説明

半導体チップの実装方法及び半導体搭載用配線基板

【課題】半導体チップの実装方法及び半導体搭載用配線基板において、高温、高圧力を半導体実装部に負荷しても、半導体直下と配線パタ−ンが電気的に短絡することのない、半導体チップの実装方法及び半導体搭載用配線基板を提供する。
【解決手段】配線回路22と、熱可塑性樹脂層24との間に熱硬化性樹脂層40を設けるとともに、熱硬化性樹脂層40において、硬化剤の使用量を通常の使用量の1/2にして架橋度を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空タグ、物流管理用ラベル、無人改札用パス等として機能する電磁波読取り可能なデ−タキャリアの製造等に好適な半導体チップの実装方法及び半導体搭載用配線基板に係わり、特に、配線基板上に、半導体チップをフリップチップ方式で超音波を用いて低コストに実装することを可能とした半導体チップの実装方法及び半導体搭載用配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カ−ド型電子機器、物流管理用タグ、携帯電話等携帯用電子機器、あるいは画像機器等の進展に伴ない、半導体等を実装したプリント配線基板の低コスト化、薄型化に対する要求が急速に高まっている。
【0003】
近年のこうした薄型化への要求に対して、プリント配線基板にベアの半導体チップを直接実装するフリップチップ方式(以下「FC方式」と言う)に関する提案が盛んになされている。図4には、このFC方式を利用した半導体チップの実装方法による実装構造の断面図が示されている。なお、以下において、図4に使用されている符号を丸カッコを付して示す。
【0004】
図4に示すように、このFC方式は、半導体チップ(10)の電極にあらかじめ接続用の突起状端子(以下「バンプ」と言う)(11)を形成しておき、このバンプ(11)と樹脂基板(21)上の配線回路(22)を位置合わせした後、ハンダ、あるいは導電性ペ−スト等により接続する方法である。
【0005】
ところが、こうした従来の方法にあっては、バンプ(11)と配線回路(22)を接続するためのハンダ、あるいは導電性ペーストの供給、硬化等の工程が複雑で高コスト化する問題があり、また、バンプ接続部分の耐湿信頼性、あるいは半導体の搭載強度を得るため、半導体チップ(10)と樹脂基板(21)との間にアンダーフィル(23)と呼ばれる絶縁樹脂を充填してバンプ接続部分を封止する必要があり、このアンダーフィル(23)を充填し硬化させる工程が必要となるため、製造コストが高くなる問題がある。
【0006】
この問題の解決方法として、特許文献1で提案されているような、異方導電フィルムを用いて半導体を実装する方法(以下「ACF」と言う)がある。この方法は、熱可塑性や熱硬化性の樹脂中に導電性の微粒子を分散させた異方導電フィルムを半導体と基板回路の間に挿入し、熱圧着によって樹脂を流動させ、バンプ、基板回路間に挟まれた導電性の微粒子によって厚さ方向の電気的接続を得る方法である。この方法では、半導体を実装する際の基板回路との位置合わせが比較的ラフに行える上に、樹脂硬化時間が10〜20秒と短く、アンダーフィル等の封止材を用いる必要がなく、製造コストの低下が狙えるという効果がある。
【0007】
ところが、前記異方導電シートは比較的高価であり、硬化温度に200℃以上という高温度が必要なため、耐熱性のない基板には用いることができないという問題がある。また、比較的短時間ではあるが、樹脂材の硬化に10〜20秒を要し、さらなる工程の簡略化、高速化というのは困難である。
【0008】
さらに、バンプと基板パターン間の電気的接続は、樹脂材内に分散された微粒導電粒子の接触により行うため、接続の信頼性に乏しいという問題もある。
【0009】
そこで、特許文献2において、半導体チップの新規実装方法の提案がなされた。この実装方法について以下に説明する。なお、ここで使用されている符号については、角カッコを付して示す。
【0010】
図5は、超音波実装工程の詳細を示す説明図であり、この半導体チップの実装方法は、樹脂基板[21]上に積層された金属箔の表面に熱可塑性の樹脂材(レジスト)[24]からなるインク材を所要配線回路[22]状に塗布形成し、該インク材より露出した部分の金属をエッチングにより除去することによって作製された半導体搭載用配線基板[20]を加熱(工程A)し、次に、半導体チップ[10]から突出したバンプ[11]を超音波[100]を印加しながら半導体搭載用配線基板[20]に押し当てて熱可塑性樹脂層[24]を除去(工程B)し、さらに、バンプ[11]と配線回路[22]間に超音波[100]により電極領域[110]の形成を行う(工程C)方法である。
【0011】
この特許文献2記載の方法を用いれば、製造工程、超音波接合、熱可塑性樹脂の溶融、硬化は1〜2秒以内で実行でき、製造時間の短縮ができる。超音波振動によるバンプ、配線回路間の金属溶融接合により、確実な端子間接続が可能であり、接続の高い信頼性が得られる。
【0012】
ところが図6に示すように、半導体チップ[10]直下と配線回路[22]の電気的絶縁は熱可塑性樹脂層[24]のみによって成されているために、カード等の作製で用いられる積層プレス、射出成型等の加工で、高温、高圧力が同時に該半導体チップ[10]の実装部に施されると、熱可塑性樹脂層[24]が再軟化して流動し、半導体チップ[10]直下と、配線回路[22]が電気的に短絡する可能性がある(図中(b)の[31]、[32]部分参照)。
【0013】
【特許文献1】特許第2586154号公報
【0014】
【特許文献2】特開2001−156110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、半導体チップの実装方法及び半導体搭載用配線基板において、高温、高圧力を半導体実装部に負荷しても、半導体直下と配線パタ−ンが電気的に短絡することのない、半導体チップの実装方法及び半導体搭載用配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するものであり、樹脂基板の片面にアルミ箔を接着する工程と、前記アルミ箔の表面上に所要パターン形状の熱硬化性樹脂層を形成する工程と、前記アルミ箔をエッチングして配線回路を形成する工程と、前記配線回路上に熱可塑性樹脂層を積層する工程と、から半導体搭載用配線基板を製造し、前記配線回路上の電極領域を覆う熱可塑性樹脂層を加熱軟化させた状態において、その軟化状態にある熱可塑性樹脂層の上に半導体ベアチップのバンプを超音波を付与しつつ押し付けることにより、軟化した熱可塑性樹脂層を押し退けてバンプと電極領域とを接触させる工程と、前記バンプと電極領域とが接触した状態において、超音波を継続的に付与することにより、バンプと電極領域とを超音波接合させる工程と、前記溶融した熱可塑性樹脂を冷却固化させて半導体ベアチップ本体を前記半導体搭載用配線基板上に接着させる工程と、を具備する半導体チップの実装方法であって、前記熱硬化性樹脂層は、半導体搭載用配線基板を加熱するとともに、半導体チップのバンプに超音波振動を付加しながら半導体搭載用配線基板にバンプを押し当てることにより半導体チップを半導体搭載用配線基板に実装する実装工程において、前記半導体搭載用配線基板が折れ曲がることにより前記半導体チップ直下と配線回路とが短絡することがない程度の強度を有し、かつ、熱硬化性樹脂層がバンプの先端で除去され配線回路表面に達することができる程度に架橋度を低くしてなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、樹脂基板と、前記樹脂基板の片面に積層されており、エッチングにより形成された配線回路と、前記配線回路の表面上に積層された熱硬化性樹脂層と、前記配線回路上に積層された熱可塑性樹脂層とからなる半導体搭載用配線基板であって、前記熱硬化性樹脂層は、半導体搭載用配線基板を加熱するとともに、半導体チップのバンプに超音波振動を付加しながら半導体搭載用配線基板にバンプを押し当てることにより半導体チップを半導体搭載用配線基板に実装する実装工程において、前記半導体搭載用配線基板が折れ曲がることにより前記半導体チップ直下と配線回路とが短絡することがない程度の強度を有し、かつ、熱硬化性樹脂層がバンプの先端で除去され配線回路表面に達することができる程度に架橋度を低くしてなることを特徴とする。
【0018】
前記熱硬化性樹脂層が、例えばアミン類、酸無水物類、フェノール類といった硬化剤、及び例えばアミン類などの硬化触媒を添加したエポキシ系の樹脂であってもよい。
【0019】
ここで、熱硬化性樹脂とは、プリポリマーという重合度の小さな粉末または液体状の物質またはこれに硬化剤という物質を加えたものを加熱すると,分子間に三次元的な橋かけ結合(架橋)を形成して硬くなる、立体的な網目構造をもった高分子物質のことである。三次元の架橋構造を持つことから、熱可塑性樹脂に比べると耐熱性や耐薬品性などの物性に優れる。主な熱硬化性樹脂には、フェノール樹脂、エポキシ系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミドなどがある。
【0020】
熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂であれば、電子部品(プリント配線板、抵抗器・コンデンサの封止)、半導体封止(トランジスタ、IC、LSI、COB、PPGA、TABの封止)などに用いられ、ユリア樹脂であれば、配線・照明部品、配線器具部品、制御部品、摺動部品、日用雑貨品、キャップ類などに用いられ、それぞれに得意用途、不得意用途がある。
【0021】
また、熱硬化性樹脂の種類に応じて、その内容、硬化法も異なる。例えば、エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合などによって得られるエポキシ基をもった樹脂で、グリシジル型と非グリシジル型があり、硬化剤と反応させれば、硬化して三次元構造をとる。
【0022】
そして、本発明においては、この熱硬化性樹脂に含まれる硬化剤の分量を通常使用される分量よりも減らして、架橋度を下げるようにしている。この「通常」の程度は、半導体チップ直下と、配線回路が電気的に短絡することがなく、かつ、加工の際に、軟化状態にない強靭な熱硬化性樹脂層が配線回路の表面に残留し、バンプと配線回路間の電極領域の形成が疎外されることのない程度である。
【0023】
ここで、エポキシ系の樹脂の接着剤としての性能は、その硬化度によって表され、有機高分子における硬化度は分子の架橋度により推定が可能である。よって、本発明において熱硬化性樹脂にエポキシ系の樹脂を用いた場合には、この架橋度を抑えるべく硬化剤を通常の量よりも少なくし、好適には通常の半分の量とし、硬化度を低くすることにより、エポキシを剥ぎ取り易くして、半導体チップのバンプと基板のAlの金属接合を容易にしている。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、配線回路と、熱可塑性樹脂層との間に熱硬化性樹脂層を設けるとともに、この熱硬化性樹脂層において、硬化剤の使用量を通常の使用量よりも少なくして架橋度を低くした。これにより、高温、高圧力を半導体実装部に負荷しても、半導体直下と配線パタ−ンが電気的に短絡することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
本発明の半導体搭載用配線基板の構造は、図6(a)に示す配線基板とほぼ同様の構造であり、相違する点は、配線回路22と熱可塑性樹脂層24との間に熱硬化性樹脂層40を有する点であるので、図6(a)に示す半導体搭載用配線基板20と同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。なお、説明に必要な場合は、図3〜6も使用する。
【0027】
図1は、本発明における半導体チップの実装構造を示す断面図、図2は、本発明に係る半導体搭載用配線基板の製造工程を示す説明図、図3は、通常の熱硬化性樹脂と本発明の熱硬化性樹脂とでシェア強度を比較した結果を示す図である。
【0028】
図1に示すように、本発明に係る半導体搭載用配線基板20は、樹脂基材21上に積層された配線回路22の表面に、エッチング加工時のレジスト膜となる熱硬化性樹脂層40と、該熱硬化性樹脂層40の表面上に熱可塑性樹脂層24を積層させた2層の機能層で構成され、熱硬化性樹脂層40が、エポキシ系の主材に通常の半分の硬化剤(例えば アミン類、酸無水物類、フェノール類など)を添加した樹脂、あるいは、前記樹脂からさらに硬化触媒を通常の半分(例えばアミン類)にした樹脂より成ることを特徴としている。
【0029】
ここで、通常の半分とは、エポキシ系の熱硬化性樹脂であれば、電子部品(プリント配線板、抵抗器・コンデンサの封止)、半導体封止(トランジスタ、IC、LSI、COB、PPGA、TABの封止)などに一般的には用いられるが、それぞれの用途に使用される際に含有される硬化剤の一般的な使用量を基準として、それに対し半分の量のことである。
【0030】
このように本発明に係る半導体搭載用配線基板20においては、図5に示す半導体搭載用配線基板20の熱可塑性樹脂層24と配線回路22の界面に熱硬化性樹脂層40を設けている。これにより、カード等の作製で用いられる積層プレス、射出成型等の加工で、高温、高圧力が同時に該半導体チップ10の実装部に施されても、図6(b)に示すような、半導体チップ10直下と、配線回路22が電気的に短絡する問題が発生しないという効果が得られる。
【0031】
一方、この熱硬化性樹脂層40に使用する熱硬化性樹脂が、通常のもの、すなわち、電子部品(プリント配線板、抵抗器・コンデンサの封止)、半導体封止(トランジスタ、IC、LSI、COB、PPGA、TABの封止)などに用いる際に、一般的な品質要求を満たすように必要量の硬化剤が含有されたものであると、上記特許文献2で提案されている実装方法を用いた場合に次のような問題が生ずる可能性がある。すなわち、図5(工程B)の、半導体チップ10に超音波100を印加した状態で、半導体チップ10から突出したバンプ11を半導体搭載用配線基板20に押し付けて上記2つの機能層である熱可塑性樹脂層24及び熱硬化性樹脂層40を配線回路22の表面から削除する工程で、軟化状態にない強靭な熱硬化性樹脂層40が配線回路22の表面に残留し、バンプ11と配線回路22間の電極領域110の形成が疎外される問題が生ずる可能性がある。
【0032】
そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、この時の熱硬化性樹脂層40の配線回路22上での残留は、熱硬化性樹脂の架橋度が高く、強靭であることが主因であることを実験により解明し、この原因解析に基づいて、熱硬化性樹脂層40を構成するエポキシ系主材に、硬化剤を通常の半分、あるいは、さらに硬化触媒を通常の半分にして架橋度を下げるという対策を講じた。これにより、上記短絡を防止しつつ、熱硬化性樹脂層40の完全な除去が可能となり、バンプ11と配線回路22間の電極領域110の形成が疎外される問題も防止できるという効果を得ることができる。
【0033】
以下、本発明に係わる実施例を図面に従って説明する。
【0034】
<実施例>
先に説明したように、この発明に関わる半導体チップの実装方法(図5参照)は、樹脂基板21上に形成された配線回路22の表面に、エポキシ系主材に硬化剤を通常の半分、あるいは、さらに硬化触媒を通常の半分にして架橋度を下げた熱硬化性樹脂層40絶縁性粒子を設け、さらに熱硬化性樹脂層40の表面上に熱可塑性樹脂層24を被覆した半導体搭載用配線基板20を、加熱によって表面の熱可塑性樹脂が軟化した状態で半導体チップ10から突出したバンプ11を熱可塑性樹脂層24の表面に超音波100を印加した状態で押し当て、配線回路22上の絶縁性被膜である、熱可塑性樹脂層24及び熱硬化性樹脂層40を除去して、バンプ11と配線回路22間の電極領域110を形成する工程よりなる工法である。
【0035】
本実施例の半導体搭載用配線基板20は、25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)製フィルム(樹脂基板21)の片面に35μmの硬質アルミからなる配線回路22を形成し、該配線回路上に形成した、硬化剤、硬化触媒を添加したエポキシ系熱硬化性樹脂層40上に、再軟化温度が90℃〜100℃のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂層24を形成して構成されている。
【0036】
以下、該実施例の半導体搭載用配線基板を作製する工程を図2に従って説明する。
【0037】
(工程1)まず第1の工程として、Al−PET積層基材を用意する。一例として25μm厚のPETフィルム(樹脂基板21)の片面に、ウレタン系接着剤を介して35μm厚の硬質アルミ箔51を重ね、これを150℃、圧力5kg/cmの条件で熱ラミネ−トを経て積層接着させる。これにより、PETフィルムの面に硬質アルミ箔51が接着されたAl−PET積層材が完成する。
【0038】
(工程2)次に、前記積層材の硬質アルミ箔51の表面上に所要パタ−ン形状の、エポキシ系の熱硬化性樹脂層40を形成する。
【0039】
熱硬化性樹脂層40は、エポキシ樹脂、硬化剤、および硬化触媒を、トルエン30%、メチルエチルケトン6.1%、ブチルセルソルブ12%の溶剤に混合分散させたインクをグラビア印刷等の方法によって上記Al−PET上に塗布、さらに130℃〜200℃の温度で20秒〜1分程度乾燥させることによって、4〜6μm程度の厚さに形成する。尚、この時のインクとして、エポキシ樹脂と硬化剤を、トルエン30%、メチルエチルケトン6.1%、ブチルセルソルブ12%の溶剤に混合分散させたインクを使用してもよい。
【0040】
熱硬化性樹脂層40を所要の配線パターン形状で印刷することによって、以下、配線回路形成のためのエッチングレジストとして用いることができる。
【0041】
(工程3)上記工程により形成されたエッチングレジストから露出するAl箔部分を従来公知のエッチングを行うことにより除去し、配線回路22を形成する。すなわち、このエッチング処理に際しては、エッチング液としてNaOH(120g/l)を50℃の条件にて使用し、不要なAlを除去する。
【0042】
(工程4)最後に、配線回路22面に90℃〜100℃程度の温度で溶融するポリオレフィン系の熱可塑性接着剤等を、グラビア印刷等の方法によって4〜6μm程度塗布することによって、本発明考案で用いる半導体搭載用配線基板20が完成する。
【0043】
次に、半導体チップ10を、上記の工程により形成された半導体搭載用配線基板20上に実装する工程を図5を用いて説明する。
【0044】
(工程A)半導体チップ10はその底面から接続用の金属端子(バンプ)11を突出させた、いわゆる表面実装型部品として構成されており、その底部から突出するバンプ11(例えば金より成る)に振動数 63KHzの超音波振動を付加した状態で、150℃の加熱により軟化した前記熱可塑性樹脂層24に負荷圧力0.2Kg/mmで押し当てる。
【0045】
(工程B)この時軟化した熱可塑性樹脂層24は、バンプ11の超音波振動100によりバンプ11先端の位置より容易に除去され、バンプ11は熱硬化性樹脂層40の表面に達する。
【0046】
(工程C)さらに、バンプに超音波振動を負荷しながらバンプを熱硬化性樹脂層40に押し当てると、熱硬化性樹脂層40がバンプ11の先端で除去され、配線回路22表面に達する。
【0047】
配線回路22表面上には酸化物層等の絶縁層が存在するが、この層も超音波振動により機械的に除去され、金属同士(バンプ11と配線回路22)の面が接触する。この状態で超音波振動が加えられることで摩擦熱による金属同士の溶融が生じ、電極領域110が形成される。
【0048】
この実装方法における超音波振動の負荷時間は0.5秒程度であり、非常に短時間での半導体チップの実装が可能となる。
【0049】
さらに上記工程の後、半導体搭載用配線基板20に付加された150℃の加熱を除去すると、溶融した熱可塑性樹脂層24は再硬化して、半導体チップ10と配線回路22間を強力に接着する。
【0050】
本実施例における半導体チップ10のバンプ11と配線回路22間の接合強度を検証するために、接着剤となる熱可塑性樹脂層24を未形成とした半導体搭載用配線基板20を作成し、上記実装工程後のシェア強度を、使用する熱硬化性樹脂層40の材質を換えて比較した結果を図6に示す。本図にみるように、従来のエポキシ層より、硬化剤、硬化触媒を半減させたエポキシ層の方が倍近いシェア強度になっており、接合界面の電極領域110の面積が硬化剤、硬化触媒を半分程度に減らすことで増加できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明実装方法による実装構造を示す断面図。
【図2】本発明に係る半導体搭載用配線基板の製造工程を示す説明図。
【図3】通常の熱硬化性樹脂と本発明の熱硬化性樹脂とでシェア強度を比較した結果を示す図。
【図4】従来の実装方法による実装構造を示す断面図。
【図5】従来の超音波実装工程の詳細を示す説明図。
【図6】従来の実装方法による問題点を示す説明図。
【符号の説明】
【0052】
10 半導体チップ
11 バンプ(接続用の突起状端子)
20 半導体搭載用配線基板
21 樹脂基板
22 配線回路
24 熱可塑性樹脂層
40 熱硬化性樹脂層
51 硬質アルミ箔
100 超音波
110 電極領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板の片面にアルミ箔を接着する工程と、
前記アルミ箔の表面上に所要パターン形状の熱硬化性樹脂層を形成する工程と、
前記アルミ箔をエッチングして配線回路を形成する工程と、
前記配線回路上に熱可塑性樹脂層を積層する工程と、から半導体搭載用配線基板を製造し、
前記配線回路上の電極領域を覆う熱可塑性樹脂層を加熱軟化させた状態において、その軟化状態にある熱可塑性樹脂層の上に半導体ベアチップのバンプを超音波を付与しつつ押し付けることにより、軟化した熱可塑性樹脂層を押し退けてバンプと電極領域とを接触させる工程と、
前記バンプと電極領域とが接触した状態において、超音波を継続的に付与することにより、バンプと電極領域とを超音波接合させる工程と、
前記溶融した熱可塑性樹脂を冷却固化させて半導体ベアチップ本体を前記半導体搭載用配線基板上に接着させる工程と、を具備する半導体チップの実装方法であって、
前記熱硬化性樹脂層は、
半導体搭載用配線基板を加熱するとともに、半導体チップのバンプに超音波振動を付加しながら半導体搭載用配線基板にバンプを押し当てることにより半導体チップを半導体搭載用配線基板に実装する実装工程において、前記半導体搭載用配線基板が折れ曲がることにより前記半導体チップ直下と配線回路とが短絡することがない程度の強度を有し、かつ、熱硬化性樹脂層がバンプの先端で除去され配線回路表面に達することができる程度に架橋度を低くしてなること
を特徴とする半導体チップの実装方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂層が、例えばアミン類、酸無水物類、フェノール類といった硬化剤、及び例えばアミン類などの硬化触媒を添加したエポキシ系の樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体チップの実装方法。
【請求項3】
樹脂基板と、
前記樹脂基板の片面に積層されており、エッチングにより形成された配線回路と、
前記配線回路の表面上に積層された熱硬化性樹脂層と、
前記配線回路上に積層された熱可塑性樹脂層とからなるとともに、半導体搭載用配線基板であって、
前記熱硬化性樹脂層は、
半導体搭載用配線基板を加熱するとともに、半導体チップのバンプに超音波振動を付加しながら半導体搭載用配線基板にバンプを押し当てることにより半導体チップを半導体搭載用配線基板に実装する実装工程において、前記半導体搭載用配線基板が折れ曲がることにより前記半導体チップ直下と配線回路とが短絡することがない程度の強度を有し、かつ、熱硬化性樹脂層がバンプの先端で除去され配線回路表面に達することができる程度に架橋度を低くしてなること
を特徴とする半導体搭載用配線基板。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂層が、例えばアミン類、酸無水物類、フェノール類といった硬化剤、及び例えばアミン類などの硬化触媒を添加したエポキシ系の樹脂であることを特徴とする、請求項3に記載の半導体搭載用配線基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate