説明

半固体組成物および医薬品

本発明は、女性生殖器系、肛門および陰茎における癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療(PDT)において使用される、好ましくは子宮内膜、子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎の異形成症、ならびに子宮、子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎のHPV感染のPDTにおいて使用される、半固体組成物および半固体医薬品に関する。半固体組成物および半固体医薬品は、5−アミノレブリン酸(5-ALA)または5-ALAの前駆体もしくは誘導体またはこれらの薬学的に許容される塩である活性成分を含む。本発明は、女性生殖器系、肛門および陰茎における、癌、前癌性状態および非癌性状態のPDTの方法にさらに関連し、ここで前記半固体組成物および医薬品が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性生殖器系、肛門および陰茎における癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療(PDT)において使用される、好ましくは子宮内膜、子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎の異形成症、ならびに子宮、子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎のHPV感染のPDTにおいて使用される、半固体組成物および半固体医薬品に関する。半固体組成物および半固体医薬品は、5-アミノレブリン酸(5-ALA)または5-ALAの前駆体もしくは誘導体またはこれらの薬学的に許容される塩である活性成分を含む。本発明は、女性生殖器系、肛門および陰茎における癌、前癌性状態および非癌性状態のPDTの方法に更に関連し、ここで前記半固体組成物および医薬品が使用される。
【背景技術】
【0002】
光力学的治療(PDT)は、前癌性病変、癌および非癌性疾患の治療における比較的新しい技術である。PDTは、光増感剤またはその前駆体を関心領域に投与することを伴う。光増感剤またはその前駆体は細胞に取り込まれ、ここで光増感剤の前駆体は光増感剤に変換される。関心領域を光に曝露すると、光増感剤は、通常、基底一重項状態から励起して、励起一重項状態になる。これは次に項間交差を受けて、長寿命励起三重項状態になる。組織に存在する数少ない基底三重項状態を有する化学種は、分子酸素である。光増感剤および酸素分子が近接している場合、光増感剤が緩和して基底一重項状態になり、励起一重項状態酸素分子を作り出すことを可能にする、エネルギー移転が生じうる。一重項酸素は、非常に攻撃的な化学種であり、近くの生体分子いずれかと非常に素早く反応する。最終的に、これらの破壊的反応は、アポトーシスまたは壊死によって細胞を死滅させ、それにより例えば癌細胞を選択的に死滅させる。機構は依然として完全には理解されていないが、研究は、臨床結果(すなわち、癌性細胞に対する選択性)は、癌性細胞による選択的取り込みに起因しないことを示唆している。むしろ、全ての細胞型において同様のレベルの取り込みがあるが、変換および排除のプロセスは、悪性細胞においておよび炎症または感染した細胞のような一般に代謝活性な細胞において異なり、癌性と正常な組織の間に濃度勾配をもたらす。
【0003】
5-アミノレブリン酸(5-ALA)およびその特定の誘導体、例えば5-ALAエステルを含む幾つかの光増感剤が既知であり、文献に記載されており、両方とも光増感剤の前駆体であり、プロトポルフィリンIX(PpIX)のようなプロトポルフィリンに変換される。現在、5-ALAまたはそのエステルを含む幾つかの医薬品が、PDTにおいて臨床で使用されている。それらのうちの一つは、光線性角化症および基底細胞癌の光力学的治療のための、5-ALAメチルエステルを含むクリーム剤の形態の皮膚製剤であるMetvix(登録商標)(Photocure ASA, Norwayにより開発され、現在Galderma, Switzerlandにより販売されている)である。別のものは、5-ALAを含有する、光線性角化症の光力学的治療のための製剤である、DUSA Pharmaceuticals(Canada)により開発されたLevulan Kerastick(登録商標)である。
【0004】
子宮頸部の最も重症な感染の一つは、子宮頸癌に進展しうるヒトパピローマウイルス(HPV)である。HPV感染は、ほぼ全ての子宮頸癌症例の発症において共通因子である。HPV感染の有病率の推定は変動するが、典型的には全ての女性のおよそ30%でありうる。近年、Gardasil(登録商標)およびCervarix(登録商標)のようなHPVワクチンが開発されている。しかし、子宮頸癌は相変わらず生命を脅かす疾患のままである。癌は、不幸なことに多くの場合に遅くに診断され、それは症状が、癌が後期に進展するまで不在である場合があるからである。子宮頸癌の一つの可能な初期徴候は、膣出血である。子宮頸癌は、生検方法に基づいて診断される。主な治療は外科手術であるが、放射線および化学療法を疾患の後期に使用することができる。子宮頸癌の患者の予後は、診断時の病期によって左右される。HPV感染は、子宮、外陰部、膣、肛門および陰茎を更に冒す場合があり、これらの感染は、子宮癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および陰茎癌に進展しうる。膣および子宮頸部のような複数感染部位の可能性がある。
【0005】
子宮頸癌異形成としても知られている子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)は、子宮頸部の表面における扁平上皮細胞の潜在的な前悪性変換および異常増殖である。それに対応して、子宮内膜、外陰、膣、肛門および陰茎の異形成症としても知られている、子宮内層の子宮内膜上皮内腫瘍(EIN)、外陰上皮内腫瘍(VIN)、膣上皮内腫瘍(VAIN)、肛門上皮内腫瘍(AIN)および陰茎上皮内腫瘍(PEIN)は、子宮内層、外陰、膣(通常、膣の上側1/3は子宮頸部病変が豊富でありうる)、肛門(肛門周囲皮膚または扁平粘膜の肛門管)および陰茎の表面における扁平上皮細胞の潜在的な前悪性変換および異常増殖である。そのような異形成症の大部分の症例は、安定状態を維持するかまたは介入を用いることなく身体の免疫系により排除される。しかし、僅かな率の症例は、未治療のまま放置すると、進行して癌になり、通常は扁平上皮癌(SCC)になる。CIN、EIN、VIN、VAIN、AINおよびPEINの主な原因は、HPV、特に危険性の高いHPV16または18型に罹患している臓器または組織の慢性感染である。
【0006】
100種類以上のHPVが同定されている。これらのHPVの種類のうち約12個が子宮頸部異形成症を引き起こすと思われ、子宮頸癌の発症をもたらしうる。CINに相当する最も初期の顕微鏡的変化は、子宮頸部の上皮または表面層の異形成症であり、本質的に女性により検知されない。コイロサイトのようなHPV感染に関わる細胞変化も、CINにおいて一般的に見られる。CINは、通常、スクリーニング試験、パパニコローまたは「パップ」塗抹により発見され、これによってVINおよびVAINも診断することができる。肛門パップ塗抹がAINを検出するために存在する。これらの試験の目的は、まだ浸潤癌に進行しておらず、治癒が容易な初期のうちに変化を検出することである。異常パップ塗抹は、子宮頸部、外陰および膣のコルポスコピーの推奨をもたらす場合があり、これらの臓器および組織は拡大して検査される。酢酸溶液またはヨウ素溶液を表面に適用して、異常領域の視覚化を改善することができる。コルポスコピーを陰茎において実施することもできる。生検を任意の異常と思われる領域において行い、子宮内膜、子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎の異形成症を、生検試験片の組織学的検査により診断することができる。
【0007】
上記に記述された上皮内腫瘍を治療するために使用される方法は、子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎の表面細胞の除去または破壊を必要とする。これらの方法には、切除、凍結腐蝕、電気焼灼、レーザー焼灼、LEEP(子宮頸部)および子宮頸部円錐切除が含まれる。前記の方法は全て、重篤な子宮内膜症をもたらす(子宮頸部)狭窄、早期分娩または低出生体重児を伴う子宮頸部不全および瘢痕のような副作用を有する場合があり、感染および出血が含まれうる。故に、そのような上皮内腫瘍の治療方法の医学的な必要性が依然として存在し、PDTは、治療を受けた患者が良好な反応率を示すので代替案として証明されている。
【0008】
CINのPDTにおいて、5-ALAおよび5-ALAのエステルの両方が使用されている。K. Bodner et al., Anticancer Res 2003;23(2C):1785-1788は、1%EDTA(w/v)を含有する0.9%NaCl水溶液中の5-ALA(12%w/v)の溶液を使用した。5-ALA溶液は、PDTを実施する直前に調製された。A. Barnett et al, Int. J. Cancer: 103, 829-832 (2003)は、使用直前に調製された、Intrasite gel(登録商標)中の5-ALAの3%または5%(w/w)溶液を使用した。Intrasitegelは、2.3%の改質カルボキシメチルセルロース(CMC)ポリマーを、保湿剤および防腐剤としてプロピレングリコール(20%)と一緒に含むヒドロゲルである。P. Hiiiemanns et al., Int. J. Cancer:81, 34-38 (1999) は、プロピレングリコールを含有する滅菌0.9%NaCl水溶液に最終濃度20%で新たに溶解し、NaHCO3を使用してpH5.5に調整した5-ALA塩酸塩を使用した。P. Soergel et al., Lasers In surgery And Medicene 40:611-615, 2008は、サーモゲル製剤として適用する5-ALAヘキシルエステルを使用した。サーモゲル基剤として、粉末として提供される生体付着性ポリキサマーであるLutrol F-127を使用し、サーモゲルは、滅菌水をその場で加えることにより調製する必要があった。サーモゲルを含有する5-ALAヘキシルエステルは、適用前に新たに調製する必要があった。
【0009】
上記から分かるように、5-ALAおよび5-ALAエステルの新たに調製した製剤がPDTまたはCINに使用されており、これは、これらの化合物の限定された安定性に起因し、次にこのことはそれらが存在する医薬品の保存期限を限定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】K. Bodner et al., Anticancer Res 2003;23(2C): 1785-1788
【非特許文献2】A. Barnett et al, Int. J. Cancer: 103, 829-832 (2003)
【非特許文献3】P. Hiiiemanns et al., Int. J. Cancer:81, 34-38 (1999)
【非特許文献4】P. Soergel et al., Lasers In surgery And Medicene 40:611-615, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多数の異なる戦略がこの問題の克服を試みるために適用されてきた。例えば、5-ALAメチルエステルを含有するMetvix(登録商標)は、低温状態で保存される。5-ALAを含有するLevulan Kerastick(登録商標)は、適用直前に溶液を調製するのに使用される2区画製剤として販売される。5-ALAヘキシルエステルを含む、Photocure ASA(Oslo, Norway)により開発されたHexvix(登録商標)は、膀胱癌および前癌性病変の光力学的診断(PDD)において臨床で使用される。PDD方法において、Hexvixは、5-ALAヘキシルエステルの凍結乾燥粉末および溶解媒質からその場で新たに調製された水溶液の形態で膀胱に注入される。
【0012】
しかし、これらの手法は欠点を有する。例えば、薬剤を低温状態で輸送および保存することが必ずしも使い勝手が良いわけではない。更に、医師にとって最も都合の良い直ぐに使用できる形態で医薬組成物を提供することも、一般に好ましい。直ぐに使用できる形態での提供は、信頼性がある正確な濃度で組成物を調製することも可能にする。このことは、治療剤の正確で効率的な投与量が投与されることが重大でありうる癌を含む大部分の疾患の治療において、特に重要である。
【0013】
米国特許出願第2003/125388号は、安定した5-ALA製剤を提供する代替的な手法を記載し、ここで5-ALAまたはその誘導体は、25℃で80未満の誘電率を有する非水性液に溶解または分散され、前記液体は5-ALAまたはその誘導体を安定化する。非水性液の使用は、5-ALAのエノール形態の形成を促進し、次にその分解を防止することが仮定される。しかし安定性データは示されていない。米国特許出願第2003/125388号に記述される適切な非水性液の例には、グリセロールおよびそのC1〜C20カルボン酸のモノ−、ジ−およびトリエステル、プロピレングリコール、アルコール、エーテル、エステル、ポリ(アルキレングリコール)、リン脂質、DMSO、N-ビニルピロリドンおよびN,N-ジメチルアセトアミドが含まれる。この組成物は、治療または診断用途のキットの一部を形成することができる。キットの他の部分は、水を含む組成物である。この場合、キットの2つの部分は使用前に混合される。したがって米国特許出願第2003/125388号の手法は、実際に投与される医薬品を配合する医師が必要とする形態で医薬を提供することが一般に望ましくないという点において、Levulan Kerastick(登録商標)と同じ欠点を被る。
【0014】
故に、5-ALAおよび5-ALAエステルの代替的な製剤の必要性、したがって、子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎のHPV感染、前記臓器または組織の細胞異常、特に子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎の異形成症を治療するPDTにおいて使用される、5-ALAおよび5-ALAエステルを含む製剤の必要性が存在する。
【0015】
国際公開公報第2009/074811号は、癌および女性生殖器系、すなわち子宮、子宮頸部および膣のHPV感染のような非癌性状態のPDTにおいて使用される固体医薬品を開示する。前記固体医薬品を、坐剤またはペッサリー剤の形態で投与することができる。用語「固体」は、本明細書において定義されるとき、記載される実体、すなわち医薬品の物理的状態が液体または気体ではなく固体であることを意味する。液体、溶液、ゲルまたはクリームは前記用語に包含されない。前記固体医薬品は、カプセル剤、ペレット剤、粉末剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、坐剤、ペッサリー剤またはミニ錠剤の形態であることができ、前記ミニ錠剤、粉末剤、顆粒剤またはペレット剤を、更に、カプセル剤の中に入れて提供することまたは圧縮して錠剤にすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者たちは、驚くべきことに、女性生殖器系、肛門および陰茎における癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療において使用される、好ましくは子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎の異形成症、ならびに子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎のHPV感染のPDTにおいて使用される、5-ALAまたはその誘導体(例えば、ALAエステル)を含む新しく、代替的な半固体製剤を、現在見出している。
【0017】
新しい固体製剤は、室温で安定であり、医療関係者による取扱いが容易であり、患者に更なる便宜を提供する。更にこれらを子宮頸部、外陰、膣、肛門および陰茎に容易に適用することができる。故に、これらは、従来技術の上記に記述された欠点を克服し、意図される部位に5-ALAまたはその誘導体の有効な濃度を提供することができ、前記の意図される部位に5-ALAまたはその誘導体(例えば、ALAエステル)の実質的に均質(すなわち、均一)な分布を提供することもできる。
【0018】
したがって、第一態様の観点から、本発明は、女性生殖器系、肛門および陰茎の癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療に使用される、
a)5-ALA、5-ALAの前駆体、5-ALAの誘導体およびその薬学的に許容される塩から選択される活性成分;
b)1つ以上のトリグリセリド;ならびに
c)任意に1つ以上の粘度増強剤
を含む、半固体医薬品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明に包含されない固体医薬品の投与後、被験者1(▲)および被験者2(■)の組織に集積したポルフィリンにより引き起こされた経時的な発光を示す。
【図2】図2は、本発明の半固体医薬品の投与後、被験者1(▲)および被験者2(■)の組織に集積したポルフィリンにより引き起こされた経時的な発光を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
用語「半固体」は、固体でもなく液体でもない物理的状態を意味する。半固体(または準固体)は、幾つかの点において固体と類似しており、例えば半固体は、自重を支持し、その形状を保持することができるが、圧力を適用するものへの形状適合または圧力下で流動する能力のように、幾つかの液体の特性も共有する。半固体は、非かく乱系に固体様特性を付与するのに十分であるが、付加圧力下で容易に壊れ再構成するという三次元構造により特徴付けられる。半固体は、固体と液体の中間の剛性および粘度を有する。
【0021】
用語「医薬品」は、被験体、例えばヒトまたは非ヒト動物、好ましくはヒトに実際に投与される実体を意味する。
【0022】
本発明の半-半固体医薬品[semi-semi-solid pharmaceutical products]は、皮膚および粘膜への局所適用のためのクリーム剤、軟膏剤、ペースト剤およびゲル剤である。
【0023】
クリーム剤は、不透明な外観の半固体エマルション系である。これらの稠度およびレオロジー特性は、エマルションがo/wまたはw/oのいずれかであることおよび内相が固体の性質であることに基づいている。軟膏剤は、大部分が、高融点固体炭化水素のマトリックスにからみ合っている流体炭化水素から構成される。ペースト剤は、基本的に、高い割合の不溶性固体が添加されている軟膏剤である。ゲル剤は、高い程度の物理的架橋が導入されている三次元ポリマーマトリックスに、水相が閉じ込められている半固体系である。
【0024】
用語「前癌性状態」は、未治療のまま放置されると癌をもたらしうる疾患、症状または知見、例えば異形成または新生物を意味する。
【0025】
用語「非癌性状態」には、ウイルス、細菌もしくは真菌感染、好ましくはHPV感染のような感染または炎症が含まれる。
【0026】
用語「女性生殖器系」は、子宮、子宮頸部、膣および外陰、好ましくは子宮頸部、膣および外陰を意味する。
【0027】
用語「活性成分」は、5-ALAおよびその薬学的に許容される塩、5-ALAの前駆体およびその薬学的に許容される塩、ならびに5-ALAの誘導体およびその薬学的に許容される塩を意味する。
【0028】
用語「5-ALA」は、5-アミノレブリン酸、すなわち5-アミノ-4-オキソ-ペンタン酸を意味する。
【0029】
用語「5-ALAの前駆体」は、代謝的に変換して5-ALAになり、したがって本質的にそれと等価物である化合物を意味する。したがって、用語「5-ALAの前駆体」は、ヘム生合成の代謝経路におけるプロトポルフィリンの生物学的前駆体を網羅する。
【0030】
用語「5-ALAの誘導体」には、化学的に修飾された5-ALA、例えばエステルが含まれる。
【0031】
用語「薬学的に許容される塩」は、半固体医薬品に使用されることが適しており、例えば安全性、生物学的利用能および忍容性に関する要件を満たす塩を意味する(例えば、P. H. Stahl et al. (EDs.) Handbook of Pharmaceutical Salts, Publisher helvetica chimica acta, Zurich, 2002を参照すること)。
【0032】
好ましい実施態様において、本発明の半固体医薬品は、子宮頸部、膣、外陰、肛門および陰茎の異形性症、ならびに子宮頸部、膣、外陰、肛門および陰茎のHPV感染において使用される。
【0033】
5-ALAおよびその前駆体、例えば5-ALAエステルのPDTおよびPDDにおける使用は、科学および特許文献においてよく知られており、例えば、国際公開公報第2006/051269号、国際公開公報第2005/092838号、国際公開公報第03/011265号、国際公開公報第02/09690号、国際公開公報第02/10120号、国際公開公報第2003/041673号、米国特許第6,034,267号(これらの内容は参照として本明細書に組み込まれる)を参照すること。5-ALAのそのような誘導体およびこれらの薬学的に許容される塩は、全て、本明細書に記載される方法における使用に適している。
【0034】
5-ALAの合成は当該技術において知られている。更に、5-ALAおよびその薬学的に許容される塩は、例えばSigma Aldrichにより市販されている。
【0035】
本発明に有用な5-ALA誘導体は、インビボでプロトポルフィリンを形成することができる5-ALAの任意の誘導体、例えばPpIXまたはPpIX誘導体でありうる。典型的には、そのような誘導体は、ヘムの生合成経路におけるPpIXの前駆体またはPpIX誘導体、例えばPpIXエステルの前駆体であり、したがってこれらはインビボ投与後にPpIXの蓄積を誘導することができる。PpIXまたはPpIX誘導体の適切な前駆体には、PpIXの生合成においてインビボで中間体として5-ALAを形成することができうるまたは例えば酵素的に変換されて、中間体として5-ALAを形成することなくポルフィリンになりうる5-ALAプロドラッグが含まれる。5-ALAエステルおよびその薬学的に許容される塩は、本明細書に記載される発明に使用される好ましい化合物のうちのものである。
【0036】
任意に、N-置換されている5-ALAのエステルが、本発明における使用に好ましい。5-アミノ基が非置換であるこれらの化合物、すなわち5-ALAエステルが特に好ましい。そのような化合物は一般に既知であり、文献に記載されており、例えば、国際公開公報第96/28412号およびPhotocure ASAの国際公開公報第02/10120号(これらの内容は参照として本明細書に組み込まれる)を参照すること。
【0037】
5-ALAと、置換または非置換アルカノールとのエステル、すなわちアルキルエステルおよび置換アルキルエステル、ならびにこれらの薬学的に許容される塩が、本明細書に使用される5-ALAの特に好ましい誘導体である。そのような化合物の例には、一般式(I)のものおよびその薬学的に許容される塩が含まれ:
R22N-CH2COCH2-CH2CO-OR1 (I)
式中、
R1は、置換または非置換アルキル基を表し;および
R2は、それぞれ独立して、水素原子またはR1基を表す。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキル」には、特に記述のない限り、任意の長鎖または短鎖、環状、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基が含まれる。不飽和アルキル基は、単不飽和または多不飽和であることができ、アルケニルとアルキニルの両方の基を含むことができる。特に記述のない限り、そのようなアルキル基は、40個までの炭素原子を含有することができる。しかし、30個までの炭素原子、好ましくは10個まで、特に好ましくは8個まで、とりわけ好ましくは6個までの炭素原子を含有するアルキル基が好ましい。
【0039】
式(I)の化合物において、R1基は、置換または非置換アルキル基である。R1基が置換アルキル基である場合、1つ以上の置換基は、アルキル基に結合しているおよび/またはアルキル基に割り込んでいる、のいずれかである。アルキル基に結合する適切な置換基は、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アリール、ニトロ、オキソ、フルオロ、-SR3、-NR32および-PR32(ここでR3は、水素原子またはC1-6アルキル基である)から選択されるものである。アルキル基に割り込んでいる適切な置換基は、-O-、-NR3-、-S-または-PR3から選択されるものである。
【0040】
好ましい実施態様において、R1は、1つ以上のアリール置換基、すなわちアリール基で置換されている、好ましくは1つのアリール基で置換されているアルキル基である。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「アリール基」は、窒素、酸素または硫黄のようなヘテロ原子を含有してもしなくてもよい芳香族基を意味する。ヘテロ原子を含有しないアリール基が好ましい。好ましいアリール基は、20個までの炭素原子、より好ましくは12個までの炭素原子、例えば10または6個の炭素原子を含む。アリール基の好ましい実施態様は、フェニルおよびナフチル、特にフェニルである。更に、アリール基は、1つ以上、より好ましくは1または2つの置換基で任意に置換されうる。好ましくは、アリール基は、メタまたはパラ位置、最も好ましくはパラ位置で置換されている。適切な置換基には、ハロアルキル、例えばトリフルオロメチル、アルコキシ、好ましくは1〜6個の炭素原子を含有するアルコキシ基、ハロ、例えばヨード、ブロモ、クロロまたはフルオロ、好ましくはクロロおよびフルオロ、ニトロ、ならびにC1-6アルキル、好ましくはC1-4アルキルが含まれる。好ましいC1-6アルキル基には、メチル、イソプロピルおよびt-ブチル、特にメチルが含まれる。特に好ましいアリール置換基は、クロロおよびニトロである。しかし、なおより好ましくは、アリール基は非置換である。
【0042】
好ましいそのような置換R1基は、ベンジル、4-イソプロピルベンジル、4-メチルベンジル、2-メチルベンジル、3-メチルベンジル、4-[t-ブチル]ベンジル、4-[トリフルオロメチル]ベンジル、4-メトキシベンジル、3,4-[ジ-クロロ]ベンジル、4-クロロベンジル、4-フルオロベンジル、2-フルオロベンジル、3-フルオロベンジル、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル、3-ニトロベンジル、4-ニトロベンジル、2-フェニルエチル、4-フェニルブチル、3-ピリジニル-メチル、4-ジフェニル-メチルおよびベンジル-5-[(1-アセチルオキシエトキシ)-カルボニル]である。より好ましいそのようなR1基は、ベンジル、4-イソプロピルベンジル、4-メチルベンジル、4-ニトロベンジルおよび4-クロロベンジルである。最も好ましいものはベンジルである。
【0043】
R1が置換アルキル基である場合、1つ以上のオキソ置換基が好ましい。好ましくは、そのような基は、1つ以上のオキソ基、好ましくは1〜5つのオキソ基で置換されている直鎖C4-12アルキル基である。オキソ基は、好ましくは、置換アルキル基において交互に存在し、すなわち短ポリエチレングリコール置換基をもたらす。そのような基の好ましい例には、3,6-ジオキサ-1-オクチルおよび3,6,9-トリオキサ-1-デシルが含まれる。
【0044】
R1が非置換アルキル基である場合、飽和直鎖または分岐鎖アルキル基であるR1基が好ましい。R1が飽和直鎖アルキル基である場合、C1-10直鎖アルキル基が好ましい。適切な直鎖アルキル基の代表例には、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルおよびn-オクチルが含まれる。特に好ましいものは、C1-6直鎖アルキル基、最も好ましいものは、メチルおよびn-ヘキシルである。R1が飽和分岐鎖アルキル基である場合、そのような分岐鎖アルキル基は、好ましくは、4〜8個、好ましくは5〜8個の直鎖炭素原子の軸からなり、前記軸は、1つ以上のC1-6アルキル基、好ましくはC1-2アルキル基により分岐している。そのような飽和分岐鎖アルキル基の例には、2-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1-エチルブチルおよび3,3-ジメチル-1-ブチルが含まれる。
【0045】
式(I)の化合物において、それぞれのR2は、独立して、水素原子またはR1基を表す。本発明における使用に特に好ましいものは、少なくとも1つのR2が水素原子を表す式(I)の化合物である。特に好ましい化合物において、R2はそれぞれ水素原子を表す。
【0046】
好ましくは、式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩が本発明の半固体医薬品に使用され、ここで、R1は、メチルまたはヘキシル、より好ましくはn-ヘキシルを表し、そしてR2は、両方とも水素を表し、すなわち5-ALAメチルエステル、5-ALAヘキシルエステルおよびその薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸塩である。本発明の半固体医薬品に使用される好ましい化合物は、5-ALAヘキシルエステルおよびその薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸塩またはスルホン酸塩もしくはスルホン酸誘導体塩である。
【0047】
本発明に使用される5-ALAエステルおよびその薬学的に許容される塩は、当該技術において入手可能な任意の従来の手順により、例えば、国際公開公報第96/28412号および国際公開公報第02/10120号に記載されているように調製することができる。簡潔には、5-ALAエステルを、触媒、例えば酸の存在下での5-ALAと適切なアルコールとの反応により調製することができる。5-ALAエステルの薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される5-ALA塩、例えば5-ALA塩酸塩と適切なアルコールとの反応により、前に記載されているように調製することができる。あるいは、5-ALAメチルエステルまたは5-ALAヘキシルエステルのような本発明に使用される化合物は、例えばPhotocure ASA, Norwayにより市販されうる。
【0048】
本発明に使用される5-ALAエステルは、遊離アミン、例えば-NH2、-NHR2もしくはNR2R2の形態または好ましくは薬学的に許容される塩の形態でありうる。そのような塩は、好ましくは薬学的に許容される有機または無機酸との酸付加塩である。適切な酸には、例えば、塩酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、スルホン酸およびスルホン酸誘導体が含まれ、後者は、Photocure ASAの国際公開公報第2005/092838号に記載されており、その内容は参照として本明細書に組み込まれる。好ましい酸は、塩酸、塩化水素、スルホン酸およびスルホン酸誘導体である。塩形成の手順は、当該技術において慣用のものである。
【0049】
したがって、好ましい実施態様において、本発明は、女性生殖器系、肛門および陰茎の癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療に使用される、
a)5-ALAの誘導体またはその薬学的に許容される塩、好ましくは5-ALAエステルまたはその薬学的に許容される塩;
b)1つ以上のトリグリセリド;および
c)任意に1つ以上の粘度増強剤
を含む、半-半固体医薬品[semi-semi-solid pharmaceutical product]を提供する。
【0050】
好ましい実施態様において、前記5-ALAエステルは、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、ここでR1は、非置換アルキル基、好ましくは非置換飽和直鎖または分岐鎖アルキル基、より好ましくは非置換飽和直鎖C1-10アルキル基を表す。より好ましくは、前記5-ALAエステルは5-ALAヘキシルエステルであり、さらに好ましい実施態様において、5-ALAヘキシルエステルの薬学的に許容される塩は、塩酸塩またはメシレート、トシレートもしくはナプシレートのようなスルホン酸塩もしくはスルホン酸誘導体塩である。
【0051】
本明細書で上記した化合物a)を、任意の従来の方法により本発明の半固体医薬品の製造に使用することができる。本発明の医薬品における5-ALAまたは5-ALAの誘導体または5-ALAの前駆体の望ましい濃度は、化合物の性質、これが存在する製品の性質および形態、ならびに投与の意図される部位および様式を含む幾つかの要因に応じて変わる。しかし、一般に5-ALAまたは5-ALAの誘導体または5-ALAの前駆体またはこれらの薬学的に許容される塩の濃度は、都合良くは、半固体医薬品の総重量の0.25〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、例えば0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜7重量%の範囲である。
【0052】
本発明の半固体医薬品は、1つ以上の化合物b)の1つ以上のトリグリセリド(トリアシルグリセロール)を含む。トリグリセリドは、1つの分子グリセロールおよび3つの脂肪酸分子から構成される。3つの脂肪酸は、同一または異なる脂肪酸でありうる。化合物b)は賦形剤[vehicles]および/または担体[carriers]である。
【0053】
本発明に使用されるトリグリセリドは、室温、すなわち約18℃〜約25℃の温度で液体または半固体である。トリグリセリドが室温で液体である場合、1つ以上の粘度増強剤c)を加えて、半固体製品を得ることが好ましい。トリグリセリドが室温で半固体である場合、1つ以上の粘度増強剤c)を加えても加えなくてもよい。
【0054】
さらに、トリグリセリドは、不活性化合物、すなわち、活性成分a)と反応しないまたは活性成分の分解を促進しない化合物であるべきである。
【0055】
トリグリセリドは、合成、半合成または動物および/もしくは植物由来でありうる。トリグリセリドは、純粋な/単離されたトリグリセリドであってよく、またはトリグリセリド、モノグリセリドおよび/もしくはジグリセリドおよび/もしくは遊離脂肪酸および/もしくは不鹸化脂質の混合物のような混合物の一部でありうる。そのような混合物は、典型的には、動物および/または植物由来の食用油において見出される。トリグリセリドが混合物の一部である場合、これらは、好ましくは前記混合物の主要部分を構成する。下記において、そのような混合物は「トリグリセリド」とも呼ばれる。
【0056】
トリグリセリドは、ヒトまたは非ヒト動物に使用される本発明の医薬品に使用されるので、医薬等級である必要があり、生理学的許容性、忍容性および安全性に関してそのような製品の要件および基準を満たす必要がある。
【0057】
用語「1つ以上のトリグリセリド」は、本発明の半固体医薬品が1つのトリグリセリドまたは幾つかの異なるトリグリセリドを含有することを意味する。例として、半固体医薬品は、トリカプリリン(カプリル酸トリグリセリド)またはトリカプリリンおよびカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを含有することができる。更に、例として、半固体医薬品は、アルファ−リノレイン酸、リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸およびパルミチン酸のトリグリセリドの混合物であるダイズ油を含有することができる。
【0058】
好ましい液体トリグリセリドは、ダイズ油、パーム核油、トウモロコシ油、オリーブ油、アーモンド油、サフラワー油、ピーナッツ油、ヤシ油、ヒマワリ油、ヒマシ油またはマツ油などの動物および/もしくは植物由来の食用油、ならびに/またはその画分から選択される。液体トリグリセリドの他の例には、部分的または完全に水素化されたダイズ油、ナタネ油、ヒマワリ油、ヤシ油およびこれらの画分から選択される水素化または好ましくは部分的に水素化されたトリグリセリドが含まれる。液体トリグリセリド油は、中鎖トリグリセリド(MCT)のように合成または半合成でありうる。
【0059】
好ましい半固体トリグリセリドは、パーム油、綿実油またはラードのような動物および/もしくは植物由来の食用半固体脂肪、ならびに/またはその画分から選択される。半固体トリグリセリドの他の例には、部分的または完全に水素化されたダイズ油、ナタネ油、ヒマワリ油、ヤシ油およびこれらの画分から選択される水素化または部分的に水素化されたトリグリセリドが含まれる。
【0060】
好ましい実施態様において、トリグリセリドは、グリセロールと、3つの同一または異なるC2〜C22脂肪酸との、より好ましくは3つの同一または異なるC4〜C18脂肪酸との、さらにより好ましくは3つの同一または異なるC6〜C18脂肪酸との、最も好ましくは3つの同一または異なるC6〜C12脂肪酸とのトリグリセリドである。より好ましい実施態様において、トリグリセリドは、グリセロールと、3つの同一C2〜C22脂肪酸との、より好ましくは3つの同一C4〜C18脂肪酸との、さらにより好ましくは3つの同一C6〜C18脂肪酸との、最も好ましくは3つの同一C6〜C12脂肪酸とのトリグリセリドである。
【0061】
最も好ましいトリグリセリドは、トリカプリリン、トリカプロイン、トリヘプタノイン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリドおよびカプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドである。これらのトリグリセリドの幾つかは、「Miglyol(登録商標)」の名称で市販されており、例えば、Miglyol 812はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドであり、Miglyol 818はカプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリドであり、Miglyol 808はトリカプリリンである。そのようなトリグリセリドの製造者は、例えば、Sasol, Witten, Germanyである。
【0062】
好ましい実施態様において、本発明の半固体医薬品は、化合物b)として、トリカプリリン、トリカプロイン、トリヘプタノイン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリドおよびカプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドから選択される1つ以上のトリグリセリドを含む。
【0063】
本発明に使用されるトリグリセリドは、当該技術において周知の標準的な方法および手順を使用して調製することができるが、多くは、Sasol、Croda、Gattefosse他などのような多様な製造者により市販されている。
【0064】
化合物b)は、本発明の半固体医薬品において賦形剤または担体であり、したがって比較的高い濃度で存在する。化合物b)の濃度は、都合良くは、半固体医薬品の総重量の約50〜98重量%、好ましくは60〜96重量%、より好ましくは65〜94重量%の範囲である。化合物c)が存在しない場合、化合物b)の濃度は、都合良くは、約50〜99.75重量%、好ましくは70〜99.5重量%、例えば85〜99.5重量%、より好ましくは90〜99重量%、最も好ましくは93〜99重量%の範囲である。
【0065】
本発明の半固体医薬品は、場合により、1つ以上の化合物c)、すなわち1つ以上の粘度増強剤を更に含む。
【0066】
用語「粘度増強剤」は、化合物b)と活性成分a)の混合物を増粘または凝固する化合物を意味する。液体化合物b)が使用される場合、化合物b)と活性成分a)の混合物は液体、例えば溶液または懸濁液であり、1つ以上の化合物c)を加えることによって、混合物は半固体になる。
【0067】
一般に、化合物b)と活性成分a)の混合物に添加されると、半固体になる前記混合物をもたらす任意の粘度増強剤を使用することができる。更に、粘度増強剤は、不活性化合物、すなわち、活性成分と反応しないまたは活性成分の分解を促進しない化合物であるべきである。通常、粘度増強剤は、活性成分の性質および化合物b)、すなわちトリグリセリド担体または賦形剤の性質に従って選ばれる。
【0068】
用語「1つ以上の粘度増強剤」は、本発明の半固体医薬品が1つの粘度増強剤または幾つかの異なる粘度増強剤を含有しうることを意味する。例として、半固体医薬品は、ステアリルアルコールまたはステアリン酸を含有することができる。更に、例として、半固体医薬品は、主にセチルおよびステアリルアルコールからなる脂肪アルコールの混合物であるセトステアリルアルコールを含有することができるか、またはステアリルアルコールおよびステアリン酸を含有することができる。
【0069】
粘度増強剤の例は、セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)のようなその誘導体、ポリアクリル酸(カルボマー)、ポリエチレングリコールのような合成ポリマー、グアーガム、アラビアまたはトラガカントゴム、デンプンおよびデンプン誘導体、カラギーナン、寒天、ゼラチン、ロウおよびロウ状固体のような植物ガムである。
【0070】
より好ましい実施態様において、粘度増強剤は、疎水性化合物、より好ましくはロウまたはロウ状固体、最も好ましくは固体脂肪アルコールまたは固体脂肪酸である。より好ましい実施態様において、前記ロウまたはロウ状固体は、約45℃〜75℃の融点を有する。そのような粘度増強剤の好ましい例は、蜜ロウ、黄ロウ、白蜜ロウ、カルナウバロウ、ヒマシロウ、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール(セテアリルアルコール)、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、パルミチン酸またはステアリン酸である。
【0071】
幾つかの脂肪アルコールのような記述された粘度増強剤の幾つかは、乳化特性も示す。
【0072】
上記に記述された粘度増強剤は、市販の化合物であり、多様な供給者、例えばSasol(Witten, Germany)、International Specialty Products(New Jersey, USA)、BASF(Ludwigshafen, Germany)、Croda(USA)により製造および供給される。
【0073】
粘度増強剤は、半固体製品を得るのに必要な量で存在する。実際の量は、活性成分a)と1つ以上のトリグリセリドb)の混合物の性質、例えばその粘度、また1つ以上の粘度増強剤の性質によって左右される。1つ以上の半固体トリグリセリドが本発明の半固体医薬品の製造に使用される場合、粘度増強剤の添加は全く必要ない場合がある。1つ以上の粘度増強剤の量および性質は、本発明の半固体医薬品の滴点に影響を与え、体温を著しく上回る滴点は、治療される組織または臓器の表面への製品の塗布を制限し、したがって活性成分の生物学的利用能に悪影響を与える。半固体医薬品がヒトに使用される場合、製品の滴点は、好ましくは28〜43℃の範囲、より好ましくは41〜32℃の範囲である。滴点は、European pharmacopoeia 6.0 section 2.2.17において定義および決定されており、滴点は、検査される融解物質の最初の一滴が定義された条件下でカップから落下する温度である。
【0074】
好ましい実施態様において、本発明の半固体医薬品は、1つ以上の液体トリグリセリドを含み、1つ以上の粘度増強剤が存在する。より好ましい実施態様において、前記の1つ以上の液体トリグリセリドは、グリセロールと、3つの同一または異なるC2〜C22脂肪酸との、より好ましくは3つの同一または異なるC4〜C18脂肪酸との、さらにより好ましくは3つの同一または異なるC6〜C18脂肪酸との、最も好ましくは3つの同一または異なるC6〜C12脂肪酸とのトリグリセリドである。より好ましい実施態様において、トリグリセリドは、グリセロールと、3つの同一C2〜C22脂肪酸との、より好ましくは3つの同一C4〜C18脂肪酸との、さらにより好ましくは3つの同一C6〜C18脂肪酸との、最も好ましくは3つの同一C6〜C12脂肪酸とのトリグリセリドである。別のより好ましい実施態様において、本発明の半固体医薬品は、前記の前述の1つ以上の液体トリグリセリドと、ロウまたはロウ状固体から選択される、最も好ましくは固体脂肪アルコールまたは固体脂肪酸から選択される1つ以上の粘度増強剤とを含む。
【0075】
一般に、1つ以上の粘度増強剤が本発明の半固体医薬品に存在する場合、これらは、半固体医薬品の重量の約0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%の量で存在する。
【0076】
半固体医薬品は、
d)任意に1つ以上の乳化剤、
e)任意に1つ以上の粘膜付着剤、
f)任意に、b)およびc)以外の1つ以上の薬学的に許容される添加物、
g)任意に1つ以上の表面浸透剤、ならびに
h)任意に1つ以上のキレート剤
をさらに含む。
【0077】
本発明の半固体医薬品は、任意に1つ以上の乳化剤を含む。
【0078】
界面活性剤、表面活性物質または排出促進剤としても知られている乳化剤は、エマルションを安定化する物質である。多種多様な乳化剤がエマルションを調製するために薬剤学において使用される。
【0079】
用語「1つ以上の乳化剤」は、本発明の半固体医薬品が1つの乳化剤または幾つかの異なる乳化剤を含有することを意味する。
【0080】
好ましい実施態様において、乳化剤は非イオン性乳化剤である。
【0081】
好ましい非イオン性乳化剤は、短鎖部分グリセリド、すなわち存在するヒドロキシル基の一部だけがエステル化されている、グリセロールと短鎖脂肪酸のエステル、すなわちモノ−もしくはジグリセリドまたはモノ−およびジグリセリドの混合物の群から選択される。好ましい部分グリセリドは、C6〜C10脂肪酸のモノ−もしくはジグリセリドまたはモノ−およびジグリセリドの混合物である。
【0082】
なお、他の好ましい非イオン性乳化剤は、グリセロールと脂肪酸およびアルファ−ヒドロキシ酸のエステル、例えばグリセリルステアレートシトレート、グリセリルシトレート/ラクテート/オレエート/リノレエート、グリセリルココエート/シトレート/ラクテートおよびグリセリルイソステアレートである。
【0083】
なお、他の好ましい非イオン性乳化剤は、脂肪アルコールおよび/またはセトステアリルアルコールもしくはセトマクロゴールのようなエトキシル化脂肪アルコールである。
【0084】
なお、他の好ましい非イオン性乳化剤は、エトキシル化ヒマシ油のようなエトキシル化脂肪酸である。
【0085】
なお、他の好ましい非イオン性乳化剤は、「Span」および「Tween」の名称で販売されているソルビタンと脂肪酸の非エトキシル化およびエトキシル化エステル、すなわちポリソルベート、好ましくは(ポリオキシエチレン)ソルビタンモノラウレート、(ポリオキシエチレン)ソルビタンモノパルミテート、(ポリオキシエチレン)ソルビタンモノステアレート、(ポリオキシエチレン)ソルビタンモノオレエート、(ポリオキシエチレン)ソルビタントリステアレートまたは(ポリオキシエチレン)ソルビタントリオレートである。
【0086】
なお、他の好ましい非イオン性乳化剤は、レシチン、例えば卵黄レシチン、ダイズレシチンまたはレシチンから誘導されるリン脂質、好ましくはホスファチジルコリンである。
【0087】
なお、他の好ましい非イオン性乳化剤は、ポリエチレングリコール400モノステアレートのようなポリエチレングリコールに基づいた化合物である。
【0088】
なお、他の好ましい非イオン性乳化剤は、エトキシル化カプリロカプリルグリセリドのようなエトキシル化グリセリドまたはポリエチレングリコールと、パーム核油、水素化パーム核油、ヒマシ油、水素化ヒマシ油、アーモンド油、アプリコット核油などのような天然もしくは水素化油との反応により得られる生成物である。
【0089】
これらの後者の非イオン性乳化剤の好ましい乳化剤は、単独または他の乳化剤との混合物のいずれかでの、ラウロイルマクロゴール-32グリセリド、Gelucire(登録商標)44/14(Gattefosse);ステアロイルマクロゴールグリセリド、Gelucire(登録商標)50/13(Gattefosse);PEG-50ヒマシ油、Emalex C-50(Nihon Emulsion); Eumulgin(登録商標)HRE 40(Cognis);PEG-45水素化ヒマシ油、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド、Labrasol(登録商標)(Gattefosse)である。
【0090】
なお、他のより好ましい非イオン性乳化剤は、ポロキサマー、すなわち、ポリエチレンの2つの親水性鎖が側鎖として配置されているポリオキシプロピレンの中央疎水性鎖から構成されるトリブロックコポリマーである。ポロキサマーは、商標名Pluronics(登録商標)によっても知られている。最も好ましいポロキサマーは、単独または他の乳化剤との、好ましくはPluronic(登録商標)F68のような他のポロキサマーとの混合物のいずれかでの、PluroniC(登録商標)L43またはPluronic(登録商標)L44のような、液体であり、7未満、好ましくは6未満のpHを有するものである。
【0091】
活性成分a)が5-ALAのまたはその薬学的に許容される塩のC1〜C10アルキルエステルである場合、好ましくは高い親水性親油性バランスの値(HLB値)を有する非イオン性乳化剤が使用され、さらにより好ましくは、HLB値は少なくとも7であり、好ましくは、HLB値は少なくとも12であり、より好ましくは、HLB値は約12〜18である。2つ以上の乳化剤が使用される場合、得られる乳化剤の混合物が少なくとも7のHLB値、好ましくは約12〜18のHLB値を有するのであれば、7未満または18超のHLB値の乳化剤を使用することも可能である。
【0092】
一般に、乳化剤は、使用部位において、例えば膣、肛門において医薬品の均一な分布を促進するのに必要な量で半固体医薬品に存在する。通常、乳化剤は、存在する場合、半固体医薬品の総重量の0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜8重量%の量で存在する。
【0093】
任意に本発明に使用することができる乳化剤は、当該技術において周知の標準的な方法および手順を使用して調製することができるが、多くは、Sasol、Croda、Cognis, Gattefosse、American Lecithin Company、BASF、Cytec他などのような多様な製造者により市販されている。
【0094】
本発明の半固体医薬品は、任意に、1つ以上の粘膜付着剤、すなわち1つの粘膜付着剤または幾つかの異なる粘膜付着剤を含む。
【0095】
用語「粘膜付着剤」は、粘膜表面に親和性を示す化合物、すなわち、結合が粘膜および/またはその下の細胞との相互作用を生じるかどうかにかかわらず、一般に非共有的性質である結合の形成を介してその表面に付着する化合物を意味する。本発明の文脈において、粘膜表面は、子宮、子宮頸部、膣、外陰、肛門および陰茎の粘膜表面である。好ましくは、1つ以上の粘膜付着剤は、任意に、子宮または子宮頸部または膣および肛門における使用が意図される半固体医薬品に添加される。
【0096】
本発明の半固体医薬品に任意に存在する粘膜付着剤は、好ましくは、膣における酸性条件および乳酸の存在により分解せず、女性生殖器系、特に膣および子宮頸部に存在する細菌および非細菌酵素によっても代謝されない粘膜付着化合物である。
【0097】
本発明の半固体医薬品に使用することができる粘膜付着剤は、天然または合成の化合物、ポリアニオン性、ポリカチオン性または中性、水溶性または水不溶性でありうるが、好ましくは大型であり、例えば500kDa〜3000kDa、例えば1000kDa〜2000kDaの分子量を有し、水不溶性で架橋されており、例えば総ポリマーの重量の0.05%〜2%の架橋剤を含有し、水和の前に水素結合を形成することができる水膨張性ポリマーである。好ましくは、そのような粘膜付着剤は、Smart. et al, 1984, J. Pharm. Pharmacol., 36, pp 295-299の方法に従って評価すると、インビトロの基準に対する率として表して100を超える、特に好ましくは120を超える、とりわけ150を超える粘膜付着力を有する。
【0098】
好ましい粘膜付着化合物は、多糖類、好ましくはデキストラン、ペクチン、アミロペクチンまたは寒天;ガム、好ましくはグアーガムまたはイナゴマメガム;アルギン酸の塩、好ましくはアルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸マグネシウム;ポリ(アクリル酸)および塩とエステルのようなポリ(アクリル酸)の誘導体の架橋および非架橋コポリマー、例えばカルボマー(カルボポール)から選択される
半固体医薬組成物に存在する前記に記述された粘度増強剤の幾つかは、粘膜付着特性も有し、そのような粘度増強剤が使用される場合、追加的な粘膜付着剤は必要でもなく望ましくもない場合がある。
【0099】
存在する場合、粘膜付着剤は、それが存在する医薬品の総重量の0.05〜30重量%、例えば、それが存在する医薬品の総重量の約1〜25重量%の範囲の濃度で都合良く提供されうる。
【0100】
本発明の半固体医薬品は、任意に、添加物b)、c)および任意の添加物d)と異なる1つ以上の薬学的に許容される添加物を含む。そのような任意の1つ以上の薬学的に許容される添加物を、付着防止剤、充填剤、結合剤、着色剤、香り増強剤、滑剤、潤滑剤、崩壊剤、展着剤、溶媒または防腐剤の群から選択することができる。当業者は、これらの目的に基づいて適切な添加物を選択することができる。本明細書に記載される医薬品に使用することができる慣用的な添加物は、様々なハンドブック(例えば、D. E. Bugay and W. P. Findiay (EDs) Pharmaceutical Excipients (Marcel Dekker, New York, 1999)、E-M Hoepfner, A. reng and P.C. Schmidt (EDs) Fiedler Encyclopedia of excipients for Pharmaceuticals, Cosmetics and Reiated areas (Edition cantor, Munich, 2002)およびH.P. Fieider (ED) Lexikon der Hiifsstoffefur Pharmazie, Kosmetik und Angrenzende Gebiete (Edition Cantor Aulendorf, 1989))に提示されている。
【0101】
本発明の半固体医薬品が場合により1つ以上の薬学的に許容される溶媒を含む場合、そのような溶媒は、遊離脂肪酸、遊離脂肪アルコール、水溶液、例えば緩衝液または水であることができる。しかし、本発明の半固体医薬品は、水を何も含有しないこと、すなわち水不含有であることが好ましい。水不含有ということは、半固体医薬品に水が添加されないことおよび製品におけるいかなる測定可能な含水量も、成分a)〜h)のいずれかに含有されている可能性のある水に起因することを意味する。
【0102】
本発明の半固体医薬品は、場合により1つ以上の表面浸透助剤を含む。そのような作用物質は、本発明の医薬品に存在する活性成分、すなわち5-ALA、5-ALAの誘導体または5-ALAの前駆体の光増感効果を増強する有益な効果を有する場合がある。
【0103】
したがって表面浸透助剤、特にジメチルスルホキシド(DMSO)のようなジアルキルスルホキシドを製品に含めることができる。表面浸透助剤は、医薬文献に記載される浸透助剤のいずれか、例えば、キレーター(例えば、EDTA)、界面活性剤(例えば、ナトリウムドデシルスルフェート)、非界面活性剤、胆汁酸塩(デオキシコール酸ナトリウム)、脂肪アルコール、例えばオレイルアルコール、脂肪酸、例えばオレイン酸および脂肪酸とアルコールのエステル、例えばイソプロピルミリステートでありうる。表面浸透助剤の例には、イソプロパノール、1-[2-(デシルチオ)エチル]-アザシクロペンタン-2-オン(Hisamitsuから入手可能なHPE-101)、DMSOおよび他のジアルキルスルホキシド、特にn-デシルメチルスルホキシド(NDMS)、ジメチルスルホアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMFA)、ジメチルアセトアミド、イソプロピルミリステート、オレイルアルコールおよびオレイン酸、多様なピロリドン誘導体(Woodeord et al., J. Toxicol. Cut. & Ocular Toxicology, 1986, 5: 167-177)ならびにAzone(登録商標)(Stoughton et al., Drug dpv. Ind. Pharm. 1983, 9: 725-744)またはこれらの混合物が含まれる。
【0104】
プロピレングリコールのようなグリコールの表面浸透助剤としての使用は、本発明の半固体医薬品において活性成分a)の分解を促進しうるので推奨されない。
【0105】
存在する場合、表面浸透助剤を、それが存在する医薬品の総重量の0.2〜30重量%、例えば、それが存在する医薬品の総重量の約1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%の範囲の濃度で都合良く提供することができる。
【0106】
本発明の半固体医薬品は、任意に1つ以上のキレート剤を含む。そのような作用物質は、本発明の医薬品に存在する5-ALA、5-ALAの誘導体または5-ALAの前駆体の光増感効果を増強する有益な効果も有する場合がある。
【0107】
キレート剤を、例えばPpIXの蓄積を増強するために含めることができ、それは、キレート剤による鉄のキレート化が、酵素フェロケラターゼの作用により鉄をPpIXに組み込んでヘムを形成することを防止し、それによって、PpIXの集積をもたらすからである。したがって光増感効果が増強される。
【0108】
半固体医薬品に含めることができる適切なキレート剤は、金属解毒についてまたは磁気共鳴画像化接触剤における常磁性金属イオンのキレート化についての文献に記載されているキレート剤[chelants]のいずれかのようなアミノポリカルボン酸である。EDTA、CDTA(シクロヘキサントリアミン四酢酸)、DTPAおよびDOPA、ならびにそれらの周知の誘導体および類似体を、特に記述することができる。EDTAおよびDTPAが特に好ましい。他の適切なキレート剤は、デスフェリオキサミンおよびシデロフォアであり、これらを単独でまたはEDTAのようなアミノポリカルボン酸キレート剤と組み合わせて使用することができる。
【0109】
上記記述のキレート剤の幾つか、例えばEDTAは、表面浸透助剤特性も示す。
【0110】
存在する場合、キレート剤は、それが存在する組成物に基づいて、0.01〜12重量%、例えば0.1〜10重量%の濃度で好都合に使用することができる。
【0111】
本発明の半固体医薬品は、クリーム剤、軟膏剤、ペースト剤またはゲル剤として調製される。従来および既知の方法を使用して、そのようなクリーム剤、軟膏剤、ペースト剤またはゲル剤を調製することができる。化合物a)およびb)と任意にc)〜h)の混合物は、当該技術において既知の方法、例えば、場合により混合物の加熱を伴う撹拌により促進することができる。一般に、存在する場合は化合物c)〜h)および1つ以上のトリグリセリドを撹拌し、場合により、均質の混合物、好ましくは流体が形成されるまで加熱して混合する。混合物が加熱される場合、温度は、撹拌している間に低下し、活性成分a)は、約40℃以下の温度で冷却および撹拌している間に添加される。最終生成物の撹拌は、室温が達成されるまで続けられる。
【0112】
本発明の半固体医薬品の利点は、これらが安定していることである。特に、本発明の半固体医薬品の中に存在する活性成分は、劣化および/または分解する傾向がない。その結果、医薬品を、例えば室温またはそれ未満および周囲湿度で、好ましくは室温および周囲湿度で少なくとも6か月、より好ましくは少なくとも12か月、さらにより好ましくは少なくとも24か月以上、例えば36か月まで保存することができる。
【0113】
本発明の半固体医薬品は、好ましくは粘性であるかまたは患者の体温である程度粘性である。このことは、製品の取扱いを容易にし、例えば製品を、室温から体温の温度に上昇に伴い直ぐに低粘性または液体になることなく、女性生殖器系、肛門および陰茎に容易に投与することができる。これは医薬品が、投与部位、すなわち子宮、子宮頸部、膣、外陰、肛門または陰茎にとどまることをさらに確実にする。
【0114】
一つの実施態様において、患者の体温での医薬品の粘度は、製品を投与部位に所望の時間保持するために、ペッサリー、ダイアフラム、キャップ、プラグ、粘着包帯またはパッチのような追加的手段を必要としないようなものである。この実施態様は、製品が医者、例えば婦人科医または男性病の専門医または看護師により投与される場合に好ましく、患者は、好ましくは、インキュベーションの間、すなわち投与と光治療の間の時間、看護師、医者または他の医療関係者の観察下に置かれる。
【0115】
別の実施態様において、室温での医薬品の粘度は、治療部位に配置されているペッサリー、ダイアフラム、キャップ、粘着包帯またはパッチに適用するのに好ましく、製品がこれら投与部位にとどまることを確実にするようなものである。
【0116】
好ましい実施態様において、本発明の半固体医薬品は、女性生殖器系、肛門および陰茎の異形成症およびHPV感染、より好ましくは子宮内膜、子宮頸部、膣、外陰、肛門および陰茎の異形成症、ならびに子宮、子宮頸部、膣、外陰、肛門および陰茎のHPV感染の光力学的治療に使用される。より好ましい実施態様において、本発明の半固体医薬品は、子宮内膜、子宮頸部、膣および外陰の異形性症、ならびに子宮、子宮頸部、膣および外陰のHPV感染の光力学的治療において使用される。最も好ましい実施態様において、本発明の半固体医薬品は、子宮頸部および膣の異形性症、ならびに子宮頸部および膣のHPV感染の光力学的治療において使用される。
【0117】
前記の最も好ましい実施態様において、有効量、すなわち本発明の半固体医薬品の投与量を受け取るように適合した装置[device]を使用することが好ましい。好ましい装置は、膣への完全で確実な挿入を可能にする体形の形状をしている。好ましい装置は、照射手段、すなわち光活性化に適した、すなわち所望の光力学的効果を達成するのに適した照射光に適切な光源を更に含む。好ましい実施態様において、前記装置は、医者または看護師により膣に挿入され、所望の部位(膣、子宮頸部)に配置され、そこにインキュベーションおよび光力学的治療の間とどまる。タイマーは前記の好ましい装置の一部であることができ、装置が挿入される前に作動した後、照射を、所望のインキュベーション時間の後で開始し、決められた光治療時間続けることを確実にする。より好ましい実施態様において、装置は、使い捨てであり、医師に再び会う必要なく患者により取り出されるように適合される。そのような装置、例えば、キャップまたはロッド形状装置は、Photocure ASAの国際特許出願PCT/EP2009/009037に記載されており、好ましくは本発明の半固体医薬品と組み合わせて使用される。
【0118】
医薬品を、治療される部位に投与した後、前記部位を光に曝露して、所望の光活性化および光力学的治療を達成する。投与と光への曝露との間の時間(インキュベーション時間)の長さは、活性成分の性質および医薬品の性質によって左右される。一般に、前記医薬品の中の活性成分が変換して光増感剤になり、光活性化の前に治療の部位で有効な組織濃度を達成することが必要である。インキュベーション時間は、約30分から10時間、好ましくは1時間から7時間、例えば3時間から5時間である。
【0119】
照射は、一般に、高い光強度、すなわち高いフルエンス率により短時間または低い光強度、すなわち低いフルエンス率により長時間適用される。後者は、半固体医薬品がペッサリー、ダイアフラム、キャップ、粘着包帯またはパッチ、例えば国際特許出願PCT/EP2009/009037に記載されている装置に適用されるPDT処置にとって好ましい。例えば、女性生殖器系の癌、前癌性状態および非癌性状態が治療される場合、治療の部位、例えば子宮頸部に配置されるそのような装置、例えばキャップを本発明の半固体医薬品で充填することができる。装置は、体内に完全に挿入されるので、患者に気づかれることはほとんどない。プロトポルフィリンの集積を可能にするインキュベーション時間の後、装置は自動的に照射の放射を開始する。ここでも、患者は装置にほとんど気づかないので、光治療は低フルエンス率で長時間にわたって、例えば1〜10mW/cm2で数時間にわたって実施することができる。これは、患者に対する不快感の低減および治療の効力の両方の観点から有益である。
【0120】
一般に、適切な光源は、レーザー、ランプ、好ましくはLEDランプである。ランプまたはレーザー系の単位時間あたりのエネルギー消費は、組織の加熱が患者に不快感または損傷をもたらさないようなものであるべきである。照射は、一般に10〜200ジュール/cm2、例えば50ジュール/cm2の線量レベルで適用される。したがってランプまたはレーザー系は、好ましくは0.5〜100mW/cm2の範囲、最も好ましくは1〜10mW/cm2の範囲の光強度を稼働中に提供するように配置される。
【0121】
照射に使用される光の波長は、有効な光力学的効果を達成するように選択することができる。300〜800nm、例えば400〜700nmの範囲の波長を有する光が、特に効果的であることが見出されている。630および690nmの波長を含むことが、特に重要でありうる。赤色光(600〜670nm)は、この波長の光が組織に良く浸透することが知られているので、特に好ましい。したがって、好ましくはランプまたはレーザーは、630〜690nmの波長を有する光を使用時に放射する。幾つかの実施態様において、レーザーまたはランプ系は、上記に記述されたもののような特定の波長範囲の光だけを放射することを確実にするフィルターを含む。あるいは、上記に記述した装置の治療表面を、好ましい波長を有する光だけが透過するように設計することができる。
【0122】
単回の照射を使用することができるか、あるいは多くの分割、例えば照射の間に1〜2分から5〜6分置いて送達される光分割を使用することができる。複数照射を適用することもできるが、好ましくない。
【0123】
患者の治療は、好ましくは単回用量の半固体医薬品により実施される。しかし、治療が完了しない場合は、繰り返すことができる。
【0124】
本発明の半固体医薬品を、別個に(例えば、チューブもしくは瓶により)提供することができ、あるいは薬剤送達系、例えばペッサリー、ダイアフラム、キャップ、粘着包帯もしくはパッチまたは国際特許出願PCT/EP2009/009037に記載されている装置、例えばキャップに予め含有することができる。
【0125】
あるいは、本発明の半固体医薬品を、医薬品および薬剤送達系を含むキットの形態で提供することができる。
【0126】
開示されている半固体医薬品および光力学的治療の方法を、他の治療手順、例えば他の治療薬の投与と組み合わせることができる。これらの治療薬を、半固体医薬品の前、それと一緒にまたはそれに続いて患者の投与することができる。他の投与経路は、経口、静脈内または経皮でありうる。典型的なそのような薬剤には、ホルモン、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗癌剤またはこのような薬剤の組み合わせが含まれる。
【0127】
第二の態様において、本発明は、
a)5-ALA、5-ALAの前駆体、5-ALAの誘導体、およびそれらの薬学的に許容される塩から選択される活性成分;
b)1つ以上のトリグリセリド;ならびに
c)任意に1つ以上の粘度増強剤の、
女性生殖器系、肛門および陰茎における、癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療において使用される半固体医薬品または半固体組成物の製造のための使用を提供する。
【0128】
第三の態様において、本発明は、女性生殖器系、肛門および陰茎における、癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療の方法であって、
(a)本発明の半固体医薬品または半固体組成物を被験体、好ましくはヒトに投与する工程;
(b)前記医薬品の中の活性成分が変換して光増感剤になり、所望の部位で有効組織濃度を達成するのに必要な時間待つ工程;および
(c)光増感剤を光活性化する工程
を含む方法を提供する。
【0129】
第四の態様において、本発明は、女性生殖器系、肛門および陰茎における、癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療に使用される薬剤送達系に含有される半固体医薬品または半固体組成物を提供する(半固体医薬組成物の場合は下記を含むまたは半固体組成物の場合は下記を含有する:
a)5-ALA、5-ALAの前駆体、5-ALAの誘導体およびその薬学的に許容される塩から選択される活性成分;
b)1つ以上のトリグリセリド;ならびに
c)任意に1つ以上の粘度増強剤)。
【0130】
好ましい実施態様において、前記薬剤系は、ペッサリー、ダイアフラム、キャップ、粘着包帯もしくはパッチまたは国際特許出願PCT/EP2009/009037に記載されている装置、例えばキャップから選択される。
【0131】
第五の態様において、本発明は、
(i)女性生殖器系、肛門および陰茎における、癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療に使用される半固体医薬品または半固体組成物(半固体医薬組成物の場合は下記を含むまたは半固体組成物の場合は下記を含有する:
a)5-ALA、5-ALAの前駆体、5-ALAの誘導体およびその薬学的に許容される塩から選択される活性成分;
b)1つ以上のトリグリセリド;および
c)任意に1つ以上の粘度増強剤)、ならびに
(ii)薬剤送達装置
を含むキットを提供する。
【0132】
好ましい実施態様において、前記薬剤送達装置は、ペッサリー、ダイアフラム、キャップ、粘着包帯もしくはパッチまたは国際特許出願PCT/EP2009/009037に記載されている装置、例えばキャップから選択される。
【0133】
幾つかの半固体医薬品は新規組成物であり、したがって第六の態様において、本発明は、
a)5-ALA、5-ALAの前駆体、5-ALAの誘導体、およびそれらの薬学的に許容される塩から選択される活性成分;
b)1つ以上のトリグリセリド;および
c)任意に1つ以上の粘度増強剤
からなる半固体組成物を提供する。
【0134】
半固体組成物の好ましい実施態様は、前に記載された半固体医薬品の好ましい実施態様、すなわち、これらも前に記載されている、好ましい化合物a)、b)および任意のc)、ならびにそれらの好ましい組み合わせと同一である。
【0135】
好ましくは、本発明の半固体組成物は、活性成分が5-ALAの誘導体、好ましくは5-ALAエステルまたはその薬学的に許容される塩であり、1つ以上のトリグリセリドが、好ましくはグリセロールと3つの同一または異なるC2〜C22脂肪酸との、より好ましくは3つの同一または異なるC4〜C18脂肪酸との、さらにより好ましくは3つの同一または異なるC6〜C18脂肪酸との、最も好ましくは3つの同一または異なるC6〜C12脂肪酸とのトリグリセリドから選択される液体トリグリセリドであり、1つ以上の粘度増強剤が存在するものである。より好ましい実施態様において、前記1つ以上の粘度増強剤は、ロウまたはロウ状固体から選択され、より好ましくは固体脂肪アルコールまたは固体脂肪酸から選択される。
【0136】
本発明の半固体組成物は、
a)半固体組成物の総重量の0.25〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、例えば0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜7重量%、
および化合物c)が存在しない場合、
b)半固体組成物の総重量の50〜99.75重量%、好ましくは70〜99.5重量%、例えば85〜99.5重量%、より好ましくは90〜99%、最も好ましくは93〜99重量%
からなる。
【0137】
化合物c)が存在する場合、化合物b)の濃度は、都合良くは、半固体組成物の総重量の約50〜98重量%、好ましくは60〜96重量%、より好ましくは65〜94重量%の範囲である。
【0138】
第七の態様において、本発明は、薬剤として使用される本発明の半固体組成物を提供する。
【0139】
第八の態様において、本発明は、女性生殖器系、肛門および陰茎の異形成症およびHPV感染、より好ましくは子宮内膜、子宮頸部、膣、外陰、肛門および陰茎の異形成症、ならびに子宮、子宮頸部、膣、外陰、肛門および陰茎のHPV感染の光力学的治療に使用される本発明の半固体組成物を提供する。より好ましい実施態様において、本発明の半固体組成物は、子宮内膜、子宮頸部、膣および外陰の異形性症、ならびに子宮、子宮頸部、膣および外陰のHPV感染の光力学的治療において使用される。最も好ましい実施態様において、本発明の半固体組成物は、子宮頸部および膣の異形性症、ならびに子宮頸部および膣のHPV感染の光力学的治療において使用される。
【実施例】
【0140】
以下の実施例は本発明を説明する。
【0141】
[実施例1]
<本発明の半固体組成物>
本発明の半固体組成物を以下のように調製した:
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Miglyol(登録商標)812, Sasol, Witten)および存在する場合は化合物c)〜h)を、オーバーヘッド撹拌機(IKA RW 20n、IKA Werke, Germany)により240rpmの撹拌速度で撹拌し、約50℃で加熱しながら、均質の流体を得るまで混合した。温度を、撹拌しながら約40℃に低下させ、n-ヘキシルアミノレブリン酸エステル(HAL)塩酸塩(HAL HCl、Photocure, Norway)を加えた。混合物を17500rpmで1.5分間の最適混合により均質化した。その後、混合物を、更に撹拌しながら室温(約21℃)に冷ました。混合物がオーバーヘッド撹拌機により撹拌するには粘稠になりすぎた場合、撹拌を、スパチュラを使用して手作業で続けた。
【0142】
調製された生成物の滴点を、European Pharmacopoeia 6.0 section 2.2.17に記載されたとおりに決定した。下記の表の数字は、総生成物の重量%を表す。
【0143】
以下の化合物を組成物に使用した:
a)HAL HCl:活性成分
b)カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド:トリグリセリド
c)ステアリン酸(Mallinckrodt)、セトステアリルアルコール(Cognis):粘度増強剤
d)ポリソルベート80(Croda)、ポリソルベート60(Croda)、ソルビタンステアレート(Uniqema)、ソルビタントリオレート(ICI):乳化剤
f)ジメチコン(Sikema):展着剤;オレイルアルコール(Zelmic)、ミリスチル酸イソプロピル(Croda):溶媒
g)ポリプロピレングリコール(Albion):表面浸透助剤
【0144】
【表1−1】

【0145】
【表1−2】

【0146】
[実施例2]
<安定性>
組成物30、31、32および33を実施例1に記載されたとおりに調製した。調製した直後、組成物を目視により評価し、HAL HCl含有量をHPLCにより決定した。20gの新たに調製した組成物を、ねじ蓋の付いた透明ガラス容器(組成物1つあたり3つの容器)に移した。それぞれの組成物のガラス容器を、25℃/相対湿度60%、30℃/相対湿度65%および40℃/相対湿度75%で2か月保存した。1か月後に3つの試料をそれぞれのガラス容器から取り出し、HAL HCl含有量をHPLCにより決定した。HAL HCl含有量の中央値を決定した。加えて、組成物を目視により評価した。
【0147】
【表2−1】

【0148】
【表2−2】

【0149】
プロピレングリコールを何も含有しない組成物30は、他のプロピレングリコール含有組成物よりも良好な安定性を示した。プロピレングリコール含有組成物のうち、プロピレングリコール含有量が最も低い2つ(それぞれ5%のプロピレングリコールを含有する組成物31および32)は、10%のプロピレングリコールを含有する組成物33よりも比較的良好な安定性を示した。
【0150】
組成物30をより長期間の安定性評価のために選び、この組成物を25℃/相対湿度60%および40℃/相対湿度75%でそれぞれ保存した。目視評価およびHAL HClの決定を、それぞれ1、2、6および9か月後に上記に記載されたとおりに実施した。
【0151】
【表2−3】

【0152】
組成物30は、長期間(9か月)にわたって室温で優れた安定性を示した。
【0153】
[実施例3]
<安定性の比較>
〈実施例3a:本発明の半固体組成物と、化合物b)の代わりにグリセロールを含む半固体組成物との比較〉
米国特許出願第2003/125388号は、5-ALAまたはその誘導体の安定剤として作用する、25℃で80未満の誘電率を有する非水性液中の5-ALAまたはその誘導体の製剤、例えば水不含有製剤を提案する。そのような製剤は、例えば、外陰の上皮新形成の治療に適している。グリセロールは、好ましい非水性液として開示されている。グリセロールは、25℃で42.5の誘電率を有する。
【0154】
半固体組成物AおよびBは、HAL HClを、グリセロール(Speziol G医薬等級、Cognis、99.8%)またはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Miglyol(登録商標)812, Sasol)に溶解/分散し、粘度増強剤を添加することにより調製した。
【0155】
組成物Aは、グリセロールおよびHAL HClをガラスビーカーに加えることにより調製した。混合物を、オーバーヘッド撹拌機(IKA RW 20n、IKA Werke, Germany)により240rpm〜1000rpmの撹拌速度で撹拌した。1-エテニル-2-ピロリジノンホモポリマー(PVP)(Plasdone k85-95、ISP)を、粘度増強剤として、塊の形成を避けるためにゆっくりと加えた。撹拌を、均質な混合物が形成されるまで続けた。澄明で繊維状のゲルを得た。組成物Bを、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドおよび粘度増強剤としてステアリン酸を用いて、実施例1に従って調製した。白色で粗面状の軟膏を得た。組成物AおよびBを本明細書前記に記載されたとおりであるが、何らHAL HClを使用することなく調製した。組成物Aを澄明で繊維状のゲルとして得て、組成物Bを白色で粗面状の軟膏として得た。下記の表の数字は、総生成物の重量%を表す。
【0156】
【表3】

【0157】
調製した直後、組成物を目視により評価し、AおよびBのHAL HCl含有量をHPLCにより決定した。5gの新たに調製した組成物を、ねじ蓋の付いた透明ガラス容器(組成物1つあたり3つの容器)に移した。それぞれの組成物のガラス容器を、5℃/周囲相対湿度、25℃/相対湿度60%および40℃/相対湿度75%で1〜6か月保存した。1、2、3および6か月後に3つの試料をそれぞれのガラス容器から取り出し、HAL HCl含有量をHPLCにより決定した。HAL HCl含有量の中央値を決定した。加えて、組成物を目視により評価した。組成物AおよびBを同じ条件で保存し、1、2、3および6か月後に目視により評価し、HPLCアッセイにおいて「ブランク」試料として使用した。
【0158】
【表4】

【0159】
【表5】

【0160】
組成物Bは25℃で6か月にわたって安定であったが、組成物AのHAL HCl濃度は、これらの条件下で著しく減少し、6か月後に約5%のHAL HClの損失であった。40℃では、組成物BはHALの注目すべき減少を示し、2か月後に約1.5%のHAL HClの損失であったが、組成物AはHALのはるかに際立った減少を示し、約6%のHAL HClの損失であった。HAL HClは、グリセロールを含有する組成物である組成物Aよりも、組成物B、すなわち1つ以上のトリグリセリドを含有する組成物において安定していることが明白である。
【0161】
〈実施例3b:本発明の半固体組成物と、液体または半固体トリグリセリドの代わりに固体トリグリセリドを含む固体医薬組成物との比較〉
固体医薬品Cは、固体硬質脂肪(Witepsol(登録商標)H 32、Sasol, Witten)を約40℃の温度で融解することにより調製した。既定量のHAL HClを融解硬質脂肪と約37〜39℃の温度で混合した。混合物を坐剤形態に分配し、冷却および凝固させた。2gの重量の白色で非崩壊の坐剤を得た。坐剤の融点は32.6℃であること、すなわちヒトの体温での溶解に適していることが決定された。Witepsol(登録商標)H32は、主にトリグリセリドから、部分的には最大15%のジグリセリドおよび最大1%のモノグリセリドからそれぞれ構成される医薬等級硬質脂肪である。半固体医薬品Dは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドおよび粘度増強剤としてステアリン酸を用いて、実施例1に従って調製した。白色の軟膏を得た。組成物CおよびDを本明細書前記に記載されたとおりであるが、何らHAL HClを使用することなく調製した。組成物Cを白色で非崩壊の坐剤として得て、組成物Bを白色の軟膏として得た。
下記の表の数字は、総生成物の重量%を表す。
【0162】
【表6】

【0163】
調製した直後、組成物を目視により評価し、CおよびDのHAL HCl含有量をHPLCにより決定した。組成物Cの新たに調製した坐剤を、PVCプラスチックトレーおよびアルミニウム/PVC積層により作製されたブリスターパックに詰めた。5gの新たに調製した組成物Dを、ねじ蓋の付いた透明ガラス容器(組成物1つあたり3つの容器)に移した。ブリスターパックおよびガラス容器を、5℃/周囲相対湿度および25℃/60%、すなわち組成物の融点および滴点未満で1〜9か月保存した。1、2、3、6および9か月後に3つの試料をそれぞれのガラス容器から取り出し、HAL HCl含有量をHPLCにより決定した。HAL HCl含有量の中央値を決定した。加えて、組成物を目視により評価した。組成物CおよびDを同じ条件下で保存し、1、2、3、6および9か月後に目視により評価し、HPLCアッセイにおいて「ブランク」試料として使用した。
【0164】
【表7】

【0165】
【表8】

【0166】
組成物Dは25℃で9か月にわたって安定であったが、組成物CのHAL HCl濃度は著しく減少し、3か月後に約3%、6か月後に23%、9か月後に29%のHAL HClの損失であった。HAL HClは組成物Dにおいてより安定していることが明白である。
【0167】
[実施例4]
<口腔におけるポルフィリン集積のインビボ研究>
組成物CおよびDを、ポルフィリン集積のインビボ研究のために選択した。肛門管、膣および子宮頸部外膜においても見出される非角化重層扁平上皮であるので、口腔粘膜の被蓋粘膜をモデルとして選んだ。
【0168】
ポルフィリン集積は、光増感剤前駆体のHAL HClが組成物から放出され、細胞に進入し、変換されて光増感ポルフィリンになったという指標である。
【0169】
ポルフィリン集積を、407nm励起光を生じる分光蛍光計に接続されている一束の光ファイバーから構成されるファイバー点測定装置を使用し、2人の健康なヒト志願被験者において測定した。組織内に0.1〜0.5mm浸透することができる励起光を、ファイバーの半分から口腔内の被蓋粘膜に導出させた。得られた放射蛍光スペクトル(およそ635nm)を収集し、定量化のために、残りのファイバーから電子増倍管へ導出させた。それぞれの被験者は、2gの坐剤(組成物C)を受け取り、それは下唇の内側と顎の間の被蓋粘膜(投与部位)に配置された。別の日にそれぞれの被験者は、組成物Dの2gの試料を受け取り、それは同じ投与部位に配置された。それぞれの融点/滴点によって、両方の組成物は投与後にゆっくりと溶解した。被験者は、溶解組成物を吐き出すことが認められた。投与部位の蛍光スペクトルを、投与領域内の5地点を選択し、上記に記載されたように蛍光を測定することによって、多様な時点において決定した。基線値蛍光を、脇の下の選択された5地点において同じ時点で決定した。蛍光平均値および蛍光基線値を5地点により計算した。蛍光データを基線値修正し、時間に対してプロットした(図1および2)。図1は、化合物Cの蛍光を示し、図2は、化合物Dの蛍光を示す。組成物Dが組成物Cよりもポルフィリン集積を効率的に誘導することが明白である。
【0170】
[実施例5]
<子宮頸部におけるポルフィリン集積のインビボ研究>
組成物Dを、8人の健康なヒト女性志願被験者の子宮頸部におけるポルフィリン集積のインビボ研究のために選択した。
【0171】
8人の被験者は、組成物Dの3gの試料を受け取り、それは子宮頸部外膜、すなわち膣に突出している子宮頸部の部分に適用された。非ホルモン避妊のために意図されたラテックス非含有装置であるFemCapを子宮頸部外膜に配置し、所定の位置に組成物を保持した。投与部位の蛍光スペクトルを、組成物の投与前およびその7時間後に決定した。投与領域内の6地点を、実施例4に記載されたように蛍光を測定するために選択した。蛍光の平均値および中央値を、それぞれの被験者の6地点により計算し、相対単位で下記の表に示す。
【0172】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性生殖器系、肛門および陰茎の、癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療に使用される、
a)5-ALA、5-ALAの前駆体、5-ALAの誘導体、およびそれらの薬学的に許容される塩から選択される活性成分;
b)1つ以上のトリグリセリド;ならびに
c)任意に、1つ以上の粘度増強剤
を含む、半固体医薬品。
【請求項2】
前記活性成分が、5-ALAの誘導体、好ましくは5-ALAエステルまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の半固体医薬品。
【請求項3】
前記活性成分が、下記式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
R22N-CH2COCH2-CH2CO-OR1 (I)
式中、
R1は、置換または非置換アルキル基を表し;および
R2は、それぞれ独立して、水素原子またはR1基を表す
請求項1および2に記載の半固体医薬品。
【請求項4】
前記1つ以上のトリグリセリドが、グリセロールと、3つの同一または異なるC2〜C22脂肪酸との、より好ましくは3つの同一または異なるC4〜C18脂肪酸との、さらにより好ましくは3つの同一または異なるC6〜C18脂肪酸との、最も好ましくは3つの同一または異なるC6〜C12脂肪酸とのトリグリセリドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半固体医薬品。
【請求項5】
前記1つ以上のトリグリセリドが液体トリグリセリドであり、1つ以上の粘度増強剤が存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半固体医薬品。
【請求項6】
前記1つ以上の粘度増強剤が、セルロースおよびその誘導体、合成ポリマー、ポリエチレングリコール、植物ガム、デンプンおよびデンプン誘導体、カラギーナン、寒天、ゼラチン、ロウおよびロウ状固体から選択され、好ましくはロウまたはロウ状固体から選択され、最も好ましくは固体脂肪アルコールまたは固体脂肪酸から選択される、請求項5に記載の半固体医薬品。
【請求項7】
d)任意に1つ以上の乳化剤、
e)任意に1つ以上の粘膜付着剤、
f)任意に、b)およびc)以外の1つ以上の薬学的に許容される添加物、
g)任意に1つ以上の表面浸透剤、ならびに
h)任意に1つ以上のキレート剤
をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の半固体医薬品。
【請求項8】
前記半固体医薬品が水不含有である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の半固体医薬品。
【請求項9】
薬剤送達系に含有される、好ましくは、ペッサリー[pessaries]、ダイアフラム[diaphragms]、キャップ[caps]、粘着包帯[adhesive bandages]またはパッチから選択される薬剤送達系に含有される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の半固体医薬品。
【請求項10】
請求項1〜9または11〜13に記載の半固体医薬品、および薬剤送達系、好ましくは、ペッサリー、ダイアフラム、キャップ、粘着包帯またはパッチから選択される薬剤送達系を含む、キット。
【請求項11】
a)5-ALA、5-ALAの前駆体、5-ALAの誘導体、およびそれらの薬学的に許容される塩から選択される活性成分;
b)1つ以上のトリグリセリド;ならびに
c)任意に1つ以上の粘度増強剤
からなる、半固体組成物。
【請求項12】
前記活性成分が、5-ALAの誘導体、好ましくは5-ALAエステルまたはその薬学的に許容される塩であり、前記1つ以上のトリグリセリドが、好ましくはグリセロールと、3つの同一または異なるC2〜C22脂肪酸との、より好ましくは3つの同一または異なるC4〜C18脂肪酸との、さらにより好ましくは3つの同一または異なるC6〜C18脂肪酸との、最も好ましくは3つの同一または異なるC6〜C12脂肪酸とのトリグリセリドから選択される液体トリグリセリドであり、前記1つ以上の粘度増強剤が存在する、請求項11に記載の半固体組成物。
【請求項13】
前記1つ以上の粘度増強剤が、ロウまたはロウ状固体から選択され、最も好ましくは固体脂肪アルコールまたは固体脂肪酸から選択される、請求項12に記載の半固体組成物。
【請求項14】
薬剤として使用される、請求項11〜13に記載の半固体組成物。
【請求項15】
女性生殖器系、肛門および陰茎における、癌、前癌性状態および非癌性状態の光力学的治療において使用される、より好ましくは女性生殖器系、肛門および陰茎における異形成症およびHPV感染、さらにより好ましくは子宮内膜、子宮頸部、膣、外陰、肛門および陰茎の異形成症、ならびに子宮、子宮頸部、膣、外陰、肛門および陰茎のHPV感染の光力学的治療において使用される、請求項1〜9に記載の半固体医薬品または請求項11〜14に記載の半固体組成物または請求項10に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−529452(P2012−529452A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514393(P2012−514393)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003532
【国際公開番号】WO2010/142457
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(501361529)フォトキュア エイエスエイ (6)
【Fターム(参考)】