説明

半導体インゴット反転装置

【課題】半導体インゴットを傷つけることなく、容易に反転させることが可能な半導体インゴット反転装置を提供すること。
【解決手段】半導体インゴット反転装置4aは、略円柱状の半導体インゴット11を直接的に又は間接的に保持可能なアーム部51と、アーム部51を第1の位置から第2の位置に回動させる回動駆動部52と、を有する回動アーム部50と、回動アーム部50により第2の位置に移動された半導体インゴット11を直接的に又は間接的に保持可能な第1保持部61と、第1保持部61を上下方向に昇降させる第1駆動部62と、を有する第1昇降部60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体インゴットの反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハは、シリコン等の原料により略円柱状に形成された半導体インゴットをスライス処理することにより製造される。そして、この半導体インゴットのスライス処理は、インゴットの大径化に伴い、内刃スライス装置によるスライス処理から、ワイヤソー装置による同時スライス処理によって製造する方法に移行している。
【0003】
ワイヤソー装置は、複数のローラに螺旋状に一定の間隔で巻き回されて走行されるワイヤ列からなるスライス経路を有している。ワイヤソー装置は、半導体インゴットの外周面がこのスライス経路と対向するように半導体インゴットを配置し、この状態で半導体インゴットを下降させることにより、半導体インゴットを一定の厚さにスライスするように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、ワイヤソー装置によりスライスされる半導体インゴットは、上述のように、ワイヤソー装置の上方から、外周面をスライス経路と対向させた状態でスライス経路に向かって下降される。そのため、半導体インゴットの外周面には、半導体インゴットをワイヤソー装置の上方で保持するために固着された固着部材が設けられる。
【0005】
固着部材は、通常、接着剤により半導体インゴットに接着される。そして、固着部材は、半導体インゴットを固着部材の上にした状態で所定時間乾燥させることにより、半導体インゴットに固着される。つまり、ワイヤソー装置に供給される半導体インゴットは、下方側に固着部材が固着され、この状態でワイヤソー装置に供給されるまで保管される。そのため、半導体インゴットは、ワイヤソー装置によりスライスされる前に、固着部材が半導体インゴットの上方側にくるように反転させる必要がある。そして、従来は、この半導体インゴットの反転作業は、作業者による手作業により行われていた。
【特許文献1】特開2008−254173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、昨今においては、半導体インゴットの大径化に伴い、作業者の手作業による反転作業が困難になっていた。特に、半導体インゴットは、脆く壊れやすいため、作業者による作業では、壊れるおそれがあった。
【0007】
本発明は、容易に反転させることが可能な半導体インゴット反転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の半導体インゴット反転装置は、略円柱状の半導体インゴットを直接的に又は間接的に保持可能なアーム部と、前記アーム部を第1の位置から第2の位置に回動させる回動駆動部と、を有する回動アーム部と、前記回動アーム部により前記第2の位置に移動された前記半導体インゴットを直接的に又は間接的に保持可能な第1保持部と、前記第1保持部を上下方向に昇降させる第1駆動部と、を有する第1昇降部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)また、前記回動駆動部は、前記アーム部を180度回動させることが好ましい。
【0010】
(3)また、本発明の半導体インゴット反転装置は、前記第1の位置に位置する前記半導体インゴットを直接的に又は間接的に保持可能な第2保持部と、前記第2保持部を上下方向に昇降させる第2駆動部と、を有する第2昇降部を更に備えることが好ましい。
【0011】
(4)また、半導体インゴットの外周面の一部には、固着部材が固着され、前記第1保持部は、前記固着部材を介して前記半導体インゴットを間接的に保持することが好ましい。
【0012】
(5)また、前記アーム部は、前記半導体インゴットを保持した前記第1保持部が上昇した後、前記半導体インゴットを把持しない状態で前記第2の位置から回動駆動部により回動され、前記第1保持部は、前記アーム部が前記第2の位置から回動した後、前記第1駆動部により下降されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容易に反転させることが可能な半導体インゴット反転装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、図1から図3を参照して、本発明の実施形態に係る半導体インゴット反転装置としての第1反転装置4a及び第2反転装置4bを備えるインゴットスライスシステム1の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係るインゴット反転装置を備えるインゴットスライスシステムの概略構成を示す平面図である。図2は、図1に示すインゴットスライスシステムの概略構成を示す正面図である。図3は、本実施形態に係るインゴット反転装置により反転される第2インゴットを示す外観斜視図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、インゴットスライスシステム1は、第1ストッカ2aと、第2ストッカ2bと、接着装置3と、第1反転装置4aと、第2反転装置4bと、第1スライス装置5aと、第2スライス装置5bと、第1リフタ6aと、第2リフタ6bと、第3リフタ6cと、インゴット搬送装置7と、を備えて構成されている。
【0016】
図3に示すように、第2インゴット11は、第1インゴット10と、インゴットヘッド12とを有して構成されている。第2インゴット11は、第1インゴット10にインゴットヘッド12を接着させることにより形成される。第1インゴット10は、シリコン原料により略円柱状に形成されている。第1インゴット10には、オリエンテーションフラット(図示せず)が設けられている。インゴットヘッド12は、当て板部12aと、ヘッド部12bと、を有して構成されている。当て板部12aは、矩形板状に形成されており、長手方向が第1インゴット10の軸方向と一致するように、第1インゴット10の外周面に接着されている。当て板部12aは、オリエンテーションフラットに沿った状態で接着されている。ヘッド部12bは、略直方体状に形成されている。ヘッド部21bは、長手方向が当て板部12aの長手方向と一致するように、当て板部12aの幅方向の略中央部に接着されている。
【0017】
インゴット搬送装置7は、第1ストッカ2a、接着装置3、第1反転装置4a、第1スライス装置5a、第1リフタ6a及び第2リフタ6bと、第2ストッカ2b、第2反転装置4b、第2スライス装置5b及び第3リフタ6cとを連通させる搬送通路Dに配設されている。
【0018】
第1ストッカ2aは、第1保管部20と、第1搬送コンベア22と、第2搬送コンベア23と、を有する。第1保管部20は、搬入された円柱状のインゴット(以下、「第1インゴット10」という)及び、接着装置3により固着部材としてのインゴットヘッド12が接着されたインゴット(以下、「第2インゴット11」という)を保管する。第1搬送コンベア22は、第1保管部20と第2リフタ6bとを接続する。第1搬送コンベア22は、第1保管部20に保管された第1インゴット10を第2リフタ6bに搬送する。また、第1搬送コンベア22は、接着装置3でインゴットヘッド12が接着された第2インゴット11を第1保管部20に搬送する。第2搬送コンベア23は、第1保管部20と第1反転装置4aとを接続する。第2搬送コンベア23は、第1保管部20に保管された第2インゴット11を第1反転装置4aに搬送する。
【0019】
接着装置3は、接着装置本体30と、第3搬送コンベア31とを有する。接着装置本体30は、第1インゴット10にインゴットヘッド12を接着する(接着処理工程)。第3搬送コンベア31は、接着装置本体30と第1リフタ6aとを接続する。第3搬送コンベア31は、第1保管部20から搬送される第1インゴット10を第1リフタ6aから接着装置本体30に搬送する。また、第3搬送コンベア31は、インゴットヘッド12が接着された第2インゴット11を接着装置本体30から第1リフタ6aに搬送する。
【0020】
第1反転装置4aは、第3搬送コンベア31により搬送された第2インゴット11をインゴットヘッド12が第1インゴットの上方側になるように反転させる。第1スライス装置5aは、第1反転装置4aにより反転された第2インゴット11を一定の厚さにスライスする(スライス処理工程)。
【0021】
第1リフタ6aは、上方側が第1インゴット10及び第2インゴット11を受け渡し可能にインゴット搬送装置7に接続されている。また、第1リフタ6aの下方側は、第1インゴット10及び第2インゴット11を受け渡し可能に第3搬送コンベア31に接続されている。第1リフタ6aは、第1保管部20からインゴット搬送装置7を介して接着装置3に搬送される第1インゴット10及び接着装置3によりインゴットヘッド12が接着された第2インゴット11を昇降させる。
【0022】
同様に、第2リフタ6bは、上方側が第1インゴット10及び第2インゴット11を受け渡し可能にインゴット搬送装置7に接続されている。また、第2リフタ6bの下方側は、第1インゴット10及び第2インゴット11を受け渡し可能に第1搬送コンベア22に接続されている。第2リフタ6bは、第1保管部20から接着装置3に搬送される第1インゴット10及び接着装置3から第1保管部20に搬送される第2インゴット11を昇降させる。
【0023】
第2ストッカ2bは、第2保管部24と、第4搬送コンベア25と、第5搬送コンベア26と、を有する。第2保管部24は、第2インゴット11を保管する。第4搬送コンベア25は、第3リフタ6cと保管部24とを接続する。第4搬送コンベア25は、接着装置3からインゴット搬送装置7により搬送される第2インゴット11を、第3リフタ6cから保管部24に搬送する。第5搬送コンベア26は、第2保管部24と第2反転装置4bとを接続する。第5搬送コンベア26は、第2保管部24に保管された第2インゴット11を第2反転装置4bに搬送する。
【0024】
第2反転装置4bは、第5搬送コンベア26により搬送された第2インゴット1をインゴットヘッド12が第1インゴットの上方側になるように反転させる。第2スライス装置5bは、第2反転装置4bにより反転された第2インゴット11を一定の厚さにスライスする(スライス処理工程)。
【0025】
第3リフタ6cは、上方側が第2インゴット11を受け渡し可能にインゴット搬送装置7に接続されている。また、第3リフタ6cの下方側は、第2インゴット11を受け渡し可能に第4搬送コンベア25に接続されている。第3リフタ6cは、接着装置3から保管部24に搬送される第2インゴット11を昇降させる。
【0026】
インゴット搬送装置7は、搬送レール7aと、天井搬送車7bと、を有する。搬送レール7aは、第1リフタ6a及び第2リフタ6bと、第3リフタ6cとを繋ぐように設けられている。つまり、搬送レール7aには、第1リフタ6a、第2リフタ6b及び第3リフタ6cのそれぞれの間を天井搬送車7bが往復移動可能に取り付けられている。天井搬送車7bは、矩形箱状に形成されている。天井搬送車7bは、その内部に第1インゴット10又は第2インゴット11を収容可能に形成されている。天井搬送車7bは、上方側に走行部(図示せず)が設けられており、走行部が搬送レール7aに沿って走行する。つまり、天井搬送車7bは、搬送レール7aに吊り下げられた状態で走行する。
【0027】
次に、本実施形態に係るインゴットスライスシステム1の一使用例について説明する。なお、本実施形態に係るインゴットスライスシステム1は、接着装置3に対して、第1スライス装置5aと、第2スライス装置5bと、を備える。そのため、接着装置3によりインゴットヘッド12が接着された第2インゴット11は、第1スライス装置5aと第2スライス装置5bのそれぞれに搬送される。
【0028】
第1インゴット10が搬入されると、第1インゴット10は、まず、第1保管部20に移動され、ここで一時的に保管される。第1保管部20は、第1インゴット10を複数段に保管可能に形成されており、各段において第1インゴット10が保管される。
【0029】
次いで、第1インゴット10は、接着処理工程を行うために、接着装置3に移動される。まず、第1インゴット10は、第1搬送コンベア22により第2リフタ6bに搬送される。第2リフタ6bに搬送された第1インゴット10は、第2リフタ6bにより上昇され、第2リフタ6bの上方に設けられるインゴット搬送装置7の天井搬送車7bに受け渡される。天井搬送車7bに受け渡された第1インゴット10は、第1リフタ6aまで天井搬送車7bにより搬送される。第1リフタ6aに搬送された第1インゴット10は、第1リフタ6aにより下降され、第1リフタ6aの下方側に設けられる第3搬送コンベア31に送られる。第3搬送コンベア31に送られた第1インゴット10は、第3搬送コンベア31により接着装置3に搬送され、接着装置3でインゴットヘッド12が接着される。このようにして、第1インゴット10は第2インゴット11となる。
【0030】
次に、インゴットヘッド12が接着された第1インゴット10、すなわち、第2インゴット11は、第3搬送コンベア31により第1リフタ6aに送られる。第1リフタ6aに送られた第2インゴット11は、第1リフタ6aにより上昇され、第1リフタ6aの上方に設けられるインゴット搬送装置7の天井搬送車7bに受け渡される。天井搬送車7bに受け渡された第2インゴット11は、天井搬送車7bにより、第2リフタ6b又は第3リフタ6cまで搬送される。
【0031】
第2リフタ6bまで搬送された第2インゴット11は、第2リフタ6bにより下降され、第2リフタ6bの下方側に設けられる第1搬送コンベア22に送られる。第1搬送コンベア22に送られた第2インゴット11は、第1保管部20に送られ、第1保管部20で所定時間乾燥される。
次いで、第1保管部20で所定時間乾燥された第2インゴット11は、スライス処理工程を行うために、第2搬送コンベア23により、第1反転装置4aに移動される。第1反転装置4aに移動された第2インゴット11は、第1反転装置4aにより反転される。第1反転装置4aにより反転された第2インゴット11は、所定の搬送台車(図示せず)により、第1スライス装置5aに移動される。第1スライス装置5aに移動された第2インゴット11は、第1スライス装置5aにより、所定の厚さにスライスされる。
【0032】
同様に、天井搬送車7bにより第3リフタ6cまで搬送された第2インゴット11は、第3リフタ6cにより下降され、第3リフタ6cの下方側に設けられる第4搬送コンベア25に送られる。第4搬送コンベア25に送られた第2インゴット11は、第2保管部24に送られ、第2保管部24で所定時間乾燥される。
【0033】
次いで、第2保管部24で所定時間乾燥された第2インゴット11は、スライス処理工程を行うために、第5搬送コンベア26により、第2反転装置4bに移動される。第2反転装置4bに移動された第2インゴット11は、第2反転装置により反転される。第2反転装置により反転された第2インゴット11は、所定の搬送台車(図示せず)により、第2スライス装置5bに移動される。第2スライス装置5bに移動された第2インゴット11は、第2スライス装置により、所定の厚さにスライスされる。
【0034】
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る第1反転装置4aについて説明する。なお、第2反転装置4bは、以下に説明する第1反転装置4aと同様の構成のため、説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る第1反転装置を模式的に示す正面図である。図5は、本実施形態に係る第1反転装置が第2インゴットを反転させた状態を模式的に示す正面図である。
【0035】
図4及び図5に示すように、第1反転装置4aは、第2昇降部40と、回動アーム部50と、第1昇降部60と、支持フレーム70と、を備えて構成されている。
【0036】
第2昇降部40は、第2保持部41と、第2駆動部42と、を有して構成されている。
第2保持部41は、一対の第2アーム43a,43bと、一対のアーム支持部44a,44bと、を有する。
【0037】
一対の第2アーム43a,43bは、水平方向における第2インゴットの軸方向と直交する方向(以下、「第1水平方向」という)Xに移動可能に形成されている。具体的には、一対の第2アーム43a,43bは、第1水平方向Xにおいて、互いに近接する方向及び離反する方向に移動可能に形成されている。また、一対の第2アーム43a,43bそれぞれの端部には、第2インゴット11を保持する一対の受け部45a,45bが設けられている。一対の受け部45a,45bは、第2インゴット11の外周面に沿うように曲面状に形成されている。一対の受け部45a,45bは、一対の第2アーム43a,43bが互いに近接する方向に移動することにより、第2インゴット11のインゴットヘッド12を下部側から支えるようにして第2インゴット11を保持するように形成されている。
【0038】
一対のアーム支持部44a,44bは、一対の第2アーム43a,43bを第1水平方向Xに移動可能に支持する。また、一対のアーム支持部44a,44bは、互いに対向するように配設されており、アーム支持部44aとアーム支持部44bの間には、前述の第2搬送コンベア23が配設可能に形成されている。
【0039】
第2駆動部42は、一対ガイドレール(図示せず)と、駆動モータ46と、を有する。一対のガイドレールは、一対のアーム支持部44a,44bを垂直方向Zに移動可能に支持する。具体的には、一対のガイドレールは、第2搬送コンベア23により搬送された第2インゴットを一対の受け部45a,45bが受け取り可能な位置(以下、「第1初期位置」という)から、第2インゴット11を後述の回動アーム部50の保持部54に受け渡し可能な位置(以下、「第1の位置」という)に移動可能に一対のアーム支持部44a,44bを支持する。駆動モータ47は、一対のアーム支持部44a,44bを一対のガイドレール47a,47bに沿って第1初期位置から第1の位置に移動させる。
【0040】
回動アーム部50は、アーム部51と、回動駆動部52と、を有して構成されている。
アーム部51は、保持部54と、アーム本体部55と、を有する。保持部54は、一対の係合部(図示せず)を有する。一対の係合部は、水平方向における第1水平方向Xと直交する方向(以下、「第2水平方向」という)Yに移動可能に形成されている。つまり、一対の係合部は、第2インゴット11の軸方向に移動可能に形成されている。具体的には、一対の係合部は、第2水平方向Yにおいて、互いに近接する方向及び離反する方向に移動可能に形成されている。保持部54は、係合部が互いに近接する方向(Y)に移動することにより、第2インゴット11のインゴットヘッド12と係合し、インゴットヘッド12を保持可能に形成されている。アーム本体部55は、保持部54を第2水平方向Yに移動可能に支持する。
【0041】
回動駆動部52は、回動本体部56と、駆動部57と、を有する。回動本体部56は、アーム本体部55を180度回動可能に軸支している。駆動部57は、アーム本体部55を180度回動させる。つまり、駆動部57は、アーム部51を図4に示す第1の位置から図5に示す180度回動させた位置(以下「第2の位置」という)に回動させる。
【0042】
第1昇降部60は、第1保持部61と、第1駆動部62と、を有して構成されている。
第1保持部61は、一対の第1アーム63a,63bと、アーム支持部64と、を有する。
【0043】
一対の第1アーム63a,63bは、第1水平方向Xに移動可能に形成されている。具体的には、一対の第1アーム63a,63bは、第1水平方向Xにおいて、互いに近接する方向及び離反する方向に移動可能に形成されている。また、一対の第1アーム63a,63bそれぞれの端部には、第2インゴット11のインゴットヘッド12を保持する一対の係合部65a,65bが設けられている。一対の係合部65a,65bは、一対の第1アーム63a,63bが互いに近接する方向(X)に移動することにより、インゴットヘッド12と係合し、第2インゴット11を保持可能に形成されている。アーム支持部64は、一対の第1アーム63a,63bを第1水平方向Xに移動可能に支持する。
【0044】
第1駆動部62は、一対のガイドレール(図示せず)と、駆動モータ66と、を有する。一対のガイドレールは、アーム支持部64を垂直方向Zに移動可能に支持する。具体的には、ガイドレールは、第2の位置から回動アーム部の回動を干渉しない位置(以下、「第2初期位置」という)に移動可能にアーム支持部64を支持する。駆動モータ66は、アーム支持部64を一対ガイドレールに沿って図5に示す第2の位置から図4に示す第2初期位置に移動させる。
【0045】
支持フレーム70は、第2昇降部40、回動アーム部50及び第1昇降部60を支持する。具体的には、支持フレーム70は、支持フレーム70の一方側に立設される第1支柱71と、支持フレーム70の他方側に立設される第2支柱72と、第1支柱71と第2支柱72との間に設けられる第3支柱73と、を有して構成されている。第1支柱71と第2支柱との間には、第2昇降部40が設けられる。第2支柱72には、第1昇降部60が取り付けられている。第3支柱73には、回動アーム部50が取り付けられている。
【0046】
次に、図6(a)から図8(b)を参照して、本実施形態に係る第1反転装置4aの動作について説明する。図6(a)は、第3コンベアにより第2昇降部に第2インゴットが搬送された状態を模式的に示す正面図である。図6(b)は、第2昇降部が第2インゴットを保持した状態で上昇する状態を模式的に示す正面図である。図6(c)は、回動アーム部が第2インゴットを保持する状態を模式的に示す正面図である。図7(a)は、回転アーム部が第2インゴットを保持して回動する状態を模式的に示す正面図である。図7(b)は、第2インゴットを保持した回転アーム部が第2の位置へ移動し、第1昇降部が下降する状態を模式的に示す正面図である。図7(c)は、第2の位置で第1昇降部が第2インゴットを保持する状態を模式的に示す正面図である。図8(a)は、第1昇降部が第2インゴットを保持した状態で上昇すると共に、回動アーム部が第2の位置から回動する状態を模式的に示す正面図である。図8(b)は、回動アームが第1の位置に移動すると共に、第1昇降部が搬送台車に第2インゴットを載置した状態を模式的に示す正面図である。
【0047】
第2保管部21で所定時間乾燥された第2インゴット11は、スライス処理工程を行うために、第2搬送コンベア23により、第1反転装置4aに移動される。具体的には、図6(a)に示すように、第2搬送コンベア23により第1反転装置4aに移動された第2インゴット11は、第1初期位置にあるアーム支持部44aとアーム支持部44bの間に搬送される。
【0048】
第2インゴット11がアーム支持部44aとアーム支持部44bの間に搬送されると、第2アーム43aと第2アーム43bとが、互いに近接する方向(X)に移動する。第2アーム43aと第2アーム43bとが、互いに近接する方向(X)に移動すると、第2アーム43aの先端に設けられた受け部45aと、第2アーム43bの先端に設けられた受け部45bとが第2インゴット11の外周面に当接する。受け部45aと受け部45bとがインゴットヘッド12の下部を支持すると、第2アーム43aと第2アーム43bの移動が止まる。このようにして、第2搬送コンベア23により搬送された第2インゴット11は、第2搬送コンベア23により搬送された態勢のまま第2保持部41に保持される。
【0049】
次いで、第2インゴット11が第2保持部41に保持されると、図6(b)に示すように、第2駆動部42が第2保持部41を上昇させる。具体的には、第2駆動部42は、第2インゴット11を保持した第2保持部41を図6(a)に示す第1初期位置から図6(c)に示す第1の位置に移動させる。なお、図6(b)は、第1初期位置から第1の位置に移動する第2保持部41を示している。
【0050】
図6(c)に示すように、第2インゴット11が保持された第2保持部41が第1の位置に移動すると、アーム部51が第1の位置で第2保持部41に保持された第2インゴット11を掴む。具体的には、アーム部51に設けられる保持部54が第2水平方向Yに移動して第2インゴット11の軸方向から第2インゴット11を掴む。ここで、図6(c)に示す第1の位置において、第2インゴット11は、第2保持部41に外周面を当接させた状態で保持されている。一方、アーム部51は、第2インゴット11を第2インゴット11の軸方向から掴み、保持する。つまり、アーム部51は、図6(c)に示す第1の位置において、第2保持部41に干渉されることなく第2インゴット11を保持することが可能になる。
【0051】
図7(b)に示すように、アーム部51が第2インゴット11を保持すると、回動駆動部52が第2インゴット11を保持したアーム部51を180度回動させる。言い換えると、回動駆動部52が第2インゴット11を図6(c)に示す第1の位置から図7(b)に示す第2の位置に移動させる。第2インゴット11は、回動駆動部52によりアーム部51が180度回動されることにより、第2搬送コンベア23により搬送された状態から反転された状態になる。つまり、第2インゴット11は、インゴットヘッド12が上方にある態勢になる。
【0052】
回動アーム部50により、第2インゴット11が図7(b)に示す第2の位置に移動されると、図7(b)に示すように、第1保持部61が図7(a)に示す第2初期位置から図7(c)に示す第2の位置に向かって下降する。第1保持部61が第2の位置に到達すると、第1保持部61は、第1アーム63aと第1アーム63bとを移動させ、第1水平方向Xから第2インゴット11のインゴットヘッド12を掴み、第2インゴット11を保持する(図7(c)参照)。第1保持部61が第2インゴット11を保持すると、回動アーム部50は、保持部54を移動させ、第2インゴット11を離す。
【0053】
図8(a)に示すように、回動アーム部50が第2インゴット11を離すと、第1昇降部60は、図7(c)に示す第2の位置から図7(a)に示す第2初期位置に向かって上昇する。図8(a)に示すように、第1昇降部60が上昇すると、回動アーム部50が第2の位置から第1の位置に向かって回動する。
【0054】
図8(b)に示すように、回動アーム部50が図7(c)に示す第2の位置から図8(b)に示す第1の位置に回動すると、第1昇降部60の下方側における所定の位置に搬送台車Wが搬入される。搬送台車Wが所定の位置に搬入されると、第1保持部61が搬送台車Wに向かって降下し、インゴットヘッド12が上方にある態勢の第2インゴット11を搬送台車Wに載置する。第2インゴット11が搬送台車Wに載置されると、搬送台車Wが第1スライス装置5aに移動され、第2インゴット11が第1スライス装置5aにより、所定の厚さにスライスされる。本実施形態に係る第1反転装置4a上述の動作を繰り返し行う。
【0055】
以上のように構成された本実施形態に係る第1反転装置4aによれば、以下のような効果が奏される。
本実施形態によると、第1反転装置4aは、第2インゴット11を反転させる回動アーム部50と、回動アーム部50により反転された第2インゴット11を保持する第1昇降部と、を有する。そのため、例えば、大径の半導体インゴットのような重量物を傷つけることなく容易に反転させることが可能になる。
【0056】
また、本実施形態によると、例えば、第1インゴット10の接着処理工程から第2インゴット11を反転させる工程までを無人化することが可能になる。そのため、作業者が重量物を扱う必要がなくなり、安全性を向上させることが可能になる。
【0057】
また、本実施形態によると、アーム部51は、第2インゴット11を保持した第1保持部61が上昇した後、第2インゴット11を保持しない状態で第2の位置から回動駆動部52により回動され、第1保持部61は、アーム部51が第2の位置から回動した後、第1駆動部62により下降される。そのため、アーム部51は、第1保持部61に干渉されることなく第1の位置に戻ることが可能となる。また、第1保持部61は、アーム部51に干渉されることなく第2の位置に戻ると共に、第2インゴット11を搬送台車Wに載置させることが可能となる。つまり、容易に搬送台車Wに第2インゴット11を載置させることが可能になる。
【0058】
なお、本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、アーム部51は、間接的に第2インゴット11を保持する構成としたが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、アーム部51は、第2インゴット11を直接的に保持する構成としてもよい。
【0059】
また、本実施形態においては、第1保持部61は、間接的に第2インゴット11を保持する構成としたが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、第1保持部61は、第2インゴット11を直接的に保持する構成としてもよい。
【0060】
さらに、本実施形態においては、第2保持部41は、直接的に第2インゴット11を保持する構成としたが本発明においてはこれに限定されない。例えば、第2保持部41は、第2インゴット11を間接的に保持する構成としてもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、アーム部51を180度回動させる構成としたが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、180度以上回動させる構成であってもよく、180度以下回動させる構成であってもよい。
【0062】
また、本実施形態においては、第1インゴット(半導体インゴット)10は、シリコンを原料として製造されたものを用いて説明したが、本発明においてはこれに限らない。例えば、第1インゴット(半導体インゴット)は、GaA、InP、ZnS、ZnSeを原料として製造されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態に係る第1反転装置を備えるインゴットスライスシステムの概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示すインゴットスライスシステムの概略構成を示す正面図である。
【図3】本実施形態に係る第1反転装置により反転される第2インゴットを示す外観斜視図である。
【図4】本実施形態に係る第1反転装置を模式的に示す正面図である。
【図5】本実施形態に係る第1反転装置が第2インゴットを反転させた状態を模式的に示す正面図である。
【図6】(a)は、第3コンベアにより第2昇降部に第2インゴットが搬送された状態を模式的に示す正面図であり、(b)は、第2昇降部が第2インゴットを保持した状態で上昇する状態を模式的に示す正面図であり、(c)は、回動アーム部が第2インゴットを保持する状態を模式的に示す正面図である。
【図7】(a)は、回転アーム部が第2インゴットを保持して回動する状態を模式的に示す正面図であり、(b)は、第2インゴットを保持した回転アーム部が第2の位置へ移動し、第1昇降部が下降する状態を模式的に示す正面図であり、(c)は、第2の位置で第1昇降部が第2インゴットを保持する状態を模式的に示す正面図である。
【図8】(a)は、第1昇降部が第2インゴットを保持した状態で上昇すると共に、回動アーム部が第2の位置から回動する状態を模式的に示す正面図であり、(b)は、回動アームが第1の位置に移動すると共に、第1昇降部が搬送台車に第2インゴットを載置した状態を模式的に示す正面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 インゴットスライスシステム
4a 第1反転装置(半導体インゴット反転装置)
4b 第2反転装置(半導体インゴット反転装置)
10 第1インゴット
11 第2インゴット(半導体インゴット)
40 第2保持部
50 回転アーム部
51 アーム部
52 回転駆動部
60 第1昇降部
61 第1保持部
62 第1駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱状の半導体インゴットを直接的に又は間接的に保持可能なアーム部と、前記アーム部を第1の位置から第2の位置に回動させる回動駆動部と、を有する回動アーム部と、
前記回動アーム部により前記第2の位置に移動された前記半導体インゴットを直接的に又は間接的に保持可能な第1保持部と、前記第1保持部を上下方向に昇降させる第1駆動部と、を有する第1昇降部と、
を備える半導体インゴット反転装置。
【請求項2】
前記回動駆動部は、前記アーム部を180度回動させる請求項1に記載の半導体インゴット反転装置。
【請求項3】
前記第1の位置に位置する前記半導体インゴットを直接的に又は間接的に保持可能な第2保持部と、前記第2保持部を上下方向に昇降させる第2駆動部と、を有する第2昇降部を更に備える請求項1又は2に記載の半導体インゴット反転装置。
【請求項4】
半導体インゴットの外周面の一部には、固着部材が固着され、
前記第1保持部は、前記固着部材を介して前記半導体インゴットを間接的に保持する請求項3に記載の半導体シリコン反転装置。
【請求項5】
前記アーム部は、前記半導体インゴットを保持した前記第1保持部が上昇した後、前記半導体インゴットを保持しない状態で前記第2の位置から回動駆動部により回動され、
前記第1保持部は、前記アーム部が前記第2の位置から回動した後、前記第1駆動部により下降される請求項1から4のいずれかに記載の半導体インゴット反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−143674(P2010−143674A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320664(P2008−320664)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】