説明

半導体ナノ結晶及びその調製方法

裸半導体ナノ結晶と、
前記裸半導体ナノ結晶に直接結合する水分子と、
を含む半導体ナノ結晶及びその調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体ナノ結晶及びその調製方法に関する
【背景技術】
【0002】
半導体ナノ結晶(「量子ドット」とも称される)は、ナノサイズの結晶構造を有し、数百から数千の原子を含む半導体材料である。半導体ナノ結晶はとても小さいため、単位体積当たりの表面積が非常に大きく、量子閉じ込め効果を誘導する。したがって、半導体ナノ結晶は、半導体材料の通常の固有特性とは異なる、ユニークな物理化学的特性を発現する。
【0003】
特に、光電子等の半導体ナノ結晶のある特性は、ナノ結晶のサイズを調節することにより制御することができ、表示デバイス又は生物発光デバイスの利用が検討されている。さらに、半導体ナノ結晶は、重金属を含まないため、これらの材料は、環境に優しく、人体に対して安全である。
【発明の概要】
【0004】
技術的課題
本開示の一実施形態は、高い発光効率を有する半導体ナノ結晶を提供する。
【0005】
他の一実施形態は、前記半導体ナノ結晶の調製方法を提供する。
【0006】
本開示のさらに他の一実施形態は、半導体ナノ結晶複合体を提供する。
【0007】
本開示のさらに他の一実施形態は、前記半導体ナノ結晶を含む発光デバイスを提供する。
【0008】
技術的解決法
本開示の一実施形態によると、裸半導体ナノ結晶と、前記裸半導体ナノ結晶に直接結合する水分子とを含む半導体ナノ結晶が提供される。
【0009】
裸半導体ナノ結晶は、水分子と、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを介して結合しうる。
【0010】
半導体ナノ結晶は、裸半導体ナノ結晶と結合する有機配位子をさらに含んでもよく、当該有機配位子は、下記化学式1で表されうる。
【0011】
【化1】

【0012】
化学式1において、Rは、C1〜C30のアルキレン基;C6〜C30のアリーレン基;C6〜C30のヘテロアリーレン基;C3〜C30のシクロアルキレン基;C3〜C30のヘテロシクロアルキレン基;C2〜C30のアルケニレン基;C2〜C30のアルキニレン基;C3〜C30の、二重結合又は三重結合を環中に含む脂環式基(alicyclic group);C3〜C30の、二重結合又は三重結合を環中に含むヘテロシクロアルキレン基(heterocycloalkylene group);C2〜C30のアルケニル基又はC2〜C30のアルキニル基で置換された、C3〜C30の脂環式基;又はC2〜C30のアルケニル基又はC2〜C30のアルキニル基で置換された、C3〜C30のヘテロシクロアルキレン基から選択され、nは、0又は1以上の整数であり、Xは、S、SH、P、P=O、PO、NH、HN、CN、NCO、O、ハロゲン、ハロゲン化アシル、COO、COOH、H、OH、又はそれらの組合せから選択され、Yは、SH、NH、HN、COO、H、OH、又はPOHから選択され、mは1以上の整数である。
【0013】
化学式1において、nは0〜5の整数でありえ、mは1〜10の整数でありうる。また、化学式1において、YはSH、NH、HN、又はそれらの組合せから選択されうる。
【0014】
ある実施形態において、裸半導体ナノ結晶はコア構造又はコア−シェル構造を有しうる。
【0015】
コアは、II−VI族半導体材料、III−V族半導体材料、IV族半導体材料、又はIV−VI族半導体材料を含みうる。シェルは、II−VI族半導体材料、III−V族半導体材料、IV族半導体材料、又はIV−VI族半導体材料を含みうる。
【0016】
ある実施形態において、−OH、−O、又は−Hの官能基の1以上は裸半導体ナノ結晶と結合されうる。
【0017】
一実施形態に係る半導体ナノ結晶は、III−V族半導体をコアに含みうる。一実施形態に係る半導体ナノ結晶は、約50%以上の発光効率を有してもよく、一実施形態において、約70%以上の発光効率を有しうる。
【0018】
半導体ナノ結晶は、約60nm以下の半値全幅(FWHM)を有してもよく、一実施形態において、約55nm以下、約50nm以下、又は約45nm以下のFWHMを有しうる。
【0019】
本開示の一実施形態に係る半導体ナノ結晶の調製方法は、第一の半導体ナノ結晶を水と混合することを含みうる。第一の半導体ナノ結晶に対する水の重量比は、約1:1〜約100:1でありうる。一実施形態において、第一の半導体ナノ結晶に対する水の重量比は、約1:1〜約10:1でありうる。
【0020】
第一の半導体ナノ結晶及び水の混合は、有機溶媒及び第一の半導体ナノ結晶を含む半導体ナノ結晶溶液を調製することと、その後、半導体ナノ結晶溶液に水を加えることとを含みうる。水は、半導体ナノ結晶溶液約100体積部を基準として、約0.01体積部〜約100体積部の量で添加されうる。
【0021】
第一の半導体ナノ結晶及び水の混合は、不活性ガス雰囲気下で行われうる。
【0022】
ナノ結晶の調製方法は、半導体ナノ結晶溶液に、光を照射することをさらに含みうる。光は、半導体ナノ結晶のエネルギーバンドギャップよりも高いエネルギーを有しうる。光は、半導体ナノ結晶の発光波長よりも短い波長を有しうる。
【0023】
ナノ結晶の調製方法は、第一の半導体ナノ結晶と極性化合物とを混合することをさらに含みうる。極性化合物は、水の量に対して、約0.1:1〜約10:1の体積比で含まれうる。
【0024】
第一の半導体ナノ結晶は、コア構造又はコア−シェル構造を有しうる。
【0025】
第一の半導体ナノ結晶は、当該第一の半導体ナノ結晶上で、下記化学式1で表される有機配位子とさらに結合されうる。
【0026】
他の一実施形態に係る半導体ナノ結晶複合体は、マトリックスと、半導体ナノ結晶とを含みうる。マトリックスは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アルキルアクリレート)(例えば、ポリ(C1〜C6のアルキルアクリレート))、ポリ(シラン)、(ポリカーボネート)、ポリ(シロキサン)、ポリ(アクリレート)、エポキシ樹脂、チタニア、シリカ、アルミナ、ジルコニア、インジウムスズ酸化物、又はそれらの混合物を含みうる。
【0027】
本開示の他の一実施形態によると、発光デバイスは半導体ナノ結晶を含む。発光デバイスは、第一の電極及び第二の電極を含んでもよく、半導体ナノ結晶又は半導体ナノ結晶複合体は電極の間に配置されうる。発光デバイスは、光源を含んでもよく、半導体ナノ結晶又は半導体ナノ結晶複合体は、光源上に配置されうる。
【0028】
有利な効果
一実施形態に係る半導体ナノ結晶は、発光効率を改善しうる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本開示の一実施形態に係る半導体ナノ結晶の断面概略図である。
【図2】図2は、本開示の一実施形態に係る、半導体ナノ結晶を含む電流駆動式の発光デバイスの断面図である。
【図3】図3は、本開示の一実施形態に係る、光変換発光デバイスの断面図である。
【図4】図4は、本開示の実施例及び比較例により調製された半導体ナノ結晶の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の形態
本開示は、以下の発明の詳細な説明及び添付の図面を参照することによってより詳しく説明されるが、本開示の一部が示されているにすぎず、全てが示されているわけではない。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態に具現化されてもよく、本明細書で説明する実施形態に限定的に解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全になるように提供され、本発明の教示は当業者に完全に伝えられるだろう。全体にわたって、同一の参照数字及び参照変数は、同一の要素を指す。
【0031】
当然のことながら、ある要素若しくは層が、他の要素若しくは層の「上(on)」にある又は「と結合された(connected to)」という場合、当該要素若しくは層は、他の要素若しくは層の直接上にある若しくは他の要素若しくは層と直接結合されていてもよく、又は別の要素若しくは別の層が介在していてもよい。一方、ある要素が、他の要素若しくは層の「直接上に(directly on)」ある又は「と直接結合された(directly connected to)」という場合、別の介在する要素若しくは層はない。本明細書で使用される「及び/又は(and/or)」との用語は、関連する例示項目の任意のもの又は一以上の全ての組合せを含む。
【0032】
当然のことながら、第一、第二、第三等の用語は、本明細書中において様々な要素、成分、領域、層、及び/又は区域を説明するために使用されうるが、これらの要素、成分、領域、層、及び/又は区域は、それらの用語によって限定されるものではない。これらの用語は、単に、一の要素、成分、領域、層、又は区域と、他の領域、層、又は区域から区別するために使用されるにすぎない。したがって、以下で論じる、第一の要素、成分、領域、層、又は区域は、本発明の実施形態の教示を逸脱することなく、第二の要素、成分、領域、層、又は区域と称されうる。
【0033】
「下(below)」、「下方(lower)」、「上方(upper)」等の空間に関する用語は、図に示されるような一の要素又は特徴の他の要素又は特徴に対する関係を分かり易く説明するために本明細書で使用されうる。当然のことながら、空間に関する用語は、図に描写された方向に加え、使用中又は操作中のデバイスの異なる方向を包含することを意味する。例えば、図中のデバイスが回転されたら、他の要素若しくは特徴に対して相対的に「下」又は「下方」と記載された要素は、今度は他の要素若しくは特徴に対して相対的に「上」と方向づけられる。したがって、典型的な用語「下方」は、「上方」及び「下方」の両方向の方向を包含しうる。デバイスが他の方向を向く(90°回転する又は別の方向を向く)と、本明細書において使用される空間に関する記載はそれに応じて解釈されうる。
【0034】
本発明の実施形態は、本発明の理想化された実施形態(および中間構造)の概略図である断面図を参酌して説明される。そのため、例えば、製造技術及び/又は誤差の結果として、図の形状からの差異が予想される。したがって、本発明の実施形態は、本明細書に描写された特定の領域の形状に限定されるものと解釈されるべきではなく、例えば製造の結果として生じる形状の偏差を含む。
【0035】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためであり、限定を意図するものではない。文脈上別途明確に示さない限り、本明細書で使用される、単数形「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」は、複数形も同様に含むことを意図する。「含む(comprises)」および/もしくは「含む(comprising)」、または「含む(includes)」および/もしくは「含む(including)」は、本明細書中で使用される場合、規定された特徴、領域、整数、工程、操作、要素、および/または成分の存在を特定するものであるが、1以上の他の特徴、領域、整数、工程、操作、要素、成分および/若しくそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【0036】
別途の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される全ての方法は、文脈上別途示す又は明らかに相反することがない限り、適切な順番で行われうる。任意の及び全ての実施例、又は例示的な用語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより詳しく説明することのみを意図し、別途クレームしない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
本明細書で使用される「アルキレン」とは、二価の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素を意味する。アルキレン基は、例えば、1〜15の炭素原子を有する基が含まれる(C1〜C15アルキル)。「アルケニレン」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、二価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素を意味し;また、「アルキニレン」とは、1以上の不飽和の炭素−炭素結合(その少なくとも1つは三重結合である)を有する二価の直鎖又は分岐鎖の炭化水素を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「シクロアルキレン」とは、全ての環員(ring members)が炭素である1以上の飽和環を含む二価の基を意味し、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロへプチレン、シクロオクチレン、及びアダマンチレンなどが挙げられる。シクロアルキレン基は、芳香環又は複素環を含まない。炭素原子の数が記載されている場合(例えば、C1〜C10のシクロアルキル)、これらの数は、環員の数を表す。
【0039】
本明細書で使用される、「アミノ基」は、式「−N(RwRz)」での基であり、ここで、RwおよびRzは、それぞれ独立して、水素、C1〜C15のアルキル、C1〜C15のアルケニル、C1〜C15のアルキニル、C3〜C15のシクロアルキル、又はC6〜C15のアリールである。
【0040】
本明細書で使用される「アリーレン」は、全ての環員が炭素であり、少なくとも1つの環が芳香環である二価の環状部である。1以上の環が存在してもよく、任意の付加的な環は、独立して、芳香環、飽和環、部分的な不飽和環であってもよく、縮合、ペンダント(pendant)、スピロ環、又はそれらの組合せであってもよい。
【0041】
本開示を通して、様々な複素環基(heterocyclic groups)が参照される。そのような基のうち、「ヘテロ(hetero)」との用語は基が少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、1、2、又は3つのヘテロ原子(当該ヘテロ原子は、独立して、N、O、S、P、又はSiである))である環員を含むことを意味する。「ヘテロシクロアルキレン」基は、少なくとも1つの、ヘテロ原子環員を含むシクロアルキレン環を含む。「ヘテロアリーレン」基は、少なくとも1つの、ヘテロ原子環員を含む芳香環を含む。少なくとも1つの環が、芳香環であり、かつヘテロ原子である環員を含む限りにおいて、非芳香環及び/又は炭素環がヘテロアリーレン基中に存在してもよい。図1は、本開示の一実施形態に係る半導体ナノ結晶の概略図である。
【0042】
本開示の一実施形態に係る半導体ナノ結晶は、裸半導体ナノ結晶と、裸半導体ナノ結晶に直接結合する水分子とを含む。ここで、裸半導体ナノ結晶は、約1〜20nmの直径を有する半導体物質結晶である。
【0043】
水分子は、裸半導体ナノ結晶と、配位結合、イオン結合、若しくは水素結合、又はファンデルワールス力を介して結合しうる。例えば、裸半導体ナノ結晶は欠陥を有してもよく、当該裸半導体ナノ結晶は水分子と欠陥中で配位結合を介して結合しうる。水分子は半導体ナノ結晶を不動態化してもよく、それによって、半導体ナノ結晶が保護され、半導体ナノ結晶の量子効率を向上しうる。
【0044】
水分子により誘導される官能基は、半導体ナノ結晶と結合しうる。例えば、−OH、−O、又は−Hの官能基の1以上は、裸半導体ナノ結晶と結合しうる。例えば、半導体ナノ結晶がZnを原料原子として含む場合、有機物又は任意の他の金属元素と結合していない複数のZn元素の少なくともいくつかは、−OH、−O、又は−Hと結合することにより、Zn−O又はZn−H結合を形成しうる。
【0045】
裸半導体ナノ結晶は、コア構造又はコア−シェル構造を有しうる。ここで、「コア構造」との用語は、シェルなしでコアのみからなる構造を意味するのに対し、「コア−シェル」構造とは、コアと、当該コアを囲む1以上のシェルとを含む構造を意味する。コアは合金であってもよく、シェルの少なくとも1つが合金層であってもよい。
【0046】
裸半導体ナノ結晶コアは、II−VI族半導体、III−V族半導体、IV族半導体、又はIV−VI族半導体を含みうる。図1に示されるコアは、InPを含む。
【0047】
II族元素は、Zr、Cd、Hg、及びそれらの組合せから選択されてもよく、また、III族元素は、Al、Ga、In、Ti、及びそれらの組合せから選択されうる。IV族元素はSi、Ge、Sn、Pb、及びそれらの組合せから選択されてもよく、また、∨族元素は、P、As、Sb、Bi、及びそれらの組合せから選択されうる。VI族元素は、O、S、Se、Te、及びそれらの組合せから選択されうる。
【0048】
裸半導体ナノ結晶シェルは、II−VI族半導体、III−V族半導体、IV族半導体、又はIV−VI族半導体を含みうる。図1に示されるシェルは、ZnSを含む。シェル欠陥において、半導体ナノ結晶コアの表面又は内部は、水分子と結合されうる。あるいは、シェルの表面又は内部は水分子と結合されうる。
【0049】
裸半導体ナノ結晶がコア−シェル構造を有する場合、裸半導体ナノ結晶シェル及び水分子は、裸半導体ナノ結晶コアを密に取り囲んでもよく、それにより、半導体ナノ結晶の量子効率が向上されうる。
【0050】
半導体ナノ結晶は、裸半導体ナノ結晶の表面又は内部と結合する有機配位子をさらに含みうる。有機配位子は、裸半導体ナノ結晶と、物理的又は化学的に結合することができる。有機配位子は、非共有電子対を含む材料、又は金属材料と共に複合化合物を形成するための官能基を有する材料でありうる。例えば、当該官能基は、チオール基、アミン基、カルボキシル基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、及びそれらの組合せから選択されうる。有機配位子は、約10〜約100,000ダルトン、又は約100〜約1,000ダルトンの重量平均分子量を有する置換された若しくは非置換の炭化水素でありうる。例えば、当該炭化水素は、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素、N、O、S又はそれらの組合せを含むヘテロ環化合物を含みうる。有機配位子は、下記化学式1で表されうる。
【0051】
【化2】

【0052】
化学式1において、Rは、C1〜C30のアルキレン基;C6〜C30のアリーレン基;C6〜C30のヘテロアリーレン基;C3〜C30のシクロアルキレン基;C3〜C30のヘテロシクロアルキレン基;C2〜C30のアルケニレン基;C2〜C30のアルキニレン基;C3〜C30の、二重結合又は三重結合を環中に含む脂環式基;C3〜C30の、二重結合又は三重結合を環中に含むヘテロシクロアルキレン基;C2〜C30のアルケニル基又はC2〜C30のアルキニル基で置換された、C3〜C30の脂環式基;又はC2〜C30のアルケニル基又はC2〜C30のアルキニル基で置換された、C3〜C30のヘテロシクロアルキレン基から選択され、nは、0又は1以上の整数であり、Xは、S、SH、P、P=O、PO、NH、HN、CN、NCO、O、ハロゲン、ハロゲン化アシル、COO、COOH、H、OH、又はそれらの組合せから選択され、Yは、SH、NH、HN、COO、H、OH、又はPOHから選択され、mは1以上の整数である。
【0053】
化学式1において、nは0〜5の整数でありえ、mは1〜10の整数でありうる。また、化学式1において、YはSH、NH、HN、又はそれらの組合せからさ選択されうる。
【0054】
Xは、裸半導体ナノ結晶と物理的又は化学的に結合される官能基でありうる。
【0055】
以下に限定されないが、有機配位子の非限定的な例として、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、ベンジルチオール等のチオール類;メルカプトメタノール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトペンタノール、メルカプトヘキサノール等のメルカプトスペーサーアルコール類;メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトブタン酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトヘプタン等のメルカプトスペーサーカルボン酸類;メルカプトメタンスルホン酸、メルカプトエタンスルホン酸、メルカプトプロパンスルホン酸、メルカプトベンゼンスルホン酸等のメルカプトスペーサースルホン酸類;メルカプトメタンアミン、メルカプトエタンアミン、メルカプトプロパンアミン、メルカプトブタンアミン、メルカプトペンタンアミン、メルカプトヘキサンアミン、メルカプトピリジン等のメルカプトスペーサーアミン類;メルカプトメチルチオール、メルカプトエチルチオール、メルカプトプロピルチオール、メルカプトブチルチオール、メルカプトペンチルチオール等のメルカプトスペーサーチオール類;メタンアミン、エタンアミン、プロパンアミン、ブタンアミン、ペンタンアミン、ヘキサンアミン、オクタンアミン、ドデカンアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等のアミン類;アミノメタノール、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール等のアミノスペーサーアルコール類;アミノ酢酸、アミノプロピオン酸、アミノブタン酸、アミノヘキサン酸、アミノヘプタン酸等のアミノスペーサーカルボン酸類;アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、アミノプロパンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸等のアミノスペーサースルホン酸類;アミノメタンアミン、アミノエタンアミン、アミノプロパンアミン、アミノブチルアミン、アミノペンチルアミン、アミノヘキシルアミン、アミノベンゼンアミン、アミノピリジン等のアミノスペーサーアミン又はジアミン類;メタン酸(ギ酸)、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、安息香酸等のカルボン酸類;カルボン酸メタノール(すなわち、カルボン酸基がアルコール基から−CH−基により分離された、又は2−ヒドロキシエタン酸)、カルボン酸エタノール(すなわち、3−ヒドロキシプロパン酸)、カルボン酸プロパノール、カルボン酸ブタノール、カルボン酸ペンタノール、カルボン酸ヘキサノールなどのカルボン酸スペーサーアルコール類;カルボン酸メタンスルホン酸、カルボン酸エタンスルホン酸、カルボン酸プロパンスルホン酸、カルボン酸ベンゼンスルホン酸等のカルボン酸スペーサースルホン酸類;カルボン酸メタンカルボン酸(すなわち、プロパン二酸)、カルボン酸エタンカルボン酸(すなわち、ブタン二酸)、カルボン酸プロパンカルボン酸、カルボン酸プロパンカルボン酸、カルボン酸ベンゼンカルボン酸等のカルボン酸スペーサーカルボン酸類;メチルホスフィン、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、ペンチルホスフィン等のホスフィン類;ホスフィンメタノール、ホスフィンエタノール、ホスフィンプロパノール、ホスフィンブタノール、ホスフィンペンタノール、ホスフィンヘキサノール等のホスフィンスペーサーアルコール類;ホスフィンメタンスルホン酸、ホスフィンエタンスルホン酸、ホスフィンプロパンスルホン酸、ホスフィンベンゼンスルホン酸等のホスフィンスペーサースルホン酸類;ホスフィンメタンカルボン酸、ホスフィンエタンカルボン酸、ホスフィンプロパンカルボン酸、ホスフィンベンゼンカルボン酸、等のホスフィンスペーサーカルボン酸類;ホスフィンメタンアミン、ホスフィンエタンアミン、ホスフィンプロパンアミン、ホスフィンベンゼンアミンなどのホスフィンスペーサーアミン類;メチルホスフィンオキシド、エチルホスフィンオキシド、プロピルホスフィンオキシド、ブチルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;ホスフィンオキシドメタノール、ホスフィンオキシドエタノール、ホスフィンオキシドプロパノール、ホスフィンオキシドブタノール、ホスフィンオキシドペンタノール、ホスフィンオキシドヘキサノール等のホスフィンオキシドアルコール類;ホスフィンオキシドメタンスルホン酸、ホスフィンオキシドエタンスルホン酸、ホスフィンオキシドプロパンスルホン酸、ホスフィンオキシドベンゼンスルホン酸等のホスフィンオキシドスペーサースルホン酸類;ホスフィンオキシドメタンカルボン酸、ホスフィンオキシドエタンカルボン酸、ホスフィンオキシドプロパンカルボン酸、ホスフィンオキシドベンゼンカルボン酸等のホスフィンオキシドスペーサーカルボン酸類;及び、ホスフィンオキシドメタンアミン、ホスフィンオキシドエタンアミン、ホスフィンオキシドプロパンアミン、ホスフィンオキシドベンゼンアミン等のホスフィンオキシドスペーサーアミン類が挙げられる。当該スペーサーの非限定的な例としては、C1〜C16のアルキレン、及びC6〜C24のアリーレンが挙げられる。
【0056】
本開示の一実施形態において、半導体ナノ結晶は、III−V族半導体をコアとして含み、当該半導体ナノ結晶は、約50%以上の発光効率を有しうる。一実施形態において、半導体ナノ結晶は、約60%以上、又は約70%以上の発光効率を有してもよく、他の一実施形態において、約80%以上の発光効率を有しうる。半導体ナノ結晶は、約60nm以下、約55nm以下、約50nm以下の半値全幅(FWHM)を有しうる。一実施形態において、半導体ナノ結晶は、約45nm以下のFWHMを有しうる。FWHMがより小さいと、色純度が上昇する。例えば、III−V族半導体を含む半導体ナノ結晶は、約510〜約560nmの波長範囲での発光ピーク、約70%以上の発光効率、及び約45nm以下のFWHMを有しうる。一実施形態において、発光ピーク波長は約560〜約580nmの範囲でありえ、発光効率は約70%以上でありえ、そして、FWHMは約50nm以下でありうる。他の一実施形態において、発光ピーク波長は約580〜約640nmの範囲でありえ、発光効率は約70%以上でありえ、そして、FWHMは約60nm以下でありうる。
【0057】
次に、本開示の一実施形態に係る半導体ナノ結晶の調製方法について説明する。以下、上述の半導体ナノ結晶の説明と重複する部分の説明は省略する。
【0058】
ナノ結晶の調製方法は、第一の半導体ナノ結晶を水と混合することを含みうる。当該混合工程において、水は、第一の半導体ナノ結晶の水和により結合されうる。
【0059】
第一の半導体ナノ結晶は、水と結合していない半導体ナノ結晶であり、有機溶媒下での通常の湿式(溶媒)工程により調製されうる。第一の半導体ナノ結晶は、コア構造又はコア−シェル構造を有しうる。ここで、当該コア又はシェルは、独立して、II−VI族半導体材料、III−V族半導体材料、IV族半導体材料、又はIV−VI族半導体材料を用いて形成されうる。さらに、当該第一の半導体ナノ結晶は、上述の裸半導体ナノ結晶、又は裸半導体ナノ結晶の表面上又は内部上で有機配位子と結合した裸半導体ナノ結晶でありうる。当該有機配位子は、上記化学式1で表されうる。
【0060】
水は、第一の半導体ナノ結晶に対して約1〜約100の重量比、すなわち、1重量部の第一の半導体ナノ結晶につき、約1〜約100重量部でありうる。当該水は、第一の半導体ナノ結晶の量を基準として少量で使用されてもよく、例えば、第一の半導体ナノ結晶に対し、約1〜約10の重量比で使用されうる。
【0061】
水は、液体又は蒸気として存在しうる。
【0062】
第一の半導体ナノ結晶及び水の混合工程は、有機溶媒及び第一の半導体ナノ結晶を含む半導体ナノ結晶溶液を調製することと、その後、当該半導体ナノ結晶溶液に水を加えることとを含みうる。
【0063】
有機溶媒は、クロロベンゼン等の芳香族溶媒、ヘキサン又はオクタン等のアルカン溶媒、メチルクロリド等の非極性溶媒、ジメチルホルムアミド又はテトラヒドロフラン等の極性溶媒等の1以上を含みうる。
【0064】
水は、半導体ナノ結晶溶液約100体積部を基準として、約0.01体積部〜約100体積部、約0.1体積部〜約30体積部、約1体積部〜約10体積部の量で添加されうる。溶媒を基準として、半導体ナノ結晶が約1重量%で含まれると、半導体ナノ結晶溶液は約0.01〜約2の吸光度(光学密度)を有しうる。当該吸光度は、約300nm〜約1200nmの波長を有する励起源に対する最初の吸収極大波長における吸収を意味する。
【0065】
あるいは、第一の半導体ナノ結晶及び混合工程は、第一の半導体ナノ結晶を含む粉末又は層等の分散体の上に水を噴霧する工程を含みうる。
【0066】
第一の半導体ナノ結晶及び水の混合工程は、約10℃〜約150℃で行われうる。反応温度が上昇すると、半導体ナノ結晶の発光効率の増加が達成されうる。
【0067】
第一の半導体ナノ結晶及び水の混合工程は、不活性ガス雰囲気下で行われうる。それにより、第一の半導体ナノ結晶が直ぐさま酸化することが抑制されるため、第一の半導体ナノ結晶はその物理的及び化学的性質を維持しうる。当該不活性ガスの例としては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0068】
極性化合物を水と共に、第一の半導体ナノ結晶にさらに添加してもよい。当該極性化合物は、第一の半導体ナノ結晶及び水分子の間の結合形成を助けてもよく、半導体ナノ結晶溶液中の水分子の溶解性を向上させうる。
【0069】
極性化合物の例としては、極性溶媒が挙げられる。当該極性溶媒の非限定的な例としては、ジメチルホルムアミド等のアミドベース極性溶媒;テトラヒドロフラン等のエステルベース極性溶媒;エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール等のアルコール等;及びそれらの混合物が挙げられる。
【0070】
極性化合物は、少量で使用されうる。水及び極性化合物は、約1:約0.1〜約1:約10の体積比で使用されうる。一実施形態において、当該水及び極性化合物は、約1:約0.5〜約1:約5の体積比で使用されうる。極性化合物は、半導体ナノ結晶溶液約100体積部を基準として、約0.1体積部〜約100体積部の量で添加されうる。一実施形態において、当該極性化合物は、半導体ナノ結晶溶液約100体積部を基準として、約0.5体積部〜約50体積部の量で添加されうる。
【0071】
第一の半導体ナノ結晶に水を添加した後、得られた混合物は、下記で詳細に記載された波長の光を照射されうる。例えば、当該光照射は、半導体ナノ結晶の発光波長に応じて、約1分間〜約500時間行われうる。第一の半導体ナノ結晶の表面又は内部に配位した有機材料の可逆的な脱着又は配位が、光照射を経て促進されると、欠陥中で、配位結合を介して、水分子は第一の半導体ナノ結晶と結合しうる、又は第一の半導体ナノ結晶の表面又は内部の一部が酸化されてもよく、それにより、第一の半導体ナノ結晶構造の一部が変化してもよく、発光効率が改善されうる。さらに、照射又は第一の半導体ナノ結晶の表面又は内部に存在する電子若しくは正孔により水分子が分解されうる。あるいは、若しくは、加えて、有機溶媒又は有機配位子の光重合ポリマー反応が起こりうる。例えば、アクリレート由来のポリマー、オレフィン等が水、有機溶媒、又は有機配位子の光重合を経て生成されてもよく、そのようなポリマーは半導体ナノ結晶を取り囲みうる。半導体ナノ結晶の不動態化を経て、半導体ナノ結晶は、発光効率、寿命を向上させうる。
【0072】
照射光は半導体ナノ結晶のエネルギーバンドギャップよりも高いエネルギーに相当するエネルギーを有しうる。照射光は、第一の半導体ナノ結晶の発光波長よりも短い波長を有してもよく、紫外線(UV)領域の光が使用されうる。例えば、約600nmよりも長い波長を伴う赤色半導体ナノ結晶発光のためには、照射光は約300nm〜約590nmの波長を有しうる。約570nm〜約590nmの範囲の波長を伴う黄色半導体ナノ結晶発光のためには、照射光は約300nm〜約560nmの波長を有しうる。約520nm〜約565nmの範囲の波長を伴う緑色半導体ナノ結晶発光のためには、照射光は約300nm〜約510nmの波長を有しうる。
【0073】
光照射の時間は、半導体ナノ結晶から放射される光の波長に応じて調整することができ、例えば、半導体ナノ結晶は約1分間〜500時間光を照射されうる。
【0074】
本開示の一実施形態は、半導体ナノ結晶、有機溶媒、及び水を含む組成物を提供し、ここで、水は、有機溶媒100体積部を基準として、約0.01体積部以上〜約100体積部の量で含まれる。
【0075】
水は、有機溶媒100体積部を基準として、約0.1体積部〜約30体積部の量で含まれてもよく、一実施形態において、約1体積部〜約10体積部の量で添加されうる。組成物中、水は、半導体ナノ結晶に対して、約1〜約100体積部の量で添加されうる。さらに、組成物の半導体ナノ結晶は、裸半導体ナノ結晶の表面又は内部で有機配位子に結合された裸半導体ナノ結晶でありうる。また、半導体ナノ結晶は、水分子に結合された裸半導体ナノ結晶でありうる。
【0076】
次に、半導体ナノ結晶複合体について説明する。
【0077】
半導体ナノ結晶複合体は、マトリックスと、本開示の例示的な実施形態によって調製された半導体ナノ結晶を含む。半導体ナノ結晶複合体はマトリックス中に分散された半導体ナノ結晶、又はマトリックス中に分散されたクラスタータイプの半導体ナノ結晶でありうる。少なくともいくつかの半導体ナノ結晶は、マトリックスの表面に配置されうる。半導体ナノ結晶は、ポリマーによって不動態化された後、マトリックス中に導入されうる。
【0078】
マトリックスは有機材料、無機材料、又はそれらの混合物でありうる。半導体ナノ結晶の発光特性を利用するために、透明性を有するマトリックスが使用されうる。酸素及び/又は水の透過を遮断するマトリックスを使用する場合、さらに有利である。フィルム又はシートに加工するために、加工性(フィルム又はシートへの易加工可能性)を有するマトリックスが使用されうる。マトリックスの例としては、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アルキルアクリレート)(例えば、ポリ(C1〜C6のアルキルアクリレート))、ポリ(シラン)、ポリ(カーボネート)、ポリ(シロキサン)、ポリ(アクリレート)、エポキシ樹脂等のポリマー;チタニア、シリカ、アルミナ、ジルコニア、インジウムスズ酸化物等、又はそれらの混合物等の無機材料が挙げられる。
【0079】
以下、本開示の一実施形態に係る発光デバイスについて説明する。以下、図2を参照しながら、半導体ナノ結晶を発光材料として含む電流駆動発光デバイスについて説明する。
【0080】
図2は、本開示の一実施形態に係る半導体ナノ結晶を含む発光デバイスの断面図である。
【0081】
電流駆動発光デバイスは、第一及び第二電極間に発光素子を形成すること、並びに、電子及び正孔間の結合に基づき励起子を生成するために、当該第一及び第二電極から当該発光層の中へと電子及び正孔を注入することにより製造される。励起子が励起状態から基底状態へと落ちるときに光が生成される。
【0082】
例えば、図2に示されるように、電流駆動発光素子は基板10の上にアノード20が配置される。アノード20は、正孔が注入されうるような、高い仕事関数を有する材料で形成されうる。アノード20を形成するための材料の非限定的な例としては、インジウムスズ酸化物、及びインジウム酸化物の透明酸化物が挙げられる。
【0083】
アノード20の上には、ホール輸送層(HTL)30、発光層(EL)40、及び電子輸送層(ELT)50が順次形成される正孔輸送層30はp型半導体を含んでもよく、電子輸送層50はn型半導体又は金属酸化物を含みうる。発光層40は、本開示の一実施形態により調製されたナノ結晶を含む。
【0084】
カソード60は、電子輸送層50の上に形成される。カソード60は電子が電子輸送層50へ容易に注入されうるような低い仕事関数を有する材料で形成されうる。カソード60を形成するための材料の非限定的な例として、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫、鉛、セシウム、バリウム及びそれらの合金からなる群から選択される金属;LiF/Al、LiO/Al、LiF/Ca、LiF/Al及びBaF/Ca等の多層構造金属が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0085】
発光層は、本開示の一実施形態により調製された半導体ナノ結晶又は半導体ナノ結晶複合体を含みうる。
【0086】
アノード20、正孔輸送層30、発光層40、電子輸送層50、及びカソード60の製造方法、並びに、それらの組立て方法は、本技術分野の当業者に広く知られているので、本明細書中では詳細には説明しない。
【0087】
図3を参照しながら、発光デバイスの例として、半導体ナノ結晶を発光材料として含む光変換発光デバイスについて説明する。
【0088】
光透過発光素子は、光源、及び当該光源上に配置された光変換発光層を含みうる。発光層は、本開示の例示的な実施形態の半導体ナノ結晶、又は半導体ナノ結晶複合体を含んでもよく、光源は、発光ダイオードチップでありうる。
【0089】
図3は、本開示の一実施形態に係る光変換発光デバイスの断面図である。
【0090】
Agで形成された基板4を用意する。基板4は凹部を含む。青色又は紫外線(UV)領域に相当する光を放射する発光ダイオードチップ3は、基板4上に形成される。
【0091】
半導体ナノ結晶2を含むマトリックス1は、発光ダイオードチップ3上に形成される。半導体ナノ結晶3は、赤色、緑色、又は青色のナノ結晶でありうる。また、マトリックス1は、上述の有機材料又は無機材料でありうる。半導体ナノ結晶2はマトリックス1の中に注入されてもよく、基板4の欠陥をコートしてもよく、それにより発光ダイオードチップ3を被覆しうる。
【0092】
半導体ナノ結晶2は発光ダイオード3の発光エネルギーを吸収してもよく、他の波長において、励起エネルギー(光)を出力しうる。半導体ナノ結晶2の発光波長は、広範囲にわたって調節されてもよく、当該半導体ナノ結晶2は優れた色純度を有する。例えば、赤色ナノ結晶及び緑色ナノ結晶を青色発光ダイオードチップと組み合わせると、白色発光ダイオードが製造されうる。また、赤色、緑色、及び青色ナノ結晶を紫外線発光ダイオードチップと組み合わせると、白色発光ダイオードが製造されうる。加えて、多様な波長の発光が可能なナノ結晶を発光ダイオードチップと組み合わせると、多様な波長の光を発する発光ダイオードが製造されうる。
【実施例】
【0093】
以下、下記の実施例により本開示を詳細に説明する。下記の実施例はあくまで例示のためのものであり、限定するためのものではない。
【0094】
調製例1:黄色発光ナノ結晶の調製
パルミチン酸(0.6mmol)及びオクタデセン(10mL)の混合物に酢酸インジウム(0.2mmol)を添加し、減圧下で約120℃に加熱し、その温度で約10分間維持した。一方、トリメチルシリル−3−ホスフィン約0.075mmol及びトリオクチルホスフィン約0.45mmolをオクタデセン約0.78mLと混合することにより注入溶液を調製した。減圧条件下に維持した前記混合物を窒素雰囲気下で約280℃に加熱し、加熱した混合液の中に前記注入溶液を注入した。注入後約1時間反応を行い、当該混合物をその後室温まで冷却した。続いて、当該冷却した混合物にアセトンを注入することによりInPナノ結晶を沈殿させた。当該沈殿をトルエン約1mLに溶解することによりInPナノ結晶溶液を調製した。
【0095】
酢酸亜鉛(0.3mmol)をオレイン酸(0.6mmol)及びオクタデセン(10mL)の混合物に添加し、減圧条件下で約120℃に加熱した。続いて、当該混合物を窒素雰囲気下で約220℃に加熱し、当該混合物の中に、約0.4M硫黄/トリオクチルホスフィン溶液約1.5mL及び約0.2の吸光度を有するInPナノ結晶溶液約1mLを注入した。続いて、当該混合物を約300℃に加熱し、約1時間反応させ、室温に冷却した。冷却した混合物の中にアセトンを注入することによりInP/ZnSナノ結晶を沈澱させた。当該沈殿をトルエン約2mLに溶解させることによりInP/ZnSナノ結晶溶液を調製した。
【0096】
調製例2により調製したInP/ZnSナノ結晶の発光効率は、約63%であり、発光ピーク波長は約573nmであり、その際のFWHMは約46nmであった。発光ピーク波長は、最も強度が大きいピークを示す波長である。
【0097】
実施例1−1
調製例1により調製したInP/ZnSナノ結晶溶液約0.3mLに約水0.02mLを約25℃の窒素下で加え、維持した。
【0098】
実施例1−2
調製例1により調製したInP/ZnSナノ結晶溶液約0.3mLに約水0.02mLを約25℃の窒素雰囲気下で添加した。続いて、約450nmの光を照射し、維持した。
【0099】
比較例1−1
調製例1により調製したInP/ZnSナノ結晶溶液を、水の添加なしに、約25℃の空気下に放置した。
【0100】
比較例1−2
調製例1により調製したInP/ZnSナノ結晶溶液を、水の添加なしに、約450nmの光を照射しながら、放置した。
【0101】
3時間後又は6時間後、実施例1−1及び1−2、並びに比較例1−1〜1−3により調製した溶液の、発光効率、発光スペクトルにおける最大波長、及び発光スペクトルの半値全幅(FWHM)を測定した。結果を下記表1のとおりである。ここで、実施例及び比較例は、それぞれ3時間及び6時間維持した後に測定された。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示すように、不活性ガス雰囲気下で水を添加された半導体ナノ結晶は、半導体ナノ結晶のFWHM及び発光波長(例えば、発光ピーク波長)が維持されうるため、時間の経過と共に高い発光効率を有する。また、光を照射された半導体ナノ結晶溶液(実施例1−2の溶液)の発光効率が最も高い。
【0104】
調製例2:赤色ナノ結晶の調製
パルミチン酸(1.5mmol)及びオクタデセン(10mL)の混合物に酢酸インジウム(0.5mmol)を添加し、減圧下で約120℃に加熱し、室温で約1時間維持した。一方、トリメチルシリル−3−ホスフィン約0.25mmol及びトリオクチルホスフィン約0.75mmolをオクタデセン約0.8mLと混合することにより注入溶液を調製した。減圧条件下に維持した前記混合物を窒素雰囲気下で約48℃に冷却し、冷却した混合液の中に前記注入溶液を注入することによりInP反応中間体を製造した。
【0105】
パルミチン酸(0.6mmol)及びオクタデセン(10mL)の混合物に酢酸インジウム(0.2mmol)を添加し、減圧条件下で約120℃に加熱し、その温度で約1時間維持した。一方、トリメチルシリル−3−ホスフィン約0.1mmol及びトリオクチルホスフィン約0.6mmolをオクタデセン約0.703mLと混合することにより注入溶液を調製した。減圧条件下に維持した前記混合物を窒素雰囲気下で約280℃に加熱し、加熱した混合液の中に前記注入溶液を注入した。注入後約40分j間反応を誘導した。続いて、40分間反応を行った当該混合物に上述のInP反応中間体約4.4mLを添加することにより、InP/InPナノ結晶溶液を調製した。
【0106】
酢酸亜鉛(0.3mmol)をオレイン酸(0.6mmol)及びオクタデセン(10mL)の混合物に添加し、減圧条件下で約120℃に加熱した。続いて、当該混合物を窒素雰囲気下で約300℃に加熱し、約220℃に冷却した。当該混合物の中に、約0.4M硫黄/トリオクチルホスフィン溶液約1.5mL及び約0.1の吸光度を有する上記で調製されたInP/InPナノ結晶溶液約1mLを注入した。続いて、当該混合物を約300℃に冷却し、約1時間反応させ、室温に冷却した。冷却した混合物にアセトンを注入することによりInP/InP/ZnSナノ結晶を沈澱させた。当該沈殿をトルエン約2mLに溶解させることによりInP/InP/ZnSナノ結晶溶液を調製した。
【0107】
調製例2により調製したInP/ZnSナノ結晶の発光効率は、約63%であり、発光ピーク波長は約615nmであり、その際のFWHMは約50nmであった。
【0108】
実施例2−1
調製例2により調製したInP/InP/ZnSナノ結晶溶液約0.3mLに水約0.02mLを約25℃の窒素下で加え、維持した。
【0109】
実施例2−2
調製例2により調製したInP/InP/ZnSナノ結晶溶液約0.3mLに約水0.02mL及びブタノール約0.04mLを約25℃の窒素雰囲気下で加え、維持した。
【0110】
比較例2−1
調製例2により調製したInP/InP/ZnSナノ結晶溶液を、水なしで、約25℃の空気下に維持した。
【0111】
24時間後、実施例2−1及び1−2、並びに比較例2−1で調製された溶液の、発光効率、発光スペクトルにおける最大波長、及び発光スペクトルのFWHMを測定した。結果を下記表2及び図4に示す。
【0112】
【表2】

【0113】
表2に示すように、不活性ガス雰囲気下で水を添加された半導体ナノ結晶は、FWHM及び発光波長(例えば、発光ピーク波長)が維持されうるため、高い発光効率を有する。不活性ガス雰囲気下で水及びブタノールを添加された実施例2−2の半導体ナノ結晶は、半導体ナノ結晶のFWHM及び発光波長(例えば、発光ピーク波長)が維持されうるため、時間の経過と共により高い発光効率を有する。
【0114】
調製例3:緑色ナノ結晶の調製
パルミチン酸(0.6mmol)及びオクタデセン(10mL)の混合物に酢酸インジウム(0.2mmol)を添加し、減圧下で約120℃に加熱し、室温に冷却した。一方、トリメチルシリル−3−ホスフィン約0.2mmol及びトリオクチルホスフィン約1.2mmolをオクタデセン約0.6mLと混合することにより注入溶液を調製した。窒素雰囲気下で、前記混合物に前記注入溶液を注入した。注入後、得られた溶液を約320℃に加熱し、室温に冷却した。続いて、当該冷却した混合物にアセトンを注入することによりInPナノ結晶を沈殿させた。当該沈殿をトルエン約2mLに溶解することによりInPナノ結晶溶液を調製した。
【0115】
酢酸亜鉛(0.3mmol)をオレイン酸(0.6mmol)及びオクタデセン(10mL)の混合物に添加し、減圧下で約120℃に加熱した。当該混合物を窒素雰囲気下で約300℃に加熱し、約220℃に冷却した。その後、当該混合物の中に、約0.4M硫黄/トリオクチルホスフィン溶液約1.5mL及び約0.1の吸光度を有する上記で調製されたInP/InPナノ結晶溶液約1mLを注入した。続いて、得られた混合物を約300℃に加熱し、約1時間反応を続け、その後、これを室温に冷却した。冷却した混合物にアセトンを添加することによりInP/ZnSナノ結晶を沈澱させた。当該沈殿をトルエン約2mLに溶解させることによりInP/ZnSナノ結晶溶液を調製した。
【0116】
調製例3により調製したInP/ZnSナノ結晶の発光効率は、約75%であり、発光ピーク波長は約558nmであり、その際のFWHMは約40nmであった。
【0117】
実施例3−1
調製例3により調製したInP/ZnSナノ結晶溶液約0.3mLに約水0.02mLを約25℃の窒素雰囲気下で添加した。続いて、約450nmの波長の光を照射し、維持した。
【0118】
比較例3−1
調製例3により調製したInP/ZnSナノ結晶溶液を、水の添加又は光の照射なしに、約25℃の空気下に維持した。
【0119】
2日間及び5日間後、実施例3−1及び比較例3−1で調製された溶液の、発光効率、発光スペクトルにおける最大波長、及び発光スペクトルのFWHMを測定した。結果を下記表3に示す。
【0120】
【表3】

【0121】
表3に示すように、不活性ガス雰囲気下で水を添加された実施例3−1の半導体ナノ結晶は、半導体ナノ結晶のFWHM及び発光波長(例えば、発光ピーク波長)が維持されてもよく、発光効率が増大した。
【0122】
本発明は、実施の例示的な実施形態であると現在考えられているものに関して説明してきたが、当然のことながら、本発明は開示された実施形態に限定されず、逆に、添付の特許請求の範囲の思想及び範囲内に含まれる様々な修飾及び同等配置を包含することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裸半導体ナノ結晶と、
前記裸半導体ナノ結晶に直接結合する水分子と、
を含む半導体ナノ結晶。
【請求項2】
前記水分子が、前記裸半導体ナノ結晶と、配位結合、イオン結合、若しくは水素結合、又はファンデルワールス力を介して結合している、請求項1に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項3】
前記裸半導体ナノ結晶と結合する有機配位子をさらに有し、
前記有機配位子は、下記化学式1で表される、請求項1に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項4】
前記裸半導体ナノ結晶は、コア構造又はコア−シェル構造を有する、請求項1に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項5】
前記コア又はシェルは、独立して、II−VI族半導体材料、III−V族半導体材料、IV族半導体材料、又はIV−VI族半導体材料を含む、請求項4に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項6】
前記裸半導体ナノ結晶は、−OH、−O、又は−Hの官能基の1以上と結合する、請求項1に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項7】
III−V族半導体をコアに含み、約50%以上の発光効率を有する、半導体ナノ結晶。
【請求項8】
70%以上の発光効率を有する、請求項7に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項9】
約60nm以下の半値全幅を有する、請求項7に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項10】
約70%以上の発光効率、約45nm以下のFWHM、及び約510〜約560nmの発光ピーク波長を有する、請求項7に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項11】
約70%以上の発光効率、約50nm以下の半値全幅、及び約560〜約580nmの発光ピーク波長を有する、請求項7に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項12】
約70%以上の発光効率、約60nm以下の半値全幅、及び約580〜約640nmの発光ピーク波長を有する、請求項7に記載の半導体ナノ結晶。
【請求項13】
第一の半導体ナノ結晶を水と混合することを含む、半導体ナノ結晶の調製方法。
【請求項14】
前記第一の半導体ナノ結晶に対する前記水の重量比は、約1:1〜約100:1である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第一の半導体ナノ結晶及び前記水の混合は、
有機溶媒及び前記第一の半導体ナノ結晶を含む半導体ナノ結晶溶液を調製することと、
前記半導体ナノ結晶溶液に前記水を加えることと、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記水は、前記半導体ナノ結晶溶液約100体積部を基準として、約0.01体積部〜約100体積部の量で添加される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第一の半導体ナノ結晶と極性化合物とを混合することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記極性化合物は、前記水約100体積部を基準として、約0.1〜約10体積部の量で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第一の半導体ナノ結晶及び前記水の混合は、不活性ガス雰囲気下で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記半導体ナノ結晶溶液に、光を照射することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記光は、前記半導体ナノ結晶のエネルギーバンドギャップよりも高いエネルギーを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記光は、前記半導体ナノ結晶の発光波長よりも短い波長を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第一の半導体ナノ結晶は、コア構造又はコア−シェル構造を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記第一の半導体ナノ結晶は、当該第一の半導体ナノ結晶の表面で、下記化学式1で表される有機配位子と結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
マトリックスと、
請求項1に記載の半導体ナノ結晶と、
を含む、半導体ナノ結晶複合体。
【請求項26】
前記マトリックスは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(シラン)、ポリ(カーボネート)、ポリ(シロキサン)、(ポリ)アクリレート、エポキシ樹脂、チタニア、シリカ、アルミナ、ジルコニア、インジウムスズ酸化物、又はそれらの混合物を含む、請求項25に記載の半導体ナノ結晶複合体。
【請求項27】
請求項1に記載の半導体ナノ結晶を含む、発光デバイス。
【請求項28】
第一の電極及び第二の電極を含み、
前記半導体ナノ結晶又は半導体ナノ結晶複合体は、前記第一及び第二の電極の間に配置される、請求項27に記載の発光デバイス。
【請求項29】
光源を含み、
前記半導体ナノ結晶又は半導体ナノ結晶複合体は、前記光源上に配置される、
請求項27に記載の発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−532953(P2012−532953A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519473(P2012−519473)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004413
【国際公開番号】WO2011/005023
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(503447036)サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド (2,221)
【Fターム(参考)】