説明

医薬製剤及びその調製方法

具体的な実施形態では、本発明は、前凍結乾燥製剤、凍結乾燥組成物、再構成された製剤、それらを含有するキット、並びにそれらを調製、保存及び使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤及びその調製方法の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
大多数のペプチド及びタンパク質は、水溶液中において長期間保存されたとき、活性を失う。冷蔵条件に置かれたときであっても、タンパク質及びペプチドの長期安定性は課題となりうる。ペプチド又はタンパク質を含有する医薬組成物を安定化させるため、凍結乾燥(製剤から95%以上の水分を除去する凍結乾燥方法)が使用されている。
【0003】
凍結乾燥は一般に、製剤を固体状にする凍結工程と、氷を真空下又は減圧により昇華させて除去する第1の乾燥工程と、残存する水を除去する第2の乾燥工程とを有してなる。上記プロセスにおける望ましい生成物は、長期間保存でき、また再構成により生物学的活性ペプチド又はタンパク質を容易に調製できる固体組成物である。
【0004】
凍結工程の間、氷が核形成し、製剤溶液内で成長する。凍結により、タンパク質/ペプチドに損傷が生じ、かつ/または、タンパク質/ペプチド及び緩衝塩の濃度増加による凝集が生じうる。更に、緩衝塩の濃縮により、それら自身の沈殿が生じる。Eckhardt BM,ら、Pharm.Res.1991、8:1360−1364、並びにVan den Berg L及びRose,D Arch.Biochem.Biophys.1959、81:319−329を参照のこと。凍結工程の間に生じる事象は、上記第1及び第2の乾燥工程に影響を与える。例えば、氷晶形態は、第1の乾燥工程中に氷が昇華して形成された固体又は「ケーキ」の多孔性、並びに第2の乾燥工程後のケーキの最終的なコンシステンシー(均一性)に影響を及ぼしうる。
【0005】
凍結保護剤及び溶解保護剤(lyoprotectant)は通常、凍結乾燥の前に製剤中に添加される。凍結保護剤は、凍結工程の間、タンパク質を安定化させるために添加され、また第1及び第2の乾燥工程の間、並びに長期保存の間において保護する機能を果たす。凍結保護剤の例としては、デキストラン、ポリエチレングリコール、糖類(例えばスクロース、グルコース、トレハロース及びラクトースなど)、界面活性成分(例えばポリソルベート)、並びに遊離アミノ酸(例えばグリシン、アルギニン及びセリン)が挙げられる。溶解保護剤は、第1及び第2の乾燥工程の間、安定化させるために添加される。溶解保護剤の例としては、ポリオール及び糖類(例えばスクロース及びトレハロース)が挙げられる。Carpenter JF,ら、Arch.Biochem.Biophys.1986、250:505−512、Carpenter JF及びCrowe JH Cryobiology 1988、25:459−470、Carpenter JF及びCrowe JH Cryobiology 1988、25:244−255、Carpenter J F及びCrowe JH Biochem 1989、28:3916−3922、Carpenter JFら、J.Diary Sci.1990、73:3627−3636、Carpenter JF,ら、Achives of Biochemistry and Biophysics.1993、303:456−464、並びに、Prestrelski SJ,ら、Achives of Biochemistry and Biophysics.1993、303,465−473を参照のこと。
【0006】
特定の医薬組成物の場合、高い固体濃度が必要とされることもある。米国特許出願公開第2004/0180059号では、凍結乾燥生成物は通常5〜10%の固体含量であることを報告しているが、この限度を12%の固体含量にまで増加させたことを開示している。より高い固体濃度(10〜25%)に適合させるためには、より長い乾燥時間、凍結工程プロトコルの複雑化、及び/又は凍結乾燥溶液の表面積を増加させる必要性、並びにブドウ糖、マンニトール及びデキストランなどの物質の添加などが必要となりうる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Chapter 84,p1483−1484,18th Edition,A.R.Gennaro,Editor,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.1990を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特定の実施形態では、本発明は、前凍結乾燥製剤、凍結乾燥製剤、及びそれを調製、保存、使用する方法の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本発明は、ペプチドと、環状オリゴ糖(例えばシクロデキストリン)とを含んでなる、前凍結乾燥溶液の提供に関し、上記の溶液は、少なくとも20重量%の固体成分含量であり、かつ、上記の環状オリゴ糖は、上記の固体成分含量に対して少なくとも80%である。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、ペプチドと、リン脂質と、親水性部分と親油性若しくは疎水性部分(例えば環状オリゴ糖(例えばシクロデキストリン))とを含んでなる分子と、を含んでなる前凍結乾燥溶液の提供に関する。1つの態様では、上記溶液は、少なくとも20重量%の固体成分を含む。上記リン脂質は、固体成分の少なくとも2%(例えば重量0.4%)であり、親水性部分及び親油性若しくは疎水性部分を含んでなる上記分子は、リン脂質を可溶化させる量で存在する。
【0010】
具体的な態様では、上記ペプチドは生理活性ペプチドである。例えば、上記ペプチドは血糖調節ペプチド又は体重制御及び/又は食事制御ペプチドであってもよい。1つの態様では、上記ペプチドは、インクレチン、アミリン、アミリン類縁体、カルシトニン、カルシトニン類縁体、レプチン、レプチン類縁体、PYY、PYY類縁体、グレリン及びグレリン類縁体からなる群から選択され、並びにそれらの組み合わせ、キメラ又はハイブリッドである。適切なインクレチンとしては、例えばエキセンディン(エキセンディン−3又はエキセンディン−4)、エキセンディン類縁体、GLP−1、GLP−1類縁体、GIP若しくはGIP類縁体、又はインクレチン若しくは非インクレチンの生物学的活性を提供するアミノ酸配列を含むそのキメラ若しくはハイブリッドなどが挙げられる。所望の治療的若しくは生物学的効果に応じて、上記類縁体には、対象となるペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストが包含されうる。
【0011】
具体的な態様では、上記ペプチドは、別の生理活性ペプチドに融合又はコンジュゲートし、及び/又は1つ以上の生物活性ペプチドに由来する領域を含む。例えば、上記ペプチドは、カルシトニンペプチド(又はカルシトニン類縁体)に融合又はコンジュゲートしたアミリンペプチド(又はアミリン類縁体)であってもよい。
【0012】
1つの態様では、上記溶液は塩化ベンザルコニウムでない防腐剤を含んでなり、上記ペプチドはエキセンディン又はエキセンディン類縁体である。例えば、上記溶液は1つ以上のパラベンを含んでなってもよい。
【0013】
別の態様では、上記溶液はポリアミノ酸を含んでなる。
【0014】
更なる態様では、上記溶液は、凍結保護剤又は溶解保護剤を含まない。
【0015】
更に他の実施形態では、本発明は前凍結乾燥溶液を含有する容器の提供に関する。上記溶液はペプチドを含んでなり、上記溶液は少なくとも20重量%の固体成分含量であり、容器内径に対する充填高さの比率は0.50超(例えば0.75以上)である。
【0016】
具体的な態様では、上記容器は、被験者にペプチドを送達するための送達システム用に適合される。例えば、1つの態様では、凍結乾燥の後、再構成された溶液を鼻腔内投与可能とするために、上記容器をスプレーキャップで封止することができる。
【0017】
更なる実施形態では、本発明は、ペプチド製剤の調製方法の提供に関し、当該方法は、ペプチドを含有する前凍結乾燥溶液を準備するステップであって、前凍結乾燥溶液が少なくとも20重量%の固体成分含量であるステップと、ペプチドを含有する上記前凍結乾燥溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥されたペプチド組成物を得るステップと、上記凍結乾燥されたペプチド組成物に、最終的な量の水溶液を添加するステップと、を有してなり、前凍結乾燥溶液の充填体積が、最終体積の40%である。
【0018】
1つの態様では、凍結乾燥プロセスは、凍結工程、第1の乾燥工程及び第2の乾燥工程とを有してなる。具体的な態様では、凍結乾燥工程は、アニーリングのステップを含まない。
【0019】
1つの態様では、第1の乾燥サイクルは、上記溶液中の、固体成分中に最も多く含まれる成分のガラス転移温度以下の温度で実施される。例えば、第1の乾燥サイクルは、環状オリゴ糖のガラス転移温度以下の温度で実施することができる。
【0020】
具体的な態様では、第2の乾燥サイクルは、25℃超で実施される。
【0021】
他の実施態様として、上記ペプチドは生理活性ペプチドであり、上記凍結乾燥されたペプチド組成物は4℃超(例えば20℃超、例えば25℃超)の温度で保存され、1ヵ月より長い期間(例えば6ヵ月以上、具体的な態様では少なくとも1年、少なくとも2年、あるいは少なくとも5年)生物学的活性が維持される。
【0022】
1つの態様では、凍結乾燥は48時間未満で実施される。
【0023】
他の実施形態では、本発明は、凍結乾燥されたペプチド組成物の調製方法の提供に関し、当該方法は、ペプチドを含有する前凍結乾燥溶液を含有する容器を準備するステップであって、前凍結乾燥溶液が少なくとも20重量%の固体成分含量であるステップと、上記ペプチドを含有する上記前凍結乾燥溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥されたペプチド組成物を得るステップと、を有してなり、容器内径に対する前凍結乾燥溶液の充填高さの比率が、0.5超(例えば0.75以上)である。
【0024】
更に他の実施形態では、本発明は、凍結乾燥されたペプチド組成物の調製方法の提供に関し、当該方法は、ペプチドを含有する前凍結乾燥溶液を準備するステップであって、上記前凍結乾燥溶液が少なくとも20重量%の固体成分を含んでなり、更に、上記固体成分の少なくとも80%を占める環状オリゴ糖を含んでなるステップと、上記前凍結乾燥溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥されたペプチド組成物を得るステップと、を有してなる。
【0025】
更なる実施形態では、本発明は、凍結乾燥されたペプチド組成物の調製方法の提供に関し、当該方法は、ペプチドを含有する前凍結乾燥溶液を提供するステップであって、上記前凍結乾燥溶液が少なくとも20重量%の固体成分を含んでなるステップと、上記前凍結乾燥溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥されたペプチド組成物を得るステップであって、凍結乾燥が48時間未満で実施されるステップと、を有してなる。
【0026】
特定の実施形態では、本発明はまた、生理活性ペプチドを保存する方法の提供に関する。1つの態様では、上記方法は、本願明細書に記載のいずれかの方法に従って凍結乾燥されたペプチド組成物を調製するステップと、当該凍結乾燥されたペプチド組成物を少なくとも48時間(例えば少なくとも1ヵ月、少なくとも3ヵ月も又は少なくとも6ヵ月、少なくとも1年、少なくとも2年又は少なくとも5年)保存するステップを有してなる。具体的な態様では、上記凍結乾燥されたペプチド組成物は、18℃超(例えば20℃超、例えば約25℃)温度で保存される。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態は、生理活性ペプチドによって治療されうる患者を治療する方法であって、本願明細書に記載されているいずれかの方法に従って調製されるペプチド製剤中のペプチドを投与することを有してなる方法の提供に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一態様に係る凍結乾燥法を示す、凍結乾燥サイクルの図である。
【図2A】図2Aは、エクセナチド標準液と、エクセナチドを含有する再構成された製剤とを、含有量及び純度に関して比較した分析を示す。
【図2B】図2Bは、エクセナチド標準液と、エクセナチドを含有する再構成された製剤とを、含有量及び純度に関して比較した分析を示す。
【図3A】図3A及び3Bは、5℃及び20℃の条件下、6ヵ月間にわたる、製剤中の含有量及び純度を示す。
【図3B】3Bは、5℃及び20℃の条件下、6ヵ月間にわたる、製剤中の含有量及び純度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明をより詳細に記載するが、本発明は、記載されている具体的態様に限定されるものではなく、したがって、当然様々に変更させることができることを理解すべきである。また、本願明細書に用いられる用語は、具体的態様のみを記載するものに過ぎず、それらに限定されるものではないことを理解すべきである。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲にのみ限定されるものである。
【0030】
数値範囲が明記された場合、その範囲の上限値と下限値との間の、各々の値(特に明記しない限り小さい方の単位の小数第一位まで)、並びに明記された範囲内の他のあらゆる明記された若しくはそうでない値は、本発明の範囲内に含まれるものと解される。
【0031】
これらの小さい範囲の上下の限度値は独立に、当該小さい範囲に含まれ、明記された範囲内で特に除外されない限り、本発明の範囲内に含まれる。明記された範囲が一方又は両方の限度値を含む場合、それらの含まれた限度の一方又は両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0032】
別段定義されない限り、本願明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により理解されているものと同じ意味で用いられる。本願明細書に記載されているのと類似又は均等ないかなる方法及び材料も、本発明の実施又は試験において使用できるが、好適な方法及び材料を、本願明細書で記載する。
【0033】
本願明細書に引用される全ての刊行物及び特許文献は、あたかも個々の刊行物又は特許文献が引用されたことが、具体的かつ個別的に示されているかのように、参照により本願明細書に援用され、また、それらを参照により本願明細書に援用することにより、当該刊行物における記載に関連する方法及び/又は組成物及び/又はペプチド配列が開示され、記載されるものとする。いかなる刊行の引用も、出願日の前における開示の事実を示すものであり、本発明が、従来の発明によってに対して先行することを承認するものであると解釈すべきでない。更に、記載されている公表日は、実際に公表された日付と異なることも考えられ、個別に確認することを要すると考えられる。
【0034】
本願明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられるように、単数形や「前記」などは、前後関係から明確に示されない限り、その指す物の複数形を包含するものとする。
【0035】
更に、本発明は、あらゆる任意の要素を包含する形態及び除外する形態を包含し、また、ある特定の要素は任意であるというときには、当該要素が、特定の実施態様においては除外されうるというネガティブな限定をサポートすると解釈されうることに留意すべきである。
【0036】
本発明の開示を読んだ当業者にとり自明であるように、本願明細書に記載され例示された個々の実施態様は、別々の特徴を有する場合もあり、それらは、本発明の範囲又は技術思想から逸脱することなく、容易に分離してもよく、又は他のいずれかの1つ以上の実施態様の特徴と組み合わせてもよい。同様に、記載されたいかなる方法も、記載されたイベントの順序において、又は理論的に可能な他のいかなる順序においても実施できる。
【0037】
別段明確に定義されない限り、本願明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているのと同じ意味で用いられる。しかしながら、ある特定の要素については、明確性及び容易性のため、以下のとおり定義する。
【0038】
定義:
「医薬製剤」という用語は、少なくとも1つの活性成分(例えばペプチドなど)を、当該活性成分が治療的に効果的である形態及び量で含有されている組成物のことを指す。医薬製剤は、1つ以上の薬理学的に許容できる賦形剤を含有してもよい。本明細書で使用する場合、「成分(ingredient)」は、「化合物」又は「成分(component)」と同義的に用いられる。
【0039】
本明細書で使用する場合、「前凍結乾燥溶液」とは、少なくとも1つの活性成分(例えばペプチドなど)を含有する溶液であって、凍結乾燥でき、当該活性成分が治療的に効果的である形態及び量において再構成できる溶液のことを指す。具体的な態様では、前凍結乾燥溶液中の活性成分の濃度は、治療的に有効な濃度ではない。
【0040】
「薬理学的に許容できる」賦形剤又は担体(ビヒクル、添加剤)とは、被験者の哺乳類に合理的に投与することにより、使用される活性成分を有効量で提供できる、それらの物質のことを指す。医薬用の「賦形剤」及び「担体」という用語は、本願明細書において同義的に用いられる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「治療上有効量」とは、上記組成物中の、細胞、組織、系及び/又は被験者(ヒトを含む)において見られる生物反応を誘引する(限定されないが、治療及び/又は予防しようとする障害又は症状の1つ以上の徴候を、緩和及び/又は防止することを含む)活性化合物の量を意味する。本発明で使用する「(1つ以上の)徴候」という用語は、症状、疾患又は障害(前後関係から特に限定されない限り、以下総合して「症状」として本願明細書に記載する)のいかなる1つ以上の標識のことを指す。それらは、直接又は間接的に観察されることができ、限定されないが、障害若しくは症状、及び/又は障害若しくは症状の進行に関連した、1つ以上の生理学的反応及び/又は特定の生物学的指標の発現(例えば1つ以上のタンパク質、ペプチド、核酸、代謝産物、分子など)が挙げられる。
【0042】
本発明で使用する「治療」とは全般的に、有益若しくは所望の結果(臨床結果など)を得る方法のことを指す。症状を「治療する」又は「和らげる」とは、当該症状の程度及び/又は望ましくない発症が低減され、及び/又は、当該症状を治療しない場合と比較して、進行のタイムコースが遅延され、又は長期化することを意味する。有益若しくは所望の結果とは、限定されないが、検出可能か否かにかかわらず、1つ以上の症状の緩和又は改善、症状の程度の低減、症状の安定化(すなわち悪化させないこと)、症状の進行の遅延又は緩徐化、症状の改善又は緩和、並びに緩解(部分的又は全体的)が挙げられる。「治療」とはまた、治療を受けなかった場合に予想される生存期間と比較し、生存期間を延長させることを意味することもある。更に、治療は必ずしも投与形態の1度の投与によって生じなくともよく、投与形態の一連の投与により生じるものであってもよい。すなわち、治療上有効量、緩和するのに十分な量、又は症状を治療するのに十分な量を、1回以上の投与形態において投与してもよい。
【0043】
本発明の「経粘膜投与」、「経粘膜輸送」又はそれと同等な用語は、限定されないが、口腔粘膜、直腸粘膜、尿道粘膜、膣粘膜及び鼻粘膜、腸管粘膜及び気管支肺粘膜などの粘膜表面を透過させるあらゆる投与のことを指す。口腔粘膜投与には、バッカル、舌下及び歯茎経路での投与が含まれる。本発明では、ペプチドの経粘膜投与又は送達は、ペプチドを含有する製剤と粘膜表面とを接触させることによって実施されるが、それは、(例えば摂取などによる経口非経粘膜投与及び代謝の後に)血漿中にペプチドを循環させることを経て、粘膜組織に製剤を提供することを含まない。
【0044】
用語「固体」とは全般的に、非液体状の、非ガス状の構造のことを指し、結晶質若しくは非結晶質の組成物、又は結晶質と非結晶質の材料の組合せが包含される。
【0045】
「再構成時間」とは、凍結乾燥製剤を再水和させ、清澄な、粒子が存在しない溶液を調製するのに必要となる時間のことを指す。
【0046】
組成物又は組成物中の成分の「ガラス転移温度」(Tg)とは、組成物/成分がガラス状態(例えば、分子の振動が行われるが、非常に遅い回転及び並進を示す)から液体状態に変化する際の温度のことを指す。上記組成物又は当該組成物の成分のTgは、例えば示差走査熱量測定などの、当該技術分野で公知の方法を使用して測定できる。Angell,CA.Science 1995、267:1924−1935、及びWolanczy JP.Cryo−Letters 1989、10:73−76を参照のこと。
【0047】
本発明では、「安定な凍結乾燥製剤」とは、活性成分(例えば生理活性ペプチドなど)の物理的安定性、化学安定性及び/又は生物学的活性が、貯蔵後においても保持される製剤のことを指す。
【0048】
「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」という用語は、天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸及び修飾されたアミノ酸残基のことを意味する。いかなるアミノ酸の構造も、立体異性形の形態をとることが可能である場合には、特段明記されない限り、一般的に又は具体的な表記により、D型及びL型立体異性体が包含される。天然のアミノ酸としては、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)が挙げられる。非天然のアミノ酸としては、限定されないが、ホモリシン、ホモアルギニン、ホモセリン、アゼチジンカルボン酸、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、アミノプロピオン酸、2−アミノブタン酸、4−アミノブタン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソブタン酸、3−アミノイソブタン酸、2−アミノピメリン酸、tert−ブチルグリシン、2、4−ジアミノイソブタン酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリシン、アロ−ヒドロキシリシン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルアラニン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルペンチルグリシン、N−メチルバリン、ナフトアラニン、ノルバリン、ノルロイシン、オミチン、ペンチルグリシン、ピペコリン酸及びチオプロリンなどが挙げられる。修飾されたアミノ酸残基としては、それらのN末端アミノ基又はそれらの側鎖基が、化学的ブロックされたか、可逆的若しくは不可逆的に、又は化学的に修飾されたそれらが挙げられ、限定されないが、例えばNメチル化されたD型及びL型のアミノ酸又は残基であり、側鎖の官能基は、化学的に修飾されることにより他の官能基となる。修飾されたアミノ酸としては、限定されないが例えば、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン、アスパラギン酸−(β−メチルエステル)(アスパラギン酸が修飾されたアミノ酸)、N−エチルグリシン(グリシンが修飾されたアミノ酸)、又はアラニンカルボキサミド(アラニンが修飾されたアミノ酸)が挙げられる。組み込むことができる更なる残基は、Sandbergら、,J.Med.Chem.1998、41:2481−91に記載されている。具体的な態様では、非天然のアミノ酸を、プロテアーゼ切断部位(例えばDPP−IVの切断部位など)に含ませ、それにより切断に対してする抵抗性を付与することができる。
【0049】
本明細書で使用する場合、「タンパク質」、「ポリペプチド」又は「ペプチド」には、5つ以上のアミノ酸を含んでなるあらゆる分子が包含される。タンパク質が、翻訳後修飾(例えばジスルフィド結合形成、糖鎖形成、リン酸エステル化又はオリゴマー形成)などの修飾を受けうることは公知である。すなわち、本願明細書の用語「タンパク質」又は「ペプチド」には、あらゆる生物学的若しくは非生物学的方法によって修飾されたあらゆるタンパク質又はペプチドが包含される。特定の態様では、本明細書で用いられる「ペプチド」は、約200未満のアミノ酸残基、約100未満のアミノ酸残基、又は約50未満のアミノ酸残基を含んでなるポリマーのことを指す。全般的に、本明細書で用いられる「ペプチド」には、明確に定義されない限り、ポリアミノ酸は含まれない。また、全般的に、前後関係から特定されない限り、本願明細書の用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本願明細書において同義的に用いられる。
【0050】
「ポリアミノ酸」という用語は、特定のアミノ酸のあらゆるホモポリマー又はホモポリマーの混合物のことを指す。
【0051】
本明細書で使用する「類縁体」とは、例えば、ベースとなる参照ペプチド(アミリン、カルシトニン、PP、PYY、GLP−1、エキセンディンなど)にその配列が由来し、参照アミノ酸配列中に挿入、置換、伸長及び/又は欠失を有するペプチドを指し、例えばベースペプチドと少なくとも50%又は55%のアミノ酸配列同一性を有し、他のケースでは、例えばベースペプチドと少なくとも70%、80%、90%又は95%のアミノ酸配列同一性を有する。かかる類縁体は、保守的若しくは非保守的なアミノ酸置換(非天然のアミノ酸、並びにL型及びD型形態を含む)を含んでなってもよい。類縁体には、アゴニスト活性を有する化合物、及びアンタゴニスト活性を有する化合物が含まれる。本発明の「類縁体」とは、アミノ酸配列によって、親ペプチドと構造的に関連するが、目的の特性(生理活性、溶解性、タンパク質分解に対する抵抗性など)が親ペプチドと異なる生理活性ペプチド又はタンパク質のことを指す。特定の実施形態では、類縁体は、親のペプチドの生理活性の約1%〜約10,000%、約10%〜約1000%、約50%〜約500%の活性を示す。
【0052】
具体的なタイプの類縁体は、アミノ酸変異(例えばアミノ酸性の欠失、置換、付加及び修飾、並びに誘導体化)を有する。「欠失」とは、関連するペプチドにおける、1つ以上のアミノ酸残基の欠如のことを指す。
【0053】
「付加」とは、関連するペプチドにおける、1つ以上のアミノ酸残基の追加のことを指す。ペプチドへの付加及び欠失は、アミノ末端、カルボキシ末端及び/又は内部で生じてもよい。
【0054】
類縁体ペプチドでは、参照ペプチド中の、「必須ではない」アミノ酸残基が1つ以上変異していてもよい。本発明において、「必須ではない」アミノ酸残基とは、新規なアミノ酸配列中の、例えば、欠失又は置換により変更することができる残基であって、類縁体ペプチドの活性(例えばアゴニスト又はアンタゴニスト活性)を消失させるか又は実質的に低下させることがない残基のことを指す。特定の実施形態では、かかる類縁体は、ポリペプチドの活性を消失又は実質的に減少させることのない、1〜10又はそれ以上の非必須のアミノ酸残基の欠失、付加又は置換を有してもよい。1つの態様では、類縁体は、参照ペプチドに対する50%超、55%超又は60%超のアミノ酸同一性を有する。1つの態様では、類縁体は、その参照ペプチドのアゴニストである。他の態様では、類縁体は、その参照ペプチドのアンタゴニストである。
【0055】
「置換」とは、ペプチド中における、他の1つ以上のアミノ酸残基による、1つ以上のアミノ酸残基の置換のことを指す。類縁体は、複数の変更及び異なるタイプの変更などの、様々な変更の組合せを有してもよい。置換には、保存的アミノ酸置換が含まれる。「保守的なアミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が同様の側鎖又は同様の物理化学的性質(例えば静電的性質、水素結合、立体的性質、疎水的性質)を有するアミノ酸残基による置換のことを指す。上記アミノ酸は、天然でもよく、非天然でもよい。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、従来技術において公知である。これらのファミリーには、以下の側鎖を有するアミノ酸が包含される:塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、メチオニン、システイン)、無極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン)、分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)。
【0056】
「誘導体」とは、そのアミノ酸側鎖、α−炭素原子、末端アミノ基又は末端カルボキシル酸基の1つ以上において、化学的修飾を有する、上記の参照ペプチド又は類縁体のことを指す。
【0057】
「修飾」には、化学的部分を付加し、新規な結合を確立させ、並びに化学部分を除去することが含まれるが、これらに限定されない。アミノ酸側鎖の修飾としては、限定されないが、リシンの8−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン若しくはリシンのNアルキル化、グルタミン酸若しくはアスパラギン酸のカルボキシル酸基のアルキル化、並びにグルタミン又はアスパラギンの脱アミド化が挙げられる。末端アミノの修飾としては、デスアミノ基、N−低級アルキル基、N−ジ低級アルキル基及びN−アシル基による修飾が挙げられるが、これらに限定されない。末端アミノの修飾としては、デスアミノ基、N−低級アルキル基、N−ジ低級アルキル基及びN−アシル基(例えばアルキルアシル基、分岐アルキルアシル基、アルキルアリール−アシル基)による修飾が挙げられるが、これらに限定されない。末端カルボキシ基の修飾としては、アミド基、低級アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、アリルアミド基、アルキルアリルアミド基及び低級アルキルエステルによる修飾が挙げられるが、これらに限定されない。低級アルキル基は、C1−C4アルキル基である。更に、1つ以上の側鎖又は末端基は、合成化学の当業者に公知の保護基により保護することができる。アミノ酸のα−炭素は、モノ−又はジメチル化されてもよい。具体的な態様では、修飾には、ジカルボン酸部分の付加、脂肪酸分子の付加、質量を増加させる分子(例えばポリエチレングリコール、アルブミン、ゼラチンなど)の付加、炭水化物(例えばデキストラン、サッカライド、シアル化サッカライド(例えばモノシアル化五糖)など)の付加、タンパク質分解(例えばDPP−IV酵素による)に対する感受性を改変するための部分の付加、免疫原性を改変するための部分の付加、抗体分子又はその断片の付加、ポリマーの付加、などが挙げられる。Fergusonら、,Annu.Rev.Biochem−57:285−320,1988)を参照のこと。
【0058】
「同一性(%)」とは、公知の方法により決定できる。「同一性」は、特定の数理モデル又はコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)により割り当てられるギャップ配列(存在する場合)を有する、2つ以上の小さい配列間の、マッチする部分のパーセンテージを表すものである。具体的な態様では、同一性は、2つの分子の間に配列情報を用いて直接比較することにより決定でき、その際当該配列を整列させ、整列させた2つの配列間でマッチする正確な数を計数し、短い配列長で除算し、得られる数値に100を乗算することによって当該比較がなされる。容易に利用できるコンピュータプログラムを用いて、相同性及び同一性の解析の一助とすることができる。かかる技術は、Schwartz、R.M.及びDayhoff(Atlas of Protein Sequences and Structure,(M.O.Dayhoff,ed.),1979,5(3):353−358、National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USA.において、M.O.)に記載されており、例えば、それはペプチド分析の場合、Smith及びWatermanの局所的相同アルゴリズム(Advances in Appl.Math.1981、2:482−489)に適合するBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,Wis.53711)はまた、Smith及びWaterman(上記)の局所的相同アルゴリズムを用いて、2つの配列の最高の類似性部分を探索するものである。これらのプログラムは、これらのプログラムの提供者により推奨されるデフォルトパラメータを用いて簡便に利用できる。他のプログラムも公知で、使用可能である(限定されないが、BLASTPなど。例えば以下のデフォルトパラメータを使用する:
genetic code(遺伝子コード)=standard(標準);
filter(フィルター)=none(なし);
strand(鎖)=both(両方);
cutoff(カットオフ値)=60;
expect(期待値)=10;
Matrix(マトリックス)=BLOSUM62;
Descriptions(記載)=50 sequences(配列);
sort by(並び順)=HIGH SCORE(ハイスコア);
Databases(データベース)=non−redundant(重複なし),GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR)。
Karlin S及びAltschul SF,Proc.Natl.Acad.of Sci.USA 87:2264−2268,1990、並びにAltschul SF,ら、Nucleic Acids Res.1997、25:3389−3402を参照のこと。使用できる更なるパラメータとしては、以下のものが挙げられる:
Algorithm(アルゴリズム):Needlemanら、J.Mol.Biol,1970;48:443−453 1970、
Comparison matrix(比較マトリックス):BLOSUM 62(Henikoffら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1992;89:10915−10919より)、
Gap Penalty(ギャップペナルティ):12,
Gap Length Penalty(ギャップ長ペナルティ):4,
Threshold of Similarity(類似性の閾値):0。
他の典型的なアルゴリズム、gap opening penalties(ギャップ開きペナルティ)、gap extension penalties(ギャップ伸長ペナルティ)、comparison matrices(比較マトリックス)、thresholds of similarity(類似性の閾値)などを使用してもよい(Program Manual,Wisconsin Package,Version 9,September,1997に記載のものを含む)。それらの具体的な選択は、当業者にとり自明であり、例えば、当該比較が、所与の配列ペア間でのものであるか(その場合、GAP又はBestFitが一般的に好適である)、又は、1つの配列と及び膨大なデータベースの配列との間のものであるか(その場合、FASTA又はBLASTAが好適である)などの、具体的な比較の方法に依存する。
【0059】
「アゴニスト」とは、参照ペプチドの生物学的活性を誘引する化合物のことを意味する。具体的な態様では、アゴニストは、当業者に公知の測定方法(例えば受容体結合/競合試験)により評価したとき、参照ペプチドより効果が大きいか、又は、参照ペプチドと比較し5桁以内の範囲で(正の又は負の)効果を発揮しうる。1つの態様では、アゴニストは、かかるアッセイにおいて、約1μM超の親和性、具体的な態様では約1〜5nM超の親和性で結合する。アゴニストは、参照ペプチドと比較して強化された効力を保持するか若しくは示す参照ペプチドの断片であってもよく、及び/又は、参照ペプチドの類縁体であってもよい。
【0060】
本発明では、「生理活性」の用語は、細胞、組織、系及び/又は被験者(ヒトを含む)において見られる生物反応を誘引する能力のことを指し、例えば、生理活性ペプチドがその一例であり、それは治療上有効量で投与できるものである。1つの態様では、生理活性ペプチドは、少なくとも1つのin vivoのホルモン経路及び/又はシグナル伝達経路において、生物学的活性を示す。他の態様においては、アゴニストは、治療効果、範囲、活性期間、生理化学的性質及び/又はかかる生物学的活性に関する他の薬物動態特性を調節しうる。生物学的活性は、公知の標的受容体結合アッセイによって、又は生理学的指標をモニターする代謝的試験によって、及び/又は関連するバイオマーカーの測定により評価できる。
【0061】
本発明では、「被験者」又は「患者」は、家畜(例えば食用の家畜及びコンパニオンアニマル)を含むあらゆる動物のことを指す。上記の用語にはまた、ヒトが含まれる。
【0062】
本発明の「環状オリゴ糖」とは、(例えば(α−1,4)−結合を介して、)環状に結合した糖類のポリマーのことを指す(例えばシクロデキストリンなど)。
【0063】
上記のように、特定の実施態様では、本発明は前凍結乾燥製剤、凍結乾燥製剤、並びにそれらの調製、保存及び使用方法の提供に関する。
【0064】
1つの態様では、本発明に係る前凍結乾燥製剤は、少なくとも1つのペプチドを含有する。ペプチドとしては、限定されないが、以下のうちの1つ以上の生理活性ペプチドが挙げられる:アミリン、アドレノメデュリン(「ADM」)、カルシトニン(「CT」)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(「CGRP」)、インテルメジン(例えばAFP−6)、コレシストキニン(「CCKペプチド」(例えばCCK−4、CCK−5、CCK−8、CCK−33など)、レプチン、膵臓ペプチド(「PP」)、ペプチドYY(「PYY」)更に一般的にはインクレチン(例えばグルカゴン様ペプチド−1(「GLP−1」)、グルカゴン様ペプチド2(「GLP−2」)、エキセンディン(例えばエキセンディン−3又はエキセンディン−4))、胃抑制ペプチド(GIP)、オキシントモジュリン(OXM)、ナトリウム利尿ペプチド(例えばANP、BNP、CNP又はウロジラチン)、ウロコルチンファミリーペプチド(例えばウロコルチンI、II及びIII、又はUcn−2及び−3)、ニューロメディンファミリーペプチド(例えばニューロメディンU又はそのスプライス型変異体)、セクレチン、ガストリン放出ペプチド/ボンベシン、グレリン、ソマトトロピン、インシュリン、並びにそれらの組み合わせ。上記ペプチドの配列組成は、ヒト型として発現させてもよく、又はその種変異体、類縁体(アゴニスト又はアンタゴニスト)、誘導体、修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型であってもよい。具体的な態様では、上記ペプチドのアンタゴニストは生物活性成分として有用であり、参照ペプチドのアンタゴニストであるペプチド類縁体もまた本発明の範囲内に包含される。例えば、上記ペプチドとしては、PYYアンタゴニスト又はグレリンなどが挙げられる。上記のように、特定の態様では、ペプチドは複数の参照ペプチドに由来する機能的ドメインを含むことができる。例えば、上記ペプチドは、単一の分子中にアミリン(又はアミリン類縁体)部分と、カルシトニン(又はカルシトニン類縁体)部分とを含んでもよく、上記アミリン部分とカルシトニン部分とを、アミド結合、又は非アミド結合を介して共有結合させることができる。1つの態様では、異なるペプチドに由来する複数の生物学的ドメインが組み合わされた上記ペプチドは、アミリンアゴニストである。
【0065】
1つの態様では、製剤中に含まれる生理活性ペプチドは、アドレノメデュリン(ADM)である。例えば、上記ペプチドは、Hinsonら、Endocrine Reviews 2000、21(2):13 8−167、及び国際公開第2006042242号パンフレットにおいて開示されたものであってもよい。上記のように、製剤中に、ADMペプチドの類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含有させてもよい。
【0066】
1つの態様では、上記生理活性ペプチドはカルシトニン(CT)である。例えば、上記ペプチドはヒトペプチドホルモンカルシトニン及びその種変異体(サケ カルシトニン(「sCT」))を含んでなってもよい。Becker JCEM 2004、89(4):1512−1525、Sexton Current Medicinal Chemistry 1999、6:1067−1093、及び国際公開第2006042242号パンフレットを参照のこと。製剤中に、カルシトニンペプチドの類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含有させてもよい。
【0067】
他の態様においては、上記生理活性ペプチドはカルシトニン遺伝子関連ペプチド又は「CGRP」(例えばヒトCGRP又はその種変異体)である。Wimalawansa(Crit.Rev.Neurobiol.1997、11(2−3):167−239、及び国際公開第2006042242号パンフレットを参照のこと。製剤中に、CGRPペプチドの類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含有させてもよい。
【0068】
更に他の態様においては、上記生理活性ペプチドはインテルメジン(例えばAFP−6又はその種変異体)である。例えば国際公開第2006042242号パンフレットを参照のこと。製剤中に、インテルメジンペプチドの類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含有させてもよい。
【0069】
更なる実施形態では、上記生理活性ペプチドはコレシストキニン又は「CCK」(例えばヒトCCK(例えばCCK1−33)又はその種変異体)であり、それは硫酸化されていても硫酸化されていなくてもよい。1つの態様では、上記CCKペプチドはペンタガストリン(CCK−5又はCCK(29−33))である。他の態様においては、CCKペプチドはCCK−4(CCK(30−33))である。製剤は、CCKペプチドの類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含有させてもよい。例えば、CCKペプチドはLieverseら、,Ann.N.Y.Acad.Sci.1994、713:268−272、Crawley及びCorwin,Peptides 1994、15:731−755、Walsh,”Gastrointestinal Hormones,” In Physiology of the Gastrointestinal Tract (3d ed.1994、Raven Press,New York)及び国際公開第2005077072号に記載されている。
【0070】
生理活性ペプチドは、レプチンを含有してもよい。「レプチン」とは、ヒトレプチン又はその種変異体を意味する。レプチンは、国際特許公開番号国際公開第96/05309号、Pelleymounterら、Science 1995、269:540−543、Halaasら、Science 1995、269:543−546、及びCampfeldら、Science 1995、269:546−549に記載のような、ob遺伝子のポリペプチド生成物である。製剤中に、レプチンペプチドの類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含有させてもよい。レプチンの類縁体及び断片は以下の文献に開示されている:米国特許第5521283号、米国特許第5532336号kPCT/US96/22308号及びPCT/US96/01471号、国際公開第2004039832号、国際公開第2003034996号、国際公開第96/05309号、国際公開第96/40912号、国際公開第97/06816号、国際公開第00/20872号、国際公開第97/18833号、国際公開第97/38014号、国際公開第98/08512号及び国際公開第98/28427号、米国特許第5521283号、米国特許第5525705号、米国特許第5532336号、米国特許第5552522号、米国特許第5552523号、米国特許第5552524号、米国特許第5554727号、米国特許第5559208号、米国特許第5563243号、米国特許第5563244号、米国特許第5563245号、米国特許第5567678号。
【0071】
更に他の態様において、上記生理活性ペプチドは、ヒトオキシントモジュリン又はその種変異体である。1つの態様では、OXMペプチドは、29アミノ酸の配列のグルカゴンと、そのカルボキシ末端に8アミノ酸の延長部とを有する、37アミノ酸のペプチドである。製剤中に、OXMペプチドの類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含有させてもよい。国際公開第2005035761号、国際公開第2004062685号、米国特許出願公開第20060189522号及び欧州特許出願公開第795562号を参照のこと。
【0072】
更なる実施形態では、生理活性ペプチドは、グレリンペプチド(例えばヒトグレリン又はその種変異体)である。Kojimaら、Nature 1999;402(6762):656−60、Arvat,ら、J.Endocrirol Divest 2000、23(8):493−5、Horvathら、Pharm Des.2003;9(17):1383−95、Wrenら、J Cliff Endocrinl Metab 2001;86(12):5992、Wrenら、Diabetes 2001;50(11):2540−7、Kamegaiら、Diabetes 2001;50(11):2438−43、Shintaniら、Diabetes 2001;50:227−232及びAsakawaら、Gut 2003;52(7):947−52を参照のこと。製剤中に、グレリンペプチドの類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含有させてもよい。具体的な態様では、上記生理活性ペプチドは、グレリンペプチドの少なくとも1つの活性に関するアンタゴニストである、グレリンの類縁体である。国際公開第2004009616号を参照のこと。
【0073】
具体的な態様では、上記生理活性ペプチドは、成長ホルモンを含有する。例えば、1つの態様では、生理活性ペプチドは、ソマトトロピン、種変異体、類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型又はハイブリッド型形態のそれを含んでなる。国際公開第2005066208号、国際公開第1996030405号及び米国特許第6916914号を参照のこと。
【0074】
上記生理活性ペプチドは、ナトリウム利尿ペプチドを含有してもよい。ナトリウム利尿ペプチドは、生体内において、レニン−アンギオテンシン系の活性に対抗する作用を示す。心房型のナトリウム利尿ペプチド(ANP)は心房において合成され、脳型のナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心室において合成され、C型のナトリウム利尿ペプチド(CNP)は脳において合成される。国際公開第2004094459号、国際公開第2004094460号、国際公開第2005019819号を参照のこと。これらのペプチドの変異型は、例えば国際公開第2005072055号に記載されている。ウロディラチン(CCD 95−126)は人尿から単離できるナトリウム利尿ペプチドであり(Forsberg G.,ら、J.Prot.Chem.1991、10:517−526)、N末端に4つの付加的なアミノ酸を有する点で、ANP(99−126)ペプチドとは異なる。アミノ酸配列及びウロディラチンの構造は、Drummer C.ら、Am.J.Physiol.1992、262:744−754に記載されている。具体的な態様では、上記生理活性ペプチドは、その種変異体、類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型又はハイブリッド型形態のそれを含有する。
【0075】
更に他の態様において、上記生理活性ペプチドは、ウロコルチンファミリーペプチド(例えばウロコルチンI、II又はIII、その種変異体、類縁体、誘導体、並びに並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含んでなる。欧州特許出願公開第845035号、米国特許出願公開第20030032587号及び米国特許第6838274号を参照のこと。
【0076】
上記生理活性ペプチドはボンベシン様ペプチド若しくはニューロメディンファミリーペプチド、それらの種変異体、類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれらを含有してもよい。1つの態様では、上記生理活性ペプチドはニューロメディン又はニューロメディンのスプライス変異体である。国際公開第2002032937号、国際公開第2002032937号及び国際公開第2006086769号を参照のこと。
【0077】
具体的な態様では、上記生理活性ペプチドは、ヒトインスリンペプチド、その種変異体、類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含んでなる。インシュリンペプチドは、従来技術において公知である。例えば、米国特許出願公開第20030144181号、米国特許出願公開第2003010498号、米国特許出願公開第20030040601号、米国特許出願公開第20030004096A1号、米国特許第6551992号、米国特許第6534,288、米国特許第6531448号、米国特許第RE37971号、米国特許出願公開第20020198140号、米国特許第6465426号、米国特許第6444641号、米国特許出願公開第20020137144号、米国特許出願公開第20020132760号、米国特許出願公開第20020082199号、米国特許第6335316号、米国特許第6268335号、米国特許出願公開第20010041787号、米国特許出願公開第20010041786号、米国特許出願公開第20010039260号、米国特許出願公開第20010036916号、米国特許出願公開第20010007853A1号、米国特許第6051551A号、米国特許第6034054号、米国特許第5970973号、米国特許第5952297号、米国特許第5922675号、米国特許第5888477号、米国特許第5873358A号、米国特許第5747642号、米国特許第5693609号、米国特許第5650486号、米国特許第5646242号、米国特許第5597893号、米国特許第5547929号、米国特許第5504188号、米国特許第5474978号、米国特許第5461031号、米国特許第4421685号、米国特許第6221837号及び米国特許第5177058号を参照のこと。
【0078】
ある特定の実施形態では、上記生理活性ペプチドは、ヒトインクレチン又は種変異体、類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含んでなる。
【0079】
1つの態様では、上記生理活性ペプチドは、胃抑制ペプチド(GIP)又は種変異体、類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含んでなる。例えば、国際公開第2006086769号の説明を参照のこと。
【0080】
更なる実施形態では、上記生理活性ペプチドは、エキセンディン、エキセンディン類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含んでなる。適切なエキセンディンの例としては、エキセンディン−3、エキセンディン−4、エキセンディン−4の酸、エキセンディン−4(1−30)、エキセンディン−4(1−30)のアミド、エキセンディン−4(1−28)、エキセンディン−4(1−28)のアミド、14Leu25Pheエキセンディン−4のアミド、及び14Leu25Pheエキセンディン−4(1−28)のアミド、並びに当該技術分野で公知の他の生理活性エキセンディンなどが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、国際公開第99/07404号、国際公開第99/25727号、国際公開第99/25728号及び国際公開第01/04156号パンフレット、米国特許出願公開第20030087820号、米国特許出願公開第2002137666号、米国特許出願公開第2003087821号及び米国特許第6528486に記載のものが挙げられる。
【0081】
本願明細書で開示される組成物に使用可能なエキセンディンとしては、式I(配列番号3)に記載のそれらが挙げられ、詳細には以下の通りである。
【化1】

式中、Xaa1はHis、Arg又はTyrであり、
Xaa2はSer、Gly、Ala又はThrであり、
Xaa3はAsp又はGluであり、
Xaa6はPhe、Tyr又はナフチルアラニンであり、
Xaa7はThr又はSerであり、
Xaa8はSer又はThrであり、
Xaa9はAsp又はGluであり、
Xaa10はLeu、Ile、Val、ペンチルグリシン又はMetであり、
Xaa14はLeu、Ile、ペンチルグリシン、Val又はMetであり、
Xaa22はPhe、Tyr又はナフチルアラニンであり、
Xaa23はIle、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert−ブチルグリシン又はMetであり、
Xaa24はGlu又はAspであり、
Xaa25はTrp、Phe、Tyr又はナフチルアラニンであり、
Xaa31、Xaa36、Xaa37及びXaa38は独立にPro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N−アルキルグリシン、N−アルキルペンチルグリシン又はN−アルキルアラニンであり、
Xaa39はSer、Thr又はTyrであり、
Zは−OH又は−NH2である。
【0082】
本願明細書で開示される組成物に使用可能な、更なるエキセンディンの例としては、式II(配列番号4)に記載のそれらが挙げられ、詳細には以下の通りである。
【化2】

式中、Xaa1はHis、Arg又はTyrであり、
Xaa2はSer、Gly、Ala又はThrであり、
Xaa3はAla、Asp又はGluであり、
Xaa5はAla又はThrであり、
Xaa6はAla、Phe、Tyr又はナフチルアラニンであり、
Xaa7はThr又はSerであり、
Xaa8はAla、Ser又はThrであり、
Xaa9はAsp又はGluであり、
Xaa10はAla、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン又はMetであり、
Xaa11はAla又はSerであり、
Xaa12はAla又はLysであり、
Xaa13はAla又はGlnであり、
Xaal4はAla、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val又はMetであり、
Xaa15はAla又はGluであり、
Xaa16はAla又はGluであり、
Xaa17はAla又はGluであり、
Xaa19はAla又はValであり、
Xaa20はAla又はArgであり、
Xaa21はAla又はLeuであり、
Xaa22はAla、Phe、Tyr又はナフチルアラニンであり、
Xaa23はIle、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert−ブチルグリシン又はMetであり、
Xaa24はAla、Glu又はAspであり、
Xaa25はAla、Trp、Phe、Tyr又はナフチルアラニンであり、
Xaa26はAla又はLeuであり、
Xaa27はAla又はLysであり、
Xaa28はAla又はAsnであり、
1は−OH、
−NH2
Gly−Z2
Gly Gly−Z2
Gly Gly Xaa31−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser Ser−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37−Z2
又はGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38−Z2であり、
Xaa31Xaa36、Xaa37及びXaa38は独立にPro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N−アルキルグリシン、N−アルキルペンチルグリシン又はN−アルキルアラニンであり、
2は−OH又は−NH2であり、
但し、Xaa3、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaal6、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa26、Xaa27及びXaa28のうちの3つのみがAlaである。
【0083】
本願明細書で開示される組成物への使用に適するエキセンディンの更なる例としては、式III(配列番号5)に記載のそれらが挙げられ、詳細には以下の通りである。
【化3】

Xaa1はHis、Arg、Tyr、Ala、ノルバリン、Val又はノルロイシンであり、
Xaa2はSer、Gly、Ala又はThrであり、
Xaa3はAla、Asp又はGluであり、
Xaa4はAla、ノルバリン、Val、ノルロイシン又はGlyであり、
Xaa5はAla又はThrであり、
Xaa6はAla、Phe、Tyr又はナフチルアラニンであり、
Xaa7はThr又はSerであり、
Xaa8はAla、Ser又はThrであり、
Xaa9はAla、ノルバリン、Val、ノルロイシン、Asp又はGluであり、
Xaa10はAla、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン又はMetであり、
Xaa11はAla又はSerであり、
Xaa12はAla又はLysであり、
Xaa13はAla又はGlnであり、
Xaa14はAla、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val又はMetであり、
Xaa15はAla又はGluであり、
Xaa16はAla又はGluであり、
Xaa17はAla又はGluであり、
Xaa19はAla又はValであり、
Xaa20はAla又はArgであり、
Xaa21はAla又はLeuであり、
Xaa22はPhe、Tyr又はナフチルアラニンであり、
Xaa23はIle、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert−ブチルグリシン又はMetであり、
Xaa24はAla、Glu又はAspであり、
Xaa25はAla、Trp、Phe、Tyr又はナフチルアラニンであり、
Xaa26はAla又はLeuであり、
Xaa27はAla又はLysであり、
Xaa28はAla又はAsnであり、
1は−OH、
−NH2
Gly−Z2
Gly Gly−Z2
Gly Gly Xaa31−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser−Z2
Gly Gly Xaa3l Ser Ser−Z2
Gly Gly Xaa3l Ser Ser Gly−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36−Z2
Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37−Z2
Gly Gly Xaa3l Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38−Z2又は
Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39−Z2であり、
式中、Xaa31、Xaa36、Xaa37及びXaa38は独立にPro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N−アルキルグリシン、N−アルキルペンチルグリシン又はN−アルキルアラニンであり、
Xaa39はSer、Thr又はTyrであり、
2は−OH又は−NH2であり、
但し、Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa26、Xaa27及びXaa28のうちの3つのみがAlaであり、かつ、Xaa1がHis、Arg又はTyrである場合、Xaa3、Xaa4及びXaa9のうちの少なくとも1つがAlaである。
【0084】
本願明細書に記載の組成物に使用できる、具体的なエキセンディン、エキセンディン類縁体及びエキセンディン誘導体としては、限定されないが、表1に記載のものが挙げられる。一実施形態では、上記生理活性ペプチド又はタンパク質はエキセンディン−4である。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
1つの態様では、製剤中に含有させる生理活性ペプチドは、膵臓ポリペプチドファミリー(PPFペプチド)のペプチドである。他の態様においては、ペプチドは、ヒト膵臓ペプチドポリペプチド(ヒトPP)又はその種変異体である。他の態様においては、ペプチドは、ヒトNPYペプチド又はその種変異体である。国際公開第2005077094号及びGehlert,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.1998、218:7−22を参照のこと。製剤中に、PP及び/又はNPYペプチドの類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ及び/又はハイブリッド型形態のそれらを含有してもよい。
【0096】
更に他の態様において、上記生理活性ペプチドは、PYYの最初の2アミノ酸を欠失するペプチド(例えばPYY(3−36)、Eberleinら、Peptides 1989、10:797−803、Grandtら、Regul.Pept.1994、51:151−9を参照のこと)であるか、又は、全長PYY(3−36)に対して少なくとも50%のPYY(3−36)との配列同一性を有する類縁体であり、また、少なくともN末端ポリプロリンPPFモチーフと、C末端尾部PPFモチーフとを含む、少なくとも2つのPPFのモチーフを含んでなる。更なるPPFのモチーフは、PPファミリーのポリペプチド(PP、PYY及びNPYを含む)のいずれかの、いかなるモチーフに対応してもよい。国際公開第2005077094号を参照のこと。
【0097】
本願明細書に開示される組成物に使用できる更なるPYYペプチドとしては、当該技術分野で公知のあらゆる生理活性PYYペプチド、PYY類縁体又はPYY誘導体が挙げられ、例えば国際特許出願公開第02/47712号及び国際公開第03/26591号、並びに米国特許出願公開第2002141985号に説明されるものが挙げられる。本願明細書に開示される組成物に使用できるPYYペプチド、PYY類縁体及びPYY誘導体の具体的な例としては、表2に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。また、他のY受容体ファミリーペプチドアゴニスト(特にY2、Y5及び推定のY7受容体アゴニスト及びその誘導体)もそれに含まれる。一実施形態では、上記生理活性ペプチドはPYY3-36である。
【0098】
【表11】

【0099】
【表12】

【0100】
他の態様においては、上記生理活性ペプチドは、ヒトグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)又はその種変異体、類縁体、誘導体、修飾型、キメラ型及び/又はハイブリッド型形態のそれを含んでなる。例えば国際公開第2005000892号、国際公開第2004022004号、国際公開第2005097175号、国際公開第01/98331号、国際公開第02/48192号、米国特許出願公開第2003220243号、米国特許出願公開第2004053819号、米国特許第5981488号、米国特許第5574008号、米国特許第5512549号、及び米国特許第5705483号を参照のこと。
【0101】
更なる実施態様において、上記生理活性ペプチドは、GLP−1類縁体又はGLP−1誘導体(例えばGLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)NH2、Gly8GLP−1(7−37)、Ser34GLP−1(7−37)、Val8GLP−1(7−37)及びVal8Glu22GLP−1(7−37)など)を含んでなる。当該技術分野で公知のいかなる生理活性GLP−1、GLP−1類縁体又はGLP−1誘導体も、本発明の製剤に使用でき、例えば限定されないが、国際公開第01/98331号、国際公開第02/48192号、米国特許出願公開第2003220243号、米国特許出願公開第2004053819、米国特許第5981488号、米国特許第5574008号、米国特許第5512549号及び米国特許第5705483号に記載のものが挙げられる。本願明細書に開示される製剤への使用に適するGLP−1ペプチドの例としては、米国特許出願公開第2003220243号に記載のものが挙げられる。それらを以下に示す。
【0102】
式IV(配列番号244)。
【化4】

式中、Xaa8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser又はThrであり、
Xaa11はAsp、Glu、Arg、Thr、Ala、Lys又はHisであり、
Xaa12はHis、Trp、Phe又はTyrであり、
Xaa16はLeu、Ser、Thr、Trp、His、Phe、Asp、Val、Glu又はAlaであり、
Xaa22はGly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys又はシステイン酸であり、
Xaa23はHis、Asp、Lys、Glu又はGlnであり、
Xaa24はGlu、His、Ala又はLysであり、
Xaa26はAsp、Lys、Glu又はHisであり、
Xaa27はAla、Glu、His、Phe、Tyr、Trp、Arg又はLysであり、
Xaa31はAla、Glu、Asp、Ser又はHisであり、
Xaa33はAsp、Arg、Val、Lys、Ala、Gly又はGluであり、
Xaa34はGlu、Lys又はAspであり、
Xaa35はThr、Ser、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Asp、Gly、Pro、His又はGluであり、
Xaa36はArg、Glu又はHisであり、
RはLys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、−NH2、Gly、Gly−Pro又はGly−Pro−NH2であるか、又は欠失している。
【0103】
式V(配列番号245)。
【化5】

式中、Xaa8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser又はThrであり、
Xaa12はHis、Trp、Phe又はTyrであり、
Xaa16はLeu、Ser、Thr、Trp、His、Phe、Asp、Val、Glu又はAlaであり、
Xaa22はGly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys又はシステイン酸(3−スルホアラニン)であり、
Xaa23はHis、Asp、Lys、Glu又はGlnであり、
Xaa26はAsp、Lys、Glu又はHisであり、
Xaa30はAla、Glu、Asp、Ser又はHisであり、
Xaa35はThr、Ser、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Asp、Gly、Pro、His又はGluであり、
RはLys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、−NH2、Gly、Gly−Pro又はGly−Pro−NH2であるか、又は欠失している。
【0104】
式VI(配列番号246)。
【化6】

式中、Xaa8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser又はThrであり、
Xaa22はGly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys又はシステイン酸(3−スルホアラニン)であり、
Xaa23はHis、Asp、Lys、Glu又はGlnであり、
Xaa27はAla、Glu、His、Phe、Tyr、Trp、Arg又はLysであり、
Xaa30はAla、Glu、Asp、Ser又はHisであり、
RはLys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、−NH2、Gly、Gly−Pro又はGly−Pro−NH2であるか、又は欠失している。
【0105】
式VII(配列番号247)。
【化7】

式中、Xaa7はL−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、β−ハイドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、α−フルオロメチルヒスチジン又はα−メチルヒスチジンであり、
Xaa8はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン又はスレオニンであり、
Xaa22はアスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、システイン又はシステイン酸であり、
Rは−NH2又はGly(OH)である。
【0106】
本発明の組成物へ使用できるGLP1ペプチドの、具体的かつ非限定的な例を、表3に示す。
【0107】
【表13】

【0108】
【表14】

【0109】
【表15】

【0110】
更なる実施形態では、本願明細書に開示される組成物の生理活性ペプチド又はタンパク質は、アミリン、アミリン類縁体及びアミリン誘導体を含んでなる。当該技術分野で公知のいかなるアミリン、アミリン類縁体又はアミリン誘導体も本発明の組成物に使用でき、例えば米国特許第6610824号、第5686411号、第5580953号、第5367052号及び第5124314に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。使用できるアミリンペプチドの例を、以下の式で記載する。
【0111】
式VIII(配列番号248)。
【化8】

式中、A1はLys、Ala、Ser又は水素であり、
1はAla、Ser又はThrであり、
1はVal、Leu又はIleであり、
1はHis又はArgであり、
1はSer又はThrであり、
1はSer、Thr、Gln又はAsnであり、
1はAsn、Gln又はHisであり、
1はPhe、Leu又はTyrであり、
1はAla又はProであり、
1はIle、Val、Ala又はLeuであり、
1はSer、Pro、Leu、Ile又はThrであり、
1はSer、Pro又はThrであり、
1はAsn、Asp又はGlnであり、
X及びYは各々独立に、側鎖を有するアミノ酸残基から選択され、それらが化学結合して分子内結合を形成し、
Zはアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基又はアラルキルオキシ基である。使用可能な、アミリン類縁体及び誘導体の具体的かつ非限定的な例を、表4に示す。
【0112】
【表16】

【0113】
【表17】

【0114】
【表18】

【0115】
上記のように、1つ以上のアミノ酸置換、付加又は欠失を有する、生理活性ペプチド又はタンパク質の類縁体及び誘導体が、本願明細書に開示される組成物及び方法に用いられる。一実施形態では、上記類縁体又は誘導体は、10個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を有する。他の実施形態では、上記類縁体又は誘導体は、5個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を有する。
【0116】
当該技術分野の当業者に自明のように、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列の修飾により、元のアミノ酸配列と比較して同等若しくは優れた機能的特徴を示す、同等の又はおそらく改良された、第二世代ペプチドなどが得られる。改変には、アミノ酸の挿入、欠失、置換、切断、融合、サブユニット配列のシャッフリングなどが包含される。
【0117】
かかる変化をもたらす際に考慮されうる1つの要因として、アミノ酸の疎水性インデックスがある。タンパク質への相互作用的な生物学的機能の付与に対する、アミノ酸の疎水性インデックスの重要性は、Kyte及びDoolittle(J.Mol.Biol.,157:105−132,1982)により報告されている。アミノ酸の相対的な疎水性特性が、得られるタンパク質の二次構造に影響を与えることが知られている。
【0118】
各アミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づいて、以下の通り疎水性インデックスが割り当てられている。イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸/グルタミン/アスパラギン酸/アスパラギン(−3.5)、リシン(−3.9)及びアルギニン(−4.5)。
【0119】
公知のように、ペプチド又はタンパク質中の特定のアミノ酸を、同程度の疎水性インデックス若しくはスコアを有する他のアミノ酸と置換して、同様の生物学的活性を有する(すなわち生物学的官能性を保持する)ペプチド又はタンパク質を得ることができる。かかる変異を導入するにあたり、+2の範囲内の疎水性インデックスを有するアミノ酸が互いに置換されるのが好ましい。より好適な置換は、+1の範囲内の疎水性インデックスを有するアミノ酸による置換である。最も好適な置換は、+0.5の範囲内の疎水性インデックスを有するアミノ酸による置換である。
【0120】
同様に、親水性に基づいてアミノ酸を置換することもできる。米国特許第4554101号には、タンパク質の最大の局所的平均親水性(その隣接するアミノ酸の親水性により支配される)が、タンパク質の生物的特性と相関することが開示されている。以下の親水性値が、アミノ酸に割り当てられている。アルギニン/リシン(+3.0)、アスパラギン酸/グルタミン酸(+3.0+1)、セリン(+0.3)、アスパラギン/グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5+1)、アラニン/ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン/イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)及びトリプトファン(−3.4)。すなわち、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質中のある1つのアミノ酸を、同様の親水性スコアを有する他のアミノ酸で置換して、同様の生物学的活性を有する(すなわち、正しい生物学的機能が保持されている)タンパク質を産生することができる。かかる変異を導入するにあたり、+2の範囲内の親水性値を有するアミノ酸を互いに置換するのが好ましく、より好ましくは+1の範囲内であり、最も好ましくは+0.5の範囲内である。
【0121】
既に概説したように、本願明細書において開示される組成物及び方法に用いられる、生理活性ペプチド及びタンパク質のアミノ酸置換は、アミノ酸側鎖の置換基(例えばそれらの疎水性、親水性、充電、サイズなど)の相対的な類似性に基づいてもよい。上記の様々な特徴を考慮に入れながら、保守的なアミノ酸変異を導入し、サイレント変異を生じさせる例示的な置換は、天然型のアミノ酸が属する他のクラスのメンバーから選択することができる。アミノ酸は、以下の4つの群に分けることができる:
(1)酸性アミノ酸、
(2)塩基性アミノ酸、
(3)中性の極性アミノ酸、
(4)中性の無極性アミノ酸。これらの様々な群の代表的なアミノ酸を例示するが、これらに限定されない。
(1)酸性(負荷電)アミノ酸(例えばアスパラギン酸及びグルタミン酸)、
(2)塩基性(正荷電)アミノ酸(例えばアルギニン、ヒスチジン及びリシン)、
(3)中性の極性アミノ酸(例えばグリシン、セリン、スレオニン、システイン、シスチン、チロシン、アスパラギン及びグルタミン)、
(4)中性の無極性アミノ酸(例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニン)。なお、結果的に機能的な配列が得られる場合には、有利であると思えない変異であっても有用でありえる点に留意する必要がある。
【0122】
また、本発明の組成物に使用でき、本発明の範囲内に含まれる生理活性ペプチド及びタンパク質は、上記のタンパク質、ペプチド及びペプチド類縁体のコンジュゲート(例えば、当該技術分野で公知の、少なくとも1つの、分子量を増加させる化合物(例えばポリエチレングリコール)で化学的に修飾されるか又は結合される)、並びに、化学修飾されたかかるタンパク質、ペプチド、類縁体又はコンジュゲートの同等物である。ポリエチレングリコールポリマーは、約500Da〜20,000Daの間の分子量を有してもよい。好適なコンジュゲートとしては、国際公開第00/66629号(全開示内容を参照により本願明細書に援用する)に記載されているものが挙げられる。一実施形態では、本発明の生理活性ペプチド及びタンパク質は約100,000Daまでの分子量を有し、他の実施形態では約25,000Daまでの分子量を有し、更に別の実施形態では約5,000Daまでの分子量を有する。
【0123】
本発明の特定の態様において、生理活性ペプチドは、組み合わされて用いられる。したがって、1つの態様では、前凍結乾燥製剤は、複数の生理活性ペプチド(例えば2つ以上の生理活性ペプチド)を含有するか、又は生理活性ペプチドと生理活性特性を有する1つ以上の有機分子とを含有する。具体的な態様では、上記1つ以上の有機物分子の生理活性特性は、上記生理活性分子の活性を増強することである。例えば、上記有機物分子としてはDPP−IV阻害剤が挙げられ、それは当該ペプチドが被験者に投与されたとき、DPP−IVによる分解に対する生理活性ペプチドの抵抗性を増強する。
【0124】
ペプチドは、標準的な固相ペプチド合成技術(米国特許第6610824号、米国特許第5686411号及び米国特許第6610824号参照)を使用して、当該技術分野で公知のリコンビナント技術、化学的ライゲーション又は他の方法により調製できる。
【0125】
具体的な態様では、ペプチドは塩として調製される。かかる塩としては、有機酸及び無機酸(例えばHCl、HBr、H2SO4、H3PO4、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸及びショウノウスルホン酸)により調製される塩が挙げられる。塩基により調製される塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム及びカリウム塩)、並びにアルカリ土類塩(例えばカルシウム及びマグネシウム塩)が挙げられる。酢酸塩、塩酸塩及びトリフルオロ酢酸塩が好適である。遊離酸又は遊離塩基の形態のペプチドを、1当量以上の適当な塩基又は酸と、溶媒又は媒体中(塩が不溶性である場合)で、又は水などの溶媒中で反応させる、従来公知の方法を行うことにより、塩を形成することができる。更に真空下若しくは凍結乾燥によって、又は既存の塩のイオンを適切なイオン交換樹脂上で他のイオンと交換することによって取り出すことができる。
【0126】
しかしながら、特定の態様では、上記生理活性ペプチドは塩として調製されない。更なる態様においては、前凍結乾燥製剤から塩が除外される。
【0127】
一実施形態では、本発明に係る前凍結乾燥製剤は、生理活性ペプチドと、少なくとも約20重量%の固体成分を含んでなる。生理活性ペプチドにより占められる固体分のパーセンテージは、生理活性ペプチドや、それが凍結乾燥され、再構成された後の製剤の使用目的に応じて変化しうる。1つの態様では、上記ペプチドは製剤の約0.05〜5重量%を占める。他の態様においては、上記ペプチドは製剤の約0.75〜1.5重量%を占める。例えば、上記ペプチドは、製剤の固体成分の約0.5〜10重量%、又は約0.5〜6重量%、又は約0.5〜3重量%を占める。1つの態様では、上記生理活性ペプチドは製剤の1.5重量%を占める。更なる実施形態では、上記ペプチドは製剤の3.0重量%を占める。更に他の態様において、上記ペプチドは製剤の5.0重量%を占める。具体的な態様では、上記ペプチドは約1mg/ml〜約10mg/mlの濃度範囲で調製できる。例えば、上記ペプチドは3mg/ml、6mg/ml又は10mg/mlの濃度で調製できる。
【0128】
特定の実施形態では、固体成分の少なくとも約80%が、親水性部分と疎水性部分とを含む分子によって占められる。1つの態様では、上記分子は水溶液などの親水性環境から、疎水性若しくは親油性分子を保護する封入複合体を形成する。他の態様においては、上記分子は、疎水性分子を水溶液に溶解させるために用いられる。1つの態様では、親水性部分と疎水性部分とを含む分子としては、例えばシクロデキストリンなどの環状オリゴ糖が挙げられる。
【0129】
シクロデキストリンは中性であってもよく、又は電荷を有してもよく、天然型(シクロデキストリンα、β、γ、δ、ε)、分岐型又は重合型であってもよく、特定の態様では、例えばアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、グリコシド基などによる、1つ以上のヒドロキシプロピルの置換によって、又は、アルコール若しくは脂肪酸によるエーテル化、エステル化などにより、化学的に修飾されてもよい。具体的には、上記の基の中から、ヒドロキシプロピル基、メチルm基、スルホブチルエーテル基が選択される。具体的な態様では、シクロデキストリンは、6、7又は8個のグルコピラノース単位を含んでなる。
【0130】
本発明の好適な態様では、シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンが挙げられる。例えば適切なα−シクロデキストリンとしては、限定されないがヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン及びヒドロキシエチル−α−シクロデキストリンが挙げられる。適切なβ−シクロデキストリンとしては、限定されないが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(例えば2−ヒドロキシプロピルシクロデキストリン)、カルボキシメメチル−β−シクロデキストリン、ジヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2,6−ジ−O−メチル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたシクロデキストリン及びスルホン化−β−シクロデキストリンが挙げられる。使用できる適切なγ−シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ジヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン及びスルホン化−γ−シクロデキストリンである。
【0131】
他の特定の実施態様において、上記前凍結乾燥製剤は、生理活性ペプチド、脂質成分及び当該脂質成分を可溶化するための所定量の環状オリゴ糖を含んでなる。例えば、上記脂質成分は、粘膜の層又は更に一般的には細胞膜を、生理活性ペプチドが透過する際の移動を促進するものであってもよい。
【0132】
適切な脂質成分としては、限定されないが、リポソーム(荷電されていてもよく、されていなくてもよい)、長鎖脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、モノオレインなどの不飽和脂肪酸を含むがこれに限定されない)、中鎖脂肪酸(C6〜C12)、モノグリセリド、糖脂質(短鎖スフィンゴ脂質(例えば短鎖スフィンゴ糖脂質又は短鎖スフィンゴミエリン)が挙げられるが、これらに限定されない)。脂質成分としてはまた、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、[N,N,N’,N’−テトラメチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,3−ジ(オレオイルオキシ)−1,4−ブタンジアンモニウムイオジド](Promega社、Madison,WI,USA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(Promega社、Madison,WI,USA)、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)]N,N,N−トリメチルアンモニウムプロパンメチルスルフェート(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、ジミリストレオイルホスホノメチルトリメチルアンモニウム(DMPTA)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(7−ニトロ−2−1,3−ベンゾキサジアゾール−4−イル)、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパンクロライド、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン及び1,3−ジオレオイルオキシ−2−(6−カルボキシスペルミル)プロピルアミド(DOSPER)などが挙げられる。脂質成分は、任意に塩として調製することもできる。
【0133】
1つの態様では、上記脂質成分はリン脂質を含んでなる。他の態様においては、上記脂質成分は1,2−ジミリストイルアミド−1,2−デオキシホスファチジルコリン(DDPC)を含んでなる。
【0134】
更なる実施形態では、上記リン脂質は、1つ以上の生理活性ペプチドと脂質複合体又はリポソームを形成する。
【0135】
具体的な態様では、生理活性ペプチド:脂質成分の質量比は1:1未満であるが、他の態様では、生理活性ペプチド:脂質成分の比率は1:1以上である。更なる実施形態では、上記脂質成分は、前凍結乾燥製剤中に約0.5%、1%若しくは2%又はそれ以上で含まれる。他の特定の態様において、生理活性ペプチド:親水性部分と、疎水性若しくは親油性部分とを含む分子(例えばシクロデキストリン)のモル比は、1:1未満である。
【0136】
一実施形態では、前凍結乾燥製剤は1つ以上の緩衝成分を含んでなり、それにより、凍結乾燥の後、凍結乾燥製剤を、水(例えば無菌のパイロジェンフリーの水など)の添加により、即使用可能(ready−to−use)(例えば即処理可能(ready−to−treat))な形態に再構成することが可能となる。1つ以上の緩衝成分は異なる物質であってもよく、生理活性ペプチドの安定性及び活性(例えば治療効果)を最大にする適切なpH(例えば約3〜7)が提供されるように、選択することができる。1つの態様では、上記緩衝成分は酒石酸塩を含んでなる。特定の実施形態では、上記緩衝剤は酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩、コハク酸塩(ナトリウム又はカリウム塩)、ヒスチジン、リン酸塩(ナトリウム又はカリウム塩)、トリス(トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジエタノールアミンなどであってもよい。
【0137】
特定の濃度及びpHにおける、緩衝剤の緩衝容量(緩衝値)を算出する方法は公知であり、過度の実験を要することなく当業者が測定できる。例えば、上記製剤がポリアミノ酸を含有する具体的な態様では、中性及びモノアニオン性の実効電荷を有する緩衝成分が選択される。適切な緩衝剤の例としては、例えば酢酸、ε−アミノカプロン酸及びグルタミン酸が挙げられる。
【0138】
他の実施形態では、上記前凍結乾燥製剤はキレート成分(例えばEDTA又はEGTA)を含んでなる。
【0139】
更なる実施形態では、上記前凍結乾燥製剤は防腐剤成分を含んでなる。適切な防腐剤としては、限定されないが、m−クレゾール、パラベン(例えば0.18%のメチルパラベン及び0.02%のプロピルパラベン)、塩化ベンザルコニウム(BAK)、ソルビン酸カリウム、クロルヘキシジンアセテート、クロロスクレゾール及びポリヘキサミングルコン酸が挙げられる。しかしながら、1つの態様では、上記前凍結乾燥製剤はBAKを含有せず、パラベン(例えばメチルパラベン及びプロピルパラベンの混合物)を含有する。1つの具体的な態様では、上記生理活性ペプチドがエキセンディン、エキセンディン類縁体、誘導体、並びに修飾型、キメラ型若しくはハイブリッド型形態のそれらを含有するとき、上記防腐剤はBAKを含有せず、パラベンを含有する。更なる態様において、上記前凍結乾燥製剤は防腐剤を含有しない。
【0140】
使用できる等張剤としては、塩化ナトリウム、マンニトール、スクロース及びグルコースが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、あらゆる公知の等張剤(例えば粘膜刺激を防止するために使用できるもの)も使用できる。具体的な態様では、上記等張剤は、塩化ナトリウム及び/又は糖類、二糖類及びポリオールを含有しない。
【0141】
本願明細書に開示される組成物に使用できる典型的な増粘剤及び生体接着性物質としては、セルロース誘導体(例えば10〜1,500kDaの平均分子量のヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はメチルセルロース)、澱粉、ガム、カルボマー及びポリカルボフィルが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、当該技術分野で公知のあらゆる増粘剤又は生体接着性物質を使用でき、それにより、吸収部位における粘性が高まり、又は医薬組成物の滞留時間が長時間化する。
【0142】
含有させることができる更なる成分としては、イオン性及び非イオン性(両性)界面活性成分(例えばポリソルベート、クレモフォアなど)、充填剤(例えばシクロデキストリン、ポリエチレングリコールなど)が挙げられ、任意に、サッカライド、二糖類及びポリオールを含有しない。
【0143】
使用できる適切な界面活性成分としては、限定されないが、アニオン性界面活性成分(脂肪酸の塩(例えばドデシル硫酸ナトリウム及び他の脂肪酸の硫酸化塩)など)、カチオン性界面活性成分(例えばアルキルアミン)、非イオン性界面活性成分(例えばポリソルベート及びポロキサマー)、5〜25の炭素原子数の脂肪族一価アルコール(例えばデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、リノレニルアルコール及びオレイルアルコール)、5〜30の炭素原子数の他のタイプの脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸及びカプリン酸など、並びにそれらのエステル)が挙げられる。更なる界面活性成分としては、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート80(Tween80)、ポリエチレングリコール(PEG)、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ラノリンアルコール、ソルビタンモノオレエート、クレモフォア及びジデカノイルホスファチジルコリン(DDPC)、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコレート、デオキシコール酸ナトリウム、ナトリウムリトコレートケノコレート、ケノデオキシコレート、ウルソコレート、ウルソデオキシコレート、ヒオデオキシコレート(hyodeoxycholate)、デヒドロコレート、グリコケノキシコレート、タウロケノコレート及びタウロケノデオキシコレート及びドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。更なる界面活性成分として、ソルビタントリオレエート、大豆レシチン及びオレイン酸が挙げられる。
【0144】
製剤は、ポリアミノ酸を追加的に、あるいは代替的に含有してもよい。1つの態様では、浸透促進剤は、カチオン性ポリアミノ酸を含んでなる。適切なカチオン性ポリアミノ酸としては、塩基性アミノ酸(例えばヒスチジン、アルギニン及びリシン)のポリマーが挙げられ、それは中性若しくは酸性のpH環境においてプロトン化され、カチオンとなる。かかるポリマー(例えばポリ−L−ヒスチジン、ポリ−L−アルギニン、ポリ−L−リジン又はそのコポリマー)の分子量は、通常約10〜約300kDaの範囲である。他の実施形態では、上記ポリマーは約100kDa〜約200kDaの平均分子量を有する。更なる実施態様において、上記ポリマーは約140kDa〜1000kDaの平均分子量を有し、更に他の実施態様において、上記ポリマーは約140kDa〜約500kDaの平均分子量を有する。ある特定の実施形態では、上記組成物中のカチオン性ポリアミノ酸は、約141kDaの平均分子量を有するポリ−L−アルギニンハイドロクロライドである。例えば、カチオン性ポリアミノ酸を含有する生理活性ペプチドを製剤化する方法は、国際公開第2005117584号に記載されている。
【0145】
具体的な態様では、生理活性ペプチドを含有する製剤は、キトサンを含有してもよい。本明細書で使用する場合、「キトサン」には、キチン又はポリ−N−アセチル−D−グルコサミンのあらゆる誘導体(様々な分子量の全てのポリグルコサミン及びグルコサミン材料のオリゴマーを含む)が包含され、N−アセチル基の大部分が加水分解(脱アセチル化)により除去されている。1つの態様では、脱アセチル化の程度は(脱アセチル化で除去されたN−アセチル基の比率を表す)40〜97%の範囲であり、より好ましくは60〜96%の範囲であり、最も好ましくは70〜95%の範囲である。具体的な態様では、製剤中のキトサン成分は、約15,000〜750,000Daの範囲、又は約10,000〜1,000,000Daの範囲、又は約20,000〜500,000Daの範囲の分子量を有する。キトサン及びキトサン誘導体の塩も本発明の範囲に包含され、限定されないが、キトサンのヒドロキシル基(アミノ基ではない)と、アシル基及び/又はアルキル基との結合により形成されるエステル、エーテル又は他の誘導体が挙げられる。例としては、キトサンのO−アルキルエーテル及びキトサンのO−アシルエステルが挙げられる。修飾されたキトサン(ポリエチレングリコールとのコンジュゲート)を使用してもよい。例えば、国際公開第2005056008号を参照のこと。
【0146】
例えば、米国特許第4746508号に記載のように、製剤中に胆汁酸塩及びその誘導体を含有させてもよい。
【0147】
更に他の実施態様において、ジメチルスルホキシド(DMSO)を使用してもよい。
【0148】
他の更なる成分としては、連邦食品医薬品局(FDA)が“Generally Regarded as Safe(GRAS)”と称する賦形剤が挙げられる。
【0149】
しかしながら、特定の態様では、上記前凍結乾燥製剤は、ペプチド又は環状オリゴ糖による製剤化に用いられるもの以外のいかなるポリマー(例えばペプチドにコンジュゲート又は融合するポリマー)も含有しない。
【0150】
一実施形態では、上記前凍結乾燥製剤は、生理活性ペプチド、親水性部分と疎水性若しくは親油性部分とを含む分子(環状オリゴ糖(例えばシクロデキストリン)など)、緩衝成分、リン脂質成分(例えばDDPC)、キレート剤(例えばEDTA)、防腐剤(例えばパラベン)、及び任意にゼラチンを含んでなる。1つの態様では、上記前凍結乾燥製剤は基本的に、生理活性ペプチド、親水性部分と疎水性若しくは親油性部分とを含む分子(環状オリゴ糖(例えばシクロデキストリン)など)、緩衝成分、リン脂質成分(例えばDDPC)、キレート剤(例えばEDTA)、防腐剤(例えばパラベン)、及び任意にゼラチンを含んでなる。1つの態様では、本明細書で用いられる、「基本的に〜からなる」というときは、ペプチド又は親水性部分と疎水性若しくは親油性部分とを有する分子による製剤化に用いられるもの以外のサッカライド、二糖類、ポリオール、溶媒及びいかなるポリマー(例えばペプチドにコンジュゲート又は融合するポリマー)以外のものを含有せず、任意に、界面活性成分(リン脂質成分を除いて)及び遊離アミノ酸を含有しない。他の態様において、「基本的に〜からなる」というときは、ポリエチレングリコール(ペプチドにコンジュゲートした分子を除く)、PVP又は澱粉、単糖、二糖類、ポリヒドロキシアルコール及び/又は遊離アミノ酸を含有しない。更に他の態様において、上記前凍結乾燥製剤は非環状の多糖を含有しない(当該多糖が生理活性ペプチドにコンジュゲートしない限り)。
【0151】
更に特定の態様では、前凍結乾燥製剤を凍結乾燥して形成させた凍結乾燥組成物を再構成するときに、前凍結乾燥製剤から除外された成分を添加することができる。
【0152】
一実施形態では、本発明は更に、前凍結乾燥製剤と、前凍結乾燥製剤を凍結乾燥することにより形成される凍結乾燥組成物の再構成に適する成分とを含んでなるキットの提供に関する。1つの態様では、上記成分としては、水(例えば滅菌された、パイロジェンフリーの水)が挙げられる。具体的な態様では、上記成分は、前凍結乾燥製剤に含まれない成分である。しかしながら、他の態様では、前凍結乾燥製剤に含まれない上記成分は、再構成された製剤にも含まれない。
【0153】
凍結乾燥された前凍結乾燥製剤は凍結乾燥組成物として保存できることから、本発明の他の実施形態は、安定な凍結乾燥製剤の提供に関する。上記のように、「安定な凍結乾燥組成物」とは、活性成分(例えば生理活性ペプチドなど)が、貯蔵後においても実質的にその物理的安定性、化学的安定性及び/又は生物学的活性を保持するもののことを指す。1つの態様では、安定な凍結乾燥組成物とは、生物学的活性(例えば治療的活性)が、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年又は少なくとも約5年維持されるもののことを指す。具体的な態様では、上記の安定な凍結乾燥組成物は、生物学的活性及び/又は少なくとも1つの治療の活性が、少なくとも約20℃(例えば21℃、22℃、23℃、24℃)又は約25℃の温度で、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年又は少なくとも約5年の間維持される。
【0154】
タンパク質の安定性を測定するための様々な解析手法は当該技術分野で公知であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)、及び、Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.1993、10:29−90に概説されている。安定性は、所定の時間にわたる、所定の温度において測定できる。具体的な態様では、ペプチドの純度は、例えばSCX−HPLCによってもモニターされ、凍結乾燥組成物を再構成することにより、生理活性ペプチドの理論的な含量が少なくとも約95%、少なくとも約99%及び最高100%となる態様で再構成できる。
【0155】
物理安定性は、ペプチドの凝集、沈殿及び/又は変性を、例えば発色及び/又は透明度の目視検査、あるいは、紫外光散乱、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)及び動的光散乱などの、様々な方法で評価することによってモニターできる。コンホメーション変化は、当該技術分野で公知の方法、例えば蛍光分光法又はFTIR分光法により評価することができる。
【0156】
化学的安定性は、タンパク質の化学的な変形を検出し、定量化することにより評価することができる。通常タンパク質の化学構造を変化させる分解プロセスには、加水分解又はクリッピング(例えばサイズ排除クロマトグラフィ及びSDS−PAGEなどにより評価される)、酸化(例えば質量分析又はMALDI/TOF/MSと組み合わせたペプチドマッピングなどにより評価される)、アミド分解(例えばイオン交換クロマトグラフィ、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸の測定などにより評価される)、異性化(イソアスパラギン酸含量、ペプチドマッピングなどにより測定される)などが挙げられる。
【0157】
それに加えて、又はその代わりに、ペプチドの生物学的活性を、例えば受容体結合アッセイ、競合試験、バイオマーカー試験、又はペプチドを動物に投与したとき典型的に観察される生理学的反応を試験することによりアッセイしてもよく、又は、その他の、生理活性ペプチドをその活性に関して評価する際に用いる方法によりアッセイしてもよい。1つの態様では、上記ペプチドでは、その生物学的活性が、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月又は少なくとも約1年後において、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又はそれ以上で維持される。具体的な態様では、上記安定な凍結乾燥組成物では、少なくとも約20℃の温度で、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月又は少なくとも約1年間、生物学的活性及び/又は治療活性が維持される。
【0158】
上記前凍結乾燥製剤を、様々な容器中に、凍結乾燥用に処方又は準備することができる。1つの態様では、適切な容器を用いることにより、熱伝導が可能となり、凍結乾燥サイクルの終わりにしっかりと密封することが可能となり、及び/又はその壁及び封止物を透過する水分の量を最小化することが可能となる。1つの態様では、上記容器は、良好な熱伝導度を提供し、凍結乾燥(例えば凍結乾燥器棚)の間、熱源との良好な熱的接触を提供する材料で製造されている。好適な材料としては、プラスチック、ガラス及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な容器は、米国特許第4878597号に記載されており、従来技術において公知である。
【0159】
具体的な態様では、材料の内部表面は、前凍結乾燥製剤を凍結乾燥することによって得られる凍結乾燥組成物の粘着を防止するため、コーティングがされている。例えば、ガラス材料をシリコーンでコーティングすることができる。
【0160】
一実施形態では、上記容器は、被験者へ治療上有効量のペプチドを送達するための送達システムへの用途に適合させたものである。例えば、上記容器は、鼻腔内へ製剤を提供するためのスプレーキャップへの連結に適するものであってもよく、又はポンプ装置(シリンジ)への装着に適するものであってもよく、又はペン装置用の注射可能カートリッジとして作製してもよい。1つの態様では、上記容器は、水分が凍結乾燥組成物の貯蔵の間に容器に侵入するのを防止するための着脱可能なカバー又はシールを有してもよく、上記容器から当該カバー又はシールを除去した後、送達システムに供することができる。他の態様においては、上記シール又はカバーは、容器の開口部全体にわたり無菌バリアを形成する。凍結乾燥容器用のカバー及びシールは、従来技術において公知である。
【0161】
具体的な態様では、上記カバー又はシールは、送達システムの構成要素(例えばスプレーキャップの一部)により穿刺されてもよく、それにより、凍結乾燥組成物の再構成の際に成分(例えば水)が提供され、再構成された製剤の滅菌状態が維持される。
【0162】
上記容器中に、1つ以上の投与用製剤を含めてもよい。具体的な態様では、上記容器は、1週間、2週間又は1ヵ月間にわたる投与に適する製剤のユニットドーズ(当該製剤は1日1回、2回又は3回投与される)を含んでなってもよい。
【0163】
具体的な態様では、上記容器は、容器中に充填する際の適正なレベルを示すフィルライン(fill−line)をその外表面に有し、それを用いて、前凍結乾燥製剤を凍結乾燥した後に得られた凍結乾燥組成物を再構成して、即投与可能(ready−to−administer)又は即処置可能(ready−to−treat)な製剤を得る。
【0164】
一実施形態では、上記前凍結乾燥製剤の充填体積は、最終体積の少なくとも約40%である。例えば、1つの態様では、上記前凍結乾燥製剤の充填体積は4mlであり、再構成された製剤の体積は10mlである。具体的な態様では、容器の内径に対する充填高さの比率は、約0.5超、約0.75超又は約1.0である。1つの態様では、容器の全高に対する前凍結乾燥製剤の充填高さの比率は、少なくとも約25%である。他の態様においては、再構成された製剤(例えば1つの態様では、上記前凍結乾燥製剤の凍結乾燥の後に得られた凍結乾燥組成物に水を添加して形成される)の充填高さに対する、前凍結乾燥製剤の充填高さの比率は、少なくとも約40%、又は少なくとも約45%である。更なる実施形態では、凍結乾燥された組成物は、前凍結乾燥製剤量より大きい液量(例えば水又はバッファ)中に再構成することによって、即投与可能(ready−to−administer)な形態に再構成される。更に他の態様において、即処置可能(ready−to−treat)な形態とは、例えばスプレー又はエアゾールによる送達システムで患者に提供できる、粉末の形態である。ゆえに、特定の態様では、上記組成物は再構成せずに被験者に投与することができる。
【0165】
再構成された製剤は、様々な方法による投与に適しており、例えば経粘膜送達、又は非経口投与(例えば静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下への注射)に適している。一実施形態では、再構成された製剤を鼻腔内に投与する。上記製剤は、点眼、点鼻剤、うがい薬、吸入、局所投与、スプレー又は他の方法(例えば点滴、メーターで測定された量の投与、噴霧、エアロゾール投与又は適合性を有するビヒクル中の懸濁液としての点滴)によって投与してもよい。本発明の範囲内には、眼内、鼻内、肺内、バッカル、舌下、直腸内又は膣内への投与も包含される。
【0166】
一実施形態では、本発明はまた、凍結乾燥組成物の調製方法の提供に関する。従来技術において公知の凍結乾燥システムが使用できる。典型的には、これらは乾燥チャンバ、1つ以上のコンデンサ、冷却システム及び減圧機構(例えば真空チャンバ)を含んでなる。
【0167】
1つの態様では、上記前凍結乾燥製剤の成分を、例えば上記したように容器中において混合する。
【0168】
1つの態様では、上記の凍結乾燥方法は、凍結工程、第1の乾燥工程及び第2の乾燥工程を有してなる。
【0169】
開始温度から凍結温度まで温度を低下させることによって、凍結を一段階で生じさせることができる。1つの態様では、上記開始温度は約0℃〜25℃の範囲であるか、又は0℃超(例えば約10℃〜25℃)である。上記凍結温度は、前凍結乾燥製剤の結晶形成が最適となるように選択される。過度に急速に凍結させることにより小さい結晶の形成が誘導され、それより、高い水蒸気耐性が生じ、乾燥時間が長時間化する事態が生じうる。1つの態様では、開始温度と凍結温度の差は、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、又は少なくとも約60℃、又は少なくとも約80℃である。例えば、一態様において、凍結温度は約−40℃〜約−80℃であり、例えば、凍結温度は約−60℃であってもよい。温度を、一定の速度で徐々に低下させることができる。1つの態様では、1分あたり約1℃で温度を低下させる。
【0170】
具体的な態様では、凍結工程を一段階で実施する。1つの態様では、上記凍結工程では、アニーリング工程(例えば、製剤成分の結晶化温度以上、かつ0℃以下の温度で維持する)を実施しない。上記凍結工程に続いて、第1の乾燥工程を実施する。具体的な態様では、上記第1の乾燥工程は、凍結温度で一定の時間行われ、例えば、凍結した組成物を凍結温度で約0分〜10時間、又は0分〜約4時間維持する。
【0171】
上記第1の乾燥工程の間、冷凍された製剤を、例えば真空下に冷凍された製剤を配置することによって、低圧力条件に供する。1つの態様では、圧力を600mTorrに低下させる。更に、冷凍された製剤を徐々に加熱(例えば1℃超/分)し、凍結した水を昇華させる。1つの態様では、製剤を、上記前凍結乾燥製剤の大部分の固体成分を占める成分のTgよりも低い温度にまで加熱する。例えば、1つの態様では、製剤を、親水性部分と疎水性若しくは親油性部分とを有する成分(例えば環状オリゴ糖(例えばシクロデキストリン))(のTg)より低い温度まで加熱する。1つの態様では、上記第1の乾燥温度は−13℃未満であり、例えば約−20℃〜約−16℃である。1つの態様では、第1の乾燥温度に達する前に圧力を減少させる。具体的な態様では、第1の乾燥温度が一定時間(例えば約0分〜約1時間、又は約30分)維持される。
【0172】
再び温度を徐々に上昇させ(例えば1℃/分)、第2の乾燥工程の間、残留する結合水を脱着する。具体的な態様では、約5%未満の残留水分、約2%未満又は約1%未満の残留水分となるまで、第2の乾燥工程を実施する。1つの態様では、第2の乾燥工程の温度は、凍結乾燥組成物の最終的な貯蔵温度より高い温度であり、例えば0℃超、3℃超、5℃超、15℃超、20℃超、21℃超、22℃超、23℃超、24℃超(例えば約25℃)、40℃超(例えば約45℃)である。1つの態様では、この工程の間、真空状態が維持される。
【0173】
具体的な態様では、第2の乾燥工程を2フェーズで実施し、例えば、温度を最初の第2の乾燥温度に上昇させ、次に、温度を最終的な第2の乾燥温度に再度上昇させる。例えば、1つの態様では、最初の第2の乾燥温度は、前凍結乾燥製剤の主な成分のTgより高く、かつ第2の乾燥温度より低い温度であり、具体的な例としては0℃未満であり、例えば約−5℃又は約−3℃である。得られる生成物を、例えば約0分〜約20時間にわたり、最初の第2の乾燥温度に維持し、その後、生成物の温度を最終的な第2の乾燥温度、(例えば0℃超、20℃超、40℃超、例えば約45℃)に徐々に上昇させる。上記生成物を一定の時間(例えば約0分〜約10時間、又は約6時間)、最終的な第2の乾燥温度に維持することができる。あるいは、第2の乾燥工程を、単一の温度で実施してもよく、例えば、上記生成物を、第1の温度から徐々に最終的な第2の第1の温度に上昇させ、次に一定時間(例えば約5〜約25時間又は約20時間)、最終的な第2の乾燥温度に維持する。
【0174】
第2の乾燥工程の後、上記生成物(固体状(例えば粉体又はケーキ状)の凍結乾燥組成物)を所定の時間(例えば約0分〜約5年)貯蔵温度で保存することができる。使用(例えば被験者に対する投与)の際、上記凍結乾燥組成物は、上記のように水若しくは緩衝液、及び/又は更なる成分を添加することによって、再構成することができる。1つの態様では、生成物を、30分未満(例えば約0〜15分)以内に、粒子を含まない溶液に再構成することができる。1つの態様では、再構成された生成物は、0〜4℃で、少なくとも約48時間安定である。他の態様においては、再構成された生成物は、再構成の後、少なくとも約1週間、又は少なくとも約1ヵ月間安定である。更に他の態様において、再構成された生成物は、再構成の後、18℃超の温度で、少なくとも約1週間、又は少なくとも約1ヵ月間安定である。具体的な態様では、再構成された生成物は、冷凍操作又は特別な貯蔵操作を必要とせずに、提供される全ての投与単位を被験者が使用できる期間の間、安定である。例えば、上記製剤が、生理活性ペプチド1ヵ月分として供給された場合、再構成された上記生成物は、冷凍させることなく、例えば18℃超の温度(例えば約25℃)で、少なくともその期間(すなわち1ヵ月間)安定である。
【0175】
凍結乾燥工程を行う時間は、充填体積及び固体成分に応じて変化しうるが、1つの態様においては、少なくとも約20重量%の固体成分であり、かつ最終的な再構成された製剤の体積に対する前凍結乾燥溶液の充填体積が40%である場合には、当該工程は約48時間未満、約40時間未満、及び約35時間未満の時間を要する。
【0176】
本願明細書に記載のようなペプチド製剤は、様々な方法に使用することができ、一般的にペプチドが使用できるいかなる治療方法において使用することができる。
【0177】
具体的な態様では、ペプチド製剤は、限定されないが、以下のような様々な治療効果のうちの1つ以上を生じさせるために使用できる:グルコース濃度を低下させる効果、食後のグルコース濃度の減少、絶食時のグルコース濃度の減少、血糖の可変性の減少、グルカゴン濃度を低下させる効果、インシュリンを分泌させる効果、摂食の調節、食欲の調節、満腹感の増加、食物選好を変更させること、過食症の低減、体重又は体重変化速度の改善、BMIの減少、筋肉質量の減少を伴わない脂肪の減少、脂肪沈着の減少、養分吸収の調節、膵臓β−細胞機能の改善、膵臓β細胞の数又はサイズの増加、膵臓β−細胞の新生、Cペプチドの濃度の調節、アポトーシスの調節(例えば例えば膵臓β−細胞アポトーシスの減少、サイトカインの媒介によるアポトーシスの減少、糖質コルチコイドにより誘発されるアポトーシスの減少、心筋細胞のアポトーシスの減少など)、胃の緩徐化の調節、胃の運動の調節、酸化ストレスマーカーの減少、腎機能の調節(例えば糖尿の減少など)、1つ以上の生物的活性成分(例えば生理活性ペプチド又は小分子)との相互作用の増強、及び/又は、ペプチド(例えば例えばエキセンディン、アミリン、プラムリンチド、レプチン、PYY、カルシトニン)又はそれらの修飾型形態、誘導体、変異体、キメラ型形態及び/又はハイブリッド型形態の投与に関連する所望のエンドポイント。
【0178】
具体的な態様では、ペプチド製剤は、限定されないが以下の治療方法に使用できる:脂質プロファイルの改善(LDLコレステロール及びトリグリセリドレベルの減少、及び/又はHDLコレステロールレベルの変化を含む)、高血圧、異脂肪血症、循環器疾患、インスリン耐性の治療、I型、II型及び妊娠糖尿病を含むあらゆる種類の糖尿病の治療、糖尿病合併症(神経病変)の治療、神経障害性疼痛、網膜症、腎症、不十分な膵臓β細胞塊による症状、ストレス性高血糖の治療、中毒性循環血液量過多症に関連する症状又は障害(例えば腎機能不全、うっ血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫及び高血圧)の治療、心収縮性の増加により軽減されうる症状又は障害(例えばうっ血性心不全)の治療、重量増加(例えば肥満、例えば30以上のBMI)、又は空腹感(例えばプラダー−ウィリ症候群)、体脂肪の喪失(例えばリポジストロフィー)に関連する症状の治療、摂食障害の治療、耐糖能異常(IGT)、絶食時の血漿中グルコース濃度の異常、代謝性アシドーシス、ケトーシス、関節炎、肥満及び骨粗鬆症の治療。
【0179】
治療方法は、製剤中に添加された生理活性ペプチドに必然的に依存すると考えられ、また本願明細書における開示を読んだ当業者にとって自明であるべきである。
【実施例1】
【0180】
以下の実施例は、本発明の実施態様を例示するものであり、本発明を限定することを目的とするものではない。
【0181】
実施例1:
表5に示される以下の材料から、以下の濃度で溶液を調製し、エクセナチド(合成エキセンディン−4)の前凍結乾燥製剤を形成させた。
【0182】
【表19】

【0183】
前凍結乾燥製剤を含むバイアルの全高は、50.62mm(バイアル底の厚は2.71mm)であった。バイアルの外径(OD)は23.90mmであり、一方内径は19.22mmであった。4mlの場合、バイアル中の前凍結乾燥式の充填高さは、メニスカスの最上部に対して17.21であった。10mlの場合、再構成された製剤の充填高さは、メニスカスの最上部に対して34.69であった。測定値は概算である。
【0184】
FTS LyoStar II凍結乾燥器(FTS Systems、Stone Ridge、NY)の凍結乾燥チャンバ内に前凍結乾燥製剤を置き、23℃から1℃/分の速度で−50℃温度を下げることによって、凍結症状に供した。凍結した製剤を、−50℃で約4時間維持した。次に第1の乾燥工程において生成物温度を1℃/分の速度で−16℃(シェルフ温度−3℃)に上昇させ、圧力を600mTorrに減少させ、次に、製剤を約20時間、第1の乾燥温度に曝露し、その時間において、生成物温度を、シクロデキストリンのTgより上の温度から、第1の乾燥温度に上昇させた。1℃/分の速度で温度を45℃まで上昇させ、約6時間のこの温度を維持することによって、製剤を第2の乾燥工程に供した。これ以後、凍結乾燥組成物の貯蔵温度まで、すなわち25℃にまで温度を低下させた。典型的な凍結乾燥サイクルを図1に示す。生成物を、15〜25分間かけて再構成し、透明にした。カール−フィッシャー滴定で測定した結果、完全に凍結乾燥された生成物の平均含水量は、2.25%〜0.90%のH20であった(Scholz E.ら、Karl Fischer Titration,Springer Verlag,Berlin,Heidelberg,New York,Tokyo,1983を参照のこと)。
【0185】
図2に示すように、SCX−HPLCで測定し、HPLCフォトダイオードアレイ(PDA)検出器で測定したときの、再構成された製剤の214nmの吸光度と、エクセナチドを含む標準物質の吸光度とを比較した結果、エクセナチドの理論上の含量がこのプロセスにより100%回収できることが示された。
【0186】
凍結乾燥製剤の含量及び純度を、図3A及び3Bに示すように、5℃及び20℃で最高6ヵ月間の保存期間にわたり測定した。各時点において、凍結乾燥された固体を、水で再構成し、エクセナチドの含量をSCX HPLCで測定した。「含量」とは、サンプル中に存在する純粋なエクセナチドの量のことを指し、凍結乾燥製剤中のエクセナチドピーク面積を、エクセナチド標準物質のピーク面積、並びに前凍結乾燥製剤中のエクセナチド含量と比較することにより得られる。図において、エクセナチド含量(%)とは、「100%」とされた前凍結乾燥製剤中のエクセナチド含量との比較値である。更に、更なる比較のため、凍結乾燥されたサンプルを再構成(t=0)して、5℃、25℃及び40℃の溶液として維持し、様々な時間における含量及び純度をアッセイし、溶液(「sol」)中のエクセナチドの安定性を、凍結乾燥製剤(「lyo」)中のエクセナチドの安定性と比較した。例えば、「5C lyo」とは、5℃で保存したエクセナチドの凍結乾燥製剤を指し、一方、「5C sol」とは、同じ時間、5℃で保存したエクセナチドの再構成された製剤のことを指す。
【0187】
図で示されるように、凍結乾燥製剤は、凍結乾燥されずに5℃で保存されたエクセナチドの溶液製剤と比較し、6ヵ月の貯蔵期間において95%以上の純度が維持されていた。全てのケースにおいて、凍結乾燥製剤は溶液製剤より安定であった。更に、凍結乾燥製剤は25℃における良好な安定性を示した。
【0188】
結論:
上記した発明の詳細な説明及び実施例から、幾つかの本発明の態様を実施できることは自明である。
【0189】
本発明を図と実施例とを挙げて説明したが、それらは、他の当業者に対して本発明、その原理及びその実際の用途を教示するためのものと理解すべきである本発明の具体的な製剤及び方法は、開示された具体的な実施形態の説明に限定されるものではなく、むしろそれらの説明及び実施例は、以下の特許請求の範囲及びそれらと均等な内容の見地から見るべきである。上記の実施例及び説明には、本発明が機能しうる方法に関する幾つかの結論が含まれるが、発明者らは、それらの結論及び機能に拘束されることを意図しておらず、単に考えられる説明を述べたに過ぎない。
【0190】
更に、上記の本発明の具体的実施形態は、本発明を完全に包含し若しくは制限することを目的とするものではないと理解すべきであり、当業者であれば、上記の実施例及び詳細な説明を考慮することにより、その多くの変形例、修飾及びバリエーションを実施できる。したがって、本発明には、以下の特許請求の範囲内の、全てのかかる変形例、修飾及びバリエーションが含まれるものと解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド及び環状オリゴ糖、を含んでなる前凍結乾燥溶液であって、溶液中の固体成分の含量が少なくとも20重量%であり、前記環状オリゴ糖が前記固体成分の少なくとも80%を占める溶液。
【請求項2】
ペプチド、リン脂質、並びに、親水性部分及び親油性若しくは疎水性部分を有する分子、を含んでなる前凍結乾燥溶液であって、溶液中の固体成分の含量が少なくとも20重量%であり、前記親水性部分及び親油性若しくは疎水部分を有する分子が、リン脂質を可溶化する量で存在する溶液。
【請求項3】
前記親水性部分及び親油性若しくは疎水部分を有する分子が、環状オリゴ糖を含んでなる、請求項2記載の溶液。
【請求項4】
前記ペプチドが生理活性ペプチドである、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項5】
前記ペプチドが血糖調節ペプチドである、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項6】
前記ペプチドが体重制御及び/又は食事制御ペプチドである、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項7】
前記ペプチドが、インクレチン、インクレチンアゴニスト、アミリン、アミリンアゴニスト、カルシトニン、カルシトニンアゴニスト、レプチン、レプチンアゴニスト、PYYアンタゴニスト、グレリンアンタゴニスト、及びそれらの類縁体からなる群から選択される、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項8】
前記インクレチンが、エキセンディン、エキセンディン類縁体、GLP−1、GLP−1類縁体、GIP又はGIP類縁体である、請求項7記載の溶液。
【請求項9】
前記ペプチドが、他の生理活性ペプチドと融合又はコンジュゲートしている、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項10】
塩化ベンザルコニウムでない防腐剤を含んでなり、前記ペプチドがエキセンディン又はエキセンディンの類縁体である、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項11】
前記防腐剤がパラベンを含んでなる、請求項10記載の溶液。
【請求項12】
更にポリアミノ酸を含んでなる、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項13】
前記環状オリゴ糖がシクロデキストリンである、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項14】
凍結保護剤又は溶解保護剤を含まない、請求項1又は2記載の溶液。
【請求項15】
前凍結乾燥溶液を含有する容器であって、前記溶液がペプチドを含んでなり、前記溶液中の固体成分の含量が少なくとも20重量%であり、前記容器の内径に対する充填高さの比率が0.50超である、容器。
【請求項16】
被験者にペプチドを送達するための送達システム用途に適合している、請求項15記載の容器。
【請求項17】
スプレーキャップで封止されることができ、凍結乾燥の後に再構成された溶液の鼻腔内投与に用いられる、請求項16記載の容器。
【請求項18】
ペプチド製剤の調製方法であって、少なくとも20重量%の含量の固体成分を含んで成る、ペプチドを含有する前凍結乾燥溶液を準備するステップと、前記ペプチドを含有する前記前凍結乾燥溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥されたペプチド組成物を準備するステップと、前記凍結乾燥されたペプチド組成物に最終的な量の水溶液を添加するステップと、を有してなり、前記前凍結乾燥溶液の充填体積が最終体積の40%である方法。
【請求項19】
凍結乾燥が、凍結サイクルと、第1の乾燥サイクルと、第2の乾燥サイクルとを有してなる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
凍結乾燥が、アニーリング工程を有さない、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記第1の乾燥サイクルが、溶液中の固体成分中に最も多く含まれる成分のガラス転移温度以下の温度で実施される、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記溶液中の固体成分中に最も多く含まれる成分が、環状オリゴ糖を含んでなる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記第2の乾燥サイクルが、25℃超の温度で実施される、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記ペプチドが生理活性ペプチドであり、前記凍結乾燥されたペプチド組成物が、4℃超の温度で保存されたとき、6ヵ月超の期間にわたり、その生物学的活性が維持されている、請求項18記載の方法。
【請求項25】
凍結乾燥が、48時間未満で実施される、請求項18記載の方法。
【請求項26】
凍結乾燥されたペプチド組成物の調製方法であって、少なくとも20重量%の含量の固体成分を含んで成る、ペプチドを含有する前凍結乾燥溶液を含有する容器を準備するステップと、前記ペプチドを含有する前記前凍結乾燥溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥されたペプチド組成物を準備するステップと、を有してなり、前記容器の内径に対する前記前凍結乾燥溶液の充填高さの比率が0.5超である方法。
【請求項27】
前記容器の内径に対する前記前凍結乾燥溶液の充填高さの比率が0.75以上である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
凍結乾燥されたペプチド組成物の調製方法であって、少なくとも20重量%の含量の固体成分を含んで成り、更に前記固体成分に対して少なくとも80%の環状オリゴ糖を含んでなる、ペプチドを含有する前凍結乾燥溶液を準備するステップと、前記前凍結乾燥溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥されたペプチド組成物を得るステップと、を有してなる方法。
【請求項29】
凍結乾燥されたペプチド組成物の調製方法であって、少なくとも20重量%の含量の固体成分を含んで成る、ペプチドを含有する前凍結乾燥溶液を準備するステップと、前記前凍結乾燥溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥されたペプチド組成物を得るステップと、を有してなり、凍結乾燥が48時間未満で実施される方法。
【請求項30】
生理活性ペプチドを保存する方法であって、請求項26、27、28又は29記載の方法に従い凍結乾燥されたペプチド組成物を調製するステップと、前記凍結乾燥されたペプチド組成物を少なくとも48時間保存するステップとを有してなる方法。
【請求項31】
前記凍結乾燥されたペプチド組成物が、少なくとも1ヶ月間保存される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記凍結乾燥されたペプチド組成物が、少なくとも6ヵ月間保存される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記凍結乾燥されたペプチド組成物が、18℃超の温度で保存される、請求項30から32のいずれかの方法。
【請求項34】
請求項18記載の方法に従い調製されるペプチド製剤中のペプチドを投与するステップを有してなる、生理活性ペプチドにより治療可能な患者の治療方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2010−512399(P2010−512399A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541354(P2009−541354)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/025382
【国際公開番号】WO2008/073448
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(598133654)アミリン・ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】AMYLIN PHARMACEUTICALS, INC.
【住所又は居所原語表記】9360 Towne Centre Drive, San Diego, CA 92121 USA
【Fターム(参考)】