説明

医薬組成物

本発明は、2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−{cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドの医薬組成物、治療への適用におけるこのような組成物の使用およびこのような組成物を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドの医薬組成物、治療への適用におけるこのような組成物の使用およびこのような組成物を製造する方法に関する。本発明はさらに、2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドの特定の形態ならびにこのような形態の製造および使用に関する。
【0002】
発明の背景
WO2007/131201およびWO2008/154259は、2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドを含めて、ヘッジホッグシグナル伝達経路モジュレーターとしての活性を有する化合物を開示している。局所用医薬組成物は具体的に開示されていない。本明細書中に引用された出版物の開示は、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0003】
発明の概要
活性化合物の皮膚中への最適な浸透性(penetration)、限定された全身曝露、良好な安定性および/または患者による許容性等の有利な特性を有する2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドを含む局所用医薬組成物を提供する必要性がある。したがって、このような望ましい特性を有する組成物を提供することが本発明の全般的な目的であり、これらの目的は、本明細書で定義された組成物を提供することにより達成される。
【0004】
本発明はその最も広い意味において、化合物2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミド
【0005】
【化1】

またはその(「本発明の作用物質」)溶媒和物および1種または複数の賦形剤を含む局所用医薬組成物を提供する。本発明の作用物質はまた、以下の名称:rel−N−[6−[(2R,6S)−2,6−ジメチル−4−モルホリニル]−3−ピリジニル]−2−メチル−4’−(トリフルオロメトキシ)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミドまたはN−(6−((2S,6R)−2,6−ジメチルモルホリノ)ピリジン−3−イル)−2−メチル−4’−(トリフルオロメトキシ)ビフェニル−3−カルボキサミドによって代替的に同定される。疑問が生じないように明記すれば、上述した化学名はすべて、上記化学構造で表される同じ化合物を指し、互換性を持って使用してもよい。
【0006】
このような組成物は、好ましくは半固体である。このような組成物は、本発明の作用物質を皮膚中へ効率的に送達することを可能にし、これらは皮膚を通しての透過性(permeation)を許容されるレベルで維持することにより全身曝露を制限し、これらは患者による許容性からの利益を得、および/または安定であることが本発明者らによって見出された。
【0007】
本発明の他の態様が本明細書に開示されており、2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドの固体の形態、これらの組成物を製造する方法および使用が含まれる。説明された組成物は、以下に明確にされるような皮膚科学的な疾患の治療に有用であることが証明されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の組成物の適用後の2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドのヒトの皮膚濃度(浸透性)を示すグラフである。
【図2】本発明の組成物の皮膚上への適用から24時間後の、表皮を除いたブタ皮膚中の2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドのレベルを示すグラフである。
【図3】2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミド、形態Aの粉末X線回折パターンを示す図である。
【0009】
好ましい態様の詳細な説明
以下の用語集および末尾の実施例を含めて以下の説明を考慮すると、本発明はより十分に理解することができ、上述されたもの以外の目的が明らかになろう。
【0010】
本明細書で使用される場合、「本発明の作用物質」とは、2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドを意味し、アモルファスおよび結晶の形態を表すものとする。「本発明の作用物質」とは、その溶媒和物またはそのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩およびその混合物も表すものとする。好ましくは、本発明の作用物質は、その遊離の形態、即ち塩としてではなく存在する2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドである。
【0011】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含有する(containing)」および「含む(comprising)」という用語は、本明細書ではその広い、非限定的な意味で使用される。複数の形態(例えば、化合物(複数)、賦形剤(複数))が使用される場合、これは単数形(例えば、単一化合物、単一賦形剤)を含む。「化合物(A compound)」は、(例えば医薬組成物中に)2つ以上の化合物(またはその塩)が存在することを除外しない。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲に提供/開示されている、本発明の様々な実施形態、好ましい形態および範囲は、任意に組み合わせてもよいことがさらに理解される。さらに、特定の実施形態に応じて、選択された定義、実施形態または範囲は適用されなくてもよい。別に規定がされた場合を除き、以下の一般的な定義を本明細書に適用するべきである。
【0013】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物および1種または複数の薬学的に許容される溶媒分子、例えばエタノールを含む分子錯体を表すのに本明細書では使用される。「水和物」という用語は、前記溶媒が水である場合に使用される。
【0014】
本明細書で使用される場合、「本発明の作用物質」という用語には、適した共結晶形成剤と共に形成された2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドの共結晶も含まれる。これらの共結晶は、既知の共結晶形成手順によって調製し得る。このような手順には、粉砕、加熱、共昇華、共溶融、または結晶化条件の下、2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドを共結晶形成剤と溶液中で接触させ、それによって形成された共結晶を単離することが含まれる。適した共結晶形成剤には、WO2004/078163に記載されたものが含まれる。
【0015】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」いう用語は、生理学的条件下でまたはソルボリシスにより、本発明の生物学的に活性な化合物に変換することができる化合物を示す。したがって、この用語は、本発明の作用物質の薬学的に許容される代謝前駆体を指す。プロドラッグは、それを必要とする対象に投与する時は不活性であってもよいが、in vivoで本発明の活性化合物に変換される。プロドラッグは、典型的にはin vivoで例えば、血液中で加水分解により急速に転換されて本発明の親化合物を生じさせる。プロドラッグ化合物は、哺乳動物の生物中での溶解度、組織適合性または遅延放出の利点を提供することが多い。本発明の作用物質のプロドラッグは、本発明の作用物質中に存在する官能基を、日常的な処置またはin vivoにおいて修飾が切断されて本発明の親化合物になるように修飾することによって調製し得る。プロドラッグには、ヒドロキシル基が任意の基に結合されており、本発明の作用物質のプロドラッグが哺乳動物の対象に投与された場合、任意の基が切断されて遊離のヒドロキシ基を形成するような本発明の化合物が含まれる。プロドラッグの例には、限定するものではないが、本発明の作用物質中のアルコール基の酢酸、ギ酸および安息香酸誘導体が含まれる。適したプロドラッグには、本発明の作用物質の薬学的に許容されるエステルが含まれる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容されるエステル」という用語は、in vivoで加水分解するエステルを指し、ヒト身体中で容易に分解して親化合物またはその塩を残すものが含まれる。適したエステル基には、例えば、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸、特に、アルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸(この場合、各アルキルまたはアルケニル部分は、有利には6個以下の炭素原子を有する)、特に、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、アクリル酸塩およびエチルコハク酸塩から誘導されるものが含まれる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の無毒性酸塩を指す。これらの塩は、化合物の最終の単離および精製の間にin situで、または塩基性官能基を適した有機酸または無機酸と単独に反応させることにより調製することができる。代表的な塩には、限定するものではないが、以下のもの:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオネート(3−phenylproionate)、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。
【0017】
また、塩基性窒素含有基は、塩化、臭化、およびヨウ化メチル、エチル、プロピル、およびブチル等のハロゲン化アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミル硫酸塩のようなジアルキル硫酸塩、塩化、臭化、およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリル等の長鎖ハロゲン化物、臭化ベンジルおよびフェネチルのようなハロゲン化アラルキル、ならびにその他のような作用物質で四級化することができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「局所用医薬組成物」という用語は、当分野で知られている(例えば、European Pharmacopeia, 6.3, 01/2009, 0132参照)。このような組成物は、i)本発明の作用物質およびii)基質を含有する(contain)[即ち、を含む(include)、を含む(comprise)またはからなる(consist of)]。基質(matrix)[「基剤(base)」とも称される]は、薬学的に許容される賦形剤を含有し、局所的適用に適応される。さらに、本発明の組成物は、ゲル剤、フォーム剤、チンキ剤、(リップ)スティック、またはスプレー剤として調合してもよい。したがって、本発明の組成物の粘度は、広範囲にわたり変化し得て、典型的には、これらは半固体または液体であり、好ましくは半固体である。本発明の組成物は、本発明の作用物質が基質中に溶解されることを特徴とする溶液タイプである。好ましい態様では、組成物は、患者のより大きな許容性の利益を有するクリーム剤である。
【0019】
一態様によれば、本発明は、2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む局所用医薬組成物を提供する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、
a)本発明の作用物質、
b)1種または複数の溶媒、
c)場合によって油性相、
d)場合によって1種または複数の酸化防止剤、
e)場合によって1種または複数のコンシステンシー改良剤、
f)場合によって1種または複数の界面活性剤、
g)場合によって1種または複数の保存剤、および
h)場合によって1種または複数のゲル化剤
を含む局所用医薬組成物を提供する。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、
a)本発明の作用物質、
b)1種または複数の溶媒、
c)油性相、
d)場合によって1種または複数の酸化防止剤、
e)場合によって1種または複数のコンシステンシー改良剤、
f)場合によって1種または複数の界面活性剤、
g)場合によって1種または複数の保存剤、および
h)場合によって1種または複数のゲル化剤
を含む局所用医薬組成物を提供する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、
a)本発明の作用物質、
b)ジメチルイソソルビド(DMI)、プロピレングリコールおよび場合によって1種または複数のさらなる溶媒、
c)場合によって油性相、
d)場合によって1種または複数の酸化防止剤、
e)場合によって1種または複数のコンシステンシー改良剤、
f)場合によって1種または複数の界面活性剤、
g)場合によって1種または複数の保存剤、および
h)場合によって1種または複数のゲル化剤
を含む局所用医薬組成物を提供する。
【0023】
他の実施形態では、本発明は、1種または複数の追加の賦形剤を含有する、本発明のこの態様による組成物に関する。適した賦形剤は、酸化防止剤、ゲル化剤、ph調整剤/緩衝剤、コンシステンシー調整剤、保存剤、(共)溶媒、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動調整剤、潤滑剤、芳香剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤および浸透圧調節用の塩からなる群から選択してもよい。このような賦形剤は、当分野で既知であり、市販されており、R.C. RoweらによるHandbook of Pharmaceutical Excipients等の標準的な教科書中で確認することができる。このような組成物は、製造者または患者のニーズに特に適合させるのに有利であり、それによって製品の(有効期間または患者コンプライアンスのような)特性を改良する。適した賦形剤を以下に説明する。
【0024】
溶媒は本発明の作用物質を溶解する賦形剤である。1種または複数の溶媒を使用してもよいことが理解される。
【0025】
本発明の組成物中の好ましい溶媒は、ジメチルイソソルビド(DMI)である。一実施形態では、溶媒ジメチルイソソルビド(DMI)は、組成物中に5.0〜15.0重量%、好ましくは7.0〜13.0重量%の範囲で存在する。特定の実施形態では、DMIは10.0重量%で存在する。
【0026】
別の実施形態では、組成物は溶媒ベンジルアルコールをさらに含む。ベンジルアルコールは、好ましくは最大10重量%までの量で、より好ましくは最大5重量%までの量で存在する。好ましい実施形態では、ベンジルアルコールは、0.5〜5重量%の範囲で、例えば約3重量%の量で存在する。
【0027】
別の実施形態では、組成物は溶媒アジピン酸ジイソプロピル(DIPA)をさらに含む。一実施形態では、DIPAは、組成物中に10.0〜20.0重量%の範囲で存在する。好ましくは、DMIおよびDIPAの総量は、最大30.0重量%以下である。より好ましくは、DIPAは、12.0〜18.0重量%で存在し、最も好ましくは、DIPAは、15.0重量%で存在する。
【0028】
本発明の別の実施形態では、組成物は溶媒プロピレングリコールを含む。一実施形態では、プロピレングリコールは、組成物中に0.5〜20重量%の範囲で、特に1.0〜3.0重量%の範囲で、さらに特定すると2.0%で存在する。代替の実施形態では、プロピレングリコールは、7.0〜13.0重量%の範囲で、特に10.0重量%で存在する。
【0029】
本発明の別の実施形態では、組成物はプロピレングリコールおよびDIPAから選択される少なくとも1種の溶媒を含む。
【0030】
本発明の別の実施形態では、組成物は、プロピレングリコール、DIPAまたはプロピレングリコールとDIPAとの混合物を組成物の重量に対して10〜35重量%の範囲で、好ましくは15〜30%の範囲で、より好ましくは17〜25重量%の範囲で含む。
【0031】
本発明によると、好ましくは、組成物は、溶媒ジメチルイソソルビド(DMI)ならびに以下:プロピレングリコールおよびDIPAから選択される追加の溶媒を含む。好ましい組成物は、DMIとプロピレングリコールとの混合物;DMIとDIPAとの混合物;またはDMI、プロピレングリコールおよびDIPAの混合物を含有してもよい[いずれの場合も、場合によって追加の溶媒(単数または複数)と一緒に]。
【0032】
本発明の別の実施形態では、好ましくは中鎖トリグリセリド(MCT)を含む油性相が存在する。油性相は、非水溶性である任意の相であり、中鎖トリグリセリド、パラフィン、ワセリン、ポリアルキルシロキサン(polyalkysiloxane)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソアジペートおよび植物油/オレア・ヘルバリア(olea herbaria)(即ち、ヒマシ油、オリーブ油)等の賦形剤を含んでもよい。一実施形態では、MCT等の油性相は、2.0重量%から20重量%の範囲で存在する。別の実施形態では、油性相は3.0重量%から18重量%で存在する。本発明の特定の一態様では、油性相は、5.0重量%で存在し、別法では15.0重量%で存在する。
【0033】
1種または複数の酸化防止剤を使用してもよいことが理解される。一実施形態では、酸化防止剤が組成物中に存在し、フェノール誘導体(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA));アスコルビン酸誘導体(例えば、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート(ascorbyl palmiate))、トコフェロール誘導体(例えば、ビタミンE、ビタミンE TPGS)、重亜硫酸塩誘導体(重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム)およびチオ尿素からなる群から選択される。特定の実施形態では、組成物はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)の両方を含む。適した組成物は、最大2重量%までの、好ましくは0.05〜0.5重量%の酸化防止剤を含有してもよい。特定の実施形態では、組成物は、0.05〜0.15重量%のBHTおよび0.05〜0.15重量%のBHAを含む。好ましくは、組成物は0.10重量%のBHTおよび0.10重量%のBHAを含む。
【0034】
コンシステンシー調整剤(コンシステンシー改良剤とも命名される)は、当分野で知られており、本発明の別の実施形態では、組成物はこのような作用物質を含む。このような作用物質の1種または複数、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびそれらの混合物を使用してもよいことが理解される。適した組成物は、最大15重量%まで、例えば、総量で5.0〜10.0重量%のコンシステンシー改良剤(単数または複数)を含有してもよい。一実施形態では、組成物はコンシステンシー改良剤であるステアリルアルコールおよびセチルアルコールを含む。別の実施形態では、コンシステンシー改良剤であるステアリルアルコールおよびセチルアルコールは等量で存在する。好ましい一実施形態では、組成物は、2.0〜6.0重量%の範囲のステアリルアルコール、および2.0〜6.0重量%の範囲のセチルアルコールを含む。特定の実施形態では、ステアリルアルコールは4重量%で存在し、セチルアルコールは4重量%で存在する。
【0035】
界面活性剤は界面活性の作用物質である。1種または複数の界面活性剤を使用してもよいことが理解される。本発明の実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤が組成物中に存在する。一実施形態では、界面活性剤(単数または複数)は0.5〜6.0重量%の範囲で存在する。特定の実施形態では、界面活性剤であるモノステアリン酸グリセリルおよび硫酸セチルステアリルナトリウム(Lanette E(登録商標))が組成物中に存在する。一実施形態では、モノステアリン酸グリセリルは、1.0重量%から3.0重量%で存在し、硫酸セチルステアリルナトリウム(Lanette E(登録商標))は、0.1〜2.0重量%で存在する。本発明の特定の実施形態では、モノステアリン酸グリセリルは2.0重量%で存在し、硫酸セチルステアリルナトリウム(Lanette E(登録商標))は1.0重量%で存在する。
【0036】
1種または複数の保存剤を使用してもよいことが理解される。保存剤は、有効期間を延長するために本発明の医薬組成物中に含まれる。一実施形態では、少なくとも1種の保存剤が組成物中に存在し、酸(例えばソルビン酸、安息香酸);アルコール(例えばベンジルアルコール)、第四級アミン、フェノール、およびパラヒドロキシ安息香酸塩の群から選択される。好ましい実施形態では、保存剤はベンジルアルコールである。ベンジルアルコールはまた、本発明の組成物中の(共)溶媒としての役割を果たすこともできる。一実施形態では、保存剤は0.5〜5.0重量%の範囲で存在する。好ましくは、ベンジルアルコールは3.0重量%で存在する。
【0037】
ゲル化剤は、粘度を調整するために本発明の組成物中に場合によって含まれてもよい。1種または複数のゲル化剤を使用してもよいことが理解される。例えば、ゲル化剤は、カルボマー、アクリル酸誘導体またはヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体であってもよい。適した組成物は、最大5重量%までのゲル化剤を含有してもよい。一実施形態では、組成物は、0.02〜2.0重量%のゲル化剤を含有する。好ましい実施形態では、組成物は、0.5重量%または0.2重量%のゲル化剤を含有する。好ましくは、ゲル化剤はカルボマー974Pである。
【0038】
pHを調整するためのまたはpH緩衝剤を提供するための作用物質は、当分野で知られている。このような作用物質の1種または複数、例えば水酸化ナトリウムを使用してもよいことが理解される。適した組成物は、本発明の組成物のpHを4〜8、好ましくは5〜7の範囲、例えば6.5に調整するためにこのような酸/塩基を含有してもよい。
【0039】
本発明の組成物中の本発明の作用物質の量は、広範囲にわたって変化してもよく、典型的には有効量が提供される。有効量とは、哺乳動物、特にヒトに投与された場合、以下に定義する治療をもたらすのに十分な本発明の作用物質の量を指す。本発明の作用物質の適切な量は、日常的な実験において当業者により決定することができ、典型的には、これらは、総組成物の0.2〜5重量%の間、好ましくは0.5〜2.0重量%の間の範囲、例えば、0.25、0.5、0.75または1.0重量%である。
【0040】
別の態様では、本発明は、
1.親油性相を得るために、本明細書に記載の親油性賦形剤を組み合わせ、この相を本発明の作用物質と組み合わせ、混合物を融解させるステップ、
2.親水性賦形剤を組み合わせ、加熱するステップ、
3.親水性相および親油性相を組み合わせ、次いでpHを調整するステップを
含む本明細書に記載の組成物を製造する方法に関する。
【0041】
本発明による組成物は、それ自体知られているが、まだ本組成物には適用されていない方法、したがって新しい方法によって調製してもよい。一般に、医薬組成物の製造は、本発明の作用物質を基質と、例えば、混合、溶解および/または凍結乾燥することにより組み合わせるステップを含む。このようなステップはまた、使用する材料を加熱または冷却することを含んでもよい。本発明の作用物質は、既知の方法に従ってまたは本明細書に記載の方法に従って入手可能である。基質の個々の成分は、それ自体知られているか、または既知の方法に従って入手可能である。
【0042】
一実施形態では、本発明は、
すべての液体の非水性賦形剤および本発明の作用物質を組み合わせ、場合によって、溶液を得るために混合物を30〜95℃に加熱するステップ、
融解物を得るために、固体賦形剤を30〜95℃の間の温度で融解させるステップ、
好ましくは30〜95℃の間の温度で、この溶液と融解物とを組み合わせるステップ、
組み合わせた混合物に場合によって水または水性相を加えるステップ、
得られた組成物を場合によって冷却するステップを
含む本明細書に記載の組成物を製造する方法に関する。
【0043】
別の態様では、本発明は、医薬品、特に皮膚科学的な疾患に使用するための医薬品としてのこのような組成物の使用に関する。
【0044】
2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドを含む組成物は、ヘッジホッグシグナル伝達経路の活性の調節に関連する疾患の、予防および進行の遅延を含む治療に適している。特に、本明細書の組成物は、皮膚科学的な疾患の治療に有用である。本明細書で使用される場合、「皮膚科学的な疾患」という用語には、哺乳動物(特にヒト)におけるあらゆるタイプの皮膚科学的な疾患、障害または状態が含まれる。本発明の特定の一実施形態では、本明細書に開示された組成物は、基底細胞母斑症候群(ゴーリン症候群および/または母斑性基底細胞癌とも呼ばれる)、皮膚癌、基底細胞癌(BCC)、特に、表在型基底細胞癌(sBCC)および結節性基底細胞癌等の癌をもたらすまれな常染色体優性遺伝性症候群、脂腺過形成および乾癬等の過剰増殖性の皮膚状態を含む疾患または状態を治療するのに有用である。
【0045】
したがって、本発明の一実施形態では、本発明は、医薬に使用するための本明細書に記載の組成物を提供する。別の実施形態では、本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達経路によって介在される皮膚科学的な疾患、障害または状態の治療に使用するための組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、過剰増殖性の皮膚状態、またはゴーリン症候群、基底細胞癌、脂腺過形成および乾癬から選択される皮膚科学的な疾患、障害または状態を治療するのに使用するための組成物を提供する。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達経路よって介在される皮膚科学的な疾患、障害または状態の治療用の薬物を製造するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。他の実施形態では、本発明は、過剰増殖性の皮膚状態、またはゴーリン症候群、基底細胞癌、脂腺過形成および乾癬から選択される皮膚科学的な疾患、障害または状態の治療用の薬物を製造するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達経路によって介在される皮膚科学的な疾患、障害または状態(特に、過剰増殖性の皮膚状態、またはゴーリン症候群、基底細胞癌、脂腺過形成および乾癬からなる群から選択される)の治療の方法に関し、この治療は、このような治療を必要とする対象(特にヒト)に本明細書に記載の組成物の有効量を投与することを含む。
【0048】
他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の組成物が、別の薬学的に許容される組成物と組み合わせて、同時にまたは順に投与される本明細書に記載の方法に関する。
【0049】
本発明の組成物を用いた治療のための、適当な投与量は、例えば、使用される組成物のタイプ、個々のホストならびに治療する状態の性質および重症度に応じて当然異なってくる。しかし、一般に、大型の哺乳動物、例えばヒトにおける満足な結果のためには、指示される1日投与量は、本発明の化合物の約0.01gから約1.0gの範囲であり、例えば、1日に最大4回までの分割用量で投与するのが好都合である。
【0050】
別の態様では、本発明は、本発明の作用物質の特定の形態に関する。
【0051】
一実施形態では、本発明は、結晶形態の2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミドに関する。
【0052】
詳細には、本発明は、本発明の作用物質の他の多形形態を実質的に含まない、本明細書で定義される多形形態Aに関する。他の実施形態では、本発明は、以下の粉末X線回折ピーク:2シータ値、12.9、16.5、17.0、18.6、19.9、21.2、22.4、24.3、25.8および26.1を含む、2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−ビフェニル−3−カルボン酸[6−(cis−2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−アミド形態Aに関する。形態Aは、本明細書に記載の合成方法に従って製造される。
【0053】
本発明はさらに、本発明の作用物質の他の多形形態を実質的に含まないか、または本発明の作用物質の他の多形形態との混合物の状態の、本明細書で定義される多形形態Bに関する。形態Bは、本明細書に記載の合成方法に従って製造される。
【0054】
本発明はさらに、本明細書に記載の本発明の作用物質のアモルファス形態に関する。
【0055】
図3は、多形Aの粉末X線回折パターンを示す。相対強度は、粒径、形状および試料調製方法を含むいくつかの要因に左右されるので、変動の影響を受ける。このデータは、計測器Scintag INC、放射CuKα(45kV、40mA)、連続走査、走査速度0.5°/min(2シータ値)、走査範囲1.5°から40°(2シータ値)を用いて得られた。
【0056】
他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法によって得ることが可能な、またはこれによって得られる本発明の作用物質に関する。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は、その範囲を限定することなく本発明を例示するのに役立つ。本発明は、本明細書で説明された実施形態に限定されることなく、本開示の範囲に入るそのすべての形態を包含することが理解される。
【0058】
A.N−(6−((2S,6R)−2,6−ジメチルモルホリノ)ピリジン−3−イル)−2−メチル−4’−(トリフルオロメトキシ)ビフェニル−3−カルボキサミドの合成
【0059】
【化2】

【0060】
ステップ1:2−クロロ−5−ニトロ−ピリジン1(5.58g、35.2mmoL)およびcis−2,6−ジメチルモルホリン(4.05g、35.2mmoL)の無水DMF(30mL)溶液に、KCO(9.71g、70.4mmoL)を添加した。混合物を50℃で一晩加熱した。濃縮後、この残渣をEtOAcと水との間に分配させる。EtOAc層を無水NaSOで乾燥させ、濃縮して、粗生成物3を黄色固体として得て、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製後、純粋な生成物(7.80g、93.2%)が得られる。LC−MS m/z:238.2(M+1)。
【0061】
ステップ2:上記物質3(7.30g、30.8mmoL)をMeOH(120mL)中の10%Pd−C(1.0g)の存在下、水素下で一晩水素化した。懸濁液をセライトを通してろ過し、ろ液を濃縮して粗生成物4(5.92g)を暗茶色の油として得て、この油をさらに精製をせずに直接次のステップに使用した。LC−MS m/z:208.2(M+1)。
【0062】
ステップ3:3−ブロモ−2−メチル安息香酸(2.71g、12.6mmoL)、6−((2S,6R)−2,6−ジメチルモルホリノ)ピリジン−3−アミン4(2.61g、12.6mmoL)、およびHATU(4.80g、12.6mmoL)の無水DMF(30mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(6.58mL、37.8mmoL)を滴下で添加した。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を水(50mL)で希釈し、次いでEtOAc(3×120mL)で抽出した。有機層を乾燥させ、濃縮して、粗生成物を得た。次いで、粗生成物を溶離液としてヘキサン中の30%EtOAcを用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、5を白色固体(4.23g、83.0%)として得た。LC−MS m/z:404.1(M+1)。
【0063】
ステップ4:密閉チューブ中の4−(トリフルオロメトキシ)フェニルボロン酸(254mg、1.24mmol)、3−ブロモ−N−[6−(2,6−ジメチル−モルホリン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−4−メチル−ベンズアミド5(250mg、0.62mmol)、Pd(PPh(36mg、0.03mmol)、NaCO(2.0M水溶液、1.23mL、2.4mmol)およびDME(4.5mL)の混合物を130℃で一晩加熱した。反応混合物をEtOAcおよび水で希釈した。水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、濃縮して粗生成物を得て、この粗生成物を次いで分取マストリガーHPLC(C18カラム、0.05%TFAを含有するCHCN−HOで溶離させた)によって精製して、N−(6−((2S,6R)−2,6−ジメチルモルホリノ)ピリジン−3−イル)−2−メチル−4’−(トリフルオロメトキシ)ビフェニル−3−カルボキサミド(183.5mg、収率61.1%)を得た。LC−MS m/z:486.2(M+1)。
【0064】
得たれた結晶性生成物(形態A)を3%w/wエタノール水溶液中に溶解することによりアモルファス形態に変換し、得たれた溶液を約150℃でスプレー乾燥させた。
【0065】
形態Bは、アモルファス形態を110℃のオーブン中で2時間加熱することによって調製した。
【0066】
他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の、方法のステップ(単数または複数)あるいは中間体に関する。
【0067】
【表1】

【0068】
比較製剤
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
In vitroヒト皮膚浸透性/透過性アッセイ
約300mgまたは300μLの製剤を各皮膚パンチ(500μmの厚さに皮膚切除したヒト腹部の屍体の皮膚を解凍した試料)上に適用した。皮膚の一貫性をトリチウム水の透過性を評価することにより決定した。同様のO透過性を有する皮膚試料上で製剤を試験した。ヒト生理学的条件および薬物の皮膚からの全身除去をシミュレートするために、受容チャンバーを、レシーバー溶液(Gibco BRL、CH)としてリン酸緩衝生理食塩水とウシ胎児血清(2+1、体積/体積;pH=7.4)の混合物で満たした。レシーバー溶液は、微生物学的汚染を防止するために、100U/mLの1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物を含有した。セルの温度を34±1℃に保持した。
【0073】
200μLのレシーバー溶液をサンプリングし、アッセイ期間中に総緩衝液の体積を一定に保持するために、その都度同量のブランク溶液で置換した。調査した時点は、適用から4、7、20、24、28、32、44および48時間後であった。
【0074】
実験の終点で、各皮膚試料の表面上に残存する製剤を除去した。20回剥がすことによって表皮/真皮から角質層を分離し、剥離した皮膚の処理された領域の生検材料を採取した。受容液および剥離した皮膚中の薬物含量をLC/MS/MSにより評価した。
【0075】
濃度対時間プロットの直線部分の勾配から線形回帰分析によりフラックスを計算した。さらに、透過した累積の薬物量を評価した。
【0076】
図1は皮膚濃度(浸透性)を示し、ここで、製剤Aは、エタノール/PEG(ポリエチレングリコール)30/70中の1.0%活性化合物の参照製剤である。製剤B、DおよびEは、類似の良好な皮膚浸透性レベルを示す。予想外に、製剤Cを適用後、さらに高い皮膚浸透性レベルが得られる。
【0077】
以下の製剤XD、XFおよびXHも、製剤Bと対照してin vitroヒト皮膚浸透性アッセイで試験した。この結果は、すべての試験した製剤は許容される皮膚浸透性レベルをもたらすが、製剤Bは予想外に良好な皮膚浸透性レベルをもたらすことを示す。
【0078】
【表5】

【0079】
In vivo試験
1.家畜ブタの皮膚中への浸透性試験(「4cmアッセイ」)
方法:「4cmアッセイ」は、皮膚上に適用された化合物の幼若の家畜ブタの真皮中への時間依存的な浸透性を測定するのに使用される。動物(重量12〜18kg)を処置するために人道的な拘束手段のスリング中に留置する。上記で調製された医薬組成物(溶液タイプ)を、安楽死および処理された皮膚試料の解体の8、6、4、2、1および0.5時間前に1回、側背面上の異なる小領域(4cm)に適用した。次に、処理された皮膚組織片上に加熱した金属ブロックを1分間置き、緩んだ表皮をピンセットではがした。表皮を除いた皮膚組織片から厚さ1mmの真皮のシートをデルマトームを用いて調製し、それから6mmパンチ径の生検材料を採取し、LC/MSにより時間依存性の試験化合物濃度を分析した。真皮試料と表面に付着した試験化合物との汚染を慎重に回避しながら、記載された手順を実施した。
【0080】
結果:以下の表は、同定された組成物を皮膚上に適用した場合、ブタ真皮中の本発明の作用物質の曲線下面積(AUC)値を提供する。
【0081】
【表6】

【0082】
「4cmアッセイ」の結果は、in vivo条件下での組成物B、CおよびDの適用の後、本発明の作用物質の皮膚中への良好な浸透性を確証する。
【0083】
図2は、様々な製剤の皮膚上への適用から24時間後の表皮を除いたブタ皮膚中の活性化合物のレベルを示す。製剤Bの適用後、比較製剤に比較して、活性化合物の真皮濃度において予想外の改良が観察される。このレベルは用量に比例して高い。
【0084】
【表7】

【0085】
2.家畜ブタの皮膚を通した浸透性の試験(10%BSA−アッセイ)
方法:「10%BSA−アッセイ」の主目的は、幼若の(体重12〜18kg)ブタにおける10%の身体表面積(BSA)に適用された後の、調合した化合物の経皮吸収(皮膚を通した浸透性)を評価することである。さらに、終了時(適用から24時間後)に、処置された皮膚の真皮レベルを決定する。容量5mlの製剤を背部の面積400cm(10kgの動物のBSA10%に相当する)に適用する。適用から0.5、1、2、4、8、および24時間後に、血液試料を頸静脈から採取する。処理された皮膚からの真皮試料は、記載された通りに調製する。
【0086】
結果:製剤XF(0.45%)、XH(0.5%)、XD(0.5%)およびB(0.75%)の適用後、大部分の血漿試料中の活性化合物のレベルは、LLOQ(0.1ng/ml)未満であった。最低レベルを有する最も少ない陽性試料は、XHおよびBで処理された動物で検出された。最も高く最も多いレベルは、XDで処理された動物で検出された。そのレベルは、適用から0.5および1時間後で、それぞれ0.29(SEM:0.11)および0.08(SEM:0.04)ng/mlであった。その後の時点ではレベルは、LLOQ未満であった。
【0087】
3.BCC(基底細胞癌)の治療有効性に関する試験
方法:27BCCを示す総計8人のゴーリン症候群患者を、製剤Bまたはビヒクルで4週間1日2回治療した。ビヒクルは、活性化合物を同等の百分率の水で置換した以外は製剤Bと同等の製剤である。
【0088】
結果:製剤Bは、満足な許容性を示し、皮膚刺激性の可能性を示さなかった。4週間の治療後の活性化合物の血漿濃度は、4/8の患者では検出レベル(0.05ng/mL)未満であった(検出された最も高い血漿レベルは0.11ng/mLであった)。活性化合物の平均皮膚濃度は、737ng/g(BCC)および605ng/g(関与しない皮膚)であった。製剤Bで治療されたBCC(n=13)は、BCC3例において完全な臨床的応答、9例において部分的な応答、1例において応答なしを示した。ビヒクルは、1例の部分的な応答を除いて、治療した14例のBCCのいずれにも臨床的応答をもたらさなかった。
【0089】
製剤Bで治療されたBCCにおいて、平均の体積減少が49.8%(ビヒクル治療の9.1%に対して)で観察された。平均の表面積減少は、それぞれ40.8%および10.5%(3Dデジタル写真)であった。組織学的には、残存する腫瘍細胞巣は、ビヒクルに対して製剤Bで治療された病変部における平均60%のKi−67増殖性細胞の減少を示した。バイオマーカー分析は、1人の患者以外は、Gli 1、Gli 2、Ptch 1およびPtch 2 mRNAレベルの減少が臨床的結果に相関していることを示した。
【0090】
結論:これらの結果は、本発明の製剤は、ゴーリン症候群患者におけるBCCの治療に有効であることを実証する。BCCの治療のための現在利用可能な他の局所薬の使用は、皮膚刺激性により制限されているので、NBCCS患者における本発明の製剤による治療は、有意で予想外の利点を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)rel−N−[6−[(2R,6S)−2,6−ジメチル−4−モルホリニル]−3−ピリジニル]−2−メチル−4’−(トリフルオロメトキシ)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド、
b)1種または複数の溶媒、
c)場合によって油性相、
d)場合によって1種または複数の酸化防止剤、
e)場合によって1種または複数のコンシステンシー改良剤、
f)場合によって1種または複数の界面活性剤、
g)場合によって1種または複数の保存剤、および
h)場合によって1種または複数のゲル化剤
を含む局所用医薬組成物。
【請求項2】
1種または複数の溶媒がジメチルイソソルビド(DMI)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1種または複数の溶媒が、プロピレングリコールおよびDIPAから選択される少なくとも1種の溶媒を含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
a)rel−N−[6−[(2R,6S)−2,6−ジメチル−4−モルホリニル]−3−ピリジニル]−2−メチル−4’−(トリフルオロメトキシ)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド、
b)ジメチルイソソルビド(DMI)、プロピレングリコールおよび場合によって1種または複数のさらなる溶媒、
c)場合によって油性相、
d)場合によって1種または複数の酸化防止剤、
e)場合によって1種または複数のコンシステンシー改良剤、
f)場合によって1種または複数の界面活性剤、
g)場合によって1種または複数の保存剤、および
h)場合によって1種または複数のゲル化剤
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ジメチルイソソルビド(DMI)を5.0〜15.0重量%の範囲で含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アジピン酸ジイソプロピル(DIPA)を10.0〜20.0重量%の範囲でさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
プロピレングリコールを0.5〜20重量%の範囲で含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ベンジルアルコールを最大10重量%までの量で含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
中鎖トリグリセリドである油性相を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
医薬に使用するための、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ヘッジホッグシグナル伝達経路によって介在される皮膚科学的な疾患、障害または状態の治療に使用するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
過剰増殖性の皮膚状態、ゴーリン症候群、基底細胞癌、脂腺過形成または乾癬の治療に使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
過剰増殖性の皮膚状態、ゴーリン症候群、基底細胞癌、脂腺過形成または乾癬の治療の方法であって、治療が、このような治療を必要とする対象、特にヒトに本明細書に記載の組成物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項14】
別の薬学的に活性な作用物質をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−533598(P2012−533598A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521016(P2012−521016)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060470
【国際公開番号】WO2011/009852
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】