説明

半導体チップの接合構造および半導体チップの接合方法

【課題】 めっきバンプで基板に均一な超音波接合をすることができる半導体チップの接合構造および半導体チップの接合方法を提供する。
【解決手段】 基板6のランド7に半導体チップ1のバンプ5を乗載し、超音波接合によってバンプ5をランド7に接合して、基板6に半導体チップ1を実装する半導体チップ1の接合構造であって、バンプ5は、半導体チップ1に形成される第1バンプ5aと、第1バンプ5a上の周縁部よりも内側に形成される第2バンプ5bとを含む半導体チップ1の接合構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっきバンプで基板に均一な超音波接合をすることができる半導体チップの接合構造および半導体チップの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の超音波接合方式に用いられるスタッドバンプ42を示す図である。図2は、超音波接合方式に用いられるスタッドバンプ42が基板43に実装される状態を示す図である。一般的に半導体チップ41のフリップチップ実装において、半導体チップ41に形成されたバンプ42と基板43上のランド44との接合は、加熱を伴う加圧によって行われている。加熱することが適切でない場合には、常温で半導体チップを加圧し超音波を印加する超音波接合方式が採用されている。超音波接合には、スタッドバンプ42が用いられている。スタッドバンプ42は、バンプ先端部を変形させながら接合することができるので、バンプの中央部が被接合面に確実に接合された安定した接合が可能になる。スタッドバンプ42は、図示しないAuワイヤが挿入されたウェッジボンディングツールなどを用いて形成されるので、バンプのピン数の増加に伴って加工工数が増加する。したがって、スタッドバンプ42はピン数が数十ピン程度のフリップチップ接合に用いられる。
【0003】
特許文献1には、フリップチップ型の素子側電極と基板側電極とを電気的に接合する第1バンプと第2バンプとを同一金属材料とすることによって、置換型固溶体が形成されたバンプとし、第1バンプと第2バンプとを異なる硬さとすることでバンプ高さの調整をすることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、フリップチップと基板との接合力を向上させるための接合方法および基板の金属積層構造が開示されている。チップまたは基板のバンプは、めっきバンプ、スタッドバンプまたはウェッジバンプなどを形成され、チップと基板とは、超音波および熱が加えられながら圧着して接合される。
【0005】
【特許文献1】特開2004−356129号公報
【特許文献2】特開2005−159356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3は、従来のAuめっきバンプを示す図である。モノリシックマイクロ波集積回路(
Monolithic Microwave Integrated Circuit)は、半導体チップ41の耐湿性を改善するために多層配線部47を有しており、100個以上のバンプが形成される。スタッドバンプ42に用いられている超音波接合を加工工数が少ないAuめっきバンプに用いることができれば、製造効率の向上を図ることができる。
【0007】
Auめっきバンプ45は、保護膜46上に形成される図示しないレジストマスクでバンプ形成部が抜かれた後に、バンプ形成部に電解めっきが施されることによって形成される。レジストマスクのバンプ形成部開口は、レジストマスクの位置ずれを考慮して多層配線部47上に形成される保護膜46の開口よりも大きく形成されるので、レジストマスクのバンプ形成部の底部周縁には保護膜46が張り出している。バンプ形成部に電解めっきが施されると、低部に張り出した保護膜46の影響で、バンプ45の先端部48は凹面状になりやすい。
【0008】
図4は、Auめっきバンプ45が基板49に超音波接合された状態を示す図である。半導体チップが基板側に加圧され超音波が印加されると、バンプ45は押し潰されてランド50に接合される。バンプ45の先端部は、平面もしくは凹面状の形状であるので、バンプ45の先端外周部はランド50に接合されるが、バンプ45の先端中央部は押し潰されるだけで接合されない。バンプ45の先端外周部のみがランド50に接合されるので、バンプ45の接合面積が不足する。
【0009】
さらに、バンプ45は、多層配線部47に形成されたバイアに接続されるが、接続部に凹凸がある場合にはバンプ高さが安定しない。数百ピンのフリップチップを超音波接合する場合に、チップのバンプ高さのばらつきによって、各ランド50との接合状態にばらつきが生じるという問題がある。特許文献1,2は、モノリシックマイクロ波集積回路のめっきバンプの接合構造については開示していない。
【0010】
本発明の目的は、めっきバンプで基板に均一な超音波接合をすることができる半導体チップの接合構造および半導体チップの接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(1)は、基板のランドに半導体チップのバンプを乗載し、超音波接合によってバンプをランドに接合して、前記基板に半導体チップを実装する半導体チップの接合構造であって、
前記バンプは、前記半導体チップに形成される第1バンプと、前記第1バンプ上の周縁部よりも内側に形成される第2バンプとを含むことを特徴とする半導体チップの接合構造である。
【0012】
また本発明(5)は、基板のランドに半導体チップのバンプを乗載し、超音波接合によってバンプをランドに接合して、前記基板に半導体チップを実装する半導体チップの接合方法であって、前記バンプを前記ランドに接合する接合面には、時系列に異なる荷重が印加されることを特徴とする半導体チップの接合方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明(1)によれば、基板のランドに乗載されるバンプは、半導体チップに形成される第1バンプと、第1バンプ上の周縁部よりも内側に形成される第2バンプとを含むのでめっきバンプで基板に均一な超音波接合をすることができる。
【0014】
また本発明(5)によれば、基板のランドに半導体チップのバンプを乗載し、バンプをランドに接合する接合面には、時系列に異なる荷重が印加されて超音波接合をするので、めっきバンプで基板に均一な超音波接合をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図5は、本発明の実施の第1の形態である半導体チップ1の接合構造を説明するための概略図である。半導体チップ1は、モノリシックマイクロ波集積回路として機能する半導体回路基板2と半導体回路基板2の下面に形成される多層配線部3とを備える。多層配線部3には、いずれも図示しない層間を接続するバイア、バイアと接続された導体パターンおよび接地導体層などが形成される。多層配線部3の下面には、バンプ下地金属層4が形成される。バンプ下地金属層4には、多層配線部3に形成されたバイアと接続されたバンプ5が形成される。半導体チップ1が搭載される基板6にはランド7が形成される。バンプ5の接合面とランド7の表面とは対向して配置され、半導体チップ1が基板6側に加圧され超音波が印加されると、バンプ5はランド7に接合される。
【0016】
図6は、半導体チップ1の接合構造に係るバンプ5の形状を示す概略図である。バンプ下地金属層4に形成されるバンプ5は、第1バンプ5aと、第1バンプ上に形成される第2バンプ5bとで構成される。第1バンプ5aの形状は、概ね円錐台である。円錐台である第1バンプの頂部の面には、概ね円錐台である第2バンプが形成される。
【0017】
電解めっきが施された第1バンプ5aの頂部の面は凹状であるので、第1バンプ5aとランド7とを超音波接合すると、凹状である接合面の中央部は押し潰されるだけで接合されず、接合面の外周部のみが接合される。第1バンプ5aの頂部に第2バンプ5bを形成することによって、バンプ5の形状は、全体として概ね凸状となる。本実施形態において、D1=50μm,D2=30μm,L1=約30μm,L2=5〜10μmである。
【0018】
バンプ5は、先端中央部から接合が進められ、バンプ5bの中央部が被接合面であるランド7に確実に接合されるので、従来のスタッドバンプに近い安定した接合が確保される。さらに、バンプ5は、変形しやすい第2バンプ5bの先端部から確実に接合されるので、接合された各バンプの高さは、ばらつきのない均一な高さに揃えることができる。したがって、数百ピンのフリップチップを超音波接合する場合においても、チップのバンプ高さのばらつきによって、各ランド7との接合状態にばらつきが生じることを防止することができる。
【0019】
バンプ5は、電解めっきによってAuめっきされるが、接合部である第2バンプ5bは、ランド7と接合しやすいAu以外の金属、たとえばSn,Inなどの金属がめっきされる。したがって、第2バンプ5bの接合部はいっそう容易に確実な接合がされることになる。
【0020】
図7は、半導体チップ1の接合構造に係るバンプ5の成形工程を示すフローチャートであり、図8は、半導体チップ1の接合構造に係るバンプ5の成形工程を示す概略図である。図7に示すステップA1において、第1バンプ5aを成形する第1マスク9aが保護膜8上に形成される。ステップA2に進み、第1マスク9aの第1バンプ形成部10aが電解めっきを施されることによって、複数個の第1バンプ5aが同時に成形される。ステップA3では、第2バンプ5bを成形するためにステップA1で形成された第1マスク9aの上に、第2マスク9bが形成される。ステップA4では、第2マスク9bの第2バンプ形成部10bが電解めっきが施されて、複数個の第2バンプ5bが同時に成形される。第1バンプ5aおよび第2バンプ5bが成形された後にステップA5において、第1マスク9aおよび第2マスク9bが、保護膜8上から除去される。このように、1回のめっきプロセスで複数のバンプ5の成形を同時にすることができるので、加工工数の低減を図ることができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0021】
図8(a)は、図7のステップA1において、第1バンプ5aを成形する第1マスク9aが保護膜8上に形成され、第1バンプ形成部10aが第1マスク9aから抜かれた状態を示す。図8(b)は、ステップA2において、第1マスク9aの第1バンプ形成部10aが電解めっきを施されることによって第1バンプ5aが成形された状態を示す。図8(c)は、ステップA3において、ステップA1で形成された第1マスク9aの上に、第2バンプ5bを成形する第2マスク9bが形成され、第2バンプ形成部10bが第2マスク9bから抜かれた状態を示す。図8(d)は、ステップA4において第2マスク9aの第2バンプ形成部10bが電解めっきを施されることによって第2バンプ5bが成形された状態を示す。図8(e)は、ステップA5において、第1マスク9aおよび第2マスク9aが保護膜8上から除去された状態を示す。
【0022】
図9は、半導体チップ1の接合方法に係るバンプ5の接合面に掛かる荷重を示すグラフである。半導体チップ1を図示しない実装ツールを用いて基板6に加圧するとともに超音波の印加を開始すると、最初に第2バンプ5bがランド7に接合する。第2バンプ5bの接合面は、第1バンプ5aの頂部の第2バンプ5bが形成される面に比べて狭いので、接合面には一定の低い荷重が掛かる。
【0023】
第2バンプ5bの接合面は、期間T1に示す一定の低荷重を受けた状態で超音波が印加されると、接合面が振動によって擦られてバンプ5bの中心部は確実に接合される。第2バンプが擦られた後に、第1バンプ5aの頂部がランド7に接合すると、第1バンプ5aの頂部の面は広いので、接合面には期間T2に示す一定の高い荷重が掛かる。この状態で超音波が印加されると、接合面の接合面が潰されて接合面を含んだ広い範囲が強く接合される。第1バンプ5aの頂部に第2バンプ5bが形成され全体として凸状の形状となるバンプ5は、このようなプロセスによって、中央部を含んだ接合面全体が確実に接合される。
【0024】
図10は、本発明の実施の第2の形態である半導体チップ1の接合構造に係るバンプ21の形状を示す概略図である。第1バンプ21aの形状は、図6に示したバンプ5の形状と同一であるので説明は省略する。第2バンプ21bの形状は、第1バンプ21aと同様に概ね円錐台である。第2バンプ21bは、第1バンプ21a上であって第1バンプ21aの周縁部よりも内側に、複数個所に分散した状態で形成される。本実施形態においては、L3=2μm,L4=10μm,D3=2μmである。このように、第2バンプ21bを複数の凸部とすることによって、ランド7との接合時に第2バンプ21bが変形しやすくなるので、バンプの中央部が確実に接合される。
【0025】
図11は、本発明の実施の第3の形態である半導体チップの接合構造に係るバンプ22の形状を示す概略図である。第1バンプ22aおよび第2バンプ22bの形状は、図6に示したバンプ5a,5bと同一の形状であるので説明は省略する。第3バンプ22cの形状は、第1バンプ22aおよび第2バンプ22bと同様に概ね円錐台である。第3バンプ22cは、第2バンプ22b上であって第2バンプ22bの周縁部よりも内側に形成される。バンプの段数が増加するにしたがって、バンプ形状は、円錐形である従来のスタッドバンプの先端部の形状に近づく。スタッドバンプと同様にバンプ先端部を変形させながら接合することができるので、バンプの中央部が確実に接合された安定した接合が可能になる。バンプの段数は、3段までに限定されるものではなく4段以上のものでもよい。
【0026】
このように、基板6のランド7に乗載されるバンプ5は、半導体チップ1に形成される第1バンプ5aと、第1バンプ5a上の周縁部よりも内側に形成される第2バンプ5bとを含むのでAuめっきバンプ5で基板6に均一な超音波接合をすることができる。
【0027】
さらに、第2バンプ21bは、第1バンプ21a上の周縁部よりも内側に複数箇所に分散して形成されるので、ランド7との接合時に第2バンプ21bが変形しやすくなるので、バンプ21の中央部が確実に接合される。
【0028】
さらに、第2バンプ22b上の周縁部よりも内側には、さらに第3のバンプ22cが形成されるので、バンプ全体の形状は、円錐形である従来のスタッドバンプの先端部の形状に近づき、スタッドバンプと同様にバンプ先端部を変形させながら接合することができるので、バンプ22の中央部が確実に接合された安定した接合が可能になる。
【0029】
さらに、バンプの最上部に形成されるバンプは、金以外のランド7と接合しやすい金属めっきが施されるので、いっそう容易に確実な接合が可能になる。
【0030】
さらに、基板6のランド7に半導体チップ1のバンプ7を乗載し、バンプをランドに接合する接合面には、時系列に異なる5が印加されて超音波接合をするので、めっきバンプ5で基板6に均一な超音波接合をすることができる。
【0031】
さらに、異なる荷重は、予め定める第1の期間の荷重より第1の期間に引き続く第2の期間の荷重が大きいので、めっきバンプ5で基板6に均一な超音波接合をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の超音波接合方式に用いられるスタッドバンプを示す図である。
【図2】超音波接合方式に用いられるスタッドバンプが基板に実装される状態を示す図である。
【図3】従来のAuめっきバンプを示す図である。
【図4】Auめっきバンプが基板に超音波接合される状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の第1の形態である半導体チップ1の接合構造を説明するための概略図である。
【図6】半導体チップの接合構造に係るバンプ5の形状を示す概略図である。
【図7】半導体チップ1の接合構造に係るバンプ5の成形工程を示すフローチャートである。
【図8】半導体チップ1の接合構造に係るバンプ5の成形工程を示す概略図である。
【図9】半導体チップ1の接合方法に係るバンプの接合面に掛かる荷重を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の第2の形態である半導体チップ1の接合構造に係るバンプ21の形状を示す概略図である。
【図11】本発明の実施の第3の形態である半導体チップの接合構造に係るバンプの形状を示す概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1,41 半導体チップ
2 半導体回路基板
3,47 多層配線部
4 バンプ下地金属層
5,21,22 バンプ
5a,21a,22a 第1バンプ
5b,21b,22b 第2バンプ
6,43 基板
7,44,50 ランド
8,46 保護膜
9a 第1マスク
9b 第2マスク
10a 第1バンプ形成部
10b 第2バンプ形成部
22c 第3バンプ
42 スタッドバンプ
45 Auめっきバンプ
48 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のランドに半導体チップのバンプを乗載し、超音波接合によってバンプをランドに接合して、前記基板に半導体チップを実装する半導体チップの接合構造であって、
前記バンプは、前記半導体チップに形成される第1バンプと、前記第1バンプ上の周縁部よりも内側に形成される第2バンプとを含むことを特徴とする半導体チップの接合構造。
【請求項2】
前記第2バンプは、前記第1バンプ上の周縁部よりも内側に複数箇所に分散して形成される第2バンプ部分から成ることを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの接合構造。
【請求項3】
前記第2バンプ上の周縁部よりも内側には、さらに第3のバンプが形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体チップの接合構造。
【請求項4】
前記バンプのうち、前記バンプの最上部に形成されるバンプは、金よりも接合しやすい金属めっきが施されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体チップの接合構造。
【請求項5】
基板のランドに半導体チップのバンプを乗載し、超音波接合によってバンプをランドに接合して、前記基板に半導体チップを実装する半導体チップの接合方法であって、前記バンプを前記ランドに接合する接合面には、時系列に異なる荷重が印加されることを特徴とする半導体チップの接合方法。
【請求項6】
前記異なる荷重は、予め定める第1の期間の荷重より、前記第1の期間に引き続く第2の期間の荷重が大きいことを特徴とする請求項5に記載の半導体チップの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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