTeflonなどの疎水性及び親水性の多孔質ポリマーを始めとする材料から作成され得る。
【0021】
以下で図1〜2及び4〜10に関して説明するように、樹脂と位置決め材は幾つかの異なる構成で配置することができる。幾つかの実施形態では、樹脂はある成分を化学的に保持するようにすることができ、一方位置決め材は同じ又は異なる成分を機械的に保持するようにすることができる。樹脂と位置決め材は1種以上の成分を保持する点において互いに補完的であることができ、例えば樹脂は可溶性の望ましくない成分を混合物から保持することができ、位置決め材は不溶性の成分を混合物から保持することができる。或いはまた、樹脂と位置決め材が同じ1種以上の成分を保持するようになっていてもよい。これらの実施形態では、位置決め材は樹脂が残した成分を保持するためのバックアップ配置として、又はその逆として使用することができる。
【0022】
一実施形態では、医薬混合物は媒質に可溶性化学種を含むことができる。この実施形態では、樹脂はその可溶性化学種を保持するように構成される。別の実施形態では、医薬混合物は媒質に不溶性化学種を含んでいてもよい。この実施形態の場合、位置決め材及び/又は樹脂が、混合物から分離/抽出されるべき不溶性化学種を保持するように構成される。別の実施形態では、化学種のあるものは媒質に可溶性であり得、一方他のものは不溶性であり得る。ある実施形態では、装置は医薬混合物から可溶性と不溶性の両方の化学種を保持するように構成されている。この実施形態では、位置決め材及び/又は樹脂が不溶性化学種のあるものを保持するように構成され、一方樹脂が医薬混合物から分離するべき可溶性化学種を保持するように構成される。さらに、幾つかの実施形態では、医薬混合物中の化学種のあるものの溶解度は媒質のpH、極性、濃度、及び温度を始めとする状態の関数として時間と共に変化し得る。これらの実施形態では、樹脂若しくは位置決め材又は両方が溶解度が経時的に変化する化学種を保持するように構成され得る。これらの実施形態では、位置決め材及び/又は樹脂は濾過過程の幾つかの段階で不溶性の成分を保持する。成分の溶解度は溶液の性質によって変わるので、不溶性の物質が可溶性となり再度溶液中に入る。これらの再可溶化された成分はその後樹脂上に保持される。例えば、電子常磁性物質(electron paramagnetic agent:EPA)とピルビン酸の混合物の場合、EPAは最初不溶性であり位置決め材に保持される。その後、EPAが可溶性になると、EPAは活性化された樹脂で除去され得る。この方法の利点は、媒質の組成を変更したり、及び/又は、例えば圧力及び温度の1以上を含む溶解状態を変えたりすることによって、EPAの動的溶解度を調節することができるということである。樹脂と位置決め材の体積(又は重量)比は所与の用途又は使用目的に合わせて選択される。1つの例において、約1〜約2gの範囲の医薬混合物は、約3〜約10gの範囲の樹脂を必要とする。
【0023】
さらに、本装置はまた、樹脂と位置決め材の全体を収容するための濾過体も含んでいる。この濾過体は濾過の必要条件に応じて様々な形状と大きさであることができる。例えば、濾過体は媒質を医薬品に混合して医薬混合物を形成するための手段を有し得る。別の実施形態では、濾過体は樹脂に対する医薬品の混合物の流れを変えるための手段を有し得る。図4〜10に関連して以下に説明するように、幾つかの実施形態では、濾過体は樹脂と位置決め材の複数の配列を有していてもよい。これらの実施形態では、複数の配列の各々は同じ構成の樹脂と位置決め材を有していてもよい。或いは、複数の配列の幾つか又は全てが他とは異なる構成を有していてもよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、本装置はまた、混合物を複数の流れに分配するように構成されたディフューザーも含んでいることができる。このディフューザーは、位置決め材の全面にわたって混合物を均等に分配するために位置決め材の前に用いられる。ディフューザーは、樹脂で濾過される前の混合物を均質化するために使用してもよい。位置決め材と同様、ディフューザーは混合物中のあらゆる溶媒、媒質、又は医薬成分に対して不活性な材料で作製することができる。
【0025】
ある実施形態では、開示されている装置を、核磁気共鳴(NMR)分析に関して、特に磁気共鳴画像(MRI)に関して説明する。本明細書に記載した技術はMRI以外の様々な他の系に応用できることに留意されたい。また、本装置はMRIに用いるもの以外の医薬化合物を用いるために使用してもよい。
【0026】
MRI及びNMR分光法は、使用する試料の核スピンの分極が通常極めて低いために感度が不充分である。固相における核スピンの分極を改良するために多くの技術が存在する。これらの技術は過分極技術として知られており、感度が増大する。本明細書で用いる「分極する」又は「分極」という用語は、MRIにおけるさらなる使用のための固体物質の物理的性質の改変をいう。さらに、本明細書で用いる「過分極した」という用語は、室温かつ1Tで見られるレベルを超えるレベルに分極していることをいい、米国特許第6466814号に詳しく記載されている。過分極技術においては、造影剤、例えば13Cピルビン酸塩又は別の同様な分極した代謝造影剤の試料を、画像化する被検体中に導入又は注入する。通例、13Cピルビン酸塩を、13Cの分極を高めるために電子常磁性物質(EPA)としてより一般的に知られているトリス(8−カルボキシル−2,2,6,6−テトラ(2−(1−メトキシ−2,2−d2−エチル))−ベンゾ[1,2−d:4,5−d′]ビス(ジチオール−4−イル)メチルナトリウム塩と混合する。容易に理解されるように、加工助剤のEPAは、製品を被検体に投与する前に医薬品から除去する必要がある。
【0027】
100mlの医薬品を形成しようとする1つの例において、約10〜50マイクロモルのEPAをピルビン酸に加える。濾過がないとすると、この量のEPAで溶解生成物中に100〜500マイクロモル濃度のEPA濃度が得られる。溶解生成物中のEPA濃度は高い濾過効率に相当する許されるレベル以下であるのが望ましい。例えば、本濾過装置は約90パーセント超であり得る。従って、EPAの濃度を凍結したピルビン酸試料の分極及び溶解後の生成物に許される限界まで低くする必要がある。現在考えられる実施形態では、EPAは本技術の濾過装置を用いて少なくとも部分的に濾別される。
【0028】
EPAはpHと共に変化する溶解度を示す。4未満のpHで、EPAは大部分が不溶性であり、直径10μm以上の微粒子を形成する。pH4を超えると、EPAは水溶液に可溶性である。
【0029】
ある実施形態では、ピルビン酸とEPAは最初凍結した状態で小さいバイアルに入れられている。溶解媒質として知られている水溶液を用いて、ピルビン酸とEPAを融解し、フィルターを通して最終の受容器に入れる。この溶解媒質はまた、必要に応じ生成物のpHを変更するのにも使用することができる。融解過程にかかる時間のため、フィルターに到達する液体は所与の時に様々な酸及びEPA濃度並びに2〜12の範囲のpHを有することができる。これらの濃度とpHの特徴は溶解過程中時間の関数として変化する。
【0030】
本発明に従う方法と装置において、凍結したピルビン酸とEPAの固体試料は、強力な磁場(例えば1〜25T)内で低温(例えば100K未満)に維持したまま、何らかの適当な公知の方法、例えばブルート力分極(brute force polarization)、又は動的核分極によって固相のうちに分極することができる。固体試料を分極した後、分極の損失を最小にして融解する。以下、「融解手段」という表現は、固体分極した試料にこれを融解するか又は他の場合には画像化される被検体に導入するためにその分極した試料を溶液にするのに十分なエネルギーを与えることができる装置を意味するものと考えられる。本明細書で用いる「固体」という用語は、固体物質、半固体物質又はこれらの任意の組合せをいうが、但しこの物質は画像化される被検体に導入するのに適した液体状態にするには幾らかの変換を必要とするものである。
【0031】
ここで図1を参照すると、樹脂は層10の形態で配置されている。位置決め材12は矢印14で表される混合物の流れ方向で樹脂10の一面上に配置されている。通例、位置決め材12は樹脂10に機械的な支持を提供して樹脂10をその所定の位置に少なくとも部分的に保持するようになっている。位置決め材12は連続的な層であってもよい。図示されてはいないが、位置決め材12はパターン化された構造を含んでいてもよい。例えば、位置決め材12は格子、又は複数のロッド、枠であってもよい。既に記載したように、幾つかの実施形態では、位置決め材12はまた樹脂が混合物からの1種以上の成分を選択的に保持するのを補助するように使用することもできる。
【0032】
図2に、図1の樹脂と位置決め材の配列の別の実施形態を示す。図示した実施形態では、樹脂16は矢印22で示される混合物の流れ方向で樹脂16の両面上に位置決め材18、20を含んでいる。図1に関連して記載したように、位置決め材18、20は中実又は非中実のパターンを有し得る。さらに、図示した実施形態の構成を繰り返してもよい。言い換えると、装置は複数の位置決め材18、20の間に配置された複数の樹脂16を有するスタックを使用することができる。一実施形態では、位置決め材18はディフューザーの機能を果たすようになっていてもよい。一般に、樹脂は位置決め材に対してしっかり付いている。しかし、場合によっては、濾過体の頂部とディフューザー/位置決め材との間にある間隔が望まれることがある。例えば、複数の樹脂−位置決め材の対を使用する濾過体の場合、1つの対の位置決め材と隣接する対の樹脂との間の間隔により、次の樹脂床の前に生成物を再混合することが可能になり得る。このやり方はまた、前の樹脂床が濾過すべき化学成分(例えば、EPA)で局所的に飽和して縞って透過させてしまうのに対して他の領域が不飽和のままであるという状況でも有益であり得る。この状況は、例えばディフューザーが流れを均等に分配しなかったときに生じ得る。この空間は混合物の再分配を可能にする。図7に関連して記載するように、位置決め材18、20に加えて別個のディフューザープレートを設けてもよい。
【0033】
図3に、位置決め材18の代わりに、又はそれに加えて使用することができるディフューザー24の透視図を示す。このディフューザー24は複数の貫通穴28を有するプレート26を含んでいる。混合物は、穴28を通過する複数の流れに分配される。これらの流れは最終的に、図2に示したような樹脂、例えば樹脂16内で1つになる。
【0034】
図4は、入口32を有する代表的な濾過装置30を図解しており、入口32における混合物の流れの方向は矢印33により表されている。この装置30は位置決め材36と樹脂37の別の配列の層を有する層状の構造体34を含んでいる。濾過される混合物の流れの方向は矢印38で示されており、出口40を通って濾過体39から出ていく。
【0035】
図5は濾過装置42を図解する。この濾過装置42は図1〜2の構成若しくは部品、又はそれらの派生物の任意の組合せを使用できる。現在考えられる実施形態では、装置42は位置決め材48上に配置された樹脂46を有する配列44を含んでいる。この装置42はさらに、それぞれ矢印51、53により表されている装置42に入り、出ていく混合物のための入口50と出口52を有する濾過体45を含んでいる。
【0036】
図6は、図5の装置42の別の実施形態を示す。図示した実施形態では、装置54は本体62内に配置された複数の配列56を含んでいる。複数の配列56の各々は同一であってもなくてもよい。図示した実施形態では、各構成56は樹脂58と位置決め材60を含んでいる。さらに、本体62は、それぞれ矢印65と67で表される混合物の出入りのための入口64と出口66を含んでいる。
【0037】
図7は、それぞれ図5、6の装置42、54のさらに別の実施形態を示す。図示した実施形態では、装置68は樹脂72、位置決め材74、76を使用する。この装置68はさらにディフューザー78を含んでいる。さらに、装置68は、混合物の流れをそれぞれ矢印83及び85で示されるように向かわせる入口82及び出口84を有する濾過体80を含んでいる。
【0038】
さらに図7を参照して、一実施形態では、医薬混合物は、ピルビン酸塩とEPAの混合物で見られるような時間により変化するpH勾配を有する。最初混合物のpHは酸性である傾向があるが、時間と共にこのpHは上昇し中性又は塩基性にシフトする。この実施形態では、入口側と出口側の位置決め材74、76の間に配置された樹脂72を含有するフィルターを使用する。加えて、入口側の位置決め材74の前にディフューザー78を用いて、液体を樹脂72の表面全体にわたって均等に分配する。この実施形態では、ピルビン酸とEPAは、水酸化ナトリウムを含有する水のような塩基性pHを有する水溶液により溶解される。加えて、他のpH調節剤又は緩衝剤を医薬混合物に加えてもよい。医薬混合物が過分極を受けたピルビン酸とEPAを含む別の実施形態では、ピルビン酸の融解過程が始まるので、この凍結したピルビン酸とEPAの溶液中の酸と塩基の比は酸が支配的であり、従って溶液のpHは酸性である。この状態の下で、最初に濾過される溶液はpH<4であり、EPAは不溶性である。この時点で不溶性の微粒子であるEPAは、入口側の位置決め材74上又は樹脂床72の前面上に捕捉される。同時にピルビン酸水溶液は入口側の位置決め材74を通過し、樹脂床72に入り、樹脂72を濡らし、従って活性化し、出口側の位置決め材76を通過し、フィルターを出ていく。溶解が続くにつれて、バイアル中の酸と塩基の比が低下し、液体のpHをシフトさせて、バイアルをより中性又は塩基性のpHにする。混合物がフィルターに到達すると、液体中にあるか、又は既に入口側の位置決め材74上若しくは樹脂床72の前面に捕捉されていたEPAが可溶性になり樹脂床72に入る。樹脂床72内で、可溶性EPAは活性化された樹脂72上に保持される一方、ピルビン酸とピルビン酸ナトリウムはフィルターを通過して受容器に入る。
【0039】
ここで図8を参照すると、濾過装置86は位置決め材88と混合物の流れ方向で位置決め材88の上に配置されたディフューザー90とを含んでいる。この装置86は樹脂を含んでいない。かかる装置86は、医薬混合物が医薬品から分離すべき不溶性化学種のみを含有する場合に使用できる。この装置はさらに入口94と出口96を含んでおり、装置86内の混合物の流れ方向は矢印98と100で示されている。
【0040】
図8の図示した実施形態では、混合物のpHは酸性範囲であり得る。一実施形態では、樹脂床のない位置決め材88のみを含有する装置68を使用する。位置決め材88の全面にわたって混合物を均等に分配するために位置決め材88の前にディフューザー90を使用する。この実施形態では、ピルビン酸とEPAは純水のような中性pHを有する水溶液により溶解される。この条件下で、最初に濾過される溶液はpH<4であり、EPAは不溶性である。この時点で不溶性の微粒子であるEPAは位置決め材88上に捕捉される。同時にピルビン酸水溶液は位置決め材88を通過する。その後、ピルビン酸は中和されて、受容器内でピルビン酸ナトリウムを形成する。
【0041】
ここで図9Aを参照すると、半径方向濾過装置104が示されている。図9Bは装置104の平面図を示す。樹脂物質106と位置決め材108は、入口111を介して混合物が入るための通路110の回りで同心に配置されている。かかる濾過装置104は、混合物が高い流速で装置104に入る濾過用途で使用できる。また、本濾過装置104は大規模の濾過用途で使用してもよい。混合物は矢印112で示される方向で通路110に入り、入ってくる混合物の圧力及び樹脂と位置決め材の配列のために(矢印114で示されるように)半径方向に分配される。その後、濾過された混合物は樹脂物質106と位置決め材108を通って濾過され、矢印118で示されているように、濾過体116の壁と、樹脂物質106と位置決め材108の配列との間の通路に入る。次いで、この混合物は、濾過体の壁と、樹脂物質106と位置決め材108の配列を保持する支持プレート124との間の通路を通過することによって濾過体116の出口122を通って出ていく(矢印120)。図示されてはいないが、別の配列において、濾過装置はまた、混合物の通路が矢印112、114、118及び120の方向を180°逆転して表される場合にも機能し得る。すなわち、濾過される混合物は位置122を介して濾過体116に入り、濾過体116の壁と、樹脂物質106と位置決め材108の配列との間の通路を通って移動する。次に、この混合物は樹脂物質106と位置決め材108の配列に入って濾過される。濾過された混合物は位置111で回収される。
【0042】
ここで図10を参照すると、濾過体130、入口132及び出口134を有する濾過装置128が図示されている。矢印133と135は混合物の流れの方向を表す。濾過体130の一部分136は円筒形の断面を有しており、一方濾過体130のその一部分の残り138は円錐形状を有する。この部分138の円錐形状により、濾過後の混合物が濾過体130から容易に出ていける。この濾過装置128はさらに、穴144のある基材142を有するディフューザー140を含んでいる。濾過装置128はまた、2つの位置決め材146の間に配置された樹脂物質145を含んでいる。
【0043】
ある実施形態では、未精製医薬品を塩基性媒質、緩衝剤及びキレート剤と混合して濾過混合物を形成する。例えば、未精製医薬品はピルビン酸、及び電子常磁性物質を含み得る。この塩基性媒質としては水酸化ナトリウムを挙げることができ、緩衝剤としてはトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(トリス)を挙げることができる。キレート剤の存在は混合物からの金属イオンの分離を促進し得る。その後、混合物を入口を介して濾過体に入れる。混合物は濾過体内部で樹脂と位置決め材を通過し、出口を介して装置から出ていく。
【0044】
ある実施形態では、装置42又は54のような濾過装置は、核磁気共鳴(NMR)分析、特に核磁気共鳴造影(MRI)及び分析用高分解能NMR分光法に使用できる。例えば、本装置は、磁気共鳴画像(MRI)の目的で患者の身体に投与する前に分極物質を濾過するために使用できる。
【0045】
図11を参照すると、MRI装置に使用する過分極した試料を作成するための代表的なシステム150が示されており、このシステムは、容器156からの物質を加工処理し、過分極した物質を得るためのクリオスタット152及び分極サブシステム154を含んでいる。物質送達ライン158を使用して、過分極した物質をMRIスキャナー162の患者160に送達する。
【0046】
図11に示した実施形態では、過分極した試料は生体内造影用途に使用される。過分極した試料はまた、核磁気共鳴(NMR)分析に関して以下に記載する方法及び技術を用いても製造できることと了解されたい。フィルター164が送達ライン158に取り付けられており、クリオスタット152と患者160との間に位置していて、患者160に投与する前に過分極した物質を濾過する。フィルター164は図4〜10に関連して上に記載したように樹脂物質166と位置決め材168を含んでいる。図示されてはいないが、幾つかの実施形態では、フィルター164のようなフィルターを2つ以上直列配置でシステム150内に用いてもよい。これらの実施形態では、複数のフィルター164は、1つのフィルターからの出力が患者160の方向において隣接するフィルターの入力として役立つように配置することができる。2つ以上のフィルターの各フィルターは同一又は異なる構成、樹脂の組成、位置決め材及び/又はディフューザーを有することができる。
【0047】
本明細書では本発明の幾つかの特徴のみについて例示し説明して来たが、当業者には多くの修正や変更が明らかであろう。従って、特許請求の範囲はかかる修正や変更の全てを本発明の真の範囲内に入るものとして包含するものと了解されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医薬品の濾過方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製剤プロセスでは、安全性又は有効性のため最終製品から1種以上の化学成分を除去する必要がある。本明細書で用いる「化学成分」という用語は、医薬品の調製に用いられる初期混合物に存在する1種以上の化学物質をいう。化学成分には、意図的に添加されたもの、材料の不純物に由来するもの、又は非精製医薬品の汚染により存在する、最終医薬品には望ましくないものなど、あらゆる形態の化合物が包含される。混合物から化学成分を除去して、対象に投与するのに適した医薬品を得るための各種の濾過及び分離方法が当技術分野で公知である。従来の除去方法では、通例、最終医薬品に望ましくない別の物質を混合物に意図せず添加することになる溶媒又は物質を使用する必要がある。この所望でない物質は、濾過過程を実施する前に装置から除去する必要がある。この所望でない物質としては、濾過又は分離を実行するための装置の調製に用いられる溶媒又は混合物に添加される溶媒若しくは物質が包含され得る。或いはまた、この所望でない物質には、コンディショニング系又は溶媒内に含まれており、後に濾過装置に導入される内毒素、タンパク質、核酸、細菌又はウィルスのような生物学的に関連する物質も包含され得る。溶媒及びその他の物質の添加及びその後の装置又は混合物からの除去を含む追加の工程により、濾過過程の複雑さが増し、プロセス設備の複雑さが増す。さらに、これらの追加の工程の結果、濾過過程全体の所要時間が長くなる。その上、所望でない物質が医薬品に持ち込まれないよう保証するために品質管理機構が必要になる。加えて、投与する工程、及び所望でない物質を装置から除去する工程を実施する間に濾過装置に侵入する異物による混合物の汚染の危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/110495号明細書
【特許文献2】米国特許第5091080号明細書
【特許文献3】特開2000−351799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、溶媒その他の物質を濾過装置又は製薬混合物に添加する必要がなく、かつ実施するのが比較的容易である医薬品の濾過のための新しい方法と装置を探求するというニーズがある。さらに、予めコンディショニングして保存することができ、そのため濾過の直前に装置をコンディショニングする別の工程を実施することなくすぐに濾過に使用できる新しい装置及び方法に対するニーズがある。さらにまた、濾過の前若しくは濾過中、又は装置を調製し濾過のために保存する間、その装置に異物が入るのを防ぐために密閉される装置に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、医薬品の動的濾過装置が提供される。この装置は、医薬品を含有する混合物の1種以上の成分を選択的に保持するようになっている樹脂を含んでおり、この樹脂は混合物の媒質によって活性化されるようになっている。この装置はさらに、樹脂に隣接して配置された少なくとも1つの位置決め材を含んでおり、この位置決め材は少なくとも部分的に樹脂を所定の位置に保持するために機械的な支持を樹脂に提供するようになっている。
【0006】
別の実施形態では、患者に投与すべき医薬品の濾過システムが提供される。このシステムは濾過装置、濾過体、及び濾過体内に配置され医薬品の混合物を濾過するように構成された樹脂を含んでおり、この混合物はその場で樹脂を活性化するように構成されている媒質を含んでいる。濾過装置はさらに樹脂を濾過体に支持するように構成された位置決め材を含んでおり、また医薬品の混合物から可溶性と不溶性の両方の化学種を濾過するように構成されている。
【0007】
さらに別の実施形態では、未精製医薬品の濾過方法が提供される。この方法は、緩衝剤と、キレート剤と、酸性媒質又は塩基性媒質又は中性媒質の1種を未精製医薬品と混合して濾過混合物を形成し、その濾過混合物を濾過装置に通過させることを含んでいる。
【0008】
さらに別の実施形態では、医薬品の動的濾過装置が提供される。この装置は、医薬品を有する混合物から1種以上の成分を選択的に保持するように構成された樹脂、及びこの樹脂に隣接して配置された少なくとも1つの位置決め材を含んでおり、この位置決め材は少なくとも部分的に樹脂を所定の位置に保持するために機械的な支持を樹脂に提供するようになっている。この装置は医薬品を含む混合物から可溶性と不溶性の両方の成分を除去するように構成されている。
【0009】
本発明の上記及びその他の特徴、態様、及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めばよりよく理解できるであろう。全図面を通して類似の参照番号は類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本技術の様々な態様に従う樹脂と位置決め材の選択的な配列を図解する断面側面図である。
【図2】図2は、本技術の様々な態様に従う樹脂と位置決め材の選択的な配列を図解する断面側面図である。
【図3】図3は、図2のフィルター構成で使用したディフューザーの透視図である。
【図4】図4は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図5】図5は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図6】図6は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図7】図7は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図8】図8は、本技術の態様に従う医薬品を濾過するための代表的な濾過装置を説明する概略図である。
【図9A】図9Aは、本技術の態様に従う医薬品の濾過のための半径方向濾過装置を説明する断面側面図である。
【図9B】図9Bは、図9Aの半径方向濾過装置の平面図である。
【図10】図10は、出口位置において円錐形状を有する濾過装置の断面側面図である。
【図11】図11は、本技術の態様に従う代表的なMRIシステム及び濾過装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本技術の実施形態は、医薬品の混合物から1種以上の成分を選択的に保持するための医薬品の動的濾過装置及び方法に関する。本明細書で用いる「動的濾過」という用語は、医薬品を含む混合物の媒質中で溶解度が経時的に変化する混合物の1種以上の成分を除去又は濾過する濾過装置の能力をいう。以下で詳しく説明するように、これらの成分の溶解度は、例えば、媒質の変化する圧力、温度、体積、pHと共に変化し得る。本明細書で用いる「医薬品」には、薬学的に関連する1種の化合物又は複数の化合物の混合物が含まれる。医薬品は使用されるばかりの最終製品であってもよい。或いは、医薬品は医薬化合物を作成する際の中間生成物であってもよい。濾過装置によって選択的に保持される1種以上の成分は一般に、医薬品中に存在し、最終製品中に所望でない不純物又は望まれていない化合物である。これら1種以上の成分は、例えば、医薬品の形成に用いられる2種以上の反応物質が関与する反応で形成される副生成物であり得る。
【0012】
容易に理解されるように、通例、医薬品の濾過方法では、医薬品を有する混合物を濾過装置に通過させる直前にこの装置をコンディショニングする追加の工程が必要である。医薬混合物を濾過するために使用される従来の濾過装置では、濾過する前に装置をコンディショニングするには、コンディショニング剤又は溶媒の形態で追加の化学物質を使用することが多い。本明細書で用いる「コンディショニング」という用語は、濾過装置の1以上の部分を改変することで、改変を受けた後その1以上の部分が混合物から不純物又は化学成分を保持するようになることをいう。改変の非限定例としては、樹脂の表面を湿潤させること、濾過すべき化学物質が樹脂の表面と相互作用することができる状態を樹脂内に作り出すこと、又は固体/気体界面から液体/固体界面を作り出すことを挙げることができる。例えば、幾つかの伝統的な装置はアルコールを用いてコンディショニングされる。コンディショニング工程のために添加されるアルコールは、医薬品を濾過するために、その後除去する必要がある。加えて、コンディショニングに使用される溶媒その他の物質は通例最終製品中に望まれるものではなく、従ってこの所望でない物質は濾過装置をコンディショニングした後濾過過程を始める前に装置から除去する必要がある。かかる化学物質の除去は余分な工程段階を必要とし、従ってより長い工程所要時間を要する。
【0013】
さらに、ポイント・オブ・ユースにおけるコンディショニングは、現場でのコンディショニング過程から(すなわち溶媒及び水を介して)生物学的に関連する物質が系内に導入されるという潜在的な問題を生じ得る。また、ポイント・オブ・ユースでフィルターをコンディショニングする必要がある系では、フィルターから溶媒を除去するという追加の工程が濾過工程の一体部分であり、濾過過程を長引かせる一因ともなる。この追加の工程により、医薬品の製造プロセスが長引くことによると共に、時には時間、若しくは工程段階数の制限、又はプロセスの複雑さのため、医薬品からコンディショニング剤を完全に分離することができないこともあり、汚染された医薬品が得られることもある。従って、濾過の直前のコンディショニング工程を排除することによって、これらの不必要なコンディショニング剤の投与が防がれ、他の場合には濾過の前の装置のコンディショニングを促進するように添加されるコンディショニング剤その他の化学物質を分離するために必要とされる追加の工程を使用することが回避され、さらに不必要な生物学的に関連する物質の導入の危険性が大幅に低減する。以下で詳しく説明するように、本技術の濾過装置は、濾過の間又はその直前に所望でない物質を添加する必要がない。従って、本技術の濾過装置は、他の場合には混合物の濾過を実施する前に先に加えられた所望でない物質を除去するために従来の濾過装置で使用されていた追加の工程を必要としない。一実施形態では、本濾過装置は、濾過中にコンディショニングされるように構成されている。別の実施形態では、本濾過装置は、濾過に先立って予めコンディショニングされ、管理された状態で保存される。
【0014】
幾つかの実施形態では、濾過装置は、医薬混合物の媒質によってコンディショニングされるように構成されている。以下で詳しく説明するように、これらの実施形態では、濾過装置は、濾過過程中混合物の媒質によって活性化される樹脂を含んでいる。この活性化された樹脂は、医薬品を含む混合物から1種以上の成分を選択的に保持するようになっている。従って、本技術の装置を使用することにより、濾過前に装置をコンディショニングするという追加の工程が不必要になる。樹脂と媒質の組合せはこれらの相互の適合性に応じて選択することができる。さらに、媒質は、この媒質が医薬品から容易に分離できるように選択することができる。或いは、媒質は、この媒質が、医薬品に有害な影響を及ぼすことなく最終医薬品中に保持され得るように選択することもできる。
【0015】
医薬品の混合物は、樹脂が媒質又は濾過混合物によりその場でコンディショニングされるようになるような媒質を含んでいることができる。言い換えると、この装置は、濾過に先立ってコンディショニングすることなく混合物から1種以上の成分を濾過するように構成されている。樹脂は、その活性化された状態において、1種以上の所望でない成分を保持すると共に医薬品の混合物の残余は樹脂を通過できるようにすることにより、それらの所望でない成分をその混合物から濾別するようになっている。樹脂は、医薬混合物の1種以上の成分の化学的保持、機械的保持、又はこれらの両方が可能なようにすることができる。ある実施形態では、樹脂材料は多孔質の材料である。これらの実施形態では、樹脂材料は比較的大きい表面積、従って比較的高い化学物質濾過効率を有している。樹脂材料の粒子の大きさ、粒子の形状、及び充填効率のような特性は樹脂床の微粒子を除去する能力に影響し得る。機械的濾過において、濾別する必要がある微粒子の粒径は樹脂材料の細孔径よりずっと大きいであろう。一実施形態では、樹脂の細孔径は約60〜約4000Åの範囲である。
【0016】
幾つかの実施形態では、樹脂は表面改質に適している。樹脂材料の選択は、その樹脂が混合物の媒質によって活性化されるようになっているか、又はその樹脂が予備活性化され装置内に保存されるかによって変化し得る。樹脂が媒質によって活性化されるようになっている実施形態では、適切な極性/親水性の官能基を含有する樹脂が必要である。例えば、混合物と接触する微粒子の表面、すなわち樹脂の大半(又は基材)を、改質された表面が媒質によって活性化されることができるように、1以上の非極性官能基、又は非極性と極性の官能基の組合せで改質することができる。通例、この基材はポリマーを主体とし得る。極性の官能基は、媒質が樹脂を活性化することができるが、樹脂の疎水性の官能性により1種以上の成分の保持に負の影響を与えることがないように選択される。樹脂が混合物の媒質によって活性化されるようになっている濾過装置の場合、混合物の媒質は水性主体とすることができる。水性主体の媒質は事実上中性、塩基性又は酸性であることができる。ある実施形態では、水性主体の媒質は酸性から塩基性に、又は塩基性から酸性に、又は中性のpHから塩基性若しくは酸性の状態に、又は酸性若しくは塩基性の状態から中性のpHに動的に変化し得る。医薬混合物が装置を通過するとき、樹脂内の疎水性及び/又は極性の官能基により1種以上の成分が捕捉され、従って選択的に保持される。混合物の残余部分は装置を通過ことが可能である。
【0017】
幾つかの実施形態では、樹脂は形態学に基づいて活性化することができる。樹脂は、例えば水性媒質により湿潤させることができるように適した形態学を有し得る。容易に理解されるように、樹脂は、不純物を保持するように疎水性の特性を有しており、かつ濾過される混合物と適合性であるのが望ましい。ある実施形態では、樹脂は、圧力をかけた際に医薬混合物の媒質が樹脂の表面を濡らして医薬混合物から濾過される化学成分と樹脂の官能基との相互作用を可能にするような大きさの細孔を含み得る。これらの実施形態では、樹脂の細孔は、樹脂上に親水性の部分がないときでも媒質により湿潤し得る。一実施形態では、大きい細孔径の樹脂に加えて圧力を使用して湿潤を達成する。この場合の圧力は、装置内に導入される医薬混合物の流体圧力である。1つの代表的な実施形態では、濾過装置における混合物の流速は約3〜約12mL/sの範囲である。別の実施形態では、樹脂を活性化するには追加の圧力を必要とすることがある。
【0018】
濾過装置が予めコンディショニングされ後の使用のために保存される実施形態では、濾過装置は、アルコールのような溶媒で予めコンディショニングして樹脂を活性化し、その後フィルターを水でフラッシングして溶媒を除去する。一実施形態では、フィルターをコンディショニングするための溶媒としてエタノールを使用することができる。エタノールを使用することの利点は、通常医薬品はエタノールに対して許容範囲を有することである。予めコンディショニングされた濾過装置は、コンディショニングに関するさらに別の工程を実施する必要なく濾過に直接使用することにより濾過に要する時間全体を短縮することができる。これらの実施形態では、樹脂は濾過に先立って活性化され装置内に保存される。樹脂は溶媒その他のコンディショニング物質を使用して活性化することができる。溶媒その他のコンディショニング物質が最終製品中に望まれない場合、濾過装置を加工処理又は洗浄して溶媒その他のコンディショニング物質を装置から除去することができる。ある実施形態では、予めコンディショニングされた装置は、装置の温度を、装置内に残っている溶媒の凝固点より低くすることによって保存される。例えば、疎水性樹脂の場合、水が経時的に細孔から追い出される脱湿潤過程が起こり、従って樹脂がその効率を失い得るので、溶媒の凍結によりフィルターをその中に溶媒を含んだまま保存するのが容易になる。予めコンディショニングされたフィルターの場合、濾過に先立ってコンディショニング用の化学物質/溶媒をフィルターから分離するのに必要とされる追加の工程を、装置を保存する前に実施する。従って、これらの追加の工程は濾過過程を長引かせる一因とならない。
【0019】
幾つかの実施形態では、樹脂は濾過装置の製造中に活性化することができる。装置がコンディショニングされたら、幾つかの場合には溶媒を除去し、その後装置を密閉して、生物学的に関連する物質のような汚染物質が系に侵入するのを防止することができる。水が溶媒として機能する実施形態では、装置を密閉する前に溶媒を除去する必要はないであろう。一旦コンディショニングされ保存されたら、この予めコンディショニングされた装置は、濾過に先立ってコンディショニングする工程を実施することなく直接濾過に使用できるすぐ使用できる装置となる。一実施形態では、濾過装置は、例えば生物学的に関連する物質を除去するために滅菌することができる。一実施形態では、予めコンディショニングされた装置を密封して濾過の前及び濾過中の無菌性を保つ。予めコンディショニングされた装置と同様に、樹脂が媒質又は濾過混合物によりその場でコンディショニングされるようになっている濾過装置を密封して、濾過の前又は濾過中に異物が装置に侵入するのを防ぐことができることに留意されたい。予めコンディショニングされたフィルターは疎水性を有する多くの異なる樹脂と共に使える。樹脂は1種以上の成分を保持し、濾過される媒質/混合物と適合性である。かかる樹脂の例としては、固相抽出で使用されるSilicaベースの18C、又はフラッシュクロマトグラフィー用途で用いられる樹脂がある。
【0020】
さらに、本装置は、樹脂に隣接して配置された少なくとも1つの位置決め材を含んでおり、この位置決め材は少なくとも部分的に樹脂を所定の位置に保持するためにその樹脂に機械的な支持を提供するように構成されている。さらに加えて、位置決め材は、医薬混合物から1種以上の成分を少なくとも部分的に保持するように構成されていてもよい。位置決め材は混合物中のあらゆる溶媒、媒質、又は医薬成分に対して不活性な材料で作成され得る。さらに、ヘルスケア用途の場合、位置決め材はこれが医薬品と接触することになる医療用装置に使用するのに適していなければならない。ある実施形態では、位置決め材としては、フリット、膜、スクリーン、繊維床、その他あらゆる機械的な支持体を挙げることができる。位置決め材は連続的な構造体であってもよいし、又はパターン化された構造体であってもよい。例えば、位置決め材は連続的な多孔質板であってもよいし、又は格子の形態であってもよい。幾つかの実施形態では、位置決め材自体が、医薬混合物から1種以上の成分を選択的に保持するようになっていてもよい。一実施形態では、位置決め材は1種以上の成分を機械的に保持することができる。例えば、位置決め材は保持されるべき成分の粒子より小さい細孔を有する多孔質物質であってもよい。例えば、位置決め材の細孔径は約5〜約30μmの範囲である。別の実施形態では、位置決め材は医薬混合物から1種以上の成分を化学的に保持するようになっていてもよい。位置決め材は、限定されることはないが、媒質又は医薬品と反応することなく医療用途に使用し得るポリエチレン及びTeflonなどの疎水性及び親水性の多孔質ポリマーを始めとする材料から作成され得る。
【0021】
以下で図1〜2及び4〜10に関して説明するように、樹脂と位置決め材は幾つかの異なる構成で配置することができる。幾つかの実施形態では、樹脂はある成分を化学的に保持するようにすることができ、一方位置決め材は同じ又は異なる成分を機械的に保持するようにすることができる。樹脂と位置決め材は1種以上の成分を保持する点において互いに補完的であることができ、例えば樹脂は可溶性の望ましくない成分を混合物から保持することができ、位置決め材は不溶性の成分を混合物から保持することができる。或いはまた、樹脂と位置決め材が同じ1種以上の成分を保持するようになっていてもよい。これらの実施形態では、位置決め材は樹脂が残した成分を保持するためのバックアップ配置として、又はその逆として使用することができる。
【0022】
一実施形態では、医薬混合物は媒質に可溶性化学種を含むことができる。この実施形態では、樹脂はその可溶性化学種を保持するように構成される。別の実施形態では、医薬混合物は媒質に不溶性化学種を含んでいてもよい。この実施形態の場合、位置決め材及び/又は樹脂が、混合物から分離/抽出されるべき不溶性化学種を保持するように構成される。別の実施形態では、化学種のあるものは媒質に可溶性であり得、一方他のものは不溶性であり得る。ある実施形態では、装置は医薬混合物から可溶性と不溶性の両方の化学種を保持するように構成されている。この実施形態では、位置決め材及び/又は樹脂が不溶性化学種のあるものを保持するように構成され、一方樹脂が医薬混合物から分離するべき可溶性化学種を保持するように構成される。さらに、幾つかの実施形態では、医薬混合物中の化学種のあるものの溶解度は媒質のpH、極性、濃度、及び温度を始めとする状態の関数として時間と共に変化し得る。これらの実施形態では、樹脂若しくは位置決め材又は両方が溶解度が経時的に変化する化学種を保持するように構成され得る。これらの実施形態では、位置決め材及び/又は樹脂は濾過過程の幾つかの段階で不溶性の成分を保持する。成分の溶解度は溶液の性質によって変わるので、不溶性の物質が可溶性となり再度溶液中に入る。これらの再可溶化された成分はその後樹脂上に保持される。例えば、電子常磁性物質(electron paramagnetic agent:EPA)とピルビン酸の混合物の場合、EPAは最初不溶性であり位置決め材に保持される。その後、EPAが可溶性になると、EPAは活性化された樹脂で除去され得る。この方法の利点は、媒質の組成を変更したり、及び/又は、例えば圧力及び温度の1以上を含む溶解状態を変えたりすることによって、EPAの動的溶解度を調節することができるということである。樹脂と位置決め材の体積(又は重量)比は所与の用途又は使用目的に合わせて選択される。1つの例において、約1〜約2gの範囲の医薬混合物は、約3〜約10gの範囲の樹脂を必要とする。
【0023】
さらに、本装置はまた、樹脂と位置決め材の全体を収容するための濾過体も含んでいる。この濾過体は濾過の必要条件に応じて様々な形状と大きさであることができる。例えば、濾過体は媒質を医薬品に混合して医薬混合物を形成するための手段を有し得る。別の実施形態では、濾過体は樹脂に対する医薬品の混合物の流れを変えるための手段を有し得る。図4〜10に関連して以下に説明するように、幾つかの実施形態では、濾過体は樹脂と位置決め材の複数の配列を有していてもよい。これらの実施形態では、複数の配列の各々は同じ構成の樹脂と位置決め材を有していてもよい。或いは、複数の配列の幾つか又は全てが他とは異なる構成を有していてもよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、本装置はまた、混合物を複数の流れに分配するように構成されたディフューザーも含んでいることができる。このディフューザーは、位置決め材の全面にわたって混合物を均等に分配するために位置決め材の前に用いられる。ディフューザーは、樹脂で濾過される前の混合物を均質化するために使用してもよい。位置決め材と同様、ディフューザーは混合物中のあらゆる溶媒、媒質、又は医薬成分に対して不活性な材料で作製することができる。
【0025】
ある実施形態では、開示されている装置を、核磁気共鳴(NMR)分析に関して、特に磁気共鳴画像(MRI)に関して説明する。本明細書に記載した技術はMRI以外の様々な他の系に応用できることに留意されたい。また、本装置はMRIに用いるもの以外の医薬化合物を用いるために使用してもよい。
【0026】
MRI及びNMR分光法は、使用する試料の核スピンの分極が通常極めて低いために感度が不充分である。固相における核スピンの分極を改良するために多くの技術が存在する。これらの技術は過分極技術として知られており、感度が増大する。本明細書で用いる「分極する」又は「分極」という用語は、MRIにおけるさらなる使用のための固体物質の物理的性質の改変をいう。さらに、本明細書で用いる「過分極した」という用語は、室温かつ1Tで見られるレベルを超えるレベルに分極していることをいい、米国特許第6466814号に詳しく記載されている。過分極技術においては、造影剤、例えば13Cピルビン酸塩又は別の同様な分極した代謝造影剤の試料を、画像化する被検体中に導入又は注入する。通例、13Cピルビン酸塩を、13Cの分極を高めるために電子常磁性物質(EPA)としてより一般的に知られているトリス(8−カルボキシル−2,2,6,6−テトラ(2−(1−メトキシ−2,2−d2−エチル))−ベンゾ[1,2−d:4,5−d′]ビス(ジチオール−4−イル)メチルナトリウム塩と混合する。容易に理解されるように、加工助剤のEPAは、製品を被検体に投与する前に医薬品から除去する必要がある。
【0027】
100mlの医薬品を形成しようとする1つの例において、約10〜50マイクロモルのEPAをピルビン酸に加える。濾過がないとすると、この量のEPAで溶解生成物中に100〜500マイクロモル濃度のEPA濃度が得られる。溶解生成物中のEPA濃度は高い濾過効率に相当する許されるレベル以下であるのが望ましい。例えば、本濾過装置は約90パーセント超であり得る。従って、EPAの濃度を凍結したピルビン酸試料の分極及び溶解後の生成物に許される限界まで低くする必要がある。現在考えられる実施形態では、EPAは本技術の濾過装置を用いて少なくとも部分的に濾別される。
【0028】
EPAはpHと共に変化する溶解度を示す。4未満のpHで、EPAは大部分が不溶性であり、直径10μm以上の微粒子を形成する。pH4を超えると、EPAは水溶液に可溶性である。
【0029】
ある実施形態では、ピルビン酸とEPAは最初凍結した状態で小さいバイアルに入れられている。溶解媒質として知られている水溶液を用いて、ピルビン酸とEPAを融解し、フィルターを通して最終の受容器に入れる。この溶解媒質はまた、必要に応じ生成物のpHを変更するのにも使用することができる。融解過程にかかる時間のため、フィルターに到達する液体は所与の時に様々な酸及びEPA濃度並びに2〜12の範囲のpHを有することができる。これらの濃度とpHの特徴は溶解過程中時間の関数として変化する。
【0030】
本発明に従う方法と装置において、凍結したピルビン酸とEPAの固体試料は、強力な磁場(例えば1〜25T)内で低温(例えば100K未満)に維持したまま、何らかの適当な公知の方法、例えばブルート力分極(brute force polarization)、又は動的核分極によって固相のうちに分極することができる。固体試料を分極した後、分極の損失を最小にして融解する。以下、「融解手段」という表現は、固体分極した試料にこれを融解するか又は他の場合には画像化される被検体に導入するためにその分極した試料を溶液にするのに十分なエネルギーを与えることができる装置を意味するものと考えられる。本明細書で用いる「固体」という用語は、固体物質、半固体物質又はこれらの任意の組合せをいうが、但しこの物質は画像化される被検体に導入するのに適した液体状態にするには幾らかの変換を必要とするものである。
【0031】
ここで図1を参照すると、樹脂は層10の形態で配置されている。位置決め材12は矢印14で表される混合物の流れ方向で樹脂10の一面上に配置されている。通例、位置決め材12は樹脂10に機械的な支持を提供して樹脂10をその所定の位置に少なくとも部分的に保持するようになっている。位置決め材12は連続的な層であってもよい。図示されてはいないが、位置決め材12はパターン化された構造を含んでいてもよい。例えば、位置決め材12は格子、又は複数のロッド、枠であってもよい。既に記載したように、幾つかの実施形態では、位置決め材12はまた樹脂が混合物からの1種以上の成分を選択的に保持するのを補助するように使用することもできる。
【0032】
図2に、図1の樹脂と位置決め材の配列の別の実施形態を示す。図示した実施形態では、樹脂16は矢印22で示される混合物の流れ方向で樹脂16の両面上に位置決め材18、20を含んでいる。図1に関連して記載したように、位置決め材18、20は中実又は非中実のパターンを有し得る。さらに、図示した実施形態の構成を繰り返してもよい。言い換えると、装置は複数の位置決め材18、20の間に配置された複数の樹脂16を有するスタックを使用することができる。一実施形態では、位置決め材18はディフューザーの機能を果たすようになっていてもよい。一般に、樹脂は位置決め材に対してしっかり付いている。しかし、場合によっては、濾過体の頂部とディフューザー/位置決め材との間にある間隔が望まれることがある。例えば、複数の樹脂−位置決め材の対を使用する濾過体の場合、1つの対の位置決め材と隣接する対の樹脂との間の間隔により、次の樹脂床の前に生成物を再混合することが可能になり得る。このやり方はまた、前の樹脂床が濾過すべき化学成分(例えば、EPA)で局所的に飽和して縞って透過させてしまうのに対して他の領域が不飽和のままであるという状況でも有益であり得る。この状況は、例えばディフューザーが流れを均等に分配しなかったときに生じ得る。この空間は混合物の再分配を可能にする。図7に関連して記載するように、位置決め材18、20に加えて別個のディフューザープレートを設けてもよい。
【0033】
図3に、位置決め材18の代わりに、又はそれに加えて使用することができるディフューザー24の透視図を示す。このディフューザー24は複数の貫通穴28を有するプレート26を含んでいる。混合物は、穴28を通過する複数の流れに分配される。これらの流れは最終的に、図2に示したような樹脂、例えば樹脂16内で1つになる。
【0034】
図4は、入口32を有する代表的な濾過装置30を図解しており、入口32における混合物の流れの方向は矢印33により表されている。この装置30は位置決め材36と樹脂37の別の配列の層を有する層状の構造体34を含んでいる。濾過される混合物の流れの方向は矢印38で示されており、出口40を通って濾過体39から出ていく。
【0035】
図5は濾過装置42を図解する。この濾過装置42は図1〜2の構成若しくは部品、又はそれらの派生物の任意の組合せを使用できる。現在考えられる実施形態では、装置42は位置決め材48上に配置された樹脂46を有する配列44を含んでいる。この装置42はさらに、それぞれ矢印51、53により表されている装置42に入り、出ていく混合物のための入口50と出口52を有する濾過体45を含んでいる。
【0036】
図6は、図5の装置42の別の実施形態を示す。図示した実施形態では、装置54は本体62内に配置された複数の配列56を含んでいる。複数の配列56の各々は同一であってもなくてもよい。図示した実施形態では、各構成56は樹脂58と位置決め材60を含んでいる。さらに、本体62は、それぞれ矢印65と67で表される混合物の出入りのための入口64と出口66を含んでいる。
【0037】
図7は、それぞれ図5、6の装置42、54のさらに別の実施形態を示す。図示した実施形態では、装置68は樹脂72、位置決め材74、76を使用する。この装置68はさらにディフューザー78を含んでいる。さらに、装置68は、混合物の流れをそれぞれ矢印83及び85で示されるように向かわせる入口82及び出口84を有する濾過体80を含んでいる。
【0038】
さらに図7を参照して、一実施形態では、医薬混合物は、ピルビン酸塩とEPAの混合物で見られるような時間により変化するpH勾配を有する。最初混合物のpHは酸性である傾向があるが、時間と共にこのpHは上昇し中性又は塩基性にシフトする。この実施形態では、入口側と出口側の位置決め材74、76の間に配置された樹脂72を含有するフィルターを使用する。加えて、入口側の位置決め材74の前にディフューザー78を用いて、液体を樹脂72の表面全体にわたって均等に分配する。この実施形態では、ピルビン酸とEPAは、水酸化ナトリウムを含有する水のような塩基性pHを有する水溶液により溶解される。加えて、他のpH調節剤又は緩衝剤を医薬混合物に加えてもよい。医薬混合物が過分極を受けたピルビン酸とEPAを含む別の実施形態では、ピルビン酸の融解過程が始まるので、この凍結したピルビン酸とEPAの溶液中の酸と塩基の比は酸が支配的であり、従って溶液のpHは酸性である。この状態の下で、最初に濾過される溶液はpH<4であり、EPAは不溶性である。この時点で不溶性の微粒子であるEPAは、入口側の位置決め材74上又は樹脂床72の前面上に捕捉される。同時にピルビン酸水溶液は入口側の位置決め材74を通過し、樹脂床72に入り、樹脂72を濡らし、従って活性化し、出口側の位置決め材76を通過し、フィルターを出ていく。溶解が続くにつれて、バイアル中の酸と塩基の比が低下し、液体のpHをシフトさせて、バイアルをより中性又は塩基性のpHにする。混合物がフィルターに到達すると、液体中にあるか、又は既に入口側の位置決め材74上若しくは樹脂床72の前面に捕捉されていたEPAが可溶性になり樹脂床72に入る。樹脂床72内で、可溶性EPAは活性化された樹脂72上に保持される一方、ピルビン酸とピルビン酸ナトリウムはフィルターを通過して受容器に入る。
【0039】
ここで図8を参照すると、濾過装置86は位置決め材88と混合物の流れ方向で位置決め材88の上に配置されたディフューザー90とを含んでいる。この装置86は樹脂を含んでいない。かかる装置86は、医薬混合物が医薬品から分離すべき不溶性化学種のみを含有する場合に使用できる。この装置はさらに入口94と出口96を含んでおり、装置86内の混合物の流れ方向は矢印98と100で示されている。
【0040】
図8の図示した実施形態では、混合物のpHは酸性範囲であり得る。一実施形態では、樹脂床のない位置決め材88のみを含有する装置68を使用する。位置決め材88の全面にわたって混合物を均等に分配するために位置決め材88の前にディフューザー90を使用する。この実施形態では、ピルビン酸とEPAは純水のような中性pHを有する水溶液により溶解される。この条件下で、最初に濾過される溶液はpH<4であり、EPAは不溶性である。この時点で不溶性の微粒子であるEPAは位置決め材88上に捕捉される。同時にピルビン酸水溶液は位置決め材88を通過する。その後、ピルビン酸は中和されて、受容器内でピルビン酸ナトリウムを形成する。
【0041】
ここで図9Aを参照すると、半径方向濾過装置104が示されている。図9Bは装置104の平面図を示す。樹脂物質106と位置決め材108は、入口111を介して混合物が入るための通路110の回りで同心に配置されている。かかる濾過装置104は、混合物が高い流速で装置104に入る濾過用途で使用できる。また、本濾過装置104は大規模の濾過用途で使用してもよい。混合物は矢印112で示される方向で通路110に入り、入ってくる混合物の圧力及び樹脂と位置決め材の配列のために(矢印114で示されるように)半径方向に分配される。その後、濾過された混合物は樹脂物質106と位置決め材108を通って濾過され、矢印118で示されているように、濾過体116の壁と、樹脂物質106と位置決め材108の配列との間の通路に入る。次いで、この混合物は、濾過体の壁と、樹脂物質106と位置決め材108の配列を保持する支持プレート124との間の通路を通過することによって濾過体116の出口122を通って出ていく(矢印120)。図示されてはいないが、別の配列において、濾過装置はまた、混合物の通路が矢印112、114、118及び120の方向を180°逆転して表される場合にも機能し得る。すなわち、濾過される混合物は位置122を介して濾過体116に入り、濾過体116の壁と、樹脂物質106と位置決め材108の配列との間の通路を通って移動する。次に、この混合物は樹脂物質106と位置決め材108の配列に入って濾過される。濾過された混合物は位置111で回収される。
【0042】
ここで図10を参照すると、濾過体130、入口132及び出口134を有する濾過装置128が図示されている。矢印133と135は混合物の流れの方向を表す。濾過体130の一部分136は円筒形の断面を有しており、一方濾過体130のその一部分の残り138は円錐形状を有する。この部分138の円錐形状により、濾過後の混合物が濾過体130から容易に出ていける。この濾過装置128はさらに、穴144のある基材142を有するディフューザー140を含んでいる。濾過装置128はまた、2つの位置決め材146の間に配置された樹脂物質145を含んでいる。
【0043】
ある実施形態では、未精製医薬品を塩基性媒質、緩衝剤及びキレート剤と混合して濾過混合物を形成する。例えば、未精製医薬品はピルビン酸、及び電子常磁性物質を含み得る。この塩基性媒質としては水酸化ナトリウムを挙げることができ、緩衝剤としてはトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(トリス)を挙げることができる。キレート剤の存在は混合物からの金属イオンの分離を促進し得る。その後、混合物を入口を介して濾過体に入れる。混合物は濾過体内部で樹脂と位置決め材を通過し、出口を介して装置から出ていく。
【0044】
ある実施形態では、装置42又は54のような濾過装置は、核磁気共鳴(NMR)分析、特に核磁気共鳴造影(MRI)及び分析用高分解能NMR分光法に使用できる。例えば、本装置は、磁気共鳴画像(MRI)の目的で患者の身体に投与する前に分極物質を濾過するために使用できる。
【0045】
図11を参照すると、MRI装置に使用する過分極した試料を作成するための代表的なシステム150が示されており、このシステムは、容器156からの物質を加工処理し、過分極した物質を得るためのクリオスタット152及び分極サブシステム154を含んでいる。物質送達ライン158を使用して、過分極した物質をMRIスキャナー162の患者160に送達する。
【0046】
図11に示した実施形態では、過分極した試料は生体内造影用途に使用される。過分極した試料はまた、核磁気共鳴(NMR)分析に関して以下に記載する方法及び技術を用いても製造できることと了解されたい。フィルター164が送達ライン158に取り付けられており、クリオスタット152と患者160との間に位置していて、患者160に投与する前に過分極した物質を濾過する。フィルター164は図4〜10に関連して上に記載したように樹脂物質166と位置決め材168を含んでいる。図示されてはいないが、幾つかの実施形態では、フィルター164のようなフィルターを2つ以上直列配置でシステム150内に用いてもよい。これらの実施形態では、複数のフィルター164は、1つのフィルターからの出力が患者160の方向において隣接するフィルターの入力として役立つように配置することができる。2つ以上のフィルターの各フィルターは同一又は異なる構成、樹脂の組成、位置決め材及び/又はディフューザーを有することができる。
【0047】
本明細書では本発明の幾つかの特徴のみについて例示し説明して来たが、当業者には多くの修正や変更が明らかであろう。従って、特許請求の範囲はかかる修正や変更の全てを本発明の真の範囲内に入るものとして包含するものと了解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品の動的濾過装置であって、
医薬品を含む混合物の1種以上の成分を選択的に保持するように構成された樹脂であって、該混合物の媒質によって活性化されるように構成された樹脂と、
上記樹脂に隣接して配置された位置決め材であって、上記樹脂を少なくとも部分的に適所に保持すべく樹脂を機械的に支持するように構成された1以上の位置決め材と
を備える装置。
【請求項2】
前記樹脂と位置決め材とを収容する濾過体をさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記樹脂が表面改質に適しており、表面改質が非極性官能基又は非極性官能基と極性官能基との組合せを含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記混合物の媒質が水性媒質を含んでおり、該水性媒質が中性媒質、塩基性媒質又は酸性媒質を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記水性媒質が、酸性から塩基性へと、塩基性から酸性へと、中性pHから酸性又は塩基性へと、或いは酸性又は塩基性から中性pHへと動的に変化する、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記位置決め材がフリット、膜、繊維床、スクリーン、支持体又はこれらの組合せからなる、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記位置決め材が、医薬品を含む混合物の1種以上の成分を保持するように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項8】
当該装置が、医薬品を含む混合物の可溶性化学種及び不溶性化学種を共に保持するように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項9】
当該装置が、医薬品を含む混合物中で溶解度が経時的に変化する化学種を保持するように構成されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記樹脂が、前記混合物の媒質によってその場で活性化されるように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項11】
当該装置が使用前に滅菌される、請求項1記載の装置。
【請求項12】
当該装置が、濾過時に無菌性を保つため密閉される、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記位置決め材が、前記樹脂の片側の混合物の流れが流れる方向に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項14】
前記位置決め材が、前記樹脂の両側の混合物の流れが流れる方向に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項15】
前記樹脂と位置決め材が交互に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項16】
医薬品を含む混合物を複数の流れに一時的に分配するディフューザーをさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項17】
患者に投与すべき医薬品の濾過システムであって、当該システムが、
濾過体と、
濾過体内部に配置された樹脂であって、該樹脂をその場で活性化するように構成された媒質を含む医薬品の混合物を濾過するように構成された樹脂と、
上記濾過体内部で樹脂を支持するように構成された位置決め材と
を備える濾過装置を含んでおり、該濾過装置が医薬品の混合物の可溶性化学種及び不溶性化学種を共に濾過するように構成されている、システム。
【請求項18】
複数の装置が直列に配置されている、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
当該システムが磁気共鳴画像(MRI)システムでの使用に適している、請求項17記載のシステム。
【請求項20】
未精製医薬品の濾過方法であって、
緩衝剤と、キレート剤と、酸性媒質又は塩基性媒質又は中性媒質の1種を未精製医薬品と混合して濾過混合物を形成し、
上記濾過混合物を濾過装置に通す
ことを含んでなる方法。
【請求項21】
前記未精製医薬品がピルビン酸と電子常磁性物質を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記塩基性媒質が水酸化ナトリウムを含み、前記緩衝剤がトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記未精製医薬品が部分的に不溶性の化学種を含んでおり、前記濾過装置の樹脂及び位置決め材の少なくとも一方が上記不溶性化学種を保持する、請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記未精製医薬品が可溶性化学種及び不溶性化学種を共に含んでおり、位置決め材及び樹脂の少なくとも一方が不溶性化学種を保持し、樹脂が可溶性化学種を保持する、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記未精製医薬品が、混合物中で溶解度が経時的に変化する化学種を含む、請求項20記載の方法。
【請求項26】
前記化学種が酸性条件下で不溶性であり、該不溶性化学種が位置決め材に保持される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記化学種が塩基性媒質/条件下で可溶性であり、該可溶性化学種が樹脂で濾過される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記濾過装置における混合物の流速が約3〜約12mL/sである、請求項20記載の方法。
【請求項29】
前記樹脂の細孔径が約60〜約4000Åの範囲内にある、請求項20記載の方法。
【請求項30】
前記位置決め材の細孔径が約5〜約30μmの範囲内にある、請求項29記載の方法。
【請求項31】
医薬品の動的濾過装置であって、当該装置が、
医薬品を含む混合物の1種以上の成分を選択的に保持するように構成された樹脂と、
上記樹脂に隣接して配置された位置決め材であって、上記樹脂を少なくとも部分的に適所に保持すべく樹脂を機械的に支持するように構成された1以上の位置決め材と
を備えており、上記医薬品を含む混合物の可溶性成分及び不溶性成分を共に除去するように構成されている、装置。
【請求項32】
当該装置は、濾過直前のコンディショニングを要しない、請求項31記載の装置。
【請求項33】
前記樹脂が、濾過中に医薬品の媒質によって活性化される、請求項31記載の装置。
【請求項34】
前記樹脂が濾過前に予備活性化され保存される、請求項31記載の装置。
【請求項35】
前記樹脂が前記濾過装置の製造中に予備活性化され保存される、請求項34記載の装置。
【請求項36】
前記予備活性化された樹脂が凍結して保存される、請求項34記載の装置。
【請求項1】
医薬品の動的濾過装置であって、
医薬品を含む混合物の1種以上の成分を選択的に保持するように構成された樹脂であって、該混合物の媒質によって活性化されるように構成された樹脂と、
上記樹脂に隣接して配置された位置決め材であって、上記樹脂を少なくとも部分的に適所に保持すべく樹脂を機械的に支持するように構成された1以上の位置決め材と
を備える装置。
【請求項2】
前記樹脂と位置決め材とを収容する濾過体をさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記樹脂が表面改質に適しており、表面改質が非極性官能基又は非極性官能基と極性官能基との組合せを含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記混合物の媒質が水性媒質を含んでおり、該水性媒質が中性媒質、塩基性媒質又は酸性媒質を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記水性媒質が、酸性から塩基性へと、塩基性から酸性へと、中性pHから酸性又は塩基性へと、或いは酸性又は塩基性から中性pHへと動的に変化する、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記位置決め材がフリット、膜、繊維床、スクリーン、支持体又はこれらの組合せからなる、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記位置決め材が、医薬品を含む混合物の1種以上の成分を保持するように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項8】
当該装置が、医薬品を含む混合物の可溶性化学種及び不溶性化学種を共に保持するように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項9】
当該装置が、医薬品を含む混合物中で溶解度が経時的に変化する化学種を保持するように構成されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記樹脂が、前記混合物の媒質によってその場で活性化されるように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項11】
当該装置が使用前に滅菌される、請求項1記載の装置。
【請求項12】
当該装置が、濾過時に無菌性を保つため密閉される、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記位置決め材が、前記樹脂の片側の混合物の流れが流れる方向に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項14】
前記位置決め材が、前記樹脂の両側の混合物の流れが流れる方向に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項15】
前記樹脂と位置決め材が交互に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項16】
医薬品を含む混合物を複数の流れに一時的に分配するディフューザーをさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項17】
患者に投与すべき医薬品の濾過システムであって、当該システムが、
濾過体と、
濾過体内部に配置された樹脂であって、該樹脂をその場で活性化するように構成された媒質を含む医薬品の混合物を濾過するように構成された樹脂と、
上記濾過体内部で樹脂を支持するように構成された位置決め材と
を備える濾過装置を含んでおり、該濾過装置が医薬品の混合物の可溶性化学種及び不溶性化学種を共に濾過するように構成されている、システム。
【請求項18】
複数の装置が直列に配置されている、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
当該システムが磁気共鳴画像(MRI)システムでの使用に適している、請求項17記載のシステム。
【請求項20】
未精製医薬品の濾過方法であって、
緩衝剤と、キレート剤と、酸性媒質又は塩基性媒質又は中性媒質の1種を未精製医薬品と混合して濾過混合物を形成し、
上記濾過混合物を濾過装置に通す
ことを含んでなる方法。
【請求項21】
前記未精製医薬品がピルビン酸と電子常磁性物質を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記塩基性媒質が水酸化ナトリウムを含み、前記緩衝剤がトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記未精製医薬品が部分的に不溶性の化学種を含んでおり、前記濾過装置の樹脂及び位置決め材の少なくとも一方が上記不溶性化学種を保持する、請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記未精製医薬品が可溶性化学種及び不溶性化学種を共に含んでおり、位置決め材及び樹脂の少なくとも一方が不溶性化学種を保持し、樹脂が可溶性化学種を保持する、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記未精製医薬品が、混合物中で溶解度が経時的に変化する化学種を含む、請求項20記載の方法。
【請求項26】
前記化学種が酸性条件下で不溶性であり、該不溶性化学種が位置決め材に保持される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記化学種が塩基性媒質/条件下で可溶性であり、該可溶性化学種が樹脂で濾過される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記濾過装置における混合物の流速が約3〜約12mL/sである、請求項20記載の方法。
【請求項29】
前記樹脂の細孔径が約60〜約4000Åの範囲内にある、請求項20記載の方法。
【請求項30】
前記位置決め材の細孔径が約5〜約30μmの範囲内にある、請求項29記載の方法。
【請求項31】
医薬品の動的濾過装置であって、当該装置が、
医薬品を含む混合物の1種以上の成分を選択的に保持するように構成された樹脂と、
上記樹脂に隣接して配置された位置決め材であって、上記樹脂を少なくとも部分的に適所に保持すべく樹脂を機械的に支持するように構成された1以上の位置決め材と
を備えており、上記医薬品を含む混合物の可溶性成分及び不溶性成分を共に除去するように構成されている、装置。
【請求項32】
当該装置は、濾過直前のコンディショニングを要しない、請求項31記載の装置。
【請求項33】
前記樹脂が、濾過中に医薬品の媒質によって活性化される、請求項31記載の装置。
【請求項34】
前記樹脂が濾過前に予備活性化され保存される、請求項31記載の装置。
【請求項35】
前記樹脂が前記濾過装置の製造中に予備活性化され保存される、請求項34記載の装置。
【請求項36】
前記予備活性化された樹脂が凍結して保存される、請求項34記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−531167(P2010−531167A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513398(P2010−513398)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/067440
【国際公開番号】WO2009/002794
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/067440
【国際公開番号】WO2009/002794
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
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